(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】改善された貯蔵安定性を有するカルボキシメチルセルロースの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08B 11/12 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
C08B11/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546231
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2022052025
(87)【国際公開番号】W WO2022162133
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523288569
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・ワン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ペーターマン
(72)【発明者】
【氏名】レネ・ケリング
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・フェルチュ
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA05
4C090BA29
4C090BB52
4C090BB65
4C090BB72
4C090BB92
4C090BC10
4C090BD08
4C090BD18
4C090CA01
4C090CA32
4C090CA37
4C090DA03
4C090DA04
4C090DA11
4C090DA23
4C090DA26
4C090DA27
(57)【要約】
貯蔵安定性が改善されたカルボキシメチルセルロースは、a)水及び5、1つ以上の有機溶媒の存在下でセルロースをアルカリ化剤と反応させる工程であって、有機溶媒の総量が、セルロース、水及び有機溶媒の総重量に基づいて少なくとも(50)重量パーセントである工程;b)アルカリ化セルロースをモノハロ酢酸又はその塩と反応させて、カルボキシメチルセルロース塩、水及び(10)1つ以上の有機溶媒を含む反応混合物を生成する工程;c)工程b)からの反応混合物に酸を添加して、25℃の温度で(1)重量パーセントの濃度で水に溶解した場合に(6)~(10)のpHを有するカルボキシメチルセルロースを製造する工程、並びにd)工程c)における酸添加の間、及び/又は後に、反応混合物(15)を少なくとも800s-1の剪断速度の剪断に供する工程を含む方法によって製造される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチルセルロースを調製する方法であって:
a)水及び1つ以上の有機溶媒の存在下でセルロースをアルカリ化剤と反応させる工程であって、有機溶媒の総量が、セルロース、水及び有機溶媒の総重量に基づいて少なくとも50重量パーセントである、工程;
b)アルカリ化セルロースをモノハロ酢酸又はその塩と反応させて、カルボキシメチルセルロース塩、水及び1つ以上の有機溶媒を含む反応混合物を生成する工程;
c)工程b)からの前記反応混合物に酸を添加して、25℃の温度で1重量パーセントの濃度で水に溶解した際に6~10のpHを有するカルボキシメチルセルロースを製造する工程、並びに
d)工程c)における酸添加の間及び/又は後に、前記反応混合物を少なくとも800s
-1の剪断速度で剪断に供する工程を含む、方法。
【請求項2】
工程a)において、前記セルロースのアルカリ化剤単位と無水グルコース単位との間のモル比が、0.5:1~5:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、セルロースの量が、セルロース、水及び1つ以上の有機溶媒の総重量に基づいて、1~25重量パーセントである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、水の量が、セルロース、水及び1つ以上の有機溶媒の総重量に基づいて、1~25重量パーセントである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、前記有機溶媒が、1~4個の炭素原子を有するアルコール、3~5個の炭素原子を有するケトン、又は前記溶媒の2つ以上の混合物、又は前記溶媒の1つ以上と6~8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素との混合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)が、水、イソプロピルアルコール及びメタノールの存在下で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)で得られた前記反応混合物において、カルボキシメチルセルロース塩の量が、工程b)の前記反応混合物の総重量に基づいて、最大30重量パーセントである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)において、前記反応混合物を少なくとも1500s
-1の剪断速度の剪断に供する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記製造されたカルボキシメチルセルロースが、25℃で1重量パーセント水溶液として測定される、100~20,000mPa・sの粘度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記製造されたカルボキシメチルセルロースが、25℃で1重量パーセント水溶液として測定される、500~10,000mPa・sの粘度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるカルボキシメチルセルロース。
【請求項12】
25℃の温度で1重量パーセントの濃度で水に溶解した際に6~10のpHを有し、25℃の1重量パーセント水溶液として測定して、
相対湿度75%、及び温度40℃で8週間保存後30%未満、
相対湿度75%、及び温度40℃で12週間保存後40%未満の粘度の低下を示す、カルボキシメチルセルロース。
【請求項13】
25℃の1重量%水溶液として測定して、100~20,000mPa・sの初期粘度を有する、請求項12に記載のカルボキシメチルセルロース。
【請求項14】
増粘剤、ゲル化剤、結合剤、安定剤、乳化剤、皮膜形成剤、懸濁化剤、保護コロイド、又は結晶化防止剤としての、請求項11~13のいずれか一項に記載のカルボキシメチルセルロースの使用。
【請求項15】
医薬剤形又は食品における、請求項11~14のいずれか一項に記載のカルボキシメチルセルロースの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性が増加したカルボキシメチルセルロース(CMC)を調製する方法、新規なカルボキシメチルセルロース及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CMCは、多種多様な技術分野で使用されている。CMCの増粘及びゲル形成特性から利益を受ける領域は、例えば、石油産業(例えば、流体の穿孔)、食品産業、製薬産業、製紙産業、電気及び電子産業、繊維産業及び建設産業である。製薬産業では、CMCは多くの製品で様々な目的で使用されている。したがって、CMCは、カプセル、粉末、顆粒及びペレット、並びに錠剤及び錠剤用コーティングに見られる。それは、レオロジー調整剤として、又は軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、液剤、懸濁剤、エマルジョンを含む半固体及び液体剤形並びに創傷ケア製品における懸濁安定化のために使用することができる。医薬品に使用される場合、CMCは、例えば欧州薬局方(Ph.Eur.又はEP)又は米国薬局方(USP)に記載されている医薬用途における使用のための規制条件を満たす必要がある。例えば、欧州薬局方は、2重量%水溶液のCMCの公称粘度の75%~140%の範囲のCMCの粘度安定性を必要とする。CMCはまた、水を吸収及び保持し、結晶成長を制御し、増粘剤として、結合剤として、貯蔵寿命を延ばし、所望の質感又は本体を提供するために食品に広く使用されている。したがって、CMCの粘度安定性は、品質上の理由から食品においても重要である。
【0003】
CMCを調製する方法は当業者に周知であり、例えば、米国特許第2,067,946号明細書;同第2,636,879号明細書;同第4,063,018号明細書;同第4,250,305号明細書;国際公開第99/20667号パンフレット及び同第2011/120533号パンフレット、並びにStigsson,Chem 4,339,573、Eng.and Material Proceedings,Dec.2001,1-12に見ることができる。完結には、製造工程は以下の通りである。原料セルロースは反応器に供給され、そこでマーセル化工程においてNaOHとの反応によってイオン化される。マーセル化の後にエーテル化反応を行い、アルカリセルロースをモノクロロ酢酸(MCA)又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてCMCを得る。反応混合物のpHを酸の添加によって調整してもよい。その後、反応混合物を濾過し、固体残渣を洗浄し、乾燥させ、粉砕してCMCを得る。
【0004】
広範囲の粘度のCMCが市販されている。CMCの粘度は、生成物、特に中粘度及び高粘度グレード(2000mPa・s超、特に10,000mPa・s超の25℃の2%水溶液粘度)と呼ばれるCMCグレードの長期貯蔵の間に低下することが知られている。したがって、CMCの長期貯蔵時に粘度が上述の規制条件の限界を超え、結果としてCMCバッチ全体の廃棄を引き起こすリスクがある。したがって、特に中粘度及び高粘度グレードのCMCの粘度劣化は、特に医薬品及び食品用途にとって深刻な懸念事項である。
【0005】
中国特許出願公開第104761646号明細書は、「貯蔵寿命が長いカルボキシメチルセルロースナトリウムの調製方法」を特許請求している。中国特許出願公開第104761646号明細書は、特許請求される方法のナトリウムCMCの安定性データを開示しておらず、この文献は、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの改善された貯蔵寿命がどのように達成されるかについて述べていない。
【0006】
国際公開第2019064633号パンフレットは、より良好な貯蔵安定性を有し、長期間にわたって粘度の損失が少ないカルボキシメチルセルロース又はその塩を製造する方法を特許請求している。国際公開第2019064633号パンフレットによる方法は以下:水及び有機溶媒を含む溶媒混合物の存在下でセルロースとアルカリとを反応させるアルカリセルロース変換工程(工程1);工程1で得られたアルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させるエーテル化工程(工程2);工程2で得られた反応混合物を洗浄及び乾燥する精製工程(工程3)を含み、前記方法は、工程1において、セルロースを構成する無水グルコース単位1モルに対して、アルカリが2.0モル~2.5モルの量で使用され、水が10モル~15モルの量で使用され、水に対するアルカリの濃度が0.5モル%~1モル%であることを特徴とする。工程1において、pHは9以上、好ましくは11以上、より好ましくは12以上である。pHの上限は14以下であり、好ましくは13.5以下である。精製工程(工程3)は、溶媒除去工程、洗浄工程及び乾燥工程を含んでいてもよい。また、溶媒除去工程の前に、pH調整工程をさらに含んでいてもよい。実施例1~9によれば、工程1のpHは12.90~13.89であり、チップ形態のセルロース550g当たり溶媒(イソプロピルアルコール/水=80/20(質量比))1500~2750gが使用される。セルロースへのアルカリの添加量が多い場合(比較例1、pH=14.55)、少ない場合(比較例2、pH=12.20)、水の添加量が多い場合(比較例3)、又は少ない場合(比較例4)、粘度の低下が大きくなる。全ての実施例及び比較例において、酢酸水溶液を用いて工程3のpHを約9.5に調整し、反応溶媒を蒸発させて粗ナトリウムCMCを得る。粗ナトリウムCMCを水酸化ナトリウムを添加することによってpH9.5に調整し、続いてメタノール/水混合物を使用して洗浄する。残念ながら、pH調整工程3における9~14、例えば9.5の教示されたpH範囲は、25℃の1%水溶液中のpH6.5~8.5を必要とする米国薬局方等の様々な規制要件に適合していない。
【0007】
特開2008019344号公報には、(a)原料パルプからアルカリセルロースを形成した後、アルカリセルロースをエーテル化することによってカルボキシメチルセルロース塩を製造する工程、(b)カルボキシメチルセルロース塩を酸型カルボキシメチルセルロースに変換する工程、(c)酸型カルボキシメチルセルロースを洗浄する工程、及び(d)洗浄した酸型カルボキシメチルセルロースを水酸化アルカリ等のアルカリと反応させる工程を含む、粘度低下の少ない部分酸型CMCを提供する方法が開示されている。アルカリの添加量は、理論酸エーテル化度を達成するために必要な重量の5倍~10倍である。
【0008】
改善された貯蔵安定性を有するCMCを調製するためのさらなる方法が当技術分野において必要とされている。したがって、本発明によって解決される目的は、貯蔵安定性が改善されたCMCを調製するための新しい方法、特に水に溶解した際に高いpHを有するCMC塩の製造に限定されない汎用的な方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、25℃の温度で1重量パーセントの濃度で水に溶解した場合アルカリCMCを含むエーテル化工程後の反応混合物に酸を添加して、6~10のpHを有するCMCを生成し、酸添加中及び/又は酸添加後の反応混合物を少なくとも800s-1の剪断速度に供すると、貯蔵時のCMCの粘度の損失が減少することが分かった。
【0010】
したがって、本発明の一態様は、カルボキシメチルセルロースを調製する方法であって、本方法は、
a)水及び1つ以上の有機溶媒の存在下でセルロースをアルカリ化剤と反応させる工程であって、有機溶媒の総量が、セルロース、水及び有機溶媒の総重量に基づいて少なくとも50重量パーセントである、工程;
b)アルカリ化セルロースをモノハロ酢酸又はその塩と反応させて、カルボキシメチルセルロース塩、水及び1つ以上の有機溶媒を含む反応混合物を生成する工程;
c)工程b)からの反応混合物に酸を添加して、25℃の温度で1重量パーセントの濃度で水に溶解した際に6~10のpHを有するカルボキシメチルセルロースを製造する工程、並びに
d)工程c)における酸添加の間及び/又は後に、反応混合物を少なくとも800s-1の剪断速度で剪断に供する工程を含む。
【0011】
本発明の他の態様は、上記の方法により得られるカルボキシメチルセルロースである。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、25℃の温度で1重量%の濃度で水に溶解した際に6~10のpHを有し、25℃の水中の1重量%溶液として測定して
相対湿度75%、及び温度40℃で8週間保存後30%未満、
相対湿度75%、及び温度40℃で12週間保存後40%未満の粘度の低下を示す、カルボキシメチルセルロースである。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、増粘剤、ゲル化剤、結合剤、安定剤、乳化剤、皮膜形成剤、懸濁化剤、保護コロイド、又は結晶化防止剤としての、上記カルボキシメチルセルロースの使用である。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、医薬剤形又は食品における上記カルボキシメチルセルロースの使用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される「CMC」又は「カルボキシメチルセルロース」という用語は、式-CH2CO2A(式中、Aは水素又はK+等の一価カチオン、又は好ましくはNa+である)の基で置換されたセルロースを包含する。したがって、「CMC」又は「カルボキシメチルセルロース」という用語は、遊離酸基を含むカルボキシメチルセルロース、並びに「カルボキシメチルセルロースナトリウム」及び「CMCナトリウム」、「カルボキシメチルセルロースカリウム」及び「CMCカリウム」を包含する。
【0016】
本明細書で使用される「カルボキシメチルセルロース塩」という用語は、式-CH2CO2A’(式中、A’はK+等の一価カチオン、又は好ましくはNa+である)の基で置換されたセルロースを包含する。本明細書で使用される「カルボキシメチルセルロースナトリウム」又は「CMCナトリウム」という用語は、式-CH2COO-Na+の基で置換されたセルロースを包含する。
【0017】
本発明の方法に従って調製されたCMCは、一般的に、0.1~1.6、好ましくは0.15~1.5、例えば0.6~1.2、又はさらには例えば0.7~1.1の置換度(DS)を有する。置換度は、1つの無水グルコース単位で置換されたOH基の平均数であるため、理論上の最大DS値は3である。これは、ASTM D 1439-03(再承認2008)「Standard Test Methods for Sodium Carboxymethylcellulose; Degree of Etherification,Test Method B:Nonaqueous Titration」にしたがって決定し得る。CMCの固体試料を沸騰温度で氷酢酸で処理すると、カルボキシメチルナトリウム基に相当する酢酸イオン量が放出される。これらの酢酸イオンは、過塩素酸標準液を用いて無水酢酸中で強塩基として滴定することができる。滴定終点は電位差測定によって決定される。カルボン酸の他のアルカリ塩(例えば、グリコール酸ナトリウム及びジグリコール酸ジナトリウム)も同様に挙動し、共滴定される。
【0018】
本発明の方法に従って調製されたCMCは、1重量パーセント(wt.-%)、好ましくは少なくとも100mPa・s、より好ましくは少なくとも250mPa・s、さらにより好ましくは少なくとも500mPa・s、最も好ましくは少なくとも1000 mPa・s水溶液として測定される粘度を有する。粘度は25℃の1重量%水溶液として測定して、好ましくは20,000mPa・sまで、より好ましくは15,000mPa・sまで、さらにより好ましくは10,000mPa・sまで、最も好ましくは6,000mPa・sまである。
【0019】
粘度を決定するために、1重量%水溶液を以下のように調製する(溶液の総量350g)。346.5gの脱イオン水(CMC中の水を差し引く)を500mlのスクリューキャップボトルに入れる。ボトルを25℃の温度の焼き戻し浴に入れる。3.5g(乾燥重量)のCMCを表面に加える。生成物試料を一定の回転速度(約1000~1500rpm)及び25℃の温度で1時間30分間撹拌する。次いで、撹拌機のスイッチを切り、溶液を撹拌せずに25℃で30分間保持した後、粘度を決定する。粘度は、ASTM D 1439-03(再承認2008)に記載されているように、25℃(+/-0.1℃)でブルックフィールド粘度計(LVT)を使用して分析する。ASTM D 1439-03の表1に列挙されているように、スピンドルNo.1を使用して100~200mPa・sの範囲の粘度を30rpmで測定し、スピンドルNo.2を使用して200~1000mPa・sの範囲の粘度を30rpmで測定し;1000~4000mPa・sの範囲の粘度を30rpm及びスピンドル番号3で測定し;4000~1万mPa・sの範囲の粘度を30rpm及びスピンドル番号4で測定する。
【0020】
CMCを調製するために使用されるセルロースの種類は、本発明に必須ではなく、CMCの意図される最終用途によって支配される。従来の出発材料は、天然セルロース、例えばコットンリンター及び木材パルプ、例えば硬質木材又は軟質木材パルプである。典型的には、CMCの所望の用途に応じて、コットンリンター又は木材パルプが使用される。
【0021】
CMCを調製する方法は当技術分野の当業者に周知であり、例えば、米国特許第2,067,946号明細書;同第2,524,024号明細書;同第2,636,879号;同第4,063,018号明細書;同第4,250,305号明細書及び同第4,339,573号明細書;国際公開第2011/120533号パンフレット、並びにStigsson,Chem.Eng.and Material Proceedings,Dec.2001,1-12に見ることができる。
【0022】
調製方法の必須工程は、アルカリ化剤との反応によってセルロースをアルカリ化する工程(アルカリ化工程(a))、モノハロ酢酸を添加してアルカリセルロースをエーテル化する工程(カルボキシメチル化工程(b))、工程b)の反応混合物に酸を添加して、25℃の温度で1重量%の濃度で水に溶解した場合に6~10のpHを有するカルボキシメチルセルロースを製造する工程(酸添加工程c))及びd)工程c)における酸添加の間及び/又は後に、反応混合物を少なくとも800s-1の剪断速度に供する工程である。
【0023】
セルロースは、まず、アルカリ化工程a)において水及び1つ以上の有機溶媒の存在下でアルカリ化され、次いで、カルボキシメチル化工程b)においてモノハロ酢酸が添加される。好ましい有機溶媒は、1~4個の炭素原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール又はイソブチルアルコール、3~5個の炭素原子を有するケトン、例えばアセトン又はメチルエチルケトン、又はこれらの溶媒の2つ以上の混合物、又は前述の溶媒の1つ以上と6~8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン又はキシレンとの混合物である。好ましくは、イソプロピルアルコール又はイソプロピルアルコールとメタノールとの組合せが有機溶媒として使用される。有機溶媒としてイソプロピルアルコールとメタノールとの組合せを用いる場合、イソプロパノールの量は、一般的には、イソプロパノール及びメタノールの総重量に対して50~99重量%であり、好ましくは80~98重量%、より好ましくは70~98重量%、最も好ましくは85~97重量%である。
【0024】
工程a)におけるセルロースの量は、それぞれセルロース、水及び有機溶媒の総重量に基づいて、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~12重量%、さらにより好ましくは3~10重量%、最も好ましくは4~8重量%の範囲内である。
【0025】
工程a)における水の量は、それぞれセルロース、水及び有機溶媒の総重量に基づいて、好ましくは1~25重量%の範囲内、より好ましくは2~20重量%、さらにより好ましくは3~15重量%、最も好ましくは4~12重量%である。
【0026】
工程a)における1つ以上の有機溶媒の総量は、セルロース、水及び有機溶媒(複数可)の総重量に基づいて少なくとも50重量%である。好ましくは、工程a)における1つ以上の有機溶媒の総量は、それぞれセルロース、水及び有機溶媒の総重量に基づいて、50~98重量%の範囲内、より好ましくは68~96重量%、さらにより好ましくは75~94重量%、最も好ましくは80~92重量%である。
【0027】
アルカリ化剤は、好ましくはアルカリ金属水酸化物、例えばNaOH、KOH又はその混合物である。本発明の一実施形態では、NaOHがアルカリ化剤として使用される。他の実施形態では、KOHがアルカリ化剤として使用される。後者の場合、生成されたCMC中の残留K+イオンは、好ましくは後続の工程でNa+イオンによって交換される。アルカリ化剤の量は、所望の置換度に依存する。好ましくは、セルロースのアルカリ化剤単位と無水グルコース単位との間のモル比は、0.5:1から5:1、より好ましくは0.7:1から3.5:1、最も好ましくは1.0:1から2.6:1である。
【0028】
アルカリ化工程では、単一成分(例えば、セルロース、水、有機溶媒、アルカリ化剤)を任意の順序で添加することができる。しかしながら、セルロースは、第1の工程において水及び1つ以上の有機溶媒と混合され、その後の工程においてアルカリ化剤が添加されることが好ましい。イソプロピルアルコールとメタノールの組合せを有機溶媒として使用する場合、モノハロ酢酸の添加前、同時又は直後にメタノールを反応混合物に添加することができるが、好ましくは水及び/又はイソプロピルアルコールと同時に、別々に又は水及び/又はイソプロピルアルコールとの混合物として添加される。
【0029】
セルロースとアルカリ化剤との接触方法には様々な選択肢がある。好ましくは、セルロース粉末が出発材料として使用される。典型的には、セルロース粉末は、アルカリ化剤が固体又は水溶液として添加される前に、水及び上記の1つ以上の有機溶媒を含む溶媒/水混合物に懸濁される(スラリー化される)。アルカリ金属水酸化物、好ましくはNaOH等のアルカリ化剤を水溶液の総重量に対して35~50重量%の濃度で含む水溶液が好ましい。
【0030】
スラリー法によれば、アルカリ化工程(a)は、典型的には、10~80℃、好ましくは15~40℃、より好ましくは15~30℃、さらにより好ましくは18~25℃、最も好ましくは約20℃の範囲内の温度で行われる。アルカリ化工程の典型的な反応時間は、反応温度に応じて15分~4時間、好ましくは40~120分、より好ましくは50~80分の範囲である。一実施形態において、アルカリ化工程は、約20℃で50~70分間、好ましくは60分間行われる。
【0031】
カルボキシメチル化工程(b)において、モノハロ酢酸又はその塩、好ましくはナトリウム塩は、無希釈で、又は溶液として、好ましくは水溶液として、又は水及びイソプロピルアルコール及び場合によりメタノール中の溶液として添加することができる。モノハロ酢酸は、遊離酸として又はその塩の形態で使用することができる。好ましくは、モノクロロ酢酸又はその塩は、全ての好ましい実施形態を含む本発明の方法において使用される。方法の工程b)で添加されるモノハロ酢酸は、一般的に、セルロースの無水グルコース単位1モル当たり0.4~2.5mol、好ましくは0.5~1.8mol、より好ましくは0.6~1.5molである。工程b)で添加されるモノハロ酢酸又はその塩は、一般的に、工程a)で添加されるアルカリ金属水酸化物等のアルカリ化剤の1mol当たり0.25~0.7mol、好ましくは0.4~0.6mol、より好ましくは0.45~0.55molである。
【0032】
カルボキシメチル化工程は、典型的には、40~100℃、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃、最も好ましくは約70℃の範囲内の温度で行われる。好ましい実施形態では、カルボキシメチル化温度に達する前にモノハロ酢酸は反応混合物に既に添加されており;より好ましくは、モノハロ酢酸は、一般的に、アルカリ化工程について上述した温度、例えば15~40℃で、加熱段階が開始する前又は加熱段階の最初の数分以内に既に添加されている。より低い温度でのモノハロ酢酸の早期添加は、モノハロ酢酸の非存在下でより高い温度で起こり得るセルロースの望ましくない分解(粘度の低下をもたらす)を回避し得る。前述のカルボキシメチル化工程の所望の温度(カルボキシメチル化温度)に達した後、カルボキシメチル化温度は、典型的には0~180分、好ましくは20~140分の期間保持される。
【0033】
工程a)及びb)において、セルロース、有機溶媒、水アルカリ化剤及びモノハロ酢酸の量は、好ましくは上記のように選択される。好ましくは、工程b)の反応混合物中の有機溶媒の総量は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%である。好ましくは、工程b)の反応混合物中の有機溶媒の総量は、反応混合物の総重量に基づいて、最大95重量%、より好ましくは最大90重量%、最も好ましくは最大85重量%である。
【0034】
カルボキシメチル化工程b)で得られた生成物は、どのアルカリ化剤を使用したかに応じて、カルボキシメチルセルロース塩、典型的にはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩又はカリウム塩である。工程b)で得られた反応混合物において、カルボキシメチルセルロース塩の量は、一般的に反応混合物の総重量に基づいて、最大30重量%である。工程b)におけるカルボキシメチルセルロース塩の量は、反応混合物の総重量に基づいて、好ましくは1.5~25重量%、より好ましくは2.5~15重量%、さらにより好ましくは4~12重量%、最も好ましくは5~10重量%の範囲内である。
【0035】
本発明の方法の工程c)によれば、酸を工程b)からの反応混合物に添加して、6~10、好ましくは6~9、より好ましくは6.5~8.5、最も好ましくは7~8、例えば7.2~7.8のpHを有するカルボキシメチルセルロース(CMC)製造し、25℃の温度でCMCを1重量%の濃度で水に溶解する。好ましくは、酢酸又はギ酸等の有機酸、より好ましくは酢酸が添加される。方法の工程c)におけるpH決定のために、CMCを反応混合物から除去し、有機溶媒又は1つ以上の有機溶媒と水との混合物で洗浄する。好ましい有機溶媒は、アルカリ化工程a)の説明において上に列挙したものである。最も好ましい有機溶媒、有機溶媒の混合物、及び有機溶媒と水との混合物は、メタノール、アセトン、メタノール/水混合物、アセトン/メタノール混合物、及びメタノール/イソプロピルアルコール/水混合物である。次いで、CMCを水中1重量%の濃度で溶解し、得られたCMC溶液のpHを25℃で測定する。
【0036】
工程c)における酸添加の間及び/又は後に、反応混合物は、少なくとも800s-1、好ましくは少なくとも1500s-1、より好ましくは少なくとも3000s-1、最も好ましくは少なくとも8000s-1の剪断速度で剪断に供される。剪断速度は、一般的に最大200,000s-1、典型的には最大100,000s-1、より典型的には最大60,000s-1、最も典型的には最大40,000s-1である。上述の剪断速度は、ロータステータミキサー又はホモジナイザーとしても知られる高剪断ミキサー、又は高剪断ポンプなどの高剪断装置で得ることができる。高剪断装置は、一般的に、ステータ又はハウジング等の「固定部」とも呼ばれる剪断装置の固定部分と組み合わせたロータを備える。固定部は、ロータとそれ自体との間に近接隙間ギャップを形成し、このギャップ内の材料のための高剪断ゾーンを形成する。固定部は、一種の剪断周波数及び増加した乱流エネルギーを誘発するために、単一又は複数列の開口部、ギャップ又は歯を含むことができる。
【0037】
混合の程度又は徹底度の1つの測定基準は、高い先端速度を有する混合装置によって生成される剪断力である。流体のある領域が隣接する領域に対して異なる速度で移動すると、流体は剪断を受ける。ロータの先端速度は、以下の式による回転によって生成される運動エネルギーの尺度である:
先端速度=ロータの回転速度×ロータ周長。
【0038】
剪断速度は、一般的にステータ又はハウジングと呼ばれる剪断装置のロータと固定部分との間のギャップ距離の反比例関係に基づく。高剪断装置がステータを備えていない場合、沈殿槽の内壁がステータとして機能する。
剪断速度=先端速度/ロータの外径と固定部との間のギャップ距離。
【0039】
工程c)における上述の剪断は、好ましくは15秒~15分、より好ましくは30秒~5分、最も好ましくは60秒~3分の間行われる。
【0040】
本発明の方法の工程d)において、剪断は、好ましくは少なくとも4m/s、好ましくは少なくとも8m/s、より好ましくは少なくとも12m/sの先端速度で作動する剪断装置内で行われる。先端速度は、一般的に最大50m/s、典型的には最大30m/s、より典型的には最大20m/sである。
【0041】
さらなる剪断は、ロータの外径における流体の先端速度とロータの中心における速度との間の速度差によって引き起こされる。
【0042】
高剪断装置は高剪断ミキサーとも呼ばれ、軸方向放電及び半径方向放電ロータステータミキサー等の様々な形状を包含する(Atiemo-Obeng,V.A.及びCalabrese,R.V.,2004.“Rotor-stator mixing devices” in Handbook of Industrial Mixing:Science and Practice,E.L.Paul,V.A.Atiemo-Obeng and S.M.Kresta,John Wiley&Sons,Hoboken,New Jersey,USA)。高剪断ミキサーには、リング層ミキサー、Ploughshareミキサー、Schugiミキサー、及びTurbulizerミキサーが含まれる。好ましい実施形態では、高剪断ミキサーはリング層ミキサーである。リング層ミキサーは、一般的に、その中に軸方向に配置された混合シャフトを有する水平ドラムを備える。混合シャフトは、そこから突出するブレード、ボルト、及び/又はパドルを有する。混合シャフトの幾何学的形状は、輸送、分散、混合等のための様々な混合ゾーンを形成することができる。混合される反応混合物は、遠心力によって同心円環を形成し、プラグ状の流れでミキサーを通って移動する。適切なリング層ミキサーは、CORIMIX CM 20の商品名で、Loedige(Paderborn、ドイツ)から調達することができる。
【0043】
次いで、CMCを反応混合物から分離し、必要に応じて、意図する最終用途に応じて精製し、乾燥させる。精製は、当技術分野の当業者に周知の標準的な方法に従って行う。例えば、CMCは、メタノール、アセトン、メタノール/水混合物、アセトン/メタノール混合物、及びメタノール/イソプロピルアルコール/水混合物等の有機溶媒の混合物及び溶媒(混合物)/水混合物を含む有機溶媒で洗浄することができる。
【0044】
上記のように、高剪断速度での剪断は、工程c)における酸添加の間、及び/又は後に行うことができる。したがって、工程c)の酸添加の間、その後のCMCの洗浄の間、又は両方の工程の間に、上記のような高速での剪断を行うことができる。最も好ましくは、上記のような高速での剪断は、工程c)における酸添加の間、又は工程c)における酸添加及びその後のCMCの洗浄の両方の工程の間に行われる。
【0045】
本発明の方法に従って調製されたCMCの改善された特性は、その貯蔵安定性の増加である。以下に述べるように、CMCは、低pHであっても経時的に驚くほど低い粘度の低下を示す。
【0046】
したがって、本発明の他の態様は、25℃の温度で水中に1重量%の濃度で溶解した場合に6~10のpHを有し、25℃で1重量%水溶液として測定して8週間の貯蔵後に30%未満、及び12週間の貯蔵後に40%未満の粘度の低下を示す新規なカルボキシメチルセルロースである。本発明のいくつかの実施形態では、CMCの粘度の低下は、25℃の1重量%水溶液として測定して、8週間の貯蔵後に20%未満、及び/又は12週間の貯蔵後に35%未満でもある。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、CMCの粘度の低下は、25℃の1重量%水溶液として測定して、4週間の貯蔵後に10%未満である。本明細書で使用される「貯蔵」という用語は、75%の相対湿度(RH)及び40℃の温度での貯蔵を意味する。貯蔵は、空気中、大気圧で行われる。
【0047】
25℃の温度の水中の新規カルボキシメチルセルロースの1%溶液は、6~10、好ましくは6~9、より好ましくは6.5~8.5、最も好ましくは7~8、例えば7.2~7.8のpHを有する。
【0048】
1重量%のカルボキシメチルセルロースの水溶液のpHは、標準的なシングルロッドpH計を使用して測定することができる。
【0049】
新規なカルボキシメチルセルロースは、好ましくは、25℃で1重量%水溶液として測定される、少なくとも100mPa・s、より好ましくは少なくとも250mPa・s、さらにより好ましくは少なくとも500mPa・s、最も好ましくは少なくとも1000mPa・sの初期粘度を有する。粘度は25℃1重量%の水溶液として測定して、好ましくは最大20,000mPa・s、より好ましくは最大15,000mPa・s、さらにより好ましくは最大10,000mPa・s、最も好ましくは6,000mPa・sである。粘度は、ASTM D 1439-03(再承認2008)に記載されているようにブルックフィールド粘度計を使用して分析する。粘度測定のさらなる詳細は、上記でさらに説明されている。「初期」粘度とは、その製造後1日以内に測定された粘度を意味する。
【0050】
新規のカルボキシメチルセルロースは、一般的に、約0.1~1.6、好ましくは0.15~1.5、例えば0.6~1.2、又はさらには例えば0.7~1.1の置換度(DS)を有する。DSは、さらに上述したように決定することができる。
【0051】
本発明によるCMCは、多くの異なる用途に使用することができる。例えば、増粘剤及び/又はゲル化剤、結合剤、安定剤、乳化剤、皮膜形成剤、懸濁化剤、保護コロイド、又は結晶化防止剤として使用することができる。それらの有益な特性によって、本発明のCMCは、カプセル、錠剤、液剤、懸濁剤、エマルジョン、クリーム及びローション等の医薬剤形において特に有用になっている。本発明のCMCは、ペットフードを含む食品にも有用である。例えば、CMCは、フルーツベースの製品、アイスクリーム又はシャーベット等の冷凍デザート、乳製品等のタンパク質含有製品、又はソーセージ等の加工肉製品の製造に有用である。
【0052】
以下の実施例は、説明の目的のためにのみ提供されるものであり、決して以下の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。特に明記しない限り、全ての部及び百分率は、重量による。
【実施例】
【0053】
pH測定:方法の工程c)において、工程b)からの反応混合物に酸を添加して、25℃の温度で1重量%の濃度で水に溶解した際に6~10のpHを有するカルボキシメチルセルロースを製造する。実施例1及び比較例Aでは、利用される酸は酢酸である。酸添加後、固体カルボキシメチルセルロースを反応混合物から回収し、メタノールで洗浄し、1重量%の濃度で水に溶解する。得られた溶液のpHを25℃の温度で測定する。
【0054】
粘度:カルボキシメチルセルロースの粘度を決定するために、1重量水溶液を、一般的な説明において上述したように調製することができる。1重量カルボキシメチルセルロースの水溶液を、25℃(+/-0.1℃)でブルックフィールド粘度計(LVT)を使用して分析する。30rpmの回転速度を選択する。1000~4000mPa・sの範囲の粘度については、スピンドルNo.3が選択され;4000~1万mPa・sの範囲の粘度については、スピンドルNo.4が選択される。
【0055】
粘度低下:経時的なCMCの粘度の減少を決定するために、製造されたCMC粉末10gを100ml容器に入れる。容器は、CMCの各部分が温度及びRHに等しく曝露されるように、相対湿度(RH)75%、温度40℃の大気圧の空気中の気候室に貯蔵される。
【0056】
カルボキシメチルセルロースの置換度(DS)は、一般的な説明において上述したようにして決定することができる。
【0057】
実施例1
適用したセルロースパルプの乾燥含量は94.03%、固有粘度は1600mL/gであった。適用前に、400ミクロンのConidurスクリーンを使用してカッティングミルで粉砕した。
【0058】
粉砕セルロース(0.8mol、atro)を、イソプロパノール(88.3重量%)、メタノール(4.7重量%)及び水(7.0重量%)の混合物1.96kgと共に乾燥実験室反応器(3L)中で懸濁した。スラリー(パルプ、イソプロパノール、メタノール及び水の合計)中のセルロース量は6.5重量%であった。スラリー中の全含水量について、適用されたパルプ及び苛性物質中の水量も考慮した。容器を窒素で3回不活性化し(毎回約250mbarの真空を適用)、合成全体の間、一定の低窒素ガス流でパージした。撹拌機を開始し、NaOH(2.2mol/mol無水グルコース単位(AGU))を添加した。その後、20℃で60分間のアルカリ化を行った。クロロ酢酸(1.1mol/molAGU)を添加し、混合物を40分で70℃に加熱した。エーテル化を70℃で120分間行い、混合物を約40分で20℃に冷却した。
【0059】
カルボキシメチルセルロースのpHを25℃で1重量%水溶液として決定し、反応混合物に酢酸を添加することによって約7.5に調整した。酢酸の添加時に、Ultra-Turrax高剪断ミキサーを用いて、反応混合物を18840s-1の剪断速度で2分間高剪断処理に供した。
【0060】
懸濁液を濾過した。濾液中に塩化物がもはや検出されなくなるまで、固体残渣をメタノール/イソプロパノール/水(50/30/20体積%)の混合物で洗浄した。後者の試験は、AgNO3を試料に添加することによって行ったが、塩化物は不溶性白色AgClを形成する。一般的に、原料生成物は、塩化物を含まなくなるように2Lの混合物で5回洗浄しなければならなかった。最後に、生成物を純メタノール(2L)で洗浄し、空気掃気乾燥キャビネット中55℃で一晩乾燥させ、実験室用ミキサーで粉砕した。
【0061】
比較例A
実施例1に記載の高剪断処理を実施しなかったことを除いて、比較例Aを上記の実施例1について記載したように調製した。
【0062】
実施例1及び比較例AのCMCを上記のように分析した。これらの特性を、下記の表1に列記する。長期間にわたる粘度を測定し、これらの期間にわたる粘度低下を計算した。結果を下記表2に示す。
【0063】
【0064】
【国際調査報告】