(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】追加の参照測定を有する電気化学測定
(51)【国際特許分類】
G01N 27/27 20060101AFI20240125BHJP
G01N 27/333 20060101ALI20240125BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240125BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240125BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20240125BHJP
G01N 5/02 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
G01N27/27 C
G01N27/333
G01N27/416 351B
G01N27/416 353
G01N33/483 F
G01N33/49 Z
G01N5/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546236
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2022052010
(87)【国際公開番号】W WO2022162126
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ケーア,トマス
(72)【発明者】
【氏名】サアアンスン,ポウル・ラウン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045CA25
2G045DB03
2G045DB09
2G045DB10
2G045FB05
2G045JA07
(57)【要約】
例えば液体全血試料であるような試料(102)中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するための方法が提供され、前記の方法は、試料中の参照イオンの濃度を示すパラメーターを参照イオン測定設定(104)を用いて測定すること(ここで、参照イオン測定設定(104)は、電気分析測定設定とは異なる)、分析物イオン測定設定(105)を用いて1以上の場合により固体の作用電極のそれぞれの間で分析物イオンに選択的であるイオン選択性電極を含む前記の場合により固体の作用電極および参照イオンに選択的である場合により固体の参照電極のそれぞれの間で直接または間接的に1以上の電位差を測定することを含み、ここで、分析物イオン測定設定は、電気分析的設定である。加えて、装置(100)および前記の装置の使用が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が液体全血試料であるような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定する方法であって、前記の方法が以下の工程を含み:
-参照イオン測定設定を用いて、試料中の参照イオンの濃度を示すパラメーターを測定すること、ここで、該参照イオン測定設定は、電気分析的測定設定とは異なる、そして
-分析物イオン測定設定を用いて、試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を以下の間で直接的または間接的に測定すること:
i.1以上の作用電極の各々であって、分析物イオンに関して選択的であるイオン選択性電極を含む、1以上の作用電極の各々、および
ii.参照イオンに関して選択的である参照電極、
分析物イオン測定設定が電位差測定設定のような電気分析設定である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該1以上の作用電極の各々が固体電極であり、かつ/または該参照電極が固体参照電極である、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、以下:
i. 参照イオンの濃度、および
ii. 1以上の電位差
に基づいて試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定することを含む、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法であって、該1以上の電位差が該試料中の該参照イオン濃度に依存する、方法。
【請求項5】
請求項3および4に記載の方法であって、該試料中の該1以上の分析物イオンの該1以上の濃度を決定することが、該1以上の電位差の該試料中の該参照イオン濃度に対する依存性を反映する、および/または組み込む発現に基づく、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法であって、該試料が液体全血試料である、方法。
【請求項7】
請求項11~17のいずれかに記載の装置のような装置の試料入口で試料を吸引することのような該試料を吸引することを含み、それによって該試料の吸引された部分を生成し、該参照イオン測定設定を用いた測定および該分析物イオン測定設定を用いた測定の各々が該試料の該吸引された部分上で行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法であって、該参照イオン測定設定を用いて該試料中の該参照イオンの濃度を測定することが、光学測定を含む、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法であって、該参照イオンが、水素イオン、例えばH
+、ナトリウムイオン、例えばNa
+、またはカリウムイオン、例えばK
+である、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、該光学測定がpHに依存する光学パラメーターP
oを測定することを含み、pHの変化dpHを伴う光学パラメーターの変化dP
o、dP
o/dpHが[7;8]のpH間隔内、例えばpH間隔[7.2、7.6]内、例えば7.4においてまたは約7.4において局所的および/または全体的な最大値を有する、方法。
【請求項11】
液体全血試料である試料のような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するための装置であって、以下:
-参照イオンの濃度を示すパラメーターを測定するために配置された参照イオン測定設定であって、電気分析的測定設定とは異なる参照イオン設定、および
-以下を含む分析物イオン測定設定:
i.1以上の、場合により固体の、作用電極であって、前記場合により固体の、作用電極のそれぞれは、分析物イオンに選択的である、イオン選択性電極を含む、場合により固体の、作用電極、および
ii.参照イオンに関して選択的で、場合により固体の、イオン選択性電極を含む参照電極、
ここで、該分析物イオン測定設定は電位差測定設定のような電気分析設定であり、
かつここで、該分析物イオン測定設定は、以下の間で1以上の電位差を直接的または間接的に測定するために配置されている:
v.該1以上の作用電極の各々、および
vi.該参照電極;
を含む、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、該参照イオン測定設定が光学センサーを含む、装置。
【請求項13】
請求項11~12のいずれかに記載の装置であって、さらに以下:
-以下のために構成されたプロセッサを含むデータ処理デバイス:
i.該試料中の該1以上の分析物イオンの1以上の濃度を以下に基づいて決定する:
1.参照イオンの濃度、および
2.1以上の電位差
を含む、装置。
【請求項14】
請求項11~13のいずれかに記載の装置であって、さらに以下:
-以下を含む試料取扱いシステム:
○試料入口であって、例えば吸引システムを含む、試料入口、
○測定チャンバーであって、例えば、参照イオン測定設定および分析物イオン測定設定の両方が、測定チャンバー中にある間の試料上での測定のために配置される、測定チャンバー、
○試料入口および測定チャンバーを流体的に接続する1以上の流体チャネル、例えばマイクロ流体チャネル、
を含む、装置。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項に記載の装置であって、一価イオンである該分析物イオンに関して、正確度が20%未満、例えば15%未満、例えば10%未満、例えば7%未満、例えば5.4%未満、例えば5%未満、例えば3.5%未満、例えば2.7%未満である、装置。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか1項に記載の装置であって、該装置、例えば該装置全体が、それぞれ一価イオンである該1以上の分析物イオンに関して、1以上の真の濃度に関して20%未満、例えば15%未満、例えば10%未満、例えば7%未満、例えば5.4%未満、例えば5%未満、例えば3.5%未満、例えば2.7%未満である正確度で該1以上の電位差に基づいて試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定することを可能にする、装置。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか1項に記載の装置であって、以下:
-1以上の作用電極の各々、および
-該参照電極
の間の距離が10mm以下、例えば5mm以下、例えば3mm以下、例えば1mm以下、例えば1mm以下である、装置。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか1項に記載の装置であって、前記装置が、液体全血試料である該試料のような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するために使用されている、装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の分析物イオンの濃度を示すパラメーターを測定する方法に関し、より詳細には、試料が液体全血試料であるような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するための方法に関し、さらに、対応する装置およびそのような装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、試料が液体全血試料であるような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を決定することができることは、多数の理由のために有利であるが、そうすることは、高価で複雑かつ/または不正確な装置を含む可能性があり、それは、大きな試料体積を必要とする可能性もあり、それはさらに、限られた耐用年数を有する、かつ/または故障しやすい可能性もある。
【0003】
従って、試料が液体全血試料であるような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定する向上した方法およびそのための装置、特に、より費用効率が高く、より単純で、より正確で、より少ない試料体積での作業を可能にし、さらに、より耐久性があり、かつ/または故障しにくい向上した方法および装置に関する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、試料が液体全血試料であるような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するための既知の方法および装置の欠点の少なくとも一部を克服する向上した方法および装置を提供することである。加えて、またはあるいは、既知の方法および装置の代替を提供することが、本発明の目的である。
【0005】
第1側面によれば、本発明は、試料が液体全血試料であるような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定し、場合によりさらに1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定する方法を提供し、前記の方法は、以下の工程を含む:
-場合により第2側面に従う装置を提供すること、
-参照イオン測定設定を用いて、試料中の参照イオンの濃度を示すパラメーターを測定すること、ここで、参照イオン測定設定(104)は、電気分析的測定設定とは異なり、場合によりさらに、参照イオン濃度を決定し、そして
-分析物イオン測定設定を用いて、試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を以下の間で直接的または間接的に測定すること:
i.1以上の作用電極の各々、例えば1以上の固体作用電極であって前記の作用電極の各々が分析物イオンに関して選択的であるイオン選択性電極を含む固体作用電極、および
ii.参照イオンに関して選択的である固体参照電極のような参照電極、
ここで、分析物イオン測定設定は、電位差測定設定のような電気分析設定であり、かつ
-場合により、1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定する。
【0006】
本発明の可能性のある利点は、参照イオン測定設定が既知のまたは予測可能に変動する電位の参照電極の必要性を省くこと、例えば安定した電位を有する参照の必要性を省くことまたは条件によって変動する電位を有する参照に関する条件を知るもしくは予測することができる必要性を省くことを可能にすることであり、それは今度はより費用効率の高い、より単純な、および/またはより正確な方法の1つ以上をもたらす可能性があり、それはさらにより耐久性があり、かつ/または故障しにくく、かつ/またはより少ない試料体積で作業できる可能性がある。
【0007】
本発明の要旨は、一定の、既知のまたは予測可能に変動する電位を提供することが、有利には、参照イオンの濃度の測定に置き換えられる可能性があることを認識することと見なされることができ、それは、(例えば、電極が一定の電位を維持することを必要としないことによって)参照電極の要求、および/または(例えば、測定溶液の参照イオンの濃度のようなパラメーターが既知であることまたは予測可能であることを必要としないことによって)液体全血のような測定溶液の要求を減少させるであろう。
【0008】
例えば、標準水素電極(SHE)のような水性電極による名目上既知の電位の参照電極に頼る代わりに、pH感応性固体電極のような固体イオン選択性電極を参照として有する(さらに、pHを測定するための参照測定設定を有する)ことが可能であり得る。水性参照電極は、状況に左右され(circumstantial)、高価で、(例えば液-液接合および別個の電解質溶液チャンバーにより)場所を取る可能性があり、電解質チャンバーから試料および/またはすすぎ溶液へのイオンの損失により限られた耐用年数を有する可能性がある。さらに、イオン損失自体が、試料および/またはすすぎ溶液の汚染の問題を引き起こす可能性があり、それは、測定誤差および正確性の喪失を導入する可能性がある。水性参照電極のイオン漏れは、作用電極および参照電極の間に大きな距離を必要とさせる可能性があり、それは転じて、サイズを増大させ、より大きな試料体積を必要とさせる可能性がある(ここで、新生児および/または集中治療患者に関するような特定のケースにおいて、大きな体積は全血試料にとって特に不利である可能性がある)。
【0009】
別の例として、条件によって変動する参照電極に頼る代わりに、さらに測定条件を知ることまたは予測することに頼る代わりに、pH感応性固体電極のようなイオン選択性電極を参照として有し、例えばpHを測定するための設定を介するなどして参照イオン濃度を測定することが可能である可能性がある。参照イオン濃度を測定することの利点は、それが分析物イオンの濃度の決定の正確度の増大を可能にすることである可能性があり、ここで、分析物イオンの濃度の決定の正確度の増大は、測定が仮定または予測よりも正確であることによる参照イオンの濃度の正確度の増大からもたらされる。加えて、参照イオンの濃度などの条件が既知ではないかまたは予測不可能な適用に方法の使用可能性を拡大することは、参照イオン濃度を測定する利点であると考えられ得る。例えば、特定の参照イオンの既知の一定濃度に頼る場合、または特定の参照イオンの濃度が予測可能な様式で挙動する状況に頼る場合、参照イオンの選択は、濃度が既知で一定であるかまたは予測可能な様式で挙動する参照イオン(候補)に限定される。これは、(参照)イオン濃度が個体間で(例えば異なるヒトに関して)真に一定でないこと、および/またはこのように適用可能な参照イオンおよび最適イオン選択参照電極の間に重複がない可能性があること(換言すれば、最適参照電極が特異的である参照イオンの濃度が既知でなく一定でないかまたは予測可能でないため、最適未満の参照電極を採用する必要がある可能性があること)を含むいくつかの理由で不利である可能性がある。対照的に、本発明による態様において、参照イオンは、例えば最適な参照(イオン特異的)電極に従って自由に選択されることができる。これは、今度は参照イオン測定設定の正確度に利益をもたらす可能性があり、それは今度は分析物イオン濃度の決定に関する全体的な正確度に利益をもたらす可能性がある。
【0010】
’1以上の電位差を測定すること’とは、当該技術分野で一般的であるように(ここで、電位差は電気的な電位差である)、例えば直流電圧のような1以上の電圧を測定などと理解されるべきである。そのような電位差の測定は、例えば電位差測定によって行われることができる。複数の電位差の場合、各電位差は、参照電極および(それぞれの)作用電極の間で測定されるべきであることであると理解される。
【0011】
’試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示すこと’とは、測定された電位差がそれぞれ試料中のイオンまたはイオンの群の濃度を示すように方法が構成されることであると理解され得る。
【0012】
’濃度を示す’とは、一般に、それによって濃度が決定され得ることであると理解され得る。例えば、電位差-それ自体は濃度ではない-が測定され、それは、濃度を決定することを可能にする。濃度を決定することは、定性的に分析物の存在(あり/なし)を検出すること、例えば検出限界を超える濃度、および定量的に濃度を決定すること、例えば順序、間隔、または比率タイプの尺度の両方であると理解されることができる。
【0013】
’参照イオン’とは、前記の(参照)イオンに関して選択的な(参照)電極が参照電極、例えば電位差測定設定における参照電極として使用できるという意味で参照イオンとして適用可能である、全血中に天然に存在する可能性のある、あらゆるイオンであると理解される。参照イオンは、例えば水素イオン(H+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、塩化物イオン(Cl-)、マグネシウムイオン(Mg2+)、または重炭酸イオンもしくは炭酸水素イオン(HCO3
-)のいずれかであり得る。
【0014】
’参照イオン測定設定’とは、参照イオンの濃度を示すパラメーター(ここで、一般に、参照イオンは、単一の特定の参照イオン、または参照イオンの群であると理解され得る)を決定することができるあらゆる設定、例えば、例えば全血試料のような試料を光学的に探査し、参照イオン濃度を示すその光学パラメーターを決定するために配置された設定であると理解される。
【0015】
参照イオン測定設定は、単一のイオンまたはイオンの群に関して選択的であり得る。
参照イオン測定設定は、1以上の干渉イオンに対してある程度(交差)選択的である。しかし、参照イオン測定設定は、別のイオンまたはイオンの群と比較して、あるイオンまたはイオンの群に対してより選択的であると理解され得る(例えば干渉イオンの選択性係数が1.0未満、例えば0.9未満、例えば0.5未満、例えば0.1未満、例えば0.07未満、例えば0.05未満、例えば0.03未満、例えば0.02未満、例えば0.01未満)。
【0016】
例えば、交差選択性を考慮する必要性を完全に省くことを可能にするため、交差選択性が無視できるかゼロであることが一般に有利であり得る。交差選択性がゼロでない、例えば無視できない場合、例えば交差選択性が十分に低い場合(例えば干渉イオンの選択性係数が1.0未満である場合)、補正を行い、交差選択性を考慮に入れることがなお可能である可能性があり、なお測定を利用できる可能性があるため、交差選択性がある閾値未満である、例えば干渉イオンの選択性係数が1.0未満、例えば0.9未満、例えば0.5未満、例えば0.1未満、例えば0.07未満、例えば0.05未満、例えば0.03未満、例えば0.02未満、例えば0.01未満である場合もなお有利であり得る。
【0017】
一態様によれば、参照イオンは、単一の特定のイオンまたはイオンの群であり、参照イオン測定設定または参照電極のいずれにおいても実質的に交差選択性はない。
別の態様によれば、参照イオンは、単一の、特異的なイオンまたはイオンの群であり、参照イオン測定設定および/または参照電極に交差選択性があり、各交差選択性は、例えば1以上の干渉種のそれぞれの濃度を測定および/または推定し、これらの1以上の濃度を考慮することによって説明される。
【0018】
’電気分析測定設定’は、当該技術分野において一般的であるように理解され、例えば電気分析法の設定であり、例えばここで、’電気分析法’は、化学分析のための方法、例えば電解法によって液体試料中の参照イオンおよび/または分析物イオンの濃度を示すパラメーターを決定することを可能にする方法であり、ここで、’電解法’は、当該技術分野において一般的であるように理解され、例えば、電位の印加および/または電解質を通る電流の通過によって化学変化を生じさせるための方法である。より詳細には、電気分析法は、分析物イオンおよび/または参照イオンを含有する電気化学セル中の電位(ボルト)および/または電流(アンペア)を測定することにより分析物イオンおよび/または参照イオンの濃度を示すパラメーターを決定することが理解される。電気分析法は、電極と呼ばれる電気伝導性プローブを使用して、分析物溶液と電気的に接触させる。電極は、溶液のパラメーターを測定するために、それらが取り付けられた電気または電子デバイスと合わせて使用される。測定されるパラメーターは、分析物イオンもしくは参照イオンの同一性、および/または溶液中の分析物イオンもしくは参照イオンの量に関連する。電気分析法は、電位差測定、電流測定、電気伝導法、電解重量分析、ボルタンメトリー(およびポーラログラフィー)およびクーロメトリーを含む。
【0019】
’参照イオン測定設定が電気分析測定設定と異なる’とは、参照イオン測定設定が存在し、方法に適用されるが、電気分析測定設定の群に関して異なる測定設定の群に属することが理解される。この利点は、電気分析測定設定が一般的に参照電極を必要とする一方で、その必要性が電気分析測定設定とは異なる測定設定に関しては省かれることができることで有り得る。加えて、一度試料中の参照イオンの濃度を示すパラメーターが決定されたら、その後は、予め決定された既知の電位を有する参照電極を必要とすることなく試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示すパラメーター、すなわち電位差を決定する目的のために電気分析法(例えば電位差測定)の利点から利益を得ることが可能になる。
【0020】
一部の態様において、参照イオン測定設定は、光学パラメーター(例えば光、例えば蛍光、化学発光、屈折率または吸収で調べられる試料の放出光および/または光学特性)、質量パラメーター(例えば水晶振動子マイクロバランス(QCM))、磁場パラメーター(例えば標識された磁性ナノ粒子と合わせたホールセンサーによる)、応力パラメーター(例えばマイクロカンチレバーを用いる)または散逸パラメーター(例えば散逸モードを有する水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)による)の測定に頼る測定設定の群から選択される。
【0021】
例えば、参照イオン設定は、全血試料のような試料の参照イオン濃度を光学pHセンサーのような試料の光学プロービングによって決定するための設定であり得る。’光学プロービング’は、当技術分野で一般的であるように理解され、例えば試料の少なくとも一部に光を照射することおよびそこからの(発)光の少なくとも一部を受け取ることに関し、ここで、受け取られた光は、その中の分析物(例えば参照イオン)に関する情報(例えば濃度)を導出することを可能にする。別の例では、参照イオン測定設定は、機械的特性(例えば散逸)および/または質量の測定に基づく設定、例えば、質量および/もしくは散逸を測定する散逸測定能力を有する水晶振動子マイクロバランスセンサー(QCM-D)を用いる設定、またはマイクロカンチレバーを用いた質量(動的モードにおける)および/もしくは応力(静的モードにおける)の測定、またはホールセンサーを用いた標識磁性粒子の磁場の測定のような磁気パラメーターの測定に基づく設定で有り得る。参照イオンによって誘導される高分子におけるコンフォメーション変化のような作用または参照イオンによって影響を受ける表面からの比較的重い分子の吸着速度もしくは脱離速度のような作用が測定され、そこから参照イオンの濃度の間接的な尺度が得られることが包含されるため、参照イオンの濃度を示すパラメーターが直接または間接的に測定され得ることが包含される。
【0022】
一般に、本出願全体を通して’視覚性の’、’光学的な’等と言及する場合、380nm~750nmの範囲内の波長(単数または複数)を有する光のような電磁放射を参照して行われると一般に理解され得る。
【0023】
一部の態様において、参照イオン測定設定は、電気分析技法とは異なる測定原理に頼る設定であり、例えば、前記の異なる測定原理は、電気分析技法(例えば電位差測定、クーロメトリー、ボルタンメトリー)で測定可能な作用(例えば電位または電流)とは別の作用(例えば光学的特性、機械的特性または質量の変化)に頼る。これの可能性のある利点は、例えばクロノポテンショメトリーのリスクで有り得る赤血球からイオンを抽出するリスクのような試料を損傷するリスクを低減または排除することで有り得る。別の可能性のある利点は、既知の電位の参照電極の必要性を省くことである。
【0024】
’参照イオン測定設定を使用して試料中の参照イオンの濃度を示すパラメーターを測定すること’とは、参照イオン測定設定によってパラメーターが決定され、そのパラメーターが試料中の参照イオンの濃度を決定することを可能にすることと理解され、例えばここで前記のパラメーターは特定の波長内の(発)光の強度である。
【0025】
’1以上の電位差を直接または間接的に測定すること’とは、各電位差が、作用電極および参照電極の間で(場合により高インピーダンスの)電圧計を介してなど、作用電極および参照電極の間で直接のように、2点間で直接決定され得るか、または間接的に、例えば作用電極および参照電極の間の電位差のそれぞれが第3の電極に関して測定され、作用電極および参照電極の間の電位差がその後に決定され、従って間接的に(のみ)測定されることと理解され得る。
【0026】
’作用電極’は、当該技術分野において一般的であるように理解され、例えば、分析物イオンが反応することができ、そこでこの反応が測定されることができる電極である。
’イオン選択性電極’(ISE)は、当該技術分野で一般的であるように理解される。ISEは、単一のイオンまたはイオンの群に対して選択的であることができる。より詳細には、ISEは、他のイオンの存在下での特定のイオンの活性の電位差決定を可能にする電気化学センサーまたは電極である。ISEは、選択されたイオンのみ(以下で記載されるように可能性のあるいくらかの交差選択性を考慮する)の導電性内部電極への通過を可能にするイオン選択性膜を含み得る。ISEは、1以上の干渉イオンに対していくらか(交差)選択的である電極を包含する可能性がある。しかし、ISEは、別のイオンまたはイオンの群と比較して、あるイオンまたはイオンの群に対してより選択的であると理解され得る(例えば干渉イオンの選択性係数が1.0未満、例えば0.9未満、例えば0.5未満、例えば0.1未満、例えば0.07未満、例えば0.05未満、例えば0.03未満、例えば0.02未満、例えば0.01未満)。
【0027】
’膜’は、完全にまたは部分的に固体であるが、可塑剤を含有することもでき(例えばここで、残りの部分が部分的にまたは完全に液体である)、例えば少なくとも20体積/体積パーセント(v/v%)の固形物を含み、例えば少なくとも40v/v%の固形物を含み、例えば少なくとも60v/v%の固形物を含み、例えば少なくとも80v/v%の固形物を含み、例えば少なくとも90v/v%の固形物を含み、例えば少なくとも95v/v%の固形物を含み、例えば少なくとも99v/v%の固形物を含み、例えば完全に固体である。
【0028】
’参照電極’は、当該技術分野において一般的であるように理解され、例えば1以上の作用電極のそれぞれに関する電位差の測定のための基準点として使用されることができる電極である。
【0029】
参照電極は、1以上の干渉イオンに対して多少(交差)選択的であることができる。しかし、参照電極は、別のイオンまたはイオンの群と比較して、あるイオンまたはイオンの群に対してより選択的であると理解されることができる(例えば干渉イオンの選択性係数が1.0未満、例えば0.9未満、例えば0.5未満、例えば0.1未満、例えば0.07未満、例えば0.05未満、例えば0.03未満、例えば0.02未満、例えば0.01未満)。
【0030】
’分析物イオン’とは、その濃度に関心があり、かつ/または決定されるべきイオンであると理解され得る。
一部の態様によれば、1以上の作用電極のそれぞれが固体(イオン選択性、作用)電極であり、かつ/または参照電極が固体(イオン選択性、参照)電極である方法が提供される。’固体’電極は、当該技術分野において一般的であるように理解される。より詳細には、固体イオン選択性電極により、イオン選択性膜および導電性内部電極を含むイオン選択性電極であって、膜および導電性内部電極の間、例えば導電性内部電極に面する膜の側および膜に面する導電性内部電極の側の間に液体がほとんど存在しないかまたは全く存在しないものが理解される。’ほとんどない’液体により、膜の体積の10倍未満、例えば膜の体積の5倍未満、例えば膜の体積の2倍未満、例えば膜の体積未満、例えば膜の体積の0.5倍未満、例えば膜の体積の0.1倍未満、例えば膜の体積の0.01倍未満である液体の体積が理解され得る。加えて、またはあるいは、導電性内部電極は、導電性内部電極から膜の反対側までの距離の百分率が導電性、内部電極から膜までの距離が90%未満、例えば75%未満、例えば50%未満、例えば25%未満、例えば10%未満、例えば5%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.1%未満であることによって与えられるように、膜と接触しているか、または膜に近接していることが理解され得る。加えて、またはあるいは、導電性内部電極は、導電性内部電極および試料の間の距離が1mm未満、例えば0.75mm未満、例えば0.5mm未満、例えば0.25mm未満、例えば0.1mm未満、例えば0.03mm未満、例えば0.01mm未満、例えば0.003mm未満であるように試料に近接または接近することを可能にするように配置されることが理解され得る。
【0031】
’導電性内部電極’とは、電気化学反応が起こる固体の子部品であって、導電性であり、(高インピーダンスの)電圧計のような分析装置に結合されているものと理解され得る。従って、(電気的に)導電性の内部電極は、固体電極の一部を形成すると理解される。導電性電極は、1以上の異なる材料を含むことができ、ここで、異なる材料の1以上は、非固体物質、例えば液体を含む可能性があり、かつ/または液体の取り込みを受けやすい可能性があり、例えばここで、導電性内部電極は、固体材料を含むマトリックスを形成する。導電性内部電極は、完全にまたは部分的に固体であり(例えばここで、残りの部分は部分的にまたは完全に液体である)、例えば少なくとも50v/v%の固体物質を含み、例えば少なくとも60v/v%の固体物質を含み、例えば少なくとも70v/v%の固体物質を含み、例えば少なくとも80v/v%の固体物質を含み、例えば少なくとも90v/v%の固体物質を含み、例えば少なくとも95v/v%の固体物質を含み、例えば少なくとも99v/v%の固体物質を含み、例えば完全に固体である。
【0032】
一態様によれば、1以上の作用電極の各々が固体電極であり、かつここで参照電極が固体参照電極である方法が、提供される。これの可能性のある利点は、非固体(水性または液体-液体)電極に関係する欠点、例えば大きいサイズ、大きいコスト、電解質が汚染または消費されること、脆弱性および/または誤った測定、例えば電解質漏れ(水性、液体-液体電極から)によるものおよび測定値(作用電極における)に影響を及ぼすことに関係する欠点が克服されることであり得る。
【0033】
一態様によれば、以下に基づいて、試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定することを含む方法が提供される:
i. 参照イオンの濃度、および
ii. 1以上の電位差。
【0034】
これの利点は、1以上の分析物イオンの1以上の濃度が決定されること、および/または前記の決定(単数または複数)が(参照イオン測定設定で決定されるような)参照イオンの濃度が考慮されることによって(より)高い正確度で行われ得ることであり得、例えば、参照イオンの仮定-および可能な探索(例えばある量の参照イオンの添加による)-濃度に頼るだけではない。分析物イオンの濃度の決定は、濃度を計算することによって、例えばNernst方程式を利用することによって行われることができる。
【0035】
試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定する目的のために、以下のフレームワークに頼ることができる。
ネルンスト方程式は、分析物イオンの電位および濃度の間の関係を与える:
【0036】
【0037】
ここで、N_facは、半電池の傾き(ネルンスト係数)であり、例えばここで、X=cH+、cK+、cNa+、cCa++またはcCl-(ここで’c’は’の濃度’を示す)である。以下において“+”および“-”は省略されることができ、例えば、cKはcK+、すなわちカリウムイオンの濃度を意味し;ここで元素、例えばKは接頭辞cを有さず、それは単にパラメーターK(カリウム)である。試料間の差異により、E0が除去される。
【0038】
pHの例に関して:
【0039】
【0040】
であり、ここで、試料1に関してcH1=cH(すなわち、水素イオンH+の濃度)、試料2に関してcH2=cHである。
電解質に関しても同じ方法で、例えば、cKに関して:
【0041】
【0042】
である。
N_fac(pH)=パラメーターpHに関するNernst係数、および同様に、N_fac(X):Xパラメーターに関するNernst係数(ここで、Xは電解質を表す)に関して、方程式を展開することができる。これらの方程式は、試料中の分析物の濃度の計算によってそれぞれ補正電位(下記参照)の計算によって使用されるべきである。
【0043】
N_fac(X)に関する式の導出:試料1~試料2の間、参照としてpHを用いる:
【0044】
【0045】
それは、次の式に再定式化されることができる:
【0046】
【0047】
N_fac(X)の計算によって、N_fac(pH)の値は、例えば、(例えば、電極の半電池の勾配に関する事前知識に基づいて)57mVと推定されることができる。場合により最適な較正溶液のセット(“最高”)、例えば同じまたはほぼ同じpH値を有する溶液が、以下の式を有するN_fac(pH)を得るために使用されることができる:
【0048】
【0049】
“最高”は、場合により最適な溶液のセット、例えば同じ、ほぼ同じpH値を有する2つの溶液に関するN_fac(X)を指す可能性があり、ここで、n_Fac(pH)に関して、その2つの値の平均値が計算され、さらなる計算に使用される。
【0050】
(未知の)試料に関するpHは未知であり、較正溶液に関して異なる可能性があるため、このpH差は、電圧(ミリボルト(mV)値)になるように計算されなければならず、それは、異なる電解質濃度の計算によって減算される。例えば補正電位Pot.corrの計算に関する適用可能な式は、次の式である:
【0051】
【0052】
新しい電位が、、その分析物イオンの濃度が決定されるべき例に関して計算されることができ、ここで、’cal1’は較正液体であり、’sample’は未知の試料である:
【0053】
【0054】
電解質濃度(mM)は、次のように計算されることができる:
【0055】
【0056】
一態様によれば、1以上の電位差が試料中の参照イオン濃度に依存する方法が提供される。従って、1以上の電位差は、例えば既知のまたは予測可能に変動する電位の参照電極の必要性を省くことを介して、試料中のイオン濃度に依存し得ることが理解され得る。利点は、この必要性が省かれることができることであり得る。
【0057】
一態様によれば、試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定することが試料中の参照イオン濃度に対する1以上の電位差の依存性を反映する、および/または組み込む式(expression)に基づく方法が、提供される。例えば、参照イオン濃度は、上記の式に記載されるように1以上の電位差に影響を及ぼす可能性があり、1以上の電位差のこの同じ依存性は電解質濃度に関する式(例えば’cXsample’を表す上記の最後の式を参照)に組み込まれることができる。言い換えれば、参照イオン濃度は、特定の方法で(例えば対数項により)1以上の電位差に影響を与えることができるが、1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定するための式では、この依存性は、同じ方法で、例えば試料中の分析物イオンの(決定された)1以上の濃度に対する参照イオン濃度の作用を低減、最小化または排除して、少なくとも部分的に、例えば部分的にまたは完全に考慮される。’反映することおよび/または組み込むこと’とは、1以上の電位差に対する参照イオン濃度の作用(を表わす表現)におけるように、同じまたは同様の用語(作用を打ち消すための負または逆の用語であることができる)が前記の表現に含まれることと理解され得る。
【0058】
一態様によれば、試料が液体全血試料である方法が提供される。試料が全血試料であることの可能性のある利点は、それが血漿または血清を提供するなど(元の)全血試料の画分を分離する必要性を省くことであり得る。“全血”という用語は、ヒトまたは動物からの(から場合により採取された)天然に存在する部分が除去されていない血液(例えば処理されていない血液)など、当技術分野で一般的であるように理解される。より詳細には、全血は、血漿および細胞性構成要素で構成される血液を指し得る。血漿は体積の約50%~60%を占め、細胞性構成要素は体積の約40%~50%を占める。細胞性構成要素は、赤血球(erythrocytes)(赤血球(red blood cells))、白血球(leucocytes)(白血球(white blood cells))、および血小板(thrombocytes)(血小板(platelets))である。好ましくは、“全血”という用語は、ヒト対象の全血を指すが、動物の全血も指し得る。用語“血漿(blood plasma)”または“血漿(plasma)”は、血液およびリンパ液の液体部分を指し、それは、血液の体積の約半分(例えば体積で約50%~60%)を構成する。血漿は細胞を欠いている。それは、全ての凝固因子、特にフィブリノーゲンを含有し、約90体積%~95体積%の水を含む。血漿構成要素は、電解質、脂質代謝物質、マーカー、例えば感染症または腫瘍に関するマーカー、酵素、基質、タンパク質およびさらなる分子構成要素を含む。
【0059】
一態様によれば、第2側面による装置のような装置の試料入口で試料を吸引することのような、試料を吸引することを含む方法が提供され、それによって試料の吸引された部分を生成する。これの可能性のある利点は、試料の制御された部分が吸引されることができる、例えば吸引および分析されることができることであり得る。さらなる態様において、参照イオン測定設定での測定および分析物イオン測定設定での測定のそれぞれは、試料の吸引された部分に対して行われる。これの可能性のある利点は、試料の(同じ)吸引された部分が両方のタイプの分析に供され、従って(下位)試料部分間の差異のリスクが低減または排除され得ることであり得る。
【0060】
一態様によれば、参照イオン測定設定が光学的に測定可能なパラメーター、例えば参照イオン感受性指標(参照イオンの濃度に応じて、1つ以上の光学特性、例えば吸収(例えば]400;1200[nmの波長領域において、例えば]500;1100[nmの波長領域において、例えば]600;1000[nmの波長領域において、例えば]700;900[nmの波長領域において)を変化させる)、例えばpH感受性発光指標に基づく測定原理に基づいており、分析物イオン測定設定の測定原理が電位差測定測定原理である方法が提供される。この利点は、特定の電極および/または条件を必要とする電位差測定測定原理に関係する欠点が、例えば光学ベースの測定原理を使用することによって完全にまたは部分的に克服され得ることであり得、それは、事実上、例えば水性液体-液体参照電極を介して既知の電位を確立する必要性を省き得る。
【0061】
’測定原理’とは、(電気)電圧または(光学)吸光度または光度のような特定のパラメーターの測定に頼る濃度を測定する原理と理解され得る。
一態様によれば、1以上の電位差を測定することが、固体電極間の1以上の電位差を排他的に、例えば直接、例えば固体作用電極および固体参照電極の間で直接測定することを含む方法が提供される。これの利点は、固体電極のみが含まれること、例えば水性の液体-液体電極(および関係する欠点)を除外することであり得る。固体電極間について’排他的に’とは、固体電極間の電位差のみが測定されることと理解されるが、固体作用電極および固体参照電極の間の電位差は、それぞれ固体作用電極および第3の固体電極ならびに固体参照電極および第3の固体電極の間の電位差間の和または差として測定されることができる。’直接’とは、電位差が、例えば固体作用電極および固体参照電極の間に(高インピーダンス)電圧計を挿入することによって、固体作用電極および固体参照電極の間で直接測定されることと理解される。
【0062】
一態様によれば、参照イオン測定設定を用いて試料中の参照イオンの濃度を測定することが光学測定を含む方法が提供される。’光学測定’とは、光学パラメーター、例えば吸収率、反射率、蛍光、屈折率、光束、吸収および波長のいずれかを測定するあらゆる測定と理解される。光学測定の利点は、それが赤血球を損傷することなく実施されることができることであり得る。別の可能性のある利点は、それが電気分析技法とは無関係であり、従って電気分析技法の代替を提供することであり得る。別の可能性のある利点は、既知の電位、例えば水性の液体-液体参照電極によって提供される既知の電位の必要性を省くことであり得る。
【0063】
一態様によれば、参照イオンが水素イオン、例えばH+、ナトリウムイオン、例えばNa+、またはカリウムイオン、例えばK+である方法が提供される。水素イオンを参照イオンとして利用することの可能性のある利点は、それが数多くの試料中に、例えば特に全血試料中に存在すると仮定され得ることである。ナトリウムイオンを参照イオンとして使用することの可能性のある利点は、それが比較的高濃度で存在し得ること(例えばヒト血漿中の主なイオン性構成要素であり、例えばヒト血漿中の最高濃度のイオン性構成要素である)、それが光学的に、例えば(場合により容易に入手可能な)ナトリウムイオン感受性発蛍光団を用いて測定され得ること、ナトリウムイオン濃度がイオン強度と相関すること(従ってナトリウムイオンを参照イオンとして利用することは、イオン強度の影響を含み、除外するであろう)、および/またはそれ(例えばその濃度)が例えばヒト血漿中で比較的安定で有り得ること(例えば絶対的および/または相対的な変動が比較的小さい可能性がある)である。カリウムイオンを参照イオンとして使用することの可能性のある利点は、それが比較的高い濃度で存在し得ることである(例えばヒト血漿中の主なイオン性構成要素であり、例えばヒト血漿中の2番目に高い濃度のイオン性構成要素である)。
【0064】
一態様によれば、光学測定がpHに依存する光学パラメーターPo(例えば吸収率、反射率、蛍光、屈折率、または色)を測定することを含み、pHの変化dpHを伴う光学パラメーターの変化dPo、dPo/dpHが[7;8]のpH間隔内、例えばpH間隔[7.2、7.6]内、例えば7.4においてまたは約7.4において局所的および/または全体的な最大値を有する方法が提供される。これの可能性のある利点は、最大感度が、従って全(ヒト)血のpHが予想される領域にあり得ることである。従って、pH(または水素イオン濃度)の決定、従って1以上の分析物の濃度の決定の正確度が高められる。
【0065】
一態様によれば、参照イオンが(ヒト)全血内に天然に存在するイオン、例えば以下のいずれかである方法が提供される:
-水素イオン、例えばH+、
-ナトリウムイオン、例えばNa+、
-カリウムイオン、例えばK+、
-カルシウムイオン、例えばCa2+、
-塩化物イオン、例えばCl-、
-マグネシウムイオン、例えばMg2+、または
-炭酸水素イオン、例えばHCO3
-。
【0066】
この場合、参照イオンは参照イオンとして機能するイオンの添加を必要とせずに、全血上で直接測定されることができる。
第2側面によれば、以下を含む液体全血試料である試料のような試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するための装置が提供され:
-参照イオンの濃度を示すパラメーターを測定するために配置された参照イオン測定設定(ここで、参照イオン測定設定(104)は、電気分析的測定設定とは異なる)および
-以下を含む分析物イオン測定設定:
i.1以上の場合により固体の作用電極、前記の場合により固体の作用電極のそれぞれはイオン選択性電極を含み、それは、分析物イオンに選択的であり、そして
ii.参照イオンに関して選択的で場合により固体のイオン選択性電極を含む参照電極、
-ここで、分析物イオン測定設定は電位差測定設定のような電気分析設定であり、
かつここで、分析物イオン測定設定は、以下の間で1以上の電位差を直接的または間接的に測定するために配置されている:
i.1以上の作用電極の各々、および
ii.参照電極。
【0067】
複数の態様において、1以上の作用電極の各々が固体電極であり、かつ/または参照電極は固体参照電極である。
分析物イオン測定設定および参照イオン測定設定は堅固に接続されていることができ、かつ/または装置はエンクロージャー、例えば単一のエンクロージャー、例えば分析物イオン測定設定および参照イオン測定設定を包含する、および囲む単一のエンクロージャーを含むことができる。
【0068】
分析物イオン測定設定および参照イオン測定設定は、装置中の同じ測定チャンバー中で試料をプロービングするために配置されていることができる。これは、試料が単一の測定チャンバーを満たすことだけを必要とするので、試料の必要な量を最小限に保つために有利であり得る。加えて、試料を異なる測定チャンバーに導く必要がないので、取り扱い、すすぎ、洗浄等が単純化され得る。
【0069】
一態様によれば、装置が提供され、ここで、参照イオン測定設定は光学センサー、例えば参照イオンの濃度を示すパラメーターを測定するための光学機器を含み、例えばここで、光学センサーは測定を実施するために配置され、それは、光学パラメーターPo(例えば吸収率、反射率、蛍光、屈折率または色)を測定することを含み、それは、pHに依存し、ここで、pHにおける変化dpHを伴う光学パラメーターにおける変化dPo、dPo/dpHが[7;8]のpH間隔内、例えばpH間隔[7.2、7.6]内、例えば7.4においてまたは約7.4において局所的および/または全体的な最大値を有する。例えば、光学センサーは、例えばpH感受性発光インジケーターに基づくなど、例えば参照イオン感受性インジケーターに基づく(参照イオンの濃度に応じて、1つ以上の光学特性、例えば吸収(例えば]400;1200[nmの波長領域において、例えば]500;1100[nmの波長領域において、例えば]600;1000[nmの波長領域において、例えば]700;900[nmの波長領域において)を変化させる)光学pHセンサーであることができる。
【0070】
参照イオン感受性インジケーターは、波長が400nmより大きい、または500nmより大きい、または600nmより大きい、または700nmより大きい、および/または1200nmより小さい、または1100nmより小さい、または1000nmより小さい、または900nmより小さい、例えば]400;1200[nmの波長領域内で、例えば]500;1100[nmの波長領域において、例えば]600;1000[nmの波長領域において、例えば]700;900[nmの波長領域において波長領域中の吸収極大のような光学特性の最大値または最小値を有し得る。そのような波長領域内の光学特性の最大値または最小値を有する参照イオン感受性インジケーターの利点は、ヘモグロビン吸収が600~1000nm内で最小であること、および/または他のセンサーへの干渉が制限されること(この領域中の波長が装置中に存在する他のセンサー中の実体(例えばイオノフォア)と相互作用/分解しないために十分に長いことにより)、および/または脂質粒子による散乱が制限されること(この領域中の波長が全血試料中のような生物学的試料中のような試料中の比較的小さい脂質粒子による散乱を受けにくいために十分に長いため)で有り得る。
【0071】
一態様によれば、参照イオンが以下のいずれかである装置が提供される:
-水素イオン、例えばH+、
-ナトリウムイオン、例えばNa+、
-カリウムイオン、例えばK+、
-カルシウムイオン、例えばCa2+、
-塩化物イオン、例えばCl-、
-マグネシウムイオン、例えばMg2+、または
-炭酸水素イオン、例えばHCO3
-。
【0072】
列挙された参照イオンの各々は、(ヒト)全血内に天然に存在するイオンである。この場合、参照イオンは、参照イオンとして機能するイオンの添加を必要とせずに、全血上で直接測定されることができる。
【0073】
一態様によれば、さらに以下のものを含む装置が提供される:
-以下のように構成されたプロセッサを含むデータ処理デバイス:
i.以下のものに基づいて試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定する:
1.参照イオンの濃度、および
2.1以上の電位差。
【0074】
データ処理デバイスを実施することによって、1以上の分析物イオンの1以上の濃度の決定は、より速く、自動化され、かつ/またはより信頼性の高い方法で実施され得る。
一態様によれば、さらに以下のものを含む装置が提供される:
-以下を含む試料取扱いシステム:
○試料入口、例えば吸引システムを含む前記試料入口、
○測定チャンバー(例えばある体積の試料取扱いシステム、ここで、参照イオンの濃度および/または1以上の電位差を示すパラメーターの測定が行われている間試料が配置される)、例えばここで、参照イオン測定設定(104)および分析物イオン測定設定(105)の両方が、測定チャンバー中にある間の試料上での測定のために配置される。
【0075】
○試料入口および測定チャンバーを流体的に接続する1以上の流体チャネル、例えばマイクロ流体チャネル。
可能性のある利点は、試料の取り扱いが、より衛生的で、安全で、自動化され、信頼性があり、かつ/または反復可能な方法で実施されることであり得る。’試料取り扱いシステム’とは、一般に試料を受け取り、取り扱う、例えばそれを試料入口から1以上の流体チャネルを介して測定チャンバーに運ぶことができるシステムと理解されることができる。
【0076】
一態様によれば、試料取扱いシステムがさらに以下のものを含む装置が提供される:
-1以上のバルブ、例えば試料プラグの形のような試料取扱いシステムを通る試料のセグメント化された輸送を可能にするバルブであって、前記のバルブは、場合によりデータ処理デバイス、例えばデータ処理デバイスによって制御される。
【0077】
可能性のある利点は、バルブが、試料がプラグとして、ならびに/または試料の前および/もしくは後ろの液体と混合することなく試料取扱システムの少なくとも一部(例えば試料入口から測定チャンバーまで)を通って移動する輸送のようなセグメント化された輸送を可能にし得ることである。
【0078】
一態様によれば、装置が提供され、ここで、一価イオンである分析物イオンに関して、分析物イオン濃度正確度は20%未満、例えば15%未満、例えば10%未満、例えば7%未満、例えば5.4%未満、例えば5%未満、例えば3.5%未満、例えば2.7%未満である。そのような低い(ここで、’低い’正確度は真の値からの偏差がより少ないと理解される)正確度の利点は、濃度のより正確な推定が達成され得ることであり、それは、今度は向上した診断、向上した処置作用の評価または対象(例えば血液試料が採取された患者または人)の生理学的および/もしくは栄養的状態の向上した推定を可能にし得る。’正確度’は、当技術分野で一般的であるように理解され、例えば実際の(’真の’)値、例えばこの文脈において分析物イオンの真の濃度および測定値、例えばこの文脈において装置の出力におけるおよび/または装置によって決定される分析物イオンの濃度の間に存在するであろう誤差である。
【0079】
一態様によれば、装置が提供され、ここで、その装置、例えば装置全体は、1以上の電位差に基づいて試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を、それぞれが一価イオンである1以上の分析物イオンに関して、20%未満、例えば15%未満、例えば10%未満、例えば7%未満、例えば5.4%未満、例えば5%未満、例えば3.5%未満、例えば2.7%未満の1以上の真の濃度に関する正確度で決定することを可能にする。装置、例えば装置全体、すなわち例えば参照イオンの濃度を示すパラメーターおよび分析物イオンの濃度を示す電位差の両方に基づく分析物イオン濃度の決定は、分析物イオン濃度の決定に関して低い正確度を可能にすることは、理解されるべきである。さらに、正確度は、濃度の真の値に関して決定されることは、理解されるべきである。
【0080】
一態様によれば、装置が提供され、ここで、(場合により固体の)参照電極により決定されるような参照電位の正確度(すなわち、参照イオン測定設定および参照電極の両方の総正確度(すなわち、累積誤差を考慮している)、それは、参照イオンに関して選択的である)は、一価イオンである分析物イオンに関して、10%未満、例えば7.5%未満、例えば5%未満、例えば3.5%未満、例えば2.7%未満、例えば2.5%未満、例えば1.75%未満、例えば1.35%未満である。参照電位の、すなわち参照イオン測定設定および参照電極のそのような低い(ここで、’低い’正確度は、真の値からの偏差がより少ないと理解される)正確度の利点は、参照電位のより正確な推定値が提供されることであり、それは今度は分析物イオンの濃度に関する向上した正確度を可能にし得、それは今度は対象(例えば血液試料が採取された患者または人)の向上した診断、向上した処置作用の評価または向上した生理学的および/もしくは栄養的状態の見積もりを可能にし得る。’正確度’は、当技術分野で一般的であるように理解され、例えば参照電位の実際の(’真の’)値(例えば試料のバルク部分における電位および参照電極内の導電性内部電極内の電位の間の“真の”電位差)ならびに参照イオン測定設定および参照電極における電位によって決定される参照イオンの濃度を示すパラメーターから導出される参照イオンの濃度に基づいて決定される参照電位の間に存在するであろう誤差(例えば試料のバルク部分における電位および作用電極内の導電性内部電極内の電位の間の電位差を得るために、作用電極および参照電極の間の電位差から減算される電位)としてこの文脈において理解される。
【0081】
一態様によれば、装置が提供され、ここで
-分析物イオン濃度正確度は、一価イオンである分析物イオンに関して20%未満、例えば15%未満、例えば10%未満、例えば7%未満、例えば5.4%未満、例えば5%未満、例えば3.5%未満、例えば2.7%未満であり、
-参照イオン測定設定および参照電極に由来する分析物イオン濃度正確度の割合は50%未満、例えば40%未満、例えば30%未満、例えば20%未満、例えば10%未満であり、
例えばここで、分析物イオン濃度正確度は、10%未満であり、参照イオン測定設定および参照電極に由来する分析物イオン濃度正確度の割合は30%未満、例えば25%未満、例えば20%未満である。これの利点は、10%より低い分析物イオン濃度正確度がほとんどの目的のために十分に正確であり、参照イオン測定設定および参照電極に由来する比較的低い割合が、他の源に、例えばイオン選択性作用電極に由来する現実的な正確度(またはその欠如)のための余地を残すことであり得る。
【0082】
そのような低い(ここで、’低い’正確度は、真の値からの偏差がより少ないことであると理解される)正確度の利点は、濃度のより正確な推定値が達成され得ることであり、それは今度は対象(例えば血液試料が採取された患者または人)の向上した診断、向上した処置作用の評価または向上した生理学的および/もしくは栄養的状態の見積もりを可能にする。’正確度’は、当技術分野で一般的であるように理解され、例えば実際の(’真の’)値、例えば分析物イオンの濃度ならびに装置の出力における、および/または装置によって決定されるような、示された値、例えば分析物イオンの濃度の間に存在するであろう誤差である。
【0083】
一態様によれば、装置が提供され、ここで、以下:
-1以上の作用電極の各々、および
-参照電極
の間の距離(例えば中心間距離)は、10mm以下、例えば5mm以下、例えば3mm以下、例えば1mm以下、例えば1mm以下である。可能性のある利点は、(単に)比較的小さな試料容積が必要とされることである。別の可能性のある利点は、例えば(例えば試料チャンバーの容積がより小さいため)より速くすすがれることができる試料チャンバーを利用する場合、異なる試料に関する測定間を通過しなければならない(アイドル)時間がより少ないことである。
【0084】
一態様によれば、参照イオン半電池の勾配が、ネルンスト式による参照イオンの理論的勾配に関して、少なくとも10%、例えば少なくとも25%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%である装置が提供される。比較的大きな勾配を有する利点は、(参照イオン測定設定が勾配/感度を考慮に入れることを可能にするので)正常で十分に機能する既製のISE(作用電極自体として利用され得る)が参照電極として利用され得ることであり得る。参照イオン半電池の勾配とは、測定された電位および参照イオン濃度(に対する対数)の間の比例定数と理解され、例えばここで、測定された電極電位Eはネルンスト方程式によるイオン種の活性に関連し:
E=E0+2.3xRT/(nF)logA
ここで、E0=所与の電池に関する定数、R=気体定数、T=ケルビンでの温度、n=イオン電荷、F=ファラデー定数、Aは活性であり、xは式RT/nFによって与えられる係数から勾配係数が外れる可能性があることを考慮した係数であり、それは理想的な勾配係数と呼ばれ得る。例えば、カリウムイオン(すなわち、n=+1)を測定する場合、298K(25℃)における勾配係数は59.16mVの値を有し、37℃における勾配係数は61.54mVの値を有する。例えば、x=0.1の場合、参照イオン半電池の勾配は、ネルンスト方程式による参照イオンの理論的(理想的)勾配に関して10%である。
【0085】
第3側面によれば、第2側面による装置の使用が提供され、ここで、前記装置は、試料
(例えば試料は液体全血試料である)中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するために使用され、例えば試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を例えば参照イオンの濃度および1以上の電位差に基づいて決定するために使用される。
【0086】
ポイント・オブ・ケア測定システム(当技術分野では’ベッドサイト’システムとも呼ばれる)および同様の実験室環境の文脈において、血液ガス分析は、多くの場合、例えば血液ガス分析器の使用において訓練を受けた使用者ではない可能性がある使用者、例えば看護師によって行われる。
【0087】
本発明の第4側面(または第3側面の一態様)によれば、液体全血試料である試料のような試料の1以上の分析物の1以上の濃度の決定のようなポイントオブケア(POC)分析のための本発明の第2側面による装置の使用が提供される。
【0088】
POC測定は、当技術分野では’ベッドサイト’測定とも呼ばれる。本文脈において、’ポイント・オブ・ケア測定’という用語は、患者のごく近くで行われる測定、すなわち、研究室で行われない測定を意味すると理解されるべきである。従って、本態様によれば、血液ガス分析器である装置のような装置の使用者は、血液試料が採取される患者の近く、例えば患者のベッドを収容する病室または病棟、または同じ病院部門の近くの部屋において、手持ち式血液試料容器中の全血試料の測定を実施する。そのような使用において、使用者の専門的技術のレベルは、多くの場合、初心者から経験者まで様々であり、従って、センサ入力に基づいてそれぞれの個々の使用者の技能に合致する指示を自動的に出力する血液ガス分析器の能力は、そのような環境において特に有益である。
【0089】
本発明の第1、第2、第3および第4側面は、それぞれ、他の側面のいずれかと組み合わせられることができる。本発明のこれらおよび他の側面は、以下に記載される態様から明らかであり、それらを参照して説明されるであろう。
【0090】
本発明に従う方法、装置および使用が、ここで添付の図面に関してより詳細に記載されるであろう。図面は、本発明を実施する1つの方法を示しており、添付の特許請求の範囲のセットの範囲内にある他の可能な態様に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0091】
本発明の好ましい態様は、添付の図面に関連してより詳細に記載されると考えられ、より詳細には:
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図3】
図3は、電気化学測定装置305および参照イオン測定設定304の一例を示し、
【
図4】
図4は、導電性内部電極366および膜368の拡大図を示し、
【
図5】
図5は、システム1~10(それぞれ、NPT7機器104、304およびABL725機器によって形成される)および各システムに関する4つの異なる測定値(“#m.1”、“#m.2”など)をグラフで示した(偏差/誤差)合計の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0093】
図1は、試料102、例えば液体全血試料である試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示す1以上の電位差を測定するための装置100の概略図であり、以下のものを含む:
-参照イオンの濃度を示すパラメーターを測定するように配置され(234)、ここで、参照イオン測定設定は、光学センサーであるような電気分析測定設定とは異なる参照イオン測定設定104、304、および
-以下のものを含む分析物イオン測定設定105、305:
i. 1つ以上の、場合により固体の作用電極352であって、前記の場合により固体の作用電極352の各々は、分析物イオンに関して選択的であるイオン選択性電極を含む、
ii. 参照イオンに関して選択的で場合により固体のイオン選択性電極を含む参照電極350、
ここで、分析物イオン測定設定は電位差測定設定のような電気分析設定であり、
かつここで、電気化学測定設定105、305は、以下の間で直接的または間接的に1つ以上の電位差を測定する(236)ために配置されている:
iii. 1以上の作用電極352の各々、および
iv. 参照電極350。
【0094】
参照イオン測定設定104、304および電気化学測定設定105、305は、別個の測定チャンバーに、または別個の測定チャンバー内に含まれるように描かれているが、代替の態様では、それらは両方とも同じ測定チャンバー354中の試料を探査し得る。
【0095】
概略的な例における参照イオン測定設定104、304は、光学的pHセンサーのような光学的なものを含み、さらに以下のものを含む:
-以下のように構成されたプロセッサを含むデータ処理デバイス106:
i.以下に基づいて、試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定する(238):
1.参照イオンの濃度、
2.1以上の電位差。
【0096】
図1の概略図の装置はさらに、以下を含む試料取り扱いシステムを示す:
○試料入口112
○測定チャンバー354
○試料入口および測定チャンバー(単数または複数)を流体的に接続する1以上の流体チャネル114、例えばマイクロ流体チャネル。
【0097】
描写されたデバイスはさらに、(例えば、データ処理デバイスの制御および/または計算に関連するデータを記憶するための)デジタル記憶デバイス116、ユーザーインターフェース118を含み、ここで、ユーザーインターフェースは、装置を操作するために関連する情報および/または試料102中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を表す情報を視覚的に出力するために配置された出力ユニット120(描写された態様ではその出力ユニットは表示ユニットである)および入力ユニット122(例えば、試料102の同一性に関する情報を装置に提供するためのキーボードなど)を含む。細線矢印は、参照イオン測定設定104、304からデータ処理デバイス106に流れる参照イオンの濃度を示すパラメーターおよび電気化学測定設定105、305からデータ処理デバイス106に流れる1以上の電位差、データ処理デバイス106からユーザーインターフェース118(より詳細には出力ユニット120)に流れる試料中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度、入力ユニット122からデータ処理デバイス106に流れる使用者の入力のような情報の流れを示す。
【0098】
図2は、(ブロック230で開始し、ブロック240で終了する)1以上の電位差を測定する方法200を示し、場合により液体全血試料である試料102中の1以上の分析物イオンの1以上の濃度を示し、場合によりさらに、1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定し、前記の方法は以下の工程を含む:
-場合により、
図1に記載されるように、および/または本発明の第2側面に従って、試料102を装置100の試料入口112に提供し(232)
-参照イオン測定設定104、304を用いて、試料102中の参照イオンを示すパラメーターの濃度を測定し(234)、ここで、参照イオン測定設定104は、電気分析測定設定とは異なり、場合によりさらに、参照イオン濃度を決定し、
-分析物イオン測定設定を用いて直接または間接的に以下の間の1以上の電位差を測定する(236):
iii.1以上の作用電極352の各々(例えば1以上の固体作用電極であって、前記の作用電極の各々は、分析物イオンに関して選択的であるイオン選択性電極を含む)および
iv.参照イオンに関して選択的である固体参照電極のような参照電極350、
ここで、分析物イオン測定設定は、電位差測定設定のような電気分析設定であり、そして
-場合により、1以上の分析物イオンの1以上の濃度を決定する(238)。
【0099】
図3は、電気化学測定設定105、305および参照イオン測定設定104、304の例を示す。より詳細には、図は、測定チャンバー354内に部分的に参照電極350および作用電極352、参照電極350および作用電極352の間で電気的に(高インピーダンス)電圧計356、ならびに測定チャンバー354中に試料を導くことを可能にするように配置された(入口)流体チャネル314を含む電気化学測定設定105、305を示す。参照電極350および作用電極352の部分は類似しているが、簡単にするためにのみ、参照電極350:測定チャンバー354の内部(試料が使用の間に存在し得る)に関して膜368の他方の面に配置された導電性内部電極366に電気的に接続された導電体364を囲む絶縁封止材362を含むケース360に関して説明する。参照電極350および作用電極352の間の中心間距離370も示されている。
【0100】
図3はまた、測定チャンバー354内に部分的に存在し、1以上の光源および1以上の光検出器および場合により1以上の光学フィルターを含み得る光学分析ユニット358を含む、光学pHセンサーの形態の参照イオン測定設定104、304を示す。
【0101】
図4は、(例えば作用電極352または参照電極350の)導電性内部電極366および膜368の拡大図を示す。図面はさらに、導電性内部電極366および膜368の間に間隙472が存在し得ることを示している。さらに、図面は、導電性内部電極366から膜368の反対側までの距離474を示し、それは、導電性内部電極366および試料102(または試料102が使用中に存在し得る測定チャンバー354)の間の距離でもある。さらに、図は、導電性内部電極366から膜368までの距離476を示している。
【実施例】
【0102】
ヒト(非喫煙者)血液試料102を、酸素飽和を確実にするガス(SAT100)を用いて、15g/dLの総ヘモグロビン濃度およびおおよそ7.6のpH値に調整し、ここで、ガス中のCO2レベルがpHを制御する。
【0103】
血液試料102のpH測定を、5つのABL725(Radiometer,コペンハーゲン、デンマーク)電気分析血液ガス分析器で行った。測定を、各ABL725電気分析血液ガス分析器で4回繰り返した。結果は、表Iにおいて見ることができる(“ABL725-n”中のnが機器の番号nを示す)。
【0104】
【0105】
血液試料102のpH測定234が、10個のNPT7(Radiometer,コペンハーゲン、デンマーク)光学血液ガス分析器104、304を用いてさらに実施された。測定を、各NPT7光学血液ガス分析器で4回繰り返した。結果は、表IIおよび表III(“#m.”は測定の番号を示し、“NPT-n”中のnは機器の番号を示す)において見ることができ、ここで、表II中のエントリーはそれぞれ別のNPT7測定を示し、表III中のエントリーは、それぞれ試料102中のドリフト(drift)からの干渉を除去するために(CO2の脱気およびその後のpH変化によって)同じラウンドの測定で5回のABL725測定によって決定された平均値からの偏差または誤差を示す。
【0106】
【0107】
【0108】
完全に電気分析的な方法および装置を本発明の態様による装置100および方法200で置き換えることによる正確度への影響を評価するために、40の合計または誤差が形成され、各合計は、NPT7測定値からの誤差およびABL725測定値からの誤差の合計である(ここで、ABL725データセットが二重サイズのNPT7データセットと一致するように複製された)。
【0109】
完全に電気分析的な方法および設定が完全な参照電極352に依存すると仮定すると(目的のため、または保守的な推定を提供するため)、本発明の態様で導入される正確度への影響は、NPT7機器104、304の光学pH測定234上の誤差(参照イオン測定設定によって導入される誤差に対応する)およびABL725機器の固体イオン選択性pH電極によって導入される誤差(分析物イオン測定設定の参照電極によって導入される誤差に対応する)の合計として推定され得る。これらの誤差の兆候に応じて、それらは合計するか、または(完全にまたは部分的に)互いに打ち消し合うことができることが特筆される。
【0110】
図5は、システム1~10(それぞれNPT7機器104、304およびABL725機器によって形成される)および各システムに関する4つの異なる測定値(“#m.1”、“#m.2”等)を有するグラフにおけるこれらの合計の概要を示す。全ての誤差は1.60mV未満であり、誤差は一般に約1.0mVであり、絶対値の平均は0.888mVであることが分かる。60mVのネルンスト係数に関して、これは、100%
*(10
(0.888mV/60mV)-1)=一価イオンでは3.47%、二価イオンでは6.93%の分析物イオン測定に対する正確度の影響に対応するであろう。系の平均値に関して補正すると、これらの値は、それぞれ2.7%および5.4%の一価および二価イオンに低下させることができる。分析物イオン選択性作用電極が同じオーダーの大きさ以下の誤差を導入すると仮定すると、本発明による方法または装置の正確度は、一価の分析物イオンに関しておおよそ2.7~5.4%、二価の分析物イオンに関しておおよそ5.4~10.8%であると推定され得る。
【0111】
本発明は、特定の態様に関連して記載されたが、提示された実施例に限定されるものと決して解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項のセットによって示される。特許請求の範囲の文脈において、“含むこと(comprising)”または“含む(comprises)”という用語は、他の可能な要素または工程を除外しない。また、“a”または“an”等のような参照の言及は、複数を除外するものとして解釈されるべきではない。図面に示される要素に関する特許請求の範囲における引用符号の使用も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項において言及される個々の特徴は、場合によっては有利に組み合わせられることができ、異なる請求項におけるこれらの特徴の言及は、特徴の組み合わせが可能でなく、有利であることを排除しない。
【符号の説明】
【0112】
100 装置
102 試料
104 参照イオン測定設定
105 分析物イオン測定設定(電気化学測定設定)
106 データ処理装置
112 試料入口
114 流体チャネル
116 デジタル記憶デバイス
118 ユーザーインターフェース
120 出力ユニット
122 入力ユニット
200 方法
230 ブロック
232 提供
234 測定
236 測定
238 濃度を決定
240 ブロック
304 参照イオン測定設定
305 分析物イオン測定設定(電気化学測定装置)
314 流体チャネル
350 参照電極
352 作用電極
354 測定チャンバー
356 電圧計
358 光学分析ユニット
360 ケース
362 絶縁封止材
364 導電体
366 導電性内部電極
368 膜
370 中心間距離
472 間隙
474 距離
476 距離
【国際調査報告】