(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ワークピースをレーザ加工するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20240125BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20240125BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20240125BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240125BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/067
B23K26/073
B23K26/064 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546504
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2022051538
(87)【国際公開番号】W WO2022167257
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021102391.2
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021108509.8
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フラム
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ツィンマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス クライナー
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168DA02
4E168DA04
4E168DA39
4E168EA02
4E168EA06
4E168JA14
4E168KB02
(57)【要約】
本発明は、レーザ加工に対して透明な材料(102)を有するワークピース(104)をレーザ加工するための装置に関し、装置は、第1のビーム成形デバイス(106)に入力結合された第1の入力ビーム(108)を複数の成分ビーム(114)に分割するためのビーム分割要素(112)を有する第1のビーム成形デバイス(106)と、第1のビーム成形デバイス(106)に割り当てられ、第1のビーム成形デバイス(106)から出力結合された成分ビーム(114)を少なくとも1つの焦点ゾーン(122)内に結像させるように機能する集束光学ユニット(116)と、を備え、第1の入力ビーム(108)が、第1の入力ビーム(108)への位相付与によって、ビーム分割要素(112)によって分割され、成分ビーム(114)が、少なくとも1つの焦点ゾーン(122)を形成する目的で、少なくとも1つの焦点ゾーン(122)の異なる部分領域(120)内に集束され、少なくとも1つの焦点ゾーン(122)が、集束光学ユニット(116)によって、ワークピース(104)をレーザ加工するためにワークピース(104)の外面(144;146)に対して少なくとも1つの作業角度(α)で材料(102)内に導入され、材料(102)の屈折率変化に関連する材料改質部(156)が、材料(102)を少なくとも1つの焦点ゾーン(122)に露出させることによって、材料(102)内に生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工に対して透明な材料(102)を有するワークピース(104)をレーザ加工するための装置であって、第1のビーム成形デバイス(106)に入力結合された第1の入力ビーム(108)を複数の成分ビーム(114)に分割するためのビーム分割要素(112)を有する前記第1のビーム成形デバイス(106)と、前記第1のビーム成形デバイス(106)に割り当てられ、前記第1のビーム成形デバイス(106)から出力結合された成分ビーム(114)を少なくとも1つの焦点ゾーン(122)内に結像させるように機能する集束光学ユニット(116)と、を備え、前記第1の入力ビーム(108)が、前記第1の入力ビーム(108)への位相付与によって、前記ビーム分割要素(112)によって分割され、前記成分ビーム(114)が、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)を形成する目的で、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)の異なる部分領域(120)内に集束され、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)が、前記集束光学ユニット(116)によって、前記ワークピース(104)をレーザ加工するために前記ワークピース(104)の外面(144;146)に対して少なくとも1つの作業角度(α)で前記材料(102)内に導入され、前記材料(102)の屈折率変化に関連する材料改質部(156)が、前記材料(102)を前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)に露出させることによって、前記材料(102)内に生成される、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)によって前記材料(102)内に生成された前記材料改質部(156)が、タイプI及び/又はタイプIIの改質部である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のビーム成形デバイス(106)に入力結合された前記第1の入力ビーム(108)をビーム成形するための第2のビーム成形デバイス(158)を備えることを特徴とし、定義された幾何学的形状を有する及び/又は定義された強度プロファイルを有する焦点分布が、前記第2のビーム成形デバイス(158)によって、前記第2のビーム成形デバイス(158)に入射する第2の入力ビーム(160)への位相付与によって前記第1の入力ビーム(108)に割り当てられ、その結果、前記集束光学ユニット(116)によって、前記第1のビーム成形デバイス(106)から出力結合された前記成分ビーム(114)を前記焦点ゾーン(122)の異なる部分領域(120)内に集束させることにより、各場合に、この幾何学的形状に基づく及び/又はこの強度プロファイルに基づく焦点分布(124)が形成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2の入力ビーム(160)への前記位相付与が、前記焦点分布(124)が、割り当てられた主拡大方向(162)に対して細長い形状を有するようなものであり、及び/又は前記第2の入力ビーム(160)への前記位相付与が、前記焦点分布(124)が、準非回折及び/又はベッセル状の強度プロファイルを有するようなものである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の入力ビーム(160)への前記位相付与が、前記焦点分布(124)が、前記強度プロファイルの強度最大値(164)において最大強度値から進んで、ガウス強度プロファイルの場合よりも約3倍速く前記強度最大値の1/e
2倍まで低下する、割り当てられた主拡大方向(166)に対する強度プロファイルを有するようなものであり、並びに/又は前記第2の入力ビーム(160)への前記位相付与が、前記焦点分布(124)が、急激に自動集束するビームの形状及び/若しくは強度プロファイルを有するようなものである、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のビーム成形デバイス(158)によって前記焦点分布(124)の中間像(168)が形成され、特に、前記焦点分布(124)の前記中間像(168)が、前記第2の入力ビーム(160)の主伝搬方向(267)に対して前記第1のビーム成形デバイス(106)の上流に配置されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のビーム成形デバイス(158)に割り当てられた遠視野光学ユニット(170)を特徴とし、前記遠視野光学ユニット(170)が、前記第2のビーム成形デバイス(158)から前記遠視野光学ユニット(170)の焦点面(174)に出力結合された出力ビーム(172)の遠視野集束のために使用され、特に、前記第1のビーム成形デバイス(106)が、この焦点面(174)の領域内に配置されている、請求項3~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記遠視野光学ユニット(170)が、前記第2のビーム成形デバイス(158)によって形成された前記焦点分布(124)の中間像(168)を前記焦点面(174)内に遠視野集束するために使用される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記遠視野光学ユニット(170)及び前記集束光学ユニット(116)が、テレスコープデバイス(178)を形成し、及び/又は前記遠視野光学ユニット(170)及び前記集束光学ユニット(116)が、共通の焦点面(174)を有し、特に、前記第1のビーム成形デバイス(106)が、この共通の焦点面(174)の領域内に配置されている、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の入力ビーム(108)に、定義された幾何学的形状及び/若しくは定義された強度プロファイルを有する焦点分布が割り当てられ、前記第1のビーム成形デバイス(106)から出力結合された前記成分ビーム(114)にも同様に、この幾何学的形状及び/若しくはこの強度プロファイルが割り当てられ、並びに/又は前記第1のビーム成形デバイス(106)から出力結合された前記成分ビーム(114)を前記焦点ゾーン(122)の異なる部分領域(120)内に集束させるために前記集束光学ユニット(116)を使用することにより、この幾何学的形状に基づいて及び/若しくはこの強度プロファイルに基づいて、それぞれの焦点分布(124)の形成をもたらす、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1のビーム成形デバイス(106)が、前記第1の入力ビーム(108)に割り当てられた焦点分布を修正するためのビーム成形要素(130)を備え、前記ビーム成形要素(130)が、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)が前記ワークピース(104)をレーザ加工するために前記ワークピース(104)に対して移動される前進方向(129)に対して垂直に配向された断面において、少なくとも1つの焦点ゾーン(122)内に結像された前記焦点分布(124)の幾何学的形状及び/若しくは強度プロファイルの修正及び/若しくは整列をもたらすように使用され、並びに/又はビーム成形要素(130)が、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)が前記ワークピース(104)をレーザ加工するために前記ワークピース(104)に対して移動される前進方向(129)に対して平行に配向された断面において、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)内に結像された前記焦点分布(124)の前記幾何学的形状及び/若しくは強度プロファイルの修正及び/若しくは整列をもたらすように使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記焦点分布(124)の前記幾何学的形状及び/又は強度プロファイルの主拡大方向(134)の整列(136)が、前記ビーム成形要素(130)によって、前記前進方向(129)に対して垂直に配向された断面内で調整可能であるか又は調整され、特に、前記主拡大方向(134)が前記焦点ゾーン(122)の対応する局所拡大方向(138)に対して平行又はほぼ平行に配向されるように、前記整列(136)が調整される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ビーム成形要素(130)が、前記前進方向(129)に対して平行に配向された断面における前記焦点分布(124)の前記強度プロファイルに、前記強度プロファイルが少なくとも1つの優先方向(132)を有するように修正をもたらし、特に、前記少なくとも1つの優先方向(132)が、前記前進方向(129)に対して平行又は斜め又は垂直に配向されている、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のビーム成形デバイス(106)が、前記第1のビーム成形デバイス(106)から出力結合された前記成分ビーム(114)が各々、少なくとも2つの異なる偏光状態のうちの1つを有するように構成された偏光ビーム分割要素(126)を備え、異なる偏光状態を有する成分ビーム(114)が、前記集束光学ユニット(116)によって前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)の隣接する部分領域(120)内に集束される、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
レーザ加工に対して透明な材料(102)を有するワークピース(104)をレーザ加工するための方法であって、第1のビーム成形デバイス(106)に入力結合された第1の入力ビーム(108)を複数の成分ビーム(114)に分割するために、前記第1のビーム成形デバイス(106)のビーム分割要素(112)が使用され、前記第1のビーム成形デバイス(106)に割り当てられた集束光学ユニット(116)によって、前記第1のビーム成形デバイス(106)から出力結合された前記成分ビーム(114)が、少なくとも1つの焦点ゾーン(122)内に集束され、前記第1の入力ビーム(108)が、前記第1の入力ビーム(108)への位相付与によって、前記ビーム分割要素(112)によって分割され、前記成分ビーム(114)が、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)を形成する目的で、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)の異なる部分領域(120)内に集束され、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)が、前記集束光学ユニット(116)によって、前記ワークピース(104)をレーザ加工するために前記ワークピース(104)の外面(144;146)に対して少なくとも1つの作業角度(α)で前記材料(102)内に導入され、前記材料(102)の屈折率変化に関連する材料改質部(156)が、前記材料(102)を前記少なくとも1つの焦点ゾーン(122)に露出させることによって、前記材料(102)内に生成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工に対して透明な材料を有するワークピースをレーザ加工するための装置に関する。
【0002】
本発明はまた、レーザ加工に対して透明な材料を有するワークピースをレーザ加工するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(特許文献1)は、レーザビームによってガラス基板上に角度付けされたエッジ領域を形成するための方法を開示しており、角度付けされたエッジ領域の形状は、レーザビームの軸方向エネルギー分布を適合させることによって適合される。
【0004】
本発明は、冒頭に述べた装置及び冒頭に述べた方法を提供するという目的に基づいており、これらは、多くの方法で柔軟に使用可能であり、特に、これらによって、異なる加工形状に沿ったワークピースのレーザ加工が技術的に簡単な方法で実施可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0147729A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2020 207 715.0号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2019 217 577.5号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K Itohらによる、「Ultrafast Processes for Bulk Modification of Transparent Materials」MRS Bulletin,vol.31,p.620(2006)
【非特許文献2】D.Flammらによる科学出版物、「Structured light for ultrafast laser micro- and nanoprocessing」,arXiv:2012.10119v1[physics.optics](2020年12月18日)
【非特許文献3】Fred M.Dickeyによる書籍、「Laser Beam Shaping:Theory and Techniques」,ed.,CRC press,(2014)
【非特許文献4】I.Chremmosらによる科学出版物、「Bessel-like optical beams with arbitrary trajectories」,Optics Letters,vol.37,no.23(2012年12月1日)
【非特許文献5】Efremidis、Nikolaos K.、及びDemetrios N.Christodoulidesによる科学刊行物、「Abruptly autofocusing waves」,Optics letters 35.23(2010):4045-4047
【非特許文献6】Papazoglouらによる、「Observation of abruptly autofocusing waves」,Optics letters 36.10(2011):1842-1844
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
冒頭に述べた装置の場合、この目的は、本発明によれば、以下の装置によって達成され、装置は、第1のビーム成形デバイスに入力結合された第1の入力ビームを複数の成分ビームに分割するためのビーム分割要素を有する第1のビーム成形デバイスと、第1のビーム成形デバイスに割り当てられ、第1のビーム成形デバイスから出力結合された成分ビームを少なくとも1つの焦点ゾーン内に結像させるように機能する集束光学ユニットと、を備え、第1の入力ビームが、第1の入力ビームへの位相付与によって、ビーム分割要素によって分割され、成分ビームが、少なくとも1つの焦点ゾーンを形成する目的で、少なくとも1つの焦点ゾーンの異なる部分領域内に集束され、少なくとも1つの焦点ゾーンが、集束光学ユニットによって、ワークピースをレーザ加工するためにワークピースの外面に対して少なくとも1つの作業角度で材料内に導入され、材料の屈折率変化に関連する材料改質部が、材料を少なくとも1つの焦点ゾーンに露出させることによって、材料内に生成される。
【0008】
ビーム分割要素によって第1の入力ビームを位相付与に基づいて分割し、且つその後に形成された成分ビームを集束させることによって、少なくとも1つの焦点ゾーンを技術的に簡単な方法で異なる形状で形成することが可能である。その結果、少なくとも1つの焦点ゾーンは、特に異なる部分を形成することができ、その部分は、各々、異なる形状及び/又は異なる作業角度を有する。その結果、異なる加工形状を有するワークピースのレーザ加工を、技術的に簡単な方法で達成することができる。
【0009】
本発明による解決策の場合、特に、少なくとも1つの焦点ゾーンは、ワークピースに対する光学ユニットの角度付けを必要とすることなく、作業角度で材料内に導入することができる。
【0010】
材料改質部が材料の屈折率変化に関連するということは、特に、材料改質部が材料の屈折率変化を伴うこと、及び/又は材料改質部が形成されると材料の屈折率に変化があることを意味すると理解されるべきである。
【0011】
特に、ビーム分割要素は、回折ビーム分割要素及び/又は3次元ビーム分割要素として形成される。ビーム分割要素は、好ましくは、第1の入力ビームのビーム断面への位相付与をもたらす。
【0012】
特に、第1の入力ビームは、第1の入力ビームの位相の純粋な位相操作のためにビーム分割要素によって分割される。特に、ビーム分割要素によって実施される第1の入力ビームへの位相付与は、可変的に調整可能及び/又は定義可能である。
【0013】
特に、少なくとも1つの集点ゾーンが複数の焦点分布を有するように、及び/又は複数の焦点分布から形成されるようにすることができる。例として、焦点分布は、焦点ゾーンの異なる部分領域内に配置される。
【0014】
焦点ゾーンのそれぞれの焦点分布は、焦点ゾーン内に、特に互いに距離をおいて配置される。しかしながら、それぞれの焦点分布が、少なくとも特定の部分において空間的にオーバーラップすることが可能である。
【0015】
特に、少なくとも1つの焦点ゾーンは、平面内において延びる。そこから少なくとも1つの焦点ゾーンが形成される焦点分布は、好ましくは、平面内に配置される。特に、この平面は、ワークピースをレーザ加工する目的で少なくとも1つの焦点ゾーンがワークピースに対して移動される前進方向に対して垂直に配向される。
【0016】
特に、ビーム分割要素によって付与される位相分布のレンズ成分及び/又は格子成分が、少なくとも1つの焦点ゾーンの各焦点分布に割り当てられる。特に、付与された位相分布は、複数の重畳されたレンズ成分及び/又は格子成分を含み、少なくとも1つの焦点ゾーンの各焦点分布には、レンズ成分及び/又は格子成分が割り当てられる。その結果、ワークピースをレーザ加工する目的で、ワークピースに対して焦点ゾーンが移動される前進方向に対して垂直に配向された平面内において、空間オフセットを有する焦点ゾーンの異なる焦点分布を配置することが可能である。
【0017】
例として、第1のビーム成形デバイスは、遠視野ビーム成形要素の形態であるか、又は1つ以上の遠視野ビーム成形要素を備える。例として、少なくとも1つの焦点ゾーンは、集束光学ユニットによって、第1のビーム成形デバイスから焦点ゾーンのそれぞれの部分領域内に出力結合された成分ビームを集束させることによって形成される。
【0018】
例として、集束光学ユニットは、マイクロスコープ対物レンズ又はレンズ要素の形態である。
【0019】
一実施形態では、第1のビーム成形デバイスが、第1の入力ビームの主伝搬方向に対して平行な軸を中心に回転可能又は回転するようにすることができる。その結果、少なくとも1つの焦点ゾーンを、例えば、ワークピースをレーザ加工する目的でワークピースに対して少なくとも1つの焦点ゾーンが移動される前進方向に対して垂直に配向された回転軸を中心に回転させることが可能である。
【0020】
集束光学ユニットが第1のビーム成形デバイスに統合されるように、及び/又は集束光学ユニットが第1のビーム成形デバイスの一部となるように、及び/又は集束光学ユニットの機能が第1のビーム成形デバイスに統合されるようにすることができる。
【0021】
特に、ワークピースの材料は、少なくとも1つの焦点ゾーンが形成されるレーザビームに対して透明な材料から製造される。
【0022】
透明な材料とは、特に、少なくとも1つの焦点ゾーンを形成するレーザビームのレーザエネルギーの少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%が透過する材料を意味すると理解されるべきである。
【0023】
特に、第1の入力ビームは、第1のビーム成形デバイス及び/又はビーム分割要素内に入力結合された第1の入力ビーム入力である。
【0024】
特に、少なくとも1つの焦点ゾーンによって材料内に生成された材料改質部が、タイプI及び/又はタイプIIの改質部であるようにすることができる。その結果、材料の屈折率変化を伴う材料改質部が、レーザ加工中にワークピースの材料内に生成される。特に、材料は、これらの材料改質部において分離され得る。
【0025】
一実施形態では、装置は、第1のビーム成形デバイスに入力結合された第1の入力ビームをビーム成形するための第2のビーム成形デバイスを備え、定義された幾何学的形状を有する及び/又は定義された強度プロファイルを有する焦点分布が、第2のビーム成形デバイスによって、第2のビーム成形デバイスに入射する第2の入力ビームへの位相付与によって第1の入力ビームに割り当てられ、その結果、集束光学ユニットによって、第1のビーム成形デバイスから出力結合された成分ビームを焦点ゾーンの異なる部分領域内に集束させることにより、各場合に、この幾何学的形状に基づく及び/又はこの強度プロファイルに基づく焦点分布が形成される。その結果、少なくとも1つの焦点ゾーンが形成される焦点分布の形状を適合させることができる。その結果、装置の柔軟で多面的な使用が可能になる。
【0026】
特に、第2のビーム成形デバイスは、装置によって案内されるレーザビームの主伝搬方向に対して、第1のビーム成形デバイスの上流に配置される。
【0027】
特に、第2の入力ビームは、第2のビーム成形デバイスの入力ビームである。例として、第2の入力ビームは、装置のレーザ源から提供される、特にガウスビームプロファイルを有するレーザビームである。
【0028】
特に、第1の入力ビームは、第2のビーム成形デバイスから出力結合されるビーム、及び/又は第2のビーム成形デバイスによって提供されるビームである。
【0029】
特に、第2のビーム成形デバイスは、第2のビーム成形デバイスに入力結合される第2の入力ビームに割り当てられた焦点分布を修正及び/又は適合させる。特に、第2のビーム成形デバイスによって修正及び/又は適合された焦点分布は、第2のビーム成形デバイスによって提供される第1の入力ビームに割り当てられる。
【0030】
一実施形態では、第2のビーム成形デバイスが、第2の入力ビームの主伝搬方向に対して平行な軸を中心に回転可能又は回転するようにすることができる。その結果、少なくとも1つの焦点ゾーンを、例えば、ワークピースをレーザ加工する目的でワークピースに対して少なくとも1つの焦点ゾーンが移動される前進方向に対して垂直に配向された回転軸を中心に回転させることが可能である。
【0031】
特に、第2の入力ビームへの位相付与は、焦点分布が、割り当てられた主拡大方向に対して細長い形状を有するようなものであり、及び/又は第2の入力ビームへの位相付与は、焦点分布が、準非回折及び/又はベッセル状の強度プロファイルを有するようなものであるようにすることができる。その結果、少なくとも1つの焦点ゾーンを、例えば、細長い形状を有する複数の焦点分布から構築することができる。結果として、特に、対応する細長い及び/又は線状の材料改質部を形成することが可能であり、その結果、例えば材料分離のためのエッチング液の導入の改善が可能になる。
【0032】
第2のビーム成形デバイスは、特に位相付与を実施するためのビーム成形要素、例えば回折光学要素及び/又はアキシコン要素であるか、又はそれらを備える。
【0033】
特に、細長い形状を有する焦点分布の主拡大方向は、斜めに、特に、ワークピースをレーザ加工する目的でワークピースに対して少なくとも1つの焦点ゾーンが移動される前進方向に対して垂直に配向される。
【0034】
第2の入力ビームへの位相付与が、焦点分布が、強度プロファイルの強度最大値において最大強度値から進んで、ガウス強度プロファイルの場合よりも約3倍速く強度最大値の1/e2倍まで低下する、割り当てられた主拡大方向に対する強度プロファイルを有するようなものである場合、並びに/又は第2の入力ビームへの位相付与が、焦点分布が、急激に自動集束するビームの形状及び/若しくは強度プロファイルを有するようなものである場合、有利であり得る。これらの焦点分布の強度が急速に低下する結果として、加工される材料への損傷が低減され、より精密な材料加工が行われる。その結果、材料は、特に平面的及び/又は滑らかなエッジで分離され得る。
【0035】
例として、最大強度値から最大強度値の1/e2倍までの強度の低下は、ガウス強度プロファイルの場合よりも、少なくとも2.5倍だけ速く及び/又は3.5倍以下だけ速い。
【0036】
特に、主拡大方向における強度最大値から進んで、強度プロファイルは、強度の低下が形成される低下している強度フランクを有する。特に、低下している強度フランク後の主拡大方向における強度プロファイルの強度は、強度最大値の1/e2倍の値未満である。
【0037】
好ましくは、低下している強度フランクは、ワークピースをレーザ加工しているときに製品ピースセグメントに面する。その結果、特に滑らかな切断エッジが、特に材料分離の範囲内で実現され得る。
【0038】
前述の強度最大値は、特に、強度プロファイルの主要最大値及び/又はグローバル最大値である。特に、強度プロファイルは、1つ以上の2次最大値を有し、これらは、主拡大方向に対して反対側の強度最大値に隣接している。特に、2次最大値のそれぞれの最大強度値は、主要最大値からの距離が増加するにつれて減少する。
【0039】
特に、2次最大値は、ワークピースをレーザ加工するときの、残留ワークピースセグメント及び/又はスクラップセグメント内に位置する。その結果、例えば、材料分離のためのエッチング攻撃を促進するクラック及び/又はチャネルが、残留ワークセグメント及び/又はスクラップセグメント内に形成され得る。
【0040】
特に、これらの焦点分布の主拡大方向は、第2の入力ビームの主伝搬方向に対して平行又はほぼ平行に配向される。
【0041】
第2のビーム成形デバイスによって焦点分布の中間像が形成されるようにすることができ、特に、焦点分布の中間像は、第2の入力ビームの主伝搬方向に対して第1のビーム成形デバイスの上流に配置される。
【0042】
第2のビーム成形デバイスは、特に、近視野ビーム成形デバイスの形態であり、すなわち、中間像としての焦点分布の結像は、特に第2のビーム成形デバイスによって実施される。
【0043】
特に、第2のビーム成形デバイスによって形成される中間像は、第1のビーム成形デバイスに入力結合された第1の入力ビームに割り当てられた焦点分布の画像表現である。
【0044】
一実施形態では、装置は、第2のビーム成形デバイスに割り当てられた遠視野光学ユニットを備え、遠視野光学ユニットは、第2のビーム成形デバイスから遠視野光学ユニットの焦点面に出力結合された出力ビームの遠視野集束のために使用され、特に、第1のビーム成形デバイスは、この焦点面の領域内に配置される。
【0045】
特に、次いで遠視野光学ユニットから出力結合された出力ビームは、第1のビーム成形デバイス内に入力結合される第1の入力ビームに対応する。
【0046】
焦点面の領域は、特に、焦点面の周りに延びる領域を意味すると理解されるべきであり、この領域は、特に、焦点面から遠視野光学ユニットの焦点距離の10%の最大距離を有する。
【0047】
特に、遠視野光学ユニットは、第2のビーム成形デバイスによって形成された焦点分布の中間像を焦点面内に遠視野集束するために使用されるようにすることができる。
【0048】
特に、遠視野光学ユニットは、第2のビーム成形デバイスによって生成された中間像及び/又は第2のビーム成形デバイスによって生成された焦点分布のフーリエ変換をもたらす。
【0049】
遠視野光学ユニットが第2のビーム成形デバイスに統合されるように、及び/又は遠視野光学ユニットが第2のビーム成形デバイスの一部となるように、及び/又は遠視野光学ユニットの機能が第2のビーム成形デバイスに統合されるようにすることができる。
【0050】
特に、第1の入力ビームの横断強度分布は、焦点面においてリング構造及び/又はリングセグメント構造を有する。
【0051】
遠視野光学ユニット及び集束光学ユニットがテレスコープデバイスを形成するように、及び/又は遠視野光学ユニット及び集束光学ユニットが共通の焦点面を有するようにすることができ、特に、第1のビーム成形デバイスが、この共通の焦点面の領域内に配置される。
【0052】
特に、遠視野光学ユニットの焦点距離は、集束光学ユニットの焦点距離よりも大きい。
【0053】
特に、第1の入力ビームに、定義された幾何学的形状及び/若しくは定義された強度プロファイルを有する焦点分布が割り当てられ、第1のビーム成形デバイスから出力結合された成分ビームにも同様に、この幾何学的形状及び/若しくはこの強度プロファイルが割り当てられ、並びに/又は第1のビーム成形デバイスから出力結合された成分ビームを少なくとも1つの焦点ゾーンの異なる部分領域内に集束させるために集束光学ユニットを使用することにより、この幾何学的形状に基づいて及び/若しくはこの強度プロファイルに基づいて、それぞれの焦点分布の形成がもたらされるようにすることができる。その結果、特に、少なくとも1つの焦点ゾーンは、定義された形状を有する相互に間隔をおいて配置された及び/又は隣接する焦点分布から構築され得る。更に、これにより、例えば、ビーム分割要素によるビーム分割を理由に、事実上同一のコピーとして焦点分布を共につなぎ合わせることによって、少なくとも1つの焦点ゾーンの形成をもたらす。
【0054】
定義された幾何学的形状及び/又は定義された強度プロファイルの第1の入力ビームへの割り当ては、例えば、第1の入力ビームを提供するレーザ源によって実施される。或いは、この割り当ては、上述の第2のビーム成形デバイスによって実施される。
【0055】
一実施形態では、ビーム分割要素及び/又は第1のビーム成形デバイスに入射する第1の入力ビームは、例えばレーザ源から直接発生する場合、ガウス強度プロファイルを有する。その結果、少なくとも1つの焦点ゾーンは、例えば、ガウス形状及び/又はガウス強度プロファイルを有する複数の隣接する「焦点」から構築及び/又は形成される。
【0056】
第1のビーム成形デバイスが、第1の入力ビームに割り当てられた焦点分布を修正するためのビーム成形要素を備え、ビーム成形要素が、少なくとも1つの焦点ゾーンがワークピースをレーザ加工するためにワークピースに対して移動される前進方向に対して垂直に配向された断面において、少なくとも1つの焦点ゾーン内に結像された焦点分布の幾何学的形状及び/若しくは強度プロファイルの修正及び/若しくは整列をもたらすように使用され、並びに/又はビーム成形要素が、少なくとも1つの焦点ゾーンがワークピースをレーザ加工するためにワークピースに対して移動される前進方向に対して平行に配向された断面において、少なくとも1つの焦点ゾーン内に結像された焦点分布の幾何学的形状及び/若しくは強度プロファイルの修正及び/若しくは整列をもたらすように使用される場合、有利であり得る。
【0057】
特に、前進方向に対して平行に配向された断面は、焦点分布が形成されるビームの主伝搬方向に対して垂直に配向される。
【0058】
第1のビーム成形デバイスのビーム成形要素は、特に、第1のビーム成形デバイス内に入力結合された入力ビームの第1のビーム成形デバイス内、及び/又はその第1のビーム成形デバイスによって修正を実施するために使用される。
【0059】
特に、ビーム成形要素は、回折ビーム成形要素又は屈折ビーム成形要素であるか若しくはそれらを含み、及び/又はビーム成形要素は、回折フィールドマッパであるか若しくはそれを含む。特に、ビーム成形要素は、ビーム成形要素に入力結合された入力ビーム上に定義された波面収差を付与するために使用され得る。
【0060】
特に、ビーム成形要素は、第1のビーム成形デバイスから出力結合された成分ビームに、ビーム成形要素によって修正された焦点分布が割り当てられるように構成され、その結果、集束光学ユニットによって、第1のビーム成形要素から出力結合された成分ビームを焦点ゾーンの異なる部分領域内に集束することにより、この修正された幾何学的形状及び/又はこの修正された強度プロファイルを有する焦点分布のそれぞれの形成をもたらす。
【0061】
特に、この修正された形状及び/又は修正された強度分布は、第1の入力ビームに割り当てられた、元の形状及び/又は元の強度プロファイルに基づいている。特に、修正された形状及び/又は修正された強度分布は、元の形状及び/又は元の強度プロファイルに基づく修正を意味すると理解されるべきである。
【0062】
焦点分布の幾何学的形状及び/又は強度プロファイルの主拡大方向の整列が、ビーム成形要素によって、前進方向に対して垂直に配向された断面内で調整可能であるか又は調整される場合、特に、主拡大方向が焦点ゾーンの対応する局所拡大方向に対して平行又はほぼ平行に配向されるように、整列が調整される場合、有利であり得る。例として、焦点ゾーンの局所拡大方向に対してほぼ平行に配向された被加工材の材料における材料改質部の形成が、それによって達成され得る。特に、これにより、材料の最適な分離が可能になる。
【0063】
また、焦点分布の幾何学的形状及び/又は強度プロファイルの主拡大方向が対応する局所拡大方向に対して斜めに配向されるような方法で実施されるように、主拡大方向の整列を行うことができる。例として、主拡大方向は、局所拡大方向に対して少なくとも1°及び/又は最大90°の最小角度を含む。その結果、焦点分布は、例えば、ワークピースのレーザ加工中に生じる残留ワークピースセグメント及び/又はスクラップセグメント内の少なくとも特定の部分内に位置する。結果として、材料分離のためのエッチング攻撃を促進する材料改質部及び/又はチャネルが、例えば、残留ワークセグメント及び/又はスクラップセグメント内に形成される。
【0064】
原理的な問題として、更に、前進方向に対して垂直に配向された断面内の焦点分布を、ビーム成形要素によって、その焦点分布がこの断面内で前進方向に対して垂直な主拡大方向を有するように修正することも可能である。
【0065】
前進方向に対して垂直な横断平面における焦点分布を、ビーム成形要素によって、その焦点分布が湾曲した長手方向中心軸を有するように修正されるようにすることができる。
【0066】
ビーム成形要素が、前進方向に対して平行に配向された断面における焦点分布の強度プロファイルに、強度プロファイルが少なくとも1つの優先方向を有するように修正をもたらし、特に、少なくとも1つの優先方向が、前進方向に対して平行又は斜め又は垂直に配向される場合、有利であり得る。その結果、レーザ加工中のワークピースの材料における材料改質部の形成を、特に制御及び/又は最適化することができる。例えば、これにより、材料分離を目的としたエッチング液の導入の改善を可能にする。
【0067】
特に、少なくとも1つの優先方向及び前進方向が、共通の平面内に位置する。
【0068】
例として、焦点分布の強度プロファイルは、ビーム成形要素によって、前進方向に対して平行な面内で、例えば楕円状に、又は長方形状若しくは正方形状に形成される。
【0069】
例として、楕円の半長軸は、楕円状の焦点分布の優先方向を意味すると理解されるべきである。
【0070】
例として、楕円の形状の焦点分布の優先方向は、前進方向に対して平行又はほぼ平行に配向される。
【0071】
正方形又は長方形の形状の焦点分布は、例えば、2つの優先方向を有し、これらの方向は各々、正方形の2つの対向する点の接続方向に対して平行に配向される。例として、優先方向の一方は、前進方向に対して平行に、他方は、それに対して垂直に配向される。
【0072】
前進方向に対して平行に配向された断面における焦点分布の少なくとも1つの優先方向の整列が、第1のビーム成形デバイスのビーム成形要素によって調整可能又は調節される場合、有利であり得る。その結果、レーザ加工中のワークピースの材料における材料改質部の形成を、特に制御及び/又は最適化することができる。
【0073】
特に、少なくとも1つの焦点ゾーンの少なくとも1つの作業角度が、少なくとも1°及び/又は最大90°であるようにすることができる。好ましくは、少なくとも1つの作業角度は、少なくとも10°である。
【0074】
作業角度とは、特に、少なくとも1つの焦点ゾーンに割り当てられた局所拡大方向とワークピースの外面との間の最小角度を意味すると理解されるべきである。例として、少なくとも1つの焦点ゾーンは、この外面を通してワークピースの材料内に入力結合及び/又は導入される。
【0075】
少なくとも1つの焦点ゾーンは、異なる局所拡大方向及び/又は作業角度を有する異なる部分を有するようにすることができる。
【0076】
第1のビーム成形デバイスが、第1のビーム成形デバイスから出力結合された成分ビームが各々、少なくとも2つの異なる偏光状態のうちの1つを有するように構成された偏光ビーム分割要素を備え、異なる偏光状態を有する成分ビームが集束光学ユニットによって少なくとも1つの焦点ゾーンの隣接する部分領域内に集束される場合、有利であり得る。その結果、少なくとも1つの焦点ゾーンは、異なる偏光状態を有する焦点及び/又は焦点分布を共につなぎ合わせることによって形成され得る。
【0077】
異なる偏光状態を有する焦点及び/又は焦点分布は、特に、相互にインコヒーレントな成分ビームから形成される。その結果、焦点及び/又は焦点分布は、互いに特に小さい距離をおいて配置及び/又は並置され得る。
【0078】
偏光ビーム分割要素は、特に、偏光ビーム分割要素に入力結合されたビームを、各々が少なくとも2つの異なる偏光状態のうちの1つを有する、複数の偏光成分ビームに分割するために使用される。
【0079】
例として、偏光ビーム分割要素は、複屈折ウェッジ要素及び/又は複屈折レンズ要素を備える。例えば、これにより、成分ビームが集束光学ユニットによって集束される前に、異なる偏光状態を有する成分ビームの方向オフセット及び/又は角度オフセットを生成することが可能になる。その結果、異なる偏光状態を有する成分ビームを、少なくとも1つの焦点ゾーンの空間的に異なる部分領域内に結像させることができる。
【0080】
特に、異なる偏光状態は、異なる直線偏光状態を意味すると理解されるべきである。
【0081】
例として、偏光ビーム分割器要素は、偏光ビーム分割用の水晶振動子を備える。
【0082】
本発明によれば、冒頭に述べた方法が提供され、方法では、ビーム分割要素に入射する第1の入力ビームを複数の成分ビームに分割するために、第1のビーム成形デバイスのビーム分割要素が使用され、第1のビーム成形デバイスに割り当てられた集束光学ユニットによって、第1のビーム成形デバイスから出力結合された成分ビームが、少なくとも1つの焦点ゾーン内に集束され、第1の入力ビームが、第1の入力ビームへの位相付与によって、ビーム分割要素によって分割され、成分ビームが、少なくとも1つの焦点ゾーンを形成する目的で、少なくとも1つの焦点ゾーンの異なる部分領域内に集束され、少なくとも1つの焦点ゾーンが、集束光学ユニットによって、ワークピースをレーザ加工するためにワークピースの外面に対して少なくとも1つの作業角度で材料内に導入され、材料の屈折率変化に関連する材料改質部が、材料を少なくとも1つの焦点ゾーンに露出させることによって、材料内に生成される。
【0083】
本発明による方法は、特に、本発明による装置の1つ以上の特徴及び/又は利点を有する。
【0084】
特に、本発明による方法は、本発明による装置によって実施可能である。特に、本発明による装置は、本発明による方法を実施する。
【0085】
特に、ワークピースをレーザ加工する目的で、少なくとも1つの焦点ゾーンがワークピースの材料に対して前進方向に移動されるようにすることができる。特に、材料と少なくとも1つの焦点ゾーンとの間で、前進方向に配向された相対速度が設定されるか、又は調整可能である。
【0086】
特に、ワークピースに対する少なくとも1つの焦点ゾーンの相対移動の結果として、加工線及び/又は加工面に沿ってワークピースの材料内に材料改質部が形成されるようにすることができる。特に、ワークピースは、結果として、加工線及び/又は加工面に沿って分離され得る。
【0087】
熱的負荷及び/又は機械的応力を加えることによって、及び/又は少なくとも1つの湿式化学溶液によるエッチングによって、ワークピースの材料が加工線及び/又は加工面に沿って分離可能であるか又は分離される場合、有利であり得る。例として、エッチングは、超音波アシストエッチング浴中で実施される。
【0088】
特に、本発明による装置及び/又は本発明による方法は、以下に示される特徴のうちの1つ以上を有する。
【0089】
少なくとも1つの焦点ゾーンは、ワークピースの2つの異なる及び/又は対向する外面の間に延びるように、特に連続的に延びるようにすることができる。例として、これらの外面は、互いに平行に又は互いに斜めに配向される。その結果、ワークピースを2つの異なるセグメントに分離することができ、又はエッジ加工を目的としてワークピースからセグメントを分離することができる。結果として、例えばエッジ領域を斜角付け又は面取りすることが可能である。
【0090】
特に、少なくとも1つの焦点ゾーンは、スクラップセグメント及び/又はワークピースから分離される残留ワークピースセグメント内に材料改質部が形成されるように配置された焦点分布を有するようにすることができる。例として、材料改質部は、材料分離を目的としたエッチング液の導入を改善するためのチャネルを形成する。
【0091】
例として、少なくとも1つの焦点ゾーンの焦点分布は、これらの少なくとも特定の部分が、ワークピースのレーザ加工中に形成される残留ワークピースセグメント及び/又はスクラップセグメント内に配置されるように、又はこれらの少なくとも特定の部分がワークピースのレーザ加工中に形成される残留ワークピースセグメント内に突出するように配置される。例として、レーザ加工中に形成された材料改質部へのエッチング液の供給を促進する、材料改質部及び/又はチャネルを、結果としての残留ワークピースセグメント及び/又はスクラップセグメント内に形成することができる。これにより、材料改質部が配置される加工面に沿って、材料分離を改善することが可能になる。
【0092】
同じ理由で、少なくとも1つの焦点ゾーンの焦点分布は、それぞれの焦点分布の主要最大値及び/又はグローバル最大値が、ワークピースのレーザ加工中に生じる製品ピースセグメントに面するように、及び/又は残留ワークピースセグメントから離れる方向に面するように配置される場合、有利である。
【0093】
例として、製品ピースセグメントとは、ワークピースの分離中に生じる(残留ワークピースセグメント及び/又はスクラップセグメントとは対照的な)有用なセグメントを意味すると理解されるべきである。
【0094】
特に、焦点ゾーンが形成される焦点ゾーンの焦点分布は、20%以下の強度変動を有する。
【0095】
特に、装置は、好ましくは非反射性及び/又は強散乱性表面を有する、ワークピース用のワークピースマウントを備える。
【0096】
特に、装置は、レーザビームを提供するためのレーザ源を備え、そこから少なくとも1つの焦点ゾーンが形成可能又は形成されるようにすることができる。特に、パルスレーザビーム及び/又は超短パルスレーザビームが、レーザ源によって提供される。
【0097】
特に、少なくとも1つの焦点ゾーンが、超短パルスレーザビームから形成されるか、又は超短パルスレーザビームによって提供される。この超短パルスレーザビームは、特に超短パルスレーザパルスを含む。
【0098】
例として、少なくとも1つの焦点ゾーンが形成可能又は形成されるレーザビームの波長は、少なくとも300nm及び/又は1500nm以下である。例えば、波長は、515nm又は1030nmである。
【0099】
特に、少なくとも1つの焦点ゾーンが形成可能又は形成されるレーザビームは、少なくとも1W~1kWの平均出力を有する。例えば、レーザビームは、少なくとも10μJ及び/又は最大50mJのパルスエネルギーを有するパルスを含む。レーザビームが個々のパルス又はバーストを含み、バーストが2~20個のサブパルスを有し、特に、約20nsの時間間隔を有するようにすることができる。
【0100】
少なくとも1つの焦点ゾーンは、ワークピースをレーザ加工する目的で、ワークピースに対して少なくとも1つの焦点ゾーンが移動される前進方向に対して垂直に配向された回転軸を中心に回転可能であるようにすることができる。その結果、ワークピースは、例えば、湾曲した加工線及び/又は加工面に沿って加工され得る。
【0101】
特に、少なくとも1つの焦点ゾーンは、ワークピースをレーザ加工するための空間的に連続した相互作用領域を形成し、ワークピースの材料をこの相互作用領域に露出させることによって、特に材料の分離を可能にする局所材料改質部を、特に相互作用領域内に形成することができる。特に、相互に隣接する材料改質部の間に、クラックの形成及び/又は材料の屈折率変化が存在する。
【0102】
超短レーザパルスによって透明材料内に導入される材料改質部は、3つの異なるクラスに細分化される。(非特許文献1)を参照されたい。タイプIは、等方性の屈折率変化であり、タイプIIは、複屈折の屈折率変化であり、及びタイプIIIは、いわゆるボイド又は空洞である。この点で、形成される材料改質部は、そこから焦点ゾーンが形成されるレーザビームのパラメータ、例えば、レーザビームのパルス持続時間、波長、パルスエネルギー、及び繰り返し周波数などのレーザパラメータ、並びにとりわけ電子構造及び熱膨張係数などの材料特性、更に集束の開口数(NA)に依存する。
【0103】
タイプI型の等方性の屈折率変化は、レーザパルスによる局所的に制限された溶融及び透明材料の急速な再固化に起因する。例えば、石英ガラスが高温からより急速に冷却された場合、石英ガラスは、材料の密度及び屈折率が高くなる。したがって、焦点体積内の材料が融解し、その後、急速に冷却された場合、石英ガラスは、材料改質領域において、非改質領域におけるよりも高い屈折率を有する。
【0104】
タイプII型の複屈折の屈折率変化は、例えば、超短レーザパルスと、レーザパルスによって発生されたプラズマの電界との間の干渉によって生じ得る。この干渉により、電子プラズマ密度の周期的変調が生じ、固化時に透明材料の複屈折特性、すなわち方向依存性の屈折率がもたらされる。タイプIIの改質部には、例えば、いわゆるナノ格子の形成も伴う。
【0105】
例として、タイプIIIの改質部のボイド(空洞)は、高いレーザパルスエネルギーによって生じさせることができる。これに関連して、ボイドの形成は、高度に励起され気化した材料が焦点体積から周囲材料に爆発的に膨張することに起因する。このプロセスは、微小爆発とも呼ばれる。この膨張は、材料塊内で発生するため、微小爆発により、より低密度の若しくは中空のコア(ボイド)又はサブマイクロメートル領域若しくは原子領域の微細欠陥がもたらされ、このボイド又は欠陥は、高密度の材料の外郭によって囲まれている。微小爆発の衝撃波面での圧縮により、クラックの自発的な形成をもたらす可能性のある又はクラックの形成を促進する可能性のある応力が透明材料内で発生する。
【0106】
特に、タイプIの改質部及びタイプIIの改質部でもボイドの形成を伴うことがある。例として、タイプIの改質部及びタイプIIの改質部は、導入されたレーザパルスの周りのより応力の低いエリアで生じ得る。したがって、タイプIIIの改質部の導入に言及する場合、いずれの場合にもより低密度の若しくは中空のコア又は欠陥が存在する。例として、タイプIIIの改質部の微小爆発によってサファイア内に生じるのは、空洞ではなく、低密度の領域である。タイプIIIの改質部の場合に生じる材料応力により、このような改質部は、多くの場合、クラックの形成を更に伴うか又は少なくとも促進する。タイプIIIの改質部の導入時、タイプIの改質部及びタイプIIの改質部の形成を完全に抑制又は回避することはできない。したがって、「純粋な」タイプIIIの改質部が見当たることはまずない。
【0107】
高いレーザビーム繰り返しレートの場合、パルス間で材料を完全に冷却することができず、結果的にパルス毎に導入される熱の蓄積効果が材料改質部に影響を及ぼし得る。例として、レーザビーム繰り返し周波数は、材料の熱拡散時間の逆数よりも高い場合があり、結果として、焦点ゾーン内において、材料の融解温度に達するまでレーザエネルギーの連続的な吸収による熱の蓄積が起こり得る。更に、焦点ゾーンの周囲のエリアへの熱エネルギーの熱輸送の結果、焦点ゾーンよりも大きい領域を溶融することができる。加熱された材料は、超短レーザパルスの導入後に急速に冷却されるため、高温状態の密度及び他の構造特性は、あたかも材料内に凍結されたようなものである。
【0108】
少なくとも1つの焦点ゾーンは、特に、複数の間隔をおいて配置された及び/又は隣接する焦点分布を含み、焦点ゾーンは、隣接する焦点分布の間に、特に材料との相互作用がないか又は無視できる相互作用が存在する、中断及び/又はゼロを有し得る。特に、焦点ゾーンのこれらの中断は、焦点ゾーンの最大範囲及び/又は最大長さの10%以下の空間的拡大を有する。特に、これらの中断は、100μm以下、特に50μm以下の空間的拡大を有する。強度分布の比較的大きい中断が存在する場合、これは異なる焦点ゾーンを意味すると理解されるべきである。
【0109】
例として、少なくとも1つの焦点ゾーンは、50μm~5000μmの全体長さを有する。
【0110】
少なくとも1つの焦点ゾーンの空間的寸法、例えばそれぞれの長さ及び/又はそれぞれの直径を決定するために、焦点ゾーンは、特定の強度閾値を上回って位置する強度値のみを含む修正された強度分布で考慮される。この点で、強度閾値は、例えば、この強度閾値未満の値が、材料改質部を形成する目的で材料との相互作用とはもはや関係しない低い強度を有するように選択される。例えば、強度閾値は、実際の強度分布のグローバル強度最大値の50%である。それぞれの焦点域の長さ、又はそれぞれの焦点域の直径は、修正された強度分布に基づいて採用された、焦点ゾーンの長手方向中心軸に沿った又は長手方向中心軸に対して垂直に配向された平面における、それぞれの焦点ゾーンの範囲の最大長さ及び/又は最大範囲の長さを意味すると理解されるべきである。
【0111】
特に、「少なくともほぼ」又は「ほぼ」という表示は、一般的に10%以下の偏差を意味すると理解されるべきである。別段の記載がない限り、「少なくともほぼ」又は「ほぼ」という表示は、特に、実際の値及び/又は距離及び/又は角度が、理想的な値及び/又は距離及び/又は角度から10%以下だけ逸脱していること、及び/又は実際の幾何学的形状が、理想的な幾何学的形状から10%以下だけ逸脱していることを意味すると理解されるべきである。
【0112】
以下の好ましい実施形態の説明は、図面と関連付けて本発明をより詳細に説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1】ワークピースをレーザ加工するための装置の例示的な実施形態を示す概略図である。
【
図2】ワークピースをレーザ加工するための装置の更なる例示的な実施形態を示す概略図である。
【
図3a】ワークピースをレーザ加工するための焦点ゾーンの焦点分布の例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図3b】ワークピースをレーザ加工するための焦点ゾーンの焦点分布の更なる例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図3c】ワークピースをレーザ加工するための焦点ゾーンの焦点分布の更なる例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図4a】ワークピースの材料内に導入される焦点ゾーンの一例の一部の概略断面図である。
【
図4b】ワークピースの材料内に導入される焦点ゾーンの更なる例の一部の概略断面図である。
【
図5】ワークピースを第1の外面から第2の外面まで完全に貫通する焦点ゾーンの概略断面図である。
【
図6】ワークピースの材料において、焦点ゾーンによって生成された材料改質部の概略断面図であり、これらの材料改質部は、材料内でクラックの形成を伴っている。
【
図7】ワークピースの材料において、焦点ゾーンによって生成された材料改質部の概略断面図であり、これらの材料改質部は、熱の蓄積によって生成され、及び/又は材料内で屈折率変化を伴っている。
【
図8】間隔をあけて配置された複数の細長い焦点分布を有する、焦点ゾーンの一例のシミュレーション強度分布の断面図である。
【
図9a】急激に自動集束するレーザビームの一例のシミュレーション強度分布の断面図である。
【
図9b】
図9aによる急激に自動集束するレーザビームの強度分布を、このレーザビームの主拡大方向に沿って示す図である。
【
図10】急激に自動集束するビームの形態で、相互に間隔をおいて配置された複数の焦点分布を有する、焦点ゾーンのシミュレーション強度分布の断面図である。
【
図11】急激に自動集束するビームに割り当てられた位相分布の概略図である。
【
図12a】焦点ゾーンの3つの異なる例示的な実施形態のシミュレーション強度分布の断面図である。
【
図12b】
図12aによる断面図に割り当てられた位相分布の概略図である。
【
図12c】焦点ゾーンの3つの異なる例示的な実施形態のシミュレーション強度分布の断面図である。
【
図12d】
図12cによる断面図に割り当てられた位相分布の概略図である。
【
図12e】焦点ゾーンの3つの異なる例示的な実施形態のシミュレーション強度分布の断面図である。
【
図12f】
図12eによる断面図に割り当てられた位相分布の概略図である。
【
図13a】加工線及び/又は加工面に沿ってワークピースの材料内に生成された材料改質部の概略斜視図である。
【
図13b】加工線及び/又は加工面においてワークピースを分離することによって形成される、ワークピースの2つのセグメントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0114】
同じであるか、又は同等の機能を有する要素は、全ての例示的な実施形態において同じ参照符号によって示される。
【0115】
ワークピースをレーザ加工するための装置の例示的な実施形態が、
図1に示されており、その図では100で示されている。装置100は、ワークピース104の材料102内に、例えばサブミクロンスケール又は原子スケールの欠陥などの、材料を弱める局所材料改質部を生成するように使用することができる。このような材料改質部において、例えば、ワークピースを異なるセグメントに分離するか、又は例えば、その後のステップでワークピース104からセグメントを分離することができる。特に、装置100は、ワークピース104からの対応するセグメントの分離の結果としてワークピース104のエッジ領域が斜角付け又は面取りされるような作業角度で、材料102内に材料改質部を導入するように使用することができる。
【0116】
装置100は、その中に第1の入力ビーム108が入力結合される第1のビーム成形デバイス106を備える。例として、この第1の入力ビーム108は、例えばレーザ源110によって提供され、及び/又はレーザ源110から出力結合されるレーザビームである。特に、第1の入力ビーム108は、特に平行に走る複数の光線を含む光線束を意味すると理解されるべきである。
【0117】
レーザ源110によって提供されるレーザビームは、特に、パルスレーザビーム及び/又は超短パルスレーザビームである。
【0118】
第1のビーム成形デバイス106は、ビーム分割要素112を備え、これによって、第1の入力ビーム108が複数の成分ビーム114及び/又は成分光線束に分割される。
図1に示される例では、2つの相互に異なる成分ビーム114a及び114bが示されている。
【0119】
第1のビーム成形要素106及び/又はビーム分割要素112は、各々、例えば、遠視野ビーム成形要素として形成される。
【0120】
第1のビーム成形デバイス106から出力結合された成分ビーム114を集束させる目的で、装置100は、その中に成分ビーム114が入力結合される集束光学ユニット116を備える。例として、相互に異なる成分ビーム114は、空間オフセット及び/又は角度オフセットを伴って集束光学ユニット116に入射する。
【0121】
例として、集束光学ユニット116は、マイクロスコープ対物レンズ又はレンズ要素の形態である。
【0122】
成分ビーム114は、集束光学ユニット116によって焦点ゾーン122の異なる部分領域120に集束され、そのレーザ加工のためにワークピース104の材料102内に導入される。
【0123】
例として、
図1は、焦点ゾーン122を形成する目的で、その中に成分ビーム114が集束される、2つの異なる部分領域120a及び120bを示している。ここでは、例えば、部分領域120aは、成分ビーム114aに割り当てられ、部分領域120bは、成分ビーム114bに割り当てられている。
【0124】
第1のビーム成形デバイス106に入力結合される第1の入力ビーム108には、特定の焦点分布が割り当てられている。この焦点分布は、第1のビーム成形デバイス106に入力結合される前に第1の入力ビーム108を集束させることによって形成されることになる、幾何学的形状及び/又は強度プロファイルを意味すると理解されるべきである。
【0125】
例として、例えばレーザ源108によって提供される第1の入力ビーム108は、ガウスビームプロファイルを有する。第1のビーム成形デバイス106への入力結合の前に第1の入力ビーム108を集束させることにより、この場合、ガウス形状及び/又はガウス強度プロファイルを有する焦点分布をもたらすことになる。
【0126】
特に、焦点分布の形状は、焦点分布の特徴的な空間的形状及び/又は空間的拡大を意味すると理解されるべきである。
【0127】
第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム108は、ビーム分割要素112によって、この焦点分布が同様に成分ビーム114に割り当てられるように分割される。それぞれの焦点分布124は、集束光学ユニット116によって、焦点ゾーン122の異なる部分領域120内にこれらの成分ビーム114を集束させることによって形成され、これらの焦点分布124は、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布に基づいている。
【0128】
その結果、焦点ゾーン122は、異なる焦点分布124を共につなぎ合わせることによって構築及び/又は形成される。現在のところ、異なる焦点分布124は、焦点ゾーン122の異なる空間位置における焦点分布124を意味すると理解されるべきであり、これらの異なる焦点分布124は、少なくともほぼ同じ幾何学的形状及び/又は同じ幾何学的強度プロファイルを有する。
【0129】
異なる焦点分布124は、焦点ゾーン122内に、互いに距離をおいて配置される。原理的には、相互に隣接する異なる焦点分布124が空間的にオーバーラップすることが可能である。
【0130】
ビーム分割要素112によるビーム分割により、特に、焦点分布を同一のコピーとして形成させ、これが、焦点ゾーン122の異なる部分領域120に結像される。
【0131】
例として、ビーム分割要素112は、3次元ビーム分割要素の形態である。ビーム分割要素112の技術的実現性及び特性に関しては、(非特許文献2)への参照がなされる。その内容全体が明示的に参照される。
【0132】
特に、相互に隣接する焦点分布124の間の距離d1及び/又は空間オフセットは、ビーム分割要素112によって設定することができる。
【0133】
例として、x方向における距離dx及び/又は空間オフセット、並びにx方向に対して直交するz方向における距離dz及び/又は空間オフセットを、相互に隣接する焦点分布124の間に設定することができる。
【0134】
この目的のために、相互に異なる成分ビーム114は、例えば、ビーム分割要素112によって、その異なる成分ビームが特定の空間オフセット並びに/又は特定の収束及び/若しくは発散で集束光学ユニット116に入射するように形成される。次いで、相互に異なる成分ビーム114は、集束光学ユニット116によって、そこから生じるx方向及び/又はz方向における空間オフセットを伴って結像される。
【0135】
ビーム分割要素112によるビーム分割を実施するために、定義された横断位相分布が、第1の入力ビーム108の横断ビーム断面に付与される。例として、ビーム分割要素112及び関連する焦点ゾーン112から出力結合されたビームの横断位相分布の例を、
図12a、
図12b、
図12c、
図12d、
図12e、
図12fにそれぞれ示している。
【0136】
x方向及び/又はz方向の空間オフセットを生成するために、ビーム分割要素112による位相付与は、例えば、各焦点分布124に割り当てられた位相分布が特定の光学格子成分及び/又は光学レンズ成分を有するように実施される。光学回折格子成分により、集束光学ユニット116の上流で成分ビーム114の角度偏向が存在し、その集束後、x方向の空間オフセットが生じる。光学レンズ成分により、成分ビーム116は、異なる収束及び/又は発散で集束光学ユニット116に入射し、集束後、z方向の空間オフセットが生じる。
【0137】
第1のビーム成形デバイス106は、偏光ビーム分割要素126を有するようにすることができる。偏光ビーム分割要素126は、第1の入力ビーム108及び/又はビーム分割要素112から出力結合されたビームを、各々が少なくとも2つの異なる偏光状態のうちの1つを有するビームに、偏光ビーム分割を実施するために使用される。
【0138】
偏光ビーム分割要素126による偏光ビーム分割の結果として、第1のビーム成形要素106から出力結合された成分ビーム114は、各々、少なくとも2つの異なる偏光状態のうちの1つを有する。異なる偏光状態を有するこれらの成分ビーム114は、集束光学ユニット116によって、焦点ゾーン122の異なる部分領域120内に集束される。
【0139】
例として、偏光ビーム分割要素126は、第1のビーム成形要素106に入力結合された第1の入力ビーム108の主伝搬方向128に対してビーム分割要素116の上流又は下流に配置される。
【0140】
示された例では、主伝搬方向128は、z方向に対して平行又はほぼ平行に配向されている。特に、x方向及びz方向は、各々、y方向に対して垂直に配向されている。示された例では、このy方向は、ワークピース104をレーザ加工するために焦点分布127がワークピース104に対して移動される前進方向129に対して、平行又はほぼ平行に配向されている。
【0141】
偏光ビーム分割要素126の機能及び設計に関しては、同じ出願人による、(特許文献2)(出願日:2020年6月22日)及び(特許文献3)(出願日:2019年11月14日)への参照がなされるが、いずれも先行する公開ではない。その内容全体が明示的に参照される。
【0142】
特に、成分ビーム114の偏光状態は、例えば2つの異なる偏光状態が提供され、及び/又は例えば、相互に異なる成分ビームのそれぞれの偏光方向が互いに対して90°の角度で整列される、直線偏光状態であると理解されるべきである。
【0143】
特に、成分ビーム114は、電界がその成分ビームの伝搬方向に対して垂直な平面内に配向されるように偏光される(横断電界)。
【0144】
偏光ビーム分割のために、偏光ビーム分割要素126は、例えば、複屈折レンズ要素及び/又は複屈折ウェッジ要素を有する。例として、複屈折レンズ要素及び/又は複屈折ウェッジ要素は、水晶振動子から製造されるか、又は水晶振動子を備える。
【0145】
例として、異なる偏光状態を有する成分ビーム114は、複屈折レンズ要素によって、その成分ビームが集束光学ユニット116による集束の結果としてz方向及び/又はx方向に空間オフセットと共に結像されるように形成される。その結果、異なる偏光状態を有する成分ビーム114から形成される焦点分布124は、例えば、焦点ゾーン122において、z方向及び/又はx方向に空間オフセットと共に配置され得る。
【0146】
例として、焦点分布124の並置は、偏光ビーム分割要素126によって焦点ゾーン122内で実現することができ、相互に隣接する焦点分布124は、各々、異なる偏光状態を有する成分ビーム114から形成される。
【0147】
更に、第1のビーム成形デバイス106がビーム成形要素130を有するようにすることができ、これにより、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布が、第1のビーム成形デバイス106への入力結合に続いて修正可能となる。
【0148】
ビーム成形要素130の技術的実現性及び特性に関しては、(非特許文献2)、及び(非特許文献3)への参照がなされる。その内容全体が明示的に参照される。
【0149】
例として、ビーム成形要素130は、ビーム成形要素130に入力結合されたビーム上に定義された波面収差を付加するための回折又は屈折位相要素として形成される。例として、ビーム成形要素130は、回折フィールドマッパの形態である。
【0150】
例として、ビーム成形要素130は、第1の入力ビーム108の主伝搬方向128に対して、ビーム分割要素112の上流又は下流に配置される。
【0151】
図1に示される例では、ビーム成形要素130は、ビーム分割要素112と偏光ビーム分割要素126との間に配置されている。例として、入力ビーム108は、まずビーム分割要素112で処理され、続いてビーム成形要素130で、及び/又は偏光ビーム分割要素126で処理される。
【0152】
ビーム成形要素130は、焦点ゾーン122内に結像された焦点分布124の幾何学的形状及び/又は強度プロファイルを修正可能にする。
【0153】
ビーム成形要素130による焦点ゾーン122の焦点分布124の修正は、前進方向129に対して平行な断面において実施することができ、この断面は、特に、主伝搬方向128に対して垂直な方向及び/又はz方向に対して垂直な方向に配向される(
図3a、
図3b、及び
図3c)。
【0154】
更に、焦点ゾーン122の焦点分布124は、ビーム成形要素130によって、前進方向129に対して垂直な断面内で修正することができる(
図4a及び
図4b)。示される例では、この断面は、x方向に対して平行であり、且つ主伝搬方向128及び/又はz方向に対して平行である。
【0155】
前進方向129に対して平行に配向された断面に関連して、焦点分布124は、例えば、焦点分布124の形状及び/又は強度プロファイルがこの断面において優先方向132を有するように修正される。特に、この優先方向132は、焦点分布124の拡大長さが局所的又はグローバルのいずれかで最大になる方向を意味すると理解されるべきである。例として、優先方向132は、焦点分布124の主拡大方向であると理解されるべきである。
【0156】
図3bに示される例では、焦点分布124は、前進方向129に対して平行な平面内で楕円状に及び/又は楕円として形成されている。この場合、優先方向132は、この楕円の半長軸に対して平行に配向されている。
【0157】
原理的には、焦点分布124が複数の優先方向132を有することも可能である。
図3cに示される例では、焦点分布124は、矩形及び/又は長方形、特に前進方向129に対して平行な平面内で正方形に形成されている。この場合、焦点分布124は、例えばx方向に対して平行に配向された第1の優先方向132’aと、例えば斜めに、特にx方向に対して垂直に、すなわち、示される例ではy方向に対して平行に配向された、第2の優先方向132’bとを有する。
【0158】
例として、第1の優先方向132’a及び第2の優先方向132’bは、各々、長方形の相互に対向する角部の間の接続線に対して平行である。
【0159】
第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布124は、前進方向129に対して垂直に配向された断面において細長く及び/又は細長い形状を有するようにすることができる(
図4a及び
図4b)。例として、これは、第1のビーム成形デバイス106に入力結合される第1の入力ビーム108に準非回折及び/又はベッセル状のビームプロファイルが割り当てられることによって実現される。
【0160】
例として、焦点分布124は、主拡大方向134を有し、これに沿って、焦点分布124は、前進方向129に対して垂直に配向された断面において、特により大きい長さ及び/又は特に最大の拡大を有する(
図3cも参照)。例として、主拡大方向134は、焦点分布124の最大の拡大方向に対して、焦点分布124の始点と終点との間の接続線に対して平行に配向される。
【0161】
特に、ビーム成形要素130によって、前進方向129に対して垂直に配向された断面における焦点分布124の整列136及び/又は配向が適応可能であるようにすることができ、例えば、焦点分布124のそれぞれの主拡大方向134の整列136が適応可能である。
【0162】
図4a及び
図4bに示される例では、それぞれの焦点分布124の整列136は、x-z平面内で適応可能である。
【0163】
例として、焦点分布124のそれぞれの整列136は、ビーム成形要素130によって、整列136がそれぞれの焦点分布124に割り当てられた焦点ゾーン122の局所拡大方向138に対して平行又はほぼ平行になるように適合される。
【0164】
例として、焦点ゾーン122の局所拡大方向138は、隣接する焦点分布124の、例えば2つ又は3つの隣接する焦点分布124の、局所空間的方向であると理解されるべきである。例として、焦点ゾーン122の焦点分布124は、異なる局所拡大方向138を有する焦点ゾーン122の異なる部分内に配置され得る。
【0165】
前進方向129に対して垂直な断面では、焦点分布124は、例えば、ビーム成形要素130(
図4b)による適応によって湾曲した形状を提供することができる。例として、これにより、焦点分布124を、湾曲したベッセル状ビーム及び/又は加速ベッセル状ビームの形態で生成することが可能となる。
【0166】
湾曲した形状を有する準非回折ビーム及び/又はベッセル状ビームの形成及び特性に関しては、(非特許文献4)への参照がなされる。
【0167】
例として、焦点分布124は、それに沿って延びる長手方向中心軸140を有する。例として、この長手方向中心軸140は、長方形の形状を有する(
図4a)。湾曲した形状を有する焦点分布の場合、長手方向中心軸140は、湾曲した形状又は特定の部分において湾曲した形状を有する(
図4b)。
【0168】
焦点ゾーン122に割り当てられた焦点分布124は、第1のビーム成形デバイス106によって、焦点ゾーン122の、例えば直線的形状を有する長手方向軸142に沿って配置される(
図4a及び
図4b)。
【0169】
長手方向軸142は、必ずしも直線的及び/又は連続的な形態を有する必要はない。例として、長手方向軸142は、少なくとも特定の部分において湾曲することができる。また、長手方向軸142が方向変化、特に非連続的な方向変化を有することも可能である。
【0170】
図5に示される例では、焦点ゾーン122は、ワークピース104の材料102内で、ワークピース104の第1の外面144からワークピース104の第2の外面146まで延びており、第2の外面146は、ワークピース104の深さ方向148に対して第1の外面144から距離をおいて配置されている。特に、焦点ゾーン122は、深さ方向144の全体にわたって及び/又は中断なく、ワークピース104を通過する。
【0171】
ワークピース104の第1の外面144及び第2の外面146は、例えば、互いに平行又はほぼ平行に配向されている。
【0172】
例として、ワークピース104をレーザ加工するために、焦点ゾーン122は、第1の外面144を通って又は第2の外面146を通って、ワークピース104の材料102内に導入及び/又は入力結合される。
【0173】
焦点ゾーン122は、第1の外面144から始まる第1の部分150と、深さ方向148においてその第1の部分に隣接する焦点ゾーン122の第2の部分152とを有する。更に、焦点ゾーン122は、深さ方向148においてこの第2の部分152に続く第3の部分154を有する。
【0174】
示される例では、焦点ゾーン122の長手方向軸142は、各部分150、152、及び154において直線的な形状を有し、長手方向軸142は、特に各場合において、第1の部分150から第2の部分152への移行部、及び第2の部分152から第3の部分154への移行部において、方向変化を有する。
【0175】
これらの部分150、152、154の各々には、異なる局所拡大方向138が割り当てられ、それに関して、焦点分布122が配置されている。
【0176】
更に、部分150、152、154の各々には、特定の作業角度αが割り当てられている。この作業角度αは、対応する部分150、152、154の局所拡大方向138と、第1の外面144及び/又は第2の外面146との間の最小角度を意味すると理解されるべきである。
【0177】
例として、第1の部分150及び第3の部分154は、45°の作業角度αを有し、第2の部分152は、90°の作業角度αを有する。
【0178】
ワークピース104の材料102は、焦点ゾーン122及び/又は焦点分布124が形成されるレーザ光の波長に対して透明な材料から製造される。
【0179】
焦点ゾーン122は、材料102をレーザ加工する目的で材料102に導入される。それぞれの局所材料改質部156は、材料102の焦点ゾーン122(
図6)へのこの露出によって焦点分布124に形成され、この材料改質部は、例えば焦点ゾーン122の長手方向軸142に沿って互いに間隔をあけて配置される。
【0180】
例えば、レーザパラメータ及び/又は前進速度などの加工パラメータを適切に選択することにより、材料102(
図6)内にクラック157の自発的な形成をもたらすタイプIIIの改質部として材料改質部156を生成することを可能にする。材料102のレーザ加工中に形成されるクラック157は、特に、相互に隣接する材料改質部156の間に延びる。
【0181】
前進速度は、前進方向129における焦点ゾーン122と材料102との間の相対動作の速度を意味すると理解されるべきである。
【0182】
代替案として、加工パラメータを適切に選択することにより、材料改質部156をタイプI及び/又はタイプIIの改質部として生成することが可能になり、これには、材料102への熱蓄積及び/又は材料102の屈折率変化を伴う。
【0183】
タイプI及び/又はタイプIIの改質部としての材料改質部156の形成は、ワークピース104の材料102における熱蓄積に関連する。特に、この場合、生成された材料改質部156は互いに非常に近接しているため、材料102を焦点ゾーン122に露出させることによって形成している間に、この熱蓄積が生じる(
図7に示されている)。
【0184】
一実施形態では、装置100は、第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム108の主伝搬方向128に対して、この第1のビーム成形デバイス106の上流に配置される第2のビーム成形デバイス158を備える。第2のビーム成形デバイス158によって、第1の入力ビーム108が第1のビーム成形デバイス106に入力結合される前に、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布を適合させることが可能である。
【0185】
この実施形態では、特に、レーザ源110によって提供され、及び/又はレーザ源100から出力結合されたレーザビームである第2の入力ビーム160が、第2のビーム成形デバイス158に入力結合される。
【0186】
第1の入力ビーム108に類似した態様では、第2の入力ビーム160は、特に、したがって、特に平行に走る複数の光線からなる光線束を意味すると理解されるべきである。
【0187】
示される例では、第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム128は、第2のビーム成形デバイス158から出力結合されたビーム、及び/又は第2のビーム成形デバイス158から出力結合された光線束である。
【0188】
第2のビーム成形デバイス158によって、第2の入力ビーム160上に位相付与が存在し、その結果、第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布が定義される。その結果、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布の幾何学的形状及び/又は強度プロファイルを、第2のビーム成形デバイス158によって定義することができる。
【0189】
例として、第2のビーム成形デバイス158に入力結合された第2の入力ビーム160は、ガウスビームプロファイルを有し、すなわち、第2の入力ビーム160は、ガウス形状及び/又はガウス強度プロファイルを有する。
【0190】
一実施形態では、第2のビーム成形デバイス158は、第2のビーム成形デバイス158によって、第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム108に準非回折及び/又はベッセル状のビームプロファイルが割り当てられるように構成及び設計される。
【0191】
その結果、第1の入力ビーム108は、特に、準非回折及び/又はベッセル状のビームプロファイルを有する焦点分布内に結像され得る。この実施形態では、焦点ゾーン122内に結像された焦点分布124は、細長い形状及び/又は細長い強度プロファイルを有する(
図2及び
図8)。特に、この実施形態の焦点分布124は、それに沿って延びる主拡大方向162を有する。
【0192】
例として、第2のビーム成形デバイス158は、細長い形状及び/又は細長い強度プロファイルを有する焦点分布124を形成する目的で、第2の入力ビーム160上に位相分布を付与するための回折光学要素及び/又はアキシコン要素であるか、又はそれらを含む。
【0193】
本実施形態における第2のビーム成形デバイス158によって提供される第1の入力ビーム108は、第1のビーム成形デバイス106に入力結合される。
【0194】
上述したように、この第1の入力ビーム108は、第1のビーム成形デバイス106のビーム分割要素112によって相互に異なる成分ビーム114に分割され、異なる成分ビームは、集束光学ユニット116によって焦点ゾーン122の異なる部分領域120内に結像される。その形状及び/又は強度プロファイルに関して、集束光学ユニット116によって焦点ゾーン122内に結像された焦点分布124は、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布のコピーを表し、集束光学ユニット116による集束は、特に焦点分布124のサイズが縮小した結像をもたらす。
【0195】
集束光学ユニット116によって焦点ゾーン122内に結像された、細長い形状及び/又は細長い強度プロファイルを有する焦点分布124の一例が、
図8にグレースケール値分布として示されており、より明るいグレースケール値は、より大きい強度を表している。
【0196】
図8に示される例では、焦点分布124は、長手方向軸142に対して、及び/又は局所拡大方向138に対して斜めに配向されている。
【0197】
ビーム成形要素130によるビーム成形、及び/又は偏光ビーム分割要素126によるビーム分割は、上述したように、第1のビーム成形デバイス106において実施されるようにすることができる。この場合、集束光学ユニット116によって結像された焦点分布124は、その形状及び/又はその強度プロファイルに関して、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布に基づいているが、ビーム成形要素130及び/又は偏光ビーム分割要素126による処理のために、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布に対して修正された形状及び/又は修正された偏光特性を有する。
【0198】
更なる実施形態では、第2のビーム成形デバイス158は、第2のビーム成形デバイス158によって、第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム108にビームプロファイルが割り当てられるように構成及び設計され、その強度プロファイルは、強度最大値164から進んで、主拡大方向166及び/又は主拡大軸に対して強度における急激な低下を有する(
図9a及び
図9b)。そのようなビームは、例えば、急激に自動集束するビームと呼ばれる。
【0199】
その結果、焦点ゾーン122は、第1のビーム成形デバイス106から出力結合された成分ビーム114を結像させることによって、そのような強度プロファイルを有する複数の焦点分布124から形成することができる(
図10)。特に、焦点ゾーン122の焦点分布124の各々の強度プロファイルは、次いで、強度における急激な低下を有する。
【0200】
第2のビーム成形デバイス158から出力結合されたビームの関連する2次元位相分布のグレースケール値表現が、
図11に示されており、割り当てられたグレースケール値スケールは、白(+piの位相)から黒(-piの位相)までの範囲に及ぶ。
【0201】
特に、位相分布は、割り当てられた中心軸167及び/又はビーム中心軸に対して半径対称及び/又は回転対称の形態を有する。例として、この中心軸167は、第2のビーム成形デバイス158に入射する第2の入力ビーム160の主伝搬方向267に対して平行又はほぼ平行に配向される。
【0202】
特に、中心軸167から進むと、位相分布に割り当てられた位相周波数は、中心軸167からの半径方向距離が増加するにつれて半径方向367に増加する。
【0203】
この実施形態では、急激に自動集束するビームの形状及び/又は強度プロファイルが、第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム108に割り当てられている。そのようなビームの形成及び特性に関しては、(非特許文献5)、並びに(非特許文献6)への参照がなされる。その内容全体が明示的に参照される。
【0204】
図9a及び
図9bに示される実施形態では、焦点分布124は、強度最大値164から進むと、主拡大方向166において、低下している強度フランク165を有する。
【0205】
低下している強度フランク165において、強度最大値164から進む強度が、ガウス強度プロファイルの場合よりも約3倍速く1/e2の値まで低下することは、急激に自動集束するビームの特徴である。
【0206】
強度最大値164は、特に、急激に自動集束するビームの強度プロファイルの主要最大値及び/又はグローバル最大値である。特に、強度プロファイルは、強度最大値164から進み、主拡大方向166とは逆に強度最大値164に続く、1つ以上の2次最大値164aを有する。特に、主拡大方向166に対して強度最大値164からの距離が増加するにつれて、2次最大値164は各々、より低い最大強度値を有する。
【0207】
特に、第2のビーム成形デバイス158を近視野ビーム成形デバイスとして形成するようにすることができる。
【0208】
例として、第1の入力ビーム108に割り当てられた焦点分布の中間像168(
図2に示されている)が、第2のビーム成形デバイス158によって形成される。第1の入力ビーム108の主伝搬方向128に対して、この中間像168は、第2のビーム成形デバイス158と第1のビーム成形デバイス106との間に配置される。
【0209】
特に、第2のビーム成形デバイス158には、遠視野光学ユニット170が割り当てられ、これにより、第2のビーム成形デバイス158から出力結合された出力ビーム172及び/又は出力光線束の遠視野光学ユニット170の焦点面174への遠視野集束が実施される。
【0210】
特に、中間像168の焦点面174への遠視野集束は、遠視野光学ユニット170によって実施される。
【0211】
この焦点面174では、出力ビーム172及び/又は出力光線束の遠視野集束は、特に遠視野光学ユニット170の光軸176を中心として配置された、リング構造及び/又はリングセグメント構造の形状における強度分布の形成を引き起こす。
【0212】
図2に示される例では、装置100のテレスコープデバイス178は、遠視野光学ユニット170及び集束光学ユニット116によって形成されている。このため、特に遠視野光学ユニット170は、集束光学ユニット116よりも大きい焦点距離を有する。
【0213】
特に、焦点面174は、遠視野光学ユニット170及び集束光学ユニット116の共通の焦点面である。特に、焦点面174は、テレスコープデバイス178の焦点面である。
【0214】
第1のビーム成形デバイス106は、特に、焦点面174及び/又は焦点面174の領域内に配置される。この領域は、焦点面174の周りに延びている領域を意味すると理解されるべきであり、この領域は、例えば、焦点面174からの遠視野光学ユニット170の焦点距離の10%の最大距離を有する。この最大距離の間隔方向は、特に、第1の入力ビーム108の光軸176及び/又は主伝搬方向128に対して平行に配向される。
【0215】
焦点面174の前述の領域は、特に、テレスコープデバイス178の遠視野領域であると理解されるべきであり、この遠視野領域では、特に、第2のビーム成形デバイス158から出力結合された出力ビーム172の遠視野集束、及び/又は第1のビーム成形デバイス106に入力結合された第1の入力ビーム108の遠視野集束が存在する。
【0216】
装置100のビーム分割要素112によって、原理的には、焦点分布124を異なる経路に沿って配置し、したがって異なる幾何学的形状の焦点ゾーンを形成することが可能である。
【0217】
図12a及び
図12bに示される例では、焦点分布124は、焦点ゾーン122の長手方向軸142に沿って配置されており、長手方向軸142は、直線的形状を有する。この場合、焦点ゾーン122には、例えば、単一の作業角度αが割り当てられ、これによって、焦点ゾーン122は、第1の外面144及び/又は第2の外面146に対して角度付けされる。特に、この例示的な実施形態における焦点ゾーン122は、全体にわたって同じ局所拡大方向138を有し、すなわち局所拡大方向138は、特に焦点ゾーン122の範囲全体にわたって一定である。
【0218】
図12c及び
図12dによる例示的な実施形態では、焦点ゾーン122は、第1の部分180と第2の部分182とを有し、焦点ゾーン122の焦点分布124は、第1の部分180及び第2の部分182において、各場合に異なる局所拡大方向138で配置される。例として、この例示的な実施形態における焦点ゾーン122は、第1の部分180及び第2の部分182において、それぞれ全体にわたって、同じ局所拡大方向138を有する。
【0219】
特に、焦点ゾーン122は、第1の部分180及び第2の部分182において同じ作業角度αを有し、焦点ゾーン122は、第1の外面144及び/又は第2の外面146に対してその作業角度で角度付けされている。特に、第1の部分180及び第2の部分182のそれぞれの局所拡大方向138の間の最小角度は、作業角度αの場合の2倍の大きさである。
【0220】
それに沿って焦点分布124が配置される焦点ゾーン122の長手方向軸142は、必ずしも直線的な形状を有する必要はない。例として、長手方向軸142が少なくとも特定の部分において湾曲した形状を有するようにすることができる。例として、
図12e及び
図12fに示される実施例では、焦点ゾーン122は、全体にわたって湾曲した形状を有する。
【0221】
例として、焦点ゾーン122は、次いで、変化する局所拡大方向138を有し、これは、すなわち、焦点ゾーン122の局所拡大方向138が、焦点ゾーン122の異なる位置において、及び/又は焦点ゾーン122の異なる焦点分布124において、それぞれに異なることを意味する。
【0222】
図12b、
図12d、及び
図12fは、各々、ビーム分割要素112から出力結合されたビームの
図12a、
図12c、及び
図12eにそれぞれ割り当てられた位相分布を示しており、割り当てられたグレースケール値スケールは、白(+piの位相)から黒(-piの位相)までの範囲である。
【0223】
本発明による装置100は、以下のように動作する。
【0224】
レーザ加工を実施するために、ワークピース104の材料102は、焦点ゾーン122に露出され、焦点ゾーン122は、ワークピース104に対して、且つその材料102を通って前進方向129に移動される。
【0225】
この場合、材料102は、特に、焦点ゾーン122が形成されるビームの波長に対して透明な材料又は部分的に透明な材料である。例えば、材料102は、ガラス材料である。
【0226】
例として、焦点ゾーン122は、予め定義された加工線184及び/又は加工面に沿って、ワークピース104の材料102を通って移動される。加工線184は、例えば、直線部分及び/又は湾曲部分を有し得る。
【0227】
材料102を焦点ゾーン122に露出させることにより、焦点ゾーン122の長手方向軸142に沿って配置される材料改質部156が、材料102内に形成される(
図5及び
図13a)。その結果、材料改質部156が配置された改質線186が材料内に形成され、これらの改質線186は、特に、焦点ゾーン122の長手方向軸142に対応する形状を有する。
図13aに示される例では、改質線186は、第1の外面144から第2の外面146まで延びている。
【0228】
前進方向129に対して平行に互いに間隔をあけて配置された複数の改質線186は、材料102に対する焦点ゾーン122の相対的な動きを考慮して形成される。特に、これにより、材料102内に材料改質部156が広範囲に形成される(
図13a)。
【0229】
例として、前進方向129に隣接する改質線186の間隔は、焦点ゾーン122が形成されるレーザビームのパルス持続時間、及び/又は前進方向129に配向される前進速度の適切な選択によって定義することができる。
【0230】
特に、加工線184及び/又は加工面に沿って形成された材料改質部156は、結果として、材料102の強度を低下させる。これにより、例えば機械力を加えることによって、材料改質部156が加工線184及び/又は加工面(
図13b)上に形成された後に、材料102を2つの異なるセグメント188a及び188bに分離することが可能になる。
【0231】
示された例では、セグメント188bは、所望のエッジ形状を有する製品ピースセグメントである。この場合、セグメント188aは、残留ワークピースセグメント及び/又はスクラップセグメントである。
【0232】
好ましくは、材料102は、焦点ゾーン122が材料102を貫通するように焦点ゾーン122に露出される。例として、焦点ゾーン122は、材料102の厚さD全体にわたって、材料102を通って連続的に及び/又は中断なく延びる。例として、
図13a及び
図13bに示されるように、結果として、その厚さDにわたって材料の完全な分離を得ることができる。
【0233】
また、焦点ゾーン122(
図13aに示されている)によって、材料102のエッジ領域190を加工することも可能である。例として、焦点ゾーン122は、次いで、互いに斜めに配向されたワークピース104の外面の間に連続的に及び/又は中断なく延びる。例として、エッジセグメントは、結果として、エッジ領域190においてワークピース104から分離され得る。その結果、エッジ領域190において、例えば、ワークピース104を斜角付け及び/又は面取りすることができる。
【0234】
例として、ワークピース104の材料102は、石英ガラスである。例として、タイプI及び/又はタイプIIの改質部として材料改質部156を形成する目的で、焦点ゾーン122の焦点分布124が形成されるレーザビームは、次いで、波長1030nm及びパルス持続時間1psを有するように形成される。更に、集束光学ユニット116に割り当てられる開口数は、0.4であり、単一の焦点分布124に割り当てられるパルスエネルギーは、100nJである。
【0235】
パラメータを変更しないように、材料改質部156をタイプIIIの改質部として形成するために、単一の焦点分布124に割り当てられるパルスエネルギーは、1000nJである。
【符号の説明】
【0236】
α 作業角度
D 厚さ
d1 距離
dx x方向の距離
dz z方向の距離
100 装置
102 材料
104 ワークピース
106 第1のビーム成形デバイス
108 第1の入力ビーム
110 レーザ源
112 ビーム分割要素
114 成分ビーム
114a 成分ビーム
114b 成分ビーム
116 集束光学ユニット
120 部分領域
120a 部分領域
120b 部分領域
122 焦点ゾーン
124 焦点分布
126 偏光ビーム分割要素
128 主伝搬方向
129 前進方向
130 ビーム成形要素
132 優先方向
132’a 第1の優先方向
132’b 第2の優先方向
134 主拡大方向
136 整列
138 局所拡大方向
140 長手方向中心軸
142 長手方向軸
144 第1の外面
146 第2の外面
148 深さ方向
150 第1の部分
152 第2の部分
154 第3の部分
156 材料改質部
157 クラック
158 第2のビーム成形デバイス
160 第2の入力ビーム
162 主拡大方向
164 強度最大値
164a 2次最大値
165 低下している強度フランク
166 主拡大方向
167 中心軸
267 主伝搬方向
367 半径方向
168 中間像
170 遠視野光学ユニット
172 出力ビーム
174 焦点面
176 光軸
178 テレスコープデバイス
180 第1の部分
182 第2の部分
184 加工線
186 改質線
188a セグメント
188b セグメント
190 エッジ領域
【国際調査報告】