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  • 特表-蒸気熱交換器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】蒸気熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240125BHJP
   F28B 1/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28F9/02 301D
F28B1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546522
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2022075432
(87)【国際公開番号】W WO2022174741
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】202110196425.4
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523290447
【氏名又は名称】李 永堂
【氏名又は名称原語表記】LI, Yongtang
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 永堂
(57)【要約】
本発明は、蒸気熱交換器であって、複合ヘッダを含み、複合ヘッダの上方には、一段目の吸気ヘッダ及び二段目の吸気ヘッダが設けられ、複合ヘッダと二段目の吸気ヘッダとが移行管を介して連通されており、更に熱交換管又は熱交換板を2組含み、第一組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ一段目の吸気ヘッダ及び複合ヘッダに接続され、第二組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ二段目の吸気ヘッダ及び複合ヘッダに接続されている。本発明は、第一段の熱交換管内及び熱交換板(管)側における凝縮液の流動方向に沿った蒸気の流速を高め、凝縮液膜の排出速度を加速させ、凝縮液膜の厚さを大きく低減するとともに、それに乱流を生じさせ、第一組の熱交換板(管)側における熱交換効率を大幅に向上させた。本発明によれば、ヘッダを含めた管路構造が大幅に簡素化され、熱交換器の組間の二次ダクト接続が減少された。その加工及び組立は、より簡単かつ便利となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気熱交換器であって、排液管(10)を備えた複合ヘッダ(1)を含み、複合ヘッダ(1)の上方には、一段目の吸気ヘッダ(4)及び二段目の吸気ヘッダ(6)が設けられ、一段目の吸気ヘッダ(4)には、吸気ダクト(3)が備えられており、複合ヘッダ(1)と二段目の吸気ヘッダ(6)とが移行管(7)を介して連通されており、更に熱交換管又は熱交換板を2組含み、第一組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ一段目の吸気ヘッダ(4)及び複合ヘッダ(1)に接続され、第二組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ二段目の吸気ヘッダ(6)及び複合ヘッダ(1)に接続されている、ことを特徴とする蒸気熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換管又は熱交換板として、熱交換管が選択された場合、当該熱交換管は、コイル管又は多段U字管となる、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気熱交換器。
【請求項3】
上端が一段目の吸気ヘッダ(4)の下側部に連通され、下端が複合ヘッダ(1)に連通されたバイパス管(2)であって、一段目の吸気ヘッダ(4)内の液相流体を複合ヘッダ(1)内に導入するためのバイパス管(2)を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気熱交換器。
【請求項4】
前記バイパス管(2)は、直管、又は、液シールを備えた管である、ことを特徴とする請求項3に記載の蒸気熱交換器。
【請求項5】
前記排液管(10)には、貯液器(9)が接続され、二段目の吸気ヘッダ(6)と貯液器(9)との間には、バランス管(8)が接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気熱交換器。
【請求項6】
複合ヘッダ(1)と排液管(10)とを連通するための補助排液管(12)を更に含み、補助排液管(12)と排液管(10)との間の連通箇所は、排液管(10)と複合ヘッダ(1)との間の連通箇所よりも、複合ヘッダ(1)の高圧端に近い、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気熱交換器。
【請求項7】
一段目の吸気ヘッダ(4)と二段目の吸気ヘッダ(6)とは、同1本のヘッダ内に仕切板(5)が設けられることで仕切られた2つのヘッダである、ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の蒸気熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置に関し、具体的に、蒸気熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管(板)側における蒸気の凝縮や凝結による熱伝達には、2つの形態がある。1つは、膜状凝縮であり、もう1つは、ビーズ状(滴状)凝縮である。ビーズ状凝縮は、その表面熱伝達係数が、膜状凝縮よりも数倍乃至1桁も大きくなる。水平管(板)側における蒸気の凝縮は、ほぼ膜状凝縮となる。膜状凝縮の際、壁面が常に1層の液膜によって覆われ、凝結時に放出された相変化熱(潜熱)は、液膜を通らないと、冷却壁面に伝達できない。したがって、膜状凝縮の主な欠点は、凝縮中の熱抵抗が主に凝縮液膜内に集中されることである。膜状凝縮について、その熱交換係数を高めるには、液膜の厚さを薄くするか、又は流動する媒体に乱流を生じさせなければならない。
【0003】
膜状凝縮による熱交換について、その熱交換係数を高めて凝縮を加速させるためには、通常、熱交換器を2段以上直列接続した構造形態が採用される。例えば、公開番号CN104132557Aの中国特許出願には、「中間排液型の高効率凝縮システム」が開示されており、当該システムには、少なくとも2段の熱交換器が設けられ、前段の熱交換器の熱交換管には、その後端に前段の引出端ヘッダが接続され、後段の熱交換器の熱交換管には、その前端に後段の進入端ヘッダが接続され、後端に後段の引出端ヘッダに接続されており、前段の引出端ヘッダは、管路を介して後段の進入端ヘッダに接続されており、前段の熱交換器から排出された気体を後段の熱交換器に取り込むために使用され、前段の熱交換器と後段の熱交換器とは、同一筐体内に位置するか又は異なる筐体内にそれぞれ位置し、筐体には、その下端に風取込口が備えられ、上端に軸流送風機が取り付けられている。前段の熱交換器の末端にて中間排液が実施されるとともに、前段の熱交換器から排出された気体が後段の熱交換器内に取り込まれているため、熱交換管路内の流体の流動に有利となり、熱交換管路内の液膜の排出が加速され、その結果、熱交換係数が大幅に上昇する。液膜の流動方向に沿った蒸気の流速の増加により、液膜に乱流が生じる一方で、液膜が壁面から離れるように吹かされるため、熱交換係数が増大する。このような構造には、主に以下の2つの欠陥がある。第一に、熱交換装置の占有場積が大きく、ヘッダを含めて接続管路が多く、加工の複雑度が高くなり、組立中にダクトを更に接続する必要があり、二次防食の工程も発生し、取付の難易度が増える。第二に、中間排液の効果から見ると、このような構造では、好ましい効果が奏されておらず、主に以下の2点として表れている。前段の出液ヘッダと次段の出液ヘッダとは、それぞれ独立したものであり、両者の間には、一定の圧力降下があり、前段の出液ヘッダ内は、気相と液相との混合物であるため、流動中に分離させることが困難であり、また、次段の吸気ヘッダと前段の排出ヘッダとは、連通されているとともに、各々の出液管は、直接排出するものになっているため、圧力降下の作用により、泡状液体の一部は、次段の吸気ヘッダに流れて次段の熱交換器の熱交換効果に影響を与えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術に存在する不足を克服するために、液膜の厚さを薄くし、熱交換効率を高めながら、ヘッダを含めた管路構造を大幅に簡素化し、場積をより少なくして加工及び組立をより便利にした蒸気熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術案は、以下の通りである。
蒸気熱交換器であって、排液管を備えた複合ヘッダを含み、複合ヘッダの上方には、一段目の吸気ヘッダ及び二段目の吸気ヘッダが設けられ、一段目の吸気ヘッダには、吸気ダクトが備えられており、複合ヘッダと二段目の吸気ヘッダとが移行管を介して連通されており、更に熱交換管又は熱交換板を2組含み、第一組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ一段目の吸気ヘッダ及び複合ヘッダに接続され、第二組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ二段目の吸気ヘッダ及び複合ヘッダに接続されている、ことを特徴とする蒸気熱交換器である。
【0006】
好ましくは、前記熱交換管又は熱交換板として、熱交換管が選択された場合、当該熱交換管は、コイル管又は多段U字管となる。
【0007】
好ましくは、前記蒸気熱交換器は、上端が一段目の吸気ヘッダ下側部に連通され、下端が複合ヘッダに連通されたバイパス管であって、一段目の吸気ヘッダ内の液相流体を複合ヘッダ内に導入するためのバイパス管を更に含む。
【0008】
更に好ましくは、前記バイパス管は、直管、又は、液シールを備えた管である。
【0009】
好ましくは、前記排液管には、貯液器が接続され、二段目の吸気ヘッダと貯液器との間には、バランス管が接続されている。
【0010】
好ましくは、前記蒸気熱交換器は、複合ヘッダと排液管とを連通するための補助排液管を更に含み、補助排液管と排液管との間の連通箇所は、排液管と複合ヘッダとの間の連通箇所よりも、複合ヘッダの高圧端に近い。
【0011】
好ましくは、一段目の吸気ヘッダと二段目の吸気ヘッダとは、同1本のヘッダ内に仕切板が設けられることで仕切られた2つのヘッダである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積極的な効果は、以下の通りである。
第一に、本発明における複合ヘッダは、その最も重要な役割の1つが、第一出液端と第二出液端との圧力差のバランスを取ることであり、一段目の出液端の気液分離効果を大きく向上させ、第二組の熱交換器の効率を高めた。また、本発明では、一段目の吸気ヘッダと二段目の吸気ヘッダとの間に圧力降下があることにより、システム内の気相流動速度が増加されるため、凝縮液膜の排出を加速させ、凝縮液膜を薄くするとともに、システム内の流体に乱流をより生じさせ易くして、熱交換効率を高めた。
【0013】
第二に、システム全体では、最大3本のヘッダが採用され、特に、1本のヘッダを2つに仕切って、2本のヘッダの代替として採用してもよい。かかる装置は、コンパクトな構造及び小さな占有場積という突出した特徴を有するとともに、全体の防食処理を一度に完了できるため、ユーザ側のダクト接続取付及び二次防食作業が減少された。
【0014】
第三に、一段目の吸気ヘッダ内の圧力は、二段目の吸気ヘッダよりも大きい。貯液器に接続されたバランス管が二段目の吸気ヘッダに接続されることで、貯液器の内圧を効果的に低減でき、凝縮システムの液戻りにより有利となるとともに、貯液器内の媒体の温度を効果的に低減し、貯液器を降温させるための作業量を減少させることができる。
【0015】
第五に、補助排液管を増設した態様では、排液管を複合ヘッダの低圧端に接続して主な液相を排出するために使用し、補助排液管を複合ヘッダの高圧端に接続して事前に一部の液相を排出して、後続の(第二組の熱交換管又は熱交換板)の負荷を軽減するために使用可能である。
【0016】
第六に、バイパス管を増設した態様では、当該バイパス管によって一段目の吸気ヘッダ内の凝縮液及び油分を事前に複合ヘッダに導入することで、油膜及び液膜による影響を効果的に軽減し、熱交換効率を更に高めた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施例の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施例及びその図面を元に、本発明を更に説明する。
【0019】
図1のように、本発明の実施例は、複合ヘッダ1を含み、複合ヘッダ1の上方には、一段目の吸気ヘッダ4及び二段目の吸気ヘッダ6が設けられている。一段目の吸気ヘッダ4には、吸気ダクト3が備えられている。最適化された態様として、前記の一段目の吸気ヘッダ4と二段目の吸気ヘッダ6とは、同1本のヘッダ内に仕切板5が設けられることで仕切られた2つのヘッダである。複合ヘッダ1と二段目の吸気ヘッダ6とが移行管7を介して連通されている。更に熱交換管又は熱交換板を2組含み、第一組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ一段目の吸気ヘッダ4及び複合ヘッダ1に接続され、第二組の熱交換管又は熱交換板の入口端及び出口端は、それぞれ二段目の吸気ヘッダ6及び複合ヘッダ1に接続されており、複合ヘッダ1には、排液管10が備えられ、排液管10には、液シール湾曲管11を介して貯液器9が接続されている。
【0020】
前記熱交換管又は熱交換板として、熱交換管が選択された場合、当該熱交換管は、コイル管又は多段U字管となる。
【0021】
一段目の吸気ヘッダ4内の液相流体(主に凝縮液及び油分)を複合ヘッダ1内に導入して、油膜及び液膜により熱交換効率への影響を軽減するために、本発明の実施例は、上端が一段目の吸気ヘッダ4下側部に連通され、下端が複合ヘッダ1に連通されたバイパス管2を更に含む。
【0022】
前記バイパス管は、直管、又は、液シールを備えた管であることが好ましい。
【0023】
本発明の実施例は、二段目の吸気ヘッダ6と貯液器9とを連通するためのバランス管8を更に含む。
【0024】
本発明の実施例は、複合ヘッダ1と排液管10とを連通するための補助排液管12を更に含み、補助排液管12と排液管10との間の連通箇所は、一般に複合ヘッダ1の高圧端に位置し、排液管10と複合ヘッダ1との間の連通箇所は、一般に複合ヘッダ1の低圧端に位置する。
【0025】
使用の際、前記ヘッダ、熱交換管又は熱交換板及び関連する接続管路は、何れも同一ケース内に置かれ、シャワー水又は冷風により蒸発させて熱を放散させ、システム内の蒸気を凝縮させる。高温高圧の蒸気は、一段目の吸気ヘッダ4の左端における吸気ダクト3から進入して、第一組の熱交換管又は熱交換板を介してケース内のシャワー水又は冷風と熱交換され、一部凝縮後に複合ヘッダ1に進入する。液相は、排液管10及び補助排液管12を通って貯液器9内に排液される。気相は、移行管7及び二段目の吸気ヘッダ6を通って第二組の熱交換管又は熱交換板に進入し、ケース内のシャワー水又は冷風と熱交換され、凝縮後に複合ヘッダ1に進入し、その後、排液管10及び補助排液管12を通って貯液器9に排液される。
図1
【国際調査報告】