(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置、走査電子顕微鏡および荷電粒子ビーム装置を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/073 20060101AFI20240125BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20240125BHJP
H01J 37/18 20060101ALI20240125BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01J37/073
H01J37/06 A
H01J37/18
H01J37/28 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549857
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2022050900
(87)【国際公開番号】W WO2022175000
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501493587
【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アダメツ パヴェル
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB01
5C101CC05
5C101DD06
5C101DD24
5C101DD25
5C101DD38
5C101EE08
5C101EE13
5C101EE33
5C101EE43
5C101EE70
(57)【要約】
荷電粒子ビーム装置(100)が記載されている。この荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビーム(102)を光軸(A)に沿って放出するための荷電粒子ビームエミッタ(105)が配置された第1の真空領域(121)と、第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔(131)を有する第1のガス分離壁(132)によって第1の真空領域から分離された第2の真空領域(122)であり、第1の差動ポンピング開孔(131)が、荷電粒子ビーム(102)の第1のビーム制限開孔として構成された、第2の真空領域(122)と、第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔(133)を有する第2のガス分離壁(134)によって第2の真空領域から分離された第3の真空領域(123)であり、第2の差動ポンピング開孔(133)が、荷電粒子ビーム(102)の第2のビーム制限開孔として構成された、第3の真空領域(123)とを含む。走査電子顕微鏡、および荷電粒子ビーム装置を動作させる方法も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを光軸(A)に沿って放出するための荷電粒子ビームエミッタが配置された第1の真空領域と、
前記第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって前記第1の真空領域から分離された第2の真空領域であり、前記第1の差動ポンピング開孔が、前記荷電粒子ビームの第1のビーム制限開孔として構成された、第2の真空領域と、
前記第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって前記第2の真空領域から分離された第3の真空領域であり、前記第2の差動ポンピング開孔が、前記荷電粒子ビームの第2のビーム制限開孔として構成された、第3の真空領域と
を含む荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記第2の真空領域に第1のコンデンサレンズが配置されており、前記第1のコンデンサレンズが、前記第2の差動ポンピング開孔の下流の前記荷電粒子ビームのビーム電流を調整するように構成された、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記第3の真空領域に第2のコンデンサレンズが配置された、請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記第1の差動ポンピング開孔と前記第2の差動ポンピング開孔のうちの少なくとも一方が5μm以上かつ250μm以下の開口直径を有する、請求項1~3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記荷電粒子ビームエミッタと前記第1の差動ポンピング開孔との間の第1の距離が1cm以下、特に1mm以下であり、
前記第1の差動ポンピング開孔と前記第2の差動ポンピング開孔との間の第2の距離が3cm以上かつ10cm以下である、
請求項1~4のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
少なくとも前記第1の真空領域、前記第2の真空領域および前記第3の真空領域を含む銃ハウジングを含み、前記銃ハウジングが、少なくとも第4の真空領域を含むカラムハウジングに取付け可能であり、または前記カラムハウジングに取り付けられている、請求項1~5のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記第3の真空領域の下流にあって、前記荷電粒子ビームのための第3の差動ポンピング開孔を有する第3のガス分離壁によって前記第3の真空領域から分離された第4の真空領域をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記第3の差動ポンピング開孔がビーム制限開孔ではない、請求項7に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
前記第4の真空領域が、収差補正器、前記荷電粒子ビームを試料上に焦束させるための対物レンズ、走査偏向器、前記荷電粒子ビームから信号荷電粒子を分離するためのビーム分離器および荷電粒子検出器からなるグループのうちの1つまたは複数を収容した、請求項7または8に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記第1の真空領域、前記第2の真空領域、前記第3の真空領域および任意選択で第4の真空領域がそれぞれ、真空フランジおよび前記真空フランジに接続された対応するそれぞれの真空ポンプを有する、請求項1~9のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
前記荷電粒子ビームエミッタが、電子ビームを放出するための冷陰極電界放出型エミッタである、請求項1~10のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
前記第1のガス分離壁が、引出し電位にセットされるように構成された電極セクションを含み、前記第1の差動ポンピング開孔が前記電極セクションに提供された、請求項1~11のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
前記第2の真空領域と前記第3の真空領域のうちの少なくとも一方にビームアライメント装置が提供された、請求項1~12のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
試料を検査するための走査電子顕微鏡であって、
電子ビームを光軸(A)に沿って放出するための冷陰極電界放出型エミッタが配置された第1の真空領域と、
前記第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって前記第1の真空領域から分離された第2の真空領域であり、前記第1の差動ポンピング開孔が、前記電子ビームの第1のビーム制限開孔として構成された、第2の真空領域と、
前記第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって前記第2の真空領域から分離された第3の真空領域であり、前記第2の差動ポンピング開孔が、前記電子ビームの第2のビーム制限開孔として構成された、第3の真空領域と、
前記第2の真空領域と前記第3の真空領域のうちの少なくとも一方に配置されたレンズ装置と、
前記第3の真空領域の下流にあって、前記電子ビームの第3の差動ポンピング開孔を有する第3のガス分離壁によって前記第3の真空領域から分離された第4の真空領域と、
前記第4の真空領域に配置された走査偏向器、対物レンズおよび荷電粒子検出器のうちの少なくとも1つと
を含む走査電子顕微鏡。
【請求項15】
荷電粒子ビーム装置を動作させる方法であって、
第1の真空領域、前記第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって前記第1の真空領域から分離された第2の真空領域、および前記第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって前記第2の真空領域から分離された第3の真空領域から排気することと、
前記第1の真空領域内で荷電粒子ビームを発生させることと、
前記荷電粒子ビームの外側部分が遮られるように、前記荷電粒子ビームを、前記第1のガス分離壁の前記第1の差動ポンピング開孔を通して導くことと、
前記荷電粒子ビームの外側部分が遮られるように、前記荷電粒子ビームを、前記第2のガス分離壁の前記第2の差動ポンピング開孔を通して導くことと
を含む方法。
【請求項16】
前記第2の真空領域に配置された第1のコンデンサレンズのフォーカシングストレングスを調整することによって前記第2の差動ポンピング開孔の下流の前記荷電粒子ビームのビーム電流を調整すること
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第3の真空領域の下流にあって、第3の差動ポンピング開孔を有する第3のガス分離壁によって前記第3の真空領域から分離された第4の真空領域から排気することと、
前記第3の差動ポンピング開孔を通して前記荷電粒子ビームを前記第4の真空領域内へ、特に前記荷電粒子ビームの部分を本質的に遮ることなく導くことと
をさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の差動ポンピング開孔が300μm以上の直径を有し、前記第3の差動ポンピング開孔における前記荷電粒子ビームのビーム直径が150μm以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第4の真空領域に配置された対物レンズによって前記荷電粒子ビームを焦束させ、試料から放出された信号荷電粒子を、前記第4の真空領域に配置された荷電粒子検出器によって検出する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の真空領域が10
-11ミリバールの最大圧力まで排気されること、
前記第2の真空領域が10
-9ミリバールの最大圧力まで排気されること、および
前記第3の真空領域が10
-8ミリバールの最大圧力まで排気されること
のうちの1つまたは複数が当てはまる、請求項15~19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された実施形態は、検査もしくは画像化システム用途、試験システム用途、リソグラフィシステム用途、電子顕微鏡または他の同種の用途向けの荷電粒子ビーム装置、特に電子ビーム装置に関する。具体的には、異なる用途に使用可能な荷電粒子ビームを提供するように構成された荷電粒子ビーム装置が説明される。本明細書に記載された実施形態はさらに、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法、電子ビームを提供するための銃ハウジング装置、および走査電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置は、複数の産業分野において、限定はされないが、限界寸法決定(critical dimensioning)、欠陥レビュー、半導体基板、ウエハおよび他の試料の検査、リソグラフィ用の露光システム、検出装置、画像化システムならびに試験システムを含む、多くの機能を有する。マイクロメートルおよびナノメートルスケールで試料を構造化、試験および検査することに対する大きな需要がある。
【0003】
マイクロメートルおよびナノメートルスケールでのプロセス制御、検査または構造化はしばしば、電子顕微鏡などの荷電粒子ビーム装置内で発生および焦束させた荷電粒子ビーム、例えば電子ビームを用いて実行される。荷電粒子ビームは、例えば光子ビームに比べて、高分解能画像化および検査を可能にする優れた空間分解能を提供する。
【0004】
荷電粒子ビーム装置は一般に、真空条件下、具体的には超高真空条件下で動作させる。特に、荷電粒子ビームエミッタは通常、排気された超高真空条件下の銃ハウジング内に配置される。それでも、排気された銃ハウジング内には不必要なイオン、イオン化分子または他の汚染粒子が存在しうる。汚染粒子が、エミッタによって放出された荷電粒子の電荷とは反対極性の電荷を有する場合、汚染粒子はエミッタに向かって加速される。その結果、エミッタは、例えばエミッタ表面に粒子が蓄積することによって機械的に変形することがあり、または他の態様の否定的な影響を受けることがあり、これらのことはノイズおよび他のビーム不安定性を導入しうる。
【0005】
具体的には、荷電粒子ビームエミッタの領域内の汚染粒子は、不安定なまたはノイズが多い荷電粒子ビームにつながることがあり、例えば、変動するビーム電流または可変のビームプロファイルにつながることがある。したがって、荷電粒子ビーム装置内の真空条件、具体的には荷電粒子ビームエミッタを収容した銃ハウジング内の真空条件が決定的に重要である。
【0006】
以上のことを考慮すれば、荷電粒子ビーム装置内における荷電粒子ビームのビーム安定性を向上させること、および銃ハウジング内の汚染粒子の量を低減させることは有益であろう。具体的には、安定性が向上した荷電粒子ビームを放出するコンパクトな荷電粒子ビーム装置および走査電子顕微鏡を提供することは有益であろう。さらに、荷電粒子ビーム装置を、例えばビーム安定性が向上した荷電粒子ビームを提供するように動作させる方法を提供することは有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
以上のことを考慮して、独立請求項による荷電粒子ビーム装置、走査電子顕微鏡、および荷電粒子ビーム装置を動作させる方法が提供される。追加の態様、利点および特徴は、従属請求項、本明細書の説明および添付図面から明らかである。
【0008】
一態様によれば、荷電粒子ビーム装置が提供される。この荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを光軸に沿って放出するための荷電粒子ビームエミッタが配置された第1の真空領域と、第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって第1の真空領域から分離された第2の真空領域であり、第1の差動ポンピング開孔が、荷電粒子ビームの第1のビーム制限開孔として構成された、第2の真空領域と、第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって第2の真空領域から分離された第3の真空領域であり、第2の差動ポンピング開孔が、荷電粒子ビームの第2のビーム制限開孔として構成された、第3の真空領域とを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、少なくとも第4の真空領域を含むカラムハウジングに取り付けられている、またはカラムハウジングに取付け可能である銃ハウジングによって、第1の真空領域、第2の真空領域および第3の真空領域が取り囲まれている。
【0010】
別の態様によれば、試料を検査するための走査電子顕微鏡が提供される。この走査電子顕微鏡は、電子ビームを光軸に沿って放出するための冷陰極電界放出型エミッタ(cold field emitter)が配置された第1の真空領域と、第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって第1の真空領域から分離された第2の真空領域であり、第1の差動ポンピング開孔が、電子ビームの第1のビーム制限開孔として構成された、第2の真空領域と、第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって第2の真空領域から分離された第3の真空領域であり、第2の差動ポンピング開孔が、電子ビームの第2のビーム制限開孔として構成された、第3の真空領域と、第2の真空領域と第3の真空領域のうちの少なくとも一方に配置されたレンズ装置と、第3の真空領域の下流にあって、電子ビームの第3の差動ポンピング開孔を有する第3のガス分離壁によって第3の真空領域から分離された第4の真空領域と、第4の真空領域に配置された走査偏向器、対物レンズおよび荷電粒子検出器のうちの少なくとも1つと、検査対象の試料をその上に置くための試料ステージとを含む。
【0011】
別の態様によれば、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法が提供される。この方法は、第1の真空領域、第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって第1の真空領域から分離された第2の真空領域、および第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって第2の真空領域から分離された第3の真空領域から排気することと、第1の真空領域内で荷電粒子ビームを発生させることと、荷電粒子ビームを、第1のガス分離壁の第1の差動ポンピング開孔を通して導くことであり、荷電粒子ビームの外側部分が遮られる、導くことと、荷電粒子ビームを、第2のガス分離壁の第2の差動ポンピング開孔を通して導くことであり、荷電粒子ビームの外側部分が遮られる、導くこととを含む。
【0012】
別の態様によれば、荷電粒子ビーム装置であって、荷電粒子ビームを光軸に沿って放出するための荷電粒子ビームエミッタが配置された第1の真空領域と、第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって第1の真空領域から分離された第2の真空領域と、第2の真空領域の下流にあって、荷電粒子ビームのための第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって第2の真空領域から分離された第3の真空領域と、第3の真空領域の下流にあって、第3のガス分離壁によって第3の真空領域から分離された第4の真空領域とを含む、荷電粒子ビーム装置が提供される。第3のガス分離壁は、荷電粒子ビームのための第3の差動ポンピング開孔を有する。第4の真空領域は、対物レンズと荷電粒子検出器のうちの少なくとも一方を収容している。この実施形態では、第1の差動ポンピング開孔が、荷電粒子ビームの第1のビーム制限開孔として光学的に構成されており、かつ/または、任意選択で、第2の差動ポンピング開孔が、荷電粒子ビームの第2のビーム制限開孔として構成されている。
【0013】
実施形態は、開示された方法を実行する装置も対象としており、記載されたそれぞれの方法特徴を実行するための装置部分を含む。これらの方法特徴は、ハードウェアコンポーネント、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータ、これらの2つの任意の組合せ、または他の任意の手段によって実行することができる。さらに、実施形態は、記載された装置を製造する方法および記載された装置を動作させる方法も対象としている。この方法は、装置のあらゆる機能を実行するための方法特徴を含む。
【0014】
上に挙げた本開示の特徴を詳細に理解することができるようにするため、実施形態を参照することによって、上で概要を簡単に示したより詳細な説明を得ることができる。添付図面は本開示の実施形態に関係し、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本明細書に記載された実施形態による荷電粒子ビーム装置の概略断面図である。
【
図2】異なる状態にある
図1の荷電粒子ビーム装置を示す図である。
【
図3】本明細書に記載された実施形態による荷電粒子ビーム装置の概略断面図である。
【
図4】本明細書に記載された実施形態による走査電子顕微鏡の概略断面図である。
【
図5】本明細書に記載された実施形態による荷電粒子ビーム装置を動作させる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、さまざまな実施形態を詳細に参照する。それらの実施形態の1つまたは複数の例が図に示されている。以下の説明の範囲では同じ参照符号が同じ部品を指す。一般に、個々の実施形態に関する違いだけが説明される。それぞれの例は、説明のために示されているのであり、限定を意図したものではない。さらに、1つの実施形態の部分として図示または記載された特徴を他の実施形態に関してまたは他の実施形態とともに使用して、追加の実施形態を与えることができる。この説明はこのような変更および変形を含むことが意図されている。
【0017】
本出願の範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビーム装置またはその部分が、例示的に、信号電子を検出するように構成された電子ビーム装置に関する。信号荷電粒子は特に2次電子および/または後方散乱電子を包含し、具体的には2次電子と後方散乱電子(SEとBSE)の両方を包含する。しかしながら、本明細書に記載された実施形態を、サンプル画像または検査もしくは処理結果を得るためにイオンの形態の2次荷電粒子および/または後方散乱荷電粒子などの他の微粒子を検出する装置に適用することができることを理解すべきである。したがって、本明細書に記載された実施形態では、荷電粒子が電子に限定されない。
【0018】
図1は、本明細書に記載された実施形態による荷電粒子ビーム装置100の概略断面図である。荷電粒子ビーム装置100は、例えば検査または画像化用途で、例えば電子顕微鏡内で使用することができる荷電粒子ビーム102を提供するように構成されている。
【0019】
荷電粒子ビーム装置100は、1つまたは複数の真空ポンプによって排気することができる銃ハウジング101、特に、1つまたは複数の真空ポンプによって超高真空まで排気することができる銃ハウジング101を含む。銃ハウジング101内には、荷電粒子ビームエミッタ105、特に、電子ビームを発生させるための電子エミッタが配置されている。荷電粒子ビームエミッタ105を有する銃ハウジング101は、荷電粒子ビーム装置のカラム(
図1には示されていない)の上流に置くことができる。特に、銃ハウジング101内で発生させた荷電粒子ビーム102を、検査または画像化目的で対物レンズによって試料上に集束させることができる。
【0020】
荷電粒子ビームエミッタ、具体的には電子エミッタは、銃チャンバ内の真空の清浄度に非常に敏感である。例えば、エミッタ表面に蓄積していることがあるイオンまたは他の汚染粒子は電子源の安定性を害することがあり、ビーム電流および/またはビーム形状の変動につながりうる。特に、冷陰極電界放出に基づく電子エミッタは真空の清浄度に極めて敏感である。
【0021】
銃チャンバ内の真空条件を改善するため、一部の荷電粒子ビーム装置は、対応するそれぞれの差動ポンピング開孔によって分離されたいくつかのいわゆる差動ポンピングセクションを使用する。差動ポンピングセクションは、対応するそれぞれの真空ポンプによって別々にポンピングすることができる真空領域であって、最も上流の真空領域の真空条件を改善するために対応するそれぞれのガス分離壁によって分離された真空領域であると理解することができる。上流の差動ポンピングセクションから下流の差動ポンピングセクション内へ光軸に沿って荷電粒子ビームが伝搬することができるように、ガス分離壁に、差動ポンピング開孔、すなわち荷電粒子ビーム用の小さな開口を提供することができる。本明細書で使用される「下流」は、光軸Aに沿った荷電粒子ビームの伝搬方向における下流であると理解することができる。
【0022】
しかしながら、荷電粒子ビーム装置内のガス分離壁および対応するそれぞれの差動ポンピング開孔は通常、荷電粒子ビーム装置の複雑さを増大させ、コンパクトさを低下させる。一方では良好な真空条件を求め、他方ではビーム光学部品がコンパクトさを提供することを求めるという相反する要件を実現することは難しい。
【0023】
本明細書に記載された実施形態は、コンパクトでありながら、荷電粒子ビームエミッタ105のエリアにおける優れた真空条件、したがって良好なビーム安定性も提供する荷電粒子ビーム装置を提供する。
図1に示されているとおり、荷電粒子ビーム装置の銃ハウジング101は、銃ハウジング内に少なくとも3つの差動ポンピングセクションが提供されるように、対応するそれぞれのガス分離壁によって分離された少なくとも3つの真空領域に分割されている。
【0024】
第1の真空領域121(最も上流の真空領域)は、光軸Aに沿って導かれる荷電粒子ビーム102を放出するように構成された荷電粒子ビームエミッタ105を収容している。第2の真空領域122は、光軸Aの方向において第1の真空領域121の下流に配置されており、第1のガス分離壁132によって第1の真空領域121から分離されている。第1のガス分離壁132には、第1の真空領域121から第2の真空領域122内へ光軸Aに沿って荷電粒子ビーム102が伝搬することができるように、第1の差動ポンピング開孔131が提供されている。第3の真空領域123は、光軸Aの方向において第2の真空領域122の下流に配置されており、第2のガス分離壁134によって第2の真空領域122から分離されている。第2のガス分離壁134には、第2の真空領域122から第2の差動ポンピング開孔133を通って第3の真空領域123内へ光軸Aに沿って荷電粒子ビームが伝搬することができるように、第2の差動ポンピング開孔133が提供されている。
【0025】
それぞれの真空領域を少なくとも1つの対応するそれぞれの真空ポンプによって別々にポンピングすることができるように、それぞれの真空領域は、対応するそれぞれの真空フランジを有することができる。これによって、高いバックグラウンド圧力を有する試料チャンバの近くに配置された第3の真空領域123から荷電粒子銃を収容した第1の真空領域121に向かって真空条件を段階的に改善することができる。例えば、第1の真空領域121は、第1の真空ポンプを取り付けるための第1の真空フランジ126を有することができ、第2の真空領域122は、第2の真空ポンプを取り付けるための第2の真空フランジ127を有することができ、第3の真空領域123は、第3の真空ポンプを取り付けるための第3の真空フランジ128を有することができる。
【0026】
本明細書に記載された実施形態によれば、第1の差動ポンピング開孔131および第2の差動ポンピング開孔133がともにビーム光学開孔である。すなわち、第1の差動ポンピング開孔および第2の差動ポンピング開孔はともに荷電粒子ビーム102の形状および/または寸法に影響を与える。言い換えれば、第1および第2の差動ポンピング開孔は、荷電粒子ビームエミッタが配置された第1の真空領域内の真空条件を改善することを意図したものであるだけでなく、荷電粒子ビームに影響を与えるビーム光学システムの部分でもある。したがって、第1および第2の差動ポンピング開孔を「ビーム光学圧力段開孔」または「ビーム画定圧力段開孔」と呼ぶこともできる。具体的には、第1の差動ポンピング開孔131は、荷電粒子ビームの第1のビーム制限開孔として構成されており、第2の差動ポンピング開孔133は、荷電粒子ビームの第2のビーム制限開孔として構成されている。
【0027】
「ビーム制限開孔」は、装置の動作中に荷電粒子ビームの外側部分を遮ることによってビーム寸法に影響を与えるビーム光学開孔であると理解することができる。特に、「ビーム制限開孔」は、ビームサイズを適宜、制限して、所定の電流および/または寸法を有する荷電粒子ビームを提供することができる。「差動ポンピング開孔」または「圧力段開孔」は、開孔の上流の真空領域と下流の真空領域との間の差動ポンピングを容易にするガス分離壁の開孔であると理解することができる。通常、装置の動作中、差動ポンピング開孔の反対側の2つの側の圧力は少なくとも1桁異なる。したがって、第1の真空領域に配置された荷電粒子ビームエミッタを、第1の真空領域の下流に配置された真空領域から効率的に分離すること、および荷電粒子ビーム装置のこれらの「下」セクションから来ることがある、特に検査対象の試料が配置された試料チャンバから来ることがある残留ガスから効率的に分離することができる。
【0028】
第1の差動ポンピング開孔131および第2の差動ポンピング開孔133は、荷電粒子ビーム装置内のビーム光学部品としても構成されているため、したがって「多目的部品」であるため、荷電粒子ビーム装置のコンパクトさを維持することができ、その一方で、荷電粒子ビームエミッタが配置された第1の真空領域内の真空条件を差動ポンピングによって改善することができる。具体的には、第1の真空領域121の極高真空を、検査対象の試料を配置する試料チャンバの中程度の真空から分離することができる。特に、いくつかの実施形態では、任意選択で、第1の差動ポンピング開孔131および/もしくは第2の差動ポンピング開孔133をさらに、電極、例えば引出し電極および/もしくはアノードに統合することができ、または第1の差動ポンピング開孔131および/もしくは第2の差動ポンピング開孔133をさらに、電極、例えば引出し電極および/またはアノードとして使用することができ、したがって、第1の差動ポンピング開孔131および/もしくは第2の差動ポンピング開孔133は真空部品とすることができるだけでなく、ビーム制限およびビーム整形部品とすることもできる。
【0029】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第2の真空領域122に少なくとも1つのレンズを配置することができる。特に、第2の真空領域122に第1のコンデンサレンズ106を配置することができる。第1のコンデンサレンズ106は、ビーム発散を調整するように構成されたものとすることができ、したがって、第1のコンデンサレンズ106の下流に配置された第2の差動ポンピング開孔133を通って伝搬する荷電粒子ビーム102の部分を調整するように構成されたものとすることができる。したがって、第1のコンデンサレンズ106は、第2の差動ポンピング開孔133の下流の荷電粒子ビーム102のビーム電流を調整するように構成されたものとすることができる。
【0030】
第1のコンデンサレンズ106によるビーム電流の調整が
図1および
図2に概略的に示されている。
図1では、第1のコンデンサレンズ106が、本質的に平行なビームを提供するように励磁されており、本質的に平行なビームの内側部分が、ビーム制限開孔の働きをする第2の差動ポンピング開孔133を通って伝搬している。
図2では、第1のコンデンサレンズ106が、
図1と比較して同じ寸法を有するが、より小さなビーム電流を有するわずかに発散したビームの内側部分が、第2のビーム制限開孔の働きをする第2の差動ポンピング開孔133を通って伝搬するように、わずかに発散したビームを提供するように異なって励磁されている。したがって、第1のコンデンサレンズ106の励磁を調整することによって、すなわち第1のコンデンサレンズ106と第2の差動ポンピング開孔133の協力によって、第2の差動ポンピング開孔133の下流のビーム電流を小さくすることまたは大きくすることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、第2の差動ポンピング開孔133の下流のビーム電流を、500pA以下の第1の値と40nA以上の第2の値との間、特に50pA以下の第1の値と100nA以上の第2の値の間の範囲に調整するように、第1のコンデンサレンズ106が構成されている。
【0032】
第1のコンデンサレンズ106は、光軸Aに対する第1のコンデンサレンズ106のセンタリングを可能にするアライメントシステム、例えば機械式アライメントシステムを有することができる。このアライメントシステムは、低減されたまたは最小化された寄生光学収差でこのシステムを動作させることを可能にする。
【0033】
いくつかの実施形態では、第2の真空領域122にビームアライメント装置、例えばビーム偏向器が配置される。ビーム偏向器はビームの伝搬方向を変化させる。例えば、荷電粒子ビームの伝搬方向が荷電粒子ビーム装置の光軸Aと一致することを保証するため、および/または荷電粒子ビームが第2の差動ポンピング開孔133に同軸で入射することを保証するために、第2の真空領域122にビーム偏向器を提供することができる。このことは、第2の差動ポンピング開孔の下流の本質的に回転対称のビームプロファイルを容易にする。第2の真空領域122に置かれたビームアライメント装置はビームアライメントをさらに容易にする。いくつかの実施形態では、第2の真空領域122に、レンズ(例えば第1のコンデンサレンズ106)とビームアライメント装置(図示せず)の両方が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、第3の真空領域123にレンズ、例えばコンデンサレンズが配置される。特に、第2の真空領域122に第1のコンデンサレンズ106を配置し、第3の真空領域123に第2のコンデンサレンズ107を配置することができる。第2のコンデンサレンズ107は、第2のコンデンサレンズ107の下流で所定のビーム発散(例えば平行ビーム)を提供するように構成されたものとすることができる。例えば、第1のコンデンサレンズ106の励磁に応じて、第2のコンデンサレンズ107の励磁を、異なるビーム電流について第2のコンデンサレンズ107の下流で所定のビーム発散を提供することができるようにセットすることができる。第1および第2のコンデンサレンズ(ならびに第2および/または第3の真空領域の任意選択の追加のコンデンサレンズ)は、荷電粒子ビーム装置のコンデンサレンズ装置を構成することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、第3の真空領域123にビームアライメント装置、例えばビーム偏向器が配置される。例えば、荷電粒子ビームの伝搬方向が荷電粒子ビーム装置の光軸Aと一致することを保証するため、ならびに/または荷電粒子ビームがカラムハウジングおよび/もしくは対物レンズに同軸で入射することを保証するために、第3の真空領域123にビーム偏向器を提供することができる。第3の真空領域123に置かれたビームアライメント装置はビームアライメントをさらに容易にする。いくつかの実施形態では、第3の真空領域123に、レンズ(例えば第2のコンデンサレンズ107)とビームアライメント装置(図示せず)の両方が提供される。
【0036】
第2のコンデンサレンズ107は、光軸Aに対する第2のコンデンサレンズ107のセンタリングを可能にするアライメントシステム、例えば機械式アライメントシステムを有することができる。このアライメントシステムは、低減されたまたは最小化された寄生光学収差でこのシステムを動作させることを可能にする。
【0037】
第1のビーム制限開孔の働きをする第1の差動ポンピング開孔131は、第2の真空領域122に入る荷電粒子ビームの形状および/またはサイズを画定することができる。具体的には、荷電粒子ビームエミッタ105によって放出された荷電粒子を、例えば引出し電極によってまたは引出し電位にセットされた第1のガス分離壁132の電極セクションによって第1の差動ポンピング開孔131に向かって加速させることができ、第1の差動ポンピング開孔131を通って伝搬する荷電粒子によって第2の真空領域内の荷電粒子ビーム102が形成される。したがって、第1の差動ポンピング開孔131の下流の荷電粒子ビーム102のビーム電流は、第1の差動ポンピング開孔131の開口サイズによって規定される。荷電粒子ビームエミッタ105によって光軸Aに対する大きな角度で放出された荷電粒子は、第1のビーム制限開孔の開口を取り囲む第1のガス分離壁132によって遮られ、光軸Aに対する小さな角度で放出された荷電粒子は、第1のビーム制限開孔を通り抜けて第2の真空領域内の荷電粒子ビーム102を形成する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の差動ポンピング開孔131のサイズを、20nA以上かつ200nA以下、例えば約50nAのビーム電流を有する荷電粒子ビーム102を形成するようなサイズにすることができる。上で説明したように、第2の差動ポンピング開孔133と協力した第1のコンデンサレンズ106によって、荷電粒子ビーム装置のカラムに入るビーム電流の微調整を実行することができる。例えば、第1の差動ポンピング開孔131のサイズを、所定のビーム電流を有する荷電粒子ビーム102を常に形成するようなサイズにすることができ、第1の差動ポンピング開孔131の下流に配置された第2の差動ポンピング開孔133は、試料上に集束させる荷電粒子ビーム102のビーム電流を、荷電粒子ビーム装置の実際の用途モードに応じて調整することができる。例えば、高スループット用途に対してはより大きなビーム電流を提供することができ、高分解能用途に対してはより小さなビーム電流を提供することができる。
【0039】
特に、第1の差動ポンピング開孔131によって荷電粒子ビーム102の外側部分が遮られ、第1の差動ポンピング開孔131によって所定の寸法および形状を有する荷電粒子ビーム102が形成されるように、第1の差動ポンピング開孔131は、荷電粒子ビームエミッタの最大ビーム放出角に対応するサイズよりも小さな開口サイズを有することができる。例えば、第1の差動ポンピング開孔131の開口サイズは5°以下の放出角(a)に対応することができ、かつ/または荷電粒子ビームエミッタ105の最大放出角は10°以上とすることができる。
【0040】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第1の差動ポンピング開孔131が、10μm以上かつ250μm以下の開口直径、特に10μm以上かつ100μm以下の直径を有する。第1の差動ポンピング開孔131は、丸いビームプロファイルを形成するのに適した丸いまたは円形のビーム開口を有することができる。いくつかの実施形態では、荷電粒子ビームエミッタ105と第1の差動ポンピング開孔131との間の距離D1を、10mm以下、特に2mm以下、とりわけ1mm以下とすることができる。このような形状および荷電粒子ビームエミッタ105からの距離を有する第1の差動ポンピング開孔131は、良好なビームプロファイルおよびビーム形状を有し、さまざまな用途に適したビーム電流を有する荷電粒子ビームを形成するのに適している。
【0041】
差動ポンピングを容易にする差動ポンピング開孔は通常、ビーム光学システムの部分ではなく、したがって、従来は、荷電粒子ビームとの相互作用を回避するためにはるかに大きな直径、例えば1mm以上の直径を有することに留意すべきであり、このことは本明細書に記載された実施形態とは異なる。
【0042】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第2の差動ポンピング開孔133が、5μm以上かつ250μm以下の開口直径、特に10μm以上かつ100μm以下の直径を有する。第2の差動ポンピング開孔133は、丸いビームプロファイルを有するビームを形成するのに適した円形のまたは丸いビーム開口を有することができる。このような開口を有する第2の差動ポンピング開孔133は、第1のコンデンサレンズ106と協力してビーム電流を適宜、調整し、その一方で所定のビームプロファイルを維持するのに適している。いくつかの実施形態では、第1の差動ポンピング開孔131と第2の差動ポンピング開孔133との間の光軸Aに沿った第2の距離D2を、3cm以上かつ10cm以下、特に約5cmとすることができる。上記の寸法を有する2つの圧力段開孔間の第2の真空領域122の延長は、差動ポンピングを効率的に容易にするのに適している。例えば、第2の真空領域内の第2の圧力を第3の真空領域内の第3の圧力よりも少なくとも1桁小さくすることができ、第1の真空領域内の第1の圧力を第2の真空領域内の第2の圧力よりも少なくとも1桁小さくすることができる。
【0043】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、荷電粒子ビームエミッタ105を、冷陰極電界放出によって電子ビームを放出するように構成された冷陰極電界放出型エミッタ(CFE)とすることができる。冷陰極電界放出型エミッタである荷電粒子ビームエミッタにとって超高真空が特に有益となるように、冷陰極電界放出型エミッタは銃ハウジング内の汚染に特に敏感である。冷陰極電界放出型エミッタはタングステンの先端を有することができる。
【0044】
他の実施形態では、荷電粒子ビームエミッタ105を、別のタイプの電子エミッタ、例えばショットキー型エミッタの熱電界放出型エミッタ(thermal field emitter)(TFE)とすることができる。いくつかの実施形態では、荷電粒子ビームエミッタがイオン源を含んでもよい。
【0045】
ショットキーまたはTFEエミッタは現在、最大2×108Am-2(SR)-1V-1の測定された低輝度で使用可能である。CFEエミッタは、最大5×109Am-2(SR)-1V-1の測定された低輝度を有する。少なくとも5×107Am-2(SR)-1V-1を有する荷電粒子ビームは有益であることがある。本開示の実施形態によれば、高輝度エミッタを提供することができる。したがって、高スループットを可能にする信号対雑音比がそれぞれのビームレットに対して提供されるように、試料上のそれぞれのビームレットに対して有益な電流を提供することができる。例えば、本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、エミッタは、1×108Am-2(SR)-1V-1~5×108Am-2(SR)-1V-1の輝度、または上で説明したようにそれよりもはるかに高い輝度を有することができる。
【0046】
いくつかの実施態様では、第1のガス分離壁132が、引出し電位にセットされるように構成された電極セクション141を含むことができ、第1のガス分離壁の電極セクションに第1の差動ポンピング開孔131を提供することができる。したがって、第1の差動ポンピング開孔131を同時に、電子を引き出すために荷電粒子ビームエミッタ105の電位とは反対極性の電位、例えば正電位にセットすることができる引出し電極としておよび/またはアノードとして使用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の真空領域、第2の真空領域および第3の真空領域を含む銃ハウジング101を荷電粒子ビーム装置100の残りの内部空間から分離することができるように、第3の真空領域123の下流端に真空弁(
図1には示されていない)が配置される。したがって、試料チャンバまたは対物レンズなどの荷電粒子ビーム装置の他の部分の保守またはサービス作業の間、例えば大気圧下にある試料チャンバまたは対物レンズなどの荷電粒子ビーム装置の他の部分の保守またはサービス作業の間、銃ハウジング101内の超高真空を維持することができる。
【0048】
図3は、本明細書に記載された実施形態による荷電粒子ビーム装置200の概略断面図である。荷電粒子ビーム装置200は、
図1および
図2に示された荷電粒子ビーム装置100のいくつかの特徴または全ての特徴を、ここでは繰り返さない上記の説明を参照することができるように含むものとすることができる。
【0049】
荷電粒子ビーム装置200は、3つの真空領域を有する銃ハウジング101、すなわち荷電粒子ビームエミッタ105を収容した第1の真空領域121、第1の真空領域121の下流の第2の真空領域122および第2の真空領域122の下流の第3の真空領域123を有する銃ハウジング101を含む。これらの真空領域は、対応するそれぞれのガス分離壁によって分離された差動ポンピングセクションとして構成されており、それぞれのガス分離壁には、荷電粒子ビームのための圧力段開孔が提供されている。したがって、第1の真空領域内の良好な真空条件を維持している間に、荷電粒子ビームは、荷電粒子ビームエミッタ105から光軸Aに沿って第1、第2および第3の真空領域を通って伝搬することができる。
【0050】
図3に概略的に示されているように、光軸Aに沿った方向の第3の真空領域123の下流に第4の真空領域124を提供することができる。第4の真空領域124は、第3のガス分離壁136によって第3の真空領域123から分離されたものとすることができ、第3のガス分離壁136には、荷電粒子ビーム102の第3の差動ポンピング開孔135を提供することができる。
【0051】
第4の真空領域124は、1つまたは複数の光学部品(
図3では参照符号108によって概略的に示されている)、例えば収差補正器、荷電粒子ビームを試料上に焦束させるための対物レンズ、走査偏向器、荷電粒子ビームから信号荷電粒子を分離するためのビーム分離器および1つまたは複数の荷電粒子検出器からなるグループのうちの少なくとも1つまたは複数を収容していてもよい。第4の真空領域124は、ビーム光学部品の大部分を収容した荷電粒子ビーム装置の主真空領域を構成していてもよく、したがって、第4の真空の領域124を取り囲む真空エンクロージャを荷電粒子ビーム装置のカラムハウジング111と呼ぶことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、このカラムハウジングに銃ハウジング101が取外し可能に取り付けられている。そのため、本明細書に記載されたいくつかの実施形態は、カラムハウジング111に接続されていない銃ハウジング101にも関係する。
【0053】
第3の真空領域123を第4の真空領域124から分離する第3のガス分離壁136は、第1の真空領域121内の真空条件を、検査対象の試料が配置された試料チャンバに対してさらに改善することができ、カラムハウジング111内の第4の真空の領域124に対する第1の真空領域121の効率的な真空分離を可能にすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、(第1の真空領域121、第2の真空領域122および第3の真空領域123を含む)銃ハウジング101が、(対物レンズを含むカラムの光学部品の大部分を収容した第4の真空領域124を含む)カラムハウジング111に取り付けることおよびカラムハウジング111から取り外すことができる「ビームエミッタモジュール」を形成する。銃ハウジング101は、差動ポンピングを可能にする少なくとも3つの真空領域を有するため、第1の真空領域に配置された荷電粒子ビームエミッタ105の効率的な真空分離が提供される。
【0055】
いくつかの実施形態では、第3の真空領域123の下流端に、真空弁151、特に、第3のガス分離壁136に提供された、第3の真空領域の下流端を開くようにおよび/または閉じるように構成された真空弁151が配置されている。したがって、たとえ第4の真空領域124(または第4の真空領域の下流の真空領域)がガスまたは空気で満たされている場合であっても第1の真空領域内の超高真空を維持することができるように、例えばカラムハウジング111内に配置された光学部品のサービス作業または保守中に、銃ハウジング101をカラムハウジング111から分離することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、第3の差動ポンピング開孔135が、300μm以上かつ2mm以下の開口直径を有することができる。この直径は、効率的な差動ポンピングを容易にするのに適している。
【0057】
いくつかの実施形態では、第3の差動ポンピング開孔135がビーム光学開孔として構成されていない。具体的には、第3の差動ポンピング開孔135は、荷電粒子ビームの外側部分を遮るように構成されたビーム制限開孔でなくてもよい。言い換えれば、本質的に荷電粒子ビームの全体が第3の差動ポンピング開孔135を通り抜けることを第3の差動ポンピング開孔135が可能にするように、第3の差動ポンピング開孔135の直径は、第3の差動ポンピング開孔135の位置におけるビーム直径よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、第3の差動ポンピング開孔135におけるビーム直径を50μm以上かつ200μm以下、特に150μm以下とすることができ、第3の差動ポンピング開孔135の直径を、例えば300μm以上とするなど、このビーム直径よりも大きくすることができる。
【0058】
しかしながら、本明細書に記載された実施形態は、光学システムの部分ではない第3の差動ポンピング開孔に限定されず、他の実施形態では、第3の差動ポンピング開孔135を光学開孔、特にビーム制限開孔とすることもできる。後者の場合、第3の差動ポンピング開孔は、例えば250μm以下または100μm以下のより小さな開口直径を有することができる。
【0059】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、それぞれの真空領域が、真空ポンプを取り付けるための真空フランジを有することができる。具体的には、第1の真空領域121は、第1の真空領域から直接に排気するための第1の真空ポンプを取り付けるための第1の真空フランジ126を有することができ、第2の真空領域122は、第2の真空領域から直接に排気するための第2の真空ポンプを取り付けるための第2の真空フランジ127を有することができ、第3の真空領域123は、第3の真空領域から直接に排気するための第3の真空ポンプを取り付けるための第3の真空フランジ128を有することができ、第4の真空領域124は、第4の真空領域から直接に排気するための第4の真空ポンプを取り付けるための第4の真空フランジ129を有することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第2の差動ポンピング開孔133と第3の差動ポンピング開孔135との間の光軸Aに沿った第3の距離D3を、3cm以上かつ10cm以下、特に約5cmとすることができる。上記の寸法を有する2つの圧力段開孔間の第3の真空領域123の延長は、効率的な差動ポンピングを容易にするのに適している。特に、第3の真空領域内の第3の圧力を第4の真空領域内の第4の圧力よりも少なくとも1桁小さくすることができ、第2の真空領域内の第2の圧力を第3の真空領域内の第3の圧力よりも少なくとも1桁小さくすることができ、第1の真空領域内の第1の圧力を第2の真空領域内の第2の圧力よりも少なくとも1桁小さくすることができる。任意選択で、検査対象の試料を収容した試料チャンバ内の第5の圧力を第4の真空チャンバ内の第4の圧力よりも高くすることができる。したがって、上記の差動ポンピング着想の結果として、荷電粒子ビームエミッタ、特に冷陰極電界放出型エミッタが置かれた第1の真空領域内の真空条件をさらに改善することができ、装置の動作中に、第1の真空領域121に例えば10-11ミリバール以下の極端に低い圧力を提供し、維持することができる。
【0061】
特に、(カラムハウジング111に対応することがある)第4の真空の領域124の光軸Aに沿った延長は通常、第1の真空領域から第3の真空領域までの延長よりも大きく、特に10cm以上または30cm以上である。添付図には第4の真空領域124が完全には示されてない。
【0062】
図4は、本明細書に記載された実施形態による、試料を検査するための走査電子顕微鏡300の概略断面図である。走査電子顕微鏡300は、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる荷電粒子ビーム装置を、ここでは繰り返さない上記の説明を参照することができるように含むものとすることができる。
【0063】
走査電子顕微鏡300は、電子ビームを光軸Aに沿って放出するための冷陰極電界放出型エミッタがその中に配置された第1の真空領域121を有する銃ハウジング101を含む。銃ハウジングはさらに、第1の真空領域121の下流の第2の真空領域122および第2の真空領域122の下流の第3の真空領域123を含む。第2の真空領域は、第1の差動ポンピング開孔131を有する第1のガス分離壁によって第1の真空領域から分離されており、第3の真空領域は、第2の差動ポンピング開孔133を有する第2のガス分離壁によって第2の真空領域から分離されている。電子ビームは、冷陰極電界放出型エミッタから光軸Aに沿って第1および第2の差動ポンピング開孔を通って第4の真空領域124内へ伝搬することができる。
【0064】
第4の真空領域124は、第3の真空領域123の下流に配置されており、電子ビームがそこを通って伝搬するための第3の差動ポンピング開孔135を含む第3のガス分離壁136によって第3の真空領域123から分離されている。第4の真空領域124は、銃ハウジング101の下流に提供されたカラムハウジング111の内部とすることができる。任意選択で、銃ハウジング101はカラムハウジング111に取外し可能に装着される。
【0065】
第2の真空領域および/または第3の真空領域にレンズ装置、特にコンデンサレンズ装置を提供することができる。さらに、第2の真空領域および/または第3の真空領域にビームアライメント装置またはビーム偏向装置を提供することができる。
【0066】
第4の真空領域124に、走査偏向器208、対物レンズ210、および試料から放出された信号粒子を検出するための荷電粒子検出器206のうちの少なくとも1つを配置することができる。対物レンズ210は、試料ステージ220上に置かれた試料上に荷電粒子ビームを焦束させるように構成されたものとすることができる。試料ステージ220は、検査対象の試料をその上に置くように構成されており、任意選択で、移動可能なもの、例えば2または3方向に移動可能なものとすることができる。任意選択で、試料ステージ220を、第4の真空領域124の下流の第5の真空領域、例えば試料チャンバに置くことができる。
【0067】
第1の真空領域121は、第1の真空領域121の第1の真空フランジ126に取り付けられた第1の真空ポンプ311によってポンピングすることができる。第1の真空ポンプ311は、イオンゲッタポンプおよび/または非蒸発性ゲッタポンプを含むことができる。第2の真空領域122は、第2の真空領域122の第2の真空フランジ127に取り付けられた第2の真空ポンプ312によってポンピングすることができる。第2の真空ポンプ312はイオンゲッタポンプを含むことができる。第3の真空領域123は、第3の真空領域123の第3の真空フランジ128に取り付けられた第3の真空ポンプ313によってポンピングすることができる。第3の真空ポンプ313はイオンゲッタポンプを含むことができる。第4の真空領域124は、第4の真空領域124の第4の真空フランジ129に取り付けられた第4の真空ポンプ314によってポンピングすることができる。第4の真空ポンプ314はイオンゲッタポンプを含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、第1の真空領域121内の冷陰極電界放出型エミッタの先端よりも少なくとも部分的に高い位置に、抑制電極104が配置される。冷陰極電界放出型エミッタによって放出された電子を、第1のガス分離壁132に統合されたものとすることができる引出し電極によって第1の差動ポンピング開孔131に向かって加速させることができる。例えば、第1のガス分離壁132は、引出し電位またはアノード電位(V)にセットされるように構成された電極セクション141を含むことができ、電極セクション141に第1の差動ポンピング開孔131を提供することができる。第1の差動ポンピング開孔131によって所定の形状および電流を有する電子ビームを形成することができ、この電子ビームは第2の真空領域122に入ることができる。
【0069】
第2の真空領域122に配置された第1のコンデンサレンズ106の励磁を変化させることによって、第2の差動ポンピング開孔133の下流の電子ビームの電流を調整することができる。
【0070】
第1のコンデンサレンズ106の下流に配置された任意選択の第2のコンデンサレンズ107、例えば第3の真空領域123に配置された任意選択の第2のコンデンサレンズ107によって、所定のビーム発散をセットすることができる。
【0071】
したがって、第3の差動ポンピング開孔135を通ってカラムハウジング111に入る電子ビームは所定の電流、寸法および発散を有し、この電子ビームは、銃ハウジング内、特に第1の真空領域内の良好な真空条件のために非常に安定している。
【0072】
いくつかの実施形態では、第4の真空領域において、電子ビームの収差が、1つまたは複数の収差補正器205、例えば静電または磁気多重極装置によって補償される。
【0073】
この電子ビームを、対物レンズ210、例えば静電磁気対物レンズによって試料上に焦束させることができる。
【0074】
試料によって放出された信号電子、特に2次電子(SE)および/または後方散乱電子(BSE)をこの対物レンズを通して反対方向に加速させることができ、ビーム分離器207によって1次荷電粒子ビームから分離することができる。それらの信号電子を荷電粒子検出器206によって検出することができ、荷電粒子検出器206によって検出された信号を評価することによって、試料を画像化することおよび/または検査することができる。
【0075】
荷電粒子ビームエミッタ105が配置された第1の真空領域内の優れた真空条件を有するコンパクトな荷電粒子ビーム装置を提供することができる。
【0076】
図5は、本明細書に記載された実施形態による荷電粒子ビーム装置を動作させる方法、特に電子顕微鏡または電子ビーム検査装置を動作させる方法の流れ図を示している。
【0077】
荷電粒子ビーム装置は、第1の真空領域、光軸に沿って第1の真空領域の下流に配置された第2の真空領域および光軸に沿って第2の真空領域の下流に配置された第3の真空領域を有する銃ハウジングを含み、これらの真空領域では差動ポンピングが可能である。第1の真空領域と第2の真空領域は、第1の差動ポンピング開孔がその中に提供された第1のガス分離壁によって分離されており、第2の真空領域と第3の真空領域は、第2の差動ポンピング開孔がその中に提供された第2のガス分離壁によって分離されている。
【0078】
ボックス410で、第1の真空領域、第2の真空領域および第3の真空領域から排気する。それぞれの真空領域は、対応するそれぞれの真空領域から確実に排気するための、それぞれの真空領域に関連付けられた少なくとも1つの真空ポンプを有することができる。
【0079】
ボックス420で、第1の真空領域内で荷電粒子ビームを、特に第1の真空領域に配置された冷陰極電界放出型エミッタによって発生させる。この荷電粒子ビームは、第1のガス分離壁の第1の差動ポンピング開孔を通して導かれ、第1の差動ポンピング開孔では、例えば所定のサイズおよび/または電流を有する荷電粒子ビームを形成するために、荷電粒子ビームの外側部分が第1の差動ポンピング開孔によって遮られる。したがって、第1の差動ポンピング開孔は、荷電粒子ビームのサイズを制限する光学開孔である。
【0080】
ボックス430で、この荷電粒子ビームは、第2のガス分離壁の第2の差動ポンピング開孔を通して導かれ、第2の差動ポンピング開孔では、例えば荷電粒子ビームのサイズおよび/または電流を調整するために、荷電粒子ビームの外側部分が第2の差動ポンピング開孔によって遮られる。したがって、第2の差動ポンピング開孔も、荷電粒子ビームのサイズを制限する光学開孔である。
【0081】
任意選択で、荷電粒子ビーム装置は、光軸に沿って第3の真空領域の下流にあって、第3の差動ポンピング開孔によって第3の真空領域によって分離された第4の真空領域を含むことができる。
【0082】
ボックス440で、この荷電粒子ビームは、第3の真空領域から第3の差動ポンピング開孔を通して第4の真空領域内へ導かれる。いくつかの実施形態では、第3の差動ポンピング開孔が光学開孔ではない。すなわち、この荷電粒子ビームは第3の差動ポンピング開孔を通して導かれ、第3の差動ポンピング開孔は本質的に荷電粒子ビームの部分を遮らず、特に、この荷電粒子ビームは、本質的に変更されていないビームプロファイルおよびビーム電流を有する。例えば、第3の差動ポンピング開孔は300μm以上の直径を有し、第3の差動ポンピング開孔における荷電粒子ビームのビーム直径は150μm以下とすることができる。したがって、第3の差動圧力開孔は荷電粒子ビームに影響を及ぼさず、または他のやり方で荷電粒子ビームを変更することもない。しかしながら、本明細書に記載された実施形態はこれに限定されず、他の実施形態は、ビーム制限開孔でもある第3の差動ポンピング開孔を有することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、第2の真空領域に配置されたものとすることができる第1のコンデンサレンズのフォーカシングストレングス(focusing strength)を調整することによって、第2の差動ポンピング開孔の下流の荷電粒子ビームのビーム電流が調整される。任意選択で、第1のコンデンサレンズの下流に配置された第2のコンデンサレンズ、例えば第3の真空領域に配置された第2のコンデンサレンズによって、ビーム発散を適宜、セットすることができる。
【0084】
この方法はさらに、第4の真空領域に配置されたものとすることができる対物レンズによって荷電粒子ビームを試料上に焦束させることを含むことができる。試料から放出された信号荷電粒子を、第4の真空領域に配置されたものとすることができる荷電粒子検出器によって検出することができる。
【0085】
本明細書に記載された差動ポンピング着想は、荷電粒子ビーム装置の動作中に以下の圧力条件を得ることを可能にする。いくつかの実施形態では、第1の真空領域が10-11ミリバール以下の圧力まで排気され、第2の真空領域が10-9ミリバール以下の圧力まで排気され、第3の真空領域が10-8ミリバール以下の圧力まで排気され、かつ/または第4の真空領域が10-5ミリバール以下の圧力まで排気される。
【0086】
以下に示す請求項の各々は、先行する1つまたは複数の請求項に関するものであることがあること、および本開示は、請求項の任意のサブセットの特徴を含むこのような実施形態を包含することを理解すべきである。以上の説明は実施形態を対象としているが、基本的な範囲を逸脱することなく他の実施形態および追加の実施形態を考案することができ、それらの実施形態の範囲は、以下に示す請求項によって決定される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを光軸(A)に沿って放出するための荷電粒子ビームエミッタが配置された第1の真空領域と、
前記第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって前記第1の真空領域から分離された第2の真空領域であり、前記第1の差動ポンピング開孔が、前記荷電粒子ビームの第1のビーム制限開孔として構成された、第2の真空領域と、
前記第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって前記第2の真空領域から分離された第3の真空領域であり、前記第2の差動ポンピング開孔が、前記荷電粒子ビームの第2のビーム制限開孔として構成された、第3の真空領域と
を含む荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記第2の真空領域に第1のコンデンサレンズが配置されており、前記第1のコンデンサレンズが、前記第2の差動ポンピング開孔の下流の前記荷電粒子ビームのビーム電流を調整するように構成された、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記第3の真空領域に第2のコンデンサレンズが配置された、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記第1の差動ポンピング開孔と前記第2の差動ポンピング開孔のうちの少なくとも一方が5μm以上かつ250μm以下の開口直径を有する、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記荷電粒子ビームエミッタと前記第1の差動ポンピング開孔との間の第1の距離が1cm以下であり、
前記第1の差動ポンピング開孔と前記第2の差動ポンピング開孔との間の第2の距離が3cm以上かつ10cm以下である、
請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
少なくとも前記第1の真空領域、前記第2の真空領域および前記第3の真空領域を含む銃ハウジングを含み、前記銃ハウジングが、少なくとも第4の真空領域を含むカラムハウジングに取付け可能であり、または前記カラムハウジングに取り付けられている、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記第3の真空領域の下流にあって、前記荷電粒子ビームのための第3の差動ポンピング開孔を有する第3のガス分離壁によって前記第3の真空領域から分離された第4の真空領域をさらに含む、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記第3の差動ポンピング開孔がビーム制限開孔ではない、請求項7に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
前記第4の真空領域が、収差補正器、前記荷電粒子ビームを試料上に焦束させるための対物レンズ、走査偏向器、前記荷電粒子ビームから信号荷電粒子を分離するためのビーム分離器および荷電粒子検出器からなるグループのうちの1つまたは複数を収容した、請求項7に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記第1の真空領域、前記第2の真空領域および前記第3の真空領域領域がそれぞれ、真空フランジおよび前記真空フランジに接続された対応するそれぞれの真空ポンプを有する、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
前記荷電粒子ビームエミッタが、電子ビームを放出するための冷陰極電界放出型エミッタである、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
前記第1のガス分離壁が、引出し電位にセットされるように構成された電極セクションを含み、前記第1の差動ポンピング開孔が前記電極セクションに提供された、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
前記第2の真空領域と前記第3の真空領域のうちの少なくとも一方にビームアライメント装置が提供された、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
試料を検査するための走査電子顕微鏡であって、
電子ビームを光軸(A)に沿って放出するための冷陰極電界放出型エミッタが配置された第1の真空領域と、
前記第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって前記第1の真空領域から分離された第2の真空領域であり、前記第1の差動ポンピング開孔が、前記電子ビームの第1のビーム制限開孔として構成された、第2の真空領域と、
前記第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって前記第2の真空領域から分離された第3の真空領域であり、前記第2の差動ポンピング開孔が、前記電子ビームの第2のビーム制限開孔として構成された、第3の真空領域と、
前記第2の真空領域と前記第3の真空領域のうちの少なくとも一方に配置されたレンズ装置と、
前記第3の真空領域の下流にあって、前記電子ビームの第3の差動ポンピング開孔を有する第3のガス分離壁によって前記第3の真空領域から分離された第4の真空領域と、
前記第4の真空領域に配置された走査偏向器、対物レンズおよび荷電粒子検出器のうちの少なくとも1つと
を含む走査電子顕微鏡。
【請求項15】
荷電粒子ビーム装置を動作させる方法であって、
第1の真空領域、前記第1の真空領域の下流にあって、第1の差動ポンピング開孔を有する第1のガス分離壁によって前記第1の真空領域から分離された第2の真空領域、および前記第2の真空領域の下流にあって、第2の差動ポンピング開孔を有する第2のガス分離壁によって前記第2の真空領域から分離された第3の真空領域から排気することと、
前記第1の真空領域内で荷電粒子ビームを発生させることと、
前記荷電粒子ビームの外側部分が遮られるように、前記荷電粒子ビームを、前記第1のガス分離壁の前記第1の差動ポンピング開孔を通して導くことと、
前記荷電粒子ビームの外側部分が遮られるように、前記荷電粒子ビームを、前記第2のガス分離壁の前記第2の差動ポンピング開孔を通して導くことと
を含む方法。
【請求項16】
前記第2の真空領域に配置された第1のコンデンサレンズのフォーカシングストレングスを調整することによって前記第2の差動ポンピング開孔の下流の前記荷電粒子ビームのビーム電流を調整すること
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第3の真空領域の下流にあって、第3の差動ポンピング開孔を有する第3のガス分離壁によって前記第3の真空領域から分離された第4の真空領域から排気することと、
前記第3の差動ポンピング開孔を通して前記荷電粒子ビームを前記第4の真空領域内へ導くことと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の差動ポンピング開孔が300μm以上の直径を有し、前記第3の差動ポンピング開孔における前記荷電粒子ビームのビーム直径が150μm以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第4の真空領域に配置された対物レンズによって前記荷電粒子ビームを焦束させ、試料から放出された信号荷電粒子を、前記第4の真空領域に配置された荷電粒子検出器によって検出する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の真空領域が10
-11ミリバールの最大圧力まで排気されること、
前記第2の真空領域が10
-9ミリバールの最大圧力まで排気されること、および
前記第3の真空領域が10
-8ミリバールの最大圧力まで排気されること
のうちの1つまたは複数が当てはまる、請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】