(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】シール装置および接続スリーブ
(51)【国際特許分類】
F16L 17/10 20060101AFI20240125BHJP
F16L 21/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16L17/10
F16L21/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023564261
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021087488
(87)【国際公開番号】W WO2022148671
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523256052
【氏名又は名称】スウィス テック イノヴェイション アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Swiss Tech Innovation AG
【住所又は居所原語表記】Leberngasse 21, 4600 Olten, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テオドア ヴュスト
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014AA08
(57)【要約】
特に流体を案内する管(11)と接続スリーブ(12)との間の、特に静的な管接続部に封止機能を生じさせるためのシール装置(10)を開示する。このシール装置(10)は、環状の溝(121)内に配置された環状シール(20)と、シール座(30)と、環状シール(20)を締め付けるための締付け要素(40)と、を備える。シール装置(10)は加圧側を有している。シール座(30)は、環状の溝(121)内で加圧側に配置されていて、複数のオーバフロー開口(31)を有しており、これによって、環状シール(20)に加圧側で流体の圧力が加えられる。付加的または代替的には、シール座(30)は、環状の溝(121)に配置されていて、加圧側の方向に円錐形に先細りになるように形成されており、これによって、環状シール(20)の締付けにより、この環状シール(20)が半径方向で圧縮され、環状の溝(121)には加圧側でアクセスが可能なままである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に流体を案内する管(11)と接続スリーブ(12)との間の、特に静的な管接続部に封止機能を生じさせるためのシール装置(10)であって、環状の溝(121)内に配置された環状シール(20)と、シール座(30)と、前記環状シール(20)を締め付けるための締付け要素(40)と、を備え、前記シール装置(10)は加圧側を有する、シール装置(10)において、
前記シール座(30)は、前記環状の溝(121)内で加圧側に配置されていて、複数のオーバフロー開口(31)を有しており、これによって、前記環状シール(20)に前記加圧側で前記流体の圧力が加えられ、かつ/または前記シール座(30)は、前記環状の溝(121)に配置されていて、前記加圧側の方向に円錐形に先細りになるように形成されており、これによって、前記環状シール(20)の締付けにより、該環状シール(20)が半径方向で圧縮され、前記環状の溝(121)には加圧側でアクセスが可能なままであることを特徴とする、シール装置(10)。
【請求項2】
前記オーバフロー開口(31)は、半径方向に延在する溝として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシール装置(10)。
【請求項3】
前記オーバフロー開口(31)は、半径方向に延在する孔として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシール装置(10)。
【請求項4】
前記シール座(30)は、前記環状シール(20)を接触させるための接触面(32)を有しており、該接触面(32)は、前記環状の溝(121)の底面から切欠き(33)によって離間させられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項5】
前記シール座(30)は環状に形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項6】
前記シール座は、5°~20°、特に7°~15°の角度、好ましくは7°~12°の角度、特に10°の角度で円錐形に先細りになるように形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシール装置(10)。
【請求項7】
前記シール座(30)はプラスチックから製作されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項8】
前記シール座(30)は、前記接続スリーブ(12)の一体形の構成部分として形成されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項9】
前記環状シール(20)はOリングとして形成されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項10】
前記環状シール(20)は、密封すべき管の外径よりも大きい内径を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項11】
前記締付け要素(40)は、軸線方向に可動に配置されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項12】
前記環状の溝(121)は、片側で前記締付け要素(40)によって画定されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載のシール装置(10)を備える接続スリーブ(12)。
【請求項14】
前記締付け要素(40)は、前記接続スリーブ(12)内にねじ込み可能なスリーブとして形成されていることを特徴とする、請求項13記載の接続スリーブ(12)。
【請求項15】
前記締付け要素(40)は、死点を越えて安定した位置に可動である複数の締付け部材から成るアセンブリとして形成されていることを特徴とする、請求項13記載の接続スリーブ(12)。
【請求項16】
前記締付け要素(40)は、締付けねじを備えた締付けリングとして形成されており、前記締付けねじによって、前記締付けリングは、前記環状シール(20)の方向に変位可能であることを特徴とする、請求項13記載の接続スリーブ(12)。
【請求項17】
第1の前記シール装置(10)と逆向きに配置された第2のシール装置(10)を有することを特徴とする、請求項13から16までのいずれか1項記載の接続スリーブ(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部に記載の、特に静的な管接続部に封止機能を生じさせるためのシール装置と、シール装置を備える接続スリーブと、に関する。
【背景技術】
【0002】
導管同士、特にプラスチック導管同士を接続するためには、差被せスリーブが使用されることが多い。この差被せスリーブ内には、接続すべき導管の端区分が2つの反対の側から導入され、その後、内部で密に位置固定される。代替的には、差被せスリーブは、一方の導管の端部に形成されていてもよい。
【0003】
広く普及している形態のこのような差被せスリーブでは、位置固定は、エラストマー材料製の環状シールによって行われる。この環状シールは、同時に接続部の所要の封止性にも役立つ。環状シールは、差被せスリーブの全周にわたって延在する環状溝内に位置しており、接続すべき1つ以上の導管の端区分の導入時に、環状溝の内壁と各々の端区分の外面との間で半径方向に押し潰され、これによって、環状シールが端区分の外面に密に接触して、導管の端区分を摩擦接続的に固持する。
【0004】
このような接続部を差被せスリーブを用いて形成するには、接続すべき導管の端区分を差被せスリーブ内に導入するために、比較的高い力消費が必要となる。なぜならば、環状シールの所要の強い押潰しが、端区分の導入に著しく抵抗するからである。さらに、対応する環状シールが、管の端区分にわたる擦過時に損傷する危険がある。これを回避するために、特に各々の端区分は付加的に加工、例えばバリ取りされなければならない。
【0005】
欧州特許第3120064号明細書によって、これらの欠点のうちの少なくとも幾つかを取り除く、環状シールを備えた差被せ接続装置が公知になっている。欧州特許第3120064号明細書には、締付け要素によって変形する環状シールを備えた差被せ接続装置が開示されている。トグルレバーとして形成された締付け要素を締め付けることによって、環状シールが挿入された環状溝の幅が縮小され、これによって、環状シールが両側で押し潰される。この環状シールは、外側の周面で環状溝の底面に接触しており、これによって、変形により環状シールの内径が縮小し、こうして、この環状シールが、接続すべき管に当て付けられる。この配置形態によって、管端部を相応の差被せ接続装置に密に接続することができる。しかしながら、このような接続は、圧力下にある管路同士を接続するには適していると云えない。なぜならば、環状シールが、ちょうど管端部に対する接触の領域で管の内圧によって負荷を被り、これによって離反してしまう傾向にあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、先行技術の少なくとも1つ以上の欠点を取り除くことである。特に、環状シールの主要な構造的な特性を全て利用することが可能となるシール装置および接続スリーブを提供することが求められる。好ましくは、管端部のバリ取りのための付加的な加工ステップを阻止するか、または少なくともバリ取りのための手間を減らすことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項に規定した装置によって解決される。更なる実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0008】
特に流体を案内する管と接続スリーブとの間の、特に静的な管接続部に封止機能を生じさせるための本発明に係るシール装置は、環状の溝内に配置された環状シールを備えている。シール装置は、シール座と、環状シールを締め付けるための締付け要素とを備えている。環状シールを締め付けることによって、この環状シールは、流体を案内する管に当付け可能となるかまたは当て付けられる。これによって、さらに、密封すべき管端部の外径よりも大きい内径を有する環状シールを使用することが可能となる。これに対応して、環状シールを管端部の縁部に被せるかまたは縁部を越すように引っ張る必要がなくなり、環状シールがより大きな直径であるため、管端部と干渉することなしに、この管端部にわたって通過させることができる。シール装置は加圧側を有している。
【0009】
シール装置の加圧側は、運転状態において、接続すべき管からの圧力が加えられる側である。
【0010】
シール座は、環状の溝内で加圧側に配置されていて、複数のオーバフロー開口を有しており、これによって、環状シールに加圧側で流体の圧力が加えられる。
【0011】
付加的または代替的には、シール座は、加圧側の方向に円錐形に先細りになるように形成されているように、環状の溝に配置されていてよく、これによって、環状シールの締付けにより、この環状シールが半径方向で圧縮され、特に変位し、環状の溝には加圧側でアクセスが可能なままである。
【0012】
これは、言い換えると、環状の溝の加圧側、特に溝の底面に圧力を加えることができることを意味している。
【0013】
方向呼称は、本明細書では、シール装置による一般的な使い方で定義している。したがって、軸線方向は、接続すべき管の長手方向軸線の方向に実質的に相当しており、これに対応して、半径方向は、長手方向軸線から直角に延びる半直線の方向に相当している。つまり、半径方向における圧縮は、管の長手方向軸線に向かう要素または表面の変位に相当している。
【0014】
環状の溝に加圧側でアクセスが可能であり、これに対応して、圧力を加えることができることによって、環状シールにも圧力を加えることができる。環状シールにすでに存在している圧縮は、この加圧によって付加的に増大する。言い換えると、管接続部の内部の圧力の増加によって、環状シールに加えられる圧力が増加し、ひいては、対応してシール機能が向上する。
【0015】
オーバフロー開口が、半径方向に延在する溝として形成されていることが特定されていてよい。これによって、1つには、簡単かつ廉価な製作が可能となり、もう1つには、例えば、組込み前または組込み中にオーバフロー開口の状態の視覚的な検査が簡単に可能となる。
【0016】
代替的には、オーバフロー開口は、半径方向に延在する孔として形成されていてよい。孔として形成することによって、シール座が、全周にわたって延在する中断されていない表面を備えることができ、ひいては、環状シールに対する相応に大きな接触面を提供することができる。
【0017】
これら両方の実施形態の組合せも可能である。
【0018】
シール座は、環状シールを接触させるための接触面を有していてよい。好ましくは、この接触面は、環状の溝の底面から切欠きによって離間させられている。この場合、特に、切欠きが、シール座の、半径方向内向きにずらされた表面として形成されていることが特定されていてよい。
【0019】
切欠きを有するシール座のこのような構成によって、環状シールの最大の直径の領域、特に溝の底面の領域にも圧力を加えられることが確保されている。言い換えると、このような構成によって、環状シールの、シール装置の加圧側に配置された表面全体に、実質的に均一に圧力を加えることができる。
【0020】
シール座は、好ましくは環状に形成されている。したがって、シール座を簡単に高い精度で製作することができる。
【0021】
シール座が加圧側の方向に円錐形に先細りになるように形成されている場合には、シール座は、5°~20°、特に7°~15°の角度、好ましくは7°~12°の角度、特に10°の角度で円錐形に先細りになるように形成されていてよい。
【0022】
この最小角と最大角とによって、環状シールの内径の相応の縮小が生じるものの、この縮小は、環状シールが損傷を受けるほど急速には強行されないことが確保されている。角度が緩やかであるほど、相応に所望される内径の狭まりを達成するために、締付け要素をさらに移動させなければならない。本発明では、10°の角度が特に有利であると判っている。
【0023】
シール座はプラスチックから製作されていてよい。これによって、簡単かつ廉価な製作が可能となる。
【0024】
シール座は、好ましくは別体の要素として形成されているものの、代替的には、シール座は、接続スリーブの一体形の構成部分として形成されていてよい。一体形の製作は、シール座が円錐形に先細りになるように形成されている場合に特に有利である。
【0025】
環状シールはOリングとして形成されていてよい。Oリングは製作が簡単であり、有利であり、様々な標準サイズで使用可能である。さらに、環状シールは、簡単に交換することができ、極めて均質な特性を有している。
【0026】
すでに記載したように、環状シールは、密封すべき管の外径よりも大きい直径を有していてよい。これによって、環状シールを管端部に接触させることなしに、シール装置を対応する管端部に力を消費することなく接合することが可能となる。
【0027】
この場合、特に、環状シールの内径が、溝の内径よりも大きいことが特定されていてよい。この溝の内径は、溝に隣接する表面によって規定される。
【0028】
言い換えると、環状シールは、この環状シールに隣接する要素に対して引っ込められており、ひいては、保護されている。
【0029】
好ましくは、締付け要素は、軸線方向に可動に配置されており、したがって、軸線方向に、つまり管に沿って移動することができる。これによって、環状の溝の幅の簡単な変更が可能となり、これによって環状シールを簡単に締め付けることができる。
【0030】
好ましくは、環状の溝は、片側で締付け要素によって画定されている。言い換えると、環状の溝は、固定の側壁と可動の側壁とを有している。この可動の側壁は、締付け要素の構成部分として形成されている。したがって、環状シールの締付けを簡単に実現することができる。
【0031】
本発明の更なる態様は、前述したようなシール装置を備える接続スリーブに関する。
【0032】
これによって、管端部同士を接続するためのコンパクトなユニットの提供が可能となる。
【0033】
締付け要素は、接続スリーブ内にねじ込み可能なスリーブとして形成されていてよい。
【0034】
接続スリーブ内への締付け要素の簡単なねじりまたはねじ込みによって、環状シールに予荷重を加えることができる。
【0035】
代替的には、締付け要素は、死点を越えて安定した位置に可動である複数の締付け部材から成るアセンブリの端区分として形成されていてよい。
【0036】
これによって、締付け要素に簡単にスナップ機能を付与することにより、環状シールに正確に予荷重を加えることができる。締付け部材は、特に欧州特許第3120064号明細書に記載されているように形成されていてよい。
【0037】
代替的には、締付け要素は、締付けねじを備えた締付けリングとして形成されていてよく、締付けねじによって、締付けリングは環状シールの方向に変位可能である。
【0038】
これによって、特に、比較的大きな接続スリーブの提供と、比較的高い予荷重力の発生とが可能となる。
【0039】
前述したような接続スリーブは、特に第1のシール装置と逆向きに配置された第2の前述したようなシール装置を有するように形成されていてよい。
【0040】
このような接続スリーブによって、2つの管端部を簡単かつ確実に互いに接続することができる。両方の管端部は、好ましくは、互いに逆方向から接続スリーブ内に押し込むことができ、それぞれ相応のシール装置によってクランプして密封することができる。
【0041】
概略的な図面に基づき、シール装置の複数の可能な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】先行技術に基づく接続スリーブを開放位置で示す図である。
【
図2】
図1に示した接続スリーブを締付け位置で示す図である。
【
図5】
図4に示したシール座の横断面の詳細図である。
【
図6】組込み状態で開放位置にあるシール装置の横断面の詳細図である。
【
図7】
図6に示した詳細図を締付け位置で示す図である。
【
図9】
図8に示したシール座の横断面の詳細図である。
【
図10】組込み状態で開放位置にあるシール装置の横断面の詳細図である。
【
図12】締付け要素の代替的な構成を備えたシール装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、先行技術に基づく接続スリーブ12が開放位置で示してある。この接続スリーブ12内には、シール装置10が配置されている。このシール装置10は、図示の構成ではOリングとして形成された環状シール20を有している。
【0044】
シール装置10は、さらに、締付け要素40を有している。この締付け要素40は軸線方向に可動であり、トグルレバーとして形成された締付け部材(詳しく図示せず)によって摺動可能である。締付け要素40は、図示の構成では端区分として、締付け部材のアセンブリの組込み形の構成部材である。環状シール20は、接続スリーブ12において環状の溝121内に配置されている。接続スリーブ12の原理的な構造は、欧州特許第3120064号明細書に開示された構造に相当している。また、締付け部材の構造、アセンブリおよび機能形態も欧州特許第3120064号明細書に記載のそれに相当している。
【0045】
図2には、
図1に示した接続スリーブ12が締付け位置で示してある。締付け要素40を保持するトグルレバーを半径方向で押し込むことによって、環状シール20が圧縮されている。したがって、この環状シール20の形状が、実質的に断面円形の形状(これについては
図1参照)から実質的に断面楕円形の形状に変化している。環状シール20は、環状の溝121の底面と、溝121の複数の側壁であって、そのうちの1つが締付け要素40によって形成されている側壁と、管11の管端部の外面とに接触している。したがって、環状シール20は、4つの側で対応部分に接触している。環状シール20が管11に接触する領域における環状シール20の領域にだけ、管11の内部からアクセスが可能であり、圧力を加えることができる。この箇所に圧力を加えることによって、環状シール20が押し拡げられ、管11に対する環状シール20の接触が弱まり、ひいては、接続スリーブ12に漏れが生じる。
【0046】
図3には、従来のOリングとして形成された環状シール20の機能原理が示してある。Oリングは、接続スリーブ12の溝(詳しく図示せず)内に位置している。密封すべき管11は、矢印方向で接続スリーブ12に押し込まれる。容易に認めることができるように、Oリングが損傷を被ることを回避するために、管11は、Oリングとの初期接触の領域に面取り部を有していなければならない。被嵌工程(1番目の図面から真ん中の図面への移行)中、Oリングは半径方向で押し潰される。次いで、このOリングは、ある程度の押付け力を溝の底面と管11の外壁とに加える。いま、
図3に示した3番目の図面には、管11の内部に圧力が加えられた際の状況が示してある。Oリングは、対応して、環状の溝の、加圧側と反対側の側壁に押し付けられる。さらに、Oリングの圧力が、半径方向および半径方向と逆方向で増加する。言い換えると、環状の溝内のかつ管11の外面に対するOリングの押付け圧が、加圧側でOリングに作用する圧力が高まるにつれて増加する。
【0047】
先行技術(
図1および
図2)による接続スリーブによって、片側でOリングに圧力を加えることが不可能であることが率直に明らかとなる。なぜならば、
図3の真ん中の図面に示したような半径方向の予荷重を達成するために、Oリングが側方で押し潰されるからである。
【0048】
図4には、シール座30の第1の実施形態が示してある。このシール座30は、実質的に環状に形成されていて、多数のオーバフロー開口31を有している。図面を見やすくするため、ただ1つのオーバフロー開口31にだけ参照符号が付してある。シール座30は、さらに、環状シールを接触させるための接触面32を有している。
図4から明らかであるように、この接触面32は、オーバフロー開口31によって複数の区分に分割されている。オーバフロー開口31は、図示の構成では、半径方向に延在する溝として形成されている。シール座30の周面には切欠き33が配置されており、これによって接触面32は、シール座30を配置するかまたは配置することができる環状の溝から離間している。オーバフロー開口31によって、環状の溝の、管の中心に近い方の領域から溝の底面における領域への接続が提供されており、これによって、複数のオーバフロー開口31を介して圧力補償を提供するかまたは切欠き33に圧力を加えることができる。
【0049】
図5には、
図4に示したシール座30の横断面の詳細図が示してある。この横断面は、同図では、複数のオーバフロー開口31のうちの1つのオーバフロー開口を通って延びている。切欠き33によって、接触面32は、シール座30の一番外側の縁部に対して引っ込められており、ひいては、一般的に使用されている場合、環状の溝の底面に対して離間している。
【0050】
図6には、組込み状態で開放位置にあるシール装置10の横断面の詳細図が示してある。このシール装置10は、
図4に対して説明したようなシール座30を備えている。
図6に示した横断面は、
図5に示した横断面に相当している。シール装置10は、図示の構成では開放位置で示してある。環状シール20が、管11の外面から僅かに離間していることが明らかである。しかしながら、環状シール20は、一方の側でシール座30の接触面32に接触しており、反対の側で締付け要素40の表面に接触している。環状シール20はその外側の周面で溝121の底面に接触している。
図6に示した位置では、管11を環状シール20との衝突なしにシール装置10内へと移動させるかまたはシール装置10から遠ざけることができる。
【0051】
図7には、
図6に示した詳細図が締付け位置で示してある。締付け要素40は、矢印方向で環状シール20に向かって移動しており、これによって、この環状シール20がシール座30と締付け要素40との間で締め付けられて、相応に変形している。この変形によって、環状シール20の内径が縮小しており、これによって、環状シール20がその内側の周面で管11の外側の周面に接触している。
図7において明らかであるように、切欠き33によって溝121内に形成された環状室には、流体がアクセス可能である。この流体は、管11の外側表面に沿って流れることができ、シール座30に設けられたオーバフロー開口31を通って切欠き33に流入することができる。したがって、封止の領域または管11に対する環状シール20の接触の領域でも、環状シール20の封止の領域または溝の底面に対する環状シール20の接触の領域でも、環状シール20に圧力を加えることができる。言い換えると、環状シール20の加圧側に、管11内に存在する流体の圧力を加えることができる。この配置形態によって、環状シール20を通じて半径方向および半径方向と逆方向での圧縮の増加を達成することができる。圧力が増加するにつれて、環状シール20は、接触面32から離反するように変形する。
【0052】
図8には、シール座30の第2の実施形態が示してある。このシール座30は、実質的に環状に形成されており、多数のオーバフロー開口31を有している。図面を見やすくするため、ただ1つのオーバフロー開口31にだけ参照符号が付してある。シール座30は、さらに、環状シールを接触させるための接触面32を有している。
図8から明らかであるように、この接触面32は連続して形成されている。オーバフロー開口31は、図示の構成では、半径方向に延在する孔として形成されている。シール座30の周面には、孔が開口する切欠き33が配置されている。接触面32は、シール座30を配置する環状の溝から離間している。オーバフロー開口31によって、環状の溝の、管の中心に近い方の領域から溝の底面における領域への接続が提供されており、これによって、複数のオーバフロー開口31を介して圧力補償を提供するかまたは切欠き33に圧力を加えることができる。
【0053】
図9には、
図8に示したシール座30の横断面の詳細図が示してある。この横断面は、同図では、複数のオーバフロー開口31のうちの1つのオーバフロー開口を通って延びている。切欠き33によって、接触面32は、シール座30の一番外側の縁部に対して引っ込められており、ひいては、一般的に使用されている場合環状の溝の底面に対して離間している。
【0054】
図8および
図9に示したシール座の実施形態は、
図6および
図7に示したシール装置および
図6および
図7に示したシール座30と完全に互換性がある。
【0055】
図10には、組込み状態で開放位置にある代替的なシール装置10の横断面の詳細図が示してある。このシール装置10では、シール座30は、接続スリーブ12の環状の溝121の一体形の構成部分として形成されている。シール座30は、図示の構成では、加圧側の方向に円錐形に先細りになる面として形成されている。
図10でも明らかであるように、環状シール20は、管11の外径よりも大きい内径を有している。
図10に示した状態では、環状シール20は、シール座30の表面と締付け要素40の表面とに接触している。
【0056】
図11には、
図10に示した詳細図が締付け位置で示してある。締付け要素40が操作され、矢印で示した軸線方向に移動させられている。これに対応して、環状シール20は、シール座30の、円錐形に先細りになる表面に沿って管接続部の加圧側の方向に移動している。明らかであるように、環状シール20は変形しており、管の中心の方向に半径方向で変位しており、かつ/または圧縮されている。環状シールが、管11の外面と、シール座30の表面と、締付け要素40とに接触していることが明らかである。環状シールの加圧側に十分に圧力を加えることができ、この環状シール20に、
図3のうちの3番目の図面に対して説明したような状態が生じていることが率直に明らかである。つまり、圧力を加えることによって、1つには、管11の密封が向上し、もう1つには、環状シール20による管のクランプも向上する。
【0057】
図12には、締付け要素40の代替的な構成を備えたシール装置10が示してある。この構成は、記載した全ての構成と互換性があり、環状シール20およびシール座30の機能は、すでに説明した実施例の機能に相当しているため、再度の繰返しを省略する。言い換えると、締付け要素40は、前述したように、例えば、トグルレバーの締付けによって軸線方向に移動する、トグルレバーのアセンブリの端区分として形成されていてよい。
【0058】
締付け要素40は複数の部材から構成されていて、押圧リング41と、クランプリング42と、円錐形リング43とを有している。押圧リング41は、環状シール20と円錐形リング43とに当て付けられているかまたは当付け可能である。この円錐形リング43の中央にクランプリング42が配置されている。円錐形リング43とクランプリング42とは、円錐形の面において摺動可能に互いに支持され合っている。円錐形リング43における円錐面は、接合方向に向かって拡幅されており、これによって、環状シール20の方向への円錐形リング43の移動により、クランプリング42が半径方向で圧縮される。この半径方向の圧縮によって、クランプリング42が管11に押し付けられ、これによって、この管11が付加的な半径方向の力によって保持されている。
【0059】
環状シール20の方向への円錐形リング43の移動によって、この円錐形リング43が押圧リング41に押し付けられる。そして、この押圧リング41が、環状シール20の方向に移動し、この環状シール20を前述したように変形させる。
【0060】
クランプリング42はその内側の周面にギザ歯を有している。このギザ歯は、管11の接合方向と逆方向に向けられている。管11が接合方向と逆方向に移動すると、クランプリング42が円錐面にさらに押し込まれ、管11を保持する半径方向の力が付加的に高められる。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に流体を案内する管(11)と接続スリーブ(12)との間の、特に静的な管接続部に封止機能を生じさせるためのシール装置(10)であって、環状の溝(121)内に配置された環状シール(20)と、シール座(30)と、前記環状シール(20)を締め付けるための締付け要素(40)と、を備え、前記シール装置(10)は加圧側を有する、シール装置(10)において、
前記シール座(30)は、前記環状の溝(121)内で加圧側に配置されていて、複数のオーバフロー開口(31)を有しており、これによって、前記環状シール(20)に前記加圧側で前記流体の圧力が加えら
れることを特徴とする、シール装置(10)。
【請求項2】
前記オーバフロー開口(31)は、半径方向に延在する溝として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシール装置(10)。
【請求項3】
前記オーバフロー開口(31)は、半径方向に延在する孔として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシール装置(10)。
【請求項4】
前記シール座(30)は、前記環状シール(20)を接触させるための接触面(32)を有しており、該接触面(32)は、前記環状の溝(121)の底面から切欠き(33)によって離間させられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項5】
前記シール座(30)は環状に形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項6】
前記シール座は、5°~20°、特に7°~15°の角度、好ましくは7°~12°の角度、特に10°の角度で円錐形に先細りになるように形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシール装置(10)。
【請求項7】
前記シール座(30)はプラスチックから製作されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項8】
前記シール座(30)は、前記接続スリーブ(12)の一体形の構成部分として形成されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項9】
前記環状シール(20)はOリングとして形成されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項10】
前記環状シール(20)は、密封すべき管の外径よりも大きい内径を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項11】
前記締付け要素(40)は、軸線方向に可動に配置されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項12】
前記環状の溝(121)は、片側で前記締付け要素(40)によって画定されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のシール装置(10)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載のシール装置(10)を備える接続スリーブ(12)。
【請求項14】
前記締付け要素(40)は、前記接続スリーブ(12)内にねじ込み可能なスリーブとして形成されていることを特徴とする、請求項13記載の接続スリーブ(12)。
【請求項15】
前記締付け要素(40)は、死点を越えて安定した位置に可動である複数の締付け部材から成るアセンブリとして形成されていることを特徴とする、請求項13記載の接続スリーブ(12)。
【請求項16】
前記締付け要素(40)は、締付けねじを備えた締付けリングとして形成されており、前記締付けねじによって、前記締付けリングは、前記環状シール(20)の方向に変位可能であることを特徴とする、請求項13記載の接続スリーブ(12)。
【請求項17】
第1の前記シール装置(10)と逆向きに配置された第2のシール装置(10)を有することを特徴とする、請求項13から16までのいずれか1項記載の接続スリーブ(12)。
【国際調査報告】