(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】グラフト化EPDMポリマー及び同ポリマーを用いるゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 81/02 20060101AFI20240125BHJP
C08F 8/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08G81/02
C08F8/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564726
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2021049039
(87)【国際公開番号】W WO2022145494
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 円
【テーマコード(参考)】
4J031
4J100
【Fターム(参考)】
4J031AA12
4J031AA29
4J031AB02
4J031AC01
4J031AD01
4J031AE19
4J031AF20
4J031CD03
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AS11R
4J100BA02H
4J100BA03H
4J100BC54H
4J100CA31
4J100HA29
4J100HA33
4J100HC36
4J100HC83
4J100JA29
(57)【要約】
【解決手段】 ポリエンマーを含むか又はそれからなるポリマーは、EPDMにグラフト化され、前者は、後者のジエンモノマー部分の残留不飽和が元々位置していたスポットにおいて後者に結合する。結果として得られる高分子は、より小さいEPDMドメイン、すなわち、より良好な分散を呈する傾向がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む、高分子。
【請求項2】
前記グラフト鎖が、ポリエンマーからなる、請求項1に記載の高分子。
【請求項3】
前記ポリエンが、共役ジエンである、請求項1又は2に記載の高分子。
【請求項4】
前記グラフト鎖が、50~250kg/molのM
nを有する、請求項1又は2に記載の高分子。
【請求項5】
前記グラフト鎖が、100~200kg/molのM
nを有する、請求項4に記載の高分子。
【請求項6】
400~1500kg/molのM
nを有する、請求項1又は2に記載の高分子。
【請求項7】
500~1250kg/molのM
nを有する、請求項6に記載の高分子。
【請求項8】
EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む高分子を提供するための方法であって、前記方法が、官能化EPDMを、ポリエンマーを含むカルバニオンポリマーと反応させることを含み、前記官能化EPDMの官能基が、カルバニオンに対して反応性である、方法。
【請求項9】
前記官能基が、エポキシ基であり、前記エポキシ基が、任意選択的に、EPDMとm-クロロペルオキシ安息香酸との反応によって提供されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カルバニオンポリマーが、ポリエンマーからなる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリエンが、共役ジエンである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記カルバニオンポリマーが、50~250kg/molのM
nを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルバニオンポリマーが、100~200kg/molのM
nを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む高分子を含むゴム組成物であって、前記組成物が、任意選択的に、ポリエンマーを含む他のポリマーを含まない、ゴム組成物。
【請求項15】
前記高分子が、400~1500kg/molのM
nを有する、請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記組成物中のEPDMの総量が、15phr以下である、請求項14又は15に記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記組成物中のEPDMの総量が、10phr以下である、請求項16に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト化EPDMポリマー及びそれを用いたゴム組成物に関する。本国際出願は、2020年12月31日に出願の米国特許出願第63/132,537号の利益を主張し、全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
タイヤ構成要素などのゴム製品(例えば、トレッド、サイドウォールなど)は、多くの場合、例えば、粒状カーボンブラック及びシリカなどの1つ以上の補強材を含有するエラストマー組成物から作製される。
【0003】
良好なトラクション及び耐摩耗性はタイヤトレッドの主たる考慮事項であるが、自動車の燃費効率に関する懸念から、タイヤ動作中のヒステリシス及び発熱の減少に相関する転がり抵抗の最小化について議論されている。これらの考慮事項は、大いに競合し、やや矛盾しており、良好な路面トラクション性をもたらすように設計された組成物から作製されたトレッドは、通常高い転がり抵抗を示し、その逆もまた同様である。
【0004】
タイヤサイドウォールに関しては、耐オゾン性が主要な考慮事項であるが、競合する考慮事項は、(自動車の燃費を改善するために)タイヤ全体の重量を低減させることが所望される傾向がある。しかしながら、サイドウォール構成要素を提供するために使用されるゴム組成物の量が減少する場合、存在する酸化防止剤の量がより低下することに起因して、耐オゾン性が低下する傾向がある。
【0005】
耐オゾン性はタイヤサイドウォールにおいて非常に重要であるため、内部にエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(ethylene/propylene/diene monomer、EPDM)ポリマーを包含することへの関心が継続している。EPDMは、亀裂成長に対する耐性は特に良好ではないが、オゾン(したがって、オゾン分解)に対する耐性が高いことが知られている。後者は、EPDMを含むブレンドの使用によって対処されることがある。それにもかかわらず、かかるゴム組成物中に別のポリマーの代わりにEPDMを包含することは、組成物中に含まれる酸化防止剤の量の低減を可能にする傾向があり、これは前述の重量低減の理由から望ましい。
【0006】
上で説明されたタイプのブレンドから調製された加硫物は、EPDMの量が臨界最小値、多くの場合、約25phrのEPDMに到達しない限り、及び到達するまで、オゾン誘発亀裂に悩まされ得る。これは、例えば、ポリブタジエン(polybutadiene、BR)、天然ゴム(natural rubber、NR)などの共役ジエンマーを含むポリマー中にEPDMが不適切に分散する傾向に起因すると理論付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
依然として望ましいことは、かかるポリマー中のEPDMの分散を向上させるための費用効果的な様式である。また、用いられるEPDMの量が前述の臨界最小値未満である場合でも、オゾン誘発亀裂に耐えることができるゴム組成物、並びにそれから調製される加硫物も望ましい。
【0008】
発明の開示
本明細書で提供されるのは、ポリエンマー(例えば、ポリジエン)を含むか又はそれからなるポリマーがEPDMにグラフト化されている高分子であり、結合点は、後者のジエンモノマー部分の残留不飽和が以前に位置していた位置である。結果として得られる高分子は、単なるブレンドよりも小さいEPDMドメイン、すなわち、より良好な分散を呈する傾向がある。
【0009】
別の態様では、官能化EPDMが、例えば、ポリジエンなどのポリエンマーを含むカルバニオンポリマーと反応する高分子を提供する方法が提供される。官能化EPDMの官能基は、カルバニオンに対して反応性であり、エポキシ基が非限定的な例である。
【0010】
ゴム組成物中の高分子の包含は、それから提供される加硫物におけるオゾン誘発性亀裂に対する耐性を低下させることなく、含まれるEPDMの総量における低減を可能にすることができる。
【0011】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明から当業者に明白となるであろう。その説明の理解を手助けするために特定の定義を以下に示すが、これらは周辺の文章が反対の意図を明白に示していない限り、全体を通して適用されるものとする。
「ポリマー」とは1つ以上のモノマーの重合生成物を意味し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
「マー」又は「マー単位」とは、単一の反応分子に由来するポリマーの部分を意味する(例えば、エチレンマーは、一般式-CH2CH2-を有する)。
「コポリマー」は、2つの反応物質、通常はモノマーに由来するマー単位を含んだポリマーを意味し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマーなどを含む。
「インターポリマー」は、少なくとも2つの反応物質、通常はモノマーに由来するマー単位を含んだポリマーを意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
「ゴムムーニー粘度」は、任意の充填剤の添加前の未硬化ポリマーのムーニー粘度である。
「置換」は、該当する基について意図した目的を阻害しないヘテロ原子又は官能基(例えば、ヒドロカルビル基)を含有するものを意味する。
「直接結合」とは、介在する原子又は基がない状態で共有結合していることを意味する。
「ポリエン」は、最長部分又は分子鎖に少なくとも2つの二重結合が存在する分子を意味し、具体的にはジエン、トリエンなどが含まれる。
「ポリジエン」は、1つ以上のジエンのマー単位を含むポリマーを意味する。
「ゴム」は、少なくとも50%(w/w)のポリエンマーを含む天然及び/又は合成ポリマーを意味する。
「phr」とは、ゴム100重量部(parts by weight、pbw)当たりのpbwを意味する。
【0012】
本明細書全体を通して、パーセンテージの形態で与えられる全ての値は、周囲の文章が反対の意図を明確に示していない限り、重量パーセンテージ(w/w)である。
【0013】
別途記載のない限り、成分の量、プロセス条件(例えば、時間及び温度)などを表す全ての数は、「約」という用語を本質的に含むものとして理解されるべきである。列挙された数値限定は、使用される有効桁数の数に基づいて、適切な精度を含み、例えば、「最大5.0」は、「最大5」よりも低い絶対上限を設定するものと読み取ることができる。
【0014】
全体を通して言及された全ての特許文献の関連する教示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先のセクションで概説した高分子は、EPDM、及び、例えば、ポリジエンなどのポリエンマーを含むポリマーから結果として得られる部分を有する。
【0016】
高分子の作製方法に関しては、任意のEPDMを利用することができる。全てのEPDMポリマーは、残留不飽和点、すなわち、ジエンモノマーの環状部分の一部ではない二重結合を有する。この残留不飽和は、以下に詳細に説明されるように、カルバニオンとの反応をより受けやすい官能基と置換され得る。
【0017】
かかる官能基の非限定的な例は、エポキシ基である。EPDMの残留不飽和は、EPDMとエポキシ化剤、例えば、m-クロロペルオキシ安息香酸など、との反応を介してエポキシ基によって置換され得る。このタイプの反応は、典型的には、高温を必要とせず、2つの反応物が少なくともいくらか可溶性である任意の溶媒中で実施され得る。例示的な一組の条件は、以下の実施例のセクションにおいて提供される。
【0018】
高分子のグラフト化セグメントは、カルバニオンポリマー、具体的には、ポリエンマー、特にジエンマー、更には共役ジエンマーを含む末端活性ポリマーから生じる。
【0019】
ポリエンマーは、ポリマー鎖にエチレン性不飽和を提供する。不飽和マーは、ポリエン、特にジエン及びトリエン(例えば、ミルセン)の組み込みから生じ得る。例示的なポリエンとしては、C4~C12ジエン、特に、限定されるものではないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、及び1,3-ヘキサジエンなどの共役ジエンが挙げられる。
【0020】
ポリエンは、2つ以上の手法でポリマー鎖の中に組み込むことができる。この組み込み様式を制御することが望ましい場合があり、この制御を達成するための技術を以下で考察する。
【0021】
約10~約80%、任意選択的に、約25~65%の全ポリエン含有量に基づいた数値当たりのパーセンテージとして付与された全体的な1,2-微細構造を有するポリマー鎖は、ある特定の最終使用の用途のために望ましい場合がある。全ポリエン含有量に基づいて、約50%以下、好ましくは約45%以下、より好ましくは約40%以下、更により好ましくは約35%以下、最も好ましくは約30%以下の1,2-微細構造を有するポリマーは、「実質的に直線状」であると考えられる。
【0022】
確かに必要ではなく、好ましくもないが、末端活性ポリマーは、ビニル芳香族、特にC8~C20ビニル芳香族、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどに由来するマー単位によって提供される直接結合したペンダント芳香族基を含むことから除外されない。かかるインターポリマーの微細構造は、ランダムであり得、すなわち、各タイプの構成モノマーに由来するマー単位は、ブロックを形成せず、代わりに、本質的に非反復様式で組み込まれる。ランダム微細構造は、例えば、タイヤトレッドの製造に使用されるゴム組成物などの一部の最終使用の用途における特定の利益を提供し得る。
【0023】
溶液重合は、約20世紀中頃から行われ、そして、その一般的な態様は、通常の当業者にとって既知である。それにもかかわらず、特定の態様が、参照のため便宜上ここで提供される。
【0024】
THFなどの極性溶媒又は非極性溶媒は、溶液重合に用いることができ、後者のタイプは、工業的実施においてより一般的である。アニオン的に開始した溶液重合において典型的に用いられる非極性溶媒の例としては、様々なC5~C12環状及び非環状アルカン並びにこれらのアルキル化誘導体、ある特定の液体芳香族化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。当業者であれば、他の有用な溶媒の選択肢及び組み合わせを認識する。
【0025】
溶液重合では、ランダム化及びビニル含有量(すなわち、1,2-微細構造)の両方を、配位結合剤(coordinator)、通常は極性化合物を重合成分に含めることにより増加させることができる。例えば、所望のビニル含有量、用いた非ポリエンモノマーのレベル、反応温度、及び用いた具体的な配位結合剤の特性に応じて、開始剤1当量当たり最大90以上の当量の配位結合剤を使用することができる。配位結合剤として有用な化合物としては、非結合電子対、特に、O又はNを有するヘテロ原子を含む有機化合物が挙げられる。例として、モノ及びオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル;クラウンエーテル;テトラメチルエチレンジアミンなどの三級アミン;THF;THFオリゴマー;2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン、ジ-ピペリジルエタン、ヘキサメチルホスホラミド、N,N’-ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジエチルエーテル、トリブチルアミンなどの直鎖及び環状オリゴマーオキソラニルアルカン(例えば、米国特許第4,429,091号参照)が挙げられる。
【0026】
当業者は溶液重合において典型的に用いられる条件を理解しているが、読者の便宜のために代表的な説明を提供する。以下はバッチプロセスに基づいているが、例えば、セミバッチプロセス又は連続プロセスに容易に拡張することができる。所望のポリマーの性質に依存して、溶液重合の特定の条件は、著しく変動する場合がある。
【0027】
典型的には、重合溶媒及びモノマーの溶液は、約-70°~+150℃、より一般的には、約-40°~+120℃、典型的には、約0°~100℃の温度で提供される。
【0028】
この溶液に開始化合物を添加する。例示的な開始剤としては、有機リチウム化合物、特に、アルキルリチウム化合物が挙げられる。有機リチウム開始剤の例としては、N-リチオ-ヘキサメチレンイミン;n-ブチルリチウム;トリブチルスズリチウム;ジメチルアミノリチウム、ジエチルアミノリチウム、ジプロピルアミノリチウム、ジブチルアミノリチウムなどのジアルキルアミノリチウム化合物;ジエチルアミノプロピルリチウムなどのジアルキルアミノアルキルリチウム化合物;及びC1~C12、好ましくは、C1~C4アルキル基を含むトリアルキルスタニルリチウム化合物が挙げられる。
【0029】
多官能性開始剤、すなわち、2つ以上のリビング端部を有するポリマーを形成することができる開始剤もまた、使用することができる。多官能性開始剤の例としては、限定されるものではないが、1,4-ジリチオブタン、1,10-ジリチオデカン、1,20-ジリチオエイコサン、1,4-ジリチオベンゼン、1,4-ジリチオナフタレン、1,10-ジリチオアントラセン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,3,5-トリリチオペンタン、1,5,15-トリリチオエイコサン、1,3,5-トリリチオシクロへキサン、1,3,5,8-テトラリチオデカン、1,5,10,20-テトラリチオエイコサン、1,2,4,6-テトラリチオシクロヘキサン、及び4,4’-ジリチオビフェニルが挙げられる。
【0030】
有機リチウム開始剤に加えて、いわゆる官能性開始剤もまた、有用であり得る。これらは、ポリマー鎖の中に組み込まれ、それに伴って、鎖の開始された端部に官能基を提供する。かかる材料の例としては、リチウム化アリールチオアセタール(例えば、米国特許第7,153,919号参照)並びに有機リチウム化合物と、例えば、任意選択的にジイソプロペニルベンゼンなどの化合物と予備反応させた置換アルジミン、ケチミン、二級アミンなどのN含有有機化合物との反応生成物(例えば、米国特許第5,153,159号及び同第5,567,815号参照)が挙げられる。例えば、リチウム化HMIなどのN原子含有開始剤の使用は、ポリマー鎖とカーボンブラック粒子との間の相互作用を更に強化することができる。また、例えば、米国特許第8,227,562号、同第8,871,871号、同第9,365,660号、同第10,277,425号、同第10,815,328号なども参照されたい。
【0031】
開始化合物の導入後、所望のポリマーの形成をもたらすのに十分な期間、通常は約0.01~約100時間、より一般的には、約0.08~約48時間、典型的には、約0.15~約2時間、無水嫌気性条件下で重合を進行させる。
【0032】
所望の重合率に到達した後、熱源(使用される場合)を取り除くことができ、反応容器を重合のためだけに用意していた場合には、反応混合物は、更なる反応のためにポスト重合容器に移される。
【0033】
アニオン技術に従って作製されたポリマーは、概して、最大約500,000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。ある特定の実施形態では、Mnは、約2000ダルトンと低くてもよく、これら及び/又は他の実施形態では、Mnは、有利には、少なくとも約10,000ダルトンであり得るか、又は約50,000~約250,000ダルトン、若しくは約75,000~約150,000ダルトンの範囲であり得る。好ましい範囲は、約75,000~約225,000ダルトン、特に約100,000~約200,000ダルトンである。多くの場合、Mnは、典型的には、冷却された試料が、約2~約150、より一般的には、約2.5~約125、更により一般的には、約5~約100、最も一般的には、約10~約75のゴムムーニー粘度(ML4/100℃)を呈するものである。
【0034】
官能化EPDM及びカルバニオンポリマーは、10~600分間、約0°~約150℃、より一般的には、約-10°~約100℃、典型的には、約20°~約80℃の温度で反応させることができる。カルバニオンポリマー鎖の活性を維持するために嫌気性及び無水条件の維持が好ましいが、触媒は必要とされない。
【0035】
当業者によって理解されるように、官能化EPDM鎖の量及びEPDM対カルバニオンポリマーの比を使用して、グラフト化の量を制御することができる。加えて、あまり好ましくはないが、活性H原子含有化合物をカルバニオンポリマー溶液に導入して、リビング鎖の数を低減させることができる。
【0036】
結果として得られる高分子、すなわち、グラフト化EPDMは、典型的には、約500~約1250kg/mol、多くの場合、約550~約1100kg/molのMnを有する。それにもかかわらず、非常に多くのグレードのEPDMが入手可能であり、アニオン開始ポリマーの分子量は非常に容易に変えることができるので、前述の範囲は、単に例示的なものであり、制限するものとみなすべきではない。
【0037】
高分子は、限定されるものではないが、天然又は合成ポリイソプレン(NRが好ましい)、並びにポリエン、特に、ジエン、更には、共役ジエンのホモ及びインターポリマーを含む多種多様な他のポリマーを含む加硫性組成物中の成分として使用することができる。例示的な共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,2-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられ、1,3-ブタジエンが特に好ましい。3%以下の1,2-ビニル含有量及び少なくとも96のシス-1,4含有量を有するBRが好ましい。最大約12%の1,2-含有量を有するBRもまた、他の成分のレベルにおいて適切に調整して使用することができる。(この段落において、全てのパーセンテージはモルであり、かかるパーセンテージは、様々な分光技術によって判定される。)
【0038】
共役ジエンモノマーと少なくとも1つのモノオレフィンとのインターポリマーも含むことができる。潜在的に有用なモノオレフィンモノマーとしては、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジンなど)及びα-オレフィン(例えば、エチレン及びプロピレン)、並びに前述の混合物が挙げられる。かかるインターポリマーは、最大50%、好ましくは、約35%以下(両方w/w)のモノオレフィンマーを含有することができる。このタイプの好ましいインターポリマーは、SBRである。
【0039】
ゴム組成物はまた、非グラフト化EPDMを含有することができる。分子量、エチレン対プロピレンマー含有量、特定のタイプのジエンモノマーなどに関して異なる様々なグレードのいずれかを用いることができる。かかる他のタイプのEPDMを含むことができるにもかかわらず、上記高分子の利点は、ゴム組成物中に含まれる全EPDMの量を低下させることができ、それでもなお許容可能なレベルの耐亀裂性を提供することである。具体的には、かかる組成物中に含まれるEPDMの総量は、組成物中で使用される全てのポリマーの重量の約25%未満、一般的には、20%未満、典型的には、18%未満、好ましくは、15%未満、より好ましくは、13%未満、最も好ましくは、12%未満である。範囲に関して、EPDMの総量は、5~22%、一般的には、6~19%、典型的には、7~17%、より典型的には、8~16%、最も典型的には、9~15%であり得る。
【0040】
結果として得られるゴム組成物が所望の物理的特性を有する加硫物を提供する能力を妨げない任意の他のポリマーを、適切な量で用いることができる。非限定的な例としては、ブチルゴム、ネオプレン、EPR、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、エチレン/アクリルゴム、EVA、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴムなどが挙げられる。
【0041】
上で説明したタイプのポリマーは、特に強化充填剤と配合することができる。エラストマー性化合物は、典型的には、添加された充填剤の総体積をエラストマー性ストックの総体積で割った体積分率が、多くの場合、約25%になるように充填され、補強充填剤の典型的な(合わせた)量は、約30~約100phrの範囲であり、範囲の上限は、かかる充填剤が用いられるとき、付与される増加した粘度を処理機器がいかに効果的に取り扱うことができるかによって主に定義される。
【0042】
有用な充填剤としては、限定されるものではないが、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックを含む、様々な形態のカーボンブラックが挙げられる。より具体的にはカーボンブラックの例としては、超摩耗性ファーネスブラック、高摩耗性ファーネスブラック、高速押出性ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、準耐摩耗性ファーネスブラック、半補強性ファーネスブラック、中級加工性チャンネルブラック、難加工性チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられ、これらのうちの2種以上の混合物が使用されてもよい。少なくとも20m2/g、好ましくは、少なくとも約35m2/gの表面積(EMSA)を有するカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックの表面積を判定する方法についてはASTM D-1765を参照されたい。カーボンブラックはペレット化形態であってもよく、又は非ペレット化綿状塊であってもよいが、特定のミキサでの使用では、非ペレット化カーボンブラックが好ましい場合がある。
【0043】
カーボンブラックの量は、最大約50phrであってもよく、通常約5~約40phrである。
【0044】
非晶質シリカ(SiO2)を充填剤として利用することができる。シリカは一般に、水中での化学反応により製造され、超微細球状粒子として沈殿するため、湿式、水和シリカとして分類される。これらの一次粒子は強く会合して凝集体になり、この凝集体は、次々に比較的弱い力で結合して粒塊になる。「高分散性シリカ」は、エラストマー性マトリックス中で集合を解き、分散する非常に大きい能力を有する任意のシリカであり、薄片顕微鏡により観察することができる。
【0045】
表面積は、様々なシリカの補強特性の信頼性のある指標であり、the Brunauer,Emmet and Teller (「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,vol.60,p.309以下参照、において記載される)が、表面積を判定するための認められている方法である。シリカのBET表面積は、概して、450m2/g未満、一般的には、約32~約400m2/g、又は約100~約250m2/g、又は約150~約220m2/gである。
【0046】
シリカ充填剤のpHは(使用の場合)、概して約5~約7又はそれよりやや高く、好ましくは、約5.5~約6.8である。
【0047】
シリカが用いられるとき、シランなどのカップリング剤は、エラストマーにおける良好な混合及びエラストマーとの相互作用を確実にするために添加される。概して、シランの添加量は、エラストマー性化合物中に存在するシリカ充填剤の重量に基づいて、約4~20%の範囲である。カップリング剤は、一般式A-T-Gを有することができ、式中、Aは、シリカ充填剤の表面上の基(例えば、表面シラノール基)と物理的及び/又は化学的に結合することができる官能基を表し、Tは、炭化水素基結合を表し、Gは、エラストマーと(例えば、硫黄含有結合を介して)結合することができる官能基を表す。かかるカップリング剤としては、有機シラン、特に、多硫化アルコキシシラン(例えば、米国特許第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号など参照)又は上に記載のG及びA官能基を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。加工助剤の添加は、使用されるシランの量を減少させるために用いることができる。加工助剤として使用する糖の脂肪酸エステルの説明に関しては、米国特許第6,525,118号を参照されたい。加工助剤として有用な追加の充填剤としては、クレイ(含水ケイ酸アルミニウム)、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)及びマイカなどの鉱物充填剤に加え、尿素及び硫酸ナトリウムなどの非鉱物充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なマイカは、主にアルミナ、シリカ、及び炭酸カリウムを含有するが、他の変種が使用される場合もある。追加の充填剤は、最大約40phr、典型的には、最大約20phrの量で使用することができる。
【0048】
シリカは、一般的には、最大約100phr、典型的には、約5~約80phrの量で用いられる。カーボンブラックがまた存在するとき、シリカの量は、約1phr程度に減らすことができ、シリカの量を減らした場合は、もしあればシランを加えたより少ない量の加工助剤を用いることができる。
【0049】
比較的高い界面自由エネルギー、すなわち、水における表面自由エネルギー値(γpl)を有する1つ以上の従来にない充填剤は、カーボンブラック及び/又はシリカとともに、又はその代わりに使用することができる。「比較的高い」という用語は、例えば、水-空気界面の値よりも大きい、好ましくは、この値の数倍(例えば、少なくとも2×、少なくとも3×、又は更に少なくとも4×)、非晶質シリカのγpl値の少なくとも数倍(例えば、少なくとも2×、少なくとも3×、少なくとも4×、少なくとも5×、少なくとも6×、少なくとも7×、少なくとも8×、少なくとも9×、又は更に少なくとも10×)、絶対的には、例えば、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約1000、少なくとも約1500、及び少なくとも約2000mJ/m2など、様々な方法で定義付けられるか、又は特徴付けることができる。比較的高い界面自由エネルギーを有する天然由来材料の非限定的な例としては、F-アパタイト、針鉄鉱、赤鉄鉱、紅亜鉛鉱、黒銅鉱、ギブサイト、石英、カオリナイト、全ての形態の黄鉄鉱などが挙げられる。特定の合成複合酸化物もまた、この種類の高い界面自由エネルギーを示すことができる。
【0050】
前述のタイプの材料は、典型的には、カーボンブラック又は非晶質シリカのいずれよりも高密度であり、それゆえ、特定の質量のカーボンブラック又はシリカを、等しい質量の従来にない充填剤で置き換えると、典型的には、所与の化合物中に存在する全充填剤の体積ははるかに小さくなるであろう。したがって、置き換えは、典型的には等しい重量ではなく等しい体積に基づいて行われる。
【0051】
他の従来のゴム添加剤が添加されてもよい。例えば、これらには、プロセスオイル、可塑剤、酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤、硬化剤などが挙げられる。有利なことに、本発明によるゴム組成物は、適切なレベルの耐オゾン性を有する加硫物を提供するために、それほど多くの酸化防止剤/オゾン劣化防止剤を含む必要がない。
【0052】
全ての成分を、例えば、Banbury型又はBrabender型ミキサなどの標準の機器で混合することができる。通常、混合は、2つ以上の段階で行われる。第1段階(多くの場合、マスタバッチ段階と称される)の間、混合は、通常約120~約130℃の温度で開始し、いわゆる降下温度である通常約165℃に到達するまで増加させる。
【0053】
配合物がカーボンブラック以外の、又はカーボンブラックに加えて、充填剤を含む場合、シラン成分の別個の添加につき別個の再粉砕段階を用いることが多い。この段階は、多くの場合、マスターバッチ段階で採用される温度と同様であるが、往々にしてわずかに低い温度、即ち約90℃から約150℃の降下温度までの温度で行われる。
【0054】
強化されたゴム化合物は従来法により、例えば硫黄又は過酸化物系硬化系などの1種類以上の公知の加硫剤約0.2~約5phrで硬化される。好適な加硫剤の一般的な開示について、興味のある読者は、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chem.Tech.,3d ed.,(Wiley Interscience,New York,1982),vol 20,pp.365~468に提供されるような概説を参照されたい。加硫剤、促進剤などは最終の混合段階で添加される。所望されないスコーチ及び/又は加硫の開始が早まりを低減させるために、この混合工程は、多くの場合、低温で実施されて、例えば、約60°~約65℃で開始して、約105°~約110℃よりも高温にされない。
【0055】
その後、配合された混合物は、様々な成分のうちのいずれかに形成される前に、シートに加工(例えば、ミル加工)してから加硫され、この加硫は、典型的には、混合段階の間に用いられる最も高い温度よりも、約5°~約15℃高く、最も一般的には、約170℃で行われる。
【0056】
先の説明から明らかなように、特徴、範囲、数値限定、及び実施形態に関する全体的な選好は、干渉しないか、又は不適合性でない限り、実行可能な程度に、他のかかる全体的に好ましい特徴、範囲、及び数値限定と組み合わせることができると想定される。以下の列挙された実施形態は、かかる組み合わせのうちのいくつかを想定することを支援するために提供される。
【0057】
プロセスの実施形態
P1.EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む高分子を提供するプロセスであって、官能化EPDMを、ポリエンマーを含むカルバニオンポリマーと反応させることを含み、官能化EPDMの官能基が、カルバニオンに対して反応性である、プロセス。
P2.官能基が、エポキシ基である、P1に記載のプロセス。
P3.官能化EPDMが、EPDMとm-クロロペルオキシ安息香酸との反応生成物である、P2に記載のプロセス。
P4.カルバニオンポリマーが、ポリエンマーからなる、P1~P3のいずれか1つに記載のプロセス。
P5.ポリエンが、共役ジエンである、P1~P4のいずれか1つに記載のプロセス。
P6.カルバニオンポリマーが、50~250kg/molのMnを有する、P1~P5のいずれか1つに記載のプロセス。
P7.カルバニオンポリマーが、100~200kg/molのMnを有する、P5に記載のプロセス。
【0058】
高分子実施形態
M1.EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む、高分子。
M2.グラフト鎖が、ポリエンマーからなる、M1に記載の高分子。
M3.ポリエンが、共役ジエンである、M1又はM2に記載の高分子。
M4.グラフト鎖が、50~250kg/molのMnを有する、M1~M3のいずれか1つに記載の高分子。
M5.グラフト鎖が、100~200kg/molのMnを有する、M4に記載の高分子。
M6.400~1500kg/molのMnを有する、M1~M5のいずれか1つに記載の高分子。
M7.500~1250kg/molのMnを有する、M6に記載の高分子。
【0059】
ゴム化合物の実施形態
R1.EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む高分子を含むゴム組成物。
R2.組成物が、ポリエンマーを含む他のポリマーを含まない、R1に記載のゴム組成物。
R3.組成物中のEPDMの総量が、15phr以下である、R1又はR2に記載のゴム組成物。
R4.組成物中のEPDMの総量が、10phr以下である、R3のゴム組成物。
R5.高分子が、400~1500kg/molのMnを有する、R1~R4のいずれか1つに記載のゴム組成物。
【0060】
R1~R5のいずれかから提供される加硫物もまた企図される。
【0061】
以下の非限定的かつ例示的な実施例は、本発明の実施において有用となり得る詳細な条件及び材料を提供する。これらの実施例は、費用、入手可能性、対処能力、及び最も重要なことには、以前報告されたポリマーとの比較と同様に内部比較を行う能力を含む様々な要因に起因して、例示的なポリエンとして1,3ブタジエンを用いる。当業者は、これらの例を様々な他のポリエンから調製されたポリマーに拡張することができる。
【実施例】
【0062】
以下の実施例において、n-ブチルリチウム(n-butyllithium、n-BuLi)溶液は、1.6Mであり、2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン(bis(2’-tetrahydrofuryl)propane、BTHFP)溶液は、1.6Mであり、両方ともヘキサン中にある。
【0063】
ポリマー試料の分子量値(全てkg/mol)を、溶媒としてTHFを用いてGPCによって判定し、一連のポリスチレン標準で較正した。ポリマー試料のスチレン及び1,2-リンケージ(ビニル)含有量を、NMR分光法によって決定し、一方でガラス転移温度(Tg)値を、DSCによって判定した。
【0064】
実施例1~2:BR
撹拌器を備えた約7.5L(2ガロン)のN2パージした反応器に、1.16kgのヘキサン及び3,27kgの1,3-ブタジエン溶液(ヘキサン中20.8%(w/w)を添加し、続いて、0.14mLのBTHFP溶液及び3.62mLのn-BuLi溶液を添加した。反応器ジャケットを、65℃に加熱した。
【0065】
バッチ温度は、99.8℃でピークに達した。
【0066】
更に約60分後、必要量のポリマーセメントを、以下の実施例4~7に用いたボトルに充填し、残りをイソプロパノール1mL当たり0.002gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル(BHT)の混合物約4Lに滴下した。
【0067】
バッチ温度が98.3℃でピークに達したことのみが異なる状態で、上記を繰り返した。この材料は、以下で実施例2と指定される。
【0068】
実施例3:エポキシ化EPDM
20gのEPDMを有するガラスボトルを、N2で30分間パージした後、それに400mLのTHFを添加した。
【0069】
一晩静置した後、ボトルを、65℃で約6時間撹拌した後、メタ-クロロペルオキシ安息香酸1.86gを添加した。磁気撹拌機を使用して、ボトル内容物を、室温で約210分間撹拌した。
【0070】
ポリマーセメントを、イソプロパノール溶液中で凝固させた後、イソプロパノールで2回洗浄し、次いで45°~50℃の真空オーブン中で、約14時間(収率85.9%)乾燥させた。
【0071】
以下のグラフト化実施例で使用するために、回収したEPDMポリマー15gをN2パージしたガラスボトルに添加し、続いてシクロヘキサン300mLを添加し、ポリマーの溶解後にシリカゲルオレンジ20gを添加することによって、エポキシ化EPDMの溶液(シクロヘキサン中6.8%(w/w)を調製した。大部分の気泡が消失するまで内容物を室温で磁気撹拌した後、シリカゲルを除去する目的で内容物を新しいN2パージボトルに移した。
【0072】
実施例4~11:グラフト化
実施例2からの精製エポキシ化EPDM溶液19mLを含有する4つのボトルを、N2で約30分間パージした。各々に、31mLの実施例1のポリマーセメント生成物を添加した。
【0073】
実施例4と指定したボトルには、追加のn-BuLi溶液を入れなかった。他の3つのボトルには、以下の量の追加のn-BuLi溶液を入れた。
実施例5-0.04mL
実施例6-0.10mL
実施例7-0.20mL
【0074】
各ボトルを(手で)よく振盪した後、一晩静置した。
【0075】
翌日、0.5mLのイソプロパノールを、各ボトルに添加した後、ポリマーセメントをイソプロパノール溶液中で凝固させ、イソプロパノールで2回洗浄した。
【0076】
各ポリマーセメントを、真空オーブン中で、45°~50℃で6時間乾燥させた。
【0077】
実施例1及び3~7からのポリマーに関するGPCデータを以下で表にし、全ての分子量をkg/molで表す。EPDM(実施例3)は、第1のピークを有さないが、BRでグラフト化された後、結果として得られるグラフト化ポリマー生成物は、第1のピークを呈する。次いで、第1のピーク対第2のピークの比を使用して、グラフト化ポリマー生成物の量を推定することができる。
【0078】
【0079】
実施例5~7からのポリマーは、より高い第1対第2ピーク比を有し、グラフト化時に少なくともいくらかの追加の開始剤の添加がグラフト化効率を改善する可能性があることを示唆している。(これは、単に追加の開始剤が残留水分及びイソプロパノールなどの活性H含有材料を除去することに起因する可能性がある。)
【0080】
上記に加えて、実施例3からの溶液及び実施例2からのセメントを、更なる反応に使用し、それに関する情報を以下で表にする。各ボトルを数分間手で振盪した後、2日間静置し、続いてクエンチし(0.5mLイソプロパノール)、イソプロパノール溶液中で凝固させ、イソプロパノールで洗浄し(2回)、真空オーブン中で乾燥させた(45℃~50℃で6時間)。
【0081】
【0082】
実施例2及び実施例8~11からのポリマーについてのGPCデータを以下の表に示す。(実施例3のデータは、上記の表1で見ることができる。)全ての分子量は、kg/molで表される。パーセンテージに関して、「BR%」は、1,3-ブタジエンマーに起因する全ポリマーの重量パーセンテージを表し、一方で下の3つのパーセンテージは、グラフト化しなかったポリマー(BR及びEPDMの各々)及びグラフト化したポリマーの重量パーセンテージを表す。(最後の3つの数の合計は、100であり、四捨五入される。)
【0083】
【0084】
実施例12~19:ゴム組成物及び加硫物
マスターバッチ段階中に様々なポリマーを混合し、一方で最終段階中には同じタイプ及び量の添加剤並びに硬化剤を混合した。両段階のミル温度は、65℃であった。(EPDMは、市販の材料である。)
【0085】
グリーンゴムを、171℃で硬化させて、物理的試験のための加硫物を提供する。
【0086】
オゾン耐性データを、Corporate Consulting Service&Instruments,Inc.(Akron,Ohio)によって提供される機器を使用して収集した。各試験片(75mm×12mm×2mm)を、オゾン濃度が、測定中、0.5ppmに保持された状態で、20%ひずみ及び40℃で140時間に設定した。各試料に、以下の尺度に基づくグレードを与えた:
A=亀裂なし
B=亀裂
C=クリップ近くで破損
D=破損
【0087】
【0088】
比較加硫物(実施例12~15)は、亀裂が観察されなくなるまでに25%(w/w)のEPDMを必要とした。逆に、BRグラフト化EPDMを含有する加硫物(実施例16~19)の各々は、それらが実施例15の比較例よりも著しく少ないEPDMを含有していたとしても、そのグレードを受けた。
【0089】
理論に束縛されるものではないが、BRグラフト化EPDMを含有する組成物から作製された加硫物(実施例16~19)は、透過電子顕微鏡法に供したとき、比較例13の加硫物よりもはるかに小さいEPDMドメイン(すなわち、より良好な分散)を有することが分かった。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む高分子であって、前記グラフト鎖が、50~250kg/molのM
nを有する、高分子。
【請求項2】
400~1500kg/molのM
nを有する、請求項1に記載の高分子。
【請求項3】
EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む高分子を提供するための方法であって、前記方法が、官能化EPDMを、ポリエンマーを含むカルバニオンポリマーと反応させることを含み、前記官能化EPDMの官能基が、カルバニオンに対して反応性である、方法。
【請求項4】
前記官能基が、エポキシ基であり、前記エポキシ基が、任意選択的に、EPDMとm-クロロペルオキシ安息香酸との反応によって提供されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
補強充填剤と、EPDM及びポリエンマーを含むグラフト鎖を含む高分子と、を含むゴム組成物を含むタイヤサイドウォールであって、前記組成物が、任意選択的に、ポリエンマーを含む他のポリマーを含まない、タイヤサイドウォール。
【国際調査報告】