(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】重心が後置された直接駆動SCARAロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B25J9/06 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576241
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 CN2021134655
(87)【国際公開番号】W WO2022142972
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011632933.4
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517335189
【氏名又は名称】広東美的制冷設備有限公司
【氏名又は名称原語表記】GD MIDEA AIR-CONDITIONING EQUIPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Lingang Road,Beijiao,Shunde Foshan,Guangdong 528311,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】523327503
【氏名又は名称】美的集▲團▼(上▲海▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 205, 2F, Building 9, No. 168, East Yinggang Rd., Qingpu District, Shanghai 201702, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 文▲鏡▼
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS15
3C707CV07
3C707CW07
3C707CX01
3C707HS27
3C707HT02
3C707MT02
(57)【要約】
本発明は、順に接続されたベース、第1アーム及び第2アームを備え、更に、第1アームとベースとの接続箇所に設置された第1電動機及び伝動装置を介して第2アームに接続された第2電動機を備え、第1電動機と第2電動機との第1電動機の軸線の垂直平面での投影が少なくとも部分的に重なっている水平多関節ロボットを開示し、第1電動機と第2電動機とによってそれぞれ第1アームと第2アームとを直接駆動することで、減速器を省くことができ、それによって、減速器の制限で水平多関節ロボットの精度、速度、コスト及びドラッグトルクが影響されることを回避し、また、第1電動機と第2電動機とを少なくとも部分的に重なるように設置することで、二つの電動機の軸線間の距離を低減させて、第1電動機の出力トルク需要を減少させることができ、更に水平多関節ロボットの全体的な体積と質量とを低減させることができ、水平多関節ロボットの高加速度と高速度との実現に寄与する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに接続され、且つ前記ベースとの接続箇所に第1関節が形成されている第1アームと、
前記第1関節内に設置されて、前記第1アームを前記ベースに対して回転するように駆動するために用いられる第1電動機と、
前記第1アームの前記ベースから離れた一端に接続され、且つ前記第1アームとの接続箇所に第2関節が形成されている第2アームと、
伝動装置を介して前記第2アームに接続されて、前記第2アームを前記第1アームに対して回転するように駆動するために用いられる第2電動機と、を備え、
前記第1電動機と前記第2電動機との前記第1電動機の軸線の垂直平面での投影が少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
前記第1電動機と前記第2電動機とは軸線が重なるように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の水平多関節ロボット。
【請求項3】
前記第1電動機は、前記ベースに設置された第1固定子と、前記第1アームに接続された、前記第1固定子の外に嵌設された第1回転子と、を備え、前記第2電動機は、前記第1アームに設置され且つ前記第1固定子に固定的に接続された第2固定子と、前記伝動装置に接続された、前記第2固定子の外に嵌設された第2回転子と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の水平多関節ロボット。
【請求項4】
前記第1電動機は、前記ベースに設置された第1固定子と、前記第1アームに接続された、前記第1固定子の外に嵌設された第1回転子と、を備え、前記第2電動機は、前記第1アームに設置され且つ前記第1回転子に固定的に接続された第2固定子と、前記伝動装置に接続された、前記第2固定子の外に嵌設された第2回転子と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の水平多関節ロボット。
【請求項5】
前記伝動装置は第1伝動輪、第2伝動輪、第1剛性伝動ベルト及び第2剛性伝動ベルトを備え、前記第1伝動輪が前記第2回転子の外に嵌設され、前記第2伝動輪が前記第2アームに接続され、前記第1剛性伝動ベルト、前記第2剛性伝動ベルトがそれぞれ固定部材によって前記第1伝動輪と前記第2伝動輪とに接続されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の水平多関節ロボット。
【請求項6】
前記伝動装置は、前記第2回転子の外に嵌設された第1歯車と、前記第2アームに接続された第2歯車と、を少なくとも含み、前記第1歯車と前記第2歯車とが互いに噛み合うバックラッシ無し歯車アセンブリを備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の水平多関節ロボット。
【請求項7】
前記伝動装置は、前記第2回転子の外に嵌設された第1同期輪と、前記第2アームに接続された第2同期輪と、前記第1同期輪と前記第2同期輪とを接続した同期ベルトと、を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の水平多関節ロボット。
【請求項8】
前記第1電動機は更に中空軸を備えて第1収容室を形成しており、前記第2固定子は前記第1収容室と連通する第2収容室を形成しており、前記第2電動機の前記第1電動機から離れた一端に開口が形成されており、前記第2収容室が前記開口を介して外部と連通することを特徴とする請求項3又は4に記載の水平多関節ロボット。
【請求項9】
更に、前記ベースに接続され、第1接続線を介して前記第1収容室を通過して前記第1電動機に接続され、且つ第2接続線を介して前記第1収容室と前記第2収容室とを通過して前記第2電動機に接続された制御器を備えることを特徴とする請求項8に記載の水平多関節ロボット。
【請求項10】
更に、前記第1電動機に接続され、且つ第3接続線を介して前記第1収容室を通過して前記制御器に接続された第1エンコーダと、前記第2電動機に接続され、且つ第4接続線を介して前記第1収容室と前記第2収容室とを通過して前記制御器に接続された第2エンコーダと、を備えることを特徴とする請求項9に記載の水平多関節ロボット。
【請求項11】
更に、前記第2関節内に設置された第3電動機及び第4電動機を備えることを特徴とする請求項8に記載の水平多関節ロボット。
【請求項12】
前記第2関節に線通過穴が設置され、前記第1アームの内部に線通路が設置されており、前記第3電動機と前記第4電動機とは第5接続線を介して前記線通過穴、前記線通路及び前記第1収容室を通過して前記制御器に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の水平多関節ロボット。
【請求項13】
前記第2電動機が前記ベースに固定的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の水平多関節ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年12月31日に提出された、出願番号が2020116329334、発明の名称が「重心が後置された直接駆動SCARAロボット」の中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が引用をもって本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、ロボットの技術分野に関し、特に、水平多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
水平多関節ロボットは、SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm,選択的柔軟性組み立てロボットアーム)とも呼ばれ、組み立て作業に適用されるロボットアームである。一般的には、水平多関節ロボットにおいて、ベースと第1アームとの接続箇所に位置する第1関節と、第1アームと第2アームの接続箇所とに位置する第2関節と、第2アームの第1アームから離れた一端に位置する第3関節といった三つの回転可能な関節が設けられており、三つの関節の軸線が互いに平行しており、平面内で位置決めと方向決めとを行うことが可能で、動作が簡潔で、効率的で、コストが低い。
【0004】
本願の発明者は長期にわたった研究開発により、現在、水平多関節ロボットにおいて各関節に電動機を設置して駆動することが一般であるが、第2関節に設置された電動機の軸線と第1関節に設置された電動機の軸線との距離が一般に遠いので、第1関節における電動機が駆動すべき運動体の慣性質量が大きく、高加速度と高速度とを実現し難いことが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術において駆動方式及び構造に制限されているので、水平多関節ロボットの速度や精度の向上が困難であるという技術的問題を解決するために、水平多関節ロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的問題を解決するために、本発明で採用する一技術手段は、
ベースと、
前記ベースに接続され、且つ前記ベースとの接続箇所に第1関節が形成されている第1アームと、
前記第1関節内に設置されて、前記第1アームを前記ベースに対して回転するように駆動するために用いられる第1電動機と、
前記第1アームの前記ベースから離れた一端に接続され、且つ前記第1アームとの接続箇所に第2関節が形成されている第2アームと、
伝動装置を介して前記第2アームに接続されて、前記第2アームを前記第1アームに対して回転するように駆動するために用いられる第2電動機と、を備え、
前記第1電動機と前記第2電動機との前記第1電動機の軸線の垂直平面での投影が少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする水平多関節ロボットを提供することである。
【0007】
具体的な一実施例において、前記第1電動機と前記第2電動機とは軸線が重なるように設置されている。
【0008】
具体的な一実施例において、前記第1電動機は、前記ベースに設置された第1固定子と、前記第1アームに接続された、前記第1固定子の外に嵌設された第1回転子と、を備え、前記第2電動機は、前記第1アームに設置され且つ前記第1固定子に固定的に接続された第2固定子と、前記伝動装置に接続された、前記第2固定子の外に嵌設された第2回転子と、を備える。
【0009】
具体的な一実施例において、前記第1電動機は、前記ベースに設置された第1固定子と、前記第1アームに接続された、前記第1固定子の外に嵌設された第1回転子と、を備え、前記第2電動機は、前記第1アームに設置され且つ前記第1回転子に固定的に接続された第2固定子と、前記伝動装置に接続された、前記第2固定子の外に嵌設された第2回転子と、を備える。
【0010】
具体的な一実施例において、前記伝動装置は第1伝動輪、第2伝動輪、第1剛性伝動ベルト及び第2剛性伝動ベルトを備え、前記第1伝動輪が前記第2回転子の外に嵌設され、前記第2伝動輪が前記第2アームに接続され、前記第1剛性伝動ベルト、前記第2剛性伝動ベルトがそれぞれ固定部材によって前記第1伝動輪と前記第2伝動輪とに接続されている。
【0011】
具体的な一実施例において、前記伝動装置は、前記第2回転子の外に嵌設された第1歯車と、前記第2アームに接続された第2歯車と、を少なくとも含み、前記第1歯車と前記第2歯車とが互いに噛み合うバックラッシ無し歯車アセンブリを備える。
【0012】
具体的な一実施例において、前記伝動装置は、前記第2回転子の外に嵌設された第1同期輪と、前記第2アームに接続された第2同期輪と、前記第1同期輪と前記第2同期輪とを接続した同期ベルトと、を備える。
【0013】
具体的な一実施例において、前記第1電動機は更に中空軸を備えて第1収容室を形成しており、前記第2固定子は前記第1収容室と連通する第2収容室を形成しており、前記第2電動機の前記第1電動機から離れた一端に開口が形成されており、前記第2収容室が前記開口を介して外部と連通する。
【0014】
具体的な一実施例において、前記水平多関節ロボットは、更に、前記ベースに接続され、第1接続線を介して前記第1収容室を通過して前記第1電動機に接続され、且つ第2接続線を介して前記第1収容室と前記第2収容室とを通過して前記第2電動機に接続された制御器を備える。
【0015】
具体的な一実施例において、前記水平多関節ロボットは、更に、前記第1電動機に接続され、且つ第3接続線を介して前記第1収容室を通過して前記制御器に接続された第1エンコーダと、前記第2電動機に接続され、且つ第4接続線を介して前記第1収容室と前記第2収容室とを通過して前記制御器に接続された第2エンコーダと、を備える。
【0016】
具体的な一実施例において、前記水平多関節ロボットは、更に、前記第2関節内に設置された第3電動機及び第4電動機を備える。
【0017】
具体的な一実施例において、前記第2関節に線通過穴が設置され、前記第1アーム内部に線通路が設置されており、前記第3電動機と前記第4電動機とは第5接続線を介して前記線通過穴、前記線通路及び前記第1収容室を通過して前記制御器に接続されている。
【0018】
具体的な一実施例において、前記第2電動機が前記ベースに固定的に接続されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水平多関節ロボットは、ベースと、ベースに接続され、ベースとの接続箇所に第1関節が形成されている第1アームと、第1関節内に設置されて、第1アームをベースに対して回転するように駆動するために用いられる第1電動機と、第1アームのベースから離れた一端に接続され、第1アームとの接続箇所に第2関節が形成されている第2アームと、伝動装置を介して第2アームに接続されて、第2アームを第1アームに対して回転するように駆動するために用いられる第2電動機と、を備え、第1電動機と第2電動機との第1電動機の軸線の垂直平面での投影が少なくとも部分的に重なっており、第1電動機と第2電動機とを設置してそれぞれ第1アームと第2アームとを直接駆動することで、減速器を省くことができ、それによって、減速器の制限で水平多関節ロボットの精度、速度、コスト及びドラッグトルクが影響されることを回避し、また、第2電動機を、第1電動機に対して軸線の垂直平面での投影が少なくとも部分的に重なるように設置することで、第1電動機の軸線と第2電動機の軸線との距離を低減させて、第1電動機の出力トルク需要を減少させることができ、更に水平多関節ロボットの全体的な体積と質量とを低減させることができ、水平多関節ロボットの高加速度と高速度との実現に寄与する。
【0020】
本願の実施例における技術手段をより明確に説明するために、以下に実施例の記述に使用必要な図面について簡単に説明するが、当然ながら、以下に記載する図面は単に本願のいくつかの実施例であり、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の水平多関節ロボットの一実施例の立体構造の模式図である。
【
図2】本発明の水平多関節ロボットの一実施例の部分立体構造の模式図である。
【
図3】本発明の水平多関節ロボットの一実施例の断面構造の模式図である。
【
図4】本発明の水平多関節ロボットの一実施例における伝動装置の立体構造の模式図である。
【
図5】本発明の水平多関節ロボットの別の実施例の断面構造の模式図である。
【
図6】本発明の水平多関節ロボットの別の実施例の断面構造の模式図である。
【
図7】本発明の水平多関節ロボットの別の実施例の断面構造の模式図である。
【
図8】本発明の水平多関節ロボットの別の実施例の断面構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術手段を明確に、完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は全ての実施例ではなく、本発明の実施例の一部に過ぎない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要することなく得た他の全ての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0023】
本願における「第1」、「第2」といった用語は目的を説明するためのものに過ぎず、相対的重要性を指示又は暗示したり、指示された技術特徴の数量を暗黙的に指示したりするものと理解してはならない。本願の記述において、特に明確に具体的に限定しない限り、「複数」の意味は少なくとも二つ、例えば二つ、三つ等である。また、「含む」、「備える」といった用語及びそれらのいかなる変形も、非排他的に含むことを意図する。例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は機器は、挙げられたステップ又はユニットに限定されるものではなく、さらに挙げられないステップ又はユニットを選択可能に含み、又は、さらに、これらのプロセス、方法、製品又は機器に固有の他のステップ又はユニットを選択可能に含む。「及び/又は」といった用語は関連対象の関連関係を説明するためのものに過ぎず、3種の関係が存在可能であるのを意味し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独して存在すること、AとBが同時に存在すること、Bが単独して存在することを意味するものであってもよい。また、本明細書における符号の「/」は、一般的には前後の関連対象が「又は」という関係にあることを意味する。
【0024】
図1~
図3を参照し、本発明の水平多関節ロボット10の一実施例は、ベース100と、ベース100に接続され、且つベース100との接続箇所に第1関節210が形成されている第1アーム200と、第1アーム200のベース100から離れた一端に接続され、且つ第1アーム200との接続箇所に第2関節310が形成されている第2アーム300と、第1関節210内に設置されて、第1アーム200をベース100に対して回転するように駆動するために用いられる第1電動機410と、伝動装置500を介して第2アーム300に接続されて、第2アーム300を第1アーム200に対して回転するように駆動するために用いられる第2電動機420と、を備え、第1電動機410と第2電動機420との第1電動機410の軸線の垂直平面での投影が少なくとも部分的に重なっている。
【0025】
現在、水平多関節ロボットは一般に各関節に電動機を設置することで駆動し、例えば、サーボモータと減速器とを組み合わせて駆動し、しかし、この駆動方式は以下の問題がある。1)背隙があって、水平多関節ロボットの精度向上が困難である。2)減速器の最大出力トルクに制限があって、水平多関節ロボットの速度向上が困難である。3)減速器のコストが高い。4)電動機と減速器とを組み合わせた伝動方式によって、水平多関節ロボットを手動でドラッグするトルクが大きく、水平多関節ロボットの手動ドラッグ教示機能に影響を及ぼす。ところが、本実施例では、第1電動機410と第2電動機420とを設置してそれぞれ第1アーム200と第2アーム300とを直接駆動することで、減速器を省くことができ、減速器の制限で水平多関節ロボット10の精度、速度、コスト及びドラッグトルクが影響されることを回避する。
【0026】
現在直接駆動電動機を用いて駆動している水平多関節ロボットにあっては、その出力トルクはやはり減速器を有する駆動方式で発生する出力トルクと一致する必要があり、元のサーボモータと比べて、直接駆動電動機の体積と質量とがより大きく、水平多関節ロボット全体の体積と質量との増大を招くことになり、そして、第2関節に設置された電動機の軸線と第1関節に設置された電動機の軸線との距離が遠く、第1関節での電動機が駆動すべき運動体の慣性質量が大きく、高加速度と高速度との実現が困難である。ところが、本実施例は、第2電動機420を、第1電動機410に対して軸線の垂直平面での投影が少なくとも部分的に重なるように設置することで、第1電動機410の軸線と第2電動機420の軸線との距離を低減させて、第1電動機410の出力トルク需要を減少させることができ、更に水平多関節ロボット10の全体的な体積と質量とを低減させることができ、水平多関節ロボット10の高加速度と高速度との実現に寄与する。
【0027】
本実施例において、第1電動機410と第2電動機420とは軸線が重なるように設置されており、それによって、第2電動機420を載置する第1アーム200に必要とされる第1電動機410の出力トルクがより小さくて、水平多関節ロボット10の全体的な体積と質量とを更に低減させることができ、水平多関節ロボット10の高加速度と高速度との実現に寄与する。
【0028】
本実施例において、第1電動機410は、ベース100に設置された第1固定子411と、第1アーム200に接続された、第1固定子411の外に嵌設された第1回転子412と、を備え、第2電動機420は、第1アーム200に設置され且つ第1固定子411に固定的に接続された第2固定子421と、伝動装置500に接続された、第2固定子421の外に嵌設された第2回転子422と、を備え、それによって、第1電動機410が起動した時に、第1回転子412の第1固定子411に対する回転によって第1アーム200を連動させてベース100に対して回転させることができ、この時に第2固定子421が第1固定子411に固定的に接続されているので、第2固定子421は動かなく、そして、第2電動機420が起動していないので、第2回転子422も動かなく、そのため第2アーム300が駆動されることもなく、第1アーム200がベース100に対して回転する時に第2アーム300に対しても回転するため、第2アーム300と第1アーム200との相対的位置が変わらないように保持する必要がある場合に、第2電動機420を起動する必要があり、それにより第2回転子422を第2固定子421に対して第1回転子412の回転と同じ方向と角度とをもって回転させ、それで伝動装置500によって第2アーム300を連動させて第1アーム200の回転と同じ方向と角度とをもって回転させ、補償を実現する。
【0029】
本実施例において、水平多関節ロボット10の全体的な構造を安定化させるために、第1固定子411と第2固定子421とはフランジ430によって接続してもよい。
【0030】
他の実施例において、第1固定子411と第2固定子421とは貼り付け、係着等の他の方式で接続してもよく、ここで限定されない。
【0031】
本実施例において、第1回転子412は、第1アーム200を連動して回転させるように、直接第1アーム200に固定的に接続されている。
【0032】
他の実施例において、第1回転子412は伝動装置(未図示)を介して第1アーム200に接続されてもよく、ここで限定されない。
【0033】
図4を同時に参照し、本実施例において、伝動装置500は第1伝動輪510、第2伝動輪520、第1剛性伝動ベルト530及び第2剛性伝動ベルト540を備え、第1伝動輪510が第2回転子422の外に嵌設され、第2伝動輪520が第2アーム300に接続され、第1剛性伝動ベルト530、第2剛性伝動ベルト540がそれぞれ固定部材550によって第1伝動輪510と第2伝動輪520とに接続されており、第1剛性伝動ベルト530及び第2剛性伝動ベルト540を設置して第1伝動輪510と第2伝動輪520とを伝動することで、第2電動機420と第2アーム300との間の伝動を実現でき、それにより第2電動機420の第2アーム300での設置位置制限を軽減させ、第1電動機410の軸線と第2電動機420の軸線との距離の低減の実現に寄与し、そして、伝動過程中のバックラッシ問題を回避し、第2電動機420の駆動精度を高めることができ、更に水平多関節ロボット10の全体的な精度の向上に寄与する。
【0034】
本実施例において、第1剛性伝動ベルト530及び第2剛性伝動ベルト540は鋼帯であってもよい。他の実施例において、第1剛性伝動ベルト530及び第2剛性伝動ベルト540は他の金属帯又は剛性プラスチックベルト等であってもよく、ここで限定されない。
【0035】
本実施例において、第2伝動輪520と第2アーム300との間の摩擦を軽減させて伝動装置500の耐用年数を向上させることができるように、第2伝動輪520と第2アーム300との間に軸受521が設置されていてもよい。
【0036】
別の具体的な実施例では、伝動装置500は、第2回転子422の外に嵌設された第1同期輪(未図示)と、第2アーム300に接続された第2同期輪(未図示)と、第1同期輪と第2同期輪とを接続した同期ベルト(未図示)と、を備えてもよく、第2回転子422が回転すると、第1同期輪はそれに伴って回転し、同期ベルトを伝動して運動させ、更に第2同期輪を連動させることで第2アーム300を連動して回転させ、第1同期輪、第2同期輪及び同期ベルトによって第2電動機420と第2アーム300との間の伝動を実現でき、それにより第2電動機420の第2アーム300での設置位置制限を軽減させ、第1電動機410の軸線と第2電動機420の軸線との距離の低減の実現に寄与する。
【0037】
本実施例において、第1電動機410は更に中空軸413を備えて第1収容室414を形成しており、第2固定子421は第1収容室414と連通する第2収容室423を形成しており、第2電動機420の第1電動機410から離れた一端に開口424が形成されており、第2収容室423が開口424を介して外部と連通し、それによって、第1電動機410と第2電動機420との内部で生じた熱は第1収容室414と第2収容室423とを通過して外部へ伝達することができ、有効な放熱が実現され、第1電動機410と第2電動機420との耐用年数の向上に寄与すると共に、第1電動機410と第2電動機420との高速稼働の実現に寄与する。
【0038】
本実施例において、第2回転子422にエンドカバー440が覆設されており、第2収容室423と外部との連通を実現するために、開口424をエンドカバー440に形成でき、また、エンドカバー440を設置することで、防水防塵の作用を果たすことができ、第2電動機420の耐用年数を向上可能である。
【0039】
本実施例において、水平多関節ロボット10は、更に、ベース100に接続され、第1接続線610を介して第1収容室414を通過して第1電動機410に接続され、且つ第2接続線620を介して第1収容室414と第2収容室423とを通過して第2電動機420に接続された制御器600を備えてもよい。接続線が電動機外部に巻き付いて水平多関節ロボットの内部構造を複雑化させ、接続線が他の部材に干渉しやすい、現在水平多関節ロボットに使用されている中実中空軸の電動機と比べると、本実施例において、第1電動機410、第2電動機420と制御器600との間の第1接続線610、第2接続線620は直接第1電動機410、第2電動機420を貫通しており、水平多関節ロボット10の内部の構造がより簡単で、第1接続線610、第2接続線620が他の部材に干渉しにくく、水平多関節ロボット10の信頼性がより高いことが可能になる。
【0040】
本実施例において、水平多関節ロボット10は、更に、第1電動機410に接続され、且つ第3接続線630を介して第1収容室414を通過して制御器600に接続された第1エンコーダ450と、第2電動機420に接続され、且つ第4接続線640を介して第1収容室414と第2収容室423とを通過して制御器600に接続された第2エンコーダ460と、を備え、第1電動機410の直接駆動方式と組み合わせるように第1エンコーダ450を設置し、第2電動機420の直接駆動方式と組み合わせるように第2エンコーダ460を設置することによって、第1電動機410と第2電動機420との駆動精度を向上させることができ、更に水平多関節ロボット10の全体的な稼働精度を向上させることができ、また、第1収容室414、第2収容室423を貫通している接続線によって第1エンコーダ450と第2エンコーダ460とをそれぞれ制御器600に接続することによって、接続線が電動機外部に巻き付いて水平多関節ロボット10の内部構造を複雑化させることを回避でき、水平多関節ロボット10の内部の構造がより簡単で、第3接続線630、第4接続線640が他の部材に干渉しにくく、水平多関節ロボット10の信頼性がより高いことが可能になる。
【0041】
本実施例において、第1エンコーダ450と第2エンコーダ460とはいずれも環状エンコーダであってもよく、第1エンコーダ450が中空軸413の外に嵌設され、第2エンコーダ460が第2固定子421に設置されており、第1収容室414と第2収容室423とを流れる放熱気流を遮断することを回避でき、そして放熱気流が第1エンコーダ450と第2エンコーダ460とに対して放熱効果を果たすことができ、更に第1エンコーダ450と第2エンコーダ460との稼働の信頼性と安定性とを向上可能である。
【0042】
他の実施例において、第1エンコーダ450と第2エンコーダ460とは塊状エンコーダであってもよく、第1エンコーダ450の少なくとも一部が第1収容室414内に設置され、第2エンコーダ460の少なくとも一部が第2収容室423内に設置されており、それによって、放熱気流が第1収容室414と第2収容室423とを流れている時に、第1エンコーダ450と第2エンコーダ460とを放熱させることができ、更に第1エンコーダ450と第2エンコーダ460との稼働の信頼性と安定性とを向上可能である。
【0043】
本実施例において、第1電動機410は、更に、中空軸413と第1回転子412との間に設置されて、中空軸413と第1回転子412との間の摩擦を低減させて第1電動機410の耐用年数を向上できると共に、第1収容室414と第2収容室423との間の連通の遮断を回避できる第1軸受415を備える。
【0044】
本実施例において、第1電動機410は、更に、第1電動機410の第1基底部417と第1回転子412との間に設置されて、第1基底部417と第1回転子412との間の摩擦を低減させて第1電動機410の耐用年数を向上できると共に、第1基底部417を重い第1固定子411に強固に接続してその転倒モーメントを克服して第1電動機410の構造を更に安定化させることができる第2軸受416を備えてもよい。
【0045】
本実施例において、ベース100には更に第1収容室414と連通する貫通穴(未図示)が形成されていてもよく、それによって、第1収容室414内の放熱ガスは更にベース100の貫通穴から外部へ流れることが可能で、放熱効果を更に向上させる。また、第2軸受416を第1基底部417と第1回転子412との間に設置することによって、放熱気流のベース100からの放出を遮断することを回避できる。
【0046】
本実施例において、第2電動機420は、更に、第2固定子421と第2回転子422との間に設置されて、第2固定子421と第2回転子422との間の摩擦を低減させて第2電動機420の耐用年数を向上できると共に、第2収容室423と外部との連通を遮断することを回避できる第3軸受425を備えてもよい。
【0047】
本実施例において、第2電動機420は、更に、第2電動機420の第2基底部427と第2回転子422との間に設置されて、第2基底部427と第2回転子422との間の摩擦を低減させて第2電動機420の耐用年数を向上できると共に、第2基底部427を重い第2固定子421に強固に接続してその転倒モーメントを克服して第2電動機420の構造を更に安定化させることができる第4軸受426を備えてもよい。
【0048】
本実施例において、水平多関節ロボット10は、更に、第3電動機470、第4電動機480及び軸体320を備えてもよく、第3電動機470と第4電動機480とは第2関節310内に設置されており、軸体320は第2アーム300の第1アーム200から離れた一端に設置されており、第3電動機470と第4電動機480とはそれぞれ軸体320に接続されており、それぞれ軸体320の回転と鉛直方向での運動とを駆動するために用いられる。軸体駆動用の第3電動機と第4電動機とを第2アームの第1アームから離れた一端に設置している現在の水平多関節ロボットと比べると、本実施例において、第3電動機470と第4電動機480を第2関節310内に設置することで、第3電動機470の軸線及び第4電動機480の軸線と第1電動機410の軸線及び第2電動機420の軸線との距離を低減させて、第1電動機410と第2電動機420との出力トルク需要を低減させることができ、それにより水平多関節ロボット10の全体的な体積と質量とを低減させることができ、更に水平多関節ロボット10の高加速度と高速度との実現に寄与する。
【0049】
本実施例において、第2関節310に線通過穴311が設置され、第1アーム200の内部に線通路220が設置されており、第3電動機470と第4電動機480とは第5接続線650を介して線通過穴311、線通路220及び第1収容室414を通過して制御器600に接続されており、それによって、第5接続線650が第1電動機410の外部に巻き付いて水平多関節ロボット10の内部構造を複雑化させることを回避でき、水平多関節ロボット10の内部の構造がより簡単で、第5接続線650が他の部材に干渉しにくく、水平多関節ロボット10の信頼性がより高いことが可能になる。
【0050】
本実施例において、第3電動機470と第4電動機480とは伝動装置(未図示)を介して軸体320に接続してもよく、ここで、伝動装置の構造については上記伝動装置500を参照されたく、ここで詳細な説明を省略する。
【0051】
他の実施例において、第3電動機470と第4電動機480とは第1アーム200に設置してもよく、それによって、第3電動機470の軸線及び第4電動機480の軸線と第1電動機410の軸線及び第2電動機420の軸線との距離を更に低減させて、第1電動機410と第2電動機420との出力トルク需要を減少させ、それで水平多関節ロボット10の全体的な体積と質量とを更に低減でき、水平多関節ロボット10の高加速度と高速度との実現に更に寄与する。
【0052】
図5を参照し、本発明の水平多関節ロボット10の別の実施例は、ベース100、第1アーム200、第2アーム300、第1電動機710及び第2電動機720を備え、ここで、ベース100、第1アーム200及び第2アーム300の構造については上記水平多関節ロボット10の実施例を参照されたく、ここで詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施例は、第1電動機710が、ベース100に設置された第1固定子711と、第1アーム200に接続された、第1固定子711の外に嵌設された第1回転子712と、を備え、第2電動機720が、第1アーム200に設置され且つ第1回転子712に固定的に接続された第2固定子721と、伝動装置500に接続された、第2固定子721の外に嵌設された第2回転子722と、を備える点で上記実施例と相違し、それによって、第1電動機710が起動した時に、第1回転子712の第1固定子711に対する回転によって第1アーム200を連動させてベース100に対して回転させることができ、この時に第2固定子721は第1回転子712に固定的に接続されているので、第1回転子712に伴って回転し、また、第2電動機720が起動しておらず、第2回転子722もそれに伴って回転するので、伝動装置500によって第2アーム300を連動させて第1アーム200の回転と同じ方向と角度とをもって回転させ、第2アーム300は第1アーム200に対する相対的位置が変わらないように保持する。
【0054】
本実施例において、水平多関節ロボット10の全体的な構造を安定化させるために、第2固定子721と第1回転子712とはフランジ730によって接続してもよい。
【0055】
他の実施例において、第2固定子721と第1回転子712とは貼り付け、係着等の他の方式で接続してもよく、ここで限定されない。
【0056】
図6を参照し、本発明の水平多関節ロボット10の別の実施例は、ベース100、第1アーム200、第2アーム300、第1電動機810及び第2電動機820を備え、ここで、ベース100、第1アーム200及び第2アーム300の構造については上記水平多関節ロボット10の実施例を参照されたく、ここで詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施例は、第2電動機820がベース100に固定的に接続されている点で上記実施例と相違する。具体的には、ベース100は、第1電動機810の軸方向に沿って間隔をおいて設置された第1載置板110及び第2載置板120を備える。第1電動機810は、第1載置板110に設置された第1固定子811と、第1アーム200に接続された、第1固定子811の外に嵌設された第1回転子812と、を備え、第2電動機820は、第2載置板120に設置された第2固定子821と、伝動装置500に接続された、第2固定子821の外に嵌設された第2回転子822と、を備える。本実施例において第1電動機810と第2電動機820とが第1アーム200と第2アーム300とを駆動する方式は、上記実施例において第1電動機410と第2電動機420とが第1アーム200と第2アーム300とを駆動する方式と類似し、ここで詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施例では、第2電動機820をベース100に接続することで、第1電動機810が載置する質量を更に低減でき、第1電動機810の出力トルク需要を更に低減でき、それで水平多関節ロボット10の全体的な体積と質量とを低減でき、水平多関節ロボット10の高加速度と高速度との実現に寄与する。
【0059】
本実施例において、第1電動機810と第2電動機820との軸線が重なっており、第1電動機810と第2電動機820との第1電動機810の軸線の垂直平面での投影を全部重合させることで、水平多関節ロボット10の重心をより安定化させ、構造全体をより安定的にすることができる。
【0060】
図7を参照し、別の具体的な実施例では、第1電動機810と第2電動機820との軸線は平行して設置され、第1電動機810と第2電動機820との第1電動機810の軸線の垂直平面での投影が部分的に重なり、第2電動機820と第2関節310との距離がより近く、それによって伝動装置500が伝動すべき距離がより短く、誤差発生可能性がより小さい。
【0061】
図6を参照し、本実施例において、伝動装置500は剛性伝動ベルトで伝動し、具体的な構造については上記水平多関節ロボット10の実施例を参照されたく、ここで詳細な説明を省略する。
【0062】
図8を参照し、別の具体的な実施例では、伝動装置500は第1歯車560及び第2歯車570を少なくとも含むバックラッシ無し歯車アセンブリを備え、第1歯車560と第2歯車570とは、歯の厚みが同じであり、設置高さが同じであり、且つシームレスに噛み合い、バックラッシ無し伝動を実現でき、第1歯車560は第2回転子822の外に嵌設され、第2歯車570は第2アーム300に接続され、第1歯車560と第2歯車570とは互いに噛み合い、第2回転子822が回転すると、第1歯車560はそれに伴って回転し、それによって、第2歯車570によって第2アーム300を連動して回転させることができ、バックラッシ無し歯車アセンブリによって、第2電動機820と第2アーム300との間の伝動を実現でき、それで第2電動機820の第2アーム300での設置位置制限を軽減させ、第1電動機810の軸線と第2電動機820の軸線との距離の低減の実現に寄与し、そして、伝動過程でのバックラッシ問題を回避し、第2電動機820の駆動精度を向上させることができ、水平多関節ロボット10の全体的な精度の向上に寄与する。
【0063】
上記は本願の実施形態に過ぎず、本願の特許請求の範囲を限定するものではなく、本願の明細書及び図面の内容を利用してなした等価構成又は等価フロー変換、あるいは他の関連技術分野へのその直接又は間接の転用は、同様に、いずれも本願の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】