(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】車両のトルク補償方法及び装置、コンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20240126BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
B60W30/02
B60T8/17 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535899
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2022071057
(87)【国際公開番号】W WO2023130456
(87)【国際公開日】2023-07-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲覃▼ ▲海▼明
(72)【発明者】
【氏名】李 宝
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲凱▼
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241AA21
3D241AA31
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3D246JB31
3D246LA04Z
3D246LA15Z
(57)【要約】
本願は車両のトルク補償方法、車両のトルク補償装置及び関連するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。前記トルク補償方法は、車両の車両制御モジュールは前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップを含む。本願は車両のブレーキアイドルストローク範囲を正確に判断し、車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させることができ、それにより車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制し、走行安全を保証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のトルク補償方法であって、前記車両は車両制御モジュールを含み、前記トルク補償方法は、
前記車両制御モジュールは前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップを含む車両のトルク補償方法。
【請求項2】
前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、
前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第1圧力を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第1補償トルクを含むことと、
前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第2圧力を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第2補償トルクを含むことと、を含み、
前記第1圧力は前記第2圧力よりも小さく、前記第1補償トルクは前記第2補償トルクよりも大きい請求項1に記載のトルク補償方法。
【請求項3】
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得するステップは、
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力をリアルタイムに取得するステップを含む請求項1に記載のトルク補償方法。
【請求項4】
前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得して、前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップをさらに含む請求項1に記載のトルク補償方法。
【請求項5】
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得して、前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、
前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第1回転数を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第3補償トルクを含むことと、
前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が前記第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第2回転数を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第4補償トルクを含むことと、をさらに含み、
前記第1回転数は前記第2回転数よりも小さく、前記第3補償トルクは前記第4補償トルクよりも小さい請求項4に記載のトルク補償方法。
【請求項6】
前記車両制御モジュールは前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定するステップは、
前記車両制御モジュールは前記車両の走行速度が低速走行モードに対応する第1速度範囲であり且つ前記車両のブレーキペダル開度の減少値は第1開度値を超えると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のモーターのモーター回転数が増大するか否かを更に決定するステップと、
前記車両制御モジュールは前記車両のモーター回転数が増大すると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のレンジ、前記車両のモーターのモーター回転方向に基づいて前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを決定するステップと、を含む請求項1に記載のトルク補償方法。
【請求項7】
コンピュータ命令が記憶され、前記コンピュータ命令がコンピュータによって実行される時、前記コンピュータに請求項1~6のいずれか一項に記載のトルク補償方法を実現させるコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項8】
車両のトルク補償装置であって、車両制御モジュールを含み、
前記車両制御モジュールは、前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させることに用いられる、車両のトルク補償装置。
【請求項9】
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第1圧力を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第1補償トルクを含む、ことに用いられ、及び
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第2圧力を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第2補償トルクを含む、ことに用いられ、
前記第1圧力は前記第2圧力よりも小さく、前記第1補償トルクは前記第2補償トルクよりも大きい、請求項8に記載のトルク補償装置。
【請求項10】
前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力をリアルタイムに取得することに用いられる請求項8に記載のトルク補償装置。
【請求項11】
前記車両制御モジュールは、前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させることに用いられる請求項8に記載のトルク補償装置。
【請求項12】
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第1回転数を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第3補償トルクを含む、ことに用いられ、及び
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が前記第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第2回転数を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第4補償トルクを含む、ことに用いられ、
前記第1回転数は前記第2回転数よりも小さく、前記第3補償トルクは前記第4補償トルクよりも小さい請求項11に記載のトルク補償装置。
【請求項13】
前記車両制御モジュールは、前記車両の走行速度が低速走行モードに対応する第1速度範囲であり且つ前記車両のブレーキペダル開度の減少値が第1開度値を超えると決定した場合、さらに前記車両のモーターのモーター回転数が増大するか否かを決定することに用いられ、
前記車両制御モジュールは、前記車両のモーター回転数が増大すると決定した場合、前記車両のレンジ、前記車両のモーターのモーター回転方向に基づいて前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを決定することに用いられる請求項8に記載のトルク補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は車両分野に関し、具体的に車両のトルク補償方法、車両のトルク補償装置及び関連するコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネと排出削減は、自動車産業の持続可能な発展の鍵であり、電気自動車は、その省エネルギーで環境にやさしいという長所により自動車産業の持続可能な発展の重要な部分になる。電気自動車にとって、制御技術はその発展に関連する重要な要素である。
【0003】
電気自動車は運転中にブレーキアイドルストロークニュートラル走行が発生し、それにより衝突等の交通事故を引き起こし、ひいては人間の生命を危険にさらし、安全上の問題がある。
【発明の概要】
【0004】
上記問題に鑑みて、本願は、車両のトルク補償方法、車両のトルク補償装置及び関連するコンピュータ可読記憶媒体を提供し、車両のブレーキアイドルストローク範囲を正確に判断し、車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させることができ、それにより車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制し、走行安全を保証する。
【0005】
第1態様によれば、本願は車両のトルク補償方法を提供し、前記車両は車両制御モジュールを含み、前記トルク補償方法では、前記車両制御モジュールは前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップを含む。
【0006】
本願の実施例の技術案では、出願人は、研究により、車両にブレーキアイドルストロークニュートラル走行が発生する場合、ブレーキマスターシリンダーが車両の車輪に印加した制動力は車両の車輪をブレーキするのに不十分である。この時、ブレーキマスターシリンダーの圧力はブレーキアイドルストローク範囲をより正確に反映することができるため、ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両を制御して補償トルクをタイムリーに出力させると、車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制し、走行安全を保証することができる。
【0007】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第1圧力を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第1補償トルクを含むことと、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第2圧力を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第2補償トルクを含むことと、を含み、前記第1圧力は前記第2圧力よりも小さく、前記第1補償トルクは前記第2補償トルクよりも大きい。本願の実施例のトルク補償方法では、ブレーキマスターシリンダーの圧力が小さいほど、車両のモーターが出力すべき補償トルクは大きくなり、ブレーキマスターシリンダーの圧力が大きいほど、車両のモーターが出力すべき補償トルクは小さくなる。ブレーキマスターシリンダーの圧力に応じて車両のモーターを正確に制御して適切な補償トルクをタイムリーに出力させると、車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制する。
【0008】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得するステップは、前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力をリアルタイムに取得するステップを含む。本願の実施例のトルク補償方法では、ブレーキマスターシリンダーのリアルタイムな圧力は車輪に印加されるリアルタイムな制動力を反映するため、ブレーキアイドルストローク範囲をより正確に反映することができ、それにより車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させ、車両のトルク補償方法をさらに具体化する。
【0009】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得して、前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得して、前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第1回転数を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第3補償トルクを含むことと、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が前記第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第2回転数を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第4補償トルクを含むことと、をさらに含み、前記第1回転数は前記第2回転数よりも小さく、前記第3補償トルクは前記第4補償トルクよりも小さい。
【0011】
本願の実施例のトルク補償方法では、リアルタイムに取得される車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーターの回転数を組み合わせて車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させると、車両の慣性等の要素を考慮することができ、車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制する。
【0012】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールは前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定するステップは、前記車両制御モジュールは前記車両の走行速度が低速走行モードに対応する第1速度範囲であり且つ前記車両のブレーキペダル開度の減少値は第1開度値を超えると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のモーターのモーター回転数が増大するか否かを更に決定するステップと、前記車両制御モジュールは前記車両のモーター回転数が増大すると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のレンジ、前記車両のモーターのモーター回転方向に基づいて前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを決定するステップと、を含む。
【0013】
第2態様によれば、コンピュータ可読記憶媒体を提供して、前記コンピュータ可読記憶媒体にコンピュータ命令が記憶され、前記コンピュータ命令はコンピュータによって実行される時、前記コンピュータに上記実施例に記載のトルク補償方法を実現させる。
【0014】
第3態様によれば、車両制御モジュールを含む車両のトルク補償装置を提供し、前記車両制御モジュールは、前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させることに用いられる。
【0015】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第1圧力を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第1補償トルクを含む、ことに用いられ、及び前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第2圧力を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第2補償トルクを含む、ことに用いられ、前記第1圧力は前記第2圧力よりも小さく、前記第1補償トルクは前記第2補償トルクよりも大きい。
【0016】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力をリアルタイムに取得することに用いられる。
【0017】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールは、前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させることに用いられる。
【0018】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第1回転数を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第3補償トルクを含む、ことに用いられ、及び前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が前記第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第2回転数を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第4補償トルクを含む、ことに用いられ、前記第1回転数は前記第2回転数よりも小さく、前記第3補償トルクは前記第4補償トルクよりも小さい。
【0019】
いくつかの実施例では、前記車両制御モジュールは前記車両の走行速度が低速走行モードに対応する第1速度範囲であり且つ前記車両のブレーキペダル開度の減少値が第1開度値を超えると決定した場合、さらに前記車両のモーターのモーター回転数が増大するか否かを決定することに用いられ、前記車両制御モジュールは、前記車両のモーター回転数が増大すると決定した場合、前記車両のレンジ、前記車両のモーターのモーター回転方向に基づいて前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを決定することに用いられる。
【0020】
理解されるように、本願の第3態様及びその実施例は本願の第1態様及びその実施例と同様の技術的効果を実現することができる。
【0021】
上記説明は、本願の技術案の概要に過ぎず、本願の技術的手段をより明確に理解できるように、明細書の内容に基づいて実施することができ、且つ本願の上記及び他の目的、特徴及び利点を明らかで理解しやすくするために、以下、本願の実施形態を挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むと、様々な他の利点及びメリットは当業者にとって明瞭になる。図面は、好ましい実施形態を説明するためにのみ使用され、本願を制限するものと見なされるべきではない。且つすべての図面では、同時参照符号で同じ構成要素を示す。図面では、
【
図1】本願のいくつかの実施例に係る車両のトルク補償方法のフローチャートである。
【
図2】本願の別のいくつかの実施例に係る車両のトルク補償方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本願の技術案の実施例を詳細に説明する。以下の実施例は本願の技術案をより明確に説明するためにのみ使用され、従って、例に過ぎず、これで本願の保護範囲を制限すべきではない。
【0024】
特に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語はすべて当業者が通常理解する意味と同じであり、本明細書において使用される用語は具体的な実施例を説明するためのものに過ぎず、本願を制限するものではなく、本願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面の簡単な説明における用語「含む」、「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図する。
【0025】
本願の実施例の説明において、「第1」、「第2」等の技術用語は、相対的な重要性を指示又は暗示し、又は指示される技術的特徴の数、特定の順次又は主次関係を実質的に示すものと理解されるべきではなく、異なる対象を区別するためのものに過ぎない。本願の実施例の説明において、特に明確で具体的な限定がない限り、「複数」は2つ以上を意味する。
【0026】
本明細書に言及される「実施例」は、実施例と組み合わせて説明された特定の特徴、構造又は特性が本願の少なくとも1つの実施例に含まれてもよいことを意味する。明細書の様々な位置に現れる該語句は必ずしも同じ実施例を指すわけではなく、他の実施例と互いに排他的に独立した又は代替の実施例でもない。当業者は、本明細書において説明される実施例が他の実施例と組み合わせることができることを明示的又は暗黙的に理解できる。
【0027】
本願の実施例の説明において、特に明確な規定及び限定がない限り、「取付」、「連結」、「接続」、「固定」等技術用語は、広義に理解すべきであり、たとえば、固定して接続されてもよく、取り外し可能に接続され、又は一体的に接続されてもよい。機械的に接続されてもよく、電気的に接続されてもよい。直接連結されてもよく、中間媒体を介して間接的に連結されてもよく、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願の実施例での具体的な意味を理解することができる。
【0028】
本明細書におけるステップの順次陳述は、実施例又は態様が陳述された順序に限定されることを必ずしも意味するものではない。逆に、前記ステップを異なる順次で又は互いに並行して実行することをさらに想像してもよく、次のステップが前のステップに基づいて構築されていない限り、これは、前のステップを最初に実行し、次に後のステップを実行する必要がある(このような状況は具体的な実施例で明確になる)。記載される順次は好ましい実施例であってもよい。
【0029】
現在、市場の状況の発展から見れば、省エネと排出削減に対する要件は高まっている。電気自動車は、その省エネルギーで環境にやさしいという長所があるため、市場需要も間断なく増幅する。電気自動車について、その制御技術に対する要件が高くなる。
【0030】
本願の実施例の説明において、電気自動車は二次電池式電気自動車(Battery Electric Vehicle:BEV)であってもよく、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)であってもよい。二次電池式電気自動車は、完全に、鉛酸電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池のような充電式電池によって動力源を提供する車両である。ハイブリッド電気自動車は、充電式電池及び従来の動力源(たとえば、ガソリン、ディーゼル、圧縮天然ガス、プロパン及びエタノール燃料等)によってハイブリッド動力源を提供する車両であり、この2つの動力源は車両の異なる走行状態で別々に動作するか又は一緒に動作する。本願の実施例のハイブリッド電気自動車は、車両の低速走行時に充電式電池によって動力源が提供される。
【0031】
電気自動車では、車両制御ユニットはコア制御部材であり、主な機能が運転者のニーズを解析し、車両の走行状態を監視し、電池管理システムBMS、マイクロコントローラユニットMCU、エンジン管理システムEMS、自動変速機制御ユニットTCU等のような制御ユニットの動作を調整して、車両の電源のオンオフ、駆動制御、エネルギー回収、付属品制御及び故障診断等の機能を実現することである。ブレーキマスターシリンダーは、車両制動システムの動力源であり、ブレーキマスターシリンダーの主な作用は、運転者がブレーキペダルに加えたペダル踏力をブレーキマスターシリンダーの圧力に変換し、さらに車両の車輪に加えられた制動力に変換し、それにより車両のブレーキ効果を実現することである。
【0032】
本発明者であれば分かるように、従来技術のいくつかの車両では、車両制御モジュールはブレーキペダルのアナログ信号を受信し、次にブレーキペダルのアナログ信号に基づいてブレーキマスターシリンダーを制御して車両の車輪に加えられた制動力を出力させる。これらの車両では、ブレーキマスターシリンダーの圧力はブレーキペダル開度を正確に反映することができる(すなわち、ブレーキマスターシリンダーの圧力はブレーキペダル開度とマッチングする)。
【0033】
しかしながら、従来技術のいくつかの電気自動車では、ブレーキマスターシリンダーの圧力はブレーキペダル開度を正確に反映することができない(すなわち、ブレーキマスターシリンダーの圧力はブレーキペダル開度とマッチングしない)。これらの電気自動車は走行過程にブレーキアイドルストロークニュートラル走行が発生する。たとえば、従来の電気自動車では、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキペダルに接続される入力ロッドが変位し、ブレーキペダルストロークセンサが入力ロッドの変位を検出して、該変位信号をコントローラに送信し、コントローラはブレーキモーターが生成すべきトルクを算出し、伝動装置によって該トルクをブレーキマスターシリンダーのサーボ制動力に転化する。この時、車両制御モジュールはブレーキペダルのアナログ信号を受信することがなく、ブレーキペダル開度は入力ロッドの変位によって導出される。たとえば、入力ロッドの変位に4.76等の係数を掛けてブレーキペダル開度を得る。このような場合で、ブレーキペダル開度が車両の制動システムから得られるため、ブレーキアイドルストローク範囲を直接反映することができず、ブレーキアイドルストロークニュートラル走行の発生を引き起こし、衝突等の交通事故をもたらす可能性があり、ひいては人間の生命を危険にさらし、大きな安全上の危険をもたらす。また、これらの車両では、校正エンジニアはテストしてブレーキアイドルストローク範囲に対応するブレーキペダル開度を校正して、それにより車両のモーターを制御して適切な補償トルクを出力させることができるが、ブレーキペダル開度は車両ごとに異なる場合があり、ブレーキアイドルストローク範囲に対応するブレーキペダル開度は車両のモーターにより出力される補償トルクとマッチングしない場合、ブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制することができず又は車輪がクランプした後に異常音が発生する可能性がある。
【0034】
ブレーキマスターシリンダーの圧力とブレーキペダル開度とがマッチングしない時に発生する問題を解決し、それにより車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制するために、出願人は、研究により、車両走行過程に車両のブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両のモーターを制御して補償トルクを出力させることを発見した。具体的には、出願人は、研究により、車両にブレーキアイドルストロークニュートラル走行が発生する時、ブレーキマスターシリンダーが車両の車輪に加えた制動力は車両の車輪を制動するのに不十分であることを発見した。この時、ブレーキマスターシリンダーの圧力はブレーキアイドルストローク範囲をより正確に反映することができるため、ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させると、車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制し、走行安全を保証することができる。
【0035】
上記考慮に基づき、発明者は深く研究することにより、車両のトルク補償方法を設計し、車両は車両制御モジュールを含み、トルク補償方法では、車両制御モジュールは車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、車両制御モジュールは車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップを含む。このようなトルク補償方法では、車両にブレーキアイドルストロークニュートラル走行が発生しようとする場合又は発生した場合、ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させ、車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制する。
【0036】
本願の実施例に開示されている車両のトルク補償方法は、ブレーキマスターシリンダーの圧力とブレーキペダル開度とがマッチングしない車両に使用されるがそれに制限されず、ブレーキペダルのアナログ信号が車両制御モジュールに伝送されない車両にも適用できる。このような車両において本願に開示されているトルク補償方法を使用すると、ブレーキアイドルストロークニュートラル走行をタイムリーで効果的に阻止し、走行安全を効果的に確保することができる。
【0037】
図1は本願のいくつかの実施例に係る車両のトルク補償方法のフローチャートである。車両は車両制御モジュールを含み、トルク補償方法は車両制御モジュールによって実行される。
【0038】
図1における車両のトルク補償方法はステップS11から始まる。
【0039】
ステップS11では、車両制御モジューは車両を制御して正常に走行させる。車両制御ユニットは、電気自動車のコア制御部材であり、車両の車速センサ、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ、モーター、レンジコントローラ、ブレーキマスターシリンダー等に接続され、電池管理システムBMS、マイクロコントローラユニットMCU、エンジン管理システムEMS、自動変速機制御ユニットTCU等のような制御ユニットの動作を調整し、それにより車両を制御して正常に走行させることができる。当業者であれば、本発明の車両のトルク補償方法はステップS11を含んでもよく、ステップS11とは独立して実現されてもよいことを理解すべきである。
【0040】
ステップS12では、車両制御モジュールは車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを判断する。
【0041】
たとえば、先ず車両制御モジュールは車両が低速走行モード(すなわち、蛇行走行モード)であるか否かを判断する。本願では、低速走行モードでの車両走行速度は0-10km/hである。しかしながら、応用シーンが異なると、低速走行モードでの車両走行速度の範囲が異なることを理解すべきである。
【0042】
車両制御モジュールは車両が低速走行モードではないと決定した場合、車両が高速走行モードであると決定し、このような場合で、ブレーキニュートラル走行が発生しない。この時、車両制御モジュールは、車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態ではないと決定し、継続して戻って車両が低速走行モードであるか否かをリアルタイムに判断する。車両の高速走行モードの場合に本願の車両のトルク補償方法を実行することをできるだけ回避し、それにより車両に巨大な突撃をもたらすことを回避すべきであることを理解すべきである。
【0043】
車両制御モジュールは、車両が低速走行モードであると決定した場合、さらに車両のブレーキペダル開度の減少値が特定の開度値を超えるか否か(たとえば、ブレーキペダル開度の減少値は12%を超えるか否か)を判断し、すなわち、運転者が車両を制動する意図があるか否かを判断する。車両制御モジュールは、車両のブレーキペダル開度の値が減少せず又はブレーキペダル開度の減少値が12%未満であると決定した場合、運転者が車両を制動する意図がないと判断し、その後に継続して戻って車両のブレーキペダル開度の減少値が特定の開度値を超えるか否かをリアルタイムに判断する。車両制御モジュールは車両のブレーキペダル開度の減少値が特定の開度値を超える(たとえば、ブレーキペダル開度の減少値が12%を超える)と決定した場合、さらに車両のモーターのモーター回転数が増大するか否かを判断する。
【0044】
車両制御モジュールは、車両のモーターのモーター回転数が正常に減少すると決定した場合、車両が正常に制動してスローダウンすると決定する。
【0045】
車両制御モジュールは、車両のモーターのモーター回転数が異常に増大すると決定した場合、車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態である恐れがあると決定し、さらに車両のレンジ及びモーターのモーター回転方向と組み合わせて車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを確認する。たとえば、この時、車両のレンジがドライブレンジDレンジであり、モーターの回転方向が逆回転である場合、車両が平地又は下り坂ブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態である可能性がある。また、たとえば、この時に車両のレンジがリバースレンジRレンジであり、モーターの回転方向が正回転である場合、車両は上り坂ブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態である可能性がある。
【0046】
本願では、車両の速度情報を取得するために、車両制御モジュールは車両の車速センサに車速要求命令を送信し、車速センサが車速要求命令を受信すると、現在の車速情報を車両制御モジュールに返信する。同様に、車両のブレーキペダル開度を取得するために、車両制御モジュールは車両のブレーキペダルセンサにブレーキペダル開度要求命令を送信し、ブレーキペダルセンサはブレーキペダル開度要求命令を受信すると、現在のブレーキペダル開度情報を車両制御モジュールに返信する。また、同様に、車両のモーター回転数及びモーター回転方向等の情報を取得するために、車両制御モジュールは車両のモーターにモーター回転数及びモーター回転方向要求命令を送信し、車両のモーターはモーター回転数及びモーター回転方向要求命令を受信すると、現在のモーター回転数及びモーター回転方向情報を車両制御モジュールに返信する。再び同様に、車両のレンジ情報を取得するために、車両制御モジュールは車両のレンジコントローラに車両の現在のレンジ要求命令を送信し、車両のレンジコントローラは車両の現在のレンジ要求命令を受信すると、車両の現在のレンジ情報を車両制御モジュールに返信する。
【0047】
車両制御ユニットは電気自動車のコア制御部材であり、車両の上記部材に接続されるため、これらの部材に要求情報を送信して車速、ブレーキペダル開度、モーター回転数及びモーター回転方向等に関する情報を取得し、更に車両が低速走行モードであるか否かを判断することができる。
【0048】
図1に戻り、車両制御モジュールは、車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態ではないと決定した場合、ステップS11に戻り、継続して車両を制御して正常に走行させ、本願の車両のトルク補償方法を実行しない。車両制御モジュールは、車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、ステップS13を実行し、車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得する。車両制御モジュールは車両のブレーキマスターシリンダーに接続されるため、車両のブレーキマスターシリンダーに車両のブレーキマスターシリンダーの圧力の要求命令を送信することができ、ブレーキマスターシリンダーは該要求命令を受信すると、ブレーキマスターシリンダーの圧力情報を車両制御モジュールに返信する。
【0049】
次にステップS14を実行し、車両制御モジュールはブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両のモーターを制御して補償トルクを出力させる。ブレーキマスターシリンダーの圧力が車両のブレーキアイドルストローク範囲を正確に反映することができるため、車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させ、それにより車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制し、走行安全を保証する。
【0050】
本願では、車両のモーターとは、車両を駆動する動力源を提供するためのエンジンである。また、車両のモーターによって出力された補償トルクの方向は現在の車輪の回転方向とは逆である。たとえば、ステップS12で車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを判断する際、車両のレンジがドライブレンジDレンジであり、モーターの回転方向が逆回転方向である場合、ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両のモーターを制御して出力させた補償トルクの方向は正回転方向であるべきである。さらに、たとえば、ステップS12で車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを判断する際、車両のレンジがリバースレンジRレンジであり、モーターの回転方向が正回転方向である場合、ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて車両のモーターを制御して出力させた補償トルクの方向は逆回転方向であるべきである。
【0051】
ステップS14では、車両制御モジュールはブレーキマスターシリンダーの圧力を取得した後、記憶されるブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表を問い合わせ、該ブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表から車両のモーターが出力すべき補償トルクを取得する。
【0052】
本願では、車両制御モジュールは車両のモーターが出力すべき補償トルクを取得した後、車両のモーターに該補償トルク値のコマンド情報を出力し、車両のモーターは該コマンド情報に基づいて対応する補償トルク値を出力する。
【0053】
本願では、車両制御モジュールは関連するメモリにブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表を記憶する。車両制御モジュールがブレーキマスターシリンダーの圧力を取得した後、関連するメモリに問い合わせ要求を送信し、該ブレーキマスターシリンダー圧力に対応する補償トルクを取得する。
【0054】
該ブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表は、多くの要素を考慮して作成される。これらの要素は、車両の重量、車輪抵抗係数等を含むが、これらに限定されない。初期バージョンのブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表は、半分の積荷の車両が特定の傾斜度の坂で車両の静止を維持するのに必要な最大補償トルクに基づいて作成される。すなわち、半分の積荷の車両を特定の傾斜度の坂で車両の静止を維持する場合、車両制御モジュールは、車両のブレーキマスターシリンダーの異なる圧力で、車両のモーターが出力すべき補償トルクを取得する。好ましくは、傾斜度は7度に選択される。通常の状況で、傾斜度が7度よりも大きい場合、運転者は通常にブレーキペダルを深く踏み込み、ニュートラル走行現象が発生しないようにする。傾斜度が7度である場合、ブレーキアイドルストロークニュートラル走行現象が発生する可能性がある。実際の運転過程に、校正エンジニアは実際の状況に応じて初期バージョンのブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表を調整する。
【0055】
ブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表の一実施例は表1に示される。
【0056】
【0057】
表1では、マスターシリンダーの圧力が0barである場合、車両のモーターが出力すべき補償トルクは45Nmであり、マスターシリンダーの圧力が1barである場合、車両のモーターが出力すべき補償トルクは40Nmであり、マスターシリンダーの圧力が1.5barである場合、車両のモーターが出力すべき補償トルクは20Nmであり、マスターシリンダーの圧力が2barである場合、車両のモーターが出力すべき補償トルクは10Nmである。
【0058】
表1のブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表から分かるように、ブレーキマスターシリンダーの圧力が小さいほど、車両のモーターが出力すべき補償トルクは大きくなる。運転者がブレーキペダルを継続して深く踏み込むと、ブレーキマスターシリンダーの圧力が増大し、車両のモーターが出力すべき補償トルクは徐々に減少する。ブレーキペダル開度がブレーキアイドルストローク範囲を超える場合、ブレーキマスターシリンダーの圧力が十分に大きくなり、車両のモーターは補償トルクを出力する必要がない。
【0059】
好ましくは、ステップS12では、車両制御モジュールは車両のブレーキマスターシリンダーの圧力をリアルタイムに取得する。ブレーキマスターシリンダーのリアルタイムな圧力は車輪に印加されるリアルタイムな制動力を反映するため、ブレーキアイドルストローク範囲をより正確に反映することができ、それにより車両のモーターを制御して補償トルクを出力させ、さらに車両のトルク補償方法を具体化する。
【0060】
図2は本願の別のいくつかの実施例に係る車両のトルク補償方法のフローチャートである。
図1に関して説明したように、車両は車両制御モジュールを含み、トルク補償方法は車両制御モジュールによって実行される。
【0061】
図2における車両のトルク補償方法はステップS21から始まる。
【0062】
ステップS21では、車両制御モジューは車両を制御して正常に走行させる。当業者であれば、本発明の車両のトルク補償方法はステップS21を含んでもよく、ステップS21とは独立して実現されてもよいことを理解すべきである。
【0063】
ステップS22では、
図1のステップS12に関して説明したように、車両制御モジュールは車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを判断する。ステップS22の実行過程はステップS12と同様であるため、ここで詳細な説明は省略する。
【0064】
車両制御モジュールは、車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態ではないと決定した場合、ステップS21に戻り、継続して車両を制御して正常に走行させ、本願の車両のトルク補償方法を実行しない。車両制御モジュールは、車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、ステップS23を実行し、車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーターの回転数を取得する。車両制御モジュールは車両のブレーキマスターシリンダー及びモーターに接続されるため、車両のブレーキマスターシリンダーに車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーター回転数の要求命令を送信することができ、ブレーキマスターシリンダー及びホストは車両制御モジュールの要求命令を受信した後、ブレーキマスターシリンダーの圧力情報及びモーター回転数の情報を車両制御モジュールに返信する。
【0065】
次にステップS24を実行し、車両制御モジュールはブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーターの回転数に基づいて車両のモーターを制御して補償トルクを出力させる。
【0066】
本願の発明者は、車両のモーターが出力すべき補償トルクは車両のブレーキマスターシリンダーの圧力に関連する以外、車両のモーターの回転数にも所定の関係を有する。車両のモーターの回転数が異なると、車両のモーターが出力する必要がある補償トルクも異なる。
図2の車両のトルク補償方法では、取得される車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーターの回転数と組み合わせて車両のモーターを制御して補償トルクをタイムリーに出力させ、車両の慣性等の要素を考慮し、車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制することができる。
【0067】
図1のステップS14に関して説明したように、車両のモーターとは車両を駆動する動力源を提供するためのエンジンである。また、車両のモーターによって出力される補償トルクの方向は現在の車輪の回転方向と逆である。
【0068】
ステップS24では、車両制御モジュールがブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーターの回転数を取得した後、記憶されるブレーキマスターシリンダーの圧力及び回転数-補償トルク表を問い合わせ、該ブレーキマスターシリンダーの圧力及び回転数-補償トルク表から車両のモーターが出力すべき補償トルクを取得する。
【0069】
本願では、車両制御モジュールは車両のモーターが出力すべき補償トルクを取得した後、車両のモーターに該補償トルク値のコマンド情報を出力し、車両のモーターは該コマンド情報に基づいて対応する補償トルク値を出力する。
【0070】
本願では、車両制御モジュールは関連するメモリにブレーキマスターシリンダーの圧力及び回転数-補償トルク表を記憶する。車両制御モジュールがブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーターの回転数を取得した後、関連するメモリに問い合わせ要求を送信し、該ブレーキマスターシリンダーの圧力及びモーターの回転数に対応する補償トルクを取得する。
【0071】
該ブレーキマスターシリンダーの圧力及び回転数-補償トルク表は多くの要素を考慮した後に作成される。これらの要素は車両の重量、車輪抵抗係数等を含むが、これらに限定されない。初期バージョンのブレーキマスターシリンダーの圧力-補償トルク表は半分の積荷の車両が特定の傾斜度の坂で車両の静止を維持する場合に必要な最大補償トルクに基づいて作成される。すなわち、半分の積荷の車両を特定の傾斜度の坂で車両の静止を維持する場合、車両制御モジュールは車両がブレーキマスターシリンダーの異なる圧力で、車両のモーターが出力すべき補償トルクを取得する。好ましくは、傾斜度は7度に選択される。通常の状況で、傾斜度が7度よりも大きい場合、運転者は通常にブレーキペダルを深く踏み込み、ニュートラル走行現象が発生しないようにする。傾斜度が7度よりも小さい場合、ブレーキアイドルストロークニュートラル走行現象が発生する可能性がある。実際の運転過程に、校正エンジニアは実際の状況に応じて初期バージョンのブレーキマスターシリンダーの圧力及び回転数-補償トルク表を調整する。
【0072】
ブレーキマスターシリンダーの圧力及び回転数-補償トルク表の一実施例は表2に示される。
【0073】
【0074】
表2では、ブレーキマスターシリンダーの圧力が0barであり、車両のモーターの回転数が50rpsである場合、車両のモーターが出力すべき補償トルクは25Nmであり、車両のモーター回転数が100rpsである場合、車両のモーターが出力すべき補償トルクが45Nmであり、車両のモーター回転数が200rpsである場合、車両のモーターが出力すべき補償トルクは65Nmである。つまり、ブレーキマスターシリンダーの圧力が0barである場合、車両のモーター回転数が大きいほど、車両のモーターが出力すべき補償トルクが大きくなる。同じブレーキマスターシリンダー圧力1bar、1.5bar及び2barは、同様である。
【0075】
表1のブレーキマスターシリンダーの圧力及び回転数-補償トルク表から分かるように、ブレーキマスターシリンダーの圧力が同じである場合、車両のモーター回転数が大きいほど、車両のモーターが出力すべき補償トルクは大きくなる。車両のモーター回転数が大きいほど、車両の慣性等の一連の要素を考慮する必要があり、車両のモーターが出力すべき補償トルクは大きくなる。
【0076】
好ましくは、ステップS22では、車両制御モジュールは車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び車両モーターのモーター回転数をリアルタイムに取得する。ブレーキマスターシリンダーのリアルタイムな圧力及び車両モーターのモーター回転数が車輪に加えられたリアルタイムな制動力を反映するため、ブレーキアイドルストローク範囲をより正確に反映することができ、それにより車両のモーターを制御して補償トルクを出力させ、さらに車両のトルク補償方法を具体化する。
【0077】
本願のいくつかの実施例によれば、ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいてブレーキアイドルストローク範囲を正確に判断し、これに基づいてトルク補償方法を実行すると、車両のブレーキアイドルストロークニュートラル走行を効果的に抑制し、走行安全を保証することができる。
【0078】
なお、以上の各実施例は本願の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを制限するものではない。各実施例を参照しながら本願を詳細に説明したが、当業者であれば理解できるように、上記各実施例に記載の技術案を修正し、又は一部又はすべての技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正や置換は、対応する技術案の本質を本願の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではなく、本願の特許請求の範囲及び明細書の範囲に含まれるべきである。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施例で言及される各技術的特徴は、いずれも任意の方式で組み合わせることができる。本願は本明細書に開示されている特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての技術案を含む。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のトルク補償方法であって、前記車両は車両制御モジュールを含み、前記トルク補償方法は、
前記車両制御モジュールは前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップを含む車両のトルク補償方法。
【請求項2】
前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、
前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第1圧力を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第1補償トルクを含むことと、
前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第2圧力を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第2補償トルクを含むことと、を含み、
前記第1圧力は前記第2圧力よりも小さく、前記第1補償トルクは前記第2補償トルクよりも大きい請求項1に記載のトルク補償方法。
【請求項3】
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得するステップは、
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力をリアルタイムに取得するステップを含む請求項1
または2に記載のトルク補償方法。
【請求項4】
前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得して、前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップをさらに含む請求項1
~3のいずれか一項に記載のトルク補償方法。
【請求項5】
前記車両制御モジュールが前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得して、前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させるステップは、
前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第1回転数を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第3補償トルクを含むことと、
前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が前記第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第2回転数を含む場合、前記車両制御モジュールが前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第4補償トルクを含むことと、をさらに含み、
前記第1回転数は前記第2回転数よりも小さく、前記第3補償トルクは前記第4補償トルクよりも小さい請求項4に記載のトルク補償方法。
【請求項6】
前記車両制御モジュールは前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定するステップは、
前記車両制御モジュールは前記車両の走行速度が低速走行モードに対応する第1速度範囲であり且つ前記車両のブレーキペダル開度の減少値は第1開度値を超えると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のモーターのモーター回転数が増大するか否かを更に決定するステップと、
前記車両制御モジュールは前記車両のモーター回転数が増大すると決定した場合、前記車両制御モジュールは前記車両のレンジ、前記車両のモーターのモーター回転方向に基づいて前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを決定するステップと、を含む請求項1
~5のいずれか一項に記載のトルク補償方法。
【請求項7】
コンピュータ命令が記憶され、前記コンピュータ命令がコンピュータによって実行される時、前記コンピュータに請求項1~6のいずれか一項に記載のトルク補償方法を実現させるコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項8】
車両のトルク補償装置であって、車両制御モジュールを含み、
前記車両制御モジュールは、前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であると決定した場合、前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力を取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させることに用いられる、車両のトルク補償装置。
【請求項9】
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第1圧力を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第1補償トルクを含む、ことに用いられ、及び
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得された前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第2圧力を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第2補償トルクを含む、ことに用いられ、
前記第1圧力は前記第2圧力よりも小さく、前記第1補償トルクは前記第2補償トルクよりも大きい、請求項8に記載のトルク補償装置。
【請求項10】
前記車両制御モジュールは前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力をリアルタイムに取得することに用いられる請求項8
または9に記載のトルク補償装置。
【請求項11】
前記車両制御モジュールは、前記車両のブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数をリアルタイムに取得し、且つ前記ブレーキマスターシリンダーの圧力及び前記車両のモーターの回転数に基づいて前記車両のモーターを制御して補償トルクを出力させることに用いられる請求項8
~10のいずれか一項に記載のトルク補償装置。
【請求項12】
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第1回転数を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第3補償トルクを含む、ことに用いられ、及び
前記車両制御モジュールは、前記車両制御モジュールにより取得される前記ブレーキマスターシリンダーの圧力が前記第3圧力を含み、及び前記車両のモーターの回転数が第2回転数を含む場合、前記車両のモーターを制御して出力させた補償トルクは第4補償トルクを含む、ことに用いられ、
前記第1回転数は前記第2回転数よりも小さく、前記第3補償トルクは前記第4補償トルクよりも小さい請求項11に記載のトルク補償装置。
【請求項13】
前記車両制御モジュールは、前記車両の走行速度が低速走行モードに対応する第1速度範囲であり且つ前記車両のブレーキペダル開度の減少値が第1開度値を超えると決定した場合、さらに前記車両のモーターのモーター回転数が増大するか否かを決定することに用いられ、
前記車両制御モジュールは、前記車両のモーター回転数が増大すると決定した場合、前記車両のレンジ、前記車両のモーターのモーター回転方向に基づいて前記車両がブレーキアイドルストロークニュートラル走行状態であるか否かを決定することに用いられる請求項8
~12のいずれか一項に記載のトルク補償装置。
【国際調査報告】