(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】歯車付き用量送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240126BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/20 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507325
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 GB2022050163
(87)【国際公開番号】W WO2022171976
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523034379
【氏名又は名称】シェイリー (ユーケー) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHAILY (UK) LTD
【住所又は居所原語表記】6th Floor, Amp House, Dingwall Road, Croydon Surrey CR0 2LX (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】メラー,クラウス シュミット
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE06
4C066EE14
4C066HH02
4C066HH12
4C066QQ32
4C066QQ92
(57)【要約】
用量送達装置の用量設定モードでは、用量選択部74は、ナット16を回転させ、それにより、ナット16がピストンロッド6のねじ山8に沿って第1の軸方向距離d
1だけ後方に移動する。歯車機構は、ナット16の軸方向移動を、回転することなく第2の軸方向距離d
2だけ後方に移動するコネクタ20に伝達する。装置の用量送達モードでは、用量選択部74は前方に押され、コネクタ20を駆動して、第2の軸方向距離d
2だけ前方に移動させる。歯車機構は、コネクタ20の軸方向移動をナット16に伝達し、ナット16は、ピストンロッド6を、回転させずに、第1の軸方向距離d
1だけ前方に押す。歯車機構は、ハウジング4に対して軸方向に移動することなく回転する第1の歯車28と、ナット16に対して軸方向に移動することなく回転する第2の歯車30を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(4)と、
ピストンロッドねじ山(8)を含み、前記ハウジング(4)に対して回転することなく軸方向に移動するように構成されたピストンロッド(6)と、
前記ピストンロッドねじ山(8)に係合するナット(16)と、
前記ナット(16)に対して回転方向にロックされた用量選択部(74)と、
前記ハウジング(4)に対して回転することなく軸方向に移動するように構成されたコネクタ(20,120)と、
前記ハウジング(4)に対して軸方向に移動することなく回転するように構成された第1の歯車(28,128)であって、第1の係合部によって前記コネクタ(20,120)に連結され、該第1の係合部が、第1の螺旋ねじ山(31,131)である第1の歯車(28,128)と、
前記ナット(16)に対して軸方向に移動することなく回転するように構成された第2の歯車(30,130)であって、第2の係合部によって前記コネクタ(20,120)に連結されると共に第3の係合部によって前記第1の歯車(28,128)に連結された第2の歯車(30,130)と、
を含む用量送達装置。
【請求項2】
前記第3の係合部が直線トラック(33)であり、該直線トラック(33)によって、前記第1の歯車(28)と前記第2の歯車(30)が、軸方向の相対移動は許容されているが相対回転は阻止されている請求項1に記載の用量送達装置。
【請求項3】
前記第2の係合部が第2の螺旋ねじ山(32)であり、
前記第1の螺旋ねじ山(31)と前記第2の螺旋ねじ山(32)は、巻き方向が同じであり、該第2の螺旋ねじ山(32)は、該第1の螺旋ねじ山(31)よりも小さいピッチを有する請求項2に記載の用量送達装置。
【請求項4】
前記第2の係合部が直線トラック(132)であり、該直線トラック(132)によって、前記第2の歯車(130)と前記コネクタ(120)が、軸方向の相対移動は許容されているが相対回転は阻止されている請求項1に記載の用量送達装置。
【請求項5】
前記第3の係合部が第3の螺旋ねじ山(133)であり、
前記第1の螺旋ねじ山(131)と前記第3の螺旋ねじ山(133)は、巻き方向が同じであり、該第3の螺旋ねじ山(133)は、該第1の螺旋ねじ山(131)よりも小さいピッチを有する請求項4に記載の用量送達装置。
【請求項6】
前記コネクタ(20,120)に対して軸方向に移動することなく回転するように構成された用量ダイヤルスリーブ(26)をさらに含み、該用量ダイヤルスリーブ(26)が、スリーブねじ山(27)を介して前記ハウジングに係合している請求項1~5のいずれか1項に記載の用量送達装置。
【請求項7】
前記用量選択部(74)が、前記用量ダイヤルスリーブ(26)に対して軸方向に移動可能とされており、それによって、
用量設定モードでは、前記用量選択部(74)が、前記用量ダイヤルスリーブ(26)に対して回転方向にロックされているが、前記コネクタ(20,120)から回転方向に係合を解除され、
用量送達モードでは、前記用量選択部(74)が、前記用量ダイヤルスリーブ(26)から回転方向に係合を解除される請求項6に記載の用量送達装置。
【請求項8】
前記用量選択部(74)と前記コネクタ(20,120)との間に作用するクリック機構(88,92)をさらに含み、該クリック機構(88,92)は、前記用量設定モードにおいて該用量選択部(74)が該コネクタ(20,120)に対して回転するときにクリック音を発生させると共に、前記用量送達モードにおいて該用量選択部(74)を該コネクタ(20,120)に対して回転方向にロックする請求項7に記載の用量送達装置。
【請求項9】
ハウジング(4)と、該ハウジング(4)に対して回転することなく軸方向に移動するように構成されたピストンロッド(6)とを含む用量送達装置を操作する方法であって、
用量設定モードにおいて、用量選択部(74)を前記ハウジング(4)に対して回転させ、該用量選択部(74)がナット(16)に対して回転方向にロックされていることにより、該ナット(16)が前記ピストンロッド(6)のねじ山(8)に沿って第1の軸方向距離(d
1)だけ後方向に移動することと、
前記ナット(16)の軸方向移動を、歯車機構を介して、前記ハウジング(4)に対して回転することなく軸方向に移動するように構成されたコネクタ(20,120)に伝達させることにより、該コネクタ(20,120)が、初期位置から、前記第1の軸方向距離(d
1)よりも大きい第2の軸方向距離(d
2)だけ後方向に移動することと、
を含み、
前記歯車機構が、
前記ハウジング(4)に対して軸方向に移動することなく回転する第1の歯車(28,128)であって、第1の係合部によって前記コネクタ(20,120)に連結され、該第1の係合部が、第1の螺旋ねじ山(31,131)である第1の歯車(28,128)と、
前記ナット(16)に対して軸方向に移動することなく回転する第2の歯車(30,130)であって、第2の係合部によって前記コネクタ(20,120)に連結されると共に第3の係合部によって前記第1の歯車(28,128)に連結された第2の歯車(30,130)と、
を含む、用量送達装置を操作する方法。
【請求項10】
前記用量選択部(74)が前記第2の軸方向距離(d
2)だけ移動するように、該用量選択部(74)が前記コネクタ(20,120)に連結されている請求項9に記載の用量送達装置を操作する方法。
【請求項11】
用量送達モードにおいて、
前記コネクタ(20,120)を、前記第2の軸方向距離(d
2)だけ前記初期位置まで前方向に押すことと、
前記ナット(16)および前記ピストンロッド(6)が前記第1の軸方向距離(d
1)だけ前方向に移動するように、前記歯車機構を介して前記コネクタ(20,120)の軸方向移動を伝達することと、
をさらに含む請求項9または10に記載の用量送達装置を操作する方法。
【請求項12】
用量ダイヤルスリーブ(26)が、該用量ダイヤルスリーブ(26)と前記ハウジング(4)との間の用量ダイヤルねじ山(27)に従って回転しながら、前記第2の軸方向距離(d
2)だけ移動する請求項11に記載の用量送達装置を操作する方法。
【請求項13】
前記用量設定モードでは、前記用量選択部(74)が、前記用量ダイヤルスリーブ(26)に対して回転方向にロックされており、
前記用量送達モードでは、前記用量選択部(74)が、前記用量ダイヤルスリーブ(26)から回転方向に係合を解除される請求項12に記載の用量送達装置を操作する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器ペンとも呼ばれる用量送達装置に関し、この装置は、薬剤の用量を設定した後、当該用量を薬剤カートリッジから患者に送達するための機構を提供するものである。一般に、用量は、用量選択部を所望の用量に対応する位置に動かすことによって設定され、次いで、用量選択部を第1の距離だけ押して初期位置に戻すことによって、当該用量が送達される。一般に、薬剤カートリッジは、チャンバ内に複数回分の用量の薬剤を収容しており、用量送達装置は、各用量をチャンバから排出するために前進するピストンロッドを含み、ピストンロッドは、送達される用量の体積を決定する第2の距離だけ移動する。本発明は、特に、第1の距離が第2の距離と等しくない歯車式用量送達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車式用量送達装置が知られている。カートリッジから送達される薬剤の体積は、しばしばかなり小さいので、一般的な用量を送達するために、ピストンロッドは、小さな軸方向距離だけ前進する必要がある。歯車が提供する第1の利点は、押しボタンおよび/または用量選択部が、より大きな距離を移動するように配置することができ、この距離は、一般に、ピストンロッドによって移動される距離に比例するということである。これにより、使用者は、所望の用量をより正確に設定することができる。歯車はまた、機構の改善された機械的長所に起因する第2の利点を提供する。多くの状況において、使用者がより短い距離に亘って大きな力をかけるよりも、より長い距離に亘って小さな力をかけられるようにすることで、薬剤送達がより容易になり、より制御しやすくなる。歯車機構によって生じる追加の摩擦が、この利点を上回らないことを確実にする必要がある。
【0003】
用量送達装置には、薬剤送達モードにおける用量選択部の動きが、使用者が加える圧力によって手動で駆動されるのではなく、ばねのエネルギーによって自動的に駆動されるものがある。使用者は、用量設定モードの間、用量選択部を動かすときに、ばねにエネルギーを加える。歯車の利点は、このような自動装置にも適用され、これは本発明の範囲から除外されない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1に定義されるように、固定用量注射器ペンを提供する。
【0005】
本発明の好ましいが必須でない特徴は、従属請求項において定義される。
【0006】
本明細書において、「薬剤」という用語は、測定された用量でペンによって送達されることになる任意の流体物質について述べるために使用される。「薬剤」は、一般的には、例えば、医薬または美容の目的のために、人または動物の被験体の体内に注入される生理活性物質であろう。しかしながら、本発明は、固定量の物質を分注することを目的とする他の用途にも使用することができる。
【0007】
本明細書において、「前方(front)」および「前方へ(forwards)」のような用語は、図面の下部に示されている、薬剤送達装置の針が配置された端部に向かう方向を示している。「後方(rear)」および「後方へ(backwards)」のような用語は、その反対方向を示している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に従う第1の歯車機構を概略的に示す図である。
【
図2】本発明に従う第2の歯車機構を概略的に示す図である。
【
図5】
図3の用量送達装置の一部の縦断面図である。
【
図6】
図3の用量送達装置の用量ダイヤル機構を構成する部品の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、用量送達装置の歯車機構の断面における非常に概略的な図である。特に、軸2に垂直な寸法は、スペースを挿入し、明瞭さを促進するために誇張されている。歯車機構は、軸2の実質的に一方の側のみが図示されており、他方の側は、ねじ山の巻き方向を除いて鏡像である。
【0010】
略円筒形のハウジング4は、軸2を取り囲み、歯車機構を収容している。軸2と位置合わせされたピストンロッド6は、その外面にピストンロッドねじ山8を含む。ピストンロッド6は、ハウジング4に対して固定された中央開口部10を通って回転することなく摺動するように構成されている。ピストンロッドねじ山8は、一対の対向する平面によって、または2つ以上の長手状トラック12によって中断され、それによって、ピストンロッド6に、開口部10の形状を補完し、ピストンロッド6がハウジング4に対して回転することを阻止する非円形の断面を与えている。ピストンロッド6の前端部において、開口部10を越えて歯車機構から離れた位置に、装置に取り付けられ得る図示しない薬剤カートリッジのピストンに係合するように最下部14が構成される。薬剤カートリッジの前端は、図示しない中空針によって貫通されてもよい。それによって、軸2に沿ったピストンロッド6の前方への移動は、ピストンを薬剤カートリッジに沿って前進させ、針を通じてカートリッジから測定量の薬剤を排出させる。
【0011】
ナット16は、内部ねじ山を含み、それによってピストンロッドねじ山8と係合し、ナット16が回転することによってねじ山8に沿って移動するようになっている。硬質のチューブ18は、ピストンロッド6を取り囲み、ナット16から後方に延びている。チューブ8は、ナットの動きに追従するように、ナット16に固定されている。
【0012】
略円筒形のコネクタ20は、軸2を取り囲み、ハウジング4に対して回転することなく軸方向に移動するように構成されている。ハウジング4の内壁は、1つ以上の軸方向トラック22を含んでもよく、コネクタ20は、各トラック22内を摺動する、対応する数の半径方向に突出するラグ24を含んでもよい。
【0013】
略円筒形の用量ダイヤルスリーブ26は、軸2と同心であり、ハウジング4とコネクタ20との間に半径方向に入れ子状に配置されている。用量ダイヤルスリーブ26は、コネクタ20と一緒に軸方向に移動するように拘束されるが、それらの間の相対回転は許容されるように、コネクタ20と係合している。用量ダイヤルスリーブ26は、スリーブねじ山27を介してハウジングと係合しており、ハウジング4に対して軸方向移動する時は必ず、用量ダイヤルスリーブ26が同時にスリーブねじ山27に沿って回転するようになっている。スリーブねじ山27は、ピストンロッドねじ山8と巻き方向が同じであるが、より大きなピッチを有する。
【0014】
以下、歯車機構の動作について説明する。装置の他の部分については、
図3~6に示される特定の実施形態に関連して、後段でより詳細に説明する。
【0015】
動作の用量設定モードの間、チューブ18は回転し、ナット16を、ピストンロッドねじ山8に従って、送達されるべき薬剤の用量に対応する第1の軸方向距離d
1だけ後方へ移動させる。同時に、コネクタ20は、回転することなく、第1の軸方向距離d
1よりも大きい第2の軸方向距離d
2だけ軸方向後方へ移動し、それによって、前述の歯車式用量送達装置の利点が提供される。
図1に示される実施例では、第2の軸方向距離d
2は、第1の軸方向距離d
1の2倍であるが、他の実施例では、ギア比はそれより大きくても小さくてもよい。動作の用量送達モードの間、コネクタ20は、初期位置に戻るように前方に押される。同時に、ナット16は、今度は回転することなく第1の軸方向距離d
1だけ前方に移動して、初期軸方向位置に戻るが、必ずしも初期回転位置には戻らない。このナット16の前方への移動により、ピストンロッド6が第1の軸方向距離d
1だけ前進し、それによって薬剤カートリッジからそれに比例した用量の薬剤を排出する。
【0016】
ナット16とコネクタ20との間の差動運動は、第1の歯車28と第2の歯車30とによって媒介される。第1および第2の歯車28,30は、略円筒形であると共に軸2と同心であり、チューブ18とコネクタ20との間に入れ子状に配置されている。第1の歯車28は、ハウジング4に対して、軸方向の移動は阻止されるが、回転は自由であるように、ハウジング4に連結されている。第1の歯車28は、第1の係合部としての第1の螺旋ねじ山31によってコネクタ20に連結されている。第2の歯車30は、ナット16に対して、軸方向の移動は阻止されるが、回転は自由であるように、ナット16に連結されている。第2の歯車30は、第2の係合部32によってコネクタ20に連結され、第3の係合部33によって第1の歯車に連結されている。
【0017】
図1に示された歯車機構において、第1および第2の歯車28,30の間の第3の係合部33は、直線トラックであり、2つの歯車は、軸方向の相対移動は許容されるが、相対回転は阻止されている。第2の歯車30とコネクタ20との間の第2の係合部は、第1の螺旋ねじ山31と巻き方向が同じであるが第1の螺旋ねじ山31よりもピッチが小さい第2の螺旋ねじ山32である。第1および第2の螺旋ねじ山31,32の巻き方向は、ピストンロッドねじ山8およびスリーブねじ山27の巻き方向と同じでもよいし、反対でもよい。
【0018】
装置の動作中、第1の歯車28は軸方向の移動を阻止され、第2の歯車30はナット16と一緒に第1の軸方向距離d1だけ軸方向に移動し、コネクタ20は第2の軸方向距離d2だけ軸方向に移動する。コネクタ20は、第1の螺旋ねじ山31を介して第1の歯車28に係合していることから、コネクタ20が第1の歯車28に対して軸方向に移動すると、第1の歯車28が、第1の螺旋ねじ山31のピッチによって決定される速度で回転する。第1および第2の歯車28,30は直線トラック33によって連結されていることから、第2の歯車30は第1の歯車28と共回転し、直線トラック33は第1および第2の歯車28,30の間の相対的な軸方向移動に対応する。コネクタ20に対して、第2の歯車30は、第1の歯車28によって決定される速度で回転し、d1とd2との差によって決定される速度で軸方向に移動する。したがって、第2の螺旋ねじ山32のピッチは、これらの同時に起こる相対的な軸方向移動および回転移動に対応できるものでなければならない。実際には、これらの値は下式によって関係付けられる。
【0019】
【0020】
ギア比Rはまた、スリーブねじ山27のピッチとピストンロッドねじ山8のピッチの比に等しい。
【0021】
第1および第2の螺旋ねじ山31,32のピッチp1およびp2は、この比であれば、任意の適切な値を有するように選択することができる。特に、両ねじ山は、用量送達モード中にナット16の軸方向移動を駆動するために歯車機構に力が加えられる際、摩擦抵抗が小さくなるように、高いピッチを有していてもよい。
【0022】
図2は、
図1のものとは別の歯車機構を示している。2つの機構の大部分は同じであるため、同じ符号が付与され、それらの説明はここでは繰り返さない。特に、コネクタ120とハウジング4との間の連結、第1の歯車128とハウジング4との間の連結、および第2の歯車130とナット16との間の連結は、
図1のものと同じである。相違点は、第1の歯車128、第2の歯車130およびコネクタ120の間の第1、第2および第3の係合部131,132,133に関するものである。したがって、これらには異なる符号が付与され、以下で説明する。
【0023】
第1の歯車128は、
図1の機構と同様に、第1の係合部としての第1の螺旋ねじ山131によってコネクタ120に連結されている。しかし、
図2の機構では、第2の係合部132は直線トラックであり、第2の歯車130とコネクタ120は、軸方向の相対移動は許容されるが、相対回転は阻止されている。一方、第3の係合部は、第1および第2の歯車128,130の間の第3の螺旋ねじ山133である。(
図2の機構では「第2の螺旋ねじ山」は存在しない。)第3の螺旋ねじ山133は、第1の螺旋ねじ山131と巻き方向が同じであるが、第1の螺旋ねじ山131よりもピッチが小さい。
【0024】
図2の装置の動作中、第1の歯車128は軸方向の移動を阻止され、第2の歯車130はナット16と一緒に第1の軸方向距離d
1だけ軸方向に移動し、コネクタ120は第2の軸方向距離d
2だけ軸方向に移動する。コネクタ120は、第1の螺旋ねじ山131を介して第1の歯車128に係合していることから、コネクタ120が第1の歯車128に対して軸方向に移動すると、第1の歯車128が、第1の螺旋ねじ山131のピッチによって決定される速度で回転する。コネクタ120と第2の歯車130は直線トラック132によって連結されていることから、第2の歯車130はコネクタ120と共回転し、直線トラック132はコネクタ120と第2の歯車130の間の相対的な軸方向移動に対応する。第1の歯車128に対して、第2の歯車130は、コネクタ120によって決定される速度で回転し、ナット16の移動によって決定される速度で軸方向に移動する。したがって、第3の螺旋ねじ山133のピッチは、これらの同時に起こる相対的な軸方向移動および回転移動に対応できるものでなければならない。実際には、これらの値は下式によって関係付けられる。
【0025】
【0026】
ギア比Rはまた、スリーブねじ山27のピッチとピストンロッドねじ山8のピッチの比に等しい。
【0027】
第1および第3の螺旋ねじ山131,133のピッチp1およびp3は、この比であれば、任意の適切な値を有するように選択することができる。
【0028】
図1において、第1の係合部31は螺旋ねじ山、第2の係合部32は螺旋ねじ山、第3の係合部33は直線トラックである。
図2においては、第1の係合部131は螺旋ねじ山、第2の係合部132は直線トラック、第3の係合部133は螺旋ねじ山である。原理的には、3つの係合部を全て螺旋ねじ山として形成することができ、それにより、それらのねじ山の相対ピッチを選択する際に別の自由度を提供することができる。しかし、そのような利点より、設計の複雑さが増すことの方が、上回ってしまう可能性がある。第1の係合部を直線トラックとして形成することはできない。それにより、第1の歯車がハウジングに軸方向と回転方向の両方においてロックされてしまうからである。いかなる装置においても、第2および第3の係合部の両方を直線トラックとして形成することはできない。それにより、コネクタ、第1の歯車および第2の歯車が全て一緒に回転方向にロックされ、コネクタとナット16との間の軸方向の差動運動に対応することができないからである。
【0029】
本発明において、2つの構成要素間の係合が、螺旋ねじ山を介して行われる場合、一般に、一方の構成要素だけが完全なねじ山を備え、他方の構成要素が相補的な1つ以上の短いねじ山部分を備えていればよい。一般に、いずれの構成要素が完全なねじ山を備え、いずれの構成要素がねじ山部分を備えるかの選択は自由であり、本発明を、図面に例示された特定の選択に限定する意図はない。同様に、2つの構成要素間の係合が、相補的なチャネル内を走行する1つ以上の突起を備える直線トラックを介して行われる場合、一般に、いずれの構成要素がトラックを備え、いずれの構成要素がチャネルを備えるかの選択は自由である。ここでも、本発明を、図面に例示された特定の選択に限定する意図はない。2つの構成要素が相対回転することなく軸方向に移動することを許容するために、チャネル内を走行する突起以外の構成が可能であることが理解されるであろう。例えば、一方の構成要素が他方の構成要素内で伸縮自在に摺動し、2つの構成要素が相補的な非円形の断面を有していてもよい。
【0030】
図3~6は、本発明に従う用量送達装置の一実施形態を示す。この実施形態は、
図1に示された種類の歯車機構を採用しており、同じ符号が使用される。
【0031】
ハウジング4の前端部には、カートリッジホルダ40がねじ込まれている。カートリッジホルダ40は、薬剤カートリッジ42を保持し、この薬剤カートリッジ42は、軸に沿って前方に移動して薬剤カートリッジ42から薬剤を排出することができるピストン44を収容している。カートリッジホルダ40は、図示しない両頭中空針を取り付けるためのねじ山46をさらに備えている。中空針の一方の端部は薬剤カートリッジ42の隔壁を貫通することができ、他方の端部は薬剤カートリッジ42から排出された薬剤を患者の皮膚に送達することができる。
【0032】
ピストンロッド6は、ピストンロッドの前端部の最下部14がピストン44と係合して、ピストン44を薬剤カートリッジ42に沿って押すように、装置の軸2に沿って位置している。ピストンロッド6は、外部ねじ山8を含む。この外部ねじ山8は、対向する一対の平面によって中断されており、それによって、ピストンロッド6が非円形の断面を有している。
【0033】
ピストンロッドガイド48は、少なくともカートリッジホルダ40が取り付けられている間、ピストンロッドガイド48がハウジング4に対して移動できないように、ハウジング4内に固定されている。ピストンロッドガイド48は、中央開口部10を規定し、ピストンロッド6が中央開口部10を通って軸2に沿って摺動可能とされている。開口部10はピストンロッド6の断面と相補的な非円形状を有し、これによりピストンロッド6がハウジング4に対する回転を阻止されている。
【0034】
ピストンロッド6は、ナット16の穴を通過しており、ナット16は、前方端部に内部ねじ山49を含む。内部ねじ山49は、ピストンロッド6の外部ねじ山8と係合している。硬質のチューブ18は、ナット16から後方に延び、ピストンロッド6を取り囲んでいるが、ピストンロッド6と係合はしていない。チューブ18は、ナット16に対して軸方向に移動可能であるが回転はできないように、ナット16に連結されている。したがって、チューブ18を回転させると、ナット16も必ず回転する。図示された実施形態では、チューブ18上の軸方向リブ50が、ナット16の内側の、図面では見えていない軸方向スロットと係合する。あるいは、リブをナットに設けると共に、スロットをチューブに設けてもよい。
【0035】
用量ダイヤルスリーブ26は、ハウジング4の内部に入れ子状に配置されており、その外面に螺旋状のスリーブねじ山27を含む。ハウジング4の内壁に設けられた1つ以上のねじ山部分51は、スリーブねじ山27と係合し、それにより、用量ダイヤルスリーブ26がスリーブねじ山27の螺旋経路に従ってハウジング4に対して移動できるようになっている。窓52がハウジング4に設けられ、用量ダイヤルスリーブ26が窓52を通過して回転するときに用量ダイヤルスリーブ26上の図示しない印を見ることができ、それによって設定された用量を使用者に示すことができるようになっている。用量ダイヤルスリーブ26は、その後方端部の外周に並んで配置された歯54を含む。用量ダイヤルスリーブ26は、さらに、その後方端部の近くに内部フランジ56を含む。
【0036】
略円筒形のコネクタ20は、用量ダイヤルスリーブ26の内部に同心状に配置されている。コネクタ20は、その前方端部において、外部フランジ58を含み、この外部フランジ58から多数のラグ24が半径方向外側に突出している。図示された実施形態では、ラグ24の数は4つであるが、他の数も可能である。ラグ24は、ハウジングの内部に設けられた、軸方向に整列した対応する数の直線トラック22と係合し、それによって、コネクタ20はハウジング4に対して軸方向に摺動可能であるが、回転することはできない。コネクタ20は、その後方端部に向かって、段差62を介して直径が小さくされており、縮径された首部60を形成している。首部60は、チューブ18の外部表面と摺動係合している。コネクタ20の段差62は、用量ダイヤルスリーブ26の内部フランジ56の前面と軸方向に係合している。後述する第1のラチェット部93は、コネクタ20の首部60に固定され、用量ダイヤルスリーブ26の内部フランジ56の後面と軸方向に係合している。これにより、用量ダイヤルスリーブ26は、コネクタ20と一緒に軸方向に移動するように拘束されるが、それらの間の相対回転は依然として可能である。
【0037】
第1の歯車28は、コネクタ20の内側で、ナット16の外側に同心的な入れ子状に配置されている。アンカー片64は、ハウジング4の内部で軸方向または回転方向の移動に対して固定されると共に、第1の歯車28の前方端部と係合しており、それによって第1の歯車28が軸方向への移動を阻止されているが依然として軸2周りを自由に回転するようになっている。第1の歯車28の前方端部は多数のスロット66によって分割されて、アンカー片64とスナップ嵌合で係合するのに十分な可撓性を有する部分を形成している。第1の歯車28は、第1の歯車28の外側に設けられた螺旋ねじ山31を含む第1のねじ山係合部によってコネクタ20に連結されており、コネクタ20の内側に設けられたねじ山部分68によって係合されている。コネクタ20は軸方向にのみ移動可能であり、第1の歯車28は回転方向にのみ移動可能であることから、これらの2つの移動の相対速度は、第1の螺旋ねじ山31のピッチp1によって決定されることが想起されるであろう。
【0038】
第2の歯車30は、ナット16と実質的に同一の直径を有する。第2の歯車30は、軸2周りで同心状に、第1の歯車28とチューブ18との間に入れ子状に配置されており、ナット16の後方に軸方向にオフセットされている。ナット16と第2の歯車30は、ナット16が後方に移動すると、第2の歯車30も後方に駆動されるが、第2の歯車30はナット16に対して依然として自由に回転できるように、互いに当接している。第2の歯車30は、コネクタ20の内側に設けられた螺旋ねじ山32と係合する、第2の歯車30の外側に設けられた短いねじ山部分70を含む第2の係合部によって、コネクタ20に連結されている。第2の歯車30は、第1の歯車28の内側に設けられた内方突起72(
図5参照)と係合する、第2の歯車30の外側に設けられた軸方向の直線トラック33を含む第3の係合部によって、第1の歯車28に連結されている。これにより、第1および第2の歯車28,30は、軸方向に相対移動は可能であるが、相対回転は不可能とされている。ナット16、第1の歯車28、第2の歯車30およびコネクタ20の間の関係は、
図1に関連して前述した歯車機構と同じであることが理解されるであろう。
【0039】
用量選択部74は、装置の後方端部に設けられている。用量選択部74のスカート75は、外面に把持部76が設けられており、それによって、使用者は用量選択部74を回転させて所望の用量を設定することができる。用量選択部74は、チューブ18の後方端部に取り付けられており、用量選択部74がチューブ18に対して軸方向に短い距離を摺動可能であるが、相対回転は不可能とされている。図示された実施形態では、用量選択部74の内部スリーブ78は、チューブ18の軸方向スロット80と係合する軸方向リブ79を含む。あるいは、リブをチューブに設けると共に、スロットを用量選択部に設けてもよい。
【0040】
用量選択部74は、前方に延びて終端にフック84を有するアーム82によって装置上に保持されており、フック84は用量ダイヤルスリーブ26の後端の対応するフック86の後ろにスナップ嵌合される。圧縮ばね88は、用量選択部74を、各フック84,86の間の係合によって停止するまで後方に付勢する。用量選択部74のスカート75は、その前方端部の内周に並んで配置された歯90を含む。これらの歯90は、用量ダイヤルスリーブ26の外側の歯54と相補的であり、これにより、用量選択部74と用量ダイヤルスリーブ76の各フック84,86が係合するとき、歯90,54の各組も互いに係合して用量選択部74と用量ダイヤルスリーブ76との間の相対回転を阻止するようになっている。
【0041】
圧縮ばね88の前方端部は、第1、第2および第3のラチェット部93,94,95を含むクリック機構としての二方向回転ラチェット組立体92を支えている。第1のラチェット部93は、コネクタ20の首部60に回転的に固定され、第3のラチェット部95は、用量選択部74に回転的に固定される。第2のラチェット部94は、第1および第3ラチェット部93,95の間の回転カラーとして形成されている。ラチェット歯の第1の組は、第1および第2のラチェット部93,94の間の第1の角度方向への相対回転を許容するが、第2の反対角度方向への相対回転を許容しない。ラチェット歯の第2の組は、第2および第3のラチェット部94,95の間の第2の角度方向への相対回転を許容するが、第1の角度方向への相対回転を許容しない。ラチェット部93,94,95は、圧縮ばね88によって軸方向に圧縮されて維持されていることから、各組のそれぞれのラチェット歯が互いに通過するためには、クリック音と共に反発する前に、まず圧縮ばね88の力に逆らって軸方向に移動しなければならない。ラチェット歯の角度間隔は、各クリック音が設定された用量に追加された、または設定された用量から除去された単位に相当するように選択され得る。
【0042】
次に、図示された装置の操作を説明する。
【0043】
図5は、新しい用量(必ずしも最初の用量ではない)が設定される前の、初期構成における装置を示す。ナット16、コネクタ20、第1の歯車28、第2の歯車30および用量ダイヤルスリーブ26は全て、可能な限り前方に位置しており、用量ダイヤルスリーブ26は、窓52を通してゼロの設定用量を表示している。操作の用量設定モードでは、圧縮ばね88は、用量選択部74を、各フック84,86の係合によってそれ以上の移動が阻止されるまで、用量ダイヤルスリーブ26に対して後方に押すように伸長されている。これにより、各歯54,90も係合して、用量選択部74を用量ダイヤルスリーブに対して回転方向にロックする。用量選択部74が後方に変位していることから、チューブ18はある程度軸方向に移動する自由を有するが、用量選択部74およびナット16に対して回転方向にロックされたままである。
【0044】
使用者が用量選択部74を第1の角度方向に回転させて設定用量を増加させると、用量選択部74に対して回転方向にロックされている用量ダイヤルスリーブ26は、同じ角度だけ回転し、設定された新しい用量を示すために窓52を通じて一連の印を表示する。用量ダイヤルスリーブ26は、同時にスリーブねじ山27に従って、ハウジングに対してスリーブねじ山27のピッチによって決定される軸方向距離(「第2の軸方向距離」d2)だけ後方に移動する。前述したように、コネクタ20は、用量ダイヤルスリーブ26と一緒に軸方向に移動するように拘束されている。圧縮ばね88の力の下で、用量選択部74のフック84は、用量ダイヤルスリーブ26のフック86との係合を維持していることから、用量選択部74も用量ダイヤルスリーブ26の移動に追従して同じ軸方向距離d2だけ移動する。一方、第3のラチェット部95は、用量選択部74と一緒に回転する。第2のラチェット部94は、第1のラチェット部93に対してこの方向に回転することができず、その結果、コネクタ20に、ひいてはハウジングに対して回転方向にロックされたままである。したがって、第3のラチェット部95は、第2のラチェット部94上をカチッと越えて、使用者に、設定されている用量を可聴音および触覚でさらにフィードバックする。
【0045】
使用者が用量選択部74を回しすぎて、設定された用量を減らしたい場合、単に用量選択部74を反対の角度方向に回せばよく、用量ダイヤルスリーブ26は、スリーブねじ山27に従ってハウジング4内にねじ戻され、窓52を通じて新しい、減少した用量を表示する。用量選択部74がこの第2の角度方向に回されると、第2および第3のラチェット部94,95が用量選択部74と一緒に回転すると共に、第2のラチェット部94が回転しない第1のラチェット部93上をカチッと越えて、設定用量の変化を可聴音および触覚でフィードバックする。
【0046】
用量選択部74は硬質のチューブ18に対して回転方向にロックされており、この硬質のチューブ18はナット16に対して回転方向にロックされていることから、用量選択部74がいずれかの方向へ回転すると、ナット16も同じ角度だけ回転する。ナット16は、ピストンロッドねじ山8に沿って軸方向距離d1だけ移動する。この軸方向距離d1は、ピストンロッドねじ山8のピッチによって決定され、用量ダイヤルスリーブ26および用量選択部74が移動する軸方向距離d2よりも小さい。軸方向の差動運動は、チューブ18がナット16および/または用量選択部74に対して軸方向に摺動することによって調整される。
【0047】
ナット16の前方または後方への軸方向移動は、第2の歯車30に伝達されるが、回転移動は伝達されない。これにより、
図1に関連して前述した歯車機構が作動し、軸方向距離d
1だけ移動するナット16および第2の歯車30の軸方向移動と、より大きな軸方向距離d
2だけ移動するコネクタ20の移動との差を、第1および第2の歯車28,30の共回転および相対的な軸方向移動によって調整する。
【0048】
所望の用量が設定されたら、使用者は用量選択部74を前方に押して設定された用量を注入する。用量選択部74は、まず、圧縮ばね88の力に逆らって用量ダイヤルスリーブ26に対して軸方向に移動し、各歯90,54の係合を解除して用量選択部74と用量ダイヤルスリーブ26が互いに相対回転できるようにする。用量選択部74の用量ダイヤルスリーブ26に対する軸方向移動は、用量選択部74の内部スリーブ78の端部がラチェット組立体92と当接するまで、または圧縮ばね88が完全に圧縮されるまで継続される。したがって、各ラチェット部93,94,95は、軸方向への移動を阻止されることから、互いをカチッと越えることができず、用量選択部74は、コネクタ20に対する相対回転を阻止される。装置は、現在、用量送達モードである。
【0049】
用量選択部74に加えられた更なる力は、ラチェット組立体92を介して(回転することなく)コネクタ20の首部60に直接伝達され、コネクタ20を軸方向前方に摺動させて初期位置に戻す。歯車機構は、今度は逆に作動し、それによって、距離d2だけ移動するコネクタ20の前方への軸方向移動は、第1の歯車28を介して、距離d1だけ移動する第2の歯車30の前方への軸方向移動に変換される。第2の歯車30は、ナット16を同じ距離だけ前方に押して軸方向の初期位置に戻す。ピストンロッドねじ山8は、自動ロック式であってもよく、それによって、ナット16に軸方向の力を加えても、ねじ山8に沿って回転しないようにできる。いずれにしても、ナット16は、この用量送達モードでは回転していない用量選択部74に対して、チューブ18を介して回転方向にロックされたままである。したがって、ナット16は回転することなく前方に移動し、ナット16はまた、ピストンロッド6を駆動し、ピストンロッド6は、設定用量に比例する軸方向距離d1だけ、回転することなく前方へ移動する。
【0050】
用量選択部74に加えられた軸方向の力はまた、第1のラチェット部93を介して用量ダイヤルスリーブ26の内部フランジ56に伝達される。これにより、用量ダイヤルスリーブ26が駆動されて前方に移動する。この前方への移動は、スリーブねじ山27の回転停止によって規定される初期位置に戻るまで、用量ダイヤルスリーブ26がスリーブねじ山27に従って同時に回転することによって可能である。
【0051】
用量が送達され、ナット16、コネクタ20および用量ダイヤルスリーブ26が軸方向の初期位置に戻ると、用量選択部74への圧力が解放され得る。次いで、圧縮ばね88は、用量選択部74を
図5に示す初期位置に戻す。装置は、薬剤カートリッジ42内の薬剤の供給がなくなるまで、さらなる用量を設定し送達するために使用され得る。
【0052】
上述の装置は、本発明から逸脱することなく、様々な方法で変更可能である。例えば、図示された二方向ラチェット92の代わりに、代替のクリック機構は、対称三角形の歯の2つの互いに向かい合ったリングを含んでもよい。2つのリングは、用量設定モード中に用量選択部74がいずれかの方向に回転するときに、圧縮ばね88の力に逆らって移動して互いをカチッと越えることができる。用量送達モードの間、圧縮ばね88は圧縮され、歯は互いに締め付けられて、用量選択部74とコネクタ20との間の相対回転を防止する。
【0053】
薬剤カートリッジ42内に残存する薬剤の量よりも多い用量が設定されることを防止するための手段が提供されてもよい。例えば、ピストンロッド6に頭部を設けて、ピストンロッドの頭部とナットのねじ山49の初期位置との間の軸方向距離が、残存する薬剤の尺度となるようにしてもよい。そして、残存する薬剤の量がゼロに近づくと、ピストンロッドの頭部とナットのねじ山49の初期位置との間の軸方向距離もゼロに近づくことになる。その次の用量設定モードの間、当該頭部により、ナット16が、残存する薬剤の量よりも多い用量が設定されるほどに大きく後退することが防止される。
【0054】
装置が、空の薬剤カートリッジ42を満液の薬剤カートリッジと交換できるように、再使用可能であることが意図されている場合、ピストンロッド6を容易に初期位置に戻すためのリセット機構が設けられていてもよい。例えば、リセット機構により、カートリッジホルダ40を取り外したときにピストンロッドガイド48がハウジング4から回転的に離脱可能となっていてもよい。これにより、ピストンロッド6をナット16に対して回転させ、それによってピストンロッド6をピストンロッドねじ山8に沿ってねじ戻し、交換カートリッジからの最初の用量を送達する前に所定の位置に戻すことができる。
【国際調査報告】