(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】痛みに対するオピオイド鎮痛薬と抗てんかん薬のコーティングされた安定な固体医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/135 20060101AFI20240126BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240126BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240126BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20240126BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240126BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240126BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240126BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61K31/135
A61P25/04
A61P29/02
A61K31/197
A61P43/00 121
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/32
A61K47/34
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532743
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 MX2020050050
(87)【国際公開番号】W WO2022119430
(87)【国際公開日】2022-06-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523074113
【氏名又は名称】ラボラトリオス シラネス、エセ.ア.デ セ.べ.
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】セシリア ジャネット ムニョス マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ アレジャンドロ ゴンザレス カヌダス
(72)【発明者】
【氏名】パオラ ヤズミン オレルビデス ルビオ
(72)【発明者】
【氏名】シクスト セラフィン エスピノザ レオン
(72)【発明者】
【氏名】エルネスト クアフテンコス エスコバル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD26
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD30
4C076DD38
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4C076EE06
4C076EE16
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4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206FA44
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA08
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、神経傷害性疼痛の治療のための、トラマドールおよびプレガバリン、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。一方または両方の化合物の用量により安定性が向上し、投与される組成物のバイオアベイラビリティ、溶解性が維持される。この組成物は、これらの技術における難題とされる両方の薬物の湿気や光に対する敏感さを克服し、両方の薬物に影響を与えることなく、光保護コーティングまた水を含まないプロセスにより、吸収力に影響がない調剤媒体で作られている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50mg~150mgのトラマドールまたはその薬学的に許容される塩と、50mg~150mgのプレガバリンとまたはその薬学的に許容される塩との組み合わせと、
溶解性およびバイオアベイラビリティを変えることなく安定性を向上させる光保護コーティングシステムと、
少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、神経障害性疼痛および/または急性神経障害性疼痛である疼痛に対する、コーティングされて安定な固体医薬組成物。
【請求項2】
トラマドールまたはその薬学的に許容される塩の濃度が好ましくは50mg~150mgであり、プレガバリンまたはその薬学的に許容される塩の濃度が好ましくは75mg~150mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容される前記賦形剤が、一つ以上の希釈剤、一つ以上の崩壊剤、一つ以上の潤滑剤また一つ以上の吸収剤から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される希釈剤が、微結晶セルロース、第二リン酸カルシウムなどのリン酸誘導体、アルファ化デンプン、コーンスターチなどのデンプン誘導体、ならびに、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、スクロール、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記希釈剤が好ましくは5~90重量%である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
崩壊剤が、クロスカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロースなどのセルロース誘導体、クロスポビドンなどのポビドン、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムおよびコーンスターチなどのデンプンから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記崩壊剤が、0.5重量%~15重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%で含まれている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
潤滑剤が、ステアリンマグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、モノステアリン酸、フマル酸ステアリル、タルクまたはラウリウム硫酸マグネシウムなどの硫酸化誘導体から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記潤滑剤が、0.25重量%~10重量%、好ましくは0.8重量%~1重量%で含まれている、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
吸収剤が、アルミ誘導体(水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、リン酸アンモニウム)、粘土もしくは土類(アタパルジャイト、ベントナイト、ヘクトライト、カオリン、ペクチン)、シリカ誘導体(ケイ酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)、セルロース誘導体(微結晶セルロース、セルロース)、または、マグネシウム誘導体(炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記吸収剤が、0.5重量%~90重量%、好ましくは1重量%~1.5重量%で含まれている、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
コーティングシステムが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースから選択されるセルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどのポリビニル誘導体、ポリエチレングリコール全てのKグレードのポビドン誘導体は、およびそれらの誘導体から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項13】
コーティングシステムの濃度が、0.5重量%~6重量%、好ましくは2.5重量%~3.5重量%である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
固体医薬組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
錠剤、ピル、カプレット、顆粒、トローチ、またはカプセルの形態である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
好ましくは錠剤またはピルの形態である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
好ましくはカプレット状で溝が形成されている、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
錠剤の形状が好ましくは両凸錠である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
疼痛の治療に有用な医薬品の製造のための、請求項1から18のいずれか一項に記載されている医薬組成物の使用。
【請求項20】
疼痛が神経障害性疼痛である、請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
神経障害性疼痛が急性神経障害性疼痛である、請求項20に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛を治療および制御することを目的とする併用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
国際鎮痛学会(IASP)の定義によると、神経傷害性鎮痛とは、体性感覚系に影響を与える傷害や病気の直接の結果として生じる痛みである。
【0003】
急性神経障害性疼痛の患者は、治療に反応しない場合や、既存薬品に対する耐性を引き起こしてしまう可能性があることが知られている。
【0004】
IASPによると、神経傷害性鎮痛の治療には多くの有効な薬剤やガイドラインが利用可能であるにも関わらず、米国や欧米のテストでは一般的に使用されておらず、多くの症例は未治療または無治療であることが示唆されている。
【0005】
例えば、(1R,2R)-2-[(ジメチルアミノ)メチル]-1-(3-メキシトフェニル)シクロヘキサ-1-ノールと命名されている、式Iで表されるトラマドールは、合成コデイン類似体であり、オピオイドアゴニスト特性を有し、モノアミン作動性脊髄痛抑制を活性化する中枢作用鎮痛剤であり、急性神経傷害性疼痛の治療に一般的に使用されている。
【化1】
【0006】
この薬剤は経口、直陽、静脈内や筋肉内投与が可能である。中等度から重度の術後の痛みのある患者では、トラマドールの静脈内または筋肉内投与は、一般にペチジン(メぺリジン)と同等の効力があり、ナルブフィンの5分の1の効力であることが示されている。トラマドールは様々な動物のモデル並びに実験的に痛みを誘発された健康なボランティアにおいて鎮痛活性を示しており、経口トラマドールも同様の鎮痛活性を示す(非特許文献1)。
【0007】
トラマドールの投与による一般的な副作用には、便秘、吐き気、嘔吐、腹痛、めまい、眠気、倦怠感、頭痛などがある。重篤な副作用としては発作、蕁麻疹、水疱、嚥下困難、目、顔、喉、舌、唇、手、足、足首の腫れなどが起きる可能性があり、その他にも心拍数の変化もみられる。またトラマドールを長期間使用すると中毒を引き起こす可能性がある。高用量のトラマドールは副作用の増加を引き起こす可能性が高いことが知られている。またトラマドールの意図的および偶発的な過剰摂取は、呼吸停止や急性肝不全を引き起こしやすくなる可能性があり、死亡例も何件か報告されている。ただしこれらの実例は、肝臓損傷は呼吸停止に続発するショック、低酸素症、また虚血から引き起こされた可能性がある。トラマドールの過剰摂取による肝損傷は、高アンモニア血症、乳酸アシドーシス、脂肪肝とも関連していて、直接的なミトコンドリア損傷が示唆されている(非特許文献2)。
【0008】
一方、(3S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキ酸としても知られる、式IIで表されるプレガバリンがある。これは神経調節薬のグループに属する薬剤であり、以前の薬剤よりも優れた薬物動態プロファイルを有する。これはGABAの類似体でもあるが、すべてのGABA作動性作用を発揮するわけではない。プレガバリンは、ガバペンチンよりもより良い親和性を持つため、中枢神経系の電位依存性カルシウムチャネルのアルファ-2-デルタタンパク質サブユニットに結合する能力により鎮痛効果も有する(非特許文献3)。
【化2】
【0009】
プレガバリンには、疲労、目まい、頭痛、口喝、吐き気、嘔吐、便秘、膨満感、ろれつが回らない、鬱、平衡感覚の喪失、筋肉のけいれん、脱力感などの副作用を起こす可能性がある。これらの中には、かすみ目や複視、蕁麻疹、水疱、顔の腫れ、腕、手、足の腫れ、息切れ、筋肉痛、胸痛など重篤なものもある。高用量のプレガバリンの使用によって引き起こされる副作用には、めまい、傾眠、末梢浮腫、口喝、頭痛、錯乱、うつ病、視覚障害などがある。
【0010】
最も一般的な副作用や、高用量トラマドールまたはプレガバリンによって引き起こされる副作用を回避するため、用量を増やさず鎮痛効果も得られる併用薬が開発されている。例えば特許文献1には、疼痛治療のための組成物を開示し、この組成物は薬学的に許容される鎮痛剤また鎮痛剤の中毒性の副作用を低減また阻害できるようガンマビニルGABAのようなGABA作動薬などを含んでいる。上記文献には、鎮痛剤とGABA剤との組み合わせの相乗効果については記載も説明もされていない。最近では、特許文献2が、疼痛治療における体内吸収を改善するために、オピオイドとGABA類似体を異なる医薬層で徐放性配合することについて言及している。
【0011】
特許文献3には、鎮痛剤(トラマドール)と抗けいれん剤(ガバペンチン)をそれぞれ3~8.3%および16~83%の濃度で組み合わせてなる鎮痛管理組成物が記載されている。ガバペンチンはゆっくりと吸収されるため、飽和なピークを持つ非線形の溶解プロファイルであり、急速に血液に吸収されるプレガバリンとは異なる。
【0012】
その他の組み合わせの例としては、特許文献4に、低濃度のトラマドール、プレガバリンおよびデキストロメトルファンを含有するゼラチンカプセル中の組成物が記載されている。しかしながら、この組成物の相乗効果に関しては記載も示唆もされていない。同様に、特許文献5には、トラマドールとガバペンチンまたはプレガバリンとの併用に関して記載されており、後者の濃度は15~30mgとされている。この組み合わせは相乗効果があるとされているが、そのような相乗効果の証拠は提示されていない。特許文献6にはγ-アミノ酪酸(Gaba)の類似体とオピオイドタイプ鎮痛薬の組み合わせが記載されており、前者はプレガバリン、後者はトラマドールである。しかしながら、当該出願は、安定性の課題を克服し、両化合物の生物学的利用能および溶解に影響を与えることなく両薬剤を併用する方法を主張も記載もしていない。また特許文献7は塩酸トラマドールとプレガバリンを1:1.5および1:2.5w/w比で含有し、薬学的に許容される賦形剤を含む相乗的な医薬組み合わせを記載しており、前記の相乗的な組み合わせは経口剤または非経口剤の形態を有する。また本発明は神経傷害性疼痛の治療方法、その中でもとりわけ中枢型また末梢型であり得る神経傷害性鎮痛の治療において使用する相乗的な医薬の組み合わせに関する。しかしながら、この文献は、安定性、品質および有効性のパラメーターに影響を与えることなく有効成分を安定した方法で組み合わせる薬理学的問題には触れていない。
【0013】
一方、「鎮痛の急性モデルにおけるプレガバリン抗侵害受容とトラマドールとの相互作用」と呼ばれる出版物では、プレガバリンとトラマドールの抗侵害受容研究が紹介されており、両薬剤には同様の抗侵害受容があるが、これらを併用すると超相加的な相互作用が生じると結論付けられている。
【0014】
非特許文献4では、二重盲検法でトラマドールとデュロキセチン(用量30mg/75mg)、またはトラマドールとプレガバリン(用量30mg/75mg)の併用を開始用量として、プラセボとトラマドールの1日初回投与量100mgの使用との比較が行われている。各薬剤は別々に投与された。このような鎮痛治療薬に関連する製剤の開発には他にも問題が有る。特許文献8には、湿度などの外部要因の存在によるプレガバリン製剤の問題を指摘されている。この問題はコロイド状二酸化ケイ素を大量に添加することで解決される。この特許においては、錠剤の製剤化には多くのステップが必要であることから、好ましい製剤形態はカプセルであるとされている。
【0015】
しかしながらこの特許は、トラマドールなどの第2の薬剤の製剤化や、溶解、バイオアベイラビリティ、安定性に影響しないカプセルのサイズが限られているため高濃度の薬物を投与する問題を解決する方法については指摘も示唆もされていない。特許文献9は、糖類、乳糖を含まず、より多くのアミノ酸を含まない組成物についてクレームしており、水の存在下で処方される。特別なコーティングシステムなどは言及されておらず、放出に影響を与える可能性のある光、湿度、温度など外部要因から守られていないため、保管中に様々問題が発生する可能性がある。特許文献10は、特別なコーティングシステムを備えた徐放性プレガバリン組成物をクレームしている。特許文献11にも、薬物の放出を遅らせることが出来るコーティングまたゲル化成分の添加についても言及されている。さらに特許文献12は、特続放出を提供する3つのサプリメントのコーティングシステムの保護を目指している。
【0016】
これらの特許文献は薬物の放出に影響を与える様々なコーティングシステムを用いているが、薬物の安定性、溶解性、バイオアベイラビリティに影響を与える薬物の感覚受容特性は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2002/091990号
【特許文献2】メキシコ特許出願MX/a/2013/000024号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/052999号
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0189354号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/0313892号明細書
【特許文献6】メキシコ特許出願公開第2017016720号明細書
【特許文献7】国際公開第2020/044140号
【特許文献8】欧州特許出願公開第2343055号明細書
【特許文献9】国際公開第2008/128775号
【特許文献10】オーストラリア特許出願公開第2017300185号明細書
【特許文献11】メキシコ特許第276428号明細書
【特許文献12】国際公開第2006/078811号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Lee,Rhoda;McTavish,Donna;Sorkin,Eugene;Tramadol; A Preliminary Review of its Pharmacodynamic and Pharmacokinetic Properties, and Therapeutic Potential in Acute and Chronic Pain States,1993年
【非特許文献2】Liver Tox Clinical and Research information of Drug-Induce Livered Injury, National Institutes of Health,20212年12月5日
【非特許文献3】Gonzalez Escalada,R.L; 末梢神経傷害性疼痛の治療におけるプレガバリン、スペイン鎮痛学会誌、2005年
【非特許文献4】Efficacy, Safety, Tolerability and Pharmacokinetics of Concomitant Administration of Tramadol With Duloxetine or Pregabalin: a Randomized Controlled Flexible-dose Study in Patients With Neuropathic Pain.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
また最新技術では、痛みの治療と管理のために、低用量を維持することに加えて、相乗効果を達成し、バイオアベイラビリティ、溶解性、安定性の改善と同時に患者に投与した際の副作用を軽減する、両薬物の組み合わせを見出すという問題は解決されていない。このように解決策や代替手段が不足しているため、治療効果が表れるまでに時間がかかってしまったり、より高い用量が必要とされる。またトラマドールとプレガバリンの高用量配合による相乗効果と副作用の増加の問題に加え、光と湿度に敏感な2つの薬剤を組み合わせる技術的問題も存在する。
【0020】
したがって本発明は、鎮痛治療および痛みのコントロールの分野において、溶解性とバイオアベイラビリティを維持する相乗効果をもたらす、安定した即放性の組み合わせ医薬組成物を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、トラマドールとプレガバリン、またはその薬学的に許容される塩を含む、神経傷害性疼痛、好ましくは急性神経傷害性疼痛のための医薬組成物に関する。鎮痛効果、および、一方または両方の化合物の用量の減少により有害事象の低減を可能とし、安定性を向上し、投与される組成物の溶解性およびバイオアベイラビリティが維持される。
【0022】
本発明の一態様は、塩酸トラマドールを50~150mg、プレガバリンを50~150mg、好ましくはそれぞれ50~100mgと75mg~150mgでの単回用量組成物を含む。
【0023】
本発明の別の態様では、組成物は、錠剤、ピル、カプレット、顆粒、トローチ剤、カプセルの形態であり、好ましくは錠剤および/またはピルの形態である。
【0024】
本発明で別の態様では、より好ましく剤型は錠剤であり、必要に応じて溝が形成されたカプレットの形態である。
【0025】
薬物動態プロファイル、バイオアベイラビリティ、安定性および溶解性を改善するものとして本質的な特徴を本発明に与える組成物を構成する賦形剤も、本発明の目的である。
【0026】
本発明の別の態様は、湿気および光に敏感な2つの薬物を、錠剤の表面との接触が最小限であることで、溶媒として水を取り入れる工程を介して、これらの吸収に影響を与えない調剤媒体にし、技術的に困難だった問題を克服する、組成物の製造方法を提供し、さらにこの組成物には光保護コーティングが使用されており、両薬物放出は影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】参照薬(塩酸トラマドール50mg/プレガバリン150mg)および試験薬(塩酸トラマドール50mg/プレガバリン75mg)における、プレガバリンの溶解プロファイルの比較を示す図である。両ロットともLaboratorios Silanes S.A. de C.V.からのものである。薬剤の溶解割合の最大の差は、サンプリング時間内で2.0%それ以下である。
【
図2】参照薬(塩酸トラマドール50mg/プレガバリン150mg)および試験薬(塩酸トラマドール50mg/プレガバリン75mg)における、トラマドール溶解プロファイルの比較を示す図である。両ロットともLaboratorios Silanes S.A. de C.V.のものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る医薬組成物の一実施形態について説明する。
【0029】
定義
薬学的に許容される塩:所与の化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、所与の化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩をいう。これらの塩は、生物学的またはその他の点で望ましくないものではない(P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth (Eds.) Pharmaceutical Salts Properties, Selection, and Use (International Union of Pure and Applied Chemistry), Wiley-VCH; 2nd Revised Edition (May 16, 2011))。薬学的に許容される塩基性付加塩は、無機塩基または有機塩基から調製する事が出来る。無機塩基から誘導される塩の例は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩があげられる。有機塩基から誘導される塩としては、第一級、第二級、第三級アミン塩があげられるが、これらに限定されない。
【0030】
適切なアミンの具体例としては、イソプロピンアミン、トリメチンアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレジンアミン、グルコサミン、n-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピぺリジン、モルホリン、n-エチルピぺリジンなどがあげられる。
【0031】
薬学的に許容される酸付加塩は無機酸または有機酸から調製することが出来る。無機酸に由来する塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などがあげられる。有機酸由来の塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などがあげられる。
【0032】
例えば、硫酸から誘導され、国際公開第2009/080365号、「Pregabalin salts」に記載されている、する2つのプレガバリン塩、プレガバリンべシル酸塩とトシル塩酸が合成されている。酸アニオンは人体に対して毒性がないと仮定されている。調製されたその他の塩は、塩酸プレガバリン(国際公開第2005/041927号)とマンデル酸プレガバリ(国際公開第96/40617号)であった。
【0033】
医薬組成物:本実施形態の組成物は、薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、水和物そして多形を含む、プレガバリンおよび/またはトラマドールの薬学的に許容される形態を含む。
【0034】
神経障害性疼痛:国際疼痛学会(IASP)によると、神経障害性疼痛は、体性感覚の損傷または疾患の直接的な結果である痛みである。このタイプの痛みは、様々な神経障害、多発性神経障害、治療後の神経痛、その他の一般的な中枢性疼痛症候群、例えば脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄空洞症、癌関連神経傷害性疼痛などがある。
【0035】
賦形剤:本実施形態の医薬組成物の一部を構成する成分であり、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティングシステム、吸収剤など含まれる。
【0036】
本発明は、オピオイド鎮痛薬および抗てんかん薬/鎮痛薬の溶解性およびバイオアベイラビリティを維持しながら、相乗効果および改善された安定性を有し、疼痛を治療するための治療薬として投与可能である、安定した即時放出医薬組成物に関する。対象となる痛みは神経傷害性疼痛であり、好ましくは急性神経障害性疼痛である。
【0037】
使用されるオピオイド鎮痛薬は、トラマドールまたはその薬学的に許容される塩、例えばその塩酸塩と、抗てんかん薬/鎮痛薬であるプレガバリンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0038】
トラマドールとプレガバリンの併用は、動物モデルにおける抗侵害受容効果と、発作などのトラマドールの有害事象の減少を示唆している(2012,Fariborz;2015,Tewari)。これらの薬剤の組み合わせは、一方または両方の化合物の用量が減少するため、効果的な鎮痛と、単剤で報告されていた有害事象の減少の可能性がもたらされる(2017,Suthakaran)。
【0039】
トラマドールとプレガバリンの組み合わせは、薬物の物理化学的特性による一連の重要な技術的課題を表している。賦形剤と製造条件の適切な選択は、薬物の放出と体内での吸収速度に関連しており、医薬組成物の開発の際に重要な役割を果たしている。このようにして、この組成物は、錠剤の表面との接触が最小限に抑えられるため、溶媒として水を取り入れる工程によって、吸収に影響を与えない調剤媒体内で湿気と光に敏感な両薬剤を存在させるという技術的困難を克服している。またこの組成物は光から保護するコーティングがされているため、両薬物の放出に影響はなく、安定性が向上する。
【0040】
本実施形態は、50~150mgのトラマドールおよび50~150mgのプレガバリンという用量、好ましくは、50~100mgのトラマドールまたはその薬学的に許容される塩の一つ、および、75~150mgのプレガバリンまたはその薬学的に許容される塩の一つといった低用量で、薬学的に許容される少なくとも一つの賦形剤とともに含む、トラマドールとプレガバリンの組み合わせまたは薬学的に許容される塩を含む。
【0041】
固体医薬組成物は錠剤、単層錠剤、顆粒、カプレット、トローチ剤またはピルとして見い出すことが出来る。錠剤またはピルの形態であることが好ましい。
【0042】
この発明の最も好ましい剤型は、その投与量の正確さから「錠剤」である。カプセルとは異なって投与が容易であるため、最も広く受け入れられる剤型であり、高濃度の薬物を投与することが可能である。錠剤の場合、粉末の体積を減らすことが可能であるため、取り扱いや投与が容易になる。
【0043】
本実施形態で好ましい剤型は、溝を有するカプレット状の錠剤である。
【0044】
別の実施形態では、より好ましい剤型は両凸錠剤である。
【0045】
薬学的に許容される希釈剤の例としては、微結晶セルロースPH102などのセルロース誘導体、第二リン酸カルシウムなどリン酸誘導体、α化デンプンおよびコーンスターチなどのデンプン誘導体、ならびにマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、スクロールまたはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この発明で最も好ましい希釈剤はPH102微結晶セルロースである。希釈剤は5~90重量%の濃度であることが好ましい。
【0046】
薬学的に許容される崩壊剤としては、クロスカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロースなどのセルロース誘導体、クロスポビドンなどのポビドン誘導体、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムおよびコーンスターチなどのデンプン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤は0.5~15重量%、好ましくは0.5~3重量%で存在し得る。本実施形態で最も好ましい崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。
【0047】
薬学的に許容される潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、モノステアリン酸、フマル酸ステアリン、タルク、ラウリル硫酸マグネシウムなどの硫酸化誘導体があるが、これらに限定されない。潤滑剤は0.25~10重量%、好ましくは0.8~1重量%で含有されなければならない。本実施形態の組成物に好ましい潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0048】
別の実施形態は、錠剤の表面との接触が最小限であるため、溶媒として水を取り込む工程を介して、湿気と光に敏感な両薬剤を、吸収に影響を与えない調剤媒体中で混合するという技術的課題を克服する製造方法である。さらに組成物には光保護コーティングシステが施されているため、両薬剤の放出に影響はないのと同時に安定性を向上させている。トラマドールとプレガバリンは光と湿度に敏感な薬剤であることが知られている。このため、現在までに、これらの影響を受けることなく、この二つの薬剤を単一の製剤に組み合わせることができた薬剤は存在しなかった。我々は、水と薬剤の接触を最小限とするプロセスの開発に成功した。そのために、両薬剤の化学的完全性と錠剤の物理的完全性とを維持できる特定の賦形剤と添加剤とを用いて、コア(コーティングされていない錠剤)を得るプロセスを選択した。
【0049】
この意味で、別の実施形態では、錠剤の製造方法は、薬物の様々な物理化学的特性を制御するための単位操作、順序および実施時間の選択に基づいており、これは水と薬物の長時間の接触を回避し、同時に光に対するバリアを確保するために、適切なコーティング成分および理想の温度を選択することからなる。
【0050】
コーティングシステムは、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどのポリビニル誘導体、ポリエチレングリコール、すべてのKグレードのポビドン誘導体はおよびそれらの誘導体から選択される。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースの濃度は0.5~6重量%、最も好ましい濃度は2.5~3.5重量%である。コーティングには、アルコールベースのビヒクルを使用しないことが好ましく、好ましくはビヒクルは水である。
【0051】
別の実施形態では、コーティングシステムの固形分の濃度は19.6%を超えないことが重要で、これは固体剤型または錠剤の表面と溶媒との接触が最小限に抑えられ、最終剤型へのフィルムの添加が確実になるからである。
【0052】
さらに本実施形態の組成物は、錠剤からの残留水の吸収剤として、アルミニウム誘導体(水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)、粘土または土類(アタパルジャイト、ベントナイト、ヘクトライト、カオリン、ペクチン)、シリカ誘導体(ケイ酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、セルロース誘導体(微結晶セルロース、セルロース)、マグネシウム誘導体(炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム)を含むが、おこれらに限定されない。好ましい吸収剤は、濃度が0.5~90重量%、最も好ましくは1~1.5重量%の非晶質形態のメタケイ酸マグネシウムアルミニウムである。
【0053】
錠剤剤型、このましくはカプレットとしての本実施形態のコーティングシステムによってもたらされるさらなる利点は、溶解プロセスを妨げたり遅延させたりしないことであり、詳細は溶解試験例で説明されている。
【0054】
別の実施形態では、トラマドールとプレガバリンの併用製剤を投与した場合、医薬組成物は薬物動態学的相互作用を示さなかった。
【0055】
別の実施形態では、上述の医薬組み合わせの溶解プロファイルは、生体免除を実証するための両方の濃度間の比較が含まれる。
【実施例】
【0056】
実施例1.錠剤の製造工程
本実施形態の医薬組成物は、薬物の異なる物理化学的的特性を制御するための単位操作、順序、実施時間を選択して製造される。このプロセスは、適切なコーティング成分と理想な温度とを選択することで、水と薬物の長時間の接触を回避し、光に対するバリアも確保している。単位操作の中にはふるい、混合、圧縮がある。
【0057】
一方で、どのコーティング段階においても、コアの表面にフィルムを密着させるには温度が非常に重要である。一般にこのタイプのヒドロキシプロピルセルロースベースのシステムの場合、40℃~45℃の温度が用いられる。本実施形態では、フィルムをコアの表面に接着させ、水との接触を減らすという目的で、45~50℃の範囲のコア温度でコーティング工程を実施することが可能であった。このようにして、コーティングサスペンションも含むことでコーティング工程中の製品の安定性が維持され、方法の最後には光から保護される。トラマドールおよび/またはプレガバリンまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む本実施形態の錠剤(カプレット形態)の製造方法のいくつかの工程を、非限定的に以下に示す:
1. 45%の希釈剤、50%の吸着剤、薬剤1を3分間混合し、ふるいにかける(ふるい分け物質1)。
2. 希釈剤、残りの吸着剤、薬剤2を3分間混合し、ふるいにかける(ふるい分け物質2)。
3. ふるい分け物質1、ふるい分け物質2、崩壊剤を5分間混合する(混合物33)。
4. 潤滑剤をふるいにかけ、混合物3の粉末を3分間混合する。
5. 仕様に従って圧縮する。
6. 溶剤と防湿剤を45分混合する。
7. 仕様に従って前述のシステムでコーティングする。
【0058】
実施例2.医薬固体組成物
塩酸トラマドール50mgおよびプレガバリン75mgを含む医薬組成物は、以下の賦形剤を添加することによって調製される(表1):
【0059】
【0060】
この固体医薬組成物は、錠剤、単層錠剤、顆粒剤、カプレット、トローチ剤、ピルなどの固体剤型である。最も好ましくは、錠剤および/またはピルの形態である。より好ましくは、50mgの塩酸トラマドールおよび75mgのプレガバリンを含む医薬組成物は、両凸錠剤の医薬形態となる。
【0061】
実施例3.医薬固体組成物
50mgの塩酸トラマドールと150mgのプレガバリンを含んだ医薬組成物は、以下の賦形剤を添加することによって調製される(表2):
【0062】
【0063】
この固体医薬組成物は、錠剤、単層錠剤、顆粒剤、カプレット、トローチ剤またはピルなどの固体剤型であるが、これらに限定されない。好ましくは、錠剤またピルの形態である。
【0064】
実施例4.医薬固体組成物
100mgの塩酸トラマドールと75mgのプレガバリンを含む医薬組成物は、以下の賦形剤を添加することによって調製される(表3):
【0065】
【0066】
この固体医薬組成物は、錠剤、単層錠剤、顆粒剤、カプレット、トローチ剤、ピルが含まれるがこれらに限定されない。好ましくは錠剤またはピルの形態である。
【0067】
実施例5.安定性試験
安定性の研究は、実施体2および実施例3に記載されている医薬組成物の3つのバッチについて、現在の規制に従って実施された。40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月間後の結果を以下に示す(表4および表5):
【0068】
【0069】
【0070】
実施例6.バイオアベイラビリティ試験
プレガバリン105mg、トラマドール50mgの単回投与と、各成分を個別に投与した場合の薬物動態プロファイル(CmaxおよびAUC)を、絶食条件下で健康な男女の被験者で比較し、併用薬物の相互作用がないことを確認した。
【0071】
単回経口投与後のプレガバリンとトラマドールとの組み合わせの薬物動態パラメータCmax、AUC、Tmax,Ke、およびT1/2を特徴付けた。プレガバリン150mg/トラマドール50mgの錠剤(治療C、Laboratorios Silanes試験薬)と、各成分を個別に投与した場合とを比較した。参照薬として、プレガバリン150mgのカプセル(治療A、規制当局が示す参照薬)、またはトラマドール50mgのカプセル(治療B、規制当局が示す参照薬)を用い、絶食条件下、健康な男女の被験者で実施した。
【0072】
単回投与頻度は、製剤の単回投与後に確立された。
【0073】
研究デザインは、プレガバリン150mg/トラマドール50mgの組み合わせの経口投与と、各成分の単回投与のクロスオーバー、3x6x3、前向きかつ長期的な単回投与の組み合わせで、3つの治療、3つの期間、7日間の休薬期間(洗浄)を含む6つのシークエンスで、絶食条件下、30人の健康な被験者を対象とした。
【0074】
サンプリング時間:次のような時間で18個のサンプルを各被験者から採収した: 0.00(投与前),0.16,0.33,0.50,1.00,1.50,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,6.0,10.0,14.0,24.0および36.0時間,単回投与後の各3つの期間。
【0075】
分析方法:プレガバリンとトラマドールの血漿定量の分析方法は、Patelらによって発表された方法に基づき、一部修正して行った(J. Pharm. Biomed. 2009,49(29),354-66; Liu et. al., Eur. J. Drug Metab. Pharm.2009,34(3),185-92; Vaidya et. al., Chromatographia 2007,66(11),925-8; および Mandal et. al., Chromatographia 2008,67(8),237-43)。各期間の血液サンプルは、抗凝固薬としてクエン酸ナトリウムを含むガラス管に採取された。サンプルは沈殿により処理され、質量分析により検出を行うHPLCによって分離した。分析方法は、NOM 177-SSA1-2013で確立された検証パラメーターを満たした。
【0076】
統計分析: 評価された3つの治療法で得られた薬物動態パラメータCmax, ABC0-t,ABC0-∞に適用された統計試験の結果は、経口製剤間で薬物動態学的バイオアベイラビリティに差がないことを示している。プレガバリン錠剤とトラマドール錠剤、各成分を個別に投与された場合の比較:プレガバリンカプセルまたはトラマドールカプセルを、絶食状態の健康な被験者に投与した。
【0077】
得られた結果により、分析した3つの製剤の薬物動態学的バイオアベイラビリティの同等性について結論付けることができる。さらに得られた結果より、組み合わせて投与された製剤のバイオアベイラビリティには相互作用が存在しないと結論付けられる。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例7.溶解試験
溶解試験(インビトロ試験)は、薬剤が投与形態から放出される速度(量、時間)および程度(総量)を決定するために使用される。溶解プロファイルは、標準化された条件下で溶解した薬物を様々な時点で定量化したものである。溶解試験の重要性は次の点にある:
a) 製品開発中の新しい製剤開発のためのガイドであり、これにより、薬物放出に対する賦形剤または製造プロセスの干渉の可能性の評価が可能となる。
b) プロセス管理と品質保証:製造、配合、製造現場、工程規模の変更後の製品の継続的な品質とその最適化を確保するのに役立つ。
c) in vivoでの開発指標: バイオアベイラビリティの指標であり、in vitroパラメータとバイオアベイラビリティの結果の相関関係を確立する事が出来る。
【0081】
塩酸トラマドール/プレガバリン50/75mg錠剤、および、塩酸トラマドール/プレガバリン50/150mg錠剤の溶解プロファイルの試験を行った。
【0082】
研究におけるプレガバリンの定量は、メキシコ公式基準NOM-177-SSAA-2013の基準に基づいて、以前に検証された方法を使用して実行された。この方法では、公称濃度16.6~99.6mcg/mLの範囲で、波長210nmの紫外可視検出器に接続された高分析能液体クロマトグラフィーを使用して実施され、10,15,20,30および45分の時点でサンプルを採取した。使用した溶解媒体は0.06N塩酸溶液である。
【0083】
同様に、トラマドール塩酸塩の定量も、メキシコ公式規格NOM-177-SSAA-2013の基準に基づいて検証された。この方法では、公称濃度11.1~66.6mcg/mLの範囲で、波長270nmの紫外可視検出器に接続された高分解液体クロマトグラフィーを使用して実施され、10,15,20,25および30分の時点でサンプルを採取した。使用した溶解媒体は0.1N塩酸溶液である。
【0084】
参照薬物と試験薬物の両方のそれぞれの溶解媒体中の塩酸トラマドールとプレガバリンの割合は、最初の15分以内に85%を超えていたため、これらの結果は、評価した製品が同等であると認められることを示している(
図1と
図2)。
【0085】
評価条件下では、塩酸トラマドールとプレガバリンの両方の薬物について、溶解薬物のパーセンテージの変動係数は、最初のサンプリング時間では20%未満、その後のサンプリング時間では10%未満であった。参照薬物と試験薬物の両方の溶解媒体中の塩酸トラマドールとプレガバリンの割合は。最初の15分以内に85%を超えていた。これらの結果は、評価された製品は非常に急速に溶解するため、類似係数f2を計算する必要なく類似しているとみなせることを示している。類似係数f2の値は、塩酸トラマドールでは96.2、プレガバリンでは85.0であると報告されている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
既知の薬物と既知の濃度の相乗組成物を含む医薬品における主な問題の1つは、特に薬剤が光や湿気に非常に敏感である場合、それらが患者に投与された後にその安定性、溶解性、バイオアベイラビリティを維持することが難しいことである。この意味で、規制上の溶解パラメータおよびバイオアベイラビリティパラメータの範囲内であっても、結果は使用の下限に近いデータになる傾向が強く、これは治療効果が発現するまでに時間がかかるか、より高い用量が必要であることを意味する。
【0087】
本発明は、トラマドールのようなオピオイド鎮痛薬がプレガバリンのような抗てんかん薬/鎮痛薬と組み合わされた、即時放出型の安定な組み合わせ医薬組成物に関する。本発明の組成物および参照経口製剤の投与後の薬物動態学的バイオアベイラビリティに関して実証されるように、一度投与すると治療効果を失うことなく、組成物の溶解性とバイオアベイラビリティを維持しながら低用量で薬物の相乗効果が維持されるため、神経障害性疼痛およびまたは急性神経障害性疼痛などの疼痛の治療および制御に有用である。
【国際調査報告】