(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 24/08 20060101AFI20240126BHJP
G01N 33/92 20060101ALI20240126BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240126BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
G01N24/08 510Q
G01N33/92 Z
G01N33/92 C
G01N33/483 E
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023538850
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 FI2022050015
(87)【国際公開番号】W WO2022148911
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522490985
【氏名又は名称】ナイチンゲール ヘルス オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ウルツ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ユルクネン ヘリ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA02
2G045DA06
2G045DA35
2G045DA38
2G045DA44
2G045DA63
2G045DA64
2G045DA65
2G045DA70
2G045FA36
(57)【要約】
対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法が開示される。本方法は、対象から得られた生物学的試料において、アルブミン、糖タンパク質アセチル、総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、脂肪酸不飽和度、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸等の24の血液バイオマーカーのうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、を含んでもよく、上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。上記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又はそれである。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が精神障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生物学的試料において、前記生物学的試料の以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が精神障害を発症するリスクが高いことを示し、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルであり、
前記精神障害は、不安障害及び/又は重度ストレス障害への反応である、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生物学的試料において、複数の前記バイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が精神障害を発症するリスクが高いことを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、ドコサヘキサエン酸、総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、ω-6脂肪酸、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、飽和脂肪酸、脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記精神障害を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記精神障害が、恐怖症性不安障害(F40)、その他の不安障害(F41)、及び/又は重度ストレスへの反応(F43)を含むか、又はそれらである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記少なくとも1つのバイオマーカー又は前記複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクを使用して、前記対象が精神障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクは、少なくとも1つのさらなる尺度、例えば、前記対象の特徴に基づいて計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、ボディマス指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は精神及び/又は行動の障害の家族歴のうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの1つ又は複数のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記精神障害を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精神及び行動の障害は、生活の様々な領域に影響を与える行動及び/又は心理症状のパターンである。これらの障害は、症状を経験している患者とその家族に大きな苦痛を与える。一般的な精神障害には、例えば、不安、うつ病、双極性障害、及び統合失調症が含まれる。幸いなことに、多くの精神障害を予防し、治療するための効果的な戦略がある。このような障害を発症するリスクが高い個体を早期に特定することは、医療や社会サービスへの早期アクセスを提供し、より深刻な状態の発症を防ぐために重要である。
【0003】
様々な血液バイオマーカーは、個体が既知の生理学的状態による精神障害、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及びその他の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候等の様々な精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いかどうかを予測するのに有用なことがある。これらの障害の発症を予測するバイオマーカーは、より効果的なスクリーニングと、より適切に標的を絞った早期処置と予防をできるようにするのに役立つ。このようなバイオマーカーは、生物学的試料から、例えば、血液試料又は関連する生体液から測定されてもよい。
【発明の概要】
【0004】
対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法が開示される。本方法は、上記対象から得られた生物学的試料において、以下:
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付の図面は、実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態を図示する。
【0006】
【
図1a】24の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、バイオマーカー濃度が絶対濃度及びバイオマーカー濃度の五分位(quintiles)で分析される場合の任意の精神及び/又は行動の障害(F00-F99,T36-T50,X60-X84内の任意のICD-10診断を組み合わせたエンドポイントとして定義され、本明細書では「任意の精神及び/又は行動の障害」と呼ばれる)の将来の発症との関係を示す。結果は、UK Biobankからの約115,000人の概ね健康な個体からの血漿試料に基づく。
【
図1b】24の血液バイオマーカー濃度の最低、中、及び最高の分位数についての追跡期間中の「任意の精神及び/又は行動の障害」の累積リスクを示す。
【
図2a】24の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)6つの異なるカテゴリーの精神及び/又は行動の障害の将来の発症との関係をヒートマップの形態で示す。結果は、6つの異なる精神及び/又は行動の障害のサブグループの全てが、概ね健康なヒト由来の血漿試料の核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定された24のバイオマーカーと非常に類似した関連性を有することを実証する。
【
図2b】ICD-10サブチャプターによって定義される6つの異なるカテゴリーの精神及び/又は行動の障害とのバイオマーカーの関連性の一貫性を、「任意の精神及び/又は行動の障害」との対応するバイオマーカーの関連性の方向と比較して示す。
【
図3a】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10 3文字診断によって定義される)14の特定の精神及び/又は行動の障害の将来の発症との関係をヒートマップの形態で示す。結果は、3文字のICD-10コードによって定義される特定の精神及び/又は行動の障害は、全て、概ね健康なヒト由来の血漿試料のNMR分光法によって測定される広範なバイオマーカーパネルと非常に類似した関連性を有することを実証する。
【
図3b】特定の精神及び/又は行動の障害(3文字のICD-10による診断によって定義される)とのバイオマーカーの関連性の一貫性を、「任意の精神及び/又は行動の障害」との関連性の方向と比較して示す。
【
図4a】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)6つの異なる精神及び/又は行動の障害カテゴリーの将来の発症との関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図4b】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)6つの異なる精神及び/又は行動の障害カテゴリーの将来の発症との関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図4c】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)6つの異なる精神及び/又は行動の障害カテゴリーの将来の発症との関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図5a】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10の3桁診断によって定義される)14の異なる精神及び/又は行動の障害の将来の発症に対する関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図5b】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10の3桁診断によって定義される)14の異なる精神及び/又は行動の障害の将来の発症に対する関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図5c】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10の3桁診断によって定義される)14の異なる精神及び/又は行動の障害の将来の発症に対する関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図5d】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10の3桁診断によって定義される)14の異なる精神及び/又は行動の障害の将来の発症に対する関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図5e】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10の3桁診断によって定義される)14の異なる精神及び/又は行動の障害の将来の発症に対する関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図5f】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10の3桁診断によって定義される)14の異なる精神及び/又は行動の障害の将来の発症に対する関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図5g】ベースラインバイオマーカーレベルと、(ICD-10の3桁診断によって定義される)14の異なる精神及び/又は行動の障害の将来の発症に対する関係を、疾患発症のハザード比のフォレストプロットの形態で示す。
【
図6】マルチバイオマーカースコアと、「精神及び/又は行動の障害」のリスクとの関係の一例を示す。マルチバイオマーカースコアの選択された例は、個々のバイオマーカーと比較して、マルチバイオマーカースコアによって達成される改善された予測を例示するために示される。
【
図7a】最初に健康なヒトの間で既知の生理学的状態による精神障害を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図7b】既知の生理学的状態による精神障害を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【
図8a】最初に健康なヒトの間で気分感情障害を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図8b】気分感情障害を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【
図9a】最初に健康なヒトの間で不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図9b】不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【
図10a】最初に健康なヒトの間で既知の生理学的状態によるせん妄を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図10b】既知の生理学的状態によるせん妄を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【
図11a】最初に健康なヒトの間で大うつ病性障害(単一エピソード)を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図11b】大うつ病性障害(単一エピソード)を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【
図12a】最初に健康なヒトの間で不安障害を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図12b】不安障害を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【
図13a】最初に健康なヒトの間で認知機能及び意識に関わる症状及び兆候を発症するリスクを予測するためのマルチバイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図13b】認知機能及び意識に関わる症状及び兆候を発症するリスクの予測が、異なる人口層及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法が開示される。
【0008】
本方法は、上記対象から得られた生物学的試料において、以下:
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。
【0009】
様々な血液バイオマーカーは、個人が広範囲の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いかどうかを予測するのに有用なことがある。このようなバイオマーカーは、生物学的試料から、例えば、血液試料又は関連する生体液から測定されてもよい。
【0010】
精神及び/又は行動の障害を予測するバイオマーカーは、より有効なスクリーニングと、より標的を絞った予防的処置をできるようにするのに役立ち得る。
【0011】
一実施形態では、本方法は、アルブミンの定量値を決定するステップを含む。
【0012】
一実施形態では、本方法は、糖タンパク質アセチルの定量値を決定するステップを含む。
【0013】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0014】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するリノール酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0015】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0016】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0017】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0018】
一実施形態では、本方法は、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比の定量値を決定するステップを含む。
【0019】
一実施形態では、本方法は、脂肪酸不飽和度の定量値を決定するステップを含む。
【0020】
一実施形態では、本方法は、ドコサヘキサエン酸の定量値を決定するステップを含む。
【0021】
一実施形態では、本方法は、リノール酸の定量値を決定するステップを含む。
【0022】
一実施形態では、本方法は、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の定量値を決定するステップを含む。
【0023】
一実施形態では、本方法は、ω-3脂肪酸の定量値を決定するステップを含む。
【0024】
一実施形態では、本方法は、ω-6脂肪酸の定量値を決定するステップを含む。
【0025】
一実施形態では、本方法は、飽和脂肪酸の定量値を決定するステップを含む。
【0026】
一実施形態では、本方法は、高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリドの定量値を決定するステップを含む。
【0027】
一実施形態では、本方法は、低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリドの定量値を決定するステップを含む。
【0028】
一実施形態では、本方法は、高密度リポタンパク質(HDL)粒径の定量値を決定するステップを含む。
【0029】
一実施形態では、本方法は、低密度リポタンパク質(LDL)粒径の定量値を決定するステップを含む。
【0030】
一実施形態では、本方法は、超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径の定量値を決定するステップを含む。
【0031】
一実施形態では、本方法は、酢酸塩の定量値を決定するステップを含む。
【0032】
一実施形態では、本方法は、クエン酸塩の定量値を決定するステップを含む。
【0033】
一実施形態では、本方法は、グルタミンの定量値を決定するステップを含む。
【0034】
一実施形態では、本方法は、ヒスチジンの定量値を決定するステップを含む。
【0035】
本明細書に記載される代謝バイオマーカーは、有意に異なることが見出されており、すなわち、それらの定量値(量及び/又は濃度等)は、後に精神及び/又は行動の障害を発症した対象に関して、有意に高いこと、又は低いことが見出されている。バイオマーカーは、血液、血清もしくは血漿、乾燥血液スポット、又は他の適切な生物学的試料から検出及び定量化されてもよく、単独で、又は他のバイオマーカーと組み合わせて、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクを決定するために使用されてもよい。
【0036】
さらに、バイオマーカーは、年齢、性別、喫煙状態、アルコール及び/又は娯楽用薬物の使用、ボディマス指数(BMI)、進行中の病状、トラウマ的な経験、生活状況及び紛争、社会的孤立、社会経済的要因、遺伝的リスク、及び/又は精神障害及び/又は行動障害及び/又は他の併存疾患を有する既往歴及び/又は家族歴のように、現在スクリーニング及びリスク予測に使用され得る確立されたリスク因子と組み合わせても、及び/又は、リスク因子を考慮した場合でも、精神及び/又は行動の障害のリスクを有する対象を同定する可能性を著しく改善することができる。本明細書に記載されるバイオマーカーは、単独で、又はリスクスコア(マルチバイオマーカースコア等)、ハザード比、オッズ比として、及び/又は予測される絶対もしくは相対リスクとして、あるいは他のリスク因子及び試験と組み合わせて、予測を改善してもよいし、さらには他の試験又は測定の必要性に取って代わってもよい。これは、他のリスク因子からの予測情報を補完することによって、あるいは身体検査、心理評価、及び/又は甲状腺機能のチェック、及び/又はアルコール及び/又は薬物の使用といった臨床試験等の他の分析の必要性を置き換えることによって、予測精度を改善することを含んでもよい。したがって、本明細書に記載される1つ以上の実施形態によるバイオマーカー又はリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクによって、他のリスク因子尺度がそれほど実現可能でない状態においても、精神及び/又は行動の障害の将来の発症のリスクを効率的に評価することが可能になり得る。
【0037】
一実施形態では、本方法は、対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法である。
【0038】
本方法は、生物学的試料において、複数のバイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含んでもよい。例えば、複数のバイオマーカーは、バイオマーカーのうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24(すなわち、バイオマーカーの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、又は全て)を含んでもよい。したがって、「複数のバイオマーカー」という用語は、本明細書内では、任意の数(1つ超)のバイオマーカーを意味するものとして理解されてもよい。したがって、「複数のバイオマーカー」という用語は、本明細書に記載されるバイオマーカーの任意の数(1つ超)及び/又は組合せ若しくはサブセットを意味するものとして理解されてもよい。複数のバイオマーカーを決定することにより、対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかの予測の精度を高めてもよい。一般に、バイオマーカーの数が多いほど、方法は、より正確又は予測的になり得る。しかしながら、本明細書に記載される単一のバイオマーカーであっても、対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定することが可能になるか、又はその決定を支援し得る。複数のバイオマーカーは、同じ生物学的試料又は別々の生物学的試料から、同じ分析方法又は異なる分析方法を使用して測定されてもよい。一実施形態では、複数のバイオマーカーは、複数のバイオマーカーのパネルであってもよい。
【0039】
本明細書の文脈において、「バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する」という文言は、当業者であれば、1つ又は複数のバイオマーカーの1つ又は複数の定量値を、対照試料又は対照値と、個別に又は複数のバイオマーカー(例えば、複数のバイオマーカーの定量値からリスクスコアを算出する場合)として、例えば、単一の(個々の)バイオマーカーの定量値が決定されるか、複数のバイオマーカーの定量値が決定されるかに応じて、比較することを意味するものと理解するであろう。
【0040】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下:
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの1つ又は複数のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。
【0041】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである。本方法は、本明細書に記載される他のバイオマーカーのうちの少なくとも1つの定量値を決定するステップをさらに含んでもよい。
【0042】
対象は、ヒトであってもよい。ヒトは、健康であってもよいし、あるいは既存の疾患、例えば、既存の精神及び/又は行動の障害を有してもよい。具体的には、ヒトは、既存の形態の精神及び/又は行動の障害を有してもよく、より重篤な形態のこの障害及び/又は別の精神及び/又は行動の障害、あるいは他の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクを決定及び/又は計算してもよい。対象は、追加又は代替として、哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、又はげっ歯類等の動物であってもよい。
【0043】
本明細書の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、疾患若しくは状態又はその罹患若しくは発症のリスクと関連することが見出され得るバイオマーカー、例えば、化学マーカー又は分子マーカーを意味してもよい。バイオマーカーは、臨床設定において特定の有効性を有するものとして統計的に完全に検証されるバイオマーカーを必ずしも意味しない。バイオマーカーは、代謝産物、化合物、脂質、タンパク質、部分、官能基、組成物、2つ以上の代謝産物及び/又は化合物の組合せ、それらの(測定可能な又は測定された)量、それらの比率又は他の値、あるいは原則として、疾患若しくは状態又はそれを有する若しくは発症するリスクと関連して見出され得る化学的及び/又は生物学的成分を反映する任意の測定値であってもよい。バイオマーカー及びその任意の組合せは、任意選択でさらなる分析及び/又は測定と組み合わせて、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及びその他の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクを示す生物学的プロセスを測定するために使用してもよい。
【0044】
障害とは、精神及び/又は行動の障害のカテゴリー、又はこのカテゴリーにおける特定の障害を意味することがある。本明細書の文脈において、「精神及び/又は行動の障害」という用語は、行動及び/又は心理の症状を伴う疾患、障害及び/又は状態を意味するものとして理解されてもよい。この障害は、急性、不定期(occational)、又は慢性状態のこともあり、慢性状態とは、本明細書の文脈において、その影響が持続的なもの、さもなければ長期間続くもの、及び/又は時間の経過とともに発症する疾患として理解することができる。精神及び/又は行動の障害の徴候及び症状は、対象の年齢及び/又は全体的な健康等の因子に応じて、軽度から重度まで、あるいは障害を伴うものまで変動してもよい。
【0045】
バイオマーカーの関連性は、異なる精神及び/又は行動の障害について同様であってもよい。したがって、同じ個々のバイオマーカー及びバイオマーカーの組合せを拡張して、特定の精神及び/又は行動の障害のリスクも予測してもよい。このような特定の精神及び/又は行動の障害の例には、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及びその他の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候が含まれてもよい。
【0046】
本明細書に記載される精神及び/又は行動の障害は、以下のように分類され得る。「ICD-10」とは、疾病及び関連保健問題の国際統計分類の第10回改訂(ICD-10)(WHOによる2019年版)を意味するものとして理解してもよい。ICD-9又はICD-11等、ICD-10以外の疾患分類システムによって分類又は診断される同様の疾患も適用してもよい。
【0047】
「任意の精神及び/又は行動の障害」という用語は、任意の精神及び/又は行動の疾患、障害又は状態を意味するものと理解されてもよい。任意の精神及び/又は行動の障害(又は「精神及び/又は行動の障害」)は、ICD-10の診断F00-F99、T36-T50及び/又はX60-X84の任意の偶発的発生を意味するものと理解されてもよい。
【0048】
精神及び/又は行動の障害のサブグループは、精神及び/又は行動の障害のICD-10のサブチャプター診断(F01-F09、F30-F29、F30-F39、F40-F48、T36-T50、X60-X84)内に分類される疾患及び/又は状態を意味するものと理解されてもよい。
【0049】
特定の精神及び/又は行動の障害とは、精神及び/又は行動の障害のICD-10の3桁診断(F05、F06、F20、F31、F32、F33、F40、F41、F43、R41、T39、T40、T42、T43)内に分類される疾患及び/又は障害を意味するものと理解されてもよい。
【0050】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、本明細書に記載される1つ以上のICD-10のサブチャプターによって定義されるような精神及び/又は行動の障害のサブグループ内に分類される疾患である。
【0051】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、ICD-10の3桁コード診断によって定義されるような特定の疾患、例えば、特定の疾患又は障害である。
【0052】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、以下の、精神及び/又は行動の障害のサブグループのうちの1つ以上に分類される疾患である。
・F01-F09:既知の生理学的状態による精神障害
・ F20-F29:統合失調症、統合失調症性、妄想性、及びその他の非気分性精神病性障害
・F30-F39:気分[感情]障害
・F40-F48:不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害
・T36-T50:薬物、医薬品、及び生物学的物質による中毒、有害作用、及び過少投与
・X60-X84:意図的な自傷行為
【0053】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、以下のICD10の3桁診断のうちの1つであるか、あるいは以下のICD10の3桁診断の障害から選択される。
・F05:既知の生理学的状態によるせん妄
・F06:既知の生理学的状態に起因する他の精神障害
・F20:統合失調症
・F31:双極性障害
・F32:大うつ病性障害、単一エピソード
・F33:大うつ病性障害、反復
・F40:恐怖症性不安障害
・F41:その他の不安障害
・F43:重度ストレスへの反応及び適応障害
・R41:その他の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候
・ T39:非オピオイド系鎮痛薬,解熱薬及び抗リウマチ薬による中毒、有害作用、及び過少投与
・ T40:麻薬及び精神変容薬[幻覚発現薬]による中毒、有害作用、及び過少投与
・ T42:抗てんかん薬,鎮静・催眠薬及び抗パーキンソン病薬による中毒、有害作用、及び過少投与
・ T43:向精神薬による中毒、有害作用、及び過少投与、他に分類されないもの
【0054】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、中毒及び意図的な自傷行為を含む、上に列挙したICD-10コードによって示される障害のような精神及び/又は行動の障害を含んでもよいし、あるいはそれによる死亡であってもよい。
【0055】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、既知の生理学的状態による精神障害(F01-F09)、統合失調症、統合失調症性、妄想性、及びその他の非気分性精神病性障害(F20-F29)、気分[感情]障害(F30-F39)、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害(F40-F48)、薬物、医薬品、及び生物学的物質による中毒、有害作用、及び過少投与(T36-T50)、及び/又は意図的な自傷行為(X60-X84)を含んでもよいし、あるいはそれらであってもよい。
【0056】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、既知の生理学的状態によるせん妄(F05)、既知の生理学的状態に起因する他の精神障害(F06)、統合失調症(F20)、双極性障害(F31)、大うつ病性障害、単一エピソード(F32)、大うつ病性障害、反復(F33)、恐怖症性不安障害(F40)、その他の不安障害(F41)、重度ストレスへの反応及び適応障害(F43)、その他の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候(R41)、非オピオイド系鎮痛薬,解熱薬及び抗リウマチ薬による中毒、有害作用、及び過少投与(T39)、麻薬及び精神変容薬[幻覚発現薬]による中毒、有害作用、及び過少投与(T40)、抗てんかん薬,鎮静・催眠薬及び抗パーキンソン病薬による中毒、有害作用、及び過少投与(T42)、及び/又は向精神薬による中毒、有害作用、及び過少投与、他に分類されないもの(T43)を含んでもよいし、あるいはそれらであってもよい。
【0057】
一実施形態では、精神及び/又は行動の障害は、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び兆候を含んでもよく、あるいはそれらであってもよい。
【0058】
本方法は、少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクを使用して、対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含んでもよい。
【0059】
リスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対リスク及び/又は相対リスクに増加又は減少があれば、対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0060】
リスクスコア及び/又はハザード比、及び/又は予測される絶対又は相対リスクは、本明細書に記載されるバイオマーカーの任意の複数、組合せ又はサブセットに基づいて計算されてもよい。
【0061】
リスクスコア及び/又はハザード比、及び/又は予測される絶対リスク又は相対リスクは、例えば、以下の実施例に示すように計算されてもよい。例えば、適切な方法を用いて、例えば、NMR分光法を用いて測定された複数のバイオマーカーは、回帰アルゴリズム及び多変量分析を用いて、及び/又は機械学習分析を用いて組み合わせてもよい。回帰分析又は機械学習の前に、バイオマーカー中の任意の欠落値を、データセットに対する各バイオマーカーの平均値で補完してもよい。疾患又は状態の発症と最も関連があると考えられ得るいくつかのバイオマーカー、例えば、5つを、予測モデルで使用するために選択してもよい。他のモデリングアプローチを使用して、個々のバイオマーカーの組合せ又はサブセット、すなわち、複数のバイオマーカーに基づいて、リスクスコア及び/又はハザード比、及び/又は予測される絶対リスク又は相対リスクを計算してもよい。
【0062】
リスクスコアは、例えば、個々のバイオマーカー、すなわち、複数のバイオマーカーの加重和として計算してもよい。加重和は、例えば、
【数1】
として定義されるマルチバイオマーカースコアの形態であってもよく、式中、iは個々のバイオマーカーにわたる合計の指数であり、β
iはバイオマーカーiに帰属する加重係数であり、c
iはバイオマーカーiの血中濃度であり、β
0は切片項である。
【0063】
例えば、リスクスコアは、β1*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2*濃度(総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸の比)+β3*濃度(アルブミン)+β0のように定義することができ、式中、β1、β2、β3は、精神及び/又は行動の障害のリスクとの関連性の大きさによる各バイオマーカーの乗数であり、β0は、切片項である。当業者が理解するように、この実施例において言及されるバイオマーカーは、本明細書において記載される任意の他のバイオマーカーによって置き換えてもよい。一般に、より多くのバイオマーカーがリスクスコアに含まれるほど、予測性能はより強くなり得る。追加のバイオマーカーがリスクスコアに含まれる場合、βi重みは、精神及び/又は行動の障害の予測のための最適な組合せに従って、全てのバイオマーカーについて変化することがある。
【0064】
リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される相対リスク及び/又は絶対リスクは、少なくとも1つのさらなる尺度、例えば、対象の特徴に基づいて計算してもよい。そのような特徴は、生物学的試料を対象から得る前、同時に、又は後に決定してもよい。当業者が理解するように、特徴のいくつかは、例えば、アンケートを使用して収集された情報であっても、以前に収集された臨床データであってもよい。特徴のいくつかは、生化学的又は臨床的診断測定及び/又は医学的診断によって決定されてもよい(又は決定されたものであってもよい)。このような特徴には、例えば、年齢、身長、体重、ボディマス指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は精神及び/又は行動の障害の家族歴のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0065】
本方法は、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがある対象に処置を施すことによって、対象における疾患を予防又は処置するために、対象を処置するステップをさらに含んでもよい。バイオマーカーの1つ以上に基づいて導かれた精神及び/又は行動の障害のリスク予測は、心理療法、アルコールと喫煙への意識、健康的な食事、十分な睡眠、身体活動、及び/又は臨床スクリーニング頻度及び/又は薬理学的処置の決定等の予防努力を導くために使用できる。例えば、精神及び/又は行動の障害の将来のリスクの情報は、心理的ケア、心理社会的介入、精神医学的治療、又は、例えば、コリンエステラーゼ阻害剤、抗うつ薬、心身医学、及び/又は気分安定剤及び興奮剤による治療を導くために使用することができる。
【0066】
本明細書の文脈において、「アルブミン」という用語は、血清アルブミン(しばしば、血液アルブミンと称される)を意味するものと理解されてもよい。これは、脊椎動物の血液中に見出されるアルブミンである。アルブミンは、約65,000ダルトンの分子量の球状水溶性非グリコシル化血清タンパク質である。NMRを用いたアルブミンの測定は、例えば、刊行物Kettunen et al., 2012, Nature Genetics 44, 269-276と、Soininen et al., 2015, Circulation: Cardiovascular Genetics 8, 212-206 (DOI: 10.1161/CIRCGENETICS.114.000216)とに記載されている。アルブミンは、また、様々な他の方法によって、例えば、臨床化学分析器によって測定されてもよい。このような方法の例には、例えば、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープル等の色素結合方法を含んでもよい。
【0067】
本明細書の文脈において、「糖タンパク質アセチル」、「糖タンパク質アセチル化」、又は「GlycA」という用語は、循環する糖化タンパク質の存在量、及び/又は循環する糖化タンパク質、すなわちN-アセチル化糖タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法(NMR)シグナルを意味してもよい。糖タンパク質アセチルは、例えば、α-1-酸糖タンパク質、α-1-アンチトリプシン、ハプトグロビン、トランスフェリン、及び/又はα-1-アンチキモトリプシンを含む、複数の異なる糖タンパク質からのシグナルを含んでもよい。心臓代謝バイオマーカーに関する科学文献において、「糖タンパク質アセチル」又は「GlycA」という用語は、通常、循環糖化タンパク質のNMRシグナルを意味してもよい(例えば、Ritchie et al, Cell Systems 2015 1(4):293-301と、Connelly et al, J Transl Med. 2017;15(1):219)。糖タンパク質アセチル及びそれらを測定するための方法は、例えば、Kettunen et al.,2018,Circ Genom Precis Med. 11:e002234と、Soininen et al., 2009, Analyst 134, 1781-1785とに記載されている。糖タンパク質アセチルのNMRシグナルをリスク予測に利用することには、NMRシグナルに寄与する個々のタンパク質の測定よりもメリットがあると考えられる。例えば、分析精度や経時安定性が向上し、測定コストが低減し、他の多くのバイオマーカーと同時にNMRシグナルを測定できる可能性がある。
【0068】
本明細書の文脈において、「ω-3脂肪酸」という用語は、総ω-3脂肪酸、すなわち総ω-3脂肪酸の量及び/又は濃度、すなわち異なるω-3脂肪酸の合計を意味してもよい。ω-3脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸である。ω-3脂肪酸において、脂肪酸鎖の最後の二重結合は、メチル末端から数えて3番目の結合である。ドコサヘキサエン酸は、ω-3脂肪酸の一例である。
【0069】
本明細書の文脈において、「ω-6脂肪酸」という用語は、総ω-6脂肪酸、すなわち総ω-6脂肪酸の量及び/又は濃度、すなわち異なるω-6脂肪酸の量及び/又は濃度の合計を意味してもよい。ω-6脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸である。ω-6脂肪酸において、脂肪酸鎖の最後の二重結合は、メチル末端から数えて6番目の結合である。
【0070】
一実施形態では、ω-6脂肪酸は、リノール酸であってもよい。リノール酸(18:2ω-6)は、最も豊富なタイプのω-6脂肪酸であり、したがって、精神及び/又は行動の障害のリスク予測のための総ω-6脂肪酸の良好な近似と考えてもよい。
【0071】
本明細書の文脈において、「一価不飽和脂肪酸」(MUFA)という用語は、総一価不飽和脂肪酸、すなわち、総MUFAの量及び/又は濃度を意味してもよい。あるいは、一価不飽和脂肪酸は、ヒト血清中で最も豊富な一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を意味してもよい。一価不飽和脂肪酸は、それらの脂肪酸鎖中に1つの二重結合を有する。一価不飽和脂肪酸は、ω-9及びω-7脂肪酸を含んでもよい。オレイン酸(18:1ω-9)、パルミトレイン酸(16:1ω-7)及びシス-バクセン酸(18:1ω-7)は、ヒト血清中の一般的な一価不飽和脂肪酸の例である。
【0072】
一実施形態では、一価不飽和脂肪酸は、オレイン酸であってもよい。オレイン酸は、最も豊富な一価不飽和脂肪酸であり、したがって、精神及び/又は行動の障害のリスク予測のための総一価不飽和脂肪酸の良好な近似と見なされてもよい。
【0073】
本明細書の文脈において、「飽和脂肪酸」(SFA)という用語は、全飽和脂肪酸を意味してもよい。飽和脂肪酸は、その構造中に二重結合を有さない脂肪酸であってもよく、又はそれを含んでもよい。パルミチン酸(16:0)及びステアリン酸(18:0)は、ヒト血清中の豊富なSFAの例である。
【0074】
ω-6、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、一価不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸を含む全ての脂肪酸尺度について、脂肪酸尺度は、血液(又は血清/血漿)遊離脂肪酸、結合脂肪酸及びエステル化脂肪酸を含んでもよい。エステル化脂肪酸は、例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、又はホスホグリセリドのようにグリセロールに、あるいはコレステロールエステルのようにコレステロールにエステル化されてもよい。
【0075】
本明細書の文脈において、「脂肪酸不飽和度」又は「不飽和」という用語は、全脂肪酸中の二重結合の数、例えば、全脂肪酸中の二重結合の平均数を意味するものとして理解されてもよい。
【0076】
本明細書の文脈において、「HDL」という用語は、高密度リポタンパク質を意味する。
【0077】
本明細書の文脈において、「LDL」という用語は、低密度リポタンパク質を意味する。
【0078】
本明細書の文脈において、「VLDL」という用語は、超低密度リポタンパク質を意味する。
【0079】
本明細書の文脈において、「低密度リポタンパク質(LDL)トリグリセリド」、「高密度リポタンパク質(HDL)トリグリセリド」、「HDL(高密度リポタンパク質)中のトリグリセリド」、又は「LDL(低密度リポタンパク質)中のトリグリセリド」は、前記リポタンパク質クラス又はサブフラクション中の総トリグリセリド濃度を意味するものとして理解されてもよい。
【0080】
本明細書の文脈において、「高密度リポタンパク質(HDL)粒径」、「低密度リポタンパク質(LDL)粒径」、又は「超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径」という用語は、前記リポタンパク質クラス又はサブフラクション中の粒子の平均直径を意味するものとして理解されてもよい。
【0081】
本明細書の文脈において、「酢酸塩」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中の酢酸塩分子及び/又は酢酸を意味してもよい。
【0082】
本明細書の文脈において、「クエン酸塩」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のクエン酸塩分子及び/又はクエン酸を意味してもよい。
【0083】
本明細書の文脈において、「グルタミン」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のグルタミンアミノ酸を意味してもよい。
【0084】
本明細書の文脈において、「ヒスチジン」という用語は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のヒスチジンアミノ酸を意味してもよい。
【0085】
本明細書の文脈において、「定量値」という用語は、バイオマーカーの量及び/又は濃度を特徴付ける任意の定量値を意味してもよい。例えば、生物学的試料中のバイオマーカーの量若しくは濃度であってもよく、あるいは核磁気共鳴分光法(NMR)又はバイオマーカーを定量的に検出するのに適した他の方法に由来するシグナルであってもよい。このようなシグナルは、バイオマーカーの量又は濃度を示し得るか、又はそれと相関し得る。それは、また、NMR測定又は他の測定に由来する1つ以上のシグナルから計算される定量値であってもよい。定量値は、追加又は代替として、様々な技術を用いて測定してもよい。このような方法には、質量分析(MS)、MSと組み合わせたガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー単独又はMSと組み合わせた高速液体クロマトグラフィー、免疫比濁測定、超遠心分離、イオン移動度、酵素分析、比色分析又は蛍光分析、免疫ブロット分析、免疫組織化学的方法(例えば、代謝産物の抗体検出に基づくin situ法)、及び免疫アッセイ(例えば、ELISA)を含んでもよい。様々な方法の例を以下に示す。対象における定量値を決定するために使用される方法は、対照対象又は対照試料における定量値を決定するために使用されるのと同じ方法であってもよい。
【0086】
少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値又は初期定量値は、核磁気共鳴(NMR)分光法、例えば1H-NMRを用いて測定してもよい。少なくとも1つの追加のバイオマーカー又は複数の追加のバイオマーカーは、NMRを使用して測定してもよい。NMRは、多数のバイオマーカーを同時に含むバイオマーカーを測定するための特に効率的で迅速な方法を提供することができ、それらについての定量値を提供することができる。NMRは、また典型的には、試料の前処理又は調製をほとんど必要としない。NMRで測定されるバイオマーカーは、Soininen et al., 2015, Circulation: Cardiovascular Genetics 8, 212-206 (DOI: 10.1161/CIRCGENETICS.114.000216)と、Soininen et al., 2009, Analyst 134, 1781-1785と、Wuertz et al., 2017, American Journal of Epidemiology 186 (9), 1084-1096 (DOI: 10.1093/aje/kwx016)とで以前に公開された血液(血清又は血漿)NMRメタボロミクスのアッセイを使用して、大量の試料について効果的に測定することができる。これは、上記の科学論文に詳細に記載されているように、1試料当たり250のバイオマーカーに関するデータを提供する。
【0087】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの(初期)定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される。
【0088】
しかしながら、本明細書に記載される様々なバイオマーカーの定量値は、NMR以外の技術によっても実施されてもよい。例えば、バイオマーカーに応じて、質量分析(MS)、酵素的方法、抗体ベースの検出方法、又は他の生化学的若しくは化学的方法を企図してもよい。
【0089】
例えば、糖タンパク質アセチルは、α-1-酸糖タンパク質、ハプトグロビン、α-1-アンチトリプシン、及びトランスフェリンの免疫比濁測定によって測定又は概算することができる(例えば、Ritchie et al., 2015, Cell Syst. 28;1(4):293-301に記載されているように)。
【0090】
例えば、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、及びω-6脂肪酸は、ガスクロマトグラフィー(例えば、Jula et al., 2005, Arterioscler Thromb Vasc Biol 25, 2152-2159に記載されているように)を使用して、血清総脂肪酸組成によって、定量化することができる(すなわち、それらの定量値を決定してもよい)。
【0091】
本明細書の文脈において、「試料」又は「生物学的試料」という用語は、1つの対象から、あるいは対象の群又は集団から得られる任意の生物学的試料を意味してもよい。試料は、新鮮なものでも、凍結したものでも、あるいは乾燥したものであってもよい。
【0092】
生物学的試料は、例えば、血液試料、血漿試料、血清試料、又はそれらに由来する試料を含んでもよいし、又はそれらであってもよい。生物学的試料は、例えば、空腹時血液試料、空腹時血漿試料、空腹時血清試料、又はそれから得ることができる画分(fraction)であってもよい。しかしながら、生物学的試料は、必ずしも空腹時試料である必要はない。血液試料は、静脈血試料であってもよい。
【0093】
血液試料は、乾燥血液試料であってもよい。乾燥血液試料は、乾燥全血試料、乾燥血漿試料、乾燥血清試料、又はそれらに由来する乾燥試料であってもよい。
【0094】
本方法は、少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する前に、対象から生物学的試料を取得することを含んでもよい。対象又は患者の血液試料又は組織試料を採取することは、通常の臨床診療の一部である。集められた血液又は組織試料を調製して、血清又は血漿を当業者に周知の技術を用いて分離することができる。血液試料又は組織試料等の生物学的試料から1つ以上の画分を分離する方法も、当業者に利用可能である。「画分」という用語は、本明細書の文脈では、1つ以上の物理的特性、例えば、溶解度、親水性若しくは疎水性、密度、又は分子サイズに従って分離された生物学的試料の一部分又は成分をも意味してもよい。
【0095】
本明細書の文脈では、「対照試料」という用語は、対象から得られ、疾患若しくは状態に罹患していないか、又は疾患若しくは状態を有するか若しくは発症するリスクがないことが既知である試料を意味してもよい。この対照試料は、マッチしたものであってもよい。一実施形態では、対照試料は、健常個体又は健常個体の一般化集団に由来する生物学的試料であってもよい。「対照値」という用語は、対照試料から得ることができる値及び/又はそれから導出可能な定量値として理解されてもよい。例えば、対照試料及び/又は対照値から閾値を計算することが可能であってもよく、その閾値を上回るか又は下回ると、疾患又は状態を発症するリスクが高くなる。言い換えれば、(バイオマーカー、リスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対リスク又は相対リスクに応じて)閾値より高い又は低い値は、対象がその疾患又は状態を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0096】
対照試料又は対照値と比較した場合に、少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値に増加又は減少があれば、対象が疾患又は状態を有するか又は発症するリスクが高いことを示してもよい。対象が疾患又は状態を発症するリスクが高いことを増加が示すか、又は減少が示すかは、バイオマーカーに依存してもよい。
【0097】
対照試料又は対照値と比較した場合に、少なくとも1つのバイオマーカー(又は複数のバイオマーカーの個々のバイオマーカー)の定量値における増加又は減少が1.2倍、1.5倍、又は、例えば、2倍、若しくは3倍であれば、対象が疾患又は状態を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0098】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、アルブミンの定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0099】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの定量値に増加あれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0100】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比の定量値に減少あれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0101】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するリノール酸の比の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0102】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比の定量値に増加があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0103】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0104】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0105】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比の定量値に増加があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0106】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、脂肪酸不飽和度の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0107】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、ドコサヘキサエンの定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0108】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、リノール酸の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0109】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の定量値に増加があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0110】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、ω-3脂肪酸の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0111】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、ω-6脂肪酸の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0112】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、飽和脂肪酸の定量値に増加があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0113】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド酸の定量値に増加があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0114】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド酸の定量値に増加があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0115】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、高密度リポタンパク質(HDL)粒径の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0116】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、低密度リポタンパク質(LDL)粒径の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0117】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径の定量値に増加があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0118】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、酢酸塩の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0119】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、クエン酸塩の定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0120】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、グルタミンの定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0121】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合に、ヒスチジンの定量値に減少があれば、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0122】
一実施形態では、リスクスコアは、β0+β1*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2*濃度(アルブミン)のように定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に起因する加重係数であり、β2はアルブミンの濃度に起因する加重係数であり、このリスクスコアは、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0123】
一実施形態では、リスクスコアは、β0+β1*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2*濃度(脂肪酸尺度)のように定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に起因する加重係数であり、β2は脂肪酸尺度に起因する加重係数であり、このリスクスコアは対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。脂肪酸尺度は、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの1つ以上であってもよい。
【0124】
一実施形態では、リスクスコアは、β0+β1*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2*濃度(アルブミン)+β3*(脂肪酸尺度)+β0のように定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に起因する加重係数であり、β2はアルブミンの濃度に起因する加重係数であり、β3は脂肪酸尺度の濃度に起因する加重係数であり、このリスクスコアは、対象が、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候等の精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。脂肪酸尺度は、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの1つ以上であってもよい。
【0125】
「組合せ」という用語は、少なくともいくつかの実施形態では、本方法が、バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用するステップを含むように理解されてもよい。例えば、糖タンパク質アセチル及びアルブミンの両方の定量値が決定される場合、両方のバイオマーカーの定量値は、対照試料又は対照値と別々に比較されてもよいし、あるいは両方のバイオマーカーの定量値に基づいて、リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを計算してもよく、これらのリスクスコア、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクが、対照試料又は対照値と比較されてもよい。
【0126】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、上記対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの上記定量値に増加があり、アルブミンの上記定量値に減少があれば、対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0127】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの定量値に増加があれば、ドコサヘキサエン酸及び/又はリノール酸及び/又はω-3脂肪酸の定量値及び/又はω-6脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に減少があれば、及び/又は一価不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸の定量値及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比に増加があれば、対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0128】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下:
・アルブミン、
・ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合に、アルブミンの定量値に減少があれば、ドコサヘキサエン酸及び/又はリノール酸及び/又はω-3脂肪酸及び/又はω-6脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に減少があれば、及び/又は一価不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸の定量値及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比に増加があれば、対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0129】
一実施形態では、本方法は、対象から得られた生物学的試料において、以下のバイオマーカー:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・ドコサヘキサエン酸、リノール酸、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸といった脂肪酸、又は総脂肪酸に対するそれらの比、及び/又は脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値及び/又はその組合せを対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの定量値及び/又はその組合せに増加又は減少があれば、対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合に、糖タンパク質アセチルの定量値に増加があれば、アルブミンの定量値に減少があれば、ドコサヘキサエン酸及び/又はリノール酸及び/又はω-3脂肪酸及び/又はω-6脂肪酸及び/又は脂肪酸不飽和度及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に減少があれば、及び/又は一価不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸及び/又はそれらの総脂肪酸に対する比の定量値に増加があれば、対象が、精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示してもよい。
【0130】
以下の実施形態を開示する。
【0131】
(実施形態1)
対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法であって、
上記方法は、上記対象から得られた生物学的試料において、上記生物学的試料の以下:
・アルブミン、
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が上記精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す、方法。
【0132】
(実施形態2)
上記方法が、上記生物学的試料において、複数の上記バイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含む、実施形態1に記載の方法。
【0133】
(実施形態3)
上記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0134】
(実施形態4)
上記方法は、上記対象から得られた上記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す、実施形態1~3のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0135】
(実施形態5)
上記方法は、上記対象から得られた上記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、ドコサヘキサエン酸、総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、ω-6脂肪酸、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、飽和脂肪酸、脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
上記バイオマーカーの上記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合に、上記バイオマーカーの上記定量値に増加又は減少があれば、上記対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクが高いことを示す、実施形態1~4のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0136】
(実施形態6)
上記精神及び/又は行動の障害は、既知の生理学的状態による精神障害(F01-F09)、統合失調症、統合失調症性、妄想性、及び/又はその他の非気分性精神病性障害(F20-F29)、気分[感情]障害(F30-F39)、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及び/又はその他の非精神病性障害(F40-F48)、薬物、医薬品、及び/又は生物学的物質による中毒、有害作用、及び/又は過少投与(T36-T50)、意図的な自傷行為(X60-X84)を含むか、又はそれらである、実施形態1~5のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0137】
(実施形態7)
上記精神及び/又は行動の障害は、:既知の生理学的状態によるせん妄(F05)、既知の生理学的状態に起因する他の精神障害(F06)、統合失調症(F20)、双極性障害(F31)、大うつ病性障害、単一エピソード(F32)、大うつ病性障害、反復(F33)、恐怖症性不安障害(F40)、その他の不安障害(F41)、重度ストレスへの反応及び/又は適応障害(F43)、その他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候(R41)、非オピオイド系鎮痛薬、解熱薬及び/又は抗リウマチ薬による中毒、有害作用、及び/又は過少投与(T39)、麻薬及び/又は精神変容薬[幻覚発現薬]による中毒、有害作用、及び/又は過少投与(T40)、抗てんかん薬,鎮静・催眠薬及び/又は抗パーキンソン病薬による中毒、有害作用、及び/又は過少投与(T42)、及び/又は向精神薬による中毒、有害作用、及び/又は過少投与、他に分類されないもの(T43)を含むか、又はそれらである、実施形態1~6のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0138】
(実施形態8)
上記精神及び/又は行動の障害は、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及び/又はその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及び/又はその他の認知機能及び/又は意識に関わる症状及び/又は兆候を含むか、又はそれらである、実施形態1~7のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0139】
(実施形態9)
上記少なくとも1つのバイオマーカーの上記定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される、実施形態1~8のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0140】
(実施形態10)
上記方法は、上記少なくとも1つのバイオマーカー又は上記複数のバイオマーカーの上記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクを使用して、上記対象が精神及び/又は行動の障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含む、実施形態1~9のいずれか一実施形態に記載の方法。
【実施例】
【0141】
ここで、様々な実施形態を詳細に参照し、それらの実施形態の実施例を添付の図面に示す。以下の説明は、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用することができるように詳細にいくつかの実施形態を開示する。実施形態のステップ又は特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者に明白になるので、それらの全てのステップ又は特徴が詳細に論じられるわけではない。
【0142】
(図において使用される略語)
DHA%:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
LA%:総脂肪酸に対するリノール酸の比
MUF%:総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸の比
ω-3%:総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比
ω-6%:総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比
SFA%:総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比
DHA:ドコサヘキサエン酸
LA:リノール酸
MUFA:一価不飽和脂肪酸
ω-6:ω-6脂肪酸
ω-3:ω-3脂肪酸
SFA:飽和脂肪酸
不飽和:脂肪酸不飽和度
HDL:高密度リポタンパク質
LDL:低密度リポタンパク質
VLDL:超低密度リポタンパク質
HDL-TG:高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド
LDL-TG:低密度リポタンパク質(HDL)粒径
CI:信頼区間
SD:標準偏差
BMI:ボディマス指数
【0143】
(実施例1)
核磁気共鳴(NMR)によって定量したバイオマーカー尺度を、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、その他の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候等の精神及び/又は行動の障害を予測し得るかどうかに関して調べた。全ての分析は、UK Biobankに基づいて、NMR分光法からの血液バイオマーカーデータを入手可能な約115,000人の研究参加者を用いて行った。
【0144】
(研究集団)
UK Biobankの設計の詳細は、Sudlowらによって、2015年に、PLoS Med. 2015;12(3):e1001779で報告されている。簡単に述べると、UK Biobankは、英国全体にわたる22ヶ所の評価センターで37~73歳の502,639人の参加者を募集した。全ての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを提供し、倫理的承認は、North West Multi-Center Research Ethics Committee(ノースウェストマルチセンター研究倫理委員会)から得られた。血液試料は、2007年~2010年の間にベースラインで採取した。選択基準は、サンプリングに適用しなかった。
【0145】
(バイオマーカープロファイリング)
UK Biobank集団全体から、118,466人の個体からのベースライン血漿試料のランダムなサブセットを、Nightingale NMRバイオマーカープラットフォーム(Nightingale Health Ltd、フィンランド)を使用して測定した。この血液分析方法は、モル濃度単位で、リポタンパク質脂質、循環脂肪酸、並びにアミノ酸、ケトン体及び糖新生関連代謝産物を含む種々の低分子量代謝産物を含む、多くの血液バイオマーカーの同時定量を提供する。技術的詳細及び疫学的応用は、概説されている(Soininen et al 2015,Circ Cardiovasc Genet;2015;8:192-206と、Wurtz et al 2017,Am J Epidemiol 2017;186:1084-1096)。中央値から4四分位範囲外の値を外れ値とみなし、除外した。
【0146】
(精神及び/又は行動の障害のリスクとのバイオマーカーの関係の疫学的分析)
UK Biobankデータに基づいて、精神及び/又は行動の障害のリスクとの血液バイオマーカーの関連付けを実施した。分析は、血液試料を採取した後に、バイオマーカーと精神及び/又は行動の障害の発生との関係に焦点を当てて、個々のバイオマーカーが、精神及び/又は行動の障害の将来の発症のリスクと関連するかどうかを決定した。バイオマーカーの加重和の形態のマルチバイオマーカースコアを使用する例も調査して、それらが各個々のバイオマーカーよりも、はるかに強力に予測できるかどうかも調べた。
【0147】
全ての研究参加者について血液サンプリング後に起こる疾患事象に関する情報は、UK Hospital Episode Statistics(英国病院エピソード統計)のデータ及び死亡レジストリから記録した。全ての分析は、診断の最初の発生に基づき、血液サンプリング前に所与の疾患の診断が記録された個体は、統計分析から除外されるようにした。任意の精神及び/又は行動の障害の複合エンドポイントを、ICD-10の診断F00-F99、T36-T50又はX60-X84の任意の偶発的発生に基づいて定義した。精神及び/又は行動の障害のより洗練されたサブタイプを、表1に列挙したICD-10の診断に従って定義した。
【0148】
レジストリベースの追跡調査は、2007~2010年から2020年にかけての血液サンプリング(約1100000人・年)で行った。特定の疾患で、追跡調査中に記録された疾患事象が100未満のものは、範囲外にした。
【0149】
バイオマーカー関連性試験のために、年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整されたCox比例ハザード回帰モデルを使用した。結果を各バイオマーカー尺度の標準偏差当たりの大きさでプロットすることで、関連性の大きさの直接比較が可能になった。
【0150】
(結果の概要)
バイオマーカー分析対精神及び/又は行動の障害の将来のリスクについての研究集団のベースライン特性を表1に示す。血液サンプリング後に起こる疾患事象の数を、分析した全ての状態について列挙する。
【0151】
表1:研究参加者の臨床的特徴及び分析した疾患事象の数
【表1(1)】
【表1(2)】
【0152】
図1aは、任意の精神及び/又は行動の障害ICD-10コード(F00-F99、T36-T50、又はX60-X84)の将来のリスクを有する24の血液バイオマーカーのハザード比を示す。図の左側は、バイオマーカーを絶対濃度で分析し、研究集団の標準偏差にスケーリングしたときのハザード比を示す。右側は、バイオマーカー濃度の最高五分位の個体を最低五分位の個体と比較したときの対応するハザード比を示す。結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、そのうち9710人が約10年間の追跡調査の間に精神及び/又は行動の障害(病院レジストリ又は死亡記録において診断F00-F99、T36-T50、又はX60-X84として定義される)を発症した。分析は、Cox比例ハザード回帰モデルにおける年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。P値は、全ての関連性についてP<0.0001(多重試験補正に対応する)であった。これらの結果は、24の個々のバイオマーカーが、一般的な集団設定における精神及び/又は行動の障害のリスクを予測することを実証する。
【0153】
図1bは、バイオマーカー濃度の最低、中間及び最高の五分位数による24の血液バイオマーカーのそれぞれについての精神及び/又は行動の障害の累積リスクのカプラン-マイヤー(Kaplan-Meier)プロットを示す。結果は、UK Biobankからの115000人を超える個体の統計分析に基づき、そのうち9716人が精神及び/又は行動の障害を発症した。これらの結果は、24の個々のバイオマーカーが、一般的な集団設定における精神及び/又は行動の障害のリスクを予測することをさらに実証する。
【0154】
図2aは、ICD-10のサブチャプターによって定義される、精神及び/又は行動の障害の6つのサブグループの将来の発症についての24の血液バイオマーカーのハザード比を示す。結果は、バイオマーカー関連性のパターンが、精神及び/又は行動の障害の6つの異なるサブタイプについて、非常に一貫性があることを示す。
【0155】
図2bは、「任意の精神及び/又は行動の障害」の定義と比較した、(ICD-10のサブチャプターによって定義される)6つの精神及び/又は行動の障害サブグループとのバイオマーカーの関連性の一貫性を示す。バイオマーカーの関連性は、「任意の精神及び/又は行動の障害」の場合と、全て同じ関連性の方向であったか、又は不一致の方向では統計的に有意ではなかった。したがって、「任意の精神及び/又は行動の障害」を強力に予測する任意のバイオマーカーの組合せも、列挙された全ての精神及び/又は行動の障害のサブグループを予測することになる。
【0156】
図3aは、3桁のICD-10診断コードによって定義される14の特定の精神及び/又は行動の障害の将来の発症についての24の血液バイオマーカーのハザード比を示す。結果は、バイオマーカー関連性のパターンが、14の特定の障害全てについて、非常に一貫性があることを示す。
【0157】
図3bは、「任意の精神及び/又は行動の障害」の定義と比較した、(3桁のICD-10診断コードによって定義される)14の特定の精神及び/又は行動の障害とのバイオマーカー関連性の一貫性を示す。一般に、バイオマーカーの関連性は、「任意の精神及び/又は行動の障害」の場合と、全て同じ関連性の方向であるか、又は不一致の方向では統計的に有意ではない。したがって、「任意の精神及び/又は行動の障害」を強力に予測する任意のバイオマーカーの組合せも、列挙された全ての特定の精神及び/又は行動の障害を予測することになる。
【0158】
図4a~cは、ここで研究した6つの精神及び/又は行動の障害サブグループ(ICD-10サブチャプターによって定義される)のそれぞれの将来の発症に対する24の血液バイオマーカーのハザード比を示す。ハザード比は、各バイオマーカーの標準偏差に対してスケーリングされた絶対濃度で示されている。結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、約10年間の追跡調査の間に障害を発症した個体の数は、各プロットの上部に示す。黒丸は、関連性についてのP値がP<0.0001(多重試験補正に対応する)であったことを示し、白丸は、関連性についてのP値がP≧0.0001であったことを示す。分析は、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。
【0159】
図5a~gは、ここで研究した14の精神及び/又は行動の障害のサブグループ(ICD-10サブチャプターによって定義される)のそれぞれの将来の発症に対する24の血液バイオマーカーのハザード比を示す。ハザード比は、各バイオマーカーの標準偏差に対してスケーリングされた絶対濃度で示されている。結果は、UK Biobankからの115,000人を超える個体の統計分析に基づき、約10年間の追跡調査の間に特定の疾患を発症した個体の数は、各プロットの上部に示す。黒丸は、関連性についてのP値がP<0.0001(多重試験補正に対応する)であったことを示し、白丸は、関連性についてのP値がP≧0.0001であったことを示す。分析は、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、年齢、性別、及びUK Biobank評価センターについて調整した。
【0160】
図6は、2つ以上のバイオマーカーを組み合わせた場合、任意の精神及び/又は行動の障害との関連性の結果がより強力になる例を示す。精神及び/又は行動の障害(ICD-10コードF00-F99、T36-T50、又はX60-X84の複合エンドポイント)の将来リスクとのハザード比は、バイオマーカーのペアの選択された組合せと、バイオマーカースコアの例で示されている。結果は、他の多くの組合せでも、特にアルブミンと糖タンパク質アセチルに加えて異なる脂肪酸の測定値を含めても同様であった。バイオマーカースコアは、
【数2】
の形態で組み合わされ、式中、iは個々のバイオマーカーにわたる合計の指数であり、β
iはバイオマーカーiに帰属する加重係数であり、c
iはバイオマーカーiの血液濃度であり、β
0は切片項であり、β
i乗数は、バイオマーカーのそれぞれの組合せについてのUK Biobank研究の統計分析において調べられる、任意の精神及び/又は行動の障害のリスクとの多変量関連性の大きさに従って定義される。関連性の大きさの増強は、表1に列挙した14の特定の型の精神及び/又は行動の障害について、任意の精神及び/又は行動の障害について、ここに示したものと同様であった。
【0161】
(意図される使用の説明:精神及び/又は行動の障害のリスク予測のためのバイオマーカースコア)
精神及び/又は行動の障害の予測に関連する意図される用途を説明するために、さらなる疫学的分析を以下に示す。これらの用途は、気分感情障害、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及びその他の非精神病性障害、せん妄、大うつ病性障害、不安障害、及びその他の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候のリスクを予測するために例示される。同様の結果が、表1に列挙される他の精神及び/又は行動の障害にも当てはまる。結果は、
図1~6において特徴付けられた24のバイオマーカーを組み合わせたバイオマーカースコアについて示される。同様の結果は、わずかに弱いとはいえ、2つ又は3つの個々のバイオマーカーのみの組合せでも得られる。
【0162】
図7aは、24のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、既知の生理学的状態による精神障害(ICD-10サブチャプターF01-F09)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカースコアレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に、既知の生理学的状態による精神障害を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の既知の生理学的状態による精神障害の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=58751の個体)。
【0163】
図7bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、既知の生理学的状態による精神障害(ICD-10サブチャプターF01-F09)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男性及び女性に対してリスク予測が有効に機能することを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能し、より若い個体に対してはより強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測と長期リスク予測の両方でハザード比が同様であることを示す。
【0164】
図8aは、24のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、気分感情障害(ICD-10サブチャプターF30-F39)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカースコアレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に、気分感情障害を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の気分感情障害の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=57643の個体)。
【0165】
図8bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、気分感情障害(ICD-10サブチャプターF30-F39)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一及び第二のパネルは、男性及び女性に対しても、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が有効に機能することを実証する。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0166】
図9aは、24のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及び/又はその他の非精神病性障害(ICD-10サブチャプターF40-F48)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカースコアレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及び/又はその他の非精神病性障害を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及び/又はその他の非精神病性障害の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=58236の個体)。
【0167】
図9bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、及び/又はその他の非精神病性障害(ICD-10サブチャプターF40-F48)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。最初の2つのパネルは、男性及び女性に対しても、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が有効に機能することを実証し、より若い個体に対してはより強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0168】
図10aは、24のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、既知の生理学的状態によるせん妄(ICD-10コードF05)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカースコアレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に、既知の生理学的状態によるせん妄を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の既知の生理学的状態によるせん妄の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=58793の個体)。
【0169】
図10bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、既知の生理学的状態による精神障害(ICD-10コードF05)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男性及び女性に対してリスク予測が有効に機能することを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能し、より若い個体に対してはより強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0170】
図11aは、24のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、大うつ病性障害、単一エピソード(ICD-10コードF32)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカースコアレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に、大うつ病性障害、単一エピソードを発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の大うつ病性障害、単一エピソードの累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=57822の個体)。
【0171】
図11bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、大うつ病性障害、単一エピソード(ICD-10コードF32)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。最初の2つのパネルは、男性及び女性に対しても、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が有効に機能することを実証する。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0172】
図12aは、24のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、不安障害(ICD-10コードF41)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカースコアレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に、不安障害を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の不安障害の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=58451の個体)。
【0173】
図12bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、不安障害(ICD-10コードF41)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男性及び女性に対してリスク予測が有効に機能することを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能し、より若い個体に対してはより強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0174】
図13aは、24のバイオマーカーの加重和からなるマルチバイオマーカースコアのレベルが増加すると、認知機能及び意識に関わる症状及び兆候(ICD-10コードR41)のリスクが増加することを示す。左側に、リスク増加を勾配パーセンタイルプロットの形態でプロットし、個体をバイオマーカースコアレベルのパーセンタイルにビニングしたときに、追跡調査の間に、認知機能及び意識に関わる症状及び兆候を発症した個体の割合を示す。各ドットは、約500人の個体に対応する。右側のカプラン・マイヤープロットでは、追跡調査中の認知機能及び意識に関わる症状及び兆候の累積リスクが、マルチバイオマーカースコアの選択された五分位について示されている。両方のプロットは、リスクがマルチバイオマーカースコアの分布の上限において非線形的に増加していることを実証するのに役立つ。プロットは、研究集団の検証セット部分、すなわち、マルチバイオマーカースコアの導出に含まれなかった50%について示される(n=58575の個体)。
【0175】
図13bは、研究参加者の関連するリスク因子特性を説明する際の、認知機能及び意識に関わる症状及び兆候(ICD-10コードR41)の将来の発症との同じマルチバイオマーカースコアのハザード比を示す。第一のパネルは、男性及び女性に対してリスク予測が有効に機能することを実証する。第二のパネルは、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対してもリスク予測が機能し、より若い個体に対してはより強い結果が得られることを示す。第三のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいてボディマス指数及び喫煙状態を考慮に入れるときに、わずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、短期リスク予測に焦点を当てた場合、ハザード比が大幅に高まることを実証する。
【0176】
当業者には、技術の進歩に伴って、基本的なアイデアが様々な方法で実行され得ることが明らかである。したがって、実施形態は、上記の例に限定されることなく、その代わりに、特許請求の範囲内で変化し得る。
【0177】
上述の実施形態は、互いに任意の組合せで使用されてもよい。実施形態のうちのいくつかは、さらなる実施形態を形成するように、一緒に組み合わされてもよい。本明細書に開示される方法は、本明細書の上記の実施形態のうちの少なくとも1つを含んでもよい。上記の利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよいし、あるいはいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されよう。実施形態は、記載された課題のいずれか若しくは全てを解決するもの、又は記載された利益及び利点のいずれか若しくは全てを有するものに限定されない。「1つの」アイテムへの言及は、これらのアイテムの1つ以上を意味することがさらに理解されるであろう。「含む(comprising)」という用語は、本明細書において、1つ以上の追加の特徴又は行為の存在を排除することなく、その語句に続く特徴又は行為を含むことを意味するために使用される。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が精神障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生物学的試料において、前記生物学的試料の以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が精神障害を発症するリスクが高いことを示し、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルであり、
糖タンパク質アセチルは、循環糖化タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法シグナルを意味し、
前記精神障害は、不安障
害である、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生物学的試料において、複数の前記バイオマーカー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のバイオマーカーの定量値を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が精神障害を発症するリスクが高いことを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、ドコサヘキサエン酸、総脂肪酸に対するリノール酸の比、リノール酸、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、ω-6脂肪酸、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、飽和脂肪酸、脂肪酸不飽和度のうちの少なくとも1つの脂肪酸尺度
のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記精神障害を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記精神障害が、恐怖症性不安障害(F40)、
及び/又はその他の不安障害(F41
)を含むか、又はそれらである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記少なくとも1つのバイオマーカー又は前記複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクを使用して、前記対象が精神障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対若しくは相対リスクは、少なくとも1つのさらなる尺度、例えば、前記対象の特徴に基づいて計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、ボディマス指数、人種若しくは民族、喫煙、及び/又は精神及び/又は行動の障害の家族歴のうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記対象から得られた前記生物学的試料において、以下:
・糖タンパク質アセチル、
・アルブミン、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するω-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ドコサヘキサエン酸、
・リノール酸、
・一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸、
・ω-3脂肪酸、
・ω-6脂肪酸、
・飽和脂肪酸、
・高密度リポタンパク質(HDL)中のトリグリセリド、
・低密度リポタンパク質(LDL)中のトリグリセリド、
・高密度リポタンパク質(HDL)粒径、
・低密度リポタンパク質(LDL)粒径、
・超低密度リポタンパク質(VLDL)粒径、
・酢酸塩、
・クエン酸塩、
・グルタミン、
・ヒスチジン
のうちの1つ又は複数のバイオマーカーの定量値を決定するステップと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較するステップと、
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合に、前記バイオマーカーの前記定量値に増加又は減少があれば、前記対象が前記精神障害を発症するリスクが高いことを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】