(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ホルモン含有表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20240126BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240126BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240126BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240126BHJP
A61K 38/09 20060101ALI20240126BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240126BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240126BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240126BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240126BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240126BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/40
A61K38/09
A61K45/00
A61P35/00
A61P13/08
A61P15/00
A61P43/00 111
A61M37/00 530
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541121
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 KR2022018362
(87)【国際公開番号】W WO2023128281
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0194329
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0143147
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523254841
【氏名又は名称】スモール’ラボ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ソ キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ビョン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チャン ス
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジェ チョル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA81
4C076AA94
4C076BB31
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(57)【要約】
本発明では、体内滞留持続性が向上し、徐放性効果が強化されたホルモン含有表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルおよびその製造方法が提供される。
本発明によるホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルは、体内滞留持続性が向上し、徐放性効果に優れていて、持続的な投与が必要なホルモン伝達用経皮伝達システムに用いるのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルであり、
前記薬物は、ホルモンであり、前記表面改質ミクロスフェアは、ディンプル(dimple)構造またはシワの溝が生成されている表面を有する生分解性ミクロスフェアであり、
前記マイクロニードルは、皮膚内で溶解性であり、向上した体内滞留持続性を有する、マイクロニードル。
【請求項2】
前記ホルモンは、性ホルモン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、黄体形成(luteinizing)ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、生殖腺刺激ホルモン、脳下垂体ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、インスリン、サケカルシトニン、グルカゴン、エストロゲン、パラチロイド、デソゲストレル、エチニルエストラジオール、テストステロン、オキシトシン、プロラクチン、エンドルフィン、色素細胞刺激ホルモン、チロキシン、トリヨードチロニン、ソマトスタチン、アドレナリン、グルココルチコイド、アンドロゲン、アルドステロン、プロゲストロン、メラトニン、アンギオテンシノゲン、ガストリン、ソマトスタチン、グレリン、セクレチン、コレシストキニン、レニン、アデノシン、ゴナドトロピン、hCG、hPL、レプチン、これらの類似体およびこれらの混合物から選ばれる1つ以上である、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記ホルモンは、ロイプロリドである、請求項2に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記ミクロスフェアの平均サイズは、50μm以下である、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
前記ミクロスフェアは、溶媒蒸発法、噴霧乾燥法および超音波破砕法のうちいずれか1つの方法によって製造される、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
噴霧乾燥法は、
i)ホルモンおよび界面活性生分解性高分子を有機溶媒に溶解し、油相を準備する段階と;
ii)前記油相を噴霧乾燥し、表面が改質されたミクロスフェアを得る段階と;を含む、請求項5に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
界面活性生分解性高分子は、ツイン系、ポロキサマー類、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLA)、およびポリD、L-乳酸-ポリカプロラクトンの共重合体のうちいずれか1つであり、水溶性高分子は、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEG)、ポリソルベート(Tween)およびポロキサマー(Poloxamer)のうちいずれか1つである、請求項6に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
油相において固形分の割合が0.6~1.3%(w/w)であり、ホルモン:界面活性生分解性高分子の重量比が1:4~1:8であり、噴霧乾燥機の入口温度が60℃~80℃である、請求項6に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
マイクロニードルを形成する溶解性材料は、アルギン酸、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン(サルフェート)、デキストラン(サルフェート)、フィブリン、アガロース、プルラン、セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウム カルボキシメチルセルロース、ポリアルコール、シクロデキストリン、デキストリン、トレハロース、ブドウ糖、果糖、澱粉、スクロース、グルコース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、フラクトース、ツラノース、メリトース、メレジトース、デキストラン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、これらの誘導体およびこれらの混合物から成る群から選ばれるいずれか1つである、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項10】
マイクロニードルを形成する溶解性材料は、アルギン酸およびトレハロースの混合物である、請求項9に記載のマイクロニードル。
【請求項11】
マイクロニードルのニードル部の形状は、円錐形、ピラミッド型、スフィア形、単頭状、くさび形、刃状中いずれか1つである、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項12】
マイクロニードルのニードル部の長さは、500~1000μmである、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項13】
請求項1に記載のマイクロニードルの製造方法であって、前記方法は、
a)溶解性材料を水に溶解し、第1溶液を形成する段階と、
b)薬物を含有する表面改質ミクロスフェアを製造する段階と、
c)第1溶液と前記表面改質ミクロスフェアを混合し、均質化させて、混合溶液を作る段階と、
d)陰刻のマイクロニードルモールドに前記混合溶液を充填する段階と、
e)充填された混合溶液を乾燥させて、モールドから分離する段階と、を含む、方法。
【請求項14】
段階c)で、第1溶液100重量部に対し表面改質ミクロスフェアを0.1~20重量部で混合する、請求項13に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項15】
前記表面改質ミクロスフェアは、シワの溝が生成されている表面を有する生分解性ミクロスフェアであり、前記薬物は、ロイプロリドである、請求項13に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載のホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルを含むマイクロニードル経皮パッチ。
【請求項17】
前記ホルモンは、ロイプロリドである、請求項16に記載のマイクロニードル経皮パッチ。
【請求項18】
前立腺がん、乳がん、子宮内膜症、子宮筋腫、性早熟症の治療および改善用である、請求項17に記載のマイクロニードル経皮パッチ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ホルモン含有表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルおよびその製造方法に関し、より詳細には、体内滞留持続性が向上し、徐放性効果に優れていて、持続的な投与が必要なホルモン伝達に適した、表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルおよびその製造方法に関する。
〔背景技術〕
ホルモン(hormone)は、一般的に身体の内分泌器官で生成される化学物質を総称する。神経伝達物質と本質的には異なっていないが、中枢神経系を主要移動経路とする神経伝達物質に比べて、より広範囲な内分泌器官で分泌され、血液を介して広い範囲に比較的長時間作用する物質をホルモンと称する。様々な内分泌器官で作られたホルモンは、血管を経て身体の様々な器官に運搬され、そこでそれぞれのホルモンが持つ機能を発揮する。特に、物質代謝と生殖、そして細胞の増殖にホルモンが直接的に関係することが知られている。したがって、ホルモンは、体内で正常範囲内に分泌されなければならないが、不足する場合、人為的補充が必要であり、補充療法としては、注射剤で注入する方式が代表的であるが、従来の皮下または筋肉注射時に、半減期が短い場合、投与後に急速な血中濃度の減少が発生することがある。そのため、薬効を維持するためには、毎日投与しなければならない不便さがあり、特に注射剤という特徴に起因して、このような不便さは、より一層加重された。
【0002】
皮膚を介して薬物を伝達することは、その使用便利性によって、多様な分野および形態で用いられている。このような皮膚を通過する薬物は、主に皮膚を介して体循環系(systemic circulation)に伝達させるためのものであるが、その他にも、アトピー治療剤、にきび治療剤、皮膚病治療剤などの薬物は、皮膚自体の器官に伝達させようとする目的にも用いられる。このような便利性および機能性にもかかわらず、皮膚の構造上、薬物を皮膚を通過して伝達することには多くの困難が存在し、皮膚を通過する薬物を開発することが容易ではない。皮膚の角質層は、ケラチンが豊富な角質細胞からなるブリック(brick)構造と、このような角質細胞の間をセラミド、脂肪酸、または、ワックスなどのような脂質で充填したモルタル(mortar)構造からなる。このような構造は、障壁として役割をし、物質透過性が非常に低い特性を有することとなる。500Da以下の低分子構造成分のみが拡散方式によって皮膚内に伝達され得、脂質親和性に優れた物質のみが皮膚を通過することができる。
【0003】
これを克服するために、マイクロニードル(microneedle)などの新しいシステムが開発されており、マイクロニードルは、付属装備なしでパッチ形態で適用することができ、日常生活で手軽に適用することができるという利点がある。そのうち、マイクロニードルパッチは、複数のマイクロニードルがパッチ内に付着しており、マイクロニードルが皮膚の表面に小さい孔を突設して薬物を伝達する方式である。
【0004】
最近、生分解性高分子を基礎とする溶解性マイクロニードルが開発され、マイクロニードルが皮膚内に浸透した後、体内で生分解されることにより、効能物質が皮膚内に溶出される方式が開発されている(韓国特許登録第10-2234446号)。このように、溶解性マイクロニードルにより皮膚内に挿入された効能物質は、皮膚弾性によって皮下から離脱し、体内滞留持続性が低下する問題点がある。効能物質が長期間にわたって薬効が発効される必要がある徐放性薬物の場合は、特に体内滞留持続性が高い必要性がある。
【0005】
したがって、体内滞留持続性が向上し、徐放性効果が強化されたホルモン含有表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルおよびその製造方法の開発が要求されている。
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
これより、本発明者らは、従来技術における要求に応えるために持続的に研究した結果、ホルモンの一種であるロイプロリド(leuprolide)を含有し、表面が改質されたミクロスフェアを用いて製造されたマイクロニードルの場合、驚くべきことに、体内滞留持続性が向上し、徐放性効果が強化され、このホルモンの投与が必要な疾患の治療に用いるのに適していることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記マイクロニードルを含むマイクロニードル経皮パッチを提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記本発明の目的を達成するために、ホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルを提供する。
【0009】
本発明において「表面改質」は、ミクロスフェアの表面にシワ、ゴルフボールで見ることができるディンプル(dimple)構造などの溝が生成されている表面を有するミクロスフェアを意味する。
【0010】
本発明において「ミクロスフェア(microsphere)」は、生分解性ミクロスフェア(Biodegradable microsphere)であり、体内に薬物などを伝達する伝達体(carrier)である。生分解性ミクロスフェアは、主構成成分である生分解性高分子の分解機序および分解速度によって生体内消失期間が定められるが、これら高分子の生体内消失速度によって内部封入した薬物の放出は、一定期間にわたって行われる。前記ミクロスフェアの平均サイズは、特に制限されないが、マイクロニードルに内入して用いるのに適切なサイズであり、略50μm以下、好ましくは、10μm以下であってもよい。
【0011】
本発明において表面改質ミクロスフェアは、単一エマルジョンの形態で水中油(O/W;oil in water)、油中水(W/O;water in oil)、油中油(O/O;oil in oil)、S/O(solid in oil)、S/W(soild in water)型であってもよく、好ましくは、水中油(O/W;oil in water)型エマルジョンである。
【0012】
本発明においてミクロスフェアの製造方法は、ミクロスフェアの製造時に用いられる有機溶媒を揮発させて硬化する段階を含む構成溶媒蒸発法(solvent evaporation method)、噴霧乾燥法(spary drying method)、超音波破砕法(sonication)などが用いられてもよい。
【0013】
噴霧乾燥法で生分解性ミクロスフェアを製造するとき、単一エマルジョンである水中油型ミクロスフェアの場合は、内部油相(oil phase)として水と混ざらない非極性有機溶媒を用い、生分解性高分子と薬物を前記非極性有機溶媒に同時に溶解して製造することができる。具体的には、本発明におけるミクロスフェアは、i)ホルモンおよび界面活性生分解性高分子を有機溶媒に溶解し、油相を準備する段階と;ii)前記油相を噴霧乾燥し、表面が改質されたミクロスフェアを得る段階と;を含む方法によって製造することができる。必要に応じて、ミクロスフェアは、エタノールなどの溶媒で洗浄した後に用いることができる。
【0014】
本発明においてホルモンは、持続的なホルモン投与が必要な疾患に用いられる(徐放性効果が要求される)ホルモンであれば、用いることが可能であり、好ましくは、水に難溶性ホルモンである。具体的には、ホルモンは、性ホルモン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、黄体形成(luteinizing)ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、生殖腺刺激ホルモン、脳下垂体ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、インスリン、サケカルシトニン、グルカゴン、エストロゲン、パラチロイド、デソゲストレル、エチニルエストラジオール、テストステロン、オキシトシン、プロラクチン、エンドルフィン、色素細胞刺激ホルモン、チロキシン、トリヨードチロニン、ソマトスタチン、アドレナリン、グルココルチコイド、アンドロゲン、アルドステロン、プロゲストロン、メラトニン、アンギオテンシノゲン、ガストリン、ソマトスタチン、グレリン、セクレチン、コレシストキニン、レニン、アデノシン、ゴナドトロピン、hCG,hPL、レプチン、これらの類似体およびこれらの混合物から選ばれ得るが、これらに限定されない。本発明の実施例では、ホルモンの一例としてロイプロリドを用いた。
【0015】
ロイプロリドは、LHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)アゴニスト(Hormone agonist)中の1種である。LHRHは、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)とも知られており、脊椎動物の生殖系を調節する視床下部デカペプチドである。このGnRHの作用により性腺刺激ホルモンFSH(卵胞刺激ホルモン)およびLH(黄体化ホルモン)の生合成および放出が誘導される。LHRH作用剤および拮抗剤は、女性の子宮内膜症、線維腫、多嚢胞性卵巣症候群、乳がん、卵巣がんおよび子宮内膜がん、医療補助された出産プロトコル間の性腺刺激脳下垂体脱減作症の治療、男性の良性前立腺と多形性症および前立腺がんの治療、および男性または女性の性早熟症の治療に効果的であることが明らかになった。現在用いられるLHRHアゴニストは、低い経口生体利用率によって一般的に静脈内または皮下方法で投与しなければならないペプチド化合物である。また、LHRHアゴニストは、慢性疾患の薬物として長期間投薬されなければならない。ロイプロリドは、従来の皮下または筋肉注射時に、半減期が短いため、投与後に急速な血中濃度の減少が発生し、数時間内に消える特性がある。そのため、薬効を維持するためには、毎日投与しなければならない不便さがあり、特に注射剤という特徴に起因して、このような不便さは、より一層加重された。
【0016】
本発明において「ロイプロリド」は、下記化学式1の構造を有し、前立腺がん、乳がん、子宮内膜症、子宮筋腫、性早熟症などの治療に用いられる:
【0017】
【0018】
本発明においてホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを皮膚内に伝達するためには、マイクロニードルの材料が皮膚内の水分により崩壊し得る溶解性でなければならず、体内に副作用なしに吸収または分解される生体適合性でなければならず、マイクロニードルで製造された後に、皮膚を穿孔することができる強度の材料で製造されることが好ましい。
【0019】
本発明のマイクロニードルは、溶解性、すなわち体液に溶解する水溶解性である。
【0020】
本発明において界面活性生分解性高分子は、体内で自然に生分解されることによって、体外に排出され得るものであってもよい。また、ホルモンを乳化させることができる界面活性剤の機能を有していてもよい。前記界面活性生分解性高分子としては、天然に由来するものであるか、合成的に製造される全てのものを用いることができる。ツイン系、ポロキサマー類、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)またはポリ(D、L-乳酸)(PDLA)、およびポリD、L-乳酸-ポリカプロラクトンの共重合体で用いることができる。本発明では、一例としてPLGAを用いた。界面活性生分解性高分子は、重量平均分子量が5,000~1,000,000であってもよい。
【0021】
用いられるホルモンと界面活性生分解性高分子の重量比は、1:4~1:8であり、好ましくは、1:4である。前記範囲でミクロスフェアに所望の溝(groove; シワ)が生成されている表面が効果的に形成され得る。また、一次粒子(primary particle)の間に明確に分離がなされ、一次粒子の所望しない凝集を防止することができる。
【0022】
有機溶媒は、特に制限されず、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、クロロホルム、ヘキサン、エチルアセテート、およびこれらの混合を用いることができ、好ましくは、ジクロロメタンを用いる。前記ホルモンと界面活性生分解性高分子の混合物と有機溶媒の割合、すなわち噴霧乾燥液(油相)で固形分重量比は、0.6~1.3%(w/w)であり、好ましくは、1.3%(w/w)である。前記範囲でミクロスフェアに所望の溝(シワ)が生成されている表面が効果的に形成され得るようにする。また、一次粒子の間に明確に分離がなされ、一次粒子の所望しない凝集を防止することができる。
【0023】
段階i)で、溶解時間は、特に制限されず、溶媒にホルモンと界面活性生分解性高分子が溶解するように必要に応じて撹拌を行うことができる。
【0024】
段階ii)で、噴霧乾燥する過程は、通常の商用の噴霧乾燥機を用いることができ、商用の噴霧乾燥機としては、EYELA SD-1000(Japan)、Buchi B-290(Switzerland)、YC-500(China)、Nano Spray Dryer B-90(Switzerland)などが知られている。
【0025】
噴霧乾燥する段階において噴霧乾燥機の運営条件は、噴霧乾燥機の種類によってあらかじめ設定された値によって定められ得るが、必要に応じて変更可能である。
【0026】
噴霧乾燥機は、入口温度、出口温度および注入速度を調節し、油相(噴霧乾燥液)を噴霧乾燥することができる。前記入口温度は、60~80℃であり、好ましくは、60℃である。前記範囲内で噴霧乾燥機の種類、噴霧乾燥しようとする溶液内構成成分の種類および性状、温度などによって必要に応じて調節可能である。出口温度は、45~95℃ であってもよい。出口温度も、製造される粒子の形態および乾燥状態によって適切に調節可能である。
【0027】
噴霧乾燥機への注入は、所定の速度で行われ得、1~12mL/minであってもよい。前記注入速度も、噴霧乾燥機の種類によって適切に調節することができる。注入のためのノズルの直径は、噴霧乾燥機の種類によって異なっているが、0.1~0.7mmの範囲であってもよい。
【0028】
噴霧乾燥時に、粒子化させる流体(例えば空気)の圧力が100~150kPaであってもよく、流体の流れの速度が0.1~0.5m3/minであってもよいが、これに限定されない。
【0029】
本発明においてホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを皮膚内に伝達するためには、マイクロニードルの材料が皮膚内の水分により崩壊し得る溶解性でなければならず、体内に副作用なしに吸収または分解される生体適合性でなければならず、マイクロニードルで製造された後に、皮膚を突き抜けることができる強度の材料で製造されることが好ましい。
【0030】
本発明のマイクロニードルは、溶解性、すなわち皮膚内で体液に溶解する水溶解性である。
【0031】
本発明のマイクロニードルの溶解性材料としては、アルギン酸、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン(サルフェート)、デキストラン(サルフェート)、フィブリン、アガロース、プルラン、セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアルコール、シクロデキストリン、デキストリン、トレハロース、ブドウ糖、果糖、澱粉、スクロース、グルコース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、フラクトース、ツラノース、メリトース、メレジトース、デキストラン、ソルビトール、マンニトールおよびキシリトールから成る群から選ばれる1つ以上の生体適合性材料;前記物質の誘導体;またはこれらの混合物を含んでもよい。本発明の実施例では、一例としてアルギン酸およびトレハロースを混合して用いた。
【0032】
本発明のマイクロニードルは、可塑剤、界面活性剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0033】
可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンなどのポリオールを単独でまたは混合して用いることができるが、これらに限定されない。界面活性剤としては、例えば、PEG-8グリセリルイソステアレート、PEG-10グリセリルイソステアレート、PEG-15グリセリルイソステアレート、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、セテアレス-12などを単独でまたは混合して用いることができるが、これらに限定されない。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸、(イソ)プロピルパラオキシ安息香酸、(イソ)ブチルクロロブタノール(クロロブトール)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール(p体)、クレゾール、クロロクレゾール、ジヒドロ酢酸、ジヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウムなどを単独でまたは混合して用いることができるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明によるマイクロニードルのニードル部の形状は、円錐形、ピラミッド型、スフィア形、単頭状、くさび形、刃状などであってもよく、これらは、共通して皮膚を透過できる形状でなければならない。本発明の一実施例では、構造的に安定したピラミッド型のニードル部を有するマイクロニードルを採択した。
【0035】
本発明によるマイクロニードル10およびマイクロニードルパッチ100の構造を
図6aおよび
図6bに例示した。本発明のマイクロニードル10は、ニードル部11とマトリックス層12を含んでもよい。前記ニードル部11は、前記で定義されたような皮膚に浸透し容易な形状を有する。前記ニードル部11の長さは、500~1000μmであり、好ましくは、750μmである。マトリックス層12は、厚さが0.1~1mmであり、好ましくは、0.1~0.3mmである。ニードル部とマトリックス層には、薬物を含む表面改質ミクロスフェアが内入している。本発明のマイクロニードルパッチ100は、マトリックス層12の一側面上に粘着剤層20を積層し、マイクロニードルパッチを皮膚に貼付して用いることができるように製造される。マイクロニードルパッチ100においてマイクロニードル10が粘着剤層20に接する部分以外の粘着剤層の部分は、粘着剤層の全面積の50%以下である。マイクロニードルパッチ100は、また、粘着剤層上に保護フィルム30を含んでもよい。
【0036】
本発明にさらに他の目的によって前記マイクロニードルの製造方法を提供する。
【0037】
前記製造方法は、
a)溶解性材料を水に溶解し、第1溶液を形成する段階と、
b)薬物を含有する表面改質ミクロスフェアを製造する段階と、
c)第1溶液と前記表面改質ミクロスフェアを混合し、均質化(homogenizing)させて、混合溶液を作る段階と、
d)陰刻のマイクロニードルモールドに前記混合溶液を充填する段階と、
e)充填された混合溶液を乾燥させて、モールドから分離する段階と、を含む。
【0038】
本発明の製造方法において溶解性材料、薬物、表面改質、ミクロスフェアは、上記で定義された通りである。
【0039】
段階a)で、第1溶液は、可塑剤、界面活性剤、保存剤などをさらに含んでもよい。可塑剤、界面活性剤、保存剤などは、上記で定義された通りである。
【0040】
段階b)の表面改質ミクロスフェアを製造する方法は、上記で定義された通りである。
【0041】
段階c)で、第1溶液100重量部に対し表面改質ミクロスフェアを0.1~20重量部で混合する。
【0042】
混合溶液を作る段階は、マイクロニードル内に薬物を含む表面改質ミクロスフェアが均一に分布しなければならないので、第1溶液と表面改質ミクロスフェアを混合した後、ボルテックスなどで強く均質化させて、混合溶液中のミクロスフェアが安定した状態で均一に分散するようにする。
【0043】
前記マイクロニードルの製造に用いられる温度などの条件は、溶解性材料や表面改質ミクロスフェアを分解または変形せずに、十分に溶解したり混合できる限り、特に制限されない。
【0044】
段階d)で、混合溶液をマイクロニードルモールドに充填する段階は、混合溶液を塗布した後、放置する方法、遠心分離機を用いて混合溶液を注入する方法、真空を用いて内部の空気を抜いて混合溶液を注入する方法、圧力を加えて混合溶液を注入する方法などを用いることができる。
【0045】
段階e)で、乾燥は、常温で乾燥させることができ、熱風乾燥機などを用いて室温~80℃で乾燥させることができるが、これに限らない。
【0046】
本発明のさらに他の目的によって、前記ホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルまたは上記のような製造方法によって製造されたホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルを含むマイクロニードル経皮パッチを提供する。
【0047】
前記ホルモンがロイプロリドである場合、前立腺がん、乳がん、子宮内膜症、子宮筋腫、性早熟症の治療および改善用である前記マイクロニードル経皮パッチに用いられ得る。
〔発明の効果〕
本発明によるホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルは、体内滞留持続性が向上し、徐放性効果に優れていて、持続的な投与が必要なホルモン伝達用経皮伝達システムに用いるのに有用である。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、製造例1で製造されたミクロスフェアの電子顕微鏡写真である。
【0048】
図2は、製造例1で製造された剤形LSD5の表面改質ミクロスフェアの拡大した電子顕微鏡写真である。
【0049】
図3は、比較製造例1で製造された従来のなめらかな表面を有するミクロスフェアの電子顕微鏡写真である。
【0050】
図4は、比較製造例1で製造された剤形L6のなめらかな表面を有するミクロスフェアの拡大した電子顕微鏡写真である。
【0051】
図5aは、本発明による表面改質されたロイプロリドを含有するミクロスフェアの分散安定性をLUMiSizerを用いて測定した結果である。
【0052】
図5bは、従来のなめらかな表面を有するロイプロリドを含有するミクロスフェアの分散安定性をLUMiSizerを用いて測定した結果である。
【0053】
図6aおよび
図6bは、本発明によるマイクロニードルおよびマイクロニードルパッチの一例の模式図である。
【0054】
図7は、本発明によるマイクロニードルの電子顕微鏡写真である。
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実施例に基づいて本発明の構成および効果をより詳細に説明する。しかしながら、下記実施例は、本発明をより明確に理解させるために例示したものに過ぎず、本発明の権利範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0055】
[製造例1:ロイプロリドを含有する表面改質ミクロスフェアの製造]
ロイプロリドを含有するミクロスフェアを噴霧乾燥法(spary drying method)を用いて製造した。ロイプロリドとしては、ロイプロリドアセテートを用い、界面活性生分解性高分子としては、PLGAを用いた。製造条件は、下記表1および表2のように行った。
【0056】
具体的には、ロイプロリドアセテート(ANYGEN社)とPLGA503H(Evonik Ltd.,Germany)にジクロロメタンとメタノールの混合溶媒を表1および表2のような容量で添加し、30分間撹拌して溶解し、油相(噴霧乾燥溶液)を製造した後、噴霧乾燥溶液を表1および表2のような条件で注入速度6.5mL/min、気圧130kPa、空気流量0.3m3/minの条件で噴霧乾燥機(EYELA SD-1000,Japan)を用いて乾燥粉末ミクロスフェアを得た。ミクロスフェアにエタノール(99.5%)を添加し、5分間ボルテックスして洗浄した。
【0057】
【0058】
【0059】
製造されたそれぞれのロイプロリドアセテートを含有するミクロスフェアの粒子サイズ分布を測定して表3に示し、それぞれのミクロスフェアの電子顕微鏡写真を
図1および
図2に示した(剤形LSD8除外、凝集が非常にひどいため、電子顕微鏡写真撮影が不可能であった)。
【0060】
【0061】
図1および表3によれば、剤形LSD1~LSD5において粒子間の凝集がなく、シワ構造(溝)で表面改質されたロイプロリドアセテートを含有するミクロスフェアを確認できたが、剤形LSD6~LSD8においては、ミクロスフェア粒子の凝集が発生したことが確認された。
【0062】
<表面改質ミクロスフェアの製造のための最適条件の導き出し>
剤形LSD2、LSD3と剤形LSD8を比較してみると、溶媒量の増加時に、凝集のないミクロスフェアが形成されるところ、粒子間の凝集がなく、シワ構造(溝)で表面改質されたミクロスフェアを製造するためには、噴霧乾燥液(油相)において固形分の割合が0.6~1.3%(w/w)であり、好ましくは、1.3%(w/w)である。
【0063】
剤形LSD4、LSD3と剤形LSD7を比較してみると、薬物(ホルモン):高分子(PLGA)の重量比の減少時に、凝集のないミクロスフェアが形成されるところ、粒子間の凝集がなく、シワ構造(溝)で表面改質されたミクロスフェアを製造するためには、薬物(ホルモン):高分子(PLGA)の適正重量比は、1:4~1:8であり、好ましくは、1:4である。
【0064】
剤形LSD5、LSD3と剤形LSD6を比較してみると、噴霧乾燥機の入口温度の減少時に、凝集のないミクロスフェアが形成されるところ、粒子間の凝集がなく、シワ構造(溝)で表面改質されたミクロスフェアを製造するためには、入口温度が60℃~80℃であり、好ましくは、60℃である。
【0065】
[比較製造例1:ロイプロリドを含有するなめらかな(smooth)表面を有するミクロスフェアの製造]
ロイプロリドを含有するなめらかな表面を有するミクロスフェアを水中油(O/W)エマルジョン溶媒蒸発法を用いて製造した。剤形の組成、油相、水相、溶媒の組成、ホモゲナイザー、メカニカルスターラーに対する条件は、下記表4のように行った。
【0066】
具体的には、ロイプロリドアセテート100mgとPLGA503H(Evonik Ltd.,Germany)600mgにジクロロメタン11.2gとメタノール2.9gの混合溶媒を添加して溶解し、油相を製造した後、0.5%ポリビニルアルコール(PVA500,OCI Company,Ltd.,Korea)溶液の水相400mlとホモジナイザーで10,000rpmで2分間混合し、水中油エマルジョンを形成した。水中油エマルジョンをメカニカルスターラーを用いて1,000rpmで3時間撹拌しつつ、有機溶媒を蒸発させて、ミクロスフェアを形成した。残っているPVAと高分子に捕捉しない薬物粒子を除去するために、遠心分離機X200gを5分間行った後、凍結乾燥し、パウダー形態のミクロスフェアを得た。ミクロスフェアの写真を
図3および
図4に示した。
【0067】
【0068】
[試験例1:表面改質ミクロスフェアの分散安定性の分析]
製造例1で製造された表面改質(シワ溝構造)ミクロスフェア(LSD5)となめらかな表面のミクロスフェア(剤形L6)それぞれの分散安定性をLUMiSizerを用いて測定し、その結果をそれぞれ
図5aおよび
図5bと表5に示した:
【0069】
【0070】
本発明による表面改質ミクロスフェアは、Instability Indexの結果値が低いため、分散安定性が高いことを確認できる。
【0071】
[製造例2:表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルの製造]
製造例1で製造されたロイプロリドアセテートを含有する表面改質(シワ溝)ミクロスフェア(剤形LSD5)と比較製造例1で製造されたなめらかな表面のミクロスフェア(剤形L6)を含むそれぞれ実施例1および比較例1のマイクロニードルを製造した。
【0072】
具体的には、アルギン酸ナトリウム(Sodium alginate、SUNFINE GLOBAL)1.0g、トレハロース(Trehalose、SUNFINE GLOBAL)1.0g、H
2O33gで第1溶液を製造した後、第1溶液9.9gと製造例1で製造された剤形LSD5の表面改質ミクロスフェア0.1gまたは剤形L6のなめらかな表面のミクロスフェアを混合し、ボルテックスを5分以上行って、粒子を分散させて均質化した後、深さ750μmのピラミッド形態の陰刻シリコンモールドに充填した後、モールドをデシケーターに装入し、-0.04Mpaに減圧して30分間維持した後、熱風乾燥機で35℃で2時間10分間乾燥した。乾燥完了したマイクロニードルは、接着テープを用いて回収した後、パッチ形状に合うように、端部をはさみを用いて丸くカットし(
図6b)、完成されたマイクロニードルの顕微鏡写真を撮影し、
図7に示した。
【0073】
図7に示されたように、マイクロニードルが良好に形成されていることを確認できる。
【0074】
また、完成された実施例1のマイクロニードルの強度をTexture analysersで表6の条件によって評価し、その結果を表7に示した。
【0075】
【0076】
【0077】
表7に示されたように、実施例1のマイクロニードルの強度は、平均3.45であり、皮膚への浸透に十分な強度を有することを確認できる。
【0078】
[試験例2:薬物の皮下体内滞留持続性の分析]
8週齢の雄SD(Sprague-Dawley)-ラットの除毛した背中の皮膚(dosal skoin)を取って、in-vitro Franz cell permeation test((Phoenix DB-6,Teledyne,US)400rpm、37℃の条件)に装着し、製造例2で製造された実施例1および比較例1それぞれのマイクロニードルパッチを貼付してから0.5分が経過した後に、マイクロニードルパッチを除去した後、それぞれ0、1、24hrのサンプリング時間に背中の皮膚を取って、表面をアルコール綿で拭き、HPLC移動相で振とう混合抽出し、抽出液の上澄み液を取ってHPLC定量分析し、その結果を表8に示した。
【0079】
【0080】
表8に示されたように、24時間まで経過後に実施例1の表面改質されたミクロスフェアを含むマイクロニードルパッチを用いた場合、ロイプロリドの皮下残存量は、初期と比べて25.2%と高く残留されたが、比較例1のなめらかな表面のミクロスフェアを含むマイクロニードルパッチを用いた場合、ロイプロリドの皮下残存量は、初期と比べて3.3%と残留量が非常に低かった。
【0081】
挿入されたミクロスフェアは、皮膚弾性に起因して皮下から除去することができるが、実施例1の表面改質ミクロスフェアは、表面粗さに起因して比較例1のなめらかな表面のミクロスフェアに比べて皮下から離脱しないので、体内滞留持続性が高いことが確認される。したがって、本発明による表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルは、体内滞留持続性が向上し、結果的に、ミクロスフェア内のホルモンの持続効果(徐放性効果)が達成されることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】
図1は、製造例1で製造されたミクロスフェアの電子顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、製造例1で製造された剤形LSD5の表面改質ミクロスフェアの拡大した電子顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、比較製造例1で製造された従来のなめらかな表面を有するミクロスフェアの電子顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、比較製造例1で製造された剤形L6のなめらかな表面を有するミクロスフェアの拡大した電子顕微鏡写真である。
【
図5a】
図5aは、本発明による表面改質されたロイプロリドを含有するミクロスフェアの分散安定性をLUMiSizerを用いて測定した結果である。
【
図5b】
図5bは、従来のなめらかな表面を有するロイプロリドを含有するミクロスフェアの分散安定性をLUMiSizerを用いて測定した結果である。
【
図6a】
図6aは、本発明によるマイクロニードルおよびマイクロニードルパッチの一例の模式図である。
【
図6b】
図6bは、本発明によるマイクロニードルおよびマイクロニードルパッチの一例の模式図である。
【
図7】
図7は、本発明によるマイクロニードルの電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0083】
10 マイクロニードル
11 ニードル部
12 マトリックス層
20 粘着剤層
30 保護フィルム
100 マイクロニードルパッチ
【手続補正書】
【提出日】2023-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルであり、
前記薬物は、ホルモンであり、前記表面改質ミクロスフェアは、ディンプル(dimple)構造またはシワの溝が生成されている表面を有する生分解性ミクロスフェアであり、
前記マイクロニードルは、皮膚内で溶解性であり、向上した体内滞留持続性を有する、マイクロニードル。
【請求項2】
前記ホルモンは、性ホルモン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、黄体形成(luteinizing)ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、生殖腺刺激ホルモン、脳下垂体ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、インスリン、サケカルシトニン、グルカゴン、エストロゲン、パラチロイド、デソゲストレル、エチニルエストラジオール、テストステロン、オキシトシン、プロラクチン、エンドルフィン、色素細胞刺激ホルモン、チロキシン、トリヨードチロニン、ソマトスタチン、アドレナリン、グルココルチコイド、アンドロゲン、アルドステロン、プロゲストロン、メラトニン、アンギオテンシノゲン、ガストリン、ソマトスタチン、グレリン、セクレチン、コレシストキニン、レニン、アデノシン、ゴナドトロピン、hCG、hPL、レプチン、これらの類似体およびこれらの混合物から選ばれる1つ以上である、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記ホルモンは、ロイプロリドである、請求項2に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記ミクロスフェアの平均サイズは、50μm以下である、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
前記ミクロスフェアは、溶媒蒸発法、噴霧乾燥法および超音波破砕法のうちいずれか1つの方法によって製造される、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
噴霧乾燥法は、
i)ホルモンおよび界面活性生分解性高分子を有機溶媒に溶解し、油相を準備する段階と;
ii)前記油相を噴霧乾燥し、表面が改質されたミクロスフェアを得る段階と;を含む、請求項5に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
界面活性生分解性高分子は、ツイン系、ポロキサマー類、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLA)、およびポリD、L-乳酸-ポリカプロラクトンの共重合体のうちいずれか1つ
である、請求項6に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
油相において固形分の割合が0.6~1.3%(w/w)であり、ホルモン:界面活性生分解性高分子の重量比が1:4~1:8であり、噴霧乾燥機の入口温度が60℃~80℃である、請求項6に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
マイクロニードルを形成する溶解性材料は、アルギン酸、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン(サルフェート)、デキストラン(サルフェート)、フィブリン、アガロース、プルラン、セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウム カルボキシメチルセルロース、ポリアルコール、シクロデキストリン、デキストリン、トレハロース、ブドウ糖、果糖、澱粉、スクロース、グルコース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、フラクトース、ツラノース、メリトース、メレジトース、デキストラン、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、これらの誘導体およびこれらの混合物から成る群から選ばれるいずれか1つである、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項10】
マイクロニードルを形成する溶解性材料は、アルギン酸およびトレハロースの混合物である、請求項9に記載のマイクロニードル。
【請求項11】
マイクロニードルのニードル部の形状は、円錐形、ピラミッド型、スフィア形、単頭状、くさび形、刃状中いずれか1つである、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項12】
マイクロニードルのニードル部の長さは、500~1000μmである、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項13】
請求項1に記載のマイクロニードルの製造方法であって、前記方法は、
a)溶解性材料を水に溶解し、第1溶液を形成する段階と、
b)薬物を含有する表面改質ミクロスフェアを製造する段階と、
c)第1溶液と前記表面改質ミクロスフェアを混合し、均質化させて、混合溶液を作る段階と、
d)陰刻のマイクロニードルモールドに前記混合溶液を充填する段階と、
e)充填された混合溶液を乾燥させて、モールドから分離する段階と、を含む、方法。
【請求項14】
段階c)で、第1溶液100重量部に対し表面改質ミクロスフェアを0.1~20重量部で混合する、請求項13に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項15】
前記表面改質ミクロスフェアは、シワの溝が生成されている表面を有する生分解性ミクロスフェアであり、前記薬物は、ロイプロリドである、請求項13に記載のマイクロニードルの製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載のホルモンを含有する表面改質ミクロスフェアを含むマイクロニードルを含むマイクロニードル経皮パッチ。
【請求項17】
前記ホルモンは、ロイプロリドである、請求項16に記載のマイクロニードル経皮パッチ。
【請求項18】
前立腺がん、乳がん、子宮内膜症、子宮筋腫、性早熟症の治療および改善用である、請求項17に記載のマイクロニードル経皮パッチ。
【国際調査報告】