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特表2024-504925高不透明度被膜及びそれにより被覆された基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】高不透明度被膜及びそれにより被覆された基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240126BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240126BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541719
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 US2022011795
(87)【国際公開番号】W WO2022150693
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,931
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308021682
【氏名又は名称】ビーピーエスアイ ホールディングス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メハフィー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ギミレ,マニシュ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA022
4J038BA112
4J038HA266
4J038KA08
4J038KA10
4J038PB01
(57)【要約】
本発明は、経口剤形、例えば圧縮錠剤、及び他の経口摂取可能基材に使用するための、水溶性ポリマー、不透明剤、例えば、炭酸カルシウム又はデンプン、及びイソマルトを含有するフィルムコーティング組成物に関する。フィルムコーティング組成物は、完全配合乾燥混合物の形態又は水性懸濁液としての形態であってもよく、基材に直接塗布するか、又は基材をサブコートで被覆した後に塗布することができる。フィルムコーティング組成物で被覆された経口基材、例えば錠剤も開示されており、高不透明度及び全体的に優れた外観を有している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥フィルムコーティング組成物であって、
i)25~50重量%の水溶性ポリマー、
ii)25~50重量%の不透明剤、及び
iii)25~35重量%のイソマルト
を含む、組成物。
【請求項2】
不透明剤が、水に不溶性であり、粒子の99%超が約45ミクロン未満の微粒子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
不透明剤が、炭酸カルシウム、デンプン、微結晶性セルロース、及びその混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
不透明剤が炭酸カルシウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
不透明剤がデンプンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
デンプンが米デンプンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
不透明剤が微結晶性セルロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
不透明剤の量が30~40重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
イソマルトの量が28~32重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
イソマルトが凝集状態であり、ここで、約60ミクロン未満の粒子の量がイソマルトの15重量%未満を占める、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
水溶性ポリマーの量が30~40重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
水溶性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
可塑剤をさらに含み、前記可塑剤が0.1~10重量%の範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
可塑剤の量が2~10重量%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項16】
可塑剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリアセチン、中鎖トリグリセリド、ヒマワリ油又はその混合物を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
二酸化チタンを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
1つ以上の滑剤、及び顔料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
i)水溶性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、30~40重量%の量で存在し、
ii)不透明剤が炭酸カルシウムであり、30~40重量%の量で存在し、
iii)イソマルトが28~32重量%の量で存在し、
前記乾燥フィルムコーティング組成物が可塑剤をさらに含み、前記可塑剤が中鎖グリセリドであり、2~10重量%の量で存在する、
請求項1に記載の乾燥フィルムコーティング組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を水中で混合することによって調製される水分散液。
【請求項21】
請求項20に記載の水分散液でフィルムコーティングされた経口摂取可能基材。
【請求項22】
フィルムコーティングが約0.5~約5%の重量増加まで経口摂取可能基材に施された、請求項21に記載のフィルムコーティングされた経口摂取可能基材。
【請求項23】
フィルムコーティングされた基材が、少なくとも85の明度(L*)値によって定義された高い不透明度を有する、請求項21に記載のフィルムコーティングされた経口摂取可能基材。
【請求項24】
フィルムコーティングされた基材が、少なくとも90の明度(L*)値によって定義された高い不透明度を有する、請求項21に記載のコーティングされた経口摂取可能基材。
【請求項25】
経口摂取可能基材上のフィルムコーティングの不透明度を増加させる方法であって、フィルムコーティングは水溶性ポリマー、及び不透明剤を含み、
方法は、
a)水溶性ポリマー、不透明剤と、水分散液として経口基材に塗布した場合に、少なくとも0.5重量の重量増加までフィルムコーティングの不透明度を高めるのに十分な量のイソマルトの乾燥混合物を調製するステップ、
b)ステップa)から得られる乾燥混合物の水分散液を調製するステップ、並びに
c)少なくとも約0.5%の重量増加が達成されるまで、ステップb)の水分散液をフィルムコーティングとして経口摂取可能基材に塗布するステップ
を含む、方法。
【請求項26】
ステップa)の乾燥混合物に含まれているイソマルトの量が約25~約35重量%である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップa)の前記乾燥混合物が可塑剤をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口摂取可能基材を被覆した場合に、二酸化チタンを含むことなく高不透明度を有するコーティング製剤に関する。本発明は、また、そのようなフィルムコーティングを有する医薬用及び栄養用基材並びにそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコーティングは、経口摂取可能基材、例えば医薬品及び栄養補助食品製品に長年使用されている。先行技術のコーティング製剤は、通常、美観、機能特性又は加工性を改善するためにポリマー、可塑剤、任意の顔料及び他の添加剤を含有する。顔料に関しては、合成着色剤及び天然着色剤の両方がフィルムコーティング製剤に使用されている。二酸化チタンは、一般に白色顔料として、またコーティング製剤に不透明度をもたらすために使用されており、それによって経口摂取可能なコアの下地の色は、コーティング製剤の意図した色に干渉しない。現在、二酸化チタンの規制精査が強化され、それにより経口摂取可能基材の一部の製造業者が二酸化チタンの使用を避けるという新たな製剤傾向が生まれている。炭酸カルシウム及びデンプンは、場合によっては二酸化チタンの代替品として使用されている。しかしながら、二酸化チタンの代替物の不透明度は、二酸化チタンのものよりもはるかに低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、当技術分野では二酸化チタンを含まないフィルムコーティングの不透明度を向上させる必要性がある。本発明は、この必要性に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに、不透明剤、例えば炭酸カルシウム及び/又はデンプンを含有するフィルムコーティングの不透明度は、フィルムコーティング製剤中にイソマルトを包含することにより大幅に向上することが見出された。一実施形態では、本発明は、イソマルト、及び炭酸カルシウムを含む完全配合フィルムコーティング系の開発に関する。別々の実施形態では、本発明は、イソマルト及びデンプンを含有するフィルムコーティング系に関する。本発明のなおさらなる実施形態は、イソマルト、及び微粒子サイズグレードの微結晶性セルロース(MCC)又は不透明剤の組合せを含有するフィルムコーティング組成物を含む。本発明は、さらにイソマルト、及び不透明剤、例えば炭酸カルシウム及び/又はデンプンを含む水分散液、フィルムコーティング組成物材料(系)を周囲温度の水に分散させることによるそれらの調製方法、並びに本明細書に記載されたコーティングでフィルムコーティングされた経口摂取可能基材並びに水分散液で基材を被覆する方法に関する。
【0005】
本発明の一態様では、医薬、栄養及び関連技術のための乾燥粉末フィルムコーティング組成物が提供される。乾燥粉末フィルムコーティング組成物には、イソマルト、不透明剤、例えば炭酸カルシウム及び/又はデンプン、及び/又は微粒子サイズグレードのMCC、水溶性ポリマー、並びに可塑剤、滑剤、顔料、及びフィルムコーティング製剤に一般に使用される他の添加剤を含む任意の成分が含まれる。
【0006】
本発明の別の態様では、周囲温度の水中で調製される上記のフィルムコーティング組成物の水分散液が提供される。分散液は、好ましくは約5~約30%の非水成分内容物を含有する。なおさらなる態様は、水分散液から調製された被覆基材を含む。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、経口摂取可能基材上に見られる二酸化チタンを含まないフィルムコーティングの不透明度を高める方法である。その方法は、不透明化量の炭酸カルシウム及び/又はデンプンと、経口摂取可能基材にフィルムコーティングが施された後にその不透明度を高めるのに十分な量のイソマルトも含有する、フィルムコーティング成分、例えば、フィルム形成ポリマーなどを乾式混合又は組み合わせるステップ、得られたイソマルトを含有する乾燥混合されたフィルムコーティング成分の水分散液を形成するステップ、並びに所望の重量増加が得られるまで分散液を経口摂取可能基材に塗布するステップを含む。
【0008】
本発明の好ましい態様では、イソマルト、及び炭酸カルシウム及び/又はデンプンを含むフィルムコーティングは、経口摂取可能基材上に被覆させた場合、イソマルトを含まない同等のコーティング製剤のものよりも高い明度(L*)によって示されるように、高い不透明度を有するように調製される。多くの実施形態では、経口基材上のフィルムコーティングは、少なくとも約85の明度(L*)を有し、そして、イソマルト及び炭酸カルシウムを含有する特定のフィルムコーティングの場合には90以上の(L*)値を有するだろう。
【0009】
被覆された摂取可能基材は、亀裂、ピックマーク及び他の表面欠陥のない、視覚的に魅力的な外観を有している。このコーティング系の特性の組合せは、先行技術及び既存の市販品よりも明らかに有利である。本発明のフィルムコーティングは、二酸化チタンを含まない、二酸化チタンを実質的に含まない、すなわち0.5重量%未満になるように、又は乾燥フィルムコーティング組成物中に一般に見られる二酸化チタンの量が実質的に少ない、例えば20~30%w/wになるように配合することができ、したがって不透明度が高く、その結果を達成するために二酸化チタンに大きく依存している現在入手可能なフィルムコーティングの有用な代替物を当業者に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的のために、以下の用語はそれらの意味に関してさらに説明される。
「経口摂取可能基材」は、任意の薬学的に許容される剤形、例えば錠剤、カプセル剤、カプレットなど、又は飲み込まれることが意図された任意の他の獣医製品、栄養製品若しくは菓子製品を意味すると理解されるべきである。
「乾燥粉末」は、本質的に液体含有量がない粉末ではなく、相対的に指触乾燥状態である粉末を意味すると理解されるべきである。
「周囲温度」は、一般に約20℃(68°F)~約30℃(86°F)+/-3℃の範囲内の温度を意味すると理解されるべきである。
「グリセリン」は「グリセロール」と同義であり、「グリセロールエステル」はグリセリドと同義である。
「完全配合」は、フィルムコーティング系と関連するので、医薬品及び栄養補助食品業界における優良医薬品製造基準(GMP)に合うように経口摂取可能基材、例えば圧縮錠剤をフィルムコーティングするために必要な全ての成分を含有する乾燥粉末混合物又は水分散液を含むことを理解されたい。また
「微粒子サイズグレード」は、微結晶性セルロース(MCC)の説明で使用されるように、MCC粒子の99%以上が約45ミクロン以下の粒子サイズを有するMCCグレードについて記載するものと理解されるべきである。本発明の説明のために、「MCC」は、本明細書で使用される場合、微粒子サイズグレードの特徴を有する微結晶性セルロースを指すと理解されるべきである。
【0011】
本発明のフィルムコーティング組成物は、水溶性ポリマー、イソマルト、不透明剤、例えば炭酸カルシウム及び/又はデンプン及び/又はMCCを含んでいてよく、場合により可塑剤、滑剤、顔料、界面活性剤及び他のフィルムコーティング助剤を含んでいてよい。
【0012】
好ましい水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(例えばKollicoat IR)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む。HPMCの好ましいグレードは、水中に2%重量/体積で溶解した場合に、1、3、5、6、15及び50センチポアズ(cP)の水溶液粘度を有するもののような低粘度グレードである。好ましくは、これらの水溶性ポリマーは、水性コーティング溶液を形成する場合に周囲水中への溶解を促進するために、十分に小さい粒子サイズ、好ましくは250ミクロン未満である。これらのポリマーは単独又は一緒に使用してもよい。ほとんどの実施形態では、本発明の粉末混合物に含まれる水溶性ポリマー(複数可)の量は、約25~約50重量%である。いくつかの好ましい実施形態では、それは約30~約40%の範囲である。
【0013】
可塑剤は、フィルム形成の促進を助けるために使用され、本発明の多くの実施形態に含まれている。好ましい可塑剤は、水溶性ポリマーを可塑化することが知られているものであり、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリアセチン、中鎖トリグリセリド、及びヒマワリ油を含む。可塑剤が存在する場合、その量は必要に応じて変わるはずであるが、広く、粉末混合物中で約0.1~約10重量%の範囲にすることができる。好ましくは、その範囲は約2~約10%である。有利には、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーは、内部可塑化されており、しばしば追加の可塑剤、例えばポリエチレングリコールを必要としない。可塑剤は、他の水溶性ポリマーも同様に使用する場合、他の製剤成分の性質及び量に応じて任意であってもよい。したがって、フィルムコーティング組成物が二酸化チタンを含まないだけでなく、可塑剤も含まない本発明の実施形態がある。
【0014】
不透明剤は、フィルムコーティングの隠蔽力を高め、下地の基材の色が見えなくなり、コーティング単独の意図した色が観察できるようになる。好ましい不透明剤は最大の隠蔽力を有するものである。いくつかの好ましい不透明剤は、水に不溶性であり、粒子の99%超が約45ミクロン未満の微粒子サイズを有する。好ましい不透明剤には、炭酸カルシウム、デンプン及び微粒子サイズグレードの微結晶性セルロースが含まれる。デンプンのうち、米デンプンがより好ましい。
【0015】
本発明の目的のために、本発明のフィルムコーティング組成物の炭酸カルシウム及び/又はデンプン及び/又はMCC部分は、本明細書ではフィルムコーティング製剤に隠蔽力を与える不透明剤(opacifying agent)又は不透明剤(opacifier)と呼ぶ。不透明剤の濃度が増加すると不透明度が増加する。いくつかの実施形態では、不透明剤は炭酸カルシウムであり、本発明の粉末混合物に含まれる炭酸カルシウムの量は、経口摂取可能な基材に施された後、フィルムコーティングの不透明度に測定可能な増加をもたらすのに十分な量である。例えば、約25~約50重量%の不透明剤の量は、本発明のほとんどの態様に適している。いくつかの好ましい実施形態では、それは約30~約40%の範囲である。
【0016】
或いは、デンプンは、炭酸カルシウムに関して上述のものと同じ量で不透明剤として本発明のフィルムコーティングに使用される。デンプンは、米、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、タピオカ及びエンドウを含む種々の植物起源のいずれかに由来していてもよい。デンプン不透明剤は、物理的及び/又は化学的処理によって未改変でも改変されてもよい。世界薬局方規格を満たす高純度グレードの前記デンプンが好ましい。USP-NF、PhEur及びJP規格を満たす米デンプンが特に好ましい。同様に、MCCも不透明剤として使用する場合、他の不透明剤と同じ量で存在することになる。種々の不透明剤のブレンド、例えば炭酸カルシウム及びデンプン及び/又はMCCの組合せも意図されており、その不透明剤の総量は、上記の範囲内で、様々な比率の炭酸カルシウム、デンプン及びMCCからなる。
【0017】
イソマルトは結合剤及び不透明度増強剤として使用される。好ましいグレードのイソマルトは、USP-NF、PhEur、JP及びFCC規格を含む世界の公定書規格(global compendial specification)を満たすものである。好ましいグレードのイソマルトも凝集状態で存在し、ここで、約60ミクロン未満の比較的小さな粒子は、イソマルトの15重量%未満を占める。特定のいかなる理論に拘泥するものではないが、イソマルトは、経口摂取可能基材の表面上でのフィルム形成プロセス中に不透明剤粒子をしっかりと結合及び配向させるので、コーティングの不透明度がイソマルトが含まれていない場合よりも高くなると考えられている。
【0018】
フィルムコーティング組成物に含まれるイソマルトの量は、一般にフィルムコーティング及び不透明剤の不透明度を高める量とみなされている。本発明の好ましい態様では、イソマルトのレベルは、有利には約25~約35重量%、又は28~32重量%の範囲で維持されている。イソマルト濃度を25%未満に下げると、コーティングの不透明度が低下し得る。本明細書に記載された量でイソマルトを含むことにより、二酸化チタンを含まないフィルムコーティングは、同量のイソマルトを含まないフィルムコーティングと比較して、以下により詳細に記載された(L*)によって測定された白色において少なくとも約2%、多くの場合少なくとも約3%以上の増加が達成される。場合によっては好ましいレベルを超える量のイソマルトを使用できるが、約40%を超える量のイソマルトを使用すると、他の製剤成分で対応する減少がもたらされることが理解されるであろう。水溶性ポリマー含有量を約25%未満に減少させると、フィルム強度が低下し、基材に施されたコーティングのチッピング若しくは亀裂、又は他の欠陥がもたらされる可能性がある。不透明剤の含有量を約25%未満に減少させると、一般に不透明度及びL*値の望ましくない低下がもたらされる。
【0019】
滑剤は、場合により錠剤が互いの上を流れるのを助けるために使用され、したがって滑らかな表面仕上げをもたらす。好ましい滑剤はタルクである。滑剤の量は、存在する場合、必要に応じて変わるはずであるが、広く、粉末混合物中で0超~約15%の範囲にすることができる。好ましくは、その範囲は約5~約10%である。
【0020】
顔料も場合により添加され、任意の食品又は薬学的に承認された着色料若しくは染料であってもよい。例えば、顔料は、アルミニウムレーキ、酸化鉄、二酸化チタン、天然着色料、又は真珠光沢顔料(例えば、Candurinの商品名で販売されている雲母系顔料)であってもよい。そのような顔料の例は、米国特許第4,543,570号に記載されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。顔料が含まれる場合、顔料は、約0超~約20%の顔料、好ましくは約1~約15%の範囲(重量による)で粉末混合物中に使用されてもよい。しかしながら、本発明の粉末混合物に使用される顔料の量は、依然として十分な不透明度を達成しながら、被覆されるべき基材の表面に外面コーティングの必要な外観を付与するのに十分又は有効な量であることが理解されるであろう。
【0021】
さらに、粉末混合物は、フィルムコーティングに典型的に見られる付加的又は補助的な成分も含んでもよい。そのようなアジュバントの非限定的なリストには、界面活性剤、懸濁助剤、二次フィルム形成物質、甘味料、風味剤など、及びその混合物が含まれる。
【0022】
粉末混合物は、当業者に既知の標準的な乾式混合又は混合技術を用いて調製される。例えば、成分を個々に秤量し、適切な装置に加え、そして成分の実質的に均一な混合物が得られるまで十分な時間混合する。そのような実質的な均一性を達成するために必要とされる時間は、もちろん、バッチサイズ及び使用される装置に依存するであろう。液状可塑剤、例えばグリセリンの添加が起こることにより、著しい凝集又は分離は起こらないだろう。これは、混合しながら液体を乾燥成分に徐々に加えることによって達成することができる。液状可塑剤が最初に乾燥成分の一部に添加され、次いで残りの乾燥材料が追加されるプレブレンドもまた利用され得る。プレブレンドは大量に調製され、そしてより小さいバッチに必要とされる混合時間を短縮するために必要に応じて使用してもよい。全ての場合において、液状可塑剤が乾燥成分に添加される場合、その成分は均質性を確保するのに十分な時間混合されなければならない。
【0023】
前述のように、バッチサイズは必要に応じて変わることになる。適切な混合装置の非限定的なリストには、拡散ブレンダー、例えばPatterson-Kellyから入手可能なクロスフロー、Vブレンダー、若しくはハブブレンダー又は対流ブレンダー、例えばAzo及びReadcoからそれぞれ入手可能なRuberg若しくはCVMブレンダーが含まれており、それぞれ使用することができる。前述の製剤の配合は、湿式塊状化、流動床造粒、噴霧造粒及び乾式圧縮、ローラー圧縮又はスラッギング(slugging)を含むがそれだけには限定されない方法により、成分を粒状形態に加工して、無発塵粒状コーティング組成物を作製することによって達成してもよい。他の混合方法も当業者には明らかであろう。
【0024】
本発明に基づくいくつかの好ましい乾燥フィルムコーティング組成物は、以下を含む。
【0025】
【表1】
【0026】
上記の表から、好ましい乾燥フィルムコーティング組成物は、本明細書に記載された25~50%の量で水溶性ポリマー又はその混合物を含むことが理解される。追加の成分は、水溶性ポリマーの量を比例して減少させるが、これら全ての成分は依然として本明細書に記載された範囲内であり、その結果乾燥混合物中の全成分の総量は100重量%となる。
【0027】
限定ではなく例示の目的で、約20%の非水成分を有する水分散液は、上記の100部の混合粉末混合物を400部の周囲温度の水に分散させることによって形成することができる。適当な容器、すなわち最終懸濁液の深さにほぼ等しい直径を有するものに水を秤量する。低剪断ミキサー、好ましくは混合容器の直径の約3分の1の直径を有する撹拌翼を有するものを、水中に下げ、作動させて、容器の縁から撹拌翼のほぼ真上に至るまで渦を発生させて、空気の混入を防止する。その100部の乾燥フィルムコーティング組成物を、過剰な乾燥粉末の蓄積が生じない速度で渦に加える。撹拌翼の速度及び深さは、泡立ちを回避できるように、懸濁液中に空気が引き込まれるのを回避するために調整される。懸濁液を、均質の混合物が確実に形成されるのに十分な時間、低速、好ましくは350rpm以下で撹拌する。上記のバッチサイズを目安として使用すると、約45分の混合時間が必要である。懸濁液は、その後、医薬用基材などに噴霧する準備ができている。当業者はまた、水中で実質的に均質な固体の混合物を調製する多くの方法があり、本発明の範囲は決して使用される装置に依存しないことを理解するであろう。適切な水分散液は、その中に約5~約30%、好ましくは約15~約25%の非水成分を含有することが意図される。
【0028】
本発明のなおさらなる実施形態において、本発明のフィルムコーティング製剤で被覆された経口摂取可能基材が提供される。被覆された基材は、本明細書に記載されたフィルムコーティング組成物に含まれる量のイソマルトを含まない同様のコーティングのものよりも大きい明度(L*)によって示される高い不透明度(L*は通常、いくつかのイソマルト含有製剤では85超であり、不透明剤として炭酸カルシウムを用いて作製した他のイソマルトフィルムコーティングでは90以上である)、並びに実質的に亀裂、ピックマーク及び他の表面欠陥のない視覚的に魅力的な外観を有している。
【0029】
本発明はさらに、不透明剤、例えば炭酸カルシウム又はデンプンを含み、好ましくは二酸化チタンを含まないフィルムコーティング組成物の不透明度を増加させる方法を含む。この方法は、一般に
a)好ましくは乾燥状態のフィルムコーティング組成物と、水性懸濁液として経口基材に塗布した後、乾燥フィルムコーティングの不透明度を増加させるのに十分な量のイソマルトを組み合わせるステップ、
b)イソマルト含有フィルムコーティング組成物の水性懸濁液を調製するステップ、
c)得られた水性懸濁液を経口基材に塗布するステップ
を含む。
【0030】
不透明度の改善によく適したフィルムコーティング組成物には、少なくとも約20又は25重量%の不透明剤を含有するものが含まれる。経口基材に塗布した後、少なくとも約2%、好ましくは約4%の重量増加までフィルムコーティングの不透明度を増加させるのに有効なイソマルトの量は、フィルムコーティング組成物の約25~約35重量%であることが好ましい。得られた被覆された経口基材は、好ましくはL*値が85以上であり、フィルムコーティング製剤が少なくとも約25%wtの量の炭酸カルシウムを含む好ましい態様では、L*値は約90以上である。
【0031】
当業者は、色を特徴付けるためにCIELAB色座標が通常使用されていることを認識するであろう。それは人間の目に見える全ての色を記載しており、参照として使用されるデバイスに依存しないモデルとして機能するように作成された。CIELAB色空間(別名CIE L*a*b*は、the International Commission on Illumination or French Commission internationale de l'eclairage(CIE) in 1976によって定義された色空間である)。それは色を3つの値で表現する:L*は黒色(0)から白色(100)までの明度、a*は緑色(-)から赤色(+)、b*は青色(-)から黄色(+)。CIELABは、これらの値における同じ量の数値変化が、おおよそ同じ量の視覚的に認識される変化と対応するように設計された。白色コーティングの場合、L*値は白色度を示す。
【0032】
L*値が増加すると白色度も増加する。白色コーティングではL*値を最大にすることが好ましい。CIELABにおける明度L*は相対輝度の立方根を使って計算され、黒付近でオフセットされる。これにより指数が約0.43の有効出力曲線が得られ、それは日光(明所視)条件下での光に対する人間の目の反応を表す。したがって、L*スケールは線形ではなく、数値L*の小さな差又は%変化は、人間の目で認識される白色度の有意な差を実際に表し得る。本明細書に記載された量のイソマルトを含むことにより、二酸化チタンを含まないフィルムコーティングは、同量のイソマルトを含まないフィルムコーティングと比較して、L*によって測定した白色度が少なくとも約2%又は3%以上の増加を達成する。したがって、L*の2%又は3%の増加は、人間の目には白色度の大幅な増加として認識され得る。
【0033】
以下の実施例に記載されるように、その方法はフィルムコーティング組成物を水性懸濁液として経口摂取可能基材の表面に塗布するステップを含む。フィルムコーティングは、そのような物品を被覆するために一般的に使用されるパンコーティング又はスプレーコーティングの方法の一部として施される。施されるコーティングの量は、フィルムコーティングの性質及び機能性、被覆される基材、及びコーティングを施すために使用される装置などを含むいくつかの要因に依存するであろう。本発明のいくつかの即時放出用途では、基材は錠剤であり、約0.25~約5.0%の理論上の重量増加まで被覆されるであろう。好ましくは、理論上の重量増加は基材の約1.0~約4.5重量%であり、より好ましくは、理論上の重量増加は基材の約2.5~約3.5重量%である。経済的な理由から、許容される不透明度及び全体的な美的特性を得ながら、重量増加をできる限り少なく施すことが好ましい。前述のように、本発明のコーティング溶液は、粉末混合物及び水に加えて補助成分も含んでもよい。
【0034】
上記の被覆された経口摂取可能基材はまた、経口摂取可能基材と本発明のフィルムコーティングとの間にサブコートフィルムコーティングを含むことができる。選択されるサブコートは、経口摂取可能基材及び本発明のコーティングの両方に対して、相溶性があり、且つ付着する食用フィルムコーティング組成物に基づくものが好ましい。従って、当業者は、本発明においてサブコートとして使用するための多種多様な医薬用又は食品に許容されるコーティングから選択することができる。サブコートはまた、経口摂取可能基材に対して約0.25~約5.0%の重量増加をもたらすように基材に施される。
【0035】
使用される方法又はフィルムコーティング組成物に含まれる特定の材料にかかわらず、本発明の経口摂取可能基材は、許容される不透明度及び全体的な美的特性を得るのに十分な重量増加に適用されるフィルムコーティングを含むことになる。
【0036】
[実施例]
以下の実施例は、本発明をさらに理解させるのに有効であるが、決して本発明の有効な範囲を限定することを意味しない。全ての成分は重量%で表されている。
【0037】
[実施例1]
本発明の乾燥コーティング組成物に好ましい製剤は以下の通りである。
成分 重量%
炭酸カルシウム 35.0
イソマルト 30.0
HPMC(6cPグレード) 19.0
HPMC(15cPグレード) 13.0
中鎖トリグリセリド 3.0
100.0
【0038】
乾燥フィルムコーティング組成物の調製:
乾燥フィルムコーティング組成物は、成分を実験室用ブレンダーに加え、均質な混合物が生成されるまで5分間混合することによって調製した。
【0039】
水分散液の調製:
乾燥フィルムコーティング組成物(100部)を400部の周囲温度の水中に分散させて、20%w/wの非水成分を有する水性コーティング懸濁液を作製した。最終分散液の深さにほぼ等しい直径を有する容器に水を秤量した。低剪断ミキサーを水中に下げ、作動させて、容器の縁から撹拌翼の真上に至るまで渦を発生させて、空気の混入を防止した。その100部の乾燥フィルムコーティング組成物を、過剰な乾燥粉末の蓄積又は泡の発生がない速度で渦に加えた。撹拌翼の速度及び深さは、泡立ちを回避できるように、懸濁液中に空気が引き込まれるのを回避するために調整した。懸濁液を低速(350rpm以下)で45分間撹拌して、コーティングに適した均質な水分散液を形成した。
【0040】
錠剤の被覆:
黒色のHPMC系コーティングで予めサブコーティングされたプラセボ錠剤(3.5kg)を、15インチの完全に穴の開いたパンが装備されたLabcoat I(O'Hara Technologies Inc.、カナダ)中において、実施例1の水分散液により20グラム/分の噴霧速度で被覆した。理論上のコーティング重量増加3.0%を錠剤に適用した。得られた被覆錠剤は滑らかで、非粘着性であり、そして亀裂又は他の表面欠陥がなかった。コーティングは錠剤表面に強力に付着し、被覆錠剤には目に見える脆さはなかった。黒色のプラセボ錠剤は、本発明のコーティングの不透明化特性に挑戦するために意図的に選択した。本発明のコーティングの重量増加を適用したので、錠剤の色は徐々に白色になり、そして、3%の重量で錠剤は完全に白色に見えた。3%重量増加まで被覆された錠剤の白色度は、以下に記載するように、機器分析して白色度/明度を決定した。
【0041】
明度(L*)の決定:被覆錠剤の明度(L*)は、0~100のスケールで90.9であることが決定され、ここで0及び100は、Datacolor反射分光光度計で測定可能な最も暗い色合い及び最も明るい色合いに対応する。Datacolorから供給された白色タイルを標準として使用した。
【0042】
[比較例A~C]
以下の比率に従って比較用の製剤を調製した。
【0043】
【表2】
【0044】
水分散液の調製及び被覆方法は、実施例1に記載したものと類似の方法で実施した。以下の表で、比較例で3%重量増加まで被覆された錠剤の明度を実施例1のものと比較する。
【0045】
【表3】
【0046】
実施例1の本発明のフィルムコーティング組成物で被覆された錠剤の明度は90.9であり、これは比較例A~Cのものよりも著しく高い。比較例A及びBにおいて、イソマルトを2つの異なる糖アルコール(すなわちエリトリトール及びキシリトール)にそれぞれ置き換えた場合、被覆錠剤の明度は著しく低かった。比較例Cでは、イソマルトレベルは20%まで低下し、炭酸カルシウムレベルが40%w/wに増加したにもかかわらず、被覆錠剤の明度は再度実施例1のものよりも著しく低下した。実施例1と比較例A~Cの比較は、糖アルコールとしてのイソマルトの独特の特性と、それを、炭酸カルシウムと相乗的に作用して不透明度を改善するのに十分に高いレベルで含むことの重要性を明確に示す。
【0047】
[実施例2]
25%w/wイソマルトを使用したコーティング製剤を以下のように配合した。
【0048】
【表4】
【0049】
水分散液の調製及び被覆方法は、実施例1に記載したものと類似の方法で実施した。3%重量増加まで被覆された錠剤の明度は90.3であった。明度は、実施例1対実施例2(90.9対90.3)において配合中のイソマルト濃度を30%から25%に下げることにより大きな影響を受けなかった。
【0050】
[実施例3]
不透明剤として炭酸カルシウムの代わりに米デンプンを使用したコーティング製剤を以下のように配合した。
【0051】
【表5】
【0052】
水分散液の調製及び被覆方法は、実施例1に記載したものと類似の方法で実施した。3%重量増加まで被覆された錠剤の明度は85.2であった。
【0053】
[比較例D]
不透明剤として炭酸カルシウムの代わりに米デンプンを使用するが、イソマルトの代わりにエリトリトールを使用したコーティング製剤を以下のように配合した。
【0054】
【表6】
【0055】
水分散液の調製及び被覆方法は、実施例1に記載したものと類似の方法で実施した。3%重量増加まで被覆された錠剤の明度(76.8)は、イソマルトを含有する実施例3のもの(L*=85.2)よりも著しく低かった。
【0056】
実施例3のL*値が実施例1に対して低い(85.2対90.9)ことで証明されたように、米デンプン固有の不透明度は炭酸カルシウムのものよりも低いが、別の糖アルコール(すなわちエリトリトール)ではなくイソマルトを使用すると、同様に、米デンプンを含有するフィルムコーティングで被覆された錠剤のL*値が増加することに留意されたい。
【0057】
[実施例4]
25%w/wイソマルトを使用したコーティング製剤を以下のように配合した。
【0058】
【表7】
【0059】
水分散液の調製及び被覆方法は、実施例1に記載したものと類似の方法で実施した。3%重量増加まで被覆された錠剤の明度は85.9であった。明度は、実施例3対実施例4(85.2対85.9)において配合中のイソマルト濃度を30%から25%に下げることにより大きな影響を受けなかった。
【0060】
[実施例5]
可塑剤を含まないコーティング製剤を以下のように配合する。
【0061】
【表8】
【0062】
水分散液の調製及び被覆方法は、実施例1に記載したものと類似の方法で実施した。許容される白色度を有する被覆基材が得られる。
【0063】
[実施例6]
微粒子サイズMCCを不透明剤として使用したコーティング製剤を以下のように配合した。
【0064】
【表9】
【0065】
水分散液の調製及び被覆方法は、実施例1に記載したものと類似の方法で実施した。3%重量増加まで被覆された錠剤の明度は85.4であった。
【0066】
[実施例7~12]
これらの実施例では、指定量の不透明剤を置き換えるために実施例1~6の製剤を改変する。水分散液を同じ方法で作製し、同じ方法で3%の重量増加まで錠剤を被覆するのに使用して、不透明度を高めたフィルムコーティングをその上にもたらす。
【0067】
【表10】
【0068】
本発明の好ましい実施形態であると現在信じられているものについて記載してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく変更及び修正を加えることができることを理解するであろう。本発明の真の範囲内に入る全てのそのような変更及び修正を請求することを意図している。
【国際調査報告】