(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】吸収性繊維複合物および得られる高性能生成物
(51)【国際特許分類】
D06M 15/09 20060101AFI20240126BHJP
D06M 15/03 20060101ALI20240126BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240126BHJP
D06M 101/06 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
D06M15/09
D06M15/03
A61F13/53 300
D06M101:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542868
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022012228
(87)【国際公開番号】W WO2022155278
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523266073
【氏名又は名称】ソーン マテリアルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,デービッド,エス.
(72)【発明者】
【氏名】コルメナレス,フアン セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,アリソン
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,アレキサンダー
【テーマコード(参考)】
3B200
4L033
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BB01
3B200BB02
3B200BB17
3B200DB02
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC07
4L033CA02
4L033CA05
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的に水膨脹性コーティング層により被覆される繊維性コアを有する複合材料を包含し、ここで該水膨脹性コーティング層は、水膨脹性ポリマーを含む。本発明はまた、かかる複合材料を製造するための方法を包含し、かかる複合材料から作製される製造物品およびかかる物品を製造する方法をさらに包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に水膨脹性コーティング層で被覆される繊維性コアを含む複合材料であって、水膨脹性コーティング層が第1の水膨脹性ポリマーを含む、複合材料。
【請求項2】
繊維性コアがセルロース性材料を含む、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
繊維性コアが本質的にセルロース性材料からなる、請求項2記載の複合材料。
【請求項4】
セルロース性材料がフラッフパルプである、請求項2記載の複合材料。
【請求項5】
水膨脹性コーティング層が第2の水膨脹性ポリマーを含む、請求項1記載の複合材料。
【請求項6】
第1の水膨脹性ポリマーがカルボキシアルキルセルロースであり、第2の水膨脹性ポリマーがキサンタンガムである、請求項5記載の複合材料。
【請求項7】
第1の水膨脹性ポリマーおよび第2の水膨脹性ポリマーが、電荷-電荷複合体化により形成される不均一ポリマー網状構造内で組織化される、請求項5記載の複合材料。
【請求項8】
水膨脹性コーティング層が泡を含む、請求項1記載の複合材料。
【請求項9】
泡が泡生成材料により維持されるかまたは形成される、請求項8記載の複合材料。
【請求項10】
泡生成材料が界面活性剤を含む、請求項9記載の複合材料。
【請求項11】
水膨脹性コーティング層が、水膨脹特性を有さない1つ以上の添加剤を含む、請求項1記載の複合材料。
【請求項12】
1つ以上の添加剤の少なくとも1つが、可塑剤、皮膚若返り剤、医薬品、臭気吸収剤または中和剤および芳香剤からなる群より選択される、請求項11記載の複合材料。
【請求項13】
少なくとも1つの添加剤が可塑剤である、請求項12記載の複合材料。
【請求項14】
少なくとも1つの添加剤が強化添加剤である、請求項12記載の複合材料。
【請求項15】
強化添加剤が天然の不溶性繊維材料を含む、請求項14記載の複合材料。
【請求項16】
強化添加剤がナノセルラー因子を含む、請求項14記載の複合材料。
【請求項17】
水膨脹性ポリマーが合成水膨脹性ポリマーである、請求項1記載の複合材料。
【請求項18】
水膨脹性ポリマーが天然由来水膨脹性ポリマー性材料である、請求項1記載の複合材料。
【請求項19】
天然由来水膨脹性ポリマー性材料が天然由来親水コロイドを含む、請求項18記載の複合材料。
【請求項20】
天然由来親水コロイドが多糖類である、請求項19記載の複合材料。
【請求項21】
多糖類が、キサンタンガム、ペクチン、アミロペクチン、カラギーナン、アルギン酸塩、寒天-寒天、セルロースガム、セルロース、ペクチンエステル、ゲランガム、グアールガム、アラビアゴム、イナゴマメゴム、ジウタン、ウェラン、タルン、オリバナム、カラヤ、ガッティ、ダマール、トラガカントゴムおよびそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項20記載の複合材料。
【請求項22】
多糖類がキサンタンガムである、請求項21記載の複合材料。
【請求項23】
多糖類がセルロースである、請求項20記載の複合材料。
【請求項24】
セルロースがカルボキシアルキルセルロースである、請求項23記載の複合材料。
【請求項25】
カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択される、請求項24記載の複合材料。
【請求項26】
第2の天然由来の親水コロイドをさらに含む、請求項25記載の複合材料。
【請求項27】
第2の天然由来の親水コロイドがキサンタンガムである、請求項26記載の複合材料。
【請求項28】
水膨脹性ポリマーが、水と接触する際にヒドロゲルを形成する、請求項1記載の複合材料。
【請求項29】
水膨脹性ポリマーが架橋される、請求項1記載の複合材料。
【請求項30】
水膨脹性ポリマーがその表面上のみで架橋される、請求項29記載の複合材料。
【請求項31】
架橋が架橋剤により実行される、請求項29記載の複合材料。
【請求項32】
架橋剤が、嵩高い、ゆっくり拡散する架橋剤である、請求項31記載の複合材料。
【請求項33】
架橋剤が、オリゴマー性アームを有する多官能性エポキシである、請求項31記載の複合材料。
【請求項34】
架橋剤が、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)、ポリマー性メチレンジフェニルイソシアネート、ポリ(エチレングリコール)およびジグリシジルエーテルからなる群より選択される、請求項31記載の複合材料。
【請求項35】
架橋が架橋剤およびさらなる架橋剤により実行される、請求項31記載の複合材料。
【請求項36】
さらなる架橋剤(crosslinking agent)が、架橋剤(crosslinker)とは異なる特性を有する、請求項35記載の複合材料。
【請求項37】
さらなる架橋剤が触媒である、請求項36記載の複合材料。
【請求項38】
請求項1記載の複合材料を含む製造物品。
【請求項39】
該物品が個人ケア製品である、請求項38記載の製造物品。
【請求項40】
個人ケア製品が、ダイヤパー、成人用失禁製品、流体吸収パッドおよび女性用衛生製品からなる群より選択される、請求項39記載の物品。
【請求項41】
該物品が医薬用途を意図する医薬用途製品である、請求項38記載の製造物品。
【請求項42】
医薬用途が、創傷治療、血液凝固、皮膚状態の治療、医学的または健康治療の表面適用、および医薬品治療の経皮散布からなる群より選択される、請求項41記載の物品。
【請求項43】
乾燥またはわずかに湿潤の形態のセルロース性基板を提供する工程;
セルロース性基板と水膨脹性ポリマーの水性懸濁物を混合して、コーティング混合物を形成する工程;
コーティング混合物をセルロース性基板に適用して、セルロース性基板上に水膨脹性ポリマーの実質的に一様なコーティングを有するコーティングされたセルロース性基板を形成する工程;および
コーティングされたセルロース性基板をシートに形成する工程
を含む、請求項1記載の複合材料を製造する方法。
【請求項44】
セルロース性基板がフラッフパルプである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
混合する工程が、産業用混合機または押出し成形機を利用する、請求項43記載の方法。
【請求項46】
混合する工程が、フォーミングによりコーティング混合物を膨張させるサブ工程をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項47】
形成する工程が、カレンダーロール、ブレードコーターまたはスリットダイを利用する、請求項43記載の方法。
【請求項48】
架橋剤製剤をシートに実質的に均一に適用する工程をさらに含む方法であって、架橋剤製剤が、実質的に一様なコーティングの少なくとも表面に到達し、その架橋を実行する、請求項43記載の方法。
【請求項49】
架橋剤製剤を適用する工程が、シートにわたり一様に架橋剤製剤を噴霧するための噴霧バーを利用する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
架橋剤製剤を適用する工程が、シート全体にわたり架橋剤製剤を実質的に均一に分布させるための圧力差を使用する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
架橋剤製剤が、実質的に一様なコーティングの表面上のみに作用する、請求項48記載の方法。
【請求項52】
架橋剤製剤が表面に浸透して、表面の下で実質的に一様なコーティングの一部の架橋を実行する、請求項48記載の方法。
【請求項53】
請求項1記載の複合材料を提供する工程;
複合材料を機械的分離プロセスにより処理して、繊維間分離を増加させる工程;
処理する工程の前または後に複合材料を乾燥させ、それにより乾燥した吸収性繊維生成物を形成する工程;および
乾燥した吸収性繊維生成物を、吸収性物品に適した形状に切断する工程
を含む、吸収性物品を形成する方法。
【請求項54】
複合材料の繊維性コアがセルロース性材料を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
セルロース性材料がフラッフパルプである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
機械的分離プロセスがハンマーミルプロセスである、請求項55記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年1月14日に出願された米国仮出願第63/137,411号の利益を主張する。上記出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
出願の分野
本願は、吸収性繊維系複合物およびそれから形成される物品に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
繊維性複合生成物は多くの用途に有用である。例として、個人ケア製品として使用される使い捨て吸収性物品は、超吸収性ポリマー材料と組み合わせたセルロース繊維で形成され、これは、該生成物が大容量の身体排出物などの流体を吸収および管理することを可能にする。ダイヤパー、成人用失禁製品、女性用衛生製品等のこれらの使い捨て吸収性物品において、機能する構成成分は、超吸収性ポリマー(SAP)ゲルビーズまたは他の粒状吸収性材料を生じる剥離された(debonded)フラッフパルプなどの繊維性コアを含む吸収性構造である。しかしながらかかる吸収性物品には、繊維性支持体およびそれに取り付けられるポリマー性超吸収性構成成分を使用する複合物構造に由来する固有の制限がある。
【0004】
吸収性物品のコアとして使用されるフラッフパルプ繊維は、完成品に組み込まれる場合、この層に機械的強度および完全性を提供する。しかしながら、吸収性物品の複合構造内のフラッフパルプ繊維は、堅く、柔軟さがなくなり得るので、該物品は着用者の輪郭に十分に一致しない。強度および構造的支持を提供することに加えて、吸収性複合製品中のフラッフパルプ繊維は、構造内の流体の分布を可能にし、吸収性粒子が流体を均一に吸収することを可能にする。複合物内のSAP粒子の特性は、この目標とは違う目的で働き得る。剥離フラッフパルプの吸収性混合層および粒状吸収剤の主要な機能は流体保持であり、これは性能要求を緩和するための流体分布も含む。しかしながら、この繊維-粒状複合物のアプローチによると、不十分な吸収は単に容量の問題ではなく:SAPの吸収速度/容量と吸収パッドの他の部分に広がる液体の程度/速度の間の釣り合いの問題でもある。
【0005】
従来技術を使用して構築された吸収性層全体への液体拡散は、フラッフパルプ繊維の間隔を空けられたマトリックスにより支持されるこの層の多孔性(空隙体積率(void volume fraction))により促進される。しかしながら、この層内のSAPビーズの吸収性の挙動は、液体の拡散を妨げる。SAPビーズが膨張するにつれて、それらは隣接する孔に衝突し、液体の導入の点で局所的な孔の体積を縮小させ、それにより吸収性物品の浸透性を低下させ、流体の拡散を妨げる。これらの状況下で、吸収性物品の小さな部分のみが、流体が導入された後に流体の負荷を拡散するために利用可能なままであるので、液体注入の限局された部位が、液体の全攻撃に耐えなければならない。
【0006】
より詳細に、ダイヤパーまたは成人用失禁パッドなどの典型的な吸収性物品の混合されたコアの最初の構造的な密度は約0.3g/ccであり、空隙率約80%に対応する(すなわち原則として構造中の体積の80%が液体により占有され得る)。液体が物品に最初に導入される場合、注入の点の近くの空隙空間は迅速に充填され、注入部位で続くさらなる液体は、これらの液体充填空間が、側方の漏れを有することなく製品により受け入れられる前に空になることを待たなければならない。過剰な液体に対処するために、(1)周辺の構造に互いにつながった空隙空間に沿って液体を分散させることおよび(2)SAPビーズに液体を吸収することの2つの機構がある。不運なことに、SAPビーズを使用する従来の繊維系製品は、ゲルブロッキング(またはゲル詰まり)挙動を示し、これはSAPビーズの柔軟さ、それらの別の幾何学的形状および使用環境における製品の圧力に起因する。ゲルブロッキングは、SAPビーズが一定量の液体を吸収した後に大量に吸収し(engorged)、拡張される場合に起こり、その後ビーズは互いに対して変形、移動および凝集し、繊維性マトリックス内の空隙を塞ぎ、吸収性物品の他の部分への液体のさらなる伝達(transmission)を阻害する。
【0007】
SAP挙動のこれらの特徴は、架橋技術により部分的に妨げられ得る。吸収性ビーズを形成するために有用なSAPはしばしば、不飽和カルボン酸またはそれらの誘導体を重合して、これらのポリマー鎖を架橋し(例えば架橋ポリアクリレート)、水不溶性であるが、水吸収性である吸収性材料を作製すること(すなわちヒドロゲル形成)により作製される。架橋の量を高めることにより、典型的に液体飽和吸収性ビーズの吸収容量も低減しながら、それらのゲル強度が高められ得る。ヒドロゲル層のゲル強度を高めることは、この層における構造完全性を保持してゲル封鎖を減少させることによりその浸透性を向上するが、架橋により生じる浸透性の増加は、吸収容量を犠牲にすることで生じる。すなわち、架橋は、吸収性物品に安定性および強度を提供するが、それは吸収を減少させるので、該物品は、十分な全体の吸収を提供するためにより高い用量のSAPビーズを必要とする。しかしながら、物品内のSAPビーズの用量を高めることは、それが液体で飽和される際にその構造完全性に影響を及ぼし得る。さらに、SAPビーズを物品そのもの内に適切に保持するために、高価で困難な固定技術が必要になり、物品を形成するために使用されるプロセスの間にSAPビーズの喪失をもたらす。
【0008】
SAPビーズが繊維性メッシュに一体化される場合、SAP自体の表面上に架橋のさらなる層が形成され得、特定の吸収性物品において向上したSAP特性を生じる。しかしながら、SAPビーズについての表面架橋は、それ自体の制限を有する。SAP粒子の膨脹する能力は物理的に制限されるので、表面架橋はSAP粒子の吸収容量を抑え得、それが、その液体の十分な容量を吸収することを妨げる。表面架橋はビーズの膨脹を抑えないように比較的弱く設計されるが、結果的に、架橋は、膨脹のストレスまたは物品が身に着けられている場合に生じる負荷に関連するストレスに耐えるのに十分な強度を有さないことがある。結果的に、架橋されるコーティング層は、ポリマーが最初に膨脹する場合またはポリマーが一定期間膨脹した状態にあった後に割れ得る。コーティング層の割れに伴い、SAP材料は変形し得、多孔性および浸透性の低下を生じ、液体を、着用者の皮膚表面から逃がすことができないこの層にトラップする。
【0009】
さらに、SAP層のより低い浸透性は微生物がこの層に侵入してそれを分解する能力を低減するので、架橋により課される制限は、吸収性物品の生分解性を損なう。また、例えばビーズの表面架橋を高めるためにSAP層に導入される種々の化学成分は、微生物活性および/または酵素分解を阻害し得る。さらに、現在の主要なSAPは、生分解性ではない石油由来の材料である架橋ポリアクリレートである。従来の使い捨て吸収性物品のこれらの特性の全ては、のしかかるように現れる埋め立てごみ問題の一因となる。
【0010】
さらなる問題として、空気積層プロセス(air-laying process)は吸収性パルプ-ビーズ複合物を形成するための産業においてよく知られているが、SAPビーズの一部は繊維マトリックスに物理的にトラップされることに失敗するので、このプロセスもこれらの構造を製造するために効率の悪いものである。この非効率性は、該プロセスに費用を追加し、複雑な回避策(work-around)を必要とし得る。
【0011】
SAP技術を使用するダイヤパー、成人用失禁製品、女性用衛生製品、ペット訓練パッド等の個人用ケア物品は、それらの制限に関わらず広い商業的な成功を達成したが、それらの吸収性を向上するためのSAP技術の使用において成功されていない他の製品がある。特に、ペーパータオルおよびティシュペーパーなどの薄い紙製品は高い吸収性および流体拡散に頼るが、それらは、流体曝露に関わらず、それらの薄い寸法プロフィールを優先させるように設計される。多くのかかる用途について、向上された吸収性および湿潤強度が望ましい。しかしながら、これらの製品は膨脹性であるよりも、使用条件下で薄くあるように設計されるので、(流体吸収に伴い体積を増加させる)SAPビーズは、それらの吸収性性能を向上するために適していない。
【0012】
そのため、流体取込みを最適化して、逃がすための多孔性および吸収性層の通気性を維持しながら、構造的完全性を向上する吸収性物品のための向上された構成についての必要性が当該技術分野に残る。吸収性特性を有する材料を繊維性コアに追加するより効率的なプロセスについての必要性がさらにある。責任を持って処分し得る、生分解性または堆肥になり得る(compostable)吸収性物品についての必要性もある。さらに、物品がその薄いシートプロフィールを保持することを可能にしながら、向上された吸収および高められた湿潤強度を提供するために、吸収性技術が薄いシート形態で使用され得ることが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
概要
態様において、少なくとも部分的に水膨脹性コーティング層により被覆される繊維性コアを含む複合材料が本明細書に開示され、該水膨脹性コーティング層は、第1の水膨脹性ポリマーを含む。態様において、繊維性コアは、セルロース性材料を含むかまたは本質的にセルロース性材料からなり、該セルロース性材料はフラッフパルプであり得る。態様において、水膨脹性コーティング層は第2の水膨脹性ポリマーを含み、第1の水膨脹性ポリマーはカルボキシアルキルセルロースであり得、第2の水膨脹性ポリマーはキサンタンガムであり得る。態様において、第1の水膨脹性ポリマーおよび第2の水膨脹性ポリマーは、電荷-電荷複合体化により形成される不均一ポリマー網状構造内で組織化される。態様において、水膨脹性コーティング層は、泡生成材料により持続または形成され得る泡を含む。泡生成材料は、界面活性剤を含み得る。態様において、水膨脹性コーティング層は、水膨脹特性を有さない1つ以上の添加剤を含み、これは、可塑剤、皮膚若返り剤、医薬品、臭気吸収剤または中和剤および芳香剤からなる群より選択され得る。態様において、添加剤は可塑剤である。他の態様において、添加剤は、天然の不溶性繊維性材料および/またはナノセルラー因子を含み得る強化添加剤(strengthening additive)である。態様において、水膨脹性ポリマーは合成水膨脹性ポリマーであり得るか、または天然由来水膨脹性ポリマー性材料であり得る。態様において、かかる天然由来水膨脹性ポリマー性材料は、多糖類であり得る天然由来親水コロイドを含み得る。かかる多糖類は、キサンタンガム、ペクチン、アミロペクチン、カラギーナン、アルギン酸塩、寒天-寒天、セルロースガム、セルロース、ペクチンエステル、ゲランガム、グアールガム、アラビアゴム、イナゴマメゴム、ジウタン(diutan)、ウェラン(welan)、タルン(tarn)、オリバナム(olibanum)、カラヤ、ガッティ、ダマール、トラガカントゴムおよびそれらの誘導体からなる群より選択され得る。態様において、多糖類は、キサンタンガムまたはセルロースであり得;セルロースは、カルボキシアルキルセルロースであり得、これは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択され得る。態様において、複合材料は第2の天然由来の親水コロイドを含み、これはキサンタンガムであり得る。態様において、水膨脹性ポリマーは、水と接触される際にヒドロゲルを形成する。態様において、水膨脹性ポリマーは架橋され、それは、その表面上のみで架橋され得る。態様において、架橋は、架橋剤(crosslinker)または架橋剤およびさらなる架橋剤(crosslinking agent)によりなされる。架橋剤およびさらなる架橋剤は異なる性質を有し得;さらなる架橋剤は触媒であり得る。態様において、架橋剤は、嵩高く、ゆっくり拡散する架橋剤であり;態様において、架橋剤は、オリゴマーアームを有する多官能性エポキシであり;態様において、架橋剤は、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)、ポリマー性メチレンジフェニルイソシアネート、ポリ(エチレングリコール)およびジグリシジルエーテルからなる群より選択される。
【0014】
態様において、上記の複合材料を含む製造物品も本明細書に開示される。態様において、かかる製造物品は、個人ケア製品であり、これは、ダイヤパー、成人用失禁製品、流体吸収パッドおよび女性用衛生製品からなる群より選択され得る。態様において、かかる製造物品は、医療用途を目的とした医療用途製品であり得、該医療用途は、創傷治療、血液凝固、皮膚状態の治療、医療または健康治療の表面適用および薬学的治療の経皮的散在からなる群より選択され得る。
【0015】
上記の複合材料を製造する方法が本明細書にさらに開示される。かかる方法は、乾燥またはわずかに湿潤の形態のセルロース性基板を提供する工程;セルロース性基板と水膨脹性ポリマーの水性懸濁物を混合して、コーティング混合物を形成する工程;コーティング混合物をセルロース性基板に適用して、セルロース性基板上に水膨脹性ポリマーの実質的に均一なコーティングを有するコーティングされたセルロース性基板を形成する工程;およびコーティングされたセルロース性基板をシートに形成する工程を含み得る。態様において、セルロース性基板はフラッフパルプである。態様において、混合する工程は、産業用混合機または押出し成形機を使用し;混合する工程は、フォーミングによりコーティング混合物を膨張するサブ工程をさらに含み得る。態様において、形成する工程は、カレンダーロール、ブレードコーターまたはスリットダイを使用する。態様において、該方法は、架橋剤製剤をシートに実質的に均一に適用する工程をさらに含み得、ここで架橋剤製剤は、実質的に均一なコーティングの少なくとも表面に到達し、その架橋を実行する。態様において、架橋剤製剤を適用する工程は、架橋剤製剤をシートにわたり一様に噴霧するためにスプレーバーを使用する。態様において、架橋剤製剤を適用する工程は、シート全体に実質的に均一に架橋剤製剤を分布させるために圧力差(pressure differential)を使用する。態様において、架橋剤製剤は、実質的に均一なコーティングの表面のみに働き;他の態様において、架橋剤製剤は、表面にしみ込んで、表面の下の実質的に均一なコーティングの一部の架橋を実行する。
【0016】
さらに、上記の複合材料を提供する工程;複合材料を、機械的分離プロセスにより処理して、繊維間分離を高める工程;処理工程の前または後に複合材料を乾燥し、それにより乾燥した吸収性繊維生成物を形成する工程;および乾燥した吸収性繊維生成物を、吸収性物品に適した形状に切断する工程を含む、吸収性物品を形成する方法が本明細書に開示される。態様において、複合材料の繊維性コアは、フラッフパルプであり得るセルロース性材料を含み、機械的分離プロセスはハンマーミルプロセスであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
1. 吸収性繊維複合物についての構成成分構造
a. コア材料としての繊維
繊維性コアを含む吸収性複合物および水膨脹性ポリマーを含むコーティングが本明細書に開示される。態様において、繊維性コアは、天然供給源の生分解性材料で形成され得る。本明細書で使用する場合、用語「繊維」は、大きなアスペクト比(すなわちその断面寸法よりもかなり大きい寸法長さ、例えば約10、20、30、50または100よりも大きいアスペクト比)を有する構造をいう。形容詞としての「繊維性」は、繊維を含む物質を記載する。本明細書で使用する場合、用語「繊維」についての修飾語としての用語「天然」は、天然供給源由来の繊維をいう。天然および天然由来の繊維としては、植物由来繊維、動物由来繊維および鉱物由来繊維が挙げられる。植物由来繊維は、セルロース性、例えば木材パルプ、綿、黄麻、亜麻、インド麻、サイザル麻、ラミー等が優勢であり得る。天然由来の植物由来繊維としては、化学的に改変されるセルロースなどの繊維が挙げられ得:例えばセルロース(天然材料)は、Rayon(登録商標)もしくはLyocell(登録商標)またはセルロースアセテート繊維などの他のセルロース系天然由来繊維を形成するように改変され得る。植物由来繊維としては、綿もしくはジャワ綿などの種子もしくは果皮由来の繊維、またはサイザル麻およびアガーベなどの葉由来の繊維、または亜麻、黄麻、ケナフ、インド麻、ラミー、籐、ダイズ繊維、つる植物繊維およびバナナ繊維などの植物の幹の周囲の皮もしくは篩部由来の繊維、またはココナッツ繊維などの植物の果実由来のもの、または小麦、米、大麦、竹および草などの植物の茎由来のものが挙げられ得る。植物由来の繊維としては、木材繊維または木材パルプ繊維が挙げられ得る。動物由来の繊維は典型的に、タンパク質、例えば羊毛、絹、モヘア等を含む。鉱物由来の天然繊維は、鉱物から得られる。鉱物由来の繊維は、アスベスト由来であり得る。鉱物由来の繊維は、ガラスまたはセラミック繊維、例えばガラスウール繊維、石英繊維、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素等であり得る。合成繊維は、無機または有機である合成(製造され、天然由来でない)材料から形成される。合成無機繊維としては、ガラス繊維および金属繊維などの製造された鉱物系の繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、ファイバーガラスおよび種々の光ファイバーが挙げられる。金属繊維は、ニッケル、アルミニウムもしくは鉄などの堅いが脆い金属から堆積され得るか、または銅および貴金属などの延性金属から引っ張られ得るかもしくは押し出し成形され得る。合成有機繊維としては、ポリアミドナイロン、PETまたはPBTポリエステル、ポリエステル、フェノール-ホルムアルデヒド(PF)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、アクリル繊維、芳香族、ポリウレタン、エラストマー等のポリマー性材料から製造される繊維が挙げられる。繊維は、天然または合成のいずれにせよ、1種以上の構成繊維を含み得る。例えば、合成繊維は、2つ以上の合成ポリマーが繊維を同軸上にまたは同一線上に形成する押し出し成形される繊維であり得る。
【0018】
b. 繊維性セルロース性コア
例示的な態様において、吸収性繊維複合物のための繊維性コアは、セルロース性コアを含むかまたはそれからなる。コア材料としてのセルロースおよびセルロース性物質は、以下により詳細に記載される吸収性物品の形成に特に有利である。態様において、繊維性セルロース性コアは、製紙工業で良く知られた技術、例えば分離フラッフパルプを形成するための技術を用いて作製される。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「セルロース性物質」は、主要構成成分としてセルロースを有する任意の材料、例えば少なくとも50重量パーセントのセルロースまたはセルロース誘導体を含むこれらの材料を含むことを意味する。したがって、用語「セルロース性物質」としては、典型的な木材パルプ、非木材セルロース性繊維、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、レーヨン、メカニカル木材パルプ、サーモメカニカル木材パルプ、ケミカル木材パルプ、分離ケミカル木材パルプ、トウワタ、細菌性セルロース、綿および前述のもの由来のリサイクル材料が挙げられる。態様において、非木材繊維またはメカニカル木材パルプ繊維は、例えばセルロース性コアに使用される乾燥パルプ繊維重量の約40重量%未満、または約30重量%未満、または約20重量%未満、または約10重量%未満の量で存在し得る。さらなる繊維が、上記の種々の他の繊維供給源由来のセルロース性コアに添加され得る。態様において、バガス、竹、トウモロコシ、綿、亜麻、インド麻、ケナフ、ピートモス、絹等の天然繊維および/またはアクリル樹脂、カルボキシル化ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の合成繊維が添加され得る。
【0020】
例示的な態様において、吸収性繊維複合物のコアとして使用される繊維性セルロース性材料は、分離フラッフパルプ由来であり得る。フラッフパルプは、セルロース繊維を、木材の他の構成成分、または繊維クロップなどのセルロース含有材料もしくはリサイクル紙、厚紙等のリサイクルセルロースの供給源などの他の構成成分からまず化学的に分離することにより形成される。クラフト法または亜硫酸法などの化学的パルプ化(pulping)により、木材または他の植物材料中のリグニンおよびヘミセルロースを、セルロースを脱重合することなくセルロース繊維から洗い流され得る小さな水溶性分子に分解する。得られるパルプは、リグノセルロース性材料であり、これはその後単純化された長網抄紙機上で一様なシートまたは不織マットとして形成され得、乾燥前にその後の繊解を容易にするように分離剤が添加され得る。フラッフ(または毛羽立たせた)パルプを形成するために、化学的に分離されたシートを、例えばハンマーミル中で機械的繊解に供し、吸収性物品を形成するために使用され得る乾燥した繊解生成物を生じる。フラッフパルプを形成するための技術は、例えばその開示が参照により本明細書に援用される米国特許第6,059,924号、同4,081,316号および同4,065,347号に記載されるように、当該技術分野においてよく知られる。
【0021】
乾燥フラッフパルプの作製における使用に有利な木材繊維は一般的に、マツ、アメリカトガサワラ、トウヒおよびドクニンジンなどの軟材(裸子植物)に由来し、これらは長繊維針葉樹木材種であり;例示的な種としては、ピセア・グラウカ(Picea glauca)(カナダトウヒ)、ピセア・マリアナ(Picea mariana)(クロトウヒ)、ピセア・ルブラ(Picea rubra)(アカトウヒ(red spruce))、ピヌス・ストローブス(Pinus strobus)(ストローブマツ)、ピヌス・カリベアウ(Pinus caribeau)(スラッシュマツ(slash pine))およびピヌス・タデア(Pinus tadea)(テーダマツ)が挙げられる。軟材材料は一般的にフラッフパルプに使用されるが、本明細書に開示される吸収性繊維性複合材料は、さらにまたは代替的に、ハンノキ、ハコヤナギ、ゴムの木(例えばユーカリノキ)、オーク等の硬材(被子植物)繊維供給源から作製されるフラッフパルプを含み得る。態様において、フラッフパルプは、軟材、硬材またはその両方の混合物などの1つ以上の木材供給源に由来し得る。これらのセルロース性コアを形成するための木材パルプ繊維は、サーモメカニカル、ケミメカニカルおよびケミサーモメカニカルパルププロセスなどのメカニカルパルプ化技術を含む任意のパルプ化プロセスから調製され得る。
【0022】
c. 水膨脹性コーティング材料
態様において、部分的または完全にセルロース性コアを覆う水膨脹性コーティングまたはシェルが形成される。態様において、繊維の表面上のより多くの水膨脹性材料は複合物についての有利な特性を生じ得るので、水膨脹性コーティングまたはシェルによるセルロース性コアの比較的完全な被覆が望ましい。
【0023】
本明細書に開示される複合物のための水膨脹性コーティングまたはシェルを形成するために使用される材料は、比較的短時間で有意な量の水または水性流体を吸収する天然または合成の親水性ポリマーを含み得る。すなわち、かかるポリマーは水膨脹性であり(すなわち比較的短時間で有意な量の水または水性流体を吸収する)、水膨脹特性を有するといわれる。水膨脹性ポリマーは、液相で分散され、ゾル(すなわち連続液体培体中の非常に小さい固体粒子のコロイド状懸濁物)を形成する固体として配置され得;水膨脹性ポリマーはまた、水を吸収し得、液体を、表面張力効果および水素結合により網状構造内に陥れる親水性ポリマー網状構造を形成し得、そのために固体と同様に挙動するように十分粘性のコロイド状懸濁物(すなわちゲル)を形成する。水の存在下で溶解する代わりに、水膨脹性ポリマーは、水を吸収してそれと複合体化するかまたはそうでなければ水に結合して三次元網状構造を形成する。ポリマー上の親水性基は、水膨脹性ポリマー性網状構造の強い親水性の原因となり得る。
【0024】
水膨脹性ポリマー性網状構造は、それらの構造内の30wt.%の水を緩やかに吸収する、典型的に保持するものから、それらの重量の何倍も多くの水性流体を保持するように超吸収するものまでの範囲であり得る。それらが安定な三次元ゲル構造に形成される場合、この構造はヒドロゲルと称され:本明細書で使用する場合、用語「ヒドロゲル」は、水膨脹性材料のマトリックス内に水を含むものから形成される、比較的水不溶性のゲルをいう。特定のヒドロゲルは、直鎖ホモポリマー、直鎖コポリマーまたはブロックもしくはグラフトコポリマーの、架橋されるかまたはもつれる網状構造で形成され得る。他のヒドロゲルは、相互浸透網状構造、物理的混合物または疎水性ドメインにより安定化される親水性網状構造として形成され得る。他の例において、ヒドロゲルは、ポリイオン-多価イオン複合体またはポリイオン-ポリイオン複合体または水素結合複合体として形成され得る。ヒドロゲルは、可逆的(物理的)ヒドロゲルまたは永久(化学的)ヒドロゲルであり得る。物理的ヒドロゲルは:水含有ポリマー性網状構造が分子もつれまたは晶子により一緒になって保持される単純もつれ系;網状構造が、反対の電荷の多価電解質と多価イオンの間の相互作用により安定化されるイオン媒介網状構造;および加熱または冷却に応答して三次元構造を形成する熱誘導網状構造を含む。化学的ヒドロゲルは、主に共有結合により支持され、架橋ポリマーもしくはコポリマーなどの結合された構造、または重合された相互浸透網状構造を含む。ヒドロゲルはまた、光の適用および温度変化などの外部刺激に応答して起こる架橋またはもつれにより形成され得る。光刺激は、その送達が制御および定量化するのに容易であるので、架橋適用に特に有利である。光は、オンおよびオフに切り替えられて、線量は、所望の機能的効果を達成するように正確に制御され得る。さらに、光波長は、得られるヒドロゲルにおいて所望の特性を生じるように特異的に選択され得る。紫外線曝露は有利であるが、適切な場合に他の波長が選択され得る。
【0025】
水膨脹性ポリマーおよびそれが形成するヒドロゲルは、天然材料もしくは合成またはそれらの組み合わせであり得る。例えば、天然水膨脹性ポリマーとしては、アルギン酸塩およびカラギーナンなどのアニオン性ポリマー、キトサンなどのカチオン性ポリマーならびにデキストラン、アガロース、セルロースおよびそれらの誘導体などの中性ポリマーが挙げられる。合成水膨脹性ポリマーとしては、PEGおよびPLAなどのポリエステル、アクリレートならびにポリビニルアルコールが挙げられる。
【0026】
態様において、繊維性コアのコーティングまたはシェルを形成するために使用される水膨脹性ポリマー性材料は、その極性または荷電した官能基がそれらを水中で可溶性にして水膨脹特性をさらに付与する高分子量親水性ポリマーを含む天然由来親水コロイドを含み得る。本明細書に開示される複合物を形成するための天然由来親水コロイドの重要な部類は多糖類であり、これは、生分解性ならびに個人ケアおよび他の健康(health)および健康(wellness)用途のために十分に認識される制御し易い受け入れのさらなる利点を有する。本明細書に開示される複合物を形成するために有用な水膨脹性多糖類の例としては、キサンタンガム、ペクチン、アミロペクチン、カラギーナン(または限定されることなくκ、ιまたはλカラギーナンを含む)、アルギン酸塩およびアルギン酸塩(限定されることなくプロピレングリコールアルギン酸塩などの誘導体を含む)、寒天-寒天、セルロースガム、セルロース(例えば限定されないがカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等を含むカルボキシアルキルセルロース)、ペクチンエステル、ゲランガム、グアールガムおよびグアール誘導体、アラビアゴム、イナゴマメゴム、ジウタン、ウェラン、タルン、オリバナム、カラヤ、ガッティ、ダマール、トラガカントガムなどのゴム、または前述のいずれかの修飾物もしくは混合物などの材料が挙げられる。態様において、高粘度多糖類は、それらの膨脹性特性について特に有利である。単独用途または前述の水膨脹性多糖類との併用のための他の所望のバイオポリマーとしては、デンプン、加工デンプン、アミロース、加工アミロース、キトサン、加工キトサン、キチン、加工キチン、ゼラチン、コンニャク、加工コンニャク、コロハガム、加工コロハガム、メスキートゴム、加工メスキートゴム、アロエマンナン、加工アロエマンナン、酸化多糖類、硫化多糖類、カチオン性多糖類等が挙げられ得る。態様において、合成水膨脹性ポリマー(例えばポリアクリレートまたはポリアクリルアミド)は、前述のいずれかと合わされ得るかまたは天然由来水膨脹性ポリマーの代替物として使用され得る。
【0027】
キサンタンガム(XG)は、本明細書に開示される繊維性コアのためのコーティング材料として特に有利である天然の親水コロイドである。XGは、温度、pHおよび塩分の広範囲の変化に抵抗性であるアニオン性の多糖類である。XGは、その三糖類側鎖とそのポリマー骨格の間の水素結合の利用可能性のために、頑強ならせん構造を形成し得る。結果的に、これらの頑強ならせんの無作為的な空間的方向は、架橋される場合に、それらに、高度に膨脹し得る性能を付与する。この頑強な膨脹機構のために、コア繊維性基板上のコーティングされる単一の低ポリマー付加物(≦1.5wt% LOI)は、その液体重量の10~1000倍までまたはさらに多くを吸収し得るゲルを形成し得る。それらの水中の重量の少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも300倍、少なくとも500倍、少なくとも800倍、少なくとも900倍または少なくとも1000倍を吸収し得る多糖類ポリマーが特に有用である。態様において、基板に適用されるかかる吸収性ポリマーの量(乾燥固形基準)は、基板材料の重量に対して、一般的に約0.1~10wt.%または0.5~5wt.%であり得る。これらの広い範囲内で、<5wt.%、<4wt.%、<3wt.%、<2wt.%およびさらに<1.5wt.%のポリマー負荷が有利であり得る。
【0028】
上に開示されるものなどの水膨脹性ポリマーはフラッフパルプをコーティングするための製剤を調製するために有利であるが、これらのポリマー(例えばヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースポリマー)のいくつかは、高価であるか、または制限された量でのみ利用可能であることが理解される。そのため、コーティングされたフラッフパルプ複合物を調製するために使用されるポリマー性コーティング材料の体積を減少することは、SAPなどの従来の吸収性材料に対してこれらの材料をより費用競合的にし得、膨脹の増加などの性能の向上を提供し得る。これを達成するために、ポリマー混合物は、それをフラッフパルプマトリックスに適用する前に、フォーミングにより拡大され得る。その体積を拡大するために、いくつかの異なるフォーミング技術、例えばポリマー混合物内で泡を生じるおよび/または泡を保持する材料(いずれも「フォーミング材料」)を付加することが、ポリマー性混合物に適用され得る。態様において、混合物自体内で適切な化学反応を行うことにより、混合物中でCO2気泡が生じ得;重炭酸ナトリウムなどの泡生成材料およびクエン酸などの酸を使用して、例えば酸-炭酸塩中和反応が行われ得る。重炭酸塩粒子は、泡生成材料としてポリマー混合物に添加され得、その後酸が添加され、気体性二酸化炭素を生じる。次いで、混合物中でそのように生じたCO2気泡は、混合物中で撹拌されて泡を形成し得る。かかる泡内のCO2気泡により形成される空隙は、ナノスケールから裸眼で眼に見えるサイズまでの範囲であり、体積の所望の拡大を有する高レベルの多孔性が導入される。フォーミングのための別のアプローチとして、例えば高速オーバーヘッドミキサーまたは浸漬混合機の使用による当該技術分野で良く知られるような機械的方法が使用され得る。
【0029】
態様において、最終成分として、界面活性剤が膨脹性ポリマー混合物に添加され得る。界面活性剤の存在は、機械的または化学的手段により、フォーミングを容易にし得る。界面活性剤の添加はまた、所定の体積の混合物に必要な膨脹性ポリマーの量を低減し得る。理論に拘束されることなく、界面活性剤は、膨脹性ポリマー混合物内にマイクロ空隙を生じる効果を有し得、ここで気泡(あとでナノまたはマイクロ空隙の形成を可能にする)は、中空の球または六角形プリズムなどの他の形状に調整される界面活性剤分子の疎水性および親水性区分として界面活性剤自体から形成され;無作為に分布され、これらのマイクロ空隙は、膨脹性ポリマー網状構造内への水分子の進入を可能にし、その膨脹する能力を増加することが理解される。膨脹性に対するこの効果は、フォーミングを容易にすることに対して界面活性剤が有し得る効果を補完し、そのためにフラッフパルプ上の有効な膨脹性コーティングのために必要なポリマーの量を低減する。フォーミングを容易にするために、約90/10(ポリマー対界面活性剤)~約50/50の範囲の比で基部製剤(本明細書に記載されるものなど)に界面活性剤が添加され得、これらの範囲は、泡を生じるためおよびフラッフパルプマトリックスに適用される場合に最終混合物の膨脹性を生じるためにより有効である、より高い量の界面活性剤を有する。これらの目的に有用な界面活性剤の例としては、カプリルグルコシド、ココグルコシド、ドデシル硫酸ナトリウム等、特に個人ケア産業における当業者に良く知られる界面活性剤が挙げられる。態様において、界面活性剤は、製剤の未成熟なフォーミングを回避するためおよび任意の添加剤を含む仕上げられた混合物のフォーミングを容易にするために、乾燥前の最終工程として混合物に導入され得る。界面活性剤を添加した後、フォーミングは、泡を機械的または化学的に生じるために、当該技術分野で良く知られる方法を使用して行われ得る。フォーミングの後、ほとんど透明性を有さない混合物が生じ、これは全体に分布された泡の気泡に起因する。乾燥後、吸収性について材料を試験して、その乾燥重量の28~32倍の膨脹性を生じることを観察し、この結果は、従来のSAPを使用する現在利用可能なものと同等かまたはそれよりもよい。
【0030】
態様において、性能を向上するために水膨脹性コーティング製剤中に他の添加剤が含まれ得る。例えば、グリセリン/グリセロールまたは同様の化合物の製剤への添加は、コーティングの剥げを低下する等の性能を向上し得る。グリセリン/グリセロールは少量、例えば約0%~約20%または約5%~約15%または約9%~約12%の量で添加され得る。例として、グリセリンまたはグリセロールは、約10%の量でXG製剤に添加され得:10% XGポリマーおよび1%グリセリンまたはグリセロールを含むコーティング製剤は、膨脹性能を向上し得、剥がれの低下および延性の増加を伴ってコーティング粘稠度を向上し得る。
【0031】
別の例として、最終生成物に特定の特性を付与するために、水膨脹性コーティングに固形粒状材料を添加し得る。活性炭(activated charcoal)、活性炭(activated carbon)、バイオ炭(biochar)等の固体は、コーティングに含まれ得、そのためにフラッフパルプ複合物に埋め込まれ得、複合材料が臭気を生じる分子を捕捉することを可能にする。臭気を低減するこの能力は、個人ケア品目、ダイヤパー等に使用されるフラッフパルプ製品について特に有利である。かかる固体は、以下に記載される機構により複合材料の強度をさらに増加し得る。
【0032】
有利な態様において、本明細書に記載される複合フラッフパルプ系材料の全体的な性能を向上するために、繊維または粒子などの強化添加剤が水膨脹性コーティングに含まれ得る。膨脹性ポリマーコーティング製剤のより厚い層をパルプマトリックスに適用することにより複合物の全体的な強度が向上され得るが、さらなるポリマーは、マトリックス内の空隙が塞がれ、結果的に膨脹性および吸収性に影響を及ぼす可能性を増加することが理解される。理論に拘束されることなく、強化目的で選択される繊維または粒子が、パルプ繊維内の孔を埋めることによりフラッフパルプマトリックスを強化し、それにより全体的な複合物の強度を増加し得ることが構想される。小さい繊維または粒子が孔を埋め得るかまたは塞ぎ得るので、コーティングされたフラッフパルプ複合物内の移動は制限され、それらは、1断面単位当たりの材料の量まで添加され得、それにより最終複合生成物の全体的な強度が増加される。また、繊維または粒子がポリマー自体と相互作用し得、繊維または粒子がポリマーマトリックス内に分散相を構成し、それによりフラッフパルプマトリックスへの適用のために増加した強度の多相材料が形成されることも構想される。繊維または粒子を使用して、水膨脹性コーティング自体の強度が向上される。したがって、全体的な複合物の特性を向上するために作用する:1)フラッフパルプ内の孔を充填して、吸収性および強度を向上させること、および2)水膨脹性コーティング製剤を、増加した強度を有する多相複合物として調製して、フラッフパルプ繊維をコーティングするためにそれを使用することの2つの別々の機構がある。これらの2つの機構(孔充填および繊維コーティング)を使用して、全体的なフラッフパルプ複合物(すなわちポリマーコーティングフラッフパルプマトリックス)の強度、例えば限定されないが増加した張力、圧縮、せん断またはねじれの強度を向上するために、繊維性または粒状添加剤を使用し得る。
【0033】
強化添加剤は、完成した複合材料に関係のある特定の特性に基づいて選択され得る。有利に、水または尿に比較的不溶性である繊維または粒子が使用され得る。態様において、キトサン繊維、アルギン酸塩繊維、種子繊維、葉繊維、篩部繊維、果実繊維、茎繊維、動物繊維、コラーゲン等の天然の不溶性繊維材料が使用され得る。他の態様において、オオバコ種子穀皮粉末、クルミ殻粉末、沈殿した炭酸カルシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン等の小さな不溶性有機または無機粒子が使用され得る。
【0034】
態様において、ナノ繊維化セルロース、マイクロ繊維化セルロースまたは結晶性セルロース繊維(まとめて「ナノセルロース性因子」または「NCE」)などの天然の不溶性材料を膨脹性ポリマーコーティング製剤に添加して、その強度および他の特性を向上し得る。NCE強度添加剤は、植物系セルロース性材料に由来し、そのため本明細書に開示されるコーティングフラッフパルプ複合物の好ましい環境プロフィールを損なうことがないので、特に望ましい。NCEについての供給源としては、限定されることなく:樹木、低木および草などの天然に存在する植物に見られるような混合されていないバイオマス;トウモロコシの実を採った後の茎や葉およびトウモロコシの穂軸、サトウキビのバガス、わら、アブラヤシの空の果実のふさ、パイナップルの葉、リンゴのへた、コイア繊維、桑の木の樹皮、米の穀皮、豆の穀皮、ダイズの穀皮(または「ダイズ穀皮(soyhull)」)、コットンリンター、ブルーアガベ廃棄物、ノースアフリカングラス(North African glass)、バナナの疑似茎の残留物、ラッカセイの殻、ピスタシオナッツの殻、ブドウの搾りかす、シアバターノキの実の殻、パッションフルーツの果皮、フィケ(fique)繊維廃棄物、サゴの実の殻、ケルプ廃棄物、ジュンクスプラントの茎等の農業由来の廃棄物;製材所および製紙工場由来の廃棄物などの林業由来の廃棄物;ならびにバイオ燃料などの用途のための栽培されるスイッチグラスおよびエレファントグラスなどの特殊な目的の農作物が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「ナノ繊維化セルロース」(NFC)および「マイクロ繊維化セルロース」(MFC)は、植物由来セルロース原料から抽出される伸長されたセルロース繊維をいう。NFC繊維とMFC繊維は、サイズおよび形状が互いに異なり:NFC繊維は、MFC繊維よりも直径が非常に小さく、まっすぐで棒状であり得;MFC繊維は直径がより大きく、外観がより柔軟であり、形状が不規則であり得る。文献にはNFC繊維およびMFC繊維についての寸法の範囲が引用されるが、NFC繊維はナノスケール(例えば10~20nmの直径を有する)であり、MFC繊維はより大きくあり得るが、依然としてナノ範囲、例えば20~100nmである直径を有する。本明細書で使用する場合、用語「結晶性セルロース」は、植物由来セルロース性原料中のセルロース鎖の結晶性領域由来のセルロース性粒状物質をいう。結晶性セルロースは粒状形態で抽出され得、粒子のサイズに応じてセルロースナノ結晶またはセルロースマイクロ結晶と称される生成物を生じる。
【0036】
態様において、NFC繊維などのNCEは、膨脹性ポリマー製剤に混合され得る。コーティングされたフラッフパルプ生成物の強度が向上されながら、ポリマー性混合物のいくらかの膨脹性が保持されたことを示す0.1%(乾燥)および0.05%(乾燥)の量のNFC繊維が試験されている。特定の実験において、より少ないNFC繊維添加剤の添加は、より高い膨脹性を保った。他の態様において、複合セルロース生成物を強化することは、パルプマトリックスについてより強力なパルプストックを使用することにより達成され得る。硬材パルプは、軟材パルプよりも強力なパルプマトリックスを提供し、例えば硬材パルプフラッフパルプは、単独でまたは他のパルプマトリックスと合わせて使用され得;バガスなどの他の樹木非含有パルプも強力なパルプマトリックスを生じ、全体的なマトリックス強度を向上するために、単独でまたは他のパルプと合わせて使用され得る。より強力なフラッフパルプマトリックスの使用は、上述の繊維または粒子を有する膨脹性ポリマーコーティングの強化と合わされ得る。
【0037】
d. 繊維性コアマトリックスへのコーティングの適用
選択された水膨脹性ポリマーを複合セルロース生成物の繊維性コアに適用するために、選択された水膨脹性ポリマーから最初に水溶液を調製し、乾燥(またはわずかに湿潤)パルプ繊維と、乾燥時に繊維の適切な被覆を提供する化学量論比、例えば約1wt.%の水性キサンタン対乾燥パルプ、または1%、2%もしくは3%の乾燥キサンタン対乾燥パルプの比で混合する。水膨脹性ポリマーのより高い負荷は、パルプ表面上により厚い得られるフィルムを有するより粘性のコーティング溶液をもたらす。
【0038】
態様において、フラッフパルプマトリックス内のフラッフパルプ繊維上の膨脹性ポリマーの堆積をより良く制御するために、添加剤が使用され得る。特定の場合において、選択された膨脹性ポリマーは、パルプ繊維をコーティングし得るだけでなく、全体的なフラッフパルプマトリックス内の孔を占有および詰まらせもし得、性能問題を引き起こす。フラッフパルプマトリックス内で空隙または孔を開放したままにすることにより材料の全体的な膨脹が促進されるが、空隙または孔の詰まりは所望の膨脹を妨げ得ることが理解される。この問題に対処し、膨脹を容易にするために、選択された膨脹性ポリマーを、アルコール、アセトンまたはポリマー自体が溶解性でない同様の溶媒などの添加剤と混合し得;かかる添加剤の使用は、孔に浸潤して詰まらせることなく、ポリマー自体を、フラッフパルプ繊維上に直接堆積しやすくし得る。かかる溶媒をこの様式で使用するために、該溶媒は、膨脹性ポリマーを添加する前または後にパルプスラリーに添加され得る。例えば、膨脹性ポリマーは、少量の溶媒を添加(例えば膨脹性ポリマー重量に対して約10%未満の溶媒の量)する前または後に水溶液として添加されて、ポリマー-溶媒混合物を形成し得る。増加した強度のために繊維性または粒状の添加剤が使用される場合、それらはこの段階でも添加され得る。次いで、膨脹性ポリマーに加えて任意の所望の添加剤を含む混合物がパルプマトリックスに適用され得る。上述のように膨脹性ポリマーをパルプ繊維上に選択的に堆積させ、それによりポリマーが、パルプマトリックス内の孔および空隙を詰まらせることを防ぐことは有利であり得るが、この一連の行為はまた、複合材料の全体的な強度を低下し得る。したがって、繊維または粒子などの強度増強添加剤の組合せを使用して、複合材料(すなわちコーティングされたフラッフパルプ)の全体的な強度を向上し得、溶媒の添加により、ポリマーがマトリックス内の孔を塞ぐことを防ぐ。
【0039】
適用プロセスの第2の工程として、コーティングされたコアを乾燥する前に、遅延拡散架橋物質を有利に含む架橋剤製剤を導入して、ポリマー性コーティングの表面で架橋が優先的に起こることを確実にし得る。態様において、架橋剤は、それがフラッフパルプマトリックスに適用される前にポリマー性混合物に導入され得;他の態様において、架橋剤は、ポリマー性コーティングをフラッフパルプマトリックスに適用した後に適用され得る。
【0040】
膨脹性連結多糖類網状構造を作製するための有効な架橋剤としては、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)、ポリマー性メチレンジフェニルイソシアネート(PMDI)およびポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル等の任意の二または多官能性エポキシドが挙げられる。エポキシ架橋剤を使用する場合、塩基、第三級アンモニアおよび第四級アンモニウム触媒が、適切な架橋変換を達成するために添加され得る。使用される多糖類の供給源および等級に応じて、種々の量の架橋剤が使用され得る。これらの吸収性繊維複合物を形成するための架橋戦略は、ポリマー性コーティングの表面への架橋を制限しながら、内部のゲル架橋を最小化することを意図する。これを達成するために、架橋部位の間で可撓性かつ伸長性のアームを有する架橋剤が選択され得るので、多糖類コーティング内の内部ポリマー鎖は、液体の吸収の際に伸長し得、コーティングマトリックスが液体を保持して膨脹することを可能にする。
【0041】
例示的な架橋剤製剤は、オリゴマーアームを有する多官能性エポキシを含む。かかる嵩高い架橋剤は、特に乾燥前にコア上に厚いポリマー性コーティング層がある場合にゆっくり拡散する。この高い粘性の層は、架橋剤拡散率の低下を生じ、反応を層の表面に優先的に方向づけ、その内部は拘束されずに架橋されないままである。コーティング層内の閉じ込められない内部は、その容易な拡張/膨脹を可能にする。パルプ-ポリマー複合体はコア-シェル構成であるので、移動して凝集するゲル粒子はもはや可能ではない。繊維間の空隙空間は開放したままであり、吸収された液体の迅速な広がりを可能にする。液体が吸収性マトリックスの遠くの部分に移動する場合、液体は、コーティングされた繊維により一様に吸収される。吸収性層のさらなる体重により誘導される歪みは、繊維性マトリックスの絡み合いにより生じ、ここで応力集中は最小化される。したがって、液体膨脹吸収性材料からの液体の押出しは、起こりそうになく、予防可能である。
【0042】
架橋剤の例としては、ポリグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ポリアルデヒド化合物、多価アルコール化合物、65ポリアミン化合物およびポリイソシアネート化合物が挙げられる。多官能性エポキシド、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロール-1,3-ジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、プロポキシル化(propxylated)グリセリンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよび1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル化合物は特に有利である。ハロエポキシ化合物の例としては、エピクロロヒドリンおよびa-メチルエピクロロヒドリンが挙げられる。ポリアルデヒド化合物の例としては、グルタルアルデヒドおよびグリオキサールが挙げられる。多価アルコール化合物の例としては、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが挙げられる。ポリアミン化合物の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ポリアミンの反応物としてのポリアミド樹脂および脂肪族ポリ塩基性酸およびポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の例としては、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0043】
特定の状況下で架橋は有利であり得るが、ある場合において架橋は不要であるかまたは望ましくない。いくつかの高分子量膨脹性ポリマーは、それら自体の上で、より高い膨脹性を可能にする高度にもつれた多孔質網状構造を作製し得るので、架橋は、いくつかの高分子量膨脹性ポリマーを用いて全体的に回避され得る。しかしながら、より低分量の分子は、この様式で挙動する可能性は低い。そのため、より低分子量分子の膨脹性ポリマーを使用する場合、架橋は必要であり得るが;態様において、架橋の代替物または架橋の補足物が有利であり得る。後者の場合、架橋の付属物は、性能を向上し得、および/または必要な架橋剤の量を減少し得る。
【0044】
態様において、架橋の代替物または付属物として、より低分子量のポリマーがより大きなより膨脹性のポリマーと絡み合い、高度にもつれた多孔質網状構造を作製し得、高分子量ポリマー自体の挙動を模倣する。かかる不均質なポリマー網状構造は、電荷-電荷複合体化の現象を利用することにより作製され得:反対の電荷を有する2つの異なるポリマーは互いに相互作用して、有用な膨脹性特性を有し得るもつれた多孔質網状構造を形成し得る。態様において、本明細書に開示される複合材料を用いた使用のための水膨脹性コーティング層は、電荷-電荷複合体化により形成される不均質ポリマー網状構造内で組織化される第1および第2の水膨脹性ポリマーを含み得る。態様において、他のより小さい反対の電荷を有するポリマーが取り付けられ得る「骨格」を形成するためにより大きな高度に分岐した膨脹性ポリマーが使用され得;他の態様において、より小さなポリマーは、より大きな反対の電荷を有するポリマーが取り付けられる「骨格」を形成し得;さらに他の態様において、2つの反対の電荷を有するポリマーは、それらのサイズの違いに関係なく選択され得る。態様において、2つ以上の異なる反対の電荷を有するポリマーは、互いに相互作用して、いずれかのポリマー単独で形成される網状構造よりも大きい膨脹性を可能にするもつれた網状構造を形成し得る。
【0045】
例示的態様において、デンプン(カチオン性)などの高度に分岐した電荷を有する膨脹性ポリマーは、使用され得、CMC、アルギン酸塩、ペクチン等(負の電荷を有する)などの反対の電荷を有するポリマーと混合され得る。次いで、分岐したカチオン性ポリマーおよびより小さな負の電荷を有する構成成分は、相互作用して、安定な網状構造を形成し得る。先に記載されるような可塑剤(例えばグリセリン/グリセロール)は、その吸収性特性を高め、そうでなければ性能を向上するために、この電荷-電荷複合体化網状構造と共に使用され得る。少量の任意の中性の電荷を有する可塑剤、オリゴマーまたはポリマーはまた、性能を向上するため、例えば多すぎる凝集または沈殿を防ぐために電荷-電荷複合体化網状構造と共に使用され得る。態様において、正の電荷を有するポリマーは、電荷-電荷複合体化網状構造の大部分の(major)構成成分または該網状構造を支持する主要な構成成分として使用され得、負の電荷を有するポリマーは、連結を提供し、網状構造を肉付けするための第2の構成成分として使用され得る。代替的に、負の電荷を有するポリマーは、大部分または主要な構成成分として使用され得、正の電荷を有する第2のポリマーは連結を作製する。態様において、異なる量の大部分および第2のポリマーは、マトリックス内の繊維を被覆して、第2の連結ポリマーの取り付けのための部位を提供するのに十分な大部分のポリマーを提供することを目標として使用され得る。態様において、大部分のポリマー対第2の連結ポリマーの約50:50から大部分のポリマー対第2の連結ポリマーの約90:10~95:5の範囲までの間の比が使用され得る。有利なことに、両方のポリマーは高度に膨脹性であるが、より小さな膨脹性の第2のポリマーは、より大きな膨脹性の大部分の構成成分と共に使用され得る。態様において、正の電荷を有するものと負の電荷を有するものの混合物を有する2つより多くのポリマーが使用され得る。
【0046】
上述のように、分岐鎖ポリマーは、電荷-電荷複合体化網状構造のための骨格として有利に使用され得る。他の態様において、かかる網状構造を支持するために同様の様式でより線形のポリマーが使用され得る。例として、少量のキトサンなどの正の電荷を有するポリマーは、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ペクチン等のより多くの量の、より小さな負の電荷を有する第2のポリマーとの複合体化のための主要な支持として使用され得る。グリセリン/グリセロールなどの可塑剤は、例えば開放ポリマー鎖を滑らかにして支持するように(to lubricate and prop open the polymer chains)およびより多くの水の取り込みを可能にするようにおよび/または凝集もしくは沈殿を防ぐように作用することにより、性能を向上するように添加され得る。本明細書で使用する場合、用語グリセロールは、グリセロールの純粋な形態をいい、グリセリンは、約95%のグリセロールを含む製剤をいう。グリセリンなどの可塑剤は、グリセリン中のグリセロールの存在のためにその有利な効果を発揮し;可塑剤として混り気のないグリセロールを使用することは同様に有利であることが理解される。
【0047】
他の態様において、負の電荷を有するポリマーは、より多くの量のより小さな正の電荷を有するポリマーと共に、網状構造のための主要な支持体として使用され得る。有利なことに、電荷-電荷複合体化網状構造に含まれる全てのポリマーは膨脹性であるが、少なくとも大部分の構成成分または主要な網状構造支持体は膨脹性であるべきである。態様において、異なる量の主要な支持体ポリマーおよび第2のポリマーが使用され得、いずれかの大部分のポリマーまたは第2のポリマーは1つの電荷を有し、他のポリマーは反対の電荷を有する。分岐ポリマーについて先に記載されるように、マトリックス中の繊維を被覆して、第2の連結ポリマーの取り付けのための部位を提供するのに十分な大部分のポリマーを提供することを目標として、異なる量の線形の大部分および第2のポリマーが使用され得る。態様において、大部分のポリマー対第2の連結ポリマーの約50:50から大部分のポリマー対第2の連結ポリマーの約90:10~95:5の範囲までの間の比が使用され得る。使用される全てのポリマーが膨脹性である場合、少なくとも主要な網状構造支持体ポリマーが膨脹性であることが有益である。態様において、正の電荷を有するものと負の電荷を有するものの混合物と共に、2つより多くのポリマーが使用され得る。
【0048】
2. 製造方法
吸収性繊維複合物の製造は、パルプ生成物および吸収性物品の作製における当業者に良く知られる技術を使用して達成され得る。これらの標準的な技術に対する多くの変更は、製造方法における工程として使用され得る。例示的な記載は、本発明の原理を説明するために本明細書に提供される。
【0049】
態様において、吸収性物品を形成するための最初のプロセスは、本明細書に開示されるように、外面的に架橋された水膨脹性ポリマーでコーティングされるセルロース性材料を形成することを含む。第1に、フラッフパルプまたは同等のセルロース性基板は、乾燥またはわずかに湿潤の形態の基板として提供される。次いでこの基板は、標準的な工業用混合器、押出し成形機等を使用して、選択されたポリマー(1つまたは複数)の濃縮された水溶液と混合され得るので、セルロース性繊維上に水膨脹性コーティングの実質的に一様な層があり;代替的に他の態様において、濃縮された水溶液の代わりに、乳液または選択された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)の他の混合物が使用され得る。
【0050】
水膨脹性ポリマー溶液、乳液または混合物で一旦適切にコーティングされると、コーティングされた繊維の得られる混合物は、混合設備から排出されて、カレンダーロール、混合後ブレードコーターまたは押出し成形機に取り付けられたスリットダイなどの標準的なデバイスを使用して、シート形成を受ける。シート形成の後、噴霧バーまたは同様の塗付ツールによりシート全体にわたり選択された架橋剤製剤を塗布する。コーティングされたセルロースのシートの全体にわたる架橋剤製剤の一様な浸透は、シート全体にわたり架橋剤を押すかまたは引く圧力差などの標準的な技術により達成される。結果的に、コーティングの外表面は架橋剤に曝露され、これらの水膨脹性表面は互いに架橋され、下の水膨脹性ポリマーは架橋されないままである。熱による乾燥は、架橋の速度および広さに影響を及ぼし得る。
【0051】
外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料を作製して、適切な形態因子に形作る後、吸収性物品を形成するためにそれを使用し得る。ダイヤパーまたは失禁パッドなどの個人ケア製品における使用のために、シートを緩やかなハンマーミル成形(hammermilling)に供して、繊維間分離を増加させ得、それにより高い内部空隙画分を作製する。この技術を使用して形成される生成物について、従来の吸収性物品の作製における空気積層工程に必要とされたように、本明細書に開示される吸収性セルロース性材料の繊維を十分にほどく必要はない。その代り、ハンマーミル成形された、外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料のシートは単純に、吸収性物品の所望の輪郭に適合するように金型切断され得る。
【0052】
本明細書に開示される外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料を使用して吸収性物品を製造するための方法は、当該技術分野で現在実施される吸収性物品を製造するプロセスと比較すると、いくつかの産業的な利点を提供する。重要なことに、本明細書に開示される製造プロセスは、従来のものよりも簡単であり、ハンマーミル成形がより必要とされない。したがって、水およびエネルギーの消費が大きく低下される。外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料を使用した吸収性物品を製造するために必要とされる設備は産業において既に利用可能であり、極端にコンパクトな接地面積を占めることが予想される。該プロセスは、低い主要な操作費用を含みながら、多くの吸収性用途のための高性能材料を生じる。
【0053】
態様において、本明細書に開示される外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料を組み込む物品は、(長手方向の流体拡散により、すなわち繊維軸に沿った)より速い運搬および(全ての繊維上の水膨脹性ポリマー性レザバーの普及のために)より高い流体保持容量を生じ得る。また、かかる製品は、湿潤強度の増加を示し、すなわち水膨脹性ポリマー性の層は、全てのパルプ-パルプ交差にわたる広範囲で連続的な網状構造を形成し、全体の網状構造を一緒につなぐ。外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料を組み込むように製造された生成物は、高度にカスタマイズされ、調整され得る吸収容量、柔軟さ、必要な繊維密度、広い範囲のパルプ型およびパルプ混合物、最適化され得るシート厚さ等を含むそれらの性能特性を最適化するように工業的に作り変えられ得る。かかる材料は、薄さが望ましいペーパータオルなどの構造を含む種々の形態要因において使用され得る。
【0054】
本明細書に開示される外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料で製造される吸収性物品は、ポリマー層に埋め込まれるかまたは取り付けられる材料を介してある範囲の有用な生成物を作製するための他の添加剤及び技術と合わされ得る。例えば、ポリマー層に組み込まれる個人ケア物品のための添加剤は、生成物に柔軟さおよび優れた手触りを付与するために可塑剤(例えばグリセリン、PEG、Pluronic等)を含み得る。別の例として、皮膚若返り成分(例えばヒアルロン酸、アロエベラ、αリポ酸ならびにビタミンCおよびE)がポリマー層に負荷され得る。医薬用物品を作製するため、例えばダイヤパー発疹または他の皮膚の状態を治療するために、医薬品(例えばヒドロコルチゾン、抗真菌剤)がポリマー層に組み込まれ得る。他の態様において、防腐剤、抗菌剤、血液凝固剤等の、ポリマー層に含まれるさらなる医薬品と共に本明細書に開示される吸収性繊維複合物を使用して、創傷用包帯が調製され得る。臭気吸収または臭気中和化学物質(例えばβシクロデキストリン、重炭酸塩、ペンタン-1,5ジオール等)、香気、芳香剤および他の臭気物質改変剤が、この層中または上に有利に導入され得る。
【0055】
3. 例示的物品
a. 個人ケア品目
本明細書に開示される外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料を使用して、種々の個人ケア物品が形成され得る。ダイヤパー、失禁パッド、女性用衛生製品等はより経済的に形成され得、都合よくかつ快適に着用され得る。さらに、これらの伝統的な物品の性能は、例えばより良い湿度運搬および通気性により向上され得る。
【0056】
伝統的な吸収性物品はさらに、開示される外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料の高性能特性を利用するように改変され得る。例えば、ダイヤパー構築は、再利用可能外部被覆および使い捨て内部構成成分を含むように改変され得る。態様において、この構築は、再利用可能(半永久的)弾性メッシュおよび(1回使用)使い捨ての一体化された構造を含む。外部メッシュは、着用者の身体の輪郭に適合するように構築され得、耐久性の弾性材料(例えばLycra、スパンデックス、シリコーン等)で作製され得る。外部被覆のためのこのメッシュ構造は、多孔性であるので、高度に通気性である。いくつかの層:(a)皮膚に最も近く、わずかに分離された本明細書に記載される吸収性セルロース性材料層;(b)該層の外部にある、疎水性処理フラッフパルプの任意の層;および(c)該層の外部にある、フラッフパルプ層の裏打ちを提供する任意の多孔質ペーパー層を含む吸収性内部構造を閉じ込めるために、弾性メッシュが使用される。この多層吸収性内部コア構造は、汚れる場合に交換/取り替えられ得、再利用可能なメッシュ層は、その場所に残る。このアプローチの便利さに加えて、それは排泄物との皮膚接触時間を低減し、ダイヤパー発疹などの生じる皮膚刺激問題を軽減し得る。
【0057】
ダイヤパー構築についてのこのアプローチは、コーヒーマシンまたは真空掃除機のための交換可能フィルターと類似の取り換え可能ダイヤパー挿入物を使用することは、既に消費者に良く知られており、ダイヤパー全体の小さな部分のみが処分を必要とするので、明らかな値段および環境的な利点を提供する。伝統的な合成SAPの代わりに吸収性コアに生分解性材料を使用することにより、吸収性のセルロース性材料系製品は、環境的に耐えがたい負担が本質的に少ない。使い捨てダイヤパーについての伝統的な形態因子と比較して、処分のためにより小さいサイズの吸収性コアを提供することにより、吸収性のセルロース性材料系製品は、大規模処分施設の代わりに小規模な堆肥化に適切である。全体的に、このアプローチは、全使い捨てダイヤパー産業の環境的に持続可能な再想像を可能にし得る。
【0058】
b. フリーザーパック
態様において、本明細書に開示される外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料は、個人ケア物品の他に、液体の吸収および保持が重要である他の有用な物品を形成するために使用され得る。例えば、フリーザーパックとして有用な物品を形成するために、交換可能ダイヤパー挿入物について上記されるものと同様の多層構造が形作られ得る。態様において、かかる製品は、外面的に架橋された水膨脹性ポリマー(1つまたは複数)でコーティングされたセルロース性材料の1つの層および疎水性処理されたフラッフパルプの1つの層の2つの機能性の層を含み得:前者は、液体を吸収し、後者は液体をはじく。液体反発層が全体の液体吸収コアの周りにある場合、該構造は高性能フリーザーパックとして使用され得、ここで液体吸収層は、水またはグリセロール-水混合物(または0℃未満で凍結して0℃以下の極低温制御を提供することが知られる同様の液体組成物)を予め負荷される。液体充填コアの周囲の水反発層は全て、融解の際にもパッケージが接触に対して乾燥したままであることを確実にする。最も外側の紙の層は、全体的な集合体の機械的な保護を提供し得る。該構造は製造が低コストであり、容易に使い捨て可能である。
【実施例】
【0059】
実施例
実施例1~4において使用される材料および設備は以下のものを含む:
・NBSKの毛羽立てたパルプ:Performance BioFilaments
・ERISYS GE-36:CVC Thermoset Specialties(プロポキシル化グリセリンのトリグリシジルエーテル)
●キサンタンガム(食品等級-Bob's Red Mill):Amazon
●Sigma Aldrich Chemicals
○柑橘属の皮由来ペクチン
○トウモロコシ由来アミロペクチン
○ナトリウムカルボキシメチルセルロース
○ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド
○1-ブタノール
○グリセロール
●Corning撹拌/ホットプレート
●BINDER強制対流式オーブン
【0060】
実施例1:架橋親水コロイド(ペクチン)コーティングパルプ
方法:4gの北米漂白軟材クラフト(northern bleached softwood kraft)(NBSK)パルプを、磁性撹拌プレートを使用して、1Lの水道水に一様に分散させた。次いで分散液を、40メッシュスクリーンを含むブフナー漏斗でろ過し、水和パルプ繊維を単離した。次いで、8gの1%ペクチン水溶液を、ヘラを使用して湿潤パルプと共に手で完全に混合した。1.6gの0.1%架橋溶液(ERYSIS GE-36:1-ブタノール中三官能性エポキシド架橋剤)および1.6gの0.05%触媒溶液(脱イオン(DI)水中ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)を添加して、次の工程においてコーティングされたパルプ繊維と共に手で混合した。得られた塊をベーキングシート上に広げ、BINDER強制対流式オーブン中110℃で3時間乾燥させた。
【0061】
吸収試験:コーティングされたパルプ繊維の得られた乾燥シートを小さな断片に切断して、試料を三重で試験した。それぞれの試験は、乾燥パルプ試料の重量を記録することにより開始した。3mLピペットを使用した水道水の滴下によりパルプシートを一様に水和した。水添加(1~5滴)の断続工程の間にピンセットでパルプシートを注意深く持ち上げ、繊維飽和の徴候を調べた。飽和の開始時に、繊維に添加した任意の水を、シートの下のプラスチック製重量ボートの上に置いた。これを最初に観察した際、飽和したシートの重量を測り、試料の吸収容量を以下の式1に従って計算した:
【数1】
【0062】
先に詳述されるものと同じ分散、濾過および乾燥方法後の性能比較のために、架橋親水コロイドコーティング材料を含むことなく対照試料を調製した。
【0063】
実施例2:架橋親水コロイド(カルボキシメチルセルロース)コーティングパルプ
実施例1と同じ手順、化合物量および設備に従って、ペクチンではなくカルボキシメチルセルロース(CMC)でコーティングされたNBSKパルプ試料を作製した。実施例1と同じ試験プロトコルに従って、吸収容量を評価した。
【0064】
実施例3:架橋親水コロイド(キサンタンガム)コーティングパルプ
実施例1と同じ手順、化合物量および設備に従って、ペクチンではなくキサンタンガムでコーティングされたNBSKパルプ試料を作製した。実施例1と同じ試験プロトコルに従って、吸収容量を評価した。
【0065】
実施例4:架橋親水コロイド(アミロペクチン)コーティングパルプ
実施例1と同じ手順、化合物量および設備に従って、ペクチンではなくアミロペクチンでコーティングされたNBSK試料を作製した。実施例1と同じ試験プロトコルに従って、吸収容量を評価した。
【0066】
実施例1~4の平均吸収容量の概要を表1に示す。
【表1】
【0067】
実施例5:可塑剤あり架橋親水コロイドコーティングパルプ
キサンタンガムでコーティングされたNKSBパルプ試料を、実施例3のものと同様の手順に従って作製した。しかしながら、8gの1%キサンタンガム水溶液はまた、濾過されたパルプ繊維との混合前に添加される可塑剤として、0.1%グリセロールを含んだ。8gmのキサンタンガム水溶液は、7.912g DI水、0.08g XGおよび0.008gグリセロールを含んだ。実施例3と同じ吸収試験プロトコルを続けて同様の結果を明らかにした:6.9±0.2。可塑剤の添加により水取込み容量は有意に影響を受けなかったが、乾燥パルプシートは、検査の際に、以前の試料のいずれかよりもかなり展性であることが観察された。
【0068】
実施例6および7
実施例6~7に使用される材料および設備は以下のものを含む:
●クルミ穀皮顆粒(Amazon)
●オオバコ種子穀皮粉末(Amazon)
●フラッフパルプ
●70メッシュフィルター
●ブフナー漏斗
●メスシリンダー
●塩化カルシウム(Sigma Aldrich)
●アルギン酸ナトリウム(Sigma Aldrich)
●DI水
●塩化ナトリウム
【0069】
実施例6:オオバコ種子穀皮粉末添加剤
非常に細かいオオバコ種子穀皮粉末を膨脹性フラッフパルプマトリックスに添加して、強化または膨脹の増加が生じたかどうかを決定した。8グラムのフラッフパルプを、1LのDI水を有するビーカーに測り取り、撹拌プレート上で約15分間混合して、パルプを分布させた。別に、1gのアルギン酸ナトリウムと99グラムの0.1%グリセロールをDI水中で約15分間激しく混合してアルギン酸ナトリウムの1%ストック溶液を作製し、次いで全てが溶解して溶液が均質になるまで溶液をゆっくり混合した。透明な水が見られ、全てのパルプがフィルターの頂部に位置するまで、70メッシュスクリーンを通してパルプスラリーを濾過して、濾過ケークを形成した。最終濾過ケークを計量した(65.62g)。濾過ケークから4試料を作製して、約16.46gを4つの異なるビーカーのそれぞれに測り取った。4つのビーカーのそれぞれは元の8gの乾燥パルプの内2gを含むと推定され、3%の膨脹性コーティング付加物(乾燥パルプに対して)をそれぞれのビーカーに添加した。6gの1%アルギン酸塩溶液を4つのビーカーのそれぞれに添加して、ヘラで完全に混合してこれを行った。試験のための4つのビーカーは2つの試料のそれぞれについて25%のおよび2つの試料のそれぞれの50%のオオバコ種子穀皮粉末(乾燥パルプ重量に対して)を含み、4つのビーカーにクルミ顆粒を添加して、ヘラで完全に混合した。架橋目的で、0.5%溶液の塩化カルシウムを作製し、その0.6gを4つのビーカーのそれぞれに添加し、ヘラで完全に混合した。4つの混合物のそれぞれをシリコーンの型にスプーンで移し、オーブンに設置して、70℃で一晩乾燥した。試料を計量して、0.9%塩化ナトリウム溶液中に1分間沈めて、続いて1分間風乾して、その後再度計量して膨脹容量を決定して試験した。定性的に、それぞれの試料を手で引き離し、任意の増加した強度を決定した。増加した強度は、引き離すために対照試料よりも大きな力をかけたかどうかに基づいて、「はい」または「いいえ」で決定した。「膨脹X」は元の乾燥重量の倍数であり、これは湿潤重量から乾燥重量を引き、乾燥重量で割ることにより決定する。実施例5および実施例6についての結果を以下の表2に示す。
【0070】
実施例7:クルミ穀皮顆粒添加剤
クルミ穀皮顆粒を膨脹性フラッフパルプマトリックスに添加して、強化または膨脹の増加が起きたかどうかを決定した。クルミ穀皮は顆粒形態であり、以前の実験のオオバコ種子穀皮粉末よりも大きかった。12グラムのフラッフパルプを、1.5LのDI水を有するビーカーに測り取り、撹拌プレート上で約15分間混合し、パルプを分布させた。別に、1gのアルギン酸ナトリウムと99グラムの0.1%グリセロールをDI水中で約15分間激しく混合してアルギン酸ナトリウムの1%ストック溶液を作製し、次いで全てが溶解して溶液が均質になるまで溶液をゆっくり混合した。透明な水が見られフィルターの頂部に全てのパルプが位置するまで、70メッシュスクリーンを通してパルプスラリーを濾過して濾過ケークを形成した。最終濾過ケークを計量した(97.61g)。濾過ケークから6試料を作製して、約16.27gを6個の異なるビーカーのそれぞれに測り取った。それぞれの6個のビーカーは元の12gの乾燥パルプの2gを含むと推定され、3%の膨脹性コーティング付加物(乾燥パルプに対して)をそれぞれのビーカーに添加した。6gの1%アルギン酸塩溶液を6個のビーカーのそれぞれに添加して、ヘラで完全に混合することによりこれを行った。試験のための6個のビーカーは、0%(対照)、1%、5%、10%、25%および50%のクルミ顆粒(乾燥パルプ重量に対して)を含み、6個のビーカーに、0g(対照)、0.02g、0.1g、0.2g、0.5gおよび1gの量のクルミ顆粒を添加し、ヘラで完全に混合した。架橋目的で、塩化カルシウムの0.5%溶液を作製し、その0.6gを6個のビーカーのそれぞれに添加し、ヘラで完全に混合した。6個の混合物のそれぞれをスプーンでシリコーンの型に移し、オーブンに置いて、70℃で一晩乾燥させた。試料を計量し、0.9%塩化ナトリウム溶液中に1分間沈めて続いて1分間風乾して、その後再度計量して膨脹容量を決定して試験した。定性的に、それぞれの試料を手で引き離し、増加した強度を決定した。増加した強度は、引き離すのに対照試料よりも大きな力をかけたかどうかに基づいて「はい」または「いいえ」で決定した。「膨脹X」は元の乾燥重量の倍数であり、これは湿潤重量から乾燥重量を引き、乾燥重量で割ることにより決定する。実施例6についての結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0071】
実施例8:フラッフパルプ複合体化
材料
Sigma Aldrich Chemicals
●ヒドロキシエチルセルロース(HEC)
●酢酸
●キトサン
●カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)
●グリセロール
●1-ブタノール
その他
●カプリリルグルコシド(CG):Cocojojo Organics
●ERISYS GE-36:Huntsman Chemical
●北米漂白軟材クラフトパルプ:Performance BioFilaments
設備
●Corning撹拌プレート
●BINDER強制対流式オーブン
【0072】
方法:この実施例において、水吸収容量の比較のために3つの試料を三重で構成した。最初に、完全に分散されるまで撹拌プレート上、2L DI水中に18gのNBSKパルプを混合した。続いて懸濁物を、40メッシュスクリーンを含むブフナー漏斗を通して濾過した。得られた湿潤パルプを3つの等しい部分(対照、処理試料1、処理試料2)に分けた。0.5wt%架橋溶液は、0.025g ERISYS GE-36を4.975g 1-ブタノールに溶解することにより両方の処理試料について調製した。処理1についての1.1wt%膨脹性ポリマー溶液は、0.125g HEC、0.375g CGおよび0.05gグリセロールを49.45g DI水に溶解して調製した。処理2については2つの別々の溶液を調製した:カチオン性溶液は、1wt%酢酸溶液に溶解した1wt%キトサン(すなわち0.1gキトサン、0.1g酢酸および9.8g水)からなり、1.1wt%アニオン性溶液は、49.45g DI水に溶解した0.0625g CMC、0.0625g HEC、0.375g CGおよび0.05gグリセロールからなった。試料1は、18gの1.1wt%処理1溶液を、ヘラを用いてビーカー中で混合することによりコーティングした。次いで0.9gの0.5wt%架橋溶液を添加して混合し、その後1"x1"シリコーン立方体トレイの3つのウェルに最終混合物を堆積させた。試料2は、6gのカチオン性溶液でコーティングし、次いでオーブン中90℃で10分間短く乾燥させた。次いで半乾燥パルプを18gのアニオン性溶液、次いで0.9gの0.5wt%架橋溶液でコーティングした。得られた混合物は同様に立方体トレイの3つのウェルに配置した。最後に、18.9gのDI水を対照パルプビーカーに混合して(処理試料に対して同等の固体含有量のため)、立方体トレイの3つのウェルに分配した。全ての試料はオーブン中、90℃で8hr乾燥させた。
【0073】
吸収試験:全ての吸収試験は、乾燥試料の重量を測定することにより開始した。試料を金属メッシュケージの内部に置き、80mLビーカーを使用してDI水に完全に沈めた。1分間の浸漬後、ケージをビーカーから取出し、試料から余分な水を1分間落とし、その後湿潤重量を測定した。吸収容量は、上の実施例1に記載される式1を使用して計算した。全ての3つの試料の吸収性能の概要を以下の表3に示す。
【表3】
【0074】
本発明は、その好ましい態様に関して特に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解される。本発明の多くのバリエーションは、本明細書の検討の際に当業者に明らかとなる。そうではないと示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合の反応条件を表す全ての数字、成分の量などは、全ての例において用語「約」により修飾されると理解される。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書に記載される数的パラメーターは、本発明により得られるような所望の特性に応じて変化し得る近似である。
【国際調査報告】