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特表2024-504949エミッション制御システムを有するエンジンにおいてバイオ燃料を使用するための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】エミッション制御システムを有するエンジンにおいてバイオ燃料を使用するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/06 20060101AFI20240126BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
F02D19/06 Z
F02D45/00 369
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542908
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 US2022012586
(87)【国際公開番号】W WO2022155510
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/137,433
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523267313
【氏名又は名称】オプティマス・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OPTIMUS TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】6901 LYNN WAY, PITTSBURGH, PENNSYLVANIA 15208, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】フヴィラー,コリン・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ユーイング,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ケヴィン
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AA02
3G092AB12
3G092BB01
3G092BB06
3G092DE10S
3G092DE14S
3G092EA04
3G092EA16
3G092FA06
3G384AA03
3G384AA16
3G384BA11
3G384BA18
3G384DA04
3G384EB04
3G384EB12
(57)【要約】
ディーゼルエンジンを含む内燃エンジンは、エミッションシステムが常に適切な燃料を使用して再生プロセスを実行するようにすることで、代替燃料を使用して安全かつ効率的に作動することができる。エンジンの燃料送出システムおよびエミッション制御システムと通信する電子制御ユニットは、適切な燃料が供給されるまで再生活動を抑止し、再生イベントが完了するまで待機し、次いで、代替燃料を使用して作動を継続するようエンジンに指示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料および第2燃料での作動を可能にするために、少なくとも、前記第1燃料に関連する燃料送出システムと、エミッション制御システムと、を有するエンジンの作動を変更する方法であって、
前記エンジンに、前記第2燃料に関連する燃料供給システムと、電子制御ユニットと、を提供するステップであって、前記電子制御ユニットが、少なくとも前記エミッション制御システム、前記燃料送出システム、および前記燃料供給システムと通信するように構成されている、ステップ;
前記第2燃料を使用して前記エンジンを作動させるステップ;
前記電子制御ユニットにより、前記エミッション制御システムから、再生イベントが必要であるという通知を受信するステップ;および
前記燃料送出システムにより、前記再生イベントのために前記エミッション制御システムに前記第1燃料を供給するステップ、を含む方法。
【請求項2】
前記再生イベント前に、前記エンジンから前記第2燃料をパージしてから、前記第1燃料を前記エミッション制御システムに供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パージするステップが完了するまで前記再生イベントを遅延させるステップをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記電子制御ユニットによって、前記エミッション制御システムに、前記再生イベントを開始するメッセージが送信されるまで、前記再生イベントの発生を抑止するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記再生イベントが完了した後、前記第2燃料を使用して前記エンジンの作動を再開することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1燃料が石油系燃料であり、前記第2燃料が代替燃料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2燃料が、再生イベントに適していない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2燃料を使用して前記エンジンを作動させるステップが、前記エミッション制御システムによる再生イベントの実行、を抑止することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エミッション制御システムが、前記エンジンの前記燃料送出システムと流体連通している、注入インジェクタ、燃料注入ライン、および注入フラッシュバルブを備え、かつ
前記エミッション制御システムによる再生イベントの実行の前に前記燃料送出システムに前記第1燃料を供給することによって、前記注入インジェクタおよび前記燃料注入ラインから前記第2燃料を流し出すように、前記電子制御ユニットが、前記注入フラッシュバルブに指示する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エミッション制御システムが、前記第1燃料とのみ流体連通する注入インジェクタ、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エンジンが、前記第1燃料または前記第2燃料を前記エンジンに選択的に供給するための燃料切替バルブ、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記エンジンが、燃焼室を有するシリンダ、をさらに備え、前記第1燃料が、前記シリンダの排気行程中の前記燃焼室への噴射によって、前記エミッション制御システムに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1燃料および第2燃料での作動を可能にするために、エンジンの作動を変更する方法であって、
前記エンジンに、電子制御ユニット、前記第1燃料を収容する第1燃料容器と、第2燃料を収容する第2燃料容器と、を含む燃料送出システム、および、エミッション制御システム、を提供するステップであって、前記電子制御ユニットが、前記エミッション制御システムおよび前記燃料送出システムと通信するように構成されている、ステップ;
前記第2燃料を使用して前記エンジンを作動させるステップ;
前記電子制御ユニットにより、前記エミッション制御システムから、再生イベントが必要であるという通知を受信するステップ;ならびに
前記再生イベントのために前記エミッション制御システムに前記第1燃料を供給するステップ、を含む方法。
【請求項14】
前記第1燃料が石油系燃料であり、前記第2燃料が代替燃料である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月14日に出願された米国仮出願第63/137,433号「エミッション制御システムを有するエンジンにおいてバイオ燃料を使用するための方法および装置(Method and Apparatus for Using Biofuels in Engines Having Emission Control Systems)」の利益を主張する国際出願であり、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
代替燃料には、環境への影響や持続可能性の面で明確な利点がある。そのため、世界中で代替燃料の導入に対する関心が高まり、社会をますます低排出ガス燃料に移行する規制の動きも活発化している。バイオ燃料は、生物由来の燃料であり、石油や原油を原料とせず、特に有望であることが示されている。
【0003】
しかし、バイオ燃料は、異なる物理的特性および化学的特性を有しており、エンジン、エミッション制御システム、またはその両方に変更を加えることなく、バイオ燃料などの代替燃料を直ちに石油系燃料に置き換えることができるとは限らない。
【0004】
当業者であれば、「再生可能炭化水素ディーゼル」(「RHD」)として知られる種類のディーゼル燃料が存在することを認識するであろう。この燃料は、植物油または動物性脂肪を使用してディーゼル燃料を製造する精製プロセスから得られ、原油から精製されたディーゼル燃料とほとんど区別がつかない。本出願において「ディーゼル」という用語が使用される場合、石油から精製されたディーゼル燃料、RHD製品などの植物油から精製されたディーゼル燃料、またはエミッションシステムが作動するように設計された低バイオディーゼル混合燃料(石油ディーゼルに1~20%のバイオディーゼルを混合したもの)などの一般的に承認された他の燃料、を含むように解釈されるべきである。
【0005】
一般的に規制されるエミッションには、「テールパイプ」エミッションと「ライフサイクル」エミッションと呼ばれる2つの大きなカテゴリーがある。テールパイプエミッションは、エンジン内で燃料が直接燃焼した結果発生するものである。ほとんどが汚染物質とみなされる。これらのエミッションは、エンジンの排気システムを通じてエンジンから排出される。これらは、一般的に局所的で、エンジンの作動による直接的な結果である。一方、ライフサイクル排出量は、一般的に炭素型の排出量で、燃料の原産地から最終的な最終使用までの総排出量を考慮したものである。ライフサイクル排出量は、「油井から車輪まで(well to wheel)」、つまり、原産地から最終使用までのエネルギーと排出量のバランスとして決定される。
【0006】
石油系燃料の場合、これらのライフサイクル排出量は、原油の採掘作業、世界的な輸送作業、加工と精製、輸送と配送、そして最終使用時の燃焼排出に至る排出サイクルの総和である。一方、バイオ燃料のライフサイクル排出量は、多くの場合、非常に少ないか、中間、またはマイナスになることさえある。一部の計算では、バイオ燃料は、成長中、生産中、または二次廃棄物から得られる結果、生物物質に隔離された負の炭素を考慮に入れることができ、かつ、精製、輸送および配送、最終用途の燃焼からの排出量を組み入れることができる。バイオ燃料は、ライフサイクルでの炭素排出量が非常に少なく、場合によってはマイナスになるため、経済の脱炭素化にとって大きな価値がある。法規制の強化と、テールパイプエミッションやライフサイクルエミッションの低減を求める消費者の要求が相まって、バイオ燃料はますます魅力的になってきており、本来は従来の石油系燃料用に設計されたエンジンやエミッションシステムに、より大量かつ高濃度で導入および使用されている。
【0007】
規制によるテールパイプエミッションの低減に対応するため、エンジンメーカーは長年にわたり、排出量の低減と、その中に含まれる可能性のある危険な汚染物質の低減を試みてきた。相手先ブランド供給のエンジンメーカー(以下、「OEM」)各社によってさまざまな技術が開発され、それぞれ異なるアプローチをとってきた。よく知られた例としては、排気ガス再循環(EGR)バルブ、ディーゼル酸化触媒(DOC)、選択的触媒還元(SCR)システム、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)などがある。
【0008】
EGRバルブは、エンジンの不活性排気ガスの一部をエンジン吸気系に戻し、そのガスが燃焼室の総O含有量を希釈し、NOxなどの標的排気ガスを低減するためにシリンダのピーク温度を下げることができるようにする。
【0009】
DOCは、触媒を使用してディーゼル排気ガスを酸化し、一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を二酸化炭素(CO)と水蒸気に変換して汚染物質を削減する。スタンドアロンDOCは、テールパイプエミッションを削減するために単独で使用することも、他の後処理構成要素と組み合わせて排出ガスを事前調整または前処理するために使用することもできる。
【0010】
SCRシステムは、リアルタイムでエンジンの窒素酸化物(NOx)エミッションをモニターし、NOxエミッション削減を目的として、排気ガスと混合された排気流中に噴射される液体還元剤(通常は高純度尿素)を使用して、特定の種類の触媒と反応させるアクティブエミッション制御システムである。触媒と接続された専用のSCR注入(dosing)インジェクタを介して高純度尿素を導入すると、化学反応によってN、HO、およびCOが生成される。
【0011】
DPFは、ディーゼルの煤や灰のほか、クランクケース油の燃焼やシリンダ消費によるその他の副産物を収集するように設計された、触媒でコーティングされた一次フィルタ基材である。しかし、副生成物は固体であり、これらの微粒子が蓄積し、最終的に微粒子フィルタを詰まらせ、排気背圧が上昇し、排気ガスがDPFを通過して排気システムから排出されるのに追加作業が必要となることで、エンジンの全体的な効率が低下する。この効率低下により、エンジンの燃料効率が著しく低下し、エンジンの全体的な作動コストが低下する可能性がある。煤やその他の微粒子が急速に蓄積するため、エンジンの運転中に開始され得るDPFの洗浄プロセスが、必要である。これは、当業者には理解されるように、「再生イベント」によって開始されるフィルタ再生として知られるプロセスによって、達成することができる。
【0012】
「再生イベント」は、広義には、エンジンまたは排気システムの一部の領域に追加の燃料を一時的に導入または「注入」して、その領域の作動温度を上昇させ、煤および灰を焼却することによって達成される。従来技術では、これは通常、モジュールでの燃料温度、燃料圧力、燃料の粘度特性を含みエミッション処理後の排気温度を決定するパラメータを考慮する、注入モジュールによって制御される注入インジェクタによって達成された。先行技術で知られている様々なシステムは、DPFが再生を必要とするタイミングを判定し、必要に応じて随時再生イベントを開始することができる。先行技術では、これは通常、エンジンの作動に使用されるのと同じ石油ベースのディーゼル燃料を用いて達成される。
【0013】
これらのエミッション制御技術またはエミッション制御システムは、単独で、または組み合わせて利用され得、結果的にエンジンからの排出物が低減され、テールパイプからの排出物が低減されるため、増え続ける規制排出基準をエンジンが満たせるようになる。これらのシステムは通常、エンジンからの有害な排出物を削減するのに有効であると考えられているが、これらは、燃料、特に石油や原油から得られるディーゼル燃料での使用を目的として設計されている。
【0014】
ここでDPFおよびDOC再生のカテゴリーを考えると、これを達成するために従来技術に記載されている2つのアプローチ、すなわち、能動的熱再生と受動的熱再生がある。
【0015】
上述のように、能動的再生は、煤微粒子を酸化させるために追加の熱を使用する熱再生を採用する。追加の熱注入は、エンジン制御方式に対する一時的な変更(具体的には燃料/空気混合気)によって排気温度を上昇させること;専用の炭化水素(先行技術ではディーゼル燃料)注入インジェクタによって排気流に追加の燃料を噴射すること;排気行程でシリンダに追加の燃料を噴射すること(シリンダ内事後噴射(cylinder post injetion)と呼ばれることもある);または場合によっては排気を電気加熱することを含む、さまざまなソースから生じ得る。能動的熱再生は、熱、O、およびNOの様々な組み合わせの導入により微粒子と煤とを酸化し、COなどの有害性の低いガス状副生成物を生成する。
【0016】
通常の作動状態において、微粒子や煤を酸化させるために熱や他の元素や化合物を導入しないシステムは、受動的再生システムと呼ばれる。受動的システムは、触媒を利用して煤や特定の物質の酸化温度を低下させ、排気システムから煤や特定の物質を除去する。
【0017】
残念なことに、エンジンおよびエミッション制御システムの設計に関して、バイオ燃料の将来的な利用については、これまで限られた検討しかなされてこなかった。上述したように、現行のエンジンの大部分は、もともと従来のディーゼル燃料での使用を想定したものである。一般にバイオ燃料は、従来の対応物と性質が大きく異なるため、現行のシステムと、バイオ燃料利用への要望が高まった構成要素との非互換性が問題となる。その結果、バイオ燃料の中には、現行のエミッション制御システム設計と整合しないものもある。エンジンとエミッションシステムとの両方の長期的な信頼性を確保し、炭素削減の目標を達成するためには、これら現行システムの改修や再構成が望ましいだけでなく不可欠である。バイオディーゼル燃料などの高濃度のバイオ燃料を使用すると、引火点、酸素化、噴射パターン、および金属組成などの特性がすべてOEMエミッションシステムに悪影響を与える可能性があるため、これらのシステムの運用において検討を加える必要がある。そうしないと、ディーゼルエンジンにバイオディーゼルの使用により、OEMエミッション制御システム、特にエンジンおよび/またはエミッション制御システムの一部に一時的に燃料を追加的に噴射または「注入」するインジェクタを備えたシステムが、効果的に作動しなくなり、損傷することさえある。
【0018】
最も懸念される悪影響の1つは、排出システムへの未燃焼燃料の蓄積である。この蓄積は、バイオディーゼルが軽油よりも粘度と引火点が高いことに起因する。液滴の微粒化および噴霧パターンと、バイオ燃料の引火点の上昇とが相まって、OEMエミッション制御システムの性能が標準以下となり、熱再生イベントに対する不完全燃焼が生じる。この不完全燃焼により、排気システム内に未燃焼燃料が蓄積し、発火してエンジン排気システム内で燃料が制御不能に燃焼する可能性がある。さらに、インジェクタの噴霧パターンと、バイオ燃料またはバイオ燃料ブレンドの特性およびそれらの燃料特性自体とが適合していないため、OEM注入インジェクタによりバイオディーゼルを噴射すると、DOC/DPFエレメントが未燃燃料でコーティングされ、DPF面が目詰まりし、不完全燃焼、注入インジェクタの汚損、排気システム内の未燃焼燃料の蓄積に起因する排気からの過度の煙の放出により、着火して排気システム内で制御不能な燃料燃焼、および触媒の失活が発生する可能性があり、これらはすべて、エンジンそのものではないにしても、後処理システムに深刻な損傷をもたらす可能性がある。
【0019】
本明細書で説明する実施形態はバイオディーゼル燃料の使用に言及しているが、当業者であれば、これらのアプローチおよびシステム変更は、ディーゼル、ガソリン、および気体燃料エンジン用の多種多様なバイオ燃料およびエミッションシステムに適用可能であることを認識するであろう。したがって、本発明の目的は、既存のエンジンエミッション制御システムを、石油系燃料、RHD、バイオ燃料、またはこれらの組合せを使用するエンジンで作動できるようにするための方法および装置を提供することである。
【0020】
バイオ燃料を効果的に使用できないエミッション制御システムへのバイオ燃料の導入を防止することも、本発明の別の目的である。
【0021】
さらに別の目的は、エンジン内のバイオ燃料が、バイオ燃料を受け入れるように設計されていない投与インジェクタに到達するのを防止することである。
【0022】
別の目的は、エミッション制御システムを備えたエンジンにおいて、石油系燃料、RHD、およびバイオ燃料の使用を可能にする自動化プロセスを提供することである。
【0023】
さらに別の目的は、エンジンがそのOEM注入インジェクタを保持したままバイオ燃料を使用できるようにすることである。
【0024】
さらに別の目的は、OEM燃料供給(supply)システムの大規模な変更を必要としない、改良された注入インジェクタを提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
(発明の概要)
以下の概要は、以下の詳細な説明において後述される概念の一部を簡略化して説明するために、記載される。この概要は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用することを意図するものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1燃料および第2燃料で作動できるようにエンジンの作動を変更する方法が開示されており、燃料送出(delivery)システム、電子制御ユニット、およびエミッション制御システムを、エンジン(ending)に提供するステップを含む。前記電子制御ユニットは、少なくとも前記エミッション制御システムおよび前記燃料送出システムと通信するように構成されている。前記エンジンは、再生可能燃料、バイオ燃料、またはバイオディーゼルなどの代替燃料である前記第2燃料で作動する。
【0027】
前記エンジンが前記第2燃料で作動するとき、前記電子制御ユニットは、前記エンジンにおける通常の再生スケジュールまたは手順を抑止し得るが、再生イベントが必要であるという通知をエミッション制御システムから受信する。このような場合、前記電子制御ユニットは前記燃料送出システムと通信して、前記再生イベントが生じる前に、前記エンジンへの燃料の送出を第1燃料に切り替える。
【0028】
特定の実施形態では、開示された方法は、前記再生イベントの前に、前記エンジンまたはエミッション制御システムから前記第2燃料をパージしてから、前記第1燃料を前記エミッション制御システムに供給することも含む。他の実施形態では、前記再生イベントは、前記エミッション制御システムがパージされるまで遅延される。前記再生イベントが完了すると、前記開示された方法では、作動再開のために前記第2燃料を再び前記エンジンに送出するよう指示が行われ得る。
【0029】
開示される実施形態では、前記エミッション制御システムは、前記エンジンの燃料送出システムと流体連通している注入インジェクタ、燃料注入ライン、および注入フラッシュ(flush)バルブを、備える。再生イベントが要求されると、前記電子制御ユニットは、前記燃料送出システムに前記第1燃料を供給することによって、前記注入インジェクタおよび前記燃料注入ラインから第2燃料を流し出すように注入フラッシュバルブに指示する。さらに他の実施形態では、前記エミッション制御システムは、前記第1燃料のみと流体連通する注入インジェクタ、を備える。
【0030】
他の特定の実施形態では、第1燃料および第2燃料での作動を可能にするためにエンジンの作動を変更する開示された方法は、電子制御ユニットと、前記第1燃料を収容するための第1燃料容器および前記第2燃料を収容するための第2燃料容器を含む燃料送出システムと、エミッション制御システムとを、エンジンに提供することを含み、前記電子制御ユニットは、前記エミッション制御システムおよび前記燃料送出システムと通信するように構成されている。
【0031】
次に、前記エンジンは第2燃料を使用して作動され、前記エミッション制御システムは、再生イベントのタイミングになると、前記電子制御ユニットに通知する。特定の実施形態では、前記第1燃料は、前記エミッション制御システムに直接、通常は注入インジェクタに、供給される。他の特定の実施形態では、前記エンジンに、前記第1燃料が供給される。
【0032】
本発明の性質および利点をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】ディーゼル燃料を第1燃料として使用することを意図したファクトリまたはOEMエミッション制御システムの概略図である。
図1B】実施形態1に記載される変更例および特徴を含む図1Aのシステムの簡略化された概略図である。
図1C】対応する参照符号を含む、図1Bに図示される構成のより詳細な概略図である。
図2A】ディーゼル燃料を第1燃料として使用することを意図したファクトリまたはOEMエミッション制御システムの簡略概略図であり、前記エミッション制御システム内に注入インジェクタを含む。この図は、実施形態3および実施形態4にも適用可能である。図3Aおよび図4Aは図示されていないが、図2Aと同様であることを理解されたい。
図2B】実施形態2に記載される変更例および特徴を含む、図2Aのシステムの概略図である。
図2C】実施形態2に記載される変更例および特徴を含む、対応する参照符号を含む図2Bに図示される構成のより詳細な概略図である。
図3B】実施形態3に記載される変更例および特徴を含む、図2Aに示される構成の概略図である。
図3C】実施形態3に記載される変更例および特徴を含む、対応する参照符号を含む図3Bに示される構成のより詳細な概略図である。
図4B-1】実施形態4に記載される変更例および特徴を含む構成の簡略化した概略図である。
図4B-2】実施形態4の代替構成の簡略化された概略図である。
図4C】実施形態4の別の代替構成の簡略化された概略図である。
図4D】実施形態4に記載される構成であり、具体的には、対応する参照符号を再び含み、実施形態4に記載された変更例および特徴を含む、図4B-2の簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
当業者であれば、これらの図が、本発明およびその態様および特徴を最も広範に示した概略図であることを認識するであろう。実際のインプレイスシステムには、当技術分野で公知の補助的な構成要素が含まれる場合があり、その一部がこれらの図に示されている。本明細書では、明瞭性および図示の目的で、あまり重要でない付加的な構成要素は図示されていないことを理解されたい。
【0035】
添付図面に関連して以下に提供される詳細な説明は、実施例の説明として意図されたものであり、本実施例が構築または利用され得る唯一の形態を表すことを意図したものではない。この説明では、実施例の機能、および実施例を構築および操作するための一連のステップが説明される。ただし、同一または同等の機能およびシーケンスは、別の例によって実現され得る。
【0036】
「1つの実施形態(one embodiment)」、「1つの実施形態(an embodiment)」、「1つの例示的な実施形態(an example embodiment)」、「1つの実装形態(one implementation)」、「1つの実装形態(an implementation)」、「1つの実施例(one example)」、「1つの実施例(an example)」等への言及は、記載された実施形態、実装形態または実施例が特定の特徴、構造または特性を含み得ることを示すが、すべての実施形態、実施形態または実施例が必ずしも特定の特徴、構造または特性を含み得るわけではない。さらに、このような表現は、必ずしも同じ実施形態、実装形態または実施例を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造または特性が、ある実施形態、実装形態または実施例に関連して記載されている場合、そのような特徴、構造または特性は、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態、実装形態または実施例に関連して実装され得ることを理解されたい。
【0037】
記載される主題の1つ以上の態様を十分に理解するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかし、このような態様は、これらの具体的な詳細がなくても実施され得ることを理解されたい。特定の構成要素は、1つまたは複数の態様を説明するためにブロック図の形態で示されているが、単一の構成要素によって実行される機能は、複数の構成要素によって実行され得ることを理解されたい。同様に、単一の構成要素は、複数の構成要素によって実行されるものとして説明されている機能を実行するように、構成され得る。
【0038】
本明細書に開示される発明は、ディーゼル燃料などの燃料と、バイオディーゼルなどのバイオ燃料とを使用できるエンジン用に、主に設計されている。分かりやすくするため、また冗長な表現を避けるために、「バイオディーゼル」という用語は、バイオディーゼルなどの非石油ベースの供給源に由来する代替燃料を指すために使用される。この点に関して、当業者であれば、これらの代替の非石油ベース燃料には、純粋な植物油、熱分解由来のバイオオイル、および解重合プラスチック燃料をベースとする燃料、ならびにガソリン/エタノール混合物を使用するガソリンエンジンにおける同様の様式のエミッションシステムが含まれ得ることを認識するであろう。開示された発明は、場合によっては、第1燃料および第2燃料に言及するものとする。前記第1燃料はディーゼルなどのOEMが意図する燃料を指し、前記第2燃料はバイオディーゼルなどの代替燃料を指すものとする。この命名法は、ディーゼル燃料供給システムを第1燃料供給システムとし、バイオディーゼル燃料システムを第2燃料供給システムとして記載する場合にも使用されるものとする。共通の共有燃料システム構成要素は、燃料送出システム、または共通エンジン燃料システムとして記載され、いくつかの実施形態では、前記第1燃料と前記第2燃料との間で共有される燃料送出システム構成要素を指す。
【0039】
本発明は、前記エミッションシステムの特定の構成に関する実施形態を含み、部分的または全体的に利用され得る。
【0040】
明確に説明する目的で、これらの実施形態の概要を、最初にチャート形式で示し、次に説明形式で示す。
【表1】
【0041】
ディーゼルエンジンに使用される2つの典型的な従来技術のエミッション制御システムを、図1Aおよび図2Aに示す。図1Aは、エミッション制御システムの一部として注入インジェクタを含まないが、図2Aはその機能を含む。
【0042】
実施形態1
表に示す実施形態1は、実際のエンジンのシリンダ内で注入噴射を行うDOC/DPFシステムに関する。従来技術における再生イベントを発生させる1つの方法は、「シリンダ内」注入であり、この注入では、エンジンサイクルの排気行程中に、追加燃料(先行技術では、第1燃料/ディーゼル燃料が企図されている)が各シリンダの燃焼室に噴射される。このシステムには、別個の注入インジェクタはない。この追加燃料は、排気行程によって排気システムに送り込まれ、次いでDOCまたはDPFシステムによって酸化され、再生イベントに必要な条件が作り出される。バイオディーゼルなどのバイオ燃料を使用する場合、以下の2つの主な危険性がある:i)燃料がシリンダ壁から漏れ出て、クランクケース油を汚染して重合を促進し、クランクケース油の本来の機能を損なうことで、メンテナンスの必要性が加わったり、摩耗や損傷が加わったりする可能性がある。ii) 注入された燃料は、バイオ燃料の場合、ディーゼル燃料とは異なる引火点と燃焼特性を有するため、面閉塞(face plugging)(DOCまたはDPF表面への燃料の蓄積)または再生プロセスの不適切な完了が生じる可能性がある。
【0043】
このような懸念に対処するため、第1燃料であるディーゼル燃料と、第2燃料であるバイオディーゼル燃料などのバイオ燃料とを使用できるデュアル燃料システムにおいて、この実施形態は、前記第1燃料のみを使用してシリンダ内注入を完了できるようにするために、再生イベントの開始前に、前記エンジンの燃料送出システムを第1燃料に戻すようにする。さらに、この実施形態では、追加のシリンダ内注入燃料の噴射が開始される前に、前記燃料インジェクタ内から第2燃料がすべてエンジンによって消費されるか、または前記第2燃料タンクに戻されるまで、再生イベントを遅延させることができる。前記再生イベントが完了すると、デュアル燃料システムの第2燃料部分は、エンジンに第2燃料を供給するように再連動する(re-engage)。この実施形態はさらに、再生イベントが必要なタイミングを判定するために、デルタ圧力、および煤付着量(soot loading)などのOEMエミッション制御システムからの情報およびデータを利用および/または受信する、デュアル燃料システムを制御するためのスタンドアロン電子制御システムを、含む。当業者であれば、OEM構成がエンジンを含む場合、またはエミッション制御システムの電子制御装置が前記デュアル燃料システムの構成要素を制御するための追加の入力、出力、および処理能力を有している場合には、スタンドアロン電子制御システムは、前記デュアル燃料システムの制御のために厳密には必要ではないことを認識するであろう。
【0044】
1つの実施形態では、第2燃料システムの電子制御モジュールは、前記エンジン、後処理システム、またはエミッション制御システムと通信し、電子制御モジュールは再生イベントを制御する。前記第2燃料システムが連動すると、前記電子制御ユニットは、前記エミッション制御システムに対して、再生の開始を抑止するようにするメッセージを伝送する。DPFシステムが再生イベントを要求すると、前記二次燃料システムを制御する前記電子制御ユニットは、抑止メッセージの伝送を維持し、再生要求をトリガーとして燃料システムを第1燃料供給システムに切り替える。このプロセス中、前記電子制御装置は燃料供給バルブをオフにする(これにより、前記第1燃料が前記エンジンに送出されるようになる)。エンジンおよび燃料送出システム内の第2燃料の体積に基づいて計算された遅延(第2燃料が前記エンジンおよび共通燃料ラインから流し出されて前記第2燃料タンクに戻される時点を目標とする)が経過すると、戻しバルブが非作動状態になり、前記エンジンが第1燃料タンクから引き出し、かつ、第1燃料タンクに戻す状態になる。エンジンの大きさ、インジェクタの燃料量、エンジン負荷、燃料消費量など、この実施形態の具体的な作動条件は、前記燃料送出システムおよびインジェクタから第2燃料が完全に流し出されることを確実にするための遅延計算に考慮される。フラッシングプロセスが完了すると、前記電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を停止し、前記第1燃料で再生プロセスを進行できるようにする。再生イベントが完了すると、前記システムは前記第2燃料での作動を再開できるようになる。
【0045】
示されるデフォルトの実施形態では、電子制御ユニットからの作動によって制御される電気機械式ソレノイドバルブが使用される。当業者であれば、流体選択のために差圧を利用するチェックバルブの組み合わせなど、2つの流体システム間の選択のための他の方法が可能であることを認識するであろう。これらの追加的な実施形態は、依然としてシステムが所望の成果を達成することを可能にし、アプリケーションの実用性が要求される場合に使用するのに適している。
【0046】
示されるデフォルトの実施形態では、前記二次燃料システム用の追加の電子制御モジュールが使用されるが、当業者であれば、適切な構成により、エンジン、後処理システム、または他のシステムの電子制御モジュールが前記第2燃料システムの機能を制御できることを認識するであろう。
【0047】
図1Aは、一般に参照符号9で指定されるOEM燃料システムを示している。この図において,タンク8からの第1燃料は、低圧ポンプ12および高圧ポンプ13によって、燃料ライン11および第1燃料フィルタ10を通ってエンジン5に供給される。エンジン5は、OEMエンジン制御ユニット(「ECU」)7と、一般に参照符号15で示される第1のOEMエミッション制御システムとをさらに提供される。OEMエミッション制御システム15は、通信接続部57によってOEM ECU7およびOEMエミッションシステム15と通信するエミッション制御/後処理制御モジュール(「ACM」)28、を含む。この特定のシステムは、ディーゼル酸化触媒(「DOC」)24、ディーゼル微粒子フィルタ(「DPF」)25、および選択触媒還元(「SCR」)システム26をさらに含む。当業者であれば、エンジン5の特性に応じて、これらの個々のシステムを個別に、または任意の組み合わせで使用できることを認識するであろう。
【0048】
ここで、エンジン5が第1燃料と第2燃料との両方を使用できるようにするための変更を含む燃料システム20、を含む図1Bを参照すると、前記燃料システムが第2燃料の使用を可能にするように変更される場合、エミッション制御システム15は、燃焼およびクランクケース油のシリンダ消費からの、煤および灰、ならびに他の副生成物を捕集するように設計された、触媒コーティングされたフィルタ基材を有する上述のDOC24、DPF25、またはその両方を、依然として含む。しかし、これらは固体であり、DOC24および/またはDPF25が微粒子、煤、および灰を蓄積すると、排気背圧が上昇し、排気ガスがDPF25を通って排気システムから排出されるために追加の作業を実行する必要があるため、エンジン全体の効率が低下する。この効率低下は、エンジンの燃費、ひいてはエンジンの全体的な作動コストに重大な影響を及ぼす可能性がある。煤や他の微粒子が急速に蓄積するため、エンジンの作動中に開始され得るDOC24とDPF25の洗浄プロセスが、必要である。このことは、当業者が認識するように、「再生イベント」によって開始されるフィルタ再生として知られるプロセスによって、達成することができる。「再生イベント」は、広義には、エンジンの一部の領域に追加の燃料を一時的に導入または「注入」して、その領域の作動温度を上昇させ、煤および灰を焼却することによって達成される。従来技術で知られている様々なシステムは、DOC24とDPF25が再生を必要とするタイミングを判定することができ、随時必要に応じて再生イベントを開始することができる。従来技術では、これは通常、エンジンの作動に消費される燃料と同じ燃料を使用して達成される。従来、この第1燃料は、石油ベースの製品である、原油から精製された燃料であるディーゼル燃料であった。
【0049】
図1Bに示すようなエミッション制御システム15では、再生は、高圧ポンプ13(1つの実施形態では、これはエンジン5の燃料噴射ポンプであり得る)に、エンジン5のサイクルの排気行程中にエンジン5のシリンダ内に追加燃料を噴射させることによって、達成される。この追加燃料は、エンジン5の排気行程によって排気システムに送り込まれ、その後、DOC24またはDPF25システムによって酸化され、再生イベントに必要な条件が作り出される。この実施形態では、エミッション制御システム15は、さらなる実施形態で説明される他のタイプのエミッション制御システムにおける特徴である注入インジェクタ、を含まない。
【0050】
前述のように、また図1Bおよび図1Cに示されているように、エンジン5のようなエンジンは、植物油、バイオディーゼルなどのバイオ燃料のような第2燃料で作動するように、うまく変換され得る。従来技術としては、Huwylerらの米国特許第9,995,225号、第10,119,506号、第10,202,950号、および第10,385,812号が挙げられる。
【0051】
図1Bおよび図1Cをさらに参照すると、バイオディーゼル燃料のような第2燃料が第2燃料タンク30に収容されている。この燃料は、低圧燃料ポンプ12によって、バイオディーゼル燃料ライン42を経由して、バイオディーゼル燃料フィルタ40を通るように引き出される。燃料切替(fuel selector)バルブ50は、以下に詳細に説明するように、制御信号接続部56を介して搭載ECU63に応答し、エンジン5が、搭載(onboard)ECU63によって決定された第1燃料もしくは第2燃料またはこれらの混合燃料、を受け入れるように、第1燃料および第2燃料の流れを制御することができる。
【0052】
しかし、このように第2燃料で作動するように変換されたエンジン5では、エンジン5がバイオディーゼルのような第2燃料で作動している間に、エミッション制御システム15およびそのACM28がDOC24とDPF25のために再生が必要であると判断すると、2つの主な危険が存在する:i)前記第2燃料がシリンダ壁を伝ってクランクケース油を汚染して重合を促進し、クランクケース油の本来の機能を損なうことで、メンテナンスの必要性が加わる、および/または摩耗や損傷がさらに生じる可能性がある。ならびにii)噴射された燃料は、バイオ燃料の場合、ディーゼル燃料とは異なる引火点および燃焼特性を有するため、面閉塞(DOC24またはDPF25表面への燃料の蓄積)または再生プロセスの不適切な完了が発生する可能性がある。
【0053】
さらに図1Bおよび図1Cを参照すると、これらの懸念に対処するために、後処理制御モジュールACM28だけでなく、通信接続部57を介してECU7と通信する搭載ECU63を含み、エンジン5が第1燃料とバイオディーゼル燃料などの第2燃料とを使用することを可能にする、デュアル燃料システムにおいて、この実施形態は、前記第1燃料のみを使用してシリンダ内注入を実行できるようにするために、再生イベントの開始前にエンジンの燃料供給および送出システムを、第1燃料に戻すようにする。
【0054】
これを達成するために、ACM28またはOEM ECU7によって決定された再生が必要な場合、再生イベントはまず搭載ECU63によって遅延され、共通/共有の燃料ライン11から第2燃料を抜き出すまたは「流し出す」。次いで、エンジン5は、燃料ライン11に残っている第2燃料を燃焼する。
【0055】
通信接続部56によって搭載ECU63と通信する切替バルブ50は、次いで、燃料インジェクタ内のすべての第2燃料が前記エンジンによって消費されるか、または戻しバルブ60によって前記第2燃料タンクに戻されるまで、搭載ECU63に応答して、第1燃料を第1フィルタ10から燃料ライン11を通ってエンジン5に流すように、設けられる。
【0056】
再生は、高圧燃料ポンプ13が排気行程中にエンジン5のシリンダ内に追加のディーゼル燃料を噴射することによって、達成される。この結果、DOC24およびDPF25内の煤および粒子状物質が酸化される。再生イベントが完了すると、切替バルブ50は、再び搭載ECU63に応答して、再び前記エンジン5に第2燃料を供給する。
【0057】
実施形態2
ここで表の実施形態2を参照すると、本発明はさらに、デュアル燃料システムで使用するための実施形態を提供し、ここで、DOC/DPFシステムにおけるOEM第1燃料注入インジェクタは、デュアル燃料システムにおける第1燃料と第2燃料との間で共有されなければならないか、あるいは少なくとも第1燃料の、または第1燃料と第2燃料との両方の流れにさらされる可能性がある。前述したように、バイオディーゼルまたはバイオディーゼル混合物などの第2燃料をDOC/DPFに直接噴射すると、OEMシステムの作動や構成部品に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0058】
この実施形態では、OEM燃料システムは、割り当てられた時間または所定の時間、デュアル燃料システムを第1燃料に戻すことによって、燃料システムから第2燃料を「流し出す」または「パージ」(すなわち、除去)できるように変更され、注入インジェクタ(およびもちろん燃料システムの残りの部分)は前記第1燃料のみを噴射する。これを達成するために、前記デュアル燃料システムは、保留中の再生イベントを遅延させ、エンジンの燃料供給および送出システムを第1燃料のみを含むように戻す。規定された時間の後、燃料ライン、エンジン、および構成要素から第2燃料がパージされ、第1燃料のみが含まれるようになると、この実施形態は、再生イベントを開始する。再生が完了すると、前記デュアル燃料システムは、前記第2燃料での作動を再開する。この実施形態では、デュアル燃料システムのロジックおよび制御のためにスタンドアロン燃料制御システムも利用され得、また、再生イベントが必要なタイミングを判定するために、エミッション制御システムからの情報、例えば、デルタ圧力、煤負荷、再生ステータスなどのOEMシステムからのインプットを利用することもできる。
【0059】
別の実施形態では、一部のOEM燃料システム構成は、エンジンシリンダおよび注入インジェクタに供給するエンジン燃料ラインをパージするのに適していない。これらのシステムに対して、この実施形態は、第2の注入インジェクタ燃料ラインを効果的にパージするための追加のパージシステムを、提供する。この実施形態は、OEM後処理制御システム、または再生イベントを制御する他の電子制御ユニットからのインプットを受信する、デュアル燃料システムのロジックおよび制御のためのスタンドアロン制御に加えて、以下に説明するように、追加の燃料システムライン、バルブ、およびセンサを含み得る。デルタ圧力、煤負荷、再生ステータスなどのこれらのインプットにより、スタンドアロン制御装置は、再生イベントが必要なタイミングを判定することができる。再生イベントを開始する前に、デュアル燃料システムは第1燃料作動に戻り、前記フラッシュバルブを適切に作動させ、前記第2燃料が前記第2燃料タンクに戻るように注入インジェクタラインをフラッシュし、システムフラッシュが完了するのに必要な規定時間後に、燃料供給ライン、燃料送出ライン、注入器燃料ライン、および燃料システムに流体連通している他のエミッション制御システム構成要素に第1燃料のみが残っている状態で、DPF再生が行われるようにする。再生が完了すると、エンジン燃料供給は第2燃料システムでの作動を再開できるようになる。
【0060】
別の実施形態では、前記第2燃料システムの電子制御モジュールは、前記エンジン、後処理システム、またはエミッション制御システムと通信し、電子制御モジュールは再生イベントを制御する。前記第2燃料システムが連動すると、第2燃料システムを制御している電子制御ユニットは、前記エミッション制御システムに対して、再生を抑止するようにするメッセージを伝送する。DPFシステムが再生イベントを要求すると、前記第2燃料システムの電子制御ユニットは、抑止メッセージの伝送を維持し、第1燃料システムからのエンジンへの供給に、切り替える。このプロセスの間、電子制御装置が供給バルブをオフにし(その結果、前記エンジンに前記第1燃料が供給されるようになる)、注入器フラッシュバルブを作動させて注入器インジェクタラインを第1燃料でフラッシュすることで、エンジンおよび燃料送出システムから第2燃料がパージされる。エンジン、注入器供給ライン、注入器インジェクタ、および燃料送出システム内の第2燃料の量に基づいて計算された遅延(前記第2燃料が前記エンジンおよび共通燃料ラインから流し出されて前記第2燃料タンクに戻される時点を目標とする)の後、戻しバルブが非作動状態になり、エンジンが前記第1燃料タンクから引き出し、かつ、第1燃料タンクに戻す状態になる。この段階で、前記注入器および前記注入器インジェクタラインは前記第1燃料でフラッシュされ、前記注入器フラッシュバルブはオフになる。エンジンの大きさ、インジェクタの燃料量、エンジン負荷、燃料消費量、注入器供給ライン、注入器インジェクタの構成など、この実施形態の具体的な作動条件は、前記燃料送出システムおよびインジェクタから前記第2燃料が確実に流し出されるように、遅延計算に考慮される。フラッシングプロセスが完了すると、第2燃料システムの電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を停止し、前記第1燃料で再生プロセスを進行できるようにする。再生イベントが完了すると、エンジンの燃料供給は、第2燃料システムでの作動を再開できるようになる。
【0061】
図2Aを参照すると、OEM燃料システム9は、注入インジェクタ69を含む代替OEMエミッション制御システム17と繋がって示されており、この注入インジェクタ69は、図1Aに示されているように、エンジン5のシリンダ内ではなく、エミッション制御システム17内の所定のポイントで、前記第1燃料を噴射する。注入インジェクタ69には、低圧燃料ポンプ12によって注入インジェクタ供給ライン67から第1燃料が供給される。
【0062】
しかし、図2Bおよび図2Cに示されるように、このシステムが、第1燃料と、バイオディーゼルなどの第2燃料とで作動するようにデュアル燃料システム20に適合される場合、低圧ポンプ12は、第1燃料供給ライン11および第2燃料供給ライン42によって「共有」されなければならない。
【0063】
図2Bおよび図2Cをさらに参照すると、この実施形態では、注入インジェクタ69は、第2燃料注入ライン67および注入インジェクタフラッシュバルブ70を介して、低圧燃料ポンプ12から燃料を受け入れる。注入インジェクタ69は、注入インジェクタフラッシュバルブ70に油圧接続され、通信接続部57を介してACM28と通信している。注入インジェクタフラッシュバルブ70は、搭載ECU63から制御信号を受信する。
【0064】
DOC24またはDPF25が再生イベントを要求し、エンジン5が第2燃料で作動している場合、再生イベントはOEM ECU7および搭載ECU63によって遅延される一方、搭載ECU63は燃料切替バルブ50に対して前記燃料システムを前記第1燃料に戻させ、再生イベント中にエンジン5が一時的に第1燃料で作動するようにする。燃料切替バルブ50は、制御接続部56を介して搭載ECU63に応答し、第1燃料供給ライン11を介してエンジン5に前記第1燃料を供給するように、設けられる。注入供給ライン67を介してポンプ12から燃料を受け入れることができる注入インジェクタフラッシュバルブ70は、次いで、制御接続部56を介して搭載ECU63によって開放され、注入インジェクタ供給ライン67および注入インジェクタ69を、第1燃料でフラッシュする。エンジン5および注入インジェクタ69に残っている第2燃料は、燃料戻りライン37を通って第2燃料タンク30に流し戻される。インジェクタ供給ライン67および注入インジェクタ70から第2燃料が流し出されると、第1燃料が第1燃料タンク8に戻されるように、搭載ECU63は、戻しバルブ60を閉じさせる。その時点では、エンジン5は前記第1燃料で作動しており、供給ライン67には第1燃料のみが含まれている。
【0065】
さらなる実施形態では、搭載ECU63は、供給ライン67に第2燃料が含まれていないことを確実にするために、エンジン5が作動し続けている間、再生イベントを所定の時間だけ遅延させることができる。
【0066】
次いで、搭載ECU63は再生イベントの開始を許可する。再生イベントが完了すると、搭載ECU63は通信接続部57を介してECU7およびACM28と通信し、第2燃料によるエンジン5の作動が再開する。
【0067】
実施形態3
次に実施形態3を参照すると、ディーゼル燃料のみを使用するようにデュアル燃料システムにおいて隔離された注入インジェクタを備えたDOC/DPFシステムが、開示される。この実施形態は、OEM燃料フィルタハウジング、燃料ポンプ、後処理炭化水素注入制御装置、および後処理注入インジェクタが、第2燃料システムから完全に隔離され、第1燃料とのみ流体連通しているデュアル燃料システムに適用可能である。エンジンの初期ウォームアップ期間中、OEM燃料システムは、前記エンジンおよび前記後処理システムに、第1燃料を送出している。第2燃料に対する作動条件が満たされると、1対の燃料切替バルブが開いて作動し、前記第2燃料が追加燃料ポンプを介して圧力を受けた状態でエンジンに送出される。同時に、リリーフバルブが開き、前記エンジンに供給されていた前記第1燃料は、炭化水素注入モジュールおよび注入インジェクタにのみ供給されるようになる。前記注入モジュールおよびインジェクタによって使用されなかった残りの第1燃料は、前記第1燃料タンクに戻される。前記炭化水素注入モジュールおよび前記インジェクタでの第1燃料の使用を、現行のエンジン状態において維持することで、微粒子フィルタ内で排気酸化が適切に行われることが、確実になり、フィルタモジュール上およびフィルタモジュール内の効率的な微粒子除去が維持される。この実施形態では、エンジンが第1燃料モードまたは第2燃料モードで作動しているかに関わらず、エンジンがどのような燃料を使用していても、再生サイクルを進行させることができ、注入は第1燃料でのみ行われる。
【0068】
前記エミッション制御システム/後処理システムおよびDOC/DPF隔離を実証する別の実施形態は、OEMエンジンが燃料フィルタモジュール、電動ポンプ、および、燃料圧力センサを備え、炭化水素注入モジュールおよび注入インジェクタがデュアル燃料システム構成の共通側または共有側の燃料レールに並んでいる場合を示している。この例では、注入モジュールおよび注入インジェクタは、燃料レール(共通側)から移動され、電動ポンプとフィルタの前、ただし燃料供給切替バルブの前に、経路付けされる。これにより、注入モジュールは、正しい圧力を維持するが、第2燃料が共通燃料システム、燃料レール、およびエンジンに送出され始めるときに、前記第2燃料から隔離される。この実施形態では、再生活動は、OEMが第1燃料に対して意図したとおりに正確に作用する。
【0069】
別の実施形態では、前記第2燃料システムは、エンジンもしくは後処理電子制御モジュールと、または再生イベントを制御するモジュールと通信している。前記第2燃料システムが連動すると、前記第2燃料システム電子制御ユニットは、前記エミッション制御システムに対して、再生を抑止するようにするメッセージを伝送する。DPFシステムが再生イベントを要求すると、電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を維持し、前記第1燃料システムに切り替える。この構成では、前記低圧第1燃料ポンプが、注入器インジェクタに第1燃料を供給し続ける。この場合の注入器フラッシュバルブは、第2燃料供給システムが連動しているときにポンプが注入器バルブに対して「デッドヘッド(dead headed)」にならないように、第1燃料用のフラッシュ経路を提供するために利用される。この構成では、注入器インジェクタに第1燃料が適切な圧力で供給されるように、制限オリフィスまたは何らかの圧力調整装置を追加する必要があり得る。DPFシステムが再生イベントを要求すると、電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を維持し、エンジンシステムを第1燃料に切り替える。このプロセスの間、第2燃料システム用の電子制御ユニットは、注入器フラッシュバルブを閉じてフラッシュ経路を閉じ、電子制御装置が供給バルブをオフにすることによって、前記エンジンおよび燃料送出システムから第2燃料がパージされる(したがって、前記第1燃料が前記エンジンに送出されるようになる)。前記エンジンおよび燃料送出システム内の第2燃料の体積に基づいて計算された遅延(第2燃料がエンジンおよび共通燃料ラインから流し出され第2燃料タンクに戻される時点を目標とする)の後、戻しバルブが非作動状態になり、エンジンが第1燃料タンクから引き出し、かつ、第1燃料タンクに戻す状態になる。エンジンの大きさ、インジェクタの燃料量、エンジン負荷、燃料消費量など、この実施形態の具体的な作動条件は、前記燃料送出システムおよびインジェクタから前記第2燃料が確実に流し出されるように、遅延計算に考慮される。フラッシングプロセスが完了すると、前記電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を停止し、第1燃料で再生プロセスを進行できるようにする。再生イベントが完了すると、エンジンの燃料供給は、2次燃料システムでの作動を再開できるようになる。
【0070】
別の実施形態では、第2燃料システムの電子制御モジュールは、エンジン、後処理システム、またはエミッション制御システムと通信し、電子制御モジュールは再生イベントを制御する。第2燃料システムが作動すると、第2燃料システムの電子制御ユニットは、エミッション制御システムに対して、再生を抑止するようにするメッセージを伝送する。DPFシステムが再生イベントを要求すると、電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を維持し、第1燃料システムに切り替える。この構成では、注入器インジェクタに燃料を供給し続けるために、追加の低圧ポンプが第1燃料システムに追加される。この実施形態で濾過された燃料は、第1燃料システムフィルタを通して引き出される。DPFシステムが再生イベントを要求すると、電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を維持し、燃料送出システムを第1燃料供給システムに切り替える。このプロセスの間、第2燃料システム用の電子制御ユニットは、電子制御装置に供給バルブをオフにさせることによって、エンジンおよび燃料送出システムから第2燃料をパージする(したがって、第1燃料がエンジンに送出されるようになる)。前記エンジンおよび燃料送出システム内の第2燃料の体積に基づいて計算された遅延(第2燃料がエンジンおよび共通燃料ラインから流し出され、第2燃料タンクに戻される時点を目標とする)の後、戻しバルブが非作動状態になり、エンジンが第1燃料タンクから引き出し、かつ、第1燃料タンクに戻す状態になる。エンジンの大きさ、インジェクタの燃料量、エンジン負荷、燃料消費量など、この実施形態の具体的な作動条件は、前記燃料送出システムおよびインジェクタから第2燃料が確実に流し出されるように、遅延計算に考慮される。フラッシングプロセスが完了すると、前記電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を停止し、前記第1燃料で再生プロセスを進行できるようにする。再生イベントが完了すると、エンジンの燃料供給は、2次燃料システムでの作動を再開できるようになる。
【0071】
別の実施形態では、第2燃料システム電子制御モジュールは、エンジン、後処理システム、またはエミッション制御システムと通信し、電子制御モジュールは再生イベントを制御する。第2燃料システムが連動すると、電子制御ユニットは、エミッション制御システムに対して、再生を抑止するようにするメッセージを伝送する。DPFシステムが再生イベントを要求すると、第2燃料システムの電子制御ユニットは、抑止メッセージの伝送を維持し、第1燃料システムに切り替える。この構成では、注入器インジェクタに燃料を供給し続けるために、燃料フィルタおよび低圧ポンプが第1燃料システムに追加される。DPFシステムが再生イベントを要求すると、電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を維持し、燃料送出システムを第1燃料供給システムに切り替える。このプロセスの間、第2燃料システム用の電子制御ユニットは、電子制御装置に供給バルブをオフにさせることによって、エンジンおよび燃料送出システムから第2燃料をパージする(したがって、第1燃料がエンジンに送出されるようになる)。前記エンジンおよび燃料送出システム内の第2燃料の体積に基づいて計算された遅延(第2燃料がエンジンおよび共通燃料ラインから流し出され、第2燃料タンクに戻される時点を目標とする)の後、戻しバルブが非作動状態になり、エンジンが離脱され第1燃料タンクに復帰する状態になる。エンジンの大きさ、インジェクタの燃料量、エンジン負荷、燃料消費量など、この実施形態の具体的な作動条件は、燃料送出システムおよびインジェクタから第2燃料が確実に流し出されるように、遅延計算に考慮される。フラッシングプロセスが完了すると、電子制御ユニットは抑止メッセージの伝送を停止し、第1燃料で再生プロセスを進行できるようにする。再生イベントが完了すると、前記システムは第2燃料システムでの作動を再開できるようになる。
【0072】
別の実施形態では、注入器インジェクタと注入器燃料ラインが完全に分離され、第1燃料で機能し、第2燃料は、第1燃料の作動条件と実質的に類似した作動条件を有し、第一燃料でエミッション制御システム、注入器が作動し、再生イベントが生じている間、前記エンジンおよび燃料システムは第2燃料でエンジン作動のために作動を継続することができ、その間に再生イベントが第1燃料で生じる。注入器、注入器供給ラインなどが完全に分離され、第1燃料とのみ流体連通している実施形態では、このようなことが可能であることに留意されたい。
【0073】
次に図3Bおよび図3Cを参照すると、この実施形態は、図2Bおよび図2Cに示されたものの変形である。この実施形態では、第2燃料ライン42が独自の低圧ポンプ46を備えているため、第1燃料ライン11を、第2燃料タンク30、第2燃料フィルタ40、および第2燃料ライン42から隔離することができる。この実施形態では、高圧ポンプ13は第2フィルタ40、第2燃料供給ライン42および切替バルブ50を介してエンジン5に第2燃料を供給でき、インジェクタ燃料ライン67およびインジェクタ69は、低圧ポンプ12から第1燃料のみを受け入れるが、低圧ポンプ12は高圧ポンプ13およびエンジン5に第1燃料のみを供給する。
【0074】
この実施形態では、制御接続部56を介して搭載ECU63に応答する注入フラッシュバルブ70が、インジェクタ供給ライン67および第1燃料戻りライン14を介して第1燃料タンク8に第1燃料を戻す経路を提供する。
【0075】
DOC24またはDPF25が再生イベントを要求すると、再生イベントの前にエンジン5がフラッシュされる。供給バルブ50は、搭載ECU63によって、エンジン5に第1燃料を供給するように設けられる。エンジン5が搭載EU63によって決定された十分な時間作動した後、搭載ECU63によって再生イベントの進行が許可される。再生イベントが完了すると、搭載ECU63および供給バルブ50は、再びエンジン5に第2燃料を供給する。
【0076】
実施形態4
次に実施形態4を参照すると、注入インジェクタ専用のディーゼル燃料送出システムを含む、注入インジェクタを備えたDOC/DPFシステムが開示されている。この実施形態により、再生前に第1燃料ラインから第2燃料が「パージ」される上記実施形態(2)で示された相互汚染のリスクを懸念することなく、エミッション制御システム/後処理システムとは異なる燃料でエンジンを作動させることが可能になる。これにより、エンジンシステムは、専用の第2燃料で、またはデュアル燃料方式における第2燃料で作動させることが可能になるが、エンジンに供給される第2燃料ではなく第1燃料を使用して再生イベントを発生させることができるため、第2燃料でより高いエンジン作動ランタイムを実現することができる。
【0077】
この実施形態は、エンジンの既存の第1燃料フィルタから注入インジェクタに直接第1燃料を供給する別個の「専用」第1燃料ポンプと、関連する燃料ライン、およびレベル、温度、圧力を含むセンサ、燃料ポンプ(スタンドアロンまたはエンジン回転数(RPM)と同期)、システムコントローラ、およびOEM後処理炭化水素注入器を含み得る。別の実施形態では、別個の「専用」第1燃料ポンプおよび燃料フィルタが、注入インジェクタへの供給に使用される。第1燃料と第2燃料との両方を含む燃料ラインはない。このシステムの実施形態では、注入インジェクタのロジックおよび制御のためにエンジンのOEMエミッション制御システムを利用するが、エミッションシステムと共に使用し、エミッションシステムに第1燃料を供給するための物理的なシステムを提供するために、本出願人による構成要素を利用する。
【0078】
別の実施形態では、第2燃料専用の燃料供給システムが利用される。この実施形態では、第2燃料の供給に適するように第1燃料供給システムを若干変更することになる可能性があるが、デュアル燃料供給システムを完全に追加する必要はない。この実施形態では、第1燃料タンク、フィルタ、およびポンプがエミッション制御システムに追加され、第1燃料のみに対する注入器の作動を隔離する。この実施形態では、注入器インジェクタおよび注入器燃料ラインが完全に隔離され、第1燃料で機能するため、第1燃料でエミッション制御システム、注入器が作動し、再生イベントが生じる間、前記エンジンは第2燃料で作動し続けることが可能になり、その間に前記エンジンおよび燃料システムは第2燃料でエンジン作動のために作動を継続することができ、第1燃料で再生イベントが発生する。
【0079】
次に図4B-1を参照すると、第1燃料フィルタ10から第1燃料を受け入れる専用の注入インジェクタポンプ74によって、第1燃料供給ライン67を介して第1燃料が注入インジェクタ69に供給される、さらなる実施形態が図示されている。この実施形態では、注入インジェクタ69に第1燃料のみを供給しながら、エンジン5に第2燃料を供給することができる。
【0080】
図4B-2および図4Dに示されるようなさらに別の実施形態では、注入インジェクタ69は、専用のフィルタ77および専用の注入インジェクタポンプ74を介して、専用の供給ライン67を通して第1燃料タンクから第1燃料を受け入れる。この実施形態では、前記エンジン5には第2燃料が供給され、一方、前記注入インジェクタ69には第1燃料のみが供給される。
【0081】
図4Cに示されるさらに別の実施形態では、第2燃料のための専用の燃料システムが、第2燃料タンク30から、第2燃料供給ライン42および第2燃料フィルタ40を通ってエンジン5に提供される。この実施形態および必要な変更は、他の実施形態に開示されているような「デュアル燃料」システムタイプのアプローチを必要としない。注入インジェクタ69は、第2燃料ライン42から隔離され、専用の第1燃料タンク8A、第1燃料供給ライン11A、および第1燃料フィルタ10Aから第1燃料のみを受け入れる。注入インジェクタ69が第2燃料を受け入れることがないため、この実施形態では注入インジェクタフラッシュバルブ70は必要ない。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3B
図3C
図4B-1】
図4B-2】
図4C
図4D
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料および第2燃料での作動を可能にするために、少なくとも、前記第1燃料に関連する燃料送出システムと、エミッション制御システムと、を有するエンジンの作動を変更する方法であって、
前記エンジンに、前記第2燃料に関連する燃料供給システムと、電子制御ユニットと、を提供するステップであって、前記電子制御ユニットが、少なくとも前記エミッション制御システム、前記燃料送出システム、および前記燃料供給システムと通信するように構成されている、ステップ;
前記第2燃料を使用して前記エンジンを作動させるステップ;
前記電子制御ユニットにより、前記エミッション制御システムから、再生イベントが必要であるという通知を受信するステップ;および
前記燃料送出システムにより、前記再生イベントのために前記エミッション制御システムに前記第1燃料を供給するステップ、を含む方法。
【請求項2】
前記再生イベント前に、前記エンジンから前記第2燃料をパージしてから、前記第1燃料を前記エミッション制御システムに供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パージするステップが完了するまで前記再生イベントを遅延させるステップをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記電子制御ユニットによって、前記エミッション制御システムに、前記再生イベントを開始するメッセージが送信されるまで、前記再生イベントの発生を抑止するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記再生イベントが完了した後、前記第2燃料を使用して前記エンジンの作動を再開することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1燃料が石油系燃料であり、前記第2燃料が代替燃料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2燃料が再生イベントに適していない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2燃料を使用して前記エンジンを作動させるステップが、前記エミッション制御システムによる再生イベントの実行を抑止することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エミッション制御システムが、前記エンジンの前記燃料送出システムと流体連通している、注入インジェクタ、燃料注入ライン、および注入フラッシュバルブを備え、かつ
前記エミッション制御システムによる再生イベントの実行の前に前記燃料送出システムに前記第1燃料を供給することによって、前記注入インジェクタおよび前記燃料注入ラインから前記第2燃料を流し出すように、前記電子制御ユニットが、前記注入フラッシュバルブに指示する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エミッション制御システムが、前記第1燃料とのみ流体連通する注入インジェクタ、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エンジンが、前記第1燃料または前記第2燃料を前記エンジンに選択的に供給するための燃料切替バルブ、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記エンジンが、燃焼室を有するシリンダ、をさらに備え、前記第1燃料が、前記シリンダの排気行程中の前記燃焼室への噴射によって、前記エミッション制御システムに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1燃料および第2燃料での作動を可能にするために、エンジンの作動を変更する方法であって、
前記エンジンに、電子制御ユニット、前記第1燃料を収容する第1燃料容器と、第2燃料を収容する第2燃料容器と、を含む燃料送出システム、および、エミッション制御システム、を提供するステップであって、前記電子制御ユニットが、前記エミッション制御システムおよび前記燃料送出システムと通信するように構成されている、ステップ;
前記第2燃料を使用して前記エンジンを作動させるステップ;
前記電子制御ユニットにより、前記エミッション制御システムから、再生イベントが必要であるという通知を受信するステップ;ならびに
前記再生イベントのために前記エミッション制御システムに前記第1燃料を供給するステップ、を含む方法。
【請求項14】
前記第1燃料が石油系燃料であり、前記第2燃料が代替燃料である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
エンジンに燃料を送出する燃料送出システムであって、
前記エンジンのエミッション制御システム、ならびに、第1燃料供給および第2燃料供給を含む燃料供給システムと通信するように構成されている電子制御ユニットを含み、
前記電子制御ユニットは、
前記第2燃料で前記エンジンを作動させ、
前記エミッション制御システムから、再生イベントが必要であるという通知を受信し、かつ、
前記再生イベントのために前記エミッション制御システムに前記第1燃料を供給する、
ようにプログラムされまたは構成されている少なくとも1つのプロセッサを含む、燃料送出システム
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセッサはさらに、前記再生イベントの前に、前記エンジンから前記第2燃料をパージしてから、前記第1燃料を前記エミッション制御システムに供給する、ようにプログラムされまたは構成されている、請求項15に記載の燃料送出システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサはさらに、前記再生イベントが完了した後、前記第2燃料を使用して前記エンジンの作動を再開する、ようにプログラムされまたは構成されている、請求項15に記載の燃料送出システム。
【請求項18】
前記第1燃料が石油系燃料であり、前記第2燃料が代替燃料であり、かつ、前記第2燃料が前記再生イベントに適していない、請求項15に記載の燃料送出システム。
【請求項19】
前記第2燃料を使用して前記エンジンを作動させることが、前記エミッション制御システムによる再生イベントの実行を抑止することをさらに含む、請求項15に記載の燃料送出システム。
【請求項20】
前記電子制御ユニットはさらに、前記第1燃料または前記第2燃料を前記エンジンに選択的に供給するための燃料切替バルブと通信するように構成されている、請求項15に記載の燃料送出システム。
【国際調査報告】