(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】重合性チオキサントン光開始剤
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20240126BHJP
C08F 220/38 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C08F2/44 Z
C08F220/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543353
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022051285
(87)【国際公開番号】W WO2022157274
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シセロン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】デムーラン, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】メレック, ピエール
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011PA25
4J011QA01
4J011QA11
4J011QA21
4J011QA22
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA37
4J011QA40
4J011QB01
4J011QB03
4J011SA64
4J011SA84
4J011UA00
4J100AL62Q
4J100AL67P
4J100BA02P
4J100BA08P
4J100BA15P
4J100BC83P
4J100BD12P
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA23
4J100DA50
4J100FA03
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA07
4J100JA11
4J100JA51
4J100JA52
4J100JA58
(57)【要約】
本発明は、重合性光開始剤、重合性光開始剤を調製する方法、重合性光開始剤およびエチレン性不飽和化合物を含む重合性組成物に関する。本発明はまた、重合性光開始剤または重合性組成物の種々の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(式中、
各L
1は独立して、アルキレンであり;
L
2は、少なくとも3個の炭素原子を含む(a+b)価のリンカーであり;
各R
1およびR
2は、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアルキル、チオアリール、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール、-C(=O)R
a、-NR
bR
c、アルキルアミノ、アルキルチオール、ハロアルキル、-NO
2、-CN、-C(=O)OR
d、-C(=O)NR
bR
cから独立して選択され;
各R
3は独立して、Hまたはメチルであり;
R
aは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキルおよび置換されていてもよいアリールから選択され;
R
b、R
cおよびR
dは、H、アルキルおよびアリールから独立して選択され;
aは少なくとも1であり;
bは少なくとも1であり;
但し、式(I)の重合性光開始剤はアセタール基およびヒドロキシ基を含まず;
aが1であり、bが1である場合、(メタ)アクリレート基-O-C(=O)-C(R
3)=CH
2の-O-原子は、少なくとも3個の連続した原子によってエステル基-L
1-C(=O)-O-の-O-原子から分離されている)
に対応する重合性光開始剤。
【請求項2】
式(Ia):
(式中、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、aおよびbは請求項1に定義される通りである)
に対応する、請求項1に記載の重合性光開始剤。
【請求項3】
各L
1が独立して、1~6個、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり、特に各L
1が-CH
2-または-CH(CH
3)-であり、より詳細には各L
1が-CH
2-である、請求項1または2に記載の重合性光開始剤。
【請求項4】
L
2が、芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素リンカー、イソシアヌレートリンカー、ポリエーテルリンカー、ポリエステルリンカー、ポリカーボネートリンカー、ポリカプロラクトンリンカー、ポリウレタンリンカー、ポリオルガノシロキサンリンカー、ポリブタジエンリンカー、およびこれらの組み合わせから選択される(a+b)価のリンカーであり;特に、L
2が、芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素リンカー、ポリエーテルリンカー、ポリエステルリンカーおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の重合性光開始剤。
【請求項5】
L
2が、式(II)もしくは(III)に対応する三価のリンカー、式(IV)もしくは(V)に対応する四価のリンカー、または式(VI)に対応する六価のリンカー:
(式中、
R
4、R’
4、R
5、R’
5、R
6およびR’
6は独立して、Hまたはメチルであり;
R
7はH、アルキルおよびアルコキシから選択され、特にR
7はアルキルであり;
c、c’およびc’’は独立して、0~2であり、但し、c、c’およびc’’のうちの少なくとも2つは0ではなく、特にc、c’およびc’’は全て1であるか、またはcは0であり、c’およびc’’は1であり;
d、d’およびd’’は独立して、2~4、特に2であり;
e、e’およびe’’は独立して、0~10、特に1~6である);
(式中、
R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16は独立して、Hまたはメチル、特にHであり;
l、mおよびnは独立して、1~6、特に2である);
(式中、
R
8、R’
8、R
9、R’
9、R
10、R’
10、R
11およびR’
11は独立して、Hまたはメチルであり;
f、f’、f’’およびf’’’は独立して、0~2であり、但し、f、f’、f’’およびf’’’のうちの少なくとも3つは0ではなく、特にf、f’、f’’およびf’’’は全て1であり;
g、g’、g’’およびg’’’は独立して2~4、特に2であり;
h、h’、h’’およびh’’’は独立して、0~10、特に1~6である);
(式中、
R
12、R’
12、R
13、R’
13、R
14、R’
14、R
15およびR’
15は独立して、Hまたはメチルであり;
i、i’、i’’およびi’’’は独立して、2~4、特に2であり;
j、j’、j’’およびj’’’は独立して、0~10、特に1~6である);
(式中、
R
16、R’
16、R
17、R’
17、R
18、R’
18、R
19、R’
19、R
20、R’
20、R
21およびR’
21は独立して、Hまたはメチルであり;
k、k’、k’’、k’’’、k
*およびk
**は独立して、2~4、特に2であり;
l、l’、l’’、l’’’、l
*およびl
**は独立して、0~10、特に1~6である)
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の重合性光開始剤。
【請求項6】
L
2が、式(VIII)~(XII):
-(CR
22R’
22)
m-(VIII)
-[(CR
23R’
23)
n-O]
o-(CR
23R’
23)
n-(IX)
-[(CR
24R’
24)
p-O]
q-(CR
25R’
25)
r-[O-(CR
26R’
26)
p’]
q’-(X)
-[(CR
27R’
27)
s-C(=O)O]
t-(CR
28R’
28)
u-or-(CR
28R’
28)
u-[(CR
27R’
27)
s-C(=O)O]
t-(XI)
-[(CR
29R’
29)
v-O-C(=O)-(CR
30R’
30)
w-C(=O)-O]
x-(CR
29R’
29)
v-(XII)
(式中、
R
22、R’
22、R
25、R’
25、R
29、R’
29、R
30およびR’
30は独立して、Hまたはアルキルであり;
R
23、R’
23、R
24、R’
24、R
26、R’
26、R
27、R’
27、R
28およびR’
28は独立して、Hまたはメチルであり;
mは3~20であり;
n、pおよびp’は独立して、2~4であり;
oは1~20であり;
qおよびq’は独立して、0~20であり、但し、qおよびq’の少なくとも一方は0ではなく;
rは2~20であり;
sは3~12であり;
tは1~20であり;
uは2~8であり;
vは2~20であり;
wは2~30であり;
xは1~20である)
のうちの1つから選択される二価のリンカーであり;
より詳細には、L
2が、1,3-プロパンジイル、1,3-または1,4-ブタンジイル、1,5-ペンタンジイル、1,6-ヘキサンジイル、1,8-オクタンジイル、1,9-ノナンジイル、1,10-デカンジイル、1,12-デカンジイル、2-メチル-1,3-プロパンジイル、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジイル、3-メチル-1,5-ペンタンジイル、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジイル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジイル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルなどのアルキレン;前記アルキレンのアルコキシル化(特にエトキシル化および/またはプロポキシル化)誘導体;上記アルキレンのエステル化(特にε-カプロラクトンなどのラクトンの開環重合による)誘導体;ジ-、トリ-またはテトラエチレングリコール、ジ-、トリ-またはテトラプロピレングリコール、ジ-、トリ-またはテトラブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)などのOH基を含まないジ-、トリ-、テトラ-またはポリオキシアルケンの残基から選択される二価のリンカーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の重合性光開始剤。
【請求項7】
各R
1およびR
2が独立して、H、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシ;特にHまたはアルキル;より詳細には、Hまたはメチル;さらにより詳細にはHである、請求項1から6のいずれか一項に記載の重合性光開始剤。
【請求項8】
各R
3がHである、請求項1から7のいずれか一項に記載の重合性光開始剤。
【請求項9】
aが1~15;特に1~6、より詳細には1または2、さらにより詳細には1であり;
bが1~15;特に1~10、より詳細には2~8、さらにより詳細には3~6である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の重合性光開始剤。
【請求項10】
aが2以上である場合、(メタ)アクリレート基-O-C(=O)-C(R
3)=CH
2の少なくとも1つの-O-原子が、少なくとも3個の連続した原子によってエステル基-L
1-C(=O)-O-の-O-原子から分離されており;
特に、aが2以上である場合、(メタ)アクリレート基-O-C(=O)-C(R
3)=CH
2の-O-原子の全てが、少なくとも3個の連続した原子によってエステル基-L
1-C(=O)-O-の-O-原子から分離されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の重合性光開始剤。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に定義される式(I)の重合性光開始剤を調製する方法であって、
-式(XIII)のチオキサントンを式(XIV)の(メタ)アクリレートと反応させること;または
-式(XIII)のチオキサントンを式(XV)のポリオールおよび(メタ)アクリル酸と反応させること:
(式中、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、aおよびbは請求項1から10のいずれか一項に定義され;
R
31はHまたはC1~C4アルキル、特にH、メチルまたはエチル、より詳細にはHである)
を含む方法。
【請求項12】
式(XIV)の(メタ)アクリレートのOH基と式(XIII)のチオキサントンのCOOR
31基との間のモル比OH/COOR
31が、1~10、1.1~8、1.2~5、1.3~4、または1.5~2である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数のエチレン性不飽和化合物を光重合する方法であって、1つまたは複数のエチレン性不飽和化合物を、1つまたは複数の請求項1から10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物または請求項11もしくは12に記載の方法によって得られた式(I)の化合物と接触させることと、混合物に、特に可視光および/またはUV光、より詳細にはLED光源を照射することとを含む方法。
【請求項14】
a)請求項1から10のいずれか一項に記載の重合性光開始剤、または請求項11もしくは12に記載の方法に従って調製された重合性光開始剤と;
b)a)以外のエチレン性不飽和化合物と
を含む重合性組成物。
【請求項15】
エチレン性不飽和化合物が、(メタ)アクリレート官能化モノマー、(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、これらのアミン変性アクリレート混合物から選択され;特に、エチレン性不飽和化合物が、アミン変性アクリレートおよび/または(メタ)アクリレート官能化オリゴマーならびに場合により(メタ)アクリレート官能化モノマーを含む、請求項14に記載の重合性組成物。
【請求項16】
-0.5~25%、特に1~20%、より詳細には1.5~15%、さらにより詳細には2~10%の成分a)と;
-75~99.5%;特に80~99%、より詳細には85~98.5%、さらにより詳細には90~98%の成分b)と
を含み;
%は成分a)およびb)の総重量に基づく重量%である、
請求項14または15に記載の重合性組成物。
【請求項17】
インク組成物、オーバープリントワニス組成物、コーティング組成物、接着剤組成物、シーラント組成物、成形組成物、歯科用組成物、化粧品組成物または3D印刷組成物である、請求項14から16のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項18】
硬化生成物を調製する方法であって、特に請求項14から17のいずれか一項に記載の重合性組成物をUV、近UVおよび/または可視光照射などの照射に曝露することによって、より詳細には重合性組成物をLED光源に曝露することによって、重合性組成物を硬化させることを含む方法。
【請求項19】
インクジェット印刷の方法であって、請求項14から17のいずれか一項に記載の重合性組成物を基板上に噴射することを含む方法。
【請求項20】
請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物が塗布された基板であって、特に、飲食品包装、医薬品包装、織物、爪、歯、医療機器、飲食品加工機器、水道管である基板。
【請求項21】
放射線硬化性組成物、特にUVまたはLED硬化性組成物における光開始系としての、請求項1から10のいずれか一項に記載の重合性光開始剤または請求項11もしくは12に記載の方法に従って調製された重合性光開始剤の使用。
【請求項22】
抽出物の量が減少した硬化生成物を得るために使用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の重合性光開始剤または請求項11もしくは12に記載の方法に従って調製された重合性光開始剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性チオキサントン、重合性チオキサントンを調製する方法、重合性チオキサントンおよびエチレン性不飽和化合物を含む重合性組成物に関する。本発明はまた、重合性チオキサントンまたは重合性組成物の種々の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和化合物を含有する放射線硬化性(radiation curable)組成物は、紫外(UV)光などの照射への曝露によって重合することができる。迅速かつ有効な硬化のために、光開始剤がしばしば使用される。光開始剤は、光子による照射でラジカル種を形成し、不飽和基のフリーラジカル重合を開始して、材料の硬化(hardening)(硬化(curing))をもたらす。
【0003】
フリーラジカル光開始剤は、2つの異なる作用様式をとることができ、ノリッシュI型およびノリッシュII型光開始剤として作用様式によって分類される。ノリッシュI型光開始剤は、照射への曝露で開裂して(cleave)、不飽和化合物の重合を開始することができるラジカル種を生成する。ノリッシュII型光開始剤は、照射への曝露で断片化しない化合物であるので、共開始剤が存在しない限り、典型的にはラジカル鎖重合を開始しない。照射に曝露すると、II型光開始剤と共開始剤との間の相互作用により、UV硬化性樹脂の重合を開始することができるラジカル種の生成がもたらされる。
【0004】
最も一般的なII型光開始剤は、ベンゾフェノン(例えば、Lambson Limitedから入手可能なSpeedCure(登録商標)BP)などのジアリールケトン、または2-イソプロピルチオキサントン(Lambson Limitedから入手可能なSpeedCure(登録商標)2-ITX)もしくはジエチルチオキサントン(Lambson Limitedから入手可能なSpeedCure(登録商標)DETX)などのチオキサントンである。
【0005】
コーティングおよび接着剤用途のためのUV硬化系の使用に関する1つのよく認識されている課題は、硬化プロセスによって生成される光副産物(photo-by product)の運命である。典型的なα開裂型光開始剤の場合、ベンズアルデヒド(およびしばしば、関連化合物)の生成が、しばしば毒性と生成物の臭気の両方の観点から重要な懸念事項となる。このような懸念は、放射線硬化性材料の使用が皮膚または食物接触を伴う用途に考慮される場合に特に重要になる。UV硬化性材料の臭気および抽出可能な副産物含有量を低減するために、様々な有効な手法がとられてきた。1つの手法は、小分子として照射材料中に残存するのとは対照的に、硬化ポリマーマトリックス中に化学的に組み込まれる共重合性または高分子光開始剤の使用であった((a)Fouassier,J.P.;Rabek,J.F.編 Radiation Curing in Science and Technology、1993、Elsevier Appl.Sci.、第2巻、283~321、(b)Fouassier,J.P.Photoinitiation,Photopolymerization and Photocuring,Fundamentals and Applications、1995、Hanser Publishers、71~73参照)。残念なことに、α開裂光開始剤を利用する場合、他の断片が系のポリマー成分に組み込まれても、開裂副産物の少なくとも1つが小分子として依然として残る。よって、抽出可能で臭気のある副産物は、高分子または重合性I型光開始剤の使用を通して低減することができるが、完全には排除されない。
【0006】
重合性または高分子H-引き抜き型光開始剤の使用は、原則として、光開始系に関連する抽出可能な成分が0の系を作製する可能性を提示する。様々なグループが、ポリ(ビニルベンゾフェノン)およびアクリル化ベンゾフェノン誘導体から誘導されるその共重合体またはポリマーに基づく系を提示している((a)David,C.;Demarteu,W.;Geuskens,G.Polymer、1969、10、21~27、(b)Carlini,C.;Ciardelli,F.;Donati,D.;Gurzoni,F.Polymer、1983、24、599~606参照)。アクリル化ベンゾフェノンの直接使用も開示されている(米国特許第3,429,852号明細書)。残念なことに、これらのII型系は、類似の小分子光開始系と比較して光効率に関する問題をしばしば抱えている。よって、重合性光開始剤とは対照的に、高分子光開始剤を使用することがしばしば最も望ましい。
【0007】
したがって、当技術分野では、上で特定された欠点に悩まされず、固有の抽出可能な光化学的副産物が少ない(または全くない)低臭気生成物を依然として生成する放射線硬化性接着剤およびコーティング配合物の製造に有用な改善されたH引き抜き光開始剤が依然として必要とされている。本発明は、この必要性を満たす。
【0008】
新規な重合性チオキサントンは、365~420nmの範囲の吸収帯のために発光ダイオード(LED)光源からのUV照射によって硬化可能であるので、特に興味深いであろう。UV-LED硬化は、LEDが広域スペクトル水銀ランプよりもコンパクトで、安価で、環境に優しいので有利である。しかしながら、LEDの使用は、表面硬化、したがって、得られる硬化生成物の性能を制限し得る酸素阻害の増加のために困難である。したがって、新規な重合性チオキサントン光開始剤は、有利には、良好な光化学活性(良好な表面硬化および深い硬化)、低い酸素感受性を示すべきである。
【0009】
本発明の重合性チオキサントン光開始剤はまた、以下の利点の1つまたは複数を提示し得る:
-低い黄変、
-UV配合物の他の成分(例えば、(メタ)アクリレート官能化モノマーおよび/またはオリゴマー)との良好な溶解度、
-可塑剤として有意に作用しない、
-ハロゲンフリー。
【0010】
さらに、本発明の重合性チオキサントン光開始剤は、エポキシドおよびエピクロロヒドリンの使用を伴わず、生成する廃棄物および/または有害な副産物(すなわち、ヒトなどの生物体においてアレルギー、炎症性、または感作応答を誘発する傾向がある化合物)の量が少ない、単純で、費用対効果が高く、高収率のプロセスで得ることができる。
【0011】
本発明の化合物を含む重合性組成物は、以下の利点の1つまたは複数を提示し得る:
-移行特性が低いため、感受性用途(飲食品包装、飲食品加工、医薬品包装、マニキュア液、歯科用製品、人体と接触する織物、医療機器、水道管)で使用可能である、
-低い粘度、
-高いUV反応性、
-低い黄変、
-弱い臭気、または臭気がない、
-硬化後の良好な機械的特性(例えば、硬度、耐擦傷性、耐溶剤性(solvent resistance))。
【0012】
本発明は、この課題の少なくとも一部の態様を克服または改善することを意図している。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様は、一般式(I)の化合物
(式中、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、aおよびbは本明細書で定義される通りである)
である。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明による重合性光開始剤を調製する方法であって、
-式(XIII)のチオキサントンを式(XIV)の(メタ)アクリレートと反応させること;または
-式(XIII)のチオキサントンを式(XV)のポリオールおよび(メタ)アクリル酸と反応させること:
(式中、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、R
31、aおよびbは本明細書で定義される)
を含む方法である。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、1つまたは複数のエチレン性不飽和化合物を光重合する方法であって、1つまたは複数のエチレン性不飽和化合物を本発明による重合性光開始剤または本発明の方法で調製された重合性光開始剤と接触させることと、混合物に、特に可視光および/またはUV光を照射することとを含む方法である。
【0016】
本発明の別の態様は、
a)本発明による重合性光開始剤または本発明の方法で調製された重合性光開始剤と;
b)a)以外のエチレン性不飽和化合物と
を含む重合性組成物である。
【0017】
本発明の別の態様は、硬化生成物を調製する方法であって、特に重合性組成物をUV、近UVおよび/または可視光照射などの照射に曝露することによって、より詳細には重合性組成物をLED光源に曝露することによって、本発明による重合性組成物を硬化させることを含む方法である。
【0018】
本発明の別の態様は、インクジェット印刷の方法であって、本発明による重合性組成物を基板(substrate)上に噴射することを含む方法である。
【0019】
本発明の別の態様は、本発明の重合性組成物が塗布された基板であって、特に、飲食品包装、医薬品包装、織物、爪、歯、医療機器、飲食品加工機器、水道管である基板である。
【0020】
本発明の別の態様は、放射線硬化性組成物、特にUVまたはLED硬化性組成物における光開始系としての、本発明による重合性光開始剤または本発明の方法で調製された重合性光開始剤の使用である。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、抽出物の量が減少した硬化生成物を得るための、本発明による重合性光開始剤または本発明の方法で調製された重合性光開始剤の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本出願において、「~を含む(comprise(s)a/an)」という用語は、「1つまたは複数の~を含む(comprise(s)one or more)」を意味する。
【0023】
特に明記しない限り、化合物または組成物中の重量%は、それぞれ組成物の化合物の重量に基づいて表される。
【0024】
<<アリール>>という用語は、置換されていてもよい多価不飽和芳香族基を意味する。アリールは、単環(すなわち、フェニル)または少なくとも1つの環が芳香族である2つ以上の環を含有し得る。アリールが2つ以上の環を含む場合、それらの環は、縮合、共有結合を介して連結され得る(例えば、ビフェニル)。芳香族環は、1~2個の追加の縮合環を含んでいてもよい(すなわち、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール)。「アリール」という用語はまた、上記の炭素環式系の部分水素化誘導体も包含する。例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニルおよびナフタレニルが挙げられる。
【0025】
<<アルキル>>という用語は、式-CnH2n+1(式中、nは1~20である)の一価の飽和非環式炭化水素基を意味する。アルキルは直鎖または分岐であり得る。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、n-ヘプチル、2-エチルヘキシルなどが挙げられる。C1~C4アルキルは、1~4個の炭素原子を有するアルキルである。
【0026】
<<ハロゲン>>という用語は、Cl、Br、FおよびIから選択される原子を意味する。
【0027】
<<シクロアルキル>>という用語は、環を含む一価の飽和脂環式炭化水素基を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびイソボルニルが挙げられる。
【0028】
<<ヘテロシクロアルキル>>という用語は、O、NまたはSから選択されるヘテロ原子である少なくとも1個の環原子を有するシクロアルキルを意味する。
【0029】
<<アルコキシ>>という用語は、式-O-アルキル(式中、アルキルは上に定義される通りである)の基を意味する。
【0030】
<<アリールオキシ>>という用語は、式-O-アリール(式中、アリールは上に定義される通りである)の基を意味する。
【0031】
<<チオアルキル>>という用語は、式-S-アルキル(式中、アルキルは上に定義される通りである)の基を意味する。
【0032】
<<チオアリール>>という用語は、式-S-アリール(式中、アリールは上に定義される通りである)の基を意味する。
【0033】
<<アルケニル>>という用語は、少なくとも1つのC=C二重結合を含む一価の非環式炭化水素基を意味する。アルケニルは直鎖または分岐であり得る。
【0034】
<<アルキニル>>という用語は、少なくとも1つのC≡C三重結合を含む一価の非環式炭化水素基を意味する。アルキニルは直鎖または分岐であり得る。
【0035】
<<アラルキル>>という用語は、アルキル基によって置換されたアリールを意味する。アラルキル基の例はトリルである。
【0036】
<<アルカリール>>という用語は、アリール基によって置換されたアルキルを意味する。アルカリール基の例はベンジル(-CH2-フェニル)である。
【0037】
<<ヘテロアリール>>という用語は、O、NまたはSから選択されるヘテロ原子である少なくとも1個の環原子を有するアリールを意味する。
【0038】
<<アルキルアミノ>>という用語は、少なくとも1つのアミノ基によって置換されたアルキルを意味する。
【0039】
<<アルキルチオール>>という用語は、少なくとも1つのチオール基によって置換されたアルキルを意味する。
【0040】
<<ヒドロキシアルキル>>という用語は、少なくとも1つのヒドロキシ基によって置換されたアルキルを意味する。
【0041】
<<ハロアルキル>>という用語は、少なくとも1つのハロゲンによって置換されたアルキルを意味する。
【0042】
<<アルキレン>>または<<アルカンジイル>>という用語は、式CmH2m+2のアルカンから、リンカーの各結合点で1個の水素原子を除去することによって誘導されるリンカーを意味する。アルキレンは、二価、三価、四価であってもよい、またはさらに高い価数を有してもよい。
【0043】
「アルコキシル化」という用語は、1つまたは複数のオキシアルキレン部分、特にオキシエチレン(-O-CH2-CH2-)、オキシプロピレン(-O-CH2-CH(CH3)-または-O-CH(CH3)-CH2-)、オキシブチレン(-O-CH2-CH2-CH2-CH2-)およびこれらの混合物から選択される1つまたは複数のオキシアルキレンを含有する化合物、基またはリンカーを意味する。例えば、アルコキシル化化合物、基またはリンカーは、1~30個のオキシアルキレン部分を含有し得る。
【0044】
<<リンカー>>という用語は、多価の(plurivalent)基を意味する。リンカーは、化合物の少なくとも2つの部分、特に化合物の2~16個の部分を一緒に接続し得る。例えば、化合物の2つの部分を一緒に接続するリンカーは、二価のリンカーと呼ばれ、化合物の3つの部分を一緒に接続するリンカーは、三価のリンカーと呼ばれる等である。
【0045】
<<炭化水素リンカー>>という用語は、N、O、S、Siおよびこれらの混合物から選択される1個または複数のヘテロ原子によって中断されていてもよい炭素骨格鎖を有するリンカーを意味する。炭化水素リンカーは脂肪族、脂環式または芳香族であり得る。炭化水素リンカーは飽和または不飽和であり得る。炭化水素リンカーは置換されていてもよい。
【0046】
<<脂肪族化合物、基またはリンカー>>という用語は、非芳香族非環式化合物、基またはリンカーを意味する。これは、直鎖または分岐、飽和または不飽和であり得る。これは、例えばアルキル、ヒドロキシル、ハロゲン(Br、Cl、I)、イソシアネート、カルボニル、アミン、カルボン酸、-C(=O)-OR’、-C(=O)-O-C(=O)-R’(各R’は独立して、C1~C6アルキルである)から選択される1つまたは複数の基によって置換され得る。これは、エーテル、エステル、アミド、ウレタン、尿素およびこれらの混合物から選択される1つまたは複数の結合を含み得る。
【0047】
<<非環式化合物、基またはリンカー>>という用語は、いずれの環も含まない化合物、基またはリンカーを意味する。
【0048】
<<脂環式化合物、基またはリンカー>>という用語は、非芳香族環状化合物、基またはリンカーを意味する。これは、<<脂肪族>>という用語について定義される1つまたは複数の基によって置換され得る。これは、<<脂肪族>>という用語について定義される1つまたは複数の結合を含み得る。
【0049】
<<芳香族化合物、基またはリンカー>>という用語は、ヒュッケルの芳香族性の法則を尊重することを意味する芳香族環を含む化合物、基またはリンカー、特にフェニル基を含む化合物を意味する。これは、<<脂肪族>>という用語について定義される1つまたは複数の基によって置換され得る。これは、<<脂肪族>>という用語について定義される1つまたは複数の結合を含み得る。
【0050】
<<飽和化合物、基またはリンカー>>という用語は、二重炭素-炭素結合も三重炭素-炭素結合も含まない化合物、基またはリンカーを意味する。
【0051】
<<不飽和化合物、基またはリンカー>>という用語は、二重炭素-炭素結合または三重炭素-炭素結合、特に二重炭素-炭素結合を含む化合物、基またはリンカーを意味する。
【0052】
<<ポリオール>>という用語は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む化合物を意味する。
【0053】
<<ポリエーテルポリオール>>または<<ポリエーテルリンカー>>という用語は、それぞれ少なくとも2つのエーテル結合を含むポリオール、リンカーを意味する。
【0054】
<<ポリエステルポリオール>>または<<ポリエステルリンカー>>という用語は、それぞれ少なくとも2つのエステル結合を含むポリオール、リンカーを意味する。
【0055】
<<ポリカーボネートポリオール>>または<<ポリカーボネートリンカー>>という用語は、それぞれ少なくとも2つのカーボネート結合を含むポリオール、リンカーを意味する。
【0056】
<<ポリウレタンリンカー>>という用語は、少なくとも2つのウレタン結合を含むリンカーを意味する。
【0057】
<<ポリオルガノシロキサンポリオール>>または<<ポリオルガノシロキサンリンカー>>という用語は、それぞれ少なくとも2つのオルガノシロキサン結合を含むポリオール、リンカーを意味する。オルガノシロキサンは、例えば、ジメチルシロキサン結合であり得る。
【0058】
<<ポリカプロラクトンポリオール>>または<<ポリカプロラクトンリンカー>>という用語は、それぞれε-カプロラクトンの開環重合から誘導される少なくとも2つの単位、特に少なくとも2つの-[(CH2)5-C(=O)O]-単位を含むポリオール、リンカーを意味する。
【0059】
<<ポリブタジエンポリオール>>または<<ポリブタジエンリンカー>>という用語は、それぞれブタジエンの重合から誘導される少なくとも2つの単位、特に-CH2-CH=CH-CH2-およびCH2-CH(CH=CH2)-から選択される少なくとも2つの単位を含むポリオール、リンカーを意味する。
【0060】
<<イソシアヌレートリンカー>>という用語は、イソシアヌレート部分、特に式:
の部分を含むリンカーを意味する。
【0061】
<<ヒドロキシル基>>という用語は-OH基を意味する。
【0062】
<<アミノ基>>という用語は、-NRa1Rb1基(式中、Ra1およびRb1は独立して、Hまたは置換されていてもよいアルキルである)を意味する。<<第一級アミノ基>>は、-NRa1Rb1基(式中、Ra1およびRb1はHである)を意味する。<<第二級アミノ基>>は、-NRa1Rb1基(式中、Ra1はHであり、Rb1は置換されていてもよいアルキルである)を意味する。
【0063】
<<カルボン酸>>という用語は-COOH基を意味する。
【0064】
<<イソシアネート基>>という用語は-N=C=O基を意味する。
【0065】
<<エステル結合>>という用語は-C(=O)-O-または-O-C(=O)-結合を意味する。
【0066】
<<アミド結合>>という用語は-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-結合を意味する。
【0067】
<<エーテル結合>>という用語は-O-結合を意味する。
【0068】
<<オルガノシロキサン結合>>という用語は、-Si(Rc1)2-O-結合(式中、Rc1は有機基、特にアルキル、アルコキシおよびアリールから選択される有機基である)を意味する。<<ジメチルシロキサン結合>>という用語は-Si(CH3)2-O-結合を意味する。
【0069】
<<カーボネート結合>>という用語は-O-C(=O)-O-結合を意味する。
【0070】
<<ウレタンまたはカルバメート結合>>という用語は-NH-C(=O)-O-または-O-C(=O)-NH-結合を意味する。
【0071】
<<ポリイソシアネート>>という用語は、少なくとも2つのイソシアネート基を含む化合物を意味する。
【0072】
<<置換されていてもよい化合物、基またはリンカー>>という用語は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキル、アルカリール、ハロアルキル、ヒドロキシル、チオール、ヒドロキシアルキル、チオアルキル、チオアリール、アルキルチオール、アミノ、アルキルアミノ、イソシアネート、ニトリル、アミド、カルボン酸、-C(=O)-R’、-C(=O)-OR’、-C(=O)NH-R’、-NH-C(=O)R’、-O-C(=O)-NH-R’、-NH-C(=O)-O-R’、-C(=O)-O-C(=O)-R’および-SO2-NH-R’(各R’は独立して、Hまたはアルキル、アリールおよびアルキルアリールから選択される置換されていてもよい基である)から選択される1つまたは複数の基によって置換されていてもよい化合物、基またはリンカーを意味する。
【0073】
式(I)の化合物
本発明の化合物は、以下の式(I):
(式中、
各L
1は独立して、アルキレンであり;
L
2は、少なくとも3個の炭素原子を含む(a+b)価のリンカーであり;
各R
1およびR
2は、H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、チオアルキル、チオアリール、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール、-C(=O)R
a、-NR
bR
c、アルキルアミノ、アルキルチオール、ハロアルキル、-NO
2、-CN、-C(=O)OR
d、-C(=O)NR
bR
cから独立して選択され;
各R
3は独立して、Hまたはメチルであり;
R
aは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキルおよび置換されていてもよいアリールから選択され;
R
b、R
cおよびR
dは、H、アルキルおよびアリールから独立して選択され;
aは少なくとも1であり;
bは少なくとも1であり;
但し、式(I)の重合性光開始剤はアセタール基およびヒドロキシ基を含まず;
aが1であり、bが1である場合、(メタ)アクリレート部分-O-C(=O)-C(R
3)=CH
2の-O-原子は、少なくとも3個の連続した原子によってリンカー-L
1-C(=O)-O-の-O-原子から分離されている)
に対応する。
【0074】
式(I)の化合物は少なくとも1つのチオキサントン部分を有する。チオキサントン部分は、以下の式を有する部分:
(式中、R
1およびR
2は上に定義される通りである)
である。
【0075】
特に、R1およびR2は独立して、H、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシである。より詳細には、R1およびR2は独立して、Hまたはアルキルである。さらにより詳細には、R1およびR2は独立して、Hまたはメチルである。なおより詳細には、R1およびR2は全てHである。
【0076】
式(I)の化合物は少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分を有する。(メタ)アクリレート部分は、以下の式を有する部分:
(式中、R
3は本明細書で定義される通りである)
である。
【0077】
特に、各R3はHである。
【0078】
式(I)の化合物はアセタール基を含まない。アセタール基は、以下の式を有する基:
(式中、R
eおよびR
fは独立して、H、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいアリールである)
である。
【0079】
式(I)の化合物はヒドロキシル基を含まない。
【0080】
特に、本発明の化合物は、式(Ia):
(式中、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、aおよびbは上に定義される通りである)
に対応し得る。
【0081】
各L1は独立して、アルキレンである。特に、各L1は独立して、1~6個、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり得る。より詳細には、各L1は-CH2-または-CH(CH3)-である。さらにより詳細には、各L1は-CH2-である。
【0082】
L2は、少なくとも3個の炭素原子を含む(a+b)価のリンカーである。特に、L2は、二価、三価、四価、五価、六価、七価、八価、九価、十価、十一価、十二価、十三価、十四価、十五価または十六価のリンカーであり得る。より詳細には、L2は、二価、三価、四価、五価または六価のリンカーであり得る。さらにより詳細には、L2は、三価、四価、五価または六価のリンカーであり得る。
【0083】
L2は、芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素リンカー、イソシアヌレートリンカー、ポリエーテルリンカー、ポリエステルリンカー、ポリカーボネートリンカー、ポリカプロラクトンリンカー、ポリウレタンリンカー、ポリオルガノシロキサンリンカー、ポリブタジエンリンカー、およびこれらの組み合わせであり得る。特に、L2は、芳香族、脂肪族または脂環式炭化水素リンカー、ポリエーテルリンカー、ポリエステルリンカーおよびこれらの組み合わせから選択され得る。
【0084】
好ましくは、L2はアミド結合を含まない。
【0085】
L2は、OH基を含まないポリオールPOHの残基であり得る。適切なポリオールPOHの例としては、1,3-プロピレングリコール、1,3-または1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ノルボルネンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールA、B、FまたはS、水素化ビスフェノールA、B、FまたはS、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリエチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ(ペンタエリスリトール)、グリセロール、ジ-、トリ-またはテトラグリセロール、ポリグリセロール、ジ-、トリ-またはテトラエチレングリコール、ジ-、トリ-またはテトラプロピレングリコール、ジ-、トリ-またはテトラブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)、糖アルコール、ジアンヒドロヘキシトール(すなわち、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオルガノシロキサンポリオール、ポリカーボネートポリオールならびにこれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化)誘導体および上記ポリオールの1つで開始されるε-カプロラクトンの開環重合によって得られる誘導体が挙げられる。
【0086】
好ましい実施形態では、L2が、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、グリセロール、ペンタエリスリトールまたはジ(ペンタエリスリトール)、ならびにこれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化)誘導体から選択されるポリオールの残基であり得る。
【0087】
L2は、1つまたは複数のポリヒドロキシル官能性化合物(特に、2~6個のヒドロキシ基を含むポリヒドロキシル官能性化合物)を1つまたは複数のポリカルボン酸官能性化合物またはその誘導体(特に、ジカルボン酸および環状無水物)と反応させることによって得られるポリエステルポリオールの残基であり得る。ポリヒドロキシル官能性化合物およびポリカルボン酸官能性化合物はそれぞれ、直鎖、分岐、脂環式または芳香族構造を有することができ、個別にまたは混合物として使用することができる。適切なポリヒドロキシル官能性化合物の例は、上記のポリオールPOHについて定義されるものと同じである。適切なポリカルボン酸の例としては、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。フタル酸およびテレフタル酸などの芳香族二酸も利用することができるだろう。適切な無水物の例としては、無水コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水マレイン酸、無水フマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、無水フタル酸が挙げられる。ポリカルボン酸の誘導体は、加水分解またはエステル交換によってポリカルボン酸に変換する(transform)ことができる化合物である。適切な例としては、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジメチルアジペート、ジメチルグルタレートおよびジメチルスクシネートが挙げられる。
【0088】
L
2は、以下の式(II)に対応する三価のリンカー:
(式中、
R
4、R’
4、R
5、R’
5、R
6およびR’
6は独立して、Hまたはメチルであり;
R
7はH、アルキルおよびアルコキシから選択され、特に、R
7はアルキルであり;
c、c’およびc’’は独立して、0~2であり、但し、c、c’およびc’’のうちの少なくとも2つは0ではなく、特に、c、c’およびc’’は全て1であるか、またはcは0であり、c’およびc’’は1であり;
d、d’およびd’’は独立して2~4、特に2であり;
e、e’およびe’’は独立して、0~10、特に1~6である)
であり得る。
【0089】
L2が式(II)の三価のリンカーであり、cが0であり、c’およびc’’が1である場合、e、e’およびe’’の少なくとも1つは好ましくは0以外であり、特にe、e’およびe’’の少なくとも2つは0ではなく、より詳細にはe、e’およびe’’は1~10である。
【0090】
L
2は、以下の式(III)に対応する三価のリンカー:
(式中、
R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16は独立して、Hまたはメチル、特にHであり;
l、mおよびnは独立して、1~6、特に2である)
であり得る。
【0091】
L
2は、以下の式(IV)に対応する四価のリンカー:
(式中、
R
8、R’
8、R
9、R’
9、R
10、R’
10、R
11およびR’
11は独立して、Hまたはメチルであり;
f、f’、f’’およびf’’’は独立して、0~2であり、但し、f、f’、f’’およびf’’’のうちの少なくとも3つは0ではなく、特にf、f’、f’’およびf’’’は全て1であり、
g、g’、g’’およびg’’’は独立して、2~4、特に2であり;
h、h’、h’’およびh’’’は独立して、0~10、特に1~6である)
であり得る。
【0092】
L
2は、以下の式(V)に対応する四価のリンカー:
(式中、
R
12、R’
12、R
13、R’
13、R
14、R’
14、R
15およびR’
15は独立して、Hまたはメチルであり;
i、i’、i’’およびi’’’は独立して2~4、特に2であり;
j、j’、j’’およびj’’’は独立して、0~10、特に1~6である)
であり得る。
【0093】
L
2は、以下の式(VI)に対応する六価のリンカー:
(式中、
R
16、R’
16、R
17、R’
17、R
18、R’
18、R
19、R’
19、R
20、R’
20、R
21およびR’
21は独立して、Hまたはメチルであり;
k、k’、k’’、k’’’、k
*およびk
**は独立して、2~4、特に2であり;
l、l’、l’’、l’’’、l
*およびl
**は独立して、0~10、特に1~6である)
であり得る。
【0094】
L2は、式(VIII)~(XII):
-(CR22R’22)m-(VIII)
-[(CR23R’23)n-O]o-(CR23R’23)n-(IX)
-[(CR24R’24)p-O]q-(CR25R’25)r-[O-(CR26R’26)p’]q’-(X)
-[(CR27R’27)s-C(=O)O]t-(CR28R’28)u-or-(CR28R’28)u-[(CR27R’27)s-C(=O)O]t-(XI)
-[(CR29R’29)v-O-C(=O)-(CR30R’30)w-C(=O)-O]x-(CR29R’29)v-(XII)
(式中、
R22、R’22、R25、R’25、R29、R’29、R30およびR’30は独立して、Hまたはアルキルであり;
R23、R’23、R24、R’24、R26、R’26、R27、R’27、R28およびR’28は独立して、Hまたはメチルであり;
mは3~20であり;
n、pおよびp’は独立して、2~4であり;
oは1~20であり;
qおよびq’は独立して、0~20であり、但し、qおよびq’の少なくとも一方は0ではなく;
rは2~20であり;
sは3~12であり;
tは1~20であり;
uは2~8であり;
vは2~20であり;
wは2~30であり;
xは1~20である)
のうちの1つから選択される二価のリンカーであり得る。
【0095】
特に、L2は、1,3-プロパンジイル、1,3-または1,4-ブタンジイル、1,5-ペンタンジイル、1,6-ヘキサンジイル、1,8-オクタンジイル、1,9-ノナンジイル、1,10-デカンジイル、1,12-デカンジイル、2-メチル-1,3-プロパンジイル、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジイル、3-メチル-1,5-ペンタンジイル、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジイル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジイル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジイルなどのアルキレン;前記アルキレンのアルコキシル化(特にエトキシル化および/またはプロポキシル化)誘導体;上記アルキレンのエステル化(特にε-カプロラクトンなどのラクトンの開環重合による)誘導体;ジ-、トリ-またはテトラエチレングリコール、ジ-、トリ-またはテトラプロピレングリコール、ジ-、トリ-またはテトラブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)などのOH基を含まないジ-、トリ-、テトラ-またはポリオキシアルケンの残基から選択される二価のリンカーであり得る。
【0096】
式(I)の化合物は、aに等しい数のチオキサントン部分およびbに等しい数の(メタ)アクリレート部分を有する。数aは少なくとも1である。特に、aは1~15、より詳細には1~6、さらにより詳細には1または2、なおより詳細には1である。数bは少なくとも1である。特に、bは1~15、より詳細には1~10、さらにより詳細には2~8、なおより詳細には3~6である。
【0097】
合計a+bは、2~16、特に2~6、より詳細には3~6であり得る。
【0098】
aが1であり、bが1である場合、(メタ)アクリレート基-O-C(=O)-C(R3)=CH2の-O-原子は、少なくとも3個の連続した原子によってエステル基-L1-C(=O)-O-の-O-原子から分離されている。
【0099】
aが2以上である場合、(メタ)アクリレート基-O-C(=O)-C(R3)=CH2の少なくとも1つの-O-原子は、少なくとも3個の連続した原子によってエステル基-L1-C(=O)-O-の-O-原子から分離され得る。
【0100】
特に、aが2以上である場合、(メタ)アクリレート基-O-C(=O)-C(R3)=CH2の-O-原子の全ては、少なくとも3個の連続した原子によってエステル基-L1-C(=O)-O-の-O-原子から分離されている。
【0101】
本発明の式(I)の化合物は、500~10000g/mol、500~5000g/mol、500~1500g/molまたは500~1000g/molの数平均分子量を有し得る。
【0102】
本発明の式(I)の化合物は、有利には20℃で液体であり得る。式(I)の化合物は、30000mPa.s未満、20000mPa.s未満、または10000mPa.s未満の25℃での粘度を有し得る。
【0103】
あるいは、式(I)の化合物は、重合性組成物に慣用的に使用されている1つまたは複数の物質、特に非反応性溶媒、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマーおよびこれらの混合物に25℃で可溶性であり得る。以下、このような物質について詳細に説明する。「化合物Aは物質Bに25℃で可溶性である」という用語は、25℃で、化合物Aが、化合物Aと物質Bの総重量に基づいて5重量%超、10重量%超、15重量%超、20重量%超、25重量%超、30重量%超または35重量%超の化合物Aを含む組成物に可溶性である(完全に溶解している)ことを意味する。有利には、化合物Aは、少なくとも24時間、特に少なくとも48時間、より詳細には少なくとも1週間、重合性組成物に慣用的に使用されている1つまたは複数の物質に可溶化された(完全に溶解している、沈殿も結晶化もなし)ままであり得る。有利には、化合物Aが重合性組成物に慣用的に使用されている1つまたは複数の物質に可溶化される場合、これは得られる混合物の粘度に実質的に影響を及ぼさない。特に、化合物Aを含む重合性組成物の粘度の増加は、化合物Aを含まない重合性組成物の粘度と比較して、70%未満、40%未満、15%未満または5%未満であり得る。
【0104】
特に好ましい実施形態では、本発明の重合性光開始剤が、
aが1または2であり、特にaが1であり;
bが1または2であり、特にbが2であり;
L1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L2が、上に定義される式(II)に対応する三価のリンカーである、
式(I)による化合物である。
【0105】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1または2であり、特にaが1であり;
bが1または2であり、特にbが2であり;
L
1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L
2が、式(II)に対応する三価のリンカー:
(式中、
R
4、R’
4、R
5、R’
5、R
6およびR’
6は独立して、Hまたはメチルであり;
R
7はHであり;
cは0であり、c’およびc’’は1であり;
d、d’およびd’’は全て2であり;
e、e’およびe’’は独立して、0~10、特に1~6であり;
合計e+e’+e’’は0~20、特に1~10である)
である、
式(I)による化合物であり得る。
【0106】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1または2であり、特にaが1であり;
bが1または2であり、特にbが2であり;
L
1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L
2が、式(IIa)に対応する三価のリンカー:
(式中、
e、e’およびe’’は独立して、0~10、特に1~6であり;
合計e+e’+e’’は1~20、特に2~10である)
である、
式(I)による化合物であり得る。
【0107】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1または2であり、特にaが1であり;
bが1または2であり、特にbが2であり;
L
1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L
2が、式(II)に対応する三価のリンカー:
(式中、
R
4、R’
4、R
5、R’
5、R
6およびR’
6は独立して、Hまたはメチルであり;
R
7はアルキル、特にエチルであり;
cおよびc’およびc’’は1であり;
d、d’およびd’’は全て2であり;
e、e’およびe’’は独立して、0~10、特に1~6であり;
合計e+e’+e’’は0~20、特に1~10である)
である、
式(I)による化合物であり得る。
【0108】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1または2であり、特にaが1であり;
bが1または2であり、特にbが2であり;
L
1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L
2が、式(IIb)に対応する三価のリンカー:
(式中、
R
7はアルキル、特にエチルであり;
e、e’およびe’’は独立して、0~10、特に1~6であり;
合計e+e’+e’’は1~20、特に2~10である)
である、
式(I)による化合物であり得る。
【0109】
特に好ましい実施形態では、本発明の重合性光開始剤が、
aが1であり;
bが3であり;
L1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L2が、上に定義される式(IV)に対応する四価のリンカーである、
式(I)による化合物である。
【0110】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1であり;
bが3であり;
L
1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L
2が、式(IV)に対応する四価のリンカー:
(式中、
R
8、R’
8、R
9、R’
9、R
10、R’
10、R
11およびR’
11は独立して、Hまたはメチルであり;
f、f’、f’’およびf’’’は全て1であり;
g、g’、g’’およびg’’’は全て2であり;
h、h’、h’’およびh’’’は独立して、0~10、特に1~6であり;
合計h+h’+h’’+h’’’は2~20、特に3~10である)
であり;
より詳細には、L
2が、以下の式(IVa)に対応する四価のリンカー:
(式中、h、h’、h’’およびh’’’は独立して、0~10、特に1~6であり;
合計h+h’+h’’+h’’’は2~20、特に3~10である)
である、
式(I)による化合物であり得る。
【0111】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1であり;
bが3であり;
L1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L2が、
f、f’、f’’およびf’’’が全て1であり;
h、h’、h’’およびh’’’が0である、
式(IV)に対応する四価のリンカーである、
式(I)による化合物であり得る。
【0112】
特に好ましい実施形態では、本発明の重合性光開始剤が、
aが1であり;
bが3であり;
L1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L2が、上に定義される式(V)に対応する四価のリンカーである、
式(I)による化合物である。
【0113】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1であり;
bが3であり;
L
1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L
2が、式(V)に対応する四価のリンカー
(式中、
R
12、R’
12、R
13、R’
13、R
14、R’
14、R
15およびR’
15は独立して、Hまたはメチルであり;
i、i’、i’’およびi’’’は全て2であり;
j、j’、j’’およびj’’’は独立して、0~10、特に1~6であり;
合計j+j’+j’’+j’’’は0~20、特に1~10である)
である、
式(I)による化合物であり得る。
【0114】
特に、本発明の重合性光開始剤は、
aが1であり;
bが3であり;
L1が、1~4個または1~2個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンであり;
L2が、j、j’、j’’およびj’’’が全て0である、式(V)に対応する四価のリンカーである、
式(I)による化合物であり得る。
【0115】
式(I)の化合物の調製方法
本発明の式(I)の重合性光開始剤は、
-式(XIII)のチオキサントンを式(XIV)の(メタ)アクリレートと反応させること;または
-式(XIII)のチオキサントンを式(XV)のポリオールおよび(メタ)アクリル酸と反応させること:
(式中、L
1、L
2、R
1、R
2、R
3、aおよびbは式(I)の化合物について上に定義され;
R
31はHまたはC1~C4アルキル、特にH、メチルまたはエチル、より詳細にはHである)
を含む方法によって得ることができる。
【0116】
式(XIV)の(メタ)アクリレートのOH基と式(XIII)のチオキサントンのCOOR31基との間のモル比OH/COOR31は、1~10、1.1~8、1.2~5、1.3~4、または1.5~2であり得る。
【0117】
式(XV)のポリオールのOH基と式(XIII)のチオキサントンのCOOR31基との間のモル比OH/COOR31は、1~10、1.1~8、1.2~5、1.3~4、または1.5~2であり得る。
【0118】
反応は、以下から選択される1つまたは複数の化合物の存在下で行われ得る:
-エステル化触媒、特に酸触媒、より詳細にはメタンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびこれらの混合物から選択される酸触媒;
-エステル交換触媒、特に金属系エステル交換触媒、より詳細にはZn、Zr、TiまたはSn、さらにより詳細にはZn(アセチルアセトネート)2、Zr(アセチルアセトネート)4、Ti(イソプロポキシ)4またはnBuSnOOHから選択される金属に基づくエステル交換触媒;
-溶媒、特にトルエン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびこれらの混合物から選択される溶媒;
-安定剤/重合阻害剤、特にヒドロキノン(HQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ、4-メトキシフェノール)、4-tert-ブチルカテコール(TBC)、および3,5-ジ-tertioブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、フェノチアジン(PTZ)およびこれらの混合物から選択される重合阻害剤。
【0119】
式(XIII)のチオキサントンがカルボン酸である(すなわち、R31がHである)場合、エステル化反応中に形成される水を除去するように反応を行うことができる。例えば、反応を凝縮器(condenser)(すなわち、ディーン・スターク)を備えた反応器内で行うことができ、反応媒体を、(場合により、溶媒との共沸混合物として)水をエバポレートするのに十分な温度で加熱することができる。
【0120】
式(XIII)のチオキサントンがエステルである(すなわち、R31がC1~C4アルキルである)場合、本方法は、エステル交換反応中に形成されるC1~C4アルコールを除去する工程をさらに含み得る。例えば、C1~C4アルコールは、蒸留またはエバポレーションによって除去され得る。
【0121】
反応が終了したら、反応媒体を水溶液、例えば塩化ナトリウムの水溶液で1回または複数回洗浄することができる。溶媒を得られた有機相からエバポレートすることができる。
【0122】
本発明の方法は、式(XIV)の(メタ)アクリレートとの反応の前に、または式(XV)のポリオールおよび(メタ)アクリル酸との反応の前に、式(XIII)のチオキサントンを調製する工程をさらに含み得る。特に、式(XIII)のチオキサントンは、ルイス酸(ハロゲン化金属、例えば塩化鉄または塩化アルミニウムなど)の存在下で、式(XVI)の置換フェニルを式(XVII)の2-ハロチオベンゾイルハライドと反応させることによって得ることができる:
(式中、
L
1、R
1およびR
2は、式(I)の化合物について上に定義され;
R
32はHまたはC1~C4アルキル、特にメチルまたはエチルであり;
Xはハロゲン原子、特にClである)。
【0123】
式(XVI)の置換フェニルがエステルであり(すなわち、R32がC1~C4アルキルであり)、式(XIII)のチオキサントンがカルボン酸である(すなわち、R31がHである)で場合、本方法は、エステル基をカルボン酸基に変換するための、適切な酸または塩基の存在下での加水分解工程をさらに含み得る。
【0124】
光開始剤組成物
本開示はまた、少なくとも2つの異なる上に定義される式(I)の化合物の混合物の混合物を含む光開始剤組成物に関する。
【0125】
光重合方法
上に定義される式(I)の化合物または上に定義される光開始剤組成物は、光重合方法、すなわち1つまたは複数のエチレン性不飽和化合物を光重合(例えば、硬化)する方法に使用され得る。
【0126】
1つまたは複数のエチレン性不飽和化合物を光重合する方法は、1つまたは複数のエチレン性不飽和化合物を上に定義される式(I)の化合物または上に定義される光開始剤組成物と接触させることと、混合物に、特に可視光および/またはUV光、より詳細にはLED光源を照射することとを含む。
【0127】
エチレン性不飽和化合物は以下に定義される通りであり得る。
【0128】
重合性組成物
本発明の重合性組成物は、成分a)と呼ばれる、上に定義される式(I)の化合物を含む。本発明の重合性組成物は、成分b)と呼ばれる、エチレン性不飽和化合物をさらに含む。
【0129】
本発明の重合性組成物は、
-0.5~25%、特に1~20%、より詳細には1.5~15%、さらにより詳細には2~10%の成分a)と;
-75~99.5%;特に80~99%、より詳細には85~98.5%、さらにより詳細には90~98%の成分b)と
を含み得;
%は成分a)およびb)の総重量に基づく重量%である。
【0130】
本発明の重合性組成物は、
-成分a)以外の光開始剤;
-アミン共力剤;
-添加剤;
-溶媒
から選択される1つまたは複数の化合物をさらに含み得る。
【0131】
エチレン性不飽和化合物
本発明の重合性組成物はエチレン性不飽和化合物を含む。本発明の重合性組成物はエチレン性不飽和化合物の混合物を含み得る。
【0132】
本明細書で使用される場合、「エチレン性不飽和化合物」という用語は、重合性炭素-炭素二重結合を含む化合物を意味する。重合性炭素-炭素二重結合は、重合反応において別の炭素-炭素二重結合と反応することができる炭素-炭素二重結合である。重合性炭素-炭素二重結合は、一般に、アクリレート(シアノアクリレートを含む)、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレエート、フマレート、イタコネート、アリル、プロペニル、ビニルおよびこれらの組み合わせから選択される、好ましくはアクリレート、メタクリレートおよびビニルから選択される、より好ましくはアクリレートおよびメタクリレートから選択される基に含まれる。フェニル環の炭素-炭素二重結合は、重合性炭素-炭素二重結合と見なされない。
【0133】
一実施形態では、エチレン性不飽和化合物が、(メタ)アクリレート官能化モノマー、(メタ)アクリレート官能化オリゴマー、アミン変性アクリレートおよびこれらの混合物から選択され得る。特に、エチレン性不飽和化合物は、アミン変性アクリレートおよび/または(メタ)アクリレート官能化オリゴマーならびに場合により(メタ)アクリレート官能化モノマーを含む。
【0134】
重合性組成物中のエチレン性不飽和化合物((メタ)アクリレート官能化モノマー、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーおよびアミン変性アクリレートを含む)の総量は、組成物の重量に基づいて、40~99.5重量%、特に50~95重量%、より詳細には60~90重量%であり得る。特に、重合性組成物は、組成物の重量に基づいて、40~80重量%、または40~75重量%、または40~70重量%、または40~65重量%、または40~60重量%のエチレン性不飽和化合物を含み得る。あるいは、重合性組成物は、組成物の重量に基づいて、60~99.5重量%、または65~99.5重量%、または70~99.5重量%、または75~99.5重量%、または80~99.5重量%のエチレン性不飽和化合物を含み得る。
【0135】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート官能化モノマー」という用語は、(メタ)アクリレート基、特にアクリレート基を含むモノマーを意味する。「(メタ)アクリレート官能化オリゴマー」という用語は、(メタ)アクリレート基、特にアクリレート基を含むオリゴマーを意味する。「(メタ)アクリレート基」という用語は、アクリレート基(-O-CO-CH=CH2)およびメタクリレート基(-O-CO-C(CH3)=CH2)を包含する。
【0136】
一実施形態では、エチレン性不飽和化合物が(メタ)アクリレート官能化モノマーを含む。エチレン性不飽和化合物は(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得る。
【0137】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、600g/mol未満、特に100~550g/mol、より詳細には200~500g/molの分子量を有し得る。
【0138】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、1~6個の(メタ)アクリレート基、特に1~4個の(メタ)アクリレート基を有し得る。
【0139】
(メタ)アクリレート官能化モノマーは、異なる官能基を有する(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得る。例えば、(メタ)アクリレート官能化モノマーは、1分子当たり単一のアクリレートまたはメタクリレート基を含有する(メタ)アクリレート官能化モノマー(本明細書では「モノ(メタ)アクリレート官能化化合物」と呼ばれる)と1分子当たり2個以上、好ましくは2個または3個のアクリレートおよび/またはメタクリレート基を含有する(メタ)アクリレート官能化モノマーの混合物を含み得る。
【0140】
一実施形態では、(メタ)アクリレート官能化モノマーがモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーを含む。モノ(メタ)アクリレート官能化モノマーは、有利には反応性希釈剤として機能し、本発明の組成物の粘度を低下させることができる。
【0141】
適切なモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーの例としては、それだけに限らないが、脂肪族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(脂肪族アルコールは、直鎖、分岐または脂環式であり得、モノアルコール、ジアルコールまたはポリアルコールであり得、但し、1つのヒドロキシル基のみが(メタ)アクリル酸でエステル化されている);芳香族アルコール(アルキル化フェノールを含むフェノール類など)のモノ(メタ)アクリレートエステル;アルキルアリールアルコール(ベンジルアルコールなど)のモノ(メタ)アクリレートエステル;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどのオリゴマーおよびポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレートエステル;グリコールおよびオリゴグリコールのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリレートエステル;アルコキシル化(例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化)脂肪族アルコールのモノ(メタ)アクリレートエステル(脂肪族アルコールは、直鎖、分岐または脂環式であり得、モノアルコール、ジアルコールまたはポリアルコールであり得、但し、アルコキシル化脂肪族アルコールの1つのヒドロキシル基のみが(メタ)アクリル酸でエステル化されている);アルコキシル化(例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化)芳香族アルコール(アルコキシル化フェノールなど)のモノ(メタ)アクリレートエステル;カプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0142】
以下の化合物が、本発明の重合性組成物に使用するのに適したモノ(メタ)アクリレート官能化モノマーの具体例である:メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;n-プロピル(メタ)アクリレート;n-ブチル(メタ)アクリレート;イソブチル(メタ)アクリレート;n-ヘキシル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;n-オクチル(メタ)アクリレート;イソオクチル(メタ)アクリレート;n-デシル(メタ)アクリレート;n-ドデシル(メタ)アクリレート;トリデシル(メタ)アクリレート;テトラデシル(メタ)アクリレート;ヘキサデシル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-および3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート;2-エトキシエチル(メタ)アクリレート;2-および3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;イソデシル(メタ)アクリレート;ラウリル(メタ)アクリレート;2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート;アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート;アルコキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリレート;tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート;トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;ヒドロキシルエチル-ブチルウレタン(メタ)アクリレート;3-(2-ヒドロキシアルキル)オキサゾリジノン(メタ)アクリレート;およびこれらの組み合わせ。
【0143】
一実施形態では、(メタ)アクリレート官能化モノマーが、1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート基を含有する(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。
【0144】
1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート基を含有する適切な(メタ)アクリレート官能化モノマーの例としては、多価アルコールのアクリレートおよびメタクリレートエステル(1分子当たり2つ以上、例えば2~6つのヒドロキシル基を含有する有機化合物)が挙げられる。適切な多価アルコールの具体例としては、C2~20アルキレングリコール(炭素鎖が分岐していてもよい、C2~10アルキレン基を有するグリコール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ビスフェノール、および水素化ビスフェノール、ならびにこれらのアルコキシル化(例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化)誘導体が好まれ得る)、ジエチレングリコール、グリセリン、アルコキシル化グリセリン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、アルコキシル化トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、アルコキシル化ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アルコキシル化ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、アルコキシル化ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、アルコキシル化シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、アルコキシル化ノルボルネンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アルコキシル化ノルボルナンジメタノール、芳香族環を含有するポリオール、シクロヘキサン-1、4-ジメタノールエチレンオキシド付加物、ビス-フェノールエチレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールプロピレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールプロピレンオキシド付加物、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールプロピレンオキシド付加物、糖アルコールおよびアルコキシル化糖アルコールが挙げられる。このような多価アルコールは、それらが1分子当たり少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含有する限り、((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリロイルクロリドなどで)完全にまたは部分的にエステル化されていてもよい。
【0145】
1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート基を含有する例示的な(メタ)アクリレート官能化モノマーには、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジメタクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート(600はポリエチレングリコール部分のおおよその数平均分子量を指す);ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート;1,12ドデカンジオールジメタクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート;メチルペンタンジオールジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート;エトキシル化2ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化3ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化3ビスフェノールAジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化10ビスフェノールAジメタクリレート(「エトキシル化」に続く数字は1分子当たりのオキシアルキレン部分の平均数である);ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化4ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化6ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化8ビスフェノールAジメタクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ドデカンジアクリレート;エトキシル化4ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化10ビスフェノールAジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリプロピレングリコール(400)ジメタクリレート;金属ジアクリレート;変性金属ジアクリレート;金属ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート;メタクリレート化ポリブタジエン;プロポキシル化2ネオペンチルグリコールジアクリレート;エトキシル化30ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化30ビスフェノールAジアクリレート;アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;エトキシル化2ビスフェノールAジメタクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化4ビスフェノールAジアクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、例えばプロポキシル化2ネオペンチルグリコールジアクリレート;アルコキシル化脂肪族アルコールのジアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;エトキシル化20トリメチロールプロパントリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;エトキルシ化3トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化3トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化6トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化6トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシ化9トリメチロールプロパントリアクリレート;アルコキシル化三官能性アクリレートエステル;三官能メタクリレートエステル;三官能アクリレートエステル;プロポキシル化3グリセリルトリアクリレート;プロポキシル化5.5グリセリルトリアクリレート;エトキシル化15トリメチロールプロパントリアクリレート;三官能性リン酸エステル;三官能性アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート;エトキシル化4ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ペンタエリスリトールポリオキシエチレンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;およびペンタアクリレートエステルが含まれ得る。
【0146】
本発明の重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、0~99.5重量%、特に5~90重量%、より詳細には10~80重量%、さらにより詳細には15~75重量%、なおより詳細には20~70重量%の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。特に、本発明の重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、5~50重量%、または10~50重量%、または15~50重量%、または20~50重量%、または25~50重量%、または30~50重量%の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。あるいは、本発明の重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、50~99.5重量%、または55~99.5重量%、または60~99.5重量%、または65~99.5重量%、または70~99.5重量%の(メタ)アクリレート官能化モノマーを含み得る。
【0147】
一実施形態では、エチレン性不飽和化合物が(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含む。エチレン性不飽和化合物は(メタ)アクリレート官能化オリゴマーの混合物を含み得る。
【0148】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、数ある属性の中でも、本発明の重合性組成物を使用して調製された硬化ポリマーの可撓性、強度および/または弾性率を増強するために選択され得る。
【0149】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、1~18個の(メタ)アクリレート基、特に2~6個の(メタ)アクリレート基、より詳細には2~6個のアクリレート基を有し得る。
【0150】
(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、600g/mol以上、特に800~15,000g/mol、より詳細には1,000~5,000g/molの数平均分子量を有し得る。
【0151】
特に、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー(「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」、「ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」または「カルバメート(メタ)アクリレートオリゴマー」とも呼ばれることもある)、(メタ)アクリレート官能化エポキシオリゴマー(「エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼ばれることもある)、(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルオリゴマー(「ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼ばれることもある)、(メタ)アクリレート官能化ポリジエンオリゴマー(「ポリジエン(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼ばれることもある)、(メタ)アクリレート官能化ポリカーボネートオリゴマー(「ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼ばれることもある)、および(メタ)アクリレート官能化ポリエステルオリゴマー(「ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼ばれることもある)ならびにこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0152】
好ましくは、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー、より好ましくはアクリレート官能化ウレタンオリゴマーを含む。
【0153】
有利には、(メタ)アクリレート官能化オリゴマーは、2つの(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート官能化ウレタンオリゴマー、より好ましくは2つのアクリレート基を有するアクリレート官能化ウレタンオリゴマーを含む。
【0154】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーには、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはこれらの混合物もしくは合成等価物とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールの反応生成物が含まれる。反応プロセスは、特にポリエステルポリオールが二官能性である場合、ポリエステルポリオールのヒドロキシル基の全部または本質的に全部が(メタ)アクリル化されるように行われ得る。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能性成分(特に、ジオール)とポリカルボン酸官能性化合物(特に、ジカルボン酸および無水物)の重縮合反応によって製造することができる。ポリヒドロキシル官能性成分およびポリカルボン酸官能性成分はそれぞれ、直鎖、分岐、脂環式または芳香族構造を有することができ、個別にまたは混合物として使用することができる。
【0155】
適切なエポキシ(メタ)アクリレートの例としては、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはこれらの混合物とエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテルまたはエステル)の反応生成物が挙げられる。エポキシ樹脂は、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-1,4-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキシド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロールなどの脂肪族多価アルコールに1つまたは複数のアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、これらの化合物にアルキレンオキシドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアリン酸、エポキシオクチルステアリン酸、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ポリブタジエンなどから選択され得る。
【0156】
適切なポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーには、それだけに限らないが、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはこれらの合成等価物もしくは混合物と、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールなど)であるポリエーテロール(polyetherol)の縮合反応生成物が含まれる。適切なポリエーテロールは、エーテル結合および末端ヒドロキシル基を含有する直鎖または分岐物質であり得る。ポリエーテロールは、テトラヒドロフランまたはアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド)などの環状エーテルと出発分子の開環重合によって調製することができる。適切な出発分子には、水、ポリヒドロキシル官能性材料、ポリエステルポリオールおよびアミンが含まれる。
【0157】
本発明の重合性組成物に使用するのに適したポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」と呼ばれることもある)には、脂肪族、脂環式および/または芳香族ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールならびに(メタ)アクリレート末端基でキャップされた脂肪族、脂環式および/または芳香族ポリエステルジイソシアネートおよびポリエーテルジイソシアネートに基づくウレタンが含まれる。適切なポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーには、例えば、脂肪族ポリエステル系ウレタンジ-およびテトラ-アクリレートオリゴマー、脂肪族ポリエーテル系ウレタンジ-およびテトラ-アクリレートオリゴマー、ならびに脂肪族ポリエステル/ポリエーテル系ウレタンジ-およびテトラ-アクリレートオリゴマーが含まれる。
【0158】
ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、脂肪族、脂環式および/または芳香族ポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネート)をOH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオルガノシロキサンポリオール(例えば、ポリジメチルシロキサンポリオール)、もしくはポリジエンポリオール(例えば、ポリブタジエンポリオール)、またはこれらの組み合わせと反応させて、イソシアネート官能化オリゴマーを形成し、次いで、これをヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させて末端(メタ)アクリレート基を得ることによって調製され得る。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子当たり2つ、3つ、4つまたはそれを超える(メタ)アクリレート官能基を含有し得る。当技術分野で知られているように、他の添加順序を実施してポリウレタン(メタ)アクリレートを調製することもできる。例えば、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートを最初にポリイソシアネートと反応させてイソシアネート官能化(メタ)アクリレートを得て、次いで、これをOH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオール、またはこれらの組み合わせと反応させることができる。さらに別の実施形態では、ポリイソシアネートを最初に前記種類のポリオールのいずれかを含むポリオールと反応させてイソシアネート官能化ポリオールを得て、その後、これをヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートと反応させてポリウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。あるいは、全ての成分を組み合わせて同時に反応させてもよい。
【0159】
適切なアクリル(メタ)アクリレートオリゴマー(当技術分野で「アクリルオリゴマー」と呼ばれることもある)には、(オリゴマーの末端であっても、アクリル骨格にペンダントしていてもよい)1つまたは複数の(メタ)アクリレート基で官能化されたオリゴマーアクリル骨格を有する物質として記載され得るオリゴマーが含まれる。アクリル骨格は、アクリル系モノマーの繰り返し単位で構成されるホモポリマー、ランダム共重合体またはブロック共重合体であり得る。アクリル系モノマーは、C1~C6アルキル(メタ)アクリレートなどの任意のモノマー(メタ)アクリレート、ならびにヒドロキシル、カルボン酸および/またはエポキシ基を有する(メタ)アクリレートなどの官能化(メタ)アクリレートであり得る。アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、当技術分野で公知の任意の手順を使用して、例えばその少なくとも一部がヒドロキシル、カルボン酸および/またはエポキシ基(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート)で官能化されているモノマーをオリゴマー化して、官能化オリゴマー中間体を得て、次いで、これを1つまたは複数の(メタ)アクリレート含有反応物質と反応させて所望の(メタ)アクリレート官能基を導入することによって調製され得る。
【0160】
本発明の重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、0~99.5重量%、特に5~90重量%、より詳細には10~80重量%、さらにより詳細には15~75重量%、なおより詳細には20~70重量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得る。特に、本発明の重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、5~50重量%、または10~50重量%、または15~50重量%、または20~50重量%、または25~50重量%、または30~50重量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得る。あるいは、本発明の重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、50~99.5重量%、または55~99.5重量%、または60~99.5重量%、または65~99.5重量%、または70~99.5重量%の(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含み得る。
【0161】
一実施形態では、エチレン性不飽和化合物がアミン変性アクリレートを含む。エチレン性不飽和化合物はアミン変性アクリレートの混合物を含み得る。
【0162】
アミン変性アクリレートは、アクリレート官能化化合物とアミン含有化合物を反応させる(アザ-マイケル付加)ことによって得られる。アミン変性アクリレートは、少なくとも1つの残りのアクリレート基(すなわち、アザ-マイケル付加中にアミン含有化合物と反応しなかったアクリレート基)および/または少なくとも1つの(メタ)アクリレート基(第一級または第二級アミンに対して反応性でなくてもよい)を含む。
【0163】
アクリレート官能化化合物は、上に定義されるアクリレート官能化モノマーおよび/またはアクリレート官能化オリゴマーであり得る。
【0164】
アミン含有化合物は、第一級または第二級アミン基および場合により第三級アミン基を含む。アミン含有化合物は、2つ以上の第一級および/または第二級アミン基を含み得る。アミン含有化合物は、モノエタノールアミン(2-アミノエタノール)、2-エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、sec-ブチルアミン、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、2-(メチルアミノ)エタノ-1,2-メトキシエチルアミン、ビス(2-ヒドロキシプロピル)アミン、ジイソプロピルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、N-ベンジルメチルアミン、モルホリン、ピペリジン、ジオクチルアミン、およびジ-ココアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、アニリンおよび置換されていてもよいベンゾカイン(エチル-4-アミノベンゾエート)から選択され得る。
【0165】
市販のアミン変性アクリレートの例としては、全てArkemaから入手可能なCN3705、CN3715、CN3755、CN381およびCN386が挙げられる。ポリマーまたはマルチアミノバージョンも適している。
【0166】
重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、0重量%~25%、特に2.5重量%~20重量%、より詳細には5~15重量%のアミン変性アクリレートを含み得る。
【0167】
光開始剤
本発明の重合性組成物は、式(I)の化合物以外の光開始剤を含み得る。
【0168】
式(I)の化合物以外の光開始剤は、ラジカル光開始剤、特に、ノリッシュI型活性および/またはノリッシュII型活性を有するラジカル光開始剤、より詳細には、ノリッシュI型活性を有するラジカル光開始剤であり得る。
【0169】
本発明の重合性組成物に使用するのに適した非限定的な種類のラジカル光開始剤には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、α-ヒドロキシアセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、ホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェナゼン誘導体、キノキサリン誘導体、トリアジン化合物、ベンゾイルホルメート、芳香族オキシム、メタロセン、アシルシリルまたはアシルゲルマニル化合物、カンファーキノン、これらのポリマー誘導体、およびこれらの混合物が含まれる。
【0170】
適切なラジカル光開始剤の例としては、それだけに限らないが、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-ベンジルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、例えば2,2-ジアルコキシベンゾフェノンおよび1-ヒドロキシフェニルケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5-アセトナフチレン、ベンジルケトン、α-ヒドロキシケト、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、1-ヒドロキシシルクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン、オリゴマーα-ヒドロキシケトン、ベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、50/50ブレンド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、50/50ブレンド、4’-エトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(ii)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシおよび9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オンならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0171】
特に、式(I)の化合物以外の光開始剤は、ベンゾフェノン(Speedcure(登録商標)BP、Speedcure(登録商標)7005、Speedcure(登録商標)7006など)、チオキサントン(Speedcure(登録商標)7010、Speedcure(登録商標)ITXなど)、α-ヒドロキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシド(Speedcure(登録商標)BPO、Speedcure(登録商標)TPO、Speedcure(登録商標)TPO-Lなど)であり得る。好ましくは、式(I)の化合物以外の光開始剤がSpeedcure(登録商標)BPOである。
【0172】
式(I)の化合物と式(I)の化合物以外の光開始剤との間のモル比は、数ある因子の中でも、選択される光開始剤、光重合されることが意図される重合性種の量および種類、使用される照射源および照射条件に応じて適切であり得るように変更され得る。しかしながら、典型的には、式(I)の化合物と式(I)の化合物以外の光開始剤との間のモル比は、10/90~90/10、または20/80~80/20、または30/70~70/30、または40/60~60/40、または45/55~55/45であり得る。
【0173】
アミン共力剤
本発明の重合性組成物はアミン共力剤を含み得る。重合性組成物はアミン共力剤の混合物を含み得る。
【0174】
ノリッシュII型光開始剤と相乗的に作用するために、および/または酸素阻害を低減するために、アミン共力剤を本発明の重合性組成物に導入することができる。アミン共力剤は、典型的には第三級アミンである。ノリッシュII型光開始剤と組み合わせて使用される場合、第三級アミンは、光開始剤の励起三重状態のための活性水素供与部位を提供し、よって、その後重合を開始することができる反応性アルキル-アミノラジカルを生成する。第三級アミンはまた、酸素とフリーラジカルとの間の反応によって形成される非反応性ペルオキシ種を反応性アルキル-アミノラジカルに変換し、よって、硬化に対する酸素の効果を低減することができる。
【0175】
重合性組成物が上に定義されるアミン変性アクリレートモノマーまたはオリゴマーを含む場合、アミン共力剤を組成物に添加する必要はないかもしれない。
【0176】
適切なアミン共力剤の例としては、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンなどの低分子量第三級アミン(すなわち、200g/mol未満の分子量を有する)が挙げられる。他の種類のアミン共力剤は、アミノベンゾエート、重合性アミノベンゾエート、ポリマーアミノベンゾエートおよびこれらの混合物である。アミノベンゾエートの例としては、エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDB)、ペンチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよび2-ブトキシエチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート(BEDB)が挙げられる。
【0177】
重合性組成物中のアミン共力剤の濃度は、使用される化合物の種類に応じて変化する。しかしながら、典型的には、重合性組成物は、重合性組成物の総重量に基づいて、0重量%~25重量%、特に0.5重量%~20重量%、より詳細には1~15重量%のアミン共力剤を含むように配合される。
【0178】
添加剤
本発明の重合性組成物は添加剤を含み得る。重合性組成物は添加剤の混合物を含み得る。
【0179】
特に、添加剤は、安定剤(抗酸化剤、光遮断剤/吸収剤、重合阻害剤)、発泡阻害剤、流動またはレベリング剤、着色剤、分散剤、スリップ添加剤、充填剤、連鎖移動剤、チキソトロピー剤、艶消し剤、耐衝撃性改良剤(impact modifier)、ワックス、これらの混合物、およびコーティング、シーラント、接着剤、成形、3D印刷またはインク技術で慣用的に使用されている任意の他の添加剤から選択され得る。
【0180】
重合性組成物は安定剤を含み得る。
【0181】
十分な貯蔵安定性および貯蔵寿命を提供するために、本発明の重合性組成物に安定剤を導入することができる。さらに、重合性組成物の調製中に安定剤を使用して、重合性組成物のエチレン性不飽和成分の処理中の望ましくない反応から保護することができる。安定剤は、化学線照射の非存在下で組成物中に存在する化学線重合性官能基の反応または硬化を遅延または防止する化合物または物質であり得る。しかしながら、化学線照射に曝露された場合に組成物が硬化可能なままであるように(すなわち、安定剤は組成物の放射線硬化を妨げない)、安定剤の量および種類を選択することが有利であろう。安定剤は、特にフリーラジカル安定剤(すなわち、フリーラジカル反応を阻害することによって機能する安定剤)であり得る。
【0182】
(メタ)アクリレート官能化化合物に関連する当技術分野で公知の安定剤のいずれも本発明で利用することができる。キノンは、本発明の文脈において使用することができる特に好ましい種類の安定剤を表す。本明細書で使用される場合、「キノン」という用語は、キノンとヒドロキノンの両方、ならびにこれらのエーテル、例えばヒドロキノンのモノアルキル、モノアリール、モノアラルキルおよびビス(ヒドロキシアルキル)エーテルを含む。ヒドロキノンモノメチルエーテルが、利用することができる適切な安定剤の例である。ヒドロキノン(HQ)、4-tert-ブチルカテコール(TBC)、3,5-ジ-tertioブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、フェノチアジン(PTZ)、ピロガロール、亜リン酸化合物、トリフェニルアンチモンおよびスズ(II)塩などの当技術分野で公知の他の安定剤。
【0183】
重合性組成物中の安定剤の濃度は、使用のために選択された特定の安定剤または安定剤の組み合わせ、ならびにまた所望の安定化の程度および安定剤の非存在下での分解に対する重合性組成物中の成分の感受性に応じて変化する。しかしながら、典型的には、重合性組成物は、5~5000ppmの安定剤を含むように配合される。本発明のある特定の実施形態によると、重合性組成物を製造するために使用される方法の各段階中の反応混合物は、少なくともいくらかの安定剤、例えば少なくとも10ppmの安定剤を含有する。
【0184】
重合性組成物は着色剤を含み得る。着色剤は、染料、顔料およびこれらの混合物であり得る。本明細書で使用される「染料」という用語は、25℃で、導入される媒体において10mg/L以上の溶解度を有する着色剤を意味する。「顔料」という用語は、DIN 55943において、関連する周囲条件下で塗布媒体に実際的に不溶性であり、したがって、25℃で10mg/L未満の溶解度を有する着色剤として定義される。「C.I.」という用語は、カラーインデックス(Colour Index)の略語として使用される。
【0185】
着色剤は顔料であり得る。有機および/または無機顔料が使用され得る。着色剤が自己分散型顔料でない場合、インクジェットインクは、好ましくは分散剤、より好ましくは高分子分散剤も含有する。顔料は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウンおよびこれらの混合物であり得る。顔料は、HERBST,WillyらIndustrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.第3版 Wiley-VCH、2004.ISBN 3527305769によって開示されるものから選択され得る。
【0186】
特定の顔料には、以下が含まれる:
-カーボンブラック;
-C.I.ピグメントホワイト1、3、4、5、6、7、10、11、12、14、17、18、19、21、24、25、27、28および32;
-C.I.ピグメントイエロー1、3、10、12、13、14、17、55、65、73、74、75、83、93、97、109、111、120、128、138、139、150、151、154、155、180、185および213;
-C.I.ピグメントレッド17、22、23、41、48:1、48:2、49:1、49:2、52:1、57:1、81:1、81:3、88、112、122、144、146、149、169、170、175、176、184、185、188、202、206、207、210、216、221、248、251、254、255、264、270および272;
-C.I.ピグメントバイオレット1、2、19、23、32、37および3;
-C.I.ピグメントブルー15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、56、61および(架橋)アルミニウムフタロシアニン顔料;
-C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、34、40、43、59、66、67、69、71および73;
-C.I.ピグメントグリーン7および36;
-C.I.ピグメントブラウン6および7;
ならびにこれらの混合物。
【0187】
本発明の重合性組成物は分散剤を含み得る。分散剤は、重合性組成物中に顔料または充填剤などの不溶性材料を分散させるために使用され得る。
【0188】
分散剤は、高分子分散剤、界面活性剤およびこれらの混合物であり得る。
【0189】
典型的な高分子分散剤は、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるモノマーの共重合体である。高分子分散剤の特性は、モノマーの性質とポリマー中のそれらの分布の両方に依存する。共重合体分散剤は、好ましくは以下のポリマー組成を有する:
-ランダム共重合体(例えば、ABBAABAB);
-交互共重合体(例えば、ABABABAB);
-グラジエント共重合体(例えば、AAABAABBABBB);
-ブロック共重合体(例えば、AAAAABBBBBB);
-グラフト共重合体(ポリマー側鎖が骨格に結合したポリマー骨格);
およびこれらの共重合体の混合形態。
【0190】
高分子分散剤は、500~30000の間、より好ましくは1500~10000の間の数平均分子量Mnを有し得る。
【0191】
高分子分散剤の市販の例としては、以下が挙げられる:
-BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(登録商標)分散剤;
-LUBRIZOLから入手可能なSOLSPERSE(登録商標)分散剤;
-EVONIK製のTEGO(登録商標)DISPERSE分散剤;
-BASF製のDISPEX(登録商標)、EFKA(登録商標)およびJONCRYL(登録商標)分散剤;
-ELEMENTIS製のDISPONER(登録商標)分散剤。
【0192】
溶媒
本発明の重合性組成物は溶媒系であっても水系であってもよい。本明細書で使用される場合、「溶媒」という用語は、非反応性有機溶媒、すなわち、本明細書に記載される重合性組成物を硬化させるために使用される化学線照射に曝露された場合に反応しない、炭素および水素原子を含む溶媒を意味する。
【0193】
有利には、本発明の重合性組成物が無溶媒となるように配合され得る。例えば、本発明の重合性組成物は、溶媒をほとんどまたは全く含有しなくてもよく、例えば、重合性組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、または5重量%未満、または1重量%未満、またはさらには0重量%の溶媒を含有し得る。
【0194】
配合物
本発明の重合性組成物は、一成分系または一部分系として配合され得る。すなわち、重合性組成物は、直接硬化されてもよい、すなわち、硬化前に別の成分とも第2の部分とも組み合わされない。
【0195】
第1の実施形態では、本発明の重合性組成物が、
a)式(I)の化合物と;
b)エチレン性不飽和化合物と;
c)場合によりアミン共力剤と;
d)場合により式(I)の化合物以外の光開始剤と;
e)場合により添加剤と;
f)場合により溶媒と
を含み得る。
【0196】
第1の実施形態の重合性組成物は、
a)0.5~25%、特に1~20%、より詳細には2~10%の式(I)の化合物と;
b)40~99.5%、特に50~95%、より詳細には60~90%のエチレン性不飽和化合物と;
c)0~10%、特に0.5~6%、より詳細には1~3%の、式(I)の化合物以外の光開始剤と;
d)0~15%、特に0~10%、より詳細には0~5%のアミン共力剤と;
e)0~30%の添加剤と;
f)0~30%の溶媒と
を含み得るか、またはから本質的になり得;
%は組成物の重量に基づく重量%である。
【0197】
好ましくは、本発明の重合性組成物は、成分a)~f)以外の成分を含まない。したがって、成分a)、b)、c)、d)、e)およびf)の総重量が組成物の重量の100%となり得る。
【0198】
本発明の好ましい実施形態では、重合性組成物が25℃で液体である。本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載される重合性組成物が、27スピンドル(スピンドル速度は、粘度に応じて、典型的には20~200rpmの間で変化する)を使用して、Brookfield粘度計、モデルDV-IIを使用して25℃で測定した場合、10,000mPa.s未満、または5,000mPa.s未満、または1,000mPa.s未満、または500mPa.s未満、または250mPa.s未満、またはさらに100mPa.s未満の粘度を有するように配合される。本発明の有利な実施形態では、重合性組成物の粘度が、25℃で10~10,000mPa.s、または10~5,000mPa.s、または10~1,000mPa.s、または10~500mPa.s、または10~250mPa.s、または10~100mPa.sである。
【0199】
本明細書に記載される重合性組成物は、フリーラジカル重合による硬化に供される組成物であり得る。特定の実施形態では、重合性組成物が、光硬化(すなわち、光、特に可視光またはUV光などの化学線照射への曝露によって硬化)され得る。特に、組成物はLED光源によって硬化され得る。
【0200】
本発明の重合性組成物は、インク組成物、オーバープリントワニス組成物、コーティング組成物、接着剤組成物、シーラント組成物、成形組成物、歯科用組成物、化粧品組成物または3D印刷組成物、特にインク組成物であり得る。
【0201】
重合性組成物の最終使用用途には、それだけに限らないが、インク、コーティング、接着剤、付加製造(additive manufacturing)樹脂(3D印刷樹脂など)、成形樹脂、シーラント、複合材料、帯電防止層、電子用途、リサイクル可能な材料、刺激を検出し、これに応答することができるスマート材料、包装材料、パーソナルケア物品、化粧品、農業、水もしくは食品加工、または畜産で使用するための物品、および生物医学材料が含まれる。よって、本発明の重合性組成物は、生体適合性物品の製造において有用性を見出す。このような物品は、例えば、高い生体適合性、低い細胞傷害性および/または低い抽出物を示し得る。
【0202】
本発明による組成物は、特に、以下の方法に従って硬化生成物および3D印刷物品を得るために使用され得る。
【0203】
硬化生成物および3D印刷物品を調製する方法
本発明による硬化生成物を調製する方法は、本発明の重合性組成物を硬化させることを含む。特に、重合性組成物は、組成物を照射に曝露することによって硬化され得る。より詳細には、重合性組成物は、組成物をUV、近UVおよび/または可視光照射に曝露することによって硬化され得る。重合性組成物は、有利には組成物をLED光源に曝露することによって硬化され得る。
【0204】
硬化は、重合性組成物にエネルギーを供給することによって、例えば重合性組成物を加熱することによって加速または促進され得る。よって、硬化生成物は、硬化によって形成された、重合性組成物の反応生成物と見なされ得る。重合性組成物は、化学線照射への曝露によって部分的に硬化され得、部分的に硬化された物品を加熱することによってさらなる硬化が達成される。例えば、重合性組成物から形成された生成物は、40℃~120℃の温度で5分間~12時間の期間加熱され得る。
【0205】
硬化前に、重合性組成物は、例えば噴霧、噴射、ナイフコーティング、ローラーコーティング、キャスティング、ドラムコーティング、浸漬など、およびこれらの組み合わせによって、任意の公知の慣用的な方法で基板表面に塗布され得る。転写プロセスを使用する間接的塗布も使用され得る。
【0206】
重合性組成物を塗布し、硬化させる基板はあらゆる種類の基板であり得る。適切な基板を以下に詳述する。接着剤として使用される場合、重合性組成物は、2つの基板の間に配置され、次いで、硬化され、それによって、硬化組成物が、基板を互いに結合させて接着物品を提供することができる。本発明による重合性組成物は、バルク様式で形成または硬化され得る(例えば、重合性組成物が適切な型にキャストされ、次いで、硬化され得る)。
【0207】
本発明の方法で得られる硬化生成物は、インク、オーバープリントワニス、コーティング、接着剤、シーラント、成形品、歯科用材料または3D印刷物品、特にインクであり得る。
【0208】
3D印刷物品は、特に、本発明の組成物を用いて3D物品を印刷することを含む3D印刷物品を調製する方法で得ることができる。特に、本方法は、3D物品を層ごとにまたは連続的に印刷することを含み得る。
【0209】
本発明による重合性組成物の複数の層を基板表面に塗布することができ;複数の層を同時に硬化させてもよく(例えば、単一線量の照射への曝露によって)、または重合性組成物の追加の層を塗布する前に各層を連続的に硬化させてもよい。
【0210】
本明細書に記載される重合性組成物は、三次元印刷用途で樹脂として使用することができる。三次元(3D)印刷(付加製造とも呼ばれる)は、構築材料の付着によって3Dデジタルモデルが製造されるプロセスである。3D印刷物体は、3D物体の断面に対応する二次元(2D)層またはスライスの連続的な構築を通して物体のコンピュータ支援設計(CAD)データを利用することによって作成される。ステレオリソグラフィ(SL)は、液体樹脂を照射への選択的曝露によって硬化させて各2D層を形成する付加製造の一種である。照射は、電磁波または電子ビームの形態であり得る。最も一般的に適用されるエネルギー源は、紫外、可視または赤外線照射である。
【0211】
ステレオリソグラフィおよび他の光硬化性3D印刷方法は、典型的には、低強度光源を適用して光硬化性樹脂の各層を照射して、所望の物品を形成する。結果として、特定の光硬化性樹脂が、照射された場合に十分に重合(硬化)し、3D印刷プロセスおよび後処理を通してその完全性を保持するのに十分なグリーン強度(green strength)を有する場合、光硬化性樹脂の重合速度および印刷物品のグリーン強度が重要な基準となる。
【0212】
本発明の重合性組成物は、3D印刷樹脂配合物、すなわち、3D印刷技術を使用して三次元物品を製造するのに使用することを意図した組成物として使用され得る。このような三次元物品は、自立型/自己支持型であり得、硬化された本発明による組成物から本質的になり得るか、またはからなり得る。三次元物品はまた、前記の硬化組成物から本質的になるか、またはからなる少なくとも1つの成分、ならびにこのような硬化組成物以外の1つまたは複数の材料(例えば、金属成分または熱可塑性成分または無機充填剤または繊維強化材)で構成される少なくとも1つの追加の成分を含む複合材料であり得る。本発明の重合性組成物は、デジタル光印刷(DLP)に特に有用であるが、本発明の重合性組成物を使用して他の種類の三次元(3D)印刷方法を実施することもできる(例えば、SLA、インクジェット、マルチジェット印刷、圧電印刷、化学線硬化押出、およびゲル堆積印刷)。本発明の重合性組成物は、本発明の重合性組成物から形成された物品の足場または支持体として機能する別の材料と共に、三次元印刷操作で使用され得る。
【0213】
よって、本発明の重合性組成物は、三次元物体の構築を段階的にまたは層ごとに実施する方法を含む、様々な種類の三次元製造または印刷技術の実施に有用である。このような方法では、層形成が、可視、UVまたは他の化学線照射などの照射への曝露の作用下で重合性組成物の凝固(硬化)によって実施され得る。例えば、成長物体の上面または成長物体の底面に新たな層が形成され得る。本発明の重合性組成物はまた、有利には付加製造による三次元物体の製造方法に使用され得、この方法は連続的に実施される。例えば、物体は液体接触面から製造され得る。この種の適切な方法は、当技術分野では「連続液体接触面(または界面相)生成物(または印刷)」(「CLIP」)法と呼ばれることがある。このような方法は、例えば、国際公開第2014/126830号パンフレット;国際公開第2014/126834号パンフレット;国際公開第2014/126837号パンフレット;およびTumblestonら、「Continuous Liquid Interface Production of 3D Objects」、Science 第347巻、第6228号、1349~1352頁(2015年3月20日)に記載されている。
【0214】
重合性組成物は、バットから供給するのではなく、プリントヘッドから吐出することによって供給され得る。この種のプロセスは、一般にインクジェットまたはマルチジェット3D印刷と呼ばれる。インクジェットプリントヘッドのすぐ後ろに取り付けられた1つまたは複数のUV硬化源が、重合性組成物がビルド表面基板または以前に塗布された層に塗布された直後に重合性組成物を硬化させる。異なる組成物を各層の異なる領域に塗布することを可能にするプロセスで、2つ以上のプリントヘッドを使用することができる。例えば、異なる色または異なる物理的特性の組成物を同時に塗布して、様々な組成の3D印刷部品を作成することができる。一般的な使用では、後処理中に後で除去される支持材料が、所望の3D印刷部品を作成するために使用される組成物と同時に堆積される。プリントヘッドは、約25℃~最高約100℃の温度で動作することができる。重合性組成物の粘度は、プリントヘッドの動作温度で30mPa.s未満である。
【0215】
3D印刷物品を調製する方法は、
a)本発明による重合性組成物の第1の層を表面上に提供する(例えば、コーティングする)工程と;
b)第1の層を少なくとも部分的に硬化させて、硬化した第1の層を提供する工程と;
c)重合性組成物の第2の層を硬化した第1の層上に提供する(例えば、コーティングする)工程と;
d)第2の層を少なくとも部分的に硬化させて、硬化した第1の層に接着した硬化した第2の層を提供する工程と;
e)工程c)および工程d)を所望の回数繰り返して、三次元物品を構築する工程と
を含み得る。
【0216】
3D物品が印刷された後、3D物品を1つまたは複数の後処理工程に供することができる。後処理工程は、任意の印刷された支持体構造を除去する工程、水および/または有機溶媒で洗浄して残留樹脂を除去する工程、ならびに熱処理および/または化学線照射を使用して同時または逐次的に後硬化する工程のうちの1つまたは複数から選択することができる。後処理工程を使用して、新たに印刷された物品をその意図した用途で使用する準備ができた完成した機能性物品に変換することができる。
【0217】
インクジェット印刷の方法
本発明によるインクジェット印刷の方法は、本発明の重合性組成物を基板上に噴射することを含んでいた。
【0218】
重合性組成物を噴射する基板はあらゆる種類の基板であり得る。適切な基板を以下に詳述する。
【0219】
重合性組成物は、プリントヘッドに対して移動する基板上にノズルを介して制御された方法で小さな液滴を吐出する1つまたは複数のプリントヘッドによって噴射され得る。
【0220】
プリントヘッドは、圧電ヘッドまたは連続型プリントヘッドであり得る。
【0221】
インクジェット印刷法は、シングルパスまたはマルチパス印刷モードで行われ得る。
【0222】
インクジェット印刷法は、UV硬化工程をさらに含み得る。インクジェット印刷では、UV硬化装置が、液体UV硬化性インクジェットインクが噴射された直後に硬化照射に曝露されるように、インクジェットプリンタのプリントヘッドと組み合わせて配置され、それと共に移動することができる。
【0223】
特に好ましい実施形態では、UV硬化工程が、UV LED光源を使用して実施される。
【0224】
硬化を促進するために、インクジェットプリンタは、1つまたは複数の酸素欠乏ユニットを含み得る。酸素枯渇ユニットは、硬化環境中の酸素濃度を低下させるために、調整可能な位置および調整可能な不活性ガス濃度を有する、窒素または他の比較的不活性なガス(例えば、CO2)のブランケットを配置する。
【0225】
基板
本発明の重合性組成物を塗布する基板はあらゆる種類の基板であり得る。
【0226】
基板は、セラミック、金属、鉱物、セルロース系、動物系または高分子基板であり得る。基板はまた、歯または爪などの人体の一部であり得る。
【0227】
基板は、多孔質または実質的に非多孔質であり得る。基板は、透明、半透明または不透明であり得る。
【0228】
セラミック基板の例としては、アルミナ系セラミックおよびジルコニア系セラミックが挙げられる。
【0229】
金属基板の例としては、チタン、金、銀、銅、真鍮、鋼および青銅が挙げられる。
【0230】
鉱物基板の例としては、ガラス、アスベストおよび玄武岩が挙げられる。
【0231】
セルロース系基板の例としては、普通紙または樹脂コート紙(例えば、ポリエチレンもしくはポリプロピレンコート紙)が挙げられる。紙の種類に実際の制限はなく、紙には、新聞用紙、雑誌用紙、事務用紙、壁紙だけでなく、裏白チップボード、段ボールおよび包装用板紙などの通常板紙と呼ばれる高坪量の紙も含まれる。セルロース系基板のさらなる例としては、竹、綿、亜麻、麻、ジュート、リヨセル、モダール、レーヨン、ラフィア、ラミーおよびサイザルが挙げられる。
【0232】
セルロース系基板の例としては、ウール、ファー、絹および皮革が挙げられる。
【0233】
高分子基板の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレンが挙げられる。
【0234】
基板の形状に制限はない。基板は、シート、フィルム、不織もしくは織繊維マットまたは三次元物体であり得る。
【0235】
特に、基板は、飲食品包装、医薬品包装、織物、爪、歯、医療機器、飲食品加工機器、水道管から選択され得る。
【0236】
使用
上に定義される式(I)の化合物または上に定義される光開始剤組成物は、放射線硬化性組成物、特にUVまたはLED硬化性組成物における光開始系として使用され得る。
【0237】
本明細書で使用される場合、「UV硬化性組成物」は、水銀光源、特に水銀蒸気ランプによって放射されるUV光への曝露によって硬化する組成物を意味し、「LED硬化性組成物」は、LED光源、特に365~420nmの範囲の発光帯を有するLED光源によって放射されるUV光への曝露による硬化を意味する。
【0238】
上に定義される式(I)の化合物または上に定義される光開始剤組成物は光重合反応に使用され得る。光重合反応は、1つまたは複数の上に定義されるエチレン性不飽和化合物を光重合(例えば硬化)するために使用され得る。
【0239】
上に定義される式(I)の化合物または上に定義される光開始剤組成物を使用して、抽出物の量が減少した硬化生成物を得ることができる。特に、硬化生成物は、インク、オーバープリントワニス、コーティング、接着剤、シーラント、成形品、歯科用材料または3D印刷物品、特にインクであり得る。
【0240】
抽出物の量の減少は、慣用的なチオキサントン(すなわち、イソプロピルチオキサントンなどの非重合性チオキサントン、または高分子チオキサントン)で得られた硬化生成物と比較して評価され得る。
【0241】
抽出物は、硬化生成物から移行する任意の成分であり得る。特に、抽出物は光開始剤またはその残留物であり得る。
【0242】
インクジェットインクにおける移行は様々な方法で起こり得る:
浸透移行-基板を通ってプリントの裏面へ;
セットオフ移行-ロール上に積層または保存されている間に基板の印刷面から基板の裏面へ;
気相移行-加熱時の揮発性化合物のエバポレーション;
凝縮抽出-調理または滅菌された場合の重要な化合物の凝縮。
【0243】
抽出物の量は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)などの適切な分析方法を使用して定量的に決定され得る。例えば、重合性組成物を、ガラス基板上に厚さ12μmのフィルムで塗布し、UV Hgランプを使用して架橋することができる。得られた硬化フィルムをガラスプレートから取り出し、秤量し、アセトニトリルまたはジクロロメタンなどの溶媒に浸漬する。液体画分を最終的にエバポレートし、抽出物部分に対応する残留物を秤量し、未硬化の(光硬化ネットワーク内に捕捉されていない)生成物の量を決定することを可能にする。
【0244】
次いで、核磁気共鳴(NMR)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)またはガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)などの分析方法を使用して、抽出物の性質を特定し、それらの対応する含有量を精査することができる。
【0245】
特に、硬化生成物は、硬化生成物の重量に基づいて、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満または0.1重量%未満の抽出物を有し得る。
【0246】
本発明の重合性組成物は、インク、オーバープリントワニス、コーティング、接着剤、シーラント、成形品、歯科用材料または3D印刷物品、特にインクを得るために使用され得る。
【0247】
本明細書では、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりすることができることが意図されており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載される全ての好ましい特徴が、本明細書に記載される本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0248】
本発明は、具体的な実施形態を参照して本明細書に例示および説明されているが、本発明は示された詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲の等価物の適用範囲および範囲内で、本発明から逸脱することなく、様々な修正を詳細に行うことができる。
【実施例】
【0249】
【0250】
方法
本出願では以下の方法を使用した:
【0251】
態様
生成物を昼光下で、60ml透明ガラス瓶を通して目視観察して、生成物が以下であるかどうかを決定した:
-透明である:濁りがなく、水に匹敵する、
-かすんでいる:もはや瓶を通して鮮明な視覚を許容しない、
-曇っている:不透明なバイアル、バイアルを通して何も見えない。
【0252】
粘度
粘度は、試料を充填したチューブを通して鋼球が重力下で落下するのに要する経過時間を測定するNoury法(落球粘度計)を使用して決定した。測定条件は、AFNOR XP.T51-213(1995年11月)規格に見出すことができる。測定は、直径2mmの鋼球を備えた16mm×160mmの試験管で行い、球の経路は104mmであった。これらの条件下で、動粘度は球の移動時間に比例し、移動時間1秒は粘度0.1Pa.sに対応する。
【0253】
酸価
生成物の酸価(生成物1グラム当たりの当量KOHのミリグラムで表される)を、酸塩基投与を用いて決定した。正確な重量pの生成物(およそ10グラム)をトルエン/エタノール混合物(2/1 vol/vol)50mlに溶解した。完全に溶解した後、およそ0.1Nの正常レベルN(Eq/l)を有するメタノール性水酸化カリウムの溶液を用いて投与を行った。当量点は、当量体積VEを送達する自動ビュレット(自動滴定装置「716 DMS Titrino」(登録商標)Metrohm)を制御する複合電極によって検出した。当量体積VBを決定することを可能にするブランク試験(トルエン/エタノール混合物のみ50ml)を行った後、酸価(IA)を以下の式によって算出した:
[数1]
IA=(VE-VB).N.56,1/p)
(式中、VEおよびVBはml、NはEq/l、pはグラムである)。
【0254】
水銀ランプ(UV-Hg)下での反応性
配合物を、コントラストカード(Leneta製のForm 1B Penoparcチャート)上に12μmフィルムとして塗布し、Fusion水銀ランプを用いて120W/cm2で硬化させた。指触乾燥フィルムを得るために必要な最小通過速度(m/分)を測定した。
【0255】
LED(UV-LED)下での反応性
配合物を、コントラストカード(Leneta製のForm 1B Penoparcチャート)上に12μmフィルムとして塗布し、波長λ=395nmのLEDランプを用いて12W/cm2で硬化させた。指触乾燥フィルムを得るために必要な最小通過速度(m/分)を測定した。
【0256】
Persoz硬度
配合物をガラスプレート上に100μmフィルムとして塗布し、Fusion水銀ランプ(120W/cm2)を用いて10m/分の速度(2経路)で硬化させた。コーティングを23℃で24時間乾燥させた後、硬度を、コーティングされたガラスプレートと接触している振り子の減衰(振幅の12°から4°への変化)前の振動数として決定した。
【0257】
可撓性
配合物を、厚さ25/10mmの平滑鋼プレート(D-46(登録商標)Q-Panel)上に100μmフィルムとして塗布し、Fusion水銀ランプ(120W/cm2)を用いて10m/分の速度(2経路)で硬化させた。23℃で24時間後、コーティングされたプレートを円筒形マンドレル上で曲げた。コーティングを23℃で24時間乾燥させた後、可撓性を、コーティングが割れるまたは支持体から剥がれる前にコーティングに適用できる最小曲率半径の値(mm)として決定した。
【0258】
アセトンに対する耐性
配合物をガラスプレート上に12μmフィルムとして塗布し、Fusion水銀ランプ(120W/cm2)を用いて10m/分の速度(2経路)で硬化させた。コーティングを23℃で24時間乾燥させた後、コーティングをアセトンに浸した布で擦った。アセトンに対する耐性を、フィルムが支持体から剥がれる、および/または崩壊する時間(秒)として決定した。
【0259】
実施例1:本発明による重合性チオキサントン(CMTX/SR043)の調製
500mlケトルに、アンカー、ディーン・スターク装置、エアスパージおよび温度計を装備した。反応器に、CMTX(74.02g、0.268モル)、SR043(222.14g、0.475モル)、トルエン/n-ヘプタン混合物(80/20重量%)(100g)、トリフェニルホスファイト(1.48g)、メタンスルホン酸(0.5g)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(1.48g)、4-ヒドロキシ-TEMPO(0.06g)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.3g)を充填した。このブレンドを、酸価(未反応CMTXカルボン酸部分に対応する弱酸度)が1.5mg KOH/gに達するまで6時間(120~125℃)還流した。エステル化反応の終了時に、水6mlを除去し、これはカルボン酸部分の完全な変換に相当した。透明な褐色がかった液体395gを回収した。トルエン400gおよびn-ヘプタン100gを添加することによって、密度を0.90g/Lに調整した。有機相を、50℃において、ブライン45g(10重量%NaCl水溶液で5% w/w)で3回洗浄した(撹拌時間5分、デカンテーション時間1時間)。有機相を合わせ(890g)、溶媒を減圧下での蒸留によって除去した(100mBar下、95℃で4時間)。最終生成物275gを得た(理論値296g、収率:93%)。
【0260】
得られた生成物は、以下の特徴を有していた:
態様:透明
25℃での粘度:5.5Pa.s
酸価:1.9mg KOH/g
【0261】
実施例2:本発明による重合性チオキサントン(CMTX/SR444)の調製
重合性チオキサントンの合成手順は前記と同じである。反応器に、CMTX(97.53g、0.353モル)、SR444(297.9g、0.504モル)、トルエン/n-ヘプタン混合物(80/20重量%)(100g)、メタンスルホン酸(2.8g)、4-ヒドロキシ-TEMPO(0.08g)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(1.95g)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.39g)を充填した。エステル化反応の終了時に、水6mlを除去し、これはカルボン酸部分の完全な変換に相当した。透明な褐色がかった液体467gを回収した。トルエン847gおよびn-ヘプタン212gを添加することによって、密度を0.94g/Lに調整した。有機相を、50℃において、ブライン45g(20重量%NaCl水溶液で5% w/w)で3回洗浄した(撹拌時間5分、デカンテーション時間1時間)。有機相を合わせ(1332g)、溶媒を減圧下での蒸留によって除去した(100mBar下、95℃で4時間)。最終生成物338gを得た(理論値395g、収率:85%)。
【0262】
得られた生成物は、以下の特徴を有していた:
態様:透明
25℃での粘度:198Pa.s
酸価:5.5mg KOH/g
【0263】
実施例3:本発明による重合性チオキサントン(CMTX/SR441)の調製
反応器に、CMTX(84.38g、0.306モル)、SR441(258.75g、0.600モル)、トルエン/n-ヘプタン混合物(80/20重量%)(87g)、メタンスルホン酸(2.43g)、4-ヒドロキシ-TEMPO(0.07g)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(1.69g)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.34g)を充填した。エステル化反応の終了時に、水4.4mlを除去し、これはカルボン酸部分の完全な変換に相当した。透明な褐色がかった液体380gを回収した。トルエン550gおよびn-ヘプタン137gを添加することによって、密度を0.94g/Lに調整した。有機相を、50℃において、ブライン45g(20重量%NaCl水溶液で5% w/w)で3回洗浄した(撹拌時間5分、デカンテーション時間1時間)。有機相を合わせ(1045g)、溶媒を減圧下での蒸留によって除去した(100mBar下、95℃で4時間)。最終生成物299.8gを得た(理論値343g、収率:87%)。
【0264】
得られた生成物は、以下の特徴を有していた:
態様:透明
25℃での粘度:73.3Pa.s
酸価:4.6mg KOH/g
【0265】
実施例4:本発明による重合性チオキサントン(CMTX/GPOH)の調製
反応器に、CMTX(94.82g、0.340モル)、GPOH(184.32g、0.620モル)、アクリル酸(90.01g、1.25モル)、トルエン(142g)、メタンスルホン酸(3.7g)、4-ヒドロキシ-TEMPO(0.08g)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(1.86g)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.37g)を充填した。エステル化反応の終了時に、水30mlを除去し、これはカルボン酸部分の完全な変換に相当した。透明な褐色がかった液体496gを回収した。トルエン798gを添加することによって、密度を0.93g/Lに調整した。有機相を、50℃において、ブライン45g(10重量%NaCl水溶液で5% w/w)で3回洗浄した(撹拌時間5分、デカンテーション時間1時間)。有機相を合わせ(1261g)、溶媒を減圧下での蒸留によって除去した(100mBar下、95℃で4時間)。最終生成物327gを得た(理論値340g、収率:96%)。
【0266】
得られた生成物は、以下の特徴を有していた:
態様:透明
25℃での粘度:2.2Pa.s
酸価:3.9mg KOH/g
【0267】
実施例5:本発明による重合性チオキサントン(CMTX/TMP3EO)の調製
反応器に、CMTX(96.44g、0.350モル)、TMP3EO(178.07g、0.630モル)、アクリル酸(91.54g、1.27モル)、トルエン(127g)、メタンスルホン酸(3.81g)、4-ヒドロキシ-TEMPO(0.10g)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(2.56g)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.51g)を充填した。エステル化反応の終了時に、水30mlを除去し、これはカルボン酸部分の完全な変換に相当した。透明な褐色がかった液体487gを回収した。トルエン1018gを添加することによって、密度を0.93g/Lに調整した。有機相を、50℃において、ブライン45g(10重量%NaCl水溶液で5% w/w)で3回洗浄した(撹拌時間5分、デカンテーション時間1時間)。有機相を合わせ(1505g)、溶媒を減圧下での蒸留によって除去した(100mBar下、95℃で4時間)。最終生成物325gを得た(理論値337g、収率:96%)。
【0268】
得られた生成物は、以下の特徴を有していた:
態様:透明
25℃での粘度:2.2Pa.s
酸価:2.5mg KOH/g
【0269】
実施例6:硬化性組成物
以下の表に示される成分(組成物の重量に基づく重量%で示される量)を80℃で混合することによって、組成物F1~F8を得た。組成物F1~F8を用いて得られた硬化フィルムのUV-Hg反応性、UV-LED反応性、Persoz硬度、可撓性およびアセトン耐性も以下の表に示す。
[表2]
【0270】
比較組成物F6、F7およびF8と比較して、本発明による組成物F1は、特にLEDランプ下で十分な可撓性および高い反応性を維持しながら、高い耐化学性および優れた硬度を示す。
[表3]
【0271】
発明組成物F1と比較して、本発明による組成物F2~F5は、LEDランプ下で十分な硬化を依然として維持しながら、優れた硬度と高い可撓性との間の妥協点を微調整することを可能にする。
【国際調査報告】