(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】改善されたゲノム配列検出およびそのためのプローブ分子
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6813 20180101AFI20240126BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240126BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
C12M1/00 A
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543374
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 IB2022050494
(87)【国際公開番号】W WO2022157672
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2022/051242
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518213606
【氏名又は名称】セイフガード バイオシステムズ ホールディングズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Safeguard Biosystems Holdings Ltd.
【住所又は居所原語表記】Quadrant House, Floor 6, 4 Thomas More Square, London E1W 1YW, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー クラップロート
(72)【発明者】
【氏名】ソーニャ ベトナー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029CC01
4B029CC03
4B029DG10
4B029FA01
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX01
(57)【要約】
仮想プローブ、相同ゲノム配列を区別するためのアレイ、相同ゲノム配列を区別するためのシステム、ならびに本開示の方法、アレイおよびシステムにおいて有用なプローブ分子を利用して、試料中に存在し得る相同ゲノム配列を同定する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する同じ属の第2の微生物が、試験試料または試験試料が調製された初期試料中に存在するかどうかを検出する方法であって、
(a)複数のプローブ分子を含む仮想プローブで前記試験試料をプロービングする工程であって、
(i)前記仮想プローブが少なくとも2つのプローブ分子を含み、それぞれが前記第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または前記第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができ、
(ii)前記プローブ分子の少なくとも1つが、前記第1のゲノムに対応する標的核酸および前記第2のゲノムに対応する相同標的核酸にハイブリダイズすることができる計量プローブであり、その結果、前記計量プローブのそのような標的核酸へのハイブリダイゼーションが、前記試験試料中の標的核酸の相対量の尺度を提供することができ、
(iii)前記仮想プローブの前記プローブ分子が、単独で前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸を区別することができず、
(iv)前記プローブ分子が、前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸に等しくハイブリダイズせず、その結果、前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸への前記プローブ分子のハイブリダイゼーションによって、前記第1のゲノムおよび第2のゲノムに対応する前記標的核酸を区別することができる、工程;
(b)前記仮想プローブ中の前記プローブ分子と、もしあれば前記試験試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルを検出および/または定量する工程;および
(c)前記プローブ分子の前記試験試料中の核酸へのハイブリダイゼーションが検出された場合、
(i)前記計量プローブの前記試料中の核酸へのハイブリダイゼーションからの前記シグナルが閾値以上である場合、工程(b)で検出および/または定量された前記シグナルを第1の式に従って分析し、
(ii)前記計量プローブの前記試料中の核酸へのハイブリダイゼーションからの前記シグナルが閾値未満である場合、工程(b)で検出および/または定量された前記シグナルを第2の式に従って分析する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからの前記シグナルが生シグナルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからの前記シグナルが正規化シグナルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記計量プローブが属プローブである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸が第1のアンプリコンセットであり、前記第2のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸が第2のアンプリコンセットであり、前記仮想プローブ中の各プローブ分子が、前記第1のアンプリコンセットおよび/または前記第2のアンプリコンセット中の1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができ、前記プローブ分子が、前記第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび前記第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに同様にハイブリダイズせず、それにより、前記プローブ分子が前記第1のアンプリコンセット中および前記第2のアンプリコンセット中のアンプリコンへハイブリダイズすることで、前記第1のアンプリコンセットと前記第2のアンプリコンセットとを区別することができる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のゲノムおよび前記第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して、前記初期試料に対してPCR増幅反応を行うことによって前記試験試料を調製することをさらに含み、前記第1のゲノムおよび第2のゲノムが前記初期試料中に存在する場合、それぞれ前記第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記仮想プローブの前記プローブ分子が、アレイ上に存在する位置的にアドレサブルなプローブ分子であり、各々前記アレイ上の離散した位置にある請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)が、
(i)PCR増幅産物を前記アレイと接触させること;
(ii)前記アレイからの未結合核酸分子を洗浄すること;および
(iii)前記アレイ上の各プローブ分子位置における標識のシグナル強度を測定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットが、rRNAをコード化する遺伝子に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットが、rRNA遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の微生物が同じ群のメンバーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物の1つ以上がヒト病原体または動物病原体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物が細菌、ウイルス、または真菌である、請求項11~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記微生物が細菌である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列および/または23S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のアンプリコンセットおよび前記第2のアンプリコンセットが、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の式が、(i)1つ以上のブール演算子、(ii)1つ以上の関係演算子、(iii)1つ以上のシグナル比、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせによって、前記プローブ分子の標的核酸へのハイブリダイゼーションからのシグナルを組み合わせる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の式が、(i)1つ以上のブール演算子、(ii)1つ以上の関係演算子、(iii)1つ以上のシグナル比、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせによって、前記プローブ分子の標的核酸へのハイブリダイゼーションからのシグナルを組み合わせる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記仮想プローブが2つのプローブ分子を含むか、またはそれからなる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の微生物がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種(CNS)であり、前記第2の微生物がコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種(CPS)である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の微生物が黄色ブドウ球菌である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記仮想プローブが、CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、請求項20または請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有する前記プローブ分子が計量プローブである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記仮想プローブが、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記仮想プローブが、CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有する第1のプローブ分子と、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有する第2のプローブ分子とを含み、前記第1の式および第2の式が、前記第1のプローブおよび前記第2のプローブからのシグナルをシグナル比で組み合わせる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の式および前記第2の式が各々、前記シグナル比を所定のカットオフ値と比較し、前記第1の式の前記カットオフ値と前記第2の式の前記カットオフ値とが異なる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが前記閾値以上である場合に前記シグナル比が前記第1の式の前記カットオフ値以上である場合、CNSが前記試料中に存在すると決定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが前記閾値未満である場合に前記シグナル比が前記第2の式の前記カットオフ値を超える場合、CNSが前記試料中に存在すると決定することを含む、請求項26または請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが前記閾値以上である場合に前記シグナル比が前記第1の式の前記カットオフ値未満である場合、CPSが前記試料中に存在すると決定することを含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが前記閾値未満である場合に前記シグナル比が前記第2の式の前記カットオフ値以下である場合、CPSが前記試料中に存在すると決定することを含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記初期試料または試験試料が、生物学的試料、環境的試料または食品である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記試料が血液または血液から加工、抽出もしくは分別された試料である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(c)がコンピュータ実装され、工程(c)が、1つ以上のプロセッサによって実行されるための1つ以上のコンピュータ可読命令を記憶するメモリに連結された1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステムにおいて、前記1つ以上のコンピュータ可読命令を実行することを含み、前記1つ以上のコンピュータ可読命令が、(i)前記仮想プローブ中の前記プローブ分子と、もしあれば前記試験試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルデータを受信するため、および(ii)前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからの前記シグナルデータが閾値以上である場合、前記第1の式に従って前記シグナルデータを分析し、前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからの前記シグナルが閾値未満である場合、前記第2の式に従って前記シグナルデータを分析するための命令を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ユーザに通知を提供することをさらに含み、前記通知が、場合により前記試験試料中の前記第1の微生物および/または第2の微生物の有無に関する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
以下を含むアドレサブルアレイ:
(a)第1のゲノム配列を第2の相同ゲノム配列から区別するための1つ以上の仮想プローブであって、各仮想プローブが、位置的にアドレサブルなオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含み、それぞれが前記アレイ上の離散した位置にあり、前記1つ以上の仮想プローブ中の各プローブ分子が、前記第1のゲノム配列または第2のゲノム配列中の15~40個の連続するヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含み、前記オリゴヌクレオチドプローブ分子の1つ以上が計量プローブである、仮想プローブ;および
(b)場合により、1つ以上の制御プローブ分子。
【請求項36】
第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する同じ属の第2の微生物が、試験試料または前記試験試料が由来する初期試料中に存在するかどうかを検出する方法であって、
(a)2つ以上のプローブ分子を含む仮想プローブを含む、請求項35に記載のアレイで前記試験試料をプロービングする工程であって、
(i)各プローブ分子が、前記第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または前記第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができ、
(ii)前記仮想プローブの前記プローブ分子の少なくとも1つが、前記第1のゲノムに対応する標的核酸および前記第2のゲノムに対応する相同標的核酸にハイブリダイズすることができる計量プローブであり、その結果、前記計量プローブのそのような標的核酸へのハイブリダイゼーションが、前記試験試料中の標的核酸の相対量の尺度を提供することができ、
(iii)前記仮想プローブの前記プローブ分子が、単独で前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸を区別することができず、
(iv)前記プローブ分子が、前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸に等しくハイブリダイズせず、その結果、前記第1および第2のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸への前記プローブ分子のハイブリダイゼーションによって、前記第1および第2のゲノムに対応する前記標的核酸を区別することができる、工程;
(b)未結合核酸分子を前記アレイから洗浄する工程
(c)前記アレイ上の各プローブ分子位置において前記シグナルを検出および/または定量する工程;および
(d)前記シグナルが、
(i)前記アレイの前記プローブ分子にハイブリダイズする標的核酸が前記試験試料中に存在することを示す場合、前記シグナルを分析して、前記試料中に前記第1のゲノムに対応する標的核酸または前記第2のゲノムに対応する標的核酸が存在するかどうかを判定し、それにより前記初期試料または前記試験試料中に前記第1の生物または第2の生物が存在するかどうかを判定し、
(ii)前記仮想プローブの前記プローブ分子にハイブリダイズする標的産物が工程(a)で作製されていないことを示す場合、その初期試料または試験試料が前記第1の生物または前記第2の生物を含んでいないと判定する工程、を含む方法。
【請求項37】
工程(d)(i)の分析が、(i)工程(c)で検出および/または定量された前記シグナルを、前記計量プローブからの前記シグナルが閾値以上である場合、第1の式に従って分析し、(ii)工程(c)で検出および/または定量された前記シグナルを、前記計量プローブからの前記シグナルが前記閾値未満である場合、第2の式に従って分析することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸が第1のアンプリコンセットであり、前記第2のゲノムに対応する前記1つ以上の標的核酸が第2のアンプリコンセットであり、前記仮想プローブ中の各プローブ分子が、前記第1のアンプリコンセットおよび/または前記第2のアンプリコンセット中の1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができ、前記プローブ分子が、前記第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび前記第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに同様にハイブリダイズせず、それにより、前記プローブ分子が前記第1のアンプリコンセット中および前記第2のアンプリコンセット中のアンプリコンへハイブリダイズすることで、前記第1のアンプリコンセットと前記第2のアンプリコンセットとを区別することができる、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のゲノムおよび前記第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して、前記初期試料に対してPCR増幅反応を行うことによって前記試験試料を調製することをさらに含み、前記第1のゲノムおよび第2のゲノムが前記試料中に存在する場合、それぞれ前記第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットもたらす、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程(d)がコンピュータ実装され、工程(d)が、1つ以上のプロセッサによって実行されるための1つ以上のコンピュータ可読命令を記憶するメモリに連結された1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステムにおいて、前記1つ以上のコンピュータ可読命令を実行することを含み、前記1つ以上のコンピュータ可読命令が、(i)前記仮想プローブ中の前記プローブ分子と、もしあれば前記試験試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルデータを受信するため、および(ii)前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからの前記シグナルデータが閾値以上である場合、前記第1の式に従って前記シグナルデータを分析し、前記計量プローブと前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからの前記シグナルが閾値未満である場合、前記第2の式に従って前記シグナルデータを分析するための命令を含む、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
ユーザに通知を提供することをさらに含み、前記通知が、場合により前記試験試料中の前記第1の微生物および/または第2の微生物の有無に関する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
システムであって、
(a)請求項35に記載のアレイの各プローブ分子位置についてのシグナルデータを生成するための光学リーダと;
(b)1つ以上のプロセッサとを含み、
(i)前記プロセッサの少なくとも1つが、前記光学リーダからシグナルデータを受信するように構成され、
(ii)前記プロセッサの少なくとも1つが、存在する場合、試験試料中の核酸分子への前記仮想プローブ中の前記プローブ分子のハイブリダイゼーションの後に生成される、前記1つ以上の仮想プローブについてのシグナルデータを分析するように構成され、場合により、分析は、前記試験試料が前記第1のゲノム配列および/または前記第2のゲノム配列を含むかどうかを決定することを含み、
(iii)前記プロセッサの少なくとも1つが、前記分析の結果を出力するための記憶もしくは表示装置へのインターフェースまたはネットワークを有する、システム。
【請求項43】
前記アレイ上の蛍光標識された分子を励起することができる光源を含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
PCR増幅反応の前記産物を前記アレイに添加することができ、未結合核酸分子を前記アレイから洗浄することができるプレートハンドリングロボットをさらに含む、請求項42または請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する同じ属の第2の微生物が初期試料中に存在するかどうかを検出するための試験試料を調製する方法であって、
(a)前記第1のゲノムおよび前記第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して前記初期試料に対してPCR増幅反応を行い、前記第1のゲノムおよび第2のゲノムが前記初期試料中に存在する場合、それぞれ第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットをもたらす工程;
(b)計量プローブを含む、前記第1の微生物の第1のゲノム配列を前記第2の微生物の第2の相同ゲノム配列から区別するための仮想プローブを含む請求項35に記載のアレイと、工程(a)のPCR増幅産物とを接触させる工程;および
(c)前記アレイから未結合核酸分子を洗浄する工程を含む、方法。
【請求項46】
(f)前記アレイ上の各プローブ分子位置における前記シグナルを検出および/または定量する工程;および
(g)前記試験試料中の核酸への前記プローブ分子のハイブリダイゼーションが検出される場合、
(i)工程(d)で検出および/または定量された前記シグナルを、前記計量プローブからの前記シグナルが閾値以上である場合、第1の式に従って分析し、
(ii)工程(d)で検出および/または定量された前記シグナルを、前記計量プローブからの前記シグナルが閾値未満である場合、第2の式に従って分析する工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月20日に出願された米国仮出願第63/139,643号の優先権利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
2.配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年1月18日に作成されたASCIIコピーは、SGB-009WO_ST25と名付けられ、サイズが1,550バイトである。
【背景技術】
【0003】
3.背景技術
感染性病原体の同定は、個体の適切な診断および治療過程を決定する上で重要であることが多い。感染病原体を誤認すると、不適切または無効な治療過程につながり得る。配列決定技術の改善は、いくつかの疾患原因細菌のゲノムの配列の部分的または全体的な決定に役立ってきた。密接に関連する細菌種は、非常に高度の配列同一性を共有するゲノム配列を含むことが多い。密接に関連する種を区別するには、2つ以上の相同ゲノム配列間の差異を検出する高感度で正確な方法が必要である。単一のオリゴヌクレオチドプローブ分子を使用して相同ゲノム配列を区別することは、不可能ではないにしても、場合によっては非現実的であり得る。
【0004】
したがって、密接に関連する微生物の種を正確に区別するための新しい方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
4.発明の概要
本開示は、ゲノム配列を同定する、および/または試料中に存在し得る相同ゲノム配列を区別する改善された方法を提供する。方法は、単独ではできないが、集合して密接に関連した微生物の種から相同ゲノム配列を区別することができ、試料中に存在する可能性が高いゲノム配列を同定することもできるプローブ分子の組み合わせを利用する。プローブ分子のこのような組み合わせは、便宜上、本明細書では「仮想プローブ」と呼ばれる。
【0006】
仮想プローブは、複数(例えば、2、3、または4つ以上)の個々のプローブ分子を含むことができる。ゲノムDNA(またはゲノムDNAから増幅されたPCR産物)と個々のプローブ分子とのハイブリダイゼーションは、配列決定しないと、特に関連種の保存された配列を標的とするユニバーサルプライマーを使用してゲノムDNAを増幅する場合、同じ試料中に存在し得る遺伝的に関連した種の相同ゲノムDNAからゲノムDNAを区別するのに不十分であり得る。しかしながら、ゲノムDNAまたは対応するPCRアンプリコンが2つ以上のプローブ分子を含む仮想プローブでプロービングされる場合、仮想プローブに対するハイブリダイゼーションパターンの差異が、2つの関連種またはそこから増幅された相同アンプリコンからゲノムDNAを識別することができる。
【0007】
したがって、複数のプローブ分子(例えば、識別可能なシグナルを有するプローブ分子)を含むことにより、本開示の仮想プローブは、組み合わせでゲノム配列を相同ゲノム配列(またはそれから調製されたアンプリコン)から区別し、生物学的試料中に存在する微生物種を識別することができる。例えば、本開示の方法によれば、2つまたは3つのオリゴヌクレオチドプローブ分子の組み合わせは、関連する種、例えばコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種(例えば、S.ホミニス)およびコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種(例えば、黄色ブドウ球菌)からのアンプリコンを区別する仮想プローブを組み合わせて形成することができる。したがって、例えばPCR反応において試料が鋳型DNAの供給源として使用される場合、任意の得られるPCR産物の仮想プローブへのハイブリダイゼーションにより、2つの種のうちのどれが試料中に存在するかを決定することができる。
【0008】
本明細書に開示される仮想プローブを使用して相同ゲノム配列を識別する方法は、細菌16S rRNA遺伝子由来の配列を使用して設計された種特異的オリゴヌクレオチドプローブ分子が、異なる種間で交差反応性を示すことを実現させてから開発された。ゲノムのこの領域の配列間の変動が少ないため、種特異的プローブ分子を設計することができなかった。しかしながら、それにもかかわらず、単独では異なる種を区別することができない、複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を組み合わせる仮想プローブへのハイブリダイゼーションからのシグナルを分析することによって、異なる種を区別することができることが発見された。
【0009】
さらに、プローブからのシグナルが試料中の相同ゲノム配列の相対量の尺度を提供することができるように、複数の密接に関連する種(例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種およびコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種)からの相同ゲノム配列にハイブリダイズすることができるプローブを仮想プローブに含めることによって、仮想プローブを使用する場合の微生物同定の精度が改善され得ることが発見された。そのようなプローブは、便宜上、本明細書では「計量プローブ」と呼ばれる。計量プローブに対するシグナルが閾値以上である場合、例えば、第1の式を使用して仮想プローブのプローブに対するハイブリダイゼーションシグナルを分析することができ、計量プローブに対するシグナルが閾値未満である場合、第2の式を使用することができる。すべての試料に対して単一の式ではなく、相対的な試料濃度を説明する、微生物同定のための種々の式を使用することによって微生物同定の精度を向上させることができる。
【0010】
計量プローブは、仮想プローブの他の1つ以上のプローブ分子より先に飽和に達するプローブ分子を有する仮想プローブを使用する場合、微生物同定の精度を向上させるのに特に有用であり得る。仮想プローブの1つのプローブ分子が他の1つ以上のプローブ分子より先に飽和に達すると、試料をプロービングするときに得られるシグナルパターンは、試料中の標的配列の濃度に応じて変化し得る。試験試料中の標的配列の相対量が分かっていると、試験試料について得られたシグナルパターンは、標的配列の相対濃度に特異的な式を使用して分析することがでる。例えば、ハイブリダイゼーションパターンは、相対濃度が高い場合(例えば、計量プローブのシグナルが閾値を超える場合)、第1の式を使用して分析することができ、相対濃度が低い場合(例えば、計量プローブのシグナルが閾値未満である場合)、第2の式を使用して分析することができる。実施例6は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種またはコアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌を含有する試料を同定する精度を高めるための計量プローブの使用を例示する。計量プローブによって提供される微生物同定の向上した精度は、計量プローブを利用しない既存の微生物検出方法を上回る著しい改善を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
いくつかの態様では、本開示は、第1の微生物(または対応する第1のゲノム)および/または第2の微生物(または対応する第2のゲノム)が試料中に存在するかどうかを検出する方法を提供する。特定の実施形態では、試料は血液試料である。血液試料からの検出を可能にすることによって、本開示の方法は、調製に余計な時間および費用を必要とする臨床分離物の使用を必要とする検出方法よりも大幅に改善される。
【0012】
本開示の方法は、試料を第1の生物および第2の生物について仮想プローブを用いてプロービングして、第1のゲノムまたは第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸の有無を決定することを含み得る。標的核酸は、例えば、PCRなどのDNA増幅反応で生成されるゲノムフラグメントまたはアンプリコンであり得る。仮想プローブは、2つ以上のプローブ分子を含み、その各々は、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができる。プローブ分子は、第1および第2のゲノムに対応する標的核酸に同様にハイブリダイズしないので、仮想プローブは、第1のゲノムに対応する標的核酸と第2のゲノムに対応する標的核酸とを区別することができる。仮想プローブは、好ましくは計量プローブを含む。
【0013】
例示的な方法は、以下の工程を含む:
(a)試料において、第1および第2のゲノムにハイブリダイズし(試料中に存在する場合)、そこからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーの1つ以上の対を使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応を実施する工程。各プライマーセットは、試料中に存在し得る各生物に好ましくは固有のアンプリコンセットを生じさせる。したがって、増幅は、第1のゲノムが存在する場合には第1のアンプリコンセットをもたらし、第2のゲノムが試料中に存在する場合には第2の異なるアンプリコンセットをもたらす。単一のPCRプライマー対のみを使用する場合、各アンプリコンセットは単一のアンプリコンのみを含み、複数のPCRプライマー対を使用する場合、アンプリコンセットは2つ以上のアンプリコン(例えば、複数の単一アンプリコン)を含み得る。
(b)工程(a)に続いて、得られたPCR増幅産物を仮想プローブでプロービングして、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットの有無を判定する。仮想プローブは、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットに別個の様式で特異的にハイブリダイズすることができる2つ以上のプローブ分子(例えば、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子)を含むので、仮想プローブは、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。各仮想プローブ内のプローブ分子は、異なる標識(例えば、蛍光標識、例えば、異なる蛍光標識で標識された分子ビーコン)を有すること、またはアレイ上の分散した位置に配置されることによって区別され得る。
【0014】
したがって、PCR反応のPCR増幅産物の仮想プローブへのハイブリダイゼーションは、第1のゲノムと第2のゲノムとを区別することができ、それによって試料中の第1および/または第2の生物の存在を同定することができる。本明細書で使用される場合、試料中の生物の存在への言及は、試料が生きている生物を有することではなく、検出される、またはPCR反応などの増幅反応のための鋳型としての役割を果たすのに十分な、生物由来のゲノムDNAが試料中に存在することを意味するだけである。同様に、試料中のゲノムの存在への言及は、試料がインタクトなゲノムを有することではなく、検出される、またはPCR反応などの増幅反応のための鋳型としての役割を果たすのに十分な、ゲノム由来のDNAが試料中に存在することを意味するだけである。
【0015】
第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットは、例えば単一のプライマーセットがPCR増幅反応で使用される場合、それぞれ1つのアンプリコン(それぞれ「第1のアンプリコン」および「第2のアンプリコン」と呼ばれる)を含むことができる。あるいは、第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセットは、例えばPCR増幅反応において複数セットのプライマーが使用される場合、複数のアンプリコン(第1のアンプリコンセットの各アンプリコンは「第1のアンプリコン」と呼ばれ、第2のアンプリコンセットの各アンプリコンは「第2のアンプリコン」と呼ばれる)を含み得る。相同アンプリコンを相同ゲノム配列から区別するためのさらなる例示的な方法は、下記のセクション6.2ならびに番号付けされた実施形態1~98、142~147および151に記載されている。
【0016】
本開示はさらに、相同ゲノム配列を区別するためのアレイ、相同ゲノム配列を区別するためのシステム、ならびに、例えば本開示の方法、アレイおよびシステムにおいて有用なオリゴヌクレオチドプローブ分子を提供する。
【0017】
一態様において、本開示は、第1のゲノムからの第1のゲノム配列と、第2のゲノムからの第2の相同ゲノム配列とを区別するためのアドレサブルアレイを提供する。本開示のアドレサブルアレイは、例えば、本明細書に記載の方法で使用することができる。本開示のアドレサブルアレイは、位置的にアドレサブルなオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含むことができ、各々はアレイ上の分散した位置にあり、オリゴヌクレオチドプローブ分子の群中の各プローブ分子は、第1のゲノム配列または第2のゲノム配列中の15~40の連続ヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含む。アドレサブルアレイは、典型的には、1つ以上の計量プローブを含み、場合により1つ以上の制御プローブ分子をさらに含んでもよい。
【0018】
本開示の例示的なアドレサブルアレイは、以下のセクション6.3、ならびに番号付けされた実施形態99~141および173~175に記載されている。
【0019】
いくつかの態様では、本開示の方法の1つ以上の工程は、コンピュータ実装される。例示的なコンピュータ実装方法は、以下のセクション6.4、ならびに番号付けされた実施形態97、98、146、および147に記載されている。
【0020】
別の態様において、本開示は、第1のゲノム配列と第2の相同ゲノム配列とを(試料中に存在する場合)区別するためのシステムを提供する。例示的なシステムは、以下を含み得る:
(a)本開示のアレイの各プローブ分子位置についてのシグナルデータを生成するための光学リーダ;および
(b)少なくとも1つのプロセッサであって、
(i)光学リーダからシグナルデータを受信するように構成され、
(ii)1つ以上の仮想プローブ(例えば、本明細書に記載の特徴を有する仮想プローブ)についてのシグナルデータを分析するように構成され、
(iii)分析の結果を出力するための記憶もしくは表示装置またはネットワークへのインターフェースを有するプロセッサ。
【0021】
例示的なシステムは、以下のセクション6.5、ならびに番号付けされた実施形態148~150に記載されている。
【0022】
別の態様では、本開示は、仮想プローブでの使用に適した例示的なオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびそのようなオリゴヌクレオチドプローブ分子を2つ以上含むキットを提供する。本開示のオリゴヌクレオチドプローブ分子は、本開示のアドレサブルアレイに含めることができ、かつ/または本開示の方法で使用することができる。例示的なオリゴヌクレオチドプローブ分子および仮想プローブは、以下のセクション6.2.4および番号付けされた実施形態156~172に記載されている。例示的なキットは、以下のセクション6.6および番号付けされた実施形態176~187に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
5.図面の簡単な説明
【
図1A】
図1Aは、GenBankから入手したいくつかのブドウ球菌種の16S rRNA遺伝子から調製したデンドログラムである(
図1Aと
図1Bとの間で分割)。データの信頼性を示すために、ブートストラップ解析を備えたCLCシーケンスビューアソフトウェアを使用してツリーを構築した。ブドウ球菌群の各種は、Gen Bankアクセッション番号によって示される2つの配列で表される。ツリーの各ノードのブートストラップ値(整数)は、複製全体のデータの信頼性のパーセンテージを定義する。ブートストラップ値が高いほど、各分類群のデータがより支持される。それぞれの種の横線は分枝と呼ばれ、その種における遺伝的変化の量を表す。分枝長の単位は、配列の長さで割った、変化または置換の数として示される。
【
図1B】
図1Bは、GenBankから入手したいくつかのブドウ球菌種の16S rRNA遺伝子から調製したデンドログラムである(
図1Aと
図1Bとの間で分割)。データの信頼性を示すために、ブートストラップ解析を備えたCLCシーケンスビューアソフトウェアを使用してツリーを構築した。ブドウ球菌群の各種は、Gen Bankアクセッション番号によって示される2つの配列で表される。ツリーの各ノードのブートストラップ値(整数)は、複製全体のデータの信頼性のパーセンテージを定義する。ブートストラップ値が高いほど、各分類群のデータがより支持される。それぞれの種の横線は分枝と呼ばれ、その種における遺伝的変化の量を表す。分枝長の単位は、配列の長さで割った、変化または置換の数として示される。
【
図2A】
図2Aは、16s rRNAおよび16s~23s rRNAゲノム配列の多重アラインメントから作成された、Streptococcus viridians群由来の種のデンドログラムを表す(
図2Aと
図2Bとの間で分割)。I-ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)群、II-ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)群、III-ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)群、IV-ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)群、およびV-ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)群。数字はブートストラップ値を表し、それはデータセットにおける信頼性のパーセンテージを示す。アラインメントパターンおよびそれらの病原的重要性に応じて、種は3つの群、I、IIおよびIIIとして扱われる。
【
図2B】
図2Bは、16s rRNAおよび16s~23s rRNAゲノム配列の多重アラインメントから作成された、Streptococcus viridians群由来の種のデンドログラムを表す(
図2Aと
図2Bとの間で分割)。I-ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)群、II-ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)群、III-ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)群、IV-ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)群、およびV-ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)群。数字はブートストラップ値を表し、それはデータセットにおける信頼性のパーセンテージを示す。アラインメントパターンおよびそれらの病原的重要性に応じて、種は3つの群、I、IIおよびIIIとして扱われる。
【
図3】
図3は、16S rRNAおよび16S-23S rRNA ITSゲノム配列、ならびに16Sフォワード(16S Fw)、16Sリバース(16S Rv)、ITSフォワード(ITS Fw)およびITSリバース(ITS Rv)プライマーの図である。
【
図4】
図4は、非伸長プライマー(対称PCRプロセスで使用される伝統的なプライマーであり得る)、ならびに標的核酸に相補的な「A」領域、「A」領域の少なくとも一部の定方向反復または逆方向反復を含む「B」領域、および任意選択で、スペーサー配列および/または全部の制限エンドヌクレアーゼ認識部位の一部を含み得る任意の「C」領域から構成される伸長プライマーを含む、セクション6.2.3.4に記載の非対称PCR法に有用なプライマー対を示す。
【
図5A】
図5Aは、「B」領域が「A」領域の少なくとも一部の逆方向反復を含む場合に生じる伸長プライマーの分子間ハイブリダイゼーションを示す。好ましくは、「A」領域と「B」領域との間の相補性の領域は、「A」領域の5’末端またはその近傍である。
【
図5B】
図5Bは、「B」領域が「A」領域の少なくとも一部の定方向反復を含む場合に生じる伸長プライマーの分子間ハイブリダイゼーションを示す。好ましくは、「A」領域と「B」領域との間の相補性の領域は、「A」領域の5’末端またはその近傍である。
【
図5C】
図5Cは、「B」領域が「A」領域の少なくとも一部の逆方向反復を含む場合に生じる伸長プライマーの分子内ハイブリダイゼーションを示す。好ましくは、「A」領域と「B」領域との間の相補性の領域は、「A」領域の5’末端またはその近傍である。
【
図6】
図6は、セクション6.2.3.4に記載されている非対称PCR反応における変性工程を示す。変性工程では、PCR反応混合物(典型的には、標的核酸を含有するか、または含有するリスクがある生物学的試料、非対称プライマー対、熱安定性DNAポリメラーゼおよびPCR試薬を含有する)を標的核酸の融点より高温に加熱し、非対称プライマー対中の標的核酸(存在する場合)および伸長プライマーを変性させて一本鎖を形成させる。
【
図7】
図7は、非伸長プライマーの融解温度未満で起こる、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応の指数関数的位相のアニーリング工程を示す。非対称プライマー対中の非伸長プライマーおよび伸長プライマーの両方が、それぞれの相補鎖にハイブリダイズする。
図7は、PCRの最初のサイクルで起こるような標的DNAへのアニーリング(ハイブリダイゼーションまたは結合とも呼ばれる)を示すが、その後のサイクルでは、プライマーとPCR産物中の相補配列との間でアニーリングが起こりやすい。伸長プライマーにおける「B」領域および任意の「C」領域によって、PCR産物は、
図8Bおよび
図9に示されるように、それらの配列またはそれらの相補体を有するであろう。
【
図8A】
図8Aは、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応の指数関数的位相の伸長工程を示し、この間に、熱安定性DNAポリメラーゼが相補的DNAを鋳型として使用してプライマーDNAを伸長する。伸長領域は破線で示されている。
図8Aの鋳型は標的DNAの鎖である。
【
図8B】
図8Bは、セクション6.2.3.4に記載される非対称PCR反応の指数関数的位相の伸長工程を示し、この間に、熱安定性DNAポリメラーゼが相補的DNAを鋳型として使用してプライマーDNAを伸長する。伸長領域は破線で示されている。
図8Bの鋳型は、非対称プライマー対および標的DNAを用いて作製されたPCR産物の鎖である。
【
図9】
図9は、セクション6.2.3.4に記載される、PCR産物鎖2を鋳型として使用する、非対称PCR反応の線形位相の同時アニーリングおよび伸長工程を示し、これは、非伸長プライマーの融解温度より高く、かつ伸長プライマーの融解温度より低い場合に起こる。これにより、PCR産物鎖2の非対称増幅が起こり、PCR反応の終了までに、PCR産物鎖1分子に対して過剰なPCR産物鎖2分子が生じる。
【
図10A】
図10Aは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)のための仮想プローブにおいて2つのプローブ分子がどのように使用され得るかを示す。PCR増幅産物のハイブリダイゼーションからの2つのプローブ分子へのシグナルを、ブール演算子を使用して組み合わせて、CNSが試料中に存在するかどうかを決定することができる。
【
図10B】
図10Bは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)のための仮想プローブにおいて3つのプローブ分子がどのように使用され得るかを示す。PCR増幅産物のハイブリダイゼーションからの3つのプローブ分子へのシグナルを、ブール演算子を使用して組み合わせて、CNSが試料中に存在するかどうかを決定することができる。
【
図11A】
図11Aは、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)由来の16S rRNAアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナルを示す。
【
図11B】
図11Bは、肺炎レンサ球菌由来の16S rRNAアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナルを示す。
【
図12】肺炎レンサ球菌、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)およびストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)由来のPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す。
【
図13】サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)および大腸菌由来のPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す。
【
図14】クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)およびクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)由来のPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す。
【
図15】エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・アスブリア(Enterobacter asburiae)、およびエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)由来のPCRアンプリコンに結合した場合の様々なオリゴヌクレオチドプローブ分子のシグナル強度を示す。
【
図16A】
図16Aは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(S.hominis)およびコアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌の濃度(CFU/ml)を増加させた場合のAllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比(Y軸)を示す。
図16Aは、直線Y軸にプロットされた比率を示す。
【
図16B】
図16Bは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(S.hominis)およびコアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌の濃度(CFU/ml)を増加させた場合のAllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比(Y軸)を示す。
図16Bは、対数Y軸にプロットされた比率を示す。
【
図17】コアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌を含有する試料についてのAllStaph-146abpシグナル比(X軸)およびAllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比(Y軸)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
6.発明を実施するための形態
6.1.定義
アンプリコン:アンプリコンは、PCR増幅反応によって生成される核酸分子である。
【0025】
非対称プライマー対:伸長プライマーと非伸長プライマーからなるプライマー対。
【0026】
対応する:配列同一性または相補性を共有する異なる長さの2つの核酸鎖に関して、「対応する」という用語は、文脈が指示するように、両方の鎖に存在する配列共通部分の領域または相補性を指す。
【0027】
定方向反復:伸長プライマーの「B」領域の文脈において、「定方向反復」は、「A」領域の一部の定方向補足体である(すなわち、同じ5’から3’の順序の相補配列を有する)ヌクレオチド配列を意味する。
【0028】
伸長プライマー:PCRプライマーであり、(a)その3’末端における、対応する領域の標的鎖1と少なくとも75%の配列同一性または標的鎖2中の対応する領域と少なくとも75%の配列相補性を有する「A」領域;(b)その5’末端における、「A」領域の少なくとも一部に相補的な配列を含む「B」領域;および場合により(c)「A」領域と「B」領域との間に配置された「C」領域を含有する。
【0029】
相同ゲノム配列:相同ゲノム配列は、祖先を共有するがヌクレオチド配列が同一ではない異なる種または株に見られるゲノム配列である。例示的な相同ゲノム配列には、16S rRNA遺伝子、23S rRNA遺伝子、および16S-23S内部転写スペーサー領域(ITS)配列が含まれる。
【0030】
逆方向反復:伸長プライマーの「B」領域の文脈において、「逆方向反復」は、「A」領域の一部の逆相補体である(すなわち、反対側の5’から3’の順序の相補配列を有する)ヌクレオチド配列を意味する。
【0031】
融解温度(Tm):DNA二重鎖の半分が解離して一本鎖になる温度。デオキシリボヌクレオチド(DNA)で構成される直鎖プライマーのTmは、一般に「パーセントGC」法(PCR PROTOCOLS、a Guide to Methods and Applications,Innis et al.eds.,Academic Press(San Diego,Calif.(USA)1990)または「2(A+T)プラス4(G+C)」法(Wallace et al.,1979,Nucleic Acids Res.6(11):3543-3557)または「最近傍」法(Santa Lucia,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:1460-1465;Allawi and Santa Lucia,1997,Biochem.36:10581-10594)によって計算されている。特許請求の範囲のために、DNAのTmは「最近傍」法に従って計算され、天然に存在しない塩基(例えば、2-デオキシイノシン)はアデニンとして扱われる。
【0032】
PCR産物鎖1:PCR産物鎖1は、標的核酸、および非対称プライマー対の非伸長プライマーに相補的な非対称プライマー対から生成された二本鎖PCR産物中の鎖を指す。
【0033】
PCR産物鎖2:PCR産物鎖1は、標的核酸、および非対称プライマー対の伸長プライマーに相補的な非対称プライマー対から生成された二本鎖PCR産物中の鎖を指す。
【0034】
PCR試薬:文脈が特に指示しない限り、「PCR試薬」という用語は、鋳型核酸、熱安定性ポリメラーゼおよびプライマー以外のPCR反応の成分を指す。PCR試薬は、典型的には、dNTP(非標識dNTPに加えて、標識、例えば蛍光標識dNTPを含み得る)、緩衝液、および二価カチオンを含有する塩(例えば、MgCl2)を含む。
【0035】
プライマー:3’末端に遊離ヒドロキシル基を有する少なくとも12ヌクレオチドのDNAオリゴヌクレオチド。プライマーは、天然および非天然ヌクレオチド(例えば、ユニバーサル塩基を含有するヌクレオチド、例えば3-ニトロピロール、5-ニトロインドールまたは2-デオキシイノシン、好ましくは2-デオキシイノシン)を含むことができる。文脈がそうでないことを指示しない限り、用語「プライマー」はまた、プライマー分子の混合物を指し、それは混合塩基をプライマー設計および構築に含めて、それらを標的核酸分子中のバリアント配列にハイブリダイズさせると生成される。標的配列バリアントは、種間または種内バリアントであり得る。混合塩基の標準的な命名法を表1に示す:
【表1】
好ましくは、各プライマーは、標的核酸に対する相補性の領域に3つ以下の混合塩基を含む。いくつかの実施形態において、プライマーは、標的核酸に対する相補性の領域において、0、1、2または3個の混合塩基を含む。
【0036】
プライマー対:フォワードおよびリバースプライマー対(それぞれが、標的配列の可能な変異を説明する配列変異を含むプライマーの混合物であり得る)であり、5,000塩基対未満の領域内の同じ核酸分子の異なる鎖とハイブリダイズし、そこからDNA重合反応を開始することができる。特定の実施形態では、プライマー対は、2,500塩基対未満または1,500塩基対未満の領域内の同じ核酸分子の異なる鎖とハイブリダイズし、そこからDNA重合反応を開始することすることができる。
【0037】
試料:本明細書で使用される「試料」という用語は、目的の核酸、例えばゲノム、ゲノムフラグメント、ゲノムの領域に対応するアンプリコン、または別の標的核酸を含むかまたは含むと疑われる任意の試料を指す。試料は、1つ以上のプロセスに供することができ、それでも「試料」と見なすことができる。例えば、PCR増幅反応に供された試料は、PCR増幅反応後も「試料」のままである。
【0038】
単一アンプリコン:本明細書で使用される「単一アンプリコン」という用語は、単一のプライマー対を有する単一の生物からPCR増幅反応によって作製される核酸分子または核酸分子の群を指す。典型的には、「単一アンプリコン」は、固有の配列を有するPCR産物を指すが、例えば生物が増幅される配列についてヘテロ接合性である場合、固有配列の群、例えば対を有するPCR産物を指すこともできる。
【0039】
特異的:アンプリコンへのプローブ分子の結合に関して本明細書で使用される「特異的」という用語は、プローブ分子がその標的アンプリコンに対して他の非相同アンプリコンよりも大きい親和性、典型的にははるかに大きい親和性を有することを意味するが、プローブ分子がその標的に絶対的に特異的であることを必要としない。したがって、プローブ分子は、例えば、第1のゲノム配列を含むアンプリコン、および1つ以上のヌクレオチドが第1のゲノム配列とは異なる第2の相同ゲノム配列を含むアンプリコンにハイブリダイズすることができる。
【0040】
標的鎖1:標的鎖1は、非対称プライマー対の非伸長プライマーが相補的である、二本鎖標的核酸中の鎖を指す。
【0041】
標的鎖2:標的鎖2は、非対称プライマー対の伸長プライマーの「A」領域が相補的である、二本鎖標的核酸中の鎖を指す。
【0042】
非伸長プライマー:PCRプライマーであって、標的鎖2の対応する領域に対して少なくとも75%の配列同一性、または標的鎖1の対応する領域に対して少なくとも75%の配列相補性を有するヌクレオチド配列から本質的になる。非伸長プライマーに関して「から本質的になる」という用語は、ヌクレオチド配列が、標的配列に(少なくとも75%)相補性な領域に対して3個以下のさらなるヌクレオチド5’を含み得ることを意味する。
【0043】
6.2.仮想プローブを用いた相同ゲノム配列を区別する方法
本開示は、第1の生物からの第1のゲノム配列と、第2の生物からの第2の相同ゲノム配列とを区別するための方法を提供する。方法は、仮想プローブを使用して試料中に存在する生物の同定を可能にする。ゲノム配列のための仮想プローブは、一般に、例えば、アドレサブルアレイ上のそれらの離散した位置によって、または例えば、異なる蛍光部分による示差的標識によって区別され得る2つ以上のプローブ分子を含む。便宜上、仮想プローブ内の個々のプローブ分子からの読み出しは、本明細書では「シグナル」と呼ばれることがある。明確性のために、プローブ分子を標識して「シグナル」を生成する必要はない。例えば、蛍光標識されたアンプリコンへのハイブリダイゼーションが無いと、「シグナル」を構成することができる。
【0044】
ゲノム配列のための各仮想プローブは、ゲノム配列に対応する標的核酸(例えば、アンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることができる(仮想プローブを構成する複数のプローブ分子のうちの)少なくとも1つのプローブ分子を含む。いくつかの例では、仮想プローブ中の2つ以上のプローブ分子は、ゲノム配列に対応する標的核酸(例えば、アンプリコン)にハイブリダイズすることができる。関連するゲノム配列からの異なる標的核酸(例えば、アンプリコン)に対する仮想プローブ中のプローブ分子のハイブリダイゼーションパターンは、標的核酸を関連するゲノム配列から区別するための、例えば第1のゲノムからの第1のアンプリコンセットと、相同ゲノム配列を有する第2のゲノムからの第2のアンプリコンセットとを区別するための十分な相違がある。方法を使用して、例えば、プロービングされるアンプリコンが増幅された試料中に細菌の特定の種または株が存在するかを、直接的に(例えば、試料がPCRに直接利用される場合)または間接的に(例えば中間精製または濃縮工程、例えば、セクション6.2.1に記載のビーズビーティング法を介して)決定することができる。本明細書に開示される様々な実施形態は、仮想プローブを用いて、PCR反応などのDNA増幅反応の産物のプロービングを記載する。しかしながら、プロービングは、代わりとして非増幅ゲノムDNAを検出することができる方法を使用して行うことができることを理解されたい。非増幅ゲノムDNAを検出するための例示的な方法は、Detection of Non-Amplified Genomic DNA,2012,Spoto and Corradini(eds)doi.org/10.1007/978-94-007-1226-3に記載されており、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。そのような方法には、光学的検出方法(例えば、Detection of Non-Amplified Genomic DNAのpp.153-183、Li and Fan,2012、「Optical Detection of Non-amplified Genomic DNA」を参照)、電気化学的検出方法(例えば、Detection of Non-Amplified Genomic DNAのpp.185-201、Marin and Merkoci,2012,「Electrochemical Detection of DNA Using Nanomaterials Based Sensors」を参照)、圧電感知方法(例えば、Detection of Non-Amplified Genomic DNAのpp.203-233、Minunni、2012、「Piezoelectric Sensing for Sensitive Detection of DNA」を参照)、表面プラズモン共鳴ベースの方法(例えば、Detection of Non-Amplified Genomic DNAのpp.235-261、D’Agata and Spoto、2012、「Surface Plasmon Resonance-Based Methods」を参照)、ならびに並列光学および電気化学的方法(例えば、Detection of Non-Amplified Genomic DNAのpp.263-278、Knoll et al.,2012,「Parallel Optical and Electrochemical DNA Detection」を参照)が含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、試料のプロービングは、DNA増幅工程無しで行われる(例えば、試料が、ゲノムフラグメントである標的核酸を含有するか、または含有すると疑われる場合)。
【0045】
試料中に第1の生物由来の第1のゲノムまたは第2の生物由来の第2のゲノムのいずれかが存在する場合、それらの存在を決定する方法は、第1のゲノムおよび第2のゲノムにハイブリダイズして、そこからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して、(例えば、セクション6.2.3に記載されているように)試料に対してPCR増幅反応を実施する工程を含み得る。試料中に存在する場合、第1のゲノムからの増幅は、第1のアンプリコンセットをもたらす。試料中に存在する場合、第2のゲノムからの増幅は、第2のアンプリコンセットをもたらす。PCR増幅産物を仮想プローブでプロービングして、第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットの有無を判定することができる。プロービングは、PCR増幅反応中(例えば、リアルタイムPCRを使用する場合、例えばセクション6.2.3.5に記載のように)またはPCR増幅反応後(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ分子を含むアレイを使用することによって、例えばセクション6.3に記載のように)に行うことができる。プロービングがPCR反応後に、例えばアレイ上で行われる場合、得られるPCRアンプリコンを標識するためにPCR混合物中に蛍光標識ヌクレオチドを含めることが有用である。アドレサブルアレイ上の蛍光標識の位置、および場合によってはその強度は、仮想プローブを構成するプローブ分子のシグナルを構成し得る。
【0046】
第1のアンプリコンセットが存在すると決定されれば、試料は第1のゲノムを含むと結論付けることができる。同様に、第2のアンプリコンセットが存在すると決定されれば、試料は第2のゲノムを含むと結論付けることができる。仮想プローブを使用して、例えばコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種およびコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種(例えば、セクション6.2.5.1に記載されるように)、S.ゴルドニ(gordonii)およびS.アンギノーサス(anginosus)(例えば、セクション6.2.5.2項に記載されているように)、またはS.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌(例えば、6.2.5.3に記載されているように)など、関連する微生物から調製された第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。
【0047】
試料は、例えば、生物学的試料、環境的試料、または食品であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、1つ以上の微生物に感染しているか、または感染のリスクがある。例示的な試料は、セクション6.2.1に記載されている。
【0048】
任意の相同ゲノム配列(および相同ゲノム配列に対応するアンプリコン)を区別するための本開示の方法の使用が企図される。細菌の種または細菌の関連種が試料中に存在する可能性があるかどうかを判定する場合、rRNA(例えば、16S rRNAまたは23S rRNA)をコード化するゲノム配列に対応する標的核酸(例えば、アンプリコン)、またはrRNA遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域(例えば、16S rRNA-23S rRNA遺伝子間スペーサー領域)を区別することができる仮想プローブを使用することができる。本開示の方法によって区別することができる例示的な相同ゲノム配列の特徴は、セクション6.2.2に記載されている。
【0049】
本開示の方法による仮想プローブでプロービングするためのアンプリコンは、第1の生物および/または第2の生物を含有するか、または含有することが疑われるか、または含有するリスクがある試料に対して、第1の生物のゲノムおよび第2の生物のゲノムにハイブリダイズし、そこからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用してPCR増幅反応を行うことによって作製することができる。PCR増幅反応は、1組のプライマーを用いて行うことができる(第1および第2の生物が試料中に存在する場合、それぞれ第1のアンプリコンおよび第2のアンプリコンを作製するはずである)。あるいは、PCR増幅反応は、第1および第2の生物がそれぞれ試料中に存在する場合、第1のゲノムに対応する複数のアンプリコンおよび第2のゲノムに対応する複数のアンプリコンを作製するために、プライマーの複数のセットを用いて行うことができる。本開示の方法で使用することができる例示的なPCR増幅反応は、セクション6.2.3に記載されている。PCR(例えば、等温増幅技術)以外の核酸増幅技術、例えばループ媒介等温増幅(LAMP)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)およびローリングサークル増幅(RCA)もアンプリコンを調製するために使用することができる(例えば、Fakruddin et al.,2013,J Pharm Bioallied Sci.5(4):245-252を参照されたい)。したがって、PCR増幅産物に適用可能であるとして本明細書に記載される実施形態は、代替の増幅方法を使用して作製される増幅産物にも同様に適用可能であることを理解されたい。
【0050】
仮想プローブで使用することができるプローブ分子の例示的な特徴、および仮想プローブの例示的な特徴は、それぞれセクション6.2.4および6.2.5に記載されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、PCR増幅産物のプロービングは、例えばセクション6.3に記載されているように、PCR増幅産物をアレイと接触させる工程、アレイから未結合核酸分子を洗浄する工程、およびアレイ上の各プローブ分子位置で標識(例えば、蛍光標識)のシグナル強度を測定する工程を含む。好ましくは、アレイは、1つ以上の計量プローブを含む。
【0052】
他の実施形態では、PCR増幅産物のプロービングは、リアルタイムPCR反応で使用されるオリゴヌクレオチドプローブ分子からのシグナルを測定することを含む。
【0053】
本開示の方法を実行するために使用することができるシステムは、セクション6.4に記載されている。
【0054】
本開示の方法で使用することができるキットは、セクション6.6に記載されている。
【0055】
6.2.1.試料
本開示の方法で使用される試料は、PCR増幅に適した状態にある、またはその状態にあるように調製することができるゲノムDNAを含有する任意のタイプまたは形態の試料であり得る。特定の実施形態では、試料は、1つ以上の微生物、例えば微生物の1つ以上の種による感染のリスクがある。別の実施形態では、試料は、1つ以上の微生物、例えば微生物の1つ以上の種による感染を有すると疑われる。試料は、例えば、生物学的試料、環境的試料、または食品であり得る。
【0056】
試料の例としては、各種の流体試料が挙げられる。いくつかの例では、試料は、対象からの体液試料であり得る。試料は、対象から採取された組織を含み得る。試料は、対象の体液、分泌物、および/または組織を含むことができる。試料は、生物学的試料であり得る。生物学的試料は、体液、分泌物、および/または組織試料であり得る。生物学的試料の例としては、限定されないが、血液、血清、唾液、尿、胃および消化液、涙、便、精液、膣液、腫瘍組織からの間質液、眼液、汗、粘液、耳垢、油、腺分泌物、呼気、髄液、毛髪、手指爪、皮膚細胞、血漿、鼻スワブまたは鼻咽頭洗浄液、髄液、脳脊髄液、組織、喉スワブ、創傷スワブ、生検、胎盤液、羊水、臍帯血、腹水、空洞液、痰、膿または他の創傷滲出液、創傷デブリードマンもしくは切除によってサンプリングされた感染組織、脳脊髄液、洗浄液、白血病標本、腹膜透析液、乳および/または他の排泄物が挙げられる。
【0057】
対象は試料を提供することができ、かつ/または試料は対象から収集することができる。対象は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。試料は、生きている、または死んだ対象から収集することができる。動物は、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ)、スポーツ動物(例えば、ウマ)、またはペット(例えば、イヌまたはネコ)などの哺乳動物であり得る。対象は、患者、臨床対象または前臨床対象であり得る。対象は、診断、治療、および/または疾患管理もしくは生活様式もしくは予防ケアを受けている場合がある。対象は、医療専門家の管理下にあってもなくてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、試料は環境的試料であり得る。環境的試料の例としては、空気試料、水試料(例えば、地下水、地表水、または廃水)、土壌試料、植物試料が挙げられる。
【0059】
さらなる試料には、食品、飲料、製造材料、織物、化学物質、および療法が含まれる。
【0060】
いくつかの実施形態では、試料は、病原体、例えば、結核菌、ヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp paratuberculosis)、黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む)、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・マルトフィリア(Staphylococcus maltophilia)、化膿レンサ球菌、肺炎レンサ球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、クレブシエラ肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌、緑膿菌、アシネトバクター属菌、百日咳菌、髄膜炎菌、炭疽菌、ノカルジア属菌、アクチノミセス属菌、肺炎マイコプラズマ、クラミジア肺炎、レジオネラ属種、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jiroveci)、インフルエンザAウイルス、サイトメガロウイルス、ライノウイルス、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、コリネバクテリウム・アミコラタム(Corynebacterium amycolatum)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)CI 4413、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、ステノトロフォモナス(キサントモナス属)・マルトフィリア(Stenotrophomonas(Xanthomonas)maltophilia)、およびサルモネラ属菌の1つ以上を含有するか、または含有すると疑われる試料である。いくつかの実施形態では、試料は、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アスブリア(Enterobacter asburiae)、またはエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)などの腸内細菌科群細菌を含有するか、または含有する疑いがある試料である。
【0061】
PCR増幅を行う前に試料を前処理することができる。したがって、本開示の方法においてPCR増幅に供される試料は、例えば、本開示の本セクションまたは他の箇所に記載される任意のタイプの試料から加工、抽出または分別される試料であり得る(例えば、尿、痰、創傷スワブ、血液または腹膜透析液から加工、抽出または分別された試料)。
【0062】
使用され得る前処理工程の例としては、本明細書で論じられるような、または当技術分野で公知のような、濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活性化、試薬の添加などが挙げられる。
【0063】
PCRの前に生物学的試料から望ましくない細胞型および粒子状物質を除去して、目的の細胞型からのゲノムDNAの回収を最大化することが特に有利であり得る。
【0064】
生物学的試料中の細菌を検出することを目的とする場合、生物学的試料をフィルターによって、細菌細胞(必要に応じてそれらの胞子を含む)を通過させながら微粒子および非細菌細胞がフィルター上に保留されるように前処理することが望ましい場合がある。本明細書で使用される「フィルター」は、サイズに基づいて粒子および分子を差別的に通過させる膜または装置である。典型的には、これは、特定の公称サイズのフィルターに孔を開けることによって達成される。例えば、細菌検出用途の特定の目的のフィルターは、細菌を通過させるのに十分大きいが、目的の試料中に存在する真核細胞の通過を防止するのに十分小さい孔を有する。一般に、細菌細胞は直径0.2~2μm(マイクロメートルまたはミクロン)の範囲であり、ほとんどの真菌細胞は直径1~10μmの範囲であり、血小板は直径約3μmであり、ほとんどの有核哺乳動物細胞は典型的には直径10~200μmである。したがって、細菌の検出を目的とする場合、2μm未満または1μm未満のフィルター孔径は、生物学的試料から非細菌細胞を除去するのに特に適している。
【0065】
濾過工程に加えて、またはその代わりに、生物学的試料を遠心分離に供して、試料から細胞および残屑を除去することができる。真核生物細胞を沈殿させるが細菌細胞を沈殿させない遠心分離パラメータは、当技術分野で公知である。所望であれば、次いで上清を濾過することができる。
【0066】
試料は、当技術分野で公知のPCR用のゲノムDNAを含む試料を調製するための、様々なプロセスのいずれかを使用してPCR増幅のために調製することができる(例えば、上記の前処理工程の1つ以上の後に)。いくつかの実施形態では、市販のDNA抽出試薬、キットおよび/または機器、例えば、QIAamp DNA Mini Kit(Qiagen)、MagMAX(商標)DNA Multi-Sample Kit(ThermoFisher Scientific)、Maxwell(登録商標)RSC Instrument(Promega)などを使用することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、試料は、ビーズビーティングを含むプロセスによって、例えば米国特許第10,036,054号(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようにPCR用に調製される。血液は市販の採血管に採取された後、例えば、採取管にビーズビーティングビーズを添加して採取管を撹拌することにより、直ちにビーズビーティングに供され得る。血液試料を採取するために使用され得る市販の採取管の例としては、EDTAを含有するラベンダートップ管、クエン酸ナトリウムを含有するライトブルートップ管、シュウ酸カリウムを含有するグレートップ管、またはヘパリンを含有するグリーントップ管が挙げられる。
【0068】
6.2.2.相同ゲノム配列
本開示の方法は、第1および第2の相同ゲノム配列(ならびに標的核酸、例えば第1および第2の相同ゲノム配列に対応するアンプリコン)を同定および/または区別するために使用することができる。相同ゲノム配列は、祖先を共有するがヌクレオチド配列が同一ではない種または株に見られるゲノム配列である。したがって、例えば、相同ゲノム配列は、細菌の密接に関連した種または株において見出される。
【0069】
第1のゲノム配列および第2のゲノム配列は、一般に、第1の微生物および第2の微生物(例えば、細菌、ウイルスまたは真菌)由来のゲノム配列である。第1および/または第2の微生物は、例えば、ヒト病原体および/または動物病原体であり得る。微生物は、同じ目、同じ科、同じ属、同じ群、または同じ種であってもよい。好ましい実施形態では、第1および第2の微生物は細菌である。
【0070】
配列決定技術の進歩により、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)、欧州分子生物学研究所(EMBL)および日本DNAデータバンク(DDBJ)など、多くの公開データベースリポジトリで利用可能な全細菌ゲノム配列の数が大幅に増加し、そのようなデータベースを使用して相同ゲノム配列を同定することができる。
【0071】
密接に関連する微生物における相同ゲノム配列は、rRNAをコード化する遺伝子、およびrRNAをコード化する遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域に見られることが多い。細菌種の配列比較は、16SリボソームRNA(16S rRNA)の遺伝子を使用して長い間行われてきた。16SリボソームRNA遺伝子は、タンパク質産生を担うタンパク質/RNA複合体である細菌リボソームの30S小サブユニットの16S RNA成分をコード化する。遺伝子は、9つの超可変領域(V1~V9)が散在する高度に保存された配列の領域を含む。超可変領域の配列変異は、密接に関連する種間の観察可能な差異のほとんどを可能にする。これらの遺伝子の中で観察される配列進化の速度が遅いため、16S rRNA配列は、多くの細菌種についての系統樹を構築するのに使用されてきた。GenBankから入手したいくつかのブドウ球菌種の16S rRNA遺伝子から調製した例示的系統樹を
図1に示す。
【0072】
細菌ゲノムは、第2のリボソームrRNA遺伝子、23S rRNA遺伝子を含む。16S rRNA遺伝子および23S rRNA遺伝子は、16S-23S内部転写スペーサー領域(ITS)または16S-23S遺伝子間スペーサー領域として知られるスペーサー領域によって互いに分離されている。16S-23S rRNA ITS領域は、特定の細菌種を区別および同定するために使用することができる種および種間特異的配列を含む超可変領域を含む(K.Okamura,et al.、2012)。16s rRNAおよび16s-23s rRNAゲノム配列の多重アラインメントから作成されたStreptococcus viridians群の例示的系統樹を
図2に示す。
【0073】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、rRNAをコード化する遺伝子のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、rRNA遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域のヌクレオチド配列を含む。
【0074】
微生物が細菌である実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、例えば、16S rRNA遺伝子または23S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、第1のゲノム配列および第2のゲノム配列はそれぞれ、23S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、ゲノム配列は、16S-23S遺伝子間スペーサー領域に見出されるヌクレオチド配列を含む。
【0075】
ある特定の実施形態では、第1のゲノム配列および/または第2の相同ゲノム配列は、ヒトの血液、尿または腹水中に見られ得る病原体、例えば細菌、ウイルスまたは真菌由来のゲノム配列である。そのような病原体の例には、限定されないが、結核菌、ヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp paratuberculosis)、黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む)、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・マルトフィリア(Staphylococcus maltophilia)、化膿レンサ球菌、肺炎レンサ球菌、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、クレブシエラ肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、大腸菌、緑膿菌、アシネトバクター属菌、百日咳菌、髄膜炎菌、炭疽菌、ノカルジア属菌、アクチノミセス属菌、肺炎マイコプラズマ、クラミジア肺炎、レジオネラ属種、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jiroveci)、インフルエンザAウイルス、サイトメガロウイルス、ライノウイルス、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、コリネバクテリウム・アミコラタム(Corynebacterium amycolatum)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)CI 4413、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、ステノトロフォモナス(キサントモナス属)・マルトフィリア(Stenotrophomonas(Xanthomonas)maltophilia)、およびサルモネラ属菌が含まれる。
【0076】
6.2.3.PCR増幅
本開示の方法のいくつかの実施形態では、PCR増幅は、試料中に存在し得るゲノムにハイブリダイズし、そこからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して、試料に対して行われる。PCR増幅反応は、「対称」PCR反応であり得る、すなわち、反応は、互いに等しい、または数℃範囲内にある「融解温度」または「Tm」を有するように設計されたフォワードプライマーおよびリバースプライマーを利用することによって鋳型DNAの二本鎖コピーを作成する。プライマー設計のために一般的に使用されるコンピュータソフトウェアプログラムは、高いTm差を回避するようにユーザに警告し、自動Tmマッチング機能を有する。一本鎖DNAアンプリコンを作製することができる「非対称」PCR反応も使用することができる。リアルタイムPCR反応も使用することができる。PCR増幅反応の文脈において、反応によって増幅されたゲノム配列は、「標的」核酸、「鋳型」核酸などと呼ぶことができる。
【0077】
PCR増幅反応は、単一のプライマーセットまたは複数のプライマーセット(例えば、PCR増幅がマルチプレックスPCRである場合)を使用することができる。マルチプレックスPCRは、例えば、第1のゲノム配列(例えば、16S rRNA遺伝子)に対応するアンプリコンおよび/または第2のゲノム配列(例えば、23S rRNA遺伝子)に対応する異なるアンプリコンを作製するのに有用であり得る。マルチプレックスPCRの代替として、異なるプライマーセットを用いて実施された別々のPCR増幅反応によって作製されたアンプリコンを、その後の分析のためにプールすることができる。有利には、単一のプライマーセットを使用して、複数の株または種、例えば、同じ属のメンバーであり得る2、3、4または4を超える種のゲノムに見られる相同ゲノム配列に対応するアンプリコンを作製することができる。
【0078】
PCR増幅条件は、例えば、DNA増幅産物が100~1000ヌクレオチド長になるように選択(対称または非対称、シングルプレックスまたはマルチプレックス)することができる。いくつかの実施形態において、PCR反応は、DNA増幅産物が300~800ヌクレオチド長になるように選択される。別の実施形態において、PCR条件は、DNA増幅産物が400~600ヌクレオチド長になるように選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で使用されるPCR増幅反応は、反応によって作製される任意のアンプリコン中に測定可能なシグナルを生成する標識を組み入れる。標識は、例えば、蛍光標識、電気化学標識または化学発光標識であり得る。蛍光標識は、PCR中の蛍光標識ヌクレオチド取り込みおよび/またはPCRのための標識プライマーの使用によって達成することができる。電気化学的標識は、PCR中の酸化還元活性標識ヌクレオチド取り込みによって、および/またはPCRのための酸化還元活性標識プライマーの使用によって達成することができる(例えば、Hocek and Fojta,2011,Chem.Soc.Rev.,40:5802-5814;Fojta,2016,Redox Labeling of Nucleic Acids for Electrochemical Analysis of Nucleotide Sequences and DNA Damage.In:Nikolelis D.,Nikoleli GP.(eds)Biosensors for Security and Bioterrorism Applications.Advanced Sciences and Technologies for Security Applications.Springer,Chamを参照されたい)。化学発光標識は、例えば、PCR用のビオチン標識プライマーの使用、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼコンジュゲートの結合、次いで化学発光1,2-ジオキセタン基質とのインキュベートによって達成することができる。
【0080】
適切な蛍光部分の例としては、FITC、EDANS、Texas red、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、BODIPY FL/C3、BODIPY R6G、BODIPY FL、Alexa 532、BODIPY FL/C6、BODIPY TMR、5-FAM、BODIPY 493/503、BODIPY 564、BODIPY 581、Cy3、Cy5、R110、TAMRA、Texas redおよびx-ローダミンが挙げられる。
【0081】
蛍光部分は、dNTP、特に塩基としてシトシンを含有するもの(シチジル酸、シチジン5’-ホスフェート、シチジン5’-ジホスフェート、シチジン5’-トリホスフェート、またはそのポリマー、またはシチジル酸を含むポリマー)に結合することができる。
【0082】
dNTP標識は、塩基(アミノ基)、ホスフェート基(OH基)またはデオキシリボース部分(2’-または3’-OH基)に配置され得る。好ましくは塩基に配置される。
【0083】
他のヌクレオチドと同様に、蛍光標識されたdNTPは、ランダムな部位、典型的にはdC部位でPCRアンプリコンの両方の鎖に組み込まれ、DNAポリメラーゼによって伸長され得る。
【0084】
蛍光dNTPは高濃度の形態で市販されており、各非標識dNTPの濃度を調整することなくPCR反応混合物に添加することができる。ほとんどのPCR増幅では、dNTP対蛍光dNTPの典型的な比は、100:1~1000:1である。したがって、蛍光標識されたdNTPを、非標識dNTPの(モル)量の0.1%~1%でPCR試薬の中に含めることができる。
【0085】
蛍光標識PCR産物の検出は、プローブ分子、例えばマイクロアレイに結合したプローブ分子へのハイブリダイゼーションによって達成することができる。適切なマイクロアレイシステムは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,738,926号に記載されているような三次元架橋ポリマーネットワークを利用する。
【0086】
6.2.3.1.プライマー
PCR反応で利用されるプライマーは、所与の核酸鋳型の配列、例えば標的ゲノム配列を認識し、それにハイブリダイズするように設計される。プライマーおよび標的核酸鋳型の配列におけるミスマッチは、PCR反応の効率の低下および/または所望の配列以外の配列の増幅をもたらし得る。プライマー設計を成功させるためのパラメータは当技術分野で周知であり(例えば、Dieffenbach,et al.,1993を参照)、プライマー長、融解温度、GC含有量などを含む。PCRプライマーは、所与の標的核酸鋳型と100%の配列同一性を共有する必要はなく、標的配列と少なくとも75%、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%または99.5%の同一性を有するPCRプライマーは、標的配列にハイブリダイズし、その増幅を可能にするように機能し得る。
【0087】
本開示は、高い特異性および良好な増幅効率を有する独特のプライマーシステムを調製するのに適した、追加のパラメータを提供する。プライマーは、典型的には18~24塩基長であるが、さらに長くてもよく、例えば25~50塩基長、例えば25~45塩基長、例えば30~45塩基長、例えば35~45塩基長、例えば40~45塩基長、または例えば40~50塩基長であってもよい。PCR増幅に使用されるプライマーは、対で設計されることが多く、1つのプライマーは「フォワード」プライマーと呼ばれ、1つのプライマーは「リバース」プライマーと呼ばれる。本開示のフォワードプライマーは、「GC-クランプ」を提供するように、3’末端にGおよび/またはC残基を有するように設計することができる。GおよびCヌクレオチド対は、A-Tヌクレオチド対よりも強い水素結合を示す;したがって、プライマーの3’末端におけるGC-クランプは、配列特異性の増加、ハイブリダイゼーションの可能性の増加、およびPCR反応の全体的な効率の増加に役立ち得る。
【0088】
プライマーのセットは、2つのゲノム領域を増幅するように設計することができ、例えば、プライマーのセットは、16S rRNA遺伝子に特異的な1つのプライマー対および16S-23S rRNA ITS領域に特異的な第2のプライマー対を含むことができる(
図3参照)。そのようなプライマーセットを使用して、例えば、単一のPCR反応で複数のアンプリコンを作製することができる。
【0089】
PCRプライマー対は、多数の種にわたって保存された配列を増幅するように、例えば、複数の細菌種の16S rRNA遺伝子を増幅するように設計することができる。したがって、単一のPCRプライマー対を使用して相同ゲノム配列に対応するアンプリコンを生成することが可能であり得、これは、多数の可能性のある生物のうちの1つを含むかまたは含むと疑われる試料に対してPCRを行う場合に有利である。保存された配列を増幅するように設計されたプライマーのパラメータは、様々な種にわたって保存された領域を同定すること、場合により、保存された領域における任意の配列の差異を適正として検証すること(例えば、公開された配列の正確さが確実でない場合)、および配列全体で少なくとも75%、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%、またはさらには100%保存されている配列を選択することを含み得る。100%未満の配列同一性を示すプライマーは、単に所与の鋳型とは異なる1つ以上の単一ヌクレオチド塩基を含有してもよく、すなわち、調製物中のすべてのプライマーは互いに同じ配列を含有する。あるいは、プライマーは、配列中の特定の位置に代替ヌクレオチド残基を含有するように調製することができる。例えば、いくつかの種の16S領域の増幅のためのリバースプライマーは、オリゴヌクレオチドのプールを含むことができ、そのパーセンテージ、例えば50%は、プライマー中のある位置に第1のヌクレオチドを含み、そのパーセンテージ、例えば50%は、その位置に第2のヌクレオチドを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で利用されるプライマーは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)で標識される。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも1つのプライマーは、5’蛍光標識されている。他の実施形態では、複数のプライマーが5’蛍光標識される。標識プライマーに適した蛍光標識は当技術分野で公知であり、Cy5、FAM、JOE、ROXおよびTAMRAが挙げられる。
【0091】
6.2.3.2.対称PCR増幅
本開示の方法において使用され得る典型的な3段階PCRプロトコル(PCR PROTOCOLS,a Guide to Methods and Applications,Innis et al.eds.,Academic Press(San Diego,Calif.(USA)1990,Chapter 1を参照)は、93~95℃で5秒間超の変性または鎖融解、55~65℃で10~60秒間のプライマーアニーリング、およびポリメラーゼが高活性である温度、例えばTaq DNAポリメラーゼでは72℃で15~120秒間のプライマー伸長を含み得る。典型的な2段階PCRプロトコルは、プライマー伸長と同じプライマーアニーリング温度、例えば60℃または72℃を有することによって異なり得る。3段階PCRまたは2段階PCRのいずれかの場合、増幅は、反応混合物を前述の一連の工程を通して何度も、典型的には25~40回循環させることを含む。反応の過程の間、反応の個々の工程の時間および温度は、サイクルごとに不変のままであってもよく、または効率の促進または選択性の向上のために反応の過程の1つ以上の時点で変更されてもよい。
【0092】
PCR反応混合物は、プライマー対および標的核酸に加えて、典型的に等モル濃度の4つのデオキシリボヌクレオチド5’三リン酸(dNTP)のそれぞれ、熱安定性ポリメラーゼ、二価カチオン(典型的にはMg2+)および緩衝剤を典型的に含む。そのような反応物の体積は、典型的には20~100μlである。複数の標的配列を同じ反応で増幅することができる。特定のPCR増幅のサイクル数は、a)出発物質の量、b)反応の効率、およびc)検出の方法および感度、またはその後の産物の分析を含むいくつかの要因に依存する。典型的な循環増幅反応のためのサイクル条件、試薬濃度、プライマー設計、および適切な装置は、当技術分野で周知である(例えば、Ausubel,F.Current Protocols in Molecular Biology(1988)Chapter 15:「The Polymerase Chain Reaction」J.Wiley(New York,N.Y.(米国)を参照されたい))。
【0093】
6.2.3.3.非対称PCR増幅
例示的な非対称PCR法は、Gyllensten and Erlich,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.(米国)85:7652-7656(1988);およびGyllensten and Erlich,1991、米国特許第5,066,584号に記載されている。伝統的な非対称PCRは、一方のプライマーが制限された量で、典型的には他方のプライマーの1/100~1/5の濃度で添加されるという点で対称PCRとは異なる。二本鎖アンプリコンは、対称PCRの場合と同じく、初期温度サイクル中に蓄積するが、開始鋳型の数に応じて、典型的には15~25回のPCRサイクル後に1つのプライマーが枯渇する。1つの鎖の線形増幅は、枯渇していないプライマーを利用してその後のサイクル中に起こる。文献に報告されている非対称PCR反応で使用されるプライマーは、多くの場合、対称PCRでの使用が知られているものと同じプライマーである。Poddar(Poddar,2000,Mol.Cell Probes14:25~32)は、40回の熱サイクルを含むエンドポイントアッセイによって、アデノウイルス基質を増幅するための対称PCRと非対称PCRを比較した。彼は、50:1のプライマー比が最適であり、非対称PCRアッセイの感度はより良好であったが、標的分子の含有がおそらくは減少した希釈基質溶液では著しく低下したことを報告した。
【0094】
6.2.3.4.非対称PCR増幅の改善
改善された非対称PCR法は、米国特許第10,513,730号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。改善された非対称PCR法は、指数関数的位相および線形位相の両方を含む。指数関数的位相の間、標的核酸の両方の鎖が増幅される。線形位相の間、鎖の一方のみが増幅され、一本鎖の標的核酸の過多が生じる。
【0095】
改善された非対称PCR法は、「伸長プライマー」と呼ばれる長い方のプライマーおよび「非伸長プライマー」と呼ばれる短い方のプライマーを含む、異なる長さおよび融解温度のプライマー対の使用を通して一本鎖の過多を達成する。伸長プライマーは、非伸長プライマーよりも融解温度が高く、非伸長プライマーの融解温度よりも高いが伸長プライマーの融解温度よりも低い温度でアニーリング工程を行うPCRサイクルを用いて、標的核酸の一本鎖を選択的に増幅するために使用され得る。選択的増幅により、標的鎖が濃縮されたPCR産物混合物が得られ、これをその後の検出アッセイでプロービングすることができる。
【0096】
伸長プライマーは、標的核酸に相補的な配列に加えて、同じプライマーの標的結合部分に相補的な配列を含む5’伸長を含む。理論に束縛されるものではないが、5’伸長の使用は、伸長プライマー分子の分子内または分子間ハイブリダイゼーションを可能にし、これらのより長いプライマーが、PCR反応の開始時にPCR反応に存在するDNA分子へ恣意的または非特異的に結合するのを防止すると考えられる。これにより、順次、非特異的なDNA増幅が防止され、生物学的試料中に少量存在する標的を増幅する場合に問題となり得る、PCR産物の「ノイズ」が防止される。
【0097】
初期PCR反応混合物は、
・核酸試料;
・非対称プライマー対;
・熱安定性DNAポリメラーゼ;および
・PCR試薬、を含む。
【0098】
PCR反応における伸長プライマーおよび非伸長プライマーの初期濃度は、それぞれ200nM~8μMの範囲であり得る。伸長プライマーおよび非伸長プライマーは、初期PCR反応において等モル量で、例えば、それぞれ約200nM~1μMの範囲の濃度で、例えば、それぞれ500nMの濃度で含まれ得る。あるいは、伸長プライマーおよび非伸長プライマーは、初期PCR反応において非等モル量で含まれ得る。特定の実施形態において、伸長プライマーの初期濃度は、好ましくは、非伸長プライマーの濃度より高く、例えば、約2倍~30倍モル過剰である。したがって、ある特定の態様において、伸長プライマーの濃度は約1μM~8μMの範囲であり、非伸長プライマーの濃度は約50nM~200nMの範囲である。
【0099】
非対称プライマー対は、任意の供給源からの核酸を増幅するように設計することができ、診断用途の場合、非対称プライマー対は、セクション6.2.1で特定されたものなどの病原体由来のDNAを増幅するように設計することができる。
【0100】
非対称プライマー対は、多くの種に存在する相同核酸配列、例えば細菌における高度に保存された16Sリボソーム配列を同時に増幅することができるように設計することができる。
熱安定性DNAポリメラーゼ:本開示の非対称PCR反応に使用することができる熱安定性ポリメラーゼには、これらに限定されないが、Vent exo-、Deep Vent、Deep Vent exo-、Taq(Thermus aquaticus)、Hot Start Taq、Hot Start Ex Taq、Hot Start LA Taq、DreamTaq(商標)、TopTaq、RedTaq、Taqurate、NovaTaq(商標)、SuperTaq(商標)、Stoffel Fragment、Discoverase(商標)dHPLC、9° Nm、Phusion(登録商標)、LongAmp Taq、LongAmp Hot Start Taq、OneTaq、Phusion(登録商標)Hot Start Flex、Crimson Taq、Hemo KlenTaq、KlenTaq、Phire Hot Start II、DyNAzyme I、DyNAzyme II、M-MulV Reverse Transcript、PyroPhage(登録商標)、Tth(Thermos termophilus HB-8)、Tfl、Amlitherm(商標)、Bacillus DNA、DisplaceAce(商標)、Pfu(Pyrococcus furiosus)、Pfu Turbot、Pfunds、ReproFast、PyroBest(商標)、VeraSeq、Mako、Manta、Pwo(pyrococcus、woesei)、ExactRun、KOD(thermococcus kodakkaraensis)、Pfx、ReproHot、Sac(Sulfolobus acidocaldarius)、Sso(Sulfolobus solfataricus)、Tru(Thermus ruber、Pfx50(商標)(Thermococcus zilligi)、AccuPrime(商標)GC-Rich(Pyrolobus fumarius)、Pyrococcus species GB-D、Tfi(Thermus filiformis)、Tfi exo-、ThermalAce(商標)、Tac(Thermoplasma acidophilum)、(Mth(M.thermoautotrophicum)、Pab(Pyrococcus abyssi)、Pho(Pyrococcus horikosihi、B103(Picovirinae Bacteriophage B103)、Bst(Bacillus stearothermophilus)、Bst Large Fragment、Bst 2.0、Bst 2.0 WarmStart、Bsu、Therminator(商標)、Therminator(商標)II、Therminator(商標)III、およびTherminator(商標)Tが含まれる。好ましい実施形態では、DNAポリメラーゼはTaqポリメラーゼ、例えばTaq、Hot Start Taq、Hot Start Ex Taq、Hot Start LA Taq、DreamTaq(商標)、TopTaq、RedTaq、Taqurate、NovaTaq(商標)またはSuperTaq(商標)である。
【0101】
改善された非対称方法で使用するための非対称サイクルの例示的なセットを表2に示す。
【表2】
【0102】
表2に示すサイクル数の範囲を任意の非対称プライマー対に使用することができ、最適なサイクル数は初期PCR混合物中の標的DNAのコピー数に依存する。初期コピー数が多いほど、線形位相の鋳型として機能するのに十分な量のPCR産物を製造するために、指数関数的位相において必要なサイクル数が少なくなる。サイクル数の最適化は、当業者にとって慣例である。
【0103】
表2に示される温度は、伸長プライマーのTmが72℃超(例えば、75~80℃)であり、非伸長プライマーのTmが58℃を超えるが72℃未満(例えば、60~62℃)である場合、および熱安定性DNAポリメラーゼが72℃で活性である場合に特に有用である。
【0104】
サイクル時間、特に伸長時間は、プライマーの融解温度およびPCR産物の長さに応じて変えることができ、PCR産物が長くなるほど、必要な伸長時間が長くなる。経験則として、伸長工程は、アンプリコンの1,000塩基あたり少なくとも60秒であるべきである。伸長工程を線形位相で延長して、アニーリングのための追加の時間を与えることができる。
【0105】
6.2.3.4.1.伸長プライマー
伸長プライマーの「A」領域は、標的鎖1の対応する領域と少なくとも75%の配列同一性を有する。特定の実施形態では、プライマーの「A」領域は、標的鎖1の対応する領域と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である。さらに他の実施形態では、プライマーの「A」領域は、標的鎖1の対応する領域と100%の配列同一性を有する。
【0106】
別の言い方をすれば、様々な実施形態において、伸長プライマーの「A」領域は、標的鎖2における対応する領域の相補体と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%もしくは100%の配列同一性を有する。典型的には、プライマー配列と標的配列との間の何らかの5’ミスマッチが多く位置するほど、それらはPCR反応中に許容される可能性がより高くなる。当業者は、標的鎖に対して100%未満の配列同一性を有するが、標的DNAを依然として効率的に増幅することができるプライマー配列を容易に設計することができる。
【0107】
「A」領域の少なくとも一部に相補的な「B」領域の配列は、定方向反復または逆方向反復であり得る。「B」領域が「A」領域の一部分の定方向反復を含有する場合、異なる伸長プライマー分子は、
図5Bに示されるように、互いに分子間でハイブリダイズすることができる。「B」領域が「A」領域の一部分の逆方向反復を含有する場合、伸長プライマー分子は、
図5Cに示されるように分子内で、または
図5Aに示されるように互いに分子間でハイブリダイズすることができる。
【0108】
「B」領域内の配列が相補的である「A」領域の一部分は、好ましくは「A」領域の5’末端、またはその近傍(例えば、そこから1、2、または3ヌクレオチド以内)、すなわち「A」領域が「B」領域(または「C」領域が存在する場合には「C」領域)に隣接する場所またはその近傍にある。
【0109】
伸長プライマーの「B」領域は、好ましくは6~12ヌクレオチド長であり、すなわち、好ましくは6、7、8、9、10、11または12ヌクレオチド長である。特定の実施形態において、伸長プライマーの「B」領域は、8~10ヌクレオチド長であり、すなわち、8、9または10ヌクレオチド長である。
【0110】
「C」領域は、伸長プライマー中に存在する場合、好ましくは1~6ヌクレオチド長であり、すなわち、好ましくは1、2、3、4、5または6ヌクレオチド長である。
【0111】
伸長プライマーのTmは、好ましくは(必ずしもそうとは限らないが)約68℃~約80℃である。特定の実施形態において、非伸長プライマーのTmは、約72℃~約78℃、例えば、約72℃、約73℃、約74℃、約75℃、約76℃、約77℃または約78℃である。
【0112】
領域「A」と「B」との間に位置する任意選択の領域「C」は、「A」領域と「B」領域との間のスペーサーとして作用して、伸長プライマーにヘアピンループを形成すること、および/または制限エンドヌクレアーゼ配列(好ましくは6カッター配列)をPCR産物に導入することを可能にし得る。制限エンドヌクレアーゼ配列は、その全体が「C」領域内にあり得るか、または「C」領域の全部もしくは一部から、それぞれ「B」および「A」領域由来の隣接する5’配列および/または3’配列と共に形成され得る。標的核酸へのハイブリダイゼーションとの干渉を最小限に抑えるために、「C」領域は、好ましくは、標的鎖1または標的鎖2と相補的ではない。
【0113】
伸長プライマーのTmは、好ましくは、非伸長プライマーのTmよりも少なくともおよそ6℃高い。好ましくは、伸長プライマーは、非伸長プライマーのTmよりも約15℃~30℃高いTmを有する。
【0114】
伸長プライマーの「A」領域のTmは、標的(あらゆる5’伸長を除く)に相補的な非伸長プライマーの部分(少なくとも75%)のTmよりも約3℃以内の差で高い、または低いことが望ましい、すなわち、標的にハイブリダイズするフォワードプライマー中の領域のTmは、標的にハイブリダイズするリバースプライマー中の領域のTmよりも約3℃以内の差で高い、または低いことが望ましく、逆もまた同様である。
【0115】
伸長プライマーの「A」領域は、好ましくは少なくとも12ヌクレオチド長であり、好ましくは12~30ヌクレオチド、より好ましくは14~25ヌクレオチドの範囲である。特定の実施形態において、伸長プライマーの「A」領域は、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチド長である。
【0116】
6.2.3.4.2.非伸長プライマー
非伸長プライマーは、標的鎖2の対応する領域と少なくとも75%の配列同一性のヌクレオチド配列を有する。特定の実施形態では、非伸長プライマーは、標的鎖2における対応する領域と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。さらに他の実施形態では、非伸長プライマーは、標的鎖2の対応する領域と100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
【0117】
別の言い方をすれば、様々な実施形態において、非伸長プライマーは、標的鎖2における対応する領域の相補体と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%もしくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。典型的には、プライマー配列と標的配列との間の何らかの5’ミスマッチが多く位置するほど、それらはPCR反応中に許容される可能性がより高くなる。当業者は、標的鎖に対して100%未満の配列同一性を有するが、標的DNAを依然として効率的に増幅することができるプライマー配列を容易に設計することができる。
【0118】
非伸長プライマーは、1、2または3つのヌクレオチドの5’尾部をさらに有し得る。
【0119】
非伸長プライマーのTmは、好ましくは(必ずしもそうとは限らないが)約50℃~約62℃である。特定の実施形態において、非伸長プライマーのTmは、約59℃~約62℃、例えば、約59℃、約60℃、約61℃、または約62℃である。
【0120】
非伸長プライマーのTmは、好ましくは、伸長プライマーのTmよりも少なくともおよそ6℃低い。好ましくは、非伸長プライマーは、伸長プライマーのTmよりも約15℃~30℃低いTmを有する。
【0121】
標的(あらゆる5’伸長を除く)に相補的な非伸長プライマーの部分(少なくとも75%)のTmは、伸長プライマーの「A」領域のTmよりも約3℃以内の差で高い、または低いことが望ましい、すなわち、標的にハイブリダイズするフォワードプライマー中の領域のTmは、標的にハイブリダイズするリバースプライマー中の領域のTmよりも約3℃以内の差で高い、または低いことが望ましく、逆もまた同様である。
【0122】
非伸長プライマーは、好ましくは少なくとも12ヌクレオチド長であり、好ましくは12~30ヌクレオチド、より好ましくは14~25ヌクレオチドの範囲である。特定の実施形態において、非伸長プライマーは、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチド長である。
【0123】
6.2.3.4.3.汎用プライマー
いくつかの非対称PCR法では、例えば米国特許第8,735,067B2号に記載されているように、フォワードおよびリバースプライマー対に加えて、プライマーの一方に付加された、5’オリゴヌクレオチド尾部に類似する配列を有する第3の「汎用」プライマーが使用される。汎用プライマーは、最初のPCRサイクルの後に増幅反応に関与して、マルチプレックス増幅反応における種々の標的の増幅効率の「バランスをとる」ことを意図している。
【0124】
理論に束縛されるものではないが、改善された非対称PCR法の文脈において伸長プライマーの「B」領域の配列から本質的になる配列を有するであろう、米国特許第8,735,067号に記載されているような汎用プライマー(そのような汎用プライマーを本明細書において「汎用プライマー」と呼ぶ)を含めると、本明細書に記載の非対称プライマー対を使用する増幅効率が低下するであろうと考えられる。したがって、本明細書中に記載される改善された非対称DNA増幅法は、好ましくは、汎用プライマーの非存在下で行われる。
【0125】
関連する実施形態において、本明細書中に記載される改善された非対称DNA増幅法は、標的領域ごとに単一の非対称プライマー対を利用することができ、すなわち、いかなる追加のプライマーも含まず、個々のプライマーが、プライマー中の特定の位置に混合塩基を含めることから生じる、密接に関連する配列を有するプライマー分子の混合物であり得ることを認識している。明瞭化および疑念回避のために、この実施形態は、各アンプリコンに対して単一の非対称プライマー対が使用されるという条件で、マルチプレックス増幅反応における複数の非対称プライマー対の使用を排除しない。
【0126】
6.2.3.5.リアルタイムPCR増幅
本開示の方法で使用されるPCR増幅反応は、リアルタイムPCR増幅反応であり得る。
【0127】
リアルタイムPCRとは、反応が進行するにつれて、典型的にはPCRサイクルごとに1回、増幅されたDNA産物の蓄積を測定することができる技術の発展セットを指す。産物の蓄積を経時的にモニタリングすることにより、反応の効率の判定、ならびにDNA鋳型分子の初期濃度の推定が可能になる。リアルタイムPCRに関する一般的な詳細については、Real-Time PCR:An Essential Guide,K.Edwards et al.,eds.,Horizon Bioscience,Norwich,U.K.(2004)を参照されたい。
【0128】
現在、増幅されたDNAの存在を示すための、いくつかの異なるリアルタイム検出化学が存在する。これらの大部分は、PCRプロセスの結果として特性を変化させる蛍光指示薬に依存する。これらの検出化学の中には、二本鎖DNAに結合すると蛍光効率を高めるDNA結合色素(SYBR(登録商標)Greenなど)がある。他のリアルタイム検出化学は、色素の蛍光効率が別の光吸収部分またはクエンチャーへの近接度に強く依存する現象である、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用する。これらの色素およびクエンチャーは、典型的には、DNA配列特異的プローブまたはプライマーに結合している。FRETベースの検出化学の中には、加水分解プローブおよび立体配座プローブがある。加水分解プローブ(TaqMan(登録商標)プローブなど)は、ポリメラーゼ酵素を使用して、オリゴヌクレオチドプローブに結合したクエンチャー色素分子からレポーター色素分子を切断する。立体配座プローブ(分子ビーコンなど)は、オリゴヌクレオチドに結合した色素を利用し、その蛍光発光は、標的DNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの立体配座変化に応じて変化する(例えば、Tyagi S et al.,1996,Molecular beacons:probes that fluoresce upon hybridization.Nat Biotechnol 14,303-308を参照されたい)。
【0129】
リアルタイムPCRは、対称または非対称であり得、例えば、セクション6.2.3.3または6.2.3.4に記載されている対称または非対称PCR増幅反応の反応混合物において、加水分解プローブ分子を用いて実施され得る。
【0130】
リアルタイムPCRを行うために使用され得る、いくつかの市販の機器が存在する。利用可能な機器の例には、Applied Biosystems PRISM 7500、Bio-Rad iCylcer、およびRoche Diagnostics LightCycler 2.0が含まれる。
【0131】
6.2.4.プローブ分子
本開示は、PCR反応で作製されたアンプリコンの配列特異的検出に適したプローブ分子、例えばオリゴヌクレオチドプローブ分子を提供する。
【0132】
オリゴヌクレオチドプローブ分子設計の成功ためのパラメータは当技術分野で周知であり、プローブ分子長、クロスハイブリダイゼーション効率、融解温度、GC含有量、自己アニーリング、および二次構造を形成する能力を含むが、これらに限定されない。本開示は、マイクロアレイ、例えばアドレサブルアレイにおけるオリゴヌクレオチドプローブ分子の使用を提供し、そこでは、プローブ分子は、基材、例えば膜、例えばガラス基材、例えばプラスチック基材、例えばポリマーマトリックス基材に固定され、オリゴヌクレオチドプローブ分子の、同様、同一の配列、例えば配列が少なくとも75%、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば95%、例えば96%、例えば97%、例えば98%、例えば99%またはさらには100%の類似性または同一性を有するアンプリコンとのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で核酸に曝露される。
【0133】
いくつかの実施形態において、本開示の方法において使用されるオリゴヌクレオチドプローブ分子は、第1のゲノム配列および/または第2のゲノム配列中の15~40個の連続するヌクレオチドに対して90%~100%相補的(例えば、90%~95%または95%~100%)であるヌクレオチド配列を含む。
【0134】
例示的なオリゴヌクレオチドプローブ分子は実施例に記載されており、配列番号1~7のヌクレオチド配列を含むプローブ分子が含まれる。
【0135】
いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブ分子は、アレイ上に存在する。各プローブ分子は、オリゴヌクレオチドプローブ分子がアレイ上に存在する位置的にアドレサブルなプローブ分子であるように、アレイ上の離散した位置にあり、アレイ上のその位置によって識別することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブ分子は、ポリチミジン尾部、例えば最大10ヌクレオチドを含むポリチミジン尾部、または例えば最大15ヌクレオチドを含むポリチミジン尾部、または例えば最大20ヌクレオチドを含むポリチミジン尾部を含む。一実施形態では、ポリチミジン尾部は、10~20ヌクレオチド、例えば15ヌクレオチドを含む。ポリチミジン尾部は、プローブ分子がアレイに結合している場合に有用であり得、ポリチミジン尾部は、アレイ基材と、標的配列に対して部分的または完全な相補性を有するプローブ分子の領域との間のスペーサーとして作用する。
【0137】
オリゴヌクレオチドプローブ分子は、標識されてもまたはされなくてもよい。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブ分子は標識される。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブ分子は標識されない。オリゴヌクレオチドプローブ分子は、例えば、蛍光色素、例えばセクション6.2.3または6.2.3.1に記載されているものであり得る蛍光レポーターで標識することができる。標識オリゴヌクレオチドプローブ分子は、例えばリアルタイムPCR反応に使用することができる。リアルタイムPCRのための標識オリゴヌクレオチドプローブ分子は、プローブ分子の一端に蛍光レポーターを含み、プローブ分子の他端にレポーターの蛍光を消光するクエンチャー部分を含むことができる。PCR中、プローブ分子はアニーリング段階中にその標的配列にハイブリダイズすることができ、伸長段階中にポリメラーゼがプローブ分子に到達すると、その5’-3’-エキソヌクレアーゼはプローブを分解し、蛍光レポーターをクエンチャーから物理的に分離し、蛍光の増加をもたらし、これを測定することができる。
【0138】
プローブ分子上の蛍光標識およびクエンチャー部分の位置は、2つの部分の間にFRETが生じ得るような位置であり得る。蛍光標識は、例えば、プローブ分子の5’末端またはその近傍に、クエンチャー部分はプローブの3’末端またはその近傍にあり得る。いくつかの実施形態において、蛍光標識とクエンチャーとの間の分離距離は約14~約22ヌクレオチドであるが、他の距離、例えば約6、約8、約10または約12ヌクレオチドが使用されてもよい。使用され得るさらなる距離としては、約14、約16、約18、約20または約22ヌクレオチドが挙げられる。
【0139】
リアルタイムPCRのためのオリゴヌクレオチドプローブ分子に使用することができる例示的な蛍光標識はFAMまたは6-FAMであり、代表的なクエンチャー部分はMGBである。レポーター部分の他の非限定的な例としては、フルオレセイン、HEX、TET、TAM、ROX、Cy3、Alexa、およびTexas Redが挙げられる一方、クエンチャーまたはアクセプター蛍光部分の非限定的な例としては、TAMRA、BHQ(ブラックホールクエンチャー)、LC RED 640、およびシアニン色素、例えばCY5が挙げられる。当業者によって理解されるように、レポーター部分およびクエンチャー/アクセプター部分のいかなる対も、それらが適合性があり、その結果ドナーからクエンチャー/アクセプターへの伝送が起こり得る限り、使用することができる。さらに、適切なドナーおよびクエンチャー/アクセプターの対は当技術分野で公知であり、本明細書に提供される。対の選択は、当技術分野で公知の任意の手段によって行うことができる。慣例のリアルタイムPCRプローブ分子は、例えば、ThermoFisher Scientific、Sigma-Aldrichなどから市販されている。
【0140】
6.2.5.仮想プローブ
便宜上、本セクション(および本開示の他のセクション)は、仮想プローブでプロービングされ得るアンプリコンおよびアンプリコンセットに言及する。しかしながら、仮想プローブを同様に使用して、ゲノムフラグメントなどの非増幅標的核酸を含むか、または含むと疑われる試料をプロービングすることができることを理解されたい。
【0141】
第1のアンプリコンセット(第1のゲノム内の領域に対応する単一の第1のアンプリコンまたは第1のゲノム内の異なる領域に対応する複数の第1のアンプリコンを含む)と第2のアンプリコンセット(第2のゲノム内の領域に対応する単一の第2のアンプリコンまたは第2のゲノム内の異なる領域に対応する複数の第2のアンプリコンを含む)との間のヌクレオチドミスマッチの数は比較的少ない可能性があり、個々のオリゴヌクレオチドプローブ分子は、単独で第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができない場合がある。本発明者らは、それにもかかわらず、仮想プローブを使用することによって、そのような状況において第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することが可能であることを予想外に発見した。仮想プローブのプローブ分子は、2つのアンプリコンセット間を単独では区別することができないが、集合的には、第1および第2のアンプリコンセットを仮想プローブのプローブ分子でプロービングした場合に観察される異なるハイブリダイゼーションパターンによって区別することができる。
【0142】
本発明者らは、仮想プローブに計量プローブを含めることが種同定の精度を向上させるのに役立ち得ることをさらに発見した。第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット中の相同アンプリコンとハイブリダイズすることができる計量プローブを使用して、試料中のそのようなアンプリコンの相対濃度の尺度を提供することができる。計量プローブからのシグナルに応じて、第1の式または第2の式を使用して、仮想プローブのすべてのプローブ分子について観察されたハイブリダイゼーションパターンを分析することができる。例えば、計量プローブからのシグナルが所定の閾値レベル以上である場合(試料中のアンプリコンの比較的高い濃度を示す)、第1の式を使用してハイブリダイゼーションパターンを分析することができ、計量プローブからのシグナルが閾値レベル未満である場合(試料中のアンプリコンの比較的低い濃度を示す)、第2の式を使用してハイブリダイゼーションパターンを分析することができる。閾値レベルは、例えば、既知または未知の濃度の微生物を含有する一連の試料から得られたシグナルデータから経験的に決定することができる(例えば、実施例6を参照のこと)。オリゴヌクレオチドプローブのシグナルデータをプロットし、プロットをパターンまたは傾向について調べ、閾値を、例えば実施例6に記載されるように、観察されたパターンまたは傾向に基づいて選択することができる。例えば、プロットは、X軸に第1のオリゴヌクレオチドプローブのシグナルデータを含み、Y軸にシグナル比データ(例えば、第2のオリゴヌクレオチドプローブのシグナルに対する第1のオリゴヌクレオチドプローブのシグナルの比)を含み得る。プロットが、パターンまたは傾向、例えば、第1のオリゴヌクレオチドプローブのシグナルが値X未満である場合にシグナル比が比較的高く、第1のオリゴヌクレオチドプローブのシグナルが値Xより大きい場合にシグナル比が比較的低いことを示せば、値Xを閾値として選択することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、仮想プローブで使用される計量プローブは、属プローブ、例えば、属のメンバーとしての微生物を同定するために使用することができるが、それ自体では属の個々の種を属の別の種から識別することができないプローブである。ブドウ球菌用の仮想プローブにおいて有用な例示的な計量プローブは、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0144】
第1のアンプリコンおよび第2のアンプリコンのヌクレオチド配列は、プローブ分子が第1のアンプリコンセットにハイブリダイズしたとき、およびプローブ分子が第2のアンプリコンセットにハイブリダイズしたときに(例えば、アレイ上で、またはリアルタイムPCR反応中に)、仮想プローブを構成する2つ以上のプローブ分子のシグナルパターンに差があるように、仮想プローブに使用されるプローブ分子によって結合され得るアンプリコンの領域に少なくとも1つ(例えば、1、少なくとも2、2、少なくとも3、または3)のヌクレオチドミスマッチを有するべきである。シグナルパターンの差を使用して、第1および第2のアンプリコンセットを同定および/または区別することができる。仮想プローブの使用によって第1のアンプリコンセットが存在すると決定された場合、第1のアンプリコンセットが作製された試料は、第1のアンプリコンセットに対応するゲノム(ひいては、試料にそのゲノムが含まれている生物)を含むと結論付けることができる。同様に、仮想プローブの使用によって第2のアンプリコンセットが存在すると決定された場合、第2のアンプリコンセットが作製された試料は、第2のアンプリコンセットに対応するゲノム(ひいては、試料にそのゲノムが含まれている生物)を含むと結論付けることができる。
【0145】
仮想プローブの個々のプローブ分子のシグナル(例えば、アレイ上での位置によって識別可能であるか、または異なる蛍光標識に対応するシグナル)は、PCR増幅産物にハイブリダイズされると、例えば、1つ以上のブール演算子によって、1つ以上の関係演算子によって、1つ以上のシグナル比によって(例えば、第1のプローブのシグナルを第2のプローブのシグナルで除することができる)、または上記のいずれかによって、任意の組み合わせで組み合わされて第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。いくつかの実施形態では、シグナルは、1つ以上のブール演算子によって組み合わされる。いくつかの実施形態では、シグナルは、1つ以上の関係演算子によって組み合わされる。さらに他の実施形態では、シグナルは、1つ以上のブール演算子および1つ以上の関係演算子によって組み合わされる。さらに他の実施形態では、シグナルは、シグナル比によって組み合わされる。
【0146】
いくつかの例では、ブール演算子「AND」、「OR」および「NOT」を使用して、仮想プローブの個々のプローブ分子からのシグナルを組み合わせて、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。一例として、2つの相同アンプリコン(この例では「Amplicon A」および「Amplicon B」)用の仮想プローブは、2つのプローブ分子(この例では「Probe1」および「Probe2」)からなる。Probe1およびProbe2は両方ともAmplicon Aに特異的にハイブリダイズすることができる一方、Amplicon Bには、Probe1は特異的にハイブリダイズすることができるがProbe2はできない。PCR増幅産物を仮想プローブでプロービングし、PCR増幅産物への、Probe1のハイブリダイゼーションからのシグナルおよびProbe2のハイブリダイゼーションからのシグナルが両方とも陽性である場合(ブール演算子「AND」を使用して「Probe1 AND Probe2」として表すことができる)、Amplicon AがPCR増幅産物中に存在すると決定することができる。PCR増幅産物を仮想プローブでプロービングし、Probe1のPCR産物へのハイブリダイゼーションからのシグナルが陽性であるが、Probe2のPCR産物へのハイブリダイゼーションからのシグナルが陽性でない場合(ブール演算子「NOT」を用いて「Probe1 NOT Probe2」として表すことができる)、PCR増幅産物中にAmplicon Bが存在すると決定することができる。ハイブリダイゼーションシグナルは、例えば、ハイブリダイゼーションシグナルがバックグラウンドレベルを上回る場合、陽性と見なすことができる。ハイブリダイゼーションシグナルは、例えば、シグナルが観察されないか、または観察されたシグナルがバックグラウンドレベル以下である場合、陽性でないと見なすことができる。
【0147】
いくつかの例では、関係演算子「超」(「>」)、「以上」(「≧」)、「未満」(「<」)および「以下」(「≦」)を使用して、仮想プローブの個々のプローブ分子からのシグナルを組み合わせて、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる。一例として、2つの相同アンプリコン(この例では「Amplicon C」および「Amplicon D」)用の仮想プローブは、2つのプローブ分子(この例では「Probe3」および「Probe4」)からなる。Probe3およびProbe4は両方とも、Amplicon CおよびAmplicon Dに特異的にハイブリダイズすることができる。Probe3およびProbe4がAmplicon Cにハイブリダイズすると、Probe3のシグナルはProbe4のシグナルより大きい(「超」の関係演算子を使用して「Probe3>Probe4」として表すことができる)。一方、Probe3およびProbe4をAmplicon Dにハイブリダイズさせた場合、Probe3のシグナルはProbe4のシグナルよりも小さい(「未満」の関係演算子を用いて「Probe3<Probe4」として表すことができる)。したがって、PCR増幅産物を仮想プローブでプロービングし、Probe3のシグナルがProbe4のシグナルよりも大きい場合、PCR増幅産物中にAmplicon Cが存在すると判断でき、Probe3のシグナルがProbe4のシグナルよりも小さい場合には、PCR増幅産物中にAmplicon Dが存在すると判断できる。
【0148】
いくつかの例では、個々のプローブ分子からのシグナルは、シグナル比、例えば、Probe2のシグナルで割ったProbe1のシグナル、またはその逆で組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、シグナル比を所定のカットオフ値と比較して、試料、または試験試料が調製された初期試料中の微生物の有無を判定することができる。
【0149】
ハイブリダイゼーションシグナルを組み合わせる場合、シグナルは、例えば、絶対シグナル、正規化シグナル、または部分的シグナルであり得る(例えば、仮想プローブで使用されるプローブ分子のシグナルの値は、例えば実施例3に記載されているように、所定の関数を使用して基準化することができる)。プローブ分子のシグナルは、例えば、所定のカットオフを上回る場合に陽性と見なすことができる。カットオフは、例えば、所与のプローブ分子について観察されるバックグラウンドシグナル(例えば、非特異的ハイブリダイズに起因するバックグラウンドシグナル)以上に設定することができる。したがって、例えば、プローブ分子のシグナルが観察されるが、そのシグナルがバックグラウンドレベル以下である場合、そのシグナルは陽性ではないと考えることができる。
【0150】
一実施形態において、仮想プローブは、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子(例えば、2つのオリゴヌクレオチドプローブ分子)を含む。別の実施形態において、仮想プローブは、3つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子(例えば、3つのオリゴヌクレオチドプローブ分子または4つのオリゴヌクレオチドプローブ分子)を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、第1の生物および第2の生物用の仮想プローブは、2つのプローブ分子からなる。一実施形態では、2つのプローブ分子は、第1のアンプリコンセット(第1の生物に対応する)中の第1のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット(第2の生物に対応する)中の第2のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができる第1のプローブ分子と、第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができるが、第1のアンプリコンセット中のアンプリコンにはできない第2のプローブ分子とを含む。そのような実施形態では、試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングした場合、第1のプローブ分子のシグナルが陽性であり、第2のプローブ分子のシグナルが陽性でなければ、第1の生物が試料中に存在すると判定することができる。他方では、PCR増幅産物をプロービングした場合に第1のプローブ分子のシグナルが陽性であり、第2のプローブ分子のシグナルが陽性であれば、第2の生物が試料中に存在すると判定することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、第1の生物および第2の生物用の仮想プローブは、3つのプローブ分子からなる。一実施形態では、3つのプローブ分子は、第1のアンプリコンセット(第1の生物に対応する)中の第1のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット(第2の生物に対応する)中の第2のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができる第1のプローブ分子と、第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができ、第1のプローブとは異なる第2のプローブ分子と、第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができ、第1および第2のプローブ分子とは異なる第3のプローブ分子とを含む。そのような実施形態では、PCR増幅産物をプロービングする際に観察される3つのプローブ分子の相対シグナルを使用して、PCR増幅産物を調製するために使用される試料が第1の生物または第2の生物を含むかどうかを決定することができる。
【0153】
仮想プローブを使用して相同ゲノム配列を区別することができるので、仮想プローブを使用して密接に関連する生物、例えば密接に関連する微生物を区別することができる。例えば、仮想プローブを使用して、微生物を同じ目、同じ科、同じ属、同じ群、または同じ種(例えば、同じ種の異なる株)からさえ区別することができる。例えば、仮想プローブを使用して、ラクトバシラス菌種とリステリア菌種とを区別し、コリネバクテリウム菌種とプロピオニバクテリウム菌種とを区別し、ミクロコッカス菌種とコクリア菌種とを区別し、パスツレラ菌種とヘモフィルス菌種とを区別し、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種とコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種とを区別し、ストレプトコッカス菌種(例えば、S.アンギノーサス、S.ゴルドニ、S.ミティス、肺炎レンサ球菌、S.アガラクティエ、化膿レンサ球菌、S.gallolyticus、S.infantarius、S.vestibularis、S.サリバリウス、S.hyointestinalis、S.constellatus、S.intermedius、S.オラリス、S.サングイニス、S.パラサングイニス)を区別し、ブドウ球菌種(例えば、S.lugdunensis、表皮ブドウ球菌)を区別し、エンテロコッカス菌種(例えば、E.フェカリス、E.フェシウム)を区別し、クロストリジウム菌種(例えば、ウェルシュ菌、C.clostridiiforme、C.innocuum)を区別し、バシラス菌種(例えば、セレウス菌、B.コアグランス)を区別し、シュードモナス菌種(例えば、緑膿菌、P.プチダ、P.スタッツェリ、P.フルオレッセンス、P.メンドシナ)を区別し、アシネトバクター菌種(例えば、A.バウマニ、A.lwoffii、A.ursingii、A.haemolyticus、A.junii)を区別することができる。
【0154】
セクション6.2.5.1~6.2.5.3およびセクション7の実施例1~5は、密接に関連した細菌の異なる種類を同定および/または識別するための例示的な仮想プローブを記載している。
【0155】
6.2.5.1.コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種用の仮想プローブ
本開示は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種が試料中に存在するかどうかを判定するために使用することができ、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種を含む試料を、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌種を含む試料から区別するために使用することができる仮想プローブを提供する。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種用の仮想プローブにおいて使用され得る第1の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むか、またはそれからなる。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種用の仮想プローブにおいて使用され得る第2の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むか、またはそれからなる。配列番号1および配列番号2のヌクレオチド配列は、16S RNAアンプリコンをプロービングするように設計されている。したがって、配列番号1または配列番号2のヌクレオチド配列を有するプローブ分子を使用して、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種の16S rRNAゲノム配列を増幅するように設計されたプライマーを使用して実施される、PCR増幅反応によって製造されるアンプリコンをプロービングすることができる。プローブ分子は、例えば、アレイに含めることができ、またはリアルタイムPCR反応に使用することができる。
【0156】
試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングする場合、第1のオリゴヌクレオチドプローブ(「Probe1」)のシグナルが陽性であり、第2のオリゴヌクレオチドプローブ(「Probe2」)のシグナルが陽性でなければ(「NOT」演算子を用いて「Probe1 NOT Probe2」として表すことができる)、試料がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種を含有すると決定することができる。
【0157】
あるいは、Probe1およびProbe2のシグナル比を使用することができる。例えば、Probe2のシグナルで除したProbe1のシグナルが所定のカットオフ値以上であれば、試料がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種を含有すると決定することができる。計量プローブからのシグナルが、試料中の標的核酸の量が比較的高い、または比較的低いことを示す場合、異なるカットオフ値を有する異なる式を使用することができる。Probe1は属プローブであり、計量プローブとして使用され得る。したがって、例えば、計量プローブからのシグナルが比較的高濃度の標的核酸を示す場合(例えば、シグナルが所定の閾値以上である場合)、第1のカットオフを有する第1の式を使用することができ、計量プローブからのシグナルが比較的低濃度の標的核酸を示す場合(例えば、計量プローブのシグナルが所定の閾値を下回る場合)、第2のカットオフを有する第2の式を使用することができる。第1および第2の式を使用すると、例えば、実施例6に記載されているような、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種およびコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種同定の精度を高めることができる。
【0158】
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種用の例示的な仮想プローブは、実施例1および6にさらに記載されている。
【0159】
6.2.5.2.ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)およびストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)用の仮想プローブ
ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)またはストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)が試料中に存在するかどうかを判定するために使用することができ、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)を含む試料をストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)を含む試料から区別するために使用することができる仮想プローブを提供する。S.ゴルドニ(gordonii)およびS.アンギノーサス(anginosus)用の仮想プローブにおいて使用され得る第1の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。S.ゴルドニ(gordonii)およびS.アンギノーサス(anginosus)用の仮想プローブにおいて使用され得る第2の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むか、またはそれからなる。配列番号3および配列番号4のヌクレオチド配列は、16S RNAアンプリコンをプロービングするように設計されている。したがって、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプローブ分子を使用して、S.ゴルドニ(gordonii)およびS.アンギノーサス(anginosus)由来の16S rRNAゲノム配列を増幅するように設計されたプライマーを使用して実施される、PCR増幅反応によって作製されるアンプリコンをプロービングすることができる。プローブ分子は、例えば、アレイに含めることができ、またはリアルタイムPCR反応に使用することができる。
【0160】
試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングする場合、第1のプローブ(「Probe1」)のシグナルが陽性であり、第2のプローブ(「Probe2」)のシグナルが陽性でなければ(「NOT」演算子を用いて「Probe1 NOT Probe2」として表すことができる)、試料がS.ゴルドニ(gordonii)を含有すると決定することができる。試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングする場合、Probe1のシグナルが陽性であり、Probe2のシグナルも陽性であれば(「AND」演算子を用いて「Probe1 AND Probe2」として表すことができる)、試料がS.アンギノーサス(anginosus)を含有すると決定することができる。S.ゴルドニ(gordonii)およびS.アンギノーサス(anginosus)用の例示的な仮想プローブは、実施例2にさらに記載されている。
【0161】
6.2.5.3.ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)および肺炎レンサ球菌用の仮想プローブ
ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)または肺炎レンサ球菌が試料中に存在するかどうかを判定するために使用することができ、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)を含む試料を肺炎レンサ球菌を含む試料から区別するために使用することができる仮想プローブを開示する。S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌用の仮想プローブにおいて使用され得る第1の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むか、またはそれからなる。S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌用の仮想プローブにおいて使用され得る第2の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むか、またはそれからなる。S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌用の仮想プローブにおいて使用され得る第3の例示的なプローブ分子は、ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むか、またはそれからなる。配列番号5、配列番号6および配列番号7のヌクレオチド配列は、16S RNAアンプリコンをプロービングするように設計されている。したがって、配列番号5、配列番号6または配列番号7のヌクレオチド配列を有するプローブ分子を使用して、S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌の16S rRNAゲノム配列を増幅するように設計されたプライマーを使用して実施される、PCR増幅反応によって製造されるアンプリコンをプロービングすることができる。プローブ分子は、例えば、アレイに含めることができ、またはリアルタイムPCR反応に使用することができる。
【0162】
試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングする場合、第2のプローブ(「Probe2」)および/または第3のプローブ(「Probe3」)のシグナルが第1のプローブ(「Probe1」)の基準化されたシグナルよりも小さければ、試料がS.ミティス(mitis)を含有すると決定することができる。試料がS.ミティス(mitis)を含むかどうかを決定するためのシグナル間の関係は、ブール演算子および関係演算子を使用して「(Probe2 OR Probe3)<(Probe1)/n」として表すことができ、nはProbe1シグナルを基準化するために使用される所定の値である。試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングする場合、Probe2および/またはProbe3のシグナルがProbe1の基準化されたシグナルよりも大きければ、試料が肺炎レンサ球菌を含有すると決定することができる。試料が肺炎レンサ球菌を含むかどうかを決定するためのシグナル間の関係は、ブール演算子および関係演算子を使用して「(Probe2 OR Probe3)>(Probe1)/n」として表すことができる。「n」の適切な値は、例えば、S.ミティス(mitis)を含有することが知られている試料から作製されたPCR産物をプロービングすること、および肺炎レンサ球菌を含有することが知られている試料由来のPCR産物をプロービングすることによって決定することができる。
【0163】
あるいは、試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングする場合、Probe1のシグナルで割ったProbe3のシグナルが所定の値「n」よりも小さければ、試料がS.ミティス(mitis)を含有すると決定することができる。試料から調製されたPCR増幅産物をプロービングする場合、Probe1のシグナルで割ったProbe3のシグナルが所定の値「n」よりも大きければ、試料が肺炎レンサ球菌を含有すると決定することができる。「n」の適切な値は、例えば、S.ミティス(mitis)を含有することが知られている試料から作製されたPCR産物をプロービングすること、および肺炎レンサ球菌を含有することが知られている試料由来のPCR産物をプロービングすることによって決定することができる。
【0164】
S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌用の例示的な仮想プローブは、実施例3にさらに記載されている。
【0165】
6.3.アレイ
本開示は、それぞれが第1のゲノム配列を第2の相同ゲノム配列から区別するために有用であり得る、1つ以上の仮想プローブを含むアドレサブルアレイを提供する。
【0166】
本開示のアドレサブルアレイは、本明細書に記載の方法で使用することができる。本開示のアドレサブルアレイは、それぞれがアレイ上の離散した位置にある、位置的にアドレサブルなオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含むことができる。いくつかの実施形態において、仮想プローブを構成するオリゴヌクレオチドプローブ分子の群における各プローブ分子(典型的には、2つまたは3つの異なるプローブ分子)は、仮想プローブが区別しようとする第1のゲノム配列または第2のゲノム配列における15~40個の連続するヌクレオチド(例えば、15~20、15~30、20~40、20~30、または30~40個の連続するヌクレオチド)に90%~100%(例えば、90%~95%または95%~100%)相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0167】
アドレサブルアレイは、場合により1つ以上の制御プローブ分子(例えば、DNA抽出および増幅工程の効率を評価するのに有用な抽出および増幅制御、および/またはアレイへのDNAハイブリダイゼーションの効率を評価するのに有用なハイブリダイゼーション制御)をさらに含んでもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、アレイのプローブ分子は、ポリチミジン尾部、例えば最大10ヌクレオチドを含むポリチミジン尾部、または例えば最大15ヌクレオチドを含むポリチミジン尾部、または例えば最大20ヌクレオチドを含むポリチミジン尾部を含む。いくつかの実施形態では、ポリチミジン尾部は、10mer~20mer、例えば15merである。
【0169】
いくつかの実施形態では、アドレサブルアレイは、12個以上のプローブ分子、例えば12~100個のプローブ分子、または例えば12~50個のプローブ分子、または例えば25~75個のプローブ分子、または例えば50~100個のプローブ分子を含む。いくつかの実施形態では、アドレサブルアレイは、12個のプローブ分子を含む。他の実施形態では、アドレサブルアレイは、14個のプローブ分子を含む。さらに他の実施形態では、アドレサブルアレイは、84個のプローブ分子を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、アドレサブルアレイは、少なくとも2つの仮想プローブ、例えば少なくとも3つの仮想プローブ、または例えば少なくとも5つの仮想プローブ、または例えば少なくとも10個の仮想プローブ用のオリゴヌクレオチドプローブを含むか、または例えば、アドレサブルアレイは、最大10個または最大15個の仮想プローブ用のオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0171】
仮想プローブは、プローブ分子が2つ以上の仮想プローブの構成要素となり得るように重複させることができる。仮想プローブは、重複させなくてもよい。
【0172】
いくつかの実施形態では、アドレサブルアレイは、少なくとも5つの異なる種類の微生物、例えば細菌を区別することができる仮想プローブを含む。他の実施形態では、アドレサブルアレイは、少なくとも10の異なる種類、例えば少なくとも20の異なる種類、例えば少なくとも30の異なる種類、例えば少なくとも40の異なる種類、または例えば最大50の異なる種類の微生物、例えば細菌を区別することができる仮想プローブを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、アドレサブルアレイは、少なくとも5個の仮想プローブ、例えば少なくとも10個の仮想プローブ、例えば少なくとも15個の仮想プローブ、または例えば少なくとも20個の仮想プローブを含み、その各々が異なる種類の微生物、例えば細菌、例えば試料中に存在し得る細菌の異なる株または種を識別することができる。
【0174】
いくつかの実施形態において、本開示のアドレサブルアレイは、真正細菌の種由来のゲノム配列を、真正細菌の種ではない微生物のゲノム配列から区別するための1つ以上の仮想プローブを含む。いくつかの実施形態では、アドレサブルアレイは、グラム陽性細菌由来のゲノム配列とグラム陰性細菌由来のゲノム配列とを区別するのに適した1つ以上の仮想プローブを含む。いくつかの実施形態では、アドレサブルアレイは、異なる目の微生物由来のゲノム配列を区別するのに適した1つ以上の仮想プローブを含む。いくつかの実施形態では、仮想プローブは、異なる科の微生物由来のゲノム配列を区別するのに適している。いくつかの実施形態では、仮想プローブは、異なる属、異なる群、および/または異なる種の微生物由来のゲノム配列を区別するのに適している。
【0175】
本開示のアレイを作製するために使用され得る適切なマイクロアレイシステムは、米国特許第9,738,926号および米国特許出願公開第2018/0362719A1号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第9,738,926号および米国特許出願公開第2018/0362719A1号に記載されているマイクロアレイシステムは、三次元架橋ポリマーネットワークを利用する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のアレイは、米国特許第9,738,926号に記載のアレイを含み、アレイのプローブ分子は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含む。他の実施形態では、本開示のアレイは、米国特許出願公開第2018/0362719A1号に記載のアレイを含み、アレイのプローブ分子は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含む。
【0176】
本開示の一態様では、本開示は、本開示のアレイを使用して、第1の生物または第2の生物が試料中に存在するかどうかを判定する方法を提供する。例示的な方法は、以下を含む:
第1の生物のゲノム(「第1のゲノム」)および第2の生物のゲノム(「第2のゲノム」)の両方にハイブリダイズし、そこからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して試料に対してPCR増幅反応を行い、第1のゲノムおよび第2のゲノムが試料中に存在する場合、それぞれ第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットを得、PCR増幅反応によって、反応で作製される任意のPCR増幅産物中に測定可能なシグナルを生成する標識を組み込む工程;
PCR増幅産物を、各々が第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセット中の1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができる、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子であって、第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに異なってハイブリダイズし、それにより、プローブ分子が第1のアンプリコンセット中および第2のアンプリコンセット中のアンプリコンへハイブリダイズすることで、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる、2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む1つ以上の仮想プローブを有する本開示のアレイに接触させる工程;
アレイからの未結合核酸分子を洗浄する工程;および
アレイ上の各プローブ分子位置における標識のシグナルを測定する工程;および
シグナルが、プローブ分子にハイブリダイズするPCR増幅産物がPCR増幅反応によって作製されることを示す場合、本明細書に記載されるようにシグナルを分析して、第1のアンプリコンセットまたは第2のアンプリコンセットがPCR増幅反応によって作製されるかどうかを判定するか、またはシグナルが、プローブ分子の群にハイブリダイズするPCR増幅産物がPCR増幅反応によって作製されないことを示す場合、その試料が第1の生物または第2の生物を含まないと判定する工程、
したがって、第1の生物または第2の生物が試料中に存在するかどうかを判定する工程。
【0177】
6.4.コンピュータ実装
本開示の方法の多くの態様は、コンピュータによって実装することができる。
【0178】
したがって、本開示は、第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する同じ属の第2の微生物が、試験試料または試験試料が調製された初期試料中に存在するかどうかを検出するためのコンピュータ実装方法を提供する。
【0179】
本方法は、典型的には、1つ以上のプロセッサによって実行するための1つ以上のコンピュータ可読命令を記憶するメモリに連結された、1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステムにおいて、1つ以上のコンピュータ可読命令を実行することを含み、1つ以上のコンピュータ可読命令は、(a)プローブ分子と試験試料中の核酸(存在する場合)とのハイブリダイゼーションからのシグナルデータを受信するための命令、および(d)1つ以上の式に従ってシグナルデータを分析して、第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する第2の微生物が試験試料または試験試料が調製された初期試料中に存在するかどうかを判定するための命令を含む。1つ以上の式は、例えば、計量プローブからのシグナルが所定の閾値以上である場合にシグナルデータを分析するために使用される第1の式と、計量プローブからのシグナルデータが所定の閾値未満である場合にシグナルデータを分析するために使用される第2の式とを含むことができる。
【0180】
コンピュータ実装方法は、例えば、試料中の微生物の同一性および/または試料中の目的の微生物の不在に関する通知をユーザに提供することを含むことができる。
【0181】
6.5.システム
本開示は、例えば、生物が試料中に存在するかどうかを決定するために有用なシステムを提供する。システムは、例えば、(i)オリゴヌクレオチドプローブ分子を有するアレイ(例えば、本開示のアレイ)の各プローブ分子位置についてのシグナルデータを生成するための光学リーダ;および(ii)光学リーダからシグナルデータを受信するように構成され、仮想プローブ(例えば、本明細書に記載の特徴を有する仮想プローブ)を使用してシグナルデータを分析するように構成され、分析の結果を出力するための記憶もしくは表示装置またはネットワークへのインターフェースを有する少なくとも1つのプロセッサを含むことができる。
【0182】
本開示のシステムで使用することができる光学リーダには、市販のマイクロプレートリーダ(例えば、GloMax(登録商標)Discover(Promega)、ArrayPix(商標)(Arrayit)、Varioskan(商標)LUX(Thermo Scientific)、Infinite(登録商標)200 PRO(Tecan))が含まれる。
【0183】
システムは、アレイ上の蛍光標識分子(例えば、プローブ分子および/またはそれにハイブリダイズしたアンプリコン)を励起することができる光源光源を(光学リーダの構成要素として、または別個の構成要素として)さらに含むことができる。
【0184】
システムは、シグナルデータの分析を実施するためのプロセッサ実行可能命令を含む、非一時的記憶媒体(例えば、ハードディスク、フラッシュドライブ、CDまたはDVD)を含むことができる。
【0185】
システムは、汎用または専用のコンピューティングシステム環境または構成を含むことができる。本開示のシステムと共に使用することができる周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例には、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、スマートフォン、タブレット、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムまたは装置のいずれかを含む分散コンピューティング環境などが含まれるが、これらに限定されない。
【0186】
本開示のシステムは、プログラムモジュールなどのコンピュータ実行可能命令を実行することができる。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか、または特定の抽象データ型を実現するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。いくつかの実施形態はまた、通信ネットワークを介してリンクされたリモート処理装置によってタスクが実行される分散コンピューティング環境で実施されてもよい。これらの分散システムは、企業コンピューティングシステムとして知られているものであってもよく、またはいくつかの実施形態では、「クラウド」コンピューティングシステムであってもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶装置を含むローカルおよび/またはリモートコンピュータ記憶媒体の両方に配置することができる。
【0187】
コンピューティング環境は、1つまたは複数の入力/出力装置を含むことができる。いくつかのそのような入力/出力装置は、ユーザインターフェースを提供することができる。ユーザは、キーボードなどの入力装置およびマウスなどのポインティング装置を介して、コンピュータにコマンドおよび情報を入力することができる。しかしながら、トラックボール、タッチパッドまたはタッチスクリーンを含む他の形態のポインティング装置が使用されてもよい。
【0188】
本開示のシステムは、ユーザインターフェースの一部を形成することができる出力装置、例えばモニタを含む、1つ以上の出力装置を含むことができる。
【0189】
本開示のシステムは、1つ以上のリモートコンピュータへの論理接続を使用してネットワーク環境で動作することができる。リモートコンピュータは、パーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイス、または他の共通ネットワークノードであってもよい。論理接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイドエリアネットワーク(WAN)を含むが、他のネットワークも含むことができる。そのようなネットワーキング環境は、オフィス、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、およびインターネットにおいて一般的である。これに代えて、またはこれに加えて、WANはセルラネットワークを含んでもよい。
【0190】
LANネットワーキング環境で使用される場合、本開示のシステムは、ネットワークインターフェースまたはアダプタを介してLANに接続することができる。WANネットワーキング環境で使用される場合、システムは、モデム、またはインターネットなどのWANにわたる通信を確立するための他の手段を含むことができる。
【0191】
ネットワーク環境では、仮想プローブを使用してシグナルデータを分析するためのプログラムモジュールをリモートメモリ記憶装置(例えば、ハードドライブまたはフラッシュドライブ)に記憶することができる。
【0192】
本開示のシステムは、PCR増幅反応の産物をアレイに添加することができ、未結合核酸分子をアレイから洗浄することができるプレートハンドリングロボットをさらに含むことができる。多数のプレートハンドリングロボットが市販されており、そのようなロボットを本開示のシステムで使用することができる(例えば、Tecan MSP 9000、MSP 9250もしくはMSP 9500、Tecan Cavro(登録商標)Omni Flex、Tricontinent TriTon(XYZ)、またはAurora Versa(商標))。
【0193】
6.6.キット
本開示は、本開示の方法における使用に適したキットを提供する。
【0194】
キットは、例えば、本明細書に記載のリアルタイムPCR反応での使用に適した2つ以上の標識プローブ分子(例えば、2~20個のプローブ分子、2~10個のプローブ分子、2~5個のプローブ分子、5~10個のプローブ分子、または10~20個のプローブ分子)のセットを含むことができる。例えば、キットは、(1)ヌクレオチド配列が配列番号1を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号2を含むプローブ分子;(2)ヌクレオチド配列が配列番号3を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号4を含むプローブ分子;または(3)ヌクレオチド配列が配列番号5を含むプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むプローブ分子、を含むことができる。いくつかの実施形態では、キットは、(1)および(2)のプローブ分子の組み合わせを含む。他の実施形態では、キットは、(1)および(3)のプローブ分子の組み合わせを含む。他の実施形態では、キットは、(2)および(3)のプローブ分子の組み合わせを含む。さらに他の実施形態では、キットは、(1)、(2)および(3)のプローブ分子の組み合わせを含む。
【0195】
他の実施形態では、キットは、例えば、本明細書に記載のアレイ上での使用に適した2つ以上のプローブ分子(例えば、2~20個のプローブ分子、2~10個のプローブ分子、2~5個のプローブ分子、5~10個のプローブ分子、または10~20個のプローブ分子)のセットを含むことができる(例えば、非標識プローブ分子)。例えば、キットは、(1)ヌクレオチド配列が配列番号1を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号2を含むプローブ分子;(2)ヌクレオチド配列が配列番号3を含むプローブ分子およびヌクレオチド配列が配列番号4を含むプローブ分子;または(3)ヌクレオチド配列が配列番号5を含むプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むプローブ分子、を含むことができる。いくつかの実施形態では、キットは、(1)および(2)のプローブ分子の組み合わせを含む。他の実施形態では、キットは、(1)および(3)のプローブ分子の組み合わせを含む。他の実施形態では、キットは、(2)および(3)のプローブ分子の組み合わせを含む。さらに他の実施形態では、キットは、(1)、(2)および(3)のプローブ分子の組み合わせを含む。
【0196】
他の実施形態では、キットは、本明細書に記載のアレイを含むことができる。
【0197】
本明細書に記載のキットは、PCR反応を実施するための1つ以上の試薬、例えば相同ゲノム配列を増幅するための1つ以上(例えば、2つ)のプライマー、および/またはハイブリダイゼーション反応を実施するための1つ以上の試薬、例えば洗浄緩衝液をさらに含むことができる。
【0198】
本明細書に記載のキットは、1つ以上の試薬、および/またはPCR増幅反応のための試料を調製するための1つ以上の装置、例えば溶解緩衝液またはビーズビーティングシステムをさらに含むことができる。
【0199】
本明細書に記載のキットは、キットの構成要素を使用して本明細書に記載の方法の工程の一部または全部を実施するための、1つ以上の容器および/または説明書をさらに含むことができる。
【実施例】
【0200】
7.実施例
7.1.実施例1:コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)用の仮想プローブ
黄色ブドウ球菌はコアグラーゼ陽性種であり、身体の微生物叢の正常なメンバーである。しかしながら、黄色ブドウ球菌は、皮膚感染症、呼吸器感染症、および食中毒を引き起こす、日和見性病原体になり得る。したがって、臨床試料において黄色ブドウ球菌と他のブドウ球菌種とを区別することができる試験が臨床的に必要とされている。他にもコアグラーゼ陽性ブドウ球菌はいくつかあるが、通常は疾患における重大な役割を果たさず、したがってほとんどの分析目的では無視することができる。
【0201】
ブドウ球菌種を非特異的に同定するために使用され得るオリゴヌクレオチドプローブ、「AllStaph-146abp」(ヌクレオチド配列CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を有する)を作製した。換言すれば、AllStaph-146abpは、属プローブ分子であり、それ自体では、試料中のコアグラーゼ陰性種から黄色ブドウ球菌を区別することができない。実施例で用いたプローブ分子名に存在する数字は、プローブ分子でプロービング可能なアンプリコンを作製するためのフォワードPCRプライマーと、プローブの出発との間のヌクレオチド数での距離を指す。第2のオリゴヌクレオチドプローブ、「Sau-71p」(ヌクレオチド配列GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を有する)は、黄色ブドウ球菌由来のアンプリコンで陽性シグナルを提供するが、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌由来のアンプリコンで陽性シグナルを提供しない16S rRNAプローブ分子である。したがって、臨床的に関連する唯一のコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種が黄色ブドウ球菌である場合、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌種用の例示的な仮想プローブは、AllStaph-146abpおよびSau-71pからなり得る。仮想プローブでPCR増幅産物をプロービングし、AllStaph-146abpのシグナルが陽性であり、Sau-71pのシグナルが陽性でない場合(「AllStaph-146-abp NOT Sau-71p」と表すことができる)、PCR増幅産物へと作製された試料がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種を含む、と決定することができる(
図10Aを参照されたい)。より多くの種が関連する状況では、仮想プローブは追加のプローブ分子を含むことができる。例えば、ウシ、ウマおよびブタにおいて皮膚疾患を引き起こし得るS.ハイカス(hyicus)が関連する場合、S.ハイカス(hyicus)に特異的なプローブも陽性でなければ(「AllStaph-146abp NOT Sau71P NOT S.hyicus」と表すことができる)、試料はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種を含有する、と決定することができる(
図10Bを参照されたい)。
【0202】
7.2.実施例2:ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)およびストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)を区別するための仮想プローブ
ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)は、ヒトの口中に一般的に見られる細菌である。S.ゴルドニ(gordonii)は、口の中では通常無害であるが、血流に入ると急性細菌性心内膜炎を引き起こす可能性がある。ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)もヒト微生物叢のメンバーであり、免疫無防備状態の個体において感染症を引き起こすことが知られている。
【0203】
試料中のS.アンギノーサス(anginosus)およびS.ゴルドニ(gordonii)を区別するための仮想プローブに使用され得る、2つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が作製されている。ヌクレオチド配列CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を有するオリゴヌクレオチドプローブ分子「Stango 85p」は、S.アンギノーサス(anginosus)およびS.ゴルドニ(gordonii)のいずれかが試料中に存在する場合に陽性シグナルをもたらすことができる16S rRNAプローブ分子である。一方、ヌクレオチド配列TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を有するオリゴヌクレオチドプローブ分子「Sang 156p」は、S.アンギノーサス(anginosus)由来のアンプリコンで陽性シグナルをもたらし、S.ゴルドニ(gordonii)由来のアンプリコンで陽性シグナルをもたらさない。S.ゴルドニ(gordonii)およびS.アンギノーサス(anginosus)用の例示的な仮想プローブは、Stango85pおよびSang156pからなる。仮想プローブでPCR増幅産物をプロービングし、Stango85pについてのシグナルが陽性であり、San156pについてのシグナルが陽性でない場合(「Stango85p NOT Sang156p」と表すことができる)、PCR増幅産物を調製するために使用された試料がS.ゴルドニ(gordonii)を含有する、と決定することができ、一方、Stango85pについてのシグナルが陽性であり、San156pについてのシグナルが陽性である場合(「Stango85p AND Sang156p」と表すことができる)、試料がS.アンギノーサス(anginosus)を含有すると決定することができる。
【0204】
7.3.実施例3:ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)および肺炎レンサ球菌を区別するための仮想プローブ
ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)および肺炎レンサ球菌は、両方とも病原性であり得、それらの16S rRNAにおいてほぼ同一であり、それにより、16S rRNA用の単一オリゴヌクレオチドプローブ分子を使用して2つの種を区別することを困難にする。
【0205】
S.ミティス(mitis)と肺炎レンサ球菌とを区別するための仮想プローブに使用され得る、3つのオリゴヌクレオチドプローブ分子が作製されている。ヌクレオチド配列AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を有する第1のプローブ「AllStrep-261p」は、様々なレンサ球菌種を区別することができない属プローブ分子である。ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を有する第2のプローブ「Spneu-229p」は、肺炎レンサ球菌由来のゲノム配列を含むが、それ自体を使用してS.ミティス(mitis)と肺炎レンサ球菌とを区別することはできない。ヌクレオチド配列GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を有する第3のプローブ「Spneu-229bp」は、肺炎レンサ球菌におけるSNPを説明する単一ヌクレオチドでSpneu-229pとは異なる。
【0206】
S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌由来の16S rRNAアンプリコンが3つのプローブ分子を含むアレイに結合した場合、3つのプローブ分子のそれぞれについて陽性シグナルが観察された(
図11A~
図11B)。したがって、3つのプローブ分子を個別に使用して、S.ミティス(mitis)と肺炎レンサ球菌とを区別することはできない。しかしながら、S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌由来のアンプリコンは、S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌由来の16S rRNAアンプリコンを3つのプローブでプロービングする場合のシグナルパターンを評価することによって区別することができた。具体的には、S.ミティス(mitis)を含む試料から作製したPCR増幅産物をプロービングすると、「(Spneu-229p OR Spneu-229bp)<(AllStrep-261p)/3」と表すことができるシグナルパターンが得られ、肺炎レンサ球菌を含む試料から作製したPCR増幅産物をプロービングすると、「(Spneu-229p AND Spneu-229bp)>(AllStrep-261p)/3」と表すことができるシグナルパターンが得られた。
【0207】
S.ミティス(mitis)および肺炎レンサ球菌含有試料からのハイブリダイゼーションデータのさらなる分析から、Spneu-229bpおよびAllStrep-261pプローブのシグナルパターン、「(Spneu-229bp/AllStrep-261p)≦0.39」はS.ミティス(mitis)の存在を示し、Spneu-229bpおよびAllStrep-261pプローブのシグナルパターン、「(Spneu-229bp/AllStrep-261p)>0.39」は肺炎レンサ球菌の存在を示すことが決定された。
【0208】
このように、この例は、仮想プローブの概念を検証する。
【0209】
7.4.実施例4:Streptococcus viridians群を検出するための仮想プローブ
viridians Streptococcus群(VGS)は、臨床的に関連するグラム陽性細菌の主要な群の1つであり、24を超える種を含み、それらはストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)群、ストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)群、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)群、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)群およびストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)群の5つの下位群に配置されている。VGS群細菌は、免疫無防備状態の患者において肺炎および敗血症を引き起こす可能性がある。
【0210】
群としてのVGS種は遺伝的に異種起源であるように見え、単一のプローブで様々な種を検出できることを示唆している。様々なVGS群細菌用の複数のプローブを設計したが、種のうちの少数は、他のVGS下位群用のプローブとの交差反応性を示した(
図12を参照されたい。そこでは肺炎レンサ球菌のS.ミティス(mitis)プローブSmit-79pとの交差反応性が示され、S.ミティス(mitis)およびS.オラリス(oralis)の肺炎レンサ球菌プローブSpneu-229pおよびSpneu-229bpとの交差反応性が示されている)。交差反応性を考慮して、肺炎レンサ球菌とS.ミティス(mitis)/S.オラリス(oralis)とを区別することができるS.ミティス(mitis)群細菌用の仮想プローブを設計した:
【0211】
S.ミティス(mitis)下位群=(Spar-205p AND AllStrep-261p)OR(Smit-79p AND AllStrep-261p AND NOT Shyo-193p)OR(Ssang-193p AND AllStrep-261p AND NOT Stmu-86p)OR(Stango-85p AND NOT Sang-156p AND AllStrep-261p>0.01)AND IF Smit-79p THEN(Spneu-229bp/AllStrep-261p)/AllStrep-261p≦3
【0212】
7.5.実施例5:腸内細菌科群からの種を検出するための仮想プローブ
腸内細菌科は、病原性種と非病原性種の両方を含むグラム陰性細菌の大きな科である。病原性の科のメンバーには、クレブシエラ種、エンテロバクター種、エシェリヒア種、シトロバクター種、セラチア種およびサルモネラ種が含まれる。
【0213】
科のメンバーの16s rRNA領域は、種間で最小限の遺伝子配列変異を有し、種間を区別することができる16 Sプローブの設計を困難にする。しかしながら、16S配列の類似性を考慮して、共通のプローブ「Entb-132p」が設計され、これはプローブ「Entb-299p」で同定され得るパントエア種を除いて、ほとんどの科のメンバーをEnterobacteriace科として同定することができる。
【0214】
16S rRNAゲノム領域におけるEnterobacteriace種由来の種のクラスタリングパターンに従って、2つのグループプローブを設計した。エンテロバクター属およびクレブシエラ属由来の種はプローブ「Enklsps-95p」によって同定することができ、シトロバクター属、サルモネラ属およびエシェリヒア属由来の種はプローブ「SaEsCi-91p」によって同定することができる。腸内細菌種間を区別することができる単一プローブを設計することは困難であるため、腸内細菌種の階層的同定および識別のために、16S rRNAとITSプローブとの組み合わせを設計した(
図13および
図14参照)。
【0215】
16s-23s ITS領域の使用により、E.クロアカ、E.アズブリア、およびE.ホルメシェイを含むエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)複合体の種を区別することが可能になった。組み合わせて使用される3つのプローブ「Encl-1871p」、「Encl-1659p」および「ECC3-1729p」によって、異なるエンテロバクター・クロアカ複合種の特異的同定が可能になった(
図15参照)。
E.クロアカ=Encl-1659p NOT(Encl-1871p OR ECC3-1729p)
E.アズブリア=Encl01871p NOT(Encl-1659p OR ECC3-1729p)
E.ホルメシェイ=(Encl-1871p AND ECC3-1729p)NOT Encl-1659p
【0216】
7.6.実施例6:仮想プローブによるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の検出の改善
この実施例は、実施例1に記載のAllStaph-146abpおよびSau-71pプローブを含む仮想プローブを使用してCNSおよびコアグラーゼ陽性黄色ブドウ球菌を区別および同定するための改善された方式を記載する。
【0217】
AllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比を使用して、CNSを含有する試料を黄色ブドウ球菌を含有する試料から区別することができる。例えば、シグナル比カットオフ値2を使用して、CNSを含有する試料を黄色ブドウ球菌を含有する試料から良好な精度で区別できることが分かった(例えば、AllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比が>2である場合、試料をCNSを含有するものとして同定し、AllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比が<2である場合、黄色ブドウ球菌を含有する試料と同定する)(データは示さず)。
【0218】
しかしながら、高濃度のCNSを含有する試料では、高濃度ではAllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比が約2に低下したため、カットオフ値2が、時として不正確な同定をもたらし得ることが発見された。
図16A~
図16Bを参照されたい。オリゴヌクレオチドプローブは、高濃度の標的核酸を含有する試料をプロービングする場合に飽和する可能性があり、AllStaph-146abpおよびSau-71pプローブが異なる試料濃度で飽和に達することが発見された。例えば、
図16A~16Bは、試料中のCNS(S.ホミニス)および黄色ブドウ球菌の濃度が増加すると、S.ホミニスまたは黄色ブドウ球菌を含有する試料について観察されたAllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比が一定のままではなく、試料濃度が増加するにつれて減少したことを示す。これは、AllStaph-146abpプローブ(属プローブ)がSau-71pよりも低い濃度で飽和に達したことを示している。したがって、低い試料濃度のCNSと黄色ブドウ球菌とを正確に区別し得るAllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比カットオフ値(例えば、2)は、高い試料濃度では不正確な識別をもたらし得る。
【0219】
AllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比は、試料濃度が増加するにつれて低下することが観察されたが、すべての試験濃度について、黄色ブドウ球菌のAllStaph-146abp/Sau-71p比がCNSより高いままであることも観察された。したがって、試料中の標的配列の相対濃度の知識により、AllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比の適切なカットオフ値を使用して、試料濃度が高くても、CNSと黄色ブドウ球菌とを区別することができる。属プローブAllStaph-146abpを計量プローブに使用して、標的核酸濃度の相対的尺度を提供できることが発見された。標的核酸濃度のこの相対的尺度を説明するCNSおよび黄色ブドウ球菌を識別するための式を設計した:
CNS判定のための式:
((AllStaph-146abp≧0.2 AND AllStaph-146abp/Sau-71p≧1.5))
OR
((AllStaph-146abp<0.2 AND AllStaph-146abp/Sau-71p>3))
【0220】
上記の式では、生のAllStaph-146abpシグナル0.2が閾値である(生シグナルデータから経験的に決定された。
図17参照)。
図17は、黄色ブドウ球菌を含有する試料についてAllStaph-146abpシグナルデータをX軸上に、AllStaph-146abp/Sau-71シグナル比をY軸にプロットする。閾値0.2を選択したのは、AllStaph-146abp/Sau-71シグナル比が、AllStaph-146abpシグナルが0.2未満であると一般に比較的高く、AllStaph-146abpシグナルが0.2を超えると比較的低いことが観察されたからである。閾値0.2が選択されたら、CNSまたは黄色ブドウ球菌の存在を示すAllStaph-146abp/Sau-71シグナル比のカットオフ値を、AllStaph-146abpシグナルレベルが0.2以上である場合の使用およびAllStaph-146abpシグナルレベルが0.2未満である場合の使用のために選択した。カットオフ値を1.5(AllStaph-146abpシグナルが0.2以上である場合に使用するため)、および3(AllStaph-146シグナルが0.2未満である場合に使用するため)に選択した。閾値およびカットオフ値の選択に使用したデータを表3A~3Bに示す。
【0221】
上記の式において、AllStaph-146abpからのシグナルが閾値の0.2以上である場合(標的核酸の濃度が比較的高いことを示す)、Allstaph-146abp/Sau-71pの生シグナルの比が1.5以上であると、CNSが存在すると判定され、比が1.5未満であると、黄色ブドウ球菌が存在すると判定される。AllStaph-146abpからのシグナルが0.2未満である場合(標的核酸の濃度が比較的低いことを示す)、AllStaph-146abp/Sau-71pの生シグナルの比が3を超えると、試料中にCNSが存在すると判定され、比が3以下であると、黄色ブドウ球菌が存在すると判定される。
【0222】
したがって、上記の式は、第1の式(AllStaph-146abp/Sau-71p≧1.5)および第2の式(AllStaph-146abp/Sau-71p>3)の組み合わせを表し、AllStaph-146abpのシグナル(具体的には、シグナルがどの程度閾値に匹敵しているか)が、どの式を使用してCNSまたは黄色ブドウ球菌を含有する試料を同定するかを決定する。試料中の標的核酸の相対濃度を説明する式を使用すると、単一のAllStaph-146abp/Sau-71pシグナル比カットオフのみに基づく式と比較して、CNSおよび黄色ブドウ球菌の同定の精度を高めることができる。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0223】
8.特定の実施形態
本開示は、以下の特定の実施形態によって例示される。
1.第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する同じ属の第2の微生物が、試験試料または試験試料が調製された初期試料中に存在するかどうかを検出する方法であって、
(a)複数のプローブ分子を含む仮想プローブで試験試料をプロービングする工程であって、
(i)仮想プローブが少なくとも2つのプローブ分子を含み、それぞれが第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができ、
(ii)プローブ分子の少なくとも1つは、第1のゲノムに対応する標的核酸および第2のゲノムに対応する相同標的核酸にハイブリダイズすることができる計量プローブであり、その結果、計量プローブのそのような標的核酸へのハイブリダイゼーションが、試験試料中の標的核酸の相対量の尺度を提供することができ、
(iii)仮想プローブのプローブ分子は、単独で第1および第2のゲノムに対応する標的核酸を区別することができず、
(iv)プローブ分子は、第1および第2のゲノムに対応する標的核酸に等しくハイブリダイズせず、その結果、第1および第2のゲノムに対応する標的核酸へのプローブ分子のハイブリダイゼーションによって、第1のゲノムおよび第2のゲノムに対応する標的核酸を区別することができる、工程;
(b)仮想プローブ中のプローブ分子と、もしあれば試験試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルを検出および/または定量する工程;および
(c)プローブ分子の試験試料中の核酸へのハイブリダイゼーションが検出された場合、
(i)計量プローブの試料中の核酸へのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値以上である場合、工程(b)で検出および/または定量されたシグナルを第1の式に従って分析し、
(ii)計量プローブの試料中の核酸へのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値未満である場合、工程(b)で検出および/または定量されたシグナルを第2の式に従って分析する工程を含む、方法。
2.計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが生シグナルである、実施形態1の方法。
3.計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが正規化シグナルである、実施形態1の方法。
4.計量プローブが属プローブである、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
5.第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第1のアンプリコンセットであり、第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第2のアンプリコンセットであり、仮想プローブ中の各プローブ分子が、第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセット中の1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができ、プローブ分子が、第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに同様にハイブリダイズせず、それにより、プローブ分子が第1のアンプリコンセット中および第2のアンプリコンセット中のアンプリコンへハイブリダイズすることで、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる、実施形態1~4のいずれか1つの方法。
6.第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して、初期試料に対してPCR増幅反応を行うことによって試験試料を調製することをさらに含み、第1のゲノムおよび第2のゲノムが初期試料中に存在する場合、それぞれ第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットもたらす、実施形態5の方法。
7.PCRプライマーが複数のプライマー対を含み、第1のアンプリコンセットが複数の第1のアンプリコンを含み、かつ/または第2のアンプリコンセットが複数の第2のアンプリコンを含む、実施形態6の方法。
8.(a)第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができる第1のPCRプライマーのセットを使用して、初期試料に対して第1のPCR増幅反応を行うこと、(b)第1のPCRプライマーのセットとは異なる、第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができる第2のPCRプライマーのセットを使用して、初期試料に対して第2のPCR増幅反応を行うこと、および(c)第1および第2のPCR反応で生成されたアンプリコンを組み合わせ、第1のゲノムおよび第2のゲノムが初期試料中に存在する場合、複数の第1のアンプリコンを含む第1のアンプリコンセットおよび複数の第2のアンプリコンを含む第2のアンプリコンセットをそれぞれもたらすことによって試験試料を調製することをさらに含む、実施形態5の方法。
9.複数の第1のアンプリコンが第1ゲノム中の種々の領域に対応し、かつ/または複数の第2のアンプリコンが第2のゲノム中の種々の領域に対応する、実施形態7または実施形態8の方法。
10.PCRプライマーが単一のプライマー対を含み、第1のアンプリコンセットが単一の第1のアンプリコンからなり、第2のアンプリコンセットが単一の第2のアンプリコンからなる、実施形態6の方法。
11.第1のアンプリコンのヌクレオチド配列および第2のアンプリコンのヌクレオチド配列が、仮想プローブ中の少なくとも1つのプローブ分子にハイブリダイズすることができるアンプリコンの領域において少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを有する、実施形態10の方法。
12.第1のアンプリコンのヌクレオチド配列および第2のアンプリコンのヌクレオチド配列が、仮想プローブ中の少なくとも1つのプローブ分子にハイブリダイズすることができるアンプリコンの領域において少なくとも2つのヌクレオチドミスマッチを有する、実施形態10の方法。
13.第1のアンプリコンのヌクレオチド配列および第2のアンプリコンのヌクレオチド配列が、仮想プローブ中の少なくとも1つのプローブ分子にハイブリダイズすることができるアンプリコンの領域において少なくとも3つのヌクレオチドミスマッチを有する、実施形態10の方法。
14.PCR増幅反応が、反応によって生成される任意のアンプリコン中に測定可能なシグナルを生成する標識を組み入れる、実施形態6~13のいずれか1つの方法。
15.プライマーが標識されている、実施形態6~14のいずれか1つの方法。
16.少なくとも1つのプライマーが5’蛍光標識されている、実施形態15の方法。
17.複数のプライマーが5’蛍光標識されている、実施形態15の方法。
18.PCR反応が、蛍光標識されたデオキシヌクレオチドを含む、実施形態6~17のいずれか1つの方法。
19.各プローブ分子が、第1のゲノムおよび/または第2のゲノム中の15~40個の連続するヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含む、実施形態1~18のいずれか1つの方法。
20.仮想プローブが、互いに対して1つ以上のヌクレオチドミスマッチを有する2つのプローブ分子を含む、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
21.仮想プローブが、互いに対して1つのヌクレオチドミスマッチを有する2つのプローブ分子を含む、実施形態20の方法。
22.仮想プローブが、互いに対して2つのヌクレオチドミスマッチを有するプローブ分子を含む、実施形態20の方法。
23.仮想プローブのプローブ分子が、アレイ上に存在する位置的にアドレサブルなプローブ分子であり、各々アレイ上の離散した位置にある、実施形態1~22のいずれか1つの方法。
24.仮想プローブ中のプローブ分子と試験試料中の核酸(存在する場合)とのハイブリダイゼーションからのシグナルを検出および/または定量することが、仮想プローブ中のプローブ分子の位置で標識を検出および/または定量することを含む、実施形態23の方法。
25.工程(b)が、
(i)PCR増幅産物をアレイと接触させること;
(ii)アレイからの未結合核酸分子を洗浄すること;および
(iii)アレイ上の各プローブ分子位置における標識のシグナル強度を測定することを含む、実施形態23または実施形態24の方法。
26.アレイが1つ以上の制御プローブ分子を含む、実施形態23~25のいずれか1つの方法。
27.プローブ分子がオリゴヌクレオチドプローブ分子である、実施形態23~26のいずれか1つの方法。
28.プローブ分子のうちの1つ以上がポリチミジン尾部を有する、実施形態27の方法。
29.ポリチミジン尾部が10mer~20merである、実施形態27の方法。
30.ポリチミジン尾部が15merである、実施形態29の方法。
31.PCR増幅反応がリアルタイムPCR増幅反応である、実施形態6~22のいずれか1つの方法。
32.(a)各プローブ分子が、識別可能な標識と、標識およびクエンチャー部分の両方がプローブに結合している場合に標識の検出を阻害するクエンチャー部分とを含み;
(b)標識が、リアルタイムPCR増幅反応中にプローブ分子の切断と同時に測定可能なシグナルを生成し;
(c)各標識が、他の各標識と識別可能である、
実施形態31の方法。
33.標識が蛍光標識である、実施形態32の方法。
34.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットが、rRNAをコード化する遺伝子に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、実施形態5~33のいずれか1つの方法。
35.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットが、rRNA遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、実施形態5~34のいずれか1つの方法。
36.第1および第2の微生物が同じ群のメンバーである、実施形態1~35のいずれか1つの方法。
37.微生物の1つ以上がヒト病原体または動物病原体である、実施形態1~36のいずれか1つの方法。
38.微生物が細菌、ウイルス、または真菌である、実施形態36~37のいずれか1つの方法。
39.微生物が細菌である、実施形態36~38のいずれか1つの方法。
40.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットがそれぞれ、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列および/または23S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列を含む、実施形態39の方法。
41.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットが、16S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、実施形態40の方法。
42.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットが、23S rRNA遺伝子に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、実施形態40または実施形態41の方法。
43.第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットが、16S-23S遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、実施形態39~42のいずれか1つの方法。
44.第1の式が、(i)1つ以上のブール演算子、(ii)1つ以上の関係演算子、(iii)1つ以上のシグナル比、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせによって、プローブ分子の標的核酸へのハイブリダイゼーションからのシグナルを組み合わせる、実施形態1~43のいずれか1つの方法。
45.第2の式が、(i)1つ以上のブール演算子、(ii)1つ以上の関係演算子、(iii)1つ以上のシグナル比、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせによって、プローブ分子の標的核酸へのハイブリダイゼーションからのシグナルを組み合わせる、実施形態1~44のいずれか1つの方法。
46.各ブール演算子が、「AND」、「OR」、および「NOT」から独立して選択される、実施形態44または実施形態45の方法。
47.各関係演算子が、「より大きい」(「>」)、「より小さい」(「<」)、「以上」(「≧」)および「以下」(「≦」)から独立して選択される、実施形態44~46のいずれか1つの方法。
48.第1の式および/または第2の式において、シグナルが1つ以上のブール演算子によって組み合わされる、実施形態44~46のいずれか1つの方法。
49.第1の式および/または第2の式において、シグナルが1つ以上の関係演算子によって組み合わされる、実施形態44~48のいずれか1つの方法。
50.第1の式および/または第2の式において、シグナルが1つ以上のシグナル比によって組み合わされる、実施形態44~49のいずれか1つの方法。
51.仮想プローブが2つのプローブ分子を含むか、またはそれからなる、実施形態1~50のいずれか1つの方法。
52.仮想プローブが、(i)第1の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第1のアンプリコンセット中の第1のアンプリコン)および第2の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第2のアンプリコンセット中の第2のアンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることができる第1のプローブ分子と、(ii)第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができるが、第1の標的核酸にはできない第2のプローブ分子とを含む、実施形態51の方法。
53.第1のプローブが計量プローブである、実施形態52の方法。
54.仮想プローブが、(i)第1の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第1のアンプリコンセット中の第1のアンプリコン)および第2の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第2のアンプリコンセット中の第2のアンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることができる第1のプローブ分子と、(ii)第1の標的核酸および第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができる第2のプローブ分子とを含む、実施形態51の方法。
55.第1のプローブが計量プローブである、実施形態54の方法。
56.仮想プローブが第1のプローブおよび第2のプローブを含み、第1の式および第2の式が、第1のプローブおよび第2のプローブからのシグナルをシグナル比で組み合わせる、実施形態1~55のいずれか1つの方法。
57.第1の式および第2の式が各々、シグナル比を所定のカットオフ値と比較し、第1の式のカットオフ値と第2の式のカットオフ値とが異なる、実施形態56の方法。
58.第1の微生物がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌種(CNS)であり、第2の微生物がコアグラーゼ陽性ブドウ球菌種(CPS)である、実施形態1~57のいずれか1つの方法。
59.第2の微生物が黄色ブドウ球菌である、実施形態58の方法。
60.仮想プローブが、CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態58または実施形態59のいずれか1つの方法。
61.CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子が計量プローブである、実施形態60に記載の方法。
62.閾値が0.2である、実施形態61の方法。
63.仮想プローブが、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態58~62のいずれか1つの方法。
64.仮想プローブが、CCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有する第1のプローブ分子と、GCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有する第2のプローブ分子とを含み、第1の式および第2の式が、第1のプローブおよび第2のプローブからのシグナルをシグナル比で組み合わせる、実施形態63の方法。
65.シグナル比が、第1のプローブのシグナルを第2のプローブのシグナルで割ったものである、実施形態64の方法。
66.第1の式および第2の式が各々、シグナル比を所定のカットオフ値と比較し、第1の式のカットオフ値と第2の式のカットオフ値とが異なる、実施形態64または実施形態65の方法。
67.計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値以上である場合にシグナル比が第1の式のカットオフ値以上である場合、CNSが試料中に存在すると決定することを含む、実施形態66の方法。
68.計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値未満である場合にシグナル比が第2の式のカットオフ値を超える場合、CNSが試料中に存在すると決定することを含む、実施形態66または実施形態67の方法。
69.計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値以上である場合にシグナル比が第1の式のカットオフ値未満である場合、CPSが試料中に存在すると決定することを含む、実施形態66~68のいずれか1つの方法。
70.計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値未満である場合にシグナル比が第2の式のカットオフ値以下である場合、CPSが試料中に存在すると決定することを含む、実施形態66~69のいずれか1つの方法。
71.第1の式のカットオフ値が1.5であり、第2の式のカットオフ値が3である、実施形態66~70のいずれか一つの方法。
72.第1の微生物がストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)であり、第2の微生物がストレプトコッカス・アンギノーサス(Streptococcus anginosus)である、実施形態1~57のいずれか1つの方法。
73.仮想プローブが、CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態72の方法。
74.CAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子が計量プローブである、実施形態73の方法。
75.仮想プローブが、TATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態72~74のいずれの1つの方法。
76.第1および第2の微生物が腸内細菌科細菌である、実施形態1~57のいずれか1つの方法。
77.第1および第2の微生物が、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アスブリア(Enterobacter asburiae)およびエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)から選択される、実施形態76の方法。
78.第1の微生物がストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)であり、第2の微生物が肺炎レンサ球菌である、実施形態1~57のいずれか1つの方法。
79.仮想プローブが、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態78の方法。
80.仮想プローブが、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態78~79のいずれの1つの方法。
81.AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子が計量プローブである、実施形態80に記載の方法。
82.仮想プローブが3つのプローブ分子を含むか、またはそれからなる、実施形態1~57のいずれか1つの方法。
83.仮想プローブが、(i)第1の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第1のアンプリコンセット中の第1のアンプリコン)および第2の標的核酸(例えば、標的核酸がPCR産物である場合、第2のアンプリコンセット中の第2のアンプリコン)に特異的にハイブリダイズすることができる第1のプローブ分子と、(ii)第1および第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができる、第1のプローブ分子とは異なる第2のプローブ分子と、(iii)第1および第2の標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができる、第1および第2のプローブ分子とは異なる第3のプローブ分子とを含む、実施形態82の方法。
84.第1の微生物がストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)であり、第2の微生物が肺炎レンサ球菌である、実施形態78~83のいずれか1つの方法。
85.仮想プローブが、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態84の方法。
86.仮想プローブが、GATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態84または実施形態85の方法。
87.仮想プローブが、AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子を含む、実施形態84~86のいずれの1つの方法。
88.AGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有するプローブ分子が計量プローブである、実施形態87に記載の方法。
89.PCR条件が、PCR増幅産物が300~800ヌクレオチド長になるように選択される、実施形態6~88のいずれの1つの方法。
90.PCR条件が、PCR増幅産物が400~600ヌクレオチド長になるように選択される、実施形態89の方法。
91.初期試料または試験試料が、微生物の1つ以上による感染のリスクがある、実施形態36~90のいずれか1つの方法。
92.初期試料または試験試料が、微生物の1つ以上による感染を有すると疑われる、実施形態36~91のいずれか1つの方法。
93.初期試料または試験試料が、生物学的試料、環境的試料または食品である、実施形態1~92のいずれか1つの方法。
94.初期試料または試験試料が、血液、血清、唾液、尿、胃液、消化液、涙、便、精液、膣液、間質液、腫瘍組織に由来する液、眼液、汗、粘液、耳垢、油、腺分泌物、呼気、髄液、毛髪、指の爪、皮膚細胞、血漿、鼻スワブから得られた液、鼻咽頭洗浄液から得られた液、脳脊髄液、組織試料、喉スワブから得られた液もしくは組織、創傷スワブから得られた液もしくは組織、生検組織、胎盤液、羊水、腹膜透析液、臍帯血、リンパ液、空洞液、痰、膿、微生物叢、メコニウム、母乳、または前述のいずれかから加工、抽出もしくは分別された試料から選択される生物学的試料である、実施形態93の方法。
95.生物学的試料が、
(a)尿、痰、または尿から加工、抽出もしくは分別された試料;
(b)痰、または痰から加工、抽出もしくは分別された試料;
(c)創傷スワブ、または創傷スワブから加工、抽出もしくは分別された試料;
(d)血液、または血液から加工、抽出もしくは分別された試料;または
(e)腹膜透析液、または腹膜透析液から加工、抽出もしくは分別された試料である、実施形態94の方法。
96.初期試料または試験試料が、土壌、地下水、地表水、廃水、または上記のいずれかから加工、抽出もしくは分別された試料から選択される環境的試料である、実施形態93の方法。
97.工程(c)がコンピュータ実装され、工程(c)が、1つ以上のプロセッサによって実行されるための1つ以上のコンピュータ可読命令を記憶するメモリに連結された1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステムにおいて、1つ以上のコンピュータ可読命令を実行することを含み、1つ以上のコンピュータ可読命令が、(i)仮想プローブ中のプローブ分子と、もしあれば試験試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルデータを受信するため、および(ii)計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルデータが閾値以上である場合、第1の式に従ってシグナルデータを分析し、計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値未満である場合、第2の式に従ってシグナルデータを分析するための命令を含む、実施形態1~96のいずれか1つの方法。
98.ユーザに通知を提供することをさらに含み、通知が、場合により試験試料中の第1の微生物および/または第2の微生物の有無に関する、実施形態97の方法。
99.以下を含むアドレサブルアレイ:
(a)第1のゲノム配列を第2の相同ゲノム配列から区別するための1つ以上の仮想プローブであって、各仮想プローブが、位置的にアドレサブルなオリゴヌクレオチドプローブ分子の群を含み、それぞれがアレイ上の離散した位置にあり、1つ以上の仮想プローブ中の各プローブ分子が、第1のゲノム配列または第2のゲノム配列中の15~40個の連続するヌクレオチドに90%~100%相補的なヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドプローブ分子の1つ以上が計量プローブである、仮想プローブ;および
(b)場合により、1つ以上の制御プローブ分子。
100.計量プローブの1つ以上が属プローブである、実施形態99のアドレサブルアレイ。
101.少なくとも2つの仮想プローブを含む、実施形態99または実施形態100のアドレサブルアレイ。
102.少なくとも3つの仮想プローブを含む、実施形態99または実施形態100のアドレサブルアレイ。
103.少なくとも4つの仮想プローブを含む、実施形態99または実施形態100のアドレサブルアレイ。
104.少なくとも5つの仮想プローブを含む、実施形態99または実施形態100のアドレサブルアレイ。
105.少なくとも10個の仮想プローブを含む、実施形態99または実施形態100のアドレサブルアレイ。
106.最大10個の仮想プローブを含む、実施形態999~104のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
107.最大15個の仮想プローブを含む、実施形態99~105のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
108.各仮想プローブが計量プローブを含む、実施形態99~107のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
109.各仮想プローブが2~4個のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態99~108のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
110.各仮想プローブが2~3個のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態109のアドレサブルアレイ。
111.12個以上のプローブ分子を含む、実施形態99~110のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
112.12~100個のプローブ分子を含む、実施形態111のアドレサブルアレイ。
113.12~50個のプローブ分子を含む、実施形態111のアドレサブルアレイ。
114.25~75個のプローブ分子を含む、実施形態111のアドレサブルアレイ。
115.50~100個のプローブ分子を含む、実施形態111のアドレサブルアレイ。
116.12個以上のプローブ分子を含む、実施形態111のアドレサブルアレイ。
117.14個のプローブ分子を含む、実施形態111のアドレサブルアレイ。
118.84個のプローブ分子を含む、実施形態111のアドレサブルアレイ。
119.第1のゲノム配列および第2のゲノム配列が、第1の微生物および第2の微生物にそれぞれ由来するゲノム配列である、実施形態実施形態99~118のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
120.微生物が同じ属のメンバーである、実施形態119のアドレサブルアレイ。
121.微生物が同じ群のメンバーである、実施形態120のアドレサブルアレイ。
122.プローブ分子の1つ以上がポリチミジン尾部を含む、実施形態99~121のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
123.ポリチミジン尾部が10mer~20merである、実施形態122のアドレサブルアレイ。
124.ポリチミジン尾部が15merである、実施形態123のアドレサブルアレイ。
125.第1のゲノム配列および第2のゲノム配列が、rRNAをコード化する遺伝子に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、実施形態99~124のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
126.rRNAをコード化する遺伝子が16S rRNA遺伝子または23S rRNA遺伝子である、実施形態125のアドレサブルアレイ。
127.第1のゲノム配列および第2のゲノム配列が、rRNA遺伝子間の遺伝子間スペーサー領域に対応するヌクレオチド配列をそれぞれ含む、実施形態99~124のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
128.少なくとも1つの仮想プローブが、真正細菌の種由来のゲノム配列を、真正細菌の種ではない微生物のゲノム配列から区別するためのプローブ分子を含む、実施形態99~127のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
129.少なくとも1つの仮想プローブが、グラム陽性細菌由来のゲノム配列とグラム陰性細菌由来のゲノム配列とを区別するためのプローブ分子を含む、実施形態99~128のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
130.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる目の微生物由来のゲノム配列を区別するためのプローブ分子を含む、実施形態99~129のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
131.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる科の微生物由来のゲノム配列を区別するためのプローブ分子を含む、実施形態99~130のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
132.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる属の微生物由来のゲノム配列を区別するためのプローブ分子を含む、実施形態99~131のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
133.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる群の微生物由来のゲノム配列を区別するためのプローブ分子を含む、実施形態99~132のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
134.少なくとも1つの仮想プローブが、異なる種の微生物由来のゲノム配列を区別するためのプローブ分子を含む、実施形態99~133のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
135.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がCCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むプローブ分子を含む、実施形態99~134のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
136.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がGCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むプローブ分子を含む、実施形態99~135のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
137.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がCAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むプローブ分子を含む、実施形態99~136のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
138.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がTATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むプローブ分子を含む、実施形態99~137のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
139.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がAGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むプローブ分子を含む、実施形態99~138のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
140.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むプローブ分子を含む、実施形態99~139のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
141.少なくとも1つの仮想プローブが、ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むプローブ分子を含む、実施形態99~140のいずれか1つのアドレサブルアレイ。
142.第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する同じ属の第2の微生物が、試験試料または試験試料が由来する初期試料中に存在するかどうかを検出する方法であって、
(a)2つ以上のプローブ分子を含む仮想プローブを含む、実施形態99~141のいずれか1つに記載のアレイで試験試料をプロービングする工程であって、
(i)各プローブ分子が、第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸および/または第2のゲノムに対応する1つ以上の相同標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができ、
(ii)仮想プローブのプローブ分子の少なくとも1つは、第1のゲノムに対応する標的核酸および第2のゲノムに対応する相同標的核酸にハイブリダイズすることができる計量プローブであり、その結果、計量プローブのそのような標的核酸へのハイブリダイゼーションが、試験試料中の標的核酸の相対量の尺度を提供することができ、
(iii)仮想プローブのプローブ分子は、単独で第1および第2のゲノムに対応する標的核酸を区別することができず、
(iv)プローブ分子は、第1および第2のゲノムに対応する標的核酸に等しくハイブリダイズせず、その結果、第1および第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸へのプローブ分子のハイブリダイゼーションによって、第1および第2のゲノムに対応する標的核酸を区別することができる、工程;
(b)未結合核酸分子をアレイから洗浄する工程
(c)アレイ上の各プローブ分子位置においてシグナルを検出および/または定量する工程;および
(d)シグナルが
(i)アレイのプローブ分子にハイブリダイズする標的核酸が試験試料中に存在することを示す場合、シグナルを分析して、試料中に第1のゲノムに対応する標的核酸または第2のゲノムに対応する標的核酸が存在するかどうかを判定し、それにより初期試料または試験試料中に第1の生物または第2の生物が存在するかどうかを判定し、
(ii)仮想プローブのプローブ分子にハイブリダイズする標的産物が工程(a)で作製されていないことを示す場合、その初期試料または試験試料が第1の生物または第2の生物を含んでいないと判定する工程、を含む方法。
143.工程(d)(i)の分析が、(i)工程(c)で検出および/または定量されたシグナルを、計量プローブからのシグナルが閾値以上である場合、第1の式に従って分析し、(ii)工程(c)で検出および/または定量されたシグナルを、計量プローブからのシグナルが閾値未満である場合、第2の式に従って分析することを含む、実施形態142の方法。
144.第1のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第1のアンプリコンセットであり、第2のゲノムに対応する1つ以上の標的核酸が第2のアンプリコンセットであり、仮想プローブ中の各プローブ分子が、第1のアンプリコンセットおよび/または第2のアンプリコンセット中の1つ以上のアンプリコンに特異的にハイブリダイズすることができ、プローブ分子が、第1のアンプリコンセット中のアンプリコンおよび第2のアンプリコンセット中のアンプリコンに同様にハイブリダイズせず、それにより、プローブ分子が第1のアンプリコンセット中および第2のアンプリコンセット中のアンプリコンへハイブリダイズすることで、第1のアンプリコンセットと第2のアンプリコンセットとを区別することができる、実施形態142または実施形態143の方法。
145.第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して、初期試料に対してPCR増幅反応を行うことによって試験試料を調製することをさらに含み、第1のゲノムおよび第2のゲノムが試料中に存在する場合、それぞれ第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットもたらす、実施形態144の方法。
146.工程(d)がコンピュータ実装され、工程(d)が、1つ以上のプロセッサによって実行されるための1つ以上のコンピュータ可読命令を記憶するメモリに連結された1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステムにおいて、1つ以上のコンピュータ可読命令を実行することを含み、1つ以上のコンピュータ可読命令が、(i)仮想プローブ中のプローブ分子と、もしあれば試験試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルデータを受信するため、および(ii)計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルデータが閾値以上である場合、第1の式に従ってシグナルデータを分析し、計量プローブと試料中の核酸とのハイブリダイゼーションからのシグナルが閾値未満である場合、第2の式に従ってシグナルデータを分析するための命令を含む、実施形態142~145のいずれか1つの方法。
147.ユーザに通知を提供することをさらに含み、通知が、場合により試験試料中の第1の微生物および/または第2の微生物の有無に関する、実施形態146の方法。
148.システムであって、
(a)実施形態99~141のいずれか1つのアレイの各プローブ分子位置についてのシグナルデータを生成するための光学リーダと;
(b)1つ以上のプロセッサとを含み、
(i)プロセッサの少なくとも1つが、光学リーダからシグナルデータを受信するように構成され、
(ii)プロセッサの少なくとも1つが、試験試料中の核酸分子(存在する場合)への仮想プローブ中のプローブ分子のハイブリダイゼーションの後に生成される、1つ以上の仮想プローブについてのシグナルデータを分析するように構成され、場合により、分析は、試験試料が第1のゲノム配列および/または第2のゲノム配列を含むかどうかを決定することを含み、
(iii)プロセッサの少なくとも1つが、分析の結果を出力するための記憶もしくは表示装置へのインターフェースまたはネットワークを有する、システム。
149.アレイ上の蛍光標識された分子を励起することができる光源を含む、実施形態148のシステム。
150.PCR増幅反応の産物をアレイに添加することができ、未結合核酸分子をアレイから洗浄することができるプレートハンドリングロボットをさらに含む、実施形態148または実施形態149のシステム。
151.実施形態148~150のいずれか1つのシステムを使用して実行される、実施形態1~98および142~147のいずれか1つの方法。
152.第1のゲノムを有する第1の微生物または第2のゲノムを有する同じ属の第2の微生物が初期試料中に存在するかどうかを検出するための試験試料を調製する方法であって、
(a)第1のゲノムおよび第2のゲノムの両方にハイブリダイズし、それらからPCR増幅を開始することができるPCRプライマーを使用して初期試料に対してPCR増幅反応を行い、第1のゲノムおよび第2のゲノムが初期試料中に存在する場合、それぞれ第1のアンプリコンセットおよび第2のアンプリコンセットをもたらす工程;
(b)計量プローブを含む、第1の微生物の第1のゲノム配列を第2の微生物の第2の相同ゲノム配列から区別するための仮想プローブを含む実施形態99~141のいずれか1つに記載のアレイと、工程(a)のPCR増幅産物とを接触させる工程;および
(c)アレイから未結合核酸分子を洗浄する工程を含む、方法。
153.(d)アレイ上の各プローブ分子位置におけるシグナルを検出および/または定量する工程;および
(e)試験試料中の核酸へのプローブ分子のハイブリダイゼーションが検出される場合、
(i)工程(d)で検出および/または定量されたシグナルを、計量プローブからのシグナルが閾値以上である場合、第1の式に従って分析し、
(ii)工程(d)で検出および/または定量されたシグナルを、計量プローブからのシグナルが閾値未満である場合、第2の式に従って分析する工程をさらに含む、実施形態152の方法。
154.PCR条件が、PCR増幅産物が300~800ヌクレオチド長になるように選択される、実施形態152~153のいずれの1つの方法。
155.PCR条件が、PCR増幅産物が400~600ヌクレオチド長になるように選択される、実施形態154の方法。
156.ヌクレオチド配列がCCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
157.ヌクレオチド配列がGCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
158.ヌクレオチド配列がCAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
159.ヌクレオチド配列がTATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
160.ヌクレオチド配列がAGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
161.ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
162.ヌクレオチド配列がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含む、オリゴヌクレオチドプローブ分子。
163.ポリチミジン尾部を含む、実施形態156~162のいずれか1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子。
164.ポリチミジン尾部が10mer~20merである、実施形態163のオリゴヌクレオチドプローブ分子。
165.ポリチミジン尾部が15merである、実施形態164のオリゴヌクレオチドプローブ分子。
166.標識を含む、実施形態156~165のいずれか1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子。
167.仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子がCCAGTCTTATAGGTAGGTTAYCCACG(配列番号1)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子がGCTTCTCGTCCGTTCGCTCG(配列番号2)を含むヌクレオチド配列を有する、複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む仮想プローブ。
168.仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子がCAGTCTATGGTGTAGCAAGCTACGGTAT(配列番号3)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子がTATCCCCCTCTAATAGGCAGGTTA(配列番号4)を含むヌクレオチド配列を有する、複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む仮想プローブ。
169.仮想プローブ中の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子がAGCTAATACAACGCAGGTCCATCT(配列番号5)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGCAA(配列番号6)を含むヌクレオチド配列を有し、仮想プローブ中の別のオリゴヌクレオチド分子がGATGCAAGTGCACCTTTTAAGTAA(配列番号7)を含むヌクレオチド配列を有する、複数のオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む仮想プローブ。
170.各オリゴヌクレオチドプローブ分子がポリチミジン尾部を含む、実施形態167~169のいずれか1つの仮想プローブ。
171.ポリチミジン尾部が10mer~20merである、実施形態170の仮想プローブ。
172.ポリチミジン尾部が15merである、実施形態171の仮想プローブ。
173.以下を含むアドレサブルアレイ:
(a)位置的にアドレサブルなプローブ分子の群であって、各々がアレイ上の離散した位置にあり、実施形態156~166のいずれか1つのオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、プローブ分子の群;および
(b)任意選択により、1つ以上の制御プローブ分子。
174.仮想プローブ中の各プローブ分子がアレイ内の離散した位置にある、実施形態167~172のいずれか1つの仮想プローブを含むアドレサブルアレイ。
175.1つ以上の制御プローブ分子を含む、実施形態174のアドレサブルアレイ。
176.ヌクレオチド配列が配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6または配列番号7を含むプローブ分子から選択される2つ以上のプローブ分子を含む、キット。
177.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態176のキット。
178.ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態176のキット。
179.ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態176のキット。
180.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態176のキット。
181.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態176のキット。
182.ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態176のキット。
183.ヌクレオチド配列が配列番号1を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号2を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号3を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号4を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号5を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、ヌクレオチド配列が配列番号6を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子、およびヌクレオチド配列が配列番号7を含むオリゴヌクレオチドプローブ分子を含む、実施形態176のキット。
184.プローブ分子が標識されている、実施形態176~183のいずれか1つのキット。
185.プローブ分子が蛍光標識で標識されている、実施形態184のキット。
186.プローブ分子が標識されていない、実施形態176~183のいずれか1つのキット。
187.第1のゲノム配列および第2の相同ゲノム配列を増幅することができる1つ以上のPCRプライマー対をさらに含む、実施形態176~186のいずれか1つのキット。
【0224】
9.参考文献の引用
本出願で引用されたすべての刊行物、特許、特許出願および他の文献は、あたかも各個々の刊行物、特許、特許出願または他の文献がすべての目的のために参照により組み込まれることが個別に示されているのと同程度に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に組み込まれる1つ以上の参考文献の教示と本開示との間に不一致がある場合、本明細書の教示が意図される。
【配列表】
【国際調査報告】