(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】線形電動外科用ハンマ衝撃工具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/92 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
A61B17/92
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544157
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 US2022013312
(87)【国際公開番号】W WO2022159704
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502427840
【氏名又は名称】ジンマー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー スロカム
(72)【発明者】
【氏名】ニティン ゴヤル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL70
(57)【要約】
本明細書中で開示されているのは、線形電動外科用ハンマ衝撃工具およびその使用方法である。線形電動外科用ハンマ衝撃工具は、ハウジング、スライダ、シャトルおよびモータを含むことができる。ハウジングは、ハウジングの長手方向軸に沿って延在するキャビティを画定し得る。シャトルは、キャビティの内部に位置設定され、ハウジングの長手方向軸に沿って配設され得る。シャトルは、キャビティの内部に位置設定され、ハウジングの長手方向軸に沿って配設され得る。シャトルは第1のカラーセットと第2のカラーセットを含むことができる。モータは、長手方向軸に沿ってスライダを第1の方向および第2の方向に駆動するように構成され得る。第1および第2の方向におけるスライダの運動は、スライダを第1および第2のカラーセットを接触させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形電動外科用ハンマ衝撃工具において:
長手方向軸に沿って延在するキャビティを画定するハウジングと;
前記キャビティの内部に位置設定され、前記ハウジングの前記長手方向軸に沿って配設されたスライダと;
前記キャビティの内部に位置設定され、前記ハウジングの前記長手方向軸に沿って配設され、第1のカラーセットおよび第2のカラーセットを含むシャトルと;
前記長手方向軸に沿って前記スライダを第1の方向および第2の方向に駆動するように構成されたモータと;
前記シャトルに連結された工具ホルダと;
を含む線形電動外科用ハンマ衝撃工具であって、
前記第1の方向における前記スライダの運動が前記スライダを前記第1のカラーセットと接触させ、前記第2の方向における前記スライダの運動が前記スライダを前記第2のカラーセットと接触させる、線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項2】
前記スライダが、前記スライダの運動中に前記第1および第2のカラーセットを接触させるスライダフランジを含む、請求項1に記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項3】
前記モータが、チューブモータであり、スライダシャフトが前記チューブモータ内を少なくとも部分的に通過している、請求項1ないし2のいずれか1項またはそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項4】
前記シャトルが:
シャトルフランジと;
前記シャトルフランジから延在する第1のロッドであって、前記第1および第2のカラーセットからの第1のカラーが取付けられている第1のロッドと;
前記シャトルフランジから延在する第2のロッドであって、前記第1および第2のカラーセットからの第2のカラーが取付けられている第2のロッドと;
を含む、請求項1ないし3のいずれか1項またはそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項5】
前記シャトルが、それを第1の方向に付勢するように構成された付勢要素を含んでいる、請求項1ないし4のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項6】
前記キャビティ内の前記スライダの位置を検出するように配設されたセンサをさらに含む、請求項1ないし5のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項7】
骨質の推定値を決定する動作;および
前記骨質の前記推定値に基づいて前記線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;
を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラをさらに含む、請求項1ないし6のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項8】
前記工具ホルダに取付けられた工具の変位を決定する動作;および
前記工具の前記変位に基づいて前記線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;
を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラをさらに含む、請求項1ないし7のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項9】
電子機器および前記モータを収容するようにサイズ決定されたキャビティを画定するハンドルをさらに含む、請求項1ないし8のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項10】
前記ハンドルが:
前記第1の方向に前記スライダを移動させるように動作可能である第1のトリガと;
前記第2の方向に前記スライダを移動させるように動作可能である第2のトリガと;
を含んでいる、請求項9に記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項11】
線形電動外科用ハンマ衝撃工具において:
ハウジング長手方向に沿って延在するキャビティを画定するハウジングと;
前記キャビティの内部に位置設定され、前記ハウジングの前記長手方向軸に沿って配設されたスライダシャフトを含むスライダと;
前記キャビティの内部に位置設定され前記ハウジングの前記長手方向軸に沿って配設されたシャトルであって:
シャトルフランジ、
前記シャトルフランジから延在し、第1のカラーおよび第2のカラーが取付けられている第1のロッド、および
前記シャトルフランジから延在し、第3のカラーおよび第4のカラーが取付けられている第2のロッドであって、前記第1のカラー、前記第2のカラー、前記第3のカラー、および前記第4のカラーが前記スライダのストロークを画定している、第2のロッド、
を含むシャトルと;
前記スライダシャフトを収容するようにサイズ決定された貫通孔を画定し、第1の方向および第2の方向で前記長手方向軸に沿って前記スライダを駆動するように構成されたチューブモータと;
前記シャトルに連結された工具ホルダと;
を含む線形電動外科用ハンマ衝撃工具であって、
前記第1の方向における前記スライダの運動が、前記スライダを前記第1のカラーおよび前記第3のカラーと接触させ、前記第2の方向における前記スライダの運動が前記スライダを前記第2のカラーおよび前記第4のカラーと接触させる、線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項12】
前記シャトルが、それを第1の方向に付勢するように構成された付勢要素を含んでいる、請求項11に記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項13】
前記ハウジング内の前記スライダの位置を検出するように配設されたセンサをさらに含む、請求項11ないし12のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項14】
骨質の推定値を決定する動作;および
前記骨質の前記推定値に基づいて前記線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;
を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラをさらに含む、請求項11ないし13のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項15】
前記工具ホルダに取付けられた工具の変位を決定する動作;および
前記工具の前記変位に基づいて前記線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;
を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラをさらに含む、請求項11ないし14のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項16】
電子機器および前記モータを収容するようにサイズ決定されたキャビティを画定するハンドルと;
前記第1の方向に前記スライダを移動させるように動作可能である第1のトリガと;
前記第2の方向に前記スライダを移動させるように動作可能である第2のトリガと;
をさらに含む、請求項11ないし15のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項17】
プロセッサと;
前記プロセッサによって実行された時点で、前記プロセッサに、
骨質の推定値を受信する動作、
外科手術中にフィードバックを受信する動作、
前記骨質の更新された推定値を決定する動作、および
前記骨質の前記更新された推定値に基づいて前記線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作、
を含む動作を行なわせる命令を記憶するメモリと;
を含む線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項18】
前記骨質の前記更新された推定値を決定する動作には、前記線形電動外科用ハンマ衝撃工具の工具ホルダに取付けられた工具の変位を決定する動作が含まれている、請求項17に記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項19】
前記骨質の前記推定値を受信する動作には、ラスプ対象の骨に関係する患者データを受信する動作が含まれる、請求項17ないし18のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【請求項20】
ホール効果センサをさらに含み、前記動作が、前記ホール効果センサから受信した信号に基づいて前記線形電動外科用ハンマ衝撃工具のハウジング内に位置設定されたスライダの位置を決定する動作をさらに含んでいる、請求項17ないし19のいずれか1項又はそれらのいずれかの組合せに記載の線形電動外科用ハンマ衝撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組込まれている、2021年1月21日出願の「線形電動ハンマ衝撃工具」なる名称の米国仮特許出願第63/140,071号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、概して、外科用器具およびその使用に関する。より具体的には、本開示は、電動外科用衝撃工具およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
整形外科医は一般に、工具に対して衝撃力を伝達するためにハンマまたは木槌を必要とする骨の切断または彫刻するための工具を使用する。一例としては、股関節インプラントのステムを収容するために大腿骨の近位端部を前処理するためのブローチ工具がある。このようなブローチは、医師が扱うハンマまたは空気圧式「ジャックハンマ」様の工具と共に使用可能である。しかしながら、ブローチ工具をハンマで叩くのは面倒なことであり得、かつ医師自身の関節、例えば肩関節に対し大きなストレスをひき起こし得る。さらに、空気圧式衝撃工具は、空気ホースへの連結を必要とし、これは不便なことであり得、かつ工具を所望する形で配向する医師の能力を制限する可能性があり得る。
【発明の概要】
【0004】
以下の非限定的な実施例は、とりわけ、課題を解決し本明細書中で論述されているメリットを提供するための当該主題のいくつかの態様を詳述している。
【0005】
実施例1は、線形電動外科用ハンマ衝撃工具において:長手方向軸に沿って延在するキャビティを画定するハウジングと;キャビティの内部に位置設定され、ハウジングの長手方向軸に沿って配設されたスライダと;キャビティの内部に位置設定され、ハウジングの長手方向軸に沿って配設され、第1のカラーセットおよび第2のカラーセットを含むシャトルと;長手方向軸に沿って第1の方向および第2の方向にスライダを駆動するように構成されたモータと;シャトルに連結された工具ホルダと;含む線形電動外科用ハンマ衝撃工具であって、第1の方向におけるスライダの運動がスライダを第1のカラーセットと接触させ、第2の方向におけるスライダの運動がスライダを第2のカラーセットと接触させる、線形電動外科用ハンマ衝撃工具である。
【0006】
実施例2において、実施例1に記載の主題には、任意には、スライダが、スライダの運動中に第1および第2のカラーセットを接触させるスライダフランジを含むことが含まれる。
【0007】
実施例3において、実施例1~2のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、モータが、チューブモータであり、スライダシャフトがチューブモータ内を少なくとも部分的に通過していることが含まれる。
【0008】
実施例4において、実施例1~3のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、シャトルが:シャトルフランジと;シャトルフランジから延在する第1のロッドであって、第1および第2のカラーセットからの第1のカラーが取付けられている第1のロッドと;シャトルフランジから延在する第2のロッドであって、第1および第2のカラーセットからの第2のカラーが取付けられている第2のロッドと;を含むことが含まれる。
【0009】
実施例5において、実施例1~4のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、シャトルが、それを第1の方向に付勢するように構成された付勢要素を含んでいることが含まれる。
【0010】
実施例6において、実施例1~5のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、キャビティ内のスライダの位置を検出するように配設されたセンサが含まれる。
【0011】
実施例7において、実施例1~6のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、骨質の推定値を決定する動作;および骨質の推定値に基づいて線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラが含まれる。
【0012】
実施例8において、実施例1~7のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、工具ホルダに取付けられた工具の変位を決定する動作;および工具の変位に基づいて線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラが含まれる。
【0013】
実施例9において、実施例1~8のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、電子機器およびモータを収容するようにサイズ決定されたキャビティを画定するハンドルが含まれる。
【0014】
実施例10において、実施例9に記載の主題には、任意には、ハンドルが、第1の方向にスライダを移動させるように動作可能である第1のトリガと;第2の方向にスライダを移動させるように動作可能である第2のトリガと;を含んでいることが含まれる。
【0015】
実施例11は、線形電動外科用ハンマ衝撃工具において、ハウジング長手方向に沿って延在するキャビティを画定するハウジングと;キャビティの内部に位置設定され、ハウジングの長手方向軸に沿って配設されたスライダシャフトを含むスライダと;キャビティの内部に位置設定されハウジングの長手方向軸に沿って配設されたシャトルであって、シャトルフランジ、シャトルフランジから延在し、第1のカラーおよび第2のカラーが取付けられている第1のロッド、およびシャトルフランジから延在し、第3のカラーおよび第4のカラーが取付けられている第2のロッドであって、第1のカラー、第2のカラー、第3のカラー、および第4のカラーがスライダのストロークを画定している、第2のロッド、を含むシャトルと;スライダシャフトを収容するようにサイズ決定された貫通孔を画定し、第1の方向および第2の方向で長手方向軸に沿ってスライダを駆動するように構成されたチューブモータと;シャトルに連結された工具ホルダと;を含む線形電動外科用ハンマ衝撃工具であって、第1の方向におけるスライダの運動が、スライダを第1のカラーおよび第3のカラーと接触させ、第2の方向におけるスライダの運動がスライダを第2のカラーおよび第4のカラーと接触させる、線形電動外科用ハンマ衝撃工具である。
【0016】
実施例12において、実施例11に記載の主題には、任意には、シャトルが、それを第1の方向に付勢するように構成された付勢要素を含んでいることが含まれる。
【0017】
実施例13において、実施例11~12のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、ハウジング内のスライダの位置を検出するように配設されたセンサが含まれる。
【0018】
実施例14において、実施例11~13のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、骨質の推定値を決定する動作;および骨質の推定値に基づいて線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラが含まれる。
【0019】
実施例15において、実施例11~14のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、工具ホルダに取付けられた工具の変位を決定する動作;および工具の変位に基づいて線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作;を含む動作を行なうように動作可能であるコントローラが含まれる。
【0020】
実施例16において、実施例11~15のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、電子機器およびモータを収容するようにサイズ決定されたキャビティを画定するハンドルと;第1の方向にスライダを移動させるように動作可能である第1のトリガと;第2の方向にスライダを移動させるように動作可能である第2のトリガと;が含まれる。
【0021】
実施例17は、プロセッサと;プロセッサによって実行された時点で、プロセッサに、骨質の推定値を受信する動作、外科手術中にフィードバックを受信する動作、骨質の更新された推定値を決定する動作、およ 骨質の更新された推定値に基づいて線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させる動作、を含む動作を行なわせる命令を記憶するメモリと;を含む線形電動外科用ハンマ衝撃工具である。
【0022】
実施例18において、実施例17に記載の主題には、任意には、骨質の更新された推定値を決定する動作には、線形電動外科用ハンマ衝撃工具の工具ホルダに取付けられた工具の変位を決定する動作が含まれている、ことが含まれる。
【0023】
実施例19において、実施例17~18のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、骨質の推定値を受信する動作には、ラスプ対象の骨に関係する患者データを受信する動作が含まれることが含まれる。
【0024】
実施例20において、実施例17~19のいずれか1つ以上に記載の主題には、任意には、ホール効果センサが含まれており、動作は、ホール効果センサから受信した信号に基づいて線形電動外科用ハンマ衝撃工具のハウジング内に位置設定されたスライダの位置を決定する動作をさらに含んでいる。
【0025】
実施例21において、実施例1~20のいずれか1つ又はそれらのいずれかの組合せに記載の外科用衝撃工具、システムおよび/または方法は、任意には、列挙された全ての要素またはオプションが使用または選択可能であるような形で構成され得る。
【0026】
必ずしも原寸に比例して描かれていない図面において、同様の数字は、異なる図の中の類似の構成要素を表現し得る。異なる添え字を有する同様の数字は、類似の構成要素の異なる事例を表わし得る。図面は、概して、限定的にではなく一例として、本書中で論述されているさまざまな実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の等角図を示す。
【
図2】
図2は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の側断面図を示す。
【
図3】
図3は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の側断面破断図を示す。
【
図4A】
図4Aは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の詳細な側断面図を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の詳細な側断面図を示す。
【
図4C】
図4Cは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の詳細な側断面図を示す。
【
図4D】
図4Dは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の詳細な側断面図を示す。
【
図5】
図5は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の詳細な側断面図を示す。
【
図6A】
図6Aは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具のハンドルおよびハウジングの組付けの部分的断面図を示す。
【
図6B】
図6Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する
図6Aのハンドルおよびハウジングの組付けの詳細な部分的断面図を示す。
【
図7】
図7は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の断面図を示す。
【
図8A】
図8Aは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具内で使用するためのチューブモータを示す。
【
図8B】
図8Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の断面図を示す。
【
図8C】
図8Cは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具の近位領域の詳細な断面図を示す。
【
図9A-9B】
図9Aおよび9Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に係る線形電動外科用ハンマ衝撃工具を示す。
【
図10-10C】
図10A、10Bおよび10Cは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する骨質査定のオプションを示す。
【
図11】
図11は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具を制御するために使用可能な論理の流れ図を示す。
【
図12】
図12は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致するコントローラの概略図を示す。
【0028】
対応する参照文字は、複数の図全体を通して対応する部品を表わしている。本明細書中に記載されている例証は、本開示の例示的実施形態を例示しており、このような例証は、いかなる形であれ本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
空気圧ピストン駆動式システムの代替案として、本明細書中で開示されているのは、電気駆動式システムである。具体的には、本明細書中で開示されている線形電動外科用ハンマ衝撃工具は、衝撃力を生成するためにシャトル、工具保持要素などに衝撃を与えることのできる、時としてスライダと呼ばれる衝撃要素を含むことができる。
【0030】
衝撃力を創出する目的で衝撃要素を駆動するように、電動モータを構成することができる。例えば、第1の方向でのスライダの運動が、スライダを第1のカラーセットと接触させることができ、第2の方向でのスライダの運動が、スライダを第2のカラーセットと接触させることができる。カラーとスライダの間の接触は、骨管内へとラスプおよび/またはブローチを駆動しかつ骨管からラスプおよび/またはブローチを引き抜くための衝撃力を生成することができる。
【0031】
本明細書中で開示されているように、ホール効果センサなどの1つ以上のセンサを用いて、線形電動外科用ハンマ衝撃工具内部の衝撃要素の位置を決定することができる。この位置に基づいて、生成される衝撃力を決定することができる。同様に、コントローラが骨質の推定値を決定し、骨質の推定量に基づいて線形電動外科用ハンマ衝撃工具が生成する衝撃力を増減させるように動作可能であり得る。
【0032】
以上の論述は、本特許出願の主題の概要を提供するように意図されたものである。それは、本発明の排他的または網羅的な説明を提供するように意図されていない。以下の説明は、本特許出願についてのさらなる情報を提供するために内含されている。
【0033】
ここで図に目を向けると、
図1は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具100の一例を示している。本明細書中で開示されているように、線形電動外科用ハンマ衝撃工具100は、外科手術において使用するための単純で効率の良い頑強な電池式ハンドヘルドの線形電動外科用ハンマ衝撃工具を提供することができる。線形電動外科用ハンマ衝撃工具100は、工具本体106の対向する端部に遠位端部キャップ102および近位端部キャップ104を含み得る。
図2に示されているように、工具ホルダ108を伴う工具保持要素202が、工具本体106の近位端部から出ている。
図1をひき続き参照すると、ハンドル110が、工具本体106にしっかりと固定されており、電池パック204およびトリガ114によって制御される時として制御電子機器とも呼ばれるコントローラ206を内部に格納するグリップ部分112を有する。代替的に、または付加的に、スピーカ/マイクロホン116を使用して、音声制御および応答が可能となる。
【0034】
図2、3、4A、4B、4C、4Dおよび5は、工具本体106内部に固定されたコイル構造208を伴う管状電磁リニアモータを工具本体106が格納している、線形電動外科用ハンマ衝撃工具100の内部の詳細を示している。コイル構造208は、磁性または強磁性の機械的衝撃運動要素210を起動させる。衝撃運動要素210は、それぞれ工具本体106の端部に位置設定された近位端部キャップ104および遠位端部キャップ102内で低摩擦軸受212Aおよび212B(まとめて、
図2に示された軸受212)により支持されている中央に位置するロッド様の工具ホルダ要素202上で、低摩擦軸受502Aおよび502B(まとめて、
図5に示されている軸受502)によって支持され得る。これらの軸受212および502は、シャフト214の研磨されたステンレス鋼に対して低い摩擦係数を有するルーロンなどの材料で作られた単純な単一形ブッシングタイプの軸受であり得、半径方向荷重は、モータからの非常に低く本質的に半径方向の寄生磁力であることから、摩擦に起因するエネルギ損失は、衝撃表面に送達されるエネルギの数パーセント未満となる。しかしながら、より長い寿命、より少ない粒子そしてより低い摩擦が所望される場合、毎秒数メートルと高速であることから、いずれの運動方向にも作用する自動式空気力学的軸受特徴部を軸受の内部直径内に形成させることが可能である。さらに、ユーザは一定のタイプの患者について作業するとき、工具に対しひいては工具ホルダに対し大きな半径方向荷重を加える可能性があることから、軸受212Aは、転動体タイプ、例えば転がり軸受ケージブッシング(すなわちダイセットブッシング)軸受または再循環ボールブッシング、または
図4B、4Cおよび4Dに関連して以下で論述されているようにダイヤフラム撓みタイプの軸受であり得る。
【0035】
コイル構造208は、衝撃運動要素210の位置を決定するための検知用要素216を格納し得る。検知された位置は、領域218内に配置されたコントローラ206によって、電池パック204からコイル構造208への電流を制御して衝撃運動要素210の位置、速度および加速を制御するために使用され得る。こうして、衝撃運動要素210は、所望のサイクル時間で、工具ホルダ要素202のフランジ220に対して所望の衝撃エネルギを送達するように制御され得る。したがって、衝撃運動要素210は、工具ホルダ要素202および工具ホルダ108によって保持された工具上の力が骨切断などの有用な作業を行なえるようにすることができ、ここで、下位端部上の衝撃運動要素210の質量は工具ホルダ要素202および取付けられたツーリング(例えばチャック、工具アダプタ、工具ホルダ108など)の質量の約4分の1、かつ最高で工具ホルダ要素202および取付けられたツーリングの質量の約2倍~4倍であり得る。
【0036】
図2は、コイル構造208が、工具を後退させるために使用される時として遠位フランジと呼ばれる後方衝撃フランジ222にほぼ当接するまで衝撃運動要素210を移動させている活動化準備完了位置にある、線形電動外科用ハンマ衝撃工具100の側断面図を示す。ここで、後方衝撃フランジ222は、システムの組立てを可能にするためボルトオンカラータイプのものであるが、衝撃運動要素210がシャフト214上にひとたび設置された時点で焼嵌めすることも同様に可能であると思われる。ユーザは工具(図示せず)、例えば工具ホルダ108に取付けられたブローチを、切断すべき対象物内へと前方に押すことができ、これにより、工具ホルダ要素202を後向きに工具本体106内へと押すことができる。工具ホルダ要素202のフランジ220はこのとき、適正な衝撃位置に位置設定され、その位置は、センサ224Aによって検知される。後方衝撃フランジ222の位置は、センサ224Bによって検知される。センサ224Aおよびセンサ224Bは、集合的にセンサ224と呼ばれる。
【0037】
衝撃運動要素210の位置は同様に、例えば、コイル構造208内の磁気センサといった検知用要素216を用いて検知され得る。送達すべきエネルギに基づいて、コントローラ206は、所望のエネルギの衝撃を送達する目的で、検知された空間内で、必要とされる速度に達するように衝撃運動要素210を前方に加速するべくコイル構造208への電流(および電圧)を指令することができる。
図3は、衝撃運動要素210とフランジ220の間の衝撃の瞬間における線形電動外科用ハンマ衝撃工具100の側断面破断図を示す。
【0038】
部品および可動界面の数を最小限に抑えることにより、設計の単純さを達成することができる。本明細書で開示されているように、同心の要素によって、可動要素の摩耗およびエネルギ損失を最小限にすることができる。工具ホルダ要素202は、それぞれ近位端部および遠位端部で滑り軸受または転動体軸受または撓み軸受であり得る線形軸受212内に置かれていてよい。PTFEベースの軸受であるルーロンは、蒸気滅菌可能であり追加の潤滑無しでも非常に低い摩擦を有することから、1つの例示的滑り接触軸受材料である。各軸受212をそれぞれ対応する端部キャップ102および104内に圧入することができるものの、ここでは、この衝撃装置において軸受212を所定の場所に保持するために追加の信頼性を提供するためのスナップリング226(個別にスナップリング226A、226Bおよび226Cとラベル付けされている)が示されている。さらに、リップシール228をスナップリング230により所定の場所に保持することができる。代替的には、リップシール228およびスナップリング230を、リップシール228が存在する溝内の単純なOリングまたはクアッドリングで置き換えることも可能である。リップシール228の摩擦はより低いものであり得るが、清掃はより複雑であり得る。なおも本明細書中に開示されている実施形態と一貫して、事実上拘束の無い軸方向運動を可能にすることのできるベローズシールを使用することができ、あるいは金属ベローズが、気密シールを提供しながら、わずかなばね付勢を提供することもできる。有利にも滅菌目的で、ベローズは、工具内部の気体を膨張させることができ、このベローズを偏向させることにより工具ホルダ要素202を必要に応じて押し出すことができる。遠位端部軸受および噛合するシャフトセグメントは、工具ホルダ要素202の回転を防止するように六角形であってよく、工具の封入された遠位端部内の六角軸受は、封止の必要がない。
【0039】
図4Bは、近位端部におけるダイヤフラムによる封止ならびに気体の内部膨張を提供することのできるダイヤフラム撓み軸受402で近位軸受212Aを置換し得る場所を示している。他の要素は、
図4A、4Cおよび4Dに関連して説明されたものとひきつづき同じであり得る。ダイヤフラム撓み軸受402は、例えば電鋳ニッケル合金で製造され得、したがって、同様に工具ホルダ要素202に対し公称ばね復帰力を提供してそれを心出しされた状態に保つこともできる。遠位軸受212Bは、滑り軸受としてとどまることができ、あるいはそれも同様に類似の撓み軸受で作製することができる。
【0040】
衝撃フランジ220および222は、コイル構造208を中心とすることができ、その位置はセンサ224によって検知され得、したがって、衝撃運動要素210の適正な運動プロファイルを制御して工具ホルダ要素202に衝撃を加え、工具を打ち込むかまたは後退させることができる。図示されているように、工具ホルダ108は、ダイヤフラム撓み軸受402の前方円筒形部分404上に嵌合し得る。これは焼嵌めであり得、あるいは、ロックタイトなどの接着剤で固着されてもよい。屈曲要素406は、同様に工具ホルダ要素202のシャフト214を支持するための半径方向剛性を提供できる実際の屈曲ダイヤフラムであり得る。ダイヤフラム撓み軸受402の円錐形部分408が、近位端部キャップ104の前方テーパ付き部分410上に嵌合でき、近位端部キャップ104およびコイルとの関係においてシャフト214を心出しするように作用することができる。
【0041】
図4Bは、単純ダイヤフラム撓み部412を示しているが、
図4Cに示されているように、回旋状(または波形)ダイヤフラムベースの近位端部キャップも同様に使用可能であることが理解される。回旋状ダイヤフラム撓み部412は、例えば電鋳によって作製可能であり、特徴部は中心軸を中心として円形であることから、優れた半径方向荷重容量および剛性のみならず、より大きい運動範囲を有することができ、かつ非常に高い軸方向コンプライアンス性を有することができるが、製造コストはさらに高額になる可能性がある。このシステムにおける回旋状ダイヤフラムは、最高10mm対2mmのさらに大きい運動範囲を提供して、単純な鼓膜様のダイヤフラムであった場合に撓み部が過剰屈曲する可能性をより低く抑えながら装置を「空撃ち」できるようにし得ると考えられる。ここで、ダイヤフラム撓み部412を、名目上平面的に作り、その後、内径(ID)および外径(OD)において要素間に挟み込むことができる。ODにおいては、工具本体106内にろう付け、固着、圧入さらには螺入することのできる構造414の中にダイヤフラム撓み部を保持することができ、ここで、リング416も同様にこの構造414の内部に嵌合され、構造414の段に対してダイヤフラム撓み部412の外側フランジを押すことができるということがわかる。ダイヤフラム撓み部412は、そのIDにおいて、シャフト214と係合して、近位端部キャップ104内でシャフト214を半径方向に心出しすることができ、
図8に関連して本明細書中で論述されているようにデッドブローハンマ様の特性を有し得るフランジ418と、強い軸方向挟持効果を創出するために拡張され得かつ所定の場所に固着、焼嵌め、または挟持され得る工具ホルダ108との間に挟み込まれる。
【0042】
図4Dでは、近位端部キャップ420は、互いにリングスペーサ424(リングスペーサ424Aおよび424Bとして個別にラベル付けされている)で、ロッド直径約4本分離隔された2つの回旋状ダイヤフラム422(ダイヤフラム422Aおよびダイヤフラム422Bとして個別にラベル付けされている)を有することができる。これにより、撓み部によって保持されたロッドに対する優れたモーメント支持が提供され得る。リング426は、ODにおいて軸方向で所定の場所に撓み部を係止することができる。リングスペーサ424は、同一であって、突出した内部環状フランジ428(フランジ428Aおよび428Bとして個別にラベル付けされている)を有することができる。IDにおいて、スペーサ430は、ロッドが中を通って挿入された時点で圧縮され得、
図4Cの単一の撓み部の場合と同様に、ロッドフランジ220と工具ホルダ108の間に挟み込まれてよい。
図4Dにおいて、スペーサ430は、いずれかのフランジ428を叩くことによって撓み部の遠位および近位行程を制限し、これにより撓み部に対する損傷を防止できる半径方向に突出するフランジ432を有することができる。全ての撓み部使用事例において、遠位キャップ102は近位キャップ104と同じであり得、したがって工具保持要素202は、撓み部によって完全に支持され得る。
【0043】
滑り軸受212Aと共に使用するための近位端部キャップ104は、工具本体106内への滑り嵌めとして示されているが、これは、同心性を保証するための噛合テーパを伴う螺入連結であってよい。それは同様に、外科手術の最も近くにおいて最大の応力を担っておりかつ生体物質が中に浸潤し得ると考えられる空間が不在でなければならないことから、焼嵌め、はんだ付け、ろう付け、接着さらには溶接によって恒久的に取付けられ得る。近位端部キャップ104が工具本体106に対し事実上恒久的に取付けられている状態で、遠位端部キャップ102は、取外し可能であり得、これは遠位端部キャップ102と工具本体106の間の螺入連結によるものであり得る。遠位端部キャップ102内には、本明細書中で開示されている通り、圧入またはスナップリング226Cにより所定の場所に保持された後方滑り軸受212Bが存在し得る。工具ホルダ要素202のシャフト214は、各端部でかつシステムの同心性によって支持され得、工具100を保持する外科医による誘導を必要とする切断動作に由来する半径方向寄生荷重しか印加し得ない。遠位端部キャップ102は閉鎖可能である。換言すると、シャフト214が遠位端部キャップ102から突出できる必要はない可能性がある。
【0044】
図5に示されているように、衝撃運動要素210は、シャフト214を支持するために使用されるものと同じサイズおよびタイプのルーロン上で平滑なシャフト214に沿って摺動することができる。典型的に約0.5m/秒と速度が上昇した時点で平滑ボア軸受または溝付き軸受が動的支持空気膜の形成を促進して、摩擦および摩耗を削減し効率をより一層増大させる。衝撃運動要素210の中央強磁性コア構造504の近位端部および遠位端部内の軸受502は、スナップリング506(スナップリング506Aおよび506Bとして個別にラベル付けされている)によって保定されている。ここで磁性部材がローレンツ力アクチュエータとしてのコイル構造208と相互作用するものとして示されている。磁石510(磁石510A、510B、510C、510D、510E、510F、510G、510Hおよび510Iとして個別にラベル付けされている)が半径方向に分極され、スペーサ512(スペーサ512A、512B、512C、512D、512E、512F、512Gおよび512Hとして個別にラベル付けされている)で離隔した状態で示され得、こうして磁場が1つの磁石のN極から、通電コイルを通って、隣接する磁石のS極へと戻るように、半径方向に投射し得るようになっている。磁場が、円周方向に巻回された通電コイルを横断するにつれて、右手の法則による力が軸方向に創出されて、衝撃運動要素210を移動させる。ローレンツ力効果は、質量を移動させて、衝撃慣性および長いストロークを創出し得る。代替的には、磁石510のうちの1つおきの磁石を軸方向に分極させることができ、こうしてN-S;S-N;N-S...配列またはハルバッハ配列を形成して、製造が多少複雑になるという潜在的犠牲はあるものの、多少強い電界効果を提供できるように磁石510を配設することが可能になる。
【0045】
本明細書中で開示されているように、衝撃運動要素210は、自動エアロスタティック軸受であり得る線形軸受によって、コイル構造208内部で支持され得る。こうして、衝撃運動要素210は、工具保持要素202から半径方向に係合解除される。これにより、電動モータの高いレベルの同心性および効率が提供され得る。
【0046】
本明細書中で開示されているリニア電動モータは、ローレンツ力モータであり得るが、制御がより難かしいものの可変リラクタンスおよびヒステリシスモータを使用することも可能であり、これはより大型となり得るものの、機械的構造がより単純でありひいてはコスト面の利点を有し得ると考えられる。可変リラクタンスモータについては、衝撃運動要素210の磁性材料は、軟磁性材料、例えば多数の突起が磁極として作用する積層ケイ素鋼で構成され得る。ヒステリシスモータについては、衝撃運動要素210の磁性材料は、大きなヒステリシスループ特性を有する硬質クロムまたはコバルト鋼の平滑なシリンダであってよい。
【0047】
衝撃運動要素210は、図示されている通り一方の端部が中実であるコア構造504を有することができ、他方の端部は、スナップリング516で所定の場所に保持された座金514を有する。衝撃運動要素210の磁石アセンブリ全体は、エポキシ樹脂により合せて接着可能である。およそ1/2~1mmの厚みの薄い非磁性ステンレス鋼管が、アセンブリ全体を封入して、破断時にいかなる磁石チップもモータを短絡させないように保証することができる。本明細書中で開示されているように、この要素は、弾性材料で作製でき、その場合、この要素は、衝撃表面ともなるように突出することができ、これにより、デッドブローハンマの使用に似たよりピークの低い、しかもより長い持続時間の衝撃力が創出される。ただし、高速でハードな歯切れのよい打撃のためには、硬鋼上に硬鋼を使用することができる。衝撃運動要素210の反対側の端部は、後退のために使用可能である。
【0048】
切断のために工具を前方に駆動するためには、ユーザは、線形電動外科用ハンマ衝撃工具100を前方に押し、工具ホルダ108の表面232は、近位端部キャップ104の前方スナップリング(または表面)230上で静止することができる。コントローラ206は、コイルを制御して、衝撃運動要素210を後退させ、その後それを前方に駆動して、所望される衝撃エネルギを生成するのに必要な速度を達成することができる。工具ホルダ要素202のフランジ220は、こうして、衝撃運動要素210の近位端部による衝撃を受けることができる。工具を後退させるために、ユーザは線形電動外科用ハンマ衝撃工具100を引き戻し、これにより、フランジ220を端部キャップ104の内部表面236に接して静止させ、線形電動外科用ハンマ衝撃工具100の近位端部近くの準備完了位置から、コイル構造208の近位端部から遠位端部へと加速されるべき衝撃運動要素210の範囲内に後方衝撃フランジ222を持っていくことが可能となる。衝撃の速度が、エネルギ、ひいては衝撃時点で送達される力を制御する。
【0049】
線形電動外科用ハンマ衝撃工具100を使用しているときにユーザが口頭で指令を出すのを開き取る目的でコイル構造208に対する電流を制御するため、マイクロプロセッサコントローラであり得るコントローラ206に対し、マイクロホン116を連結することができる。一例として、外科医は、衝撃を観察した時点で「より低い力」、「より高い力」、「より高速」「より低速」などと話すことができ、ユーザが自らの声を使って自らのニーズおよび使用スタイルに合うように線形電動外科用ハンマ衝撃工具100を制御することができるということが理解される。特定のユーザに応答するようにコントローラ206に学習させることが可能である。
【0050】
コントローラ206は、より小さい力を得るために、加速距離およびコイル構造208に対する電流を制御して、力ひいては衝撃運動要素210の加速度を変動させることができる。衝撃力は、エネルギに正比例し得、それは、衝撃運動要素210の質量の2分の1とその速度の二乗の積である。「より高速」とは、コントローラ206が、衝撃後に、次の衝撃のための出発点までより速く質量を戻し、その後衝撃運動要素210を加速させることになる、ということを意味し得る。コントローラ206は、所望の力を生成するために電流制御モードで動作でき、電圧は、衝撃運動要素210が加速するにつれての速度に追従する。ローレンツ力アクチュエータは、可動要素を磁石間のピッチよりも遠くに走行させ、したがって、検知用要素216、例えばホール効果センサは、コイル構造209内に分散されて、その下にある磁石の極性を検知し、コイル208への電流方向を切換えて、衝撃運動要素210が加速するにつれて力がつねに適正な方向にあることを保証することができる。このタイプのより長距離運動の線形電動アクチュエータは、可動磁石部材(例えば衝撃運動要素210)の滑らかな運動を提供するため正弦曲線状に切換えられる独立して制御可能な3つのコイルを有することができる。
【0051】
衝撃運動要素210が加速されるにつれて、コイル構造208上に等しくかつ対向する力が存在し、ユーザはこれを感じることができるが、システムの質量によってこれを幾分か吸収することが可能である。
図6Aは、ハウジング118をしっかり固定するための「クアッドリング」などの減衰用要素608(減衰用要素608Aおよび608Bとして個別にラベル付けされている)を受入れるための円周方向内部溝606(溝606Aおよび606Bとして個別にラベル付けされている)を包含できるように頂部部分604を有することのできる、ハンドル602の組付けの部分的断面図を示している。ハウジング118は、
図6Bに示されているような対応する外部溝612(溝612Aおよび612Bとして個別にラベル付けされている)を有することができ、ここで減衰用要素608Bの内径ローブが溝606Bの側面と係合し、一方、減衰用要素608Bの外径ローブはハウジング118の溝612の側面と係合する。
図6Aおよび6Bは、方形の減衰用要素を示しているものの、円形Oリングを使用することもできる。
【0052】
図7は、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具700の断面図を示す。線形電動外科用ハンマ衝撃工具700は、工具ホルダ108にしっかり固定された工具を駆動するための近位衝撃フランジ704および工具を後退させるための遠位衝撃フランジ706を有することのできる工具ホルダ要素702を含むことができる。近位衝撃フランジ704および遠位衝撃フランジ706は、ロッド708上に螺入された別個の要素であり得る。衝撃フランジ704および706は、弾性ポリマ要素710(弾性ポリマ要素710Aおよび710Bとして個別にラベル付けされている)のためのキャビティを有することができ、これによって本明細書中で開示されているようなデッドブローハンマを超える性能を線形電動外科用ハンマ衝撃工具700に備えることができる。ロッド708の遠位端部712は、六角ブッシング714内に滑り込ませるように機械加工された六角形状を有することができる。ダイヤフラムタイプの軸受が使用される場合には、ロッド708とダイヤフラム軸受は互いに適正に係合するように設計され得る。
【0053】
本明細書中に開示されているように、より持続時間の長いより低い力を送達するためには、硬質注型ポリウレタンなどの弾性低損失ポリマを、衝撃運動要素210の接触表面内に、あるいはフランジ220および222の衝撃表面において工具ホルダ要素702のシャフト214の周りに設置された座金として、組込むことができる(少なくとも
図2に示されている通り)。
【0054】
図8A、8Bおよび8Cは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具800を示す。線形電動外科用ハンマ衝撃工具800は、チューブモータ802を含むことができる。本明細書中で開示されている通り、チューブモータ802は、ハウジング804の内部に組付けられ得、コア806はモータ固定子808内部で前後に移動することができる。管形状で示されているロッドインパクタ810を、その遠位フランジ814およびコア806の端部内に螺入された螺入式スタッド812によって、可動コア806の端部に取付けることができる。ロッドインパクタ810内部の円筒形の空間816が工具保持要素820の広がった端部818を収容でき、この広がった端部818が、工具を前方に駆動するかまたは工具を後退させるために近位または遠位方向に工具保持要素820を駆動するべく衝撃を受けるものである。ここでは管状構造として示されているものの、ロッドインパクタ810は、その側面が開放するようにターンバックルの本体内のように平面的でもあり得、したがって、ワンピースであり、こうして挿入された工具ホルダ要素820は、端部822が別個に取付け可能な要素である必要性を取り除くと言うことが理解される。
【0055】
ロッドインパクタの内部キャビティ内の軸方向運動空間、例えば円筒形空間816は、所望される最大衝撃エネルギを生成するために必要な可動コアのストロークに等しいものであり得る。このストローク距離は、チューブモータ802の最大の達成可能な力および速度そして可動コア806と管状ロッドインパクタ810の組合せ質量によって決定され得る。求められるストロークを計算するために速度ひいては走行した距離の一関数として加速度を決定するために、総移動質量と併せてモータの力-速度曲線を使用することができ、このストロークに広がった端部818の厚みを加えたものがキャビティ816の全長となる。
図9Bは、後退モードにおける線形電動外科用ハンマ衝撃工具800を示しており、ここで、ユーザは、線形電動外科用ハンマ衝撃工具800を前方に押して、工具が施術すべき対象物(例えば大腿骨)と手術工具(例えば図示されていないが工具ホルダ108内に保持されているブローチ)を係合させている可能性がある。したがって、工具ホルダ108の遠位端部は、近位端部キャップ824の近位面に触れている可能性があり、工具保持要素820の運動制限フランジ826が端部キャップ824から後方へ遠位に離隔され得る。可動コア806は、フランジ814の近位面が広がった端部818の遠位面に衝撃を加えてコア806およびロッドインパクタ810の運動エネルギを工具ホルダ要素820に伝達するまで、いつでも前方へと加速され得る。これにより、応力波をシャフト828の下方へと送ることができ、ここで応力波は次に工具ホルダ108へ、そして動作する工具内に伝達されて、例えば骨にリーマを駆動することなどの作業を対象物に対して行なう。
【0056】
手術工具を後退させるためには、ユーザは、線形電動外科用ハンマ衝撃工具800を自らの方に引き、工具保持要素820の運動制限フランジ826は、端部キャップ824(またはスナップリング830)と接触でき、一方コア806は、コントローラ206などのシステムコントローラによって前方へと移動を継続させられる。このとき、遠位に加速し、インパクタの端部キャップ822の遠位内部表面は、広がった端部818の近位表面に衝撃を加え、動作する工具を後退させるためのエネルギを付与する。
【0057】
工具保持要素820は、半径方向荷重およびモーメント荷重に耐えることができかつ広がった端部818がボア816と接触しないように効率の良い正確な軸方向運動を保証することのできる軸受システムによって支持され得る。絞り穴を通して空気を圧送するためのエネルギが喪失しないように保証するべく、本質的に制約のない空気流を可能にするために相対的移動要素間には半径方向に例えば1mmといった隙間が存在し得ることから、ボア816は加圧されていない。例えば、2つの軸受832(軸受832Aおよび832Bとして個別にラベル付けされている)を、シャフト828の直径の少なくとも3倍以上、例えば5倍だけ分離することができる。さらに、軸受832Aからフランジ818までの距離は、軸受間の離隔距離にほぼ等しいものでほぼあり得る。このようにして、広がった端部818の半径方向運動は、約0.1mmであり得る軸受とシャフト828の間の半径方向の隙間でほぼあり得、こうして、広がった端部818がボア816の内部と接触しないことが保証される。本明細書中で開示されているように、線形運動軸受832は、利用分野のタイプおよび所望される性能について選択される滑り軸受または転動要素または撓み要素軸受であり得る。
【0058】
線形電動外科用ハンマ衝撃工具800は、グリップ836およびトリガ838を伴うハンドル834を含むことができる。ハンドル838およびベース840の内部には、コントローラ206などの制御回路および所定の場所に摺動する取外し可能かつ再充電可能な電池842が存在し得る。ハンドル834の頂部は、組付けブロック810に連結され得る。2つの間の減衰用界面も、本明細書中で開示されているように使用可能である。スピーカ/マイクロホン844が線形電動外科用ハンマ衝撃工具800の音声制御を可能にして、ユーザ指令に応答させ、本明細書中で開示されている装置の状態についてユーザに返答させることができる。
【0059】
本明細書中で開示されているいずれの実施形態も、使用される工具および患者の状態および手術について線形電動外科用ハンマ衝撃工具が自動的に衝撃エネルギおよび周波数を調整できる高度な制御を可能にすることができる。手術の進捗につれての工具のインテリジェント制御を達成するために、工具の位置との関係において工具保持要素202、702および820などの工具保持要素の位置を監視するためのセンサ224などのセンサを使用することができ、あるいは、市販のチューブモータ内に内含された位置センサを使用してもよい。さらに、工具内の加速度計(または、工具ホルダ108との関係におけるその適切な位置付けを可能にするそのアダプタ要素)も同様に、追加のフィードバックを提供して骨内への工具の前進の確認を可能にすることができる。本明細書中で開示されている実施形態と一貫して、各衝撃に伴う骨内への工具の前進を同様に監視するために、カメラにより手術を注視することができ、カメラおよび加速度計からの情報を、制御電子機器、例えばコントローラ206などに対し無線リンクによって送信することができる。
【0060】
図9Aおよび9Bは、本開示の少なくとも1つの実施例に一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具900を示す。線形電動外科用ハンマ衝撃工具900は、後方キャップ904と前方キャップ906を有するハウジング902を含むことができる。後方フランジ908および前方フランジ910を、ボルト912を用いてそれぞれ後方キャップ904および前方キャップ906に近接してハウジング902に対ししっかり固定することができる。ハウジング902は、ハウジング902の長手方向軸に沿って延在するキャビティ903を画定することができる。
【0061】
シャトル914が少なくとも部分的にハウジング902の内部に位置設定され得、ロッド916(ロッド916Aおよび916Bとして個別にラベル付けされている)を含み得る。動作中、シャトル914は、ハウジング902の長手方向軸に沿って並進運動することができる。カラー918(カラー918A、918B、918Cおよび918Dとして個別にラベル付けされている)がロッド916に連結され得、走行空間920を画定できる。換言すると、カラー918はシャトル914の移動を所定のストローク範囲に制限することができる。カラー918の位置は、シャトル914のためのストローク長を増減させるように調整可能である。
【0062】
シャトル914は、質量922(質量922Aおよび922として個別にラベル付けされている)およびばね924(ばね924Aおよび924Bとして個別にラベル付けされている)を含むことができる。質量922およびばね924は、後方フランジ908を圧迫して、シャトル914を線形電動外科用ハンマ衝撃工具900の前方端部(時として近位端部と呼ばれる)に向かって付勢することができる。カラー918Aおよび918Bの位置は、ばね924が生成する付勢力の量を調整するために変更可能である。したがって、質量922およびばね924は、付勢要素として作用することができる。
【0063】
線形電動外科用ハンマ衝撃工具900は、ハウジング902の長手方向軸に沿ってハウジング902が画定するキャビティ903の内部で前後に並進運動するスライダ926を含むことができる。スライダ926は、孔930(孔930Aおよび孔930Bとして個別にラベル付けされている)を画定するスライダフランジ928を含む。ロッド916は、孔930を通過でき、スライダフランジ928は、カラー918の間に位置付けされて、シャトル914との関係におけるスライダ926の運動範囲を制限することができる。スライダフランジ928は、同様に、カラー918Cおよび918Dとシャトルフランジ932の間に位置設定され得る。
【0064】
衝撃ストローク中、スライダフランジ928は、シャトル914ならびにそれに取付けられた工具(例えばブローチ)を前方に駆動するために、カラー918Cおよび918Dに衝撃を加えることができる。後退ストローク中、スライダフランジ928はカラー918Aおよび918Bに衝撃を加えてシャトル914およびそれに取付けられた工具を後方に駆動することができる。
【0065】
スライダ926の移動は、モータ936を制御できるコントローラ934によって制御され得る。本明細書中で開示されているように、スライダシャフト938が、モータ936によって画定された貫通孔940を通過し得る。スライダシャフト938は同様に、本明細書中で開示されている1つ以上の磁石を含み、スライダ926を前後に揺動させて衝撃力を生成するようにモータ936と協働することができる。コントローラ934は、本明細書中で開示されているようにプログラマブルコントローラまたは他の回路であり得る。モータ936は、本明細書中で開示されているように、チューブモータまたは他のモータであり得る。本明細書中で開示されているホール効果センサなどのセンサを用いて、衝撃運動要素210との関係における本明細書中で開示されているスライダ926の位置を監視することができる。センサおよび磁石は、明確さのため、
図9には示されておらず、本明細書中で開示されているいずれの構成でもあり得る。
【0066】
コントローラ934およびモータ936は、ハンドル944によって画定されたキャビティ942内に格納され得る。ハンドル944は、トリガ946(トリガ946Aおよびトリガ946Bとして個別にラベル付けされている)を含むことができる。使用中、外科医は、トリガのうちの一方(例えばトリガ946A)を押圧して、線形電動外科用ハンマ衝撃工具900に、工具を前方に駆動するのに必要とされる衝撃力(時として駆動力と呼ばれる)を生成させることができる。他方のトリガ(例えばトリガ946B)を押圧すると、線形電動外科用ハンマ衝撃工具900に、骨から工具を引き抜くための衝撃力(時として後退力と呼ばれる)を生成させることができる。
【0067】
図10A、10Bおよび10Cは、本発明の少なくとも1つの実施形態と一致する骨質査定のオプションを示す。外科医による骨質の初期査定のコントローラ内への入力(例えば、工具または何らかのユーザインタフェース内への外科医による骨質の入力または、X線またはCTを介した骨質の何らかの外部査定)は、外科医が工具に対して話すことができ、マイクロホンで言葉を受け取る。無線リンクを用いて、工具のコントローラは、情報を処理できると思われる外部コンピュータにアクセスでき、制御計画が工具へダウンロードされ得、これを用いて目前の手術のための工具をよりうまく制御することができる。
【0068】
図10Aに示されているように、本明細書中で開示されているさまざまな線形電動外科用ハンマ衝撃工具は、工具の変位についてのフィードバックを提供することができる(1002)。変位に基づいて、骨質を決定することが可能である。例えば、大きな変位は、工具が容易に骨を変位させることから、骨質が劣ることを意味し得る。小さい変位は、工具が所与の設定値についてそれほど骨を変位できないことから、より高い骨質であり得る。骨質がひとたび推定されると、外科医に対し値が表示され得る(1004)。
【0069】
図10Bに示されているように、骨質の推定を形成するために、断層撮影スキャン、X線または他のスキャンデータを使用することができる(1006)。例えば、X線が淡い場合には、骨密度が低い可能性があり、低い骨密度は、骨質不良と同一視され得る。濃くかつ/または鮮明なX線は、より高い骨質を有する高密度の骨を標示し得る。ひとたび骨質推定が行なわれると、外科医に対し値が表示され得る(1008)。
【0070】
図10Cに示されているように、外科医は患者についてのさまざまな因子、例えば年令、性別、人種、術前スキャンからのデータなどを入力することができる(1010)。さまざまなデータを用いて、コンピュータシステムは、骨質推定値を策定するべくルックアップテーブル、保険数理表、他の患者由来の匿名データなどを使用することができる。さまざまな因子に基づいて、推定された骨質を決定し、外科医に表示することができる(1012)。
【0071】
図11は、本開示の少なくとも1つの実施例と一致する線形電動外科用ハンマ衝撃工具を制御する方法を示している。ひとたび骨質が査定されコントローラ内に入力された(1102)ならば、手術は開始し得る(1104)。例えば、骨質スコアは、骨質不良の1から高い骨質の5までの範囲内にあり得る。骨質に応じて、工具は、予め決定された衝撃力を送達するように設定されてよい。例えば、低い骨質については、低い衝撃力を設定することができる。より高い骨質については、より高い衝撃力を設定することができる。
【0072】
手術中、骨質は、最初の数回のブローチにおいて工具がどれほど迅速に骨内に移動しているかに基づいて、工具/位置センサの検知を用いて更新され得る(1106)。例えば、海綿骨(例えば骨粗しょう症)に起因してブローチが予期以上に速く摺動している場合、骨質は更新され得る。初期骨質査定の最終目的は、開始時の力(初期衝撃)を変調させ、工具が骨内へ前進するにつれて後続する衝撃変調量を調整することにあり得る(1108)。例えば、ブローチのサイズが増大するにつれて工具は衝撃を加え続けることから、例えば大腿管を下への「最大の」ブローチ移動が存在する(位置センサによって測定されるように)場合、エネルギは監視されて変更の無い状態にとどまる。
【0073】
骨質の更新は、連続的プロセスである。例えば、ブローチまたはインプラントがそれほど前進していない(「中間的前方移動」)と位置センサが指摘した場合、それは行程の終りを標示し得る。骨にさらに激しく衝撃を加え続けると、骨に損傷を与えるかもしれず、したがって工具は、特定の百分率だけ力を自動的に低く変調させることができる(例えば、骨が弱くなればなるほど減少はより有意なものとなり、強くなればなるほど減少は有意でなくなる、等々。
【0074】
図12は、本開示の少なくとも1つの実施例に係る、コントローラ206および934などのコントローラ1200の例示的概略図を示す。
図12に示されているように、コントローラ1200は、プロセッサ1202とメモリ1204を含むことができる。メモリユニット1204は、ソフトウェアモジュール1206および骨データ1208を含むことができる。プロセッサ1202上で実行している間、ソフトウェアモジュール1206は、例えば
図10および11に関して以下で説明される方法の中に含まれる1つ以上の段階を含めた、変位データを受信し、骨質を決定し、工具の衝撃力を調整するなどのプロセスを行なうことができる。本明細書中で開示されているように、骨データ1208には、本明細書中で開示されている骨質を決定するために使用可能である数式、ルックアップテーブル、保険数理表、患者データなどが含まれ得る。骨データ1208には同様に、所与の骨質のために望ましい衝撃力と、ラスプおよび/またはブローチなどの工具のさまざまなサイズ決定とを相関させるためのデータも含まれ得る。コントローラ1200は同様に、ユーザインタフェース1210、通信ポート1212および入出力(I/O)デバイス1214を含むことができる。
【0075】
ユーザインタフェース1210は、ユーザがコントローラ1200とインタフェースできるようにする任意の数のデバイスを含むことができる。ユーザインタフェース1210の非限定的例としては、キーパッド、例えば線形電動外科用ハンマ衝撃工具のハウジング上に位置設定されたボタン、マイクロホン、ディスプレイ(有線または無線接続を介してコントローラに接続されているタッチスクリーン他)、などが含まれ得る。
【0076】
通信ポート1212は、コントローラ1200が、さまざまな情報源およびデバイス、例えば非限定的にサーバまたは他の遠隔コンピュータなどの遠隔コンピュータデバイスと通信できるようにし得る。例えば、遠隔コンピュータデバイスは、通信ポート1212を用いてコントローラ1200によって検索可能である患者のスキャンデータなどのデータを維持することができる。通信ポート1212の非限定的例としては、イーサネットカード(無線または有線)、Bluetooth(登録商標)送信機および受信機、近距離無線通信モジュールなどが含まれ得る。
【0077】
I/Oデバイス1214は、コントローラ1200が情報を受信し出力することを可能にし得る。I/Oデバイス1214の非限定的例には、センサ、例えばホール効果センサ、カメラ(静止画または動画)、マイクロホンなどが含まれ得る。例えばI/Oデバイス1214は、コントローラ1200が、CTスキャンデバイス、X線機械などから直接患者データを受信することを可能にし得る。別の例として、I/Oデバイス1214は、プロセッサ1202が受信した1つ以上の信号を伝送するホール効果センサを含むことができる。プロセッサ1202はこのとき、スライダの位置および/またはスライダの位置に基づいてスライダが生成すべき衝撃力を決定することができる。
【0078】
注記
以上の詳細な説明には、詳細な説明の一部を成す添付図面に対する参照指示が含まれている。図面は、例示を目的として、本発明を実践できる具体的実施形態を示している。これらの実施形態は同様に、本明細書中において「実施例」とも呼ばれている。このような実施例は、図示または説明されているものに追加の要素を含むことができる。しかしながら、当該発明人らは同様に、図示または説明されている要素のみが提供されている実施例も企図している。その上、当該発明人らは同様に、本明細書中に図示または説明されている特定の実施例(またはその1つ以上の態様)に関するかまたは他の実施例(またはその1つ以上の態様)に関する、図示または説明されている要素(またはその1つ以上の態様)の任意の組合せまたは置換を用いた実施例も企図している。
【0079】
本明細書と参照によりそのように組込まれているあらゆる文書との間で用法の不一致が生じた場合には、本明細書中の用法が支配する。
【0080】
本明細書において、「a」または「an」なる用語は、特許文書中で一般的であるように、「少なくとも1つ(at least one)」または「1つ以上(one or more)」の他のいずれかの事例または用法とは独立して、1つまたは2つ以上を含めるように使用される。本明細書において、「or(または)」なる用語は、非排他的orを意味するように使用され、したがって、別段の指示の無いかぎり、「A or B」は「BではなくA」、「AではなくB」、そして「AおよびB」を含む。本明細書において、「including(を含む)」または「in which(その中で)」なる用語は、それぞれの用語「comprising(~を含む)」および「where in(ここで)」のプレインイングリッシュ等価物として使用される。同様に、以下のクレーム中、「including」および「comprising」なる用語は、オープンエンドである、すなわち、クレーム中でこのような用語の後に列挙されているものに加えた要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、調合物またはプロセスはなおも、そのクレームの範囲内に入るものとみなされる。その上、以下のクレームにおいて、「first(第1の)」「second(第2の)」および「third(第3の)」などの用語は、単にラベルとして使用されており、その目的語に対して数値的要件を課すように意図されていない。
【0081】
以上の説明は、限定的ではなく例示的なものとして意図されている。例えば、上述の実施例(またはその1つ以上の態様)は、互いに組合わせた形で使用され得る。例えば以上の説明を精査した上で当業者が他の実施形態を使用することも可能である。要約書は、読者が技術的開示の内容を迅速に確認できるようにするため、37C.F.R.§1.72(l)に準拠して提供されている。要約書は、クレームの範囲または意味を解釈または限定するために使用されないという理解の下で提出されるものである。同様に、以上の詳細な説明では、開示を簡素化するためにさまざまな特徴がまとめられている可能性がある。このことは、請求されていない開示対象の特徴がいずれかのクレームにとって必須であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明力ある主題は、特定の開示対象の実施形態の全てよりも少ない特徴の中に存在し得る。したがって、以下のクレームは、実施例または実施形態として本明細書中において「詳細な説明」中に組込まれ、各クレームは別個の実施形態として自立しており、このような実施形態はさまざまな組合せまたは置換の中で互いに組合せ可能であることが企図されている。本発明の範囲は、添付クレームが権利を有する最大範囲の等価物と共に、添付クレームを基準にして決定されるべきである。
【国際調査報告】