IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アボット カーディオバスキュラー システムズ インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図1
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図2
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図3
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図4
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図5
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図6
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図7
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図8
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図9
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図10
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図11
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図12
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図13
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図14
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図15
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図16A
  • 特表-ガイドワイヤおよび使用方法 図16B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ガイドワイヤおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
A61M25/09 514
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544162
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022011786
(87)【国際公開番号】W WO2022159297
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】17/154,938
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507328645
【氏名又は名称】アボット カーディオバスキュラー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギル,プニート カマル シン
(72)【発明者】
【氏名】ダーカン,ジョナサン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】バスケス,マシュー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB38
4C267CC09
4C267DD01
4C267FF03
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
4C267GG33
4C267HH03
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
外層に包まれた内側芯部材を有するDrawn Filled Tubingから形成されたガイドワイヤ。内側芯部材は、線形弾性または超弾性材料から形成され、外層は、35N LTなどの金属合金から形成される。外層の一部は、研削されて、外層と内側芯部材との間のそぎ端接合部を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
近位端および遠位端を有する細長い管状部材であって、
前記細長い管状部材は、第1の材料から形成された内側芯部材、および前記内側芯部材の少なくとも一部を取り囲む第2の材料から形成された外層を有する、細長い管状部材と、
前記外層と前記内側芯部材との間のテーパー状移行セグメントを画定するそぎ端接合部と、
を備える、ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記第1の材料は、前記第2の材料の第2の金属合金と異なる第1の金属合金である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第1の金属合金は、線形弾性合金または超弾性合金から形成される、請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記第1の金属合金の線形弾性合金は、NiTi、CuNiTi、およびNiTiCrを含む金属合金の群から選択される、請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記第2の金属合金は、35N LT、ステンレス鋼、L605、MP35、MP35N、コバルト-クロム、チタン、NiTiCo、NiTiCr、およびNiTi三元合金を含む金属合金の群から選択される、請求項4に記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記内側芯部材は、中実ワイヤである、請求項5に記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記内側芯部材は、非テーパー部において0.0094インチ~0.029インチの範囲の公称直径を有する、請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
前記外層は、非テーパー部において0.0012インチ~0.0018インチの範囲の公称横断単一壁厚を有する、請求項7に記載のガイドワイヤ。
【請求項9】
前記そぎ端接合部のテーパー状移行セグメントは、前記細長い管状部材に沿った長さに伸び、前記外層の公称横断単一壁厚が一定である第1の点から開始し、前記外層の公称横断単一壁厚がゼロである第2の点で終了する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項10】
前記外層は、前記第1の点から前記第2の点へ遠位方向に細くなって前記そぎ端接合部を形成する、請求項9に記載のガイドワイヤ。
【請求項11】
前記内側芯部材は、前記第2の点から第3の点へ遠位に伸びる第1の一定直径部を有する、請求項10に記載のガイドワイヤ。
【請求項12】
前記内側芯部材は、前記第3の点から第4の点に伸びる第1のテーパー部を有する、請求項11に記載のガイドワイヤ。
【請求項13】
前記内側芯部材は、前記第4の点から第5の点に伸びる第2の一定直径部を有する、請求項12に記載のガイドワイヤ。
【請求項14】
前記内側芯部材は、前記第5の点から第6の点に伸びる第2のテーパー部を有する、請求項13に記載のガイドワイヤ。
【請求項15】
前記内側芯部材は、前記第6の点から前記細長い部材の遠位端に伸びる第3の一定直径部を有する、請求項14に記載のガイドワイヤ。
【請求項16】
前記第3の一定直径部は、0.002インチ~0.0060インチの範囲の公称直径を有し、前記第3の一定直径部は、前記第1の一定直径部および前記第2の一定直径部未満である、請求項15に記載のガイドワイヤ。
【請求項17】
前記外層のどの部分も、前記第2の点から前記細長い管状部材の遠位端まで前記内側芯部材を取り囲まない、請求項16に記載のガイドワイヤ。
【請求項18】
前記第1のテーパーセグメントは、2.0cm~6.0cmの範囲の長さを有する、請求項17に記載のガイドワイヤ。
【請求項19】
前記第2のテーパーセグメントは、2.0cm~12.0cmの範囲の長さを有する、請求項18に記載のガイドワイヤ。
【請求項20】
前記第1のテーパーセグメントおよび前記第2のテーパーセグメントの角度は、0.1°~2.0°の範囲である、請求項19に記載のガイドワイヤ。
【請求項21】
前記内側芯部材は、0.014インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0094インチ~0.0125インチの範囲の好ましい直径を有する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項22】
前記内側芯部材は、0.018インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0143インチ~0.0145インチの範囲の好ましい直径を有する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項23】
前記内側芯部材は、0.035インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0260インチ~0.0290インチの範囲の好ましい直径を有する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項24】
非テーパー部における前記内側芯部材の直径は、0.014インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の93.0%以下である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項25】
非テーパー部における前記内側芯部材の直径は、0.018インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の82.0%以下である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項26】
非テーパー部における前記内側芯部材の直径は、0.035インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の91.0%以下である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項27】
前記外層は、0.014インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0012インチの好ましい横断単一壁厚を有する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項28】
前記外層は、0.018インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0015インチの好ましい横断単一壁厚を有する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項29】
前記外層は、0.035インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0018インチの好ましい横断単一壁厚を有する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項30】
非テーパー部における前記外層の壁厚は、0.014インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の14.0%以下である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項31】
非テーパー部における前記外層の壁厚は、0.018インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の9.0%以下である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項32】
非テーパー部における前記外層の壁厚は、0.035インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の4.0%以下である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項33】
ガイドワイヤを形成する方法であって、
近位端、遠位端、前記近位端から前記遠位端に伸びかつ第1の材料から形成された内側芯部材、および第2の材料から形成されかつ前記内側芯部材を取り囲む外層を有する、細長い管状部材を提供することと、
前記内側芯部材を取り囲む外層の遠位部分を完全に除去することによって、前記外層と前記内側芯部材との間のテーパー状移行セグメントを画定するそぎ端接合部を形成することと、
を備える、方法。
【請求項34】
前記そぎ端接合部は、第1の点から開始して第2の点へ遠位方向に細くなるように前記外層を研削することによって形成される、請求項33に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項35】
前記そぎ端接合部のテーパー状移行セグメントは、前記細長い管状部材に沿った長さに伸び、前記外層の公称横断壁厚が一定である前記第1の点から開始し、前記外層の公称横断壁厚がゼロである前記第2の点で終了する、請求項34に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項36】
前記外層は、前記第2の点から第3の点まで研削されて、前記内側芯部材の第1の一定直径部を形成する、請求項35に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項37】
第1のテーパー部は、前記第3の点から前記第3の点の遠位の第4の点まで前記内側芯部材を研削することによって形成される、請求項36に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項38】
前記内側芯部材は、前記第4の点から第5の点に伸びる第2の一定直径部を有する、請求項37に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項39】
前記内側芯部材は、研削されて、前記第5の点から第6の点に伸びる第2のテーパー部を形成する、請求項37に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項40】
第2のテーパー部は、前記第5の点から第6の点まで前記内側芯部材を研削することによって形成される、請求項39に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項41】
前記内側芯部材は、前記第6の点から前記細長い部材の遠位端に伸びる第3の一定直径部を有する、請求項40に記載のガイドワイヤを形成する方法。
【請求項42】
ガイドワイヤであって、
近位端および遠位端を有する細長いDrawn Filled Tubeであって、
前記細長いDrawn Filled Tubeは、第1の材料から形成された内側芯部材、および前記内側芯部材の少なくとも一部を取り囲む第2の材料から形成された外層を有する、細長いDrawn Filled Tubeと、
前記外層と前記内側芯部材との間のテーパー状移行セグメントを画定するそぎ端接合部と、
を備える、ガイドワイヤ。
【請求項43】
前記第1の材料は、前記第2の材料の第2の金属合金と異なる第1の金属合金である、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項44】
前記第1の金属合金は、線形弾性合金から形成される、請求項43に記載のガイドワイヤ。
【請求項45】
前記第1の金属合金の線形弾性合金は、NiTi、CuNiTi、およびNiTiCrを含む金属合金の群から選択される、請求項44に記載のガイドワイヤ。
【請求項46】
前記第2の金属合金は、35N LT、ステンレス鋼、L605、MP35、MP35N、コバルト-クロム、チタン、NiTiCo、NiTiCr、およびNiTi三元合金を含む金属合金の群から選択される、請求項45に記載のガイドワイヤ。
【請求項47】
前記内側芯部材は、中実ワイヤである、請求項46に記載のガイドワイヤ。
【請求項48】
前記内側芯部材は、非テーパー部において0.0094インチ~0.029インチの範囲の公称直径を有する、請求項47に記載のガイドワイヤ。
【請求項49】
前記外層は、非テーパー部において0.0012インチ~0.0018インチの範囲の公称横断単一壁厚を有する、請求項48に記載のガイドワイヤ。
【請求項50】
前記そぎ端接合部のテーパー状移行セグメントは、前記細長いDrawn Filled Tubeに沿った長さに伸び、前記外層の公称横断単一壁厚が一定である第1の点から開始し、前記外層の公称横断単一壁厚がゼロである第2の点で終了する、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項51】
前記外層は、前記第1の点から前記第2の点へ遠位方向に細くなってそぎ端接合部を形成する、請求項50に記載のガイドワイヤ。
【請求項52】
前記内側芯部材は、前記第2の点から第3の点へ遠位に伸びる第1の一定直径部を有する、請求項51に記載のガイドワイヤ。
【請求項53】
前記内側芯部材は、前記第3の点から第4の点に伸びる第1のテーパー部を有する、請求項52に記載のガイドワイヤ。
【請求項54】
前記内側芯部材は、前記第4の点から第5の点に伸びる第2の一定直径部を有する、請求項53に記載のガイドワイヤ。
【請求項55】
前記内側芯部材は、前記第5の点から第6の点に伸びる第2のテーパー部を有する、請求項54に記載のガイドワイヤ。
【請求項56】
前記内側芯部材は、前記第6の点から前記細長い部材の遠位端に伸びる第3の一定直径部を有する、請求項55に記載のガイドワイヤ。
【請求項57】
前記第3の一定直径部は、0.002インチ~0.0060インチの範囲の公称直径を有し、前記第3の一定直径部は、前記第1の一定直径部および前記第2の一定直径部未満である、請求項56に記載のガイドワイヤ。
【請求項58】
前記外層のどの部分も、前記第2の点から前記細長い管状部材の遠位端まで前記内側芯部材を取り囲まない、請求項57に記載のガイドワイヤ。
【請求項59】
前記第1のテーパーセグメントは、2.0cm~6.0cmの範囲の長さを有する、請求項58に記載のガイドワイヤ。
【請求項60】
前記第2のテーパーセグメントは、2.0cm~12.0cmの範囲の長さを有する、請求項59に記載のガイドワイヤ。
【請求項61】
前記第1のテーパーセグメントおよび前記第2のテーパーセグメントの角度は、0.1°~2.0°の範囲である、請求項60に記載のガイドワイヤ。
【請求項62】
前記内側芯部材は、0.014インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0094インチ~0.0125インチの範囲の好ましい直径を有する、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項63】
前記内側芯部材は、0.018インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0143インチ~0.0145インチの範囲の好ましい直径を有する、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項64】
前記内側芯部材は、0.035インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0260インチ~0.0290インチの範囲の好ましい直径を有する、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項65】
非テーパー部における前記内側芯部材の直径は、0.014インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の93.0%以下である、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項66】
非テーパー部における前記内側芯部材の直径は、0.018インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の82.0%以下である、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項67】
非テーパー部における前記内側芯部材の直径は、0.035インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の91.0%以下である、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項68】
前記外層は、0.014インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0012インチの好ましい横断単一壁厚を有する、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項69】
前記外層は、0.018インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0015インチの好ましい横断単一壁厚を有する、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項70】
前記外層は、0.035インチのガイドワイヤでは、非テーパー部において0.0018インチの好ましい横断単一壁厚を有する、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項71】
非テーパー部における前記外層の壁厚は、0.014インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の14.0%以下である、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項72】
非テーパー部における前記外層の壁厚は、0.018インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の9.0%以下である、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【請求項73】
非テーパー部における前記外層の壁厚は、0.035インチのガイドワイヤでは、前記細長い管状部材の全径の4.0%以下である、請求項42に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血管形成および他の血管処置のための従来のガイドワイヤは、通常、その遠位端付近に1つ以上のテーパー部を有する細長い芯部材、および芯部材の遠位部分の周りに配置された螺旋コイルなどの可撓体を備える。芯部材の遠位末端または芯部材の遠位末端に固定されている別個の成形リボンであり得る成形可能な部材は、可撓体を通って伸び、可撓体の遠位端で丸みを帯びた先端に固定される。
【背景技術】
【0002】
典型的な冠動脈手術では、予め形成された遠位先端を有するガイドワイヤを、患者の末梢動脈の中に経皮的に導入し、例えば、ガイドワイヤは、拡張される病変部を通過し、次いで、その遠位部分に膨張可能なバルーンを有する拡張カテーテルを、拡張カテーテルのバルーンが病変部に跨って適切に配置されるまで、先に導入したガイドワイヤの上を通して患者の冠動脈の解剖学的構造の中に前進させる。病変部に跨って適所に配置したら、処置を行う。
【0003】
ガイドワイヤの要件は、それらが、捻れることなく患者の血管系または他の体内腔を通して押し込まれるのに十分なコラム強さを有することである。しかしながら、ガイドワイヤはまた、それらが通って前進する血管または他の体内腔の損傷を避けるために十分に柔軟でなければならない。ガイドワイヤの強度および可撓性の両方を改善してガイドワイヤをその意図された用途により適したものにするための努力が行われてきたが、これら2つの特性は、ほとんどの場合、一方の増加が一般に他方の減少を伴うという点で互いに正反対である。
【0004】
いくつかのガイドワイヤは、可撓性および強度の両方を達成するために、ニチノール(ニッケル-チタンすなわちNiTi)合金などの超弾性合金から形成されている。オーステナイト相へのマルテンサイト相の変態が完了する温度またはそれ以上の温度で超弾性特性を示すニチノール合金に応力が加えられると、試料は、合金がオーステナイト相からマルテンサイト相への応力誘起相変態を経る特定の応力レベルに達するまで弾性変形する。相変態が進行すると、合金のひずみは著しく増加するが、対応する応力の増加はほとんどまたは全くない。ひずみは増加するが、応力は、マルテンサイト相へのオーステナイト相の変態が完了するまで本質的に一定のままである。その後、さらなる変形を引き起こすために、応力のさらなる増加が必要である。
【0005】
永久変形が生じる前に試料への荷重が除去される場合、試料のマルテンサイト相は、弾性的に回復し、変態してオーステナイト相に戻ることになる。応力の減少は、まず、ひずみの減少を引き起こす。応力減少が、マルテンサイト相が変態してオーステナイト相に戻るレベルに達すると、試料の応力レベルは、オーステナイト相への変態が完了するまで本質的に一定のままであり、すなわち、無視できる程度の対応する応力減少とともにひずみが著しく回復する。オーステナイトへの変態が完了した後、さらなる応力減少は、弾性ひずみの減少をもたらす。荷重の適用時に比較的一定の応力で著しいひずみをもたらし、荷重の除去時に変形から回復する能力は、一般に超弾性と呼ばれる。これらの特性は、かなりの程度まで、超弾性材料のガイドワイヤ芯が可撓性および強度の両方を有することを可能にする。
【0006】
超弾性材料から形成されたガイドワイヤの特性は非常に有利であったが、超弾性特性を有する材料から形成されたガイドワイヤおよびガイディング部材は、最適な押し込みおよびトルク特性を有していないことが分かった。
【0007】
当該技術分野で知られているように、ガイドワイヤの構築に使用される多くの材料は、望ましい機械的特性を有するが、強靱な酸化物層などの固有の表面特性のため、半田付けまたはポリマー接着剤の使用などの従来の技術を使用して他のガイドワイヤ構成要素に組み付けるのが困難である。1つの先行技術のガイドワイヤでは、ニチノールワイヤは、ハイポチューブ/接着剤構成、または異種溶接のいずれかによって、ステンレス鋼ワイヤの近位端に接合される。この接合部は、典型的には、ニチノールからステンレス鋼への急激な剛性の移行を有し、複雑な製造工程を有し、製造コストが高い。
【0008】
本発明は、ともに接合された近位および遠位セグメントを有する芯ではなく、単一芯を有するガイドワイヤの設計を可能にする。さらに、本発明の芯部材は、改善された超弾性および捻じれ耐性を有するガイドワイヤを作成するために、他のワイヤ設計とともに使用され得る。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に開示のガイドワイヤの重要な態様は、可撓性および追従性能のための高度の弾性を有する金属合金と組み合わせた、押し込み性およびトルク性能のための高降伏強度を有する金属合金の構造的特徴を利用することである。
【0010】
一実施形態では、細長い管状部材は、近位端および遠位端を有し、内側芯部材および内側芯部材上の外層を含む。内側芯部材は、第1の金属合金から形成され、外層は、第1の金属合金と異なる第2の金属合金から形成される。テーパー状移行セグメントを画定するそぎ端接合部は、外層と内側芯部材との間に形成される。好ましくは、外層の一部が研削されてそぎ端接合部を形成する。テーパー状移行セグメントは、公称横断壁厚が一定である外層上の第1の点から、外層の公称横断壁厚がゼロである第2の点まで伸びる。言い換えれば、テーパーセグメントは、外層の壁厚が最も厚い第1の点から伸び、その後、外層の壁厚がゼロまで研削されており、内側芯部材が露出している第2の点まで(研削プロセスにより)細くなる。この実施形態では、内側芯部材は、その長さに沿って特定の点でさらに研削されて、内側芯部材の遠位セグメントに沿って複数のテーパー部を形成する。重要なことに、外層のどの部分も、第2の点の遠位にある内側芯部材を取り囲まない。
【0011】
一実施形態では、Drawn Filled Tubeは、近位端および遠位端を有し、内側芯部材および内側芯部材上の外層を含む。内側芯部材は、第1の金属合金から形成され、外層は、第1の金属合金と異なる第2の金属合金から形成される。テーパー状移行セグメントを画定するそぎ端接合部は、外層と内側芯部材との間に形成される。好ましくは、外層の一部が研削されてそぎ端接合部を形成する。テーパー状移行セグメントは、公称横断壁厚が一定である外層上の第1の点から、外層の公称横断壁厚がゼロである第2の点まで伸びる。言い換えれば、テーパーセグメントは、外層の壁厚が最も厚い第1の点から伸び、外層の壁厚がゼロまで研削されており、内側芯部材が露出している第2の点まで(研削プロセスにより)細くなる。この実施形態では、内側芯部材は、その長さに沿って特定の点で研削されて、内側芯部材の遠位セグメントに沿って複数のテーパー部を形成する。重要なことに、外層のどの部分も、第2の点の遠位にある内側芯部材を取り囲まない。
【0012】
一実施形態では、Drawn Filled Tubingガイドワイヤは、ニチノール内側芯部材の利点を生かすために、その遠位部に放物線状の研削を有する。
【0013】
別の実施形態では、圧力センサが、Drawn Filled Tubingガイドワイヤの近位部に形成されたセンサポケットに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】内側芯部材を取り囲む外層を示すガイドワイヤの長手方向断面図である。
図2】線2-2に沿って切り取られた図1のガイドワイヤの横断面図である。
図3】そぎ端接合部を示す図1のガイドワイヤの長手方向断面図である。
図4】線4-4に沿って切り取られた図3のガイドワイヤの横断面図である。
図5】線5-5に沿って切り取られた図3のガイドワイヤの横断面図である。
図6】そぎ端接合部および複数の遠位部テーパーを示すガイドワイヤの長手方向断面図である。
図7】市販されているガイドワイヤと比較した本発明のDrawn Filled Tubingガイドワイヤの曲げ剛性を示すグラフである。
図8】市販されているガイドワイヤと比較した本発明のDrawn Filled Tubingガイドワイヤの曲げ剛性を示すグラフである。
図9】市販されているガイドワイヤと比較した本発明のDrawn Filled Tubingガイドワイヤを含む一定直径のワイヤの曲げ剛性を示すグラフである。
図10】複数のテーパー部を有する遠位部を示す先行技術のガイドワイヤの立面図である。
図11】放物線状研削輪郭を有する遠位部を示すガイドワイヤの立面図である。
図12図10および図11に示されているガイドワイヤの遠位部に沿った曲げ剛性を示すグラフである。
図13】圧力センサおよびセンサポケットを示すDrawn Filled Tubingガイドワイヤの斜視図である。
図14図13のDrawn Filled Tubingガイドワイヤの長手方向断面図である。
図15】センサポケットに取り付けられた圧力センサを示す図13に示されているガイドワイヤの部分斜視図である。
図16A】電力およびデータケーブルを覆うポリマースリーブを示す図15に示されているガイドワイヤの長手方向断面図である。
図16B】電力およびデータケーブルを覆うポリマースリーブを示す線16B-16Bに沿って切り取られた横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~6は、本発明の特徴を具現化するガイドワイヤ10の特徴を示す。細長い複合管状部材12は、近位端14および遠位端16を有する。細長い管状部材は、近位端14から遠位端16に伸び、好ましくは線形弾性合金または超弾性合金から形成された中実ワイヤである内側芯部材18を有する。外層20は、細長い管状部材12に沿って内側芯部材18を覆うかまたは取り囲む。外層20の壁厚21は、図1、3、および6に示され、本明細書ではしばしば単一壁厚21と呼ばれる。外層20は、35N LT、ステンレス鋼、L605、MP35、MP35N、コバルトクロム、チタン、NiTiCo、NiTiCr、NiTi三元合金、および類似の金属合金などの析出硬化可能な材料から形成される。より具体的には、外層20は、近位端14から遠位端16へ遠位方向に伸びる。外層20が、構造物間に空間または隙間なく内側芯部材18をきつく取り囲むことが好ましい。内側芯部材18は、好ましくは、線形弾性合金または超弾性合金から形成され、NiTi、CuNiTi、NiTiCr、NiTiCo、および類似の金属合金を含むことができる。細長い管状部材12は、典型的には、インディアナ州フォートウェイン市のFort Wayne Metalsなどのいくつかの供給元から市販されているDrawn Filled Tubing(DFT)である。
【0016】
図1~6に示される一実施形態では、外層20の一部は、内側芯部材18を露出するように研削される。外層は、近位端22および遠位端24、ならびに近位端22から近位端22より遠位端24に近い第1の点28に伸びる近位セグメント26を有する。この実施形態では、そぎ端接合部30は、第1の点28から第2の点32へ外層20を研削することによって形成される。外層20は、そぎ端接合部30が、第1の点28から第2の点32へ徐々に細くなるテーパー状移行セグメント34を形成するように研削される。そぎ端接合部30のテーパー状移行セグメント34は、細長い管状部材12に沿った長さに伸び、外層20の公称横断壁厚が一定である第1の点28から開始し、外層20の公称横断壁厚がゼロである第2の点32で終了する。テーパー状移行セグメント34の長さは、第1の点28から第2の点32に伸び、好ましくは、0.079インチ(2.0mm)~1.000インチ(25.4mm)の範囲である。重要なことに、本発明の1つの重要な態様は、35N LT(外層20)および線形弾性または超弾性ニチノール(内側芯部材18)などの2つの異種金属間の接合部を形成することであり、これは、伝統的には、溶接、ろう付けなどによって達成することが困難または不可能である。そぎ端接合部30は、2つの金属間の継ぎ目のない移行部を提供し、それにより、接合部の構造的側面を著しく改善し、医師の触感を高める。この実施形態では、内側芯部材18は、複数の遠位テーパーを形成するようにさらに研削されて、ガイドワイヤの遠位部分の可撓性を高める。内側芯部材18上の第2の点32から開始して第3の点36へ遠位に移ると、内側芯部材18は、第1の一定直径部40を有する。第3の点36から開始して第4の点42へ遠位に移ると、内側芯部材18は、研削されて第1のテーパー部38を形成する。内側芯部材18は、第4の点42から第5の点46に伸びる第2の一定直径部48を有する。内側芯部材18は、研削されて、第5の点46から第6の点50に伸びる第2のテーパー部44を形成する。内側芯部材18は、第6の点52から細長い管状部材12の遠位端16に伸びる第3の一定直径部52を有する。重要なことに、複数のテーパーを有するガイドワイヤのニチノール遠位部分は、ガイドワイヤが永久に変形することなくガイドワイヤが蛇行した解剖学的構造を通って動くことを可能にする。
【0017】
ガイドワイヤ10の全長および直径は、それが使用される特定の処置に合わせて変更されてよく、それを構築している材料に依存する。一般に、ガイドワイヤ10の長さは、約65cm~約350cmの範囲、より典型的には約160cm~約200cmの範囲である。一実施形態では、ガイドワイヤ10は、長さ180cmである。
【0018】
冠動脈および末梢の解剖学的構造用に市販されているガイドワイヤは、典型的には、約175cmまたは約330cmの長さを有する。ガイドワイヤの直径は、一般に約0.008インチ~約0.035インチ(0.2~0.9mm)の範囲、より典型的には、約0.01インチ~約0.018インチ(0.25~0.55mm)の範囲である。冠動脈および末梢用に市販されているガイドワイヤは、典型的には、0.014インチおよび0.018インチ(それぞれ0.036mmおよび0.46mm)の直径を有するものを使用する。
【0019】
表1に見られるように、標準的なガイドワイヤの直径は、たいていの冠動脈および末梢血管用途で0.014インチ、0.018インチ、および0.035インチである。他のガイドワイヤの直径が企図されるが、これらの直径は、市販のガイドワイヤの大部分を備える。表1は、公称直径および開示される発明に好ましい直径を含む、Drawn Filled Tubingガイドワイヤの直径の範囲を示す。
【表1】
【表2】
【0020】
表1を参照すると、0.014インチ(列A)のDFTワイヤのための標準的なガイドワイヤの直径は、それぞれ列Bおよび列Cに示されるように、0.013インチ~0.014インチの範囲であり得る。0.014インチのワイヤ(列A)のための好ましいDFTワイヤ全径は、それぞれ列Dおよび列Eに示されるように、0.0132インチ~0.0135インチであり得る。公称ニチノール芯直径範囲は、列Fおよび列Gに示され、好ましいニチノール芯直径範囲は、列Hおよび列Iに示される。表1から、列Aに記載された3つの標準的なガイドワイヤの各々についての全径範囲、およびニチノール芯ワイヤの直径範囲を決定することができる。
【0021】
外層20の壁厚は、表1に記載された寸法から導かれる。表2を参照すると、列Dの好ましいDFTワイヤ全径から列Fのニチノール芯直径を差し引くこと(0.0132インチ-0.0092インチ=0.004インチ)によって、列D-Fに示されるように、外層20の壁厚が導かれる。直径寸法には2つの壁厚が存在するので、表2の「平均」壁厚の列を2で割って、外層の壁厚を得る。例えば、0.014インチの直径のガイドワイヤのための好ましい壁厚は、D(0.0132)からH(0.0094)を差し引くことによって計算され、0.0038インチ/2に等しく、0.0019インチの壁厚に等しい。「平均」という見出しの列は、式((D-H)+(E-I))/2によって計算され、これは外層の総平均壁厚である。外層の単層の平均壁厚は、「平均/2」という見出しの列に計算され、式(((D-H)+(E-I))/2)÷2を使用して計算される。例えば、一実施形態では、0.014インチの直径のDFTガイドワイヤは、0.0012インチ((((D-H)-(E-I))/2)÷2)の「平均/2」外層単一壁厚21を有する。別の実施形態では、0.018インチの直径のDFTガイドワイヤは、0.0015インチの「平均/2」外層単一壁厚21を有する。別の実施形態では、0.035インチの直径のDFTガイドワイヤは、0.0018インチの「平均/2」外層単一壁厚21を有する。
【0022】
本明細書に開示のガイドワイヤ10は、Drawn Filled Tubing(DFT)から形成され、そぎ端接合部30の形成を含む本明細書に開示されるような処理の後、市販されているガイドワイヤと同様のまたはそれを超える曲げ剛性特性を有する。図7および図8のグラフに示されているように、DFTガイドワイヤ10の曲げ剛性を、カリフォルニア州サンタクララ市のAbbott Cardiovascular Systems, Inc.により製造および販売されている市販のガイドワイヤのものと比較する。各ガイドワイヤの遠位先端から約50mmまでの曲げ剛性は同様であり、非常に低い曲げ剛性による高度の可撓性を示す。約50mmから約150mmまでは、DFTガイドワイヤ10は、市販のガイドワイヤより高い曲げ剛性を有し、これは、DFTガイドワイヤ10が市販のガイドワイヤより良好な押し込み性およびトルク応答を有することを意味する。
【0023】
図9のグラフを参照すると、0.0135インチの一定直径のガイドワイヤの曲げ剛性が、超弾性ニチノールガイドワイヤ、304Vステンレス鋼ガイドワイヤ、およびDFTガイドワイヤの中で比較された。図9に見られるように、超弾性ニチノールガイドワイヤは、低い、比較的一定の曲げ剛性を有する。DFTガイドワイヤおよび304Vステンレス鋼ガイドワイヤは、同様の、高くかつ比較的一定の曲げ剛性を有する。したがって、図7および8~図9のグラフを比較すると、DFTガイドワイヤ10が、外層の遠位部分を除去され、複数のテーパーが遠位部分に形成されると、DFTガイドワイヤは市販されているガイドワイヤと同様にまたはそれより良好に機能することがわかる。
【0024】
本明細書に開示のDrawn Filled Tubing(DFT)の曲げ剛性はまた、ガイドワイヤのニチノール遠位部に沿って放物線状の研削を適用することによって変えることができる。放物線状研削輪郭は、所有者共通の同一出願人による2019年10月31日に出願された米国整理番号第16/671,044号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。第1のテーパー部38および第2のテーパー部44を有する図6に示されているようにニチノール内側芯部材18を研削するのではなく、放物線状の研削を代わりに適用することができる。したがって、本明細書では図10~12と番号を振り直された米国整理番号第16/671,044号の図31~33を参照すると、ガイドワイヤの遠位部は、冠動脈などの蛇行した血管をナビゲートする場合により柔軟であるように断面が減少されている。ガイドワイヤの遠位部は柔軟であると共に押し込み可能でなければならず、すなわち遠位部は曲がり、蛇行した動脈を通って操縦可能であり、かつ曲がったり捻れたりすることなく動脈を通して押し込むか前進させることができるように若干の剛性も有していなければならない。先行技術のガイドワイヤが図10に示されており、テーパー部およびテーパーを有しない芯部から構成される遠位部を有する。得られる曲げ剛性は図12のグラフに示されており、ここで、曲げ剛性は各テーパーの位置で減少し、曲げ剛性はテーパー状ではない芯部に沿って一定なままである。図10の先行技術のガイドワイヤのテーパー状遠位部は、曲げ剛性における急激な変化を提供し、これは、蛇行した解剖学的構造を通ってガイドワイヤを前進させる場合に医師の触感を低下させ得る。実際に、いくつかの先行技術のガイドワイヤでは、曲げ剛性における急激な変化は、ガイドワイヤの遠位先端の捻じれ、または側枝血管の中への逸脱をもたらす可能性がある。逸脱は、動脈が損傷または穿刺され得るという点で患者にとって危険なものとなり得る。重要なことに、芯部の外径を可能な限り遠位に維持してトルクを維持することが好ましい。各テーパー部は、蛇行した血管を通してガイドワイヤを前進させる際に重要なトルクを失っている。
【0025】
本発明を踏まえて、ガイドワイヤ60の放物線状遠位部62が図11に示されており、図中、遠位部のかなりの部分が、連続的なテーパーを形成するように研削されている。より具体的には、連続的なテーパーは、ガイドワイヤ60の放物線状遠位部62に沿った放物線状の研削によって形成されている。放物線状の研削は、図12のグラフに示されているように、非常に柔軟でありながらも剛性の線形変化を維持する部分62に沿って滑らかな曲線状の移行を提供する。放物線状遠位部62は、柔軟であるだけでなく、剛性の線形変化を有し、それにより、蛇行した解剖学的構造を通ってガイドワイヤを前進させる場合に優れたトルクおよび触覚フィードバックを医師に提供する。曲線状ではない(放物線状の研削部分ではない)テーパー部64は、放物線状遠位部62の遠位のガイドワイヤ60上に位置しており、図12のグラフに示されているように、曲げ剛性の低下および曲げ剛性の線形変化を提供する。放物線状研削輪郭は、放物線状遠位部62に沿ってニチノール内側芯部材にのみ適用されることが意図される。
【0026】
曲げ剛性は、様々な方法で測定することができる。曲げ剛性を測定する典型的な方法は、試験される試料が固定されたブロックに移動不可能に固定された状態でその試料の一部を固定されたブロックから伸ばし、かつ固定されたブロックから所定の距離だけ離れた試料の端部を撓ませるのに必要な力の量を測定することを含む。試料の長さに沿った2つの点を固定し、試料の中央を固定された量だけ撓ませるために必要とされる力を測定することにより、同様の手法を使用することができる。当業者であれば、試料の自由端への固定された量の力から生じる撓みの量を測定することなどを含む、これらの基本的な方法に対する多数の変形が存在することを理解するであろう。曲げ剛性を測定する他の方法は、異なる全体的な大きさの異なる単位での値を生成し得るが、曲げ剛性を測定するために使用される方法に関わらず、グラフの全体的な形状は同じままであると考えられる。
【0027】
本明細書に開示のDrawn Filled Tubing(DFT)ガイドワイヤの実施形態は、圧力センサとの併用に特に適している。一部の医学的介入中に、血管内の血圧を測定および/または監視することが望ましい場合がある。例えば、いくつかの医療装置は、臨床医が血圧を監視することを可能にする圧力センサを含み得る。そのような装置は、狭窄部の前の圧力に対する狭窄部の後ろの圧力として理解され得る血流予備比(FFR)を決定するのに有用であり得る。しかしながら、いくつかの圧力検出装置は、脈管構造内で装置を操縦、追跡、トルク印加、またはその他の方法でナビゲートする上での技術的課題をもたらし得る。例えば、医療装置は、装置の遠位先端もしくはその付近に位置する比較的硬い圧力センサ、および/または同様に比較的硬い場合があるセンサハウジング(その中にセンサが搭載される)を含み得る。圧力検出能力を含み、解剖学的構造を通ってより容易に操縦、追跡、トルク印加、および/またはその他の方法でナビゲートされ得るいくつかの医療装置が、本明細書に開示される。本発明のDFTガイドワイヤは、冠動脈および末梢血管を通って圧力センサを運んで、血圧および場合によりFFR、ならびに他の測定値を測定するために使用される。
【0028】
図13~16Bに示される一実施形態では、Drawn Filled Tubing(DFT)ガイドワイヤ70は、図1~6に示される実施形態に従って処理される。しかしながら、違うのは、この実施形態では近位部72が圧力センサ74(または任意の他のタイプの測定装置)を運ぶように適合されることである。圧力センサ74は、当該技術分野で知られている任意のセンサであり得、半導体(例えば、シリコンウエハ)圧力センサ、圧電圧力センサ、光ファイバまたは光圧力センサ、ファブリ-ペロー型センサ、超音波トランスデューサおよび/または超音波圧力センサ、磁気圧力センサ、固体圧力センサなどが挙げられ得る。この実施形態では、センサポケット76が、圧力センサ74を搭載するためにDrawn Filled Tubing 70の近位部72に形成される。センサポケット76は、DFTガイドワイヤ70の完全性を損なうことなく圧力センサ74を受け入れるように構成される深さおよび形状に、DFTガイドワイヤ70の外面78を研削することによって形成され得る。また、圧力センサ74は、血流を妨害しないように、または脈管構造を通るDFTガイドワイヤ70の動きを妨げないように構成されることが好ましい。好ましくは、センサポケット76は、テーパー状移行セグメント80のすぐ近位のDFTガイドワイヤ70上に配置され、外層82がまず研削されてテーパー状移行セグメント80を形成する。センサポケット76を形成するための研削処置は、先行技術でよく知られている任意の方法によって行われ得る。
【0029】
圧力センサ74は、当該技術分野でよく知られており、多くの異なるサイズおよび形状を取り得る。図15に示されているように、例えば、圧力センサ74は、DFTガイドワイヤ70の湾曲した外面78に一致するように成形された外面84を有し、その結果、脈管構造に損傷を引き起こし得る鋭いエッジは存在しない。圧力センサ74は、接着剤、レーザー溶接、半田付け、ろう付けなどを含む任意の既知の手段によってセンサポケット76に取り付けられ得る。
【0030】
図13~16Bをさらに参照すると、電力およびデータ伝送ケーブル86が、圧力センサ74に取り付けられており、ケーブル86は、適切な監視装置に取り付けることができるように、患者の体外の場所までDFTガイドワイヤ70の外面78に沿って近位に伸びる。ポリマースリーブ88が、ケーブル86を保護し、ケーブル86が脈管構造内でガイドワイヤの動きに干渉するのを防ぐために、ケーブル86およびDFTガイドワイヤ70の外面78の少なくとも一部の上に形成される。ポリマースリーブ88が好ましいが、ポリマーバンド、放射線不透過性マーカーバンド、編組材料などの他のカバーが企図される。
【0031】
センサポケット76および取り付けられる圧力センサ74は、テーパー状移行セグメント80のすぐ近くだがそれの近位に配置されることが好ましい。一実施形態では、センサポケット76の遠位エッジ90は、テーパー状移行セグメント80の開始を示す第1の点92から0.1mm~30.0mmの長さ94のところにある。別の実施形態では、長さ94は、0.1mm~10.0mmである。
【0032】
図14を参照すると、センサポケット76の深さは、外層82の厚さに等しいように示されている。圧力センサ74の厚さに依存して、センサポケット76の深さは、図14に示されているより大きくまたは小さくすることができ、前述のようにニチノールから形成されている内側芯部材96の中に伸びる。内側芯部材中へのセンサポケット76の深さは最小であることが好ましいが、センサポケット76が、DFTガイドワイヤ70の直径を通って半分まで伸びることが可能であり、これは、ポケットがニチノール内側芯部材96の中にかなり伸びるであろうことを意味する。
【0033】
本明細書に開示されるもののようなガイドワイヤは、典型的には、遠位端に取り付けられた1つ以上のコイルおよび半田構造を有することになるが、それらのどちらも示されていない。さらに、Drawn Filled Tubingは、既知の手段によって製造され、さらに説明される必要はない。複数の遠位テーパーは、芯なし研削盤によって形成され、研削の方法はよく知られており、さらに説明される必要はない。
【0034】
図13~16Bに示される実施形態に関して、DFTガイドワイヤ70は、ガイドワイヤ70の全長に伸びる内側芯部材96を有する。いくつかの実施形態では、外層82が内側芯部材96の近位端の短い長さのみを覆うように、内側芯部材96がガイドワイヤの遠位部分にのみ伸びることが好ましい。一実施形態では、外層82は、内側芯部材96の近位端に2.5cm未満重なって覆う。
【0035】
本発明を血管内ガイドワイヤとしてのその使用に関して説明および図示してきたが、
本発明を他の医療装置に適用することができることは当業者に明らかであろう。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、修正および改良を上記の例示的実施形態に行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
【国際調査報告】