(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】点眼組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20240126BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240126BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240126BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P27/02
A61K9/08
A61K47/32
A61K47/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544198
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 KR2022001095
(87)【国際公開番号】W WO2022158893
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0008925
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519165216
【氏名又は名称】テジュン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TAEJOON PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】8, Daesagwan-ro 31-gil, Yongsan-gu, Seoul 04401, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュンヨブ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ユンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ジソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076EE16
4C076EE39
4C076FF36
4C076FF65
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA44
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA03
4C206ZA33
(57)【要約】
本発明は、安定性に優れた点眼組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロムフェナク(bromfenac)、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン(povidone);及びヒドロキシプロピルベータデックス(Hydroxypropylbetadex)を含む、点眼組成物。
【請求項2】
前記ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物は、ブロムフェナクナトリウム水和物である、請求項1に記載の点眼組成物。
【請求項3】
前記ブロムフェナク(bromfenac)、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物は、全点眼組成物中、約0.01w/v%~約0.5w/v%の含有量で含まれるものである、請求項1に記載の点眼組成物。
【請求項4】
前記ポビドンは、全点眼組成物中、約0.1w/v%~約10.0w/v%の含有量で含まれるものである、請求項1に記載の点眼組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシプロピルベータデックスは、全点眼組成物中、約0.05w/v%~約20.0w/v%の含有量で含まれるものである、請求項1に記載の点眼組成物。
【請求項6】
前記組成物は、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、粘度調整剤、溶解補助剤、安定化剤及び保存剤から選択される1種以上の添加剤をさらに含むものである、請求項1に記載の点眼組成物。
【請求項7】
前記組成物のpHは、約5~9であるものである、請求項1に記載の点眼組成物。
【請求項8】
前記組成物は、抗炎症用であるものである、請求項1に記載の点眼組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の点眼組成物を個体に投与することを含む、抗炎症方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の点眼組成物の抗炎症用途。
【請求項11】
抗炎症薬の製造のための請求項1~7のいずれか1項に記載の点眼用組成物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロムフェナクを含む点眼組成物に関し、具体的には、ブロムフェナク、ポビドン、及びヒドロキシプロピルベータデックスを含む点眼組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎、眼瞼炎、強膜炎などの炎症性眼疾患は、頻繁にみられる眼科疾患である。
【0003】
ブロムフェナクは、代表的な非ステロイド性抗炎症薬であり、抗炎症、鎮痛効果を示すため、上記のような炎症性眼疾患の治療に有用に用いられている。ところが、ブロムフェナクは、水性剤形に製造する時に安定性に問題があり得る。
【0004】
したがって、ブロムフェナクを含む点眼組成物を製造する場合は、製剤の安定性を確保することが必須要件として求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを含む点眼組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、製剤の安定性が確保された新たな点眼剤を開発するために鋭意努力した結果、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを含む点眼組成物が保管の際に性状を保持でき、類縁物質の発生を最小限に抑えて優れた安定性を示すことを確認し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを含む点眼組成物を提供する。
【0009】
本発明の点眼組成物は、保管の際に不溶性沈殿物の発生や色の変化がなく、含有量が安定的に保持でき、類縁物質の発生量も少なく、性状及び保管安定性に優れており、安定性を向上させるために別途の条件を必要としないため、経済的である。また、本発明の点眼組成物は、点眼感に優れており、点眼時に異物感及びしみる感じなどが少ない、もしくは全くなく、人体に無害であるため、点眼組成物として有用に用いられる。
【0010】
本発明において、「ブロムフェナク(Bromfenac)」は、下記化学式の化合物を意味し、酢酸系の非ステロイド系抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug;NSAID)の一種であって、シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase)の活性を阻害して鎮痛、抗炎症効果を示す。
【化1】
【0011】
本発明において、前記「薬剤学的に許容可能な塩」は、医薬業界で通常用いられる塩を意味し、例えば、ナトリウムなどの無機イオン塩、塩酸などの無機酸塩及び有機酸塩などがある。例えば、一実施形態において、前記薬剤学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明において、前記「水和物」は、ブロムフェナク又はその薬剤学的に許容可能な塩と水とが非共有分子間相互作用で結合しているものであり、化学量論的又は非化学量論的な量の水を含むものであってもよい。
【0013】
本発明において、前記「溶媒和物」は、ブロムフェナク又はその薬剤学的に許容可能な塩と非水溶媒とが非共有分子間相互作用で結合しているものであり、溶媒を化学量論的又は非化学量論的な量で含んでいてもよい。
【0014】
本発明において、ブロムフェナクは、前記化学式で表される化合物だけでなく、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物を全て指すものであってもよい。
【0015】
本発明の組成物は、有効成分として、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物を含み、具体的には、ブロムフェナクナトリウム水和物を含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
前記ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物は、鎮痛及び/又は抗炎症用途の目的を達成するために治療的に有効な量で含有されてもよく、具体的には、全点眼組成物中、約0.01w/v%~約0.5w/v%の含有量で含まれてもよく、より具体的には、約0.05w/v%~約0.5w/v%、約0.1w/v%~約0.3w/v%、又は約0.05w/v%~約0.3w/v%の含有量で含まれてもよく、さらに具体的には、約0.1w/v%~約0.2w/v%、約0.15w/v%、又は約0.2w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。前記ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物は、全点眼組成物中、約0.01w/v%以上、約0.05w/v%以上、約0.1w/v%以上、約0.15w/v%以上、約0.2w/v%以上の含有量で含まれてもよく、約0.5w/v%以下、約0.3w/v%以下、約0.2w/v%以下の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明の組成物は、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物を含むことから、鎮痛及び/又は抗炎症用途に用いることができ、鎮痛及び/又は抗炎症効果を有することから、眼瞼炎、結膜炎、上強膜炎を含む強膜炎、手術後の炎症などの外眼部及び前眼部の炎症性疾患やそれに関連する任意の症状の予防又は治療にも有用に用いられる。
【0018】
本発明の組成物は、ポビドン(Povidone、Polyvinyl pyrrolidone;PVP)を含む。
【0019】
前記ポビドンは、全点眼組成物中、約0.1w/v%~約10w/v%の含有量で含まれてもよく、具体的には、約0.5w/v%~約10w/v%、又は約0.5w/v%~
約5w/v%の含有量で含まれてもよく、より具体的には、約1w/v%~約4w/v
%又は約2w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。前記ポビドンは、全点眼組成物中、約0.1w/v%以上、約0.5w/v%以上、約1w/v%以上の含有量で含まれてもよく、約10w/v%以下、約5w/v% 以下、約4w
/v%以下の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の組成物は、ヒドロキシプロピルベータデックス(Hydroxypropylbetadex)を含む。ヒドロキシプロピルベータデックスは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(Hydroxypropyl-β-cyclodextrin;HP-β-CD)ともいう。
【0021】
前記ヒドロキシプロピルベータデックスは、全点眼組成物中、約0.05w/v%~約20w/v%の含有量で含まれてもよく、具体的には、約0.1w/v%~約20w/v%又は約0.1w/v%~約10w/v%の含有量で含まれてもよく、より具体的には、約0.5w/v%~約5w/v%、約1w/v%~約5w/v%又は約2w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。前記ヒドロキシプロピルベータデックスは、全点眼組成物中、約0.05w/v%以上、約0.1w/v%以上、約0.5w/v%以上の含有量で含まれてもよく、約20w/v%以下、約10w/v%以下、約5w/v%以下の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。前記ヒドロキシプロピルベータデックスは、全点眼組成物中、約0.1w/v%以上の含有量で含まれることが、本発明の組成物の安定性の観点で好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、保管の際に性状及び含有量を保持でき、類縁物質の発生量を最小限に抑えて優れた安定性を示す。
【0023】
本発明の組成物は、ブロムフェナク、ポビドン及びヒドロキシプロピルベータデックスを含み、性状、含有量及び保存安定性に優れる。
【0024】
これに関連して本発明の具体的な一実施形態では、本発明の組成物を苛酷条件で保管した後に性状を観察した結果、本発明の組成物は、保管の際に性状に変化はなく、優れた安定性を示すことを確認した。また、保管の際に含有量を良好に保持でき、類縁物質の発生量が少なく、優れた安定性を示すことを確認した。
【0025】
本発明の組成物は、さらに添加剤を含んでもよい。
本発明の組成物は、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、粘度調整剤、溶解補助剤、安定化剤及び保存剤から選択される1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0026】
前記pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸などを用いてもよく、適切なpHを得るために当業者に公知の方法で必要な量を添加して用いてもよい。
【0027】
本発明の組成物のpHは、約5~9であってもよく、具体的には、約6~9であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
前記緩衝剤としては、酢酸及び/又はその塩、クエン酸及び/又はその塩、リン酸及び/又はその塩、ホウ酸及び/又はその塩、ホウ砂などを用いてもよいが、これに限定されるものではない。前記緩衝剤は、全点眼組成物中、約0.1w/v%~約20w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記等張化剤としては、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸などを用いてもよい。前記等張化剤は、全点眼組成物中、約1w/v%~約20w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロースなどを含むセルロース系化合物;ポリビニルアルコール(PVA)などを含むポリビニル系化合物;カルボマー(Carbomer)などを含むアクリル系化合物;キサンタンガム(Xanthan Gum)
などを含むガム類化合物;ヒアルロン酸ナトリウム(Sodium Hyaluronate)、アルギン酸ナトリウム(Sodium Alginate)などを含む多糖類、又はそれらの任意の組み合わせなどを用いてもよく、適切な粘度を得るために当業者に公知の方法で必要な量を添加して用いてもよい。例えば、前記粘度調整剤は、全点眼組成物中、約0.05w/v%~約10.0w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
前記溶解補助剤としては、ポリオキシエチレン(水素化)ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの共重合体、ポリエチレングリコールポリアルキルアリールエーテルなどを用いてもよい。前記溶解補助剤は、全点眼組成物中、約0.05w/v%~約5.0w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどを用いてもよい。前記安定化剤は、全点眼組成物中、約0.01w/v%~約1.0w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム-1などを含む第4級アンモニウム化合物;ポリヘキサメチレンビグアナイド、クロロヘキシジンなどを含むグアニジン系化合物;クロロブタノール;チメロサールなどを含む水銀防腐剤;及び安定化オキシクロロ錯体、パラオキシ安息香酸アルキル類などを含む酸化防腐剤などを用いてもよい。前記保存剤は、全点眼組成物中、約0.001w/v%~約0.02w/v%の含有量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の組成物は、局所適用のために特別に製剤化され、液剤、エマルジョン剤、懸濁剤、ゲル剤、又は軟膏剤などの剤形によって局所投与してもよい。
【0035】
本発明は、下記(1)~(8)の組成物を提供する。
【0036】
(1)ブロムフェナク(bromfenac)、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン(povidone);及びヒドロキシプロピルベータデックス(Hydroxypropylbetadex)を含む点眼組成物。
【0037】
(2)前記(1)において、前記ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物がブロムフェナクナトリウム水和物である点眼組成物。
【0038】
(3)前記(1)又は(2)において、前記ブロムフェナク(bromfenac)、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物が全点眼組成物中、約0.01w/v%~約0.5w/v%の含有量で含まれる点眼組成物。
【0039】
(4)前記(1)、(2)又は(3)において、前記ポビドンが全点眼組成物中、約0.1w/v%~約10.0w/v%の含有量で含まれる点眼組成物。
【0040】
(5)前記(1)、(2)、(3)又は(4)において、前記ヒドロキシプロピルベータデックスが全点眼組成物中、約0.05w/v%~約20.0w/v%の含有量で含まれる点眼組成物。
【0041】
(6)前記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)において、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、粘度調整剤、溶解補助剤、安定化剤及び保存剤から選択される1種以上の添加剤をさらに含む点眼組成物。
【0042】
(7)前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)において、pHが約5~9である点眼組成物。
【0043】
(8)前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)において、抗炎症用である点眼組成物。
【0044】
本発明は、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを混合するステップを含む点眼組成物の製造方法を提供することができる。
【0045】
本発明は、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを混合するステップを含む、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物を安定化する方法を提供することができる。
【0046】
本発明の製造方法及び安定化方法で言及された各成分、各成分の含有量、効果などは、前記説明と同様である。
【0047】
本発明の点眼組成物、その製造方法、及びこれを用いた安定化方法で言及された事項は、互いに矛盾しない限り同様に適用される。
【0048】
本発明は、前述の点眼組成物を個体に投与することを含む、抗炎症方法を提供する。
例えば、本発明は、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを含む点眼組成物を個体に投与することを含む、抗炎症方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、前述の点眼組成物の抗炎症用途を提供する。
例えば、本発明は、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを含む点眼組成物の抗炎症用途を提供する。
【0050】
本発明はまた、抗炎症薬の製造のための、前述の点眼組成物の用途を提供する。
例えば、本発明は、抗炎症薬の製造のための、ブロムフェナク、その薬剤学的に許容可能な塩、それらの水和物もしくは溶媒和物、又はこれらの混合物;ポビドン;及びヒドロキシプロピルベータデックスを含む点眼組成物の用途を提供する。
【0051】
本発明において、前記「個体」とは、炎症を起こす可能性のあるヒトを含む全ての動物を意味し得る。
【0052】
本発明において、前記「投与」とは、任意の適切な方法で個体に本発明の点眼組成物を導入することを意味し、本発明の投与経路は、組成物が点眼剤であることから、眼球に局所的に投与するものであり得る。本発明の抗炎症方法は、本発明の点眼用組成物を治療学的有効量で投与することを含む。
【0053】
本発明の用途及び抗炎症方法で言及された各成分、各成分の含有量、効果などは、前記説明と同様である。
【0054】
本発明の点眼組成物、その製造方法と用途、及びこれを用いた安定化方法と抗炎症方法で言及された事項は、互いに矛盾しない限り同様に適用される。
【発明の効果】
【0055】
本発明の組成物は、保管の際に性状及び含有量を保持でき、類縁物質の発生を最小限に抑えて優れた安定性を示すため、鎮痛及び/又は抗炎症用途の点眼剤として有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、実験例3で各組成物の性状を確認した図である。
【
図2】
図2は、実験例3で各組成物の析出物を確認した図である。
【
図3】
図3は、実験例4で各組成物の性状を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0058】
<実験例1>安定性(1)
下記表1の成分及び含有量に従って組成物を製造した。具体的には、実施例1は、滅菌精製水80mLにポビドンK30を2g入れて溶解させた後、無水リン酸一水素ナトリウムを0.5g入れて完全に溶解させた。ヒドロキシプロピルベータデックスを1g投入し、一定時間攪拌してヒドロキシプロピルベータデックスが完全に溶解したことを確認した後、ブロムフェナクナトリウム水和物(1.5水和物)を0.15g投入して溶解させ、塩酸を適量投入した。滅菌精製水で全組成物が100mLとなるようにし、無菌濾過(0.2μm、メンブレンフィルター)して組成物を製造した。製造した溶液のpHは、約7.8であった。比較例1~3は、ポビドン及び/又はHP-β-CDを添加することを除いては、実施例1と同様の方法で製造した。
【0059】
【0060】
製造した組成物を苛酷条件(55℃、70%RH)で5週間保管した後、性状を目視で観察した。
【0061】
その結果、比較例1及び2の組成物は、オレンジ色に性状が変化し、比較例3は、結晶型の沈殿物が発生したため、点眼組成物として製造及び使用するのは難しいのに対して、実施例1の組成物は、透明な黄色という性状に変化はなく、沈殿物も発生しなかった。よって、本発明の点眼組成物は、優れた安定性を有することが分かる。
【0062】
<実験例2>安定性(2)
前記実験例1に従って実施例1及び比較例1~3の組成物を製造した。製造した組成物を苛酷条件(55℃、70%RH)で5週間保管した後、ブロムフェナク組成物の代表的な類縁物質である7-(4-ブロモベンゾイル)インドリン-2-オン(7-(4-)bromobenzoyl)indoline-2-one、類縁物質A)及び2-アミノ-3-(4-ブロモベンゾイル)フェニルオキソ酢酸(2-amino-3(4-bromobenzoyl)phenyloxoacetic acid、類縁物質B)の発生量を液体クロマトグラフィーで測定し、ブロムフェナクの含有量に対する類縁物質の含有量(%)を計算した。ブロムフェナクの含有量に対して、類縁物質Aは、0.2%以下、類縁物質Bは、1%以下であることが好ましい。
【0063】
その結果、比較例1~3の組成物は、類縁物質A又はBの含有量が高いのに対して、実施例1の組成物は、類縁物質A及びBの含有量がいずれも低いことが示された(表2)。よって、本発明の眼科用組成物は、優れた安定性を有することが分かる。
【0064】
【0065】
<実験例3>安定性(3)
下記表3の成分及び含有量に従って組成物を製造した。具体的には、実施例2は、滅菌精製水80mLにポビドンK30を4g入れて溶解させた後、無水リン酸一水素ナトリウムを1g入れて完全に溶解させた。ヒドロキシプロピルベータデックスを2g投入し、一定時間攪拌してヒドロキシプロピルベータデックスが完全に溶解したことを確認した後、ブロムフェナクナトリウム水和物(1.5水和物)を0.3g投入して溶解させ、塩酸を適量投入した。滅菌精製水で全組成物が100mLとなるようにし、無菌濾過(0.2μm、メンブレンフィルター)して組成物を製造した。製造した溶液のpHは、約7.8であった。比較例4~6は、ポビドン及び/又はHP-β-CDを添加することを除いて、実施例2と同様の方法で製造した。
【0066】
【0067】
製造した組成物を苛酷条件(70℃、55%RH)で12日間保管した後、性状を目視観察し、その後、室温で保管してから硝酸セルロースフィルター(Cellulose nitrate filter、5.0μm)で濾過して析出物の発生有無を確認した。
【0068】
目視観察の結果、比較例4の組成物は、結晶型の析出物が発生し、比較例5及び6の組成物は、オレンジ色に性状が変化したのに対して、実施例2の組成物は、透明な黄色という性状に変化はなく、沈殿物も発生しなかった(
図1)。析出物の発生有無を確認した結果、比較例4~6の組成物は、いずれも濾紙に析出物が確認されたのに対して、実施例2の組成物は、析出物が確認されなかった(
図2)。よって、本発明の組成物は、優れた安定性を示すことが分かる。
【0069】
<実験例4>安定性(4)
下記表4の成分及び含有量に従って組成物を製造した。具体的には、実施例3は、滅菌精製水80mLにポビドンK30を0.5g入れて溶解させた後、無水リン酸一水素ナトリウムを0.5g入れて完全に溶解させた。ヒドロキシプロピルベータデックスを5g投入し、一定時間攪拌してヒドロキシプロピルベータデックスが完全に溶解したことを確認した後、ブロムフェナクナトリウム水和物(1.5水和物)を0.05g投入して溶解させ、塩酸を適量投入した。滅菌精製水で全組成物が100mLとなるようにし、無菌濾過(0.2μm、メンブレンフィルター)して組成物を製造した。製造した溶液のpHは、約7.8であった。実施例4及び5は、組成物成分の含有量を表4のとおりにし、実施例3と同様の方法で製造した。
【0070】
【0071】
製造した組成物を苛酷条件(55℃、70%RH)で4週間保管した後、性状を目視で観察し、ブロムフェナクナトリウム水和物の含有量及び類縁物質の発生量を液体クロマトグラフィーで測定した。類縁物質の含有量(%)は、実験例2と同様の方法で計算した。
【0072】
その結果、実施例3~5の組成物は、いずれも性状に変化はなく、沈殿物も発生せず(
図3)、ブロムフェナクナトリウム水和物の含有量も良好に保持できていた(表5)。また、類縁物質の発生量も実施例3~5の組成物全てにおいて低いことが示された(表5)。よって、本発明の組成物は、優れた安定性を示すことが分かる。
【0073】
【0074】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、当業界で通常の知識を有した者にとって、このような具体的な記述は、単に好ましい実施例に過ぎず、これらに本発明の範囲が制限されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とその等価物により定義されると言える。
【国際調査報告】