(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】(チオ)硫酸アンモニウム又は(チオ)硫酸水素を使用したアレンケトンの製造
(51)【国際特許分類】
C07C 45/51 20060101AFI20240126BHJP
C07D 213/18 20060101ALI20240126BHJP
C07C 49/203 20060101ALI20240126BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
C07C45/51
C07D213/18
C07C49/203 A
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544248
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022052847
(87)【国際公開番号】W WO2022167641
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アキノ, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ペース, フランチェスコ
【テーマコード(参考)】
4C055
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA01
4H006AA02
4H006AC44
4H006BA51
4H006BC10
4H039CA62
(57)【要約】
本発明は、特定の(チオ)硫酸アンモニウム又は(チオ)硫酸水素を触媒として使用するアレンケトンの製造方法に関する。この反応により、高収率及び高選択率のアレンケトンがもたらされる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のアレンケトン
【化1】
を、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物
【化2】
とを、式
【化3】
のアンモニウム触媒の存在下で反応させることによって製造する方法であって、
式中、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基又はエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖若しくは分岐鎖のいずれかのC
1~10アルキル基、特に、メチル基若しくはエチル基を表すか、
又は、R
5’及びR
5’’は、直鎖若しくは分岐鎖のC
1~10アルキレン基、特に、エチレン基若しくはプロピレン基を共に形成し、
並びに、
R
6及びR
7及びR
8及びR
9は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~10アルキル基のいずれかを表し、
R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12アルキル基若しくはシクロアルキル基のいずれかを表し、
並びに、
X=[HSO
4]
-又は[HS
2O
3]
-であり、
Y=[SO
4]
2-又は[S
2O
3]
2-であり、
波線は、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す、式(I)のアレンケトンを製造する方法。
【請求項2】
R
1がメチル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
6=R
7=R
8であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R
6=R
7=R
8=R
9であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
R
9=Hであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34が、互いから独立して、H又はメチル基のいずれかを表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34のうちの1つ又は2つの基が、メチル基を表すことを特徴とする、請求項1又は2又は6に記載の方法。
【請求項8】
好ましくは、R
30=R
31=R
32=R
33=R
34=Hであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
R
2=メチルであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
R
2が、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)
【化4】
[式中、点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が前記式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合されることによる結合を表し、
点線
【化5】
による二重結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表し、
波線はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表し、
nは、1、2、3又は4、特に1又は2を表す]
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記式(II)の化合物:前記式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が、1:15~1:1の範囲であり、
前記式(IIIa)の化合物を使用する場合は、
前記比が、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:3.5~1:2の範囲であり、最も好ましくは1:3~1:2の範囲であり、特に1:2.5~1:2の範囲であり、
又は、前記式(IIIa)の化合物を使用する場合は、
前記比が、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:8~1:3の範囲であり、最も好ましくは1:8~1:5の範囲であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アンモニウム触媒の量が、前記式(II)の化合物の量を基準として、0.01~1mol%の範囲であり、好ましくは0.02~0.6mol%の範囲であり、より好ましくは0.05~0.6mol%の範囲であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記一般式(I)の化合物が、6-メチルヘプタ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9,13-テトラエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,13-トリエン-2-オン及び6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式(IV)のジエンケトン
【化6】
を製造する方法であって、
a)請求項1~13のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を調製する工程、
続いて、
b)塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で式(I)の化合物を異性化し、前記式(IV)のジエンケトンを得る工程を含む方法。
【請求項15】
i)式(II)の化合物、
【化7】
ii)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化8】
及び
iii)式
【化9】
のアンモニウム触媒を含む反応物の混合物であって、
式中、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基又はエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖若しくは分岐鎖のいずれかのC
1~10アルキル基、特に、メチル基若しくはエチル基を表すか、
又は、R
5’及びR
5’’は、直鎖若しくは分岐鎖のC
1~10アルキレン基、特に、エチレン基若しくはプロピレン基を共に形成し、
並びに、
R
6及びR
7及びR
8及びR
9は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~10アルキル基のいずれかを表し、
R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12アルキル基若しくはシクロアルキル基のいずれかを表し、
並びに、
X=[HSO
4]
-又は[HS
2O
3]
-であり、
Y=[SO
4]
2-又は[S
2O
3]
2-であり、
波線はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す、反応物の混合物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、アレンケトンの製造に関する。
【0002】
[発明の背景]
式(I)のアレンケトンは、重要な部類の工業化学物質であり、且つビタミン類及び芳香成分の合成における中心的な生成物であり、特に重要なものである。実行可能な合成経路の1つには、出発生成物として第三級プロパルギルカルビノールが使用されている。
米国特許第3,029,287号明細書及びG.Saucy et al.disclose in Helv.Chim.Acta 1967,50(4),1158-1167には、強酸、特に硫酸又はリン酸又はp-トルエンスルホン酸の存在下で、第三級プロパルギルアルコールとケタール又はエノールエーテルとを縮合してアレンケトンを形成することが開示されている。
【0003】
米国特許第6,380,437号明細書には、脂肪族スルホン酸又はその金属塩の存在下で、第三級プロパルギルアルコールとケタール又はアルケニルアルキルエーテルとを縮合してアレンケトンを形成することが開示されている。
【0004】
米国特許第3,330,867号明細書及び国際公開第2017/131607号パンフレットには、水素を用いてアレンケトンを異性化して不飽和ケトンを得ることができることが開示されている。
【0005】
アレンケトンの調製に強酸を使用することは、この化学物質(強酸)の取り扱いが危険であり、特別な保護方法を使用し、且つ製造工程で使用される設備に特別の材料及び耐食性の材料が必要とされるため、不利である。
【0006】
[発明の概要]
したがって、本発明によって解決される問題は、強酸及び腐食条件の非存在下で、式(I)のアレンケトンを高収率で製造する方法を提供することである。
【0007】
驚くべきことに、請求項1に記載の方法及び請求項15に記載の反応物の混合物により、この問題を解決することができることが判明した。
【0008】
特定の(チオ)硫酸アンモニウム又は(チオ)硫酸水素が、前記反応の触媒として特によく適していることが判明した。
【0009】
本発明の更なる態様は、更なる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】表1に示されるような量の対応するアンモニウム触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)を4当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、表1に示されるような反応時間の間、115℃で撹拌した。対応する生成物、すなわち6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンが、表1に示すような収率及び選択率で得られた。
【
図2】表2に示されるような量の対応するアンモニウム触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)を、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、表2に示されるような反応時間の間、80~95℃の温度で撹拌した。対応する生成物、すなわち7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オン(=DMDTO)及び3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン(=TMUTO)が、表2に示されるような転化率、収率及び選択率で得られた。
【
図3】表3に示されるような量の対応するアンモニウム触媒の存在下で、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールを、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、表3に示されるような反応時間の間、80~95℃の温度で撹拌した。対応する生成物、すなわち7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン(TMHDO)及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オン(TMPDO)が、表3に示されるような転化率、収率及び選択率で得られた。
【0011】
[発明の詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、式(I)のアレンケトン
【化1】
を、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物
【化2】
とを、式
【化3】
のアンモニウム触媒の存在下で反応させることによって製造する方法であって、
式中、
R
1は、メチル基又はエチル基を表し、
R
2は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基を表し、
R
3は、メチル基又はエチル基を表し、
R
4は、H又はメチル基又はエチル基を表し、
R
5は、直鎖又は分岐鎖のC
1~10アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
R
5’及びR
5’’は、
直鎖若しくは分岐鎖のいずれかのC
1~10アルキル基、特に、メチル基若しくはエチル基を表すか、
又は、R
5’及びR
5’’は、直鎖若しくは分岐鎖のC
1~10アルキレン基、特に、エチレン基若しくはプロピレン基を共に形成し、
並びに、
R
6及びR
7及びR
8及びR
9は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~10アルキル基のいずれかを表し、
R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12アルキル基若しくはシクロアルキル基のいずれかを表し、
並びに、
X=[HSO
4]
-又は[HS
2O
3]
-であり、
Y=[SO
4]
2-又は[S
2O
3]
2-であり、
波線は、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す方法に関する。
【0012】
明確にするために、本明細書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する。
本明細書において、「Cx~yアルキル」基とは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基であり、すなわち、例えば、C1~3アルキル基は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は直鎖であってもよく、又は分岐鎖であってもよい。例えば、-CH(CH3)-CH2-CH3は、C4アルキル基とみなされる。
【0013】
本明細書において、複数の式の中で記号又は基に対して同じ表示が存在する場合、特定の式に関連してなされた前述の基又は記号の定義は、同じ前述の表示を含む他の式にも適用される。
【0014】
本明細書において、置換基、部分、又は基の文脈における「互いから独立して」という用語は、同様に指定された置換基、部分、又は基が、同じ分子中に異なる意味を有しながら同時に存在することができることを意味する。
【0015】
「(チオ)硫酸」又は「(チオ)硫酸水素」という用語は、硫酸(=[SO4]2-)及びチオ硫酸(=[S2O3]2-)、又は硫酸水素(=[HSO4]-)及びチオ硫酸水素(=[HS2O3]-)をそれぞれ包含する。
【0016】
本明細書において、式中の点線はいずれも、置換基が分子の残部に結合されることによる結合を表す。
【0017】
本明細書において、波線はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す。
【0018】
後に極めて詳細に説明するように、特定の(チオ)硫酸アンモニウム又は(チオ)硫酸水素触媒(=「Cat」)の存在下で、式(II)の化合物を式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物
【化4】
のいずれかと反応させる。
【0019】
[式(II)の化合物]
式(II)の化合物は、当業者に公知の物質である。
R1は、メチル基又はエチル基、好ましくはメチル基を表す。
R2は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基、好ましくはメチル基を表す。
【0020】
好ましい実施形態では、R
2は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)
【化5】
からなる群から選択される基を表す。
【0021】
点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合されることによる結合を表す。点線
【化6】
による二重結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表す。波線はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す。
【0022】
上記の式中、nは1、2、3又は4、特に1又は2を表す。
【0023】
好ましい実施形態の1つでは、R2は、式(R2-I)の基又は式(R2-II)の基のいずれかを表す。
【0024】
別の好ましい実施形態では、R2は、式(R2-III)の基又は式(R2-IV)の基のいずれかを表す。
【0025】
式(II)の化合物は、2-メチルブタ-3-イン-2-オール(=メチルブチノール、「MBY」)、3-メチルペンタ-1-イン-3-オール(=エチルブチノール、「EBY」)、3,5-ジメチルヘキサ-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)、3,7-ジメチルオクタ-1-イン-3-オール、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(=エチルデヒドロリナロール、「EDLL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-6-エン-1-イン-3-オール、3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール(=デヒドロネロリドール、「DNL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-4,6,10-トリエン-1-イン-3-オール(=エチニルプソイドイオノール、「EPI」)、3-メチル-5-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-イン-3-オール及び3-メチル-1-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ペンタ-1-エン-4-イン-3-オールからなる群から選択されることが好ましい。
【0026】
式(II)の化合物は、2-メチルブタ-3-イン-2-オール(=メチルブチノール、「MBY」)、3-メチルペンタ-1-イン-3-オール(=エチルブチノール、「EBY」)、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)、3,7-ジメチルノナ-6-エン-1-イン-3-オール(=エチルデヒドロリナロール、「EDLL」)、3,7,11-トリメチルドデカ-6,10-ジエン-1-イン-3-オール(=デヒドロネロリドール、「DNL」)及び3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0027】
式(II)の化合物は、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)又は3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールであることがより一層好ましい。
【0028】
[式(IIIa)の化合物]
式(IIIa)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0029】
式(IIIa)において、R3は、メチル基又はエチル基を表し、R4は、H又はメチル基又はエチル基を表し、R5は、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。
【0030】
好ましくは、R3基はメチル基を表す。
【0031】
好ましくは、R4基はHを表す。
【0032】
好ましくは、R5基はメチル基を表す。
【0033】
式(IIIa)の化合物は、最も好ましくは、イソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)又はイソプロペニルエチルエーテル(「IPE」)のいずれかであり、特にイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)である。
【0034】
式(IIIa)の化合物の合成により、式(IIIa)の化合物の混合物もまた、式(II)の化合物との反応に使用されることが非常に多い。例えば、ブテニルメチルエーテルの場合、メタノール及びメチルエチルケトンから調製された、2-メトキシブタ-1-エンと(E)-2-メトキシブタ-2-エンと(Z)-2-メトキシブタ-2-エンとの混合物が使用されることが多い。
【0035】
[式(IIIb)の化合物]
式(IIIb)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0036】
式(IIIb)において、R3は、メチル基又はエチル基を表し、R4は、H又はメチル基又はエチル基を表す。
【0037】
R5’及びR5’’は、一実施形態では、それぞれ直鎖又は分岐鎖のいずれかのC1~10アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。別の実施形態では、R5’及びR5’’は、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキレン基、特にエチレン基又はプロピレン基を共に形成する。
【0038】
好ましくは、R3基はメチル基を表す。
【0039】
好ましくは、R4基はHを表す。
【0040】
好ましい一実施形態では、R5’=R5’’であり、特にR5’=R5’’=メチル又はエチルであり、より好ましくはR5’=R5’’=CH3である。
【0041】
別の好ましい実施形態では、R5’及びR5’’は、エチレン(CH2CH2)基又はプロピレン(CH2CH2CH2若しくはCH(CH3)CH2)基を共に形成する。
【0042】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン、又は2,2-ジエトキシプロパン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2,4-トリメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキサンのいずれかである。
【0043】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン又は2,2-ジエトキシプロパンのいずれか、特に2,2-ジメトキシプロパンである。
【0044】
式(IIIb)の化合物よりも、式(IIIa)の化合物を使用することが好ましい。
【0045】
[(チオ)硫酸アンモニウム又は(チオ)硫酸水素]
【0046】
式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物との反応は、式
【化7】
のアンモニウム触媒の存在下で行われ、
式中、
R
6及びR
7及びR
8及びR
9は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~10アルキル基のいずれかを表し、
R
30、R
31、R
32、R
33及びR
34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~12アルキル基若しくはシクロアルキル基のいずれかを表し、
並びに、
X=[HSO
4]
-又は[HS
2O
3]
-であり、
Y=[SO
4]
2-又は[S
2O
3]
2-である。
【0047】
換言すれば、本発明による式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物とを反応させるのに好適なアンモニウム触媒は、カチオンだけでなくアニオンの選択に関しても極めて特異的なアンモニウム化合物である。
【0048】
R6=R7=R8であることが好ましい。
【0049】
R6=R7=R8=R9であることが更に好ましい。
【0050】
R9=Hであることが更に好ましい。
【0051】
そのため、非常に好ましい一実施形態では、カチオンは無機アンモニウムカチオン、すなわちNH4
+である。
【0052】
別の非常に好ましい実施形態では、カチオンはプロトン化第三級アミン、特にトリエチルアンモニウム及びトリブチルアンモニウムであり、トリエチルアンモニウムが好ましい。
【0053】
別の非常に好ましい実施形態では、カチオンはピリジニウム、又は少なくとも1つの直鎖若しくは分岐鎖のC1~12アルキル基若しくはシクロアルキル基で置換されたピリジニウムである。
【0054】
R30、R31、R32、R33及びR34は、互いから独立して、H又はメチル基のいずれかを表すことが好ましい。
【0055】
これらの好ましい実施形態の1つでは、R30、R31、R32、R33及びR34のうちの1つ又は2つの基が、メチル基を表す。この実施形態で特に好ましいのは、α-ピコリニウム、β-ピコリニウム及びγ-ピコリニウムである。
これらの実施形態のうちで最も好ましいのはピリジニウムであり、すなわちR30=R31=R32=R33=R34=Hである。
【0056】
アンモニウム触媒のアニオンは、硫酸(=[SO4]2-)又はチオ硫酸(=[S2O3]2-)又は硫酸水素(=[HSO4]-)又はチオ硫酸水素(=[HS2O3]-)のいずれかである。
【0057】
反応は、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が1:15~1:1の範囲である場合に行われるのが好ましいことが判明した。
【0058】
式(IIIa)の化合物を使用する場合、前記比は、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:3.5~1:2の範囲であり、最も好ましくは1:3~1:2の範囲であり、特に1:2.5~1:2の範囲である。
【0059】
式(IIIb)の化合物を使用する場合、前記比は、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:8~1:3の範囲であり、最も好ましくは1:8~1:5の範囲である。
【0060】
更に、アンモニウム触媒の量は、式(II)の化合物の量を基準として、0.01~1mol%の範囲であり、好ましくは0.02~0.6mol%の範囲であり、より好ましくは0.05~0.6mol%の範囲である。特に、0.01~0.1mol%、好ましくは0.01~0.05mol%の範囲の極めて少量の式
【化8】
のアンモニウム触媒が特に高収率であり、高い選択率を示すことが判明した。
【0061】
前記アンモニウム触媒をこのように低い触媒濃度で使用し、式(II)の化合物の分子量を増加させた場合に、収率及び選択率が向上することも観察されている。
【0062】
更に、アンモニウム触媒の濃度が0.5mol%未満であったとしても、典型的には3時間未満という極めて短い反応時間を達成することができることが判明した。
【0063】
最も好ましくは、反応は、0.5~0.05mol%のアンモニウム触媒の濃度で60分~110分の反応時間、又は0.1~0.01mol%のアンモニウム触媒の濃度で2時間~22時間の反応時間で行う。
【0064】
反応は、70~170℃の範囲の温度で実行するのが好ましい。一実施形態では、温度は、好ましくは110~160℃の範囲であり、最も好ましくは115~150℃の範囲の温度である。この温度範囲は、式(IIIa)の化合物としてのイソプロペニルメチルエーテルに特に好適である。
【0065】
別の実施形態では、温度は、好ましくは75~100℃の範囲であり、最も好ましくは80~95℃の範囲の温度である。この温度範囲は、R3=R4=メチル若しくはエチルを有するか、又はR3=エチルを有するかのいずれかの式(IIIa)の化合物、最も特に式(IIIa)の化合物としてのブテニルメチルエーテルに特に好適である。
【0066】
一実施形態では、反応は、好ましくは5~20baraの範囲の圧力で、より好ましくは6~15baraの範囲の圧力で実行される。この圧力範囲は、式(IIIa)の化合物としてのイソプロペニルメチルエーテルに特に好適である。
【0067】
別の実施形態では、反応は、周囲圧力(1bara)で実行されるのが好ましい。この圧力は、式(IIIa)の化合物としてのブテニルメチルエーテルに特に好適である。
【0068】
反応は、溶媒なしで、又は有機溶媒の存在下で実行することができる。好ましくは、反応は溶媒なしで実行される。
【0069】
反応が有機溶媒の非存在下で実行される場合であっても、出発材料である式(II)の化合物及び(IIIa)又は(IIIb)の化合物、並びに前記アンモニウム触媒は、なお有機溶媒中で提供されてもよい。したがって、反応物の混合物の総重量を基準として、最大で10重量%の量の有機溶媒、好ましくは最大で5重量%の量の有機溶媒、より好ましくは最大で3重量%の量の有機溶媒が存在してもよい。
【0070】
反応を有機溶媒中で実行する場合、極性非プロトン性有機溶媒、例えば、脂肪族ケトン、例えばアセトンが好ましい。
【0071】
上記の反応は、高転化率、高収率及び高選択率で式(I)の化合物をもたらすことが判明した。
【0072】
特に、6-メチルヘプタ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9,13-テトラエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,9-トリエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5,13-トリエン-2-オン及び6,10,14-トリメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンからなる群から選択される式(I)の化合物を、好ましくは生成できることが判明した。
【0073】
有機溶媒の有無にかかわらず、反応物の混合物それ自体も本発明の目的である。
【0074】
したがって、本発明は、更なる態様において、
i)式(II)の化合物、
【化9】
ii)式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化10】
及び
iii)式
【化11】
のアンモニウム触媒を含む反応物の混合物に関する。
【0075】
式(II)の化合物及び式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、並びにアンモニウム触媒は、既に上記で十分に説明されている。
【0076】
式(I)の化合物を、塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で異性化して、式(IV)のジエンケトン
【化12】
を得ることができる。
【0077】
したがって、本発明は、更なる態様において、式(IV)のジエンケトン
【化13】
を製造する方法であって、
a)既に極めて詳細に上記で説明されているような式(I)の化合物を調製する工程、
続いて、
b)塩基又は酸、好ましくは塩基の存在下で式(I)の化合物を異性化し、式(IV)のジエンケトンを得る工程を含む方法に関する。
【0078】
式(I)の化合物を異性化して式(IV)の化合物を得ることは、例えば、米国特許第3,330,867号明細書及び国際公開第2017/131607号パンフレットから当業者に主に公知であり、これらの双方の内容全体が参照により本明細書に援用される。
異性化工程、すなわち工程b)で使用される塩基は、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩又は炭酸水素塩、好ましくは水酸化物、特にKOH又はNaOHである。
【0079】
別の好ましい実施形態では、塩基は、塩基性イオン交換樹脂、好ましくは塩基性アニオン交換樹脂のAmberlite(登録商標)IRA 900、Dowex(登録商標)MSA-1、Diaion(登録商標)HPA25又はPA308、及びAmberlyst(登録商標)A260H、DOW社製XE-4、XE-8、XE-8新型及びXE-10、並びに同一の化学構造及び類似の物理化学的性質を有する等価な樹脂である。
この異性化工程における温度は、好ましくは30℃未満、特に-10℃~25℃、好ましくは0℃~10℃の範囲である。
【0080】
前記異性化工程は、C1~6アルコール中、特にメタノール中、又は水性媒体中で行うことが好ましい。
【0081】
前記方法は、それぞれ式(I)又は(IV)の化合物を、式(II)の化合物に対して高収率及び高選択率で製造することを可能にする。ゆえに、本発明は、当業者に公知の方法に勝る大きな利点を提供している。
【0082】
[実施例]
本発明を以下の実験によって更に説明する。
【0083】
[実験系列1]
表1に示されるような量の対応するアンモニウム触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)を4当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、表1に示されるような反応時間の間、115℃で撹拌した。対応する生成物、すなわち6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンが、表1に示すような収率及び選択率で得られた(
図1を参照されたい)。
【0084】
【0085】
国際公開第2011/131607号パンフレットの実施例2に示されるような反応により、表1からの6,10-ジメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オンを定量的に異性化し、6,10-ジメチルウンデカ-3,5,9-トリエン-2-オンを得た。
【0086】
[実験系列2]
表2に示されるような量の対応するアンモニウム触媒の存在下で、3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イン-3-オール(=デヒドロリナロール、「DLL」)を、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、表2に示されるような反応時間の間、80~95℃の温度で撹拌した。対応する生成物、すなわち7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オン(=DMDTO)及び3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン(=TMUTO)が、表2に示されるような転化率、収率及び選択率で得られた(
図2を参照されたい)。
【0087】
【0088】
国際公開第2011/131607号パンフレットの実施例2に示されるような反応により、表2からの3,6,10-トリメチルウンデカ-4,5,9-トリエン-2-オン及び7,11-ジメチルドデカ-5,6,10-トリエン-3-オンを定量的に異性化し、3,6,10-トリメチルウンデカ-3,5,9-トリエン-2-オン、7,11-ジメチルドデカ-4,6,10-トリエン-3-オンをそれぞれ得た。
【0089】
[実験系列3]
表3に示されるような量の対応するアンモニウム触媒の存在下で、3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オールを、2.6当量のブテニルメチルエーテル(2-メトキシブタ-1-エン/(E)-2-メトキシブタ-2-エン/(Z)-2-メトキシブタ-2-エン=53/37/10の混合物)と混合し、表3に示されるような反応時間の間、80~95℃の温度で撹拌した。対応する生成物、すなわち7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン(TMHDO)及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オン(TMPDO)が、表3に示されるような転化率、収率及び選択率で得られた(
図3を参照されたい)。
【0090】
【0091】
国際公開第2011/131607号パンフレットの実施例2に示される反応により、表3からの7,11,15-トリメチルヘキサデカ-5,6-ジエン-3-オン及び3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-4,5-ジエン-2-オンを定量的に異性化し、7,11,15-トリメチルヘキサデカ-4,6-ジエン-3-オン、3,6,10,14-テトラメチルペンタデカ-3,5-ジエン-2-オンをそれぞれ得た。
【国際調査報告】