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特表2024-505000複数のタンパク質の送達のための血小板アルファ顆粒
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】複数のタンパク質の送達のための血小板アルファ顆粒
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/46 20060101AFI20240126BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240126BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20240126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240126BHJP
【FI】
C07K14/46 ZNA
C12N5/078
A61K35/19
A61P35/00
A61P29/00
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544631
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022014107
(87)【国際公開番号】W WO2022165043
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/142,402
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522030390
【氏名又は名称】シーエスティーエス ヘルス ケア インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレメント,ジャンノウラ ラッカ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チィェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC05
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB38
4C087NA06
4C087NA13
4C087ZB11
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045DA65
4H045EA24
(57)【要約】
本開示は、少なくとも2つの薬剤を担持した血小板であって、各薬剤が血小板の異なるα顆粒タイプに担持されている血小板を含む、組成物及び方法を提供する。血小板に担持された薬剤は、一般に分解から保護され、対象は、薬剤の毒性(存在する場合)から保護される。これらの利点は、損傷、炎症、及び/または血管新生の部位へ向かう血小板の生来の能力と相まって、治療有効量の薬剤を標的部位に確実に送達させるのに役立つ。
【選択図】図25A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、前記第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、前記第1の化合物と、
第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、前記第2のポリペプチドが、前記血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、前記第2の化合物と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記第1のGAG結合ペプチドが、コンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合し、前記第2のGAG結合ペプチドが、ヘパラン硫酸(HS)に優先的に結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のGAG結合ペプチドが、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合し、ヘパラン硫酸(HS)には好ましくは結合しない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のアルファ顆粒タイプが、P-セレクチン関連顆粒であり、前記第2のアルファ顆粒タイプが、フォン・ヴィレブランド因子関連顆粒である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のアルファ顆粒タイプの内容物が、高親和性トロンビン受容体PAR1を介して放出され、前記第2のアルファ顆粒タイプの内容物が、低親和性トロンビン受容体PAR4を介して放出され、任意選択で、アルファ顆粒の内容物が、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン誘導体(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))との接触に応答して放出され得る、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のアルファ顆粒タイプの前記内容物が、前記第2のアルファ顆粒タイプの前記内容物の放出をもたらすのに必要なトロンビン濃度よりも低いトロンビン濃度で放出される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1のアルファ顆粒タイプの前記内容物が、前記第2のアルファ顆粒タイプの前記内容物が放出される前に放出される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、各々約8アミノ酸長~約14アミノ酸長である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの一方または両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの一方または両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、または9位に荷電アミノ酸を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、少なくとも10個のアミノ酸を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記第1のGAG結合ペプチド及び/または前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、11個のアミノ酸を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、11個のアミノ酸からなる、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記第1のGAG結合ペプチドが、配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記第2のGAG結合ペプチドが、配列番号2と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1のGAG結合ペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記第2のGAG結合ペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記第1のGAG結合ペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、前記第2のGAG結合ペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列からなる、請求項22または請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記第1のポリペプチドが、前記第1のGAG結合ペプチドからなり、前記第2のポリペプチドが、前記第2のGAG結合ペプチドからなる、請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記第1のポリペプチドのN末端が、前記第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または前記第2のポリペプチドのN末端が、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記第1のポリペプチドのC末端が、前記第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または前記第2のポリペプチドのC末端が、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている、請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記第1の薬剤が、第1のリンカーを介して前記第1のポリペプチドに間接的に連結されており、及び/または前記第2の薬剤が、第2のリンカーを介して前記第2のポリペプチドに間接的に連結されている、請求項1~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記第1のリンカー及び/または前記第2が、1つ以上の原子をそれぞれ含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1のリンカー及び/または前記第2が、繰り返し単位のポリマーをそれぞれ含む、請求項28または29に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1のリンカー及び/または前記第2のリンカーが、アミノ酸鎖をそれぞれ含む、請求項28~30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記第1の薬剤が前記第1のポリペプチドに直接連結されており、及び/または前記第2の薬剤が前記第2のポリペプチドに直接連結されている、請求項1~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
マレイミド反応、スクシンイミジルエステル反応、酵素反応、またはタンパク質の構造もしくは活性に影響を及ぼさない別のコンジュゲーション系を使用して、前記第1の薬剤が前記第1のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されており、及び/または前記第2の薬剤が前記第2のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されている、請求項1~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、抗体または蛍光部分を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、哺乳動物細胞に対して有害であり、及び/または対象に対して毒性であり、及び/または
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、対象の血流に直接投与された場合、分解を受けやすい、請求項1~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記第1の化合物及び/または前記第2の化合物が、蛍光部分をさらに含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記第1のGAG結合ペプチド及び/または前記第2のGAG結合ペプチドが、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaにも優先的に結合する、請求項1~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物をさらに含み、前記第3のポリペプチドが、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、前記第3のGAG結合ペプチドが、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する、請求項1~38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、前記第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、前記第1の化合物の少なくとも1つのコピーと、
第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、前記第2のポリペプチドが、前記血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、前記第2の化合物の少なくとも1つのコピーと、
を含む、単離血小板。
【請求項41】
前記血小板が、合成血小板、同種血小板、自家血小板、または修飾された異種血小板である、請求項40に記載の単離血小板。
【請求項42】
前記血小板が、自家血小板である、請求項41に記載の単離血小板。
【請求項43】
前記血小板が、同種血小板である、請求項41に記載の単離血小板。
【請求項44】
前記血小板が、多血小板血漿から得られる、請求項42または請求項43に記載の単離血小板。
【請求項45】
前記血小板が、1~1000コピーの前記第1の化合物及び1~1000コピーの前記第2の化合物を含む、請求項40~44のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項46】
前記1~1000コピーの前記第1の化合物が、血小板の第1のアルファ顆粒タイプに担持され、前記1~1000コピーの前記第2の化合物が、前記血小板の第2のアルファ顆粒タイプに担持される、請求項45に記載の単離血小板。
【請求項47】
前記第1の化合物の少なくとも1つのコピーが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプに担持され、前記第2の化合物の少なくとも1つのコピーが、前記血小板の第1のアルファ顆粒タイプに担持される、請求項46に記載の単離血小板。
【請求項48】
前記第1のGAG結合ペプチドが、コンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合し、前記第2のGAG結合ペプチドが、ヘパラン硫酸(HS)に優先的に結合する、請求項40~47のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項49】
前記第1のGAG結合ペプチドが、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合し、ヘパラン硫酸(HS)には好ましくは結合しない、請求項40~48のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項50】
前記第1のアルファ顆粒タイプが、P-セレクチン関連顆粒であり、前記第2のアルファ顆粒タイプが、フォン・ヴィレブランド因子関連顆粒である、請求項40~49のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項51】
前記第1のアルファ顆粒タイプの内容物が、高親和性トロンビン受容体PAR1を介して放出され、前記第2のアルファ顆粒タイプの内容物が、低親和性トロンビン受容体PAR4を介して放出され、任意選択で、アルファ顆粒の内容物が、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))との接触に応答して放出され得る、請求項40~50のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項52】
前記第1のアルファ顆粒タイプの前記内容物が、前記第2のアルファ顆粒タイプの前記内容物の放出をもたらすのに必要なトロンビン濃度よりも低いトロンビン濃度で放出される、請求項40~51のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項53】
前記第1のアルファ顆粒タイプの前記内容物が、前記第2のアルファ顆粒タイプの前記内容物が放出される前に放出される、請求項40~52のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項54】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、各々約8アミノ酸長~約14アミノ酸長である、請求項40~53のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項55】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの一方または両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む、請求項54に記載の単離血小板。
【請求項56】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む、請求項55に記載の単離血小板。
【請求項57】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの一方または両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む、請求項54~56のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項58】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む、請求項57に記載の単離血小板。
【請求項59】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項54~58のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項60】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項54~59のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項61】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項54~60のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項62】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、または9位に荷電アミノ酸を含む、請求項54~61のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項63】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む、請求項54~62のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項64】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、少なくとも10個のアミノ酸を含む、請求項54~63のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項65】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、11個のアミノ酸を含む、請求項54~64のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項66】
前記第1のGAG結合ペプチド及び前記第2のGAG結合ペプチドが、独立して、11個のアミノ酸からなる、請求項54~65のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項67】
前記GAG結合ペプチドが、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列からなる、請求項54~66のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項68】
前記第1のGAG結合ペプチドが、配列番号1と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記第2のGAG結合ペプチドが、配列番号2と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項54~66のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項69】
前記第1のGAG結合ペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記第2のGAG結合ペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項68に記載の単離血小板。
【請求項70】
前記第1のGAG結合ペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、前記第2のGAG結合ペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列からなる、請求項68または請求項69に記載の単離血小板。
【請求項71】
前記第1のポリペプチドが、前記第1のGAG結合ペプチドからなり、前記第2のポリペプチドが、前記第2のGAG結合ペプチドからなる、請求項40~70のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項72】
前記第1のポリペプチドのN末端が、前記第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または前記第2のポリペプチドのN末端が、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている、請求項40~71のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項73】
前記第1のポリペプチドのC末端が、前記第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または前記第2のポリペプチドのC末端が、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている、請求項40~72のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項74】
前記第1の薬剤が、第1のリンカーを介して前記第1のポリペプチドに間接的に連結されており、及び/または前記第2の薬剤が、第2のリンカーを介して前記第2のポリペプチドに間接的に連結されている、請求項40~73のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項75】
前記第1のリンカー及び/または前記第2が、1つ以上の原子をそれぞれ含む、請求項74に記載の単離血小板。
【請求項76】
前記第1のリンカー及び/または前記第2が、繰り返し単位のポリマーをそれぞれ含む、請求項74または75に記載の単離血小板。
【請求項77】
前記第1のリンカー及び/または前記第2が、アミノ酸鎖をそれぞれ含む、請求項74~76のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項78】
前記第1の薬剤が前記第1のポリペプチドに直接連結されており、及び/または前記第2の薬剤が前記第2のポリペプチドに直接連結されている、請求項40~77のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項79】
マレイミド反応、スクシンイミジルエステル反応、酵素反応、またはタンパク質の構造もしくは活性に影響を及ぼさない別のコンジュゲーション系を使用して、前記第1の薬剤が前記第1のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されており、及び/または前記第2の薬剤が前記第2のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されている、請求項40~78のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項80】
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子を含む、請求項40~79のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項81】
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、抗体を含む、及び/または蛍光部分を含む、請求項80に記載の単離血小板。
【請求項82】
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、哺乳動物細胞に対して有害であり、及び/または対象に対して毒性であり、及び/または
前記第1の薬剤及び/または前記第2の薬剤が、対象の血流に直接投与された場合、分解を受けやすい、請求項40~81のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項83】
前記第1の化合物及び/または前記第2の化合物が、蛍光部分をさらに含む、請求項40~82のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項84】
前記第1のGAG結合ペプチド及び/または前記第2のGAG結合ペプチドが、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaにも優先的に結合する、請求項40~83のいずれか1項に記載の単離血小板であって、
任意選択で、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物の少なくとも1つのコピーをさらに含み、前記第3のポリペプチドが、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、前記第3のGAG結合ペプチドが、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する、前記単離血小板。
【請求項85】
前記単離血小板が、担持プロセスによって活性化されるのではなく、完全に機能する休止血小板のままである、請求項40~84のいずれか1項に記載の単離血小板。
【請求項86】
請求項40~85のいずれか1項に記載の単離血小板と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項87】
第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含み、前記第3のポリペプチドが、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、前記第3のGAG結合ペプチドが、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する、請求項86に記載の医薬組成物。
【請求項88】
前記第1の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含むか、または第2の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第3の単離血小板をさらに含む、請求項86に記載の医薬組成物。
【請求項89】
前記第1の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含み、かつ第2の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第3の単離血小板をさらに含む、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
疾患または障害を治療するための、請求項86~89のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項91】
疾患または障害を治療するための薬物の製造における、請求項40~85のいずれか1項に記載の単離血小板または請求項86~89のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項92】
前記疾患または障害が、がんである、請求項90または請求項91に記載の使用。
【請求項93】
疾患または障害の治療を必要とする対象において前記疾患または前記障害を治療するための方法であって、治療有効量の請求項86~89のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項94】
疾患または障害の治療を必要とする対象において前記疾患または前記障害を治療するための方法であって、治療有効量の請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項95】
前記第1のアルファ顆粒タイプの前記内容物が、前記第2のアルファ顆粒タイプの前記内容物が放出される前に標的部位で放出される、請求項93または請求項94に記載の方法。
【請求項96】
ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、メタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を独立して含む、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項93~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記第2の医薬組成物が、第1のアルファ顆粒タイプからの第1の化合物の放出を促進し、前記第3の医薬組成物が、第2のアルファ顆粒タイプからの第2の化合物の放出を促進する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記第2の医薬組成物及び/または前記第3の医薬組成物が、前記医薬組成物が投与された後に投与される、請求項96または請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記医薬組成物が、前記第2の医薬組成物及び/または前記第3の医薬組成物が投与される前に少なくとも2回投与される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記疾患または障害が、がんである、請求項93~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記疾患または障害が、炎症である、請求項93~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記疾患または障害が、埋植物、移植片、ステント、または補装具の副作用である、請求項93~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記疾患もしくは障害が、欠陥遺伝子に起因するか、または前記疾患もしくは障害が、損傷である、請求項93~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記組成物が、完全に機能する休止血小板のままである単離血小板を含む、請求項93~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
担持血小板を製造するための方法であって、
血小板を得るステップと、
前記血小板を請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物とin vitroまたはex vivoで接触させるステップと、
前記血小板と前記組成物との間の接触を、前記第1の化合物が前記血小板の第1のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで、かつ前記第2の化合物が前記血小板の第2のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで進行させて、これにより担持血小板を生成するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項106】
担持血小板を製造するための方法であって、
血小板を得るステップと、
前記血小板を、第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、前記第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、前記第1の化合物と、in vitroまたはex vivoで接触させるステップと、
前記血小板を、第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、前記第2のポリペプチドが、前記血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、前記第2の化合物と、in vitroまたはex vivoで接触させるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項107】
前記血小板を前記第1の化合物と接触させることと、前記血小板を前記第2の化合物と接触させることが、同時的である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記血小板を前記第1の化合物と接触させることと、前記血小板を前記第2の化合物と接触させることが、逐次的である、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記血小板を、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物とin vitroまたはex vivoで接触させることをさらに含み、前記第3のポリペプチドが、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、前記第3のGAG結合ペプチドが、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する、請求項106~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記血小板を前記第1の化合物及びまたは前記第2の化合物と接触させることが、前記血小板を活性化させず、代わりに前記血小板が完全に機能する休止血小板のままである、請求項106~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
請求項40~85のいずれか1項に記載の単離血小板と、使用説明書と、を含む、疾患または障害を治療するためのキット。
【請求項112】
請求項86~89のいずれか1項に記載の医薬組成物と、使用説明書と、を含む、疾患または障害を治療するためのキット。
【請求項113】
ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、メタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を独立して含む、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物をさらに含む、請求項111または請求項112に記載のキット。
【請求項114】
請求項1~39のいずれか1項に記載の組成物と、使用説明書と、を含む、担持血小板を製造するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月27日に出願されたUS63/142,402(その内容全体が参照により組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、この配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年1月26日に作成された上記ASCIIコピーは、58533-702.601_ST25.txtと命名され、サイズは3,155バイトである。
【0003】
全身投与される治療用化合物は、その標的部位に到達する前に分解する可能性がある。したがって、それらが少しでも到達したとしても、それらの用量は治療効果を達成するには少なすぎる場合がある。血小板は、損傷、炎症、及び/または血管新生の部位へ自然に向かい、天然のカーゴをこれらの部位へ輸送することが知られている。仮に外来性治療剤を血小板に担持させることができれば、薬剤は、薬剤の全身投与後に生じるであろう分解から保護されるはずである。しかしながら、血小板のアルファ顆粒に外来性治療剤を担持させるための機構については説明がなされていない。したがって、損傷、炎症、及び/または血管新生の部位に外来性治療剤を送達することができる担持血小板に対するアンメットニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、例えば疾患または障害を治療するための、組成物である。本組成物は、第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、第1の化合物と、第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、第2のポリペプチドが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、第2の化合物と、を含む。
【0005】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合し、第2のGAG結合ペプチドは、ヘパラン硫酸(HS)に優先的に結合する。
【0006】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合し、ヘパラン硫酸(HS)には好ましくは結合しない。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプは、P-セレクチン関連顆粒であり、第2のアルファ顆粒タイプは、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)関連顆粒である。
【0008】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、高親和性トロンビン受容体PAR1を介して放出され、第2のアルファ顆粒タイプの内容物は、低親和性トロンビン受容体PAR4を介して放出され、任意選択で、アルファ顆粒の内容物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン誘導体(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))との接触に応答して放出され得る。
【0009】
種々の実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物の放出をもたらすのに必要なトロンビン濃度よりも低いトロンビン濃度で放出される。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物が放出される前に放出される。
【0011】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、各々約8アミノ酸長~約14アミノ酸長である。
【0012】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの一方または両方は、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの一方または両方は、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0014】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0017】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、または9位に荷電アミノ酸を含む。
【0018】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、少なくとも10個のアミノ酸を含む。
【0020】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び/または第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸を含む。
【0021】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸からなる。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列を含む。
【0023】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなっていてもよく、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなっていてもよい。
【0024】
種々の実施形態では、第1のポリペプチドは、第1のGAG結合ペプチドからなり、第2のポリペプチドは、第2のGAG結合ペプチドからなる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドのN末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのN末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0026】
実施形態では、第1のポリペプチドのC末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのC末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0027】
種々の実施形態では、第1の薬剤は、第1のリンカーを介して第1のポリペプチドに間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は、第2のリンカーを介して第2のポリペプチドに間接的に連結されている。場合によっては、第1のリンカー及び/または第2は、1つ以上の原子をそれぞれ含む。第1のリンカー及び/または第2は、繰り返し単位のポリマーをそれぞれ含み得る。第1のリンカー及び/または第2のリンカーは、アミノ酸鎖をそれぞれ含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接連結されている。
【0029】
実施形態では、マレイミド反応、スクシンイミジルエステル反応、酵素反応、またはタンパク質の構造もしくは活性に影響を及ぼさない別のコンジュゲーション系を使用して、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されている。
【0030】
種々の実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子を含む。場合によっては、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、抗体または蛍光部分を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、哺乳動物細胞に対して有害であり、及び/または対象に対して毒性であり、及び/または第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、対象の血流に直接投与された場合、分解を受けやすい。
【0032】
実施形態では、第1の化合物及び/または第2の化合物は、蛍光部分をさらに含む。
【0033】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び/または第2のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaにも優先的に結合する。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物は、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物をさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0035】
本開示の別の態様は、単離血小板である。単離血小板は、第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、第1の化合物の少なくとも1つのコピーと、第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、第2のポリペプチドが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、第2の化合物の少なくとも1つのコピーと、を含む。
【0036】
実施形態では、血小板は、合成血小板、同種血小板、自家血小板、または修飾された異種血小板である。
【0037】
種々の実施形態では、血小板は、自家血小板である。
【0038】
いくつかの実施形態では、血小板は、同種血小板である。
【0039】
実施形態では、血小板は、多血小板血漿から得られる。
【0040】
種々の実施形態では、血小板は、1~1000コピーの第1の化合物及び1~1000コピーの第2の化合物を含む。場合によっては、1~1000コピーの第1の化合物が、血小板の第1のアルファ顆粒タイプに担持され、1~1000コピーの第2の化合物が、血小板の第2のアルファ顆粒タイプに担持される。第1の化合物の最小の1つのコピーが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプに担持され得、第2の化合物の少なくとも1つのコピーが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプに担持され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合し、第2のGAG結合ペプチドは、ヘパラン硫酸(HS)に優先的に結合する。
【0042】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合する。種々の実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプは、P-セレクチン関連顆粒であり、第2のアルファ顆粒タイプは、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)関連顆粒である。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、高親和性トロンビン受容体PAR1を介して放出され、第2のアルファ顆粒タイプの内容物は、低親和性トロンビン受容体PAR4を介して放出され、任意選択で、アルファ顆粒の内容物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))との接触に応答して放出され得る。
【0044】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物の放出をもたらすのに必要なトロンビン濃度よりも低いトロンビン濃度で放出される。
【0045】
種々の実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物が放出される前に放出される。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、各々約8アミノ酸長~約14アミノ酸長である。場合によっては、または第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む。第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含み得る。
【0047】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの一方または両方は、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0048】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0050】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0051】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、または9位に荷電アミノ酸を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0053】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、少なくとも10個のアミノ酸を含む。
【0054】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸を含む。
【0055】
6 いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸からなる。
【0056】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列からなる。
【0057】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0059】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなり、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0060】
種々の実施形態では、第1のポリペプチドは、第1のGAG結合ペプチドからなり、第2のポリペプチドは、第2のGAG結合ペプチドからなる。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドのN末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのN末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0062】
実施形態では、第1のポリペプチドのC末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのC末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0063】
種々の実施形態では、第1の薬剤は、第1のリンカーを介して第1のポリペプチドに間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は、第2のリンカーを介して第2のポリペプチドに間接的に連結されている。場合によっては、第1のリンカー及び/または第2は、1つ以上の原子をそれぞれ含む。第1のリンカー及び/または第2は、繰り返し単位のポリマーをそれぞれ含み得る。第1のリンカー及び/または第2は、アミノ酸鎖をそれぞれ含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接連結されている。
【0065】
実施形態では、マレイミド反応、スクシンイミジルエステル反応、酵素反応、またはタンパク質の構造もしくは活性に影響を及ぼさない別のコンジュゲーション系を使用して、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されている。
【0066】
種々の実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子を含む。場合によっては、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、抗体を含む、及び/または蛍光部分を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、哺乳動物細胞に対して有害であり、及び/または対象に対して毒性であり、及び/または第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、対象の血流に直接投与された場合、分解を受けやすい。
【0068】
実施形態では、第1の化合物及び/または第2の化合物は、蛍光部分をさらに含む。
【0069】
種々の実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び/または第2のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaにも優先的に結合する。
【0070】
いくつかの実施形態では、単離血小板は、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物の少なくとも1つのコピーをさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0071】
本開示のさらに別の態様は、本明細書に開示される態様または実施形態のいずれかの単離血小板と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0072】
実施形態では、医薬組成物は、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0073】
種々の実施形態では、医薬組成物は、第1の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含むか、または第2の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第3の単離血小板をさらに含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、第1の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含み、かつ第2の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第3の単離血小板をさらに含む。
【0075】
一態様では、本開示は、疾患または障害を治療するための本明細書に開示される医薬組成物のいずれかの使用を提供する。実施形態では、疾患または障害は、がんである。
【0076】
別の態様では、本開示は、疾患または障害を治療するための薬物の製造における、任意のまたは本明細書に開示される医薬組成物のいずれかの、本明細書に開示される単離血小板のいずれかの使用を提供する。種々の実施形態では、疾患または障害は、がんである。
【0077】
さらに別の態様では、本開示は、疾患または障害の治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法を提供する。この方法は、治療有効量の本明細書に開示される医薬組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む。
【0078】
本開示の一態様は、疾患または障害の治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法である。この方法は、治療有効量の本明細書に開示される組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む。
【0079】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物が放出される前に標的部位で放出される。
【0080】
上記方法の実施形態では、この方法は、ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、メタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を独立して含む、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物を対象に投与するステップをさらに含む。場合によっては、第2の医薬組成物は、第1のアルファ顆粒タイプからの第1の化合物の放出を促進し、第3の医薬組成物は、第2のアルファ顆粒タイプからの第2の化合物の放出を促進する。第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物は、医薬組成物が投与された後に投与され得る。医薬組成物は、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物が投与される前に少なくとも2回投与され得る。
【0081】
上記方法の種々の実施形態では、疾患または障害は、がんである。
【0082】
上記方法のいくつかの実施形態では、疾患または障害は、炎症である。
【0083】
上記方法の種々の実施形態では、疾患または障害は、埋植物、移植片、ステント、または補装具の副作用である。
【0084】
上記方法の実施形態では、疾患または障害は、欠陥遺伝子に起因する。
【0085】
上記方法のいくつかの実施形態では、疾患または障害は、損傷である。
【0086】
本開示の別の態様は、担持血小板を製造するための方法である。この方法は、血小板を得るステップと;血小板を本明細書に開示される組成物のいずれかとin vitroまたはex vivoで接触させるステップと;血小板と組成物との間の接触を、第1の化合物が血小板の第1のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで、かつ第2の化合物が血小板の第2のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで進行させて、これにより担持血小板を生成するステップと、を含む。
【0087】
本開示のさらに別の態様は、担持血小板を製造するための方法である。この方法は、血小板を得るステップと;血小板を、第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、第1の化合物と、in vitroまたはex vivoで接触させるステップと;血小板を、第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、第2のポリペプチドが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、第2の化合物と、in vitroまたはex vivoで接触させるステップと、を含む。
【0088】
実施形態では、血小板を第1の化合物と接触させることと、血小板を第2の化合物と接触させることは、同時的である。
【0089】
種々の実施形態では、血小板を第1の化合物と接触させることと、血小板を第2の化合物と接触させることは、逐次的である。
【0090】
いくつかの実施形態では、この方法は、血小板を第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物とin vitroまたはex vivoで接触させることをさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0091】
一態様では、本開示は、疾患または障害を治療するためのキットを提供する。キットには、本明細書に開示される単離血小板のいずれか及び使用説明書が含まれる。
【0092】
別の態様では、本開示は、疾患または障害を治療するためのキットを提供する。キットには、本明細書に開示される医薬組成物のいずれか及び使用説明書が含まれる。
【0093】
実施形態では、キットは、ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、メタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を独立して含む、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物をさらに含む。
【0094】
さらに別の態様では、本開示は、担持血小板を製造するためのキットを提供する。キットには、本明細書に開示される組成物のいずれか及び使用説明書が含まれる。
【0095】
本明細書に開示される任意の態様または実施形態は、本明細書に開示される任意の他の態様または実施形態と組み合わせることができる。
【0096】
本発明の新規特徴を、添付の特許請求の範囲に具体的に記載する。本開示の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理を利用した例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明及び添付図面(本明細書ではまた「図(figure)」及び「図(FIG.)」でもある)を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】A及びBは、付着したカーゴを血小板中に捕捉させる例示的なグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドの能力を示すグラフである。
図2】Aは、付着したカーゴを血小板のアルファ顆粒中に捕捉させる例示的なグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドの能力を示す免疫蛍光画像である。Bは、付着したカーゴを血小板のアルファ顆粒中に捕捉させる例示的なグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドの能力を示すグラフである。
図3A】等温滴定熱量測定(ITC)実験を示す模式図である。
図3B】配列番号1のGAG結合ペプチドに関する、例示的なGAG結合ペプチドを保持するセルに滴定したコンドロイチン硫酸A(CSA)のITC解離動態のグラフ表示を示す。
図3C】配列番号2のGAG結合ペプチドに関する、例示的なGAG結合ペプチドを保持するセルに滴定したコンドロイチン硫酸A(CSA)のITC解離動態のグラフ表示を示す。
図3D】電荷を持たないリガンドに関する、例示的なGAG結合ペプチドを保持するセルに滴定したコンドロイチン硫酸A(CSA)のITC解離動態のグラフ表示を示す。
図3E図3Bのデータを表で示す。
図3F図3Cのデータを表で示す。
図4A】対照ペプチド(CFL;EGGIWFPYGGF;配列番号14)ならびに2つのPAL(PAL1;ERRIWFPYRRF;配列番号1及びPAL2;RFRWPYRIREF;配列番号2)を含むペプチドアミノ酸配列を示す。
図4B】前の図の3つの例示的なGAG結合ペプチドのアフィニティークロマトグラフィーデータ(但し、ヘパラン硫酸(HS)に結合する場合である)を示す。
図4C】前の図の3つの例示的なGAG結合ペプチドのアフィニティークロマトグラフィーデータ(但し、ヘパラン硫酸(HS)に結合する場合である)を示す。
図4D】Fam-PAL-ルシタニブのコンジュゲーションの図を示す。
図4E】種々のコンジュゲートのFGFR活性%を示す。PromegaのADP-Gloキットを使用して試験した場合、コンジュゲートしたルシタニブはFGFR1阻害機能を維持している。EC50のわずかな下落は、コンジュゲートの溶解性の低下に起因し得る。この図及び他所に含まれる略語は、必要に応じて以下の通りである:A-PAL1 -- Alexa647標識-PAL1;A-PAL2 -- Alexa647標識-PAL2;Fam-PAL1 -- Fam標識-PAL1;Fam-PAL2 -- Fam標識-PAL2;Fam-PAL1-Luci -- Fam-PAL1コンジュゲートルシタニブ;Fam-PAL2-Luci -- Fam-PAL2コンジュゲートルシタニブ;Fam-CFL-Luci -- Fam-CFLコンジュゲートルシタニブ;及びFam-L-Luci -- Fam-リンカーコンジュゲートルシタニブ。
図5】グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む例示的な化合物の血小板への担持を示すグラフである。
図6A】グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む例示的な化合物が、血小板のアルファ顆粒に担持される能力を示す免疫蛍光画像である。
図6B】グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む例示的な化合物が、血小板のアルファ顆粒に担持される能力を示すグラフである。
図7A】PAL1を含む例示的な化合物を保持するセルに滴定したコンドロイチン硫酸A(CSA)のITC解離動態のグラフ表示を含む。
図7B】PAL2を含む例示的な化合物を保持するセルに滴定したコンドロイチン硫酸A(CSA)のITC解離動態のグラフ表示を含む。
図7C】CFLを含む対照化合物を保持するセルに滴定したコンドロイチン硫酸A(CSA)のITC解離動態のグラフ表示を含む。
図7D図7Aのデータを表で示す。
図7E図7Bのデータを表で示す。
図7F図7Cのデータを表で示す。
図8】前の図の3つの例示的な化合物のアフィニティークロマトグラフィーデータ(但し、ヘパラン硫酸(HS)に結合する場合である)を示す。
図9A】追加の例示的な化合物を保持するセルに滴定したコンドロイチン硫酸A(CSA)のITC解離動態のグラフ表示を含む。これらの追加の例示的な化合物は、PAL1A~PAL11Aとして識別され、配列番号3~配列番号13のアミノ酸配列を有するGAG結合ペプチドをそれぞれ含む。
図9B図9Aのデータを表で示す。
図9C図9Aのデータを表で示す。
図9D図9Aのデータを表で示す。
図9E図9Aのデータを表で示す。
図9F図9Aのデータを表で示す。
図9G図9Aのデータを表で示す。
図9H図9Aのデータを表で示す。
図9I図9Aのデータを表で示す。
図9J図9Aのデータを表で示す。
図9K図9Aのデータを表で示す。
図9L図9Aのデータを表で示す。
図9M】追加の例示的な化合物及び陰性対照化合物の平均解離定数を示すグラフである。
図10A】本開示の化合物を形成するときにGAG結合ペプチドを薬剤にコンジュゲートさせる際の例示的なステップを示す図である。
図10B】グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む例示的な化合物が、血小板のアルファ顆粒に担持される能力を示す免疫蛍光画像である。
図10C】グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む例示的な化合物が、血小板のアルファ顆粒に担持される能力を示すグラフである。
図11】bFGF、VEGF、PDGF、及びエンドスタチンの血小板レベルが、腫瘍が休止状態から脱出する直前に変化し、その均衡が腫瘍増殖の刺激物質の方へ向かうことを示す図である。
図12】血小板ががん特異的タンパク質を能動的に捕捉し、アルブミンなどの非特異的タンパク質を能動的に捕捉しないことを示すMS発現マップである。
図13】血小板が血管新生の刺激物質(VEGF、bFGF、PDGF)及び阻害物質(PF4、エンドスタチン)の両方を含有することを示す表である。
図14】生活様式の積極的介入を受けている限局性前立腺癌を有する対象(青色)、及び生活様式を変化させずに経過観察中の限局性前立腺癌を有する対象の血小板の介入後6ヶ月時点でのSELDI-ToF分析を示す。
図15】Aは、それぞれの受容体の阻害が血小板による捕捉を阻害しないことを示すグラフである。Bは、但し、スルフェン(Surfen)によるヘパリン結合の阻害は血小板α顆粒によるタンパク質捕捉の著しい阻害をもたらすことを示すグラフである。
図16】VEGF及びエンドスタチンが別個の血小板α顆粒に存在することを示す免疫蛍光画像である。
図17】血管新生の刺激物質(例えば、VEGF)がα顆粒中のP-セレクチンと局在することを示す免疫蛍光画像である。
図18】エンドスタチンが別個の異なるα顆粒区画に存在し、P-セレクチンではなくフォン・ヴィレブランド因子(VWF)と共局在することを示す免疫蛍光画像である。
図19】創傷治癒におけるタンパク質の連続放出とプロテイナーゼ活性化受容体1(PAR1)及びPAR4の局所濃度勾配をまとめた模式図を含む。
図20】血管内皮腫細胞(EOMA)の表面上のGAGによる増殖因子の捕捉を示すグラフであり、捕捉がヘパリン依存性であり、トロンビンの存在下で増加することが確認される。
図21】血小板により形成された一時的マトリックスから放出された増殖因子に応答したマウス血管内皮腫細胞(EOMA)の増殖を示すグラフである。
図22】血小板が腫瘍活性化時に内皮細胞とタンパク質を交換することができる一時的マトリックスを形成することを示す免疫蛍光画像である。
図23A】PAL1またはPAL2コンジュゲートが血小板に担持されることを示す免疫蛍光画像である。
図23B】Fam-PAL1またはFam-PAL2(上部)及びFam-PAL1-ルシタニブまたはFam-PAL2-ルシタニブ(下部)の血小板への用量反応性担持を示すグラフである。担持血小板は、完全に機能する休止血小板の形態を保持しているように思われる。
図24】PAL1及びPAL2が異なる細胞内局在性を有する、すなわち異なるアルファ顆粒に対する優先性を有することを示す免疫蛍光画像である。
図25A】PAL1(図中の紫色)及びPAL2(図中の淡青色)がコンドロイチン硫酸A(CSA)に異なって結合し得ることを示す構造図である。
図25B】PAL1(図中の紫色)及びPAL2(図中の淡青色)がヘパラン硫酸(HS)に異なって結合し得ることを示す構造図である。
図26】A及びBは、PAL1が小分子上にコンジュゲートされたとき、PAL1がそれぞれの分子を血小板α顆粒へと導くことができることを示す。
図27A】血小板顆粒を分画するステップを示すフローチャートである。
図27B】血小板顆粒を分離するためのスクロース勾配(上部は絵図であり、下部は写真である)を示す画像である。
図27C】顆粒画分のウエスタンブロットである。
図27D】FAM、PF4、MRP4、またはVEGFについて標識された顆粒画分の免疫蛍光画像を含む。
図27E】顆粒画分の各々におけるマーカーPF4、VEGF、及びMRP4を定量化するグラフである。
図27F】ある特定の顆粒画分におけるPALコンジュゲートの局在化を示すグラフである。
図27G図27Eに示す画像のピアソン相関分析(PCA)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本開示は、複数の化合物を担持した単離血小板に関する。第1の化合物は、第1の薬剤及び第1のポリペプチドを含み、第1のポリペプチドは、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む。第2の化合物は、第2の薬剤及び第2のポリペプチドを含み、第2のポリペプチドは、血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のGAGと結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む。第1のアルファ顆粒タイプ及び第2のアルファ顆粒タイプは、異なるGAGの優位性によって特徴づけられる。
【0099】
注目すべきことに、第1のGAG結合ペプチドは、好ましくは、第1のアルファ顆粒タイプ(すなわち、P-セレクチンタイプの顆粒)上に主に見出されるGAGタイプに結合し、第2のGAG結合ペプチドは、好ましくは、第2のアルファ顆粒タイプ(すなわち、vWFタイプの顆粒)上に主に見出されるGAGタイプに結合する。第1の化合物を第1のGAG結合ペプチドで操作し、第2の化合物を第2のGAG結合ペプチドで操作することにより、血小板には、2つの活性剤を2つの異なる顆粒タイプに担持させることができる。重要なことは、各顆粒タイプが、顆粒タイプに関連するトロンビン受容体(すなわち、プロテイナーゼ活性化受容体1(PAR1)及びPAR4)の固有性に部分的に基づいて、別個の放出プロファイルを有していることである。PAR1が高親和性トロンビン受容体であり、最初に(低トロンビン条件で)誘発されてP-セレクチンタイプのα顆粒(ここでは第1のα顆粒タイプと称される)を放出するのに対し、PAR4は低親和性受容体であり、vWF α顆粒(ここでは第2のα顆粒タイプと称される)を放出するのに十分な量のトロンビンが蓄積された場合にのみ誘発される。任意選択で、アルファ顆粒の内容物の放出は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン誘導体(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))との接触に応答して誘導することができ、これらの放出誘導物質は、治療応答を促進するために、必要に応じて薬剤の放出を促進する医薬組成物で対象に一度に投与することができる。
【0100】
本開示の担持血小板は、異なるα顆粒タイプを介して、時間的及び空間的に制御された形でその内容物を放出することができる。トロンビン及びその誘導体の酵素活性に加えて、他の組織常在性プロテアーゼ、例えば、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン誘導体(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))もまた、時間的及び空間的に制御された形で血小板アルファ顆粒の内容物を選択的に放出する。
【0101】
したがって、血小板には、少なくとも、早期放出プロファイルを有する第1のα顆粒タイプに第1の薬物が、及びより遅い放出プロファイルを有する第2のα顆粒タイプに第2の薬物が、担持される。結果として、治療の初期の間に必要な第1の薬剤を放出し、治療の後期の間に必要な第2の薬剤を放出する治療薬を設計することができる。さらに、異なるα顆粒タイプの放出のタイミングは、放出を刺激する医薬組成物(例えば、トロンビン、メタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン誘導体(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))を対象に投与することによって制御することができる。
【0102】
本発明は、複数の薬剤を異なるα顆粒タイプが担持する血小板の創出に部分的に基づく。損傷、病理学的炎症、及び/または血管新生の部位に指向性治療薬を提供する担持血小板。血小板、例えば血小板アルファ顆粒内に捕捉されたそのような薬剤は、一般に、全身投与時に起こり得る分解から保護される。この利点は、損傷、炎症、及び/または血管新生の部位に向かう血小板の生来の能力と相まって、治療有効量の薬剤を標的部位に確実に送達させるのに役立つ。さらに、本発明において有用な血小板は、複数の異なる薬剤を異なるα顆粒タイプが担持することから、異なる薬剤は、空間的及び時間的に制御された方法で血小板から放出される。したがって、本発明は、指向性がありかつ制御された治療薬を、損傷部位(例えば、慢性創傷を治療するため)、病理学的炎症部位(例えば、関節または肺への損傷を治療するため)、及び/または血管新生部位(例えば、がんを治療するため)に提供する。
【0103】
本発明以前は、薬剤をアルファ顆粒中の特定のグリコサミノグリカン(GAG)に固定することによって血小板に内在化させることができること、及び特定のGAG結合ペプチドを使用して内在化プロセスを促進することができることは直感に反するものであり、異なる化合物を異なるα顆粒タイプに特異的に担持させることについては言うまでもなかった。実際、以前は、血小板アルファ顆粒に薬剤を担持させるための既知の方法は存在せず、アルファ顆粒タイプの亜集団に異なる薬剤を担持させることができ、それにより異なる薬剤の空間的及び/または時間的に制御された放出が可能となることは知られていなかった。そのような制御放出は、異なる薬剤の逐次送達を可能にし、これにより、異なる薬剤を同時に投与する場合には観察され得ない相乗的な治療効果がもたらされる可能性がある。
【0104】
本発明は、以下を含むがこれらに限定されない多くの利点を提供する。
(1)原発腫瘍または転移性増殖の部位への薬剤の標的送達により、高用量の薬剤の全身投与の必要性が回避される。したがって、標的部位での治療有効濃度の薬剤を実現するのに必要な薬剤の用量が、より低くなる。
(2)血小板アルファ顆粒中に捕捉された薬剤は、標的外の受容体と結合することができない。したがって、薬剤単独の全身投与に関連する副作用(例えば、毒性)が回避される。
(3)血小板アルファ顆粒中に捕捉された薬剤は、天然のプロセス(例えば、組織プロテアーゼ)による分解から保護される。したがって、この薬剤の半減期は、単独で全身投与された場合の薬剤と比較して延長される。
(4)異なるα顆粒タイプ(それぞれが別個の放出プロファイルを有する)への薬剤の選択的担持により、空間的及び時間的に制御された方法での血小板からの異なる薬剤の放出が可能になる。また、
(5)アルファ顆粒の担持血小板の内容物の放出を、放出誘導物質との接触に応答して誘導することができ、この放出誘導物質は、治療応答を促進するために、必要に応じて薬剤の放出を促進する医薬組成物で対象に一度に投与することができる。
【0105】
注目すべきことに、本開示の担持血小板は、血小板を凝固促進性にする担持プロセスによって活性化されるのではなく、完全に機能する休止血小板のままである。
【0106】
血小板、血小板顆粒、及びグリコサミノグリカン
本発明は、疾患、障害、または損傷を治療するための化合物、医薬組成物、及び方法であって、血小板が天然の最初の応答するものであり、かつ血小板が少なくともその疾患、障害、または損傷の初期症状を改善する、化合物、医薬組成物、及び方法を提供する。例示的な疾患、障害、または損傷としては、がん、関節リウマチ、糖尿病網膜症、肥満、アテローム性動脈硬化、虚血性心疾患及び虚血性四肢疾患、潰瘍性大腸炎、脳卒中、火傷、及び他の創傷が挙げられるが、これらに限定されない。生理学的条件下において、循環血小板は組織の健康状態及び安定性を維持する。
【0107】
創傷及び腫瘍微小環境における血小板の役割に関する新たな情報が明らかとなった(例えば、Klement et al.,“Platelets actively sequester angiogenesis regulators”,Blood.2009;113:2835-42及びKlement et al.,“The Role of Platelets in Angiogenesis.In:Michelson A,editor.Platelets.Third ed.Philadelphia,PA:Mosby Elsevier;2013.p.487-503を参照されたい)。しかしながら、血小板/組織の相互作用の複雑性、ならびに組織増殖及び血管新生の調節における血小板の役割についての理解は遅れている。血小板には、アルファ顆粒、濃染顆粒、及びリソソームを含む、異なる機能を果たす異なるタイプの顆粒が含まれていることが知られている。増殖因子を通常含むアルファ顆粒は、最も主なタイプの顆粒である。Blair and Flaumenhaft,“Platelet alpha-granules:basic biology and clinical correlates”.Blood Reviews.2009,23(4):177-89及びHarrison and Cramer,“Platelet alpha-granules”.Blood Reviews.1993,7(1):52-62を参照されたい。通常、アルファ顆粒のカーゴは血管新生の阻害物質を主に含む(例えば、Peterson et al.,“Normal ranges of angiogenesis regulatory proteins in human plate-lets.”American journal of hematology.2010;85:487-93を参照されたい)。しかしながら、対象ががんを有する場合、血小板のカーゴが変化し、アルファ顆粒は主に刺激物質を担持するようになる(例えば、Peterson et al.,American journal of hematology.2010;85:487-93及びPeterson et al.,“VEGF,PF4 and PDGF are elevated in platelets of colorectal cancer patients.”Angiogenesis.2012;15:265-73を参照されたい)。
【0108】
本発明は、カーゴを異なるアルファ顆粒タイプに担持させることができ、この担持が受容体媒介性ではないという発見に部分的に基づく。代わりに、血小板、特にそのアルファ顆粒へのカーゴの担持は、血小板のアルファ顆粒中のグリコサミノグリカン(GAG)への結合に依存しており、あるタイプのアルファ顆粒はあるGAG及び他のマーカーにより特徴づけられ、別のタイプのアルファ顆粒は第2のGAG及び他のマーカーにより特徴づけられる。血小板が非特異的GAG阻害剤(すなわち、スルフェン)と接触すると、量が減少したカーゴが血小板に担持される。
【0109】
本発明はさらに、血小板のカーゴが機能別に組織化され、血管新生の刺激物質及び阻害物質が血小板アルファ顆粒の別個のサブセットに取り込まれるという発見に部分的に基づいており、この区別は、少なくともコンドロイチン硫酸またはヘパラン硫酸、さらにセルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに対するカーゴの結合親和性に基づいている。さらに、Pセレクチンにより規定されるアルファ顆粒のサブセットは、GAGに対する親和性が比較的弱い(すなわち、Kdが比較的高い)GAG結合化合物を引き寄せ、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)により規定されるアルファ顆粒のサブセットは、コンドロイチン硫酸と強い親和性(すなわち、比較的高いKd)で相互作用するタンパク質を収容する。
【0110】
さらに、本発明は、アルファ顆粒のカーゴが凝集及び凝固の際に一緒に放出されないという驚くべき発見に部分的に基づく。代わりに、血管新生増殖刺激物質または阻害物質は、トロンビン(及び/またはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、もしくはプラスミン(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)))の局所レベルなどの特定の刺激に応答して、空間的及び時間的に制御された形で放出される。トロンビンを例として用いると、P-セレクチンで標識されたアルファ顆粒の初期応答型サブセットは、血管損傷の直後(例えば、低トロンビン状態)、及びPAR1(高親和性トロンビン受容体)が結合されたときにその内容物を放出する。対照的に、vWF因子で標識されたアルファ顆粒の後期応答型サブセットは、PAR4(すなわち、低親和性トロンビン受容体)が結合したときにその内容物を放出する。
【0111】
したがって、本発明は、血管の内皮層の裂け目を標的とする血小板の生来の能力を利用する。がんという状況では、これにより血小板のカーゴを腫瘍部位に送達することが可能となる。重要なことに、本開示によれば、血小板の異なるアルファ顆粒には事前に2つ以上の薬剤が担持されており、これらの薬剤は、腫瘍部位で形成された一時的マトリックスに特異的に送達される。重要なことに、本発明では、異なるアルファ顆粒タイプに担持された2つのさらなる薬剤は、綿密な(すなわち時間的及び空間的に制御された)酵素作用により、組織プロテアーゼによって一時的マトリックスから放出される。
【0112】
血小板には、ヘパラン硫酸及びコンドロイチン硫酸の2つの主要なGAGが存在する。
【0113】
ヘパラン硫酸(HS)は、グルコサミンに1→4結合したウロン酸の直鎖状コポリマーであるが、可変性の高い構造を有する。HSには相当量のl-イズロン酸が存在し得るが、d-グルクロン酸が優勢である。ヘパリンと比較して、HSはスルホ基における置換がはるかに少ない。
【0114】
ヘパリンは、1→4結合ピラノシルウロン酸及び2-アミノ-2-デオキシグルコピラノース(グルコサミン)残基の繰り返し単位からなる、極めて不均一な直鎖状の多分散多糖である。ウロン酸残基は、通常、90%のl-イドピラノシルウロン酸(l-イズロン酸)及び10%のd-グルコピラノシルウロン酸(d-グルクロン酸)からなる。グルコサミン残基のアミノ基は、アセチル基もしくはスルホ基で置換されてもよく、または非置換であってもよい。グルコサミン残基の3位及び6位は、O-スルホ基で置換されてもよく、または非置換であってもよい。l-イズロン酸またはd-グルクロン酸のいずれかであり得るウロン酸は、2-O-スルホ基も含有し得る。
【0115】
大部分のヘパリン結合タンパク質は、ヘパリンとヘパラン硫酸の両方と結合する。両方とも、多数のタンパク質を幅広い可能な結合部位に結合させる不均一な糖配列を有する多分散多糖である。ヘパリンは主に細胞内に存在するが、HSプロテオグリカン(HSPG)は多くの細胞表面に局在し、例えば、増殖因子及びタンパク質リガンドの安定化により、細胞外マトリックス(ECM)の機能に寄与する。
【0116】
コンドロイチン硫酸(CS)は、以下の二糖の反復単位のランダム配列の直鎖状ポリマーである:2-アセチルアミノ-2-デオキシ-4-0-サルフェート-3-0-~-D-グルコピラヌロシル-D-ガラクトース、2-アセチルアミノ-2-デオキシ-6-0-サルフェート-3-0-~-D-グルコピラヌロシル-D-ガラクトース、2-アセチルアミノ-2-デオキシ-4,6-0-ジサルフェート-3-0-~-D-グルコピラヌロシル-D-ガラクトース、及び2-アセチルアミノ-2-デオキシ-6-0-サルフェート-3-0-~-2’-0-サルフェート-D-グルコピラヌロシル-D-ガラクトース。各一硫酸化二糖単位の分子量は500~600g/molであり、総質量は5~50kDaである。コンドロイチン硫酸の分子の体積は、多数の負電荷を有するため、脱水固体中よりも溶液中ではるかに大きい。溶液中では、可変分岐部の負電荷が互いに反発し、このことが分子を伸長したコンフォメーションにさせる。そのため、CS分子には多数のリガンド結合部位が存在する。
【0117】
新規の非天然GAG結合ペプチドは、血小板のアルファ顆粒へのカーゴの担持に不可欠であるため、本開示の化合物及び方法において有用である。本開示のGAG結合ペプチドは、化学的もしくは酵素的に(直接もしくは間接的に)薬剤に連結されるか、または薬剤及び当該結合ペプチドを含有する融合タンパク質を産生するように遺伝的に発現される。GAG結合ペプチド及びカップリングされた薬剤は、当該新規化合物または融合産物中でそれらの機能を保持する。したがって、新規化合物または融合産物を、血小板の特定のアルファ顆粒タイプに選択的に担持させることができる。
【0118】
注目すべきことに、本開示の担持血小板は、血小板を凝固促進性にする担持プロセスによって活性化されるのではなく、完全に機能する休止血小板のままである。
【0119】
グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチド
本開示のグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドは、GAG鎖上に空間的に画定された負に帯電したスルホ基またはカルボキシル基とイオン対を形成する、正に帯電した塩基性アミノ酸の存在を特徴とする。例えば、ヘパラン硫酸(HS)は、スルホ基及びカルボキシル基により提供される二糖1つ当たり平均2つの負電荷を有する。したがって、水素結合及び疎水性相互作用などの一部の他の非静電相互作用も複合体の安定性に寄与し得るが、HSとタンパク質間の最も一般的なタイプの相互作用はイオン性である。GAGの高度に陰イオン性の性質は、非特異的結合をもたらすと考えられていた。しかしながら、血小板のアルファ顆粒では、特定のアルファ顆粒サブセットにおけるHSまたはコンドロイチン硫酸(CS)へのGAG結合ペプチドの結合は、高い特異性で生じる。この相互作用は、GAG結合親和性とGAG結合ペプチドとを適合させることによって促進される。GAG-ペプチド相互作用は、ポリマーの多糖配列に沿ったスルホ基及びカルボキシル基の規定されたパターン及び方向と、複合体の適切な親和性及び特異性を確保するためのGAG結合ペプチドの塩基性アミノ酸の正確なパターンとに部分的に依存する。
【0120】
静電相互作用は、GAG-ペプチド相互作用において主要な役割を果たしており、GAG結合ペプチドの結合配列内のアルギニン及びリジンなどの塩基性アミノ酸の位置が関係している。GAG結合部位に特定の方法で配置された塩基性アミノ酸のコンセンサス配列があるか否かを判定するために、多数の研究が行われてきた。例えば、4つのタンパク質、すなわちアポリポタンパク質B、アポリポタンパク質E、ビトロネクチン、及び血小板第4因子のヘパリン結合部位の比較により、これらの領域は、アミノ酸の2つのコンセンサス配列、すなわちXBBXBX及びXBBBXXBX(ここで、Bは塩基性残基であり、Xはハイドロパシー(hydropathic)残基である)を特徴とすることが示された。分子モデリング研究により、βストランドコンフォメーションでモデル化された配列XBBXBXが、塩基性アミノ酸をβストランドの片面に配向させ、ハイドロパシー残基をタンパク質コアへと向け戻させることが示された。同様に、配列XBBBXXBXがα-ヘリックスへとフォールディングされている場合、塩基性アミノ酸はヘリックスの片側に表れる。一部のヘパリン結合タンパク質にはこのコンセンサス配列が含まれているが、含まれていないものもある。このように、塩基性残基が空間的に近接しているが、必ずしも一次アミノ酸配列中で近接しているとは限らない構造モチーフもまた、ヘパリンと結合し得る。
【0121】
ヘパリン結合部位には、1つ、2つ、または3つの塩基性アミノ酸のクラスター(XBnX(式中、n=1、2、または3))が含まれることが多い。このようなクラスターと1つまたは2つの非塩基性残基との間隔を空けた配置(BXmB(式中、m=1または2))は、天然タンパク質で観察される。これは、ヘパリン結合タンパク質が通常、生体系でHSと結合するという観察結果と一致する。HSの電荷密度が低いため、最適なタンパク質結合には、間隔を空けた塩基性アミノ酸のクラスターが関与し得る。アルギニン及びリジンは、ヘパリン結合タンパク質及びHS結合タンパク質中で最も多い残基である。両方のアミノ酸は生理的pHで正電荷を有するが、アルギニンはヘパリンと約2.5倍密接に結合する。アルギニンは、スルホ基とのより安定した水素結合及びより強力な静電相互作用を形成する。非塩基性残基もまた、ヘパリン-タンパク質相互作用に重要な役割を果たす可能性がある。それらの中で、セリン及びグリシンは、ヘパリン結合ペプチド中で最も多い非塩基性残基であることが判明している。両方とも小さな側鎖を有しており、GAGとのペプチド相互作用に最小限の立体的制約及び良好な柔軟性をもたらす。
【0122】
本発明は、新規の非天然グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドに部分的に基づく。本開示のGAG結合ペプチドは、血小板のアルファ顆粒中のGAGと結合することができる。実施形態では、GAG結合ペプチドは、静電相互作用を通じてGAGと結合する。
【0123】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸(CS)及び/またはヘパラン硫酸(HS)に結合する。実施形態では、GAG結合ペプチドは、CSに優先的に結合する。実施形態では、GAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合する。
【0124】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合し、第2のGAG結合ペプチドは、ヘパラン硫酸(HS)に優先的に結合する。実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合し、ヘパラン硫酸(HS)には好ましくは結合しない。
【0125】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、ヘパラン硫酸(HS)、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに結合する。実施形態では、GAG結合ペプチドは、ヘパラン硫酸(HS)、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合しない。実施形態では、GAG結合ペプチドは、HS、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに結合しないか、検出可能に結合しないか、実質的に結合しないか、または低い親和性で結合する。
【0126】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、約1NのNaClに曝露された場合、CS含有カラムに結合されたままである。実施形態では、GAG結合ペプチドは、約2NのNaClに曝露された場合、CS含有カラムに結合されたままである。実施形態では、GAG結合ペプチドは、約3NのNaClに曝露された場合、CS含有カラムに結合されない。
【0127】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、約0.001N~約0.01NのNaClに曝露された場合、HS含有カラム、セルグリシン含有カラム、パールカン含有カラム、デルマタン硫酸含有カラム、ケラタン硫酸含有カラム、及び/またはGPIIb/IIIa含有カラムに結合されない。実施形態では、GAG結合ペプチドは、少なくとも約0.1NのNaClに曝露された場合、HS含有カラム、セルグリシン含有カラム、パールカン含有カラム、デルマタン硫酸含有カラム、ケラタン硫酸含有カラム、及び/またはGPIIb/IIIa含有カラムに結合されない。実施形態では、GAG結合ペプチドは、少なくとも約1NのNaClに曝露された場合、HS含有カラム、セルグリシン含有カラム、パールカン含有カラム、デルマタン硫酸含有カラム、ケラタン硫酸含有カラム、及び/またはGPIIb/IIIa含有カラムに結合されない。
【0128】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、約8アミノ酸長~約14アミノ酸長である。
【0129】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む。
【0130】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0131】
例示的なGAG結合ペプチドは、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含む:ERRIWFPYRRF(配列番号1)、RFRWPYRIREF(配列番号2)、ARRIWFPYRRF(配列番号3)、EARIWFPYRRF(配列番号4)、ERAIWFPYRRF(配列番号5)、ERRAWFPYRRF(配列番号6)、ERRIAFPYRRF(配列番号7)、ERRIWAPYRRF(配列番号8)、ERRIWFAYRRF(配列番号9)、ERRIWFPARRF(配列番号10)、ERRIWFPYARF(配列番号11)、ERRIWFPYRAF(配列番号12)、及びERRIWFPYRRA(配列番号13)。
【0132】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約70%同一であるか、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約80%同一であるか、または配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0133】
理論に束縛されることを望まないが、塩基性残基(例えば、アルギニン)は、GAG結合ペプチドの特性を規定するのに重要であり、ハイドロパシー残基は安定化を提供するように思われる。
【0134】
GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、または9位に荷電アミノ酸を含み得る。
【0135】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。例として、GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び4位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位、4位、及び7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び7位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び4位及び9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;ならびにこれらの間の任意の組み合わせを含む。GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にプロリンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にアルギニンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にイソロイシンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、4位、7位、及び9位にアルギニンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、4位及び7位にアルギニン、ならびに9位にイソロイシンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、4位にアルギニン、及び9位にイソロイシンを含み得るか;またはGAG結合ペプチドは、4位にアルギニン及び9位にプロリンを含み得る。1位、4位、7位、及び/または9位のプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンの任意の組み合わせが、本開示によって包含される。
【0136】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸を含む。実施形態では、GAG結合ペプチドは、11個のアミノ酸を含む。実施形態では、GAG結合ペプチドは、11個のアミノ酸からなる。
【0137】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1または配列番号2と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0138】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列を含む。
【0139】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0140】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列からなる。
【0141】
本発明は、本明細書に開示されるGAG結合ペプチドのアミノ酸配列に、例えば、欠失、変異、挿入、または翻訳後修飾を含めることによりバリアントGAG結合ペプチドを生成することによって、GAG結合ペプチドを最適化するための方法を提供する。
【0142】
バリアントは、バリアントGAG結合ペプチドがその機能を保持している限り、1つのアミノ酸位置で配列番号1~配列番号13のGAG結合ペプチドとは異なり得る。
【0143】
バリアントは、バリアントGAG結合ペプチドがその機能を保持している限り、2つのアミノ酸位置で配列番号1~配列番号13のGAG結合ペプチドとは異なり得る。
【0144】
バリアントは、バリアントGAG結合ペプチドがその機能を保持している限り、3つのアミノ酸位置で配列番号1~配列番号13のGAG結合ペプチドとは異なり得る。
【0145】
バリアントは、バリアントGAG結合ペプチドがその機能を保持している限り、4つのアミノ酸位置で配列番号1~配列番号13のGAG結合ペプチドとは異なり得る。
【0146】
バリアントは、バリアントGAG結合ペプチドがその機能を保持している限り、5つのアミノ酸位置で配列番号1~配列番号13のGAG結合ペプチドとは異なり得る。
【0147】
バリアントは、バリアントGAG結合ペプチドがその機能を保持している限り、5つを超えるアミノ酸位置で配列番号1~配列番号13のGAG結合ペプチドとは異なり得る。
【0148】
実施形態では、アミノ酸差異は、保存的置換及び/または非保存的置換を含み得る。「保存的置換」は、例えば、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解性、疎水性、親水性、及び/または両親媒性の性質の類似性に基づいてなされ得る。20個の天然に存在するアミノ酸は、次の6つの標準アミノ酸グループ、すなわち(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;Asn、Gln、(3)酸性:Asp、Glu、(4)塩基性:His、Lys、Arg、(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Pheに分類され得る。本明細書で使用される場合、「保存的置換」は、あるアミノ酸の、上記の6つの標準アミノ酸グループの同じグループに記載された別のアミノ酸による交換として定義される。例えば、GluによるAspの交換は、そのように修飾されたポリペプチドにおいて1つの負電荷を保持する。さらに、グリシン及びプロリンは、α-ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づいて互いに置換され得る。本明細書で使用される場合、「非保存的置換」は、あるアミノ酸の、上記の6つの標準アミノ酸グループ(1)~(6)の異なるグループに記載された別のアミノ酸による交換として定義される。GAG結合ペプチドは、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、またはグリコシル化などの化学的変化を含めることにより修飾され得る。
【0149】
したがって、本開示は、種々のグリコサミノグリカンに対するGAG結合ペプチドを特徴づけ、最適化する(例えば、親和性を増加させる)ための方法を提供する。本開示により提供される最適化されたGAG結合ペプチドは、血小板のアルファ顆粒に存在するグリコサミノグリカンを対象とし得る。血小板のアルファ顆粒に存在する例示的なグリコサミノグリカンとしては、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及びGPIIb/IIIaが挙げられる。最適化されたGAG結合ペプチドのいずれをも本開示の組成物に含めることができ、組成物のいずれをも、例えば、医薬組成物に含めるために、及び/または疾患または障害を治療するために、血小板に担持させることができる。
【0150】
化合物及び薬剤
本明細書に開示されるように、異なるアルファ顆粒タイプの血小板は、選択的かつ能動的に(すなわち、濃度勾配に対抗して)、血管新生調節タンパク質、増殖調節タンパク質、及び炎症調節タンパク質を捕捉することができる。本開示は、タンパク質が血小板によって取り込まれ、グリコサミノグリカン(GAG)(主にヘパラン硫酸(HS)及びコンドロイチン硫酸(CS))に対する親和性に基づいてアルファ顆粒のサブセットに分離されるという発見に基づく。これらのGAGの長い直鎖状で負に帯電した鎖は、アルファ顆粒に構造上の支持を与えるのみならず、アルファ顆粒の機能的なサブセットも説明する。血小板に存在する2つの主要なGAG(すなわち、HS及びCS)は、個々の鎖に見られる二糖の数が主に異なる。ヘパラン硫酸は小型(15~30個の二糖/側鎖)であるのに対し、コンドロイチン硫酸は多くの結合部位を有し、側鎖あたり最大250個の二糖を有する。両方とも、軟骨及び骨の構造及び完全性を維持するように機能するヒアルロン酸(最大50,000個の二糖/GAG側鎖)などの大型で剛性のGAGとは異なる。血小板中のGAGの多様性はそれらの機能にとって極めて重要であり、ヘパラン硫酸の比較的短い側鎖及び比較的弱い結合によりP-セレクチン顆粒が早期に放出される一方で、比較的緻密で長い鎖結合によりvWF顆粒が遅く放出される。これらの特徴は、化合物の連続放出のために本発明において利用される。
【0151】
本発明は、少なくとも、また非常に高い親和性でCSと結合し、かつ少なくとも中程度の親和性でHSと結合する、天然に存在しない新規の血小板固定型グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドを含む。GAG結合ペプチドは、本開示の化合物中の薬剤に連結される場合、血小板のアルファ顆粒への薬剤の「担持」を促進する。血小板は絶えず循環し、異常な内皮部位に接着することから、本開示の化合物は様々な病態に広く適用可能である。
【0152】
本開示の一態様は、例えば疾患または障害を治療するための、組成物である。本組成物は、第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、第1の化合物と、第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、第2のポリペプチドが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、第2の化合物と、を含む。
【0153】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合し、第2のGAG結合ペプチドは、ヘパラン硫酸(HS)に優先的に結合する。
【0154】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合し、ヘパラン硫酸(HS)には好ましくは結合しない。
【0155】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプは、P-セレクチン関連顆粒であり、第2のアルファ顆粒タイプは、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)関連顆粒である。
【0156】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、高親和性トロンビン受容体PAR1を介して放出され、第2のアルファ顆粒タイプの内容物は、低親和性トロンビン受容体PAR4を介して放出され、任意選択で、アルファ顆粒の内容物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン誘導体(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))との接触に応答して放出され得る。
【0157】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物の放出をもたらすのに必要なトロンビン濃度よりも低いトロンビン濃度で放出される。
【0158】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物が放出される前に放出される。
【0159】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、各々約8アミノ酸長~約14アミノ酸長である。
【0160】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの一方または両方は、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む。
【0161】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの一方または両方は、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0162】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0163】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0164】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0165】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、または9位に荷電アミノ酸を含む。
【0166】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0167】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、少なくとも10個のアミノ酸を含む。
【0168】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び/または第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸を含む。
【0169】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸からなる。
【0170】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列を含む。
【0171】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなっていてもよく、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなっていてもよい。
【0172】
実施形態では、第1のポリペプチドは、第1のGAG結合ペプチドからなり、第2のポリペプチドは、第2のGAG結合ペプチドからなる。
【0173】
実施形態では、第1のポリペプチドのN末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのN末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0174】
実施形態では、第1のポリペプチドのC末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのC末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0175】
本明細書に開示される任意の態様または実施形態では、薬剤(第1、第2、または第3の)及びGAG結合ペプチド(第1、第2、または第3の)は、直接連結され得るか、またはそれらは、リンカーと呼ばれる部分を介して連結され得る。リンカーは、共有結合、または薬剤をGAG結合ペプチドに共有結合させる原子の鎖を含む、化学的部分を指す。リンカーには、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンなどの二価基、-(CR2)nO(CR2)n-などの部分、アルキルオキシ(例えば、ポリエチレンオキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメチレンオキシ)及びアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))の繰り返し単位のポリマー、ならびにコハク酸エステル、スクシンアミド、ジグリコール酸エステル、マロン酸エステル、及びカプロアミドを含む二酸エステル及びアミドが含まれる。実施形態では、リンカーは、アミノ酸鎖を含む。実施形態では、アミノ酸鎖のリンカーは、約500アミノ酸長未満、約450アミノ酸長未満、約400アミノ酸長未満、約350アミノ酸長未満、約300アミノ酸長未満、約250アミノ酸長未満、約200アミノ酸長未満、約150アミノ酸長未満、または約100アミノ酸長未満である。例えば、アミノ酸鎖のリンカーは、約100、約95、約90、約85、約80、約75、約70、約65、約60、約55、約50、約45、約40、約35、約30、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、または約2アミノ酸長未満であり得る。実施形態では、アミノ酸鎖のリンカーは、約15アミノ酸~約3アミノ酸、例えば、約10~5アミノ酸である。
【0176】
実施形態では、第1の薬剤は、第1のリンカーを介して第1のポリペプチドに間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は、第2のリンカーを介して第2のポリペプチドに間接的に連結されている。場合によっては、第1のリンカー及び/または第2は、1つ以上の原子をそれぞれ含む。第1のリンカー及び/または第2は、繰り返し単位のポリマーをそれぞれ含み得る。第1のリンカー及び/または第2のリンカーは、アミノ酸鎖をそれぞれ含み得る。
【0177】
実施形態では、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接連結されている。
【0178】
実施形態では、マレイミド反応、スクシンイミジルエステル反応、酵素反応、またはタンパク質の構造もしくは活性に影響を及ぼさない別のコンジュゲーション系を使用して、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されている。
【0179】
実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子を含む。場合によっては、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、抗体または蛍光部分を含む。
【0180】
本発明において有用な例示的な抗体(またはその断片)としては、3F8、8H9、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アビツズマブ、アブレゼキマブ(Abrezekimab)、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アファセビクマブ、アフェリモマブ、アラシズマブペゴル、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンテテート、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトックス、アンデカリキシマブ、アネツマブラブタンシン、アニフロルマブ、アンルキンズマブ(IMA-638)、アポリズマブ、アプルツマブイクサドチン(Aprutumab ixadotin)、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチドルトクスマブ(Atidortoxumab)、アチヌマブ、アトロリムマブ、アベルマブ、アジンツキシズマブベドチン(Azintuxizumab vedotin)、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、BCD-100、ベクツモマブ、ベゲロマブ、ベランタマブマフォドチン、ベリムマブ、ベマリツズマブ、ベンラリズマブ、ベルリマトクスマブ(Berlimatoxumab)、ベルメキマブ、ベルサンリマブ(Bersanlimab)、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビルタミマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブレセルマブ、ブリナツモマブ、ブロンツベトマブ(Blontuvetmab)、ブロソズマブ、BMS 936559、ボコシズマブ、ブラジクマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチクツズマブ、ブロスマブ、カビラリズマブ、カミダンルマブテシリン、カムレリズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カロツキシマブ、カツマキソマブ、cBR96-ドキソルビシンイムノコンジュゲート、セデリズマブ、セミプリマブ、セルグツズマブアムナロイキン、セルトリズマブペゴル、セトレリマブ、セツキシマブ、シビサタマブ、サームツズマブ(Cirmtuzumab)、シタツズマブボガトックス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コドリツズマブ、コフェツズマブペリドチン、コルツキシマブラブタンシン、コナツムマブ、コンシズマブ、コスフロビキシマブ、CR6261、クレネズマブ、クリザンリズマブ、クロテデュマブ、クサツズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブペゴル、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニンツズマブマフォドチン、デノスマブ、デパツキシズマブマフォドチン、デルロツキシマブビオチン、デツモマブ、デザミズマブ、ジヌツキシマブ、ジリダブマブ(Diridavumab)、ドマグロズマブ、ドルリモマブアリトックス、ドスタルリマブ、ドロジツマブ、DS-8201、デュリゴツズマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、ドゥシギツマブ、ドゥボルツキシズマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルデルマブ、エレザヌマブ、エルゲムツマブ(Elgemtumab)、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクツズマブ、エマパルマブ、エミベツズマブ、エミシズマブ、エナポタマブベドチン、エナバツズマブ、エンホルツマブベドチン、エンリモマブペゴル、エノブリツズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エプチネズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エチギリマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ(Exbivirumab)、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファリシマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィバツズマブ(Fibatuzumab)、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ(Firivumab)、フランボツマブ、フレチクマブ、フロテツズマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレマネズマブ、フレソリムマブ、フロボキマブ、フルネベトマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガルカネズマブ、ガリキシマブ、ガンコタマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガチポツズマブ、ガビリモマブ、ゲジブマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギルベトマブ(Gilvetmab)、ジムシルマブ、ジレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、ゴスラネマブ、グセルクマブ、イアナルマブ、イバリズマブ、IBI308、イブリツモマブチウキセタン及び90Y-イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イダルシズマブ、イファボツズマブ、イゴボマブ、イラダツズマブベドチン(Iladatuzumab vedotin)、IMAB362、イマルマブ、イマプレリマブ(Imaprelimab)、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インデュサツマブベドチン、イネビリズマブ、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イオマブ-B(Iomab-B)、イピリムマブ、イラツムマブ、イサツキシマブ、イスカリマブ、イスチラツマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラクノツズマブ(Lacnotuzumab)、ラジラツズマブベドチン、ランパリズマブ、ラナデルマブ、ランドグロズマブ、ラプリツキシマブエムタンシン(Laprituximab emtansine)、ラルカビキシマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンダリズマブ(Lendalizumab)、レンベルビマブ(Lenvervimab)、レンジルマブ、レルデリムマブ、レロンリマブ、レソファブマブ、レトリズマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リファスツズマブベドチン、リゲリズマブ、リロトマブサテトラキセタン、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロンカスツキシマブテシリン、ロルボツズマブメルタンシン、ロサツキシズマブベドチン(Losatuxizumab vedotin)、ルカツムマブ、ルリズマブペゴル、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、ルパルツマブアマドチン(Lupartumab amadotin)、ルチキズマブ(Lutikizumab)、マパツムマブ、マルゲツキシマブ、マルスタシマブ、マスリモマブ、マツズマブ、マブリリムマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミリキズマブ、ミルベツキシマブソラブタンシン、ミツモマブ、MK-3475、モドツキシマブ、モガムリズマブ、モナリズマブ、モロリムマブ、モスネツズマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、MPDL328OA、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトックス(Nacolomab tafenatox)、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナラツキシマブエムタンシン、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ナビシキシズマブ、ナビブマブ(Navivumab)、ナキシタマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、NEOD001、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ネタキマブ、ニモツズマブ、ニルセビマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オレクルマブ、オレンダリズマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オムブルタマブ、OMS721、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オンバチリマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ(Orticumab)、オテリキシズマブ、オチリマブ、オトレルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パムレブルマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキシズマブ(Pasotuxizumab)、パテクリズマブ、パトリツマブ、PDR001、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、プロザリズマブ、ポガリズマブ(Pogalizumab)、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、ポルガビキシマブ、プラシネズマブ、プレザリズマブ(Prezalizumab)、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ(Pritoxaximab)、プリツムマブ、PRO 140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンシズマブ、ラムシルマブ、ラネベトマブ、ラニビズマブ、ラバガリマブ、ラブリズマブ、ラキシバクマブ、レファネズマブ、レガビルマブ、レラトリマブ、レムトルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リヌクマブ、リサンキズマブ、リツキシマブ、リババズマブペゴル(Rivabazumab pegol)、Rmab、ロバツムマブ、ロレデュマブ(Roledumab)、ロミルキマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロスマンツズマブ、ロバルピツズマブテシリン、ロベリズマブ、ロザノリキシズマブ、ルプリズマブ、SA237、サシツズマブゴビテカン、サマリズマブ、サムロタマブベドチン(Samrotamab vedotin)、サリルマブ、サトラリズマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリクレルマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ(Setoxaximab)、セトルスマブ、セビルマブ、SGN-CD19A、SHP647、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルトラツマブベドチン(Sirtratumab vedotin)、シルクマブ、ソフィツズマブベドチン、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スパルタリズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スプタブマブ、スチムリマブ、スビズマブ、スブラトクスマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タラコツズマブ、タリズマブ、タムツベトマブ(Tamtuvetmab)、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、タレクツマブ、タボリマブ、テフィバズマブ、テリモマブアリトックス、テリソツズマブベドチン、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テポジタマブ(Tepoditamab)、テプロツムマブ、テシドルマブ、テツロマブ(Tetulomab)、テゼペルマブ、TGN1412、チブリズマブ、チガツズマブ、チルドラキズマブ、チミグツズマブ、チモルマブ、チラゴツマブ(Tiragotumab)、チスレリズマブ、チソツマブベドチン、TNX-650、トシリズマブ、トムゾツキシマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ(Tosatoxumab)、トシツモマブ及び131I-トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ウトミルマブ、バダスツキシマブタリリン、バナリマブ(Vanalimab)、バンドルツズマブベドチン、バンチクツマブ、バヌシズマブ、バパリキシマブ、バリサクマブ、バルリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビシリズマブ、ボバリリズマブ、ボロシキシマブ、ボンレロリズマブ、ボプラテリマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ブナキズマブ(Vunakizumab)、キセンツズマブ、XMAB-5574、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ(Zatuximab)、ゼノクツズマブ、ジラリムマブ、ゾルベツキシマブ(IMAB362、クローディキシマブ)、ならびにゾリモマブアリトックスが挙げられる。
【0181】
規制当局の承認を満たしているかまたは承認待ちであり、本発明において有用な例示的な抗体(またはその断片)としては、ムロモナブ-CD3(ORTHOCLONE OKT3)、エファリズマブ(RAPTIVA)、トシツモマブ-I131(BEXXAR)、ネバクマブ(CENTOXIN)、エドレコロマブ(PANOREX)、カツマキソマブ(REMOVAB)、ダクリズマブ(ZINBRYTA;ZENAPAX)、アブシキシマブ(REOPRO)、リツキシマブ(MABTHERA、RITUXAN)、バシリキシマブ(SIMULECT)、パリビズマブ(SYNAGIS)、インフリキシマブ(REMICADE)、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、アダリムマブ(HUMIRA)、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN)、オマリズマブ(XOLAIR)、セツキシマブ(ERBITUX)、ベバシズマブ(AVASTIN)、ナタリズマブ(TYSABRI)、パニツムマブ(VECTIBIX)、ラニビズマブ(LUCENTIS)、エクリズマブ(SOLIRIS)、セルトリズマブペゴル(CIMZIA)、ウステキヌマブ(STELARA)、カナキヌマブ(ILARIS)、ゴリムマブ(SIMPONI)、オファツムマブ(ARZERRA)、トシリズマブ(ROACTEMRA、ACTEMRA)、デノスマブ(PROLIA)、ベリムマブ(BENLYSTA)、イピリムマブ(YERVOY)、ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS)、ペルツズマブ(PERJETA)、アドトラスツズマブエムタンシン(KADCYLA)、ラキシバクマブ)、オビヌツズマブ(GAZYVA、GAZYVARO)、シルツキシマブ(SYLVANT)、ラムシルマブ(CYRAMZA)、ベドリズマブ(ENTYVIO)、ニボルマブ(OPDIVO)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA)、ブリナツモマブ(BLINCYTO)、アレムツズマブ(LEMTRADA;MABCAMPATH、CAMPATH-1H)、エボロクマブ(REPATHA)、イダルシズマブ(PRAXBIND)、ネシツムマブ(PORTRAZZA)、ジヌツキシマブ(UNITUXIN)、セクキヌマブ(COSENTYX)、メポリズマブ(NUCALA)、アリロクマブ(PRALUENT)、ダラツムマブ(DARZALEX)、エロツズマブ(EMPLICITI)、イキセキズマブ(TALTZ)、レスリズマブ(CINQAERO、CINQAIR)、オララツマブ(LARTRUVO)、ベズロトクスマブ(ZINPLAVA)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ)、オビルトキサキシマブ(ANTHIM)、ブロダルマブ(SILIQ、LUMICEF)、デュピルマブ(DUPIXENT)、イノツズマブオゾガマイシン(BESPONSA)、グセルクマブ(TREMFYA)、サリルマブ(KEVZARA)、アベルマブ(BAVENCIO)、エミシズマブ(HEMLIBRA)、オクレリズマブ(OCREVUS)、ベンラリズマブ(FASENRA)、デュルバルマブ(IMFINZI)、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG)、エレヌマブ、エレヌマブ-aooe(AIMOVIG)、ガルカネズマブ、ガルカネズマブ-gnlm(EMGALITY)、ブロスマブ、ブロスマブ-twza(CRYSVITA)、ラナデルマブ、ラナデルマブ-flyo(TAKHZYRO)、モガムリズマブ、モガムリズマブ-kpkc(POTELIGEO)、チルドラキズマブ;チルドラキズマブ-asmn(ILUMYA)、フレマネズマブ、フレマネズマブ-vfrm(AJOVY)、ラブリズマブ、ラブリズマブ-cwvz(ULTOMIRIS)、セミプリマブ、セミプリマブ-rwlc(LIBTAYO)、イバリズマブ、イバリズマブ-uiyk(TROGARZO)、エマパルマブ、エマパルマブ-lzsg(GAMIFANT)、モキセツモマブパスドトクス、モキセツモマブパスドトクス-tdfk(LUMOXITI)、カプラシズマブ、カプラシズマブ-yhdp(CABLIVI)、リサンキズマブ、リサンキズマブ-rzaa(SKYRIZI)、ポラツズマブベドチン、ポラツズマブベドチン-piiq(POLIVY)、ロモソズマブ、ロモソズマブ-aqqg(EVENITY)、ブロルシズマブ、ブロルシズマブ-dbll(BEOVU)、クリザンリズマブ;クリザンリズマブ-tmca(ADAKVEO)、エンホルツマブベドチン、エンホルツマブベドチン-ejfv(PADCEV)、[fam-]トラスツズマブデルクステカン、fam-トラスツズマブデルクステカン-nxki(ENHERTU)、テプロツムマブ、テプロツムマブ-trbw(TEPEZZA)、エプチネズマブ、エプチネズマブ-jjmr(VYEPTI)、イサツキシマブ、イサツキシマブ-irfc(SARCLISA)、サシツズマブゴビテカン;サシツズマブゴビテカン-hziy(TRODELVY)、イネビリズマブ;イネビリズマブ-cdon(UPLIZNA)、サトラリズマブ(ENSPRYNG)、ドスタルリマブ(TSR-042)、スチムリマブ(BIVV009)、レロンリマブ、ナルソプリマブ、タファシタマブ、REGNEB3、ナキシタマブ、オポルツズマブモナトクス、ベランタマブマフォドチン、マルゲツキシマブ、タネズマブ、テプリズマブ、アデュカヌマブ、エビナクマブ、トラロキヌマブ、及びオムブルタマブが挙げられる。
【0182】
抗体の断片は、少なくとも、上記の抗体の抗原結合ドメインを含む。実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、抗体断片、scFv、Fv、Fab、(Fab’)2、単一ドメイン抗体(SDAB)、VHもしくはVLドメイン、またはラクダVHHドメイン、例えば、ヒトscFv、ヒトFv、ヒトFab、ヒト(Fab’)2、ヒト単一ドメイン抗体(SDAB)、またはヒトVHもしくはVLドメイン、あるいはヒト化scFv、ヒト化Fv、ヒト化Fab、ヒト化(Fab’)2、ヒト化単一ドメイン抗体(SDAB)、またはヒト化VHもしくはVLドメインである。
【0183】
本発明において有用である例示的な化学療法剤としては、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-N-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、3’、4’-ジデヒドロ-4’-デオキシ-8’-ノルビン-カロイコブラスチン、5-FU(フルオロウラシル)、アベマシクリブ、酢酸アビラテロン、アビトレキサート(Abitrexate)(メトトレキサート)、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、アカラブルチニブ、AC-T、ADE、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、アファチニブジマレイン酸塩、アフィニトール(エベロリムス)、アフィニトールジフスペルツ(Afinitor Difsperz)(エベロリムス)、アキンゼオ(ネツピタント及びパロノセトロン)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アリムタ(PEMETREXED)、アリコパ(コパンリシブ塩酸塩)、アルケラン(メルファラン)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アルトレタミン、アルンブリグ(ブリガチニブ)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アンボクロリン(クロラムブシル)、アミホスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、無水ビンブラスチン、アプレピタント、アレディア(パミドロン酸)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼエルウィニアクリサンテミ、アウリスタチン、アキシカブタゲンシロルユーセル、アキシチニブ、アザシチジン、BEACOPP、ベセヌム(Becenum)(カルムスチン)、ベレオダク(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベキサロテン、ビカルタミド、BiCNU(カルムスチン)、ブレノキサン(ブレオマイシン)、BMS184476、ボルテゾミブ、ボシュリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブリガチニブ、BuMel、ブスルファン、ブスルフェクス(ブスルファン)、カバジタキセル、カボメティクス(カボザンチニブ)、カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩、CAF、カルケンス(アカラブルチニブ)、カンプトサール(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、カプレルサ(バンデタニブ)、カラック(外用フルオロウラシル)、カルボプラチン、カルボプラチン-タキソール、カルフィルゾミブ、カルムブリス(Carmubris)(カルムスチン)、カルムスチン、カソデックス(ビカルタミド)、カケクチン、CeeNU(ロムスチン)、CEM、セマドチン、セリチニブ、セルビジン(ダウノルビシン)、サーバリックス(組換えHPV2価ワクチン)、CEV、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、クラフェン(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(クロファラビン)、クロラール(クロファラビン)、CMF、コビメチニブ、コメトリック(カボザンチニブ)、コパンリシブ塩酸塩、COPDAC、COPP、COPP-ABV、コスメゲン(ダクチノマイシン)、コテリック(コビメチニブ)、クリプトフィシン、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、サイフォス(Cyfos)(イホスファミド)、シタラビン、シタラビンリポソーム、シトサール-U(シタラビン)、サイトキサン(シクロホスファミド)、サイトキサン(サイトキサン)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム、ダウノゾーム(DaunoXome)(ダウノルビシン脂質複合体)、デカドロン(デキサメタゾン)、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、デファイテリオ(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デポサイト(シタラビンリポソーム)、デキサメタゾン、デキサメタゾンインテンソール(デキサメタゾン)、デクスパックテーパーパック(Dexpak Taperpak)(デキサメタゾン)、デクスラゾキサン塩酸塩、ドセフレツ(Docefrez)(ドセタキセル)、ドセタキセル、ドセタキソール、ドラスタチン、ドキセタキセル、ドキシル(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドロキシア(ヒドロキシウレア)、DTIC(ダカルバジン)、DTIC-Dome(ダカルバジン)、エフデックス(外用フルオロウラシル)、エリガード(ロイプロリド)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(エレンス(エピルビシン))、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルスパー(アスパラギナーゼ)、エルトロンボパグオラミン、エムシット(Emcyt)(エストラムスチン)、イメンド(アプレピタント)、エナシデニブメシル酸塩、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(アスパラギナーゼエルウィニアクリサンテミ)、エチオール(アミホスチン)、エトポホス(エトポシドリン酸塩)、エトポシド、エトポシドリン酸塩、ユーレクシン(フルタミド)、エバセット(Evacet)(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)、エボメラ(メルファラン塩酸塩)、エキセメスタン、フェアストン(トレミフェン)、ファリーダック(パノビノスタット)、フェソロデックス(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、ファーマゴン(デガレリクス)、フィナステリド、フロプレド(FloPred)(プレドニゾロン)、フルダラ(フルダラビン)、フルダラビンリン酸塩、フルオロプレックス(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、フルタミド、フォレックス(メトトレキサート)、フォレックスPFS(メトトレキサート)、FOLFIRI、FOLFIRINOX、FOLFOX、フォロチン(プララトレキサート)、FUDR(FUDR(フロクスウリジン))、FU-LV、フルベストラント、ガーダシル(組換えHPV4価ワクチン)、ガーダシル9(組換えHPV9価ワクチン)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、GEMCITABINE-CISPLATIN、GEMCITABINE-OXALIPLATIN、ジェムザール(ゲムシタビン)、ジオトリフ(アファチニブジマレイン酸塩)、ジオトリフ(アファチニブ)、グリベック(イマチニブメシル酸塩)、ギリアデル(カルムスチン)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩)、ヘマンジオル(プロプラノロール塩酸塩)、ヘキサレン(アルトレタミン)、組換えHPV2価ワクチン、組換えHPV9価ワクチン、組換えHPV4価ワクチン、ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)、ハイカムチン(トポテカン)、ハイドレア(ヒドロキシウレア)、ヒドロキシウレア、ヒドロキシウレアタキサン、ハイパーCVAD、イブランス(パルボシクリブ)、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(ポナチニブ)、イダマイシンPFS(イダルビシン)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ、アイディハイファ(エナシデニブ)、イフェックス(Ifex)(イホスファミド)、イホスファミド、イフォスファミダム(Ifosfamidum)(イホスファミド)、イマチニブメシル酸塩、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミキモド、イムリジック(タリモジンラヘルパレプベク)、インライタ(アキシチニブ)、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩リポソーム、イストダックス(ロミデプシン)、イクサベピロン、イキサゾミブクエン酸エステル、イグゼンプラ(イクサベピロン)、ジャカフィ(ルキソリチニブリン酸塩)、ジャカフィ(ルキソリチニブ)、JEB、ジェブタナ(カバジタキセル)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(パリフェルミン)、キスカリ(リボシクリブ)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ランレオチド酢酸塩、レンビマ(レンバチニブ)、二トシル酸ラパチニブ、レナリドミド、レンバチニブメシル酸塩、レンビマ(レンバチニブメシル酸塩)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、リューカイン(サルグラモスチム)、ロイプロリド酢酸塩、ロイスタチン(クラドリビン)、レブラン(アミノレブリン酸)、リアロゾール、リンフォリジン(Linfolizin)(クロラムブシル)、リポドックス(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ロムスチン、ロニダミン、ロンサーフ(トリフルリジン及びチピラシル)、リュープロン(ロイプロリド)、リムパーザ(オラパリブ)、リソドレン(ミトタン)、マルキボ(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マルキボキット(ビンクリスチン脂質複合体)、マツラン(Matulane)(プロカルバジン)、メクロレタミン塩酸塩、メゲース(メゲストロール)、メゲストロール酢酸塩、メキニスト(トラメチニブ)、メルファラン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスネックス(メスナ)、メタストロン(塩化ストロンチウム-89)、メタゾラストン(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メチルナルトレキソン臭化物、メキサート(メトトレキサート)、メキサート-AQ(メトトレキサート)、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、ミトザイトレックス(Mitozytrex)(マイトマイシンC)、イセチオン酸ミボブリン、MOPP、モスタリナ(Mostarina)(プレドニムスチン)、モゾビル(プレリキサホル)、ムスタルゲン(メクロレタミン)、ムタマイシン(マイトマイシン)、ミレラン(ブスルファン)、マイロサール(Mylosar)(アザシチジン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(ビノレルビン)、ネララビン、ネオサール(Neosar)(シクロホスファミド)、ネラチニブマレイン酸塩、ネリンクス(ネラチニブ)、ネツピタント・パロノセトロン塩酸塩、ニューラスタ(フィルグラスチム)、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブ)、ニランドロン(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、ニンラーロ(イキサゾミブ)、ニペント(ペントスタチン)、ニラパリブトシル酸塩水和物、N,n-ジメチル-l-バリル-l-バリル-n-メチル-l-バリル-l-プロリ-1-lプロリン-t-ブチルアミド、ノルバデックス(タモキシフェン)、ノバントロン(ミトキサントロン)、Nプレート(ロミプロスチム)、オドムゾ(ソニデジブ)、OEPA、OFF、オラパリブ、オマセタキシンメペスクシナート、オナプリストン、オンカスパー(ペガスパルガーゼ)、オンコビン(ビンクリスチン)、オンダンセトロン塩酸塩、オニバイド(イリノテカン塩酸塩リポソーム)、オンタック(デニロイキンジフチトクス)、オンキソール(パクリタキセル)、OPPA、オラプレド(Orapred)(プレドニゾロン)、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パロノセトロン塩酸塩及びネツピタント、パミドロン酸二ナトリウム、パノビノスタット、パンレチン(アリトレチノイン)、パラプラット(Paraplat)(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、PCV、PEB、ペディアプレッド(Pediapred)(プレドニゾロン)、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プラチノール(シスプラチン)、プラチノールAQ(シスプラチン)、プレリキサホル、ポマリスト(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、プロプラノロール塩酸塩、プリントール(メルカ
プトプリン)、プリキサン(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、R-CHOP、R-CVP、リクラスト(ゾレドロン酸)、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)2価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)9価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)4価ワクチン、レゴラフェニブ、レリストール(メチルナルトレキソン臭化物)、R-EPOCH、レブリミド(レナリドミド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リゾキシン、リボシクリブ、R-ICE、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、Rpr109881、ルベックス(ドキソルビシン)、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブ)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、ライダプト(ミドスタウリン)、サンドスタチン(オクトレオチド)、サンドスタチンLARデポー剤(オクトレオチド)、スクレロソル胸膜内エアロゾル(Sclerosol Intrapleural Aerosol)(タルク)、セルテネフ(Sertenef)、ソルタモックス(タモキシフェン)、ソマチュリンデポー剤(ランレオチド酢酸塩)、ソニデジブ、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(ダサチニブ)、STANFORD V、ステラプレド(プレドニゾン)、ステラプレドDS(プレドニゾン)、滅菌タルクパウダー(タルク)、ステリタルク(タルク)、ステレシスト(Sterecyst)(プレドニムスチン)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、ストラムスチンリン酸塩(Stramustine phosphate)、ストレプトゾシン、スニチニブリンゴ酸塩、スプレリンLA(ヒストレリン)、スーテント(スニチニブリンゴ酸塩)、スーテント(スニチニブ)、シンリボ(オマセタキシンメペスクシナート)、タブロイド(チオグアニン)、TAC、タフィンラー(ダブラフェニブ)、タグリッソ(オシメルチニブ)、タルク、タリモジンラヘルパレプベク、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(シタラビン)、タルセバ(エルロチニブ)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ダカルバジン)、タシグナ(ニロチニブ)、タソネルミン、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、テパディナ(チオテパ)、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、TheraCys BCG(BCG)、チオグアニン、チオプレックス(チオテパ)、チオテパ、TICE BCG(BCG)、チサゲンレクルユーセル、トラク(Tolak)、(外用フルオロウラシル)、トポサール(エトポシド)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トーリセル(テムシロリムス)、トテクト(Totect)(デクスラゾキサン塩酸塩)、TPF、トラベクテジン、トラメチニブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トレルスター(トリプトレリン)、トレチノイン、トレキサル(Trexall)(メトトレキサート)、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩、トリセノックス(三酸化ヒ素)、タイケルブ(ラパチニブ)、ウリジントリアセテート、VAC、バルルビシン、バルスター(Valstar)(膀胱内バルルビシン)、バルスター(バルルビシン)、VAMP、バンデタニブ、バンタス(Vantas)(ヒストレリン)、バルビ(Varubi)(ロラピタント)、VeIP、ベルバン(ビンブラスチン)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベルサール(Velsar)(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベンクレクスタ(ベネトクラクス)、ベプシド(エトポシド)、ベージニオ(アベマシクリブ)、ベサノイド(トレチノイン)、ビアデュール(Viadur)(ロイプロリド酢酸塩)、ビダーザ(アザシチジン)、ビンブラスチン、ビンカサールPFS(ビンクリスチン)、ビンクレックス(Vincrex)(ビンクリスチン)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、ビンデシン硫酸塩、ビンフルニン、ビノレルビン酒石酸塩、VIP、ビスモデギブ、ビストガード(Vistogard)(ウリジントリアセテート)、ボラキサーゼ(Voraxaze)(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ)、ブモン(テニポシド)、ヴィキセオス(ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム)、W、ウェルコボリン(ロイコボリンカルシウム)、ウェルコボリンIV(ロイコボリン)、ザーコリ(クリゾチニブ)、XELIRI、ゼローダ(カペシタビン)、XELOX、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、イエスカルタ(アキシカブタゲンシロルユーセル)、ヨンデリス(トラベクテジン)、ザルトラップ(Ziv-アフリベルセプト)、ザノサー(ストレプトゾシン)、ザルジオ(フィルグラスチム)、ゼジューラ(ニラパリブ)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ザインカード(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、ゾフラン(オンダンセトロン塩酸塩)、ゾラデックス(ゴセレリン)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、ゾルトレス(Zortress)(エベロリムス)、ザイデリグ(イデラリシブ)、ジカディア(セリチニブ)、ザイティガ(アビラテロン酢酸塩)、ならびにザイティガ(アビラテロン)が挙げられる。化学療法剤の他の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology by V.T.Devita and S.Hellman(editors),6th edition(Feb.15,2001),Lippincott Williams & Wilkins Publishers(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見ることができる。
【0184】
実施形態では、化学療法剤(例えば、上記のリストのもの)は、本開示の化合物に薬剤として含まれ得る。その代わりに、またはそれに加えて、例えば、化学療法剤(例えば、上記のリストのもの)は、本開示の化合物と併せて(すなわち併用療法において)使用され得る。例として、対象に、薬剤としてマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)を含む化合物及び薬剤としてフマギリンを含む化合物の一方または両方が担持された血小板を投与することができ、また化学療法剤も投与することができる。この組み合わせは、膵癌、肺癌、または結腸癌の治療に使用することができる。対象に、薬剤としてEGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)を含む化合物及び活性剤としてマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)を含む化合物の一方または両方が担持された血小板を投与することができ、また化学療法剤も投与することができる。これは、肺癌の治療に使用することができる。また、対象に、薬剤としてEGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)を含む化合物、薬剤としてマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)を含む化合物、及び薬剤としてALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)を含む化合物のうちの1つもしくは両方、または3つ全てが担持された血小板を投与することができ、また化学療法剤も投与することができる。これは、非小細胞肺癌の治療に使用することができる。
【0185】
本発明において有用な例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CD122、CD137、CD27、CD28、CD28、CD40、CTLA-4、GITR、ICOS、ICOS、IDO、KIR、KIR、LAG3、NOX2、OX40、PD-1、SIGLEC7、SIGLEC9、TIM-3、及びVISTAのリガンドまたは受容体の完全長または断片が挙げられる。
【0186】
本発明において有用な例示的な増殖因子としては、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及び血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、ならびにアンジオポエチンが挙げられる。
【0187】
本発明において有用な例示的な増殖阻害剤としては、アンギオスタチン、エンドスタチン、タムスタチン、トロンボスポンジン-1(TSP1)、血小板第4因子(PF4、CXCL4)、及びメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)が挙げられる。
【0188】
本発明において有用な例示的なプロテアーゼ/プロテイナーゼとしては、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、トロンビン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、及びストレプトキナーゼが挙げられる。
【0189】
本発明において有用な例示的な凝固因子としては、第II因子(トロンビン)、アンチトロンビンIII(ATIII)、カリクレイン、組織因子(TF)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、及び第XII因子、第XIII因子、フィブリノゲン、プロテインS、プロテインC、トロンボモジュリン、プラスミノーゲン、ならびに組織因子経路阻害剤(TFPI)が挙げられる。
【0190】
本発明において有用な例示的な脂質またはリン脂質としては、アポリポタンパク質E(ApoE)、血小板リン脂質、及びスフィンゴシン-1-リン酸(SIP)が挙げられる。
【0191】
本発明において有用な例示的な細胞外マトリックスタンパク質としては、インテグリン、フィブロネクチン、ラミニン、接着斑タンパク質(FAK)、ビンキュリン、タリン、アクチンフィラメント、及びコラーゲンが挙げられる。
【0192】
本発明において有用な例示的なホルモンとしては、インスリン、ステロイド(例えば、エストロゲン、プロゲステロン、及びテストステロン、ならびにそれらのバリアント)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、及び甲状腺ホルモンが挙げられる。
【0193】
本発明において有用な例示的な酵素としては、ヘパラナーゼまたはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)が挙げられる。
【0194】
本発明において有用な例示的なケモカイン/走化性因子としては、結合組織増殖因子(CTGF)、間質細胞由来因子-1(SDF-1)(CXCL12)、インターロイキン(IL1、2、6、8)、及びCD40リガンド(CD40L、CD154)が挙げられる。
【0195】
本発明において有用な例示的なニューロトロフィンとしては、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、及びニューロトロフィン4/5(NT-4/5)が挙げられる。
【0196】
実施形態では、薬剤は、種々の分類の有用な薬剤を含む以下の非網羅的なリストから選択される:3-4-(1-ホルミルピペラジン-4-イル)-ベンジリデニル-2-インドリノン、アバタセプト、ABT-869、アカラブルチニブ、アファチニブ、アフリベルセプト、アレクチニブ、アレファセプト、AMG 108、抗リンパ球免疫グロブリン(ウマ)、抗胸腺細胞免疫グロブリン(ウサギ)、アポマブ(Apomab)、アスホターゼアルファ、アスネルセプト(Asunercept)、AVE9633、アキシチニブ、ベラタセプト、ベバシズマブジルコニウムZr-89、BIIB015、ビバツズマブ、ボスチニブ、ブリガチニブ、カボザンチニブ、カネルチニブ、カプマチニブ、セジラニブ、セリチニブ、CR002、クレノラニブ、クリゾチニブ、CT-011、ダコミチニブ、ダサチニブ、デパツキシズマブ、ドビチニブ、エドラチド、エヌトレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、エタネルセプト、ファミチニブ、フェドラチニブ、フィラテグラスト、フルマチニブ、フォレチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、ゲルダナマイシン、ゲニステイン、ギルテリチニブ、グレサチニブ、GMA-161、グレムバマブ、GS-5745、ヒトサイトメガロウイルス免疫グロブリン、ヒト免疫グロブリンG、ヒト水痘・帯状疱疹免疫グロブリン、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、イコチニブ、IGN311、イマチニブ、インジウムIn-111サツモマブペンデチド、IPH 2101、ラベツズマブゴビテカン、ラパチニブ、ラロトレクチニブ、レカネマブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ロルカフスプアルファ(Lorukafusp alfa)、ミドスタウリン、ミルベツキシマブソラブタンシン、ミタザリマブ(Mitazalimab)、モテサニブ、ムロモナブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、NAV 1800、ネラチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、オシメルチニブ、パクリチニブ、パゾパニブ、PD173955、ペキシダルチニブ、ピセタノール、ポナチニブ、ラディシコール、ラドチニブ、レゴラフェニブ、RI 624、ロバルピツズマブテシリン、ロズロリムパブ、ルキソリチニブ、サラカチニブ、サボリチニブ、SB-1578、セルペルカチニブ、セルメチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、タファシタマブ、タンズチニブ、TB-402、テクネチウムTc-99mアルシツモマブ、テセバチニブ、TNX-901、トマラリマブ、トシツモマブ、トラスツズマブデルクステカン、ツカチニブ、バダスツキシマブタリリン、バラナフスプアルファ(Valanafusp alfa)、バンデタニブ、バタラニブ、ベムラフェニブ、VS-4718、XmAb2513、XTL-001、及びゾルベツキシマブ。
【0197】
実施形態では、薬剤は、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)である。
【0198】
実施形態では、薬剤は、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)である。
【0199】
実施形態では、薬剤は、PDL1阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ)である。
【0200】
実施形態では、薬剤は、FN1阻害剤(例えば、オクリプラスミン)である。
【0201】
実施形態では、薬剤は、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)である。
【0202】
実施形態では、薬剤は、FGFR2アンタゴニスト(例えば、サリドマイド)である。
【0203】
実施形態では、薬剤は、トロンビン及びその類似体である。
【0204】
実施形態では、薬剤は、CSF3Rアゴニスト(例えば、フィルグラスチム)である。
【0205】
実施形態では、薬剤は、PSMB5阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)である。
【0206】
実施形態では、薬剤は、フマギリンである。
【0207】
実施形態では、薬剤は、ALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)である。
【0208】
実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、哺乳動物細胞に対して有害であり、及び/または対象に対して毒性であり、及び/または第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、対象の血流に直接投与された場合、分解を受けやすい。
【0209】
実施形態では、第1の化合物及び/または第2の化合物は、蛍光部分をさらに含む。
【0210】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び/または第2のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaにも優先的に結合する。
【0211】
実施形態では、組成物は、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物をさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0212】
単離血小板
疾患または障害の治療に有用な薬剤は、多くの場合、ヒト細胞に有害である可能性があり、及び/または対象に対して毒性であり、特に対象に全身投与された場合にそうである。有害な薬剤を含む化合物を血小板に担持させることにより、対象における意図しない及び望ましくない細胞、組織、及び/または器官の損傷が回避される。さらに、特定の薬剤は、対象の血流に直接投与された場合、分解を受けやすい。分解性薬剤を含む化合物を血小板に担持させることにより、対象の血流に直接投与された場合に生じるであろう薬剤の濃度の低減が回避される。したがって、担持血小板は、対象に投与されたときに用量の低減(例えば、有効用量未満)を回避する。総合すると、担持血小板は、望ましい用量で、かつより少ない悪影響で、標的部位に局在化された薬剤の濃縮をもたらす。
【0213】
血小板促進型の薬剤送達の技法は、他の標的送達系に比べて多くの利点を有する。ナノ粒子促進型送達とは異なり、対象に異物がもたらされない。同様に、リポソーム調製物は、細網内皮系(RES)による食作用に起因して有効期間が短く、安定性が低く、in vivo半減期が短いが、本開示の血小板送達系は、in vivo半減期を延長させ、元の化合物の安定性及び調製を変化させない。また、異常な血管系を標的とするRGDペプチドなどのほとんどの合成ホーミング機構は、天然血小板の特異性を実現していない。最後に、本発明における自家血小板の使用は、他の者が有する感染性物質のリスクをなくす。これにより、手順の安全性が向上し、提供及び保管された血小板を解凍及び/または調製する必要なしに、血小板への担持速度(数秒間から数分間)が向上する。総合すると、本開示の薬剤の血小板促進型送達を、直ちにかつ容易に臨床現場へと転換することができる。
【0214】
本開示の別の態様は、単離血小板である。単離血小板は、第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、第1の化合物の少なくとも1つのコピーと、第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、第2のポリペプチドが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、第2の化合物の少なくとも1つのコピーと、を含む。
【0215】
実施形態では、血小板は、合成血小板、同種血小板、自家血小板、または修飾された異種血小板である。
【0216】
実施形態では、血小板は、自家血小板である。
【0217】
実施形態では、血小板は、同種血小板である。
【0218】
実施形態では、血小板は、多血小板血漿から得られる。
【0219】
実施形態では、血小板は、1~1000コピーの第1の化合物及び1~1000コピーの第2の化合物を含む。場合によっては、1~1000コピーの第1の化合物が、血小板の第1のアルファ顆粒タイプに担持され、1~1000コピーの第2の化合物が、血小板の第2のアルファ顆粒タイプに担持される。第1の化合物の最小の1つのコピーが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプに担持され得、第2の化合物の少なくとも1つのコピーが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプに担持され得る。
【0220】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合し、第2のGAG結合ペプチドは、ヘパラン硫酸(HS)に優先的に結合する。
【0221】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、コンドロイチン硫酸A(CSA)に優先的に結合する。実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプは、P-セレクチン関連顆粒であり、第2のアルファ顆粒タイプは、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)関連顆粒である。
【0222】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、高親和性トロンビン受容体PAR1を介して放出され、第2のアルファ顆粒タイプの内容物は、低親和性トロンビン受容体PAR4を介して放出され、任意選択で、アルファ顆粒の内容物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、ペルオキシダーゼ、ホスホヒドロラーゼ、プラスミン、またはプラスミン(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))との接触に応答して放出され得る。
【0223】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物の放出をもたらすのに必要なトロンビン濃度よりも低いトロンビン濃度で放出される。
【0224】
実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物が放出される前に放出される。
【0225】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、各々約8アミノ酸長~約14アミノ酸長である。場合によっては、または第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含む。第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つの荷電アミノ酸を含み得る。
【0226】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの一方または両方は、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。場合によっては、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドの両方が、少なくとも1つのプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0227】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。例として、GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び4位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位、4位、及び7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び7位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び4位及び9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;GAG結合ペプチドは、1位及び9位にプロリン、アルギニン及び/またはイソロイシンを含み;ならびにこれらの間の任意の組み合わせを含む。GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にプロリンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にアルギニンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位、4位、7位、及び9位にイソロイシンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、4位、7位、及び9位にアルギニンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、4位及び7位にアルギニン、ならびに9位にイソロイシンを含み得るか;GAG結合ペプチドは、1位にプロリン、4位にアルギニン、及び9位にイソロイシンを含み得るか;またはGAG結合ペプチドは、4位にアルギニン及び9位にプロリンを含み得る。1位、4位、7位、及び/または9位のプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンの任意の組み合わせが、本開示によって包含される。
【0228】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0229】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0230】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のうちの1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0231】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、または9位に荷電アミノ酸を含む。
【0232】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、配列番号1~配列番号13のいずれか1つに関して、1位、4位、7位、及び/または9位にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを含む。
【0233】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、少なくとも10個のアミノ酸を含む。
【0234】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸を含む。
【0235】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び第2のGAG結合ペプチドは、独立して、11個のアミノ酸からなる。
【0236】
実施形態では、GAG結合ペプチドは、配列番号1~配列番号13のうちの1つのアミノ酸配列からなる。
【0237】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0238】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0239】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなり、第2のGAG結合ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0240】
実施形態では、第1のポリペプチドは、第1のGAG結合ペプチドからなり、第2のポリペプチドは、第2のGAG結合ペプチドからなる。
【0241】
実施形態では、第1のポリペプチドのN末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのN末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0242】
実施形態では、第1のポリペプチドのC末端は、第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2のポリペプチドのC末端は、第2の第1の薬剤に直接もしくは間接的に連結されている。
【0243】
実施形態では、第1の薬剤は、第1のリンカーを介して第1のポリペプチドに間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は、第2のリンカーを介して第2のポリペプチドに間接的に連結されている。場合によっては、第1のリンカー及び/または第2は、1つ以上の原子をそれぞれ含む。第1のリンカー及び/または第2は、繰り返し単位のポリマーをそれぞれ含み得る。第1のリンカー及び/または第2は、アミノ酸鎖をそれぞれ含み得る。
【0244】
実施形態では、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接連結されている。
【0245】
実施形態では、マレイミド反応、スクシンイミジルエステル反応、酵素反応、またはタンパク質の構造もしくは活性に影響を及ぼさない別のコンジュゲーション系を使用して、第1の薬剤は第1のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されており、及び/または第2の薬剤は第2のポリペプチドに直接もしくは間接的に連結されている。
【0246】
実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子を含む。場合によっては、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、抗体を含む、及び/または蛍光部分を含む。
【0247】
実施形態では、第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、哺乳動物細胞に対して有害であり、及び/または対象に対して毒性であり、及び/または第1の薬剤及び/または第2の薬剤は、対象の血流に直接投与された場合、分解を受けやすい。
【0248】
実施形態では、第1の化合物及び/または第2の化合物は、蛍光部分をさらに含む。
【0249】
実施形態では、第1のGAG結合ペプチド及び/または第2のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaにも優先的に結合する。
【0250】
実施形態では、単離血小板は、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物の少なくとも1つのコピーをさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0251】
注目すべきことに、本開示の担持血小板は、血小板を凝固促進性にする担持プロセスによって活性化されるのではなく、完全に機能する休止血小板のままである。
【0252】
医薬組成物
本開示の担持血小板は、少なくとも一度対象に投与されると血小板の安定性及び有効性を高める、医薬組成物に製剤化することができる。さらに、そのような医薬組成物は、対象への投与前に血小板の安定性を高める。
【0253】
本開示のさらに別の態様は、本明細書に開示される態様または実施形態のいずれかの単離血小板と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0254】
実施形態では、医薬組成物は、第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0255】
実施形態では、医薬組成物は、第1の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含むか、または第2の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第3の単離血小板をさらに含む。
【0256】
実施形態では、医薬組成物は、第1の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第2の単離血小板をさらに含み、かつ第2の化合物の少なくとも1つのコピーを含む第3の単離血小板をさらに含む。
【0257】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体または溶媒を含む。そのような医薬組成物は、適切な投与のための形態を提供するように、好適な量の薬学的に許容される賦形剤を任意選択で含み得る。医薬賦形剤は、水、及びピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成由来のものを含む油、などの液体であり得る。医薬賦形剤は、例えば、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであり得る。加えて、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤を使用することができる。実施形態では、対象に投与されるとき、薬学的に許容される賦形剤は無菌である。本明細書に開示される任意の薬剤が静脈内投与される場合、水は有用な賦形剤である。生理食塩水溶液ならびにデキストロース及びグリセロールの水溶液もまた、特に注射溶液のために液体賦形剤として用いられ得る。好適な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース(すなわち、デキストロース)、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなども含まれる。本明細書に開示される任意の薬剤は、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。好適な医薬賦形剤の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences 1447-1676(Alfonso R.Gennaro eds.,19th ed.1995)に記載されている。
【0258】
本明細書に開示される医薬組成物は、生理食塩水緩衝液(NaCl溶液、TBS、PBS、リンゲル液などを含むがこれらに限定されない)を含み得る。
【0259】
実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、血液とおよそ等張であり、約7.3~7.5のpH(すなわち、血液のpH)を有する、無菌注射に適した形態である。
【0260】
実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、日常的な手順に従って、本明細書に開示される投与様式に適合した医薬組成物として製剤化される。
【0261】
一態様では、本開示は、疾患または障害を治療するための本明細書に開示される医薬組成物のいずれかの使用を提供する。実施形態では、疾患または障害は、がんである。
【0262】
別の態様では、本開示は、疾患または障害を治療するための薬物の製造における、本明細書に開示される単離血小板のいずれかまたは本明細書に開示される医薬組成物のいずれかの使用を提供する。実施形態では、疾患または障害は、がんである。
【0263】
治療方法
既に開示されたように、2つ以上の薬剤を含む2つ以上の化合物が担持された血小板は、薬剤が血小板に担持されずに対象に投与された場合に生じる薬剤の濃度の低減(例えば、有効用量未満)を回避する。さらに、有害な(例えば、毒性の)薬剤を含む化合物が担持された血小板により、対象における意図しない及び望ましくない細胞、組織、及び/または器官の損傷が回避される。血小板は、損傷、炎症、及び/または血管新生の部位へ自然に向かう。本開示の血小板は、2つ以上の薬剤を異なるα顆粒タイプが選択的に担持し、α顆粒タイプのそれぞれが別個の放出プロファイルを有しているため、空間的及び時間的に制御された方法での異なる薬剤の血小板からの放出が可能となる。最後に、アルファ顆粒の担持血小板の内容物の放出を、放出誘導物質との接触に応答して誘導することができ、この放出誘導物質は、治療応答を促進するために、必要に応じて薬剤の放出を促進する医薬組成物で対象に一度に投与することができる。総合すると、担持血小板は、治療有効量の2つ以上の薬剤を、より少ない悪影響で標的部位に確実に送達させるのに役立つ。
【0264】
組織炎症または組織損傷を特徴とし、血小板が最初の応答するものであることを特徴とする疾患及び障害は全て、本開示の方法に従って治療することができる。これらの疾患及び障害には、新生物形成、血液悪性腫瘍、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、脳卒中、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化、火傷、及び移植片上皮化が含まれるが、これらに限定されない。
【0265】
本発明によって提供される利点は、血流に直接投与される薬剤と比較して、血小板に担持された場合の薬剤の(対象の血流における)半減期が延長されることである。本発明は、薬剤の自然な排出を遅延させ、薬剤を著しく低減させる。通常、薬剤は、腎濾過、酵素分解、細網内皮系(RES)による取り込み、ならびに非標的器官及び組織における蓄積によって循環から排出される。しかしながら、本発明では、薬剤は、血小板の寿命の間(通常は4~7日)、または標的部位に送達されるまで、血小板内で保護される。さらに、本発明は、非標的部位(例えば、組織及び器官)への薬剤の広範な分布を回避することにより、薬剤の全身的曝露を制限する。この利点により、(血小板に担持されていない薬剤の投与と比較して)より低い投与量の薬剤の使用が可能となる。そのような低用量の使用は、少なくとも、望ましくない副作用を減らし経済的コストを低減させるのに役立つ。
【0266】
また、本発明において有用な血小板は、複数の異なる薬剤を担持し、異なる薬剤は、空間的及び時間的に制御された方法で異なるアルファ顆粒タイプから放出され得る。したがって、本発明は、指向性がありかつ制御された治療薬を、損傷部位(例えば、慢性創傷を治療するため)、病理学的炎症部位(例えば、関節または肺への損傷を治療するため)、及び/または血管新生部位(例えば、がんを治療するため)に提供する。
【0267】
さらに別の態様では、本開示は、疾患または障害の治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法を提供する。この方法は、治療有効量の本明細書に開示される医薬組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む。
【0268】
本開示の一態様は、疾患または障害の治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法である。この方法は、治療有効量の本明細書に開示される組成物のいずれかを対象に投与するステップを含む。
【0269】
上記方法の実施形態では、第1のアルファ顆粒タイプの内容物は、第2のアルファ顆粒タイプの内容物が放出される前に標的部位で放出される。
【0270】
上記方法の実施形態では、この方法は、ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、メタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を独立して含む、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物を対象に投与するステップをさらに含む。場合によっては、第2の医薬組成物は、第1のアルファ顆粒タイプからの第1の化合物の放出を促進し、第3の医薬組成物は、第2のアルファ顆粒タイプからの第2の化合物の放出を促進する。第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物は、医薬組成物が投与された後に投与され得る。医薬組成物は、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物が投与される前に少なくとも2回投与され得る。
【0271】
実施形態では、疾患または障害は、がんである。がんは一般に、不適切に高い増殖速度及び/または不適切に低いアポトーシス速度に起因する疾患である。
【0272】
実施形態では、がんは、聴神経腫、急性赤白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性単球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、腺がん、AIDS関連リンパ腫、血管肉腫、星状細胞腫、基底細胞癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫を含む)、胆道癌、膀胱癌、骨肉腫、脳及び中枢神経系の癌、乳癌、気管支原性癌、非ホジキンリンパ腫の巨大病変、消化器系癌、頭頸部癌、腹膜癌、呼吸器系癌、泌尿器系癌、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌及び直腸癌、結合組織癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、胎児性癌、子宮内膜癌、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、線維肉腫、胃癌(gastric cancer)(胃腸癌を含む)、神経膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞白血病、重鎖疾患、血管芽腫、肝細胞癌、肝癌、高悪性度の免疫芽球性非ホジキンリンパ腫、高悪性度のリンパ芽球性非ホジキンリンパ腫、高悪性度の小型非切れ込み核細胞性非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、中等度のびまん性非ホジキンリンパ腫、中等度/濾胞性非ホジキンリンパ腫、上皮内新生物、腎臓癌または腎癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌(lung cancer)(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌)、肺癌(lung carcinoma)、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、マントル細胞リンパ腫、髄様癌、髄芽腫、メイグス症候群、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、胆管癌、乏突起膠腫(oligodenroglioma)、口腔癌(口唇、舌、口、及び咽頭)、骨原性肉腫、卵巣癌、膵癌、乳頭腺癌、乳頭癌、松果体腫、真性赤血球増加症、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、及び母斑症に関連する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、脂腺癌、精上皮腫、皮膚癌、小リンパ球性(SL)非ホジキンリンパ腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌または子宮内膜癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍から選択される。
【0273】
実施形態では、がんの疾患または障害は、増殖性障害、例えば、リンパ増殖性疾患である。
【0274】
実施形態では、疾患または障害は、損傷、例えば、火傷、脊髄損傷、整形外科的損傷、及び創傷である。
【0275】
実施形態では、疾患または障害は、血友病性関節出血である。
【0276】
実施形態では、疾患または障害は、炎症、例えば、関節炎症及び肺炎症を含む急性または慢性の炎症である。
【0277】
実施形態では、疾患または障害は、糖尿病性潰瘍である。
【0278】
実施形態では、疾患または障害は、埋植物、移植片、ステント、または補装具の副作用である。
【0279】
実施形態では、本開示の方法により治療される疾患または障害は、欠陥遺伝子に起因する。これらの実施形態では、薬剤は、欠損したまたは機能不全のタンパク質を代替する組換えポリペプチドであり得る。その代わりに、またはそれに加えて、組換えタンパク質は、本明細書に開示されるポリペプチドベースの薬剤、すなわち、抗体(もしくはその抗原結合断片)、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、またはニューロトロフィンのうちのいずれか1つであり得る。
【0280】
遺伝子の欠陥に起因するいくつかの疾患は、GAGの合成に影響を与え得る。例として、第3染色体の長腕のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン5(CSPG5)の欠陥は、脳の異常形態発生を引き起こす可能性があり、DBQD1遺伝子の欠陥は、「手の異常を伴うDesbuquois異形成」とも呼ばれる小肢性小人症を引き起こし、遺伝子異常は、血小板におけるGAGの合成に影響を与える可能性がある。
【0281】
本明細書に開示される医薬組成物の投与により、静脈内または動脈内注射または注入を介して、担持血小板が血流に送達されることになる。あるいは、本明細書に開示される医薬組成物は、活動性疾患の部位に直接再投与される。他の投与経路としては、例えば、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、または皮内注射が挙げられる。
【0282】
本明細書に開示される担持血小板を含む医薬組成物の投与量及び投与スケジュールは、治療される疾患、対象の全般的な健康状態、及び投与する医師の判断を含むがこれらに限定されない種々のパラメータに依存し得る。
【0283】
投与量は、状態の重症度、状態が治療されるのかそれとも予防されるのか、ならびに治療される対象の年齢、体重、及び健康状態を含むいくつかの要因に依存し得る。加えて、特定の対象に関する薬理ゲノミクス(治療薬の薬物動態、薬力学、または有効性プロファイルに対する遺伝子型の影響)情報は、使用される投与量に影響を与え得る。さらに、正確な個々の投与量は、投与される薬剤の特定の組み合わせ、投与時間、投与経路、製剤の性質、排出速度、治療中の特定の疾患、障害の重症度、及び障害の解剖学的位置を含む種々の要因に応じてある程度調整することができる。投与量のある程度の変動が予期され得る。
【0284】
一般に、血小板に担持された特定の量の薬剤を含む医薬組成物の投与量は、薬剤が血小板に担持されずに投与された場合の投与量の範囲内である。実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物中の薬剤の投与量は、血小板に担持されていない薬剤の投与量よりも少ないが、これは、本発明が対象における薬剤の標的特異性の増加及び分解に対する耐性の増加をもたらすためである。
【0285】
本明細書に開示される担持血小板を含むいずれの医薬組成物も、1日1回の用量で投与することができ、または1日総投与量は、1日2回、3回、または4回の分割用量で投与することができる。さらに、本明細書に開示される担持血小板を含む任意の医薬組成物は、投与レジメン全体を通して、断続的ではなく連続的に投与することができる。
【0286】
血小板の半減期が4~7日であるため、担持血小板は、患者に繰り返し(例えば、週に1回)注入することができる。
【0287】
組換えポリペプチドの発現
本発明はさらに、グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドを含むポリペプチドに(直接または間接的に)カップリングされた組換えポリペプチド剤のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を提供する。
【0288】
GAG結合ペプチドを含む組換えポリペプチドは、別々のペプチドとして発現させて一緒にライゲーションすることができる。あるいは、GAG結合ペプチドを含む組換えポリペプチドは、GAG結合ペプチドに作動可能に連結されたポリペプチド剤を含む単一の融合タンパク質として発現される。
【0289】
本発明の組換えポリペプチドは、当業者に公知である実質的にあらゆる方法を使用して生成される。典型的には、組換えポリペプチドは、適切な発現媒体において、ポリペプチドをコードする核酸分子またはその断片の全部または一部を用いて適切な宿主細胞を形質転換することにより生成される。
【0290】
分子生物学の分野の当業者は、多種多様な発現系のいずれを使用しても組換えポリペプチドを発現させることができることを理解するであろう。使用される正確な宿主細胞は、本発明にとって重要ではない。本発明の組換えポリペプチドは、原核生物宿主(例えば、E.coli)または真核生物宿主(例えば、Saccharomyces cerevisiae、昆虫細胞(例えば、Sf21細胞)、または哺乳動物細胞(例えば、NIH 3T3、HeLa、もしくは好ましくはCOS細胞))中で生成され得る。そのような細胞は、広範な供給源から入手可能である(例えば、ATCC,Rockland,Md.、また例えば、Ausubel et al.,Current Protocol in Molecular Biology,New York:John Wiley and Sons,1997も参照されたい)。形質転換またはトランスフェクションの方法及び発現媒体の選択は、選択した宿主系に依存する。形質転換及びトランスフェクションの方法は、例えば、Ausubel et al.に記載されており、発現媒体は、例えば、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(P.H.Pouwels et al.,1985,Supp.1987)に提供されているものから選択することができる。
【0291】
本発明の組換えポリペプチドは、発現させた後、単離、濃縮、及び/または精製することができる。
【0292】
一例として、組換えポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィーを使用して単離することができる。一例では、組換えポリペプチドに対して産生された抗体をカラムに付着させ、これを組換えポリペプチドを単離するために使用することができる。ポリペプチドを保有する細胞のアフィニティークロマトグラフィー前の溶解及び分画は、標準的方法によって実施することができる(例えば、Ausubel et al.を参照されたい)。あるいは、組換えポリペプチドは、ニッケルカラムに結合するヘキサヒスチジンタグなどの配列タグを使用して単離される。
【0293】
単離したら、組換えタンパク質を所望により、例えば高速液体クロマトグラフィーによってさらに精製することができる(例えば、Fisher,Laboratory Techniques In Biochemistry and Molecular Biology,eds.,Work and Burdon,Elsevier,1980を参照されたい)。
【0294】
本発明のポリペプチド、特に短いペプチド断片はまた、化学合成によって(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984 The Pierce Chemical Co.,Rockford,Illに記載されている方法によって)生成することができる。
【0295】
ポリペプチドの発現及び精製のこれらの一般的技法を使用して、有用なペプチド断片または類似体(本明細書に記載)を生成及び単離することもできる。
【0296】
併用療法
実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物または治療方法のいずれも、グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドに連結されていない、及び/または血小板に担持されていない追加の薬剤をさらに含み得る。併用療法の一例では、医薬組成物は、担持血小板及び追加の薬剤を含む。併用療法の別の例では、対象は、担持血小板を含む第1の医薬組成物と、追加の薬剤を含む第2の医薬組成物とを投与される。併用療法はまた、担持血小板と第1の追加の薬剤とを含む第1の医薬組成物、及び第2の追加の薬剤を含む第2の医薬組成物を含み得る。ここで、第1の追加の薬剤及び第2の追加の薬剤は、同じ薬剤であっても、または異なる薬剤であってもよい。本明細書に開示される任意の薬剤が、追加の薬剤として機能し得る。
【0297】
複数の医薬組成物を含む併用療法の実施形態では、第1の医薬組成物は、第2の医薬組成物の前に投与され得るか、第1の医薬組成物は、第2の医薬組成物の後に投与され得るか、または第1の医薬組成物は、第2の医薬組成物と同時に投与され得る。
【0298】
さらに、併用療法は、本開示の医薬組成物を別の治療レジメンと組み合わせることができる。他の治療レジメンとしては、放射線療法、ホルモン療法、外科手術、及び凍結外科手術が挙げられる。治療療法は、本明細書に記載の薬剤のいずれをも含み得る。
【0299】
実施形態では、併用療法のうち、化学療法剤が本開示の化合物と併せて使用される。例として、併用療法は、薬剤としてマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)を含む化合物及び薬剤としてフマギリンを含む化合物の一方または両方が担持された血小板と、化学療法剤とを含み得る。この組み合わせは、膵癌、肺癌、または結腸癌の治療に使用することができる。併用療法は、薬剤としてEGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)を含む化合物及び活性剤としてマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)を含む化合物の一方または両方が担持された血小板と、化学療法剤とを含み得る。これは、肺癌の治療に使用することができる。併用療法は、薬剤としてEGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)を含む化合物、薬剤としてマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)を含む化合物、及び薬剤としてALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)を含む化合物のうちの1つもしくは両方、または3つ全てが担持された血小板と、化学療法剤とを含み得る。これは、非小細胞肺癌の治療に使用することができる。
【0300】
追加の実施形態では、併用療法は、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)が担持された血小板及び薬物レムデシビルを含む。これは、COVIDに関連するであろう急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療に使用することができる。
【0301】
併用療法の実施形態では、医薬組成物は、別の治療レジメンの前に投与され得るか、医薬組成物は、別の治療レジメンの後に投与され得るか、または医薬組成物は、別の治療レジメンと同時に投与され得る。
【0302】
製造方法
本開示の別の態様は、担持血小板を製造するための方法である。この方法は、血小板を得るステップと;血小板を本明細書に開示される組成物のいずれかとin vitroまたはex vivoで接触させるステップと;血小板と組成物との間の接触を、第1の化合物が血小板の第1のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで、かつ第2の化合物が血小板の第2のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで進行させて、これにより担持血小板を生成するステップと、を含む。
【0303】
本開示のさらに別の態様は、担持血小板を製造するための方法である。この方法は、血小板を得るステップと;血小板を、第1の薬剤と第1のポリペプチドとを含む第1の化合物であって、第1のポリペプチドが、血小板の第1のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第1のGAG結合ペプチドを含む、第1の化合物と、in vitroまたはex vivoで接触させるステップと;血小板を、第2の薬剤と第2のポリペプチドとを含む第2の化合物であって、第2のポリペプチドが、血小板の第2のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第2のGAG結合ペプチドを含む、第2の化合物と、in vitroまたはex vivoで接触させるステップと、を含む。
【0304】
実施形態では、血小板を第1の化合物と接触させることと、血小板を第2の化合物と接触させることは、同時的である。
【0305】
実施形態では、血小板を第1の化合物と接触させることと、血小板を第2の化合物と接触させることは、逐次的である。
【0306】
実施形態では、この方法は、血小板を第3の薬剤と第3のポリペプチドとを含む第3の化合物とin vitroまたはex vivoで接触させることをさらに含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含み、第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0307】
血小板と組成物(または第1の化合物及び第2の化合物)との間の接触は、37℃で少なくとも約15分間、及び/または第1の化合物が血小板の第1のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで、かつ第2の化合物が血小板の第2のアルファ顆粒タイプにより内在化されるまで、行われ得る。薬剤が著しい全身毒性を有している場合、適切な緩衝液を使用して血小板を洗浄し、血小板に担持されていない薬剤の注入を防止する。
【0308】
キット
一態様では、本開示は、疾患または障害を治療するためのキットを提供する。キットには、本明細書に開示される単離血小板のいずれか及び使用説明書が含まれる。
【0309】
別の態様では、本開示は、疾患または障害を治療するためのキットを提供する。キットには、本明細書に開示される医薬組成物のいずれか及び使用説明書が含まれる。
【0310】
実施形態では、キットは、ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、メタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を独立して含む、第2の医薬組成物及び/または第3の医薬組成物をさらに含む。
【0311】
さらに別の態様では、本開示は、担持血小板を製造するためのキットを提供する。キットには、本明細書に開示される組成物のいずれか及び使用説明書が含まれる。本発明は、損傷、炎症、または腫瘍血管新生の部位を伴う疾患または障害の治療または予防のためのキットを提供する。一実施形態では、キットには、単位剤形の2つ以上の薬剤が担持された有効量の血小板を含む治療的または予防的組成物が含まれる。いくつかの実施形態では、キットは、治療的または予防的組成物を含有する滅菌容器を含む。そのような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック、または当該技術分野で公知の他の適切な容器形態であり得る。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート加工紙、金属箔、または薬物を保持するのに適した他の材料で作製され得る。
【0312】
所望により、本開示の単離血小板を含む医薬組成物は、疾患または障害を有するかまたは発症するリスクのある対象に医薬組成物を投与するための説明書とともに提供される。説明書は、疾患の治療または予防のための、または単離血小板を必要とする組織へ送達させるための医薬組成物の使用に関する情報を含み得る。他の実施形態では、説明書は、以下のうちの少なくとも1つを含む:薬剤の説明、疾患もしくはその症状の治療もしくは予防のための投与スケジュール及び投与、注意事項、警告、適応症、禁忌、過量服用に関する情報、副作用、動物薬理学、臨床試験、及び/または参照文献。説明書は、容器に直接印刷されてもよく(存在する場合)、容器に貼付されたラベルとしてであってもよく、または容器内もしくは容器に付属する別個のシート、パンフレット、カード、もしくはフォルダーとしてであってもよい。
【0313】
本明細書に開示される任意の態様または実施形態は、本明細書に開示される任意の他の態様または実施形態と組み合わせることができる。
【0314】
等価物
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、さらなる修正ができ、本出願は、一般に、本発明の原理に従って、本発明の任意の変形、使用、または適応を網羅することを意図するものであり、本発明が属する技術分野において公知の範囲内であるかまたは慣行の範囲内であるような本開示からの逸脱、ならびに前述の本質的な特徴に適用され得るような、及び添付の特許請求の範囲に従うような本開示からの逸脱を含むことを理解されたい。
【0315】
当業者であれば、単なる日常的な実験を使用して、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態の多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【0316】
定義
本明細書で使用される専門用語は、特定の事例を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではない。
【0317】
本明細書で使用される場合、別途示さない限り、「a」、「an」、及び「the」という用語には、文脈上別途明確に示されない限り、単数形に加えて複数形も含まれることが意図される。
【0318】
本開示及び/または特許請求の範囲のいずれかで使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「伴う」という用語、またはこれらの変形は、「含む(comprising)」という用語と同様の形で包括的であることが意図される。
【0319】
「約」または「およそ」という用語は、当業者により決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、値を測定または決定する方法、例えば、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、記載された値より10%多いかまたはそれより10%少ないことを意味し得る。別の例では、「約」は、所与の値の慣例に従って、1以内または1を超える標準偏差を意味し得る。別途記載のない限り、本出願及び特許請求の範囲に特定の値が記載される場合、「約」という用語は、特定の値の許容可能な誤差範囲を意味するとみなされるべきである。
【0320】
「実質的に」という用語は、概して著しい程度であることを意味するか、または本質的に、を意味する。換言すれば、この用語は、所望の特質に対してほぼ正確であるか、または正確な特質とわずかに異なることを実質的に意味し得る。「実質的に」は、所望の特質と区別不能である場合がある。「実質的に」は、所望の特質と区別できる場合があるが、その違いは重要ではないかまたは無視できるものである。
【0321】
「少なくとも第2の」という用語は、第2の、第3の、第4の、第5の、第6の、第7の、第8の、第9の、第10の、第20の、第30の、第14の、第50の、第60の、第70の、第80の、第90の、第100の、またはそれ以上、及びそれらの間の任意の反復を意味する。「1つ以上」という用語には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上、及びそれらの間の任意の数が含まれる。
【0322】
「カーゴ」という用語は、血小板、例えば血小板のアルファ顆粒に担持させることができる化合物または薬剤を意味する。このような担持は、化合物のグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドを介して生じる。いくつかの実施形態では、「薬剤」及び「カーゴ」という用語は同義語であり得る。
【0323】
参照文献
以下の参照文献の内容は、その全体が参照により組み込まれる。
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【0324】
参照による組み込み
本明細書で参照される全ての特許及び刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0325】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示に対してのみ提供される。本明細書におけるいかなる内容も、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0326】
本明細書で使用される場合、全ての表題は単に組織化のためのものであり、いかなる形でも本開示を制限することを意図するものではない。いかなる個々のセクションの内容も、全てのセクションに等しく適用可能であり得る。
【実施例
【0327】
実施例1:グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドは、付着したカーゴを血小板のアルファ顆粒中に捕捉させる
本実施例では、例示的なグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドが血小板のアルファ顆粒へのカーゴの担持を導く能力を判定した。
【0328】
図1A及び図1B中でPAL1及びPAL2として識別したAlexa647標識GAG結合ペプチド、ならびにAlexa647標識対照ペプチド(陰性対照として機能する電荷を持たないリガンド(CFL))を、コンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンに対する結合親和性及び血小板に進入する能力について試験した。PAL1は配列番号1のアミノ酸配列を有し、PAL2は配列番号2のアミノ酸配列を有し、CFLは配列番号14のアミノ酸配列を有していた。
【0329】
Alexa647標識ペプチド(または陰性対照としてのAlexa647単独)の用量反応曲線を図1Aに示す。Alexa647標識ペプチドまたはAlexa647単独を、単離血小板と37℃で1時間共インキュベートして血小板へ担持させた。血小板への担持能力をそれぞれ、インキュベーション後の上清中の蛍光の減少により示した。対照については、インキュベーション期間なしで同一の実験を実施した(図では「完全」と表記)。次に、共インキュベーション後の血小板を800gで10分間遠心分離して、血小板を上清から分離した(図では「担持済み」と表記)。
【0330】
図1Aに示すように、PAL1及びPAL2の吸光度が、完全の測定値と担持済みの測定値との間で減少した。上清からの吸光度のこの低減は、これらのペプチドが上清から捕捉され、血小板に担持されたことを示す。対照的に、Alexa647で標識したCFL条件の吸光度は、血小板とのCFL共インキュベーション後に変化しなかった。したがって、CFLペプチドは上清に残留し、血小板に担持されなかった。
【0331】
図1Bは、各ペプチド実験に対して正規化した図1Aのデータ(すなわち、完全の条件に対する担持済みの条件の正規化)を表す。図1Bは、例示的なGAG結合ペプチドであるPAL1及びPAL2が、付着したカーゴの血小板への担持を促進するのに対し、電荷を持たないリガンドに付着したカーゴは、カーゴの血小板への担持を導くことができないことを示す。
【0332】
Alexa647標識GAG結合ペプチドが血小板のアルファ顆粒に担持されたことを確認するために、共焦点顕微鏡を使用した。図1A及び図1Bの実験で遠心分離した血小板を、2%パラホルムアルデヒドで固定し、ガラスカバースリップに載置した。透過処理後、血小板のアルファ顆粒のマーカーであるPF4に対して免疫蛍光染色を実施した。血小板をAlexa568-二次抗体で染色した。60倍のオイル対物レンズを備えたNikon-A1レーザー走査型顕微鏡により、画像を収集した。
【0333】
図2Aは、PF4染色を赤(左列)で示し、Alexa647シグナル(遊離のAlexa647、Alexa647標識GAG結合ペプチド、またはAlexa647標識CFLからのもの、中央列)を紫で示している代表的な画像である。画像は、表示用に輝度及びコントラストのみを調整した。各実験につきn>5の画像を取得し、PF4の強度に基づいて関心領域(ROI)を選択した。
【0334】
統合した画像(右列)は、Alexa647がGAG結合ペプチドのカーゴである場合にのみ、アルファ顆粒マーカーPF4とAlexa647シグナルとの共局在を示す。共局在化は、遊離のAlexa647については、またはAlexa647がCFLのカーゴであった場合には観察されなかった。
【0335】
各ROIのAlexa647強度を、ImageJを使用して測定し、Prism8を使用して箱ひげ図にプロットした。図2Bは、例示的なGAG結合ペプチドであるPAL1及びPAL2が、血小板のアルファ顆粒への付着したカーゴの担持を促進するのに対し、電荷を持たないリガンドに付着したカーゴは、血小板へ担持されず、言うまでもなく血小板のアルファ顆粒には担持されないことを示す。
【0336】
これらのデータは、本開示のGAG結合ペプチドが、血小板のアルファ顆粒へのあらゆる付着したカーゴの担持を促進することを実証する。
【0337】
実施例2:グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドは、グリコサミノグリカンと高い親和性で結合する
本実施例では、例示的なグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドの種々のグリコサミノグリカンへの結合親和性を判定した。
【0338】
図3Aは、本実施例で実施した等温滴定熱量測定(ITC)実験を示す模式図である。ここでは、コンドロイチン硫酸A(CSA)を使用して、グリコサミノグリカンに対する例示的なGAG結合ペプチドの親和性を試験した。3mM CSAをシリンジに充填し、GAG結合ペプチドまたは電荷を持たないリガンド(CFL)(陰性対照として機能した)の0.25mM溶液を保持する試料セルにCSAを滴定した。温度を22℃に設定し、緩衝液は5mM Tris-HCl(pH7.35)及び1%DMSOであった。CSAの注入を26回行い、初回の体積は0.1μlであり、後続の25回の体積はそれぞれ1.5μlであった。これらの実験では、例示的なGAG結合ペプチドは、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列をそれぞれ有するPAL1及びPAL2であり、CFLは、配列番号14のアミノ酸配列を有していた。
【0339】
図3B図3Dは、PAL1(図3B)、PAL2(図3C)、及びCFL(図3D)を保持するセルに滴定したCSAのITC解離動態のグラフ表示を示す。
【0340】
図3B及び図3Cの実験中に得られたデータを使用して、CSAとGAG結合ペプチドとの相互作用の解離定数を決定した。逐次結合モデルを使用した滴定カーブフィッティングによりこれらを決定した。これらのデータを図3E(PAL1に関して)及び図3F(PAL2に関して)に示す。これらのデータは、2つの例示的なGAG結合ペプチドがグリコサミノグリカンであるコンドロイチン硫酸Aに対して高い親和性を有していることを示す。
【0341】
さらに、ヘパラン硫酸(HS)及びコンドロイチン硫酸(CSA)に対する2つの例示的なGAG結合ペプチドであるPAL1及びPAL2の結合親和性を、アフィニティークロマトグラフィーを使用して判定した。図4Bに示すように、PAL1はPAL2よりも密接にCSAに結合することが示される。ITCを使用して解離定数を測定した。解離定数が高いほど結合が緩くなる。図4Cに、PAL2はPAL1よりも密接にHSに結合することを示す。結合は、FPLCシステムに取り付けたHi-Trapヘパリンカラムの溶出量によって測定した。ピークが遅く生じるほど、結合はより密接になる。図4Aに、対照ペプチド(CFL)ならびに2つのPAL(PAL1及びPAL2)を含むペプチドアミノ酸配列を示す。
【0342】
これらのデータは、本開示の2つのPAL配列が、血小板のアルファ顆粒に存在するグリコサミノグリカンに対して高い親和性を有すること、またこれらが2つの主要なグリコサミノグリカンに対して異なる結合優先性を示し、PAL1はPAL1よりもCSAに密接に結合し、PAL2はPAL1よりもHSに密接に結合することを実証する。
【0343】
実施例3:グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと血小板のアルファ顆粒に担持された薬剤とを含む化合物
本実施例では、グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む例示的な化合物が血小板のアルファ顆粒に担持される能力を判定した。
【0344】
本開示の2つの例示的な化合物及び2つの対照化合物を構築した。例示的な化合物には、グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドに間接的に(9アミノ酸リンカーを介して)連結させた薬剤(例えば、mNeonGreen)を含めた。これらの実験では、例示的なGAG結合ペプチドは、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列をそれぞれ有するPAL1及びPAL2であった。陰性対照化合物には、配列番号14のアミノ酸配列を有し、mNeonGreenに間接的に(9アミノ酸リンカーを介して)連結させた、電荷を持たないリガンド(CFL)を含めた。陽性対照化合物には、mNeonGreenに間接的に(9アミノ酸リンカーを介して)連結させたPF4(天然血小板因子)を含めた。使用前に、精製目的のHisタグ、及びHisタグの除去を容易にするTEVプロテアーゼ切断部位も化合物に含めた。化合物を、mNeon-L9-CFLはmCFL、mNeon-L9-PAL1はmPAL1、mNeon-L9-PAL2はmPAL2、PF4-L9-mNeonはPF4mとして識別した。
【0345】
血小板を、4つの化合物のうちの1つと37℃で1時間共インキュベートした。インキュベーション期間後、血小板を800gで10分間遠心分離した。次に、「担持済み」上清の(505nmでの)蛍光吸光度を測定し、「完全」担持対照(血小板を化合物と混合し、次いでインキュベーション期間なしで直ちに遠心分離した各条件の上清)と比較した。データをさらに正規化し、実験の各群の担持率を図5に示すようにプロットした。
【0346】
図5は、2つの例示的な化合物が、陰性対照よりも高い血小板への担持能力、及び陽性対照PF4よりもわずかに高い担持能力を有していたことを示す。
【0347】
GAG結合ペプチドを含む化合物が血小板のアルファ顆粒に担持されたことを確認するために、共焦点顕微鏡を使用した。図5の実験で遠心分離した血小板を、2%パラホルムアルデヒドで固定し、ガラスカバースリップに載置した。透過処理後、血小板のアルファ顆粒のマーカーであるPF4に対して免疫蛍光染色を実施した。血小板をAlexa568-二次抗体で染色した。60倍のオイル対物レンズを備えたNikon-A1レーザー走査型顕微鏡により、画像を収集した。
【0348】
図6Aは、PF4染色を赤で示し(左列)、mNeonシグナルを緑で標識した(中央列)代表的な画像である。画像は、表示用に輝度及びコントラストのみを調整した。各実験につきn>5の画像を取得し、PF4の強度に基づいて関心領域(ROI)を選択した。
【0349】
統合した画像(右列)は、GAG結合ペプチドを含む2つの例示的な化合物のアルファ顆粒マーカーPF4とmNeonシグナルとの共局在を示す。CFLを含む化合物では共局在は観察されなかった。
【0350】
各ROIのmNeon強度を、ImageJを使用して測定し、Prism8を使用して箱ひげ図にプロットした。図6Bは、GAG結合ペプチドを含む例示的な化合物が血小板のアルファ顆粒へ担持されるのに対し、電荷を持たないリガンドを含む化合物は、血小板へ担持されず、言うまでもなく血小板のアルファ顆粒には担持されないことを示す。
【0351】
これらのデータは、GAG結合ペプチドと薬剤とを含む本開示の化合物が、血小板のアルファ顆粒に担持されることを実証する。
【0352】
実施例4:グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む化合物は、グリコサミノグリカンと高い親和性で結合する
本実施例では、本開示の例示的な化合物(グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチド及び薬剤を含む)の種々のグリコサミノグリカンへの結合親和性を判定した。
【0353】
図3Aに示す通りの、また実施例2に記載の通りの等温滴定熱量測定(ITC)実験を、本実施例において実施した(但し、本開示の例示的な化合物及び陰性対照化合物を用いた)。実施例2の実験と同様に、ここでは、滴定緩衝液は5mM Tris-HCl(pH7.35)であり、温度は22℃に設定した。但し、実施例2の実験とは異なり、緩衝液はDMSOを欠いていた。
【0354】
図7A図7Cは、PAL1を含む例示的な化合物(図7A)、PAL2を含む例示的な化合物(図7B)、及びCFLを含む陰性対照化合物(図7C)を保持するセルに滴定したCSAのITC解離動態のグラフ表示を示す。これらの化合物には、その薬剤としてmNeonGreenを含めた。
【0355】
図7B図7Cの実験中に得られたデータを使用して、CSAと化合物との相互作用の解離定数を決定した。連続結合モデルを使用した滴定カーブフィッティングによりこれらを決定した。これらのデータを図7C(PAL1を含む例示的な化合物に関して)、図7D(PAL2を含む例示的な化合物に関して)、及び図7E(CFLを含む陰性対照化合物に関して)に示す。これらのデータは、2つの例示的なGAG結合ペプチドがグリコサミノグリカンであるコンドロイチン硫酸Aに対して高い親和性を有していることを示す。
【0356】
さらに、ヘパラン硫酸(HS)に対する、化合物を含有する2つの例示的なGAG結合ペプチド及びCFLの結合親和性を、アフィニティークロマトグラフィーを使用して判定した。図8に示すように、いずれかのGAG結合ペプチドを含む化合物は、HSと高い親和性で結合する。とりわけ、HSに対する2つの例示的なGAG結合ペプチドの相対結合親和性は、PAL2がPAL1よりもHSと密接に結合するため、mPAL2がmPAL1よりもHSと密接に結合するという点で先の実験で観察されたものと類似していた。対照ペプチドを含む化合物(mCFL)は、ある程度の残存結合能を有しており、HSカラムに保持され、比較的低濃度の塩で溶出したが、これはおそらく化合物の薬剤(例えば、mNeonGreen)の荷電特性に起因する。
【0357】
これらのデータは、グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドと薬剤とを含む本開示の例示的な化合物が、血小板のアルファ顆粒に存在するグリコサミノグリカンに対して高い親和性を有することを実証する。
【0358】
実施例5:グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドのグリコサミノグリカンと結合する能力に重要な配列特異性の同定
本実施例では、グリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドを含む追加の例示的な化合物の種々のグリコサミノグリカンへの結合親和性を判定した。より具体的には、(配列番号1の)GAG結合ペプチドのアラニンスキャニング変異誘発により、1つのアミノ酸が異なる追加の例示的なGAG結合ペプチドを生成し、次いで、これらを実施例3に記載の通りに薬剤(例えば、mNeonGreen)に間接的に連結させた。
【0359】
図3Aに示す通りの、また実施例4に記載の通りの等温滴定熱量測定(ITC)実験を、本実施例において実施した(但し、本開示の追加の例示的な化合物を用いた)。
【0360】
図9Aでは、化合物をPAL1A~PAL11Aとして識別する。これらの例示的な化合物は、配列番号3~配列番号13のアミノ酸配列を有するGAG結合ペプチドを有する。特に、PAL1AのGAG結合ペプチドは、1位にアラニンを有することにより配列番号1とは異なっており、PAL2AのGAG結合ペプチドは、2位にアラニンを有することにより配列番号1とは異なっており、PAL3AのGAG結合ペプチドは、3位にアラニンを有することにより配列番号1とは異なっていた。
【0361】
図9Aは、PAL1A~PAL11Aとして識別した例示的な化合物のうちの1つを保持するセルに滴定したCSAのITC解離動態のグラフ表示を示す。記載した各化合物を含有する試料セルへのCSA滴定によって生成された各ITC曲線に見られるように、電荷及び配列の両方がコンドロイチン硫酸Aとの相互作用に重要である。
【0362】
図9Aの実験中に得られたデータを使用して、CSAと追加の例示的な化合物との相互作用の解離定数を決定した。逐次結合モデルを使用した滴定カーブフィッティングによりこれらを決定した。これらのデータを図9B図9L(それぞれPAL1A~PAL11Aに関する)に示す。これらのデータは、追加の例示的な化合物がグリコサミノグリカンであるコンドロイチン硫酸Aに対して様々な親和性を有していることを示す。
【0363】
図9Mは、例示的な化合物及び対照化合物の平均解離定数を示すグラフである。このグラフは、化合物間のCSAへの結合親和性の様々な程度を示している。グラフ中で、「1A」と識別したデータは「PAL1A」化合物を表し、「2A」と識別したデータは「PAL2A」化合物を表しており、以下も同様である。
【0364】
とりわけ、1位、4位、7位、または9位にアラニンを有するこれらの例示的な化合物は、親和性が最も低く、最も劣っていた。このことにより、GAG結合ペプチドがそれらの位置にプロリン、アルギニン、及び/またはイソロイシンを有する場合に、結合能の改善が示される。
【0365】
位置にあるプロリン、アルギニン、イソロイシンなどの極めて重要なアミノ酸は、結合の親和性に影響を与える。興味深いことに、これらのアミノ酸は、予想どおり正に荷電したアルギニンを含み、また特殊なコンフォメーションを維持することにより寄与し得る非荷電のプロリン及びイソロイシンも含む。
【0366】
これらのデータは、荷電アミノ酸の位置が異なるGAG結合ペプチドを有する追加の化合物が、グリコサミノグリカンに対して様々な親和性を有することを実証する。また、極めて重要な残基(配列番号1に関しては1位、4位、7位、及び9位)及び特定のアミノ酸(プロリン、アルギニン、及びイソロイシンなど)は、例えば、血小板のアルファ顆粒中のグリコサミノグリカンへのGAG結合ペプチドの結合親和性に影響を及ぼす。
【0367】
実施例6:本開示の化合物を形成するときにグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドを薬剤にコンジュゲートさせるための例示的な方法
本実施例では、薬剤をグリコサミノグリカン(GAG)結合ペプチドにコンジュゲートさせて、本開示の例示的な化合物を形成する。
【0368】
図10Aに示すように、マレイミド反応を使用して薬剤をGAG結合ペプチドにコンジュゲートさせ、それにより本開示の化合物を形成する。当該技術分野で公知の他のコンジュゲーション反応、例えば、スクシンイミジルエステル反応または酵素反応を使用することができる。図10Aでは、GAG結合ペプチド(図10Aには「GAG-pep」として示す)は、蛍光部分を含む。本開示のある特定の実施形態では、蛍光部分は化合物に含まれない。
【0369】
(上記の実施例に記載されるような)本開示の化合物のそのカーゴを血小板に担持させる能力をさらに実証するために、ここでは、GAG結合ペプチドと治療用抗体(VEGFR2阻害剤であるDC101)を含む例示的な化合物を生成した。同様の方法を使用して、抗体以外の薬剤を使用して本開示の化合物を生成することができる。例として、薬剤は、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子であり得る。
【0370】
血小板のアルファ顆粒に担持される蛍光部分をさらに含む例示的な化合物(薬剤として抗体を含む)の能力を判定した。
【0371】
4つの化合物、すなわち、陰性対照としてのAlexa647標識DC101(図10BではA-DC101として識別する)、配列番号14の電荷を持たないリガンド(CFL)とDC101抗体とを含むAlexa647標識化合物(図10BではA-CLF-DC101として識別する)、配列番号1のGAG結合ペプチドとDC101抗体とを含むAlexa647標識化合物(図10BではA-PAL1-DC101として識別する)、及び配列番号2のGAG結合ペプチドとDC101抗体とを含むAlexa647標識化合物(図10BではA-PAL2-DC101として識別する)を調製した。
【0372】
血小板を各化合物と37℃で1時間共インキュベートした。次に、血小板を800gで10分間遠心分離し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、ガラスカバースリップに載置した。透過処理後、血小板中のPF4に対して免疫蛍光染色を実施し、さらにAlexa568-二次抗体で染色した。60倍のオイル対物レンズを備えたNikon-A1レーザー走査型顕微鏡により、画像を収集した。
【0373】
図10Bの代表的な画像では、PF4染色は赤で表示し(左列)、Alexa647シグナルは紫で示した(中央列)。画像は、表示用に輝度及びコントラストのみを調整した。各実験につきn>5の画像を取得し、PF4の強度に基づいて関心領域(ROI)を選択した。
【0374】
統合した画像(右列)は、Alexa647がGAG結合ペプチドに会合している場合にのみアルファ顆粒マーカーPF4とAlexa647シグナルとの共局在を示し、Alexa647がCFLまたはDC101抗体のみに会合している場合には示されない。不都合なことに、A-PAL2-DC101化合物と共インキュベートした血小板については、PF4免疫染色反応に失敗した。したがって、この群に関してはAlexa647強度に基づいてROIを選択した。
【0375】
各ROIのAlexa647強度を、ImageJを使用して測定し、Prism8を使用して箱ひげ図にプロットした。図10Cに示すように、本開示の2つの例示的な化合物は血小板のアルファ顆粒へ担持されるのに対し、電荷を持たないリガンドを含む化合物または抗体を含む化合物(GAG結合ペプチドを含まない)は、血小板へ担持されず、言うまでもなく血小板のアルファ顆粒には担持されない。
【0376】
これらのデータは、GAG結合ペプチドと薬剤とを含む本開示の化合物が、血小板のアルファ顆粒に担持されることを実証する。
【0377】
実施例7:疾患関連タンパク質は濃度勾配に対抗して血小板アルファ顆粒に能動的に取り込まれる
本実施例では、血小板によるタンパク質の捕捉を分析し、疾患関連タンパク質は濃度勾配に対抗して血小板アルファ顆粒に能動的に取り込まれるのに対し、アルブミンなどの腫瘍に無関係なタンパク質はそうではないことを見出した。
【0378】
血栓症、創傷治癒、及びアテローム性動脈硬化における血小板の役割は十分に確立されているが、腫瘍の増殖及び転移における血小板の役割はそれほど明確になっていない。1960年代に遡る刊行物では、血小板が腫瘍内で凝集し、腫瘍及び内皮細胞の増殖を支持し、腫瘍の転移を亢進させ、がん特異的タンパク質を捕捉することが示唆されている。
【0379】
表面増強レーザー脱離/イオン化-飛行時間型質量分析(SELDI-ToFMS)をヒト脂肪肉腫のマウスモデルで使用して、血小板及び血漿タンパク質のプロファイルを評価した。非血管新生(休止状態)のヒト腫瘍異種移植片及び血管新生(迅速に増殖中)のヒト腫瘍異種移植片を保有するマウスの血小板は、正常な偽手術マウスよりもはるかに高いレベルの腫瘍特異的タンパク質(すなわち、VEGF、bFGF、PDGF)を有することが判明した(図11を参照されたい)。
【0380】
図11は、bFGF、VEGF、PDGF、及びエンドスタチンの血小板レベルが、腫瘍が休止状態から脱出する直前に変化し、その均衡が腫瘍増殖の刺激物質の方へ向かうことを示す図である。ヒト脂肪肉腫の休止状態の異種移植片を保有するマウスの血小板(青色、中央列)または血管新生の異種移植片を保有するマウスの血小板(赤色、右列)を、表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)飛行時間型(ToF)質量分析(MS)を使用して分析した。腫瘍保有マウスの平均MSピーク強度を、健常偽手術マウスの血小板の平均MSピーク強度(黒色、左列)と比較した。明らかであるように、休止状態の腫瘍及び血管新生の腫瘍では、がん関連性のbFGF、VEGF、及びPDGFが著しく上昇するが、がん阻害物質であるエンドスタチンはがんの進行とともに減少する。一方、休眠状態からの脱出(血管新生の増殖、赤色)は阻害物質(エンドスタチン)の減少と関連していた。
【0381】
さらに、血小板は選択したがん特異的タンパク質を能動的に捕捉するのに対し、アルブミンなどの非特異的タンパク質は捕捉されないことが判明した(図12を参照されたい)。
【0382】
図12は、血小板ががん特異的タンパク質を能動的に捕捉し、アルブミンなどの非特異的タンパク質を能動的に捕捉しないことを示すMS発現マップである。ヒト脂肪肉腫の休止状態の異種移植片を保有するマウスの血小板(青色で表示、中央段)及び血管新生の異種移植片を保有するマウスの血小板(赤色、下段)を、SELDI ToF MSを使用して分析した。左側のパネルに示されているように、血管内皮増殖因子(VEGF)は腫瘍保持マウスの血小板中に捕捉されているが、正常な健常マウスの血小板/血漿中には捕捉されていない(灰色で表示、対照、上段)。対照的に、右側のパネルは、アルブミンなどの非特異的タンパク質が捕捉されていないことを示している。
【0383】
次に、健常ヒト個体の血小板には主に血管新生の阻害物質が含まれていることが判明した。健常ヒト対象50名(女性29名、男性21名)(年齢26~89歳、中央値55±13歳)から血小板を得て、市販のELISAアッセイ(R&D Systems,MN,USA)を使用して特定のタンパク質について分析した。血漿と比較して著しく上昇していたが(VEGF 215倍)、PF-4(516倍)、PDGF(914倍)、TSP-1(813倍)、bFGF(17倍)、及びエンドスタチン(0.7倍))、より重要なのは、刺激物質と阻害物質とが均衡していたことである(血小板が血管新生の刺激物質(VEGF、bFGF、PDGF)及び阻害物質(PF4、エンドスタチン)の両方を含有することを示す表である図13を参照されたい)。この均衡は極めて動的であり、がん進行の初期に変化する。例えば、結腸直腸癌を有するヒト対象の初回切除時の血小板(n=35)では、多変量ロジスティック回帰モデリングにより、PDGF(P=0.024)、PF4(P<0.0001)、及びVEGF(P=0.012)がCRC15の独立予測因子であることが確認された。正常ヒト対象の血小板は血管新生阻害物質が優勢であることが示されるのに対し、がん患者の血小板には血管新生刺激物質が主に含まれている。
【0384】
血小板に捕捉される刺激物質と阻害物質との均衡は、ヒト対象の生理機能における変化に対する感受性が高いことが判明した。がん関連タンパク質の血小板による捕捉は、良好な転帰に関連する生活様式の変化を示し得る。限局性前立腺癌患者において、ベースライン時(赤色の群は生活様式の変化なし、青色は生活様式の変化あり)及び6ヶ月の介入(運動、健康的食事、及び規則的睡眠などの生活様式の変化)後に、血小板に捕捉されたタンパク質の特徴づけを行った。
【0385】
図14は、生活様式の積極的介入を受けている限局性前立腺癌を有する対象、及び生活様式を変化させずに経過観察中の限局性前立腺癌を有する対象の血小板の介入後6ヶ月時点でのSELDI-ToF分析を示す。ベースラインでは、血小板タンパク質プロファイルに差異はなかった。生活様式の介入を受けた対象(青色)は、VEGFなどのがん増殖刺激物質の減退(47及び29kDでピーク)、ならびにPF4及びCTAPIIIなどのがん増殖阻害物質の増加(7.4及び9.3kDでピーク)を示した。生活様式介入群では、明らかに阻害物質が上方制御され、かつ刺激物質が減少した。対照的に、生活様式を変化させなかった患者(赤色)は、6ヶ月時点で逆の傾向を示した。
【0386】
実施例8:タンパク質が血小板中に捕捉されるか否かの主要決定因子は、タンパク質がグリコサミノグリカンに結合する能力である
本実施例では、タンパク質の血小板中に捕捉される能力について判定した。
【0387】
通常の生理学的条件下では、血小板はグリコサミノグリカン(GAG)を切断する酵素を極めて高レベルで発現する。例えば、ヘパラン硫酸(HS)及びヘパリン多糖を優先的に切断するエンドグルクロニダーゼ(ヘパラナーゼ)は、正常組織では極めて低レベルで発現するが、損傷、がん、または炎症などの病態では過剰発現となる。最もよく研究されている血小板タンパク質である血小板第4因子(PF4)は、セルグリシンのグリコサミノグリカン(GAG)鎖に結合した血小板α顆粒に保存されている。血小板のセルグリシンは、PF4が結合するコンドロイチン/デルマタン硫酸で装飾されている。より重要なことに、特定のGAGサブタイプに対するPF4の親和性が、腫瘍関連血管新生の局所的制御を調節することが示されている。PF4は血小板由来のセルグリシンGAG鎖よりも内皮細胞由来のパールカンのヘパラン硫酸鎖に対して高い親和性を有しているため、PF4は内皮細胞のGAGに結合し、FGF2などの血管新生刺激物質の結合を防止する。過去に、創傷治癒中または腫瘍増殖中の細胞間相互作用を決定付けるのは、GAGに対する増殖因子の親和性であることが示されていた。
【0388】
図15A及び図15Bは、それぞれの受容体の阻害は血小板による捕捉を阻害しないが、スルフェンによるヘパリン結合の阻害は血小板α顆粒によるタンパク質捕捉の著しい阻害をもたらすことを示すグラフである。FGF、PF4、VEGF、及びTPOのFACS分析を示す図15Aは、透過処理した血小板(黒色、各対の左列)及びそれぞれの受容体の阻害物質に曝露させた血小板(灰色、各対の右列)における増殖因子の同一の血小板取り込みを示している。これに対し、図15Bに示すように、非特異的グリコサミノグリカン阻害剤であるスルフェンによる多血小板血漿の前処理(青色、各ペアの右列)は、ヘパラン硫酸に結合しない唯一の試験した増殖因子であるトロンボポエチンを除いて、全ての血小板による増殖因子の取り込みを著しく阻害する(Inh=阻害剤添加、PF4受容体、CXCR3Bとして知られるケモカイン受容体CXCR3のスプライスバリアント)。
【0389】
タンパク質が血小板中に捕捉されるか否かの主要決定因子は、タンパク質がヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、セルグリシン、またはパールカンなどのグリコサミノグリカンに結合する能力であるように見受けられる。
【0390】
増殖因子及び血管新生調節タンパク質は、受容体の活性化または分解を伴わずにGAGに結合した血小板α顆粒によって輸送可能であることから、新規の血小板固定型リガンド(PAL)が開発された。様々なPALが本開示の他所で開示されている。例えば、PAL1は、ERRIWFPYRRF(配列番号1)の配列を有している。これは、血小板α顆粒中の主要なGAGであるコンドロイチン硫酸(CS)に結合することが示されており、開発された。
【0391】
実施例9:血小板は時間的及び空間的に制御された形で内容物を放出する異なるタイプのα顆粒を有する
本実施例では、異なるα顆粒区画の特徴づけについて記載する。
【0392】
VEGF(血管新生の刺激物質)及びエンドスタチン(血管新生の阻害物質)を同時に担持した血小板は、別個のα顆粒を占有している。免疫蛍光顕微鏡法を使用して、血小板及び巨核球における血管新生阻害物質及び刺激物質の両方の局在化を視覚化した。図16に示すように、二重免疫蛍光顕微鏡法により、血管新生の阻害物質であるエンドスタチン(赤色、左パネル及びオーバーレイ)、ならびに血管新生刺激物質であるVEGF(緑色、中央パネル及びオーバーレイ)が、別個のα顆粒に局在していることが明らかになった(オーバーレイ、右パネルに示す通り)。
【0393】
さらなる実験により、これらの別個の顆粒が、P-セレクチン関連(高親和性トロンビン受容体PAR1によって早期に放出される)またはフォン・ヴィレブランド因子(VWF)関連(低親和性トロンビン受容体PAR4によって放出される)のいずれかであることを同定した。図17は、血管新生の刺激物質がP-セレクチンと局在することを示す免疫蛍光画像である。VEGF及びエンドスタチンが別個の細胞小器官内にあることを立証した後、α顆粒をサブタイプ分類した。抗P-セレクチン及び抗フォン・ヴィレブランド因子などの特定の血小板顆粒を認識する抗体を使用してα顆粒を標識し、抗セロトニン抗体を使用して濃染顆粒を標識した。VEGFに対する抗体(緑色、左パネル)及びα顆粒マーカーP-セレクチンに対する抗体(赤色、中央パネル)を用いた二重免疫蛍光顕微鏡法により、VEGFがP-セレクチンα顆粒に局在していることが確認される(右パネル、統合)。
【0394】
対照的に、エンドスタチンはP-セレクチンα顆粒とは共局在せず、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)α顆粒と共局在した。図18は、エンドスタチンが別個の異なるα顆粒区画に存在し、P-セレクチン(下段)ではなくvWF(上段)と共局在することを示す免疫蛍光画像である。α顆粒中の確立されたタンパク質であるフォン・ヴィレブランド因子(vWF)に対する抗体を用いた二重免疫蛍光染色により、エンドスタチンもα顆粒中に含まれるが、P-セレクチンと共局在しないことが実証され、エンドスタチンが明らかに異なるα顆粒区画中に存在することが確認される。
【0395】
2つのタイプのα顆粒の役割は、創傷治癒の状況において理解され得る。創傷治癒においては、損傷直後に炎症性サイトカイン及び血管新生刺激増殖因子が必要となる。しかしながら、組織が治癒するにつれて、より多くの血管新生阻害物質が放出される。図19は、創傷治癒におけるタンパク質の連続放出ならびにプロテイナーゼ活性化受容体1(PAR1)及びPAR4の局所濃度勾配をまとめた模式図を含む。示すように、損傷直後に血管発芽に関する最初の一過性シグナルがVEGFにより誘導され、続いて伸長及び管形成(bFGFによる)、周皮細胞の動員を通じた血管安定化(PDGFによる)、最後に血管剪定(エンドスタチン、タムスタチン、ならびに他のコラーゲン及びプラスミン切断産物による)が行われる。通常の創傷治癒プロセスはおよそ7~10日を要する。注目すべきことに、このプロセスは、時間的及び空間的に制御された連続的なタンパク質放出を通じて、慎重に全体として調整された血管形成の胎生期の一連の流れを再現する。
【0396】
理論に束縛されることを望まないが、異なるα顆粒タイプを介して、時間的及び空間的に制御され連続的にその内容物を放出する血小板の能力は、血小板に、第1の薬物を早期放出プロファイルを有する第1のα顆粒タイプに担持させ、第2の薬物をより遅い放出プロファイルを有する第2のα顆粒タイプに担持させる、治療分野で利用することができる。このためには、異なるα顆粒タイプの特徴を知る必要があり、あるα顆粒タイプを他のα顆粒タイプに対して選択的に担持させる手段を確立する必要がある。
【0397】
血小板及び内皮細胞は、ヘパリン硫酸(HS)またはコンドロイチン硫酸(CS)などのグリコサミノグリカン(GAG)に結合する増殖因子の能力により、増殖因子(VEGF、bFGF、及びPDGFなど)を内在化することができるように見受けられる。
【0398】
図20は、マウス血管内皮腫細胞(EOMA)の表面上のグリコサミノグリカン(GAG)による増殖因子の捕捉を示すグラフである。ここでは、標準培地条件下または腫瘍条件培地を使用した代替腫瘍環境中のいずれかの単層組織培養条件で増殖中の細胞は、血小板及び内皮細胞上のGAG上にbFGFを捕捉することにより、これを上清から除去する。ヘパリン及びヘパリナーゼはこの現象をさらに強化する。しかしながら、トロンビンに富む腫瘍条件培地によってここでシミュレートした腫瘍微小環境(右端のデータ列)では、bFGF及びその誘導体はGAGから上清に放出され、さらには腫瘍微小環境にまで放出される。値は5つのウェルの平均値及びSEを表す。これらのデータにより、捕捉がヘパリン依存性であり、トロンビンの存在下で増加することが確認される。
【0399】
増殖因子が血小板凝塊により形成された一時的マトリックスから放出されるという確証は、図21によって裏付けられる。
【0400】
図21は、血小板により形成された一時的マトリックスから放出された増殖因子に応答したマウス血管内皮腫細胞(EOMA)の増殖を示すグラフである。標準培地または腫瘍条件培地を使用した単層組織培養で増殖中のEOMA細胞は、bFGF及び他のヘパリン硫酸(HS)結合増殖因子を、EOMA細胞の膜上及び血小板一時的マトリックス上のGAGに固定することによって捕捉する。ヘパリナーゼによる増殖因子の遊離は、例えば腫瘍微小環境における、内皮細胞の増殖能を増加させる。値は5つのウェルの平均値及びSEを表す。
【0401】
血小板第4因子(PF4)は、自然界に存在するHSに対して最も高い親和性のうちの1つを有しており、GAG部位を占有して他のHS結合増殖因子と置き換わることができる。そのため、PF4は腫瘍増殖の阻害物質として機能する。図22は、血小板が腫瘍活性化時に内皮細胞とタンパク質を交換することができる一時的マトリックスを形成することを示す免疫蛍光画像である。マウス血管内皮腫細胞(EOMA)細胞を標準培地(DMEM+10%FBS)で増殖させ、正常血小板を加えた。通常条件下(最上段)では、血小板が細胞膜に沿って凝集するため、PF4(血小板α顆粒の主要内容物、緑色及び左列)はEOMA細胞の周辺部に(すなわち、膜に沿って)見られる。ヘパラン硫酸(赤色、左から2列目)は内皮細胞の膜表面全体に分布しており、DAPI(青色、右から2列目)は核対比染色である。腫瘍条件培地、トロンビン、または内皮細胞の他の活性化因子が存在しない場合、血小板のクランピング及び凝集は生じない。PF4の大部分は血小板に残留し、内皮細胞GAGと共局在しない(最上段の右端の画像を参照されたい)。しかしながら、腫瘍条件培地の存在下でEOMA細胞及び血小板をインキュベートすると(2段目)、HSの発現が増大し、HSが豊富な表面EOMA細胞上のPF4の凝集によって示されるように、厚い血小板一時的マトリックスが形成される。この血小板一時的マトリックスは、EOMA細胞が増殖のために使用する。細胞内での血小板PF4の凝集及びその後の内皮細胞増殖の刺激は、コンドロイチナーゼ及びヘパリチナーゼ(3段目)、ヘパリン(4段目)によって阻害される。一方、HSが豊富な表面EOMA細胞上の血小板PF4の凝集は、トロンビンによって再現される(最下段)。
【0402】
一時的マトリックス内のα顆粒の蓄積を利用して、α顆粒の異なる区画に異なる薬剤を担持させることができる。これらは、腫瘍部位で血小板により形成された一時的マトリックスに捉えられ、例えば腫瘍部位に存在するトロンビン及びその断片によって、時間的及び空間的に制御された形で局所的に放出される。
【0403】
実施例10:PALコンジュゲートを血小板へ担持させる
本実施例では、種々のコンジュゲート(蛍光マーカーのみとの、または蛍光マーカー及び例示的な活性剤(ここではルシタニブ)との)を血小板に担持させた。
【0404】
図23Aに示すように、Fam-PAL1、Fam-PAL2、Fam-PAL1-ルシタニブ、及びFam-PAL2-ルシタニブの各々は、血小板に担持され、担持血小板に目に見える害を及ぼさない。DMSO対照と比較した場合、Fam-PAL1、Fam-PAL2、Fam-PAL1-ルシタニブ、及びFam-PAL2-ルシタニブは、血小板を凝固促進性にする担持プロセスによって血小板を活性化させるのではなく、その形態を変化させず、完全に機能する休止状態(紫色チャネル)に維持させながら、血小板に内在化された(緑色チャネル)。
【0405】
図23Bは、Fam-PAL1またはFam-PAL2(上部)、ならびにFam-PAL1-ルシタニブ及びFam-PAL2-ルシタニブ(下部)の血小板への用量反応性担持を示す。示すように、コンジュゲートの用量は0.004mM~0.22mMの範囲であった。
【0406】
本実施例では、PBS中の新鮮な血小板懸濁液を、37℃で1時間、濃度が異なる示した化合物と共インキュベートし、次いで800gで10分間回転させることにより分離した。次に、担持血小板を2%パラホルムアルデヒドで30分間室温にて固定し、PBS中の0.2%Triton-X 1%BSAで30分間室温にて透過処理し、PBS中の1%BSAで30分間室温にてブロッキングした(各ステップの間にPBSで3回洗浄した)。最後に、血小板をポリ-リジンでコーティングしたガラス底384ウェルプレートに播種し、ウサギ抗ヒトチューブリン及びA647-ロバ抗ウサギで免疫染色した。60倍の油浸対物レンズを備えたNikon-A1共焦点顕微鏡を使用して画像を取得し、ImageJを使用して処理し、CellProfilerを使用して分析した。図23Bのグラフは、各群につき1,500個超の血小板を分析し、Rを使用してプロットした。
【0407】
実施例11:異なるタイプのα顆粒に選択的に担持させることができる
本実施例では、α顆粒の異なるサブ区画に特異的に担持させるための特定の血小板固定型配列(PAL)の相違及び親和性。
【0408】
図24は、PAL1及びPAL2が異なる細胞内局在性を有する、すなわち異なるアルファ顆粒に対する優先性を有することを示す免疫蛍光画像である。VEGFを一方のアルファ顆粒セット(緑色)のマーカーとして、PF4を第2のアルファ顆粒セット(赤色)のマーカーとして使用し、Alexa647標識PAL1及びPAL2(青色)の細胞内局在性をNikon-A1共焦点顕微鏡で記録した。PAL1及びPAL2は、アルファ顆粒のサブセットの両方に担持された。但し、PAL1はVEGF/PAL統合列に青緑色で示すVEGFサブセットにより多く共局在したのに対し、PAL2はPF4/PAL統合列に紫色で示すPF4チャネルにより多く共局在した。これらのデータは、図4Bに示すデータ(PAL1がPAL2よりも密接にCSAに結合することを示す)及び図4Cに示すデータ(PAL2がPAL1よりも密接にHSに結合することを示す)と併せて、2つのタイプのα顆粒が、異なるGAGタイプの優位性によって特徴づけられることを示唆している。
【0409】
理論に束縛されることを望まないが、PAL-コンジュゲートは、まず血小板内に内在化され、次いで特定のPAL配列に基づいて好ましい顆粒タイプに局在すると思われる。
【0410】
図24の画像は、60倍の油浸対物レンズを備えたNikon-A1共焦点顕微鏡を使用して取得した。PAL1及びPAL2は、統合画像内の青緑色及び紫色のピクセルで示すように、アルファ顆粒の両方のサブセットと部分的に共局在する。PAL1及びPAL2の相違を定量化するために、担持血小板の分画を実施した。
【0411】
Fam-PAL1(図25A及び図25Bの紫色)とFam-PAL2(図25A及び図25Bの淡青色)との間の異なる細胞内局在性をもたらす機構をさらに理解するために、これらの2つのペプチドをCSA構造上(図25Aの緑色)またはHS構造上(図25Bの黄色)に別個にドッキングした。点線は、相互作用の鍵となる分子間接触を示す。全体として、PAL1及びPAL2は両方ともそれらのアルギニンを使用してGAGと接触する。CSAに結合するとき、PAL1及びPAL2は両方とも分子の片側に結合したままで、分子と塩橋及び水素結合を形成する。これは、CSAに対するこれらの同程度の結合親和性と一致する。図25Bに示すように、PAL2はHSの側にあるのに対し、PAL1はHSの溝に沿っている。これらの異なる関連性により、HSに対する2つのPALの異なる親和性が生じる可能性がある。これらの構造モデルは、等温熱量測定、FPLC、及び顕微鏡法を含む卓上実験で行われた観察と一致する。実験データを考慮すると、これらのモデルはまた、PAL1及びPAL2の異なる特徴を利用して複数の治療試薬を血小板に担持させる能力を解明する。
【0412】
異なるGAGタイプの優位性によってα顆粒タイプが特徴づけられるという知見を用いて、特定のタイプのα顆粒に薬物を選択的に担持させることができる。
【0413】
図26A及び図26Bは、PAL1(配列番号1)が小分子にコンジュゲートされたとき、PAL1がそれぞれの分子を血小板α顆粒へと導くことができることを示す。血小板をAlexa647標識ルシタニブまたはAlexa647-PAL1コンジュゲートルシタニブと37℃で1時間共インキュベートした。次に、血小板を800gで10分間回転させ、2%パラホルムアルデヒドで固定し、ガラスカバースリップに載置した。透過処理後、血小板中のPF4に対して免疫蛍光染色を実施し、さらにAlexa568-二次抗体で染色した。60倍のオイル対物レンズを備えたNikon-A1レーザー走査型顕微鏡により、画像を収集した。図26Aは、PF4の免疫蛍光を赤色で示し、Alexa647を青色で示した代表的な画像を含む。統合したPF4/Alexa647チャネルは、PF4とAlexa647標識PAL1コンジュゲートルシタニブの共局在を示した。図26Bは、各群の800超のROIに関するAlexa647チャネルの平均強度をImageJを使用して分析したことを示すグラフであり、エラーバーは平均値の標準偏差である。
【0414】
これらのデータは、PAL1薬物生成物をα顆粒、特にCS、P-セレクチンタイプの顆粒に担持させることができることを示している。
【0415】
図27A図27Cは、血小板顆粒を分画するための方法を実証しており、タンパク質マーカーによって異なる顆粒を区別することができることを示している。図27Aは、血小板顆粒を分画するステップを示すフローチャートである。最終ステップは、分離した血小板顆粒を用いた層状スクロース勾配であり、これを図27Bに、定量化した勾配を示す絵図である上部画像、及び図27Cに示すゲル上に別個に担持させた異なる階調を示す下部画像で示す。図27Cは、対照としてDMSOを使用して担持させた血小板からの顆粒画分のウエスタンブロットである。PF4及びVEGFはアルファ顆粒のマーカーであり、MRP4及びLAMP2はリソソーム及び濃染顆粒を含む他の貯蔵顆粒のマーカーである。結果は、大部分の顆粒は画分B、C、及びDに濃縮されていることを示している。
【0416】
PAL1及びPAL2ならびにそれらのコンジュゲートの細胞内局在性をさらに調査するために、様々な化合物を担持させた血小板からの顆粒画分を固定し、ポリ-リジンでコーティングしたガラス底384ウェルプレートに播種した。図27Dに示すように、免疫染色を2つのセットで行った。1つはPF4(黄色)及びMRP4(赤色)を用いたものであり、他方はPF4(黄色)及びVEGF(赤色)を用いたものである。60倍の水浸対物レンズを備えたハイスループット共焦点顕微鏡Phenixを使用して画像を取得した。このメタグラフは、示すように、様々なウェル及び様々なチャネルからの代表的な画像を示している。図27Eに示すように、DMSO処理血小板から収集した全ての画分(図27Dに示す)で取得した画像の粒子分析により、マーカーPF4、VEGF、及びMRP4が画分B、C、及びDに濃縮されているというウエスタンブロットの観察結果が確認された。また、図27Fに示すように、画像の緑色チャネルの粒子分析(これは、様々な化合物(示す通り)を担持させた血小板から収集した全ての画分で取得したFam-PAL1及びFam-PAL1-ルシタニブコンジュゲート、またはFam-PAL2 Fam-PAL2ルシタニブコンジュゲートの局在化を実証する)により、Fam-PAL1及びFam-PAL2ならびにそれらのコンジュゲートもまた画分B、C、及びD中で豊富であることを実証した。最後に、Fam-PAL1またはFam-PLA2及びそれらのコンジュゲートの細胞内局在性を定量化するために、CellProfilerを使用して、画分B、C、及びDの画像全てに対してピアソン相関分析(PCA)を実施した。図27Gを参照されたい。簡潔に述べると、比較する対ごとに2つのチャネルからの画像を統合し、個々の顆粒をセグメント化した。次に、選択した関心領域(ROI)に対してPCA分析を行った。Rを使用して箱ひげ図をグラフ化した。各群には5,000超のROIが含まれる。既に観察されたように、画分Cから最も多くの局在化情報が得られる。ファセット化箱ひげ図は、Fam-PAL1及びFam-PAL2ならびにそれらのコンジュゲートが主にPF4に富むアルファ顆粒のサブセットを標的とすることを示唆している。Fam-PAL2及びとそのコンジュゲートは、VEGFまたはMRP4に富む他の顆粒も標的とする。注目すべきことに、Fam-PAL2はFamの励起及び発光をシフトさせた可能性がある。したがって、緑色チャネルから赤色チャネルへのにじみ(bleeding)の可能性を回避するために、抗PF4なしの条件(白色ボックス)を陰性対照として用いた。
【0417】
これらの結果はPAL1及びPAL2を同時に使用して複数の試薬を血小板に担持させることに対する可能性を示している。
【0418】
実施例12:2つの化合物を担持した単離血小板(各化合物は異なるα顆粒タイプに担持されている)を製造するための例示的な方法
本実施例では、単離血小板に本開示の2つの化合物を担持させる(各化合物は異なるα顆粒タイプに担持されている)。
【0419】
単離血小板を得る。血小板は、合成血小板、同種血小板、自家血小板、または修飾された異種血小板であり得る。実施形態では、血小板は、多血小板血漿から得られる。
【0420】
血小板を、本開示の第1の化合物とin vitroまたはex vivoで接触させる。第1の化合物は、第1の薬剤及び第1のポリペプチドを含む。第1のポリペプチドは、血小板のα顆粒中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができるPAL1(配列番号1)GAG結合ペプチドを含む。PAL1は、少なくとも、第1のタイプのα顆粒、例えば、P-セレクチンタイプのα顆粒上のコンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合する。
【0421】
血小板を、本開示の第2の化合物ともin vitroまたはex vivoで接触させる。第2の化合物は、第2の薬剤及び第2のポリペプチドを含む。第2のポリペプチドは、血小板のα顆粒中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができるPAL2(配列番号2)GAG結合ペプチドを含む。PAL2は、少なくとも、第2のタイプのα顆粒、例えば、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)タイプのα顆粒上のヘパリン硫酸(HS)に優先的に結合する。
【0422】
実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物は、逐次的に担持される。代替の実施形態では、化合物及び第2の化合物は、同時に担持される。
【0423】
接触を、適切な温度、培地組成(塩濃度、pH、栄養素を含む)で、及び化合物が血小板のそれぞれのα顆粒タイプによって内在化されるまでの期間で継続させる。このようにして担持血小板を得る。多くの場合、温度は血小板を得るかまたは投与する体温、例えば37℃である。同様に、組成物のpHは、血小板を得るかまたは投与する血液/血漿のpH付近、例えば約7.4のpHである。
【0424】
本実施例では、本開示に記載されているかまたは当該技術分野で公知の任意の薬剤を使用することができる。薬剤は、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子であり得る。
【0425】
いくつかの実施形態では、第1の薬剤及び第2の薬剤は、独立して、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、PDL1阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ)、FN1阻害剤(例えば、オクリプラスミン)、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、FGFR2アンタゴニスト(例えば、サリドマイド)、トロンビン及びその類似体、CSF3Rアゴニスト(例えば、フィルグラスチム)、PSMB5阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、フマギリン、またはALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)のうちの1つであり得る。
【0426】
第1の薬剤及び第2の薬剤は、同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0427】
例として、第1の薬剤及び第2の薬剤は、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)及びPDL1阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ)、またはEGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)及びマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、またはフマギリン及びマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)であり得る。
【0428】
好ましくは、単離血小板は、1~1000コピーの第1の化合物を含み、かつ1~1000コピーの第2の化合物を含む。
【0429】
このように製造した担持血小板を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、医薬組成物を生成することができる。
【0430】
いくつかの実施形態では、第3のポリペプチドと第3の薬剤(例えば、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)及びマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、及びALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ))とを含む第3の化合物を組み合わせることができる。
【0431】
さらに、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに、複数の血小板(各々が異なる第1及び第2の化合物を含む)を組み合わせることにより生成することができる。上記の任意の第1の薬剤及び/または第2の薬剤ならびにそれらの任意の組み合わせを使用することができる。
【0432】
実施例13:2つ以上の化合物を担持した単離血小板(各化合物は異なるα顆粒タイプに担持されている)を対象に投与することにより疾患または障害を治療するための例示的な方法
本実施例では、本開示の化合物を2つ以上担持した単離血小板(各化合物は異なるα顆粒タイプに担持されている)を、必要とする対象に(例えば、疾患または障害を有する者に)投与する。
【0433】
ここでは、本開示の化合物を2つ以上担持した血小板(各化合物は異なるα顆粒タイプに担持されている)をそれぞれ含む治療有効量の1つ以上の医薬組成物を、必要とする対象に(例えば、注入または注射により)投与する。
【0434】
組成物中の血小板は、少なくとも本開示の第1の化合物及び第2の化合物を含む。第1の化合物は、第1の薬剤及び第1のポリペプチドを含む。第1のポリペプチドは、血小板のα顆粒中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができるPAL1(配列番号1)GAG結合ペプチドを含む。PAL1は、少なくとも、第1のタイプのα顆粒、例えば、P-セレクチンタイプのα顆粒上のコンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合する。第2の化合物は、第2の薬剤及び第2のポリペプチドを含む。第2のポリペプチドは、血小板のα顆粒中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができるPAL2(配列番号2)GAG結合ペプチドを含む。PAL2は、少なくとも、第2のタイプのα顆粒、例えば、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)タイプのα顆粒上のヘパリン硫酸(HS)に優先的に結合する。
【0435】
いくつかの実施形態では、組成物中の血小板は、第3の化合物を含む。第3の化合物は、第3の薬剤及び第3のポリペプチドを含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含む。第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0436】
本実施例では、本開示に記載されているかまたは当該技術分野で公知の任意の薬剤を使用することができる。第1、第2、または第3の薬剤は、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子であり得る。
【0437】
いくつかの実施形態では、2つの化合物は、独立して、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、PDL1阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ)、FN1阻害剤(例えば、オクリプラスミン)、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、FGFR2アンタゴニスト(例えば、サリドマイド)、トロンビン及びその類似体、CSF3Rアゴニスト(例えば、フィルグラスチム)、PSMB5阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、フマギリン、ならびにALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)から選択される薬剤を含み得る。実施形態では、第3の化合物を用いる場合、第3の薬剤は再びこのリストから選択され得る。
【0438】
実施形態では、少なくとも3つの化合物を使用する場合、第1、第2、及び第3の薬剤は、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)及びマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、及びALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)であり得、これは非小細胞肺癌の治療に使用することができる。
【0439】
血小板は、本開示の組み合わせ化合物を担持することができる。例として、第1の薬剤及び第2の薬剤は、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)及びPDL1阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ)であり得、これは膵癌の治療に使用することができる。また、第1の薬剤及び第2の薬剤は、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)及びマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)であり得、これは肺癌の治療に使用することができる。第1の薬剤及び第2の薬剤は、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)及びフマギリンであり得、これは、膵癌、肺癌、または結腸癌の治療に使用することができる。
【0440】
ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、及び/またはメタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を含む第2の医薬組成物を、対象にさらに投与することができる。第2の医薬組成物は、血小板からの化合物の放出を促進する。第2の医薬組成物は、医薬組成物が例えば、第2の医薬組成物が投与される前に少なくとも2回投与された後、投与することができる。
【0441】
代わりに、ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、及び/またはメタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上をそれぞれ含む第2の医薬組成物及び/または第3の組成物を、対象に投与することができる。第2の医薬組成物は、第1のタイプのα顆粒からの第1の化合物の放出を促進し、第3の医薬組成物は、第2のタイプのα顆粒からの第2の化合物の放出を促進する。第2及び第3の医薬組成物は、医薬組成物が例えば、第2の医薬組成物が投与される前に少なくとも2回投与された後、投与することができる。第2の組成物は、第3の医薬組成物が投与された後に投与することができ、逆もまた同様である。
【0442】
担持血小板を含む医薬組成物と併せて、追加の治療剤を対象に投与することができる。一例として、対象に、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)が担持された血小板を投与することができ、さらにレムデシビルを投与することができる。これは、COVIDに関連するであろう急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療に使用することができる。対象に、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)及びフマギリンの一方または両方が担持された血小板を投与することができ、また低用量の化学療法剤も投与することができる。これは、膵癌、肺癌、または結腸癌の治療に使用することができる。対象に、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)及びマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)の一方または両方が担持された血小板を投与することができ、また低用量の化学療法剤も投与することができる。これは、肺癌の治療に使用することができる。対象に、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、及びALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)のうちの1つもしくは両方、または3つ全てが担持された血小板を投与することができ、また低用量の化学療法剤も投与することができる。これは、非小細胞肺癌の治療に使用することができる。
【0443】
必要とする対象は、がんまたは損傷から選択される疾患または障害を有し得る。炎症は、疾患または障害の症状であり得る。疾患または障害は、埋植物、移植片、ステント、または補装具の副作用であり得る。疾患または障害は、欠陥遺伝子に起因し得る。
【0444】
実施例14:2つ以上の本開示の化合物を対象に投与することにより疾患または障害を治療するための例示的な方法
本実施例では、2つ以上の本開示の化合物を、必要とする対象に(例えば、疾患または障害を有する者に)投与する。
【0445】
ここでは、本開示の化合物を2つ以上含む治療有効量の医薬組成物を、必要とする対象に(例えば、注入または注射により)投与する。この方法では、2つ以上の化合物をin vivoで血小板に担持させる。
【0446】
第1の化合物は、第1の薬剤及び第1のポリペプチドを含む。第1のポリペプチドは、血小板のα顆粒中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができるPAL1(配列番号1)GAG結合ペプチドを含む。PAL1は、少なくとも、第1のタイプのα顆粒、例えば、P-セレクチンタイプのα顆粒上のコンドロイチン硫酸(CS)に優先的に結合する。第2の化合物は、第2の薬剤及び第2のポリペプチドを含む。第2のポリペプチドは、血小板のα顆粒中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができるPAL2(配列番号2)GAG結合ペプチドを含む。PAL2は、少なくとも、第2のタイプのα顆粒、例えば、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)タイプのα顆粒上のヘパリン硫酸(HS)に優先的に結合する。
【0447】
いくつかの実施形態では、第3の化合物を血小板に担持させる。第3の化合物は、第3の薬剤及び第3のポリペプチドを含み、第3のポリペプチドは、血小板の第3のアルファ顆粒タイプ中のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することができる第3のGAG結合ペプチドを含む。第3のGAG結合ペプチドは、セルグリシン、パールカン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、及び/またはGPIIb/IIIaに優先的に結合する。
【0448】
本実施例では、本開示に記載されているかまたは当該技術分野で公知の任意の薬剤を使用することができる。第1、第2、または第3の薬剤は、独立して、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子であり得る。
【0449】
いくつかの実施形態では、2つの化合物は、独立して、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)、VEGF阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、PDL1阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ)、FN1阻害剤(例えば、オクリプラスミン)、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、FGFR2アンタゴニスト(例えば、サリドマイド)、トロンビン及びその類似体、CSF3Rアゴニスト(例えば、フィルグラスチム)、PSMB5阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、フマギリン、またはALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)から選択される薬剤を含み得る。
【0450】
3つ以上の化合物を対象に投与することができ、追加の化合物は、すぐ上のリストまたは当該技術分野で公知の任意の薬剤から選択される薬剤、例えば、抗体、化学療法剤、細胞毒性化合物、小分子、蛍光部分、放射性元素、免疫チェックポイント阻害剤、増殖因子、増殖阻害剤、プロテアーゼ/プロテイナーゼ、凝固因子、脂質もしくはリン脂質、細胞外マトリックスタンパク質、ホルモン、酵素、ケモカイン/走化性因子、ニューロトロフィン、チロシンキナーゼ(アゴニストもしくは阻害剤)、または細胞増殖、血管新生、炎症、免疫、もしくは血小板により媒介されるか、もしくは血小板に関連する別の生理的プロセスを阻害する因子を有し得る。
【0451】
実施形態では、少なくとも3つの化合物を使用する場合、第1、第2、及び第3の薬剤は、EGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)及びマルチキナーゼ阻害剤(例えば、レゴラフェニブ)、及びALK/ROS1/NTRK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)であり得、これは非小細胞肺癌の治療に使用することができる。
【0452】
ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、及び/またはメタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上を含む第2の医薬組成物を、対象にさらに投与することができる。第2の医薬組成物は、血小板からの化合物の放出を促進する。第2の医薬組成物は、医薬組成物が例えば、第2の医薬組成物が投与される前に少なくとも2回投与された後、投与することができる。
【0453】
代わりに、ヘパラナーゼ、トロンビン及びその断片ペプチド、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プロテアーゼ活性化受容体4(PAR4)アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド、プラスミン及びその断片、及び/またはメタロプロテイナーゼ、ペルオキシダーゼ、及び/またはホスホヒドロラーゼのうちの1つ以上をそれぞれ含む第2の医薬組成物及び/または第3の組成物を、対象に投与することができる。第2の医薬組成物は、第1のタイプのα顆粒からの第1の化合物の放出を促進し、第3の医薬組成物は、第2のタイプのα顆粒からの第2の化合物の放出を促進する。第2及び第3の医薬組成物は、医薬組成物が例えば、第2の医薬組成物が投与される前に少なくとも2回投与された後、投与することができる。第2の組成物は、第3の医薬組成物が投与された後に投与することができ、逆もまた同様である。
【0454】
本開示の化合物を含む医薬組成物と併せて、追加の治療剤を対象に投与することができる。追加の治療剤は、レムデシビル及び/または低用量の化学療法であり得る。
【0455】
必要とする対象は、がんまたは損傷から選択される疾患または障害を有し得る。炎症は、疾患または障害の症状であり得る。疾患または障害は、埋植物、移植片、ステント、または補装具の副作用であり得る。疾患または障害は、欠陥遺伝子に起因し得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
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図6A
図6B
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図7B
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図7D
図7E
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図8
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図9B
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図9M
図10A
図10B
図10C
図11
図12
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図21
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図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図26
図27A
図27B
図27C
図27D
図27E
図27F
図27G
【配列表】
2024505000000001.app
【国際調査報告】