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特表2024-505002インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するための抑制受容体リガンドとのコンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するための抑制受容体リガンドとのコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20240126BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240126BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K38/28 ZNA
A61P3/10
A61P37/02
C07K14/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544641
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022014070
(87)【国際公開番号】W WO2022165016
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/142,224
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516385790
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ カンザス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】アプレー カイル
(72)【発明者】
【氏名】ファレル マーク
(72)【発明者】
【氏名】バークランド コーリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DB34
4C084NA13
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045DA37
4H045DA89
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、コンジュゲート、前記コンジュゲートを作製する方法、およびその使用を提供する。本技術のコンジュゲートは、インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
のコンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物であって、
式中、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して
であり;
R5は、独立してそれぞれの場合において、アリールまたはアラルキルであり;
R6は、独立してそれぞれの場合において、ハロ、ヒドロキシル、アリール、またはヘテロアリールであり;
X1は、独立してそれぞれの場合において、SEQ ID NO:2のリシンのε-窒素原子、または第1のプロインスリンポリペプチドのその置換バリアントであり;
X2は、独立してそれぞれの場合において、ソルターゼ部分のC末端グリシンの窒素原子のカルボニル炭素であり、ここで、前記ソルターゼ部分は、第2のプロインスリンポリペプチドのC末端で前記第2のプロインスリンポリペプチドと融合されており;
xは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
nは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;かつ
pは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である、
前記コンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物。
【請求項2】
動的光散乱法によって測定された場合に約2nm~約15nmの体積加重平均径を有する、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
動的光散乱法によって測定された場合に約4nm~約8nmの体積加重平均流体力学的径を有する、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項4】
約10,000~約150,000の数平均分子量を有する、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項5】
約40,000~約80,000の数平均分子量を有する、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項6】
R6が、独立してそれぞれの場合において、ハロまたはヒドロキシルである、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項7】
R5が、独立してそれぞれの場合において、
である、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、ソルターゼ部分と融合されており、前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖、SEQ ID NO:3のインスリンC鎖、およびSEQ ID NO:4のインスリンA鎖を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記ソルターゼ部分が、前記第1のプロインスリンポリペプチドのN末端またはC末端に位置する、請求項8記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記ソルターゼ部分の配列がSEQ ID NO:6である、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換、および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記第1のプロインスリンポリペプチドがシグナルペプチド配列を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記シグナルペプチド配列が、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列である、請求項15記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記シグナルペプチド配列がSEQ ID NO:5である、請求項15記載のコンジュゲート。
【請求項18】
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換、および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項19】
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項20】
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項21】
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項22】
前記第2のプロインスリンポリペプチドがシグナルペプチド配列を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項23】
前記シグナルペプチド配列が、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列である、請求項22記載のコンジュゲート。
【請求項24】
前記シグナルペプチド配列がSEQ ID NO:5である、請求項22記載のコンジュゲート。
【請求項25】
前記第1のプロインスリンポリペプチドおよび/または前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:8~10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項26】
前記第1のプロインスリンポリペプチドおよび前記第2のプロインスリンポリペプチドが、ネイティブなヒトインスリンと比べてホルモンインスリン受容体(IR)の活性化の低減を示す、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項記載のコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項28】
薬学的に許容される担体と、請求項1~26のいずれか一項記載の化合物の有効量とを含む、薬学的組成物。
【請求項29】
前記化合物の有効量が、対象における1型糖尿病、若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、または潜在性自己免疫性糖尿病のうちの1つまたは複数を治療するために有効である、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記対象が高血糖ではない、請求項29記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン自己抗体(IAA)を有する、請求項29記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン特異的B細胞集団を有する、請求項29記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記対象が、(a)DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201;(b)DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302;(c)DRB1*0401-DQA1*0301-DQB*0302;(d)DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302;(e)DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;および(f)DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402からなる群より選択される1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプを保有する、請求項29記載の薬学的組成物。
【請求項34】
非経口投与、静脈内投与、または皮下投与のために製剤化されている、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項35】
請求項1~26のいずれか一項記載のコンジュゲートと、使用説明書とを含む、キット。
【請求項36】
その必要がある対象における自己免疫性糖尿病を治療または予防するための方法であって、前記対象に、請求項1~26のいずれか一項記載のコンジュゲートの有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
前記自己免疫性糖尿病が、1型糖尿病、若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、または潜在性自己免疫性糖尿病を含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、自己免疫性糖尿病と診断されているか、または自己免疫性糖尿病のリスクを有する、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記対象が高血糖ではない、請求項36記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン自己抗体(IAA)を有する、請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン特異的B細胞集団を有する、請求項36記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、(a)DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201;(b)DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302;(c)DRB1*0401-DQA1*0301-DQB*0302;(d)DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302;(e)DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;および(f)DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402からなる群より選択される1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプを保有する、請求項36記載の方法。
【請求項43】
前記コンジュゲートが非経口的、静脈内、または皮下に投与される、請求項36記載の方法。
【請求項44】
前記コンジュゲートの投与によって、前記対象におけるインスリン結合性B細胞においてアネルギーが誘導される、請求項36記載の方法。
【請求項45】
前記コンジュゲートの少なくとも1回の投与後の前記対象の血中グルコースレベルが、少なくとも1回の投与前の前記対象で観察された血中グルコースレベルと同等である、請求項36記載の方法。
【請求項46】
前記対象が小児または成人である、請求項36記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2021年1月27日に出願された米国仮特許出願第63/142,224号の恩典および優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本技術は、全体として、コンジュゲート、前記コンジュゲートを作製する方法、およびその使用に関する。本技術のコンジュゲートは、インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
背景
本技術の背景の以下の説明は、単に本技術を理解するための助けとして提供され、本技術の先行技術を説明または構成するものであるとは認められない。
【0004】
1型糖尿病(T1D)は、島抗原に対する自己寛容の喪失、ならびにそれに続く、インスリンの産生および血中グルコースの調節を担うβ細胞を含む膵島のT細胞媒介破壊によって引き起こされる自己免疫疾患である。自己寛容は、免疫システムが自己組織を認識するが炎症的には応答しない能力であり、中枢的および末梢的の両方で協調している。T1Dにおける中枢性寛容の障害は、主要組織適合複合体クラスII(MHC II)をコードするある特定のヒト白血球抗原(HLA)アレルに関する遺伝的危険因子によって示される。これらのアレルは、MHC IIが、重要な抗原であるインスリンT細胞エピトープと弱く結合することを可能にし、かついくつかのインスリン反応性T細胞が中枢性寛容内の負の選択およびクローン除去を回避できるようにする。自己反応性T細胞は、末梢に入った後、インスリンに対する免疫応答を開始し、β細胞を攻撃するように活性化される可能性がある(Stadinski, B. D. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 2010, 107 (24), 10978(非特許文献1))。
【0005】
T1Dの病因において、末梢性寛容を維持できないことも指摘されている。T1DはT細胞媒介性であるものの、B細胞などの抗原提示細胞(APC)が、T細胞活性化を介して発病に役割を果たす(Creusot, R. J. et al., Diabetes 2018, 67 (8), 1481(非特許文献2))。自己反応性B細胞は、末梢に存在するが、それでもアネルギー状態または非反応性状態を続けることによって末梢性寛容の維持を助ける。インスリン結合性アネルギーB細胞の一過性低減は、T1Dの発生と相関しており、アネルギーB細胞の喪失が自己反応性T細胞の活性化および発病を担っていることを示唆する(Smith, M. J. et al., Diabetes 2015, 64 (5), 1703(非特許文献3))。B細胞アネルギーを介した末梢性寛容の保存は、T1Dを発生するリスクが高い個体に対する予防的処置として提唱されている。
【0006】
したがって、健康な細胞の破壊によって引き起こされる有害作用を回避する、T1Dなどの自己免疫疾患に対する治療および予防の必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Stadinski, B. D. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 2010, 107 (24), 10978
【非特許文献2】Creusot, R. J. et al., Diabetes 2018, 67 (8), 1481
【非特許文献3】Smith, M. J. et al., Diabetes 2015, 64 (5), 1703
【発明の概要】
【0008】
本技術の概要
一局面では、本開示は、式I
のコンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物を提供し、
式中、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して
であり;
R5は、独立してそれぞれの場合において、アリールまたはアラルキルであり;
R6は、独立してそれぞれの場合において、ハロ、ヒドロキシル、アリール、またはヘテロアリールであり;
X1は、独立してそれぞれの場合において、SEQ ID NO:2のリシンのε-窒素原子、または第1のプロインスリンポリペプチドのその置換バリアントであり;
X2は、独立してそれぞれの場合において、ソルターゼ部分のC末端グリシンの窒素原子のカルボニル炭素であり、ここで、ソルターゼ部分は、第2のプロインスリンポリペプチドのC末端で第2のプロインスリンポリペプチドと融合されており;
xは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
nは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;かつ
pは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である。
【0009】
一局面では、本開示は、本明細書に開示される任意の態様のコンジュゲートのみならず、薬学的に許容される担体または1つもしくは複数の賦形剤、増量剤もしくは作用物質(特に示されず、かつ/または詳記されないかぎり、以後はまとめて「薬学的に許容される担体」と称される)を含む組成物を提供する。
【0010】
関係する局面では、対象における自己免疫性糖尿病を治療または予防するための医薬であって、本明細書に開示される任意の態様のコンジュゲートと、任意で、薬学的に許容される担体とを含む、医薬が提供される。
【0011】
関係する局面では、薬学的に許容される担体と、本明細書に開示される任意の態様のコンジュゲートの有効量とを含む薬学的組成物が、提供される。
【0012】
一局面では、その必要がある対象における自己免疫性糖尿病を治療または予防する方法であって、対象に、本明細書に開示される任意の態様のコンジュゲートの有効量を投与することを含む、方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】B細胞活性化シグナル伝達は、B細胞受容体(BCR)との抗原結合および免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)のリン酸化によって呼び起こされる。B細胞活性化抑制性シグナル伝達経路は、CD22とのα2,6-結合型シアル酸の結合と一緒になったBCRの同時ライゲーションによって呼び起こすことができる。この抑制性シグナル伝達経路は、炎症シグナル伝達タンパク質を脱リン酸化することによってB細胞活性化を遮断する。
図2図2A: プロインスリン-CD22Lコンジュゲートの一般設計。図2B: B細胞活性化を遮断するためのB細胞受容体(BCR)の免疫抑制受容体CD22との同時ライゲーション。
図3図3A~3Bは、それぞれヒトインスリンおよびヒトプロインスリンバリアントを示す。図3A~3Bは、ヒトインスリンおよびプロインスリンバリアントの一次、二次、および三次構造ならびに配列を示す。ホルモンインスリン受容体の結合(IR-B)、T細胞エピトープ、および重要なB細胞エピトープに関与する残基と共にヒトインスリンおよびプロインスリンへの変異および変更を注記する。B細胞エピトープは、インスリンB鎖のアミノ酸残基3およびインスリンA鎖のアミノ酸残基4および8~10を含む。T細胞エピトープは、インスリンB鎖のアミノ酸残基9~23およびQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKR(SEQ ID NO:7)を有するC-ペプチド断片の各残基を含む。プロインスリンバリアントは、インスリンB鎖内の置換F25D、およびインスリンA鎖内のY19Aを含み、これらは、インスリン受容体(IR)の親和性を低減する。プロインスリンバリアントは、インスリンB鎖内に置換P28KおよびK29P(リスプロ)、またはP28K、K29PおよびH10D(DKP)をさらに含む場合があり、これらは、自己会合を低減する。ソルターゼタグの配列はLPETGGHG(SEQ ID NO:6)である。ネイティブなプロインスリンは、赤色eSrtAタグおよびF25D変異を除外している。インスリンは、C-ペプチドを含有しない。
図4図4A~4C: G3-プロインスリンの分析。すべてのプロインスリンバリアントについて獲得されたが、簡潔さのために省略された、類似のSDS-PAGEおよびHPLC分析の結果。図4A: 標準的なラダー(レーン1)、低および高濃度の精製G3-プロインスリン(レーン2、4)、ならびに低および高濃度の未精製融合物-前駆体FP-G3-プロインスリン(レーン3、5)のSDS-PAGEゲル。図4B: Waters逆相BEH C4カラムを用い、27_40% ACNの20分間勾配をかけた精製G3-プロインスリンのHPLCクロマトグラム。主ピークはAUCの>90%を占める。図4C: LC ESI TOF質量分析器からの質量スペクトル。9559.7m/zの主ピークは、G3-プロインスリンの[M+H]+イオンについての計算質量とマッチする。
図5図5A~5C: アジド-官能基付加CD22LとのCuAACコンジュゲーションのためのアルキン-官能基付加種を与えるためのeSrtAライゲーションおよびCuAACを介したプロインスリンのPEG化。図5A: n=10kDaまたは20kDaである、アルキン-PEGn-G3プロインスリンの合成。図5B: アルキン-G3プロインスリンの合成。図5C: n=10kDaまたは20kDaである、アルキン-PEGn-(プロインスリンLPETG)の合成。
図6図6A~6C: CD22L-プロインスリンコンジュゲートの提唱された合成。図6A: アジド-官能基付加高親和性、高特異性CD22リガンドの構造。図6B: CD22L-G3プロインスリンの合成。図6C: n=10kDaまたは20kDaである、CD22L-PEGn-G3プロインスリンの合成。あるいは、アルキン-PEGn-G3プロインスリンをアルキン-PEGn-(プロインスリンLPETG)に置き換えることによってCD22L-PEGn-(プロインスリンLPETG)を同様に調製することができる。
図7】抗インスリン抗体とのインスリンバリアントの結合の決定。抗インスリン抗体125mAbとのインスリンバリアントの結合のバイオレイヤー干渉法(BLI)からの結合動態データ。
図8】インスリンバリアントホルモン活性の決定。ルシフェラーゼ-レポーター細胞株からのホルモンインスリン受容体(CD220)の活性化データ。
図9】官能基付加オリゴグリシンとのインスリンバリアントのコンジュゲーション。別個の多価コンジュゲートの合成のためのソルターゼ媒介ライゲーションを使用するインスリンバリアントの官能基付加オリゴグリシンとの部位選択的コンジュゲーション。
図10】抗インスリン抗体との4アーム型PEG-インスリンの結合の決定。1~4つのインスリンが4アーム型PEG足場とコンジュゲートされた、4アーム型PEG-インスリンのバイオレイヤー干渉法(BLI)からの結合動態データ。
図11-1】図11: 4アーム型PEG-インスリン内のインスリン自己会合の決定。(上)近UV円偏光二色性(CD)スペクトルに対するインスリン自己会合の作用および4アーム型PEG-インスリン(4)の自己会合の潜在性の表示。(下)インスリン、合成中間体、4アーム型PEG-インスリン(1)、および4アーム型PEG-インスリン(4)についての近UV CDデータ。
図11-2】図11-1の説明を参照のこと。
図12】インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの流体力学的半径の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの動的光散乱法からの流体力学的半径のデータ。
図13】インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの二次構造の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの遠UV円偏光二色性(CD)からの二次構造データ。
図14】インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントのサイズおよび不均一性の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートについてのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)からの分子量推定および不均一性のデータ。
図15-1】図15: 抗インスリンB細胞とのインスリンバリアントの結合の決定。部位選択的ソルターゼ媒介ライゲーションによってFITCで標識されたインスリンバリアントについてのフローサイトメトリーからの抗インスリンVH125非肥満糖尿病マウス脾細胞の結合データ。
図15-2】図15-1の説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本技術の実質的な理解を提供するために、本方法のある特定の局面、様式、態様、変形および特徴が以下に様々なレベルの詳細さで記載されることが認識されるべきである。
【0015】
本方法の実施にあたり、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学および組換えDNAにおける多数の従来技術が使用される。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition; the series Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology; the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press); MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach; Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual; Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition; Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis; 米国特許第4,683,195号; Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization; Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization; Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation; Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986)); Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning; Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory); Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells; Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London);およびHerzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunologyを参照されたい。ポリペプチド遺伝子発現産物のレベル(すなわち、遺伝子翻訳レベル)を検出および測定するための方法は、当技術分野において周知であり、抗体検出および定量技術などのポリペプチド検出方法の使用を含む(Strachan & Read, Human Molecular Genetics, Second Edition. (John Wiley and Sons, Inc., NY, 1999)も参照されたい)。
【0016】
理論に縛られることを望むわけではないが、免疫受容体によってプロインスリンのエピトープが認識されることを維持する一方で低血糖のリスクを最小限にするためには、プロインスリンのホルモン活性を低減することが重要であると考えられる。インスリン受容体Bは、代謝調節を担い、プロインスリンに対してインスリンよりも20~30倍低い親和性を有する(Malaguarnera, R. et al., Endocrinology 2012, 153, 2152-2163; Belfiore, A. et al., Endocrine Reviews 2017, 38, 379-431)。図3A~3Bから明らかなように、免疫およびホルモン認識が類似の領域に見たところ共依存することは、エピトープ認識に有害に作用せずにホルモン機能を選択的に低減することへの難題となる。
【0017】
本技術のコンジュゲートは、抗インスリン抗体に対して、ネイティブなヒトインスリンと同等であった結合動態および親和性(<10nM)を維持する一方で、ホルモン機能の低減を示す。したがって、本明細書に開示されるコンジュゲートは、インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するための、ならびに/または自己免疫疾患(例えば、自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病)の予防および/もしくは治療のための、方法に有用である。
【0018】
定義
特に定義しないかぎり、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、一般的に、本技術が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を含む。例えば、「細胞(a cell)」への言及は、2つまたはそれ以上の細胞の組み合わせなどを含む。一般的に、本明細書に使用される命名法、ならびに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学および核酸化学および下記のハイブリダイゼーションにおける検査手順は、当技術分野において周知であり、一般に採用されるものである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に特に示されないかぎり、その範囲内に入る各別々の値に個別に参照する簡単な方法としての役割を果たすことが意図されるに過ぎず、各別々の値は、それが本明細書に個別に列挙されるかのように本明細書に組み入れられる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に特に示されないかぎり、または文脈上明らかに矛盾しないかぎり、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書に提供されるありとあらゆる例、または例示的な言い回し(例えば、「など(such as)」)の使用は、態様をよりよく明らかにすることが意図されるに過ぎず、特に述べられないかぎり、特許請求の範囲に限定を設けるものではない。明細書中の言い回しは、任意の請求されていない要素を不可欠であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書に使用される場合、IC50は、所与の生物学的機能または生化学プロセス(例えば、インスリン特異的B細胞に結合するまたはそれにおいてアネルギーを誘導する)が半分抑制されるコンジュゲートの濃度を指す。
【0020】
本明細書に使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じて幾分変動する。当業者に明らかでない用語の使用があるならば、それが使用される文脈からして、「約」は、特定の用語から最大でプラスマイナス10%を意味する。例えば、「約10wt.%」は、「9wt.%~11wt.%」を意味すると理解される。「約」が用語に先行する場合、その用語は、「約」が付いたその用語のみならず、「約」で修飾されていないその用語を開示していると解釈されるべきであると理解されたい。例えば、「約10wt.%」は、「9wt.%~11wt.%」を開示するのみならず、「10wt.%」を開示する。
【0021】
本開示に使用される場合の「および/または」という語句は、列挙されたメンバーのいずれかの1つを個別に、またはそのいずれか2つもしくはそれ以上の組み合わせを意味すると理解される。例えば、「A、B、および/またはC」は、「A、B、C、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはA、B、およびCの組み合わせ」を意味する。
【0022】
一般的に、水素またはHなどのある特定の元素に対する言及は、その元素のすべての同位体を含むことが意味される。例えば、R基が水素またはHを含むと定義される場合、これは、重水素およびトリチウムも含む。したがって、トリチウム、C14、P32およびS35などの放射性同位体を含む化合物は、本技術の範囲内である。本技術の化合物にこのような標識を挿入するための手順は、本明細書における開示に基づき当業者に容易に明らかである。
【0023】
一般的に、「置換された」は、その中に含有される水素原子への1つまたは複数の結合が、非水素または非炭素原子への結合によって置き換えられた、以下に定義される有機基(例えば、アルキル基)を指す。置換された基はまた、炭素または水素原子への1つまたは複数の結合が、ヘテロ原子への、二重結合または三重結合を含む1つまたは複数の結合によって置き換えられた基を含む。したがって、置換された基は、特に詳記しないかぎり、1つまたは複数の置換基で置換されている。いくつかの態様では、置換された基は、1、2、3、4、5、または6つの置換基で置換されている。置換基の例には、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、およびI);ヒドロキシル;アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルオキシ、およびヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシレート;エステル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アラルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;ペンタフルオロスルファニル(すなわち、SF5)、スルホンアミド;アミン;N-オキシド;ヒドラジン;ヒドラジド;ヒドラゾン;アジド;アミド;尿素;アミジン;グアニジン;エナミン;イミド;イソシアネート;イソチオシアネート;シアネート;チオシアネート;イミン;ニトロ基;およびニトリル(すなわち、CN)が含まれる。
【0024】
置換されたシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリール基などの置換された環基にはまた、水素原子との結合が炭素原子との結合で置き換えられた環および環系が含まれる。したがって、置換されたシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリール基はまた、以下に定義されるような置換されたまたは非置換のアルキル、アルケニル、およびアルキニル基で置換されている場合がある。
【0025】
アルキル基には、1~12個の炭素原子、典型的には1~10個の炭素、またはいくつかの態様では、1~8、1~6、もしくは1~4つの炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル基が含まれる。アルキル基は、置換されている場合または非置換の場合がある。直鎖アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基などの基が含まれる。分岐アルキル基の例には、イソプロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、および2,2-ジメチルプロピル基が含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換アルキル基は、上記のような置換基で1つまたは複数回置換されている場合があり、それには、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、その他が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0026】
シクロアルキル基には、環内に3~12個の炭素原子、またはいくつかの態様では、3~10個、3~8個、もしくは3~4つ、5つ、もしくは6つの炭素原子を有する単環、二環または三環式アルキル基が含まれる。シクロアルキル基は置換されている場合または置換されていない場合がある。例示的な単環式シクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル基が含まれるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、シクロアルキル基は、3~8環員を有するのに対して、他の態様では、環炭素原子の数は、3~5つ、3~6つ、または3~7つの範囲である。二環および三環系には、架橋シクロアルキル基および縮合環の両方、例えば、非限定的にビシクロ[2.1.1]ヘキサン、アダマンチル、デカリニル、その他が含まれる。置換シクロアルキル基は、上記のような非水素および非炭素基で1つまたは複数回置換されている場合がある。しかし、置換シクロアルキル基にはまた、上記で定義されるような直鎖または分岐鎖アルキル基で置換された環が含まれる。代表的な置換シクロアルキル基は、一置換されている場合、または1回よりも多く置換されている場合があり、例えば、非限定的に上記のような置換基で置換されている場合がある、2,2-、2,3-、2,4-2,5-または2,6-二置換シクロヘキシル基であり得る。
【0027】
シクロアルキルアルキル基は、アルキル基の水素または炭素結合が、上記で定義されるようなシクロアルキル基との結合によって置き換えられた、上記で定義されるようなアルキル基である。シクロアルキルアルキル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。いくつかの態様では、シクロアルキルアルキル基は、4~16個の炭素原子、4~12個の炭素原子、および典型的には4~10個の炭素原子を有する。置換シクロアルキルアルキル基は、この基のアルキル、シクロアルキル、またはアルキルおよびシクロアルキル部分の両方で置換されている場合がある。代表的な置換シクロアルキルアルキル基は、一置換、または1回よりも多く置換されている場合があり、例えば、非限定的に上記のような置換基で一、二または三置換されている場合がある。
【0028】
アルケニル基には、少なくとも1つの二重結合が2つの炭素原子の間に存在することを除き、上記で定義されるような直鎖および分岐鎖アルキル基が含まれる。アルケニル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。アルケニル基は、2~12個の炭素原子、典型的には2~10個の炭素、またはいくつかの態様では、2~8、2~6、もしくは2~4つの炭素原子を有する。いくつかの態様では、アルケニル基は、1、2、または3つの炭素-炭素二重結合を有する。例には、とりわけ、ビニル、アリル、-CH=CH(CH3)、-CH=C(CH32、-C(CH3)=CH2、-C(CH3)=CH(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2が含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換アルケニル基は、一置換されている場合または1回よりも多く置換されている場合があり、例えば、非限定的に上記のような置換基で一、二または三置換されている場合がある。
【0029】
シクロアルケニル基には、2つの炭素原子の間に少なくとも1つの二重結合を有する、上記で定義されたようなシクロアルキル基が含まれる。シクロアルケニル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。いくつかの態様では、シクロアルケニル基は、1、2または3つの二重結合を有し得るが、芳香族化合物を含まない。シクロアルケニル基は、4~14個の炭素原子、またはいくつかの態様では、5~14個の炭素原子、5~10個の炭素原子、または5、6、7、もしくは8つの炭素原子さえ有する。シクロアルケニル基の例には、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、シクロブタジエニル、およびシクロペンタジエニルが含まれる。
【0030】
シクロアルケニルアルキル基は、アルキル基の水素または炭素結合が、上記で定義されたようなシクロアルケニル基との結合で置き換えられた、上記で定義されたようなアルキル基である。シクロアルケニルアルキル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。置換シクロアルケニルアルキル基は、この基のアルキル、シクロアルケニル、またはアルキルおよびシクロアルケニル部分の両方で置換されている場合がある。代表的な置換シクロアルケニルアルキル基は、上記のような置換基で1つまたは複数回置換されている場合がある。
【0031】
アルキニル基には、2つの炭素原子の間に少なくとも1つの三重結合が存在することを除き、上記で定義されたような直鎖および分岐鎖アルキル基が含まれる。アルキニル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。アルキニル基は、2~12個の炭素原子、典型的には2~10個の炭素、またはいくつかの態様では、2~8つ、2~6つ、もしくは2~4つの炭素原子を有する。いくつかの態様では、アルキニル基は、1、2、または3つの炭素-炭素三重結合を有する。例には、とりわけ-C≡CH、-C≡CCH3、-CH2C≡CCH3、および-C≡CCH2CH(CH2CH32が含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換アルキニル基は、一置換されている場合、または1回よりも多く置換されている場合があり、例えば非限定的に上記などの置換基で非限定的に一、二もしくは三置換されている場合がある。
【0032】
アリール基は、ヘテロ原子を含有しない環状芳香族炭化水素である。本明細書におけるアリール基には、単環、二環および三環系が含まれる。アリール基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。したがって、アリール基には、フェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、インデニル、インダニル、ペンタレニル、およびナフチル基が含まれるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、アリール基は、この基の環部分に6~14個の炭素、他には6~12個または6~10個の炭素原子さえ含有する。いくつかの態様では、アリール基は、フェニルまたはナフチルである。「アリール基」という語句には、縮合環、例えば縮合芳香族脂肪族環系を含有する基(例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル、その他)が含まれる。代表的な置換アリール基は、一置換されている場合(例えば、トリル)または1回よりも多く置換されている場合がある。例えば、一置換アリール基には、上記などの置換基で置換され得る、2-、3-、4-、5-、または6-置換フェニルまたはナフチル基が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0033】
アラルキル基は、アルキル基の水素または炭素結合が、上記で定義されたようなアリール基との結合で置き換えられた、上記で定義されたようなアルキル基である。アラルキル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。いくつかの態様では、アラルキル基は、7~16個の炭素原子、7~14個の炭素原子、または7~10個の炭素原子を含有する。置換アラルキル基は、この基のアルキル、アリール、またはアルキルおよびアリール部分の両方で置換されている場合がある。代表的なアラルキル基には、ベンジルおよびフェネチル基、ならびに4-インダニルエチルなどの縮合(シクロアルキルアリール)アルキル基が含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換アラルキル基は、上記のような置換基で1回または複数回置換されている場合がある。
【0034】
ヘテロシクリル基には、1つまたは複数が非限定的にN、O、およびSなどのヘテロ原子である、3つまたはそれ以上の環員を含有する芳香環式(ヘテロアリールとも称される)および非芳香環式化合物が含まれる。ヘテロシクリル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。いくつかの態様では、ヘテロシクリル基は、1、2、3または4つのヘテロ原子を含有する。いくつかの態様では、ヘテロシクリル基には、3~16環員を有する一、二および三環が含まれるのに対して、他のこのような基は、3~6、3~10、3~12、または3~14環員を有する。ヘテロシクリル基は、例えば、イミダゾリル、イミダゾリニルおよびイミダゾリジニル基などの芳香族部分不飽和および飽和環系を包含する。「ヘテロシクリル基」という語句には、例えば、ベンゾトリアゾリル、2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル、およびベンゾ[1,3]ジオキソリルなどの、縮合芳香族および非芳香族基を含むものを含む縮合環種が含まれる。この語句には、非限定的にキヌクリジルなどの、ヘテロ原子を含有する架橋多環式環系もまた含まれる。この語句には、「置換ヘテロシクリル基」と称される、環員の1つと結合した、アルキル、オキソまたはハロ基などの他の基を有するヘテロシクリル基が含まれる。ヘテロシクリル基には、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサチアン、ジオキシル、ジチアニル、ピラニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオニル、ホモピペラジニル、キヌクリジル、インドリル、インドリニル、イソインドリル、アザインドリル(ピロロピリジル)、インダゾリル、インドリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズチアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾキサジニル、ベンゾジチイニル、ベンゾキサチイニル、ベンゾチアジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル(アザベンズイミダゾリル)、トリアゾロピリジル、イソキサゾロピリジル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、チアナフチル、ジヒドロベンゾチアジニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロインドリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、テトラヒドロインドリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンズイミダゾリル、テトラヒドロベンゾトリアゾリル、テトラヒドロピロロピリジル、テトラヒドロピラゾロピリジル、テトラヒドロイミダゾピリジル、テトラヒドロトリアゾロピリジル、およびテトラヒドロキノリニル基が含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換ヘテロシクリル基は、上記などの様々な置換基で2-、3-、4-、5-、もしくは6-置換、または二置換されている、非限定的にピリジルまたはモルホリニル基などで一置換されている場合または1回よりも多く置換されている場合がある。
【0035】
ヘテロアリール基は、1つまたは複数が、非限定的にN、O、およびSなどのヘテロ原子である5環員またはそれ以上を含有する芳香族環式化合物である。ヘテロアリール基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。ヘテロアリール基には、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、インドリル、アザインドリル(ピロロピリジニル)、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾピリジニル(アザベンズイミダゾリル)、ピラゾロピリジニル、トリアゾロピリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾピリジニル、イソキサゾロピリジニル、チアナフチル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、キノキサリニル、およびキナゾリニル基などの基が含まれるが、それに限定されるわけではない。ヘテロアリール基には、インドリル基などの、すべての環が芳香族である縮合環化合物が含まれ、2,3-ジヒドロインドリル基などの、環のうちの1つだけが芳香族である縮合環化合物が含まれる。代表的な置換ヘテロアリール基は、上記のような様々な置換基で1回または複数回置換されている場合がある。
【0036】
ヘテロシクリルアルキル基は、アルキル基の水素または炭素結合が上記で定義されたようなヘテロシクリル基との結合で置き換えられた、上記で定義されたようなアルキル基である。ヘテロシクリルアルキル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。置換ヘテロシクリルアルキル基は、この基のアルキル、ヘテロシクリル、またはアルキルおよびヘテロシクリル部分の両方で置換されている場合がある。代表的なヘテロシクリルアルキル基には、モルホリン-4-イル-エチル、フラン-2-イル-メチル、イミダゾール-4-イル-メチル、ピリジン-3-イル-メチル、テトラヒドロフラン-2-イル-エチル、およびインドール-2-イル-プロピルが含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換ヘテロシクリルアルキル基は、上記などの置換基で1回または複数回置換されている場合がある。
【0037】
ヘテロアラルキル基は、アルキル基の水素または炭素結合が上記で定義されたようなヘテロアリール基との結合で置き換わった、上記で定義されたようなアルキル基である。ヘテロアラルキル基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。置換ヘテロアラルキル基は、この基のアルキル、ヘテロアリール、またはアルキルおよびヘテロアリール部分の両方で置換されている場合がある。代表的な置換ヘテロアラルキル基は、上記などの置換基で1回または複数回置換されている場合がある。
【0038】
本技術の化合物内で、2つまたはそれ以上の付着点を有する(すなわち、二価、三価、または多価の)本明細書に記載される基は、接尾辞「エン」の使用によって名付けられる。例えば、二価アルキル基はアルキレン基であり、二価アリール基はアリーレン基であり、二価ヘテロアリール基は二価ヘテロアリーレン基であるなどである。本技術の化合物との単一の付着点を有する置換された基は、「エン」の名称を使用せずに名付けられる。したがって、例えば、クロロエチルは、本明細書においてクロロエチレンと称されない。
【0039】
アルコキシ基は、水素原子との結合が上記で定義されたような置換または非置換アルキル基の炭素原子との結合によって置き換えられたヒドロキシル基(-OH)である。アルコキシ基は、置換されている場合または置換されていない場合がある。直鎖アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、その他が含まれるが、それに限定されるわけではない。分岐アルコキシ基の例には、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペントキシ、イソヘキソキシ、その他が含まれるが、それに限定されるわけではない。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、その他が含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換アルコキシ基は、上記のような置換基で1回または複数回置換されている場合がある。
【0040】
本明細書に使用される場合の「アルカノイル」および「アルカノイルオキシ」という用語は、各々2~5つの炭素原子を含有する-C(O)-アルキル基および-O-C(O)-アルキル基をそれぞれ指すことができる。同様に、「アリーロイル」および「アリーロイルオキシ」は、-C(O)-アリール基および-O-C(O)-アリール基を指す。
【0041】
「アリールオキシ」および「アリールアルコキシ」という用語は、それぞれ、酸素原子と結合した置換または非置換アリール基、およびアルキルでの酸素原子と結合した置換または非置換アラルキル基を指す。例には、フェノキシ、ナフチルオキシ、およびベンジルオキシが含まれるが、それに限定されるわけではない。代表的な置換アリールオキシおよびアリールアルコキシ基は、上記などの置換基で1回または複数回置換されている場合がある。
【0042】
本明細書に使用される場合、「カルボキシレート」という用語は、-COOH基を指す。
【0043】
本明細書に使用される場合、「エステル」という用語は、-COOR70および-C(O)O-G基を指す。R70は、本明細書に定義されるような置換または非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルアルキルまたはヘテロシクリル基である。Gはカルボキシレート保護基である。カルボキシレート保護基は、当業者に周知である。カルボキシレート基の官能性のための保護基の大規模なリストは、Protective Groups in Organic Synthesis, Greene, T.W.; Wuts, P. G. M., John Wiley & Sons, New York, NY, (3rd Edition, 1999) に見出される場合があり、これらの保護基は、その中に示される手順を使用して付加または除去することができ、この文献は、それが本明細書に完全に示されたかのように、事実上、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0044】
「アミド(amide)」(または「アミド(amido)」)という用語には、C-およびN-アミド基、すなわち、それぞれ-C(O)NR71R72、および-NR71C(O)R72基が含まれる。R71およびR72は、独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルアルキルもしくはヘテロシクリル基である。したがって、アミド基には、カルバモイル基(-C(O)NH2)およびホルムアミド基(-NHC(O)H)が含まれるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、アミドは-NR71C(O)-(C1~5アルキル)であり、この基は、「カルボニルアミノ」と名付けられ、他では、アミドは-NHC(O)-アルキルであり、この基は、「アルカノイルアミノ」と名付けられる。
【0045】
本明細書に使用される場合、「ニトリル」または「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0046】
ウレタン基には、N-およびO-ウレタン基、すなわち、それぞれ-NR73C(O)OR74および-OC(O)NR73R74基が含まれる。R73およびR74は、独立して、本明細書に定義されたような置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、またはヘテロシクリル基である。R73はまた、Hであり得る。
【0047】
本明細書に使用される場合、「アミン」(または「アミノ」)という用語は、-NR75R76基を指し、その際、R75およびR76は、独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル;もしくはヘテロシクリル基である。いくつかの態様では、アミンは、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、またはアルキルアリールアミノである。他の態様では、アミンは、NH2、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、フェニルアミノ、またはベンジルアミノである。
【0048】
「スルホンアミド」という用語には、S-およびN-スルホンアミド基、すなわち、それぞれ-SO2NR78R79および-NR78SO2R79基が含まれる。R78およびR79は、独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルアルキル、もしくはヘテロシクリル基である。したがって、スルホンアミド基には、スルファモイル基(-SO2NH2)が含まれるが、それに限定されるわけではない。本明細書におけるいくつかの態様では、スルホンアミドは-NHSO2-アルキルであり、「アルキルスルホニルアミノ」基と称される。
【0049】
「チオール」という用語は、-SH基を指すのに対し、「スルフィド」には、-SR80基が含まれ、「スルホキシド」には、-S(O)R81基が含まれ、「スルホン」には、-SO2R82基が含まれ、「スルホニル」には、-SO2OR83が含まれる。R80、R81、R82、およびR83は、それぞれ独立して、本明細書に定義されたような置換または非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキル基である。いくつかの態様では、スルフィドは、アルキルチオ基、-S-アルキルである。
【0050】
「尿素」という用語は、-NR84-C(O)-NR85R86基を指す。R84、R85、およびR86基は、独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、もしくはヘテロシクリルアルキル基である。
【0051】
「アミジン」という用語は、-C(NR87)NR88R89および-NR87C(NR88)R89を指し、その際、R87、R88、およびR89は、それぞれ独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキル基である。
【0052】
「グアニジン」という用語は、-NR90C(NR91)NR92R93を指し、その際、R90、R91、R92およびR93は、それぞれ独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキル基である。
【0053】
「エナミン」という用語は、-C(R94)=C(R95)NR96R97および-NR94C(R95)=C(R96)R97を指し、その際、R94、R95、R96およびR97は、それぞれ独立して、水素、本明細書に定義されたような置換または非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキル基である。
【0054】
本明細書に使用される場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、臭素、塩素、フッ素、またはヨウ素を指す。いくつかの態様では、ハロゲンはフッ素である。他の態様では、ハロゲンは、塩素または臭素である。
【0055】
本明細書に使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、-OHまたはそのイオン化形態、-O-を指すことができる。「ヒドロキシアルキル」基は、HO-CH2-などのヒドロキシル置換アルキル基である。
【0056】
「イミド」という用語は、-C(O)NR98C(O)R99を指し、その際、R98およびR99は、それぞれ独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアラルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキル基である。
【0057】
「イミン」という用語は、-CR100(NR101)および-N(CR100R101)基を指し、その際、R100およびR101は、それぞれ独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアラルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキル基であるが、但し、R100およびR101は、両方が同時に水素であることはない。
【0058】
本明細書に使用される場合、「ニトロ」という用語は、-NO2基を指す。
【0059】
本明細書に使用される場合、「トリフルオロメチル」という用語は、-CF3を指す。
【0060】
本明細書に使用される場合、「トリフルオロメトキシ」という用語は、-OCF3を指す。
【0061】
「アジド」という用語は、-N3を指す。
【0062】
「トリアルキルアンモニウム」という用語は、-N(アルキル)3基を指す。トリアルキルアンモニウム基は正に荷電しており、したがって典型的にはハロゲン陰イオンなどの会合する陰イオンを有する。
【0063】
「イソシアノ」という用語は、-NCを指す。
【0064】
「イソチオシアノ」という用語は、-NCSを指す。
【0065】
「ペンタフルオロスルファニル」という用語は、-SF5を指す。
【0066】
当業者によって理解されるように、事実上、特に書面の説明の提供に関して、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、それらのありとあらゆる可能な部分範囲および部分範囲の組み合わせを包含する。記載された任意の範囲は、同じ範囲が少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに等分されることを十分に説明し、可能にすることを容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書に述べられる各範囲は、下方の3分の1、中央の3分の1および上方の3分の1などに容易に分割することができる。同様に当業者によって理解されるように、「最大で」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「よりも小さい」、その他などのすべての言い回しは、列挙された数を含み、後で上記の部分範囲に分割できる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、個々のメンバーを含む。したがって、例えば1~3原子を有する群は、1、2、または3原子を有する群を指す。同様に、1~5原子を有する群は、1、2、3、4、または5原子を有する群を指す、などである。
【0067】
当業者によって認識されているように、「分子量」(「相対モル質量」としても知られる)は、無次元量であるが、1グラム/モルを掛けること、または1Daを掛けることによって分子質量に変換され、例えば、重量平均分子量5,000を有する化合物は、重量平均モル質量5,000g/molおよび重量平均モル質量5,000Daを有する。
【0068】
本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩は、本技術の範囲内であり、それには、所望の薬理活性を保持し、生物学的に望ましくないわけではない酸または塩基付加塩が含まれる(例えば、塩は、過度に有毒、アレルギー性、または刺激性ではなく、生体利用可能である)。本技術の化合物が例えばアミノ基などの塩基性基を有する場合、薬学的に許容される塩は、無機酸(塩酸、ヒドロホウ酸、硝酸、硫酸、およびリン酸など)、有機酸(例えば、アルギネート、ギ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)または酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸など)により形成されることができる。本技術の化合物が、例えばカルボン酸基などの酸性基を有する場合、それは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの金属(例えば、Na+、Li+、K+、Ca2+、Mg2+、Zn2+)、アンモニアまたは有機アミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)または塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リシンおよびオルニチン)と塩を形成することができる。このような塩は、化合物の単離および精製の間にインサイチューで、または精製された化合物をその遊離塩基もしくは遊離酸の形態でそれぞれ適切な酸もしくは塩基と別々に反応させ、このように形成された塩を単離することによって、調製することができる。
【0069】
当業者は、本技術の化合物が互変異性、配座異性、幾何異性、および/または立体異性の現象を示し得ることを認識している。明細書および特許請求の範囲内の式の図は、可能な互変異性、配座異性、立体化学または幾何異性形態のうちの1つだけを表すことができるので、本技術が本明細書に記載される有用性のうちの1つまたは複数を有する化合物の任意の互変異性、配座異性、立体化学および/または幾何異性形態のみならず、これらの様々な異なる形態の混合を包含することが理解されるべきである。
【0070】
「互変異性体」は、互いに平衡である、化合物の異性体形態を指す。異性体形態の存在および/または濃度は、化合物が見出された環境に依存し、例えば、化合物が固体であるか、または有機溶液もしくは水溶液中であるかに応じて異なる場合がある。例えば、水溶液中で、キナゾリノンは、互いに互変異性体と称される以下の異性体形態:
を示し得る。別の例では、グアニジンは、プロトン性有機溶液中で互いに互変異性体とも称される以下の異性体形態:
を示し得る。化合物を構造式で表現する制限のために、本明細書に記載される化合物のすべての化学式は、化合物のすべての互変異性形態を表現し、本技術の範囲内であることが理解されるべきである。
【0071】
化合物の立体異性体(光学異性体としても知られる)には、特定の立体化学が明白に示されないかぎり、構造のすべてのキラル、ジアステレオマー、およびラセミ形態が含まれる。したがって、描写から明らかなように、本技術に使用される化合物には、ありとあらゆる不斉原子での、濃縮または分割された光学異性体が含まれる。ラセミおよびジアステレオマー混合物の両方のみならず、個別の光学異性体を、それらのエナンチオマーまたはジアステレオマーパートナーを実質的に含まないように単離または合成することができ、これらの立体異性体は、すべて本技術の範囲内である。
【0072】
本技術の化合物は、溶媒和化合物、特に水和物として存在し得る。水和物は、化合物もしくは化合物を含む組成物の製造途中に形成する場合があり、または水和物は、化合物の吸湿性のせいで経時的に形成し得る。本技術の化合物は、とりわけDMF、エーテル、およびアルコール溶媒和化合物を含む有機溶媒和化合物としても存在し得る。任意の特定の溶媒和化合物の同定および調製は、合成有機化学または医薬品化学の当業者の技能の範囲内である。
【0073】
本明細書に使用される場合、作用物質または薬物の対象への「投与」は、その意図される機能を実行するために、対象に化合物を導入または送達する任意の経路を含む。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、直腸、くも膜下腔内、または局所を含むが、それに限定されるわけではない任意の適切な経路によって行うことができる。投与は、自己投与および他者による投与を含む。
【0074】
本明細書に使用される場合、「アネルギー」は、外来物質に対する身体の防御機構による反応の欠如を指し、末梢リンパ球寛容の直接誘導を伴う。アネルギー状態にある個体は、しばしば、免疫システムが特異抗原、通常は自己抗原に対する正常な免疫応答を開始できないことを示す。リンパ球は、それらの特異抗原に応答しない場合にアネルギーであると言われる。したがって、アネルギーは、自己破壊を防止するために免疫システムを改変することによって寛容を誘導する。
【0075】
本明細書に使用される場合、「自己抗体」という用語は、個体自身のタンパク質、細胞、組織、または器官のうちの1つまたは複数を標的にし、かつ/またはそれと反応する抗体を指す。本明細書に使用される場合、「自己抗原」という用語は、免疫応答の標的である正常な組織、細胞、タンパク質、ペプチド、またはDNAから構成される抗原を指す(例えば、液性または細胞性免疫応答)。自己抗原は、自己免疫疾患の場合に自己抗体によって標的にされるかまたはそれと反応する場合がある。
【0076】
本明細書に使用される場合、「自己免疫性糖尿病」は、膵臓のインスリン産生β細胞の破壊によって特徴付けられる糖尿病を指す。
【0077】
本明細書に使用される場合、「生体試料」という用語は、生きた細胞に由来する試料物質を意味する。生体試料には、対象から単離された組織、細胞、細胞のタンパク質または膜抽出物、および生体液(例えば、腹水または脳脊髄液(CSF))のみならず、対象内に存在する組織、細胞および液が含まれ得る。本技術の生体試料には、眼、乳房組織、腎組織、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部、胆嚢、耳下腺組織、前立腺、脳、脳下垂体、腎臓組織、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺組織、心組織、肺組織、膀胱、脂肪組織、リンパ節組織、子宮、卵巣組織、副腎組織、精巣組織、扁桃腺、胸腺、血液、毛髪、口腔、皮膚、血清、血漿、CSF、精液、前立腺液、精漿、尿、便、汗、唾液、痰、粘液、骨髄、リンパ液および涙液から採取された試料が含まれるが、それに限定されるわけではない。生体試料はまた、内臓の生検から得ることができる。生体試料は、診断もしくは研究のために対象から得ることができ、または対照として、もしくは基礎研究のために非罹患個体から得ることができる。試料は、例えば、静脈穿刺および外科生検を含む標準方法によって得られる場合がある。ある特定の態様では、生体試料は、針生検によって得られた組織試料である。
【0078】
本明細書に使用される場合、「細胞表面受容体」という用語は、一般的に細胞膜の外面に見出され、例えば血液供給中で循環する可溶性分子と相互作用するタンパク質などの分子を指す。細胞表面受容体はまた、細胞外間隙内に可溶性形態で分泌される場合があり、または細胞の外面から脱落する場合がある。いくつかの態様では、細胞表面受容体は、抗原または抗原受容体を含み得る。他の態様では、B細胞とも名付けられるBリンパ球は、「B細胞受容体」、または「BCR」、または場合により「IgM」受容体と称される細胞表面受容体を有する。
【0079】
本明細書に使用される場合、「対照」は、実験に比較目的で使用される代替試料である。対照は、「陽性」または「陰性」であることができる。例えば、実験の目的が、特定の種類の疾患の処置のための治療剤の有効性の相関を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を示すことが知られている化合物または組成物)および陰性対照(治療を受けていない、またはプラセボの投与を受ける対象または試料)が典型的には採用される。
【0080】
本明細書に使用される場合、「有効量」という用語は、所望の治療および/または予防効果を達成するために十分な量、例えば、本明細書に記載される疾患もしくは状態、または本明細書に記載される疾患もしくは状態に関連する1つもしくは複数の徴候もしくは症状の予防または減少を結果としてもたらす量を指す。治療または予防適用に関連して、対象に投与された組成物の量は、組成物、疾患の程度、種類、および重症度、ならびに全身の健康状態、年齢、性別、体重および薬物耐容性などの個体の特徴に応じて変動する。当業者は、これらおよび他の要因に応じて適切な投薬量を決定することが可能である。組成物はまた、1つまたは複数の追加的な治療用化合物と組み合わせて投与することができる。本明細書に記載される方法では、治療用組成物は、本明細書に記載される疾患または状態(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の1つまたは複数の徴候または症状を有する対象に投与され得る。本明細書に使用される場合、組成物の「治療有効量」は、疾患もしくは状態の生理効果が改善または除去される組成物レベルを指す。治療有効量は、1回または複数回の投与で与えることができる。本明細書に使用される場合、組成物の「予防有効量」は、本明細書に記載される疾患または状態の少なくとも1つの症状の発生を予防するまたは遅延させる組成物レベルを指す。予防有効量は、1回または複数回の投与で与えることができる。
【0081】
本明細書に使用される場合、「発現」には、以下のうちの1つまたは複数が含まれる:遺伝子の前駆体mRNAへの転写;成熟mRNAを産生するための前駆体mRNAのスプライシングおよび他のプロセシング;mRNAの安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用頻度およびtRNAアベイラビリティを含む);ならびに適当な発現および機能に必要ならば翻訳産物のグリコシル化および/または他の修飾。
【0082】
本明細書に使用される場合、「個体」、「患者」、または「対象」という用語は、個別の生物、脊椎動物、哺乳動物、またはヒトであることができる。いくつかの態様では、個体、患者または対象はヒトである。
【0083】
本明細書に使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌化合物、等張および吸収遅延化合物、その他を含むことが意図される。薬学的に許容される担体およびそれらの製剤は、当業者に公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (20th edition, ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.)に記載されている。薬学的に許容される担体の例には、活性作用物質を体内に導入するために有用な液体もしくは固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステラリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒封入材料が含まれる。
【0084】
本明細書に使用される場合、障害または状態の「予防」、「予防する」、または「予防すること」は、統計標本において、未処置対照試料と比べて処置試料での障害もしくは状態の発生を低減するか、または未処置対照試料と比べて障害もしくは状態の1つまたは複数の症状の発生を遅延させる、1つまたは複数の化合物を指す。本明細書に使用される場合、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)を予防することは、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状の開始を予防するまたは遅延させることを含む。本明細書に使用される場合、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の予防はまた、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の1つまたは複数の徴候または症状の再発を予防することを含む。
【0085】
本明細書に使用される場合、「別々の」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分の異なる経路による同時または実質的に同時の投与を指す。
【0086】
本明細書に使用される場合、「順次の」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分の異なる時間での投与を指し、投与経路は同一であるまたは異なる。より詳細には、順次使用は、1つまたは複数の他の活性成分の投与が始まる前の、活性成分のうちの1つの全投与を指す。したがって、その他の1つまたは複数の活性成分を投与する前に活性成分のうちの1つを数分間、数時間、または数日間かけて投与することが可能である。この場合同時処置はない。
【0087】
本明細書に使用される場合、「同時の」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分の同じ経路による、同時のまたは実質的に同時の投与を指す。
【0088】
本明細書に使用される場合、「治療すること」または「治療」は、ヒトなどの対象における本明細書に記載の疾患または障害の治療を扱い、(i)疾患もしくは障害を抑制すること、すなわちその発生を阻止すること;(ii)疾患もしくは障害を軽減すること、すなわち障害の後退を引き起こすこと;(iii)障害の進行を減速すること;および/または(iv)疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状の進行を抑制、軽減、もしくは減速することを含む。いくつかの態様では、治療は、疾患に関連する症状が、例えば、緩和されるか、低減されるか、治癒されるか、または寛解状態に置かれることを意味する。
【0089】
本明細書に記載される障害の治療の様々な様式が、総治療のみならず総治療未満も含み、いくらかの生物学的または医学的に関連する結果が達成される、「実質的」を意味することが意図されることもまた、認識されるべきである。治療は、慢性疾患のための連続長期治療、または急性状態の治療のための単回もしくは少数回投与であり得る。
【0090】
インスリン
インスリンは、膵臓内のランゲルハンス島におけるβ細胞によって産生されるペプチドホルモンである。インスリンは、血液からのグルコースの吸収を調節することによって機能する。増大したタンパク質およびグルコースレベルなどの刺激にさらされると、インスリンは、β細胞から放出され、インスリン受容体に結合し、ヒト代謝の多くの局面に影響するシグナル伝達カスケードを開始する。このプロセスの混乱は、いくつかの疾患、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)、インスリノーマ、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、および多嚢胞性卵巣症候群に直接関係する。インスリンのアミノ酸配列は、特に脊椎動物において進化を通じて強く保存されており、ジスルフィド結合を経由して連結されたAおよびB鎖と名付けられる2つのポリペプチド鎖からなる。
【0091】
インスリンは、最初、プレプロインスリンと呼ばれる不活性前駆体として合成される。一連の高度に調和した酵素調節段階を通じて、プレプロインスリンは、成熟インスリンに変換される。小胞体でのプレプロインスリンのシグナルペプチドの切断に続く酸化およびシャペロン介助フォールディングにより、プロインスリンがもたらされ、プロインスリンは、トランスゴルジネットワークに輸送される。次いで、プロインスリンは、タンパク質分解プロセシング段階に供され、C-ペプチドと呼ばれるフラグメントの放出および成熟インスリンの形成を結果としてもたらし、成熟インスリンは、β細胞中の亜鉛(Zn2+)およびカルシウム(Ca2+)に富む分泌小胞内に不活性ヘキサマーとして貯蔵される。刺激への曝露後に、分泌小胞は細胞膜と融合し、インスリンを放出し、ヘキサマーの活性インスリンモノマーへの解離を促進する。
【0092】
本開示を通じて、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書が引用を特定することによって参照される。また、本開示の中には、参照された引用を参照するアラビア数字があり、その完全な書誌的詳細は、実施例のセクションの後に提供される。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本技術をより完全に説明するために参照により本開示に組み入れられる。
【0093】
1型糖尿病
生涯インスリン補充療法は、T1Dのための最新治療であり、一貫した血中グルコースモニタリングを必要とする。残念ながら、このアプローチは、血中グルコースを完全には調節することができず、腎臓、神経および心疾患のリスクを増大させる慢性高血糖を結果としてもたらす。大規模臨床試験によって、慢性高血糖を最小限にする集中的な血中グルコース調節の実施がこれらの共存疾患のリスクを低減したことが実証された(Group, T. D. C. a. C. T. R., New England Journal of Medicine 1993, 329 (14), 977-986)。したがって、血中グルコースの調節を助けるための残りのβ細胞機能を維持または回復することができる治療は、患者のアウトカムを改善するはずである。
【0094】
β細胞の機能を維持または回復する目標のT1D臨床試験で免疫療法が評価されている。T1Dに対する理想的な免疫療法は、感染防御を低下させずに自己反応性BおよびT細胞をアネルギー化または欠失させることに抗原特異的である。感染防御を維持することは、T1Dにとって特に意義がある。それは、この疾患が主として小児に始まり、インスリン補充療法が相対的に安全であるからである。したがって、包括的免疫抑制に依存する治療法は、特にそれらが慢性投与を必要とするならば、より高いリスクレベルを有する。残念ながら、もっとも実際的な抗原特異的アプローチである粘膜表面での抗原投与によって、数多くの臨床試験でβ細胞機能を保護するために十分な寛容が誘導されることができなかった(Jacobsen, L. M et al., Current Diabetes Reports 2018, 18 (10), 90)。したがって、抗原特異的に寛容を復元するための新しいアプローチを研究することが正当化される。
【0095】
理想的な治療でないものの、多くの包括的免疫抑制療法が、臨床試験で研究されており、抗原特異的アプローチのための潜在的標的への洞察をもたらす。B細胞を除去する抗CD20抗体リツキシマブは、1年目に内因性インスリン産生の増大、外因性インスリンの必要性の低減、およびヘモグロビンA1Cの低減を有して、β細胞の保存を実証した(Bluestone, J. A. et al. Nature 2010, 464 (7293), 1293-1300)。このアウトカムは、膵臓中に炎症性サイトカインを分泌すること、またはT細胞に自己抗原を提示することのいずれかによって、疾患を促進する自己反応性B細胞の喪失を結果としてもたらすという仮説が立てられている。
【0096】
本技術のコンジュゲート
本技術のコンジュゲートは、B細胞がT1Dに能動的に寄与し、したがって、抗原特異的寛容を誘導するようにターゲティングされる場合があるという前提に基づく。
【0097】
B細胞の抗原特異性は、膜固定化された抗体様B細胞受容体(BCR)によって決定される。BCRと同時局在した場合に、炎症性シグナル伝達経路をシャットダウンし、B細胞アネルギーを促進する、B細胞上の独特な受容体が同定されている(図1)。この免疫応答抑制受容体は、α2,6-連結シアリル化グリカンに結合優先性を有するCD22、シアル酸結合性Ig様レクチン(siglec)受容体である。この受容体は、自己対非自己認識機構として機能すると意味付けられている。それは、多数の哺乳動物タンパク質が、細菌および酵母タンパク質と異なりシアル酸末端のグリカンを有するからである。CD22からの炎症抑制応答は、その細胞内免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)によって生成される。BCRおよびCD22の両方と、ジニトロフェノール(DNP)および高親和性CD22リガンドをディスプレイしている多価ポリマーとの結合は、カルシウム流の増加を予防し、免疫活性化応答経路タンパク質のリン酸化を低減し、DNP特異的B細胞株およびマウスにおけるBCRのエンドサイトーシスを刺激することが示された。
【0098】
プロインスリンバリアント ネイティブなプロインスリンは、インスリンB鎖、インスリンC鎖、およびインスリンA鎖を含む。例として、ネイティブなヒトプロインスリンの完全アミノ酸配列は、
である。
【0099】
これらの鎖の各々のネイティブなアミノ酸配列は、以下に提供される。
インスリンB鎖:
インスリンC鎖:
インスリンA鎖:
【0100】
一局面では、本開示は、式I
のコンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物を提供し、
式中、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して
であり;
R5は、独立してそれぞれの場合において、アリールまたはアラルキルであり;
R6は、独立してそれぞれの場合において、ハロ、ヒドロキシル、アリール、またはヘテロアリールであり;
X1は、独立してそれぞれの場合において、SEQ ID NO:2のリシンのε-窒素原子、または第1のプロインスリンポリペプチドのその置換バリアントであり;
X2は、独立してそれぞれの場合において、ソルターゼ部分のC末端グリシンの窒素原子のカルボニル炭素であり、ここで、ソルターゼ部分は、第2のプロインスリンポリペプチドのC末端で第2のプロインスリンポリペプチドと融合されており;
xは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
nは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;かつ
pは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である。明確さのために、アミノ酸L-リシンの描写は、ε-窒素原子を表示して、以下に提供される。
【0101】
本技術のコンジュゲートは、ソルターゼ部分と融合されたプロインスリンポリペプチドを含む場合があり、その際、プロインスリンポリペプチドは、インスリンB鎖、インスリンC鎖、およびインスリンA鎖を含む。ソルターゼ部分は、プロインスリンポリペプチドのN末端またはC末端に位置し得る。追加的または代替的に、本明細書に開示されるコンジュゲートのいくつかの態様では、ソルターゼ部分の配列はLPETGGHG(SEQ ID NO:6)である。
【0102】
追加的または代替的に、本明細書に開示されるコンジュゲートのいくつかの態様では、プロインスリンポリペプチドは、インスリンB鎖(SEQ ID NO:2)にF25D置換および/またはインスリンA鎖(SEQ ID NO:4)にY19AもしくはY19L置換を含む。
【0103】
追加的または代替的に、本明細書に開示されるコンジュゲートのいくつかの態様では、プロインスリンポリペプチドは、インスリンB鎖(SEQ ID NO:2)にH10D置換を含む。追加的または代替的に、本明細書に開示されるコンジュゲートのある特定の態様では、プロインスリンポリペプチドは、インスリンB鎖(SEQ ID NO:2)にP28KおよびK29P置換の両方を含む。本明細書に開示されるコンジュゲートのいくつかの態様では、プロインスリンポリペプチドは、インスリンB鎖(SEQ ID NO:2)にP28K、K29P、およびH10D置換を含む。プロインスリンポリペプチドは、シグナルペプチド配列を含む場合または含まない場合がある。シグナルペプチド配列は、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列であり得る。ある特定の態様では、シグナルペプチド配列はMGSSHHHHHHSSFLDPVLM(SEQ ID NO:5)である。
【0104】
追加的または代替的に、本明細書に開示されるコンジュゲートのいくつかの態様では、プロインスリンポリペプチドは、
ネイティブなプロインスリン配列(β、C-、αペプチド)(SEQ ID NO:8)
X38(B25-Asp)プロインスリン(β、C-、αペプチド、位置バリアントは太字)(SEQ ID NO:9)
A19-Leuプロインスリン(β、C-、αペプチド、位置バリアントは太字)(SEQ ID NO:10)
より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0105】
追加的または代替的に、本明細書に開示されるコンジュゲートのいくつかの態様では、プロインスリンポリペプチドは、ネイティブなヒトインスリンと比べてホルモンインスリン受容体(IR)の活性化の低減を示す。
【0106】
本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドがソルターゼ部分と融合されている場合があり、その際、第1のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖、SEQ ID NO:3のインスリンC鎖、およびSEQ ID NO:4のインスリンA鎖を含む。本明細書に開示される任意の態様では、ソルターゼ部分は、第1のプロインスリンポリペプチドのN末端またはC末端に位置する場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、ソルターゼ部分の配列はSEQ ID NO:6である場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドは、シグナルペプチド配列を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、シグナルペプチド配列は、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列であり得る。本明細書に開示される任意の態様では、シグナルペプチド配列は、SEQ ID NO:5であり得る。
【0107】
本明細書に開示される任意の態様では、第2のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第2のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第2のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第2のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第2のプロインスリンポリペプチドは、シグナルペプチド配列を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、シグナルペプチド配列は、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列であり得る。本明細書に開示される任意の態様では、シグナルペプチド配列はSEQ ID NO:5であり得る。本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドおよび/または第2のプロインスリンポリペプチドは、SEQ ID NO:8~10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む場合がある。本明細書に開示される任意の態様では、第1のプロインスリンポリペプチドおよび第2のプロインスリンポリペプチドは、同じ配列であり得る。
【0108】
本明細書に開示される任意の態様では、コンジュゲートは、動的光散乱法によって測定された場合に約2nm~約15nmの体積加重平均径を有し得る。したがって、本明細書に開示される任意の態様では、コンジュゲートは、動的光散乱法によって測定された場合に約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、またはこれらの値のいずれか2つを含みかつ/もしくはそれらの間の任意の範囲の、体積加重平均径を有し得る。例えば、本明細書に開示される任意の態様では、コンジュゲートは、動的光散乱法によって測定された場合に約4nm~約8nmの体積加重平均径を有し得る。
【0109】
本明細書に開示される任意の態様では、コンジュゲートは、約10,000~約150,000の数平均分子量を有し得る。したがって、本明細書に開示される任意の態様では、コンジュゲートは、約10,000、約20,000、約30,000、約40,000、約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、約100,000、約110,000、約120,000、約130,000、約140,000、約150,000、またはこれらの値のいずれか2つを含みかつ/もしくはそれらの間の任意の範囲の、数平均分子量を有し得る。例えば、本明細書に開示される任意の態様では、コンジュゲートは、約40,000~約80,000の数平均分子量を有し得る。
【0110】
上述のように、R5は、独立してそれぞれの場合において、アリールまたはアラルキルであり、R6は、独立してそれぞれの場合において、ハロ、ヒドロキシル、アリール、またはヘテロアリールである。例えば、Collins, B.E. et al. J Immunol 2006, 177, 2994-3003; Rillahan, C.D. et al. Chem. Sci. 2014, 5, 2398-2406;米国特許第9,981,023号を参照されたい。本明細書に開示される任意の態様では、R6は独立してそれぞれの場合において、ハロまたはヒドロキシルであり得る。本明細書に開示される任意の態様では、R5は、独立してそれぞれの場合において、
であり得る。
【0111】
本技術の治療および予防の方法
以下の説明は、例としてのみ提示され、限定することが意図されない。
【0112】
自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)を治療もしくは予防し、かつ/またはインスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するための方法であって、対象に、本明細書に記載されるコンジュゲートを投与することを含む、方法が、本明細書に記載される。本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、自己免疫疾患は、自己免疫性糖尿病、例えば、糖尿病1型(すなわち、1型糖尿病(T1D)、若年型糖尿病、もしくはインスリン依存性糖尿病)、または成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)である。遅発性(slow onset)1型糖尿病とも称されるLADAはまた、成人に生じ、より低速の発生経過を呈する糖尿病1型の形態である。非肥満関連2型糖尿病と診断された成人の最大約50%がLADAを有し得ると推定されている。本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、自己免疫疾患は、参照標準または正常対照の対象と比べて対象における膵臓のインスリン産生β細胞数の減少を含む。
【0113】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)と診断されている。ある特定の態様では、対象は、3か月未満、6か月未満、9か月未満、1年未満、または1.5年未満の間、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)と診断されている。
【0114】
追加的または代替的に、本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体を有するが、高血糖などの自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を発生していない。自己免疫抗体は、島自己抗原に特異的であり得る。例えば、いくつかの態様では、島自己抗原は、インスリンを含む。他の態様では、自己免疫抗体は抗インスリン抗体である。
【0115】
本明細書に開示される方法のある特定の態様では、対象は、検出可能なレベルのインスリン自己抗体を有せず、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を発生していない、例えば、高血糖を発生していない。
【0116】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団も疾患起炎B細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、またはインスリン+B細胞)も有せず、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を発生していない、例えば高血糖を発生していない。
【0117】
本明細書に開示される方法のある特定の態様では、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患起炎B細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、またはインスリン+B細胞)を有するが、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を発生していない、例えば高血糖を発生していない。いくつかの態様では、B細胞集団は、インスリン特異的B細胞を含む。いくつかの態様では、インスリン特異的B細胞は、B220、CD19、CD20、CD22などの特異的細胞表面受容体、または他の類似の細胞表面受容体およびそのアイソフォームを提示する。ある特定の態様では、インスリン特異的B細胞は、B220、CD19、CD20、CD22などの2つまたはそれ以上の細胞表面受容体、ならびに他の類似の細胞表面受容体およびそのアイソフォームを発現する。
【0118】
追加的または代替的に、本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病または潜在性自己免疫性糖尿病)の診断および程度を助けるために、対象における内因性C-ペプチドのレベルが評価される。C-ペプチドは、残ったβ細胞機能についてのバイオマーカーとしてしばしば利用される。それは、これがインスリンと等しい量で産生され、したがって、対象における総インスリン分泌量に相当し得るからである(Jones, A.G. and Hattersley, A.T., Diabet Med (2013) 30、803-817)。対象に存在する任意の外因性インスリンもまた直接インスリンアッセイで検出されるので、対象におけるC-ペプチドの測定は、インスリンレベルの決定を指示する際に有用であり得る。健康な対象(例えば、自己免疫性糖尿病を有しない対象)は、約0.6nmol/L~約0.8nmol/Lの範囲(例えば、約0.65nmol/L)の内因性C-ペプチドレベルを有する。対照的に、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病またはLADA)を有する対象は、検出不能~約0.6nmol/Lの範囲(例えば、約0.05nmol/L)の内因性C-ペプチドレベルを有する。
【0119】
いくつかの態様では、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.01nmol/L、約0.02nmol/L、約0.03nmol/L、約0.04nmol/L、約0.05nmol/L、約0.06nmol/L、約0.07nmol/L、約0.08nmol/L、約0.09nmol/L、約0.1nmol/L、約0.125nmol/L、約0.15nmol/L、約0.175nmol/L、約0.2nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、もしくは約0.5nmol/Lの、もしくは、約0.01nmol/L、約0.02nmol/L、約0.03nmol/L、約0.04nmol/L、約0.05nmol/L、約0.06nmol/L、約0.07nmol/L、約0.08nmol/L、約0.09nmol/L、約0.1nmol/L、約0.125nmol/L、約0.15nmol/L、約0.175nmol/L、約0.2nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、もしくは約0.5nmol/L未満の、または0.6nmol/L未満の、内因性C-ペプチドレベルを有する。
【0120】
いくつかの態様では、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.1nmol/L、約0.09nmol/L、約0.08nmol/L、約0.07nmol/L、約0.06nmol/L、約0.05nmol/L、約0.04nmol/L、約0.03nmol/L、約0.02nmol/L、約0.01nmol/L、もしくはそれ未満よりも低い、または約0.1nmol/L、約0.09nmol/L、約0.08nmol/L、約0.07nmol/L、約0.06nmol/L、約0.05nmol/L、約0.04nmol/L、約0.03nmol/L、約0.02nmol/L、約0.01nmol/L、もしくはそれ未満の、内因性C-ペプチドレベルを有する。いくつかの態様では、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.01nmol/L、約0.009nmol/L、約0.008nmol/L、約0.007nmol/L、約0.006nmol/L、約0.005nmol/L、約0.004nmol/L、約0.003nmol/L、約0.002nmol/L、約0.001nmol/L、もしくはそれ未満よりも低い、または約0.01nmol/L、約0.009nmol/L、約0.008nmol/L、約0.007nmol/L、約0.006nmol/L、約0.005nmol/L、約0.004nmol/L、約0.003nmol/L、約0.002nmol/L、約0.001nmol/L、もしくはそれ未満の、内因性C-ペプチドレベルを有する。いくつかの態様では、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.001nmol/L、約0.1pmol/L、約0.01pmol/L、約0.001pmol/L、もしくはそれ未満よりも低い、または約0.001nmol/L、約0.1pmol/L、約0.01pmol/L、約0.001pmol/L、もしくはそれ未満の、内因性C-ペプチドレベルを有する。ある特定の態様では、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、検出不能レベルの内因性C-ペプチドを有する。
【0121】
いくつかの態様では、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)と診断されており、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、参照標準と比べて約95%またはそれ未満の内因性C-ペプチドレベルを有する。いくつかの態様では、対象は、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)と診断されており、参照標準と比べて約95%もしくはそれ未満、約90%もしくはそれ未満、約85%もしくはそれ未満、約80%もしくはそれ未満、約75%もしくはそれ未満、約70%もしくはそれ未満、約65%もしくはそれ未満、約60%もしくはそれ未満、約55%もしくはそれ未満、約50%もしくはそれ未満、約45%もしくはそれ未満、約40%もしくはそれ未満、約35%もしくはそれ未満、約30%もしくはそれ未満、約25%もしくはそれ未満、約20%もしくはそれ未満、約15%もしくはそれ未満、約10%もしくはそれ未満、約5%もしくはそれ未満、または約1%もしくはそれ未満の内因性C-ペプチドレベルを有する。
【0122】
いくつかの態様では、内因性C-ペプチドレベルは、絶食(例えばグルコース欠乏)または摂食(例えばグルコースで刺激された)状態の対象において測定され得る。例として、絶食状態の対象は、内因性C-ペプチドレベルの分析前に約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約12時間、約18時間、約20時間、または約24時間絶食している場合がある。別の例では、摂食状態の対象は、内因性C-ペプチドレベルの分析の12時間以内、10時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1.5時間以内、1時間以内、30分以内、15分以内に、または分析と同時に、食事を摂取している場合がある。
【0123】
いくつかの態様では、対象は、絶食(例えばグルコース欠乏)状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、検出不能のレベルの内因性C-ペプチドを有する。いくつかの態様では、対象は、絶食(例えばグルコース欠乏)状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.06nmol/L未満または約0.06nmol/Lの内因性C-ペプチドレベルを有する。いくつかの態様では、対象は、絶食(例えばグルコース欠乏)状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.06nmol/L、約0.07nmol/L、約0.08nmol/L、約0.09nmol/L、約0.1nmol/L、約0.125nmol/L、約0.15nmol/L、約0.175nmol/L、約0.2nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、約0.5nmol/L、約0.6nmol/L、約0.7nmol/L、約0.8nmol/L、約0.9nmol/L、約1.0nmol/L、もしくはそれ以上よりも低い、または約0.06nmol/L、約0.07nmol/L、約0.08nmol/L、約0.09nmol/L、約0.1nmol/L、約0.125nmol/L、約0.15nmol/L、約0.175nmol/L、約0.2nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、約0.5nmol/L、約0.6nmol/L、約0.7nmol/L、約0.8nmol/L、約0.9nmol/L、約1.0nmol/L、もしくはそれ以上の、内因性C-ペプチドレベルを有する。いくつかの態様では、対象は絶食状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.2nmol/L未満もしくは約0.2nmol/L、または約0.5nmol/L未満もしくは約0.5nmol/L、または約1.0nmol/L未満もしくは約1.0nmol/Lの内因性C-ペプチドレベルを有する。
【0124】
いくつかの態様では、対象は、摂食(例えばグルコースで刺激された)状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、検出不能レベルの内因性C-ペプチドを有する。いくつかの態様では、対象は、摂食(例えばグルコースで刺激された)状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.2nmol/L未満または約0.2nmol/Lの内因性C-ペプチドレベルを有する。他の態様では、対象は、摂食(例えばグルコースで刺激された)状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.2nmol/L、約0.25nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、約0.5nmol/L、約0.6nmol/L、約0.7nmol/L、約0.8nmol/L、約0.9nmol/L、約1.0nmol/L、もしくはそれ以上よりも低い、または約0.2nmol/L、約0.25nmol/L、約0.3nmol/L、約0.4nmol/L、約0.5nmol/L、約0.6nmol/L、約0.7nmol/L、約0.8nmol/L、約0.9nmol/L、約1.0nmol/L、もしくはそれ以上の、内因性C-ペプチドレベルを有する。ある特定の態様では、対象は、摂食状態であり、例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートによる治療の前に、約0.6nmol/L未満もしくは約0.6nmol/L、または約0.75nmol/L未満もしくは約0.75nmol/L、または約1.0nmol/L未満もしくは約1.0nmol/Lの内因性C-ペプチドレベルを有する。
【0125】
いくつかの態様では、コンジュゲートは、予防的に投与される。いくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えばインスリン自己抗体)を有せず、コンジュゲートは、予防的に投与される。いくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団も疾患起炎B細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、またはインスリン+B細胞)も有せず、コンジュゲートは、予防的に投与される。いくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えばインスリン自己抗体)を有せず、検出可能なレベルの病原性B細胞集団も疾患起炎B細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、またはインスリン+B細胞)も有せず、コンジュゲートは、予防的に投与される。いくつかの態様では、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)と診断されていない。いくつかの態様では、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)と診断されておらず、コンジュゲートは、予防的に投与される。いくつかの態様では、対象は、T1Dを発生するリスクを有し、例えば、対象は、T1Dと診断された第一度近親者を有する。対象は、成人または小児であり得る。
【0126】
いくつかの態様では、対象は、T1Dを発生するリスクを有し、例えば、対象は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるErlich, et al., Diabetes. 2008 April; 57(4): 1084-1092に記載されたように、T1Dを発生するより高いリスクに関連するDRB1、DQA1、および/またはDQB1座位に1つまたは複数のアレル(例えばDR-DQハプロタイプ)を有する。いくつかの態様では、対象は、以下のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプのうちの1つまたは複数を有する:
(a) DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201;
(b) DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302;
(c) DRB1*0401-DQA1*0301-DQB*0302;
(d) DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302;
(e) DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;または
(f) DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402。
【0127】
いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を発生していない。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を少なくとも約3か月、少なくとも約6か月、少なくとも約9か月、少なくとも約1年、少なくとも約1.5年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、少なくとも約10年、少なくとも約15年、少なくとも約20年、少なくとも約25年、少なくとも約30年、少なくとも約40年、少なくとも約50年、またはそれよりも長い間発生していない。
【0128】
いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)を発生していない。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)を少なくとも約3か月、少なくとも約6か月、少なくとも約9か月、少なくとも約1年、少なくとも約1.5年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、少なくとも約10年、少なくとも約15年、少なくとも約20年、少なくとも約25年、少なくとも約30年、少なくとも約40年、少なくとも約50年、またはそれよりも長い間発生していない。
【0129】
いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象は、参照標準または参照治療と比較して遅延した、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の遅延した発生速度を有する。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の発生速度は、参照標準または参照治療と比較して少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年、またはそれよりも長い間遅延している。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状の発生速度は、参照標準または参照治療と比較して約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、またはそれ以上遅延している。
【0130】
いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象は、参照標準または参照治療と比較して自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の遅延した発生速度を有する。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の発生速度は、参照標準または参照治療と比較して少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年、またはそれよりも長い間遅延している。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の発生速度は、参照標準または参照治療と比較して約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、またはそれ以上遅延している。
【0131】
いくつかの態様では、コンジュゲートは、治療的に投与される。いくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えば、インスリン自己抗体)を有し、コンジュゲートは、治療的に投与される。いくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患起炎B細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、またはインスリン+B細胞)を有し、コンジュゲートは、治療的に投与される。いくつかの態様では、対象は、検出可能なレベルの自己免疫抗体(例えば、インスリン自己抗体)および検出可能なレベルの病原性B細胞集団または疾患起炎B細胞集団(例えば、抗インスリンB細胞、インスリン特異的B細胞、またはインスリン+B細胞)を有し、コンジュゲートは、治療的に投与される。いくつかの態様では、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)と診断されている。いくつかの態様では、対象は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)と診断されており、コンジュゲートは、治療的に投与される。
【0132】
いくつかの態様では、コンジュゲートの投与は、投与前の対象において観察されたものと比較して、対象における自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を治療するか、後退させるか、または改善する。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象における自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状は、投与前の対象において観察されたものと比較して、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年、またはそれよりも長い間治療されるか、後退するか、または改善される。ある特定の態様では、コンジュゲートを投与されると、対象における自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状は、投与前の対象において観察されたものと比較して、約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、またはそれ以上治療されるか、後退するか、または改善される。
【0133】
いくつかの態様では、コンジュゲートの投与は、投与前の対象において観察されたものと比較して、対象における自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)を治療するか、後退させるか、または改善する。いくつかの態様では、コンジュゲートを投与されると、対象における自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)は、投与前の対象において観察されたものと比較して、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも25年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年、またはそれよりも長い間治療されるか、後退するか、または改善される。ある特定の態様では、コンジュゲートを投与されると、対象における自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)は、投与前の対象において観察されたものと比較して、約2%、約3%、約4%、約5%、約7%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、またはそれ以上治療されるか、後退するか、または改善される。
【0134】
いくつかの態様では、対象は、本明細書に記載されるコンジュゲートの治療の1クールを受ける。本明細書に使用される場合の治療クールは、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)が治療されるか、治癒されるか、緩和されるか、または症状が低減するまで対象に提供された、適切な開業医によって決定された場合の特定の投薬量またはレジメンを指す。他の態様では、対象は、コンジュゲートの1クールを超える治療を受ける。他の態様では、対象は、コンジュゲートの複数の治療クールを受ける。なお他の態様では、対象は、コンジュゲートの複数の治療クールを受け、各治療クールは、特定の時間長(例えば、約1日、約1週間、約2週間、約1か月、約2か月、約3か月、約6か月、約1年、約1.5年、約2年、約3年、約4年、約5年、約7.5年、約10年、約12.5年、約15年、約20年、またはそれよりも長い)だけ隔てられている。
【0135】
いくつかの態様では、対象は、成人(例えば、少なくとも18歳、例えば、少なくとも19、20、21、22、23、24、25、25~30、30~35、35~40、40~50、50~60、60~70、70~80、または80~90歳)である。いくつかの態様では、対象は、小児(例えば、18歳未満、例えば、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1歳、またはそれ未満よりも低い年齢)である。いくつかの態様では、対象は、男性または女性である。
【0136】
いくつかの態様では、本明細書に記載される任意の方法に使用される参照治療には、インスリンもしくはインスリン類似体、例えば、本明細書に記載されるインスリンもしくはインスリン類似体;島細胞移植;膵臓移植;または汎B細胞抗原に対する抗体(例えば、細胞傷害性抗体)(例えば、抗CD20抗体、抗CD22抗体、または抗CD19抗体)が含まれるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、参照治療は、哺乳動物、例えばヒトもしくはマウスからの天然インスリン(例えば、プロインスリンもしくは成熟インスリン)、またはUS2013/0028918A1もしくはCN103509118Aに記載された組成物を含むことができる。
【0137】
いくつかの態様では、本明細書に記載される任意の方法に使用される参照標準には、自己免疫疾患療法、例えば1型糖尿病療法のアウトカム、例えば本明細書に記載されるアウトカムが含まれる。いくつかの態様では、参照標準は、例えば、対象が、T1Dを発生するリスクを有する(例えば、対象がT1D患者の第一度近親者である)場合;対象が前糖尿病である(例えば、対象が自己抗体陽性である)場合;対象がT1Dの発生を最近経験した(例えば、発生からの時間が12か月未満である)場合;対象が、長期にわたりT1Dである(例えば、発生からの時間が12か月超もしくは12か月である)場合;または対象が健康な対象である(例えば、健康な、年齢および/もしくは性別マッチ対象である)場合の、治療法、例えば本明細書に記載されるコンジュゲート療法の開始前の対象におけるマーカーのレベル(例えば、血中グルコースまたはCペプチドのレベル)である。いくつかの態様では、参照標準は、例えば、対象が、T1Dを発生するリスクを有する(例えば対象がT1D患者の第一度近親者である)場合;対象が前糖尿病である(例えば、対象が自己抗体陽性である)場合;対象がT1Dの発生を最近経験した(例えば、発生からの時間が12か月未満である)場合;対象が、長期にわたりT1Dである(例えば、発生からの時間が12か月超もしくは12か月である)場合;または対象が健康な対象である(例えば、健康な、年齢および/もしくは性別マッチ対象である)場合の、治療法、例えば本明細書に記載されるコンジュゲート療法の開始前の疾患の存在/進行/重症度、または疾患の症状の存在/重症度の尺度である。
【0138】
薬学的組成物
インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導し、かつ/または自己免疫疾患、例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病を治療もしくは予防するために使用することができる本明細書に記載されるコンジュゲートを含有する薬学的組成物が、本明細書に提供される。
【0139】
薬学的組成物中のコンジュゲートの量および濃度、ならびに対象に投与された薬学的組成物の量は、臨床的に意義のある要因、例えば対象の医学的に意義のある特性(例えば、年齢、体重、性別、他の医学的状態、その他)、薬学的組成物中の化合物の溶解度、化合物の効力および活性、ならびに薬学的組成物の投与方式に基づき選択することができる。投与経路および投薬形態(dosage regime)に関するさらなる情報については、Comprehensive Medicinal Chemistry (Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990の第5巻の第25.3章を参照されたい。
【0140】
インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導し、かつ/または自己免疫疾患、例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病を治療もしくは予防するために使用することができる、本明細書に記載されるコンジュゲートを含有する薬学的組成物が、本明細書に提供される。
【0141】
本明細書に記載されるコンジュゲートが単独で投与される可能性があるものの、いくつかの態様では、本技術のコンジュゲートは、薬学的製剤(組成物)として投与される場合があり、その際、コンジュゲートは、1つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と組み合わされる。本明細書に開示される1つまたは複数のコンジュゲートを有する薬学的組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および流動ポリエチレングリコール、その他)を含有する溶媒または分散媒、およびそれらの適切な混合物であることができる担体を含むことができる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合、必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適当な流動性を維持することができる。微生物の活動の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメルサール(thiomerasol)、その他によって達成することができる。酸化を防止するために、グルタチオンおよび他の抗酸化剤を含ませることができる。多くの場合に、組成物中に等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含ませることが有利である。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含ませることによってもたらすことができる。
【0142】
コンジュゲートは、ヒト医薬への使用のための任意の好都合な方法で投与するために製剤化され得る。ある特定の態様では、医薬品中に含まれるコンジュゲートは、それ自体活性であり得、または例えば、生理学的設定で活性化合物に変換されることが可能な、プロドラッグであり得る。選択された投与経路にかかわらず、適切な水和形態で使用され得る本技術のコンジュゲート、および/または本技術の薬学的組成物は、本明細書に記載される薬学的に許容される剤形に、または当業者の公知の他の従来方法によって製剤化される。
【0143】
別の局面では、本技術は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と一緒に製剤化された、本明細書に記載されるコンジュゲートの治療有効量または予防有効量を含む薬学的に許容される組成物を提供する。本明細書に記載される薬学的組成物は、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内注射による非経口投与のために適合されたものを含む、固体または液体形態、例えば無菌溶液または懸濁液での投与のために特別に製剤化することができる。ある特定の態様では、薬学的組成物は、無菌水中に単に溶解または懸濁することができる。いくつかの態様では、医薬品は、非発熱性である、すなわち、患者の体温を上昇させない。
【0144】
薬学的に許容される担体として役立つことができる物質のいくつかの例には、(1)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン;(3)セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばカカオ脂および坐剤用ワックス;(9)油、例えばラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;(21)シクロデキストリン、例えばCaptisol(登録商標);ならびに(22)薬学的製剤に採用される他の無毒の適合性物質が含まれる。いくつかの態様では、担体には、リン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。
【0145】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、調味剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、組成物中に存在することができる。
【0146】
本明細書に記載される場合、本技術のコンジュゲートのある特定の態様は、アミンなどの塩基性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される酸と薬学的に許容される塩を形成することが可能である。これらの場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本技術のコンジュゲートの相対的に無毒の無機および有機酸付加塩を指す。これらの塩は、コンジュゲートの最終単離および精製の間にインサイチューで、または本明細書に記載される精製されたコンジュゲートをその遊離塩基の形態で適切な有機もしくは無機酸と別々に反応させ、このように形成された塩を単離することによって、調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩、その他が含まれる(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。
【0147】
他の場合には、本技術のコンジュゲートのある特定の態様は、1つまたは複数の酸性官能基を含有することができ、したがって、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することが可能である。これらの塩は、同様に、コンジュゲートの最終の単離および精製の間にインサイチューで、または精製されたコンジュゲートをその遊離酸の形態で適切な塩基、例えば薬学的に許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩と、アンモニアと、または薬学的に許容される有機一級、二級、もしくは三級アミンと別々に反応させることによって、調製することができる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩、その他が含まれる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、その他が含まれる(例えば、Bergeら、前記を参照されたい)。
【0148】
薬学的に許容される抗酸化剤の例には、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、その他;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、その他;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸、その他が含まれる。
【0149】
薬学的組成物は、典型的には、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン泳動、および経粘膜投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の構成成分を含むことができる:無菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張性の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジまたは多回用バイアル中に封入することができる。患者または治療担当医師の便宜上、投薬製剤は、治療クール(例えば7日の治療)の間にすべての必要な器具(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、シリンジおよび針)を含有するキットとして提供することができる。
【0150】
本開示の製剤には、非経口投与に適したものが含まれる。製剤は、単位剤形として好都合に提示される場合があり、薬学技術において周知の任意の方法によって調製される場合がある。1回量剤形を産生するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療されている対象および特定の投与様式に応じて変動する。1回量剤形を産生するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的に、治療効果を産生する化合物の量である。一般的に、この量は、100パーセントのうち、約1パーセント~約99パーセントの活性成分、約5パーセント~約70パーセント、または約10パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0151】
非経口投与に適した本技術の薬学的組成物は、本明細書に記載されるコンジュゲートを、1つまたは複数の薬学的に許容される、無菌で等張の水性もしくは非水性溶液、分散物、懸濁液もしくはエマルション、または使用直前に無菌注射液または分散物に再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含み。これらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含有し得る。
【0152】
本技術の薬学的組成物に採用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、その他など)、およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが含まれる。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング物質の使用によって、分散物の場合、必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤、例えばTween様界面活性剤の使用によって、維持することができる。いくつかの態様では、薬学的組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)は、Tween様界面活性剤、例えば、Tween-80を含む。いくつかの態様では、薬学的組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)は、Tween様界面活性剤、例えばTween-80を約0.001%~約2%、または約0.005%~約0.1%、または約0.01%~約0.5%の濃度で含む。
【0153】
いくつかの態様では、コンジュゲートの効果を延長するために、皮下または筋肉内注射部位からの薬物の吸収を減速することが望ましい場合がある。これは、水溶性に乏しい結晶または非晶物質の液体懸濁物の使用によって達成され得る。次いで、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、それは今度は、結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。代替的に、非経口的に投与された形態のコンジュゲートの吸収遅延は、コンジュゲートを油性媒体中に溶解または懸濁することによって達成される。代替的に、薬物の吸収は、コンジュゲートの濃縮された形態の使用により遅延され得る。
【0154】
いくつかの態様では、コンジュゲートは、ボーラス注入または静注として投与される。いくつかの態様では、コンジュゲートは、シリンジ注射、ポンプ、ペン、針、または留置カテーテルにより投与される。
【0155】
注射用途に適した薬学的組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)または無菌注射液もしくは分散物の即時調製のための分散物および無菌粉末を含むことができる。静脈内投与のために、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。すべての場合に、非経口投与用の組成物は、無菌でなければならず、容易なシリンジ通過性が存在する程度に流動性であるべきである。これは、製造および保管の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなくてはならない。
【0156】
無菌注射液は、活性化合物を必要な量で、必要に応じて上記で並べられた成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み入れ、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散物は、活性化合物を、上記で列挙されたものからの基本分散媒および必要な他の成分を含有する無菌媒体に組み入れることによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、典型的な調製方法には、以前に無菌濾過されたその溶液から、活性成分に加えて任意の追加的な所望の成分の粉末をもたらすことができる真空乾燥および凍結乾燥が含まれる。
【0157】
経口組成物は、一般的に、不活性希釈剤または食用の担体を含む。経口治療的投与のために、活性化合物を賦形剤と共に組み入れ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口剤として使用するための液体担体を使用して調製することができる。薬学的に適合する結合剤、および/または補助物質が、組成物の一部として含まれることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、その他は、以下の成分:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、もしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動化剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの着香剤、もしくは類似の性質の化合物のいずれかを含有することができる。
【0158】
吸入による投与のために、化合物は、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などの気体を含有する高圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達することができる。このような方法には、米国特許第6,468,798号に記載されるものが含まれる。
【0159】
本明細書に記載される治療用化合物の全身投与はまた、経粘膜または経皮/局所手段によることができる。経粘膜または経皮/局所投与のために、透過すべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は、当技術分野において一般的に公知であり、それには、例えば、経粘膜投与のための、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻スプレーまたは吸入剤の使用により達成することができる。経皮/局所投与のために、活性化合物は、当技術分野において一般的に公知の粉末、溶液、軟膏、ローション、ゲル、パッチ、ペースト、膏薬、またはクリーム中に製剤化される。活性化合物は、薬学的に許容される担体と、および必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤、または噴射剤と、無菌条件下で混合することができる。一態様では、経皮投与は、イオン泳動によって実行され得る。
【0160】
導入方法は、再チャージ可能なまたは生分解性のデバイスによって提供され得る。様々な徐放ポリマーデバイスが開発されており、近年、タンパク質様生物製剤を含む薬物の制御送達のためにインビボで試験されている。生分解性および非生分解性ポリマーの両方を含む様々な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して、特定の標的部位での化合物の徐放のための埋入物を形成することができる。
【0161】
本技術は、前述の薬学的組成物および調製物としてコンジュゲートの製剤を企図している。さらに、本技術は、前述の投与経路のいずれかによる投与を企図している。当業者は、治療されている状態ならびに治療されている患者の健康全般、年齢、およびサイズに基づいて適切な製剤および投与経路を選択することができる。
【0162】
有効投薬量
任意の治療剤の投薬量、毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果との間の用量比は治療指数であり、比LD50/ED50として表現することができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。有毒副作用を示す化合物が使用され得るものの、非罹患細胞への潜在的損傷を最低限にし、それにより副作用を低減するために、このような化合物を罹患組織部位にターゲティングする送達システムを設計するように注意を払うべきである。
【0163】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトに使用するための一連の投薬量を製剤化に使用することができる。このような化合物の投薬量は、ほとんどまたはまったく毒性なしにED50を含む循環濃度の範囲内に入り得る。投薬量は、採用される剤形および用いられる投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。方法に使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初は細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるようなIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルで設定することができる。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量を正確に決定するために使用することができる。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0164】
本明細書に記載される薬学的組成物中のコンジュゲートの実際の投薬量レベルは、患者に有毒でなしに、特定の患者、組成物、および投与様式について所望の治療または予防応答を達成するために有効な活性成分の量を得るように変化させることができる。
【0165】
選択された投薬量レベルは、採用された特定のコンジュゲート、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、採用される特定のコンジュゲートの排泄速度、治療期間、採用された特定のコンジュゲートと組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/もしくは物質、疾患もしくは障害の重症度、前治療、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態および前病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因を含む、種々の要因に依存する。そのうえ、本明細書に記載される治療的または予防的有効量の薬学的組成物を用いた対象の治療は、単回治療または一連の治療を含むことができる。
【0166】
当技術分野において通常の技能を有する医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師は、薬学的組成物中に採用されるコンジュゲートの用量を、所望の治療または予防効果を達成するために必要な用量よりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増大させることもできる。コンジュゲートが医薬品として対象に投与される場合、これをそれ自体で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば、0.1~99.5%(もしくは0.5~90%)の活性成分を含有する薬学的組成物として与えることができる。
【0167】
一般に、コンジュゲートの適切な1日用量は、治療効果を産生するために有用な最低用量であるコンジュゲートの量である。このような有効用量は、一般的に上記の要因に依存する。典型的には、治療または予防効果を達成するために十分な、本明細書に開示される1つまたは複数のコンジュゲートの有効量は、約0.000001mg/キログラム体重/日~約10,000mg/キログラム体重/日の範囲である。適切に、投薬量範囲は、約0.0001mg/キログラム体重/日~約100mg/キログラム体重/日である。例えば、投薬量は、毎日、2日毎もしくは3日毎に1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、または毎週、2週間毎もしくは3週間毎に1~10mg/kgの範囲内であることができる。一態様では、治療用化合物の単回投薬量は、0.001~10,000マイクログラム/kg体重の範囲である。一態様では、担体中の1つまたは複数のコンジュゲート濃度は、0.2~2000マイクログラム/送達ミリリットルの範囲である。例示的な治療形態は、1日1回または1週間1回の投与を伴う。治療適用では、時々、疾患の進行が低減もしくは終了するまで、または対象が疾患の症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで相対的に短い間隔で相対的に高い投薬量が必要とされる。その後、患者に予防形態を投与することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数のコンジュゲートの治療有効量は、標的組織で10-32~10-6モル濃度、例えば約10-7モル濃度のコンジュゲート濃度として定義され得る。この濃度は、0.001~100mg/kgの全身用量または体表面積あたり等価の用量によって送達され得る。標的組織で治療濃度を維持するために、例えば、1日1回または毎週の投与によるが、連続投与(例えば、非経口注入または経皮適用)も含む投与計画が、最適化される。
【0168】
一般的に、患者のためのコンジュゲートの静脈内および皮下用量は、約0.0001~約100mg/キログラム体重/日、例えば、約0.0001~約0.001mg/kg/日、約0.001~約0.01mg/kg/日、約0.01~約0.1mg/kg/日、約0.1~約1mg/kg/日、約1~約10mg/kg/日、または約10~約100mg/kg/日の範囲である。いくつかの態様では、コンジュゲートは、60nmol/kg/日超または60nmol/kg/日の用量で投与される。いくつかの態様では、コンジュゲートは、75nmol/kg/日超もしくは75nmol/kg/日、100nmol/kg/日超もしくは100nmol/kg/日、150nmol/kg/日超もしくは150nmol/kg/日、または200nmol/kg/日超もしくは200nmol/kg/日の用量で投与される。ある特定の態様では、コンジュゲートは、1mg/kg/日超もしくは1mg/kg/日、例えば、2mg/kg/日、4mg/kg/日、8mg/kg/日、16mg/kg/日、32mg/kg/日、64mg/kg/日、100mg/kg/日、200mg/kg/日、またはそれよりも高い用量で投与される。
【0169】
コンジュゲートは、約100mg/mLまたはそれ未満(例えば、100mg/mLまたはそれ未満、例えば、90mg/mL、80mg/mL、70mg/mL、60mg/mL、50mg/mL、40mg/mL、30mg/mL、20mg/mL、10mg/mL、5mg/mL、2.5mg/mL、1mg/mL、0.5mg/mL、0.25mg/mL、0.1mg/mL、0.05mg/mL、0.01mg/mL、またはそれ未満)の濃度で存在し得る。いくつかの態様では、コンジュゲートは、約0.25mg/mL~約1mg/mL、例えば、約0.25mg/mL、約0.5mg/mL(例えば、0.5mg/mL)、約0.75mg/mL、または約1mg/mLの濃度で存在する。
【0170】
所望であれば、コンジュゲートの有効1日用量は、適切な間隔で1日かけて、任意で単位剤形として別々に投与される2、3、4、5、6部分用量、またはそれ以上の部分用量として投与することができる。いくつかの態様では、コンジュゲートは、1日1回投与される。いくつかの態様では、コンジュゲートは、1週間に少なくとも2回投与される。いくつかの態様では、コンジュゲートは、1週間に少なくとも1回投与される。ある特定の態様では、コンジュゲートは、1週間に2回投与される。
【0171】
コンジュゲートは、それ自体として、または薬学的に許容されるおよび/または無菌の担体と混合して投与することができ、また、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびグリコペプチドなどの抗菌剤と共に投与することができる。したがって、連結療法(conjunctive therapy)には、後続の治療法が施された場合に、最初に施された治療法の治療または予防効果がまだ検出可能であるように、コンジュゲートの順次、同時および別々の投与が含まれる。
【0172】
併用療法
いくつかの態様では、本明細書に開示される1つまたは複数のコンジュゲートは、インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するための、および/または自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の予防もしくは治療のための、1つまたは複数の追加的な治療法と組み合わされる場合がある。
【0173】
いずれにせよ、複数の治療剤は、任意の順序で、または同時にさえ投与される場合がある。同時の場合、複数の治療剤が単一の統一形態、または複数の形態で(単なる例として、単一の丸剤として、または2つの別々の丸剤として)提供される場合がある。治療剤の1つが複数回投与で与えられる場合、または両方が複数回として与えられる場合がある。同時でない場合、複数回投与のタイミングは、0週間超から4週間以下まで変動し得る。加えて、併用方法、組成物および製剤は、2つだけの作用物質の使用に限定されない。
【0174】
いくつかの態様では、少なくとも1つの追加療法は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)を治療または予防するために本明細書に記載されるコンジュゲートとの組み合わせを含む製剤として投与される。ある特定の態様では、少なくとも1つの追加療法は、本明細書に記載されるコンジュゲートと同時に投与される。ある特定の態様では、少なくとも1つの追加療法は、本明細書に記載されるコンジュゲートと順次に(異なる時間に)投与される。例では、少なくとも1つの追加療法は、本明細書に記載されるコンジュゲートから約5分、約10分、約30分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間離して投与される。少なくとも1つの追加療法は、コンジュゲートと同じ経路で投与される場合または投与されない場合がある。例では、コンジュゲートは、一方式で(例えば静脈内または皮下に)投与され得るが、少なくとも1つの追加療法が別の方式(例えば経口)で別々に投与される場合がある。
【0175】
いくつかの態様では、少なくとも1つの追加療法はインスリン感受性促進薬である。インスリン感受性促進薬(例えば、ビグアナイド(例えばメトホルミン)およびグリタゾン(例えば、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン))は、所与の量のインスリン(またはインスリン類似体)に対する対象の応答を増大させることによって作用する。したがって、インスリン感受性促進薬の投与を受けている患者は、インスリン感受性促進薬の投与を受けていない患者と比較して低い用量の本明細書に記載されるコンジュゲートを必要とし得る。したがって、ある特定の態様では、コンジュゲートは、インスリン感受性促進薬と組み合わせて対象に投与される。いくつかの態様では、コンジュゲートは、インスリン感受性促進薬の非存在下で必要とされる標準用量の約95%で、例えば、インスリン感受性促進薬の非存在下で必要とされる標準用量の約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、またはそれ未満で投与され得る。
【0176】
いくつかの態様では、少なくとも1つの追加療法は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)またはその症状の完全発生を予防するために投与され、健康対象と比較して少なくとも約90%のβ細胞の質量の維持を結果としてもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加療法は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の完全発生を予防するために投与され、健康対象と比較して少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%のβ細胞の質量の維持を結果としてもたらす。いくつかの態様では、コンジュゲートは、対象に、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を予防する治療法と組み合わせて投与され、健康対象と比較して少なくとも約90%のβ細胞の質量の維持を結果としてもたらす。いくつかの態様では、コンジュゲートは、対象に、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を予防する治療法と組み合わせて投与され、健康対象と比較して少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%のβ細胞の質量の維持を結果としてもたらす。
【0177】
いくつかの態様では、少なくとも1つの追加療法は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)またはその症状の完全発生を予防するために施され、健康対象と比較して少なくとも約90%の内因性C-ペプチドレベルの維持を結果としてもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加療法は、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)またはその症状の完全発生を予防するために施され、健康対象と比較して少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%の内因性C-ペプチドレベルの維持をもたらす。いくつかの態様では、コンジュゲートは、対象に、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を予防する治療法と組み合わせて投与され、健康対象と比較して少なくとも約90%の内因性C-ペプチドレベルの維持を結果としてもたらす。いくつかの態様では、コンジュゲートは、対象に自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の症状を予防する治療法と組み合わせて投与され、健康対象と比較して少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%の内因性C-ペプチドレベルの維持を結果としてもたらす。
【0178】
キット
本開示はまた、インスリン結合性B細胞においてアネルギーを誘導するための、ならびに/または自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の予防および/もしくは治療のためのキットを提供し、キットは、本明細書に記載されるコンジュゲートの1つまたは複数、および任意で使用説明書を含む。任意で、本技術のキットの上記構成成分は、適切な容器中に充填され、自己免疫疾患(例えば自己免疫性糖尿病、例えば1型糖尿病)の予防および/または治療のためにラベル付けされる。
【0179】
上述の構成成分は、単位用量容器または複数回用量容器、例えば、密封されたアンプル、バイアル、ボトル、シリンジ、および試験管中に、水性で好ましくは無菌の溶液として、または再構成用の凍結乾燥された好ましくは無菌の製剤として保管され得る。キットは、さらに、薬学的組成物をより大きな体積へと希釈するために適した希釈剤を収容する第2の容器を含み得る。適切な希釈剤には、薬学的組成物の薬学的に許容される賦形剤および食塩溶液が含まれるが、それに限定されるわけではない。さらに、キットは、薬学的組成物を希釈するための説明書、および/または希釈されたまたはされていない、薬学的組成物を投与するための説明書を含み得る。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な物質から形成されている場合があり、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針で刺通され得るストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。キットは、さらに、薬学的に許容される緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液を含むより多くの容器を含み得る。これは、さらに、適切なホストの1人または複数人のための他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、培地を含む商業的およびユーザ的観点から望ましい他の物質を含み得る。キットは、任意で、治療製品の市販パッケージ中に習慣的に含まれる説明書を含む場合があり、説明書は、例えば、このような治療薬または製品の使用に関する適応、使用、投薬量、製造、投与、禁忌および/または警告に関する情報を含有する。
【0180】
キットはまた、例えば、緩衝剤、保存または安定化剤を含むことができる。キットはまた、アッセイし、被験試料と比較することができる対照試料または一連の対照試料を含有することができる。キットの各構成成分は、個別の容器内に封入することができ、様々な容器のすべてが、キットを使用して実行されたアッセイの結果を解釈するための説明書と共に単一のパッケージ内にあることができる。本技術のキットは、キットの容器上または容器中に書面の製品を含有し得る。書面の製品は、キット中に含有される試薬の使用方法を記載している。ある特定の態様では、試薬の使用は、本技術の方法によることができる。
【実施例
【0181】
本技術は、以下の実施例によってさらに例証されるが、実施例は、いかなる方法でも限定するものと解釈されるべきではない。
【0182】
実施例1: 材料および方法
タンパク質およびプラスミドの設計。ベクターの選択(Pet9a)、プラスミドの構築、および改変されたシグナルペプチド配列(MGSSHHHHHHSSFLDPVLM(SEQ ID NO:5))は、正しくフォールディングされたネイティブなプロインスリンを発現させ、15mg/L培養物を超える収量(99%純度)で精製するための方法を記載しているR. B. Mackin (Mackin, R. B. MethodsX 2014, 1, 108-117)に開示されている。大腸菌(E. coli)におけるプロインスリンの発現は、不溶性の封入体の形成およびN末端分解の防止を含むいくつかの課題を有する。他の論文がこれらの課題に取り組んでいるが、5mg/L培養物の収量を超えていない(Cowley, D. J.; Mackin, R. B. FEBS Letters 1997, 402, 124-130; Redwan, E. M. et al., Preparative Biochemistry and Biotechnology 2007, 38, 24-39)、プロインスリンと他の大型タンパク質との融合を必要とする(Trabucchi, A et al., Appl Microbiol Biotechnol 2012, 94, 1565-1576; Winter, J. et al. Journal of Biotechnology 2000, 84, 175-185)、または商業的関心のせいで十分な詳細を提供していない(Tikhonov et al. Protein Expression and Purification 2001, 21, 176-182)。GGG-ソルターゼのN末端タグは、ペプチドリンカーなしにプロインスリン配列と直接融合される。
【0183】
プロインスリンの発現および精製: 本明細書においてプロインスリンと称されるヒトプロインスリンおよびバリアントを、BL21(DE3)大腸菌に前駆体ペプチドとの融合タンパク質として発現させ、遠心分離によって封入体として単離し、融合ペプチドを臭化シアンによって切断した。プロインスリンの発現プロトコルの詳細を以下に詳述する。
【0184】
1日目: バッフル付き振盪フラスコ中に以下のように培地を調製する:超純水1リットルあたりトリプトン 10g、酵母エキス 5g、NaCl 10g。低塩LB-Lennox混合済み培地20g/リットルを5gのNaCl/リットルと混合する。フラスコ容積の50%を超えないようにLB-Luriaブロス混合済み培地25g/リットルを培地と混合する。スターター培養物のみならず増殖培養物を調製する(2×50mlのスターター培養物は、最大4Lの増殖培養物に十分である)。振盪フラスコをアルミホイルで覆い、設定2(液体、培地など)で約80分間オートクレーブにかける。冷却後、1000×カナマイシン抗生物質原液をスターター培養物だけに添加し、短時間かきまぜて混合する。培地1mlあたり1μlの1000×原液を添加する。スターター培養物に、-80度の冷凍庫に置かれた凍結原液を接種する。200mlピペットチップを使用してバイアルから小さな氷の結晶をこすり取り、混合物を培地中にピペッティングする。振盪フラスコを振盪インキュベーター中に置く。30℃および200RPMで一晩運転する。
【0185】
2日目: スターター培養物の増殖をチェックする。1000×カナマイシン抗生物質原液を増殖培養フラスコに添加し、短時間かきまぜて混合する。培地1mlあたり1μlの1000×原液を添加する。ストリペット(stripette)を使用してスターター培養物の増殖培養体積の1%を添加することによって増殖培養物を接種する。1%の接種体積の結果、2.0時間でOD600nm>0.6がもたらされる。振盪インキュベーターに戻る。37℃および200RPMで運転する。1Lバッフル付きフラスコについては、160RPM。1.5時間目に、フラスコから培地1mlを取り出し、UV-Vis分光光度計でチェックすることによってOD600nm(増殖密度)をチェックする。水をブランクとして使用する。OD600nmが0.6~0.9の場合に1M IPTG原液を添加して終濃度0.5mMにすることによって誘導し、3~4時間発現させる。
【0186】
プロインスリンの収集: 750ml遠心ボトル(青いねじ蓋)に培地を移すことによって大腸菌を収集する。スイングバケット遠心分離機中、4500gで45分間、4℃で遠心沈殿させる。ペレットになった細胞を乱さないように慎重に上清を捨てる。各遠心ボトルから、Triton X100を有しない溶解緩衝液(50mM トリス、50mM NaCl(pH8)、0.5mM EDTA、5% グリセロール、1% Triton X100)20ml中に細胞を懸濁する。200mlガラス均質化ジャーに移す。
【0187】
封入体単離: 10秒オン、20秒オフの方法を使用して強度85%で2分間氷上で均質化する。4本の50ml falconチューブに内容物を均等に移す。8000g、20℃で15分間遠心分離する。上清を捨てる。各falconチューブの内容物を、Triton X100を有する溶解緩衝液40mlで懸濁する。遠心分離および洗浄段階をさらに2回繰り返す(合計3回)。各ペレットをDI H2O 2ml中に懸濁する。混合物をピペッティングし、超音波処理して再懸濁する。-80℃で凍結させて分散を助ける。
【0188】
プロインスリンからのシグナルペプチドの切断: ペレットを解凍し、超音波処理して懸濁させる。スターラーバーの入った250ml丸底フラスコに移す。88%ギ酸 32ml(4Lバッチについて)を添加する。培養物4Lを処理し、4つのペレットを回収し、それぞれを50ml falconチューブに入れる。ドラフト中で、臭化シアン 1.6gを秤量し、フラスコに移す。フラスコにゴム栓をし、アルミホイルで覆い、200rpm、室温(RT)で一晩撹拌する。
【0189】
ロータリーエバポレーター(Roto-Vap)の冷却チャンバーにドライアイス 3lbおよびアセトン約200mlを負荷する。CNBr切断産物を含有する50ml丸底フラスコを取り付ける。真空ポンプの電源を入れ、吸気ポートを閉じる。200rpmまたはそれ未満で回転させ、RTの水浴に入れる。「突沸」に注意し、空気を吸気ポートに入れることで対抗する。突沸が収まった後、水浴のヒーターを入れて40℃にする。乾燥するまで運転する。
【0190】
ジスルフィド結合の還元: 乾燥CNBr切断産物を含有するフラスコに6Mグアニジウム、500mMトリス(pH8.1)40mlを添加し、溶解するまで撹拌/超音波処理する。ストッパーを添加し、パラフィルムで密封する。β-メルカプトエタノール 0.6mlを注入し、次いでRTで10分間撹拌する。
【0191】
還元プロインスリンの精製: 0.05% TFAを有する溶媒を使用して標準プロトコルによりPrep-LCを設定する。30% ACNでカラムを平衡化する。濃HCl(12M)0.5mlを添加することによって試料をpH3~4に酸性化する。pHメーター/試験紙により添加をモニタリングして、pH2を下回ることを避ける。Millex AA 0.8um MCEメンブランフィルター(青)またはMillex GP 0.22um PESメンブランフィルター(緑)を通して還元プロインスリン溶液40mlをシリンジ濾過する。濾過された溶液を氷上に保つ。体積4.5mlを注入し、9~11.5分に溶出する主ピーク(35ml)を集める。画分を合わせ、500mlフラスコに入れてロータリーエバポレーター処理して、ACNを除去する。
【0192】
還元プロインスリンの再フォールディング: 撹拌バーと共に適切な体積の20×再フォールド緩衝液をフラスコに添加する。2mM β-メルカプトエタノールおよび2mM L-シスチンをフラスコに添加する。ストッパーを添加し、パラフィルムで密封する。体積10mlあたりBME 1.5μl、L-シスチン 5mg。冷蔵室中、4℃で一晩撹拌する。
【0193】
フォールディングしたプロインスリンの精製: 針およびシリンジを使用して0.2mlを取り出して、分析用HPLCでフォールディングをチェックする。0.05% TFAを有する溶媒を使用して標準プロトコルによりPrep-LCを設定する。25% ACNでカラムを平衡化する。5体積%のACNを添加し、濃HClを使用してpH3~4に酸性化する。pHメーターによってモニタリングする。Millex 0.22μmフィルターを通してシリンジ濾過する。濾過された溶液を氷上に維持する。ポンプを止め、試料吸入ライン(試料を予備充填しておく)をポンプA(上)に取り付ける。試料50~80mlを10ml/minで負荷する。ポンプを止め、溶媒A吸入ライン(水を充填しておく)を取り付け、5% Bを14ml/minで8分間フラッシュする。9.5~12分(35ml)に溶出する再フォールディングされたプロインスリンおよび12~14.5分(35ml)に溶出する不適切にフォールディングされたプロインスリンを集める。同様の画分を合わせ、500mlフラスコに入れ、ロータリーエバポレーター処理してACNを除去する。水性のフォールディングしたプロインスリンを50ml falconチューブに移す。-80℃で凍結させ、次いで凍結乾燥器に入れる。
【0194】
精製されたフォールディング済みプロインスリンの分析: 秤で乾燥プロインスリンの重さを量る。0.02% ギ酸中に1mg/mlで試料の一部を溶解させる。nanodropを使用して吸光度をチェックして、タンパク質濃度を計算する。分析用HPLCを運転し、SDS-PAGE(ネイティブおよび還元)を行って純度をチェックする。試料を質量分析機で分析して同一性を確認する。
【0195】
プロインスリンを6M グアニジン中で変性させ、β-メルカプトエタノール(BME)によって還元した。還元されたプロインスリンをRP LCにより精製し、酸化緩衝液中0.5mg/mlで再フォールディングさせた。再フォールディングされたプロインスリンをRP LCによって精製し、凍結乾燥した。
【0196】
ソルターゼのライゲーション: 強化五変異体ソルターゼA(eSrtA)を大腸菌において発現させ、Ni-IMACによって精製した。典型的には、トリス緩衝食塩水、20% DMSO、6mM CaCl2、および200μM NiSO4中、100μMのFc-LPETGGH6、プロインスリン-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)、またはアジド-リンカー-LPETGGHG(SEQ ID NO:6);100μM GGG-プロインスリンまたはGGG-リンカー-アジド;および10μM強化ソルターゼA(五変異体)を用いて37℃で4時間またはRTで16時間ライゲーションを実行した。RP C4およびSECカラムを用いたHPLCによって反応の進行をモニタリングした。ライゲーション産物をRPLCまたはプロテインAによって精製した。
【0197】
銅触媒アジド-アルキンの環化付加(CuAAC): 1当量(eq.)のプロインスリン-アジド、4eq. アルキン-PEGn-アルキン、1eq. CuSO4、5eq. THPTA、および20eq. アスコルビン酸ナトリウムを用いてプロインスリン-PEGn-アルキンコンジュゲートを合成した。プロインスリン-PEGn-アルキンをRPLCによって精製した。40μM Fc-LPETGGG-アジドまたは100μM CD22L-アジド、4eq. アルキン-PEGn-プロインスリン、12eq. CuSO4、60eq. THPTA、および240eq. アスコルビン酸ナトリウムを用いてFc/CD22L-コンジュゲートを回収する最終CuAAC反応を実行した。Fc-PEGn-プロインスリンをSECによって精製した。CD22L-PEGn-プロインスリンをRPLCによって精製した。
【0198】
実施例2: コンジュゲートの合成
プロインスリン-LPETGGG-PEG3-N3。50mMトリス、150mM NaCl(pH8)緩衝液中0.2mM プロインスリン-LPETGGHG、0.8mM GGG-PEG3-アジド、0.02mM五変異体ソルターゼA、10mM CaCl2、および0.4mM NiSO4の溶液を室温で2時間撹拌する。反応をクエンチし、0.5%v/vの88%ギ酸で酸性化し、その後、C18固定相カラムを使用する分取用逆相液体クロマトグラフィー(Prep-LC)によって所望の産物を単離する。減圧下での回転蒸発を使用して、アセトニトリルを除去し、その後凍結させ、凍結乾燥して、白色粉末を回収する。純度>95%での単離回収率80%が10+mgスケールで日常的に達成される。産物の同一性をMALDI質量分析によって確認する。
【0199】
インスリン-CD22L。0.4mM インスリン-B29-アルキン、0.48mM mCD22L-N3または0.48mM hCD22L-N3(それぞれの構造は、本パラグラフの下に提供される)、0.4mM CuSO4、2mM トリス-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチルアミン(THPTA)、および8mM アスコルビン酸ナトリウムの、20体積% DMSOを有する50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.6)中溶液を室温で2時間撹拌した。反応をクエンチし、等体積の50mM HClで酸性化し、その後、C18固定相カラムを使用するPrep-LCによって所望の産物を単離する。減圧下の回転蒸発を使用して、アセトニトリルを除去し、その後凍結させ、凍結乾燥して、白色粉末を回収する。純度>95%での単離回収率70%が5+mgスケールで日常的に達成される。産物の同一性をMALDI質量分析によって確認した。
【0200】
PEG-アルキンとのインスリン-B29-アジドまたはプロインスリン-LPETG-N3のコンジュゲーション。実質的にJohnson, S.N. et al., ACS Appl. Bio Mater. 2020, 3, 6319-6330に列挙され、引用された手順により合成を実行した。0.4mM PEG-アルキン(4アーム型または二官能性)、0.5当量のインスリン-B29-アジド/アルキンまたは0.5当量のプロインスリン-LPETG-N3/アルキン、0.8mM CuSO4、4.0mM THPTA、および16mM アスコルビン酸ナトリウムの、20体積% DMSOを有する50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.6)中溶液を室温で1時間撹拌した。反応をクエンチし、等体積の50mM HClで酸性化し、その後、C18固定相カラムを使用するPrep-LCによって所望の産物を単離する。各ピークを別々に集めることによって、混合物から別個のPEG-インスリンコンジュゲートを単離する。4アーム型PEG(20K)-アルキン反応によって、例えば、4アーム型PEG-インスリン(1)、4アーム型PEG-インスリン(2)、4アーム型PEG-インスリン(3)、および4アーム型PEG-インスリン(4)が回収される。二官能性PEG(10K)-アルキン反応によって、例えば、二官能性PEG-インスリン(1)および二官能性PEG-インスリン(2)が回収される。減圧下での回転蒸発を使用して、アセトニトリルを除去し、その後凍結させ、凍結乾燥して、白色粉末を回収する。単離された産物は、純度>95%であり、それらの同一性をMALDI質量分析によって確認する。例示的な合成産物についてのデータを下の表1に提示する。
【0201】
PEG-アルキンおよびPEG-インスリンとのCD22L-N3のコンジュゲーション。実質的にJohnson, S.N. et al., ACS Appl. Bio Mater. 2020, 3, 6319-6330に列挙され、引用された手順により合成を実行した。特に、0.1mM PEG-アルキンまたはPEG-インスリン(4アーム型または二官能性)、3当量のm/hCD22L-N3/アルキン、0.2mM CuSO4、1.0mM THPTA、および4mM アスコルビン酸ナトリウムの、20体積% DMSOを有する50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.6)中溶液を37℃で2時間撹拌した。反応をクエンチし、等体積の50mM HClで酸性化し、その後、C18固定相カラムを使用するPrep-LCによって所望の産物を単離する。減圧下の回転蒸発を使用して、アセトニトリルを除去し、その後凍結させ、凍結乾燥して、白色粉末を回収する。純度>95%での単離回収率60%が5mgスケールで日常的に達成される。産物の同一性をMALDI質量分析によって確認する。例示的な合成産物についてのデータを下の表1に提示する。
【0202】
一般式Fc-(プロインスリン)2およびCD22Lプロインスリンを有するコンジュゲート(図2)を設計した。以下の5つのヒトプロインスリン(図3)を40mg/L培養物の力価で発現させ、最終収量5~10mg/Lで>90%純度まで精製した(図4):ネイティブなプロインスリン、G3-プロインスリン、G3-プロインスリンF25D、プロインスリン-LPETG、およびプロインスリン-LPETG F25D。F25D変異を組み入れて、インスリン-受容体Bとの結合を低減して、将来的なインビボ検査での低血糖を予防し、この変異を選択して、T細胞およびB細胞エピトープを最小限に破壊した。分子量10および20kDaを有するアルキン-PEG-アルキンをG3-PEG3-アジドリンカーと共に購入した。N3-PEG3-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)リンカーをN3-PEG3-COOHおよびLPETGGHG(SEQ ID NO:6)ペプチドから合成した。G3-プロインスリンバリアントをeSrtAによってN3-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)リンカーとライゲートして、N3-G3-プロインスリン(図5A)を与え、アルキン-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)リンカーとライゲートしてアルキン-G3-プロインスリン(図5B)を与えた。
【0203】
アジドハンドルを有する二置換シアル酸CD22リガンド、CD22L-N3図6A)を合成した。
【0204】
追加的に、プロインスリン-LPETGバリアントを、eSrtAによってG3-アジドリンカーにライゲートして、プロインスリン-LPETG-N3を与える(図5C)。次いで、N3-G3-プロインスリンおよびプロインスリン-LPETG-N3を、CuAACによってアルキン-PEGn-アルキンにコンジュゲートして、それぞれアルキン-PEGn-G3プロインスリンおよびアルキン-PEGn-(プロインスリンLPETG)を与える(図5A、5C)。プロインスリン-CD22Lコンジュゲートを、図6B~6Cにより構築する。
【0205】
実施例3: 抗インスリン抗体に結合するインスリンバリアントの決定
Octet RED96e(ForteBio)で製造業者の説明書によりバイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して結合動態を決定した。モノクローナル抗インスリン抗体(125mAb)を抗マウスIgG Fc Capture Dip and Read Biosensors(ForteBio)に40μg/mlで300秒間負荷し、次いで、1×動態緩衝液中で300秒間平衡化した。1×動態緩衝液中で180秒間ベースラインを集め、1×動態緩衝液中、0.5~20×推定KDの濃度の各インスリンバリアントとの会合を300秒間実行し、1×動態緩衝液中で600秒間解離を実行した。参照センサーデータおよび参照試料データを試料毎に差し引き、1:1グローバルフィットを使用して結合動態を計算した。
【0206】
図7に示すように、大部分のインスリンバリアントは、ネイティブなヒトインスリンに類似の結合動態および親和性(<10nM)を有した。これは、インスリンバリアントが抗インスリン抗体と結合できることを実証している。
【0207】
実施例4: インスリンバリアントの機能的特徴決定
インスリンバリアントのホルモン活性の決定。96ウェルプレート中、濃度1nM~100μMのインスリンバリアントを、ヒトインスリン受容体(hCD220)ルシフェラーゼレポーター細胞株(iLite Insulin Assay Ready Cells, Svar Life Science BM3060)と共に製造業者の仕様書によりインキュベートした。インキュベーション後、細胞を室温に平衡化し、Dual-Glo Luciferase Assay System(Promega)を製造業者の仕様書により使用してhCD220シグナル伝達をルシフェラーゼ発光によって発光プレートリーダー(Biotek Synergy H4ハイブリッドリーダーH4MLFPTAD)を用いて測定した。バックグラウンド発光を差し引き、次いでバックグラウンドを差し引いたウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ発光で割ることによって、ホタルルシフェラーゼ発光を規格化した。可変性傾きおよび4つのパラメーターを有する非線形回帰分析を使用してEC50値を計算した。
【0208】
図8に示すように、インスリンバリアントのEC50濃度は、ネイティブなヒトインスリンよりも240~>40,000倍大きい範囲であった。これは、ホルモンインスリン受容体と拮抗するインスリンバリアントの能力が低減していることを実証している。
【0209】
官能基付加オリゴグリシンとのインスリンバリアントのコンジュゲーション。0.2mM インスリンバリアント、0.8mM GGG-PEG3-アジド、0.02mM五変異体ソルターゼA、10mM CaCl2、および0.4mM NiSO4のトリス緩衝食塩水中溶液を室温で2時間撹拌した。反応をクエンチし、0.5%v/v 88% ギ酸で酸性化し、その後、C18 固定相カラムを移動相としての酸性化(0.05% トリフルオロ酢酸)水およびアセトニトリルと共に使用する分取用逆相液体クロマトグラフィー(Prep-LC)によって所望の産物を単離した。減圧下の回転蒸発を使用してアセトニトリルを除去し、その後、凍結し、凍結乾燥して白色粉末を回収した。単離回収率80%を純度>95%と共に10+mgスケールで日常的に達成した。産物の同一性をMALDI質量分析によって確認した。
【0210】
図9は、ソルターゼ媒介ライゲーション回収物のHPLC同定および定量を経時的に示す。
【0211】
抗インスリン抗体への4アーム型PEG-インスリンの結合の決定。Octet RED96e(ForteBio)を製造業者の説明書により用いるバイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して結合動態を決定した。モノクローナル抗インスリン抗体(125mAb)を抗マウスIgG Fc Capture Dip and Read Biosensors(ForteBio)に10μg/mlで300秒間負荷し、次いで1×動態緩衝液中で300秒間平衡化した。1×動態緩衝液中、ベースラインを180秒間集め、1×動態緩衝液中、濃度40nMの4アーム型PEG-インスリン(1~4)と600秒間の会合を実行し、1×動態緩衝液中で1800秒間解離を実行した。参照センサーデータおよび参照試料データを試料毎に差し引いて、1:1ローカルフィットを使用して結合動態を計算した。
【0212】
図10は、2~4つのインスリン/足場を有する4アーム型PEG-インスリンが抗インスリン抗体125 mAbと強く結合できること、およびインスリン結合価を増大させることが結合親和性を増大させアビディティーにより予想される場合の解離速度を減少させることを実証している。
【0213】
4アーム型PEG-インスリン内のインスリン自己会合の決定。Jasco 1500円偏光二色性分光光度計を用いる近UV円偏光二色性(近UV CD)を使用して4アーム型PEG-インスリン内のインスリン自己会合状態を決定した。リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中、試料をそれぞれセル経路長1および10mmのインスリン濃度0.6および0.06mMで溶解した。亜鉛を有する試料は、0.4モル当量の硫酸亜鉛/インスリンを含有した。CDスペクトルを250~310nmで記録し、3つ組の測定値の結果を平均した。近UV CD温度融解を274nm、20~90℃で実行し、0.6mMの試料を1mm経路長のキュベットに入れた。
【0214】
図11は、4アーム型PEG-インスリンが分子内で最小限に自己会合し、分子間で自己会合しないことを実証している。
【0215】
インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアント流体力学的半径の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートの流体力学的半径を、Zetasizer Nano ZS(Malvern)を用いる動的光散乱法(DLS)を使用して決定した。インスリンバリアントをトリス緩衝食塩水中、0.6mMで溶解させ、4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートを25μMで溶解させ、次いで0.22μm PVDFフィルターを通して濾過した。3つ組の測定値の結果を平均した。
【0216】
図12は、リスプロおよびDKP変異を有するインスリンバリアントが溶液中でより低いオリゴマー種として存在すること、4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートが分子間で自己会合しないこと、および4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートが好都合な流体力学的半径を有することを実証している。
【0217】
インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの二次構造の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートの二次構造をJasco 1500円偏光二色性分光光度計を用いて遠UV円偏光二色性(遠UV CD)を使用して決定した。試料をセル経路長1mmのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中、インスリン濃度0.2mg/mlで溶解させた。CDスペクトルを190~260nmで記録し、3つ組の測定結果を平均した。BeStSeLオンラインサーバーを使用してα-ヘリックス特性率を計算した。
【0218】
図13は、主に無秩序なプロインスリンC-ペプチドを保持するインスリンバリアントのα-ヘリカル特性の予想される低減および4アーム型PEGとコンジュゲートした場合のインスリンバリアント二次構造の保持を実証している。
【0219】
インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントのサイズ不均一性の決定。Superdex 200 Increase HiScale 16/40 (GE)カラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーをトリス緩衝食塩水中で使用して、インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートの不均一性を決定した。試料 50μlを濃度0.5~2mg/mlで注入した。データは、3つ組の測定値の代表である。
【0220】
図14は、HPLC精製後の4アーム型PEG-インスリンバリアント種のサイズ分布を示し、それらの流体力学的半径が200~300kDaタンパク質と類似であると推定するものである。
【0221】
抗インスリンB細胞とのインスリンバリアントの結合の決定。インスリン特異的B細胞を1~3%含有するVH125非肥満糖尿病マウス脾細胞を、2μM FITC標識インスリンバリアントと共にインキュベートし、Alexa Fluor 647抗マウスCD19抗体およびPI/シアニン7抗マウスCD3抗体で、4℃で30分間共標識した。次いで試料を洗浄し、フローサイトメトリー(BD FACSFusion)によって分析した。CD19およびCD3発現ならびにFITCシグナルに基づき脾細胞をゲーティングした。インスリン特異的B細胞(FITCHi)との特異的相互作用ならびにBおよびT細胞(FITCLo)との非特異的相互作用についてインスリンバリアントの結合をネイティブなヒトインスリンの結合と比較した。
【0222】
図15は、高濃度(2μM)であってもインスリンバリアントが非インスリン特異的B細胞(FITCLoのCD19+)またはT細胞(FITC+のCD3+)よりもインスリン特異的B細胞(FITCHiのCD19+)と結合する選択性の改善を実証している。
【0223】
実施例5: 抗インスリンB細胞に対する本技術の4アーム型PEG-インスリンバリアントの効果
抗インスリンB細胞との4アーム型PEG-インスリンバリアントの結合の決定。インスリン特異的B細胞を>90%含有する125Tg非肥満糖尿病マウス脾細胞を2μMのFITC標識4アーム型PEG-インスリンバリアントと共にインキュベートし、Alexa Fluor 647抗マウスCD19抗体およびPI/シアニン7抗マウスCD3抗体で、4℃で30分間共標識する。試料を洗浄し、次いでフローサイトメトリーによって分析する。CD19およびCD3の発現ならびにFITCシグナルに基づいて脾細胞をゲーティングする。インスリン特異的B細胞との特異的相互作用およびT細胞との非特異的相互作用について、4アーム型PEG-インスリンバリアントの結合をネイティブなヒトインスリンの結合と比較する(Apley et. al. J. Vis. Exp. 2020, 164, e61827)。
【0224】
4アーム型PEG-インスリンバリアントは、インスリン特異的B細胞と強い結合動態および親和性を示し、T細胞とほとんどまたはまったく非特異的相互作用を示さないと予測される。
【0225】
4アーム型PEG-インスリンバリアントのインビトロでのB細胞活性化防止の決定。125Tg非肥満糖尿病(NOD)マウスから単離された脾細胞を治療(4アーム型PEG-インスリンバリアントまたは4アーム型PEG-インスリンバリアント/CD22L)と共にインキュベートし、抗IgM Fab2'、CpG、または抗CD40/IL2で誘発する(Acevedo-Suarez et. al. J Immunol 2005, 174, 827)。脾細胞をフローサイトメトリーによって分析し、CD86のB細胞発現を、CellTrace VioletによりB細胞増殖と共に定量する。追加的に、サイトカインの分泌を、IFN-ガンマ、TNF-α、IL-2、IL-17A、IL-6、およびIL-10のためのELISAによって分析する(Johnson et. al. ACS Appl. Bio. Mater. 2020, 3, 6319)。
【0226】
4アーム型PEG-インスリンバリアントまたは4アーム型PEG-インスリンバリアント/CD22Lコンジュゲートは、未処理対照と比較してインビトロでのB細胞活性化を効果的に防止すると予測される。
【0227】
非肥満糖尿病マウスにおける発病予防。非肥満糖尿病(NOD)マウスおよびVH125 NODマウスを、0.2~1.0mgの4アーム型PEG-インスリンバリアントまたは4アーム型PEG-インスリンバリアント/CD22Lの毎週の皮下注射で治療し、血中グルコース>200mg/dLの2回の連続する測定で1型糖尿病の発生についてモニタリングする(Henry et. al. Diabetes 2012, 61, 2037)。
【0228】
4アーム型PEG-インスリンバリアントまたは4アーム型PEG-インスリンバリアント/CD22Lコンジュゲートは、未処置対照と比較して非肥満糖尿病マウスにおいて発病を効果的に予防すると予測される。
【0229】
等価物
本技術は、本出願に記載される特定の態様により限定されるべきではなく、この態様は、本技術の個々の局面の単一の例証として意図される。当業者に明らかなように、本技術の精神および範囲から逸脱せずに、本技術の多くの修正および変更を行うことができる。本明細書に列挙されるものに加えて、本技術の範囲内の機能的に等価の方法および装置が、前述の説明から当業者に明らかであろう。このような修正および変更は、本技術の範囲内に入ることが意図される。本技術が、もちろん変動する可能性のある特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的システムに限定されないことが理解されるべきである。本明細書に使用される用語が、特定の態様を記載するためだけのものであり、限定的であることが意図されないことも理解すべきである。
【0230】
加えて、本開示の特徴または局面がマーカッシュ群により記載される場合、当業者は、それにより本開示がマーカッシュ群の任意の個別のメンバーまたはメンバーの部分群によっても記載されることを認識している。
【0231】
当業者によって理解されるように、事実上、特に書面の説明の提供に関して、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、それらのありとあらゆる可能な部分範囲および部分範囲の組み合わせを包含する。記載された任意の範囲は、同じ範囲が少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに等分されることを十分に説明し、可能にすることを容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書に述べられる各範囲は、下方の3分の1、中央の3分の1および上方の3分の1などに容易に分割することができる。同様に当業者によって理解されるように、「最大で」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「よりも小さい」、その他などのすべての言い回しは、列挙された数を含み、後で上記の部分範囲に分割できる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、個々のメンバーを含む。したがって、例えば1~3つの細胞を有する群は、1、2、または3つの細胞を有する群を指す。同様に、1~5つの細胞を有する群は、1、2、3、4、または5つの細胞を有する群を指す、などである。
【0232】
本明細書において参照されるすべての刊行物、特許出願、発行済み特許、および他の文書(例えば、雑誌、論文および/または教科書)は、個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、および他の文書がその全体で参照により組み入れられると具体的および個別に示されたかのように参照により本明細書に組み入れられる。参照により組み入れられる教科書に含まれる定義は、それらが本開示における定義と矛盾する範囲で、除外される。
【0233】
本技術は、以下の文字付きのパラグラフに列挙された特徴および特徴の組み合わせを含み得るが、それに限定されるわけではなく、以下のパラグラフは、本明細書に添付される特許請求の範囲を限定しているとも、このような特徴がすべて、このような特許請求の範囲に必然的に含まれなければならないと命じているとも、解釈されるべきではないことが理解されている。
A. 式I
のコンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物であって、
式中、
R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して
であり;
R5は、独立してそれぞれの場合において、アリールまたはアラルキルであり;
R6は、独立してそれぞれの場合において、ハロ、ヒドロキシル、アリール、またはヘテロアリールであり;
X1は、独立してそれぞれの場合において、SEQ ID NO:2のリシンのε-窒素原子、または第1のプロインスリンポリペプチドのその置換バリアントであり;
X2は、独立してそれぞれの場合において、ソルターゼ部分のC末端グリシンの窒素原子のカルボニル炭素であり、ここで、前記ソルターゼ部分は、第2のプロインスリンポリペプチドのC末端で前記第2のプロインスリンポリペプチドと融合されており;
xは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
nは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;かつ
pは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である、
前記コンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物。
B. 動的光散乱法によって測定された場合に約2nm~約15nmの体積加重平均径を有する、段落Aのコンジュゲート。
C. 動的光散乱法によって測定された場合に約4nm~約8nmの体積加重平均流体力学的径を有する、段落Aまたは段落Bのコンジュゲート。
D. 約10,000~約150,000の数平均分子量を有する、段落A~Cのいずれかのコンジュゲート。
E. 約40,000~約80,000の数平均分子量を有する、段落A~Dのいずれかのコンジュゲート。
F. R6が、独立してそれぞれの場合において、ハロまたはヒドロキシルである、段落A~Eのいずれかのコンジュゲート。
G. R5が、独立してそれぞれの場合において、
である、段落A~Fのいずれかのコンジュゲート。
H. 前記第1のプロインスリンポリペプチドが、ソルターゼ部分と融合されており、前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖、SEQ ID NO:3のインスリンC鎖、およびSEQ ID NO:4のインスリンA鎖を含む、段落A~Gのいずれかのコンジュゲート。
I. 前記ソルターゼ部分が、前記第1のプロインスリンポリペプチドのN末端またはC末端に位置する、段落Hのコンジュゲート。
J. 前記ソルターゼ部分の配列がSEQ ID NO:6である、段落A~Iのいずれかのコンジュゲート。
K. 前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換、および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む、段落A~Jのいずれかのコンジュゲート。
L. 前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む、段落A~Kのいずれかのコンジュゲート。
M. 前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む、段落A~Lのいずれかのコンジュゲート。
N. 前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む、段落A~Mのいずれかのコンジュゲート。
O. 前記第1のプロインスリンポリペプチドがシグナルペプチド配列を含む、段落A~Nのいずれかのコンジュゲート。
P. 前記シグナルペプチド配列が、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列である、段落Oのコンジュゲート。
Q. 前記シグナルペプチド配列がSEQ ID NO:5である、段落Oまたは段落Pのコンジュゲート。
R. 前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換、および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む、段落A~Qのいずれかのコンジュゲート。
S. 前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む、段落A~Rのいずれかのコンジュゲート。
T. 前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む、段落A~Sのいずれかのコンジュゲート。
U. 前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む、段落A~Tのいずれかのコンジュゲート。
V. 前記第2のプロインスリンポリペプチドがシグナルペプチド配列を含む、段落A~Uのいずれかのコンジュゲート。
W. 前記シグナルペプチド配列が、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列である、段落Vのコンジュゲート。
X. 前記シグナルペプチド配列がSEQ ID NO:5である、段落Vまたは段落Wのコンジュゲート。
Y. 前記第1のプロインスリンポリペプチドおよび/または前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:8~10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、段落A~Xのいずれかのコンジュゲート。
Z. 前記第1のプロインスリンポリペプチドおよび前記第2のプロインスリンポリペプチドが、ネイティブなヒトインスリンと比べてホルモンインスリン受容体(IR)の活性化の低減を示す、段落A~Yのいずれかのコンジュゲート。
AA. 段落A~Zのいずれかのコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
AB. 薬学的に許容される担体と、段落A~Zのいずれかの化合物の有効量とを含む、薬学的組成物。
AC. 前記化合物の有効量が、対象における1型糖尿病、若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、または潜在性自己免疫性糖尿病のうちの1つまたは複数を治療するために有効である、段落ABの薬学的組成物。
AD. 前記対象が高血糖ではない、段落ACの薬学的組成物。
AE. 前記対象が、検出可能なレベルのインスリン自己抗体(IAA)を有する、段落ACまたは段落ADの薬学的組成物。
AF. 前記対象が、検出可能なレベルのインスリン特異的B細胞集団を有する、段落AC~AEのいずれかの薬学的組成物。
AG. 前記対象が、(a)DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201;(b)DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302;(c)DRB1*0401-DQA1*0301-DQB*0302;(d)DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302;(e)DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;および(f)DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402からなる群より選択される1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプを保有する、段落AC~AFのいずれかの薬学的組成物。
AH. 非経口投与、静脈内投与、または皮下投与のために製剤化されている、段落AB~AGのいずれかの薬学的組成物。
AI. 段落A~Zのいずれかのコンジュゲートと、使用説明書とを含む、キット。
AJ. その必要がある対象における自己免疫性糖尿病を治療または予防するための方法であって、前記対象に、段落A~Zのいずれかのコンジュゲートの有効量を投与することを含む、前記方法。
AK. 前記自己免疫性糖尿病が、1型糖尿病、若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、または潜在性自己免疫性糖尿病を含む、段落AJの方法。
AL. 前記対象が、自己免疫性糖尿病と診断されているか、または自己免疫性糖尿病のリスクを有する、段落AJまたは段落AKの方法。
AM. 前記対象が高血糖ではない、段落AJ~ALのいずれかの方法。
AN. 前記対象が、検出可能なレベルのインスリン自己抗体(IAA)を有する、段落AJ~AMのいずれかの方法。
AO. 前記対象が、検出可能なレベルのインスリン特異的B細胞集団を有する、段落AJ~ANのいずれかの方法。
AP. 前記対象が、(a)DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201;(b)DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302;(c)DRB1*0401-DQA1*0301-DQB*0302;(d)DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302;(e)DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;および(f)DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402からなる群より選択される1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプを保有する、段落AJ~AOのいずれかの方法。
AQ. 前記コンジュゲートが非経口的、静脈内、または皮下に投与される、段落AJ~APのいずれかの方法。
AR. 前記コンジュゲートの投与によって、前記対象におけるインスリン結合性B細胞においてアネルギーが誘導される、段落AJ~AQのいずれかの方法。
AS. 前記コンジュゲートの少なくとも1回の投与後の前記対象の血中グルコースレベルが、少なくとも1回の投与前の前記対象で観察された血中グルコースレベルと同等である、段落AJ~ARのいずれかの方法。
AT. 前記対象が小児または成人である、段落AJ~ASのいずれかの方法。
【0234】
他の態様は、このような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に、以下の特許請求の範囲に示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
一局面では、その必要がある対象における自己免疫性糖尿病を治療または予防する方法であって、対象に、本明細書に開示される任意の態様のコンジュゲートの有効量を投与することを含む、方法が、提供される。
[本発明1001]
式I
のコンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物であって、
式中、
R 1 、R 2 、R 3 、およびR 4 は、それぞれ独立して
であり;
R 5 は、独立してそれぞれの場合において、アリールまたはアラルキルであり;
R 6 は、独立してそれぞれの場合において、ハロ、ヒドロキシル、アリール、またはヘテロアリールであり;
X 1 は、独立してそれぞれの場合において、SEQ ID NO:2のリシンのε-窒素原子、または第1のプロインスリンポリペプチドのその置換バリアントであり;
X 2 は、独立してそれぞれの場合において、ソルターゼ部分のC末端グリシンの窒素原子のカルボニル炭素であり、ここで、前記ソルターゼ部分は、第2のプロインスリンポリペプチドのC末端で前記第2のプロインスリンポリペプチドと融合されており;
xは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
nは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;かつ
pは、独立してそれぞれの場合において、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である、
前記コンジュゲート、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和化合物。
[本発明1002]
動的光散乱法によって測定された場合に約2nm~約15nmの体積加重平均径を有する、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1003]
動的光散乱法によって測定された場合に約4nm~約8nmの体積加重平均流体力学的径を有する、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1004]
約10,000~約150,000の数平均分子量を有する、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1005]
約40,000~約80,000の数平均分子量を有する、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1006]
R 6 が、独立してそれぞれの場合において、ハロまたはヒドロキシルである、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1007]
R 5 が、独立してそれぞれの場合において、
である、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1008]
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、ソルターゼ部分と融合されており、前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖、SEQ ID NO:3のインスリンC鎖、およびSEQ ID NO:4のインスリンA鎖を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1009]
前記ソルターゼ部分が、前記第1のプロインスリンポリペプチドのN末端またはC末端に位置する、本発明1008のコンジュゲート。
[本発明1010]
前記ソルターゼ部分の配列がSEQ ID NO:6である、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1011]
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換、および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1012]
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1013]
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1014]
前記第1のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1015]
前記第1のプロインスリンポリペプチドがシグナルペプチド配列を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1016]
前記シグナルペプチド配列が、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列である、本発明1015のコンジュゲート。
[本発明1017]
前記シグナルペプチド配列がSEQ ID NO:5である、本発明1015のコンジュゲート。
[本発明1018]
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にF25D置換、および/またはSEQ ID NO:4のインスリンA鎖にY19AもしくはY19L置換を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1019]
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にH10D置換を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1020]
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28KおよびK29P置換の両方を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1021]
前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:2のインスリンB鎖にP28K、K29P、およびH10D置換を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1022]
前記第2のプロインスリンポリペプチドがシグナルペプチド配列を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1023]
前記シグナルペプチド配列が、ネイティブなまたは操作されたシグナルペプチド配列である、本発明1022のコンジュゲート。
[本発明1024]
前記シグナルペプチド配列がSEQ ID NO:5である、本発明1022のコンジュゲート。
[本発明1025]
前記第1のプロインスリンポリペプチドおよび/または前記第2のプロインスリンポリペプチドが、SEQ ID NO:8~10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1026]
前記第1のプロインスリンポリペプチドおよび前記第2のプロインスリンポリペプチドが、ネイティブなヒトインスリンと比べてホルモンインスリン受容体(IR)の活性化の低減を示す、本発明1001のコンジュゲート。
[本発明1027]
本発明1001~1026のいずれかのコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
[本発明1028]
薬学的に許容される担体と、本発明1001~1026のいずれかの化合物の有効量とを含む、薬学的組成物。
[本発明1029]
前記化合物の有効量が、対象における1型糖尿病、若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、または潜在性自己免疫性糖尿病のうちの1つまたは複数を治療するために有効である、本発明1028の薬学的組成物。
[本発明1030]
前記対象が高血糖ではない、本発明1029の薬学的組成物。
[本発明1031]
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン自己抗体(IAA)を有する、本発明1029の薬学的組成物。
[本発明1032]
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン特異的B細胞集団を有する、本発明1029の薬学的組成物。
[本発明1033]
前記対象が、(a)DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201;(b)DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302;(c)DRB1*0401-DQA1*0301-DQB*0302;(d)DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302;(e)DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;および(f)DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402からなる群より選択される1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプを保有する、本発明1029の薬学的組成物。
[本発明1034]
非経口投与、静脈内投与、または皮下投与のために製剤化されている、本発明1028の薬学的組成物。
[本発明1035]
本発明1001~1026のいずれかのコンジュゲートと、使用説明書とを含む、キット。
[本発明1036]
その必要がある対象における自己免疫性糖尿病を治療または予防するための方法であって、前記対象に、本発明1001~1026のいずれかのコンジュゲートの有効量を投与することを含む、前記方法。
[本発明1037]
前記自己免疫性糖尿病が、1型糖尿病、若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、または潜在性自己免疫性糖尿病を含む、本発明1036の方法。
[本発明1038]
前記対象が、自己免疫性糖尿病と診断されているか、または自己免疫性糖尿病のリスクを有する、本発明1036の方法。
[本発明1039]
前記対象が高血糖ではない、本発明1036の方法。
[本発明1040]
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン自己抗体(IAA)を有する、本発明1036の方法。
[本発明1041]
前記対象が、検出可能なレベルのインスリン特異的B細胞集団を有する、本発明1036の方法。
[本発明1042]
前記対象が、(a)DRB1*0301-DQA1*0501-DQB1*0201;(b)DRB1*0405-DQA1*0301-DQB1*0302;(c)DRB1*0401-DQA1*0301-DQB*0302;(d)DRB1*0402-DQA1*0301-DQB1*0302;(e)DRB1*0404-DQA1*0301-DQB1*0302;および(f)DRB1*0801-DQB1*0401-DQB1*0402からなる群より選択される1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプを保有する、本発明1036の方法。
[本発明1043]
前記コンジュゲートが非経口的、静脈内、または皮下に投与される、本発明1036の方法。
[本発明1044]
前記コンジュゲートの投与によって、前記対象におけるインスリン結合性B細胞においてアネルギーが誘導される、本発明1036の方法。
[本発明1045]
前記コンジュゲートの少なくとも1回の投与後の前記対象の血中グルコースレベルが、少なくとも1回の投与前の前記対象で観察された血中グルコースレベルと同等である、本発明1036の方法。
[本発明1046]
前記対象が小児または成人である、本発明1036の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
図1】B細胞活性化シグナル伝達は、B細胞受容体(BCR)との抗原結合および免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)のリン酸化によって呼び起こされる。B細胞活性化抑制性シグナル伝達経路は、CD22とのα2,6-結合型シアル酸の結合と一緒になったBCRの同時ライゲーションによって呼び起こすことができる。この抑制性シグナル伝達経路は、炎症シグナル伝達タンパク質を脱リン酸化することによってB細胞活性化を遮断する。
図2図2A: プロインスリン-CD22Lコンジュゲートの一般設計。図2B: B細胞活性化を遮断するためのB細胞受容体(BCR)の免疫抑制受容体CD22との同時ライゲーション。図2AはSEQ ID NO:13を開示している。
図3図3A~3Bは、それぞれヒトインスリンおよびヒトプロインスリンバリアントを示す。図3A~3Bは、ヒトインスリンおよびプロインスリンバリアントの一次、二次、および三次構造ならびに配列を示す。ホルモンインスリン受容体の結合(IR-B)、T細胞エピトープ、および重要なB細胞エピトープに関与する残基と共にヒトインスリンおよびプロインスリンへの変異および変更を注記する。B細胞エピトープは、インスリンB鎖のアミノ酸残基3およびインスリンA鎖のアミノ酸残基4および8~10を含む。T細胞エピトープは、インスリンB鎖のアミノ酸残基9~23およびQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKR(SEQ ID NO:7)を有するC-ペプチド断片の各残基を含む。プロインスリンバリアントは、インスリンB鎖内の置換F25D、およびインスリンA鎖内のY19Aを含み、これらは、インスリン受容体(IR)の親和性を低減する。プロインスリンバリアントは、インスリンB鎖内に置換P28KおよびK29P(リスプロ)、またはP28K、K29PおよびH10D(DKP)をさらに含む場合があり、これらは、自己会合を低減する。ソルターゼタグの配列はLPETGGHG(SEQ ID NO:6)である。ネイティブなプロインスリンは、赤色eSrtAタグおよびF25D変異を除外している。インスリンは、C-ペプチドを含有しない。図3Aは、SEQ ID NO:4および2をそれぞれ記載の順に開示している。図3BはSEQ ID NO:14を開示している。
図4図4A~4C: G3-プロインスリンの分析。すべてのプロインスリンバリアントについて獲得されたが、簡潔さのために省略された、類似のSDS-PAGEおよびHPLC分析の結果。図4A: 標準的なラダー(レーン1)、低および高濃度の精製G3-プロインスリン(レーン2、4)、ならびに低および高濃度の未精製融合物-前駆体FP-G3-プロインスリン(レーン3、5)のSDS-PAGEゲル。図4B: Waters逆相BEH C4カラムを用い、27_40% ACNの20分間勾配をかけた精製G3-プロインスリンのHPLCクロマトグラム。主ピークはAUCの>90%を占める。図4C: LC ESI TOF質量分析器からの質量スペクトル。9559.7m/zの主ピークは、G3-プロインスリンの[M+H]+イオンについての計算質量とマッチする。
図5図5A~5C: アジド-官能基付加CD22LとのCuAACコンジュゲーションのためのアルキン-官能基付加種を与えるためのeSrtAライゲーションおよびCuAACを介したプロインスリンのPEG化。図5A: n=10kDaまたは20kDaである、アルキン-PEGn-G3プロインスリンの合成。図5Aは、SEQ ID NO:6、13、および13をそれぞれ記載の順に開示している。図5B: アルキン-G3プロインスリンの合成。図5Bは、SEQ ID NO:6および13をそれぞれ記載の順に開示している。図5C: n=10kDaまたは20kDaである、アルキン-PEGn-(プロインスリンLPETG(SEQ ID NO:11として開示される「LPETG」))の合成。図5Cは、SEQ ID NO:6、13、11、11、13、および11をそれぞれ記載の順に開示している。
図6図6A~6C: CD22L-プロインスリンコンジュゲートの提唱された合成。図6A: アジド-官能基付加高親和性、高特異性CD22リガンドの構造。図6B: CD22L-G3プロインスリンの合成。図6BはSEQ ID NO:13を開示している。図6C: n=10kDaまたは20kDaである、CD22L-PEGn-G3プロインスリンの合成。あるいは、アルキン-PEGn-G3プロインスリンをアルキン-PEGn-(プロインスリンLPETG(SEQ ID NO:11として開示される「LPETG」))に置き換えることによってCD22L-PEGn-(プロインスリンLPETG(SEQ ID NO:11として開示される「LPETG」))を同様に調製することができる。図6CはSEQ ID NO:13を開示している。
図7】抗インスリン抗体とのインスリンバリアントの結合の決定。抗インスリン抗体125mAbとのインスリンバリアントの結合のバイオレイヤー干渉法(BLI)からの結合動態データ。図7は、SEQ ID NO:6、15、6、6、6、および6をそれぞれ記載の順に開示している。
図8】インスリンバリアントホルモン活性の決定。ルシフェラーゼ-レポーター細胞株からのホルモンインスリン受容体(CD220)の活性化データ。図8は、SEQ ID NO:11、6、15、6、6、6、および6をそれぞれ記載の順に開示している。
図9】官能基付加オリゴグリシンとのインスリンバリアントのコンジュゲーション。別個の多価コンジュゲートの合成のためのソルターゼ媒介ライゲーションを使用するインスリンバリアントの官能基付加オリゴグリシンとの部位選択的コンジュゲーション。図9はSEQ ID NO:6として「LPETGGHG」を開示している。
図10】抗インスリン抗体との4アーム型PEG-インスリンの結合の決定。1~4つのインスリンが4アーム型PEG足場とコンジュゲートされた、4アーム型PEG-インスリンのバイオレイヤー干渉法(BLI)からの結合動態データ。
図11-1】図11: 4アーム型PEG-インスリン内のインスリン自己会合の決定。(上)近UV円偏光二色性(CD)スペクトルに対するインスリン自己会合の作用および4アーム型PEG-インスリン(4)の自己会合の潜在性の表示。(下)インスリン、合成中間体、4アーム型PEG-インスリン(1)、および4アーム型PEG-インスリン(4)についての近UV CDデータ。
図11-2】図11-1の説明を参照のこと。
図12】インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの流体力学的半径の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの動的光散乱法からの流体力学的半径のデータ。図12はSEQ ID NO:6として「LPETGGHG」を開示している。
図13】インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの二次構造の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントの遠UV円偏光二色性(CD)からの二次構造データ。図13はSEQ ID NO:6として「LPETGGHG」を開示している。
図14】インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントのサイズおよび不均一性の決定。インスリンバリアントおよび4アーム型PEG-インスリンバリアントコンジュゲートについてのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)からの分子量推定および不均一性のデータ。
図15-1】図15: 抗インスリンB細胞とのインスリンバリアントの結合の決定。部位選択的ソルターゼ媒介ライゲーションによってFITCで標識されたインスリンバリアントについてのフローサイトメトリーからの抗インスリンVH125非肥満糖尿病マウス脾細胞の結合データ。図15はSEQ ID NO:13として「LPETGGGG」を開示している。
図15-2】図15-1の説明を参照のこと。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0196
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0196】
ソルターゼのライゲーション: 強化五変異体ソルターゼA(eSrtA)を大腸菌において発現させ、Ni-IMACによって精製した。典型的には、トリス緩衝食塩水、20% DMSO、6mM CaCl2、および200μM NiSO4中、100μMのFc-LPETGGH6 (SEQ ID NO:12)、プロインスリン-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)、またはアジド-リンカー-LPETGGHG(SEQ ID NO:6);100μM GGG-プロインスリンまたはGGG-リンカー-アジド;および10μM強化ソルターゼA(五変異体)を用いて37℃で4時間またはRTで16時間ライゲーションを実行した。RP C4およびSECカラムを用いたHPLCによって反応の進行をモニタリングした。ライゲーション産物をRPLCまたはプロテインAによって精製した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0197
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0197】
銅触媒アジド-アルキンの環化付加(CuAAC): 1当量(eq.)のプロインスリン-アジド、4eq. アルキン-PEGn-アルキン、1eq. CuSO4、5eq. THPTA、および20eq. アスコルビン酸ナトリウムを用いてプロインスリン-PEGn-アルキンコンジュゲートを合成した。プロインスリン-PEGn-アルキンをRPLCによって精製した。40μM Fc-LPETGGG-アジド(SEQ ID NO:13)または100μM CD22L-アジド、4eq. アルキン-PEGn-プロインスリン、12eq. CuSO4、60eq. THPTA、および240eq. アスコルビン酸ナトリウムを用いてFc/CD22L-コンジュゲートを回収する最終CuAAC反応を実行した。Fc-PEGn-プロインスリンをSECによって精製した。CD22L-PEGn-プロインスリンをRPLCによって精製した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0198
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0198】
実施例2: コンジュゲートの合成
プロインスリン-LPETGGG-PEG3-N3 (「SEQ ID NO:13として開示される「LPETGGGG」)。50mMトリス、150mM NaCl(pH8)緩衝液中0.2mM プロインスリン-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)、0.8mM GGG-PEG3-アジド、0.02mM五変異体ソルターゼA、10mM CaCl2、および0.4mM NiSO4の溶液を室温で2時間撹拌する。反応をクエンチし、0.5%v/vの88%ギ酸で酸性化し、その後、C18固定相カラムを使用する分取用逆相液体クロマトグラフィー(Prep-LC)によって所望の産物を単離する。減圧下での回転蒸発を使用して、アセトニトリルを除去し、その後凍結させ、凍結乾燥して、白色粉末を回収する。純度>95%での単離回収率80%が10+mgスケールで日常的に達成される。産物の同一性をMALDI質量分析によって確認する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0200
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0200】
PEG-アルキンとのインスリン-B29-アジドまたはプロインスリン-LPETG-N3 (SEQ ID NO:11)のコンジュゲーション。実質的にJohnson, S.N. et al., ACS Appl. Bio Mater. 2020, 3, 6319-6330に列挙され、引用された手順により合成を実行した。0.4mM PEG-アルキン(4アーム型または二官能性)、0.5当量のインスリン-B29-アジド/アルキンまたは0.5当量のプロインスリン-LPETG-N3 (SEQ ID NO:11)/アルキン、0.8mM CuSO4、4.0mM THPTA、および16mM アスコルビン酸ナトリウムの、20体積% DMSOを有する50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.6)中溶液を室温で1時間撹拌した。反応をクエンチし、等体積の50mM HClで酸性化し、その後、C18固定相カラムを使用するPrep-LCによって所望の産物を単離する。各ピークを別々に集めることによって、混合物から別個のPEG-インスリンコンジュゲートを単離する。4アーム型PEG(20K)-アルキン反応によって、例えば、4アーム型PEG-インスリン(1)、4アーム型PEG-インスリン(2)、4アーム型PEG-インスリン(3)、および4アーム型PEG-インスリン(4)が回収される。二官能性PEG(10K)-アルキン反応によって、例えば、二官能性PEG-インスリン(1)および二官能性PEG-インスリン(2)が回収される。減圧下での回転蒸発を使用して、アセトニトリルを除去し、その後凍結させ、凍結乾燥して、白色粉末を回収する。単離された産物は、純度>95%であり、それらの同一性をMALDI質量分析によって確認する。例示的な合成産物についてのデータを下の表1に提示する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0201
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0201】
PEG-アルキンおよびPEG-インスリンとのCD22L-N3のコンジュゲーション。実質的にJohnson, S.N. et al., ACS Appl. Bio Mater. 2020, 3, 6319-6330に列挙され、引用された手順により合成を実行した。特に、0.1mM PEG-アルキンまたはPEG-インスリン(4アーム型または二官能性)、3当量のm/hCD22L-N3/アルキン、0.2mM CuSO4、1.0mM THPTA、および4mM アスコルビン酸ナトリウムの、20体積% DMSOを有する50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.6)中溶液を37℃で2時間撹拌した。反応をクエンチし、等体積の50mM HClで酸性化し、その後、C18固定相カラムを使用するPrep-LCによって所望の産物を単離する。減圧下の回転蒸発を使用して、アセトニトリルを除去し、その後凍結させ、凍結乾燥して、白色粉末を回収する。純度>95%での単離回収率60%が5mgスケールで日常的に達成される。産物の同一性をMALDI質量分析によって確認する。例示的な合成産物についてのデータを下の表1に提示する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0202
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0202】
一般式Fc-(プロインスリン)2およびCD22Lプロインスリンを有するコンジュゲート(図2)を設計した。以下の5つのヒトプロインスリン(図3)を40mg/L培養物の力価で発現させ、最終収量5~10mg/Lで>90%純度まで精製した(図4):ネイティブなプロインスリン、G3-プロインスリン、G3-プロインスリンF25D、プロインスリン-LPETG(SEQ ID NO:11)、およびプロインスリン-LPETG(SEQ ID NO:11) F25D。F25D変異を組み入れて、インスリン-受容体Bとの結合を低減して、将来的なインビボ検査での低血糖を予防し、この変異を選択して、T細胞およびB細胞エピトープを最小限に破壊した。分子量10および20kDaを有するアルキン-PEG-アルキンをG3-PEG3-アジドリンカーと共に購入した。N3-PEG3-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)リンカーをN3-PEG3-COOHおよびLPETGGHG(SEQ ID NO:6)ペプチドから合成した。G3-プロインスリンバリアントをeSrtAによってN3-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)リンカーとライゲートして、N3-G3-プロインスリン(図5A)を与え、アルキン-LPETGGHG(SEQ ID NO:6)リンカーとライゲートしてアルキン-G3-プロインスリン(図5B)を与えた。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0204
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0204】
追加的に、プロインスリン-LPETG(SEQ ID NO:11)バリアントを、eSrtAによってG3-アジドリンカーにライゲートして、プロインスリン-LPETG-N3 (SEQ ID NO:11)を与える(図5C)。次いで、N3-G3-プロインスリンおよびプロインスリン-LPETG-N3 (SEQ ID NO:11)を、CuAACによってアルキン-PEGn-アルキンにコンジュゲートして、それぞれアルキン-PEGn-G3プロインスリンおよびアルキン-PEGn-(プロインスリンLPETG(SEQ ID NO:11として開示される「LPETG」))を与える(図5A、5C)。プロインスリン-CD22Lコンジュゲートを、図6B~6Cにより構築する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024505002000001.app
【国際調査報告】