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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】新規6xxxアルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20240126BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20240126BHJP
   C22F 1/05 20060101ALI20240126BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
C22C21/02
C22C21/06
C22F1/05
C22F1/00 602
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 612
C22F1/00 611
C22F1/00 628
C22F1/00 621
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 604
C22F1/00 606
C22F1/00 630K
C22F1/00 640A
C22F1/00 673
C22F1/00 685A
C22F1/00 694B
C22F1/00 682
C22F1/00 694A
C22F1/00 686A
C22F1/00 686B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544669
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2022014108
(87)【国際公開番号】W WO2022165044
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,540
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/216,349
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520119242
【氏名又は名称】アーコニック テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラビン,リネッテ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ホッシュ,ティモシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ムーイ,ダーク シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ラッセル エス.
(57)【要約】
新規6xxxアルミニウム合金が開示される。一実施形態では、新規6xxxアルミニウム合金シート製品は、0.75~1.05重量%のSiと、0.65~0.95重量%のMgであって、(Mgの重量%)/(Siの重量%)は0.99:1以下であるSiとMg、0.50~0.75重量%のCu、0.02~0.40重量%のMnと、0.06~0.26重量%のCrであって、(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.22重量%であるMnとCr、0.01~0.30重量%のFe、最大0.25重量%のZn、最大0.20重量%のZr、最大0.20重量%のV、および最大0.15重量%のTiを含み、残部は、アルミニウム、任意の不可避元素および不純物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金シート製品であって、
0.75~1.05重量%のSiと、
0.65~0.95重量%のMgであって、
(Mgの重量%)/(Siの重量%)が0.99:1以下であるSiとMg、
0.50~0.75重量%のCu、
0.02~0.40重量%のMnと、
0.06~0.26重量%のCrであって、
(Mnの重量%)+(Crの重量%)が少なくとも0.22重量%であるMnとCr、
0.01~0.30重量%のFe、
最大0.25重量%のZn、
最大0.20重量%のZr、
最大0.20重量%のV、
最大0.15重量%のTiを含み、
残部が、アルミニウム、任意の付随元素、および不純物であり、
前記アルミニウム合金シート製品が、1.0~4.0mmの厚さを有し、
前記アルミニウムシート製品が、T6テンパーで少なくとも315MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、前記T6テンパーの人工時効が、225℃(437°F)で30分である、アルミニウム合金シート製品。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.80重量%のSi、または少なくとも0.85重量%のSi、または少なくとも0.90重量%のSiを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が、1.0重量%以下のSiを含む、請求項1または2のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項4】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.70重量%のMg、または少なくとも0.75重量%のMg、または少なくとも0.80重量%のMgを含む、請求項1~3のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が、0.90重量%以下のMgを含む、請求項1~4のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項6】
(Mgの重量%)/(Siの重量%)が、0.95:1以下、または0.9:1以下である、請求項1~5のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項7】
(Mgの重量%)/(Siの重量%)が、少なくとも0.7:1または少なくとも0.8:1である、請求項1~6のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項8】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.55重量%のCu、または少なくとも0.60重量%のCu、または少なくとも0.65重量%のCuを含む、請求項1~7のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項9】
前記アルミニウム合金が、0.73重量%以下のCu、または0.70重量%以下のCuを含む、請求項1~8のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項10】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.04重量%のMn、または少なくとも0.05重量%のMn、または少なくとも0.06重量%のMn、または少なくとも0.08重量%のMn、または少なくとも0.10重量%のMn、または少なくとも0.15重量%のMn、または少なくとも0.20重量%のMnを含む、請求項1~9のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項11】
前記アルミニウム合金が、0.35重量%以下のMn、または0.30重量%以下のMnを含む、請求項1~10のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項12】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.08重量%のCr、または少なくとも0.10重量%のCr、または少なくとも0.12重量%のCr、または少なくとも0.14重量%のCr、または少なくとも0.16重量%のCr、または少なくとも0.18重量%のCrを含む、請求項1~11のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項13】
前記アルミニウム合金が、0.24重量%以下のCr、または0.22重量%以下のCr、または0.20重量%以下のCrを含む、請求項1~12のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項14】
(Mnの重量%)+(Crの重量%)が、少なくとも0.24重量%、または少なくとも0.25重量%、または少なくとも0.26重量%、または少なくとも0.27重量%、または少なくとも0.28重量%、または少なくとも0.29重量%である、請求項1~13のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項15】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.05重量%のFe、または少なくとも0.10重量%のFe、または少なくとも0.12重量%のFeを含む、請求項1~14のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項16】
前記アルミニウム合金が、0.28重量%以下のFe、または0.26重量%以下のFeを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項17】
前記アルミニウム合金が、0.20重量%以下のZn、または0.15重量%以下のZn、または0.10重量%以下のZn、または0.08重量%以下のZn、または0.05重量%以下のZn、または0.03重量%以下のZnを含む、請求項1~16のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項18】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.01重量%のZnを含む、請求項1~17のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項19】
前記アルミニウム合金が、0.15重量%以下のZr、または0.10重量%以下のZr、または0.08重量%以下のZr、または0.05重量%以下のZr、または0.03重量%以下のZrを含む、請求項1~18のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項20】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.01重量%のZrを含む、請求項1~19のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項21】
前記アルミニウム合金が、0.15重量%以下のV、または0.10重量%以下のV、または0.08重量%以下のV、または0.05重量%以下のV、または0.03重量%以下のVを含む、請求項1~20のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項22】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.01重量%のVを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項23】
前記アルミニウム合金が、0.12重量%以下のTi、または0.10重量%以下のTiを含む、請求項1~22のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項24】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.01重量%のTi、または少なくとも0.02重量%のTi、または少なくとも0.05重量%のTiを含む、請求項1~23のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項25】
225℃(437°F)で30分間にわたって人工時効された場合、前記引張降伏強度(LT)が少なくとも320MPa、または少なくとも325MPa、または少なくとも330MPa、または少なくとも335MPa、または少なくとも340MPa、または少なくとも345MPa、または少なくとも350MPa、または少なくとも355MPa、または少なくとも360MPa、または少なくとも365MPa、または少なくとも370MPaである、請求項1~24のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項26】
前記アルミニウム合金シート製品が、前記T6テンパーにおいて少なくとも10.0mm、または少なくとも11.0mm、または少なくとも11.2mm、または少なくとも11.4mm、または少なくとも11.6mm、または少なくとも11.8mm、または少なくとも12.0mm、または少なくとも12.2mm、または少なくとも12.4mm、または少なくとも12.6mm、または少なくとも12.8mm、または少なくとも13.0mmの三点曲げ伸長を実現する、請求項1~25のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項27】
前記アルミニウム合金シート製品が、前記T4テンパーにおいて少なくとも16.0mm、または少なくとも16.2mm、または少なくとも16.4mm、または少なくとも16.6mm、または少なくとも16.8mm、または少なくとも17.0mm、または少なくとも17.2mm、または少なくとも17.4mm、または少なくとも17.6mm、または少なくとも17.8mm、または少なくとも18.0mmの三点曲げ伸長を実現する、請求項1~26のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項28】
前記アルミニウム合金シート製品が、ASTM G110-92(2015)に準拠して6時間にわたって試験された場合、200マイクロメートル以下の最大侵食深さを達成する、請求項1~27のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項29】
前記アルミニウム合金シート製品が、完全に再結晶化される、請求項1~28のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項30】
前記アルミニウム合金シート製品が、50マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を達成する、請求項1~29のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項31】
前記アルミニウム合金シート製品が、少なくとも10体積%の立方体集合組織を含む、請求項1~30のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項32】
前記アルミニウム合金シートが、少なくとも0.5%の分散面積率を実現する、請求項1~31のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項34】
前記T4またはT43テンパーにおいて、前記アルミニウム合金シート製品が、2週間の自然時効から6か月の自然時効の期間にわたって、引張降伏強度(LT)において15MPa以下の増加を達成する、請求項1~33のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項35】
前記増加が、13MPa以下、または11MPa以下、または9MPa以下、または7MPa以下、または5MPa以下である、請求項34に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項36】
前記アルミニウム合金シート製品が、T6テンパーに対して、2週間の自然時効から6か月の自然時効の期間にわたって、引張降伏強度(LT)において21MPa以下の低下を達成する、請求項1~35のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項37】
前記強度低下が、19MPa以下、または17MPa以下、または15MPa以下、または13MPa以下、または11MPa以下、または9MPa以下、または7MPa以下、または5MPa以下、または3MPa以下、または1MPa以下である、請求項36に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項38】
前記アルミニウム合金シート製品が、引張降伏強度の低下を生じさせない、または少なくとも2MPaの引張降伏強度の増加を実現する、請求項36に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項39】
前記アルミニウム合金シート製品が、少なくとも0.05、または少なくとも0.06、または少なくとも0.07、または少なくとも0.08のf/rを実現する、請求項1~38のいずれかに記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項40】
請求項1~39のいずれかに記載の任意の前記アルミニウム合金製品から作製された、自動車用シート製品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
6xxx系アルミニウム合金は、ケイ化マグネシウム(MgSi)析出を生成する、ケイ素およびマグネシウムを有するアルミニウム合金である。6061合金は、数十年の間、様々な用途に使用されてきた。しかし、他の性質を劣化させることなくアルミニウム合金の一つまたは複数の性質を改善することについては、はっきりされていない。自動車用途では、熱処理前には優れた成形性を有するが熱処理後には高い強度を備えるものであるシートが有用となる。
【発明の概要】
【0002】
総じて、本特許出願は、新規6xxxアルミニウム合金およびその製造方法に関する。新規6xxxアルミニウム合金は、概して、0.75~1.05重量%のSiと、0.65~0.95重量%のMgであって、Mg:Siの重量比[すなわち、(Mgの重量%)/(Siの重量%)]は0.99:1以下であるSiとMg、0.50~0.75重量%のCu、0.02~0.40重量%のMnと、0.06~0.26重量%のCrであって、(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.22重量%であるMnとCr、0.01~0.30重量%のFe、最大0.25重量%のZn、最大0.20重量%のZr、最大0.20重量%のV、および最大0.15重量%のTiを含み、残部は、アルミニウム、任意の不可避元素および不純物である。一実施形態では、新規6xxxアルミニウム合金は、0.5~4.0mmの厚さを有する圧延された6xxxアルミニウム合金シート製品の形態である。新規6xxxアルミニウム合金で作製された製品は、特性の改善された組み合わせ、例えば、強度、延性(伸び)、破壊挙動、および耐食性のうちの二つ以上の改善された組み合わせを実現することができる。新規アルミニウム合金は、例えば、自動車用途(例えば、シート製品として)などの様々な用途に使用され得る。
【0003】
<i.組成>
上述の通り、6xxx新規アルミニウム合金は、概して、0.75~1.05重量%のSiと、0.65~0.95重量%のMgであって、(Mgの重量%)/(Siの重量%)は0.99:1以下であるSiとMg、0.50~0.75重量%のCu、0.02~0.40重量%のMnと、0.06~0.26重量%のCrであって、(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.22重量%であるMnとCr、0.01~0.30重量%のFe、最大0.25重量%のZn、最大0.20重量%のZr、最大0.20重量%のV、および最大0.15重量%のTiを含み(一部の事例では、それらから本質的に成り、またはそれらから構成され)、残部は、アルミニウム、任意の不可避元素および不純物である。これらの特定量の元素を使用することにより、例えば、高い強度と優れた延性および耐食性との組合せが必要とされる、自動車用途などで、ユニークで有用な製品がもたらされ得る。
【0004】
上述の通り、新規6xxxアルミニウム合金は概して0.75~1.05重量%のSiを含む。ケイ素は強度を促進することができる。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.80重量%のSiを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.85重量%のSiを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.90重量%のSiを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、1.0重量%以下のSiを含む。
【0005】
上述の通り、新規アルミニウム合金は概して、0.65~0.95重量%のMgを含む。マグネシウムは強度を促進することができる。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.70重量%のMgを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.75重量%のMgを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.80重量%のMgを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.90重量%以下のMgを含む。
【0006】
上述の通り、Mg:Siの重量比は、概して0.99:1以下である。適切なMg:Si比は、高い強度および優れた延性を促進し得る。一実施形態では、Mg:Siの重量比は0.95:1以下である。別の実施形態では、Mg:Siの重量比は0.9:1以下である。一実施形態では、Mg:Siの重量比は少なくとも0.7:1である。別の実施形態では、Mg:Siの重量比は少なくとも0.8:1である。
【0007】
上述の通り、新規アルミニウム合金は概して、0.50~0.75重量%のCuを含む。銅は、例えば、強度、自然時効反応および/または成形性を促進し得る。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.55重量%のCuを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.60重量%のCuを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.65重量%のCuを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.73重量%以下のCuを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.70重量%以下のCuを含む。
【0008】
上述の通り、新規アルミニウム合金は概して0.02~0.40重量%のMnを含む。マンガンは、少なくとも部分的に適切な結晶粒構造を提供するのに役立つ分散体の析出を促進し得る。アルミニウム合金製品の製造中の大きい一次粒子が回避/制限/限定されるように、合金中のマンガンの量を制限することが必要である。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.04重量%のMnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.05重量%のMnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.06重量%のMnを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.08重量%のMnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.10重量%のMnを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.15重量%のMnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.20重量%のMnを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.35重量%以下のMnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.30重量%以下のMnを含む。
【0009】
上述の通り、新規アルミニウム合金は概して、0.06~0.26重量%のCrを含む。マンガンと組み合わせたクロムは、分散粒子の独特な分布を促進し、高強度と高い三点曲げ(破壊)特性の両立を容易にし得る。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.08重量%のCrを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.10重量%のCrを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.12重量%のCrを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.14重量%のCrを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.16重量%のCrを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.18重量%のCrを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.24重量%以下のCrを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.22重量%以下のCrを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.20重量%以下のCrを含む。
【0010】
上述の通り、マンガンと組み合わせたクロムは、分散粒子の独特な分布を促進し、高強度と高い三点曲げ(破壊)特性の両立を容易にし得る。したがって、上述のように、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.22重量%(Mn+Cr)、すなわち(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.22重量%である。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.24重量%(Mn+Cr)、すなわち(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.24重量%である。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.25重量%(Mn+Cr)、すなわち(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.25重量%である。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.26重量%(Mn+Cr)、すなわち(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.26重量%である。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.27重量%(Mn+Cr)、すなわち(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.27重量%である。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.28重量%(Mn+Cr)、すなわち(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.28重量%である。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.29重量%(Mn+Cr)、すなわち(Mnの重量%)+(Crの重量%)は、少なくとも0.29重量%である。
【0011】
上記に示すとおり、新規アルミニウム合金は概して、0.01~0.30重量%のFeを含む。鉄は、適切な結晶粒構造を促進することができ、0.10重量%より多いFe、鉄を用いることで、対費用効果が高いものとなり得る。アルミニウム合金製品の製造中の大きい一次粒子が回避/制限/限定されるように、合金中の鉄の量を制限することが必要である。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.05重量%のFeを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.10重量%のFeを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.12重量%のFeを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.28重量%以下のFeを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.26重量%以下のFeを含む。
【0012】
上述の通り、新規アルミニウム合金は、最大0.25重量%のZnを含み得る。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.20重量%以下のZnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.15重量%以下のZnを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.10重量%以下のZnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.08重量%以下のZnを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.05重量%以下のZnを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.03重量%以下のZnを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.01重量%のZnを含む。
【0013】
上記に示すとおり、新規アルミニウム合金は、0.20重量%以下のZrを含む。ジルコニウムは、マンガンやクロムよりは望ましくないが、依然として有用であり得る。アルミニウム合金製品の製造中の大きい一次粒子が回避/制限/限定されるように、合金中のジルコニウムの量を制限することが必要である。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.15重量%以下のZrを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.10重量%以下のZrを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.08重量%以下のZrを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.03重量%以下のZrを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.01重量%以下のZrを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.01重量%のZrを含む(例えば、Zrが結晶粒構造の制御のために合金に添加/使用される場合)。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.05重量%のZrを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.07~0.15重量%のZrを含む。
【0014】
上述の通り、新規アルミニウム合金は、0.20重量%以下のVを含む。バナジウムは、マンガンやクロムよりは望ましくないが、依然として有用であり得る。アルミニウム合金製品の製造中の大きい一次粒子が回避/制限/限定されるように、合金中のバナジウムの量を制限することが必要である。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.15重量%以下のVを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.10重量%以下のVを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.08重量%以下のVを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.03重量%以下のVを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.01重量%以下のVを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.01重量%のVを含む(例えば、Vが結晶粒構造の制御のために合金に添加/使用される場合)。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.05重量%のVを含む。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.07~0.15重量%のVを含む。
【0015】
上記に示すとおり、新規アルミニウム合金は、0.25重量%以下のTiを含む。チタンは、結晶粒の微細化のために鋳造中に使用され得る。より高濃度のチタンはまた、耐食性を促進し得る。合金製品の製造中の大きい一次粒子が回避/制限/限定されるように、合金中のチタンの量を制限することが必要である。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.005重量%のTiを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.01重量%のTiを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.02重量%のTiを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.05重量%のTiを含む。一実施形態では、新しい新規アルミニウム合金は、0.20重量%以下のTiを含む。別の実施形態では、新しい新規アルミニウム合金は、0.15重量%以下のTiを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.12重量%以下のTiを含む。さらに別の実施形態では、新しい新規アルミニウム合金は、0.10重量%以下のTiを含む。別の実施形態では、新しい新規アルミニウム合金は、0.08重量%以下のTiを含む。さらに別の実施形態では、新しい新規アルミニウム合金は、0.05重量%以下のTiを含む。別の実施形態では、新しい新規アルミニウム合金は、0.03重量%以下のTiを含む。一実施形態では、新しい新規アルミニウム合金は、0.005~0.10重量%のTiを含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.01~0.05重量%のTiを含む。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.01~0.03重量%のTiを含む。チタンは、元素形態であってもまたは化合物形態(例えば、TiBまたはTiC)であってもよい。
【0016】
上記に示すとおり、アルミニウム合金の残部は、概して、アルミニウム、随意の不可避元素および不純物である。本明細書で使用される場合、「不可避元素」とは、上に列挙された元素以外の、随意に合金に添加して合金の製造を補助することができる元素または材料を意味する。付随元素の例としては、結晶粒微細化剤および脱酸化剤などの鋳造助剤が挙げられる。任意選択の付随元素は、最大1.0重量%の累積量で合金中に含まれ得る。一つの非限定的な例として、例えば、酸化物層(oxide fold)、ピット、および酸化物パッチによる、インゴットの割れを低減または制限する(および一部の例は排除する)ために、鋳造中に一つまたは複数の付随元素を合金に添加することができる。これらのタイプの付随元素は、概して、脱酸化剤と本明細書では称される。一部の脱酸化剤の例としては、Ca、Sr、およびBeが挙げられる。カルシウム(Ca)が合金中に含まれる場合、カルシウム(Ca)は、概して、最大約0.05重量%、または最大約0.03重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、Caは、0.001~0.008重量%(または10~80ppm)など、約0.001~0.03重量%の量で合金中に含まれる。ストロンチウム(Sr)を、Caの代用として(全体的または部分的に)合金中に含めることができ、ひいては、Caと同じまたは同様の量で合金中に含めることができる。従来、ベリリウム(Be)の添加は、インゴットのひび割れの傾向を低減するのに役立ったが、環境、健康、および安全上の理由から、合金のいくつかの実施形態は、実質的にBeを含まない。Beが合金中に含まれる場合、概して、最大約20ppmの量で存在する。付随元素は、わずかな量で存在し得るか、または有意な量で存在し得、また合金が本明細書に記載の望ましい特性を保持する限り、本明細書に記載の合金から逸脱することなく、付随元素自体で望ましいまたは他の特性を加え得る。しかしながら、本明細書における所望の獲得される性質の組み合わせに別段に影響を及ぼさないであろう量の元素が単に添加されることでは、本開示の範囲は回避されるべきではない/回避され得ないことが理解されるべきである。
【0017】
新規アルミニウム合金は、少量の不純物を含有し得る。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、合計で0.15重量%以下の不純物を含み、またそこで当該新規アルミニウム合金は、各不純物を0.05重量%以下で含む。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、合計で0.10重量%以下の不純物を含み、またそこで当該新規アルミニウム合金は、各不純物を0.03重量%以下で含む。
【0018】
<ii.加工処理>
新規アルミニウム合金は、例えば、インゴットまたはインゴット片、鍛錬製品形態(シート、板状、鍛造物、および押出成形物)、成形鋳造物、付加的製造製品、ならびに粉末冶金製品を含む、様々な製品形態で有用であり得る。例えば、新規アルミニウム合金は、例えば圧延形態(シート、板状)、押出成形物、または鍛造物等の様々な鍛錬形態へと、様々な質別(temper)で、加工処理され得る。これに関して、新規アルミニウム合金は、鋳造(例えば、直接チル鋳造または連続鋳造)され、その後、適切な製品形態(シート、板状、押出成形物、または鍛造物)へと加工(熱間加工および/または冷間加工)され得る。加工後、新規アルミニウム合金を、ANSI H35.1(2009)に従って、Tテンパー、Wテンパー、Oテンパー、またはFテンパーのうちの一つに加工処理してもよい。一実施形態では、新規のアルミニウム合金は、「Tテンパー」に加工処理される(熱処理される)。これに関して、新規アルミニウム合金を、ANSI H35.1(2009)に従って、T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、またはT10テンパーのいずれかに加工処理することができる。一実施形態では、製品は、T43テンパーに加工処理される。別の実施形態では、製品は、T6テンパーに加工処理される。他の実施形態では、新規アルミニウム合金は、「Wテンパー」に加工処理される(溶体化熱処理される)。別の実施形態では、アルミニウム合金を適切な製品形態に加工した後には溶体化熱処理は適用されず、それゆえ、その新規アルミニウム合金を、(二次加工されるものとして)「Fテンパー」または(アニールされるものとして)「Oテンパー」に処理してもよい。
【0019】
一実施形態では、新規アルミニウム合金は、シート製品の形態である。一実施形態では、シート製品は、0.5~4.0mmの厚さ、または1.0~4.0mmの厚さを有する。一実施形態では、シート製品は、T4テンパーに加工処理される。一実施形態では、シート製品は、T43テンパーに加工処理される。一実施形態では、シート製品は、T4またはT43テンパーに加工処理され、その後、塗装焼付け(例えば、180℃で20分間加熱することによって)される。別の実施形態では、シート製品は、T4またはT43テンパーに加工処理され、その後、塗装焼付けされ、次いで人工時効処理(例えば、180℃で8時間加熱することによって)される。さらに別の実施形態では、シート製品は、T4またはT43テンパーに加工処理され、その後、人工時効処理され、次いで塗装焼付けされる。こうした塗装焼付けされたシート製品は、以下でさらに詳細に説明するように、自動車用途に有用であり得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、T43テンパーは、高温から時効前温度まで冷却することによって(例えば、急冷後)、または、時効前温度まで再加熱するか、もしくはその他の方法によって、事前時効によって処理された製品を指す。例えば、T43テンパー製品は、溶体化熱処理を施した後、適切な冷却温度(例えば、約104.4℃(220°F)以下)まで急冷し、適切な事前時効温度(例えば、50~180℃)で事前時効処理を施し、その後、室温まで徐冷し(例えば、コイル冷却またはニュートン冷却)、その後、数日から数週間、自然時効処理を施してもよい。あるいは、生成物を室温またはその付近まで冷却し、その後、予備時効温度まで再加熱し、その後ゆっくりと冷却し得る。複数の事前時効時間/温度を使用し得る。
【0021】
<iii.微細構造(Microstructure)>
新規アルミニウム合金は、固有の微細構造を実現し得る。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも60%再結晶化され、すなわち、以下の定義のセクションに記載される、微細構造評価手順に従って決定される、少なくとも60体積%の再結晶粒を含有する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シートは、少なくとも70%再結晶化される。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シートは、少なくとも80%再結晶化される。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シートは、少なくとも90%再結晶化される。本特許出願の目的のために、アルミニウム合金シート製品は、少なくとも90体積%の再結晶粒を有すると決定されるとき、「完全に再結晶化」される。
【0022】
一実施形態では、新規アルミニウム合金は、以下の定義のセクションに記載される微細構造評価手順に従って決定された、50マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、45マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、40マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、38マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、36マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、34マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、32マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、30マイクロメートル以下の面積加重平均粒径を実現する。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも20マイクロメートルの面積加重平均粒径を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも25マイクロメートルの面積加重平均粒径を実現する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも28マイクロメートルの面積加重平均粒径を実現する。
【0023】
一実施形態では、新規アルミニウム合金は、以下の定義のセクションに記載される微細構造評価手順に従って決定された、少なくとも0.5%の分散面積率を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.55%の分散面積率を達成する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.6%の分散面積率を達成する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.65%の分散面積率を達成する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.7%の分散面積率を達成する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.75%の分散面積率を達成する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.8%の分散面積率を達成する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.85%の分散面積率を達成する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.9%の分散面積率を達成する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、1.1%以下の分散面積率を達成する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、1.0%以下の分散面積率を達成する。
【0024】
一実施形態では、新規アルミニウム合金は、以下の定義のセクションに記載される微細構造評価手順に従って決定された、少なくとも0.05のf/r値を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.06のf/r値を実現する。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.07のf/r値を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、少なくとも0.08のf/r値を実現する。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.11以下のf/r値を実現する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は、0.10以下のf/r値を実現する。
【0025】
一実施形態では、新規アルミニウム合金は、以下の定義のセクションに記載される微細構造評価手順に従って決定された、少なくとも10体積%の立方体集合組織を含有する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は少なくとも11体積%の立方体集合組織を含有する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は少なくとも12体積%の立方体集合組織を含有する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は少なくとも13体積%の立方体集合組織を含有する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は少なくとも14体積%の立方体集合組織を含有する。別の実施形態では、新規アルミニウム合金は少なくとも15体積%の立方体集合組織を含有する。一実施形態では、新規アルミニウム合金は25体積%以下の立方体集合組織を含有する。一実施形態では、新規アルミニウム合金は20体積%以下の立方体集合組織を含有する。
【0026】
<iv.性質>
上記に示すとおり、新規アルミニウム合金は、性質の組み合わせの改善を実現し得る。例えば、新規6xxxアルミニウム合金で作製された製品は、強度、延性(伸び)、破壊挙動、および耐食性のうちの二つ以上の改善された組み合わせを実現することができる。
【0027】
一実施形態では、新規アルミニウム合金は、1.0~4.0mmの厚さを有するシート製品であり、このアルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも315MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも320MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。さらに別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも325MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも330MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。さらに別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも335MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも340MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。さらに別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも345MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも350MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。さらに別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも355MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも360MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。さらに別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも365MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、T6テンパーで少なくとも370MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T6テンパーの人工時効は、225℃(437°F)で30分である。
【0028】
一つの方法では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、以下の定義の項に記載される「三点曲げ試験」に従って、(a)T4テンパーまたは(b)T6予歪テンパーの一方または両方において、高い三点曲げ伸長を実現することができる。以下に述べる通り、すべての三点曲げ試験は2.0±0.05mmの厚さを有するシート上で実施される必要がある。したがって、厚さが0.5~1.94mmまたは2.06~4.0mmのアルミニウム合金シート製品の場合、そのような製品の曲げの伸びは、製品を2.0±0.05mmで再現することによって測定され、その後、三点曲げ伸長が測定される。三点曲げ試験の目的上、「T4」テンパーは、T4テンパーおよびT43テンパーの両方を含み、最終ゲージのアルミニウム合金シート製品が溶体化熱処理され、急冷され、その後、1か月間自然時効されることを意味し、事前時効は、T43テンパー製品の溶体化熱処理後に起こる。三点曲げ試験の目的上、「T6テンパー」は最終ゲージのアルミニウム合金シート製品が、溶体化熱処理され、急冷され、その後少なくとも2週間自然時効され、その後、225℃(437°F)で30分間人工時効されることを意味する。
【0029】
一実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも16.0mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも16.2mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも16.4mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも16.6mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも16.8mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも17.0mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも17.2mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも17.4mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも17.6mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも17.8mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T4テンパーで少なくとも18.0mmの三点曲げ伸長を実現することができる。
【0030】
一実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも10.0mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも10.5mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも11.0mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも11.2mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも11.4mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも11.6mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも11.8mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも12.0mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも12.2mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも12.4mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも12.6mmの三点曲げ伸長を実現することができる。さらに別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも12.8mmの三点曲げ伸長を実現することができる。別の実施形態では、新規アルミニウム合金シート製品は、1.0~4.0mmの厚さを有し、T6テンパーで少なくとも13.0mmの三点曲げ伸長を実現することができる。
【0031】
一つの方法において、新規アルミニウム合金は耐食性であり、ASTM G110-92(2015)に従って6時間にわたって試験した時に、200ミクロン以下の最大侵食深さを実現する。
【0032】
一つの方法において、新規アルミニウム合金は、T4またはT43テンパーで強度増加耐性であり、2週間の自然時効(±12時間)の後に開始して、6か月の自然時効(±24時間)の後に終了する期間(すなわち、「試験期間」)から測定される、15MPa以下の引張降伏強度(LT)の増加を実現する。例えば、T4テンパーのアルミニウム合金シートが、2週間の自然時効後に185MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、T4テンパーの同じアルミニウム合金シートが、6カ月間の自然時効後に189MPaの引張降伏強度(LT)を実現した場合、T4テンパーのアルミニウム合金シートは、試験時間にわたって4MPa(189~185MPa)の引張降伏強度(LT)の増加を実現していたであろう。一実施形態では、T4/T43テンパーでの引張降伏強度(LT)の増加は、試験期間中、13MPa以下である。別の実施形態では、T4/T43テンパーでの引張降伏強度(LT)の増加は、試験期間中、11MPa以下である。さらに別の実施形態では、T4/T43テンパーでの引張降伏強度(LT)の増加は、試験期間中、9MPa以下である。別の実施形態では、T4/T43テンパーでの引張降伏強度(LT)の増加は、試験期間中、7MPa以下である。さらに別の実施形態では、T4/T43テンパーでの引張降伏強度(LT)の増加は、試験期間中、5MPa以下である。
【0033】
一つの方法では、新規アルミニウム合金は、T6テンパーに対して強度損失耐性であり、試験期間中、21MPa以下の引張降伏強度(LT)損失を実現し、材料の第一のピースは、2週間の自然時効後に人工時効され、その同じ材料の第二のピースは、6カ月の自然時効後に人工時効され、第一のピースおよび第二のピースの両方に対して、同じ人工時効処理が施される。例えば、アルミニウム合金シートの第一の部分が、2週間の自然時効後に人工時効され、人工時効された状態で245MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、同じアルミニウム合金シートの別の部分が、(2週間の材料と同じ人工時効方法を使って)6カ月間の自然時効後に人工時効され、人工時効された状態で235MPaの引張降伏強度(LT)を実現した場合、T6テンパーのアルミニウム合金シートは、試験時間にわたって10MPa(235~245MPa)の引張降伏強度(LT)損失を実現していたであろう。一実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、19MPa以下である。別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、17MPa以下である。さらに別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、15MPa以下である。別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、13MPa以下である。さらに別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、11MPa以下である。別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、9MPa以下である。さらに別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、7MPa以下である。別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、5MPa以下である。さらに別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、3MPa以下である。別の実施形態では、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失は、試験期間にわたって、1MPa以下である。一実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、試験期間にわたって、T6テンパーに対する引張降伏強度(LT)損失がない。別の実施形態では、アルミニウム合金シート製品は、試験期間にわたって、T6テンパーに対する少なくとも2MPaの引張降伏強度(LT)の増加を実現する。
【0034】
<V.製品用途>
本明細書に記載される新規アルミニウム合金は、自動車、鉄道、航空宇宙、または消費家電用途などの様々な用途に使用され得る。例えば、新規アルミニウム合金は、自動車部品へと形成することができる。自動車部品の非限定的な例としては、車体および自動車用パネルが挙げられる。自動車用パネルの非限定的な例としては、とりわけ、自動車ドア、自動車フード、または自動車トランク(デッキリッド)で使用するための、外側パネル、内側パネルを挙げることができる。自動車車体製品の一例は、構造構成要素であり得、一般的に、衝突要件に耐えるためにさらなる強度が必要とされる、自動車車体(例えば、ホワイトボディ)の板金部品である。一実施形態では、新規アルミニウム合金は、電気自動車で使用される電池などの電池の筐体である。新規アルミニウム合金は、軽トラックまたは大型トラックなどの他の輸送用途にも使用され得る。消費家電製品用途には、他の型押し製品および成形製品のうち、ノートパソコンのケース、バッテリーケースが含まれる。
【0035】
<vi.定義>
「展伸アルミニウム合金製品」とは、鋳造後に熱間加工されるアルミニウム合金製品を意味し、圧延製品(シートまたはプレート)、鍛造製品、および押出製品を含む。
【0036】
「熱間加工」、例えば熱間圧延とは、高温、概ね少なくとも121.1℃(250°F)でアルミニウム合金製品を加工することを意味する。歪硬化は、熱間加工中に制限/回避され、概して熱間加工と冷間加工とを区別する。
【0037】
「冷間加工」、例えば冷間圧延とは、熱間加工温度とはみなされない温度、概ね約121.1℃(250°F)未満で(例えば、周囲温度で)、アルミニウム合金製品を加工することを意味する。
【0038】
「試験期間」とは、二週間の自然時効(±12時間)の後に始まり、六カ月の自然時効(±24時間)後に終わる期間を意味する。試験期間は、上で説明したように、T4/T43強度増加(またはその欠如)の測定およびT6強度損失(またはその欠如)の測定に適用される。以下の、実施例3も参照されたい。
【0039】
テンパーの定義は、アルミニウム協会が発表した“American National Standard Alloy and Temper Designation Systems for Aluminum”と題するANSI H35.1(2009)による。
【0040】
強度および伸びは、ASTM E8/E8M-16aおよびB557-15に従って測定される。
【0041】
「三点曲げ試験」(時には、3点曲げ試験とも呼ばれる)は、Plate bending test for metallic materials,Validation Rule,2017年6月1日(https://www.vda.de/en/services/Publications/vda-238-100-plate-bending-test-for-metallic-materials.html参照)と題するVDA238-100に従って測定され、シートの最終ゲージ(厚さ)は2.0±0.05mm、試験片は試験フレームに固定され、0.2mmのパンチ半径が使用されるが、VDA試験は次のように変更される:
・試験片サイズが、幅25mmおよび長さ51mmであり、
・70%の荷重低下時の伸びが測定基準として使用され、伸びが大きいほど破壊靭性または耐衝撃性がより高いことを表す(通常の試験VDA238-100では、材料を比較するための測定基準として、荷重が5%低下した後に測定される曲げ角度を使用する)。
各試験で十個の複製三点曲げ試験片が試験される。長手方向(L)試験片は曲げ線が圧延方向に垂直になるように配置され、横方向(LT)試験片は曲げ線が圧延方向に平行になるように配置される。
【0042】
<vii.微細構造評価手順>
本特許出願に従って作製された製品の微細構造の特徴(例えば、再結晶率、分散体の含有量とサイズ、成分の含有量とサイズ、テクスチャ)の測定には以下の手順と定義が適用される。
【0043】
A.Dispersoids et al.
「分散体面積率(Dispersoid area fraction)」、fは、分散体粒子によって覆われた面積率を、標準的な金属組織学的試料作製法で作製された二次元断面の総面積で割ったものである。
【0044】
「分散体面積%(Dispersoid area %)」は、式f×100により求められる。
【0045】
「分散体平均直径(Dispersoid average diameter)」は、測定されたすべての分散体直径、dの平均であり、各直径は、二次元断面で測定された各分散体面積、Aが、有効直径の円であると仮定して計算された有効直径である:
【数1】
【0046】
分散体面積率、f、および分散体平均直径を測定するには、Apreo S Field Emission Gun(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、U.S.A)走査電子顕微鏡または同等のもので2000倍で後方散乱電子画像を撮影し、分散体を画像化する必要がある。画像は、加速電圧5kVを使用して撮影されるべきである。ビーム電流は3.2ナノアンペアでなければならない。各合金の金属組織学的に研磨された試験片から、t/2と表面の両方で二十の画像が収集される。画像解析を使用して、画像を定量化する。分散体を定量化するためのピクセルサイズは0.021ミクロンであり、15ピクセル以上300ピクセル以下を含有する粒子のみがカウントされる。ピクセルは、そのグレースケール値が、画像全体の平均ピクセルグレースケール値より4標準偏差大きい場合にのみカウントされる。各分散体粒子について、ピクセル数を粒子面積および粒子有効直径に変換する。
【0047】
量「f/r」は、分散体平均直径の半分を取ることによって決定される、分散体半径で割った分散体面積率fである。このパラメータは、ツェナー効果(参考文献1)とも称される、粒界に対するピン止め効果の指標であり、より大きな値がより細かい粒径と関連付けられ得る。
・参考文献1.J.W.Martin、Micromechanisms in Particle-Hardened Alloys、Cambridge University Press、1980。
【0048】
「成分面積率(Constituent area fraction)」、cfは、成分粒子によって覆われた面積率を、標準的な金属組織学的試料作製法で作製された二次元断面の総面積で割ったものである。
【0049】
「成分面積%(Constituent area %)」は式cf×(乗)100により求められる。
【0050】
「成分平均直径(Constituent average diameter)」は、測定されたすべての成分直径、dの平均であり、各直径は、二次元断面で測定された各成分面積、Aが、有効直径の円であると仮定して計算された有効直径である:
【数2】
【0051】
成分面積率、cf、および成分平均直径を測定するには、Apreo S Field Emission Gun(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、U.S.A)走査電子顕微鏡または同等のもので500倍で後方散乱電子画像を撮影し、分散体を画像化する必要がある。画像は、加速電圧5kVを使用して撮影されるべきである。ビーム電流は3.2ナノアンペアでなければならない。各合金の金属組織学的に研磨された試験片から、t/2と表面の両方で二十の画像が収集される。画像解析を使用して、画像を定量化する。分散体を定量化するためのピクセルサイズは0.083ミクロンであり、少なくとも23ピクセルを含有する粒子のみがカウントされる。ピクセルは、そのグレースケール値が、画像全体の平均ピクセルグレースケール値より4標準偏差大きい場合にのみカウントされる。各分散体粒子について、ピクセル数を粒子面積および粒子有効直径に変換する。
【0052】
「再結晶化率」等は、再結晶粒を有する鍛造アルミニウム合金製品の体積率を意味する。再結晶粒の量は、以下の再結晶測定手順に従って、鍛造アルミニウム合金製品の好適な数のSEM顕微鏡写真のEBSD(電子線後方散乱回折)解析によって測定される。通常、少なくとも5つの顕微鏡写真を解析する必要がある。
【0053】
B.再結晶測定手順
「再結晶粒」とは、以下に定義する「第一型粒の基準」を満たす結晶微構造の粒子を意味し、以下に説明するOIM(配向イメージング顕微鏡法)試料作製手順を使用して測定する。
【0054】
OIM解析は、以下のOIM試料手順を用いて、L-ST平面上のシート試料の厚さ全体を通して完了させる必要がある。解析される試料のサイズは、概ねゲージによって異なることになる。測定の前に、OIM試料は、標準的な金属組織学的試料調製方法によって調製される。例えば、OIM試料は、金属組織学的に調製された後、(例えば、0.05ミクロンのコロイダルシリカを使用して)研磨される。次に試料は、Barker試薬、希釈されたフルオロホウ酸溶液で90秒間陽極酸化処理される。次に、試料を三酸化クロムを含むリン酸水溶液を使用してストリッピング後、すすいで、乾燥する。
【0055】
「OIM試料手順」は以下の通りである。
・使用されるソフトウェアは、APEX EBSD Collection Softwareバージョン2(EDAX Inc.,New Jersey,U.S.A.)または同等品であり、Velocity EBSDカメラ(EDAX Inc.,New Jersey,U.S.A.)または同等品に接続されている。SEMはAPREO S電界放出電子銃(Thermo Fisher Scientific.Waltham,MA,U.S.A.)、または同等品である。
・OIMの動作条件は、傾斜68°、作動距離18mm、加速電圧20kV、ダイナミックフォーカシング、装置固有のビーム電流51nA(ナノアンペア)である。収集モードは六角形グリッドである。配向が解析で収集されるように選択される(すなわち、Houghピーク情報は収集されない)。スキャン当たりの領域サイズ(すなわち、フレーム)は、40Xで1ミクロンのステップで2mmゲージの試料の場合、2.0mm×1mmである。ゲージに応じて、様々なフレームサイズを使用できる。収集されたデータは*.oscファイルに出力される。以下に説明するように、このデータを用いて第一型粒の体積分率を計算することができる。
・第一型粒の体積分率の計算:第一型粒の体積分率は、*.oscファイルのデータおよびOIM解析ソフトウェア(EDAX Inc.,New Jersey,U.S.A.)バージョン8.1.0、または同等品を使用して計算される。計算の前に、二段階のデータクリーンアップを実施することができる。最初に、信頼指数が0.08の閾値未満の任意の点に対して、隣接方向相関のクリーンアップが実行される。次に、3データ点より小さい任意の粒について、粒拡張クリーンアップを実施する。そして、第一型粒の量は、(以下の)第一型粒の基準を用いてソフトウェアによって計算される。
・第一型粒の基準:粒平均方位差(GAM)が計算される。「計算前にパーティションを適用する」、「エッジの粒を含める」、および「双晶粒界の定義を無視する」のすべてが必要である。GAMが≦1°である任意の粒は、第一型粒である。
【0056】
「第一型粒の体積(First grain volume)」(FGV)は、結晶質材料の第一型粒の体積分率を意味する。
【0057】
「再結晶化率(Percent Recrystallized)」は、以下の式によって決定される。FGV*100%
【0058】
用語「粒」は、ASTM E112§3.2.2に定義される意味を有する。すなわち、「研磨の二次元平面上で観察される元の(一次)境界の範囲内の領域、または三次元オブジェクトの元の(一次)境界によって囲まれるその体積」。
【0059】
「粒径(Grain size)」は、次の式で計算される:
【数3】
・式中、Aは、市販のソフトウェアOIM解析ソフトウェアバージョン8.1.0または同等品を使用して測定された個々の粒の面積であり、
・式中、dは、粒が円であると仮定して計算された個々の粒径である。
【0060】
「面積加重平均粒径」は、次の式により計算される:
【数4】
・式中、Aは、市販のソフトウェアEdax OIMバージョン8.1.0または同等品を使用して測定された個々の粒それぞれの面積であり、
・式中、dは、粒が円であると仮定して計算された個々の粒径であり、
・式中、d-barは、面積加重平均粒径である。
【0061】
C.テクスチャ
「テクスチャ」とは、結晶構造の粒子の少なくとも一部の好ましい方位を意味する。アルミニウム合金製品の製造からもたらされるテクスチャ構成要素は、いくつかを挙げると、銅、Sテクスチャ、真鍮、立方体、およびゴステクスチャのうちの一つまたは複数を含み得る。これらのテクスチャ構成要素の各々は、以下の表Aに定義される。
【表A】
テクスチャ定量化のためのEBSDデータは、「粒径」と「再結晶化率」を決定するために、上述のように生成されたデータと同じものである。存在するテクスチャ構成要素の定量化は、EBSDソフトウェア、すなわち、OIM解析ソフトウェアバージョン8.1.0または同等のものよって行われる。第一のステップは、L-ST平面からのEBSDデータを、より一般的に使用されるL-LT参照平面にアライメントさせることである。存在するテクスチャ構成要素(立方体%、ゴス%、真鍮%、S%、銅%)の定量化は、特定のテクスチャ構成要素に割り当てられる測定された点の数の割合として決定される。方位差角度が理想的な方位から15度未満逸脱する場合、点はテクスチャ構成要素に割り当てられる。この数値割合に100を乗じて、試料中の各テクスチャ構成要素のパーセンテージを求める。
【0062】
<viii.種々の事項>
この新規技術のこれら態様および他の態様、利点、ならびに新規の特徴は、以下に続く、以下の説明および図面の考察により当業者に明らかになることとなる説明において一部記載されており、または本開示によって提供される技術の一つまたは複数の実施形態を実施することによって学習され得る。
【0063】
開示されているそれら利点および改善点の中でも、本発明の他の目的および利点は、添付の図面と共に以下の説明から明らかになることとなる。本発明の詳細な実施形態は、本明細書に開示されているが、しかしながら、開示された実施形態は、様々な形態で具現化され得る本発明を単に例示するものであることを理解されたい。さらに、本発明の様々な実施形態に関連して掲げる各実施例は、例示として、また限定的ではないことを意図する。
【0064】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の語は、文脈において別段の明らかな指示がない限り、本明細書に明確に関連する意味を取る。本明細書で使用される「一実施形態では」および「いくつかの実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。さらに、本明細書で使用する「別の実施形態では」および「いくつかの他の実施形態では」という句は、必ずしも異なる実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。したがって、本発明の様々な実施形態は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、容易に組み合わせてもよい。
【0065】
加えて、本明細書で使用される場合、「または」の語は包括的な「or(または)」の機能語であり、文脈において別段の明らかな指示がない限り、「および/または」の語と同等である。「に基づく」という語は排他的ではなく、文脈において別段の明らかな指示がない限り、記述されていない追加的な要素に基づくことができる。さらに、本明細書全体を通して、「a(一つの)」、「an(一つの)」、および「the(その)」は、文脈において別段の明らかな指示がない限り、複数形の意味を含む。「in」は、文脈において別段の明らかな指示がない限り、「in」および「on」の意味を含む。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は例示的なものにすぎず、限定的なものではなく、また多くの変形が当業者に明らかになり得ることを理解されたい。さらに、文脈が明確に必要な場合を除き、様々なステップが任意の望ましい順序で実行されてもよく、任意の適用可能なステップが追加および/または除去されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、従来の6111合金および6013合金に対する実施例1の合金の特性を示すグラフである。
【0068】
図2図2は、実施例2の合金の特性を示すグラフである。
【0069】
図3図3は、実施例3の結果を示す表である。
図4図4は、実施例3の結果を示す表である。
図5図5は、実施例3の結果を示す表である。
図6図6は、実施例3の結果を示す表である。
図7図7は、実施例3の結果を示す表である。
図8図8は、実施例3の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
<実施例1>
表1に示すアルミニウム合金の四つのDCインゴットを均質化した後、従来の方法で皮削/剥離加工された。
【表1】
一部の均質化されたインゴットを5.842mm(0.230インチ)に熱間圧延し、次いで66%まで(中間アニールなしで)冷間圧延し、最終ゲージの2.007mm(0.079インチ)にした。他のインゴットを3.531mm(0.139インチ)に熱間圧延し、次いで43%まで(中間アニールなしで)冷間圧延し、最終ゲージの2.007mm(0.079インチ)にした。次いで、以下の表2に従い、最終ゲージ材料を様々な条件でインラインで溶体化熱処理した。溶体化熱処理後、材料をインラインで水噴霧急冷した。
【表2】
【0071】
一部の材料は、急冷工程の後、43%および66%の冷間加工材料について、約66.7℃または72.2℃(152°Fまたは162°F)でインラインで事前時効処理を施し、T43テンパーを製造した。他の材料は、急冷した後に自然時効処理を施してT4テンパーを製造した。T4およびT43テンパーの両方について、すべての材料に約1か月間自然時効処理を施した。材料の機械的特性を以下の表3に示す。すべての特性は、LT(長手横断方向)方向に対するものである。
【表3】
【0072】
次に、合金は、時効前に、予歪(伸長)を加えた場合と加えなかった場合の両方で、人工時効処理を施した。具体的には、合金は、(i)予歪なしで185℃(365°F)で20分間時効処理され(「時効1」)、(ii)2%伸長(予歪)され、その後、185℃(365°F)で20分間時効処理され(「時効2」)、(iii)予歪なしで225℃(437°F)で30分間時効処理された(「時効3」)。機械的特性の結果を、以下の表4~6に示す。すべての特性は、LT(長手横断方向)方向に対するものである。
【表4】
【表5】
【表6】
【0073】
破壊挙動も、(定義の項に定義される)三点曲げ試験を用いて評価され、その試験結果を以下の表7~8に示す。これらの試験を使用して、特に、材料の、(a)ひび割れることなくリベット締結される能力、および(b)衝突状況での挙動を評価する。試験は横方向(LT)に対して実施され、報告された値は、試験された各合金に使用された十個の試験片の平均に基づいている。特性は、1か月自然時効させた材料との比較である。
【0074】
表7の場合、三点曲げ試験は、1か月の自然時効後にT43の条件で実施され、すなわち、材料が自然時効された状態でリベット留めされるため、人工時効は適用されなかった。同じ材料もまた時効条件2まで時効処理され、その後、機械的特性(強度、伸長)が測定されたが、これは典型的な塗装焼付後の材料の状態を表すためである。
【0075】
表8の場合、三点曲げ試験結果と機械的特性の測定値の両方とも時効3条件のサンプルから得られたものであるが、一部の材料がこの状態でリベット留めされ得るためである。
【表7】
【表8】
【0076】
人工時効処理した合金の耐食性も試験され、その結果を以下の表9に示す。
【表9】
【0077】
従来的な6111および6013合金は、上記に類似して製造され、すなわち、インゴットとして鋳造され、中間ゲージまで熱間圧延され、最終ゲージまで冷間延圧され、溶体化熱処理され、その後急冷され、その後少なくとも二週間自然時効処理を施された。合金の組成を以下の表10に示す。
【表10】
【0078】
6111および6013材料は、少なくとも1.5か月間自然時効処理を施され、その後、時効3に従って時効処理を施された。次いで、機械的特性を試験し、その結果を以下の表11に示す。すべての特性は、LT(長手横断方向)方向に対するものである。
【表11】
【0079】
図1に示すように、6111合金は、本発明の合金によって達成される強度を達成することができない。また図1に示すように、6013合金は、本発明の合金によって達成される高い三点曲げ特性を達成することができない。
【0080】
本発明の合金材料および6111および6013材料の微細構造も評価された。具体的には、粒径、テクスチャ、分散体率、および再結晶率を、本明細書に含まれる微細構造評価手順に従って決定した。表12に示すように、本発明の合金は、6111と6013の両方よりも分散体の面積率が高く、本発明の合金および6111の両方は、6013よりも微細な分散体を有する。本発明の合金はまた、6013および6111合金よりも顕著に高いf/r値を有する。f/r比では、fは分散体の比率(面積%/100)であり、rは平均分散体半径(直径/2)である。f/rが高いほど、ツェナー効果とも称される粒界ピン止め効果が大きくなる傾向にあり、細粒化を促す傾向がある。
【表12】
【0081】
またテクスチャ測定も微細構造評価手順に従って実施され、その結果が表13に示される。このように、本発明の合金および6111は両方とも、6013と比較して、特に高いレベルの立方体集合組織を含有し、これは成形性および破壊挙動に最も望ましい構成要素である。
【表13】
【0082】
<実施例2>
【0083】
六つのパイロットスケールのアルミニウム合金インゴット(断面6インチ×18インチ)をDC鋳造し、均質化した後、従来の方法で皮削/剥離加工された。六つのアルミニウム合金の組成を以下の表14に示す。合金は一般的に、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛、およびチタンを比較的一定に保ちながら、マンガンおよびクロムの量を変えることを求める。
【表14】
【0084】
その後、均質化されたインゴットを3.531mm(0.139インチ)に熱間圧延し、次いで43%まで(中間アニールなしで)冷間圧延し、最終ゲージの2.007mm(0.079インチ)にした。その後、最終ゲージ材料を1040°Fで溶体化熱処理し、水急冷後、平坦度を保つために延伸し、7日間自然時効させた。その後、合金を、(i)実施例1による「時効3」(すなわち、437°F(225℃)で30分間)または(ii)356°F(180℃)で8時間(「時効4))いずれかで時効処理した。
【0085】
合金の機械的特性および微細構造を評価し、その結果を以下の表15a~15bおよび16~17、ならびに図2に示す。提供される機械的特性は、LT方向からのものである。粒径、テクスチャ、分散体率、および再結晶化率を、以下に特記する場合を除き、本明細書に含まれる微細構造評価手順に従って決定した。
【表15a】
【表15b】
【表16】
【表17】
【0086】
データが示すように、すべての合金は高い強度と適切な破壊挙動を実現するが、XA10合金は、非常に高い強度と破壊挙動の組み合わせを実現する(例えば、図2に示すように)が、これはそのマンガンとクロム含有量による場合がある。例えば、XA10合金は、他の合金(0.623~0.732%)と比較して、顕著に低い成分粒子量(0.49%)を実現した。これは、XA08、XA10、XA11、およびXA13が、成分粒子に組み込まれる元素である、Fe、Si、Cr、およびMnの総量が同程度であることを考えると特に注目すべきである。また示されるように、実施例2の合金は、実施例1の本発明の合金と類似したテクスチャを実現し、すなわち、成形性および破壊挙動にとって最も望ましい構成要素である、立方体集合組織を顕著に高いレベルで含む。
【0087】
<実施例3>
【0088】
実施例1の合金の自然時効および人工時効反応を、様々な条件下で数週間から数か月の期間にわたって評価した。図3~5は自然時効の結果を示し、図6~8は人工時効の結果を示す。人工時効条件は、時効1、すなわち、185℃(365°F)で20分間、いずれの予歪も加えずに時効処理を施された。人工時効は、指定された週数または月数の自然時効後に行われた。(注:図3~8の1か月間の自然時効に関するデータは、上記の実施例1で既に報告されているものである。)
【0089】
このように、本発明の合金の特性は、試験期間にわたって極めて安定しており、これは、自動車メーカーにとって重要であるが、なぜなら、自動車メーカーは、貯蔵寿命に自信をもって本発明の合金を貯蔵/保存することができるからである。自然時効された材料については、試験期間中、すなわち、自然時効開始2週間後(±12時間)から自然時効開始6か月後(±24時間)までの期間において、引張降伏強度の増加はすべてのロットで13MPa未満であった。ほとんどのロットでは、増加ははるかに少なかった(図3)。したがって、試験期間にわたって良好な成形能力が実現されるはずである。さらに、塗装焼付けをシミュレートした場合、すなわち、予歪なしで185℃(365°F)で20分間時効(「時効1」)させた反応は非常に良好であった。図6は、塗装焼付け後の引張降伏強度が、2週間の自然時効後の値と比較して、6か月の自然時効後に21MPa以上低下すると予想されることを示す。
【0090】
本開示の様々な実施形態を詳細に記載してきたが、それら実施形態の変形および改変は当業者に想到することであることは明らかである。しかしながら、そうした変形および改変が本開示の趣旨および範囲内であることは明白に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金シート製品であって、
0.75~1.05重量%のSiと、
0.65~0.95重量%のMgであって、
(Mgの重量%)/(Siの重量%)が0.99:1以下であるSiとMg、
0.50~0.75重量%のCu、
0.02~0.40重量%のMnと、
0.06~0.26重量%のCrであって、
(Mnの重量%)+(Crの重量%)が少なくとも0.22重量%であるMnとCr、
0.01~0.30重量%のFe、
最大0.25重量%のZn、
最大0.20重量%のZr、
最大0.20重量%のV、
最大0.15重量%のTiを含み、
残部が、アルミニウム、任意の付随元素、および不純物であり、
前記アルミニウム合金シート製品が、1.0~4.0mmの厚さを有し、
前記アルミニウムシート製品が、T6テンパーで少なくとも315MPaの引張降伏強度(LT)を実現し、前記T6テンパーの人工時効が、225℃(437°F)で30分である、アルミニウム合金シート製品。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.80重量%のSi、または少なくとも0.85重量%のSi、または少なくとも0.90重量%のSiを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項3】
前記アルミニウム合金が、1.0重量%以下のSiを含む、請求項2に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項4】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.70重量%のMg、または少なくとも0.75重量%のMg、または少なくとも0.80重量%のMgを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が、0.90重量%以下のMgを含む、請求項4に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項6】
(Mgの重量%)/(Siの重量%)が、0.95:1以下、または0.9:1以下である、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項7】
(Mgの重量%)/(Siの重量%)が、少なくとも0.7:1または少なくとも0.8:1である、請求項6に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項8】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.55重量%のCu、または少なくとも0.60重量%のCu、または少なくとも0.65重量%のCuを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項9】
前記アルミニウム合金が、0.73重量%以下のCu、または0.70重量%以下のCuを含む、請求項8に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項10】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.04重量%のMn、または少なくとも0.05重量%のMn、または少なくとも0.06重量%のMn、または少なくとも0.08重量%のMn、または少なくとも0.10重量%のMn、または少なくとも0.15重量%のMn、または少なくとも0.20重量%のMnを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項11】
前記アルミニウム合金が、0.35重量%以下のMn、または0.30重量%以下のMnを含む、請求項10に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項12】
前記アルミニウム合金が、少なくとも0.08重量%のCr、または少なくとも0.10重量%のCr、または少なくとも0.12重量%のCr、または少なくとも0.14重量%のCr、または少なくとも0.16重量%のCr、または少なくとも0.18重量%のCrを含む、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項13】
前記アルミニウム合金が、0.24重量%以下のCr、または0.22重量%以下のCr、または0.20重量%以下のCrを含む、請求項1~12に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項14】
(Mnの重量%)+(Crの重量%)が、少なくとも0.24重量%、または少なくとも0.25重量%、または少なくとも0.26重量%、または少なくとも0.27重量%、または少なくとも0.28重量%、または少なくとも0.29重量%である、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項15】
前記アルミニウム合金シート製品が、
前記T6テンパーにおいて少なくとも10.0mmの三点曲げ伸長、
前記T4テンパーにおいて少なくとも16.0mmの三点曲げ伸長、
ASTM G110-92(2015)に準拠して6時間にわたって試験された場合、200マイクロメートル以下の最大侵食深さ、及び
少なくとも0.05のf/r、
のうちの少なくとも一つを達成する、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項16】
前記アルミニウム合金シート製品が、完全に再結晶化される、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項17】
前記アルミニウム合金シート製品が、
50マイクロメートル以下の面積加重平均粒径、
少なくとも10体積%の立方体集合組織、
少なくとも0.5%の分散面積率、のうちの少なくとも一つを実現する、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項18】
前記T4またはT43テンパーにおいて、前記アルミニウム合金シート製品が、2週間の自然時効から6か月の自然時効の期間にわたって、引張降伏強度(LT)において15MPa以下の増加を達成する、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項19】
前記アルミニウム合金シート製品が、T6テンパーに対して、2週間の自然時効から6か月の自然時効の期間にわたって、引張降伏強度(LT)において21MPa以下の低下を達成する、請求項1に記載のアルミニウム合金シート製品。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載の任意の前記アルミニウム合金シート製品から作製された、自動車用シート製品。
【国際調査報告】