(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】子宮内膜又は卵巣癌を診断するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240126BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240126BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544736
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022051512
(87)【国際公開番号】W WO2022157369
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・ボルゲーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ベインス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・タリー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ローラン-プイグ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-アレクサンドル・ジュスト
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA26
2G045CB03
2G045DA13
2G045FB02
4B063QA18
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4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、ヒト対象の子宮内膜若しくは卵巣癌を検出又は監視するためのin vitroの方法であって、対象由来の生体試料中のOXT及び/若しくはZSCAN12遺伝子のメチル化のレベルを検出又は決定する工程を含む、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象の子宮内膜癌若しくは卵巣癌を検出又は監視するためのin vitroの方法であって、前記対象由来の生体試料中のOXT及び/若しくはZSCAN12遺伝子のメチル化のレベルを検出又は決定する工程を含み、前記生体試料が、ゲノムDNAを含有する、方法。
【請求項2】
前記生体試料中のOXT及びZSCAN12遺伝子の前記メチル化のレベルを検出又は決定する工程を含む、子宮内膜癌を検出又は監視するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体試料中のOXT遺伝子の前記メチル化のレベルを検出又は決定する工程を含む、卵巣癌を検出又は監視するための請求項1に記載の方法。
【請求項4】
chr20:3071846~3072247(Hg38座標)並びに/又はchr6:28399594~28399995(Hg38座標)、好ましくはchr20:3071946~3072147(Hg38座標)及び/若しくはchr6:28399694~28399895(Hg38座標)からなる前記ゲノムDNA領域内にある1つ若しくは複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配列番号1及び/若しくは配列番号2を含む若しくはそれからなる前記ゲノムDNA、又は配列番号2及び/若しくは配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する多形バリアント配列の領域内にある1つ若しくは複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、体液、好ましくは血漿、血清、血液及び尿からなる群から選択され、なお好ましくは前記試料が、血漿又は血清試料であり、前記DNAが、循環無細胞DNA(ccfDNA)、好ましくは循環腫瘍DNA(ctDNA)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、組織試料、例えば骨盤内生検である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
メチル化の前記検出が、デジタルPCR、好ましくはデジタルドロップレットPCR(ddPCR)を利用することによって実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
癌に対する治療的処置の影響を監視するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌を発症するリスクがある対象における早期診断のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
起源不明の原発腫瘍から転移を発症した対象の前記子宮内膜又は卵巣上皮におけるがん性病変の早期診断のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
再発のリスクを評価するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
特に処置後の分子的残存疾患(MRD)を評価するための、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
転移がある患者において治療的抵抗性を評価するための、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、選択されたゲノム部位の高メチル化を検出することによって子宮内膜又は卵巣癌を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣及び子宮内膜癌は、先進国における婦人科癌の大多数を含む。それらは、多くの組織学的特徴(類子宮内膜、漿液、明細胞の組織型)及び分子改変(例えば漿液性癌におけるTP53改変)を共有する。子宮内膜癌は、最も起こりやすい骨盤内の婦人科系がんである。ほとんどの患者(90%)は、限局性疾患(FIGOステージI~III)と診断され、根治的癌手術及び放射線療法によって処置される。そのうちおよそ1/3は再発を経験し、最終的にその疾患で死亡する。化学療法の潜在的利益を評価するための高リスク子宮内膜癌患者を含むPORTEC-3無作為化臨床試験は、全生存率のわずかな改善しか示さなかった(De Boerら、2019年、Lancet Oncol; 20:1273~85頁)。全体として、子宮内膜癌におけるアジュバント治療戦略は、再発を予測するバイオマーカーがないことによって限定されている。
【0003】
Cancer Genome Atlasコンソーシアム分析は、4つの分子群を同定し(Nature Genetics、2013年、45:1113~1120頁):コピー数の改変が多く(高コピー数、CNH)、TP53突然変異を保有する最も侵攻性の腫瘍が、ステージI~III腫瘍の20~25%及びステージIV腫瘍の40~50%を占める。他方、最良の予後は、POLE突然変異がある腫瘍の5~10%に観察される(Soumeraiら、Clin Cancer Res、2018年、24(23):5939~5947頁)。これら分子群は、再発のリスクに関連することが判明した。しかしながら、この分類の臨床的妥当性は、POLE及びTP53突然変異分子群を考慮することに限定され、後者は、アジュバント化学療法が、PORTEC-3研究の補助的分析において予後を改善することが判明している群である(Leon-Castilloら、2020年、J Clin Oncol、38(29):3388~3397頁)。
【0004】
子宮内膜癌の分子的特徴付け及び患者の予後判定における新たな進歩にもかかわらず、これら戦略の全ては、残存微小転移性疾患を考慮していないため限定される。最近の研究は、循環腫瘍DNA(ctDNA)に重点を置いているが、患者血漿において高頻度の突然変異を検出することに限定された(Bolivarら、2019年、Modern Pathology、32(3):405~414頁、Shintaniら、2020年、Int J Gynecol Cancer、30(9):1340~1346頁)。子宮内膜又は卵巣癌の早期診断及び正確な監視のための方法が、なお必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】De Boerら、2019年、Lancet Oncol;20:1273~85頁
【非特許文献2】Nature Genetics、2013年、45:1113~1120頁
【非特許文献3】Soumeraiら、Clin Cancer Res、2018年、24(23):5939~5947頁
【非特許文献4】Leon-Castilloら、2020年、J Clin Oncol、38(29):3388~3397頁
【非特許文献5】Bolivarら、2019年、Modern Pathology、32(3):405~414頁
【非特許文献6】Shintaniら、2020年、Int J Gynecol Cancer、30(9):1340~1346頁
【非特許文献7】Hindsonら、2011年、Analytical Chemistry 83、8604~8610頁
【非特許文献8】Pekinら、2011年、Lab on a Chip 11、2156~66頁
【非特許文献9】Pinheiroら、2012年、Anal Chem 84、1003~1011頁
【非特許文献10】dMIQE Group、2020年、Clinical Chemistry、66(8):1012~1029頁
【非特許文献11】Armbruster & Pry 2008年、Clin Biochem Rev、29補足1、S49~52頁
【非特許文献12】Beinseら、Plos One 2019年、14(3):e0214416
【非特許文献13】Beinseら、2020年、Int J Gynecol Cancer、30(5):640~647頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、子宮内膜又は卵巣癌の共通メチル化シグネチャーを現在同定した。
【0007】
より具体的には、本発明の主題は、ヒト対象の子宮内膜若しくは卵巣癌を検出又は監視するためのin vitroの方法であって、対象由来の生体試料中のOXT及び/若しくはZSCAN12遺伝子のメチル化のレベルを検出又は決定する工程を含み、生体試料はゲノムDNAを含有する、方法である。
【0008】
また、生体試料中にあるOXT及びZSCAN12遺伝子のメチル化のレベルを検出又は決定することにより、子宮内膜又は卵巣癌を識別することを可能にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の実施形態において、子宮内膜癌を検出又は監視するための方法は、生体試料中のOXT及びZSCAN12遺伝子のメチル化のレベルを検出又は決定する工程を含む。
【0010】
別の特定の実施形態において、卵巣癌を検出又は監視するための方法は、生体試料中のOXT遺伝子のメチル化のレベルを検出又は決定する工程を含む。
【0011】
以下でより詳細に説明される通り、本方法は、chr20:3071846~3072247(Hg38座標)並びに/又はchr6:28399594~28399995(Hg38座標)、好ましくはchr20:3071946~3072147(Hg38座標)及び/若しくはchr6:28399694~28399895(Hg38座標)からなる前記ゲノムDNA領域内にある1つ若しくは複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する工程を有利には含む。
【0012】
より具体的には、選択されたゲノム部位における高メチル化は、子宮内膜又は卵巣癌の指標となる。好ましい態様において、試料は血漿であり、選択されたゲノム部位における高メチル化は、子宮内膜又は卵巣癌を起源とするDNAの循環の指標となる。
【0013】
好ましい実施形態において、試料はctDNAを含有する。ctDNAは、血流及び他の体液へと悪性腫瘍によって排出される循環型無細胞DNAの成分である。ctDNAのレベルは、特に限局性疾患の患者において、一般に低い。ctDNAの選択されたゲノム部位における高メチル化を同定することによって、本発明により、より初期のステージの疾患、処置後の分子的残存疾患(MRD)、標的した全身的療法に対する抵抗性、及び腫瘍塊負荷量の容易な検出並びに評価が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】子宮内膜癌患者に対する従来通りの(A)及び潜在的な(B)治療ワークフローを示す図である。EC:子宮内膜癌。CT:コンピュータ断層撮影。MRI:磁気共鳴画像。結節は、リンパ節のことを指す。近接照射療法:経内放射線療法。
【
図2】女性において最も頻度が高いがん[肺腺癌(LUAD、対象481名)、及び扁平上皮細胞癌(LUSC、対象372名)、直腸(READ、対象99名)及び結腸腺癌(COAD、対象317名)、乳がん(BRCA、対象798名)、及び頸部扁平上皮細胞癌(CESC、対象312名)]と比較した、子宮内膜癌(対象435名)並びに卵巣癌(対象601名)におけるOXT及びZNCAN12のメチル化レベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
子宮内膜癌
本発明の方法は、対象において子宮内膜癌を診断及び/又は監視する工程を包含する。全ての組織型、ステージ及びグレードが包含される。
【0016】
子宮体がんとも呼ばれる子宮内膜癌は、子宮の上皮内層、即ち子宮内膜の細胞において開始する。子宮内膜癌は、異なる組織型に分けることができる。それらには、類子宮内膜腺癌、漿液性癌、子宮癌肉腫(混合ミュラー腫瘍としても公知である)、明細胞癌、及びまれに扁平上皮細胞癌、小細胞癌又は移行性癌がある。
【0017】
子宮内膜癌の病期分類は、International Federation of Gynecology and Obstetrics(FIGO)2010年分類に要約されている。本明細書では、用語「ステージI」とは、子宮にとどまっている子宮体がんのことを指し、用語「ステージII」とは、子宮体部から子宮頸部(子宮のより低い部分)まで広がっているが、子宮の外側まで広がっていない子宮体がんのことを指し、用語「ステージIII」とは:子宮の最外層(子宮漿膜)、子宮のすぐ外側の組織(即ち子宮の両側にある付属器組織)又は卵巣のうち1つ若しくは複数まで広がった子宮体がんのことを指す。
【0018】
「初期の」診断又は検出は、子宮内膜癌がステージIのがんであることを意味する。本明細書では、用語「FIGOグレードづけ」とは、子宮内膜の癌に対する病理学的グレードづけシステムのことを指す。このシステムは、College of American Pathologistsのプロトコールの下で子宮内膜の癌に必要とされる。グレードづけでは、高グレード(グレード3)と見なされる漿液又は明細胞を除外する。他のグレードづけは、固体成長(50パーセント以下対50パーセントより大きい)、侵襲パターン(浸潤性対拡張性)及び腫瘍細胞壊死の存在(有り対無し)に基づいて子宮内膜性腫瘍を低グレード又は高グレードに分ける。
腫瘍細胞がこれら特徴のうち2つを有する場合、患者は高グレードと診断されることになる。本明細書では、用語「グレード1」又は「FIGOグレード1」とは、微小腺管過形成に似ており、主に十分形成されている腺で構成され、5パーセント未満の非扁平上皮固体成分を有する子宮内膜細胞のことを指す。用語「グレード2」又は「FIGOグレード2」とは、6パーセント~50パーセントの非扁平上皮固体成分で構成される子宮内膜細胞のことを指す。用語「グレード3」又は「FIGOグレード3」とは、50パーセントを超える非扁平上皮固体成分を有し、十分形成されている腺がなく、そのことにより漿液子宮内膜癌と区別される子宮内膜細胞のことを指す。
【0019】
卵巣癌
本発明の方法は、対象において卵巣癌を診断及び/又は監視する工程を包含する。全ての組織型、ステージ及びグレードが包含される。
【0020】
原発性悪性卵巣腫瘍のおよそ90%は、上皮性(癌)であり、卵巣表面上皮又は表面上皮封入嚢胞から発生すると考えられる。病理学者において現在使用されている卵巣上皮性腫瘍の分類は、腫瘍細胞の形態構造に完全に基づいている。上皮性腫瘍の4種の主要な型(漿液性、類子宮内膜性、明細胞及び粘液性)は、雌生殖器官において異なる器官を裏打ちしている正常細胞と強い類似点を有する。
【0021】
卵巣がんのステージは、ステージI(1)~IV(4)の範囲である。2つのシステム、FIGO(国際産婦人科連合)システム及びAJCC(米国対癌合同委員会)TNM分類システムが、卵巣がんの分類に使用されうる。
【0022】
対象
「対象」又は「患者」は、任意の雌哺乳動物、特に女性でありうる。
【0023】
特定の実施形態において、対象は、子宮内膜癌又は卵巣癌とすでに診断されている。本発明の方法は、次いで子宮内膜癌若しくは卵巣癌に対する治療的処置の影響を監視し、及び/又は処置後の分子的残存疾患(MRD)を評価するのに特に有用である。そのような処置は、手術、放射線療法、化学療法、標的療法及び/又は免疫療法を含んでもよい。
【0024】
本発明の方法は、処置前後、一般に現局性又は転移性セッティングにおける各処置前後の腫瘍残存疾患を測定するのに特に有用である。これにより、アジュバント処置を回避する又は、反対に、増大させることが可能になる。
【0025】
したがって、本発明の方法は、子宮内膜癌又は卵巣癌に対する治療的処置に供された対象において再発リスクを決定するのに有用である。
図1は、残存疾患評価後の潜在的デシジョンツリーの一例を示す。
【0026】
特定の実施形態において、対象は、子宮内膜癌又は卵巣癌を発症するリスクがある。遺伝的素因がある対象、例えばリンチ症候群の対象は、特に包含される。子宮内膜癌の他のリスク因子には、
過去に乳がん若しくは卵巣がんに罹患した、
過去に子宮内膜増殖症に罹患した、又は
別のがんを処置するための骨盤への放射線療法による処置がある。
【0027】
次いで、本発明の方法は、子宮内膜癌又は卵巣癌の早期診断に有用でありうる。
【0028】
他の実施形態において、本発明の方法は、起源不明の原発腫瘍から転移を発症した対象の子宮内膜又は卵巣上皮におけるがん性病変の早期診断にも有用である。
【0029】
試料
本発明の方法は、対象の生体試料を必要とし、その生体試料はゲノムDNAを含有する。
【0030】
試料は、対象の体液、組織試料又はその組み合わせでもよい。試料は、無細胞DNAを含みうる。
【0031】
好ましい実施形態において、試料は体液、好ましくは血漿、血清、血液又は尿からなる群から選択される。なお好ましくは、試料は、血漿又は血清試料であり、DNAは、循環無細胞DNA(ccfDNA)である。別の実施形態において、試料は、腹水若しくは腹膜水、子宮洗浄液、又は子宮吸引物でもよい。
【0032】
別の実施形態において、試料は組織試料である。例えば、試料は、子宮内膜組織、例えば、骨盤内、子宮内膜又は子宮鏡検査生検から入手されうる。子宮内膜組織又は細胞は、例えば、こする、塗布又は綿棒によって取られてもよい。他の手段には、パンチ生検、子宮頸管掻爬、円錐切除、腫瘍試料の切除、内視鏡手段によって調製された組織試料、器官の針生検がある。
【0033】
別の実施形態において、試料は、卵巣組織から入手される、例えば腫瘍試料の切除、内視鏡手段によって調製される組織試料、器官の針生検でもよい。
【0034】
採集後、試料は、バイオマーカーの検出前に調製される。試料調製は、核酸の単離を含む。これら単離手順は、不溶性成分(例えば、細胞骨格)及び細胞膜からの核酸の分離を含む。一般に、子宮内膜又は卵巣の組織若しくは細胞は、核酸の単離前に溶解緩衝液で処置されてもよい。溶解緩衝液は、組織、細胞、脂質及び生組織試料中に潜在的に存在する他の生体分子を溶解するように設計されている。核酸は、例えば子宮内膜(即ち、子宮内膜組織)又は卵巣組織から入手される生体試料から当業者に公知の標準的な抽出方法を使用して都合よく抽出されうる。標準的な抽出方法には、グアニジウムチオシアン酸塩、フェノール-クロロホルム抽出、グアニジンに基づく抽出、等などの化学薬剤の使用がある。市販の核酸抽出キットが利用されてもよい。
【0035】
メチル化の状態:
本発明によると、標的遺伝子のメチル化状態は、子宮内膜又は卵巣癌に対するバイオマーカーとして役立つ。選択されたゲノム部位におけるCpGアイランドが、より具体的には標的される。
【0036】
ヒトDNAのCpGジヌクレオチド配列(CpG部位;G=グアノシン)中のシトシン(C)ヌクレオチドのメチル化は、公知の現象である。更に、特定のゲノム領域の異常なメチル化(高メチル化及び/又は低メチル化)が、実質的に全てのがん型に存在する。対照試料と比較して、試験試料中のメチル化状態が改変されているゲノム領域は、「メチル化が異なる領域」(DMR)と一般に呼ばれる。
【0037】
本明細書では「CpGアイランド」とは、全ゲノムと比較してG/C含有量が高く、CpGジヌクレオチドの頻度が高いDNAの領域のことを指す。用語「CGアイランド」も、当業者において互換的に使用される。「CpGアイランド」における「p」とは、シトシンとグアニンヌクレオチドの間のホスホジエステル結合のことを指す。メチル化とは、DNAのメチル化及び/又はヒドロキシメチル化のことを指しうる。
【0038】
ゲノムDNAのメチル化状態を決定する方法は、当業者に周知であり、例えば、バイサルファイト配列決定又はメチル化特異的PCR、バイサルファイト変換DNAのマイクロアレイ分析、パイロシークエンスメチル化アッセイのような関連技術による。
【0039】
本発明の好ましい態様において、メチル化の検出は、デジタルPCR、好ましくはデジタルドロップレットPCR(ddPCR)を利用することによって実行される。
【0040】
本明細書では、「デジタルPCR」とは、リアルタイムPCRで使用されているような標準曲線を使用せずに核酸を定量する能力をもたらす終点測定を提供するアッセイのことを指す。デジタルPCRには様々な形式があり、ドロップレットデジタルPCR、BEAMing(ビーズ、乳液、増幅及び磁性物質)、マイクロウェルプレート、バルク乳液ドロップレット、微小流体コンパートメント及びマイクロ流体工学で作製されるナノリットル又はピコリットル規模のドロップレットを利用することを含む。
【0041】
「ドロップレットデジタルPCR」(ddPCR)とは、PCR増幅を支持する別々の、容積が定義された、油中水型ドロップレット区画内に封入された核酸分子を計数することによって絶対量を測定するデジタルPCRアッセイのことを指す(Hindsonら、2011年、Analytical Chemistry 83、8604~8610頁;Pekinら、2011年、Lab on a Chip 11、2156~66頁; Pinheiroら、2012年、Anal Chem 84、1003~1011頁)。単一のddPCR反応は、ウェル当たり少なくとも13,000~20,000個の分割されたドロップレットから構成されうる。
【0042】
メチル化状態を判断する上で、メチル化状態は、特定部位を含む試料中のDNAの全集団と比較して、特定の部位(例えば、単一ヌクレオチド、特定の領域又は座、対象のより長い配列、例えば、およそ100bp、200bp以下、DNAの部分配列)でメチル化されているDNAの個々の鎖の割合又はパーセンテージとしてしばしば表される。伝統的に、非メチル化核酸の量は、検定物質を使用するPCRによって決定される。特定の実施形態において、例えば、公知の量のDNAが、バイサルファイト処置され、得られたメチル化特異的配列が、任意の指数関数的増幅技術を使用して決定される。
【0043】
特定の実施形態において、本技術は、ヒト対象から入手される試料を特徴付けるための方法を提供し、その方法は、DMRを含む核酸とメチル化特異的様式でDNAを修飾する能力がある試薬(例えば、メチル化感受性制限酵素、メチル化依存的制限酵素及びバイサルファイト試薬)とを反応させて、メチル化特異的様式で修飾された核酸を作製する工程と;メチル化特異的様式で修飾された核酸を配列決定して、メチル化特異的様式で修飾された核酸のヌクレオチド配列を得る工程と;メチル化特異的様式で修飾された核酸のヌクレオチド配列を子宮内膜又は卵巣癌ではない対象からのDMRを含む核酸のヌクレオチド配列と比較して、2つの配列中の差異を同定する工程とを含む。
【0044】
特定の実施形態において、本技術は、ヒト対象から入手される試料を特徴付けるためのシステムを提供し、そのシステムは、試料のメチル化状態を決定するように構成された分析構成要素、試料のメチル化状態を対照試料又はデータベースに記録されている参照試料のメチル化状態と比較するように構成されたソフトウェア構成要素、並びにメチル化状態の組合せに基づいて単一値を決定し、子宮内膜又は卵巣癌関連メチル化状態をユーザに警告するように構成された警報構成要素を含む。一部の実施形態において、試料は、DMRを含む核酸を含む。
【0045】
一部の実施形態において、そのようなシステムは、核酸を単離するための構成要素を更に含む。一部の実施形態において、そのようなシステムは、試料を採集するための構成要素を更に含む。
【0046】
標的遺伝子
用語「遺伝子」とは、RNA、又はポリペプチド若しくはその前駆体を産生するために必要なコード配列を含む核酸配列のことを指す。用語「遺伝子」は、構造遺伝子のコード領域を包含し、遺伝子は、例えば、コード領域、非翻訳領域、構造配列及び他の配列並びに調節配列、例えばプロモーターを含む全長mRNAの長さに対応するように、5'及び3'両末端において、例えば、いずれかの末端において約1kbの距離で、コード領域近傍に位置する配列を含む。コード領域の5'に位置し、mRNA上に存在する配列は、5'翻訳されない又は非翻訳配列と称される。コード領域の3'又は下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3'翻訳されない又は3'非翻訳配列と称される。本発明において用語「遺伝子」とは、遺伝子のゲノム形態のことを、より具体的には指す。イントロンを含有することに加えて、遺伝子のゲノム形態は、RNA転写産物上に存在する配列の5'及び3'両末端に位置する配列を含みうる。これら配列は、「フランキング」配列又は領域と称される(これらフランキング配列は、mRNA転写産物上に存在する翻訳されない配列に対して5'又は3'に位置する)。5'フランキング領域は、遺伝子の転写を制御する又は転写に影響を及ぼすプロモーター及びエンハンサーなどの調節配列を含有しうる。3'フランキング領域は、転写終了、転写後切断及びポリアデニル化を指令する配列を含有しうる。
【0047】
オキシトシンニューロフィジンI(OXT)のヒト遺伝子は、染色体20p13に物理的にマップされる。好ましくは、本方法は、OXT遺伝子のプロモーター領域内にある1つ又は複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する工程を含む。より具体的には、1つ又は複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態が、配列番号1、若しくは配列番号1と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する多形バリアント配列を含む又はそれからなるゲノムDNA配列に対して決定される。
配列番号1:
【化1】
配列番号1は、位置chr20:3072046[+/-200bp又は+/-100bp、例えばchr20:3071946~3072147(Hg38座標)まで伸長される]に対するIllumina HM450アレイプローブcg06404175によって標的される配列を標的する選択されたアンプリコンに対応する。
【0048】
ZSCAN12遺伝子(ジンクフィンガー及びSCANドメイン含有タンパク質12)は、ヒト6番染色体、6p21にマップされる。
【0049】
好ましくは、本方法は、ZSCAN12遺伝子のプロモーター領域内にある1つ又は複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する工程を含む。より具体的には、1つ又は複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態が、配列番号2、若しくは配列番号2と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する多形バリアント配列を含む又はそれからなるゲノムDNA配列に対して決定される。
配列番号2:
【化2】
配列番号2は、位置chr6:28399794[+/-200bp又は+/-100bp、例えばchr6:28399694~28399895(Hg38座標)まで伸長される]に対するIllumina HM450アレイプローブcg25060829によって標的される配列を標的する選択されたアンプリコンに対応する。
【0050】
特定の実施形態において、本発明の方法は、DNAのメチル化状態を決定する工程と;DNAのメチル化状態をcg06404175及びcg25060829からなる群から選択される1つ若しくは複数のメチル化プローブ、好ましくは両方と比較する工程と、を含み、メチル化プローブが、メチル化プローブから上流及び下流に最高250塩基対、好ましくは150bp未満、なお好ましくは80bp未満任意選択で伸長する配列領域を含み、その比較は、試料が、メチル化されていないのか、本ゲノム座においてメチル化されていないのかを示し、即ち子宮内膜癌の存在の指標となる。
【0051】
別の特定の実施形態において、本発明の方法は、DNAのメチル化状態を決定する工程と;DNAのメチル化状態をメチル化プローブcg06404175と比較する工程と、を含み、メチル化プローブが、メチル化プローブから上流及び下流に最高250塩基対、好ましくは150bp未満、なお好ましくは80bp未満任意選択で伸長する配列領域を含み、その比較は、試料が、メチル化されていないのか、本ゲノム座においてメチル化されていないのかを示し、即ち卵巣癌の存在の指標となる。
【0052】
上に記載のゲノム部位でメチル化状態を決定するのに有用なプローブ及び/又はプライマー並びに任意選択で追加の試薬を含むキットも提供される。
【0053】
処置の選択
対象の子宮内膜癌若しくは卵巣癌を処置するのに使用するための治療的薬剤若しくは治療的薬剤候補を同定又はスクリーニングするための方法が更に開示され、方法は、前記治療的薬剤を対象に投与する工程と、対象からの生体試料中のOXT及び/若しくはZSCAN12遺伝子のメチル化のレベルを検出又は決定する工程とを含み、その生体試料はゲノムDNAを含有し、治療的薬剤の投与後のメチル化の低下が、対象における子宮内膜又は卵巣癌に対する利益を有する薬剤の指標となる。
【0054】
治療的薬剤は、例えばパクリタキセル[タキソール(登録商標)]、カルボプラチン、ドキソルビシン[アドリアマイシン(登録商標)]若しくはリポソーム型ドキソルビシン[ドキシル(登録商標)/カエリクス(登録商標)]、シスプラチン、ゲムシタビン、ドセタキセル[タキソテール(登録商標)]、若しくはその組合せ、及びイホスファミド[Ifex(登録商標)]などの化学療法若しくは免疫療法薬剤、又はトラスツズマブ[ハーセプチン(登録商標)]などの抗HER2抗体などの標的療法、PARP阻害剤(例えばオラパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ)、血管新生阻害剤(例えばニンテダニブ)でもよい。
【0055】
本発明の診断方法を使用して子宮内膜又は卵巣癌と診断された対象を処置するための方法が更に開示され、対象は、化学療法及び/若しくは免疫療法を含めた有効な量の治療的薬剤を次いで投与され、又は手術及び/若しくは放射線に供される。
【0056】
実施例及び図は、その範囲を限定することなく本発明を例示する。
【実施例1】
【0057】
高メチル化された遺伝子候補の同定
1.1.In silico予備分析
候補CpG位置を同定するために2種類のin silico手法を選択した。
【0058】
第1に、機械学習手法を使用して、子宮内膜試料の腫瘍対非腫瘍の性質を予測するモデルを学習した(LASSO-罰則付きロジスティック回帰;Rパッケージglmnet)。
【0059】
第2に、差異的メチル化位置分析は、子宮内膜癌と、(i)非がん試料(子宮及び非子宮)、(ii)血液試料の間で最も差異的にメチル化されている位置を選択した。一般に差異的にメチル化されている位置を、次いで選択した。これらの中で、本発明者らは、(i)ベータ値>0.1の非腫瘍試料の5%以下、及び(ii)ベータ値>0.6の腫瘍試料の75%より多くのCpG位置のみを手作業で選択した。
【0060】
これら2種類のin silico分析により、子宮内膜がんにおいて高度にメチル化されており、他の組織においてメチル化されていないことが判明した3つの標的:SIM1、OXT及びZSCAN12と称される位置を選択した。これらの中で、SIM1は、白血球メチル化分析において低いメチル化レベルを示し、したがって更なる分析用として選択されなかった。
【0061】
1.2.子宮内膜癌の共通シグネチャーとしてのOXT及びZSCAN12の高メチル化の確認
第1の対照により、高メチル化されていることが判明した位置が、明白にメチル化されているかどうか、即ちIllumina HM450アレイにおける隣接位置が、子宮内膜癌試料において一貫して高メチル化されていると検出されるかどうか確認できる。この目的のために、OXT並びにZSCAN12の転写開始部位(RefSeqとEnsemblデータベース間の共通転写産物)の上流及び下流において5000bp重なり合っている全てのIllumina HM450アレイ位置を、GenomicRanges R機能を使用して選択した。
【0062】
第2の対照により、高メチル化されていることが判明した位置が、子宮内膜癌分子サブグループに関係なく高メチル化されているかどうか確認することができる。この目的のために、選択した標的位置のメチル化レベルを、子宮内膜癌TCGA分子的サブグループの全体で比較した。使用したデータは、公的に利用可能なTCGAデータであった。OXTとZSCAN12の関連するメチル化位置の両方を考慮すると、試料の1.5%しか、二重低メチル化を示さなかった。
【0063】
第3の対照により、高メチル化されていることが判明した位置が、転移試料においてもメチル化されているかどうか確認することができる。実際に、ゲノム修飾は、転移プロセスの間に起こりえ、DNAメチル化修飾を招く可能性がある。この目的のために、選択した標的位置のメチル化レベルを、これまでに公開されている転移試料において分析した(データは、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/で公的に利用可能である)。位置OXT及び/又はZSCAN12は、全ての転移試料において高いメチル化値(>0.25)を示した。
【実施例2】
【0064】
子宮内膜癌シグネチャーの診断成績の判断
したがって、OXT及びZSCAN12に関する位置を、これまでにバイサルファイト処置した高メチル化鋳型DNAを標的するddPCRアッセイ開発のために選択した。アルブミン(ALB)を対照として使用した。
【0065】
方法
DNAのバイサルファイト変換
血漿、白血球層又は腫瘍から抽出したDNA試料の最高20μL(又は高度に濃縮したDNA試料の場合30ng)を、製造業者の指示にしたがってEZ DNA Methylation-Goldキット(ZYMO research社)を使用してバイサルファイト変換した。バイサルファイト変換したDNAを、ddPCRまで-20℃で最大1週間貯蔵した。バイサルファイト変換したDNAを、M溶出緩衝液11μL中に溶出させた。様々な量のヒトゲノム対照DNA及び普遍的にメチル化されているヒトDNAを、実験に応じてバイサルファイト変換した(各ddPCR実験における開発ステップ又は陽性対照として)。すべてのバイサルファイト変換バッチは、ヒトゲノムDNA対照10ngを含むウェル及び普遍的にメチル化されているヒトDNA対照10ngを含むウェルを少なくとも1つ含んだ。
【0066】
ddPCRアッセイ
ddPCRアッセイの技術的な成績を、ddPCRアッセイ開発のガイドラインを使用して評価した(dMIQE Group、2020年、Clinical Chemistry、66(8):1012~1029頁)。
【0067】
各標的に対して、バイオインフォマティクス分析によって同定した標的したアンプリコンのメチル化配列を増幅し、検出することを意図してフォワード及びリバースプライマー(Eurofins Genomics社、フランス)並びにMGB Taqmanプローブ(登録商標)(Applied Biosystems(商標)社、英国)を設計した。ALB(アルブミンをコードする)遺伝子上のメチル化に非感受性の標的を、各PCRウェルにおいて分析されるDNA量の内部対照として使用した(プライマー及びプローブは以下で報告する)。
【0068】
【0069】
理論的定量限界(LOB)及び検出限界(LOD)を、陰性対照[全血溶解物(G304、Promega(商標)社、米国)のプールから抽出したバイサルファイト処置したゲノムDNA]の30回を超える複製に対してアッセイを行い、これまでに確立されている手順を使用して算出することによって評価した(Armbruster & Pry 2008年、Clin Biochem Rev、29補足1、S49~52頁)。LOB:LOD(ドロップレット/20μL:cp/20μL)は、ZSCAN12及びOXTについて、それぞれ2:6及び2:6であった。各ウェル内の技術的感度を、高メチル化DNA[D5011-1、Zymo Research(商標)社、米国]のlog10段階希釈に対してddPCRアッセイを適用することによって評価し、0.1%と推定した(ヒトゲノムDNA 10ng中に希釈したメチル化DNA 0.01ngの検出)。
【0070】
子宮内膜癌及び非がん試料における標的の高メチル化*1つの腫瘍隣接組織は、in situ癌浸潤を有する。
【0071】
メチル化の共通シグネチャーの診断成績を、コーチン病院で追跡調査し、腫瘍の分子環境を特徴付けることを意図する研究にこれまでに含まれた患者78名の独立したコホートにおいて評価した(Beinseら、Plos One 2019年、14(3):e0214416;Beinseら、2020年、Int J Gynecol Cancer、30(5):640~647頁)。検出の感度99%及び特異度93%で、このシグネチャーは、1つの腫瘍試料を除いて正確に同定することができた。非腫瘍試料(N=28)は、腫瘍に隣接する組織であり、特異度が過小評価される可能性がある。以下の表を参照のこと。
【表4】
【0072】
共通メチル化シグネチャーの特異度を、血漿試料35個から抽出したDNA試料35個に対してddPCRアッセイを適用することによって評価した[QIAamp(登録商標)Circulating Nucleic Acidキット、QIAGEN(登録商標)社]。これらの中で、試料5個を、健康なドナーから入手し(Biopredic Internationa社、フランス)、試料30個を、コーチン病院において非腫瘍性婦人科症状に対して処置された患者から入手した。試料は、ZSCAN12又はOXTの高メチル化配列を検出するいかなる陽性ドロップレットも示さなかった。
【実施例3】
【0073】
他のがんにおける調査
図2は、OXT/ZSCAN12の組合せが、他のがんと比較して、子宮内膜癌に特異的なシグネチャーであることを示す。本発明者らは、OXTの高メチル化が、卵巣癌のシグネチャーでもあることを更に示した。それゆえ、TCGAデータベースにおいて、卵巣がん試料の98%は、OXTの高メチル化を示した。
【0074】
OXT及び/又はZSCAN12のメチル化値を考慮した場合、この組合せにより、(得られた)子宮内膜及び卵巣がんをAUC 0.84(感度=0.98;特異度=0.31)で他の全てのがんと区別することが可能になる。
【配列表】
【国際調査報告】