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特表2024-505019貯蔵安定性のあるエポキシ樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】貯蔵安定性のあるエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20240126BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C08G59/40
C08J5/24 CFC
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544782
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022051177
(87)【国際公開番号】W WO2022161837
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】102021101685.1
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512117801
【氏名又は名称】アルツヒエム トローストベアク ゲー・エム・べー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Alzchem Trostberg GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Str. 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ズゲラ、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ディジキンク、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】リッツィンガー、フロリアン
【テーマコード(参考)】
4F072
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB24
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD25
4F072AD26
4F072AD27
4F072AD28
4F072AD31
4F072AE04
4F072AE14
4F072AF16
4F072AF26
4F072AF31
4F072AG03
4F072AG06
4F072AH04
4F072AH21
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL11
4F072AL17
4J036AA01
4J036AD08
4J036AD09
4J036AF06
4J036AH07
4J036DC25
4J036DC26
4J036GA06
4J036HA12
4J036JA11
(57)【要約】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるためのボロン酸の使用並びにエポキシ樹脂および硬化剤およびボロン酸を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるための一般式(I)のボロン酸の使用であって、ここで、式(I)は:
【化1】

(式中、ラジカルRは:
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は:
【化2】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、式(III)による硬化剤を含み、ここで、式(III)は:
【化3】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、
-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)であり、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)による硬化剤に加えて、シアナミド、グアニジン、シアノグアニジン、ニトログアニジン、アシルグアニジン、ビグアニジンおよび一般式(IV)による硬化剤からなる群から選択される硬化剤を含まない(ここで、式(IV)は、以下のとおりである
【化4】

(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して、
40=シアノ、ニトロ、アシルまたは式-(C=X)-R43(式中、
X=イミノまたは酸素、
43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)
のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリール、ベンジル、またはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)、使用。
【請求項2】
式(I)におけるラジカルR
=メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、または5-ヒドロキシペンチル
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)におけるRが式(II)のラジカルであり、ここで、ラジカルR、R、R
=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、C-からC-アルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
、R=水素
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
式(I)におけるRが式(II)のラジカルであり、ここで、ラジカルR、R、Rが互いに独立して
、R=互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
=水素
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
式(I)におけるRが式(II)のラジカルであり、ここで、ラジカルR、R、Rが互いに独立して
、R、R=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、C-からC-アルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1つのエポキシ樹脂および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、該組成物が少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含むことを特徴とし、ここで、式(I)は:
【化5】

(式中、ラジカルRは:、
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は:
【化6】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、式(III)による硬化剤を含み、ここで、式(III)は:
【化7】

(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、
-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)であり、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)による硬化剤に加えて、シアナミド、グアニジン、シアノグアニジン、ニトログアニジン、アシルグアニジン、ビグアニジンおよび一般式(IV)による硬化剤からなる群から選択される硬化剤を含まない(ここで、式(IV)は、以下のとおりである
【化8】

(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して、
40=シアノ、ニトロ、アシルまたは式-(C=X)-R43(式中、
X=イミノまたは酸素、
43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)
のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリール、ベンジル、またはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)、エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
100重量部のエポキシ樹脂に基づくエポキシ樹脂組成物が
a)1から15重量部の式(III)による硬化剤、および
b)0.05から3.0重量部の式(I)によるボロン酸
を含むことを特徴とする、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
ボロン酸に対する硬化剤の重量比が1:1から300:1の範囲中の比に対応することを特徴とする、請求項6から7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
繊維複合材料、特にプリプレグ、またはトウプレグの製造のための、請求項6から8のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物の使用。
【請求項10】
1成分接着剤または音響絶縁材料の製造のための、請求項6から8に記載のエポキシ樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるためのボロン酸の使用並びにエポキシ樹脂および硬化剤およびボロン酸を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂の使用は、その優れた耐薬品性、その非常に優れた熱的および動的機械的特性並びにその高い電気絶縁容量のために広く普及している。これらのエポキシ樹脂は、液体または固体の形態で入手可能であり、熱の適用の下、硬化剤の添加ありまたはなしで硬化させることができる。
【0003】
エポキシ樹脂の硬化は、さまざまなメカニズムに従って進行する。フェノールまたは無水物での硬化に加えて、アミンでの硬化がしばしば行われる。これらの物質は、通常液体であり、エポキシ樹脂と非常によく混合することができる。高い反応性のため、そのようなエポキシ樹脂組成物は、2つの成分を使用して実施される。これは、樹脂(A成分)および硬化剤(B成分)が、別々に貯蔵され、使用直前に正しい比率で混合されることを意味する。これらの二成分樹脂配合物はまた、いわゆる低温硬化性樹脂配合物とも呼ばれ、これにより、これに使用される硬化剤は、通常、アミンまたはアミドアミンの群から選択される。
【0004】
一方、単一成分の熱硬化性エポキシ樹脂配合物は、すぐに使用でき、事前に組み立てられている、すなわちエポキシ樹脂および硬化剤は、工場で混合されている。従って、ローカル使用中の個々の成分の混合エラーは、除外される。このための前提条件は、室温ではエポキシ樹脂と反応しないが、エネルギーの適用に依存して、加熱するとき容易に反応する潜伏性の硬化システムである。この文脈において、「潜伏性の」は、個々の成分の混合物が定義された貯蔵条件下で安定であることを意味する。
【0005】
そのような単一成分エポキシ樹脂配合物については、例えば、ジシアンジアミドは、特に適切であり、また費用効果の高い硬化剤でもある。周囲条件下で、対応するエポキシ樹脂-ジシアンジアミドの混合物は、最長12か月間すぐに使用できる状態で貯蔵することができる。
【0006】
エポキシ樹脂-ジシアンジアミド混合物などの単一成分エポキシ樹脂配合物を硬化させるための反応温度を下げるために、より低い温度での硬化が可能であるように硬化のための活性化エネルギーを下げる硬化促進剤が、一般にこれらの配合物に加えられる。しかしながら、これらの硬化促進剤は、多くの場合において、エポキシ樹脂、硬化剤、および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を低下させるため、室温での長期間の貯蔵は不可能である。それにもかかわらず、これらの単一成分エポキシ樹脂配合物の適切な貯蔵安定性を確保するために、それらは、制御された低温で、しばしば-18℃で貯蔵しなければならない。より潜伏性の低い硬化剤をエポキシ樹脂において使用するとき、同様の貯蔵条件が維持されなければならない。これは、この配合物の貯蔵、輸送および処理のために、特にプリプレグ、トウプレグまたは接着剤の製造用に、かなりの追加の費用および労力をもたらす。
【0007】
そのような障壁を知って、これらを克服するための提案が、すでに公開されてきた。例えば、欧州特許明細書EP 659793 B1は、エポキシ樹脂用の硬化剤として、ホウ酸またはホウ酸エステル(borates)(ホウ酸エステル(boric acid esters))およびイミダゾール-エポキシ樹脂付加物の混合物を記載する。このようにして得られた組成物は、貯蔵において安定であり、加熱による迅速な硬化を可能にする。
【0008】
さらに、欧州特許明細書EP 2678369 B1は、シアナミド、少なくとも1つの尿素誘導体(ウロン)および安定剤として少なくとも1つの有機または無機酸を含有する液体硬化剤を記載する。これらの硬化剤は、エポキシ樹脂中で素晴らしく溶解し、エポキシ樹脂において高い潜伏性を示し、長期貯蔵安定性を可能にする。
【0009】
さらに、欧州特許明細書EP 2780388 B1から、N,N’-ジメチルウロンが、硬化促進剤の添加なしに、単独の硬化剤としてエポキシ樹脂を硬化させることができることが知られている。
【0010】
さらに、欧州特許出願EP 3257884 A1は、エポキシ樹脂、ジシアンジアミド、芳香族ウロンおよびホウ酸エステルのエポキシ樹脂混合物を記載する。実施例においてリストされているホウ酸エステルの効果、特に60℃での熱流曲線におけるピークまでの時間の延長は非常に低く、そのため、これらのエステルの添加が凍結貯蔵および凍結輸送の必要性を排除することができるかどうかは、疑わしい。
【0011】
さらに、ドイツ特許出願DE 10 2019 121 195.6は、硬化剤、硬化促進剤およびエポキシ樹脂組成物を安定化させるためのボロン酸を含むエポキシ樹脂組成物を記載する。
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明は、数日間の実質的な期間硬化が観察されることなく貯蔵することができる、硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を提供することに向けられる。このエポキシ樹脂組成物は、硬化温度未満での高い潜伏性、すなわち高い貯蔵安定性、並びに硬化温度での高い反応性を有するはずである。
【0013】
これらの課題は、請求項1に記載の使用並びに請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物によって解決することができるであろう。本発明の好ましい実施態様は、任意に互いに組み合わせ得るサブ請求項中に与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
すなわち、第1の実施態様によれば、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるための一般式(I)のボロン酸の使用は、本発明の主題であり、ここで、式(I)は、
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、ラジカルRは:
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、式(III)による硬化剤を含み、ここで、式(III)は:
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R、R、Rは互いに独立して:
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、
-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)であり、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)による硬化剤に加えて、シアナミド、グアニジン、シアノグアニジン、ニトログアニジン、アシルグアニジン、ビグアニジンおよび一般式(IV)による硬化剤からなる群から選択される硬化剤を含まない(ここで、式(IV)は、以下のとおりである
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して:
40=シアノ、ニトロ、アシルまたは式-(C=X)-R43(式中、
X=イミノまたは酸素、
43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)
のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリール、ベンジル、またはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する))。
【0023】
特に好ましくは、エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)の硬化剤に加えて、エポキシ樹脂を硬化させるための、さらなる硬化剤、共硬化剤、硬化促進剤または他の触媒をまったく何ら含まない。
【0024】
すなわち、さらなる実施態様によれば、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めるための一般式(I)のボロン酸の使用は、本発明の主題であり、ここで、式(I)は、
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、ラジカルRは:
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0027】
【化6】
【0028】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、式(III)による硬化剤を含み、ここで、式(III)は:
【0029】
【化7】
【0030】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、
-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)であり、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)の硬化剤に加えて、エポキシ樹脂を硬化させるための、さらなる硬化剤、共硬化剤、硬化促進剤または他の触媒を何ら含まない。
【0031】
驚くべきことに、本発明の式(I)によるボロン酸の、エポキシ樹脂、式(III)による硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物への添加は、硬化用にそのようにすでに調製された該エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を有意に改善することが、示された。例えば、TDI-ウロン含有エポキシ樹脂組成物の潜在時間は、本発明によるボロン酸を添加することによって6から12倍増加させることができ(実施例参照)、その結果、対応するエポキシ樹脂組成物は、本発明によるボロン酸の添加のない、その他の点では同一の組成物と比較して、40℃までの室温で少なくとも2ヶ月以上長い期間貯蔵することができ、すなわち硬化することなく貯蔵し続けることができる。まったく驚くべきことに、所望の貯蔵安定性が、組成物の反応性を有意に変化させることなく達成されることが示された。ボロン酸の添加は、達成されるガラス転移温度または繊維強化複合材料の機械的特性に影響を与えない。すなわち、ボロン酸の添加なしに達成される硬化剤および硬化促進剤の全体としての硬化特性は、変化せず、本質的に維持される。これらの事実は、全体として驚くべきものである。従って、全体として、室温での高い貯蔵安定性および硬化温度での高い反応性を示し、プリプレグ、トウプレグおよび1成分接着剤、並びに音響絶縁材料における使用に極めて適したエポキシ樹脂組成物を、提供することができる。
【0032】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物は、そのエポキシ樹脂が熱硬化性である、すなわちそれらの官能基、すなわちエポキシ基のために熱によって重合可能、連結可能および/または架橋可能である、組成物を意味する。ここで、重合、連結および/または架橋は、硬化剤によって誘導される重付加の結果として起こる。
【0033】
本発明の文脈において、アルキルは、飽和の、直鎖または分枝脂肪族ラジカル、特に一般式C2n+1(式中、nは、ラジカルの炭素原子の数を表す)を有するアルキルラジカルとして理解されるべきである。アルキルは、より多くの数の炭素原子を有するラジカルを意味し得る。好ましくは、アルキルは、一般式C2n+1(式中、nは、ラジカルの炭素原子の数を表し、nは、1から15の数を表す)を有する飽和の、直鎖または分枝脂肪族ラジカルを意味する。すなわち、アルキルは好ましくは、CからC15アルキル、より好ましくはCからC10アルキルを意味する。それにより、CからC15アルキルが、特にメチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシルまたはn-ペンタデシルであることが、さらに好ましい。
【0034】
さらに、CからCアルキルは、最大5個の炭素原子を有する飽和の、直鎖または分岐アルキルラジカルを意味する。好ましくは、CからCアルキルは、特にメチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピルまたは1-エチルプロピルを意味する。
【0035】
本発明によれば、ヒドロキシアルキルは、1つ、2つまたは3つのヒドロキシ基で置換された上記で定義されたアルキルラジカルを意味する。特に、本発明によれば、ヒドロキシアルキルは、最大15個の炭素原子を有し、ヒドロキシ基で置換されているアルキルラジカルを意味する。すなわち、ヒドロキシアルキルは好ましくは、CからC15ヒドロキシアルキルを意味する。さらに好ましくは、ヒドロキシアルキルは、CからCヒドロキシアルキルを意味する。最も好ましくは、ヒドロキシアルキルは、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチルまたは5-ヒドロキシペンチルを意味する。
【0036】
本発明の文脈において、CからC15シクロアルキルは、3から15個の炭素原子を有する飽和の、単環式または二環式脂肪族ラジカル、特に一般式C2n-1(式中、n=3から15の整数)を有するシクロアルキルラジカルを意味することが、さらに意図される。この文脈において、CからC15シクロアルキルは、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを意味することが好ましく意図され、ここで、これらのシクロアルキルラジカルは次いで、好ましくは上記の意味のアルキルによってさらに一または多置換され得る。
【0037】
本発明によれば、CからC15シクロアルキルは特に好ましくは、次いでアルキルで一または多置換され得る、シクロペンチル、シクロヘキシルを、特に3,3,5,5-テトラメチル-1-シクロヘキシルを意味する。
【0038】
シアノは、一般式CNのニトリル基を示す。
【0039】
ニトロは、一般式NOの官能基を示す。
【0040】
アミノは、一般式NHの官能基を示す。
【0041】
イミノは、一般式NHの官能基を示す。
【0042】
アルキルアミノは、式NH(アルキル)2-n(n=0または1)のラジカルを意味し、ここで、アルキルは、上記の意味のアルキルラジカルであり、結合部位は窒素上に位置する。
【0043】
カルボキシルは、一般式COOHの官能基を示す。
【0044】
アルコキシは、式O-アルキルのラジカルを意味し、ここで、アルキルは、上記の意味のアルキルラジカルであり、結合部位は、酸素上に位置する。本発明によれば、アルコキシは、特に、そのアルキルラジカルが最大15個の炭素原子、特に最大5個の炭素原子を有する、アルコキシラジカルを意味する。すなわち、アルコキシは好ましくは、CからC15アルコキシを、より好ましくはCからCアルコキシを意味する。特に好ましくは、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシまたはn-ペントキシを意味する。
【0045】
アシルは、式C(O)-Rのラジカルを意味し、ここで、Rは、炭素および水素に結合し、アルキルまたはアルコキシは、上記の意味のものであり得、アシルラジカルの結合部位は、炭素上に位置する。特に好ましくは、アシルは、ホルミルまたはアセチルを意味する。
【0046】
さらに、アルキルスルホニルは、式SO-アルキルのラジカルを意味し、ここで、アルキルスルホニルラジカルの結合部位およびアルキルラジカルの両方が硫黄上に位置し、アルキルは、上記の意味のアルキルラジカルである。本発明によれば、アルキルスルホニルは特に、そのアルキルラジカルが最大15個の炭素原子を有するアルキルスルホニルラジカルを意味する。すなわち、アルキルスルホニルは好ましくは、CからC15アルキルスルホニルを、より好ましくはCからCアルキルスルホニルを意味する。特に好ましくは、アルキルスルホニルは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、n-ブチルスルホニルまたはn-ペンチルスルホニルを意味する。
【0047】
本発明によれば、アリールは、芳香族ラジカル、特に、単環式、二環式または多環式であり得る6から15個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味する。すなわち、アリールは好ましくは、CからC15アリール、特にベンジルフェニルまたは次いでアリールアルキル、特にアリールメチル、特にフェニルメチルで一置換されているCからC15アリールラジカルを意味する。特に好ましくは、アリールは、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニルまたはペリレニルを、最も好ましくはフェニルを意味する。
【0048】
さらに、本発明によれば、アルキルアリールは、次いで上記のタイプのアルキルで一または多置換されている、上記のタイプの芳香族ラジカルを意味する。特に、アルキルアリールは、6~15個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを意味する。すなわち、アルキルアリールは好ましくは、CからC15アルキルアリールを意味する。さらに好ましくは、アルキルアリールは、メチルフェニル、ジメチルフェニルまたはトリメチルフェニルを意味する。
【0049】
本発明によれば、式(I)のボロン酸を用いる(employed)または使用する(used)ことができ、ここで、式(I)中のRは、アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカルを意味し得る。好ましくは、式(I)中のRは、アルキルまたはヒドロキシアルキルであり得、ここで、さらに好ましくは、Rが以下の意味を有することが提供される。
=メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチルまたは5-ヒドロキシペンチル
【0050】
本発明によれば、Rはまた、少なくとも1つの置換基R、R、Rが水素ではない、式(II)のラジカルであり得る。すなわち、あるいは、式(I)中のRは好ましくは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する、式(II)のラジカルを意味し得る。
【0051】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
=フッ素、アシル、アルコキシまたはB(OH)
、R=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0052】
さらにより好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
=フッ素、ホルミル、アセチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ、またはB(OH)
、R=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0053】
さらなる代替法によれば、式(I)によるボロン酸をまた好ましくは用いる(employed)または使用する(used)ことができ、ここで、式(I)中のRは好ましくは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
、R=互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
=水素
を意味する、式(II)のラジカルを意味する。
【0054】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
、R=互いに独立して、フッ素、アシル、アルコキシまたはB(OH)
=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0055】
さらにより好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
、R=互いに独立して、フッ素、ホルミル、アセチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ-またはB(OH)
=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0056】
さらなる代替法によれば、式(I)によるボロン酸を好ましくは使用する(used)または用いる(employed)ことができ、ここで、式(I)中のRは好ましくは、式(II)中のラジカルR、R、Rが互いに独立して:
、R、R=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味する、式(II)のラジカルを意味する。
【0057】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のラジカルR、R、Rが互いに独立して:
、R、R=フッ素またはCからCアルキル
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0058】
さらにより好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のラジカルR、R、Rが互いに独立して:
、R、R=フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0059】
非常に好ましくは、式(I)は、4-ホルミルフェニルボロン酸、1,4-ベンゼンジボロン酸、3-フルオロフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸、2,5-ジメトキシフェニルボロン酸、メチルボロン酸、4-エチルフェニルボロン酸、1-オクチルボロン酸、2-カルボキシ-フェニルボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸、(2-ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸、4-シアノフェニルボロン酸、4-(メタンスルホニル)フェニルボロン酸、3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸またはそれらの混合物からなる群から選択される物質を表す。
【0060】
エポキシ樹脂組成物におけるこれらのボロン酸の使用は、硬化用にすでに調製されたエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性をことのほか高い程度にまで改善し得る。
【0061】
非常に好ましくは、式(III)の化合物は、全てのラジカルRおよびRが同一であり、特にメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチルまたはn-ペンチルである硬化剤として使用される。好ましくは、少なくとも2つのラジカルRおよび2つのラジカルRは同一であり、該ラジカルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチルおよびn-ペンチルからなる群から選択される。しかしながら、2つのラジカルRまたは2つのラジカルRまたは4つ全ての基はまた、互いに異なり得、その場合においては、該ラジカルはまた好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチルまたはn-ペンチルからなる群から選択される。
【0062】
従って、さらなるアイデアによれば、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、並びに少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含むエポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物もまた、本発明の主題であり、ここで、式(I)は:
【0063】
【化8】
【0064】
(式中、ラジカルRは:
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0065】
【化9】
【0066】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、式(III)による硬化剤を含み、ここで、式(III)は:
【0067】
【化10】
【0068】
(式中、R、R、Rは互いに独立して:
、R=互いに独立して水素またはCからCアルキル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、
-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)であり、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)による硬化剤に加えて、シアナミド、グアニジン、シアノグアニジン、ニトログアニジン、アシルグアニジン、ビグアニジンおよび一般式(IV)による硬化剤からなる群から選択される硬化剤を含まない(ここで、式(IV)は、以下のとおりである
【0069】
【化11】
【0070】
(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して:
40=シアノ、ニトロ、アシルまたは式-(C=X)-R43(式中、
X=イミノまたは酸素、
43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)
のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリール、ベンジル、またはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)。
【0071】
特に好ましくは、この実施態様においても、エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)の硬化剤に加えて、エポキシ樹脂を硬化させるための、さらなる硬化剤、共硬化剤、硬化促進剤または他の触媒をまったく何ら含まない。
【0072】
すなわち、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物はまた、本発明の主題であり、ここで、式(I)は、
【0073】
【化12】
【0074】
(式中、ラジカルRは:
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0075】
【化12】
【0076】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として式(III)による硬化剤を含み、ここで、式(III)は:
【0077】
【化13】
【0078】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、
-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)であり、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(III)の硬化剤に加えて、エポキシ樹脂を硬化させるための、さらなる硬化剤、共硬化剤、硬化促進剤または他の触媒を何ら含まない。
【0079】
さらなるアイデアによれば、すなわち、少なくとも1つのエポキシ樹脂、特に少なくとも1つの液体エポキシ樹脂、および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤および少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸からなり、該硬化剤は、少なくとも1つの式(III)による尿素誘導体からなる、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物を提供することもまた、本発明の主題である。
【0080】
驚くべきことに、そのようなエポキシ樹脂組成物は、貯蔵において特に安定であることが示された。すなわち、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、既知のエポキシ樹脂組成物と比較して、有意により高い貯蔵安定性(実施例参照)を有することが示された。本発明によるエポキシ樹脂組成物は、同じ条件下でボロン酸なしの同等のエポキシ樹脂組成物よりも少なくとも6から16倍長く(at least 6 to 16 times longer)、すなわち少なくとも6から16倍長く(by at least a factor of 6 to 16)貯蔵することができるか、またはより長い貯蔵安定性を有する。非常に驚くべきことに、組成物の反応性などの他の硬化特性は、既知の組成物の硬化特性に匹敵し、有意に変化しないことが示された。すなわち、これらの組成物は、プリプレグ、トウプレグおよび1成分接着剤並びに音響絶縁材料の製造用に優れて使用することができる。
【0081】
上記の使用、特に好ましいボロン酸の使用の好ましい実施態様はまた、本発明のエポキシ樹脂組成物の好ましい実施態様でもある。すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は好ましくは、式(I)によるボロン酸を含み、ここで、式(I)中のRは好ましくは、アルキルまたはヒドロキシアルキルを意味する。さらに好ましくは、式(I)中のRは:
=メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチルまたは5-ヒドロキシペンチル
を意味し得る。
【0082】
本発明によれば、Rはまた、少なくとも1つの置換基R、R、Rが水素ではない、式(II)のラジカルであり得る。すなわち、エポキシ樹脂組成物はあるいは好ましくは、式(I)によるボロン酸を含み得、ここでRは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
、R=水素
を意味する、式(II)のラジカルである。
【0083】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のR、R、Rが:
=フッ素、アシル、アルコキシまたはB(OH)
、R=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0084】
さらにより好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のR、R、Rが:
=フッ素、ホルミル、アセチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシまたはB(OH)
、R=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0085】
さらなる代替法によれば、エポキシ樹脂組成物はあるいは好ましくはまた、式(I)によるボロン酸を含み得、ここで、Rは、式(II)中のラジカルR、R、Rが:
、R=互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
=水素
を意味する、式(II)のラジカルである。
【0086】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のR、R、Rが:
、R=互いに独立して、フッ素、アシル、アルコキシまたはB(OH)
=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0087】
さらにより好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のR、R、Rが:
、R=互いに独立して、フッ素、ホルミル、アセチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシまたはB(OH)
=水素
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0088】
さらなる代替法によれば、エポキシ樹脂組成物はあるいは好ましくはまた、式(I)によるボロン酸を含み得、ここで、Rは、式(II)中のラジカルR、R、Rが互いに独立して:
、R、R=フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシルまたはB(OH)
を意味する、式(II)のラジカルである。
【0089】
さらに好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のR、R、Rが互いに独立して:
、R、R=フッ素またはCからCアルキル
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0090】
さらにより好ましくは、式(I)中のRは、式(II)中のR、R、Rが互いに独立して:
、R、R=フッ素、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル
を意味する、式(II)のラジカルであり得る。
【0091】
最も好ましくは、エポキシ樹脂組成物は、4-ホルミルフェニルボロン酸、1,4-ベンゼンジボロン酸、3-フルオロフェニルボロン酸、2,4-ジフルオロフェニルボロン酸、2,5-ジメトキシフェニルボロン酸、メチルボロン酸、4-エチルフェニルボロン酸、1-オクチルボロン酸、2-カルボキシフェニルボロン酸、3-カルボキシフェニルボロン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸、(2-ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸、4-シアノフェニルボロン酸、4-(メタンスルホニル)フェニルボロン酸、3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸またはそれらの混合物からなる群から選択されるボロン酸を含み得る。
【0092】
本発明によれば、式(III)による尿素誘導体が、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として使用され(used)または用いられ(employed)、ここで、式(III)は、
【0093】
【化14】
【0094】
(式中、R、R、Rは互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキル、
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル、
-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する)を表す。
【0095】
それらの特性のため、これらの尿素誘導体は、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物の穏やかな硬化用に特によく使用し得る。
【0096】
式(III)によって記載される尿素誘導体のうち、芳香族尿素誘導体を好ましくは、本発明に従って用いる(employed)または使用する(used)ことができる。さらに好ましいのは、ラジカルR、R、Rが独立して:
、R=互いに独立して、CからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
=-NHC(O)NRで置換されたアリールまたは
-NHC(O)NRで置換されたアルキルアリール
を意味する、式(III)の芳香族尿素誘導体である。
【0097】
さらに好ましくは、ラジカルR、R、Rは、互いに独立して:
、R=互いに独立して、CからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
=-NHC(O)NRRで置換されたアルキルアリール
であり得る。
【0098】
すなわち、本発明によれば、式(V)による尿素誘導体が式(III)による尿素誘導体を表す、式(III)による尿素誘導体が特に好ましい。本発明によれば、式(V)が:
【0099】
【化15】
【0100】
であり、ラジカルR、R、R、R10が互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
、R10=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル
を意味する、式(V)による尿素誘導体が、特に好ましい。
【0101】
好ましくは、式(V)に関連するラジカルR、R、Rはそれぞれ、メチルラジカルを意味し、R10は、水素を意味する。特に好ましいのは、1,1’-(4-メチル-m-フェニレン)ビス(3,3-ジメチル尿素)および1,1’-(2-メチル-m-フェニレン)ビス(3,3-ジメチル尿素)である。
【0102】
さらに好ましくは、ラジカルR、R、Rは独立して:
、R=互いに独立して、CからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
=-NHC(O)NRで置換されたアリール、特に
-NHC(O)NRで置換されたベンジルフェニル
であり得る。
【0103】
すなわち、本発明によれば、式(VII)による尿素誘導体が式(III)による尿素誘導体を表す、式(III)による尿素誘導体が特に好ましい。本発明によれば、式(VII)が、
【0104】
【化16】
【0105】
であり、ラジカルR、R、R、R10が互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル
を意味する、式(VII)による尿素誘導体が、特に好ましい。
【0106】
特に好ましくは、式(VII)に関連するラジカルR、Rはそれぞれ、メチルを意味する。非常に特に好ましいのは、1,1’-(メチレンジ-p-フェニレン)ビス[3,3-ジメチル尿素]である。
【0107】
式(III)によって記載される尿素誘導体のうち、脂肪族尿素誘導体をまた好ましく、使用することができる。ラジカルR、R、Rが独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
=-NHC(O)NRで置換されたCからC15アルキルまたは
-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキル
を意味する、式(III)の脂肪族尿素誘導体が、さらに好ましい。
【0108】
さらに好ましいのは、RおよびRが上記で定義されたもの、特にメチルまたはエチルであり、Rが-NHC(O)NRで置換されたCからC15シクロアルキルである、式(III)による脂肪族尿素誘導体である。
【0109】
すなわち、本発明によれば、式(VI)による尿素誘導体が式(III)による尿素誘導体を意味する、式(III)による尿素誘導体が特に好ましい。本発明によれば、式(VI)が:
【0110】
【化17】

【0111】
であり、ここで、ラジカルは同時にまたは互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル;
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20=互いに独立して、水素、CからCアルキルまたは-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキル
を意味し、
ラジカルR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19またはR20の1つは、-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキルである、式(VI)による尿素誘導体が、特に好ましい。
【0112】
さらに好ましいのは、RおよびRが互いに独立してメチルまたはエチルであり、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20が互いに独立して水素、メチル、エチル、-NHC(O)NRまたは-NHC(O)NRで置換されたメチル若しくはエチルである、式(VI)の脂肪族尿素誘導体を含む硬化剤である。特に好ましいのは、以下N’-[3-[[[(ジメチルアミノ)カルボニル]アミノ]メチル]-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]-N,N-ジメチル尿素でもある1-(N,N-ジメチルウレア)-3-(N,N-ジメチルウレア-メチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(すなわち、R=R=R12=R13=R16 メチルおよびR17=-CH-NHC(O)N(CHおよびR11=R14=R15=R18=R19=R20=水素)である。
【0113】
すなわち、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、および式(V)または式(VI)または式(VII)による硬化剤の群から選択される該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、および少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物もまた、好ましく、ここで、式(I)は:
【0114】
【化18】

【0115】
(式中、ラジカルRは:
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0116】
【化19】

【0117】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
式(V)は:
【0118】
【化20】

【0119】
を表し、ラジカルR、R、R、R10は互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
、R10=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル
を意味し、
式(VI)は、
【0120】
【化21】

【0121】
(式中、ラジカルは同時にまたは互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル;
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20=互いに独立して、水素、CからCアルキル、特にメチル若しくはエチル、または-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキル、特に-NHC(O)NRで置換されたメチル若しくはエチル
を意味し、
ラジカルR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19またはR20の1つは、-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキルである)であり、
式(VII)は、
【0122】
【化22】
【0123】
であり、ラジカルR、Rは互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル
を意味し、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(V)または式(VI)または式(VII)の硬化剤に加えて、シアナミド、グアニジン、シアノグアニジン、ニトログアニジン、アシルグアニジン、ビグアニジン、および一般式(IV)による硬化剤からなる群から選択される硬化剤を含まず、ここで、式(IV)は:
【0124】
【化23】
【0125】
(式中、ラジカルR40、R41、R42は互いに独立して:
40=シアノ、ニトロ、アシルまたは式-(C=X)-R43(式中、
X=イミノまたは酸素、
43=アミノ、アルキルアミノまたはアルコキシ)
のラジカル、
41=水素、CからCアルキル、アリール、ベンジル、またはアシル、
42=水素またはCからCアルキル
を意味する)である。
【0126】
特に好ましくは、この実施態様においても、エポキシ樹脂組成物は、一般式(V)または式(VI)または式(VII)の硬化剤に加えて、エポキシ樹脂を硬化させるための、さらなる硬化剤、共硬化剤、硬化促進剤または他の触媒をまったく何ら含まない。
【0127】
すなわち、エポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂、および式(V)または式(VI)または式(VII)による硬化剤の群から選択される該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、および少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸を含む、エポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物もまた、好ましく、ここで、式(I)は:
【0128】
【化24】
【0129】
(式中、ラジカルRは:
=アルキル、ヒドロキシアルキルまたは式(II)のラジカル
を意味し、ここで、式(II)は、
【0130】
【化25】
【0131】
(式中、R、R、Rは互いに独立して、
、R、R=水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、CからCアルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルホニル、アリール、カルボキシル、またはB(OH)
を意味し、少なくとも1つのラジカルR、R、Rは水素ではない)である)を表し、
式(V)は:
【0132】
【化26】
【0133】
であり、ラジカルR、R、R、R10は互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル、
、R10=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特に水素、メチルまたはエチル
を意味し、
式(VI)は、
【0134】
【化27】
【0135】
(式中、ラジカルは同時にまたは互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル;
11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20=互いに独立して、水素、CからCアルキル、特にメチル若しくはエチル、または-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキル、特に-NHC(O)NRで置換されたメチル若しくはエチル
を意味し、
ラジカルR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19またはR20の1つは、-NHC(O)NRで置換されたCからCアルキルである)であり、
式(VII)は、
【0136】
【化28】
【0137】
であり、ラジカルR、Rは互いに独立して:
、R=互いに独立して、水素またはCからCアルキル、特にメチルまたはエチル
を意味し、
エポキシ樹脂組成物は、一般式(V)、または式(VI)または式(VII)の硬化剤以外の、エポキシ樹脂を硬化させるための、硬化剤、共硬化剤、硬化促進剤または他の触媒を何ら含まない。
【0138】
さらなるアイデアによれば、すなわち、少なくとも1つのエポキシ樹脂、特に少なくとも1つの液体エポキシ樹脂、および該エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤および少なくとも1つの一般式(I)のボロン酸、少なくとも1つの式(V)または式(VI)または式(VII)による尿素誘導体からなる硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物、特に液体エポキシ樹脂組成物を提供することもまた、本発明の主題である。
【0139】
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1つのエポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂を含む。好ましくは、エポキシ樹脂または液体エポキシ樹脂は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのエポキシ基、さらにより好ましくは少なくとも3つのエポキシ樹脂基を有するポリエーテルである。これらのエポキシ樹脂または液体エポキシ樹脂は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのエポキシ基を有し得、飽和または不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であり得る。さらに、これらのエポキシ樹脂または液体エポキシ樹脂は、ハロゲン、リンおよびヒドロキシル基などの置換基を有し得る。ビスフェノールベースのエポキシ樹脂、特にビスフェノールAジグリシジルエーテル並びに臭素置換誘導体(テトラブロモビスフェノールA)またはビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックエポキシ樹脂、特にエポキシフェノールノボラックまたは脂肪族エポキシ樹脂が、この文脈において好ましく使用される。2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)および臭素置換誘導体(テトラブロモビスフェノールA)のグリシジルポリエーテル、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテル並びにノボラックのグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂並びにアニリンまたはp-アミノフェノール若しくは4,4’ジアミノジフェニルメタンなどの置換アニリンに基づくものが、特に好ましい。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂および2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂が、特に好ましい。
【0140】
さらに好ましくは、本発明によれば、EEW=100から1500g/eqの範囲中の、特にEEW=100から1000g/eqの範囲中の、特にEEW=100から600g/eqの範囲中の、さらに好ましくはEEW=100から400g/eqの範囲中の、非常に特に好ましくはEEW=100から300g/eqの範囲中のEEW(エポキシド当量)値を有するようなエポキシ樹脂、特に液体エポキシ樹脂を、使用することができる。
【0141】
本発明の配合物の硬化プロファイルは、エポキシ樹脂を硬化させるために当業者に知られているもののような、さらなる市販の添加剤を加えることによって、変化させることができる。
【0142】
反応性希釈剤および熱可塑性添加剤は、プリプレグ、トウプレグおよび接着剤の配合物において、一般的に使用される。すなわち、エポキシ樹脂、硬化剤およびボロン酸に加えて、本発明によるエポキシ樹脂組成物はまた、反応性希釈剤および/または熱可塑性添加剤を含み得る。
【0143】
特に、グリシジルエーテルは、本発明による方法においてまたはエポキシ樹脂マトリックスにおいて、反応性希釈剤として使用することができる。この文脈において、単官能性、二および多官能性グリシジルエーテルを、好ましく使用することができる。特に、グリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエーテルおよびマルチグリシジルエーテル並びにそれらの組合せが、言及されるべきである。特に好ましくは、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、C-C10アルコールグリシジルエーテル、C12-C14アルコールグリシジルエーテル、クレゾールグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールトリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェノールグリシジルエーテル、ポリグリセロールマルチグリシジルエーテル、およびそれらの組合せを含む群から選択されるグリシジルエーテルを、使用し得る。
【0144】
非常に特に好ましいグリシジルエーテルは、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、およびそれらの組合せである。
【0145】
典型的には、フェノキシ樹脂、アクリレート、アクリル、アクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリアリールケトンまたはポリスルホンポリマーの群からの熱可塑性添加剤が、選択される。処理中の流動挙動および硬化成分の機械的特性へのそれらのプラスの影響のため、フェノキシ樹脂、ポリアクリレートまたはポリスルホンが、好ましく使用される。
【0146】
未硬化エポキシ樹脂組成物の処理性を改善するためのまたは熱硬化性製品の熱機械的特性を要件プロファイルに適合させるための添加剤は、例えば、充填剤、チキソトロピー剤若しくは分散添加剤などのレオロジー添加剤、消泡剤、染料、顔料、靭性修飾剤、衝撃修飾剤、ナノフィラー、ナノファイバー、または防火添加剤を含む。
【0147】
本発明に従って使用されるボロン酸、並びにエポキシ樹脂組成物中の硬化剤の量は、使用されるエポキシ樹脂の量に関して本発明に従って調整することができる。好ましくは、100重量部のエポキシ樹脂に基づいて、特に0.05から3.0重量部の式(I)によるボロン酸、さらに好ましくは0.1から2.0重量部の式(I)によるボロン酸、特に好ましくは0.1から1.0重量部の式(I)によるボロン酸を、使用することができる。
【0148】
さらに、100重量部のエポキシ樹脂に基づいて、特に1から15重量部の、特に式(III)または式(V)または式(VI)または式(VII)による硬化剤の群からの硬化剤を使用することができる。さらに好ましくは、本発明によれば、少なくとも2重量部の硬化剤、さらに好ましくは少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも4、なおさらに好ましくは少なくとも5、非常に特に好ましくは少なくとも6重量部の硬化剤を、それぞれの場合において100重量部のエポキシ樹脂に基づいて使用することができ、それとは独立して、さらに好ましくは最大14重量部の硬化剤、さらに好ましくは最大13重量部、さらに好ましくは最大12重量部、なおさらに好ましくは最大11重量部、非常に特に好ましくは最大10重量部の硬化剤を、それぞれの場合において100重量部のエポキシ樹脂に基づいて使用することができる。
【0149】
すなわち、本発明によるエポキシ樹脂組成物は好ましくは、100重量部のエポキシ樹脂に基づいて、特に4から12重量部の、非常に特に好ましくは6から10重量部の、特に式(III)または式(V)または式(VI)または式(VII)による硬化剤の群からの硬化剤を含む。
【0150】
この点について、エポキシ樹脂組成物は好ましくは、1:1から300:1、より好ましくは2:1から120:1、特に好ましくは6:1~100:1の範囲中の比に対応する、ボロン酸に対する硬化剤の重量比で、硬化剤およびボロン酸を含み得る。
【0151】
上述したように、本明細書において記載するエポキシ樹脂組成物は、硬化が観察されることなく、比較的長期間貯蔵することができる。さらに、これらのエポキシ樹脂組成物は、広範囲の用途を可能にする硬化プロファイルを示す。しかしながら、本発明によるエポキシ樹脂は、繊維複合材料における使用に特に適している。
【0152】
すなわち、繊維複合材料、プリプレグおよびトウプレグの製造のための、本明細書において記載するタイプのエポキシ樹脂組成物の使用もまた、本発明の範囲内である。
【0153】
プリプレグまたはトウプレグなどの繊維複合材料は、それらが、エポキシ樹脂および繊維からなる、事前に含浸され、部分的に硬化された繊維複合材料であるという事実によって特徴付けられる。これらの部分的に硬化した材料は、いわゆるBステージ、部分的に硬化した状態にある。この状態においては、対応するエポキシ樹脂組成物は部分的にしか硬化されていないため、該エポキシ樹脂の進展する硬化が起こり続き得る。エポキシ樹脂-ウロン混合物に基づくエポキシ樹脂配合物の場合においては、プリプレグおよびトウプレグなどの対応する繊維複合材料は、室温で反応し続け得、すなわちこれは、該繊維複合材料の所望の特性および品質に悪影響を及ぼし得る。すなわち、室温でのより長期間の貯蔵は、可能でない。プリプレグまたはトウプレグなどの繊維複合材料の適切な貯蔵安定性を確保するためには、それらは、制御された低温で、しばしば-18℃で、貯蔵されなければならない。これは、プリプレグおよびトウプレグの貯蔵、輸送および処理中に、かなりの追加コストおよび大きな労力をもたらす。従って、使用するエポキシ樹脂組成物が、プリプレグおよびトウプレグなどの繊維複合材料の貯蔵条件をそれらの特性および品質に有利になるように延長する、高い潜伏性を保証する場合、それは、有利である。本発明によるエポキシ樹脂組成物は、特定の程度まで高い潜伏性を示す。すなわち、本明細書において記載するタイプの本発明によるエポキシ樹脂組成物は、この問題を解決するのに特に適している。
【0154】
同様に、繊維複合材料自体もまた、本発明の主題であり、それは:
a)担体材料、特に強化繊維、および
b)本発明によるエポキシ樹脂組成物
を含む。
【0155】
繊維複合材料、特にプリプレグおよびトウプレグは、非常にさまざまな産業部門において繊維複合材料部品の製造について使用される。例えば、繊維複合材料は、自動車産業において内装トリムまたはフェンダーを製造するために使用され、または航空宇宙産業において多種多様な部品用に使用される。さらに、繊維複合材料は、テニスラケットまたは自転車フレームなどのスポーツ用品およびフリータイム用品、並びに風力タービン用のローターブレードを製造するためにも使用される。当業者に知られている全てのタイプの繊維を、これらの繊維複合材料について使用することができる。例えば、ガラス、炭素、アラミド、プラスチック、玄武岩、および天然繊維、またはロックウールが使用される。これらの繊維複合材料は、オートクレーブ、脱オートクレーブ、真空バッグおよびプレス法で処理することができる。
【0156】
使用される担体材料の選択に関しては、すなわち、特に強化繊維、さらに好ましくは、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維および玄武岩繊維からなる群から選択される強化繊維を、本発明に従って使用することができる。
【0157】
これらの強化繊維はさらに好ましくは、フィラメント、糸、ヤーン、織布、編組布または編布の形態で提供しまたは使用し得る。
【0158】
さらに、強化繊維はまた、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、グラファイト、炭化タングステン、ホウ素から選択することができる。さらに、強化繊維はまた、種子繊維(例えばカポック、綿)、靱皮繊維(例えば竹、麻、ケナフ、亜麻)または葉繊維(ヘネクエン、アバックなどの)などの天然繊維の群から選択することができる。同様に、これらの強化繊維の組合せもまた、担体材料として使用することができる。
【0159】
上述したように、本明細書において記載するエポキシ樹脂組成物は、硬化が観察されることなく、比較的長期間貯蔵することができる。さらに、これらのエポキシ樹脂組成物は、広範囲の用途を示す硬化プロファイルを有する。本発明によるエポキシ樹脂は従ってまた、1K接着剤(1成分接着剤)および音響絶縁材料における使用に特に適している。これらの接着剤および絶縁材料は、例えば、自動車および航空機建造において使用される。
【0160】
すなわち、1K接着剤または音響絶縁材料の製造のための、本明細書において記載するタイプのエポキシ樹脂組成物の使用もまた、本発明の主題である。
【0161】
1Kエポキシ樹脂組成物に基づく多数の接着剤または音響絶縁材料は、液体の中粘度から高粘度の状態における使用のために入手可能である。工業規模では、これらは、使用前に適切な処理温度にもたらさなければならない。バレルは好ましくは、完全に連続的な大量生産用に使用されるため、バレルに含有される接着剤または音響絶縁材料は、バレル加熱マットによって、またはしばしばバレル溶融システムの溶融プレートによって処理されなければならない。バレル溶融システムのスタンプに取り付けられている溶融プレートの使用は、エポキシ樹脂組成物を特定の熱応力下に置く。溶融したエポキシ樹脂ベースの接着剤または音響絶縁材料を輸送するために、スタンプをエポキシ樹脂に対して押し付けなければならないため、バレルの内容物に対するスタンプの圧力は、エポキシ樹脂を局所的に高度にさらに加熱する追加の剪断力を生成する。溶融樹脂はすなわち、通常、アプリケーションヘッドまたはアセンブリガンまたはメルターにつながる、スタンプに取り付けられた小さなホース接続を通して搬送されなければならない。この圧力および温度が集中する応力は、ポットライフに対する悪影響を有し、エポキシ樹脂組成物の潜伏時間における低下につながる。結果として、接着剤または音響絶縁材料の特性は、低下し得る。従って、接着剤および音響絶縁材料用に使用されるエポキシ樹脂組成物が、接着および絶縁特性およびすなわち品質に有利な、材料の応力中だけでなく貯蔵中もの高い潜伏時間延長を保証するために、高い潜伏性を保証する場合、それは、有利である。すなわち、本明細書において記載するタイプの本発明によるエポキシ樹脂組成物は、この問題を解決するのに特に適している。
【実施例
【0162】
使用した材料
製品名:EPIKOTE(商標) Resin 828(Hexion Inc.)
未修飾ビスフェノールAエポキシ樹脂(EEW=184~190g/eq)
(25℃での粘度=12~14Pas)
【0163】
尿素1:1,1’-(4-メチル-m-フェニレン)-ビス-(3,3-ジメチル尿素)(AlzChem Trostberg GmbH)
式Vによる二官能性硬化剤、固体物質(粒子サイズ98%≦10μm)
【0164】
尿素2:1,1’-(メチレンジ-p-フェニレン)ビス[3,3-ジメチル尿素](AlzChem Trostberg GmbH)
式VIIによる二官能性硬化剤、固体物質
【0165】
尿素3:N’-[3-[[[(ジメチルアミノ)カルボニル]アミノ]メチル]-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]-N,N-ジメチル尿素(AlzChem Torstberg GmbH)
式VIによる二官能性硬化剤、固体物質
【0166】
製品名:3-フルオロフェニルボロン酸;(abcr GmbH)
固体物質、(融点=220℃)
【0167】
製品名:2,5-ジメトキシフェニルボロン酸;(Alfa Aesar)
固体物質(純度=98%;融点=92~94℃)
【0168】
製品名:1-オクチルボロン酸;(Alfa Aesar)
固体物質(純度=97%;融点=81~85℃)
【0169】
製品名:1,4-ベンゼンジボロン酸(Alfa Aesar)
固体物質(純度=96%;融点>300℃)
【0170】
製品名:Toray T700 16500d 24k
一方向炭素繊維(坪量314g/m
【0171】
混合物の調製
実施例において記載される配合物の調査のために、それぞれの配合物の個々の成分を、均質が達成されるまで乳鉢中で数分間混合する。表1中にリストされている配合物を、この目的のために10gのエポキシ樹脂に変換した。
【0172】
繊維複合材料およびそれらの試験片の製造
繊維複合材料を製造するために、Toray T700 16500d 24k炭素繊維の6層を、15cm×13cmに切断する。乳鉢中で、各配合物の個々の成分を、均質が達成されるまで40℃で数分間混合する。表2中にリストされている配合物を、この目的のために100gのエポキシ樹脂に変換した。炭素繊維は、一方向に積み重ね、配合物で手作業でラミネートする。
【0173】
含浸繊維の硬化は、2枚のアルミニウム板の間で120℃で2時間行う。配合物参考例4およびKは、それぞれ120℃で2時間および130℃で1時間硬化させた。硬化後、繊維複合材料は、アルミニウム板から取り外す。引き続き、EN ISO 11357-1およびASTM D 4065に基づく、動的機械熱分析(DMTA-Tg)によるガラス転移温度の測定、EN ISO 14130に基づく、層間剪断強度(ILSS)の機械的測定、およびEN ISO 14125に基づく、3点曲げ試験による曲げ特性の機械的測定用の対応する試験片を、繊維複合材料から切り取る。
【0174】
【0175】
組成を特徴付けるために使用する方法
DSC調査
DSC測定は、動的熱流示差熱量計DSC1またはDSC3(Mettler Toledo)上で実施する。
【0176】
a)Tgの決定:
最大ガラス転移温度(最終Tg)の決定のために、硬化した配合物のサンプルを、以下のDSC温度プログラムに供する:20K/分で30から200℃に加熱、200℃で10分間保持、20K/分で200から50℃に冷却、50℃で5分間保持、20K/分で50から200℃に加熱、200℃で10分間保持、20K/分で200から50℃に冷却、50℃で5分間保持、20K/分で50から220℃に加熱。ガラス転移温度は、それぞれの場合において最後の2回の加熱サイクルから、熱容量における最大変化(ΔCp)の変曲点に接線を適用することによって決定し、平均値を、最終TGとして示す。
【0177】
b)等温DSC:
配合物のサンプルを、指定された時間、指定された温度で常に保持する(配合物の等温硬化)。評価は、発熱反応ピークの90%変換(硬化プロセスの終了の尺度としての)の時間を決定することによって実施する。
【0178】
c)潜伏時間
潜伏時間(貯蔵安定性)を決定するために、約10gのそれぞれの配合物を、新たに調製し、次いで40℃の温度で加熱キャビネット中で貯蔵する。動的粘度を定期的に測定することによって、これらの貯蔵条件下での配合物の漸進的な架橋(硬化)を記録する。動的粘度は、Haake粘度計[コーン(1°)プレート法、25℃での測定、剪断速度5.0s-1]を使用して決定する。配合物は、粘度が2倍になるまで貯蔵安定性がある(まだ処理に適している)として分類される。
【0179】
機械的調査
繊維複合材料の層間剪断強度(ILSS)および曲げ特性(3点曲げ試験)の測定は、Zwick Z010 材料試験機上で実施する。testXpertIIソフトウェアを用いて、測定結果を評価する。
【0180】
a)ILSS(EN ISO 14130):
繊維複合材料の試験片を、1mm/分の試験速度で測定する。圧縮フィンの半径は、5mmであり、サポートの半径は、2mmである。サポート幅(2つのサポート間の距離)は、L=10mmである。
【0181】
b)3点曲げ試験(EN ISO 14125):
繊維複合材料の試験片を、1mm/分の試験速度で測定する。圧縮フィンの半径は、5mmであり、サポートの半径は、2mmである。サポート幅(2つのサポート間の距離)は、L=80mmである。
【0182】
動的機械的熱分析
DMTA測定は、Convection Heating System CTD 450を有するAnton Paar’s Modular Compact Rheometer MCR 302を使用して実施し、分析は、Anton Paar’s RHEOPLUS/32ソフトウェアを使用して実施する。
【0183】
a)DMTA-Tg(EN ISO 11357-1およびASTM D 4065):
繊維複合材料におけるガラス転移温度の決定のために、サンプルを、1Hzの周波数で30分間、0.01%の振動変形に供する。サンプルを、5K/分で50から200℃に加熱する。法線力は、-0.5Nである。サンプルの中点Tgを、ガラス転移温度として与える。
【0184】
炭素繊維含有量
繊維複合材料の炭素繊維含有量を、質量分率で与える。炭素繊維の質量およびそれから作製した繊維複合材料の質量を決定し、これから商を形成する。
【0185】
結果のリスト
【0186】
【表1a】
【0187】
【表1b】
【0188】
表1aおよび表1bからの結果の説明および評価
それぞれ市販のエポキシ樹脂中のウロンベースの硬化剤からなる、本発明による実施例AからDの参考例1との比較および本発明による実施例EからHの参考例2との比較は、本発明によるボロン酸を使用するとき、硬化プロセスについて比較可能な特性値を決定することができることを示す。これは、硬化の90%変換を決定するために、最終Tgを決定し、140℃での等温DSCを記録することによることを含めて、DSC分析から得られる値から決定することができる。潜伏時間測定は、本発明のボロン酸を添加することによって、実施例AからDおよびEからHについて、40℃での潜伏時間を延長することができることを確認する。参考例1と比較した実施例AからDについて、6倍から12倍の潜伏時間における増加がある。参考例2と比較した実施例EからHについて、8倍から12倍のまたは12倍を超える潜伏時間における増加がある。すなわち、実施例Fの潜伏時間測定からの結果は、粘度の2倍化が、適用された測定期間においてまだ達成されていないことを示す。実施例Fについては、結果は、測定を96日後に停止したときに、粘度における1.6倍の増加である。参考例2が6日後に粘度における1.6倍の増加を達成するため、これは、配合物Fについての潜伏時間における16倍の増加をもたらす。
【0189】
すなわち、配合物参考例1および配合物AからDの比較並びに配合物参考例2および配合物EからHの比較は、本発明によるボロン酸によって、エポキシ樹脂ベースのプリプレグ、トウプレグ並びに接着剤が、変わらない硬化特性を有しつつ、40℃で18週間を超える延長された潜伏時間を達成することができることを示す。プリプレグ、トウプレグおよび接着剤および音響絶縁材料の熟練者、製造業者およびユーザーにとって、これは、これらの製品を冷蔵なしで貯蔵し、輸送し、処理することができるような、それらのより容易な取扱いを意味する。本発明によるボロン酸に基づく、対応して記載する配合物AからHによる製品について、これは、特にプリプレグ、トウプレグおよび接着剤について、16倍超より長い貯蔵寿命および貯蔵性をもたらす。これは、より少ない不合格品、より少ない廃棄物およびすなわち低下したコストにつながり得る。これは、炭素繊維などの高価な原材料の消費を低下させ、環境を保護する。
【0190】
【表2】
【0191】
表2からの結果の説明および評価
本発明による実施例1の参考例3およびKの参考例4との比較は、本発明によるエポキシ樹脂組成物を使用することによる繊維複合材料の動的機械的および機械的特性への影響が少しもないことを示す。参考例3と比較した本発明による実施例1および参考例4と比較したKの決定されたTg中点は、それぞれの場合において、一定の同一の値の範囲にある。本発明によるエポキシ樹脂組成物の影響は、ここでは検出することができない。典型的な値の範囲は、一方向の手作業でラミネートされた繊維複合材料の機械的特性において決定することができる。それぞれの試験片の曲げ弾性率および曲げ強度もまた、本発明によるエポキシ樹脂組成物のための特性変化の不在を確認する。破断伸びについての値は、それぞれの場合において、同じ値の範囲にある。繊維複合材料の層が剪断されたときと同じ荷重容量を反映する層間剪断強度は、繊維複合材料において有意な変化を少しも示さない。従って、本発明によるエポキシ樹脂組成物の有意な影響は、機械的特性においても少しも観察することができない。
【0192】
すなわち、配合物参考例3およびIの比較並びに配合物参考例4およびKの比較は、エポキシ樹脂ベースのプリプレグおよびトウプレグの繊維複合材料中の本発明によるボロン酸が、繊維複合材料部品についての最終特性における変化を少しも有しないことを示す。さらに、プリプレグおよびトウプレグなどの繊維複合材料については、プリプレグおよびトウプレグの熟練者、製造業者およびユーザーが、一貫した繊維複合材料の品質を得るように、40℃で18週間を超える延長された潜伏期間もまた残っている。さらに、繊維複合材料の製造は、本発明によるボロン酸を使用するときでさえ、それから作製される部品についての最終特性が変化しないため、繊維複合材料の製造プロセスを、変更したりまたは再設計したりする必要がないことを示す。
【国際調査報告】