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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】表面プラズモン共鳴作成方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/12 20060101AFI20240126BHJP
   B42D 25/382 20140101ALI20240126BHJP
   B42D 25/387 20140101ALI20240126BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240126BHJP
   G01N 21/41 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
G02B1/12
B42D25/382
B42D25/387
G02B1/14
G01N21/41 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545251
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 US2022070393
(87)【国際公開番号】W WO2022165504
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,139
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523282246
【氏名又は名称】オプセック セキュリティ グループ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OPSEC SECURITY GROUP, INC.
【住所又は居所原語表記】1857 Colonial Village Lane Lancaster, Pennsylvania 17601 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】マッド ギャリー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】コウツォジオルギス デモステネス
(72)【発明者】
【氏名】カルファジャニス ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】レントン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ダン ポール
【テーマコード(参考)】
2C005
2G059
2K009
【Fターム(参考)】
2C005HA01
2C005HB02
2C005HB10
2C005JB12
2C005JB13
2G059AA05
2G059EE02
2G059EE12
2G059HH01
2G059HH03
2K009AA15
2K009BB11
2K009CC02
2K009CC09
2K009DD03
2K009DD17
2K009EE00
(57)【要約】
セキュリティ製品を作成する方法は、基板を提供するステップと、導電性材料の不連続層を基板上に堆積するステップと、導電性材料の不連続層をレーザーアニールして、表面プラズモン共鳴効果を示すナノ粒子を生成するステップと、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ製品を作成する方法であって、
基板(10)を提供するステップと、
導電性材料(20)の不連続層を基板(10)上に堆積するステップと、
導電性材料(20)の不連続層をレーザーアニールして、表面プラズモン共鳴効果を示すナノ粒子を生成するステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記基板(10)がポリマー材料からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板(10)が約25μm~約100μmの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性材料(20)の前記不連続層が、銀、金、銅、およびアルミニウムのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性材料(20)の不連続層が約100nm未満の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性材料(20)の不連続層が真空蒸着により堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性材料(20)の不連続層が、エキシマレーザーまたは固体レーザーによってレーザーアニールされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
導電性材料(20)のレーザーアニールされた不連続層上にカプセル化層(30)を堆積するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カプセル化層(30)がポリマー材料からなり、前記導電性材料(20)のレーザーアニールされた不連続層に保護ハードコートを設ける、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの付加層(40)を基板上に堆積するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つの付加層(40)が、第一の屈折率を有する第一誘電層と、第二の屈折率を有する第二誘電層とを含み、前記第一の屈折率と前記第二の屈折率とが異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
導電性材料(20)をレーザーアニールして表面プラズモン共鳴効果を示すナノ粒子を生成するステップが、前記ナノ粒子の少なくとも一部が少なくとも部分的に基板(10)内に浸漬するように前記導電性材料(20)をレーザーアニールすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
導電性材料(20)をレーザーアニールして表面プラズモン共鳴効果を示すナノ粒子を生成するステップが、前記ナノ粒子の少なくとも一部が完全に基板(10)内に浸漬するように前記導電性材料(20)をレーザーアニールすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セキュリティ製品が、赤外線または紫外線スペクトルでプラズモン応答を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の方法によって作成されたセキュリティ製品。
【発明の詳細な説明】
【関連する出願の参照】
【0001】
本出願は、2021年1月29日に出願され、参照により本出願に援用される、米国仮特許出願第63/143,139号に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本願が開示する概念は、主に、表面プラズモン共鳴効果を利用する装置を作成する方法に関する。開示された概念は、この装置を組み込んだ偽造防止製品にも関する。
【背景技術】
【0003】
偽造防止対策は、製品が正規のものであることを認証するために、再現が困難な光学効果をしばしば活用する。最近では、表面プラズモン効果を示す複雑なナノ構造が使用される。しかし、製品の大量生産を可能とする際、偽造防止対策には生成と複製との両方が必要になることが多い。これらによって、複雑なナノ構造に関する問題が発生する可能性がある。
【0004】
生成段階における問題の例としては、必要なナノスケール構造に電子ビーム技術やイオンビーム技術などの高度な技術が要求されるため、時間がかかり、非常に高価になる可能性があることが挙げられる。場合によっては、物理マスター画像は複製して使用される。ただし、物理マスター画像の使用は、適切な管理が必要になるというリスクを伴う。さらに、物理マスターの、またはその複製段階でのエラーは、その後の製品に伝播する。さらに、画像を変更するには、新しいマスター画像を作成する必要がある。さらに考慮すべき点として、エンボス加工などのセキュリティ製品を作成するための技術は既によく知られており、不正な複製に使用される危険性がある。
これらの問題や課題は、正規品の認証のためのセキュリティ製品の開発において一般的である。生成と複製に関する問題に対処または問題を解決するとともに、迅速かつコスト効率よく製品を製造でき、また違法行為者による複製が困難となる、新しい技術を開発することが常に求められている。
偽造防止対策には引き続き改善の余地がある。
【発明の概要】
【0005】
開示された概念の態様によれば、セキュリティ製品を作成する方法は、基板を提供するステップと、導電性材料の不連続層を基板上に堆積するステップと、導電性材料の不連続層をレーザーアニールして、表面プラズモン共鳴効果を示すナノ粒子を生成するステップと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
開示された概念の完全な理解は、好ましい実施形態の以下の説明を、添付の図面と併せて読むことにより達成できる。
図1図1A~1Dは、開示された概念の例示的な実施形態における、表面プラズモン共鳴効果を利用したセキュリティ製品を作成するさまざまな段階を示す図である。
図2図2は、開示された概念の例示的な実施形態における、表面プラズモン共鳴効果を利用したセキュリティ製品を作成する方法のフローチャートである。
図3図3は、開示された概念の例示的な実施形態における、レーザーアニーリング前後の導電性材料の不連続層を示す。
図4図4は、開示された概念の例示的な実施形態における、一回のレーザーパルスによるレーザーアニーリング後のナノ粒子を示す。
図5図5は、開示された概念の例示的な実施形態における、二回のレーザーパルスによるレーザーアニーリング後のナノ粒子を示す。
図6図6は、開示された概念の例示的な実施形態における、150回のレーザーパルスによるレーザーアニーリング後のナノ粒子を示す。
図7図7は、開示された概念の例示的な実施形態における、レーザーアニーリングにより基板内に部分的または完全に浸漬するナノ粒子を示す概念図である。
図8】は、開示された概念の例示的な実施形態における、完全におよび/または部分的に浸漬したナノ粒子が光学効果に及ぼす影響を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1A~1Dは、開示された概念の例示的な実施形態における、表面プラズモン共鳴効果を利用したセキュリティ製品を作成するさまざまな段階を示す図であり、図2は、開示された概念の例示的な実施形態における、表面プラズモン共鳴効果を利用したセキュリティ製品を作成する方法のフローチャートである。
【0008】
図1Aは、基板10および不連続導電性材料20の薄層を示す。いくつかの例示的な実施形態では、基板10はポリカーボネートからなる。例えば、基板10は、セキュリティ基準を満たすポリカーボネート組成物であってもよい。いくつかの例示的な実施形態では、基板10の厚さは約50ミクロンであってもよい。基板10は、透明および/または可撓であってもよい。基板10は、開示された概念の範囲から逸脱することなく、他の材料から構成することができる。これら他の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリアミド/ナイロン、ポリプロピレン(PP)、セロファン、および紙幣に使用される紙またはハイブリッド紙/ポリマー基板などのポリマー素材が挙げられるが、これらに限定されない。基板10の厚さは、開示された概念の範囲から逸脱することなく変更可能である。いくつかの例示的な実施形態では、前記厚さは約25μmから約100μmの範囲内であり得るが、開示された概念の範囲から逸脱することなく他の厚さとすることができる。いくつかの例示的な実施形態では、基板10は剛体でありかつ/または不透明であってもよい。
【0009】
不連続導電性材料20の薄層は基板10の上に堆積される。不連続導電性材料の薄層の一例の画像を、図3の左部分に示す。図3に示す例では、導電性材料は「島と川」の形態を有する。この層は、導電性材料の層内にギャップが存在するという点で不連続であり、そのようなギャップが存在しない連続層とは対照的である。開示された概念のいくつかの例示的な実施形態では、層内のギャップは、堆積プロセスにおいていかなる特定の材料でも充填されず、周囲条件に応じて充填される(すなわち、真空成膜中は真空により、あるいは周囲条件に露出されている場合は空気により充填される等)。
【0010】
開示された概念のいくつかの例示的な実施形態における導電性材料は銀である。非限定的に例示される他の材料、すなわち金、アルミニウム、銅などの金属、および金属酸化物も使用可能である。いくつかの例示的な実施形態において、半金属または半導体も使用可能である。いくつかの例示的な実施形態では、合金および複合材料も使用可能である。例えば、これに限定されないが、銀を他の金属と合金化またはドーピングすると、スペクトル窓がより赤または青の可視色に偏移する可能性がある。材料の選択により、一般にプラズモニック応答のスペクトル領域(つまり、可視光線、赤外線、または紫外線)が決定される。いくつかの実施形態では、不連続導電性材料20の薄層は、約100nm未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、不連続導電性材料20の薄層は、約50nm未満の厚さを有する。導電性材料が銀である例示的な実施形態では、不連続導電性材料20の薄層は、約4~16nmの範囲の厚さを有する。いくつかの例示的な実施形態では、不連続導電材料20は約100nmを超える厚さを有する。
【0011】
不連続導電性材料20の薄層は、導電性材料を基板10上に堆積することによって形成されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、導電性材料は、バッチ式やロールツーロール式などの、熱蒸着またはマグネトロンスパッタリング等の真空蒸着によって基板上に蒸着される。しかしながら、不連続導電性材料20の薄層は、例えば、限定されないが、インクによる印刷、溶液ベースの堆積、ゾルゲル、または他のプロセスなどを用いて形成されてもよい。
【0012】
図1Bは不連続導電性材料20’の、レーザーアニールされた薄層を示す。開示された概念のいくつかの例示的な実施形態では、KrF/ArFエキシマまたは高調波を伴うNdドープ固体レーザーからのレーザー放射を、不連続導電性材料20の薄層のレーザーアニーリングと、プラズモニック応答を示すナノ粒子分布の形成に用いることができる。例示的な実施形態では、波長248nmのKrFエキシマレーザーがレーザーアニーリングプロセスに使用される。別の例示的な実施形態では、波長266nmの高調波を有するNdドープ固体レーザーがレーザーアニーリングプロセスに使用される。他のレーザーおよび波長(例えば、限定されないが、193nm(エキシマ)、248nm(エキシマ)、266nm(固体)、355nm(固体)、532nm(固体)、1064nm(固体)、308nm(XeClエキシマ)など)も、開示された概念の範囲から逸脱することなく、レーザーアニーリングプロセスに使用することができる。レーザーアニーリングに使用されるレーザーのいくつかの例が示されているが、開示された概念はこれらの例に限定されず、ファイバーレーザー、ディスクレーザー、および他のガスレーザーなどの他のレーザーも、開示された概念の範囲から逸脱することなく採用することができる。
【0013】
例示的な実施形態では、レーザーアニーリングプロセスで使用されるビームエネルギー分布プロファイルは、空間的に均一な分布(「トップハット」)である。別の例示的な実施形態では、レーザーアニーリングプロセスで使用されるビームエネルギー分布プロファイルは、M2/ガウス状分布である。ビームのエネルギープロファイルの形状は、カスタムビーム整形光学系を使用して操作可能であり、広い範囲の構成が実現可能である。「トップハット」プロファイルおよびガウスプロファイルは二つの例であるが、開示された概念の範囲から逸脱することなく、他のビームプロファイルをレーザーアニーリングプロセスに使用可能である。
【0014】
不連続導電性材料20の薄層をレーザーアニールすると、プラズモニック光学効果をもたらすナノ粒子分布の形成が誘発される。プロセスのパラメータを制御して、望ましい光学効果を作り出すことができる。
【0015】
レーザーアニーリングを使用してプラズモンナノ粒子を形成することの利点の一つは、デジタル制御されたレーザースキャンシステムがもたらす柔軟性である。このようなアプローチは、物理的なテンプレート/マスク(フォトリソグラフィー)やマスター画像(エンボス加工)を使用することなく、アニーリングを引き起こすために使用されるレーザービームのサイズによって決定される画像解像度で操作可能である。また、デジタル制御により、プラズモニック画像アートワークの完全なカスタマイズが可能になり、カスタムデータ、バーコーディング、シリアル化を単一のレーザーアニーリングプロセス内で個々のプラズモニック画像に統合することができる。このようなカスタムデータにより、プラズモニック光学特性を備えた読取可能で識別可能なマークを使用して、製品または生産ラインの追跡とトレースを可能にするデータベース内の情報にデジタル的にリンクすることができ、そのようなデータの不正複製に対してさらなる障壁を設けることができる。
【0016】
ビームを大きな領域(例えば、限定されないが、130mmx130mm)に拡大したり、ミクロンスケールでビーム幅を作成したり(~25ミクロンのビームウエスト)するために、さまざまな光学コンポーネントが利用可能である。いくつかの例示的な実施形態では、レーザーアニーリングプロセスは、ビームのサイズに関係なく、ナノ秒オーダー(7~25ナノ秒のパルス持続時間)で行われる。しかしながら、開示された概念の範囲から逸脱することなく、より短いまたはより長いパルス持続時間を使用することができる。スキャン速度と解像度の間にはトレードオフがあるので、同等の領域を埋めるために、高解像度においては小さなビームサイズとより遅いスキャン速度が必要である一方、低解像度においては単位時間あたりにより多くの画像領域をアニール可能なようにより大きなビームサイズが用いられる(十分なエネルギーの次のレーザーパルスを生成するのに必要な時間は、エキシマシステムでは1~50Hz、固体システムでは1~120kHzの範囲に収まるが、この所要時間は、使用されるシステムに応じて変化することがある)。
【0017】
図1Cは、不連続導電性材料20’のレーザーアニールされた薄層の上に配置されたカプセル化層30を示す。開示された概念の例示的な実施形態では、カプセル化層30がレーザーアニーリングプロセスの後に追加される。また、開示された概念の範囲から逸脱することなく、カプセル化層30を省略することも可能である。しかしながら、カプセル化層30は、不連続導電性材料20’のレーザーアニールされた薄層を保護する役割を果たすものであり、いくつかの例示的な実施形態では、所望のプラズモニック応答を達成するために不可欠である。
【0018】
いくつかの例示的な実施形態では、カプセル化層30は、不連続導電性材料20’のレーザーアニールされた薄層に保護ハードコートを提供するポリマー積層体である。ポリマー積層体は、選択された積層ポリマーの性質に応じて、プラズモニック応答のスペクトル特性に小さな赤方偏移を誘発することがある。プラズモニック応答の赤方偏移は、カプセル化層30に使用される材料の屈折率とともに増加する。この効果は設計プロセスにおいて考慮されるべきであり、いくつかの例示的な実施形態では、特定の効果を達成するために用いられる。例えば、いくつかの例示的な実施形態では、高屈折率材料をカプセル化層に使用することで、材料およびレーザーアニーリングパラメータの選択だけ(すなわち、プラズモニック応答を赤方偏移させる誘電体の意図的な使用)では実現するのが困難なプラズモニック応答を達成する。カプセル化層30はポリマー材料に限定されず、他の任意の適切な材料を使用することが可能である。例示的な実施形態では、カプセル化層30は、高屈折率層として機能する硫化亜鉛から構成されてもよい。硫化亜鉛はポリマーでトップコートされていてもよい。しかしながら、これは使用可能な材料の一例に過ぎず、開示された概念の範囲から逸脱することなく他の適切な材料を使用することができる。
【0019】
いくつかの例示的な実施形態では、誘電材料からなる付加的な層を、不連続導電性材料20’のレーザーアニールされた薄層の上下に配置することができる。このような構造は、異なる光学結果を奏する(つまり、透明な基板上に設けられた場合、前面側の反射モード、背面側の反射モード、および透過モードで観察すると、異なる色が観察される)。いくつかの例示的な実施形態では、いくつかの誘電層の堆積は、導電性材料20’の薄層の堆積前に行われてもよい。しかしながら、カプセル化層30は、レーザーアニーリング後も堆積され、導電性材料20の薄層のアニーリングは周囲環境に開放されて行われる。
【0020】
いくつかの例示的な実施形態では、リソグラフィ技術を使用して第一誘電層を堆積およびパターン化し(第一誘電層の部分を除去またはマスキングし)、その後、異なる屈折率を有する第二誘電体も堆積して、異なる屈折率を持つ対照的な誘電体のパターン(例えば市松模様や縞模様など)を設けるようにしてもよい。このように表面上にレーザーアニールされたナノ粒子を形成すると、同じレーザーアニール条件に対して二つの異なるプラズモニック応答が生じ、屈折率の高い誘電体上にある(またはその中に浸漬された)ナノ粒子は、もう一方よりも赤方偏移する。誘電層は、異なる屈折率を有するポリマー層であってもよい。
【0021】
図1Dは、レーザーアニールされた不連続導電性材料20’の薄層がセキュリティ製品に組み込まれる際に中に入れることができる、付加層40の例を示す。開示された概念の範囲から逸脱することなく付加層40を省略することは可能である。付加層40は、例えば、これに限定されないが、他の光学効果またはセキュリティ効果をもたらすものである。付加層40の位置は変更可能である。例えば、開示された概念の範囲から逸脱することなく、一つ以上の付加層40を基板10の下に配置することができる。
【0022】
開示された概念のさまざまな例示的な実施形態に従って、追加の機能をセキュリティ製品に組み込むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、結合構造の光の吸収および熱特性を変更してレーザーアニーリングプロセスに影響を与えるように作用する光学スペーサ層を使用することができる。光学スペーサ層は、レーザーアニーリング用の薄層形成前に堆積されるシリコンまたは酸化アルミニウムの層(またはその他の層、またはそれらおよび/またはそれら以外の組み合わせ)という形態をとることができる。光学スペーサ層に使用できる材料の他の非限定的な例としては、TiO2、ZnO、およびMgF2が挙げられる。しかしながら、これらは非網羅的な例示であって、開示された概念の範囲から逸脱することなく、他の材料を使用することが可能である。
【0023】
付加的な機能の別の例は、隠された効果である。レーザーアニーリング法は、赤外線(銅ナノ粒子など)または紫外線(アルミニウムナノ粒子など)でプラズモニック応答を生成する材料と互換性がある。このような材料を使用すると、不可視の隠されたセキュリティ効果を生み出すことができる。このような隠された機能は、検査用の適切な照明(例えば太陽光やIRまたはUVランプ)と読み取りツール(例えばIRまたはUVカメラ)を使用することで視認可能になる。いくつかの例示的な実施形態では、隠されたおよび顕在的なプラズモニック機能は、レーザーアニーリングの一段階中に生成されうる。すなわち、レジストレーションにおいて顕在的なおよび隠されたプラズモニック光学効果を生成しうる。隠された機能の作成は、カスタマイズ可能および/またはパーソナライズ可能であってもよい。
【0024】
レーザーアニールされた不連続導電性材料20’の薄層は、単独で、またはカプセル化層30および/または付加的な機能と組み合わせて、例示的な実施形態において、ゼロ次反射透過カラースイッチ効果を提供してもよい。最も単純な形式において、目で見て透明なポリマー基板上のプラズモニック金属クラスターの単層では、直接反射と透過の間で目に見える色の切り替え(例えば、青から黄色へ)が観察される。切り替えられる色はレーザーアニーリングパラメータによって決定されてもよく、レーザーアニーリングプロセスの完了後に固定される。色の切り替えは、カプセル化層30によって変更することもできる。
【0025】
不連続導電性材料20’のレーザーアニールされた薄層によって提供される光学効果は、最終製品において付加的な光学技術と統合されてもよい。例えば、不連続導電性材料20’のレーザーアニールされた薄層によって提供される光学効果は、他の光学効果と並列で発揮されてもよい。例えば、並列の光学効果は、コントラスト効果を高め、認証用途に役立つ可能性がある(これは、複数の技術を偽造することの困難性、複数の技術を損傷することなく改ざんすることの困難性、および良好なレジストレーションでの位置合わせ/再調整の困難性による)。
【0026】
他の例として、不連続導電性材料20’のレーザーアニールされた薄層によって提供される光学効果は、運動効果を提供するマイクロミラーや回折素子などの微細構造、またはプラズモニック粒子の視覚的影響を増強または増幅する他の構造と統合されてもよい。例えば、液晶、誘電体および/または金属の薄層および光学スタック、分極を誘導する方法、およびプラズモニックナノ構造の他の変形物(例えば、ナノホールアレイ)を利用して、プラズモニック粒子の視覚的影響の強化または増幅を果たしてもよい。
【0027】
セキュリティ製品には、非限定的に、政府発行の文書(例えば、IDカード、パスポート、納税印紙など)、通貨(紙幣、取引カードなど)等の用途があり、また他の用途(ボトル、ブリスターパック、マイクロエレクトロニクス、製品直接添付、サプライチェーンのダウンライン用途など)もある。
【0028】
図2のフローチャートに示されるステップは、図1A~1Dに示す段階に対応している。例えば、100において、図1Aに示すように導電性材料が基板上に堆積される。図1Bに示すように、102において、導電性材料のレーザーアニールが実行される。104において、図1Cに示されるように、レーザーアニールされた層がカプセル化される。そして、106において、図1Dに示すように、セキュリティ製品への統合が実行される。ステップ104および106は、開示された概念の範囲から逸脱することなく省略可能である。
【0029】
図3~8は、シリコンではなくポリマー基板が使用された場合の、開示された概念のいくつかの例示的な実施形態におけるレーザーアニーリングプロセスの効果を示している。これについては後述する。図3では、不連続な導電性材料の薄層が左側の画像に示され、一回のレーザーパルス後のレーザーアニールされたナノ粒子が右側の画像に示される。左側の画像は100nmスケールで表示され、右側の画像は1000nmスケールで表示される。同様に、図4は、一回のレーザーパルス後のレーザーアニールされたナノ粒子の画像である。図4に示すように、白色で示されるナノ粒子は、黒色で示されるポリマー基板上に配置される。
【0030】
図5は、二回のレーザーパルスによるレーザーアニーリング後のナノ粒子の画像を示している。左側の画像は、右側の画像の一部を拡大したものである。二回のレーザーパルスの後、いくつかのナノ粒子が表面から除去され、ポリマー基板にナノスケールのくぼみが残っていることが分かる。図6は、150回のレーザーパルスによるレーザーアニーリング後のナノ粒子の画像を示している。レーザーパルスをこれだけ多くの回数照射すると、ナノ粒子の分布が部分的および/または完全に基板内に浸漬してきていることが明らかになる。
【0031】
図7は、基板200に浸漬したナノ粒子204、208、210と、レーザーアニーリングプロセス中にナノ粒子が除去された部位206を示す概略図である。周囲環境202は、図7では基板200の上にある。レーザーパルスの回数が増加するにつれて、より多くの残りのナノ粒子204、208、210が基板200内に部分的または完全に浸漬するようになる。図7は、様々な浸漬状態を示しており、ナノ粒子204は基板200にほとんど浸漬しておらず、ナノ粒子208は部分的に浸漬しており、ナノ粒子210は完全に浸漬している。浸漬は、ポリマー基板(ポリカーボネートなど)を使用した、開示された概念のいくつかの例示的な実施形態で生じる効果である。この効果はガラス基板などの他のタイプの基板でも発生する可能性があるが、ポリマー基板がその柔軟性とロールツーロール製品の大量生産の適合性とにより好適に選ばれる。ガラスは脆く、粉々になりやすいので、大量生産においては取り扱いが難しい。さらに、ポリマー基板は、部分的にはその柔軟性により、偽造防止製品として一般的に好まれる媒体である。
【0032】
図8は、基板300への浸漬の様々な段階でナノ粒子304、308、310上に配置されたカプセル化層302と、レーザーアニーリングプロセス中にナノ粒子が除去された部位306とを示す模式図である。前述したように、カプセル化層は、ナノ粒子304、308、310のプラズモニック光学効果を赤方偏移させる。しかしながら、カプセル化層302によって誘発されるプラズモニック応答の赤方偏移の大きさは、レーザーアニーリング段階で基板内に浸漬するナノ粒子分布の比率に比例する。プラズモニック応答の偏移がほとんどまたは全くない、浸漬ナノ粒子の数が多い構造と比較して、浸漬ナノ粒子の数が少ない構造では、カプセル化後のプラズモン応答の赤方偏移がより大きい。さらに、ナノ粒子が完全に浸漬し基板によって包まれる場合、基板がナノ粒子を保護するので、保護目的の別個のカプセル化を省略することができる。セキュリティ製品を作成する際、基板に浸漬するナノ粒子の割合を制御して、望ましい効果を生み出すことができる。したがって、ポリカーボネートポリマーの選択と、レーザー、パルスプロファイル、パルス数、出力、継続時間の個別または一括での選択などのレーザーアニーリングパラメータの特定の組み合わせと、さらにはカプセル化や光学スペーサなどの付加的な機能やその他付加的な機能とにより、製品の望ましい最終構造を得ることができる。
【0033】
ポリマー基板の使用、および生成されたナノ粒子の少なくとも一部が基板内に少なくとも部分的に浸漬するように導電性材料の層をレーザーアニールするプロセスは、開示された発明の様々な実施形態で使用可能である。
【0034】
開示された概念のいくつかの例示的な実施形態では、ナノ粒子の少なくとも一部が基板内に少なくとも部分的に浸漬するように、導電性材料がレーザーアニールされる。基板内に少なくとも部分的に浸漬するナノ粒子の割合は、開示された概念の範囲から逸脱することなく変更可能である。例示的な実施形態では、ナノ粒子の少なくとも約10%が基板内に少なくとも部分的に浸漬する。別の例示的な実施形態では、ナノ粒子の少なくとも約25%が基板内に少なくとも部分的に浸漬する。別の例示的な実施形態では、ナノ粒子の少なくとも約50%が基板内に少なくとも部分的に浸漬する。別の例示的な実施形態では、ナノ粒子の少なくとも約75%が基板内に少なくとも部分的に浸漬する。別の例示的な実施形態では、ナノ粒子の約25%から約75%が基板内に少なくとも部分的に浸漬する。少なくとも部分的に浸漬したナノ粒子は、部分的に浸漬したナノ粒子と完全に浸漬したナノ粒子の両方を含む。
【0035】
開示された概念の特定の実施形態を詳細に説明したが、本開示全体を考慮すれば、これらの詳細に対する様々な変形例や代替例が可能であることは当業者にとって自明である。したがって、開示された特定の構成は、例示のみを目的とするものであり、添付の特許請求の範囲の全範囲およびその均等物が示す開示概念の範囲を限定するものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】