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特表2024-505036ジオグリッドおよびジオテキスタイルを有する土木構造物、かかる土木構造物を製造および提供する方法、ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ジオグリッドおよびジオテキスタイルを有する土木構造物、かかる土木構造物を製造および提供する方法、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   E01C 3/04 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
E01C3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545332
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 GB2022050216
(87)【国際公開番号】W WO2022162369
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2101168.9
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506260685
【氏名又は名称】テンサー・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Tensar Technologies Limited
【住所又は居所原語表記】Sett End Road, Shadsworth Business Park, Shadsworth, Blackburn, BB1 2PU, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】カーソン、 アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】キャバノー、 ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ゴロス、 マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カワレク、 ヤセク
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AG01
2D051AG11
2D051AH02
2D051CA09
2D051CA10
(57)【要約】
本発明は、結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた一体型多軸ポリマージオグリッドを含む土木構造物であって、ジオテキスタイルが前記ジオグリッドに付着された土木構造物、および、かかる構造物の製造方法に関する。複数の実施形態において、当該構造物は、改善された疲労寿命または低減された深さを有する。また、本発明は、土木構造物の疲労寿命を改善し、かつ/またはその深さを低減させるための、多軸ポリマージオグリッドの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた一体型多軸ポリマージオグリッドを含む土木構造物であって、ジオテキスタイルが前記ジオグリッドに付着された土木構造物。
【請求項2】
前記ジオグリッドは、三軸ジオグリッドである、請求項1に記載の土木構造物。
【請求項3】
前記ジオグリッドは、ひずみ0.5%における半径方向割線剛性が、少なくとも100kN/mである、請求項1または2に記載の土木構造物。
【請求項4】
前記ジオグリッドは、ひずみ2%における半径方向割線剛性が、少なくとも80kN/mである、請求項1~3のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項5】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.5の半径方向割線剛性比(無次元)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項6】
前記ジオグリッドは、少なくとも90%の接合効率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項7】
前記ジオグリッドは、少なくとも30mmのピッチ(好ましくは、六角形ピッチ)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項8】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.100kg/mの製造物重量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項9】
前記ジオグリッドは、実質的に一定の厚さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項10】
前記ジオグリッドを構成する複数の細長要素に対して平行に走る軸は、機械方向に延びている、請求項1~9のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項11】
路床、路盤、(部分的に破砕されたものであり得る)あらかじめ存在する結合骨材、および均し層から選択される少なくとも1つの追加の層をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項12】
少なくとも1つの前記追加の層は、前記多軸ジオグリッドの下に位置する、請求項11に記載の土木構造物。
【請求項13】
前記ジオグリッドと少なくとも1つの前記追加の層との間に、タックコート等の表面コーティングをさらに含む、請求項10または11に記載の土木構造物。
【請求項14】
前記結合骨材層は、アスファルトコンクリートを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項15】
前記骨材の粒子サイズは、5~35mmの範囲内にある、請求項1~14のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項16】
前記多軸ジオグリッドと前記骨材の表面との間の平均距離は、60~300mmの範囲内にある、請求項1~15のいずれか一項に記載の土木構造物。
【請求項17】
土木構造物を製造する方法であって、
a)ジオテキスタイルが付着された一体型多軸ポリマージオグリッドを基層上に設ける工程と、
b)前記ジオグリッドが骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれるように、前記骨材層を堆積させる工程と、
c)前記ジオグリッドが少なくとも部分的に埋め込まれた結合骨材層が形成されるように、前記骨材層を固める工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
土木構造物を構成する結合骨材層が形成されるように骨材を固めるよりも前に、ジオテキスタイルが付着された一体型多軸ポリマージオグリッドを当該骨材に少なくとも部分的に埋め込むことによって、改善した疲労寿命を示す当該土木構造物を設ける方法。
【請求項19】
土木構造物を構成する結合骨材層が形成されるように骨材を固めるよりも前に、ジオテキスタイルが付着された一体型多軸ポリマージオグリッドを当該骨材に少なくとも部分的に埋め込むことによって、低減された深さの当該土木構造物を設ける方法。
【請求項20】
前記ジオグリッドは、三軸ジオグリッドである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ジオグリッドは、ひずみ0.5%における半径方向割線剛性が、少なくとも100kN/mである、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ジオグリッドは、ひずみ2%における半径方向割線剛性が、少なくとも80kN/mである、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.5の半径方向割線剛性比(無次元)を有する、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ジオグリッドは、少なくとも90%の接合効率を有する、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ジオグリッドは、少なくとも30mmのピッチ(好ましくは、六角形ピッチ)を有する、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.100kg/mの製造物重量を有する、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ジオグリッドは、実質的に一定の厚さを有する、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ジオグリッドを構成する複数の細長要素に対して平行に走る軸は、機械方向に延びている、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
路床、路盤、(部分的に破砕されたものであり得る)あらかじめ存在する結合骨材、および均し層から選択される少なくとも1つの追加の層が設けられる、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの前記追加の層は、前記多軸ジオグリッドの下に設けられる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ジオグリッドと少なくとも1つの前記追加の層との間に、タックコート等の表面コーティングを設ける工程をさらに含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記結合骨材層は、アスファルトコンクリートを含む、請求項17~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記骨材の粒子サイズは、5~35mmの範囲内にある、請求項17~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記多軸ジオグリッドと前記骨材の表面との間の平均距離は、60~300mmの範囲内にある、請求項17~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
土木構造物の疲労寿命を改善するための、ジオテキスタイルが付着された一体型多軸ポリマージオグリッドの使用であって、前記土木構造物は、結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた前記多軸ポリマージオグリッドを含む、使用。
【請求項36】
土木構造物の深さを低減させるための、ジオテキスタイルが付着された一体型多軸ポリマージオグリッドの使用であって、前記土木構造物は、結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた前記多軸ポリマージオグリッドを含む、使用。
【請求項37】
前記ジオグリッドは、三軸ジオグリッドである、請求項35または36に記載の使用。
【請求項38】
前記ジオグリッドは、ひずみ0.5%における半径方向割線剛性が、少なくとも100kN/mである、請求項35~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記ジオグリッドは、ひずみ2%における半径方向割線剛性が、少なくとも80kN/mである、請求項35~38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.5の半径方向割線剛性比(無次元)を有する、請求項35~39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記ジオグリッドは、少なくとも90%の接合効率を有する、請求項35~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記ジオグリッドは、少なくとも30mmのピッチ(好ましくは、六角形ピッチ)を有する、請求項35~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.100kg/mの製造物重量を有する、請求項35~42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
前記ジオグリッドは、実質的に一定の厚さを有する、請求項35~43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
前記ジオグリッドを構成する複数の細長要素に対して平行に走る軸は、機械方向に延びている、請求項35~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
前記土木構造物は、路床、路盤、(部分的に破砕されたものであり得る)あらかじめ存在する結合骨材、および均し層から選択される少なくとも1つの追加の層をさらに含む、請求項35~43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
少なくとも1つの前記追加の層は、前記多軸ジオグリッドの下に位置する、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記土木構造物は、前記ジオグリッドと少なくとも1つの前記追加の層との間に、タックコート等の表面コーティングをさらに含む、請求項46または47に記載の使用。
【請求項49】
前記結合骨材層は、アスファルトコンクリートを含む、請求項35~48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
前記骨材の粒子サイズは、5~35mmの範囲内にある、請求項35~49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
前記多軸ジオグリッドと前記骨材の表面との間の平均距離は、60~300mmの範囲内にある、請求項35~50のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸ジオグリッド(multiaxial geogrid)と結合骨材材料(bound aggregate material)とを含む、改良された土木構造物(エンジニアリング構造物:engineering construction)に関する。特に、結合骨材材料は、アスファルトコンクリートである。また、本発明は、疲労寿命を改善し、および/または結合骨材層の厚さを低減させるための多軸ジオグリッドの使用、ならびに、改良された土木構造物を製造して、疲労寿命を改善し、および/または結合骨材層の厚さを低減させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトコンクリートは、石油系結合材(ビチューメン、アスファルトとも称される)内へ配置された鉱物骨材を含む、周知の建設材料である。アスファルトを適用(利用)するための複数の手法が、当技術分野において知られている。これには概して、結合材(接合材:binder)の粘性を低下させる工程(例えば、加熱、揮発性溶剤の添加、および/または乳化による)、「緩い(loose)」結合材を骨材と混合させる工程、および当該混合物を堆積させる工程が含まれる。次いで、結合材を硬化(set)させ、これにより骨材が不動化され、コンポジット(複合物)が形成される。当該混合物は通常、硬化工程の前および/または硬化工程の間に圧縮を受ける。
【0003】
アスファルトコンクリートの用途として、表面舗装が挙げられる。アスファルトコンクリートには、そのコストの低さ、適用の容易さ、および物理的性質の有利さゆえに、歩行と車両との両方の交通のための舗装の文脈において、特定の用途が見出される。しかしながら、アスファルトコンクリートは、その上を通過する交通が繰り返されるときの負荷(loading)および無負荷(unloading)の応力のため、時間の経過とともに劣化し、結果として、最終的には破損してしまう。このパラメータは、多くの場合、「疲労寿命(fatigue life)」として測定される。疲労寿命は、破損前に材料が耐えることのできる負荷および無負荷のサイクル数である。
【0004】
アスファルトコンクリートは多くの有益な特性を有する。しかしながら、アスファルトコンクリートが最終的に破損してしまうということは、その交換が必要となることを意味する。これによって、舗装面の使用がしばらくの間、妨げられてしまう。アスファルトコンクリートの交換が必要となる頻度を低減させることによって、その耐用期間の間、舗装面の維持に必要となる材料およびエネルギーの量が低減される。したがって、アスファルトコンクリートの疲労寿命を改善することが望ましい。
【0005】
あるいは、当技術分野で知られているアスファルトコンクリート(例えば、補強されていないもの、または一軸ジオグリッドもしくは二軸ジオグリッドを含むもの)と比較して、最低でも同じ疲労寿命を維持しつつ、厚さが低減されたアスファルトコンクリートを提供することが望ましい。アスファルトコンクリートの厚さを低減させることによって、必要となるアスファルトの量、その作製(用意)に必要なエネルギー、およびその敷設に要する時間が低減される。
【0006】
成熟した任意の技術の場合と同様に、アスファルトコンクリートの疲労寿命を改善するために、複数の手法が開発されてきた。主に、これらの手法では、他の材料を結合材および骨材と組み合わせて使用し、コンポジットを形成する。
【0007】
S.F.Brown、J.M.Brunton、D.A.B.Hughes、およびB.V.Brodrickは、二軸ポリマージオグリッドによるアスファルトコンクリートの補強が、轍掘れ(rutting)、リフレクションクラッキング(reflection cracking)、および疲労亀裂に対する抵抗性の改善にどのようにつながるのかを、(1985年2月11~13日にテキサス州サンアントニオで開催されたアスファルト舗装技術者協会(the Association of Asphalt Paving Technologists)の年次総会に提出された「Polymer Grid Reinforcement of Asphalt」に)記載している。疲労亀裂に対する抵抗性は、亀裂発生ではなく、存在する亀裂の伝播に関してのみ形成された。深さが90mmのビームの場合、ジオグリッドを有しないビームと比較して、疲労寿命が2倍(グリッドがサンプルの上から4分の1のところに配置された場合)~10倍(グリッドがサンプルの底部付近に配置された場合)改善すると推定された。
【0008】
GB2,225,048Bには、ファブリックへ積層された二軸ジオグリッドのジオコンポジットによる舗装面の補強が記載されている。
【0009】
I.M.Arsenie、C.Chazallon、J-L.Duchez、およびP.Hornychは、どのようにガラス繊維グリッドを使用して疲労亀裂に対する抵抗性を非補強ビームと比較して1.39倍~1.75倍改善し得るのかを、(「Laboratory Characterisation of the Fatigue Behaviour of a Glass Fibre Grid-Reinforced Asphalt Concrete using 4PB Tests」,Road Materials and Pavement Design,18:1,168-180に)記載している。試験されたビームは、150mmの厚さを有し、ガラス繊維グリッドは、50mmの深さおよび100mmの深さに配置されていた。試験されたビームは、ボンディング(bonding)および圧縮を損なうことなく、より薄いものにすることはできなかった。
【0010】
N.Sudarsanan、A.Arulrajah、R.Karpurapu、およびV.Amrithalingamは、アスファルトコンクリートを補強するための複数の材料を、(「Fatigue Performance of Geosynthetic-Reinforced Asphalt Concrete Beams」,J.Mater.Civ.Eng.,2020,32(8):04020206に)記載している。100mmの深さのサンプルビームが作成され、ジュート、コイアまたはガラス繊維グリッドのうちの1つを用いて、基部(ベース)から30mmの深さにおいて補強された。サンプルビームは、四点曲げ試験によって、10~30℃の温度で、応力が制御された状態で試験され、破損は、サンプル破断または20mmの設定変位値に達することと定義された。(非補強ビームと比較したときの)疲労寿命の改善係数は、ジュートの場合には1.5~3.6倍、コイアの場合には1.4~4倍、ガラス繊維の場合には3.2~11.6倍であると決定された。各サンプルについて、疲労寿命は温度の上昇とともに改善した。
【0011】
本発明は、上に挙げたものであるか、それ以外のものであるかにかかわらず、アスファルトコンクリートを基礎補強する(underpin)ための既存の手法に伴う、複数の課題のうちの1または複数の課題に対処し、改善された疲労寿命および/または低減された厚さを有する、改良された土木構造物を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様は、結合骨材層(固められた骨材層:bound aggregate layer)に少なくとも部分的に埋め込まれた多軸ポリマージオグリッドを含む土木構造物に関する。ジオグリッドは、一体型ジオグリッド(integral geogrid)(すなわち、ジオグリッド状へと配置され互いに付着された複数の要素(例えば、繊維またはストラップ等)から形成される、従来技術に係る一部のジオグリッドとは対照的に、ポリマー出発材料(polymeric starting material)の単一シートから形成されるジオグリッド)であってもよい。前記ジオグリッドには、ジオテキスタイルが付着(affix)されていてもよい。少なくとも部分的に埋め込まれているとは、断面が略長方形である、ジオグリッドの複数の細長要素が、結合骨材によって、少なくとも3つの側面上を囲まれていることを意味する。ジオグリッドは、結合骨材層に完全に埋め込まれていてもよい。ジオグリッドが結合骨材層に完全に埋め込まれているとは、ジオグリッドの複数の細長要素が、結合骨材層によって、全ての側面上を囲まれていることを意味する。本出願の実施例の項において実証されている通り、多軸ポリマージオグリッドを結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込むことによって、土木構造物の疲労寿命が改善される。このことは、図4に要約されている。この疲労寿命の改善によって、多軸ジオグリッドを欠く同等の土木構造物と比較して、土木構造物に交換の必要が生じる前に、当該土木構造物がより長い耐用期間を有することができるようになる。その結果、エネルギーおよび材料の使用量が低減する。多軸ジオグリッドを結合骨材層内に少なくとも部分的に埋め込むことによって、他の複数の機械的性質(例えば、圧縮強さ、引張強さ、および/またはクリープ強さ等)も、多軸ジオグリッドを欠く結合骨材と比較して改善され得ると考えられる。一般に、ジオ土木構造物(geoengineering construction)の機械的性質は、その結合骨材層の厚さに略比例する。したがって、(多軸ジオグリッドが結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた)本発明に係るジオ土木構造物は、(多軸ジオグリッドを欠く)より厚い結合骨材層を有する既知の土木構造物の機械的性質に対して、等しい機械的性質を有し得る。言い換えれば、特定の機械的性質を要する土木構造物を設計する場合には、多軸ジオグリッドを結合骨材層へ組み込むことにより、結合骨材層の厚さが低減できるようになる。このことには、必要となる結合骨材の量、ならびにそれを処理するために要するエネルギーおよび時間の点で、利点がある。例えば、所与の疲労寿命を達成するために、(多軸ジオグリッドが結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた)本発明に係る土木構造物は、(多軸ジオグリッドを欠く)既知の土木構造物よりも、結合骨材層は薄くてもよい。
【0013】
前記ジオグリッドは、三軸ジオグリッド(triaxial geogrid)であってもよい。三軸ジオグリッドの高度に等方的な性質によって、三軸ジオグリッドを含む土木構造物の周りにおいて、力が均一かつ効率的に分散することが保証される。
【0014】
前記ジオグリッドは、ひずみ0.5%における半径方向割線剛性が、少なくとも100kN/m、好ましくは200~800kN/m、より好ましくは220~700kN/m、最も好ましくは250~600kN/mであってもよい。
【0015】
前記ジオグリッドは、ひずみ2%における半径方向割線剛性が、少なくとも80kN/m、好ましくは150~600kN/m、より好ましくは170~500kN/m、最も好ましくは200~450kN/mであってもよい。
【0016】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.5、好ましくは0.6~0.95、最も好ましくは0.70~0.90、最も好ましくは0.75~0.85の半径方向割線剛性比(無次元)を有してもよい。
【0017】
前記ジオグリッドは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%、例えば100%の接合効率を有してもよい。
【0018】
前記ジオグリッドは、少なくとも30mm、好ましくは40~150mm、より好ましくは50~140、最も好ましくは65~125mmのピッチ(好ましくは、六角形ピッチ)を有してもよい。
【0019】
(前記ジオテキスタイル要素のない)前記ジオグリッドは、少なくとも0.100kg/m、好ましくは0.120~0.400kg/m、より好ましくは0.150~0.350kg/m、最も好ましくは0.170~0.310kg/mの製造物重量を有してもよい。
【0020】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも0.9、より好ましくは少なくとも1.0、最も好ましくは少なくとも1.1のアスペクト比を有してもよい。「アスペクト比(aspect ratio)」という用語は、細長要素の断面の幅に対する、細長要素の断面の厚さまたは高さの比を指す。このとき、厚さは、ジオグリッドの平面に垂直な細長要素の寸法を指し、幅は、ジオグリッドの平面における細長要素の寸法であって、隣り合うノードにまたがる細長要素の長さ(方向)に垂直な細長要素の寸法を指すことが理解されるだろう。細長要素の複数の寸法が比較的均一であるとすると、厚さおよび幅は通常、細長要素の中間点において、すなわち、ノード間の距離の半分のところにおいて測定される。細長要素がノードと交差する領域は、アスペクト比を決定するための測定から除外される。細長要素の複数の寸法が均一でない場合には、アスペクト比は、ノード間の細長要素の長さ(方向)に沿って最も頻繁に生じる値とみなされるべきだろう(例えば、グリッド構造内における複数の平行な細長要素の各セットの長さ(方向)に沿ってアスペクト比のヒストグラムを構成して、最大度数の値を決定することによる)。細長要素の厚さと幅との両方、したがってアスペクト比の値は、細長要素の長さ(方向)に沿って変化し得、特に接続ノードを通過するときに変化し得る。
【0021】
前記ジオグリッドは、少なくとも1.0mm、好ましくは少なくとも1.1mm、より好ましくは少なくとも1.2mm、最も好ましくは少なくとも1.3mmの、細長要素の厚さまたは高さを有してもよい。
【0022】
前記ジオグリッドは、実質的に一定の厚さを有してもよい。かかる実施形態では、前記ジオグリッドの複数の細長要素および複数のノードの厚さは、ほぼ同じである。かかる厚さによって、ジオグリッドとその下の表面との間において、より良好な接触が保証される。
【0023】
前記土木構造物は、前記多軸ジオグリッドに付着されたジオテキスタイルをさらに含んでもよい。これによって、ジオテキスタイルとジオグリッドとを含むジオコンポジットが形成され、有益には、堆積の間、結合骨材がジオグリッドにおける開口部を完全に通過することが防止される。また、それは、ジオグリッドとその下の表面との接触を改善する。ジオテキスタイルは、熱接合によってジオグリッドに付着されてもよい。その他の好適な方法としては、接着剤、溶剤接合(solvent bonding)、超音波溶接、および結束が挙げられる。ジオテキスタイルは、一定の厚さのジオグリッドと組み合わされる場合に、特に有益である。構成要素間の結合の強度が改善されるからである。
【0024】
前記ジオグリッドを除く前記ジオテキスタイル要素それ自体は、少なくとも0.080kg/m、好ましくは0.100~0.200kg/m、より好ましくは0.110~0.180kg/m、最も好ましくは0.120~0.150kg/mの製造物重量を有してもよい。あるいは、前記ジオテキスタイル要素は、0.03~0.4kg/mの製造物重量を有してもよい。
【0025】
前記ジオグリッドは、ジオグリッドを構成する複数の細長要素に対して平行に走る軸であって、機械方向に延びる軸を有してもよい。従来、一体型多軸ジオグリッドの製造には、ポリマー出発シートを延伸(stretch)する工程が伴う。機械方向(machine direction:MD)は、ポリマー出発シートを延伸するために使用される機械を当該シートが通過する方向であり、横断方向(transverse direction:TD)は、MDに垂直であることが理解されるだろう。言い換えれば、ジオグリッドは、ジオグリッドの製造の間に機械方向に延伸された、複数の細長要素のセットを含んでもよい。機械方向に走る複数の細長要素のセットを有する多軸ジオグリッド、特に、三軸ジオグリッドは、他の方向にのみ走る複数の細長要素のセットを有するものよりも、(製造中に、または貯蔵のためにロールアップされるときに誘発される)エッジローリング効果(edge rolling effect)に対する脆弱性が小さい。これにより、展開された(unrolled)ときに、ジオグリッドが平坦に置かれ、基層(substrate)および結合骨材とより良好に接触することが可能となる。
【0026】
前記土木構造物は、路床(subgrade)、路盤(base course)、部分的に破砕された結合骨材、および均し層から選択される少なくとも1つの追加の層をさらに含んでもよい。一実施形態では、前記土木構造物は、部分的に破砕された結合骨材をさらに含む。さらなる実施形態では、前記土木構造物は、部分的に破砕された結合骨材および均し層をさらに含む。さらに別の実施形態では、前記土木構造物は、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層をさらに含む。さらに別の実施形態では、前記土木構造物は、路床、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層をさらに含む。代替的な実施形態では、前記土木構造物は、路床および路盤をさらに含む。上記の複数の実施形態において、少なくとも1つの前記追加の層は、前記多軸ジオグリッドの下に配置されてもよく、かつ/または前記追加の層は、提供された順序で構成されてもよい(最も早く言及された追加の層が最も下にある)。これらの追加の層によって、向上した物理的特性が土木構造物に付与される。例えば、路床および路盤は、不利な地質の補償となり得る。一方、均し層は、ジオグリッドが平面形態(構造)に保持されることを保証する。これによって、その中で力が効率的に伝達されることが保証される。部分的に破砕された結合骨材は、あらかじめ存在する構造物の改修を通じて土木構造物が形成される場所にあってもよい。
【0027】
前記土木構造物は、前記ジオグリッドと少なくとも1つの前記追加の層との間に、タックコート(tack coat)等の表面コーティングをさらに含んでもよい。複数の追加の層を含む実施形態では、前記表面コーティングは、最上にある追加の層と前記ジオグリッドとの間に配置されていてもよい。表面コーティングによって、複数の有益な効果を土木構造物に付与することができる。例えば、タックコートは、ジオグリッド(および、結合骨材層、ここで、それは、ジオグリッドにおける開口部を通じて、少なくとも1つの前記追加の層と接触する)の、少なくとも1つの前記追加の層への付着性を向上させる。タックコートの使用は、多軸ジオグリッドおよびジオテキスタイルを含むジオコンポジットを用いるときに、特に有益である。(最上にある追加の層、好ましくは部分的に破砕された層に近接する)ジオテキスタイルが、タックコート(前記追加の層へのジオコンポジットの付着性がさらに増大するように、ジオテキスタイルに浸透し得る)との接触を増大させるからである。
【0028】
前記結合骨材層は、アスファルトコンクリートであってもよい。アスファルトコンクリートは、ビチューメンマトリックス中で固められた骨材の複合材料である。前記骨材の粒子サイズは、5~35mmの範囲内にあってもよく、好ましくは10~32mmの範囲内にあってもよい。あるいは、前記骨材の粒子サイズは、最大で11mmであってもよく、最大で16mmであってもよく、最大で22mmであってもよく、または最大で32mmであってもよい。前記多軸ジオグリッドと前記骨材の表面との間の平均距離は、60mm~300mmの範囲内にあり、好ましくは60mm~250mmの範囲内にあり、より好ましくは60mm~200mmの範囲内にあり、さらにより好ましくは60mm~150mmの範囲内にあり、最も好ましくは60mm~100mmの範囲内にある。これらの距離は、結合骨材層の表面の下にあるジオグリッドの深さと同等に考えることができる。結合骨材の表面とジオグリッドとの間の平均距離は、土木構造物が使用される応用(用途)に応じて選択されることが理解されるだろう。ジオグリッドが結合骨材層の下側表面に位置する実施形態では、これらの距離は、結合骨材層の厚さに等しい。必要とされる結合骨材層の最小厚さは、ジオグリッドを欠く土木構造物と比較して、多軸ポリマージオグリッドが結合骨材に少なくとも部分的に埋め込まれている本発明において、低減するだろうことが理解されるだろう。
【0029】
非限定的な例として、ジオグリッドを欠くアスファルトコンクリートを含む土木構造物であって、100kn車軸の最大250万の等価単軸荷重(equivalent single axle loads:ESALs)の荷重を支持することが意図された土木構造物には、許容可能な疲労寿命が得られるように、(20cmの非結合の骨材層によって下敷きされた)160mmの厚さのアスファルトコンクリートが必要とされる。アスファルトコンクリートに埋め込まれた多軸ジオグリッドをさらに含む同じ土木構造物では、アスファルトコンクリートの厚さは、許容可能な疲労寿命を維持しつつ、20~40mmだけ低減され得る。
【0030】
本発明の第1の態様の前述した特徴(構成)は、後続する本発明の態様と併せて採用され得ることが理解されるだろう。
【0031】
本発明の第2の態様は、土木構造物を製造する(つくり出す)方法であって、
a)多軸ポリマージオグリッドを基層上に設ける工程と、
b)前記ジオグリッドが骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれるように、前記骨材層を堆積させる工程と、
c)前記ジオグリッドが少なくとも部分的に埋め込まれた結合骨材層が形成されるように、前記骨材層を固める工程と、
を含む、方法に関する。前記ジオグリッドは、前記結合骨材層に完全に埋め込まれていてもよい。前記ジオグリッドは、一体型ジオグリッド(すなわち、ポリマー出発材料の単一シートから形成されるジオグリッド)であってもよい。前記ジオグリッドには、ジオテキスタイルが付着されていてもよい。
【0032】
本発明の第3の態様は、土木構造物を構成する結合骨材層が形成されるように骨材を固めるよりも前に、多軸ポリマージオグリッドを当該骨材に少なくとも部分的に埋め込むことによって、改善した疲労寿命を示す当該土木構造物を設ける方法に関する。前記ジオグリッドは、前記結合骨材層に完全に埋め込まれていてもよい。改善した疲労寿命とは、同じ厚さまたはより大きい厚さの、前記ジオグリッドを欠く同等の土木構造物と比較して、土木構造物の疲労寿命が改善されていることを意味する。前記ジオグリッドは、一体型ジオグリッド(すなわち、ポリマー出発材料の単一シートから形成されるジオグリッド)であってもよい。前記ジオグリッドには、ジオテキスタイルが付着されていてもよい。
【0033】
本発明の第4の態様は、土木構造物を構成する結合骨材層が形成されるように骨材を固めるよりも前に、多軸ポリマージオグリッドを当該骨材に少なくとも部分的に埋め込むことによって、低減された深さ(厚さ)の当該土木構造物を設ける方法に関する。前記ジオグリッドは、前記結合骨材層に完全に埋め込まれていてもよい。低減された深さとは、前記ジオグリッドを欠く同等の土木構造物の疲労寿命と少なくとも等しい疲労寿命を維持しつつ、前記ジオグリッドを欠く同等の当該土木構造物と比較して、土木構造物の深さ(厚さ)、特に結合骨材層の深さ(厚さ)が低減されていることを意味する。前記ジオグリッドは、一体型ジオグリッド(すなわち、ポリマー出発材料の単一シートから形成されるジオグリッド)であってもよい。前記ジオグリッドには、ジオテキスタイルが付着されていてもよい。
【0034】
上記の方法のいずれにおいても、前記ジオグリッドは、三軸ジオグリッドであってもよい。
【0035】
上記の方法のいずれにおいても、前記ジオグリッドは、ひずみ0.5%における半径方向割線剛性が、少なくとも100kN/m、好ましくは200~800kN/m、より好ましくは220~700kN/m、最も好ましくは250~600kN/mであってもよい。
【0036】
上記の方法のいずれにおいても、前記ジオグリッドは、ひずみ2%における半径方向割線剛性が、少なくとも80kN/m、好ましくは150~600kN/m、より好ましくは170~500kN/m、最も好ましくは200~450kN/mであってもよい。
【0037】
上記の方法のいずれにおいても、前記ジオグリッドは、少なくとも0.5、好ましくは0.6~0.95、最も好ましくは0.70~0.90、最も好ましくは0.75~0.85の半径方向割線剛性比(無次元)を有してもよい。
【0038】
上記の方法のいずれにおいても、前記ジオグリッドは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%、例えば100%の接合効率を有してもよい。
【0039】
上記の方法のいずれにおいても、前記ジオグリッドは、少なくとも30mm、好ましくは40~150mm、より好ましくは50~140、最も好ましくは65~125mmのピッチ(好ましくは、六角形ピッチ)を有してもよい。
【0040】
上記の方法のいずれにおいても、(前記ジオテキスタイルのない)前記ジオグリッドは、少なくとも0.100kg/m、好ましくは0.120~0.400kg/m、より好ましくは0.150~0.350kg/m、最も好ましくは0.170~0.310kg/mの製造物重量を有してもよい。
【0041】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも0.9、より好ましくは少なくとも1.0、最も好ましくは少なくとも1.1のアスペクト比を有してもよい。「アスペクト比(aspect ratio)」という用語は、細長要素の断面の幅に対する、細長要素の断面の厚さまたは高さの比を指す。このとき、厚さは、ジオグリッドの平面に垂直な細長要素の寸法を指し、幅は、ジオグリッドの平面における細長要素の寸法であって、隣り合うノードにまたがる細長要素の長さ(方向)に垂直な細長要素の寸法を指すことが理解されるだろう。
【0042】
前記ジオグリッドは、少なくとも1.0mm、好ましくは少なくとも1.1mm、より好ましくは少なくとも1.2mm、最も好ましくは少なくとも1.3mmの、細長要素の厚さまたは高さを有してもよい。
【0043】
上記の方法のいずれにおいても、前記ジオグリッドは、実質的に一定の厚さを有してもよい。かかる実施形態では、前記ジオグリッドの複数の細長要素および複数のノードの厚さは、ほぼ同じである。
【0044】
上記の方法のいずれにおいても、前記多軸ジオグリッドには、ジオテキスタイルが付着されていてもよい。
【0045】
前記ジオグリッドを除く前記ジオテキスタイル要素それ自体は、少なくとも0.080kg/m、好ましくは0.100~0.200kg/m、より好ましくは0.110~0.180kg/m、最も好ましくは0.120~0.150kg/mの製造物重量を有してもよい。あるいは、前記ジオテキスタイル要素は、0.03~0.4kg/mの製造物重量を有してもよい。
【0046】
前記ジオグリッドは、ジオグリッドを構成する複数の細長要素に対して平行に走る軸であって、機械方向に延びる軸を有してもよい。従来、一体型多軸ジオグリッドの製造には、ポリマー出発シートを延伸(stretch)する工程が伴う。機械方向(machine direction:MD)は、ポリマー出発シートを延伸するために使用される機械を当該シートが通過する方向であり、横断方向(transverse direction:TD)は、MDに垂直であることが理解されるだろう。言い換えれば、ジオグリッドは、ジオグリッドの製造の間に機械方向に延伸された、複数の細長要素のセットを含んでもよい。機械方向に走る複数の細長要素のセットを有する多軸ジオグリッド、特に、三軸ジオグリッドは、他の方向にのみ走る複数の細長要素のセットを有するものよりも、(製造中に、または貯蔵のためにロールアップされるときに誘発される)エッジローリング効果(edge rolling effect)に対する脆弱性が小さい。これにより、展開された(unrolled)ときに、ジオグリッドが平坦に置かれ、基層(substrate)および結合骨材とより良好に接触することが可能となる。
【0047】
上記の方法のいずれにおいても、路床、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層から選択される少なくとも1つの追加の層が設けられてもよい。一実施形態では、前記土木構造物は、部分的に破砕された結合骨材をさらに含む。さらなる実施形態では、前記土木構造物は、部分的に破砕された結合骨材および均し層をさらに含む。さらに別の実施形態では、前記土木構造物は、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層をさらに含む。さらに別の実施形態では、前記土木構造物は、路床、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層をさらに含む。代替的な実施形態では、前記土木構造物は、路床および路盤をさらに含む。上記の複数の実施形態において、少なくとも1つの前記追加の層は、前記多軸ジオグリッドの下に設けられてもよく、かつ/または前記追加の層は、提供された順序で構成されてもよい(最も早く言及された追加の層が最も下にある)。前記方法は、前記多軸ポリマージオグリッドを前記基層上に設けるよりも前に、少なくとも1つの前記追加の層を堆積させる工程をさらに含んでもよい。前記方法は、前記ジオグリッドと少なくとも1つの前記追加の層との間に、タックコート等の表面コーティングを設ける工程をさらに含んでもよい。複数の追加の層を含む実施形態では、前記表面コーティングは、最上にある追加の層と前記ジオグリッドとの間に配置されてもよい。前記表面コーティングを設ける工程は、少なくとも1つの前記追加の層上に前記表面コーティングを堆積させる工程を含んでもよい。
【0048】
上記の方法のいずれにおいても、前記結合骨材層は、アスファルトコンクリートを含んでもよい。アスファルトコンクリートは、ビチューメンマトリックス中で固められた骨材の複合材料である。
【0049】
上記の方法のいずれにおいても、前記骨材の粒子サイズは、5~35mmの範囲内にあってもよく、好ましくは10~32mmの範囲内にあってもよい。あるいは、前記骨材の粒子サイズは、最大で11mmであってもよく、最大で16mmであってもよく、最大で22mmであってもよく、または最大で32mmであってもよい。
【0050】
上記の方法のいずれにおいても、前記多軸ジオグリッドと前記骨材の表面との間の平均距離は、60mm~300mmの範囲内にあってもよく、好ましくは60mm~250mmの範囲内にあってもよく、より好ましくは60mm~200mmの範囲内にあってもよく、さらにより好ましくは60mm~150mmの範囲内にあってもよく、最も好ましくは60mm~100mmの範囲内にあってもよい。
【0051】
本発明の第5の態様は、土木構造物の疲労寿命を改善するための、多軸ポリマージオグリッドの使用であって、前記土木構造物は、結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた前記多軸ポリマージオグリッドを含む、使用に関する。前記ジオグリッドは、前記結合骨材層に完全に埋め込まれていてもよい。低減された深さ(厚さ)とは、前記ジオグリッドを欠く同等の土木構造物の疲労寿命と少なくとも等しい疲労寿命を維持しつつ、前記ジオグリッドを欠く同等の当該土木構造物と比較して、土木構造物の深さ(厚さ)、特に結合骨材層の深さ(厚さ)が低減されていることを意味する。前記ジオグリッドは、一体型ジオグリッド(すなわち、ポリマー出発材料の単一シートから形成されるジオグリッド)であってもよい。前記ジオグリッドには、ジオテキスタイルが付着されていてもよい。
【0052】
本発明の第6の態様は、土木構造物の深さ(厚さ)を低減させるための、多軸ポリマージオグリッドの使用であって、前記土木構造物は、結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた前記多軸ポリマージオグリッドを含む、使用に関する。前記ジオグリッドは、前記結合骨材層に完全に埋め込まれていてもよい。改善した疲労寿命とは、同じ厚さまたはより大きい厚さの、前記ジオグリッドを欠く同等の土木構造物と比較して、土木構造物の疲労寿命が改善されていることを意味する。前記ジオグリッドは、一体型ジオグリッド(すなわち、ポリマー出発材料の単一シートから形成されるジオグリッド)であってもよい。前記ジオグリッドには、ジオテキスタイルが付着されていてもよい。
【0053】
上記の使用のいずれについても、前記ジオグリッドは、三軸ジオグリッドであってもよい。
【0054】
上記の使用のいずれについても、前記ジオグリッドは、ひずみ0.5%における半径方向割線剛性が、少なくとも100kN/m、好ましくは200~800kN/m、より好ましくは220~700kN/m、最も好ましくは250~600kN/mであってもよい。
【0055】
上記の使用のいずれについても、前記ジオグリッドは、ひずみ2%における半径方向割線剛性が、少なくとも80kN/m、好ましくは150~600kN/m、より好ましくは170~500kN/m、最も好ましくは200~450kN/mであってもよい。
【0056】
上記の使用のいずれについても、前記ジオグリッドは、少なくとも0.5、好ましくは0.6~0.95、最も好ましくは0.70~0.90、最も好ましくは0.75~0.85の半径方向割線剛性比(無次元)を有してもよい。
【0057】
上記の使用のいずれについても、前記ジオグリッドは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%、例えば100%の接合効率を有してもよい。
【0058】
上記の使用のいずれについても、前記ジオグリッドは、少なくとも30mm、好ましくは40~150mm、より好ましくは50~140、最も好ましくは65~125mmのピッチ(好ましくは、六角形ピッチ)を有してもよい。
【0059】
上記の使用のいずれについても、(前記ジオテキスタイルのない)前記ジオグリッドは、少なくとも0.100kg/m、好ましくは0.120~0.400kg/m、より好ましくは0.150~0.350kg/m、最も好ましくは0.170~0.310kg/mの製造物重量を有してもよい。
【0060】
前記ジオグリッドは、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも0.9、より好ましくは少なくとも1.0、最も好ましくは少なくとも1.1のアスペクト比を有してもよい。「アスペクト比(aspect ratio)」という用語は、細長要素の断面の幅に対する、細長要素の断面の厚さまたは高さの比を指す。このとき、厚さは、ジオグリッドの平面に垂直な細長要素の寸法を指し、幅は、ジオグリッドの平面における細長要素の寸法であって、隣り合うノードにまたがる細長要素の長さ(方向)に垂直な細長要素の寸法を指すことが理解されるだろう。
【0061】
前記ジオグリッドは、少なくとも1.0mm、好ましくは少なくとも1.1mm、より好ましくは少なくとも1.2mm、最も好ましくは少なくとも1.3mmの、細長要素の厚さまたは高さを有してもよい。
【0062】
上記の使用のいずれについても、前記ジオグリッドは、実質的に一定の厚さを有してもよい。
【0063】
上記の使用のいずれについても、前記土木構造物は、前記多軸ジオグリッドに付着されたジオテキスタイルをさらに含んでもよい。
【0064】
前記ジオグリッドを除く前記ジオテキスタイル要素それ自体は、少なくとも0.080kg/m、好ましくは0.100~0.200kg/m、より好ましくは0.110~0.180kg/m、最も好ましくは0.120~0.150kg/mの製造物重量を有してもよい。あるいは、前記ジオテキスタイル要素は、0.03~0.4kg/mの製造物重量を有してもよい。
【0065】
前記ジオグリッドは、ジオグリッドを構成する複数の細長要素に対して平行に走る軸であって、機械方向に延びる軸を有してもよい。従来、一体型多軸ジオグリッドの製造には、ポリマー出発シートを延伸(stretch)する工程が伴う。機械方向(machine direction:MD)は、ポリマー出発シートを延伸するために使用される機械を当該シートが通過する方向であり、横断方向(transverse direction:TD)は、MDに垂直であることが理解されるだろう。言い換えれば、ジオグリッドは、ジオグリッドの製造の間に機械方向に延伸された、複数の細長要素のセットを含んでもよい。機械方向に走る複数の細長要素のセットを有する多軸ジオグリッド、特に、三軸ジオグリッドは、他の方向にのみ走る複数の細長要素のセットを有するものよりも、(製造中に、または貯蔵のためにロールアップされるときに誘発される)エッジローリング効果(edge rolling effect)に対する脆弱性が小さい。これにより、展開された(unrolled)ときに、ジオグリッドが平坦に置かれ、基層(substrate)および結合骨材とより良好に接触することが可能となる。
【0066】
上記の使用のいずれについても、前記土木構造物は、路床、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層から選択される少なくとも1つの追加の層をさらに含んでもよい。一実施形態では、前記土木構造物は、部分的に破砕された結合骨材をさらに含む。さらなる実施形態では、前記土木構造物は、部分的に破砕された結合骨材および均し層をさらに含む。さらに別の実施形態では、前記土木構造物は、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層をさらに含む。さらに別の実施形態では、前記土木構造物は、路床、路盤、部分的に破砕された結合骨材、および均し層をさらに含む。代替的な実施形態では、前記土木構造物は、路床および路盤をさらに含む。上記の複数の実施形態において、少なくとも1つの前記追加の層は、前記多軸ジオグリッドの下に配置されてもよく、かつ/または前記追加の層は、提供された順序で構成されてもよい(最も早く言及された追加の層が最も下にある)。前記土木構造物は、前記ジオグリッドと少なくとも1つの前記追加の層との間に、タックコート等の表面コーティングをさらに含んでもよい。複数の追加の層を含む実施形態では、前記表面コーティングは、最上にある追加の層と前記ジオグリッドとの間に配置されていてもよい。
【0067】
上記の使用のいずれにおいても、前記結合骨材層は、アスファルトコンクリートを含んでもよい。
【0068】
上記の使用のいずれにおいても、前記骨材の粒子サイズは、5~35mmの範囲内にあってもよく、好ましくは10~32mmの範囲内にあってもよい。あるいは、前記骨材の粒子サイズは、最大で11mmであってもよく、最大で16mmであってもよく、最大で22mmであってもよく、または最大で32mmであってもよい。
【0069】
上記の使用のいずれにおいても、前記多軸ジオグリッドと前記骨材の表面との間の平均距離は、60mm~300mmの範囲内にあり、好ましくは60mm~250mmの範囲内にあり、より好ましくは60mm~200mmの範囲内にあり、さらにより好ましくは60mm~150mmの範囲内にあり、最も好ましくは60mm~100mmの範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明に係る土木構造物の模式図を示す。層は(頂部から底部へ)、アスファルトコンクリートの結合材層、多軸ポリマージオグリッド、アスファルトコンクリートの均し層、部分的に破砕されたアスファルトコンクリート、非結合路盤、および路床である。
図2A】本発明によるアスファルトコンクリートビームの側面視の模式図を示す。ビームは、長さL、深さ(厚さ)H、および幅(図示されず)を有する。ビームの組成は、その長さに沿って、また、その幅にわたって、実質的に一定であるが、その深さを通じて変化する。ビームは、種々の層から形成されている。層は(頂部から底部へ)、アスファルトコンクリートの結合材層、ジオテキスタイルが付着された多軸ポリマージオグリッド、およびアスファルトコンクリートの均し層である。
図2B】比較となる(すなわち、多軸ジオグリッドを有しない)アスファルトコンクリートビームの側面視の模式図を示す。ビームは、長さL、深さH、および幅(図示されず)を有する。ビームの組成は、その長さに沿って、また、その幅にわたって、実質的に一定であるが、その深さを通じて変化する。ビームは、種々の層から形成されている。層は(頂部から底部へ)、アスファルトコンクリートの結合材層、およびアスファルトコンクリートの均し層である。
図3】コンクリートビームを評価するために使用される四点曲げ装置の側面視の模式図を示す。ビームへの接触点の位置が示されている。上側の点は、距離A(247mm)だけ離れており、下側の点は、距離B(740mm)だけ離れている。矢印Fによって示された力が、ビームに加えられる。試験されたビームは、長さL(850mm)、幅S(170mm)、および高さH(100mm)を有するものであった。
図4】四点曲げ試験によって見出された、本発明による(すなわち、ジオグリッドを含む)ビームの疲労寿命と、ジオグリッドを有しない比較となるビームの疲労寿命との比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
(ジオグリッド(geogrid))
ジオグリッドは、構造物における緩い(loose)材料を安定させるために使用される製品の周知の類である。一般に、ジオグリッドは、複数のノードによって接続された複数の細長要素(例えば、ストランド)から構成された平面メッシュ構造であり、これらの部分によって、ジオグリッドにおける開口部の辺および角が定められる。ジオグリッドを形成するために、複数の材料(例えば、金属、天然繊維、およびガラス繊維等)を使用できる。ポリマーは、その物理的特性が有益であり、かつコストが比較的低いために、当該分野において特に関心を集めている。ポリマージオグリッド内のポリマーは、作製するために使用される方法に応じて、分子配向され得、これにより、それらの特性(例えば、引張強さまたは剛性(stiffness)等)が改善される。一般に、ポリマー内の分子配向は、加熱されたポリマーシートの延伸を通じて達成される。これは、開口部を有するポリマーシートに対して、複数の細長要素およびノードを形成すると同時に、それらの中に分子配向が誘起するように、行われてもよい。
【0072】
一軸ジオグリッドは、単一軸(したがって、一軸)に対して平行に走る複数の細長要素であって、各端部においてバーに付着された複数の細長要素を有する。バーは、単一軸を横切って走る連続ノードとみなすことができる。複数の細長要素は、通常、ジオグリッドの長さ(方向)に沿って端どうしを結ぶように連続的に走り、バーを通過する。
【0073】
二軸ジオグリッドは、複数の細長要素であって、各々が2つの軸(したがって二軸)のうちの1つの軸に対して平行に走る複数の細長要素を有する。細長要素の端部が交わるところに、ノードが形成されている。一般に、各軸に対して平行に走る複数の細長要素は、等間隔であり、その間隔は、2つの軸の各々に対して平行に走る複数の細長要素について同じである。典型的には、軸は互いに垂直であり、その結果、構成が長方形または正方形である開口部を有するジオグリッドが得られる。その他の角度が使用されてもよく、その結果、形状が平行四辺形または菱形である開口部を有するジオグリッドが得られる。
【0074】
本発明のジオグリッドは、多軸ジオグリッドである。本明細書において、多軸ジオグリッドは、複数の細長要素であって、各々が少なくとも3つの軸のうちの1つの軸に対して平行に走る複数の細長要素を有するジオグリッドと定義される。例えば、三軸ジオグリッドは、複数の細長要素であって、各々が3つの軸のうちの1つの軸に対して平行に走る複数の細長要素を有する。一般に、各軸に対して平行に走る複数の細長要素間の間隔は等しく、この間隔は、3つの軸の各々に対して平行に走る複数の細長要素について同じである。通常、複数の軸は、複数の細長要素が複数の正三角形を形成して六角形へ構成されるように、互いに60°の角度で構成されている。この配置によって、ジオグリッドは、その構造全体にわたって、荷重をより均等に分散することができる。三軸ジオグリッドおよびその製造方法は、WO2004/003303に記載されており、WO2004/003303は、参照によって本明細書に援用される。
【0075】
ジオグリッドは、以下のような多数のパラメータによって特定される:
製造物重量(product weight)。製造物重量は、単位面積あたりの重量で特定される。典型的なジオグリッドの製造物重量は、少なくとも好ましくは0.120~0.400kg/m、より好ましくは0.150~0.350kg/m、最も好ましくは0.170~0.310kg/m、例えば0.180~0.300kg/mである。
【0076】
ピッチ(pitch)。ピッチは、ジオグリッドは繰り返し構造を有し、ジオグリッドのピッチは、繰り返し単位の寸法である。三軸ジオグリッドでは、繰り返し単位は、六角形であり、六角形ピッチの距離は、当該六角形の平行な二辺どうしの間隔である。ピッチは、通常、少なくとも30mm、好ましくは40~150mm、より好ましくは50~140、最も好ましくは65~125mmである。
【0077】
接合効率(junction efficiency)。接合効率は、複数の細長要素の強度のパーセンテージで表されたノードの強度であり、複数の細長要素の間で各ノード(接合部)において荷重を伝達するジオグリッドの能力を示す。好適な接合効率は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも99%、例えば100%である。
【0078】
半径方向割線剛性(radial secant stiffness)。半径方向割線剛性は、弾性変形と非弾性変形との両方を含む、所定の力に対するジオグリッドの総応答(total response)の尺度である。通常、ジオグリッドは、ひずみ0.5%における半径方向割線剛性が、少なくとも100kN/m、好ましくは200~800kN/m、より好ましくは220~700kN/m、最も好ましくは250~600kN/mである。追加的または代替的に、ジオグリッドは、、ひずみ2%における半径方向割線剛性が、少なくとも80kN/m、好ましくは150~600kN/m、より好ましくは170~500kN/m、最も好ましくは200~450kN/mであってもよい。半径方向割線剛性比(無次元)は、少なくとも0.5、好ましくは0.6~0.9、最も好ましくは0.70~0.85、最も好ましくは0.75~0.80であってもよい。
【0079】
一般に、ジオグリッドは、その製造に用いられる処理のゆえに、厚さにむらがあり、ノードは、細長要素よりも厚くなっている。一部の実施形態では、熱接合プロセス中にジオグリッドと舗装ファブリック(paving fabric)との間の起こり得る最良の接触が保証されるように、実質的に一定の厚さを有するジオグリッドが使用される。一定の厚さを有する多軸ジオグリッドおよびその製造方法は、WO2019/058113に記載されており、WO2019/058113は、参照によって本明細書に援用される。
【0080】
(結合骨材(bound aggregate))
典型的には、結合骨材は、ビチューメンの固体マトリックス中に保持された砕石の粒子を含む、アスファルトコンクリートである。代替的または追加的に、結合骨材は、摩耗層(すなわち、土木構造物の最上層)としての使用に適した、骨材と結合材とを含む別の複合材料である。当業者には、その他の結合材にその他の粒子状材料が埋め込まれている場合にも、アスファルトコンクリートと同じ利益を本発明から受けるであろうことが理解されるだろう。
【0081】
骨材の粒子サイズは、典型的には5~35mmの範囲内にあり、好ましくは10~32mmの範囲内にある。あるいは、骨材の粒子サイズは、最大で11mmであってもよく、最大で16mmであってもよく、最大で22mmであってもよく、または最大で32mmであってもよい。
【0082】
必要とされる結合骨材の深さは、土木構造物の目的および仕様に依存することになる。一般に、結合骨材層の深さは、60mm~300mmだろう。より重い荷重を支持するためには、結合骨材のより厚い層が必要となる。好ましくは、結合骨材層の深さは、60mm~250mm、より好ましくは60mm~200mm、さらにより好ましくは60mm~150mm、最も好ましくは60mm~100mmだろう。
【0083】
(ジオコンポジット(geocomposite))
本発明の実施形態では、ジオグリッドは、舗装ファブリック等のジオテキスタイル(geotextile)に付着され、ジオグリッドがジオテキスタイルと結合骨材との間に位置するように配置されている。典型的には、ジオグリッドおよびジオテキスタイルは、熱接合(thermal bonding)によって付着されているが、任意の適切な技術(例えば、接着剤、溶剤溶接(solvent welding)、超音波溶接(ultrasonic welding)、および結束(tying))が使用されてもよい。
【0084】
ジオテキスタイルによって、骨材粒子がジオグリッドを通過すること、および、それに続いて、アスファルトの堆積の間にジオグリッドが持ち上がることが防止される。ジオグリッド全体にわたって力が効率的に伝達されることが確実となるように、ジオグリッドが実質的に平面状に保たれることが重要である。また、ジオテキスタイルによって、ジオコンポジットと、それが堆積される基層(substrate)との間における、良好な接触が保証される。これは特に、表面コーティング(例えば、タックコーティング(tack coating)等)が利用される場合に、重要である。
【0085】
ジオテキスタイルは、任意の適切な材料から作製されてもよく、典型的には、ポリプロピレンまたはポリエステル等のポリマーである。ジオテキスタイルは、スパンボンドまたはニードルパンチされた(needlepunched)不織材料であってもよく、さらに、ジオテキスタイルの一方または両方の面が、カレンダー加工されてもよく、またはいずれの面もカレンダー加工されなくてもよい。
【0086】
(疲労寿命(fatigue life))
疲労寿命は、破損前に物体が所与の力に耐えることのできる時間の長さに対する、一般的な用語である。それゆえ、疲労寿命は、舗装(面)が路面である等の、土木構造物の仕様に関して、鍵となるパラメータである。疲労寿命によって、当該構造物の耐用期間が決定されるからである。本明細書において、疲労寿命は、検出された剛性率Sが初期剛性率の50%に低減する前にサンプルが耐えることのできる、負荷および無負荷のサイクル数と定義される。疲労寿命は、ひずみが制御された状況下における四点曲げ試験を利用して決定されてもよい。
【0087】
ジオグリッドが結合骨材層に少なくとも部分的に埋め込まれた本発明に係る土木構造物では、ジオグリッドを欠く同等の土木構造物と比較して、疲労寿命の改善が示される。130マイクロひずみでは、疲労寿命は約10倍増大し得る。100マイクロひずみでは、疲労寿命は約14倍増大し得る。70マイクロひずみでは、疲労寿命は約22倍増大し得る。
【0088】
(土木構造物(engineering construction))
本発明に係る土木構造物の一例を、図1に概略的に示す。コンポジットの結合層(binding course)100は、アスファルトコンクリートであり、アスファルトコンクリート自体は、ビチューメンのマトリックスに埋め込まれた骨材から形成されている。結合層100の下面には、ジオコンポジット110が部分的に埋め込まれている。
【0089】
ジオコンポジット110は、不織舗装ファブリックに熱的に接合された三軸ポリマージオグリッドを含み、ジオグリッドが結合層100内で絡まる(enmesh)ように、ジオグリッドが最上にある状態で配置される。結合骨材層内でジオグリッドが絡まるとは、骨材の粒子がジオグリッドの開口部内へ部分的に入り込むことを意味する。その結果、ジオグリッドと結合骨材層とが機械的に組み合わされ、それらの間での効率的な力の伝達が保証される。多軸ポリマージオグリッドの高度に対称的な特質は、土木構造物に加えられる面外力(out-of-plane force)が、ジオグリッドの複数の細長要素を介して、その塊全体にわたって効果的に分散されることを意味する。ジオグリッドおよび不織舗装ファブリックは、熱接合によって互いに付着されているが、他の任意の適切な技術(例えば、接着(gluing)、超音波溶接、または結束)が使用されてもよい。
【0090】
結合層100の厚さは、その用途の要件に応じて選択することができる。一般に、その厚さは、60~300mmで変動することとなる。一部の応用(用途)では、結合層100の厚さが、同じ応用(用途)における、支持されていない(unsupported)結合層の厚さと比較して低減されつつ、同じ疲労寿命が維持される。有利には、これによって、土木構造物の形成に必要となるアスファルトコンクリートの量が低減される。一部の応用では、結合層100の厚さは、同じ応用における、支持されていない結合層の厚さと同等であり、その結果、土木構造物の疲労寿命が改善する。有利には、これによって、土木構造物の耐用期間が延びる。一部の応用では、結合層100の厚さは、同じ応用における、支持されていない結合層の厚さと比較して低減されつつ、さらに土木構造物の疲労寿命も改善する。有利には、これによって、必要となるアスファルトコンクリートの量が低減されつつ、さらに土木構造物の耐用期間も延びる。
【0091】
一般に、ジオグリッドは、その製造に用いられる処理のゆえに、その厚さにはむらがある。一部の実施形態では、熱接合処理の間、ジオグリッドと舗装ファブリック(paving fabric)との間に、起こり得る最良の接触が保証されるように、実質的に一定の厚さを有するジオグリッドが使用される。一定の厚さを有する多軸ジオグリッドおよびその製造方法は、WO2019/058113に記載されており、WO2019/058113は、参照によって本明細書に援用される。
【0092】
複数の任意選択的な(optional)下層(sublayer)が、土木構造物の性質を向上させるため、かつ/または準最適幾何形状(suboptimal geometry)を補償するために、当該土木構造物内に含まれてもよい。一部の場合において、これらの下層は、特に、本発明に係る土木構造物のために、設けられてもよい。他の場合において、これらの下層は、本発明に係る土木構造物によって置き換えられようとしている以前の土木構造物に由来する残余であってもよい。
【0093】
ジオコンポジット110の下にある、第1の任意選択的な下層は、均し層(levelling course)120である。かかる層は、ジオコンポジット層および結合層が水平面(level surface)上に適用され得る当該水平面の提供を保証するために用いられる。ジオグリッドが配置された基層内のゆがみ(distortion)によって、ジオグリッドの平面性が低減する。これにより、ジオグリッドが力を伝達する効率が低下する結果、層間における剪断強さが低下し得る。特に、結合層およびジオグリッドの直下にある基層におけるギャップによって、リフレクションクラッキング(reflection cracking)が生じ得る。
【0094】
ジオコンポジット110の下にある、第2の任意選択的な下層は、あらかじめ存在する、部分的に破砕されたアスファルトコンクリート層(partially milled pre-existing asphalt concrete course)130である。アスファルトコンクリートには、改修および/または交換が必要となることが一般的である。これを行うために、既存のアスファルト層は、その下にある複数の支持層が露出するように、複数の破砕プロセスのうちの1つの破砕プロセスを用いて除去される。特定の状況では、既存のアスファルトコンクリート層を部分的にのみ破砕することが好ましく、これにより、部分的に破砕されたアスファルトコンクリート層130が存在するに至る。
【0095】
ジオコンポジット110の下にある、第3の任意選択的な下層および第4の任意選択的な下層は、路盤(base course)140および路床(subgrade)150である。これらの層は、アスファルトコンクリートを堆積するための水平な固体表面が提供されるように圧縮された骨材であって、通常は結合材を有しない骨材を含む。これらの層の必要性、およびこれらの層に必要となる特徴は、土木構造物の機能、および下にある地質に依存する。
【0096】
表面処理は、所望に応じて、これらの層のうちの任意の層の間で行われてもよい。典型的には、下層に対するジオグリッドおよび/または舗装ファブリックの良好な接着が保証されるよう、タックコーティングがジオコンポジットの直下の下層に適用され、それによって、境界面の剪断強さが増大する。タックコーティングは、典型的には約55~約90℃、好ましくは約65~85℃、より好ましくは約65~80℃の高温で適用される。タックコーティングは、ビチューメンエマルジョンであってもよく、特に、陽イオンビチューメンエマルジョン(cationic bitumen emulsion)であってもよい。典型的には、陽イオンビチューメンエマルジョンは、結合材としてビチューメンを含む。それには、ポリマー改質ビチューメン(polymer modified bitumen)が含まれてもよい。エマルジョン内におけるビチューメンは、任意の適切なビチューメンであってもよいが、これは、好ましくは約100~約220の、好ましくは約100~約180の、または最も好ましくは約100~約150の(BS EN 12849:2009によって決定される)25℃での針入力(penetration power)を有する。典型的には、陽イオンビチューメンエマルジョンは、約70~約155g/100g、好ましくは約80~約150g/100gの、より好ましくは約90~約135g/100gの、例えば約100~約120g/100gの(BS EN 13075-1:2016またはBS EN 13075-2:2016によって適宜決定される)破壊値(breaking value)を有する。陽イオンビチューメンエマルジョンは、約60~約75重量%の、好ましくは約63~約71重量%の、より好ましくは約65~約70重量%の、最も好ましくは約67~約69重量%の、例えば69重量%のビチューメン含有量を有してもよい。
【0097】
(土木構造物の製造(作製))
土木構造物を製造する(つくり出す)ための例示的な方法を、以下に概説する。本実施例は、結合骨材が、骨材とビチューメン結合材とを含むアスファルトコンクリートである、土木構造物の製造に関する。当業者には、この方法がその他の結合骨材(例えば、骨材および液体ポリマー結合材等)を含む土木構造物の製造に適合され得ることが理解されるだろう。
【0098】
不織ファブリックに熱的に接合された多軸ポリマージオグリッドを含むジオコンポジットは、ジオグリッドが最上にある状態で、基層(例えば、上述した複数の任意選択的な下層のうちの1つの下層)上に堆積される。通常、土木構造物は、現場で製造される。すなわち、ジオグリッドは、土木構造物の予定された場所、およびその場所に築造された土木構造物に、配置される。しかしながら、一部の状況では、土木構造物を他の場所で(例えば、モールドを用いて)「プレキャスト(pre-cast)」し、完成した土木構造物を予定された場所まで運ぶことが好ましいことが理解されるだろう。
【0099】
次いで、非結合(固められていない:unbound)の骨材が、ジオグリッド上に堆積されて、ジオグリッドが骨材層に埋め込まれる。典型的には、非結合の骨材には、骨材および未硬化結合材が含まれるが、特定の場合において、いったん骨材が堆積されてから、未硬化結合材が加えられてもよい。結合骨材は、骨材およびビチューメンを含むアスファルトコンクリートであり、ビチューメンの粘性が低下して液体または半固体となり、当該アスファルトコンクリートが流動できるようになっている。このことは、ビチューメンの温度を上昇させること、ビチューメンを溶剤で薄めること、および/またはビチューメンを水中で乳化させること等、複数の方法で達成することができる。
【0100】
ほとんどの応用において、骨材および未硬化結合材は次いで、固められる前に、ジオコンポジットとの良好な接触が確保され、アスファルトコンクリート中の任意のボイド(間隙)の少なくとも一部分が除去されるように、圧縮される。また、圧縮によって、結合骨材上に滑らかな表面が残される。
【0101】
次に、ジオグリッドが埋め込まれた骨材層は、結合材を硬化させることによって固められる。このプロセスは、ビチューメンの粘性がどのように低減されたかに応じて変化する。例えば、「高温」アスファルトコンクリートのプロセスでは、アスファルトコンクリートを単に冷却させ、ビチューメンを固化して、骨材を固める。溶剤およびエマルジョンに基づくアスファルトコンクリートのプロセスでは、溶剤および/または水を蒸発させて、同じ結果が達成される。一部の実施形態では、結合材の硬化と圧縮とを、同時に行うことができる。
【0102】
(土木構造物の疲労寿命の改善)
土木構造物の疲労寿命を改善する例示的な方法が、本明細書に開示されている。骨材を固める前に多軸ポリマージオグリッドを骨材に埋め込むことによって得られる土木構造物、特に、その結合骨材層では、多軸ポリマージオグリッドが埋め込まれていない同等の土木構造物と比較して、疲労寿命が改善される。
【0103】
多軸ポリマージオグリッドは、土木構造物を構成する結合骨材層に埋め込まれることによって、土木構造物の疲労寿命を改善するために使用されてもよい。
【0104】
ジオグリッドを結合骨材に埋め込むことによって、多軸ポリマージオグリッドが結合骨材に埋め込まれていない結合骨材と比較して、結合骨材層の疲労寿命が増大する。有利には、このことによって、修繕作業間の期間、および/または再舗装作業間の期間が増大する。理論に束縛されることを望むものではないが、多軸ポリマージオグリッドを用いることによって、土木構造物の表面に加えられる荷重の、より等方的な面内分布が可能になるものと考えられる。そして、この結果として、土木構造物の任意の一部分に加えられる応力が低減し、その疲労寿命が改善される。
【0105】
(土木構造物の深さ(厚さ)の低減)
土木構造物の深さを低減させる例示的な方法が、本明細書に開示されている。骨材を固める前に多軸ポリマージオグリッドを骨材に埋め込むことによって得られる土木構造物、特に、その結合骨材層は、多軸ポリマージオグリッドが埋め込まれていない土木構造物と比較して、多軸ポリマージオグリッドが埋め込まれていない土木構造物の疲労寿命以上の疲労寿命が保たれつつ、厚さが低減される。
【0106】
多軸ポリマージオグリッドは、土木構造物を構成する結合骨材層に埋め込まれることによって、土木構造物の深さを低減させるために使用されてもよい。多軸ポリマージオグリッドを結合骨材層に埋め込むことによって、結合骨材層を含む土木構造物の疲労寿命が改善される。結合骨材層の疲労寿命は、その深さに比例する。したがって、ジオグリッドの使用によって、所望の疲労寿命を達成するための結合層の深さを、多軸ポリマージオグリッドを欠く場合に同じ疲労寿命を達成するのに必要となる結合層の深さと比較して、低減できるようになる。
【0107】
上記の各々について、深さ(厚さ)が低減することで、必要となる結合骨材の量が低減し、それによって、土木構造物を形成するために必要となる材料コストおよびエネルギーが低減する。
【0108】
〔実施例〕
さて、本発明を、以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、本発明を単に例示するものであり、限定を意図するものではないことが理解されるだろう。
【0109】
(サンプルの作製)
図2Aおよび図2Bに模式的に示す、長さ850mm、幅170mm、および厚さ100mmを有するアスファルトコンクリートのサンプルビームを、以下に記載するように作製した。
【0110】
AC 11W 35/50の30mmの均し層を堆積させ、硬化させた。このアスファルトコンクリートは、11mmの最大骨材サイズを有し、ビチューメンは、35/50の針入値(penetration value)を有していた。このアスファルトコンクリートの性質を、表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
舗装ファブリックに固定されたジオグリッドを含むジオコンポジットが用意された。ジオグリッドは、機械方向に走るリブを有する三軸ポリプロピレンジオグリッドである。その特性を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
舗装ファブリックは、不織舗装ファブリックである。その特性を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
この実施例では、ジオグリッドおよび舗装ファブリックが熱接合を用いて付着されて、ジオコンポジットが用意された。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、その他の多軸ポリマージオグリッド、舗装ファブリックおよび固定方法が使用され得ることが理解されるだろう。
【0117】
ビチューメンエマルジョンC69 B3 PUをベースとするタックコートを、均し層の表面に適用して(付けて)、舗装ファブリックを均し層の表面に近接させて、ジオコンポジットを均し層上に配置した。ビチューメンエマルジョンC69 B3 PUは、ビチューメン含有量が69%である、表面処理に使用される陽イオン性エマルジョンである。
【0118】
ジオグリッドのピッチは、80mmである。これにより、サンプルが、170mmのビーム幅にわたって、最小でも優に2つの繰り返しピッチを含むことが確実となる。
【0119】
AC 16W 35/50を含む70mmの結合材層を、ジオグリッド上へ舗装して硬化させた。このアスファルトコンクリートは、16mmの最大骨材サイズを有し、ビチューメンは、35/50の針入値を有していた。このアスファルトコンクリートの性質を、表4に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
比較となるアスファルトコンクリートビームは、ジオコンポジットを省いて、同じ方法体系(methodology)および材料を用いて作製した。
【0122】
(疲労四点曲げ試験)
四点曲げ装置を用いて、約13℃の温度でひずみ制御下疲労試験を行った。試験装置の模式図を、図3に示す。静的接触点(static contact point)を、ビームの下に740mmの間隔で設け、動的接触点(dynamic contact point)を、ビームの上に247mmの間隔で設けた。試験対象となるビームは、ビームの中心を、静的接触点の各々および動的接触点の各々から等距離として、均し層を最上にして装置に挿入した。
【0123】
次いで、所望のひずみが掛かり、ビームの初期剛性率(initial stiffness modulus)(Sini)が記録されるまで、動的接触点を介してビームに力を加えた。次いで、同じひずみを繰り返し掛け、サイクルごとの剛性率(stiffness modulus)を測定した。疲労寿命は、測定された剛性率がSiniの半分となる時点として決定された。
【0124】
三軸ポリマージオグリッドが組み込まれたアスファルトコンクリートビームと、対照となる、ジオグリッドを有しないアスファルトビームとの双方について、70μひずみ(軽度の交通量に相当)、100μひずみ(中程度の交通量に相当)、および130μひずみ(重度の交通量に相当)の各ひずみで、この実験を行った。
【0125】
(結果)
図4に示すように、アスファルトコンクリートビームに三軸ポリマージオグリッドを含ませることで、当初予想されたよりも疲労寿命が大きく改善した。比較となるアスファルトコンクリートビームと比較して、130μひずみ、100μひずみ、および70μひずみの各ひずみにおいて、それぞれ、10.4倍、14.2倍、および21.8倍の増大を示した。これらの驚くべき結果は明らかに、結合骨材層内に多軸ジオグリッドを組み込むことによって得られる、疲労寿命への有益な影響を示すものである。試験した全ての負荷で疲労寿命が一桁改善したという事実は当初予想されておらず、比較的重い負荷を受ける応用(用途)(例えば、車道)から、より低い負荷を受ける応用(例えば、歩道)まで、土木構造物の任意の応用について、疲労寿命の改善が見出されるであろうことが示唆される。また、多軸ジオグリッドが組み込まれた場合における疲労寿命の改善は、本特許の背景技術の項目で論じた代替材料(例えば、二軸ジオグリッド、生物学的材料、およびガラス繊維等)の場合に見出された疲労寿命の改善と比べて、優るものである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】