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特表2024-505062コロナウイルス感染の治療におけるプロテアソーム阻害剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】コロナウイルス感染の治療におけるプロテアソーム阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240126BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/69
A61K38/07
A61P31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545954
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022014726
(87)【国際公開番号】W WO2022165415
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】3107602
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523166359
【氏名又は名称】スカイマウント メディカル ユーエス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520061826
【氏名又は名称】ザ ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステート ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベス,アダム
(72)【発明者】
【氏名】バーグリンド,フレジ,クヌート,ゴスタ
(72)【発明者】
【氏名】ムコッパッダーエ,スプラティク
(72)【発明者】
【氏名】ワサン,キショー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ガリアーノ,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ブリリンスキー,ミカル
(72)【発明者】
【氏名】コーミエ,ステファニア
(72)【発明者】
【氏名】アデル,アラン
(72)【発明者】
【氏名】グリッグス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グールド,ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ティファニー
(72)【発明者】
【氏名】アブラーモフ,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ニック,ピーター
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA32
4C084CA59
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZB33
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA43
(57)【要約】
対象におけるコロナウイルス感染の治療として使用するための、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む経口製剤。ヒトにおけるSARS-CoV-2感染の治療又は予防のためのそのようなものの使用も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるSARS-CoV-2感染を予防するための、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む経口製剤の使用。
【請求項2】
対象におけるSARS-CoV-2感染を治療するための、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む経口製剤の使用。
【請求項3】
対象におけるSARS-CoV-2ウイルスの複製を予防するための、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む経口製剤の使用。
【請求項4】
前記プロテアソーム阻害剤がボルテゾミブである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記プロテアソーム阻害剤がカルフィルゾミブである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記プロテアソーム阻害剤がイキサゾミブである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトにおけるCOVID-19感染の治療のためのプロテアソーム阻害剤の経口製剤の使用を含む、コロナウイルス疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
世界規模でのSARS-CoV-2と呼ばれる新型コロナウイルスの出現は、世界の実質的に全ての人口に影響を及ぼしている。このウイルスは何百万もの個体を苦しめており、COVID-19と呼ばれる疾患を引き起こしている。COVID-19は、重大な健康リスクに発展し、死に至る可能性があり、医療資源及び社会全般に高い負担をかけている。
【0003】
SARS-CoV-2は、SARS-CoV及びMERS-CoVの受容体結合ドメイン構造と類似の受容体結合ドメイン構造を有する、一本鎖ポジティブセンスリボ核酸(ribonucleic acid、RNA)ウイルスである。SARS-CoV-2は、鼻粘膜にアクセスする飛沫を介して個体間で伝染する。鼻粘膜内では、SARS-CoV-2は急速に増殖し、鼻分泌物(痰)中に排出され得る。痰は、飛沫を介して他の個体に伝染する可能性があり、したがって伝染サイクルを繰り返す。SARS-CoV-2ウイルスは、症状の発症前、症状期間中、及び回復後であっても、個体間で広がり得る。
【0004】
感染の臨床スペクトルは広く、上気道感染の軽度の徴候から重度の肺炎、多臓器不全及び死亡に及ぶ。発症時に、SARS-CoV-2は、宿主への主な侵入経路である呼吸器系を主に攻撃するが、SARS-CoV-2はまた、感染した個体の多臓器に影響を及ぼし得る。COVID-19の重症度は通常、これらに限定されないが、COVID-19の結果を悪化させ得る高血圧、糖尿、肥満、及び/又は高齢などの合併症に関連する。
【0005】
SARS-CoV-2に対するいくつかのワクチンが利用可能になり、COVID-19公衆衛生危機を緩和し、COVID-19が医療従事者及び病院に課したストレスを管理するための保健当局の推奨の重要な部分を形成している。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスは、様々な異なるバリアントに変異する能力を既に実証しており、その一部は他のバリアントよりも感染力が強く、現在のワクチンによってもたらされる防御を回避すること成功していることが証明されている。
【0006】
感染した個体に対する生理学的影響を遅延させ、予防し、及び/又は治療するような様式で、SARS-CoV-2ウイルスの影響を緩和することができる療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、コロナウイルスに感染した対象における重篤な疾患のリスク、症状及び発症の一部又は実質的に全てを改善及び/又は阻害するための1つ以上の療法を提供する。本開示のいくつかの実施形態において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、コロナウイルス感染によって引き起こされる重篤な疾患のリスク、症状及び発症の一部又は実質的に全てを改善及び/又は阻害するための1つ以上のプロテアソーム阻害剤の使用に関する。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態は、対象におけるSARS-CoV-2感染を予防するための、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む経口製剤の使用に関する。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態は、対象におけるSARS-CoV-2感染を治療するための、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む経口製剤の使用に関する。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態は、対象におけるSARS-CoV-2ウイルスの複製を予防するための、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む経口製剤の使用に関する。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態は、コロナウイルスに曝露又は感染した個体を治療する方法に関する。本方法は、治療有効量の1つ以上のプロテアソーム阻害剤を提供する工程と、治療有効量の1つ以上のプロテアソーム阻害剤を上述の個体に投与して、コロナウイルスに曝露又は感染した対象における重篤な疾患のリスク、症状及び発症の一部又は実質的に全てを改善及び/又は阻害する工程と、を含む。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態は、薬剤/標的細胞複合体を作製する方法であって、本方法が、治療有効量の薬剤を対象に投与する工程を含み、薬剤/標的細胞複合体が、ビリオン粒子が複合体の一部を形成する標的細胞に侵入し、標的細胞と融合し、及び/又は標的細胞内で複製することを阻害するか、遅らせるか、又は予防する、方法に関する。本開示のいくつかの実施形態において、薬剤は、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態は、薬剤/標的ビリオン複合体を作製する方法であって、本方法が、治療有効量の薬剤を対象に投与する工程を含み、薬剤/標的ビリオン複合体が、薬剤/標的細胞複合体が対象の細胞に侵入し、対象の細胞と融合し、及び/又は対象の細胞内で複製することを阻害する、方法に関する。本開示のいくつかの実施形態において、薬剤は、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を含む。
【0015】
本開示の実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カルフィルゾミブ、又はそれらの組み合わせを含む。イキサゾミブは、現在、経口投与に利用可能であり、ボルテゾミブ及び/又はカルフィルゾミブよりも改善された活性を有し得る。ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブは両方とも、典型的には注射によって、又は静脈内に投与される。ボルテゾミブは、プロテアソームの20Sタンパク質分解部位のβ5キモトリプシン様サブユニットに優先して、β1カスパーゼ様サブユニット及びβ2トリプシン様サブユニットのゆっくりとした可逆的な阻害剤(解離半減期=110分)である。カルフィルゾミブは、プロテアソームのβ5キモトリプシン様サブユニットに対して高い特異性を有する不可逆的阻害剤である。イキサゾミブ及びボルテゾミブは、機構的に類似しており、両方ともプロテアソームのβ5キモトリプシン様サブユニットに対して、より大きな親和性を有する。しかしながら、イキサゾミブは、18分の解離半減期を有しており、これは、その優れた組織浸透に寄与すると考えられる。プロテアソームは、血液細胞中に高度に濃縮されており、ボルテゾミブは、その阻害活性の大部分を発揮する循環において、より長い曝露を保持することが知られている。より高い濃度では、イキサゾミブは、他のタンパク質分解部位(例えば、β1、β2)も阻害することができる。
【0016】
本明細書中に記載される最初のインビトロ研究は、腎臓細胞及び肺細胞といった細胞がSARS-CoV-2ウイルスに曝露された場合に、1つ以上のプロテアソーム阻害剤で腎臓細胞及び肺細胞の両方を治療する際に有望性を示した。EC50値は、低nM範囲であり、SARS-CoV2に対する特異性及び効力を示している。
【0017】
ボルテゾミブの現在の製剤は、IV投与又は皮下注射に限定されている。このような利点としては、100%の生物学的利用能及び末梢組織への広い分布が挙げられる。IV投与後、ピーク血漿レベルになるまでの時間は、およそ5分である。IV投与されたボルテゾミブのヒト血漿タンパク質へのインビトロ結合は、平均83%であった。
【0018】
サイクリン及びCDK阻害剤は、CDKの活性を調節し、次いで、プロテアソームは、これらのタンパク質を調節する。同様に、シトレオビリジンと26Sプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブとの組み合わせは、ERストレスを増強することによって、シトレオビリジンによって引き起こされるサイクリンD3補償を改善することによって、並びにCDK1[cyclin-dependent kinase 1、サイクリン依存性キナーゼ1]不活性化及びPCNA下方調節に寄与することによって、抗がん活性を改善し得ることが示されている。このことを考慮して、本願発明者らは、ボルテゾミブがCDK活性を阻害するため、ボルテゾミブがSARS-CoV-2に対して有効である可能性があると仮定した。
【0019】
インビトロデータは、ボルテゾミブによって治療されたSARS-CoV-2感染Vero E6細胞が、0.05μMの濃度でウイルス誘導性細胞変性効果の阻害を実証したことを示す。しかしながら、細胞毒性は、0.002μMで観察された。細胞毒性、及びウイルス誘導性細胞変性効果の阻害は、より短い治療スケジュールで、30μMを超える用量で観察された。さらなるデータは、感染した腎臓細胞及び肺細胞における有効性を示す。しかしながら、ボルテゾミブの経口投薬製剤は、これらの欠点に対処し得る。
【0020】
上述のことを考慮すると、このボルテゾミブの有用性は、その投与経路、狭い治療指数、成長中の胎児に対する影響及び受精能を損なうその可能性を含む、慢性曝露後に観察され得る臨床的有害作用(例えば、呼吸困難、心血管障害)の頻度及び/又は重症度によって制限され得る。
【0021】
何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブは、CDK活性を阻害するため、SARS-CoV-2感染の治療及び/又は予防に有用であり得る。ボルテゾミブは、プロテアソームサブユニットベータ1型(0.5nM)、2型(N/A)、5型(0.5nM)、7型(7nM);8型(17nM);20Sプロテアソームキモトリプシン様(1.90nM);プロテアソームサブユニットベータ1型/ベータ5型(4nM);プロテアソームサブユニットベータ7型(7nM);26Sプロテアソーム(8.10nM);プロテアソームサブユニットベータ8型(17nM);プロテアソーム成分C5(30nM);プロテアソーム成分C5(130nM);プロテアソーム;マクロペインサブユニット(440nM);及びカテプシンG(520nM)を標的とすることが知られている。ボルテゾミブは、カテプシンA(9200nM)、カテプシンB(3000nMを超える)、及びカテプシンG(520nM);キマーゼ(肥満細胞プロテアーゼ1)(1190nM)を標的とすることも知られている。ボルテゾミブはまた、多剤耐性関連タンパク質4(ABCC4)(133μM)、小管多特異的有機アニオントランスポーター1(ABCC2)(133μM)、小管多特異的有機アニオントランスポーター2(ABCC3)(133μM)、胆汁酸塩排出ポンプ(ABCB11)(133μM)を標的とすることが知られている。
【0022】
何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、プロテアソーム阻害剤イキサゾミブは、プロテアソームサブユニットベータ1型(7.7nM)、2型(N/A)、及び5型(7.7nM)を標的とすることが知られているため、その作用機序により、SARS-CoV-2感染の治療及び/又は予防に有用であり得る。
【0023】
何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、プロテアソーム阻害剤カルフィルゾミブは、プロテアソームサブユニットベータ5型(9.6nM)、7型(8.6nM)、8型(N/A);カテプシンA(30μMを超える)、カテプシンB(11μM)、及びカテプシンG(30μMを超える)を標的とすることが知られているため、その作用機序により、SARS-CoV-2感染の治療及び/又は予防に有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示の特徴は、添付の図面を参照する以下の詳細な説明において、より明らかになるであろう。添付の図面は、本開示の1つ以上の実施形態を単なる例としてのみ示しており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1】第2の試験シリーズからのレムデシビルについての濃度応答曲線のグラフ表示である。
図2】第2の試験シリーズからのボルテゾミブについての濃度応答曲線のグラフ表示である。
図3】Calu3細胞におけるレムデシビルについての濃度応答曲線のグラフ表示である。
図4】Calu3細胞におけるカルフィルゾミブについての濃度応答曲線のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本説明の文脈において当業者によって一般的に理解されるであろう意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料もまた、本開示の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料がここで記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連する方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈が明確にそうでないと指示しない限り、複数の言及を含む。例えば、「薬剤(an agent)」に対する言及は、1つ以上の薬剤を含み、「対象(a subject)」又は「対象(the subject)」に対する言及は、1つ以上の対象を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の約25%以内、好ましくは約20%以内、好ましくは約15%以内、好ましくは約10%以内、好ましくは約5%以内を指す。そのような変動は、それが具体的に言及されているか否かにかかわらず、本明細書で提供される任意の所与の値に常に含まれることが理解される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「活性」という用語は、「機能性」という用語と交換可能に使用され、両方の用語は、生体分子の生理学的作用を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「薬剤」及び「治療薬剤」という用語は、対象に投与されると、対象において1つ以上の化学反応及び/又は1つ以上の物理的反応及び/又は1つ以上の生理学的反応及び/又は1つ以上の薬理学的反応及び/又は1つ以上の免疫学的反応を引き起こす物質を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「改善する」という用語は、改良すること、及び/又はより良好にすること、及び/又はより満足のいくものにすることを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「細胞」という用語は、単一の細胞並びに複数の細胞又は同じ細胞型若しくは異なる細胞型の集団を指す。細胞への薬剤の投与は、インビボ、インビトロ及びエクスビボ投与並びに/又はそれらの組み合わせを含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「複合体」という用語は、薬剤の1つ以上の粒子と1つ以上の標的細胞又は標的ビリオンとの間の直接的又は間接的な会合を指す。この会合は、標的細胞又は標的ビリオンの代謝又は機能性の変化をもたらす。本明細書で使用される場合、「代謝の変化」という語句は、1つ以上のタンパク質の標的の産生、及び/又は1つ以上のタンパク質の任意の翻訳後修飾のうちの1つ以上の増加又は減少を指す。本明細書で使用される場合、「機能性の変化」という語句は、このような複合体の一部ではない標的と比較した場合の、薬剤/標的複合体内の標的の1つ以上の局面の生理学的機能の差異を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「調節不全」及び「調節不全の」という用語とは、恒常性制御系が妨害及び/又は障害され、その結果、対象内の1つ以上の代謝系、生理学的系及び/又は生化学系が、当該恒常性制御系なしで部分的又は完全に作動する状況又は状態を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、それ自体が薬剤ではなく、1つ以上の薬剤などを対象に送達するために組成物中で使用され得るか、又は代替的に(例えば、薬学的組成物を作製するために)1つ以上の担体などと組み合わせて使用されて、その取り扱い特性若しくは保存特性を改善するか、又は組成物の用量単位の形成(例えば、その後任意選択的に経皮パッチに組み込まれ得る、局所ヒドロゲルの形成)を可能にし得るか、若しくは容易にし得る、任意の物質を指す。賦形剤としては、限定ではなく例示として、結合剤、崩壊剤、味覚増強剤、溶媒、増粘剤又はゲル化剤(及び必要に応じて任意の中和剤)、浸透増強剤、可溶化剤、湿潤剤、抗酸化剤、潤滑剤、皮膚軟化剤、不快な匂い、芳香又は味を覆うか又は中和するために添加される物質、組成物の外観又は質感を改良するために添加される物質、及び薬学的組成物を形成するために使用される物質が挙げられる。任意のそのような賦形剤は、本開示による任意の剤形で使用することができる。賦形剤の前述のクラスは、網羅的であることを意味せず、単に例示的であることを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「阻害する」、「阻害すること」及び「阻害」という用語は、生物学的プロセス、疾患、障害又はその症状の活性、応答若しくは他の生物学的パラメータの減少を指す。これには、活性、応答、状態、又は疾患の完全な切除が含まれ得るが、これらに限定されない。これにはまた、例えば、天然又は対照レベルと比較して、活性、応答、状態、又は疾患における10%の低減が含まれ得る。したがって、低減は、天然又は対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は具体的に列挙されたパーセンテージの間の任意の量の低減であり得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「薬品」という用語は、薬剤を含み、疾患、障害若しくはその症状からの回復を促進することができる、及び/又は疾患、障害若しくはその症状を予防することができる、及び/又は疾患、障害若しくはその症状の進行を阻害することができる、医薬品及び/又は薬学的組成物を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、疾患、障害又はその症状の療法又は治療を必要とする対象に投与されるべき1つ以上の薬剤を含むが、必ずしもこれらに限定されない任意の組成物を意味する。薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、薬学的に許容される塩、賦形剤などの添加剤を含んでもよい。薬学的組成物はまた、1つ以上のさらなる活性成分(例えば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、鎮痛剤など)をさらに含み得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、1つ以上の薬剤の有効性及び/又は安全性を阻害しない、薬学的組成物又は薬品内の本質的に化学的に不活性かつ非毒性の成分を指す。薬学的に許容される担体及びそれらの製剤のいくつかの例は、Remington(1995,The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。典型的には、適切な量の薬学的に許容される担体を製剤中で使用して、当該製剤を等張性にする。適切な薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水溶液、グリセロール溶液、エタノール、N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、ジオレオールホスホチジルエタノールアミン(dioleolphosphotidylethanolamine、DOPE)、及びリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。そのような薬学的組成物は、対象への適切な投与に適した形態を提供するために、治療有効量の薬剤を、好適な量の1つ以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とともに含有する。製剤は投与経路に適している。例えば、経口投与は、対象の胃腸管の部分内で分解することから薬剤を保護するために腸溶コーティングを必要とし得る。別の例では、注射可能な投与経路をリポソーム製剤で投与して、対象の血管系全体への輸送を促進し、標的細胞内部位の細胞膜を通過する送達を促進することができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「の予防」及び「予防すること」という語句は、疾患、障害又はその症状の発症又は進行を回避することを指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、薬剤を受ける任意の治療標的を指す。対象は、脊椎動物、例えば、ヒトを含む哺乳動物であり得る。「対象」という用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。「対象」という用語はまた、生物の1つ以上の細胞、1つ以上の組織型のインビトロ培養物、1つ以上の細胞型のインビトロ培養物、エクスビボ調製物、並びに/又は組織及び/若しくは生物学的流体などの生物学的材料の試料を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」という用語は、ウイルスが1つ以上の細胞型の外膜と融合し、細胞に侵入し、及び/又はその中で複製することによってコロナウイルスと相互作用することができる、対象内の1つ以上の細胞型を指す。何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、対象の標的細胞は、ウイルス相互作用に必要な受容体及び/又は補因子を発現する対象内の任意の細胞を含むことができる。これらの型の細胞の例としては、上気道及び誘導気道(繊毛及び非繊毛)の上皮細胞、肺胞上皮細胞(1型及び2型の両方)、嗅覚系の上皮細胞及びニューロン、中枢神経系又は末梢神経系のニューロン、胃腸管の上皮細胞、腸細胞及び腺細胞、免疫エフェクター細胞を含む血液の細胞、心血管細胞、及び腎細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される場合、「標的ビリオン」及び「ビリオン」という用語は、標的細胞内でウイルス感染を引き起こす能力を有するコロナウイルスの1つ以上のウイルス粒子を指す。本開示のいくつかの実施形態において、ウイルス粒子は、SARS-CoV-2の1つ以上のバリアントのものである。
【0043】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患、障害又はその症状のうちの1つ以上を改善、予防、治療及び/又は阻害するのに十分な量である、使用される薬剤の量を指す。「治療有効量」は、使用される薬剤、薬剤の投与経路、及び疾患、障害又はその症状の重症度に応じて変化する。対象の年齢、体重及び遺伝子構造もまた、治療有効量である薬剤の量に影響し得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患、障害、若しくはその症状の発生を完全に若しくは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、かつ/又は効果は、疾患、障害、若しくはその症状の部分的若しくは完全な改善若しくは阻害を提供する点で治療的であってもよい。さらに、「治療」という用語は、対象における疾患、障害又はその症状の何らかの治療を指し、(a)疾患に罹患しやすい可能性があるが、まだ罹患していると診断されていない対象において疾患が発生するのを予防することと、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その進行を阻止することと、(c)疾患を改善することと、を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「単位剤形」という用語及び「単位用量」という用語は、患者のための単位用量として適切な物理的に別個の単位を指す。各単位は、所定量の薬剤と、任意選択的に、1つ以上の適切な薬学的に許容される担体、1つ以上の賦形剤、1つ以上の追加の活性成分、又はそれらの組み合わせと、を含有する。各単位内の薬剤の量は、治療有効量である。
【0046】
本開示の実施形態において、本明細書に開示される薬学的組成物は、組成物の総重量に対して約0.1%~約95%の上述のような1つ以上の薬剤を含む。例えば、薬学的組成物の重量による薬剤の量は、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、約5%、約5.1%、約5.2%、約5.3%、約5.4%、約5.5%、約5.6%、約5.7%、約5.8%、約5.9%、約6%、約6.1%、約6.2%、約6.3%、約6.4%、約6.5%、約6.6%、約6.7%、約6.8%、約6.9%、約7%、約7.1%、約7.2%、約7.3%、約7.4%、約7.5%、約7.6%、約7.7%、約7.8%、約7.9%、約8%、約8.1%、約8.2%、約8.3%、約8.4%、約8.5%、約8.6%、約8.7%、約8.8%、約8.9%、約9%、約9.1%、約9.2%、約9.3%、約9.4%、約9.5%、約9.6%、約9.7%、約9.8%、約9.9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%以上であってもよい。
【0047】
値の範囲が本明細書で提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値は、文脈が別途明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1まで、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在値は、本開示内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限が、より小さい範囲内に独立して含まれ得、また、本開示内に包含され、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従う。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、本開示に含まれる。
【0048】
本開示の実施形態は、対象におけるSARS-CoV-2ウイルスによる感染を予防、低減及び/又は治療するための1つ以上のプロテアソーム阻害剤の使用に関する。本開示の実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カルフィルゾミブ、又はそれらの組み合わせを含む。
【0049】
ボルテゾミブは、多発性骨髄腫及びマントル細胞リンパ腫を有する患者の治療に適応される。ボルテゾミブは、併用治療として投与され、皮下(SC)又は静脈内(IV)投与することができる。注射のための推奨開始用量は、1.3mg/m2(1.8m2の平均体表面積に基づいて、毎日投与される場合、2.3mg/日に対応する)である。
【0050】
ボルテゾミブは、現在、哺乳動物細胞においてユビキチン化タンパク質を分解する大きなタンパク質複合体である26Sプロテアソームの強力で選択的かつ可逆的な阻害剤として使用されている。ユビキチン-プロテアソーム経路は、細胞内の恒常性を維持するために特定のタンパク質の細胞内濃度を調節するのに重要である。がん細胞内ではあるが、この経路を遮断することは、NF-κB活性化及び細胞周期進行の阻害、並びにアポトーシスの開始を引き起こす複数の細胞シグナル伝達カスケードに影響を及ぼし得る。プロテアソーム阻害はまた、p27などのサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤の蓄積を引き起こす可能性がある。
【0051】
インビトロ研究において、ボルテゾミブは、SARS-CoV-2に感染したVero E6細胞において0.05Mでウイルス誘導性細胞変性効果(CPE)を阻害することが示された。しかしながら、好ましくない細胞毒性が、0.002μMで生じた。より短い薬物治療時間では、ボルテゾミブは、クロロキン(15μMで達成された)と同程度に効果的に、30μMを超える用量でCPEを完全に予防することができなかった。
【0052】
さらに、ボルテゾミブは、分析的及び計算的アプローチに基づいて、SARS-CoV-2に対する潜在的な活性を有する薬物として同定されている。オープンリーディングフレーム10(ORF(open reading frame)10)ウイルスタンパク質は、SARS-CoV-2ウイルス粒子の高度に伝染性の性質に関与する重要なタンパク質として同定されており、26Sプロテアソームによるユビキチン化のための細胞タンパク質を標的化する際に役割を果たすE3リガーゼ複合体と相互作用することが報告されている。このことは、ORF10がプロテアソーム複合体に結合し、制限因子及び他の必須細胞タンパク質のユビキチン化及び分解のためにそれを利用し得ることを示唆する。さらに、ボルテゾミブは、SARS-CoV-2に対するそれらの予想される有効性について多数の薬物をランク付けするために、人工知能、ネットワーク拡散、及びネットワーク近接性を使用するアルゴリズム予測研究によって、Vero E6細胞における細胞毒性薬物として分類された。
【0053】
SARS-CoV-2ウイルスは、CDKのリン酸化及び活性化を増加させ、これが、ウイルス複製に必須である必須ヌクレオチド、DNA修復、及び複製タンパク質の供給の増加をもたらすことが示されている。何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、CDK阻害剤は、SARS-CoV-2ウイルス感染の治療のための潜在的な療法であり、プロテアソームの阻害は、CDK阻害剤の蓄積及びNF-κB媒介性炎症の下方調節をもたらす。したがって、プロテアソーム阻害剤を使用することは、SARS-CoV-2感染を緩和し、COVID-19の重症度を低下させるという状況において有利であり得る。
【0054】
小胞体ストレス応答(unfolded protein response、UPR)は、細胞の小胞体(ER)内のミスフォールドタンパク質の蓄積によって活性化されるシグナル伝達経路である。この経路の活性化は、分子シャペロンの産生の増加、タンパク質翻訳の抑制、及びミスフォールドタンパク質の分解の加速をもたらす。SARS-CoV-2ウイルスは、ウイルスタンパク質の生成のために内因性転写機構を利用し、急速なウイルス複製の結果として、折り畳まれていないウイルスポリペプチドがERに蓄積することが多い。系がウイルスタンパク質によって過剰負荷される場合、内因性タンパク質の産生が抑制され、細胞死を引き起こす。プロテアソーム阻害剤は、折り畳まれていないタンパク質又は凝集したタンパク質を除去するためにタンパク質キナーゼR様小胞体キナーゼ(protein kinase R-like endoplasmic reticulum kinase、PERK)及び活性化転写因子4(ATF(activating transcription factor)4)の誘導を介してUPRを開始する。何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、1つ以上のプロテアソーム阻害剤は、UPRが正常細胞の完全性及び機能を維持する能力を増加させ得る。COVID-19患者を治療するための薬理学的シャペロン療法が検討されている。しかしながら、長期のUPR活性化及び重度のERストレスは、他の疾患状態(例えば、アルツハイマー病、肺線維症)と関連し得る。
【0055】
現在の技術水準を考慮すると、感染した個体に対するSARS-CoV-2ウイルスの生理学的影響を低減及び/又は改善することができる治療用化合物が必要とされている。本開示は、SARS-CoV-2感染を含むコロナウイルス感染、並びに関連する疾患及び障害の治療のための組成物及び方法を提供することによって、この必要性を満たす。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態において、コロナウイルスはSARS-CoV-2であり、1つ以上のプロテアソーム阻害剤の使用は、SARS-CoV-2ウイルスの複製を阻害し得る。本開示のいくつかの実施形態において、対象は、SARS-CoV-2に感染していてもよく、若しくはSARS-CoV-2による感染のリスクがあってもよく、又はCOVID-19を有すると診断されているか、又はCOVID-19を有すると疑われている。本開示のいくつかの実施形態において、対象はヒトである。本開示のいくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、経口的に提供されるか、又は経口投与のために製剤化される。本開示のいくつかの実施形態において、対象には、本明細書で以下の表4~8のいずれかに記載されている経口製剤を含むがこれらに限定されないボルテゾミブの経口製剤が提供される。
【0057】
タンパク質-タンパク質結合
小さな治療薬がCOVID-19ウイルス粒子と結合する可能性の徹底的な評価を行った。小分子に対する3つの異なる機構の可能性のある結合部位を使用して、タンパク質-タンパク質結合の可能性を決定した。必須SARS-CoV-2プロテアーゼの結晶構造の鋳型を用いて、プロテアーゼ阻害剤結合ポケットの機能中心を同定した。
【0058】
SARSウイルスを阻害することが知られている抗ウイルスペプチドを標的として使用した。次いで、これらの抗ウイルスペプチド(antiviral peptide、AVP)のフィンガープリント(埋め込み)を作製することによって、それらを、個々の薬物の同様に生成されたフィンガープリント(埋め込み)と比較して、最も密接に関連するものを同定した。
【0059】
使用したAVPは、3つの特定の機構、すなわち侵入、融合、及び複製を標的とした。最も有効なペプチドを特異的に除外し、それらを使用して、各ペプチドの既知の作用機序に基づいて3つの別々のネットワークを作成した。これにより、機構に基づく特定の特異性を有する薬物の同定が可能となった。
【0060】
3つの機構は、以下の理由で関連している。細胞へのウイルスの侵入を阻害することは、細胞に作用するウイルスの量を低減するため、侵入は極めて重要である。同様に、複製の阻害は、細胞が感染した後に生成され、他の細胞に広がるウイルス負荷の量を低減するために重要である。最後に、全てのウイルス侵入が標準的な機構を介して起こるわけではないので、技術的に最も関連性は低いが、融合は注目に値する。ウイルスは、感染のために細胞膜と直接融合することができる。これは、標準的な侵入機構の速度の約1/10で起こるが、それでも阻害しようと試みる焦点として使用することが望ましい機構である。
【0061】
これらの特定のペプチドのフィンガープリントは、ヒトプロテオーム及びその中の全てのプロセスに関与するタンパク質の大きなグラフを使用することによって作成された。次いで、これらのフィンガープリントを薬物フィンガープリントと比較することによって、ヒトプロテオームに対してAVPと同様の(抗ウイルス)効果を有する薬物の同定を行った。
【0062】
第1の結合機構
第1の結合機構に従ってSARS-CoV-2ウイルス粒子に結合する傾向を決定するために試験した、いくつかの治療用化合物。この相互作用は、治療用化合物が哺乳動物細胞へのCOVID-19の侵入、SARS-CoV-2ウイルス粒子と哺乳動物細胞との融合、及び最終的にはCOVID-19感染細胞の複製に影響を与える可能性を評価することによってさらに評価された。表1は、モデリングデータ分析のこの第1のラウンドで得られたデータをまとめる。
【0063】
【表1】
【0064】
第1の結合機構の研究において収集されたデータによれば、分析された化合物の大部分(0.25より大きい測定スコアを有するもの)は、SARS-CoV-2ウイルス粒子に結合する傾向を示した。
【0065】
第2の結合機構
続いて、同じ治療用化合物を研究して、それらが第2の結合機構に従ってSARS-CoV-2ウイルス粒子に結合する傾向を決定した。この相互作用は、治療用化合物が哺乳動物細胞へのCOVID-19の侵入、SARS-CoV-2ウイルス粒子と哺乳動物細胞との融合、及び最終的にはCOVID-19感染細胞の複製に影響を与える可能性を評価することによってさらに評価された。表2は、モデリングデータ分析のこの第2のラウンドで得られたデータをまとめる。
【0066】
【表2】
【0067】
第2の結合機構の研究において収集されたデータによれば、分析された化合物の全て(0.5より大きい測定スコアを有するもの)は、SARS-CoV-2ウイルス粒子に結合する傾向を示した。
【0068】
第3の結合機構
その後再び、同じ治療用化合物を研究して、それらが第3の結合機構に従ってSARS-CoV-2ウイルス粒子に結合する傾向を決定した。この相互作用は、治療用化合物が哺乳動物細胞へのCOVID-19の侵入、SARS-CoV-2ウイルス粒子と哺乳動物細胞との融合、及び最終的にはCOVID-19感染細胞の複製に影響を与える可能性を評価することによってさらに評価された。表3は、モデリングデータ分析のこの第3のラウンドで得られたデータをまとめる。
【0069】
【表3】
【0070】
本開示のいくつかの実施形態において、コロナウイルスの複製を阻害することを必要とする哺乳動物においてそれを行う方法であって、哺乳動物に有効量の1つ以上のプロテアソーム阻害剤を提供することを含む、方法に関する。本開示のいくつかの実施形態において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。本開示のいくつかの実施形態において、1つ以上のプロテアソーム阻害剤を使用する治療を必要とする対象は、SARS-CoV-2に感染しているか、又はCOVID-19を有すると診断されている。
【0071】
特定の実施形態において、1つ以上のプロテアソーム阻害剤は、
(a)治療有効量の1つ以上のプロテアソーム阻害剤と、
(b)1つ以上の脂肪酸グリセロールエステルと、
(c)1つ以上のポリエチレンオキシド含有リン脂質又は1つ以上のポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルと、を含む経口投与製剤で、対象に提供される。
【0072】
一実施形態において、1つ以上のプロテアソーム阻害剤は、約0.5~約10mgの量で製剤中に存在する。一実施形態において、1つ以上のプロテアソーム阻害剤は、約3.5mgで製剤中に存在する。特定の実施形態において、製剤は、(a)1つ以上のプロテアソーム阻害剤と、(b)1つ以上の脂肪酸グリセロールエステルと、(c)1つ以上のポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルと、任意選択的に、(d)トコフェロールポリエチレングリコールスクシナートと、を含む。
【0073】
一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルは、約32~約52重量%の脂肪酸モノグリセリドを含む。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルは、約30~約50重量%の脂肪酸ジグリセリドを含む。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルは、約5~約20重量%の脂肪酸トリグリセリドを含む。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルは、約60重量%を超えるオレイン酸モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドを含む。
【0074】
一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有リン脂質は、ホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩のC8~C22飽和脂肪酸エステルを含む。一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩を含む。一実施形態において、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩は、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール350塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール550塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール750塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール1000塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール2000塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩は、製剤の体積に基づいて1mM~約30mMの量で製剤中に存在する。一実施形態において、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩は、アンモニウム塩又はナトリウム塩である。
【0075】
一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、C8~C22飽和脂肪酸のポリエチレンオキシドエステルを含む。一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、C12~C18飽和脂肪酸のポリエチレンオキシドエステルを含む。一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、約750~約2000の平均分子量を有するポリエチレンオキシドを含む。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約20:80~約80:20(v/v)である。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約60:40(v/v)である。一実施形態において、製剤は、約10重量%未満の量のグリセロールをさらに含む。一実施形態において、製剤は、自己乳化薬物送達系である。
【0076】
特定の実施形態において、製剤は、トコフェロールポリエチレングリコールスクシナートをさらに含む。特定の実施形態において、トコフェロールポリエチレングリコールスクシナートは、製剤の総体積に基づいて約0.1~約10体積パーセントで製剤中に存在する。構造的に、トコフェロールポリエチレングリコールスクシナートは、スクシナートリンカーを介してトコフェロール(例えば、α-トコフェロール又はビタミンE)に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)を有する。PEGはポリマーであるため、様々なポリマー分子量を用いてTPGSを調製することができる。一実施形態において、TPGSは、PEGの平均分子量が1000であるトコフェロールポリエチレングリコールスクシナート1000である。1つの適切なトコフェロールポリエチレングリコールスクシナートは、Eastmanから市販されているビタミンE TPGSである。一実施形態において、トコフェロールポリエチレングリコールスクシナートは、製剤の総体積に基づいて約5体積パーセントで製剤中に存在する。一実施形態において、製剤は、約10重量%未満の量のグリセロールをさらに含む。一実施形態において、製剤は、自己乳化薬物送達系である。
【0077】
本明細書に開示される特定のボルテゾミブ製剤は、1つ以上の脂肪酸グリセロールエステル、典型的には、脂肪酸グリセロールエステルの混合物を含む。製剤において有用な脂肪酸グリセロールエステルは、市販の供給源によって提供され得る。脂肪酸グリセロールエステルの代表的な供給源は、PECEOL(登録商標)(Gattefosse,Saint Priest Cedex,France)として市販されているモノエステル、ジエステル、及びトリエステルの混合物であり、一般に「オレイン酸グリセリル」又は「モノオレイン酸グリセリル」と呼ばれる。PECEOL(登録商標)が製剤中の脂肪酸グリセロールエステルの供給源として使用される場合、脂肪酸グリセロールエステルは、約32~約52重量%の脂肪酸モノグリセリド、約30~約50重量%の脂肪酸ジグリセリド、及び約5~約20重量%の脂肪酸トリグリセリドを含む。脂肪酸グリセロールエステルは、約60重量%を超えるオレイン酸(C18:1)モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドを含む。他の脂肪酸グリセロールエステルとしては、パルミチン酸(C16)(約12%未満)、ステアリン酸(C18)(約6%未満)、リノール酸(C18:2)(約35%未満)、リノレン酸(C18:3)(約2%未満)、アラキジン酸(C20)(約2%未満)、及びエイコセン酸(C20:1)(約2%未満)のエステルが挙げられる。PECEOL(登録商標)はまた、遊離グリセロール(典型的には約1%)を含み得る。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルは、約44重量%の脂肪酸モノグリセリド、約45重量%の脂肪酸ジグリセリド、及び約9重量%の脂肪酸トリグリセリドを含み、脂肪酸グリセロールエステルは、約78重量%のオレイン酸(C18:1)モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドを含む。他の脂肪酸グリセロールエステルとしては、パルミチン酸(C16)(約4%)、ステアリン酸(C18)(約2%)、リノール酸(C18:2)(約12%)、リノレン酸(C18:3)(1%未満)、アラキジン酸(C20)(1%未満)、及びエイコセン酸(C20:1)(1%未満)のエステルが挙げられる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステル」という用語は、エステル結合を介して脂肪酸に共有結合したポリエチレンオキシド基(すなわち、ポリエチレングリコール基)を含む脂肪酸エステルを指す。ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとしては、ポリエチレングリコールのモノ脂肪酸エステル及びジ脂肪酸エステルが挙げられる。好適なポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、8~22個の炭素原子を有する飽和及び不飽和脂肪酸を含む脂肪酸に由来する(すなわち、C8~C22脂肪酸のポリエチレンオキシドエステル)。特定の実施形態において、好適なポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、12~18個の炭素原子を有する飽和及び不飽和脂肪酸を含む脂肪酸に由来する(すなわち、C12~C18脂肪酸のポリエチレンオキシドエステル)。代表的なポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとしては、飽和C8~C22脂肪酸エステルが挙げられる。特定の実施形態において、好適なポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとしては、飽和C12~C18脂肪酸が挙げられる。ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルのポリエチレンオキシド基の分子量は、製剤中の治療薬剤(例えば、1つ以上のプロテアソーム阻害剤)の溶解度を最適化するように変化させることができる。ポリエチレンオキシド基の代表的な平均分子量は、約350~約2000であり得る。一実施形態において、ポリエチレンオキシド基の平均分子量は約1500である。この実施形態において、1つ以上のプロテアソーム阻害剤製剤は、1つ以上のポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステル、典型的には、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルの混合物(ポリエチレングリコールのモノ脂肪酸エステル及びジ脂肪酸エステル)を含む。製剤において有用なポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、市販の供給源によって提供され得る。代表的なポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステル(モノエステルとジエステルの混合物)は、GELUCIRE(登録商標)(Gattefosse,Saint Priest Cedex,France)の名称で市販されている。
【0079】
好適なポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、GELUCIRE(登録商標)44/14、GELUCIRE(登録商標)50/13、及びGELUCIRE(登録商標)53/10によって提供され得る。これらの名称中の数字は、それぞれ、これらの材料の融点及び親水性/親油性バランス(HLB)を指す。GELUCIRE(登録商標)44/14、GELUCIRE(登録商標)50/13、及びGELUCIRE(登録商標)53/10は、(a)グリセロールのモノエステル、ジエステル、及びトリエステル(グリセリド)と、(b)ポリエチレングリコールのモノエステル及びジエステル(マクロゴール)との混合物である。GELUCIRE(登録商標)は、遊離ポリエチレングリコール(例えば、PEG 1500)も含み得る。ラウリン酸(C12)は、GELUCIRE(登録商標)44/14中のグリセリド及びポリエチレングリコールエステルの主要な脂肪酸成分である。GELUCIRE(登録商標)44/14は、ジラウリン酸グリセリル(グリセロールとのラウリン酸ジエステル)及びジラウリン酸PEG(ポリエチレングリコールとのラウリン酸ジエステル)の混合物と呼ばれ、PEG-32ラウリン酸グリセリル(Gattefosse)、ラウロイルマクロゴール-32グリセリドEP、又はラウロイルポリオキシルグリセリドUSP/NFとして一般に知られている。GELUCIRE(登録商標)44/14は、水素化パーム核油とポリエチレングリコール(平均分子量1500)との反応によって製造される。GELUCIRE(登録商標)44/14は、約20%のモノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド、約72%のポリエチレングリコール1500のモノ脂肪酸エステル及びジ脂肪酸エステル、並びに約8%のポリエチレングリコール1500を含む。GELUCIRE(登録商標)44/14は、ラウリン酸(C12)エステル(30~50%)、ミリスチン酸(C14)エステル(5~25%)、パルミチン酸(C16)エステル(4~25%)、ステアリン酸(C18)エステル(5~35%)、カプリル酸(C8)エステル(15%未満)、及びカプリン酸(C10)エステル(12%未満)を含む。GELUCIRE(登録商標)44/14はまた、遊離グリセロール(典型的には約1%未満)を含み得る。代表的な製剤において、GELUCIRE(登録商標)44/14は、ラウリン酸(C12)エステル(約47%)、ミリスチン酸(C14)エステル(約18%)、パルミチン酸(C16)エステル(約10%)、ステアリン酸(C18)エステル(約11%)、カプリル酸(C8)エステル(約8%)、及びカプリン酸(C10)エステル(約12%)を含む。
【0080】
パルミチン酸(C16)(40~50%)及びステアリン酸(C18)(48~58%)は、GELUCIRE(登録商標)50/13中のグリセリド及びポリエチレングリコールエステルの主要な脂肪酸成分である。GELUCIRE(登録商標)50/13は、PEG-32グリセリルパルミトステアレート(Gattefosse)、ステアロイルマクロゴールグリセリドEP、又はステアロイルポリオキシルグリセリドUSP/NF)として知られている。GELUCIRE(登録商標)50/13は、パルミチン酸(C16)エステル(40~50%)、ステアリン酸(C18)エステル(48~58%)(約90%を超えるステアリン酸及びパルミチン酸エステル)、ラウリン酸(C12)エステル(5%未満)、ミリスチン酸(C14)エステル(5%未満)、カプリル酸(C8)エステル(3%未満)、及びカプリン酸(C10)エステル(3%未満)を含む。GELUCIRE(登録商標)50/13はまた、遊離グリセロール(典型的には約1%未満)を含み得る。代表的な製剤において、GELUCIRE(登録商標)50/13は、パルミチン酸(C16)エステル(約43%)、ステアリン酸(C18)エステル(約54%)(ステアリン酸及びパルミチン酸エステル約97%)、ラウリン酸(C12)エステル(1%未満)、ミリスチン酸(C14)エステル(約1%)、カプリル酸(C8)エステル(1%未満)、及びカプリン酸(C10)エステル(1%未満)を含む。ステアリン酸(C18)は、GELUCIRE(登録商標)53/10中のグリセリド及びポリエチレングリコールエステルの主要な脂肪酸成分である。GELUCIRE(登録商標)53/10は、PEG-32グリセリルステアレート(Gattefosse)として知られている。一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルは、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、又はステアリン酸エステル(すなわち、ポリエチレングリコールのモノラウリン酸エステル及びジラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールのモノパルミチン酸エステル及びジパルミチン酸エステル、ポリエチレングリコールのモノステアリン酸エステル及びジステアリン酸エステル)である。これらのエステルの混合物も使用することができる。
【0081】
ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルを含む実施形態について、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約20:80~約80:20(v/v)である。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約30:70(v/v)である。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約40:60(v/v)である。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約50:50(v/v)である。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約60:40(v/v)である。一実施形態において、脂肪酸グリセロールエステルとポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステルとの比は、約70:30(v/v)である。
【0082】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレンオキシド含有リン脂質」という用語は、典型的にはカルバメート又はエステル結合を介してリン脂質に共有結合したポリエチレンオキシド基(すなわち、ポリエチレングリコール基)を含むリン脂質を指す。リン脂質はグリセロールに由来し、リン酸エステル基及び2つの脂肪酸エステル基を含み得る。好適な脂肪酸としては、8~22個の炭素原子を有する飽和及び不飽和脂肪酸(すなわち、C8~C22脂肪酸)が挙げられる。特定の実施形態において、好適な脂肪酸としては、飽和C12~C18脂肪酸が挙げられる。代表的なポリエチレンオキシド含有リン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩のC8~C22飽和脂肪酸エステルが挙げられる。特定の実施形態において、好適な脂肪酸としては、飽和C12~C18脂肪酸が挙げられる。ポリエチレンオキシド含有リン脂質のポリエチレンオキシド基の分子量は、製剤中の治療薬剤(例えば、1つ以上のプロテアソーム阻害剤)の溶解度を最適化するように変化させることができる。ポリエチレンオキシド基の代表的な平均分子量は、約200~約5000(例えば、PEG200~PEG5000)であり得る。
【0083】
一実施形態において、ポリエチレンオキシド含有リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩である。代表的なジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩としては、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール350(DSPE-PEG-350)塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール550(DSPE-PEG-550)塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール750(DSPE-PEG-750)塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール1000(DSPE-PEG-1000)塩、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール1500(DSPE-PEG-1500)塩、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール2000(DSPE-PEG-2000)塩が挙げられる。混合物も使用することができる。上述のジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩について、その数(例えば、350、550、750、1000、及び2000)は、ポリエチレンオキシド基の平均分子量を示す。本明細書で使用されるこれらの塩の略語は、上の括弧内に提供される。適切なジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩としては、アンモニウム塩及びナトリウム塩が挙げられる。
【0084】
ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール2000(DSPE-PEG-2000)アンモニウム塩の化学構造は、ポリエチレンオキシド含有リン脂質から構成され、リン酸エステル基及び2つの脂肪酸エステル(ステアレート)基、並びにカルバメート結合を介してホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に共有結合したポリエチレンオキシド基を含む。
【0085】
ポリエチレンオキシド含有リン脂質は、治療薬剤を可溶化する製剤の能力に影響を及ぼす。一般に、ポリエチレンオキシド含有リン脂質の量が多いほど、難溶性治療薬剤に対する製剤の可溶化能が大きくなる。ポリエチレンオキシド含有リン脂質は、製剤の体積に基づいて約1mM~約30mMの量で製剤中に存在し得る。特定の実施形態において、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩は、製剤の体積に基づいて1mM~約30mMの量で製剤中に存在する。一実施形態において、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール塩は、製剤の体積に基づいて約15mMで製剤中に存在する。
【0086】
特定の実施形態において、1つ以上のプロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブを含む固体剤形(例えば、固体又は半固体剤形)で対象に提供される。特定の実施形態において、固体剤形は、本明細書に開示される経口製剤を含む。いくつかの実施形態において、固体剤形は、固体担体上にコーティングされるボルテゾミブ及び少なくとも1つの親油性成分を含む。他の実施形態において、固体剤形中のボルテゾミブの%(w/w)は、少なくとも1つの親油性成分の%(w/w)よりも大きい。さらなる実施形態において、ボルテゾミブの%(w/w)は、固体剤形の総重量の約20%~約30%の範囲である。いくつかの実施形態において、ボルテゾミブは、約50mg~約200mgの範囲の量で固体剤形中に存在する。他の実施形態において、ボルテゾミブは、約100mgの量で存在する。さらに他の実施形態において、ボルテゾミブは、約150mgの量で存在する。特定の実施形態において、製剤は、硬質シェルカプセル中に存在する。特定の実施形態において、ボルテゾミブ製剤は、経口的に提供される。特定の実施形態において、表4~10に示されるもののいずれかの固体剤形。
【0087】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの親油性成分は、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステル、脂肪酸グリセロールエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、固体用量製剤は、ボルテゾミブ、ポリエチレンオキシド含有脂肪酸エステル、及び脂肪酸グリセロールエステルを含む。
【0088】
本開示の固体剤形は、治療薬剤(例えば、1つ以上のプロテアソーム阻害剤)と賦形剤(例えば、当該技術分野で公知であり、本明細書に記載される充填剤、流動促進剤、滑沢剤など)との造粒、治療薬剤と賦形剤との押出成形、治療薬剤と賦形剤との直接圧縮による錠剤の形成などを含む任意の好適な方法によって調製することができる。特定の実施形態では、本開示の固体剤形は、活性薬剤(例えば、ボルテゾミブ)を固体担体上にコーティングすることによって調製することができる。固体担体は、その上に薬物含有組成物をコーティングすることができ、ヒトの消費に適した任意の材料であり得る。任意の従来のコーティングプロセスを使用することができる。例えば、治療薬剤、例えばボルテゾミブは、任意選択的な結合剤、あるいは本明細書に記載される親油性成分のうちの1つ以上と共に、好適な溶媒(例えば、エタノール)中に溶解又は懸濁され、当該技術分野で公知の方法、例えば、流動床コーティング又はパンコーティング法によって固体担体上に堆積され得る。溶媒は、例えば、乾燥によって、又はコーティングプロセス中(例えば、流動床コーティング中)に系中で、及び/又はその後の乾燥において除去することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、固体担体は、不活性ビーズ又は不活性粒子であり得る。他の実施形態において、固体担体、非パレイルシード、酸性緩衝液結晶、アルカリ性緩衝液結晶、又はカプセル化緩衝液結晶。いくつかの実施形態において、固体担体は、糖球、セルロース球、ラクトース球、ラクトース-微結晶セルロース(MCC)球、マンニトール-MCC球、又は二酸化ケイ素球であってもよい。他の実施形態において、固体担体は、糖類、糖アルコール、又はそれらの組み合わせであってもよい。好適な糖類としては、ラクトース、スクロース、マルトース、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な糖アルコールとしては、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、アラビトール、リビトール、ズルシトール、イジトール、イソマルト、ラクチトール、エリスリトール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。複数の実施形態において、固体担体は、上述のいずれかを充填剤と組み合わせることによって形成されてもよい。固体担体を形成するために使用され得る適切な充填剤の例としては、ラクトース、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、マンニトール-微結晶性セルロース及び二酸化ケイ素が挙げられる。他の実施形態において、本明細書に開示される剤形は、固体担体を含まない。他の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される固体剤形を含むカプセルを提供する。ボルテゾミブ経口投与製剤は、表4~8のいずれかに記載の製剤を使用して調製することができる。
【0090】
【表4】

項目a~hは、内相成分であり、項目iは、外相成分である。
【0091】
【表5】

項目a~gは、内相成分であり、項目hは、外相成分である。
【0092】
【表6】

項目a~gは、内相成分であり、項目hは、外相成分である。
【0093】
【表7】

項目a~hは、内相成分であり、項目iは、外相成分である。
【0094】
【表8】

項目a~gは、内相成分であり、項目hは、外相成分である。
【0095】
インビトロ細胞試験
いくつかの異なる化合物を、ウイルス株:ヒト非小細胞肺がん細胞株(Calu-3)における2019新型コロナウイルス、アイソレートUSA-WA1/2020(SARS-CoV-2)を使用したインビトロ試験において、有効性について試験した。結果は、以下の表9の通りである。
【0096】
ヒト非小細胞肺がん細胞株(Calu-3細胞)において、有効性を並行して試験した。各試験化合物を個々に試験した。技術者は、試験されている薬物の同定を知らされなかった。各濃度を有効性について三重に評価した。
【0097】
アッセイの前日に、Calu-3肺細胞を96ウェルプレート中で培養した。細胞は、試験の開始時に90%を超える集密度を示した。各試験化合物濃度を三重に評価した。
【0098】
被験物質濃度を、以下の2つの異なる条件で試験した。
1)ウイルス接種の24±4時間前の前処理、続いてウイルス接種材料の除去直後の処理、又は
2)ウイルス接種材料を除去した直後に被験物質のみによる処理。ウイルス接種材料を除去した直後にレムデシビルを添加した。前処理及び処理のために、ウェルを0.2mLのDMEM2(被験物質を含む2%ウシ胎児血清(FBS)を含むDulbecco’s Modified Eagle Media(DMEM)で覆った。
【0099】
24±4時間の前処理後、細胞に0.001のTCID50/細胞のMOIでSARS-CoV-2を接種し、60~90分間インキュベートした。60~90分間のインキュベーションの直後に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を洗浄し、適切なウェルを0.2mLのDMEM2(被験物質又は対照物質とともに2%FBSを含むDMEM)で覆い、加湿チャンバー中、37℃±2℃、5±2%COでインキュベートした。接種の48±6時間後、細胞を固定し、免疫染色アッセイによってウイルスの存在について評価した。
【0100】
免疫染色アッセイは、インキュベーション時間を48時間に変更した。ここで、細胞の24±4時間の前処理が、選択された被験物質について含まれる。
【0101】
免疫染色アッセイ:約48±6時間後、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、抗SARS-2核タンパク質モノクローナル抗体(Sino Biological)、続いてペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(SeraCare)を使用して染色した。TMB基質溶液を使用してウェルを展開し、酸性化によって反応を停止させた。ELISAプレートをELISAプレートリーダーにより分光光度計で450nmで読み取った。
【0102】
各ウェルについて、ウイルスの阻害を、以下の式:阻害パーセント=100-[(被験物質希釈液のA450-細胞対照のA450)/(ウイルス対照のA450-細胞対照のA450)]×100により、ウイルス対照に対する吸光度値の減少のパーセンテージとして計算した。EC50を、ウイルス対照の吸光度値の50%低減(50%A450低減)を引き起こした希釈度の逆数として定義した。
【0103】
ボルテゾミブは、TCID50力価の有意な低下を示し、50%有効濃度(EC50)は7.8nMであった。
【0104】
【表9】

有意なウイルス活性
【0105】
第2の試験シリーズ
有効性を、アフリカミドリザル腎臓(Vero E6)細胞において並行して試験した。各試験化合物を個々に試験した。技術者は、試験されている薬物の同定を知らされなかった。各濃度を有効性について三重に評価した。Vero E6細胞を、アッセイの前日に96ウェルプレート中で培養した。細胞は、試験の開始時に90%を超える集密度であった。各被験物質濃度を三重に評価した。
【0106】
被験物質濃度を2つの異なる条件で試験した:1)ウイルス接種の24±4時間前の前処理、続いてウイルス接種材料の除去直後の処理、又は2)ウイルス接種材料の除去直後に被験物質のみを添加した処理。ウイルス接種材料の除去直後にレムデシビルを添加した。前処理及び処理のために、ウェルを0.2mLのDMEM2(様々な濃度の試験化合物を含む2%ウシ胎児血清(FBS)を含むDulbecco’s Modified Eagle Media(DMEM)で覆った。24±4時間の前処理後、細胞に0.001のTCID50/細胞のMOIでSARS-CoV-2を接種し、60~90分間インキュベートした。
【0107】
60~90分間のインキュベーションの直後に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を洗浄し、適切なウェルを0.2mLのDMEM2(被験物質又は対照物質とともに2%FBSを含むDMEM)で覆い、加湿チャンバー中、37℃±2℃、5±2%CO2でインキュベートした。接種の48±6時間後、細胞を固定し、免疫染色アッセイによってウイルスの存在について評価した。利用した免疫染色アッセイは、インキュベーション時間を48時間に変更した。選択された被験物質について、細胞の24±4時間の前処理が含まれていた。
【0108】
【表10】

**活性は、条虫(3.10-9~3.10-5M)及び全身性真菌感染症(1000~2000nM)を治療するために使用される濃度に基づく。
【0109】
表10の上述の結果は、第1の試験シリーズで得られた結果を確認し、異なる株のCOVID-19で試験が行われたので、COVID-19の強力な阻害剤としてのボルテゾミブの汎用性を確認するものである。上述の結果はまた、この試験において、ボルテゾミブが、図1及び2においても証明されるように、EC50に関してレムデシビル(Remdesevir)よりも明らかに優れていたことを示す。
【0110】
図3及び図4は、SARS-CoV-2ウイルスに曝露され、レムデシビル(図3)又はカルフィルゾミブ(図4)で処理されたCalu-3細胞において、上述の方法を用いて決定されたIC50値及びEC50値を示す。何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、図4に示されるデータは、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象における重度の疾患のリスク、症状及び発症の一部又は実質的に全てを改善及び/又は阻害するための療法としてのカルフィルゾミブの使用を裏付けるものである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】