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特表2024-5050636-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d3)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態
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  • 特表-6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d3)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態 図1
  • 特表-6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d3)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態 図2
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  • 特表-6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d3)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d3)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20240126BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/501
A61P1/04
A61P13/12
A61P17/06
A61P17/00
A61P19/02
A61P29/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545957
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022014261
(87)【国際公開番号】W WO2022165141
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,769
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】ロッソ,ビクター ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC41
4C063DD28
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC60
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA02
4C086NA02
4C086NA03
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC20
(57)【要約】
6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態Eが開示される。形態Eはニートの結晶形態である。形態Eの特徴データが開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態E。
【請求項2】
以下の(i)~(iv):
(i)以下の値:
a=10.41±0.10Å
b=12.65±0.10Å
c=15.70±0.10Å
α=90.0°
β=103.5±1.0°
γ=90.0°
空間群:P2/n
単位格子あたりの分子数(Z):4
に実質的に等しい単位格子パラメータ、
ここで、化合物(I)の形態Eの単位格子パラメータは、約100Kの温度で測定される;
(ii)9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2から選択される2つ以上の2θ値(度)を含む、粉末X線回折パターン(CuKα)、ここで、前記PXRDパターンは、室温で測定される;
(iii)実質的に図1に示される、観測された粉末X線回折パターン、ここで、前記PXRDパターンは、室温で測定される;または
(iv)約249℃~約253℃の範囲内でピークの最大値を有する吸熱
の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2から選択される3つ以上の2θ値(度)を含む粉末X線回折(PXRD)パターン(CuKα)によって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態であって、ここで、前記結晶形態のPXRDパターンが、室温で測定される、結晶形態。
【請求項4】
9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα)によって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態であって、ここで、前記結晶形態のPXRDパターンが、室温で測定される、結晶形態。
【請求項5】
(i)室温で測定され、9.0±0.2および11.3±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα);および(ii)約249℃~約253℃の範囲内でピークの最大値を有する吸熱によって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項6】
(i)室温で測定され、9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα);および(ii)約249℃~約253℃の範囲内でピークの最大値を有する吸熱によって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項7】
(i)室温で測定され、9.0±0.2および11.3±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα);および(ii)実質的に図2に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項8】
(i)室温で測定され、9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα);および(ii)実質的に図2に示される示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項9】
約5%から約95%への相対湿度の上昇にさらされたときの質量増加が約0.1%未満であることによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項10】
約30℃から約150℃へ加熱したときの約0.1%未満の質量損失を含む熱重量分析プロットによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項11】
前記形態Eが、実質的に純粋な形態である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項12】
実質的に図1に示される、観測された粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項13】
6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドを含む組成物であって、前記6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの少なくとも90重量%が、結晶形態Eである、組成物。
【請求項14】
前記6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの少なくとも95重量%が、結晶形態Eである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
結晶性の6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドを含む組成物であって、前記結晶性の6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの少なくとも95重量%が、結晶形態Eである、組成物。
【請求項16】
6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドを含む組成物であって、前記6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドが、本質的に結晶形態Eからなる、組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の結晶形態および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態Eおよび薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物であって、前記結晶形態Eが、室温で測定されたときに、9.0±0.2および11.3±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα)によって特徴付けられる、医薬組成物。
【請求項19】
非晶質化合物(I)の調製方法における、請求項1~12のいずれか1項に記載の結晶形態Eの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの結晶形態に関する。本発明は、概して前記結晶形態を含む医薬組成物、ならびにかかる結晶形態を得るための方法にもまた関する。
【背景技術】
【0002】
化合物、6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドは、式(I):
【化1】
の構造を有し、本明細書において「化合物(I)」と呼ばれる。化合物(I)は、本譲受人に譲渡される米国特許第RE47,929E号に開示される。米国特許第RE47,929E号は、化合物(I)を利用する治療方法もまた開示する。化合物(I)は、デュークラバシチニブとしても知られる。
【0003】
化合物(I)は、乾癬、乾癬性関節炎、狼瘡、ループス腎炎、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患、クローン病、および強直性脊椎炎などの、自己免疫疾患および自己炎症性疾患の治療のために、現在臨床試験が行われているTyk2阻害剤である。
【0004】
医薬品使用が意図される化学的化合物の合成において、合成プロセスの完了時、および化合物を医薬製剤中で提供するためのさらなる処理の前に、化合物を単離および精製することが必要である。単離および精製のステップは、組み合わされてもよく、あるいは別々の連続するステップでもよく、反応混合物の他の成分から化合物を単離する間に、および/または単離した化合物サンプルから不純物を取り除くための精製の間に、理想的には収率の低下を最小限に抑えて、化合物を精製された固体として提供する。
【0005】
単離および/または精製ステップから再現性よく生成され得る、かかる化合物の固体形態を提供するのが望ましい。
【0006】
さらに、温度および湿度の異なる条件を含む保管時に物理的および化学的に安定な固体形態で化合物を単離するのが望ましい。保存時に損失がほとんどなく、吸湿が低い固体形態で化合物を提供することもまた有利である。
【0007】
さらなる処理に適している固体形態、例えば他の固体形態(例えば非晶質形態または他の結晶形態など)に変換され得る結晶形態で化合物を提供することもまた望ましい。
【0008】
本明細書に記載されるように、化合物(I)の結晶形態は、驚くべきことに、保存条件の範囲において物理的および化学的に安定な固体形態で化合物(I)を提供する。この結晶形態は、驚くべきことに、さらなる処理に適してもおり、他の固体形態に変換され得る。さらに、該結晶形態は、溶媒/溶液中で十分な溶解度を有し、他の固体形態の調製を可能にする。本発明は、これらのおよびその他の重要な態様に関する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、化合物(I)の結晶形態Eを提供する。本明細書において特定の形態を特徴付けるために用いられる名称(例えば「形態E」)は、類似または同一の物理的および化学的特徴を有するあらゆるその他の物質に関して限定的であると考えられるべきではなく、この名称は、本明細書においても提示される特徴情報に従って解釈されるべきである、単なる識別子であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、化合物(I)の結晶形態Eの観測された粉末X線回折パターン(CuKα、室温)を示す。
図2図2は、化合物(I)の結晶形態Eの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
図3図3は、化合物(I)の形態Eの熱重量分析(TGA)サーモグラムを示す。
図4図4は、25℃で測定された化合物(I)の形態Eの水分収着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読めば、当業者によってさらに容易に理解されることがある。明確性のために、別々の実施形態の文脈で上および下に記載される本発明のいくつかの特徴は、組み合わされて単一の実施形態を形成することもあるということが理解されるべきである。逆に、簡潔性のために、単一の実施態様の文脈において記載される本発明の様々な特徴は、組み合わされてそれらのサブコンビネーションを形成することもある。
【0012】
本明細書において特定の形態を特徴付けるために用いられる名称(例えば「形態E」など)は、本明細書(または本明細書で引用される参考文献)に提示される特徴情報に従って解釈されるべきである、単なる識別子であり、類似または同一の物理的および化学的特徴を有するあらゆるその他の物質を排除するように限定されるべきではない。
【0013】
本明細書に記載の定義は、参照により本明細書に援用される、あらゆる特許、特許出願、および/または特許出願公報に記載される定義よりも優先される。
【0014】
単語「約」が先行する成分の量、重量パーセント、温度などを表す全ての数字は、記載された数字と実質的に同じ結果を達成するために、記載された数値が上下にわずかに変動してもいいように、近似値としてのみ理解されるべきである。したがって、特段の記載がない限り、用語「約」によって先行される数値パラメータは、得ようとする目的の性質に応じて変化することがある近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限することを意図するものではないが、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。
【0015】
全ての測定値は実験誤差の影響下にあり、本発明の趣旨と一致する。
【0016】
本明細書で用いられる「多形」は、同じ化学構造を有するが、結晶を形成する分子および/またはイオンの空間配置が異なる結晶形態を指す。
【0017】
本明細書で用いられる「非晶質」は、結晶性ではない分子および/またはイオンの固体形態を指す。非晶質固体は、鋭い極大を有する明確なX線回折パターンを示さない。
【0018】
本明細書で用いられる「実質的に純粋な」は、化合物の結晶形態に関して用いられる場合、サンプルまたは試料の重量に基づいて、90、91、92、93、94、95、96、97、98、および99重量%以上など、およびまた約100重量%と同等などの、90重量%以上の純度で結晶形態を有することを意味する。残りの物質は、化合物の他の形態、および/または反応不純物、および/またはその調製から生じる処理不純物を含む。例えば、化合物(I)の結晶形態は、現時点で当技術分野において既知であり、一般に受け入れられている方法によって測定され、90重量%以上の純度を有するという点で実質的に純粋であるとみなされる場合があり、ここで、物質の残りの10重量%未満は、化合物(I)の非晶質および/または他の形態、および/または反応不純物および/または処理不純物を含む。
【0019】
本明細書において、特定のピークの群から選択される複数のピークを「含む」粉末X線回折(PXRD)パターンは、特定のピークの群に含まれないさらなるピークを有するPXRDパターンを含むことが意図される。例えば、a、b、c、d、e、f、g、およびhから選択される、4つ以上、好ましくは5つ以上の2θ値を含むPXRDパターンは、(a)a、b、c、d、e、f、g、およびhから選択される、4つ以上、好ましくは5つ以上の2θ値;および(b)a、b、c、d、e、f、g、およびhのピークのいずれでもない、0個以上のピークを有するPXRDパターンを含むことが意図される。
【0020】
反応不純物および/または処理不純物の存在は、例えば、クロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法、質量分析法、および/または赤外分光法などの、当技術分野において既知の分析技術によって決定される場合がある。
【0021】
本明細書で用いられる単位格子パラメータ「単位格子あたりの分子数」は、単位格子における化合物(I)の分子の数を指す。
【0022】
化合物(I)の形態は、WO2018/183656(形態A)、WO2019/232138(形態B)、およびWO2020/251911(形態CおよびD)に記載されている。本発明は、概して化合物(I)の形態Eに関する。
【0023】
化合物(I)の形態E
いくつかの実施形態において、化合物(I)は、形態Eを含む結晶性物質として提供される。化合物(I)の結晶形態Eは、ニート(neat)の結晶形態である。
【0024】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、以下:
セル寸法:
a=10.41±0.10Å
b=12.65±0.10Å
c=15.70±0.10Å
α=90.0°
β=103.5±1.0°
γ=90.0°
空間群:P2/n
単位格子あたりの分子数(Z):4
単位格子体積=2011±20Å
密度(計算値)=1.406g/cm
にほぼ等しい単位格子パラメータによって特徴付けられ、
ここで、化合物(I)の形態Eの単位格子パラメータは、約100Kの温度で測定される。
【表1】
【0025】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2から選択される2つ以上の2θ値(度)を含む、粉末X線回折(PXRD)パターン(CuKα)によって特徴付けられ、ここで、前記形態EのPXRDパターンは、室温で測定される。
【0026】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、9.0±0.2および11.3±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα)によって特徴付けられ、ここで、前記形態EのPXRDパターンは、室温で測定される。
【0027】
さらなる実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα)によって特徴付けられ、ここで、前記形態EのPXRDパターンは、室温で測定される。
【0028】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、(i)9.0±0.2および11.3±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα)(ここで、前記形態EのPXRDパターンは、室温で測定される);および(ii)およそ249℃~253℃の範囲内でピークの最大値を有する吸熱によって特徴付けられる。さらなる実施形態において、吸熱ピークの最大値は、約251℃である。場合によっては吸熱イベントが検出されない場合があることが理解されるべきである。
【0029】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、(i)9.0±0.2、11.3±0.2、15.2±0.2、および21.1±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα)(ここで、前記形態EのPXRDパターンは、室温で測定される);および(ii)およそ249℃~253℃の範囲内でピークの最大値を有する吸熱によって特徴付けられる。さらなる実施形態において、吸熱ピークの最大値は、約251℃である。
【0030】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、実質的に図1に示される、観測された粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0031】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、およそ249℃~253℃の範囲にある吸熱ピークの最大値によって特徴付けられる。さらなる実施形態において、吸熱ピークの最大値は、約251℃である。
【0032】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、図2に示されるサーモグラムと実質的に一致する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0033】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、(i)室温で測定され、9.0±0.2および11.3±0.2で2θ値(度)を含む粉末X線回折パターン(CuKα);および(ii)図2に示されるサーモグラムと実質的に一致する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0034】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、約150℃の温度に加熱されたときに0.1%未満の重量減少を有する熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる。特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、約175℃の温度に加熱されたときに0.1%未満の重量減少を有する熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる。さらなる実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、約200℃で0.5%未満の重量減少を示す熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる。
【0035】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、実質的に図3に示される熱重量分析(TGA)サーモグラムを示す。
【0036】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態Eは、実質的に図4に示される水分収着等温線を示す。
【0037】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の形態Eは、実質的に純粋である。例えば、化合物(I)の形態Eは、90重量%以上、95重量%以上、または99重量%以上の純度でサンプル中に存在する場合があるが、残りの物質は、化合物のその他の形態および/または反応不純物および/または処理不純物を含む。
【0038】
特定の実施形態において、化合物(I)の結晶形態は、本質的に形態Eからなる。かかる実施形態について、結晶性化合物(I)は、化合物(I)の重量に基づいて、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、およびより好ましくは少なくとも約99重量%の結晶形態Eを含む場合がある。
【0039】
特定の実施形態は、6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドを含む組成物であって、ここで、前記6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d)ピリダジン-3-カルボキサミドの少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、およびより好ましくは少なくとも99重量%が、結晶形態Eである、組成物もまた提供する。
【0040】
さらなる実施形態において、化合物(I)の形態E、および少なくとも一つの薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0041】
特定の実施形態において、医薬組成物は、実質的に純粋な化合物(I)の形態E、および少なくとも一つの薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む。
【0042】
特定の実施形態において、化合物(I)の形態Eは、少なくとも一つの薬学的に許容される担体および/または希釈剤と組み合わされて、少なくとも一つの医薬組成物を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、化合物(I)の形態Eおよび化合物(I)のその他の固体形態を含む。かかるその他の固体形態は、例えば、その他の結晶形態(例えば、形態A)および/または非晶質化合物(I)であり得る。
【0044】
結晶形態は、例えば、適当な溶媒からの結晶化または再結晶化、昇華、融液からの成長、別の相からの固体相変態、超臨界流体からの結晶化、およびジェットスプレーなどの、様々な方法によって調製されることがある。溶媒混合物からの結晶形態の結晶化または再結晶化の技術には、例えば、溶媒の蒸発、溶媒混合物の温度の低下、分子および/または塩の過飽和溶媒混合物への種結晶添加(crystal seeding)、溶媒混合物の凍結乾燥、および溶媒混合物への貧溶媒(antisolvents)(逆溶媒(countersolvents))の添加が挙げられる。多形を含む結晶形態を調製するために、ハイスループット結晶化技術が用いられる場合がある。
【0045】
多形などの薬物の結晶、調製方法、および薬物結晶の特徴は、Solid-State Chemistry of Drugs, S.R. Byrn, R.R. Pfeiffer, and J.G. Stowell, 2nd Edition, SSCI, West Lafayette, Indiana (1999)に記載される。
【0046】
溶媒を使用する結晶化技術の場合、溶媒の選択は一般に、化合物の溶解度、結晶化技術、および溶媒の蒸気圧などの1つ以上の因子によって異なる。溶媒は組み合わせて利用される場合があり、例えば、化合物を第一溶媒中に可溶化して溶液を得、次いで貧溶媒を添加し、溶液中の化合物の溶解度を減少させて、結晶を形成させる場合がある。貧溶媒は、化合物の溶解度が低い溶媒である。
【0047】
結晶を調製する方法の1つにおいて、化合物は適当な溶媒中で懸濁および/または撹拌されてスラリーが得られ、これを加熱して溶解を促進する場合がある。本明細書において用いられる用語「スラリー」は化合物の飽和溶液を意味し、これはまた、所定の温度において化合物および溶媒の不均一な混合物を得るために、さらなる量の化合物を含んでもよい。
【0048】
種結晶は、結晶化を促進するために任意の結晶化混合物に加えられる場合がある。シーディング(seeding)は、特定の多形の成長を制御するため、または結晶性生成物の粒子径分布を制御するために利用される場合がある。したがって、例えば、“Programmed Cooling of Batch Crystallizers”, J.W. Mullin and J. Nyvlt, Chemical Engineering Science, 1971, 26, 369-377に記載されているように、必要なシードの量の計算は、利用可能なシードの大きさと、平均的な生成物粒子の望ましい大きさとに依存する。一般に、バッチ内の結晶の成長を効果的に制御するためには、小さなサイズのシードが必要である。小さなサイズのシードは、大きな結晶のふるい分け、粉砕、または微粒化によって、または溶液の微結晶化によって作成される場合がある。結晶の粉砕または微粒化は、目的とする結晶形態からのいかなる結晶性の変化(すなわち、非晶質または別の多形への変化)も生じさせないように注意する必要がある。
【0049】
冷却した結晶混合物は真空濾過される場合があり、単離した固体は適当な溶媒、例えば、冷たい再結晶溶媒などで洗浄され、窒素パージ下で乾燥されて、目的の結晶形態が得られる場合がある。単離した固体は、固体核磁気共鳴、示差走査熱量測定、X線粉末回折、または同類のものなどの、一つ以上の適当な分光技術または分析技術によって分析され、生成物の好ましい結晶形態の形成が評価される場合がある。得られた結晶形態は一般に、結晶化の手順において最初に用いられる化合物の重量に基づいて、約70重量%以上の単離収率、好ましくは90重量%以上の単離収率の量で生成される。必要に応じて、生成物を共粉砕するか、あるいはメッシュスクリーンに通して生成物を塊砕してもよい。
【0050】
結晶形態は、化合物(I)を調製する最終プロセスの反応媒体から直接調製してもよい。かかる調製は、例えば、最終プロセスのステップで、化合物(I)を結晶化させうる溶媒または溶媒の混合物を用いることによって達成される場合がある。あるいは、結晶形態は、蒸留または溶媒添加技術によって得られる場合がある。この目的に適した溶媒には、例えば、前記の非極性溶媒および極性溶媒、例えば、アルコールなどのプロトン性極性溶媒、およびケトンなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0051】
サンプル中の2以上の多形の存在は、粉末X線回折(PXRD)または固体核磁気共鳴分光法(ssNMR)などの技術によって決定される場合がある。例えば、実験的に測定されたPXRDパターンと、シミュレートされたPXRDパターンとの比較において、余分なピークが存在することは、サンプル中に2以上の多形が存在することを示す場合がある。シミュレートされたPXRDは、単結晶X線データから計算される場合がある。Smith, D.K.,“A FORTRAN Program for Calculating X-Ray Powder Diffraction Patterns”, Lawrence Radiation Laboratory, Livermore, California, UCRL-7196 (April 1963)を参照されたい。
【0052】
化合物(I)の形態Eは、その操作が当業者に周知である様々な技術を用いて特徴付けられる場合がある。形態Eは、固定された分析温度における単結晶の単位格子測定に基づく、単結晶X線回折を用いて特徴付けられ、区別される場合がある。単位格子の詳細な説明は、Stout & Jensen, X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968), Chapter 3に提供され、参照によって本明細書に援用される。あるいは、結晶格子内の空間的関係における独特な原子配置は、観察される分率原子座標に従って特徴付けられる場合がある。結晶構造を特徴付ける別の方法は粉末X線回折分析によるものであり、ここで、回折プロファイルが純粋な粉末物質を表すシミュレートされたプロファイルと比較され、両方が同じ分析温度において実行され、対象形態の測定値が一連の(例えば、2、3、4またはそれ以上の)2θ値として特徴付けられる。
【0053】
形態を特徴付ける他の方法が使用される場合がある。かかる方法には、固体核磁気共鳴(ssNMR)、示差走査熱量測定(DSC)、サーモグラフィー、および結晶形態または非晶質形態の肉眼的検査が挙げられる。これらのパラメータの2つ以上が、対象形態を特徴付けるために組み合わせて用いられる場合もまたある。
【0054】
有用性
化合物(I)の結晶形態Eは、合成プロセスの完了時に化合物(I)を他の成分から単離するため;および/または1つもしくは一連の結晶化ステップによって化合物(I)を精製するために使用され得る。単離および精製ステップは組み合わされるか、または別々の処理ステップとして実施され得る。結晶形態Eは、化合物(I)のその他の固体形態(例えば、WO2018/183656に記載されている形態Aなど)および/または非晶質化合物(I)を作成するためにもまた、使用され得る。特定の実施形態において、非晶質化合物(I)を調製する方法は、結晶形態Eを調製することを含み、ここで結晶形態Eは、本明細書に記載されるように特徴付けられる。さらなる実施形態において、かかる非晶質化合物(I)は、次に、臨床で用いるための剤形(例えば、非晶質化合物(I)の固体分散体を含む剤形)を作成するために使用される。
【0055】
化合物(I)の結晶形態Eは、単独で、または化合物(I)のその他の形態と組み合わせて使用される、および/または一つ以上の添加剤またはその他の有効活性成分とともに製剤化されて、医薬組成物が作成される場合がある。
【実施例
【0056】
本発明は、本発明の好ましい実施態様である以下の実施例によってさらに記述される。特に言及されていない限り、全ての温度はセルシウス度(℃)である。これらの実施例は、限定的ではなく例示的なものであり、本発明の趣旨および範囲内であるその他の実施態様が存在する場合があるということが理解されるべきである。
【0057】
参照を容易にするために、以下の略語が本明細書において用いられうる。
【表2】
【0058】
実施例1:化合物(I)の結晶形態Eの調製
およそ33mgの化合物(I)を1mLバイアル中、90℃の0.16mLのNMP中に溶解させた。バイアルを100℃の反応器ブロック中に置き、0.8mLの1,4 ジオキサンを添加した。バイアルを終夜、80℃で継続的に攪拌した。次にバイアルを環境温度に冷まし、続いて2日間にわたって攪拌した。PXRDのために単離されたサンプルは、形態Eのパターンを示した。
【0059】
実施例2:化合物(I)の結晶形態Eの調製
200mgの化合物(I)を0.8mLのNMP中に入れ、続いて90℃に設定したブロック中で加熱して溶解させた。室温に冷却した後、3mLの1,4 ジオキサンを添加した。前の実験(実施例1)のスラリーの残余物を用いてシーディングを行った。さらに4mLのジオキサンを添加し、混合物を終夜、環境温度で攪拌すると、結晶が形成された。結晶を濾過によって単離し、(NMP/ジオキサンを脱水させるために)過剰量のMTBEで洗浄し、終夜、環境温度で、25インチの真空下で乾燥させた。乾燥粉末は、形態EのPXRDパターンを示した。
【0060】
実施例3:化合物(I)の結晶形態Eの調製
透明な溶液が得られるまで、75℃で約20~30分間、36gの1-BuOH:水 80:20wt%中に化合物(I)(約2g)を溶解させた。予熱したフラスコで溶液を熱時濾過し、次にフラスコの蓋を閉じ、冷凍庫の中に終夜置いたところ、全ての液相を消費した白色沈殿が得られた(濃厚懸濁液)。懸濁液を約4か月間、冷凍庫の中で保管した。次に濃厚懸濁液を真空濾過のために濾紙の上に移した。得られた湿潤ケークを10mLのアセトン:水 70:30wt%で2回洗浄した。次におよそ5.78gの湿潤固体を21mLのアセトン:水 70:30wt%中に懸濁した。得られた懸濁液を温度サイクル:3サイクル(5-45-5℃);2サイクル(5-35-5℃);1サイクル(10-35-10℃)にさらし、最後に10℃で6時間保持した。懸濁液の固体を真空濾過によって単離し、5mLのアセトン:水 70:30wt%で2回洗浄した。固体を84% RHに1日間曝した。ごく一部をPXRDによって分析したところ、固体は形態Eと一致していた。その後、サンプルを約42℃で1日間真空乾燥させ、再分析した。固体は再び形態Eと一致していた。
【0061】
6-(シクロプロパンカルボキサミド)-4-((2-メトキシ-3-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル)アミノ)-N-(メチル-d )ピリダジン-3-カルボキサミドの合成
ステップ1:化合物2の調製
【化2】
トルエン(0.26kg)、スルホラン(3.4kg)、化合物1(1.0kg)およびPOCl(2.7kg)をグラスライニング反応器に入れた。粗製物を0℃に冷却した。トリエチルアミン(0.89kg)を入れ、得られた粗製混合物を65℃に加熱し、反応が完了するまで熟成させた。反応塊を5℃に冷却した。
【0062】
別の反応器に水(7.5kg)を入れ、5℃に冷却した。反応塊を水溶液にゆっくりと添加し、内部温度を5℃未満で維持した。反応器をすすぎ、移しやすくするために、さらに水を使用した(0.5kg)。得られた混合物を5℃で3時間攪拌し、次にMTBEで3回抽出した(3x4.5kg)。合わせた有機層をpH7の緩衝水溶液(5.0L/kg、15wt% KHPO/KHPO)および水(2.5kg)で連続的に洗浄した。総体積がおよそ3L/kgになるまで粗製物を真空蒸留した。ACN(2x6.3kg)を添加し、続いて約3L/kgになるまでさらに蒸留した。粗製物を20℃に冷却し、30~36wt%の溶液として、収率90~95%で化合物2を得た。
【0063】
ステップ2:化合物3の調製
【化3】
ACN(2.7kg)、臭化リチウム(1.18kg)および水(0.65kg)をグラスライニング反応器に25℃で入れた。上記で調製された化合物2の粗製溶液(限定試薬)、続いてDIPEA(1.82kg)を添加した。反応が完了するまで得られたスラリーを25℃で攪拌した。生成物を濾過によって単離した。粗固体をACN(1.6kg)で洗浄した。ケークを45℃で真空乾燥させた。化合物3を98APおよび83%収率で単離した。
【0064】
ステップ3:化合物8の調製
【化4】
水(6.0kg、6.0L/kg)および化合物7(1.0kg)をグラスライニング反応器に25℃で入れた。無水酢酸亜鉛(1.08kg、1.0equiv)、続いて化合物3(1.28kg、1.20equiv)を添加した。反応器ライン(reactor line)を2-プロパノール(0.79kg、1.0L/kg)および水(1.50kg、1.50L/kg)ですすいだ。得られた均一溶液を65℃に加熱し、反応が完了するまで熟成させた。水(7.0kg、7.0L/kg)を添加し、粗製混合物を20℃に冷却し、30分間熟成させた。生成物を濾過によって単離した。粗固体を水(6.0kg、6.0L/kg)、水(6.0kg、6.0L/kg)、THF(5.3kg、6.0L/kg)およびTHF(5.3kg、6.0L/kg)で連続的に洗浄した。ケークを70℃で真空乾燥させた。化合物8を98APおよび94%収率で単離した。
【0065】
ステップ4:化合物9の調製
【化5】
別のグラスライニング反応器を窒素でフラッシュした。トルエン(0.87kg、1.0L/kg)およびMeCN(0.79kg、1.0L/kg)、続いて(2R)-1-[(1R)-1-[ビス(1,1-ジメチルエチル)ホスフィノ]エチル]-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセン(Josiphos SL-009-01)(14.1g、1.0mol%)および酢酸パラジウム(2.9g、0.5mol%)を入れた。反応器ラインをトルエン(0.43kg、0.5L/kg)ですすいだ。さらに使用するまで、得られた前もって作られた触媒溶液を窒素下で保持した。
【0066】
20℃で、トルエン(3.46Kg、4.0L/kg)およびACN(1.57kg、2.0L/kg)を窒素でフラッシュしたグラスライニング反応器に入れた。化合物8(1.00kg)、続いてDBU(0.39kg、1.00equiv)を添加した。反応器ラインをトルエン(0.43kg、0.5L/kg)ですすいだ。化合物10(0.54kg、2.5equiv)およびKCO(325メッシュグレード、0.70kg、2.0equiv)を反応混合物に添加し、続いてトルエン(1.30kg、1.5L/kg)およびACN(0.79kg、1.0L/kg)を添加した。前もって作られた触媒溶液を反応混合物の中に移し、次にこれを75℃に加熱し、反応が完了するまで攪拌した。
【0067】
反応粗製物を20℃に冷却した。酢酸水溶液(50体積%、4.0kg、4.0L/kg)を1時間かけてゆっくりと入れた。次に氷酢酸(10.5kg、10.0L/kg)を添加した。得られた均一溶液をヘプタン(2×3.42kg、2×5.0L/kg)で2回洗浄した。最も下の水層を回収し、きれいな反応器に移した。水(5.0kg、5.0L/kg)、続いて化合物9のシード(0.01kg、1.0wt%)を添加した。スラリーを2時間、20℃で熟成させた。さらに水(2.0kg、2.0L/kg)を添加し、スラリーを6時間さらに熟成させた。生成物を濾過によって単離した。粗ケークをACN水溶液(50体積%、4.5kg、5.0L/kg)で、続いてACN(3.9kg、5.0L/kg)で洗浄した。ケークを65℃で真空乾燥させた。化合物9を98.5APおよび84%収率で単離した。
【0068】
ステップ5:化合物(I)の調製
【化6】
NMP(2.06kg、2.0L/kg)およびACN(0.78kg、1.0L/kg)をグラスライニング反応器に入れ、20℃で攪拌した。N-メチルイミダゾール(0.13kg、0.7equiv.)、化合物13(0.17kg、1.2equiv.)および化合物9(1.00kg)を反応混合物に入れた。混合物を65℃に加熱し、均一になるまで熟成させた。次にHOBt 20%wet(0.17kg、0.5eq)、続いてEDC HCl(0.54kg、1.4eq)を反応混合物に入れた。反応器をACN(0.78kg、1.0L/kg)ですすぎ、次に、得られた混合物を反応が完了するまで65℃で熟成させた。反応物を荷電水(1.0kg、1L/kg)でクエンチし、次にACN(3.0kg、3L/kg)で希釈した。反応混合物を65℃で1時間熟成させた後、0℃に冷却し、さらに12時間、0℃で熟成させた。生成物を濾過によって単離した。湿潤ケークを2:1 水:ACN(2.8kg、3L/kg)で、次にACN(2.4kg、3L/kg)で洗浄した後、完全真空下、65℃で乾燥させた。化合物(I)を>99.5%純度および91%収率で単離した。
【0069】
NMP(6.2kg、6.0L/kg)および化合物(I)(1.0kg)をグラスライニング反応器に入れた。バッチを70℃に加熱すると淡黄色溶液が形成され、次にこれをポリッシュフィルター(polish filter)に通して、70℃できれいな容器に移した。2-プロパノール(2.4kg、3L/kg)、続いて化合物Iのシード(0.005kg、0.005kg/kg)を添加した。1時間熟成させた後、さらに2-プロパノール(4.8kg、6L/kg)を2時間かけて入れた(3L/kg/hr)。スラリーを1時間、70℃で熟成させ、0℃にゆっくりと冷却し、さらに12時間、0℃で熟成させた。生成物を濾過によって単離した。湿潤ケークを2-プロパノール(2x3.1kg、2x4L/kg)で洗浄した後、完全真空下、65℃で乾燥させた。化合物(I)を>99.9%純度および83%収率で単離した。
【0070】
化合物7の調製
ステップ1:N-メチル-N-ホルミルヒドラジンの調製
【化7】
グラスライニング反応器にメタノール(1.6kg/kg、2.0L/kg)およびメチルヒドラジン(1kg)を0℃で入れた。ギ酸メチル(0.57kg/kg、1.1equiv)を滴下した。粗製物を20℃に温め、さらに6時間熟成させた。総体積がおよそ0.5L/kgになるまで粗製物を真空蒸留した。共沸乾燥のために、2-MeTHF(5x3.6kg/kg)とともに5回蒸留を行った(five put/take distillations)。粗製物を20℃に冷却した。N-メチル-N-ホルミルヒドラジンを89~90wt%の溶液として、89~91%収率で単離した。
【0071】
ステップ2:化合物5の調製
【化8】
グラスライニング反応器に、カリウム tert-ブトキシド(1.5kg/kg、2.4equiv)およびTHF(12.2kg/kg)を0℃で入れた。化合物4(1.0kg)、N-メチル-N-ホルミルヒドラジン(1.0kg/kg、2.30equiv)およびTHF(5.3kg/kg、6.0L/kg)の混合物をゆっくりと添加した。反応器ラインをTHF(0.5kg/kg)ですすいだ。反応粗製物を反応が完了するまで0℃で熟成させた。水(5.0kg/kg)を添加し、得られた混合物を0℃で30分間熟成させ、40℃に加熱し、さらに30分間熟成させた。分液操作を行い、水層を捨てた。有機層をブライン(15wt%、5.7kg/kg)で洗浄した後、総体積がおよそ5L/kgになるまで真空蒸留した。共沸乾燥のために、酢酸エチル(4x10L/kg)とともに4回蒸留を行った。粗製物を20℃に冷却した。硫酸(0.66kg/kg、1.10equiv.)を添加し、スラリーを2~3時間攪拌した。生成物を濾過によって単離した。ケークを酢酸エチル(2×6.5L/kg)およびヘプタン(8L/kg)で連続的に洗浄し、45℃で真空乾燥させた。化合物5を99APおよび83%収率で単離した。
【0072】
ステップ3:化合物6の調製
【化9】
グラスライニング反応器に、濃硫酸(4.5kg/kg)および化合物5(1.0kg)を0~5℃で入れた。硝酸(68wt%、0.35kg/kg、1.2equiv)を滴下した。反応が完了するまで混合物を0~5℃で攪拌した。
【0073】
別の反応器において、水(12kg/kg)およびメタノール(6.5kg/kg、8.3L/kg)を20℃で十分に混合した。ニトロ化粗製物をメタノール・水混合物にゆっくりと移した。反応器ラインをメタノール(0.5kg/kg)ですすいだ。粗製物を40~45℃に加熱した。水酸化アンモニウム水溶液(25wt%、7.4kg/kg)をゆっくりと添加した。得られたスラリーを20℃に冷却し、3時間攪拌した。生成物を濾過によって単離した。ケークを水(2x6L/kg)で洗浄し、45℃で真空乾燥させた。化合物6を99APおよび95%収率で単離した。
【0074】
ステップ4:化合物7の調製
【化10】
窒素でフラッシュした高圧反応器にメタノール(8.0kg/kg)および化合物6(1.0kg)を入れた。酸素を注意深く排除しながら、重炭酸ナトリウム(0.6kg/kg、2.0equiv.)およびPd/C(10%loading、50%wet、0.02kg/kg)を添加した。反応器を水素(41~46psi)で加圧し、反応混合物を20℃で6時間熟成させ、次に45℃に加熱し、反応が完了するまで熟成させた。反応器を窒素でフラッシュし、反応粗製物を濾過してPd/Cを除去した。移しやすくするためにメタノール(5kg/kg)を用いた。総体積がおよそ2.5L/kgになるまで、合わせた濾液を真空蒸留した。水(10kg/kg)を添加し、総体積がおよそ2.5L/kgになるまで、粗製物を真空蒸留した。粗製物を70℃に加熱した。ブライン(25wt%、9.0kg/kg)を添加し、得られた粗製物を6時間、70℃で攪拌した。0℃に冷却した後、粗製物をさらに6時間熟成させた。生成物を濾過によって単離した。ケークをブライン(予め0℃に冷却、25wt%、2.0kg/kg)で洗浄し、45℃で真空乾燥させた。化合物7を99APおよび88%収率で単離した。
【0075】
化合物13の調製
ステップ1:化合物11および化合物12の調製
【化11】
窒素でフラッシュしたグラスライニング反応器に、水(16.3L/kg)および水酸化ナトリウム(3.3kg、3.0equiv)を入れた。水酸化ナトリウムが完全に溶解するまで混合物を熟成させた。粗製物を0℃に冷却した。d-メタノール(1.0kg)およびTHF(4.5L/kg)を入れた。THF(6.3kg、7.1L/kg)中、TsCl(6.3kg、1.2equiv)の溶液を2時間かけて添加した。反応が完了するまで粗製物を0℃で攪拌した。バッチを20℃に温めた。分液操作を行った。回収した有機層をMTBE(4.0kg、5.4L/kg)で希釈し、ブラインで2回(25wt%、4.0kg、続いて12kg)洗浄した。総体積がおよそ10L/kgになるまで、有機層を真空蒸留した。共沸乾燥のために、ACN(2×10L/kg)とともに2回蒸留を行った。粗製物を20℃に冷却した。ACN(10.0kg、12.8L/kg)およびNaN(CHO)(3.3kg、1.2equiv.)を添加した。粗製物を65℃に加熱し、反応が完了するまで攪拌した。5℃に冷却した後、混合物を濾過し、粗ケークをACNで2回(2×2.5kg、2×3.2L/kg)洗浄した。総体積がおよそ3L/kgになるまで、合わせた濾液を真空蒸留した。粗製物を20℃に冷却した。化合物12を80~85wt%の油として、60~70%収率で単離した。
【0076】
ステップ2:化合物13の調製
【化12】
グラスライニング反応器に化合物12(1.0kg)およびメタノール(3.9kg、5.0L/kg)を20℃で入れた。IPA(5~6 Normal、4.5kg、1.5equiv)中、HClの溶液を添加した。得られた混合物を50℃に加熱し、反応が完了するまで攪拌した。THF(10kg、11.2L/kg)をゆっくりと添加し、粗製物を2時間かけて0℃に冷却し、スラリーを得た。生成物を濾過によって単離した。ケークをTHF(3.7kg、4.1L/kg)で洗浄し、45℃で真空乾燥させた。化合物13を80%収率で単離した。
【0077】
化合物13の再結晶(任意):
メタノール(5.6kg、8.3L/kg)および化合物13(1.0kg)をグラスライニング反応器に入れた。DBU(0.1kg)をゆっくりと添加した。粗製物を1時間攪拌した。THF(12.4kg、13.9L/kg)をゆっくりと添加し、得られたスラリーを2時間熟成させた。生成物を濾過によって単離した。ケークをTHF(2.6kg、2.9L/kg)で洗浄し、45℃で真空乾燥させた。化合物13を60%収率で単離した(第1の収穫物)。総体積がおよそ1L/kgになるまで、母液を真空蒸留した。メタノール(2×2.8kg、2×3.6L/kg)とともに2回蒸留を行い、約1L/kgになるまで溶液を濃縮した。粗製物を20℃に冷却した。THF(4.8kg、5.4L/kg)を添加し、得られたスラリーを2時間熟成させた。生成物を濾過によって単離した。ケークをTHF(1.0kg)で洗浄し、45℃で真空乾燥させた。化合物13を25%収率で単離した(第2の収穫物)。
【0078】
1.単結晶X線測定
単結晶X線データは、Photon III検出器および単色Cu Kα放射線のIμS微小焦点X線源を備えた、Bruker D8 Venture回折装置を用いて収集した。データ収集中、単結晶は100Kであった。
【0079】
測定された強度データのインデックス化および処理は、APEX3プログラムスイート(Bruker AXS, Inc., 5465 East Cheryl Parkway, Madison, WI 53711 USA)で実行された。
【0080】
最終的な単位格子パラメータは、フルデータセットを用いて決定された。構造は、直接法によって解析され、SHELXTLソフトウェアパッケージを用いた完全行列最小二乗法によって精密化された(G. M. Sheldrick, SHELXTL v6.14, Bruker AXS, Madison, WI USA.)。構造の精密化は、Σw(|F|-|F|)で定義される関数の最小化を含み、ここで、wは観測強度の誤差に基づく適切な重み付け係数であり、Fは測定された反射に基づく構造因子であり、Fは計算された反射に基づく構造因子である。精密化された結晶構造モデルおよび実験X線回折データとの一致は、残差因子R=Σ||F|-|F||/Σ|F|およびwR=[Σw(|F|-|F|)/Σw|F|]1/2を用いて評価される。差フーリエ図は、精密化の全ての段階で検討された。全ての非水素原子は、異方性熱変位パラメータを用いて精密化された。炭素原子上の水素および重水素原子は、異方性温度因子とともに理想的な配置を用いて導入され、固定パラメータを用いる構造因子算出に含まれた。ヘテロ原子上の水素原子は、残差電子密度から配置され、等方性変位パラメータを用いて自由に精密化された。
【0081】
2.粉末X線回折
XRDデータは、XYZ Stageを有するBruker D8 Discover DaVinciを用いて収集された。IμS X線発生装置は、Cuターゲットを用いて50kVおよび1mAで操作した(CuKα放射線)。入射ビーム光学系には、0.3mmコリメータ付きのMontelミラーが含まれた。Eiger2 R 500K Detectorを2D、2θ最適化モードで用いて光子を計数した。サンプルと検出器の距離は、140mmに設定した。入射ビームを0℃、検出器を17.5°として、透過、スナップショットモードで100秒間サンプルを実行した。
【0082】
3.示差走査熱量測定
示差走査熱量測定(DSC)実験は、TA Instrument-model Q2000を用いて実行された。サンプル(約1~10mg)をアルミパンに秤量し、重量を100分の1ミリグラムまで正確に記録した後、サンプルをDSCに移した。機器を50mL/分の窒素ガスでパージした。室温と300℃の間で、10℃/分の加熱速度でデータを収集した。DSCプロットは、吸熱ピークが下向きになるように作成された。
【0083】
4.熱重量分析
熱重量分析(TGA)実験は、TA Instrument-model Q5000を用いて実行された。予めタールを塗った(tarred)白金パンの中にサンプル(約10~30mg)を置いた。機器によって、サンプルの重量を1000分の1ミリグラムまで正確に測定し、記録した。炉を25mL/分の窒素ガスでパージした。室温から300℃の間で、10℃/分の加熱速度でデータを収集した。
【0084】
5.水分収着等温線
水分収着等温線は、およそ10mgのサンプルを用いて、TA Instrument VTI-SA+ Vapor Sorption Analyzerで収集された。0.005wt%/分の損失速度が10分間得られるまで、サンプルを60℃で乾燥させた。25℃および4または5、15、25、35、45、50、65、75、85、および95% RH(相対湿度)でサンプルを試験した。各RHにおける平衡は、0.01wt%/分の速度が35分間達成されたとき、または最大値の600分に達したときに達成された。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】