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特表2024-505068ハイブリッドオーディオビーム形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ハイブリッドオーディオビーム形成システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240126BHJP
【FI】
H04R3/00 320
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545980
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 US2022014061
(87)【国際公開番号】W WO2022165007
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/142,711
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504189151
【氏名又は名称】シュアー アクイジッション ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHURE ACQUISITION HOLDINGS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ティアン ウェンシュン
(72)【発明者】
【氏名】ギブス ジョン ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】レスター マイケル ライアン
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム マシュー ティー
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BA06
5D220BC05
(57)【要約】
より狭いビームおよび改善された指向性を有する、ハイブリッドオーディオビーム形成システムおよび方法が提供される。ハイブリッドオーディオビーム形成システムは、時間領域ビーム形成技法を用いた、オーディオ信号の上位周波数帯信号を処理するための時間領域ビーム形成器と、周波数領域ビーム形成技法を用いた、オーディオ信号の下位周波数帯信号のグループを処理するための周波数領域ビーム形成器とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム形成システムであって、
複数のオーディオ信号から得られる第1の周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成するように構成された第1のビーム形成器であって、前記第1のビーム形成器は、第1のビーム形成技法を用いて、前記第1の周波数帯信号を処理するように構成される、第1のビーム形成器と、
前記複数のオーディオ信号から得られる第2の周波数帯信号に基づいて、第2のビーム形成された信号を生成するように構成された第2のビーム形成器であって、前記第2のビーム形成器は、第2のビーム形成技法を用いて、前記第2の周波数帯信号を処理するように構成される、第2のビーム形成器と、
前記第1および第2のビーム形成器と通信する出力生成ユニットであって、前記第1のビーム形成された信号と前記第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成するように構成される、出力生成ユニットと
を備えるビーム形成システム。
【請求項2】
前記第1のビーム形成技法は、時間領域ビーム形成技法を含み、前記第2のビーム形成技法は、周波数領域ビーム形成技法を含む、請求項1に記載のビーム形成システム。
【請求項3】
前記第2の周波数帯信号は、第1のグループと第2のグループとを備え、
前記第2のビーム形成技法は、第1の周波数領域ビーム形成技法と、第2の周波数領域ビーム形成技法とを含み、
前記第2のビーム形成器は、前記第1の周波数領域ビーム形成技法を用いて、前記第1のグループを処理することと、前記第2の周波数領域ビーム形成技法を用いて、前記第2のグループを処理することとを行うようにさらに構成される、
請求項1に記載のビーム形成システム。
【請求項4】
前記第1および第2の周波数領域ビーム形成技法は、周波数領域変換のブロックサイズ以下のフレームサイズを用いた、加重重複加算(WOLA)方法論に基づく、請求項3に記載のビーム形成システム。
【請求項5】
前記フレームサイズは設定可能である、請求項4に記載のビーム形成システム。
【請求項6】
前記第1および第2の周波数領域ビーム形成技法によって生成された信号に基づいて、前記第2のビーム形成された信号を生成するように構成された補間器をさらに備える、請求項3に記載のビーム形成システム。
【請求項7】
前記補間器は、前記第1および第2の周波数領域ビーム形成技法によって生成された前記信号を、フィルタリングされた信号にフィルタリングするように構成されたローパスフィルタを備え、前記補間器は、前記フィルタリングされた信号を、前記第2のビーム形成された信号に変換するようにさらに構成される、請求項6に記載のビーム形成システム。
【請求項8】
前記第1のビーム形成技法は、時間領域で行われる、整相加算ビーム形成技法を含み、
前記第2の周波数帯信号は、第1のグループと第2のグループとを備え、
前記第2のビーム形成器は、周波数領域で行われる超指向性ビーム形成技法を用いて、前記第1のグループを処理することと、周波数領域での整相加算ビーム形成技法を用いて、前記第2のグループを処理することとを、行うようにさらに構成される、
請求項1に記載のビーム形成システム。
【請求項9】
前記超指向性ビーム形成技法は、周波数領域で行われる最小分散無歪応答(MVDR)ビーム形成技法を含む、請求項8に記載のビーム形成システム。
【請求項10】
前記第1の周波数帯信号は、上位周波数帯信号を備え、
前記第2の周波数帯信号は、下位周波数帯信号を備え、
前記下位周波数帯信号の前記第1のグループは、前記下位周波数帯信号の下位周波数成分を備え、
前記下位周波数帯信号の前記第2のグループは、前記下位周波数帯信号の上位周波数成分を備える、
請求項8に記載のビーム形成システム。
【請求項11】
前記第1の周波数帯信号は、上位周波数帯信号を備え、前記第2の周波数帯信号は、下位周波数帯信号を備える、請求項1に記載のビーム形成システム。
【請求項12】
前記複数のオーディオ信号を、前記第2の周波数帯信号に変換するように構成された、デシメータをさらに備える、請求項1に記載のビーム形成システム。
【請求項13】
前記デシメータは、前記複数のオーディオ信号を、フィルタリングされたオーディオ信号にフィルタリングするように構成されたローパスフィルタを備え、前記デシメータは、前記フィルタリングされたオーディオ信号を、前記第2の周波数帯信号に変換するようにさらに構成される、請求項12に記載のビーム形成システム。
【請求項14】
方法であって、
複数のオーディオ信号を受信することと、
第1のビーム形成技法を用いて、複数のオーディオ信号から得られる第1の周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成することと、
第2のビーム形成技法を用いて、前記複数のオーディオ信号から得られる第2の周波数帯信号に基づいて、第2のビーム形成された信号を生成することと、
前記第1のビーム形成された信号と前記第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成することと
を含む方法。
【請求項15】
前記第1のビーム形成技法は、時間領域ビーム形成技法を含み、前記第2のビーム形成技法は、周波数領域ビーム形成技法を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の周波数帯信号は、第1のグループと第2のグループとを備え、
前記第2のビーム形成技法は、第1の周波数領域ビーム形成技法と、第2の周波数領域ビーム形成技法とを含み、
前記第2のビーム形成された信号を生成することは、前記第1の周波数領域ビーム形成技法を用いて、前記第1のグループを処理することと、前記第2の周波数領域ビーム形成技法を用いて、前記第2のグループを処理することとを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1および第2の周波数領域ビーム形成技法は、周波数領域変換のブロックサイズ以下のフレームサイズを用いた、加重重複加算(WOLA)方法論に基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フレームサイズは設定可能である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のビーム形成された信号を生成することは、前記第2のビーム形成された信号を生成するために、前記第1および第2の周波数領域ビーム形成技法によって生成された信号を、補間することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記信号を補間することは、
前記第1および第2の周波数領域ビーム形成技法によって生成された前記信号を、フィルタリングされた信号にローパスフィルタリングすることと、
前記フィルタリングされた信号を、前記第2のビーム形成された信号に変換することと
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のビーム形成技法は、時間領域で行われる、整相加算ビーム形成技法を含み、
前記第2の周波数帯信号は、第1のグループと第2のグループとを備え、
前記第2のビーム形成された信号を生成することは、周波数領域で行われる超指向性ビーム形成技法を用いて、前記第1のグループを処理することと、周波数領域での整相加算ビーム形成技法を用いて、前記第2のグループを処理することとを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記超指向性ビーム形成技法は、周波数領域で行われる最小分散無歪応答(MVDR)ビーム形成技法を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の周波数帯信号は、上位周波数帯信号を備え、
前記第2の周波数帯信号は、下位周波数帯信号を備え、
前記下位周波数帯信号の前記第1のグループは、前記下位周波数帯信号の下位周波数成分を備え、
前記下位周波数帯信号の前記第2のグループは、前記下位周波数帯信号の上位周波数成分を備える、
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の周波数帯信号は、上位周波数帯信号を備え、前記第2の周波数帯信号は、下位周波数帯信号を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記複数のオーディオ信号を、前記第2の周波数帯信号に間引くことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記複数のオーディオ信号を間引くことは、
前記複数のオーディオ信号を、フィルタリングされたオーディオ信号にローパスフィルタリングすることと、
前記フィルタリングされたオーディオ信号を、前記第2の周波数帯信号に変換することと
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アレイマイクロフォンであって、
それぞれが複数のオーディオ信号の1つを生成するように構成された、複数のマイクロフォン要素と、
前記複数のオーディオ信号に基づいて、ビーム形成された出力信号を生成するように構成されたビーム形成器であって、前記ビーム形成器は、それぞれが異なるビーム形成技法を用いてそれぞれの周波数帯信号を処理するように構成された、複数のビーム形成器を備え、前記周波数帯信号は、複数のオーディオ信号から得られる、ビーム形成器と
を備えるアレイマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に完全に組み込まれている、2021年1月28日に出願した米国特許仮出願第63/142,711号の優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、概してオーディオビーム形成システムに関する。具体的には、本出願は、オーディオ信号の上位周波数帯信号を処理するための時間領域ビーム形成器、およびオーディオ信号の下位周波数帯信号を処理するための周波数領域ビーム形成器の使用を通じた、より狭いビームおよび改善された指向性を有するハイブリッドオーディオビーム形成システムに関する。
【背景技術】
【0003】
会議室、役員室、ビデオ会議用途など、会議環境は、このような環境での様々なオーディオ源からの音を捕捉するために、マイクロフォンの使用が関わり得る。このようなオーディオ源は、例えば話している人を含み得る。捕捉された音は、増幅されたスピーカ(音響強化のための)を通して環境内の近くの聴衆に、および/または環境から遠隔の他者に(テレビ放送および/またはウェブ放送を通してなど)広められ得る。マイクロフォンのタイプ、および特定の環境内のそれらの配置は、オーディオ源の位置、物理的空間要件、美的感覚、部屋のレイアウト、および/または他の考慮すべき事項に依存し得る。例えば、いくつかの環境では、マイクロフォンは、オーディオ源の近くのテーブルまたは講演台に置かれ得る。他の環境では、マイクロフォンは、例えば、部屋全体からの音を捕捉するために、頭上に備え付けられ得る。従って、マイクロフォンは、特定の環境の必要性に適するように、多様なサイズ、フォームファクタ、備え付けオプション、および配線オプションで入手可能である。
【0004】
従来のマイクロフォンは通常、固定のポーラパターンおよびいくつかの手動で選択可能な設定を有する。会議環境で音を捕捉するために、多くの従来のマイクロフォンは、環境内のオーディオ源を直ちに捕捉するように用いられ得る。しかし、従来のマイクロフォンは、室内雑音、反響、残響、および他の有害なオーディオ要素など、望ましくないオーディオも捕捉する傾向がある。これらの望ましくない雑音を捕捉することは、多くのマイクロフォンの使用より悪化される。
【0005】
複数のマイクロフォン要素を有するアレイマイクロフォンは、操作可能な有効範囲、あるいはビームまたはローブを有する集音パターン(pick up pattern)などの恩恵をもたらすことができ、これらは、マイクロフォンが所望のオーディオ源に焦点を合わせる、および室内雑音などの望ましくない音を排除することを可能にする。オーディオ集音パターンを操作する能力は、マイクロフォン配置において、より不正確とすることができる恩恵をもたらし、このようにして、アレイマイクロフォンは、より許容的となる。さらにアレイマイクロフォンは、この場合もやはり集音パターンを操作する能力により、1つのアレイマイクロフォンまたはユニットを用いて、複数のオーディオ源を集音する能力をもたらす。
【0006】
ビーム形成は、1つまたは複数のビームまたはローブを有する、ある特定の集音パターンを達成するために、アレイマイクロフォンのマイクロフォン要素からの信号を、組み合わせるために用いられる。しかし、下位周波数での音の、より長い波長により、広帯域オーディオ信号に対して、通常のビーム形成アルゴリズム(例えば、時間領域での整相加算動作)を用いて生成されるビームの幅は、構成されるまたは所望のものより広くなり得る。さらに、ビームの方向性は、広帯域オーディオ信号に対して、通常のビーム形成アルゴリズムを用いたときは、最適なものではなくなり得る。より広いビーム幅、および最適でないビーム方向性は、結果として、不必要なオーディオの検知、アレイマイクロフォンの低下された性能、およびアレイマイクロフォンのユーザの不満を生じ得る。加えて、全周波数範囲にわたる周波数領域ビーム形成を用いることは、計算およびメモリリソースの負荷が高くなり得る。
【0007】
従って、これらの関心事に対処する、オーディオビーム形成システムに対する機会がある。より具体的には、オーディオ信号の上位周波数帯信号を処理するための時間領域ビーム形成器、およびオーディオ信号の下位周波数帯信号を処理するための周波数領域ビーム形成器の使用を通じた、より狭いビームおよび改善された指向性を有するハイブリッドオーディオビーム形成システムに対する機会がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、中でも、以下を行うように設計された、オーディオビーム形成器システムおよび方法をもたらすことによって、上記の問題を解決することを意図するものである:(1)オーディオ信号から得られる上位周波数帯信号に基づいて、および時間領域ビーム形成技法を用いて、第1のビーム形成された信号を生成するために、時間領域ビーム形成器を用意すること、(2)オーディオ信号から得られる下位周波数帯信号に基づいて、ならびに下位周波数帯信号の第1のグループに対して、第1の周波数領域ビーム形成技法を用いて、および下位周波数帯信号の第2のグループに対して、第2の周波数領域ビーム形成技法を用いて、第2のビーム形成された信号を生成するために、周波数領域ビーム形成器を用意すること、(3)時間領域ビーム形成器によって生成された、第1のビーム形成された信号と、周波数領域ビーム形成器によって生成された、第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を出力すること、(4)特に下位周波数において、ビームの改善された幅および方向性を有すること、および(5)全周波数範囲にわたる周波数領域ビーム形成の使用を回避することによって、計算およびメモリリソースの使用を低減すること。
【0009】
一実施形態では、ビーム形成システムは、複数のオーディオ信号から得られる第1の周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成するように構成された第1のビーム形成器と、複数のオーディオ信号から得られる第2の周波数帯信号に基づいて、第2のビーム形成された信号を生成するように構成された第2のビーム形成器と、第1および第2のビーム形成器と通信する、出力生成ユニットとを含む。第1のビーム形成器は、第1のビーム形成技法を用いて、第1の周波数帯信号を処理するように構成され、第2のビーム形成器は、第2のビーム形成技法を用いて、第2の周波数帯信号を処理するように構成され、および出力生成ユニットは、第1のビーム形成された信号と第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成するように構成される。
【0010】
他の実施形態では、ビーム形成システムは、複数のオーディオ信号から得られる上位周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成するように構成された第1のビーム形成器と、複数のオーディオ信号から得られる下位周波数帯信号に基づいて、第2のビーム形成された信号を生成するように構成された第2のビーム形成器と、第1および第2のビーム形成器と通信する、出力生成ユニットとを含む。第1のビーム形成器は、時間領域ビーム形成技法を用いて、上位周波数帯信号を処理するように構成され、第2のビーム形成器は、第1の周波数領域ビーム形成技法を用いて、下位周波数帯信号の第1のグループを、および第2の周波数領域ビーム形成技法を用いて、下位周波数帯信号の第2のグループを、処理するように構成される。出力生成ユニットは、第1のビーム形成された信号と第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成するように構成される。
【0011】
他の実施形態では、方法は、複数のオーディオ信号を受信することと、時間領域ビーム形成技法を用いて、複数のオーディオ信号から得られる上位周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成することと、時間領域ビーム形成技法を用いて、複数のオーディオ信号から得られる上位周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成することと、第1のビーム形成された信号と第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成することとを含む。
【0012】
他の実施形態では、ビーム形成システムは、複数のオーディオ信号から得られる第1の周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成するように構成された第1のビーム形成器と、複数のオーディオ信号から得られる第2の周波数帯信号に基づいて、第2のビーム形成された信号を生成するように構成された第2のビーム形成器と、第1および第2のビーム形成器と通信する、出力生成ユニットとを含む。第1のビーム形成器は、時間領域ビーム形成技法を用いて、第1の周波数帯信号を処理するように構成され、第2のビーム形成器は、第1の周波数領域ビーム形成技法を用いて、第2の周波数帯信号の第1のグループを、および第2の周波数領域ビーム形成技法を用いて、第2の周波数帯信号の第2のグループを、処理するように構成される。出力生成ユニットは、第1のビーム形成された信号と第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成するように構成される。
【0013】
これらおよび他の実施形態、ならびに様々な置換形態および態様は、本発明の原理が使用され得る様々な方法を示す例示的実施形態を説明する、以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになり、およびより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】いくつかの実施形態による、アレイマイクロフォンを用いた使用のための、ハイブリッドオーディオビーム形成システムのブロック図である。
図2】いくつかの実施形態による、図1のハイブリッドオーディオビーム形成システムを用いた、複数のマイクロフォンのオーディオ信号のビーム形成のための動作を示すフローチャートである。
図3】いくつかの実施形態による、複数のマイクロフォンのオーディオ信号から得られる上位周波数帯信号のビーム形成のための、および時間領域ビーム形成器を用いた動作を示すフローチャートである。
図4】いくつかの実施形態による、複数のマイクロフォンのオーディオ信号から得られる下位周波数帯信号のビーム形成のための、および周波数領域ビーム形成器を用いた動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、その原理による本発明の1つまたは複数の特定の実施形態を述べ、示し、および例示する。この説明は、本発明を、本明細書で述べられる実施形態に限定するためではなく、当業者がこれらの原理を理解し、その理解によって、本明細書で述べられる実施形態だけでなく、これらの原理に従って思い付き得る他の実施形態にもそれらを応用することができることを可能にするように、本発明の原理を説明し、教示するためにもたらされる。本発明の範囲は、逐語的に、または均等論のもとに、添付の「特許請求の範囲」の範囲を包含し得るすべてのこのような実施形態を包括するものである。
【0016】
説明および図面において、類似のまたはほぼ同様な要素は、同じ参照番号でラベル付けされ得ることが留意されるべきである。しかし、ときにはこれらの要素は、異なる番号で、例えば、そのようなラベル付けがより明瞭な説明を容易にする場合などにおいて、ラベル付けされ得る。さらに、本明細書に記載される図面は、必ずしも原寸に比例して描かれておらず、いくつかの事例では、比率はある特定の特徴をより明瞭に示すために誇張されている場合がある。このようなラベル付けおよび図面の実践は、基礎となる実質的な目的を必ずしも示唆しない。上記で述べられたように、本明細書は全体として捉えられ、本明細書で教示され、当業者に理解されるように、本発明の原理に従って解釈されることが意図される。
【0017】
本明細書で述べられるハイブリッドオーディオビーム形成システムおよび方法は、アレイマイクロフォンが、より狭いビーム、改善されたビーム方向性、および異なる周波数範囲にわたるより良好な全体的性能を有することを、可能することができる。ハイブリッドオーディオビーム形成システムは、時間領域ビーム形成技法を用いて、上位周波数帯信号を処理するように構成された時間領域ビーム形成器と、複数の周波数領域ビーム形成技法を用いて、下位周波数帯信号のグループを処理するように構成された周波数領域ビーム形成器とを含み得る。上位周波数帯信号および下位周波数帯信号は、アレイマイクロフォンのマイクロフォン要素からのオーディオ信号などの、オーディオ信号から得られ得る。ハイブリッドオーディオビーム形成システムは、時間領域ビーム形成器からの第1のビーム形成された信号と、周波数領域ビーム形成器からの第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成し得る。
【0018】
周波数領域ビーム形成器は、離散フーリエ変換(DFT)でDFTブロックサイズより小さなホップサイズを有するものなどの、変換を用いて時間領域オーディオ信号を周波数領域に変換し得る。周波数領域ビーム形成器は、下位周波数帯信号の下位周波数成分など、下位周波数帯信号の第1のグループを処理するために、第1の周波数領域ビーム形成技法を利用し得る。周波数領域ビーム形成器はまた、下位周波数帯信号の上位周波数成分など、下位周波数帯信号の第2のグループを処理するために、第2の周波数領域ビーム形成技法を利用し得る。周波数領域ビーム形成器において、複数の周波数領域ビーム形成技法を用いることによって、周波数領域ビーム形成器は、下位周波数範囲内のオーディオに対して、改善された方向性を有する、より狭いビームを生成し得る。周波数領域ビーム形成器からのビーム形成された信号は、逆DFTなど時間領域に変換されることができ、変換された時間領域信号は、加重重複加算(WOLA)方法を用いて、さらに平滑化され得る。
【0019】
従って、時間領域ビーム形成技法を用いる時間領域ビーム形成器と、周波数領域ビーム形成技法を用いる周波数領域ビーム形成器とを組み合わせることは、結果として、アレイマイクロフォン内のマイクロフォン要素の同じセットを用いながら、異なる周波数範囲にわたって、より最適なビーム幅および方向性を生じることができる。加えて、全周波数範囲にわたる周波数領域ビーム形成を用いたときに必要な、増加される計算およびメモリリソースは、回避され得る。ビーム形成器のための、待ち時間、計算リソース、および重み係数の記憶容量は、従って、本明細書で述べられるハイブリッドオーディオビーム形成システムおよび方法の使用を通じて、最小化され得る。
【0020】
図1は、ハイブリッドオーディオビーム形成システム100のブロック図である。ハイブリッドオーディオビーム形成システム100は、アレイマイクロフォンに含まれた、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zと、ローパスフィルタ104、デシメータ106、周波数領域ビーム形成器108、補間器110、およびローパスフィルタ112を含む下位周波数帯信号経路103と、ハイパスフィルタ114、時間領域ビーム形成器116、および遅延要素118を含む上位周波数帯信号経路113と、重み決定ユニット120と、出力生成ユニット122とを含み得る。ハイブリッドオーディオビーム形成システム100に含まれる様々な構成要素は、プロセッサおよびメモリを有するコンピューティングデバイスによって、および/またはハードウェア(例えば、個別論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など)によって実行可能な、ソフトウェアを用いて実施され得る。
【0021】
マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zを含むアレイマイクロフォンは、様々な周波数でオーディオ源から音を検出することができる。アレイマイクロフォンは、例えば、会議室または役員室で利用されることができ、そこではオーディオ源は、1人または複数の話者、および/または他の望ましい音とすることができる。環境内には、換気装置からの雑音、他の人、視聴覚機器、電子デバイスなど、有害になり得る他の音が存在し得る。通常の状況では、オーディオ源は、テーブルの椅子に着席し得るが、オーディオ源の他の構成および配置が企図され、および可能である。
【0022】
アレイマイクロフォンは、話者によって話される音声など、オーディオ源からの音が検出および捕捉され得るように、テーブル、講演台、卓上などに置かれ得る。アレイマイクロフォンは、任意の数のマイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zを含むことができ、オーディオ源からの音が、より一貫して検出および捕捉されるように、ハイブリッドビーム形成オーディオシステム100を用いて、複数の集音パターンを形成することができる。マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、同心円状の輪を含む、任意の適切なレイアウトに配置されることができ、および/または調和的にネストされ得る。マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、実施形態では、概して対称になるように配置されることができ、または非対称とすることができる。他の実施形態では、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、例えば、基板上に配置される、フレーム内に置かれる、または個別に吊され得る。アレイマイクロフォンの一実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の譲受人に譲渡された米国特許第9,565,493号で述べられている。
【0023】
マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、いくつかの実施形態では、それぞれMEMS(微小電気機械システム)マイクロフォンとすることができる。他の実施形態では、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、エレクトレットコンデンサマイクロフォン、ダイナミックマイクロフォン、リボンマイクロフォン、圧電マイクロフォン、および/または他のタイプのマイクロフォンとすることができる。実施形態では、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、主に1つの方向に敏感な、単一指向性マイクロフォンとすることができる。他の実施形態では、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、カーディオイド、サブカーディオイド、または無指向性など、他の方向性またはポーラパターンを有し得る。
【0024】
アレイマイクロフォン内のマイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zのそれぞれは、音を検出し、その音をオーディオ信号に変換し得る。アナログ-デジタル変換器、プロセッサ、および/または他の構成要素など、アレイマイクロフォン内の構成要素は、オーディオ信号を処理し、最終的に1つまたは複数のデジタルオーディオ出力信号を生成し得る。デジタルオーディオ出力信号は、いくつかの実施形態では、イーサネットを介したオーディオ送信のためのダンテ規格に準拠することができ、または他の規格に準拠し得る。他の実施形態では、アレイマイクロフォン内のマイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zは、アレイマイクロフォン100の外部の他の構成要素およびデバイス(例えば、プロセッサ、ミキサ、レコーダ、増幅器など)が、アナログオーディオ信号を処理し得るように、アナログオーディオ信号を出力し得る。
【0025】
マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zが、単に通常のビーム形成器と共に用いられる場合(例えば、時間領域で動作する整相加算ビーム形成器)、特に下位周波数で、ビーム幅は所望のものより広くなり得、ビームの指向性は最適でなくなり得る。これは、これらの下位周波数での長い波長により得る。さらに、時間領域での下位周波数のビーム形成は、結果として、過度のサイドローブ、比較的高い待ち時間、および/または処理の間の、より高い計算負荷を生じる。
【0026】
しかし、ここにさらに詳しく述べられるように、下位周波数帯信号経路103(周波数領域ビーム形成器108を含む)、および上位周波数帯信号経路113(時間領域ビーム形成器116を含む)は、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zと通信し得る。具体的には、周波数領域ビーム形成器108は、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zのオーディオ信号から得られる、下位周波数帯信号を処理するために用いられ得る。下位周波数帯信号は、例えば0~12kHzとすることができる。時間領域ビーム形成器116は、マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zのオーディオ信号から得られる、上位周波数帯信号を処理するため用いられ得る。上位周波数帯信号は、例えば12~24kHzとすることができる。従って、ハイブリッドオーディオビーム形成システム100を用いることは、結果として、より狭く、および下位周波数を含んだ異なる周波数にわたる改善された方向性を有する、ビーム幅を生じ得る。
【0027】
アレイマイクロフォンでのオーディオ信号のハイブリッドビーム形成のためのプロセス200の一実施形態は、図2に示される。プロセス200は、図1に示されるハイブリッドオーディオビーム形成システム100を用いて、アレイマイクロフォンから、ビーム形成された出力信号を出力するために利用されることができ、ビーム形成された出力信号は、より狭いビームおよび改善された方向性を有する。システム100内または外部の、1つまたは複数のプロセッサおよび/または他の処理構成要素(例えば、アナログ-デジタル変換器、暗号化チップなど)は、プロセス200のステップのいずれか、いくつか、またはすべてを行い得る。1つまたは複数の他のタイプの構成要素(例えば、メモリ、入力および/または出力デバイス、送信機、受信機、バッファ、ドライバ、個別構成要素など)も、プロセス200のステップのいずれか、いくつか、またはすべてを行うように、プロセッサおよび/または他の処理構成要素に関連して利用され得る。
【0028】
ステップ202で、重み決定ユニット120は、ビームの所望の位置および幅に基づいて、周波数領域ビーム形成器108(下位周波数帯信号を処理する)、および時間領域ビーム形成器116(上位周波数帯信号を処理する)に対する、重み係数を決定し得る。いくつかの実施形態では、ビームの所望の位置および幅は、自動化された意思決定方式、例えばビームの自動焦点合わせ、配置、および/または展開を用いて、プログラムによりまたはアルゴリズムにより決定され得る。このような方式の実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、本出願の譲受人に譲渡された米国特許出願第16/826,115号および第16/887,790号で述べられている。他の実施形態では、ビームの所望の位置および幅は、ユーザによって、例えば、重み決定ユニット120と通信する電子デバイス上のユーザインターフェースを通じて、構成され得る。
【0029】
ビームの所望の位置は、例えば、直交座標(すなわち、x,y,z)、または球面座標(すなわち、半径方向距離r、極角θ(シータ)、方位角φ(ファイ))などで、アレイマイクロフォンの位置に対する特定の3次元座標として、決定または構成され得る。ビームの所望の幅は、例えば、段階(例えば、狭い、中間、広いなど)において、または視野の角度(例えば、角度、角度の変化、百分率変化など)として、決定または構成され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、ビームの様々な位置および幅に対する、重み係数のいくつかまたはすべては、予め決定され、重み決定ユニット120内の、または重み決定ユニット120と通信する、メモリに記憶され得る。他の実施形態では、ビームの様々な位置および幅に対する重み係数のいくつかまたはすべては、重み係数の記憶のために必要なメモリの量を低減するために、オンザフライで計算され得る。例えば、比較的効率的で低待ち時間のやり方で、周波数領域で動作する整相加算ビーム形成技法に対して、このような重み係数をオンザフライで計算することが可能になり得る。計算は、すべてのマイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zに対する一定の利得、および一様な漸増的位相シフト量をうまく利用することができる。
【0031】
実施形態では、ある特定のビーム形成技法(例えば、周波数領域で動作する最小分散無歪応答)に対する、ビームの様々な位置および幅に対する重み係数は、より狭いビーム幅を得るために静的ノイズ共分散(static noise covariance)を用いて、または改善された信号対雑音比のために動的ノイズ共分散を用いて生成され得る。
【0032】
マイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zからのオーディオ信号は、ステップ204で、下位周波数帯信号経路103において(実施形態では、ローパスフィルタ104において)、およびまた上位周波数帯信号経路113において(実施形態では、ハイパスフィルタ114において)受信され得る。ステップ206で、第1のビーム形成された信号は、ステップ204で受信されたマイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zからのオーディオ信号から得られる、上位周波数帯信号に基づいて、時間領域ビーム形成器116を用いて、および時間領域ビーム形成技法の使用を通じて、生成され得る。上位周波数帯信号は、中間およびより高い周波数、例えば12~24kHzを含み得る。時間領域ビーム形成器116で用いられる時間領域ビーム形成技法は、ステップ202で決定された重み係数を利用し得る。ステップ206の一実施形態は、図3に関して以下で述べられる。
【0033】
ステップ208で、第2のビーム形成された信号は、ステップ204で受信されたマイクロフォン要素102a,b,c,・・・,zからのオーディオ信号から得られる、下位周波数帯信号に基づいて、周波数領域ビーム形成器108を用いて、および下位周波数帯信号の異なるグループに対する周波数領域ビーム形成技法の使用を通じて、生成され得る。オーディオ信号は、周波数領域ビーム形成器108で利用される、下位周波数領域信号を作り出すために、時間領域から周波数領域に変換され得る。下位周波数帯信号は、上位周波数帯信号と比べて低い周波数、例えば0~12kHzを有する信号を含み得る。周波数領域ビーム形成器108で用いられる周波数領域ビーム形成技法は、ステップ202で決定された重み係数を利用し得る。ステップ208の一実施形態は、図4に関して以下で述べられる。実施形態では、ステップ206および208は、ほぼ同時に行われることができ、または異なる時点で行われ得る。
【0034】
ビーム形成された出力信号は、ステップ210で、出力生成ユニット122によって生成され得る。ビーム形成された出力信号は、それぞれ時間領域ビーム形成器116と周波数領域ビーム形成器108とによって生成された、第1のビーム形成された信号と第2のビーム形成された信号とを、組み合わせることによって生成され得る。実施形態では、第1のビーム形成された信号と第2のビーム形成された信号とは、ビーム形成された出力信号を生成するために、出力生成ユニット122によって、一緒に加算されることによって組み合わされ得る。ビーム形成された出力信号は、例えば、イーサネットを介したオーディオ送信のためのダンテ規格に準拠した信号などの、デジタル信号とすることができる。実施形態では、ビーム形成された出力信号は、ハイブリッドオーディオビーム形成システム100および/またはアレイマイクロフォンの外部の、構成要素またはデバイス(例えば、プロセッサ、ミキサ、レコーダ、増幅器など)に出力され得る。
【0035】
図3は、時間領域ビーム形成器108を含んだ上位周波数帯信号経路113を用いた、上位周波数帯信号の時間領域ビーム形成のための、プロセス206の一実施形態を示す。図3に示されるプロセス206は、図2に示されるプロセス200のステップ206に対応し得る。図3のプロセス206では、プロセス200のステップ204で受信されたオーディオ信号は、ハイパスフィルタ114によって、ステップ302でフィルタリングされ得る。ハイパスフィルタ114は、上位周波数範囲内の周波数、例えば、12~24kHzを有するオーディオ信号を、通過させるように構成され得る。実施形態では、ハイパスフィルタ114のスペクトル応答は、広帯域信号、すなわち、ビーム形成された出力信号のスペクトル応答を平坦化するために、ローパスフィルタ104(下位周波数帯信号経路103の)の、スペクトル応答に整合され得る。
【0036】
ステップ304で、ハイパスフィルタ114からの上位周波数帯信号は、時間領域ビーム形成技法を用いて、時間領域ビーム形成器116によって処理され得る。時間領域ビーム形成器116は、実施形態では、整相加算ビーム形成器技法を利用し得る。前に述べられたように、時間領域ビーム形成器116によって用いられる重み係数は、ビームの所望の位置および幅に基づいて、ステップ202で、重み決定ユニット120から受信され得る。
【0037】
ステップ306で、時間領域ビーム形成器116によって生成された信号は、出力生成ユニット122にもたらされる、第1のビーム形成された信号を生成するために、遅延要素118によって遅延され得る。前に述べられたように、出力生成ユニット122は、プロセス200のステップ210で、第1および第2のビーム形成された信号を組み合わせることができる。遅延要素118は、信号を、下位周波数帯信号経路103によって生成された第2のビーム形成された信号と整列させるために、時間領域ビーム形成器116からの信号に適切な遅延量を加え得る。これは下位周波数帯信号経路103が、それの追加の構成要素(すなわち、ローパスフィルタ104、112、デシメータ106、および補間器110)によって、および周波数領域ビーム形成器108によって、より大きな待ち時間を有することによる。従って、遅延要素118によって加えられる遅延量は、下位周波数帯信号経路103と、上位周波数帯信号経路113との間の待ち時間の差に基づき得る。
【0038】
図4は、周波数領域ビーム形成器108を含んだ、下位周波数帯信号経路103を用いた、下位周波数帯信号の周波数領域ビーム形成のためのプロセス208の一実施形態を示す。図4に示されるプロセス208は、図2に示されるプロセス200のステップ208に対応し得る。図4のプロセス208では、プロセス200のステップ204で受信されたオーディオ信号は、ステップ402でローパスフィルタ104によってフィルタリングされ得る。ローパスフィルタ104は、下位周波数範囲内の周波数、例えば、0~12kHzを有するオーディオ信号を通過させるように構成され得る。
【0039】
ローパスフィルタ104からのフィルタリングされた信号は、ステップ404で、周波数領域ビーム形成器108による処理のために、下位周波数帯信号を生成するように、デシメータ106によって処理され得る。具体的には、デシメータ106は、フィルタリングされた信号を、ステップ204で受信されたオーディオ信号のサンプリングレートと比べて、より低いサンプリングレートに、特定の係数だけダウンサンプリングし得る。フィルタリングされた信号は、計算、および周波数領域ビーム形成器108による処理の複雑さを簡単にするために、ダウンサンプリングされ得る。実施形態では、デシメータ106は、フィルタリングされた信号を、オーディオ信号の48kHzサンプリングレートから、2分の1の24kHzサンプリングレートに、ダウンサンプリングし得る。他の実施形態では、デシメータ106は、フィルタリングされた信号を、別の適切なサンプリングレートに、異なる係数でダウンサンプリングし得る。
【0040】
ステップ405で、間引かれたフィルタリングされた信号は、高速フーリエ変換、短時間フーリエ変換、離散フーリエ変換、離散コサイン変換、またはウェーブレット変換など、適切な周波数変換を用いて、時間領域から周波数領域に変換され得る。下位周波数帯信号は、過度のサイドローブによる問題、および時間領域ビーム形成技法を下位周波数帯信号に対して用いるときに生じ得る高次フィルタバンクを用いる必要性を回避するために、周波数領域ビーム形成技法を用いて処理され得る。
【0041】
ステップ406および408で、周波数領域ビーム形成器108は、異なる周波数領域ビーム形成技法を用いて、下位周波数帯信号の2つのグループを処理し得る。図4は、下位周波数帯信号が2つのグループで処理されることを示すが、実施形態では、周波数領域ビーム形成器108は、2つ以上の周波数領域ビーム形成技法を用いて、下位周波数帯信号の2つより多いグループを処理することが企図され、およびそれが可能である。
【0042】
実施形態では、周波数領域での下位周波数帯信号は、加重重複加算(WOLA)方法論を用いて変換され得る。WOLA方法論は、フレーム間の境界でのアーチファクトを低減するために、下位周波数帯信号を、特定のサイズを有する部分的に重なるフレームに分解し得る。フレームは、周波数変換を用いて、周波数ビンに変換され得る。周波数ビンは、第1のグループ(例えば、下位周波数帯信号の下位周波数成分)と、第2のグループ(例えば、下位周波数帯信号の上位周波数成分)とに分割され得る。
【0043】
実施形態では、WOLA方法論のフレームサイズは、(1)下位周波数帯信号経路103内の待ち時間と、(2)計算リソースおよびメモリ使用量との間の、トレードオフを可能にするように設定可能とすることができる。具体的には、フレームサイズが、周波数変換のブロックサイズ以下である場合、下位周波数帯信号経路103の待ち時間は、比較的高い計算リソースおよびメモリを利用しながら、低減され得る。FFT変換のブロックサイズ、およびフレームサイズは、サンプル数で表され得る。例えば、FFT変換のブロックサイズが256で、フレームサイズが256であるときの、下位周波数帯信号経路103の待ち時間は、FFTのためのデータの全ブロックを埋めるためにゼロパディング方法を用いて、フレームサイズが128または192であるとき(およびFFT変換のブロックサイズは256のままであるとき)の、下位周波数帯信号経路103の待ち時間より大きくなり得る。
【0044】
ステップ406で、下位周波数帯信号の第1のグループは、第1の周波数領域ビーム形成技法を用いて、周波数領域ビーム形成器108によって処理され得る。実施形態では、第1のグループは、下位周波数帯信号の下位周波数成分とすることができ、第1の周波数領域ビーム形成技法は、最小分散無歪応答(MVDR)ビーム形成技法などの、超指向性ビーム形成技法とすることができる。他の実施形態では、第1の周波数領域ビーム形成技法は、他の適切な超指向性ビーム形成技法とすることができる。下位周波数帯信号の下位周波数成分の周波数範囲は、開口サイズ未満に対応する周波数など、ビーム形成器が共に用いられている、マイクロフォンアレイの物理的開口サイズに依存し得る。例えば、実施形態では、下位周波数帯信号の下位周波数成分は、約0~1kHzまたは約0~2kHzの範囲内とすることができる。前に述べられたように、周波数領域ビーム形成器116において、第1の周波数領域ビーム形成技法によって用いられる重み係数は、ビームの所望の位置および幅に基づいて、ステップ202で重み決定ユニット120から受信され得る。
【0045】
ステップ408で、下位周波数帯信号の第2のグループは、第2の周波数領域ビーム形成技法を用いて、周波数領域ビーム形成器108によって処理され得る。実施形態では、第2のグループは、下位周波数帯信号の上位周波数成分とすることができ、第2の周波数領域ビーム形成技法は、整相加算ビーム形成技法とすることができる。他の実施形態では、第2の周波数領域ビーム形成技法は、他の適切なビーム形成技法とすることができる。下位周波数帯信号の上位周波数成分の周波数範囲も、開口サイズより1~2オクターブ高いものに対応する周波数など、ビーム形成器が共に用いられている、マイクロフォンアレイの物理的開口サイズに依存し得る。例えば、実施形態では、下位周波数帯信号の下位周波数成分は、約1kHzまたは2kHz以上の範囲内とすることができる。前に述べられたように周波数領域ビーム形成器116において、第2の周波数領域ビーム形成技法によって用いられる重み係数は、ビームの所望の位置および幅に基づいて、ステップ202で、重み決定ユニット120から受信され得る。実施形態では、ステップ406および408は、ほぼ同時に行われることができ、または異なる時点で行われ得る。
【0046】
ステップ409で、周波数領域ビーム形成器108によって生成された信号(第1および第2の周波数ビーム形成技法に基づく)は、逆高速フーリエ変換、逆短時間フーリエ変換、逆離散フーリエ変換、逆離散コサイン変換、または逆ウェーブレット変換など、適切な逆周波数変換を用いて、周波数領域から時間領域に変換され得る。実施形態では、周波数領域から時間領域への信号の変換は、前に述べられたようにWOLA方法論を用い得る。
【0047】
ステップ410で、変換された信号(周波数領域ビーム形成器108によって生成された信号に基づく)は、補間器110によって処理され得る。具体的には、補間器110は、周波数領域ビーム形成器108によって生成された信号を、より高いサンプリングレートに、特定の係数だけアップサンプリングし得る。実施形態では、補間器110は、2倍の48kHzサンプリングレートに、信号をアップサンプリングし得る。他の実施形態では、補間器110は、異なる係数だけ、他の適切なサンプリングレートに、信号をアップサンプリングし得る。
【0048】
ローパスフィルタ122は、ステップ412で、補間器110からのアップサンプリングされた信号をフィルタリングすることができ、出力生成ユニット122にもたらされる第2のビーム形成された信号を生成することができる。出力生成ユニット122は、前に述べられたように、プロセス200のステップ210で、第1および第2のビーム形成された信号を組み合わせることができる。ローパスフィルタ122は、下位周波数範囲内、例えば0~12kHzの周波数を有する、アップサンプリングされた信号の成分を通過させるように構成され得る。
【0049】
図2~4は、オーディオ信号が処理のために、上位周波数帯信号、下位周波数帯信号の下位周波数成分、および下位周波数帯信号の上位周波数成分の、グループに分割され得ることを説明しているが、オーディオ信号は、任意の適切な周波数範囲に基づいて、処理のためにグループに分割され得ることが企図されることが、留意されるべきである。さらに、グループのいずれも、適宜に、周波数領域での超指向性ビーム形成技法、周波数領域での整相加算ビーム形成技法、および/または時間領域での整相加算ビーム形成技法によって、処理され得る。
【0050】
いずれのプロセスの説明、または図内のブロックも、特定の論理機能、またはプロセスにおけるステップを実施するための1つまたは複数の実行可能命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの部分を表すものと理解されるべきであり、代替実装形態は本発明の実施形態の範囲に含まれ、そこでは機能は、当業者には理解されるように、関わる機能に応じて、ほぼ同時または逆の順序を含んで、示されたまたは論じられたものとは異なる順序で実行され得る。
【0051】
本開示は、それらの真の、意図された、および公正な範囲および思想を制限するのではなく、技術に従ってどのように様々な実施形態を作り上げるおよび使用するかを説明するものである。上記の記述は、網羅的であること、または開示される正確な形に限定されることを意図するものではない。上記の教示に照らして、変更形態および変形形態が可能である。実施形態は、述べられる技術の原理の最良の例示、およびその実用的な応用例を示すため、および様々な実施形態において、および企図される特定の使用に適するような様々な変更形態によって、技術を利用することを可能にするように、選ばれ、説明されている。すべてのこのような変更形態および変形形態は、公平に、法律的に、および公正に権利が与えられた幅に従って解釈されるとき、本特許出願の係属の間、修正され得る、添付の「特許請求の範囲」によって決定される実施形態、およびそれらのすべての等価物の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
他の実施形態では、方法は、複数のオーディオ信号を受信することと、時間領域ビーム形成技法を用いて、複数のオーディオ信号から得られる上位周波数帯信号に基づいて、第1のビーム形成された信号を生成することと、周波数領域ビーム形成技法を用いて、複数のオーディオ信号から得られる下位周波数帯信号に基づいて、第のビーム形成された信号を生成することと、第1のビーム形成された信号と第2のビーム形成された信号とに基づいて、ビーム形成された出力信号を生成することとを含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
ステップ408で、下位周波数帯信号の第2のグループは、第2の周波数領域ビーム形成技法を用いて、周波数領域ビーム形成器108によって処理され得る。実施形態では、第2のグループは、下位周波数帯信号の上位周波数成分とすることができ、第2の周波数領域ビーム形成技法は、整相加算ビーム形成技法とすることができる。他の実施形態では、第2の周波数領域ビーム形成技法は、他の適切なビーム形成技法とすることができる。下位周波数帯信号の上位周波数成分の周波数範囲も、開口サイズより1~2オクターブ高いものに対応する周波数など、ビーム形成器が共に用いられている、マイクロフォンアレイの物理的開口サイズに依存し得る。例えば、実施形態では、下位周波数帯信号の位周波数成分は、約1kHzまたは2kHz以上の範囲内とすることができる。前に述べられたように周波数領域ビーム形成器116において、第2の周波数領域ビーム形成技法によって用いられる重み係数は、ビームの所望の位置および幅に基づいて、ステップ202で、重み決定ユニット120から受信され得る。実施形態では、ステップ406および408は、ほぼ同時に行われることができ、または異なる時点で行われ得る。
【国際調査報告】