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特表2024-505073疾患を処置するためのウリナスタチンポリペプチド
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  • 特表-疾患を処置するためのウリナスタチンポリペプチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】疾患を処置するためのウリナスタチンポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/57 20060101AFI20240126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240126BHJP
   C07K 14/81 20060101ALN20240126BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240126BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240126BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240126BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
A61K38/57
A61P11/00 ZNA
A61P19/04
A61P31/14
A61P31/16
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/7105
A61K31/713
A61P17/00
A61P17/02
A61P37/02
A61P21/04
A61P7/06
A61P27/02
A61P25/00
A61P13/12
A61K9/72
A61K9/12
A61P43/00 111
C07K14/81
C12N15/113 Z
C07K16/00
C07K19/00
C12Q1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546004
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 US2022014095
(87)【国際公開番号】W WO2022165031
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,403
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522350483
【氏名又は名称】ダイアメディカ ユーエスエー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ポールズ, リック
(72)【発明者】
【氏名】ワンベク, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ギルマン, シドニー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ36
4C076AA25
4C076AA26
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB27
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC17
4C076CC18
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA21
4C084BA23
4C084CA39
4C084CA53
4C084DC34
4C084MA02
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4C084MA52
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
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4C084ZA33
4C084ZA55
4C084ZA59
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4C084ZC41
4C084ZC75
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4C086MA52
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZA55
4C086ZA59
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4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB33
4C086ZC02
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA56
4H045EA20
(57)【要約】
上昇した好中球エラスターゼ(NE)と関連する疾患(NE関連の肺および皮膚の疾患を含む)を処置するためのウリナスタチンポリペプチドを含む方法および組成物が提供される。前記ウリナスタチンポリペプチドは、組換えウリナスタチンポリペプチドまたは尿由来ウリナスタチンポリペプチドであり得る。前記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2を含む、からなる、またはから本質的になり得、残基N45においてN結合型グリカンおよび残基T17においてO結合型グリカンを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好中球エラスターゼ(NE)関連疾患を処置すること、前記疾患の症状を改善すること、または前記疾患の進行を阻害することを、それを必要とする被験体において行う方法であって、前記方法は、前記被験体に、ウリナスタチンポリペプチドを含む薬学的組成物を投与することを包含する方法。
【請求項2】
前記NE関連疾患は、肺疾患を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肺疾患は、α-1アンチトリプシン(A1AT)欠損症(その合併症を含む)、嚢胞性線維症、肺炎、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、および必要に応じてコロナウイルス(例えば、Covid-19)またはインフルエンザ感染と関連するウイルス誘導性肺傷害(それらの組み合わせを含む)のうちの1またはこれより多くのものから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記NE関連疾患は、α-1 アンチトリプシン(A1AT)欠損症(その合併症を含む)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体は、血清A1ATの低減されたレベル、必要に応じて、A1ATの正常血清レベルの約80%もしくは約80%未満、A1ATの正常血清レベルの約60%もしくは約60%未満、A1ATの正常血清レベルの約40%もしくは約40%未満、またはA1ATの正常血清レベルの約10~15%を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体は、必要に応じて、PiMS、PiSS、PiMZ、PiSZ、およびPiZZから選択されるA1AT表現型/遺伝子型を有する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記被験体は、欠損症A1ATアレルおよびヌルA1ATアレルから選択されるA1AT遺伝子型を有する、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記A1AT欠損症アレルは、E342Kアレル(Zアレル)またはE264Vアレル(Sアレル)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)前記被験体において血清A1ATレベルおよび/またはA1AT表現型/遺伝子型を決定すること;ならびに
(b)前記被験体がA1AT表現型/遺伝子型および/または正常と比較してA1ATレベルの低減された血清レベルを有する場合、前記薬学的組成物を前記被験体に投与すること、
を包含する、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記A1AT表現型/遺伝子型は、PiMS、PiSS、PiMZ、PiSZ、およびPiZZから選択される;前記A1AT遺伝子型は、欠損症A1ATアレルもしくはヌルA1ATアレルを含む;ならびに/または前記血清A1ATレベルは、A1ATの正常血清レベルの約80%、60%、40%、20%、15%、もしくは10%、または約80%、60%、40%、20%、15%、もしくは10%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記A1AT欠損症アレルは、E342Kアレル(Zアレル)またはE264Vアレル(Sアレル)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記A1AT-欠損症の合併症は、喘息、気管支拡張症、肝硬変、COPD、呼吸不全、および血管炎のうちの1またはこれより多くのものを含む、請求項3~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体は、息切れ(必要に応じて労作時および後に安静時)、喘鳴、喀痰生成、または再発性の呼吸器感染のうちのいずれか1つまたはこれより多くのものを有する、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウリナスタチンポリペプチドを含む薬学的組成物を、A1AT-欠損症を処置するためのさらなる治療剤、必要に応じて、疾患関連A1AT変異体に対して指向されるRNA干渉(RNAi)薬剤、A1AT増強療法、気管支拡張剤、吸入ステロイド、抗生剤、または抗ウイルス剤と組み合わせて投与することを包含する、請求項4~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記NE関連疾患は、嚢胞性線維症であり、前記被験体は、cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遺伝子において変異を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記NE関連疾患は、皮膚または粘膜の疾患を含み、必要に応じてここで前記皮膚または粘膜の疾患は、ベーチェット病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、および川崎病である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記NE関連疾患は、自己免疫疾患であり、必要に応じて、重症筋無力症、温式自己免疫性溶血性貧血、甲状腺眼症、特発性血小板減少性紫斑病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、およびPLA2R+膜性腎症から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体は、参照標準または健常コントロールと比較して増大したNEレベルまたは活性を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
(a)前記被験体に由来するサンプル中でNEレベルまたは活性を決定すること;および
(b)前記サンプルが、参照標準または健常コントロールと比較して増大したNEレベルまたは活性を有する場合、前記薬学的組成物を前記被験体に投与すること、
を包含する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルは、喀痰サンプル(必要に応じて、下気道の粘液を含む)、血液もしくは血清サンプル、または皮膚もしくは粘膜サンプルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記喀痰サンプルは、気道好中球を含み、前記方法は、前記サンプル中の表面結合NEのレベルまたは活性を決定することを包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記サンプル中の遊離NEのレベルまたは活性を決定することを包含する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記ウリナスタチンポリペプチドは、組換えウリナスタチンポリペプチドまたは尿由来ウリナスタチンポリペプチドである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2を含む、からなる、またはから本質的になり、残基N45においてN結合型グリカンおよび残基T17においてO結合型グリカンを含む(DM300)、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ウリナスタチンポリペプチドは、表U1から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも1つのウリナスタチン活性を有するその活性改変体もしくはフラグメントを含む、からなる、またはから本質的になる、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ウリナスタチンポリペプチドは、
(a)配列番号1、もしくはO結合型グリコシル化および少なくとも1つのウリナスタチン活性に対する少なくとも1つの改変を有する配列番号1の改変体;
(b)少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する、配列番号1もしくは(a)のフラグメント;または
(c)(a)もしくは(b)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であり、少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する、(a)もしくは(b)の改変体、
を含む、からなる、またはから本質的になる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(a)は、配列番号1の残基8~11のO結合型グリコシル化部位において置換もしくは欠失、必要に応じて配列番号1の残基S10において置換もしくは欠失、必要に応じてS10A置換を含むか、あるいは(b)は、配列番号1もしくは2の約20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、もしくは130個連続したアミノ酸を含む、からなる、またはから本質的になる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(b)は、配列番号1または2の、約20~130個、20~120個、20~110個、20~100個、20~90個、20~80個、20~70個、20~60個、20~50個、20~40個、20~30個、30~130個、30~120個、30~110個、30~100個、30~90個、30~80個、30~70個、30~60個、30~50個、30~40個、40~130個、40~120個、40~110個、40~100個、40~90個、40~80個、40~70個、40~60個、40~50個、50~130個、50~120個、50~110個、50~100個、50~90個、50~80個、50~70個、50~60個、60~130個、60~120個、60~110個、60~100個、60~90個、60~80個、60~70個、70~130個、70~120個、70~110個、70~100個、70~90個、70~80個、80~130個、80~120個、80~110個、80~100個、80~90個、90~130個、90~120個、90~110個、90~100個、100~130個、100~120個、または100~110個連続したアミノ酸を含む、からなる、またはから本質的になる、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
(b)は、配列番号1または2のドメイン1を含む、からなる、またはから本質的になる、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
(b)は、配列番号1または2のドメイン2を含む、からなる、またはから本質的になる、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2(UTIΔCS)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であり、配列番号2の位置S10において置換を、必要に応じてS10A置換を保持するアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ウリナスタチンポリペプチドは、残基N45においてN結合型グリカンおよび残基T17においてO結合型グリカンを有し、前記残基は、配列番号1または2によって定義される、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ウリナスタチンポリペプチドは、ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドを形成するために、Fc領域に融合され、ここで前記ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドは、少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記Fc領域は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM免疫グロブリン重鎖のCH2領域、CH3領域、CH4領域、および/またはヒンジ領域を含む、からなる、またはから本質的になる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記Fc領域は、表F1のヒトFc領域アミノ酸配列(その改変体、フラグメント、ホモログ、オルソログ、パラログ、および組み合わせを含む)のうちの1またはこれより多くのものを含む、からなる、またはから本質的になる、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドは、野生型Fc領域と比較して、少なくとも1つの変化したエフェクター機能および/または薬物動態(PK)特性を有する改変されたFc領域を含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、プロテアーゼインヒビター活性、必要に応じて、好中球エラスターゼ(NE)インヒビター活性またはトリプシンインヒビター活性、および必要に応じて抗炎症活性を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、トリプシンインヒビター活性であり、前記ウリナスタチンポリペプチドは、約もしくは少なくとも約1000~3000 U/mg、または約もしくは少なくとも約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、もしくは3000 U/mgのトリプシンインヒビターとしての比活性を有し、ここで1ユニット(U)は、2μg トリプシンの活性を50%程度阻害するウリナスタチンポリペプチドの量である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、NEインヒビター活性であり、
ここで前記ウリナスタチンポリペプチドは、好中球エラスターゼ活性のインビトロアッセイにおいて約10μg/mlもしくはより低い値のIC50、必要に応じて約10μg/ml、9μg/ml、8μg/ml、7μg/ml、6μg/ml、5μg/ml、4μg/ml、3μg/ml、2μg/ml、もしくは1μg/mlまたはこれより低い値(その間の全ての範囲および整数を含む)のIC50、必要に応じて約1~10μg/ml、1~9μg/ml、1~8μg/ml、1~7μg/ml、1~6μg/ml、1~5μg/ml、1~4μg/ml、1~3μg/ml、1~2μg/ml、2~10μg/ml、2~9μg/ml、2~8μg/ml、2~7μg/ml、2~6μg/ml、2~5μg/ml、2~4μg/ml、2~3μg/ml、3~10μg/ml、3~9μg/ml、3~9μg/ml、3~7μg/ml、3~6μg/ml、3~5μg/ml、3~4 10μg/mlのIC50を有する;あるいは
ここで前記ウリナスタチンポリペプチドは、好中球エラスターゼ活性のインビトロアッセイにおいて、約100nMもしくはこれより低い値のIC50、必要に応じて約100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、もしくは10nMまたはこれより低い値(その間の全ての範囲および整数を含む)のIC50、必要に応じて、約10~100nM、10~90nM、10~80nM、10~70nM、10~60nM、10~50nM、10~40nM、10~30nM、10~20nM、20~100nM、20~90nM、20~80nM、20~70nM、20~60nM、20~50nM、20~40nM、20~30nM、30~100nM、30~90nM、30~80nM、30~70nM、30~60nM、30~50nM、30~40nM、40~100nM、40~90nM、40~80nM、40~70nM、40~60nM、もしくは40~50nMのIC50を有する、
請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記薬学的組成物は、タンパク質ベースまたは重量-重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%の純度を有し、実質的に凝集がなく、必要に応じて約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、または5%未満が凝集しており、前記組成物は、実質的にエンドトキシンを含まない、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記薬学的組成物は、約1 EU エンドトキシン/mg タンパク質未満、約100ng 宿主細胞タンパク質/mg タンパク質未満、約10 pg 宿主細胞DNA/mg タンパク質未満、および/またはSEC-HPLCによって約95%を超える単一ピーク純度を有する、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記薬学的組成物を、静脈内(IV)投与、皮下(SC)投与、吸入による投与、局所投与、または経口投与によって前記被験体に投与することを包含する、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記薬学的組成物を、吸入による投与によって、必要に応じて、ネブライザ、計量式吸入器、または乾燥散剤吸入器で肺疾患を有する前記被験体に投与することを包含する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
局所投与または経口投与によって、必要に応じて、洗口液として、前記薬学的組成物を、皮膚または粘膜の疾患を有する前記被験体に投与することを包含する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記薬学的組成物は、約50,000 U/kg~約1,000,000 U/kg(その間の全ての整数および範囲を含む)の投与量において、前記ウリナスタチンポリペプチドを含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記薬学的組成物の投与は、コントロールまたは参照と比較して、必要に応じて、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、前記被験体におけるNEレベルまたは活性を、必要に応じて約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、低減する、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記薬学的組成物の投与は、前記それを必要とする被験体の平均余命を、必要に応じて約1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、51年、52年、53年、54年、55年、56年、57年、58年、59年、60年もしくはより長い年数、または少なくとも約1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、51年、52年、53年、54年、55年、56年、57年、58年、59年、60年もしくはより長い年数程度増大させる、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記被験体は、肺疾患を有し、前記薬学的組成物の投与は、必要に応じて約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、コントロールまたは参照と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、前記被験体における呼吸機能を改善する、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記改善された呼吸機能は、増大した呼気時間、増大した吸気時間、減少した最大呼気流、減少した最大級気流、減少した分時換気量(RMV)、および減少した呼吸数のうちの1またはこれより多くのものから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記被験体は、皮膚または粘膜の疾患を有し、前記薬学的組成物の投与は、必要に応じて約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、コントロールまたは参照と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、前記被験体において皮膚または粘膜の病変または潰瘍を低減する、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下で、2021年1月29日出願の米国仮出願第63/143,403号(これはその全体において本明細書に参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願と関連付けられた配列表は、紙による写しの代わりに、テキストフォーマットで提供され、本明細書に参考として援用される。上記配列表を含むテキストファイルの名称は、DIAM_041_01WO_ST25.txtである。そのテキストファイルは、約29KBであり、作成日は2022年1月24日であり、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
背景
技術分野
本開示の実施形態は、上昇した好中球エラスターゼ(NE)と関連する疾患(NE関連の肺および皮膚の疾患を含む)を処置するためのウリナスタチンポリペプチドを含む方法および組成物を含む。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
ウリナスタチン(別名、尿中トリプシンインヒビター)は、トリプシン、キモトリプシン、ラクテート(lactate)、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、および種々の膵臓酵素の活性を阻害するヒト尿に由来する糖タンパク質プロテイナーゼインヒビターである。
【0005】
高度に精製したウリナスタチンは、急性膵炎、慢性膵炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、熱傷、敗血性ショック、中毒性表皮壊死症(TEN)、および他の疾患の処置のために臨床的に使用されている。しかし、多量のウリナスタチンが必要とされる。なぜならそれは、そのプロテアーゼの活性部位と不可逆的に反応する強力なプロテアーゼインヒビターであるセルピンであり、従って、代表的には、その標的と1:1の化学量論において消費されるからである。この特性は、全身投与後に達成される比較的低いインビボ曝露と組み合わされると、天然のウリナスタチンタンパク質からの治療剤の生成にあたって難題が生じる。
【0006】
好中球エラスターゼ(NE)は、炎症中に好中球およびマクロファージによって分泌されるセリンプロテイナーゼである。好中球エラスターゼおよび類似のプロテアーゼの過剰な活性は、組織損傷を引き起こし、肺炎、呼吸窮迫、および急性肺傷害のような多くの肺の状態(Polverinoら, Chest. 152(2):249-262, 2017)、ならびに類天疱瘡のような皮膚の状態(Liuら, J Clin Invest. 105(1):113-123, 2000)においてリモデリングプロセスを変化させることが報告されている。
ウリナスタチンポリペプチドの組換え生成および/または治療上の有用性に関連する改善された特性を有するウリナスタチンポリペプチドが、ならびにウリナスタチンポリペプチドの臨床上の有用性を他の疾患に拡げることがまた、当該分野で必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Polverinoら, Chest. 152(2):249-262, 2017
【非特許文献2】Liuら, J Clin Invest. 105(1):113-123, 2000
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡潔な要旨
本開示の実施形態は、好中球エラスターゼ(NE)関連疾患を処置すること、上記疾患の症状を改善すること、または上記疾患の進行を阻害することを、それを必要とする被験体において行う方法であって、上記方法は、上記被験体に、ウリナスタチンポリペプチドを含む薬学的組成物を投与することを包含する方法を含む。
【0009】
ある特定の実施形態において、上記NE関連疾患は、肺疾患を含む。いくつかの実施形態において、上記肺疾患は、α-1アンチトリプシン(A1AT)欠損症(その合併症を含む)、嚢胞性線維症、肺炎、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、および必要に応じてコロナウイルス(例えば、Covid-19)またはインフルエンザ感染と関連するウイルス誘導性肺傷害(それらの組み合わせを含む)のうちの1またはこれより多くのものから選択される。いくつかの実施形態において、上記NE関連疾患は、α-1 アンチトリプシン(A1AT)欠損症(その合併症を含む)である。
【0010】
ある特定の実施形態において、上記被験体は、血清A1ATの低減されたレベル、必要に応じて、A1ATの正常血清レベルの約80%もしくは約80%未満、A1ATの正常血清レベルの約60%もしくは約60%未満、A1ATの正常血清レベルの約40%もしくは約40%未満、またはA1ATの正常血清レベルの約10~15%を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、必要に応じて、PiMS、PiSS、PiMZ、PiSZ、およびPiZZから選択されるA1AT表現型/遺伝子型を有する。ある特定の実施形態において、上記被験体は、欠損症A1ATアレルおよびヌルA1ATアレルから選択されるA1AT遺伝子型を有する。特定の実施形態において、上記A1AT欠損症アレルは、E342Kアレル(Zアレル)またはE264Vアレル(Sアレル)である。
【0012】
いくつかの実施形態は、
(a)上記被験体において血清A1ATレベルおよび/またはA1AT表現型/遺伝子型を決定する工程;ならびに
(b)上記被験体がA1AT表現型/遺伝子型および/または正常と比較してA1ATレベルの低減された血清レベルを有する場合、上記薬学的組成物を上記被験体に投与する工程、
を包含する。
【0013】
ある特定の実施形態において、上記A1AT表現型/遺伝子型は、PiMS、PiSS、PiMZ、PiSZ、およびPiZZから選択される;上記A1AT遺伝子型は、欠損症A1ATアレルもしくはヌルA1ATアレルを含む;ならびに/または上記血清A1ATレベルは、A1ATの正常血清レベルの約80%、60%、40%、20%、15%、もしくは10%、または約80%、60%、40%、20%、15%、もしくは10%未満である。いくつかの実施形態において、上記A1AT欠損症アレルは、E342Kアレル(Zアレル)またはE264Vアレル(Sアレル)である。
【0014】
ある特定の実施形態において、上記A1AT-欠損症の合併症は、喘息、気管支拡張症、肝硬変、COPD、呼吸不全、および血管炎のうちの1またはこれより多くのものを含む。ある特定の実施形態において、上記被験体は、息切れ(必要に応じて労作時および後に安静時)、喘鳴、喀痰生成、または再発性の呼吸器感染のうちのいずれか1つまたはこれより多くのものを有する。
【0015】
特定の実施形態は、上記ウリナスタチンポリペプチドを含む薬学的組成物を、A1AT-欠損症を処置するためのさらなる治療剤、必要に応じて、疾患関連A1AT変異体に対して指向されるRNA干渉(RNAi)薬剤、A1AT増強療法、気管支拡張剤、吸入ステロイド、抗生剤、または抗ウイルス剤と組み合わせて投与することを包含する。
【0016】
ある特定の実施形態において、上記NE関連疾患は、嚢胞性線維症であり、上記被験体は、cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遺伝子において変異を有する。いくつかの実施形態において、上記NE関連疾患は、皮膚または粘膜の疾患を含む。特定の実施形態において、上記皮膚または粘膜の疾患は、ベーチェット病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、および川崎病である。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記NE関連疾患は、自己免疫疾患であり、例えば、重症筋無力症、温式自己免疫性溶血性貧血、甲状腺眼症、特発性血小板減少性紫斑病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、およびPLA2R+膜性腎症から選択される自己免疫疾患である。
【0018】
ある特定の実施形態において、上記被験体は、参照標準または健常コントロールと比較して増大したNEレベルまたは活性を有する。
【0019】
いくつかの実施形態は、
(a)上記被験体に由来するサンプル中でNEレベルまたは活性を決定する工程;および
(b)上記サンプルが、参照標準または健常コントロールと比較して増大したNEレベルまたは活性を有する場合、上記薬学的組成物を上記被験体に投与する工程、
を包含する。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、喀痰サンプル(必要に応じて、下気道の粘液を含む)、血液もしくは血清サンプル、または皮膚もしくは粘膜サンプルである。いくつかの実施形態において、上記喀痰サンプルは、気道好中球を含み、上記方法は、上記サンプル中の表面結合NEのレベルまたは活性を決定することを包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記サンプル中の遊離NEのレベルまたは活性を決定することを包含する。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、組換えウリナスタチンポリペプチドまたは尿由来ウリナスタチンポリペプチドである。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2を含む、からなる、またはから本質的になり、残基N45においてN結合型グリカンおよび残基T17においてO結合型グリカンを含む。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、表U1から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも1つのウリナスタチン活性を有するその活性改変体もしくはフラグメントを含む、からなる、またはから本質的になる。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、
(a)配列番号1、もしくはO結合型グリコシル化および少なくとも1つのウリナスタチン活性に対する少なくとも1つの改変を有する配列番号1の改変体;
(b)少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する、配列番号1もしくは(a)のフラグメント;または
(c)(a)もしくは(b)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であり、少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する、(a)もしくは(b)の改変体、
を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0023】
いくつかの実施形態において、(a)は、配列番号1の残基8~11のO結合型グリコシル化部位において置換もしくは欠失、必要に応じて配列番号1の残基S10において置換もしくは欠失、必要に応じてS10A置換を含むか、あるいは(b)は、配列番号1もしくは2の約20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、もしくは130個連続したアミノ酸を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0024】
いくつかの実施形態において、(b)は、配列番号1もしくは2の、約20~130個、20~120個、20~110個、20~100個、20~90個、20~80個、20~70個、20~60個、20~50個、20~40個、20~30個、30~130個、30~120個、30~110個、30~100個、30~90個、30~80個、30~70個、30~60個、30~50個、30~40個、40~130個、40~120個、40~110個、40~100個、40~90個、40~80個、40~70個、40~60個、40~50個、50~130個、50~120個、50~110個、50~100個、50~90個、50~80個、50~70個、50~60個、60~130個、60~120個、60~110個、60~100個、60~90個、60~80個、60~70個、70~130個、70~120個、70~110個、70~100個、70~90個、70~80個、80~130個、80~120個、80~110個、80~100個、80~90個、90~130個、90~120個、90~110個、90~100個、100~130個、100~120個、もしくは100~110個連続したアミノ酸を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0025】
いくつかの実施形態において、(b)は、配列番号1または2のドメイン1を含む、からなる、またはから本質的になる。いくつかの実施形態において、(b)は、配列番号1または2のドメイン2を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2(UTIΔCS)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であり、配列番号2の位置S10において置換を、必要に応じてS10A置換を保持するアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、残基N45においてN結合型グリカンおよび残基T17においてO結合型グリカンを有し、上記残基は、配列番号1または2によって定義される。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドを形成するために、Fc領域に融合され、ここで上記ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドは、少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する。いくつかの実施形態において、上記Fc領域は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM免疫グロブリン重鎖のCH2領域、CH3領域、CH4領域、および/またはヒンジ領域を含む、からなる、またはから本質的になる。いくつかの実施形態において、上記Fc領域は、表F1のヒトFc領域アミノ酸配列(その改変体、フラグメント、ホモログ、オルソログ、パラログ、および組み合わせを含む)のうちの1またはこれより多くのものを含む、からなる、またはから本質的になる。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドは、野生型Fc領域と比較して、少なくとも1つの変化したエフェクター機能および/または薬物動態(PK)特性を有する改変されたFc領域を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、プロテアーゼインヒビター活性、必要に応じて、好中球エラスターゼ(NE)インヒビター活性またはトリプシンインヒビター活性、および必要に応じて抗炎症活性を含む。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、トリプシンインヒビター活性であり、上記ウリナスタチンポリペプチドは、約もしくは少なくとも約1000~3000 U/mg、または約もしくは少なくとも約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、もしくは3000 U/mgのトリプシンインヒビターとしての比活性を有し、ここで1ユニット(U)は、2μg トリプシンの活性を50%程度阻害するウリナスタチンポリペプチドの量である。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、NEインヒビター活性であり、上記ウリナスタチンポリペプチドは、好中球エラスターゼ活性のインビトロアッセイにおいて約10μg/mlもしくはより低い値のIC50、必要に応じて約10μg/ml、9μg/ml、8μg/ml、7μg/ml、6μg/ml、5μg/ml、4μg/ml、3μg/ml、2μg/ml、もしくは1μg/mlまたはこれより低い値(その間の全ての範囲および整数を含む)のIC50、必要に応じて約1~10μg/ml、1~9μg/ml、1~8μg/ml、1~7μg/ml、1~6μg/ml、1~5μg/ml、1~4μg/ml、1~3μg/ml、1~2μg/ml、2~10μg/ml、2~9μg/ml、2~8μg/ml、2~7μg/ml、2~6μg/ml、2~5μg/ml、2~4μg/ml、2~3μg/ml、3~10μg/ml、3~9μg/ml、3~9μg/ml、3~7μg/ml、3~6μg/ml、3~5μg/ml、3~4 10μg/mlのIC50を有する。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、好中球エラスターゼ活性のインビトロアッセイにおいて、約100nMもしくはこれより低い値のIC50、必要に応じて約100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、もしくは10nMまたはこれより低い値(その間の全ての範囲および整数を含む)のIC50、必要に応じて、約10~100nM、10~90nM、10~80nM、10~70nM、10~60nM、10~50nM、10~40nM、10~30nM、10~20nM、20~100nM、20~90nM、20~80nM、20~70nM、20~60nM、20~50nM、20~40nM、20~30nM、30~100nM、30~90nM、30~80nM、30~70nM、30~60nM、30~50nM、30~40nM、40~100nM、40~90nM、40~80nM、40~70nM、40~60nM、もしくは40~50nMのIC50を有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、タンパク質ベースまたは重量-重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%の純度を有し、実質的に凝集がなく、必要に応じて約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、または5%未満が凝集しており、上記組成物は、実質的にエンドトキシンを含まない。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、約1 EU エンドトキシン/mg タンパク質未満、約100ng 宿主細胞タンパク質/mg タンパク質未満、約10 pg 宿主細胞DNA/mg タンパク質未満、および/またはSEC-HPLCによって約95%を超える単一ピーク純度を有する。
【0030】
ある特定の実施形態は、上記薬学的組成物を、静脈内(IV)投与、皮下(SC)投与、吸入による投与、局所投与、または経口投与によって上記被験体に投与することを包含する。ある特定の実施形態は、上記薬学的組成物を、吸入による投与によって、必要に応じて、ネブライザ、計量式吸入器、または乾燥散剤吸入器で肺疾患を有する上記被験体に投与することを包含する。ある特定の実施形態は、局所投与または経口投与によって、必要に応じて、洗口液として、上記薬学的組成物を、皮膚または粘膜の疾患を有する上記被験体に投与することを包含する。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、約50,000 U/kg~約1,000,000 U/kg(その間の全ての整数および範囲を含む)の投与量において、上記ウリナスタチンポリペプチドを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物の投与は、コントロールまたは参照と比較して、必要に応じて、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、上記被験体におけるNEレベルまたは活性を、必要に応じて約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、低減する。いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物の投与は、上記それを必要とする被験体の平均余命を、必要に応じて約1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、51年、52年、53年、54年、55年、56年、57年、58年、59年、60年もしくはより長い年数、または少なくとも約1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、51年、52年、53年、54年、55年、56年、57年、58年、59年、60年もしくはより長い年数程度増大させる。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、肺疾患を有し、上記薬学的組成物の投与は、必要に応じて約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、コントロールまたは参照と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、上記被験体における呼吸機能を改善する。いくつかの実施形態において、上記改善された呼吸機能は、増大した呼気時間、増大した吸気時間、減少した最大呼気流、減少した最大級気流、減少した分時換気量(RMV)、および減少した呼吸数のうちの1またはこれより多くのものから選択される。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、皮膚または粘膜の疾患を有し、上記薬学的組成物の投与は、必要に応じて約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、コントロールまたは参照と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、上記被験体において皮膚または粘膜の病変または潰瘍を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、組換えウリナスタチン(DM300)が、好中球エラスターゼ活性のインビトロアッセイにおいて有意な阻害活性を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
別段定義されなければ、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載されるものに類似のまたは等価な任意の方法、材料、組成物、試薬、細胞は、本開示の主題の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。本明細書において引用される全ての刊行物および参考文献(特許および特許出願が挙げられるが、これらに限定されない)は、各個々の刊行物および参考文献が、十分に示されているとして本明細書に参考として援用されることが具体的にかつ個々に示されるかのように、それらの全体において本明細書に参考として援用される。本出願が優先権を主張する任意の特許出願はまた、刊行物および参考文献に関して上記で記載される様式で、その全体において本明細書に参考として援用される。
【0037】
本開示の実施は、具体的に反対に示されなければ、当該分野の技術範囲内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学および組換えDNA技術の従来の方法を使用し、そのうちの多くは、例証目的で以下に記載される。このような技術は、文献中で十分に説明されている。例えば、以下を参照のこと: Current Protocols in Protein Science, Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York, N.Y. (2009); Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, Wiley & Sons, 1995; Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第3版, 2001); Maniatisら Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1982); DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover,編); Oligonucleotide Synthesis (N. Gait,編, 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins,編, 1985); Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins,編, 1984); Animal Cell Culture (R. Freshney,編, 1986); Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984)および他の同様の文献。
【0038】
標準的な技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用され得る。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該分野で一般に達成されるとおりに、または本明細書で記載されるように行われ得る。これらのおよび関連する技術および手順は一般に、当該分野で周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書全体を通じて引用および考察される種々の一般的およびより詳細な参考文献に記載されるように行われ得る。具体的な定義が提供されなければ、本明細書で記載される分子生物学、分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および創薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該分野で周知のものであり、一般に使用される。標準的な技術は、組換え技術、分子生物学、微生物学、化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化、および送達、ならびに患者の処置のために使用され得る。
【0039】
本開示の目的のために、以下の用語が以下で定義される。
【0040】
冠詞「a(1つの、ある)」および「an(1つの、ある)」は、その冠詞の文法上の対象の1つ、または1より多くのもの(すなわち、少なくとも1)に言及するために本明細書で使用される。例示によれば、「1つの要素(an element)」は、1つの要素または1より多くの要素を意味する。
【0041】
「約(about)」は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%程度変動する、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸(amino acid)」は、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸、ならびにアミノ酸アナログおよび摸倣物の両方を意味することが意図される。天然に存在するアミノ酸は、タンパク質生合成中に利用される20種の(L)-アミノ酸、ならびに例えば、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリンおよびオルニチンのような他のものを含む。天然に存在しないアミノ酸は、例えば、(D)-アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p-フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどを含み、これらは、当業者に公知である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の改変された形態を含む。このような改変は、例えば、アミノ酸上の化学基および部分の置換もしくは置き換え、またはアミノ酸の誘導体化によるものを含み得る。アミノ酸摸倣物は、例えば、参照アミノ酸に特徴的な電荷および電荷の配置(charge spacing)のような機能的に類似の特性を示す有機構造体を含む。例えば、アルギニン(ArgまたはR)を模倣する有機構造体は、類似の分子空間に位置し、天然に存在するArgアミノ酸の側鎖のe-アミノ基と同程度の移動性を有する正電荷部分を有する。摸倣物はまた、アミノ酸のまたはアミノ酸官能基の最適な配置および電荷相互作用を維持するように拘束された構造体を含む。当業者は、どのような構造体が機能的に等価なアミノ酸アナログおよびアミノ酸摸倣物を構成するかを知っているかまたは決定し得る。
【0043】
「生体適合性(biocompatible)」とは、生物学的機能に概して有害でなく、許容できない毒性(アレルゲン状態および疾患状態を含む)のいかなる程度をも生じない、物質または化合物に言及する。
【0044】
「コード配列(coding sequence)」は、遺伝子のポリペプチド生成物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、用語「非コード配列(non-coding sequence)」とは、遺伝子のポリペプチド生成物のコードに直接的には寄与しない任意の核酸配列に言及する。
【0045】
本開示全体を通じて、文脈が別段要求しなければ、文言「含む、包含する(comprise)」、「含む、包含する(comprises)」および「含む、包含する(comprising)」は、述べられる工程もしくは要素、または工程もしくは要素の群の包含を意味するが、任意の他の工程もしくは要素、または工程もしくは要素の群の排除を意味しないことが理解される。
【0046】
「からなる(consisting of)」は、語句「からなる」に続くもの全てを含み、それに限定されることを意味する。従って、語句「からなる」は、その列挙された要素が要求されるかまたは必須であること、および他の要素は存在してはならないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、その語句の後に列挙される任意の要素を含むが、その列挙される要素に関する開示において特定される活性または作用に干渉も寄与もしない他の要素に限られることを意味する。従って、語句「から本質的になる」は、その列挙される要素が要求されるかまたは必須であるが、他の要素は選択肢であり、その列挙される要素の活性または作用に本質的に影響を及ぼすか否かに依存して、存在してもよいかまたは存在してはならないことを示す。
【0047】
用語「エンドトキシンを含まない(endotoxin free)」または「実質的にエンドトキシンを含まない(substantially endotoxin free)」とは、一般に、せいぜいで微量(例えば、被験体に対して臨床上有害な生理学的効果を有しない量)のエンドトキシン、および好ましくは検出不能な量のエンドトキシンを含む、組成物、溶媒、および/または容器に関する。エンドトキシンは、ある特定の微生物(例えば、細菌、代表的には、グラム陰性細菌)と関連する毒素であるが、エンドトキシンは、グラム陽性細菌(例えば、Listeria monocytogenes)にも見出され得る。大部分の広く認められるエンドトキシンは、種々のグラム陰性細菌の外膜において見出され、これらの細菌が疾患を引き起こす能力において中心的な病原的特徴を表す、リポポリサッカリド(LPS)またはリポ-オリゴ-サッカリド(LOS)である。ヒトにおいて少量のエンドトキシンは、有害な生理学的効果の中でもとりわけ、発熱、血圧の低下、ならびに炎症および凝固の活性化を生じ得る。
【0048】
従って、薬学的生成においてしばしば、薬物製品および/または薬物容器から大部分のまたは全ての微量のエンドトキシンを除去することは望ましい。なぜなら少量であっても、ヒトにおいて有害な効果を引き起こし得るからである。発熱物質除去オーブン(depyrogenation oven)は、大部分のエンドトキシンを分解するために300℃を超える温度が代表的には要求されることから、この目的のために使用され得る。例えば、シリンジまたはバイアルのような主なパッケージング材料に基づくと、250℃のガラス温度および30分間の保持時間の組み合わせはしばしば、エンドトキシンレベルにおいて3対数低減を達成するために十分である。本明細書で記載され、当該分野で公知であるように、例えば、クロマトグラフィーおよび濾過方法を含め、エンドトキシンを除去する他の方法が企図される。
【0049】
エンドトキシンは、当該分野で公知の慣用的技術を試用して検出され得る。例えば、Limulus Amoebocyte Lysateアッセイ(これは、カブトガニの血液を利用する)は、エンドトキシンの存在を検出するための非常に高感度なアッセイである。この試験において、非常に低レベルのLPSは、この反応を増幅する強力な酵素カスケードに起因して、カブトガニ溶解物の検出可能な凝固を引き起こし得る。エンドトキシンはまた、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によって定量され得る。実質的にエンドトキシンを含まないために、エンドトキシンレベルは、約0.001EU/mg未満、0.005EU/mg未満、0.01EU/mg未満、0.02EU/mg未満、0.03EU/mg未満、0.04EU/mg未満、0.05EU/mg未満、0.06EU/mg未満、0.08EU/mg未満、0.09EU/mg未満、0.1EU/mg未満、0.5EU/mg未満、1.0EU/mg未満、1.5EU/mg未満、2EU/mg未満、2.5EU/mg未満、3EU/mg未満、4EU/mg未満、5EU/mg未満、6EU/mg未満、7EU/mg未満、8EU/mg未満、9EU/mg未満、または10EU/mg未満の活性化合物であり得る。代表的には、1ng リポポリサッカリド(LPS)は、約1~10EUに相当する。
【0050】
ポリペプチドの「半減期(half-life)」は、ポリペプチドがその薬理学的、生理学的、または他の活性の半分を失うのにかかる時間を、生物の血清もしくは組織への投与時のそのような活性と比較して、または任意の他の定義された時点と比較して言及し得る。「半減期」はまた、ポリペプチドの量または濃度が、生物の血清もしくは組織へと投与された出発量の半分程度低減されるためにかかる時間を、生物の血清または組織への投与時でのそのような量もしくは濃度と比較して、または任意の他の定義された時点と比較して言及し得る。半減期は、血清および/または任意の1もしくはこれより多くの選択された組織において測定され得る。
【0051】
用語「調節する(modulating)」および「変化させる(altering)」は、代表的には、コントロールと比較して統計的に有意なまたは生理学的に有意な量または程度において、「増大させる(increasing)」、「増強する(enhancing)」または「刺激する(stimulating)、ならびに「減少させる(decreasing)または「低減する(reducing)」ことを含む。「増大した(increased)、「刺激された(stimulated)」または「増強された(enhanced)」量は、代表的には、「統計的に有意な」量であり、組成物なし(例えば、薬剤なし)またはコントロール組成物で生成される量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍またはより大きな倍数(例えば、500倍、1000倍)(その間の全ての整数および範囲、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)である増大を含み得る。「減少された(decreased)」または「低減された(reduced)」量は、代表的には、「統計的に有意な」量であり、組成物なし(例えば、薬剤なし)またはコントロール組成物で生成される量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%(その間の全ての整数および範囲を含む)の減少を含み得る。比較および「統計的に有意な」量の例は、本明細書に記載される。
【0052】
用語「ポリペプチド(polypeptide)」「タンパク質(protein)および「ペプチド(peptide)」は、交換可能に使用され、いかなる特定の長さにも限定されないアミノ酸のポリマーを意味する。用語「酵素(enzyme)」は、ポリペプチドまたはタンパク質触媒を含み、ウリナスタチンに関しては、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドと交換可能に使用される。上記用語は、ミリストイル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化およびシグナル配列の付加または欠失のような改変を含む。用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸の1またはこれより多くの鎖であって、ここで各鎖は、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸を含み、上記ポリペプチドまたはタンパク質は、ペプチド結合によって一緒に非共有結合により、および/または共有結合により結合され、天然のタンパク質、すなわち、天然に存在し、具体的には組換えでない細胞、または遺伝的に操作されたもしくは組換えの細胞によって生成されるタンパク質の配列を有する複数の鎖を含むことができ、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然の配列のうちの1またはこれより多くのアミノ酸の欠失、付加、および/または置換を有する分子を含むものを意味する。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、具体的には、本明細書で記載されるウリナスタチンタンパク質、あるいはウリナスタチンタンパク質のうちの1もしくはこれより多くのアミノ酸の欠失、付加、および/または置換を有する配列を包含する。ある特定の実施形態において、上記ポリペプチドは、「組換え(recombinant)」ポリペプチドであり、これは、1またはこれより多くの組換えDNA分子を含む組換え細胞によって生成され、代表的には、異種ポリヌクレオチド配列または細胞において他に見出されないポリヌクレオチド配列の組み合わせから作製されるものである。
【0053】
本明細書で言及される用語「単離された(isolated)」ポリペプチドまたはタンパク質は、本タンパク質が、(1)代表的にはそれが天然において一緒に見出される少なくともいくつかの他のタンパク質を含まない、(2)同じ供給源に由来する、例えば、同じ種に由来する他のタンパク質を本質的に含まない、(3)異なる種に由来する細胞によって発現される、(4)それが天然において会合されるポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは他の物質のうちの少なくとも約50%から分離されている、(5)その「単離された」タンパク質が天然において会合されるタンパク質の一部と(共有結合的または非共有結合的相互作用によって)会合していない、(6)それが天然において会合されていないポリペプチドと作動可能に(共有結合的または非共有結合的相互作用によって)会合している、または(7)天然において存在しないことを意味する。このような単離されたタンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNAまたは他のRNAによってコードされ得るか、合成起源のものであり得るか、またはこれらの任意の組み合わせのものであり得る。ある特定の実施形態において、単離されたタンパク質は、 その天然の環境において見出され、その使用(治療的、診断的、予防的、研究または他)に干渉するタンパク質またはポリペプチドまたは他の夾雑物質を実質的に含まない。
【0054】
ある特定の実施形態において、組成物中の任意の所定の薬剤(例えば、ウリナスタチンポリペプチド)の「純度(purity)」は、具体的に定義され得る。例えば、ある特定の組成物は、例えば、高速液体クラマトグラフィー(HPLC)(化合物を分離、特定および定量するために生化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの周知の形態)によって測定される場合、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋(例えば、タンパク質ベースで)(その間の全ての小数および範囲を含む)である薬剤を含み得る。
【0055】
用語「参照配列(reference sequence)」とは、一般に、核酸コード配列、またはアミノ酸配列であって、その配列に対して別の配列が比較されるものに言及する。本明細書で記載される全てのポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、参照配列(名称によって記載されるものならびに表および配列表に記載されるものを含む)として含まれる。
【0056】
用語「配列同一性(sequence identity)」、または例えば、「と50%同一の配列(sequence 50% identical to)」を含む、は、本明細書で使用される場合、比較ウインドウにわたって、ヌクレオチドごとのベースで、またはアミノ酸ごとのベースで配列が同一である程度に言及する。従って、「配列同一性のパーセンテージ(percentage of sequence identity)」は、比較ウインドウにわたって2つの最適に整列させた配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列に存在してマッチした位置の数を得るその位置の数を決定し、マッチした位置の数を上記比較ウインドウにおける位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で除算し、その結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算され得る。比較ウインドウを整列させるための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, Wis., USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューター化された実行によって、または選択された種々の方法のうちのいずれかによって生成される最良のアラインメント(すなわち、比較ウインドウにわたって最高のパーセンテージの相同性を生じる)の精査によって、行われ得る。参照はまた、例えば、Altschulら, Nucl. Acids Res. 25:3389, 1997によって開示されるように、プログラムのBLASTファミリーに対して行われ得る。
【0057】
用語「溶解度(solubility)」とは、液体溶媒中に溶解し、均質な溶液を形成するために、本明細書で提供される薬剤(例えば、ウリナスタチンポリペプチド)の特性に言及する。溶解度は、代表的には、濃度(溶媒の単位容積あたりの溶質の質量(溶媒1kgあたりの溶質のg、g/dL(100mL)、mg/mlなど)のいずれかによる)、モル濃度、重要モル濃度、モル分率または濃度の他の類似の記載として表される。溶媒の量あたりに溶解し得る溶質の最大平衡量は、特定された条件(温度、圧力、pH、および溶媒の性質を含む)下でのその溶媒中でのその溶質の溶解度である。ある特定の実施形態において、溶解度は、生理学的pH、または他のpHにおいて(例えば、pH 5.0、pH 6.0、pH 7.0、pH 7.4、pH 7.6、pH 7.8、またはpH 8.0(例えば、約pH 5~8))において測定される。ある特定の実施形態において、溶解度は、水または生理学的緩衝液(例えば、PBSまたはNaCl(NaPありまたはなし))中で測定される。具体的実施形態において、溶解度は、比較的低いpH(例えば、pH 6.0)および比較的高い塩(例えば、500mM NaClおよび10mM NaP)において測定される。ある特定の実施形態において、溶解度は、血液または血清のような生物学的流体(溶媒)中で測定される。ある特定の実施形態において、温度は、約室温(例えば、約20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃)または約体温(37℃)であり得る。ある特定の実施形態において、薬剤は、室温または37℃において、少なくとも約0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、11mg/ml、12mg/ml、13mg/ml、14mg/ml、15mg/ml、16mg/ml、17mg/ml、18mg/ml、19mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/mlまたは100mg/mlの溶解度を有する。
【0058】
「被験体(subject)」または「それを必要とする被験体(subject in need thereof)」または「患者(patient)または「それを必要とする患者(patient in need thereof)は、ヒト被験体のような哺乳動物被験体を含む。
【0059】
「実質的に(substantially)」または「本質的に(essentially)」とは、ある所定の量のほぼ完全にまたは完全に、例えば、95%、96%、97%、98%、99%またはこれより大きい、を意味する。
【0060】
「統計的に有意な(statistically significant)」によって、その結果が偶然に起こった可能性が低かったことを意味する。統計的有意性は、当該分野で公知の任意の方法によって決定され得る。有意性の一般に使用される尺度としては、p値が挙げられ、これは、帰無仮説が真であるとした場合に、観察される事象が起こる頻度または確率である。その得られたp値が有意水準より小さい場合、その帰無仮説は棄却される。単純な場合には、その有意水準は、0.05またはこれより小さいp値において定義される。
【0061】
「治療的応答(therapeutic response)」とは、1またはこれより多くの治療剤の投与に基づく症状の改善(持続しようとそうでなかろうと)に言及する。
【0062】
本明細書で使用される場合、被験体(例えば、ヒトのような哺乳動物)または細胞の「処置、処理(treatment)」は、その個体または細胞の自然経過を変化させようとする試みにおいて使用される任意のタイプの介入である。処置としては、薬学的組成物の投与が挙げられるが、これに限定されず、予防的に、または病的事象の開始もしくは病因因子との接触に引き続いてのいずれかに行われてもよい。「予防的(prophylactic)」処置もまた含まれ、これは、処置されている疾患もしくは状態の進行の速度を低減すること、その疾患もしくは状態の開始を遅らせること、またはその開始の重篤度を低減することに関し得る。「処置」または「予防(prophylaxis)は、完全な根絶、治癒、あるいは上記疾患もしくは状態、またはその関連症状の防止を必ずしも示さない。
【0063】
用語「野生型(wild-type)」とは、ある集団において最も頻繁に観察され、従って、その遺伝子の「正常(normal)」または「野生型」形態と任意に設計される(designed)遺伝子または遺伝子生成物(例えば、ポリペプチド)に言及する
【0064】
本明細書中の各実施形態は、別段明示的に述べられなければ、あらゆる他の実施形態に必要な変更を加えて適用されるべきである。
【0065】
本開示の実施形態は、好中球エラスターゼ(NE)関連疾患を処置する、その症状を改善する。またはその進行を阻害することを必要とする被検体において好中球エラスターゼ(NE)関連疾患を処置する、その症状を改善する。またはその進行を阻害する方法であって、上記方法は、上記被験体に、ウリナスタチンポリペプチドを含む薬学的組成物を投与することを包含する方法に関する。好中球エラスターゼ(NE; UniProt: P08246))は、活性化された好中球から放出されると、好中球リソソーム(アズール顆粒)内のタンパク質および細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を加水分解するセリンプロテアーゼである。それは、機序の中でもとりわけ、ECMのIV型コラーゲンおよびエラスチンの加水分解によって変性および炎症性疾患において役割を果たすことが示されている。従って、「NE関連疾患(NE-associated disease)」は、参照標準または健常コントロールと比較して、好中球エラスターゼの異常なまたは上昇した発現または活性と関連する疾患または状態を含む。ヒト好中球エラスターゼは、第19染色体上のELANE遺伝子によってコードされる。
【0066】
ある特定の実施形態において、上記NE関連疾患は、肺疾患(例えば、Sandhaus and Turino, COPD. 10 Suppl 1:60-3, 2013;およびPolverinoら, Chest. 152(2):249-262, 2017を参照のこと)を含む。NE関連肺疾患の例としては、α-1アンチトリプシン(A1AT)欠損症およびその合併症、嚢胞性線維症、肺炎、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、およびウイルス誘導性肺傷害が挙げられる。具体的実施形態において、上記ウイルス誘導性肺傷害は、コロナウイルス感染、例えば、SARS-Cov2感染と関連するCOVID-19と関連する。いくつかの実施形態において、上記ウイルス誘導性肺傷害は、インフルエンザウイルス感染と関連する。
【0067】
具体的実施形態において、上記NE関連疾患は、α-1アンチトリプシン(A1AT)欠損症、またはA1AD(肺疾患もしくは肝疾患においてしばしば生じる遺伝的障害)である。A1ADは、SERPINA1遺伝子(これは、セルピンスーパーファミリーに属するプロテアーゼインヒビターであるA1ATタンパク質をコードする)における変異によって引き起こされる。A1ATは、肝臓において生成され、その機能のうちの1つは、結合組織を破壊し得る酵素である好中球エラスターゼから肺を防御することである。
【0068】
A1ATの正常な血液または血清レベルは、分析方法に依存して変動するが、代表的には、およそ1.0~2.7g/lもしくは約1.26~2.26g/L(SI Units)または約126~226mg/dL(従来の単位)である。SERPINA1遺伝子における変異は、血液または血清A1ATの低減されたレベルをもたらす。従って、ある特定の実施形態において、被験体は、血液または血清A1ATの低減されたレベル、例えば、A1ATの正常血清レベルの約80%もしくは約80%未満、A1ATの正常血清レベルの約60%もしくは約60%未満、A1ATの正常血清レベルの約40%もしくは約40%未満、またはA1ATの正常血清レベルの約10~15%もしくは約10~15%未満を有する。
【0069】
ある特定の実施形態において、上記被験体は、A1AT表現型/遺伝子型、例えば、PiMS、PiSS、PiMZ、PiSZ、およびPiZZから選択されるA1AT表現型/遺伝子型を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、PiMS表現型/遺伝子型およびA1ATの正常血清レベルの約80%もしくは約80%未満を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、PiSS表現型/遺伝子型およびA1ATの正常血清レベルの約60%もしくは約60%未満を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、PiMZ表現型/遺伝子型およびA1ATの正常血清レベルの約60%もしくは約60%未満を有する。ある特定の実施形態において、上記被験体は、PiSZ表現型/遺伝子型およびA1ATの正常血清レベルの約40%もしくは約40%未満を有する。特定の実施形態において、上記被験体は、PiZZ表現型/遺伝子型およびA1ATの正常血清レベルの約10~15%もしくは約10~15%未満を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、欠損症A1ATアレルおよびヌルA1ATアレル(例えば、A1AT RNA転写物を生じないRNAヌル、またはA1ATタンパク質を生じないタンパク質ヌル)から選択されるA1AT遺伝子型を有する。多くの欠損症A1ATアレルは、当該分野で公知であり、その主な例としては、E342Kアレル(またはZアレル)およびE264Vアレル(またはSアレル)が挙げられる。
【0070】
ある特定の実施形態において、上記被験体は、A1AT欠損症または他のNE関連肺疾患の1もしくはこれより多くの合併症および/または症状を有する。A1AT欠損症の合併症の例としては、喘息、気管支拡張症、肝硬変、COPD、呼吸不全、および血管炎が挙げられる。A1AT欠損症または他の肺疾患の例示的症状としては、息切れ(例えば、労作時および後に安静時)、喘鳴、喀痰生成、および再発性の呼吸器感染が挙げられる。
【0071】
ある特定の実施形態は、上記被験体において血清A1ATレベルおよび/またはA1AT表現型/遺伝子型を決定すること、ならびに上記被験体がA1AT表現型/遺伝子型および/または正常と比較して低減された血清レベルのA1ATレベルを有する場合に、薬学的組成物(ウリナスタチンポリペプチドを含む)を上記被験体に投与することを包含する。血清A1ATレベルおよび/またはA1AT表現型/遺伝子型を決定する方法は、当該分野で公知であり(例えば、Silverman and Sandhaus, N Engl J Med. 360(26):2749-57, 2009を参照のこと)、タンパク質電気泳動アッセイ、比濁分析アッセイまたは免疫比濁アッセイ、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、および放射免疫拡散法が挙げられる。ある特定の実施形態は、上記被験体が、PiMS、PiSS、PiMZ、PiSZ、およびPiZZから選択されるA1AT表現型/遺伝子型を有することが決定される場合に;上記被験体が、欠損症A1ATアレル(例えば、Zアレル、Sアレル)もしくはヌルA1ATアレルを有することが決定される場合に;ならびに/または上記被験体が、A1ATの正常血清レベルの約80%、60%、40%、20%、15%、もしくは10%、または約80%、60%、40%、20%、15%、もしくは10%未満である血清A1ATレベルを有することが決定される場合に、上記薬学的組成物を投与することを包含する。
【0072】
特定の実施形態は、A1AT欠損症を処置するための併用療法を含む。例えば、ある特定の実施形態は、上記ウリナスタチンポリペプチドをA1AT-欠損症を処置するためのさらなる治療剤(例えば、疾患関連A1AT変異体(例えば、ARO-ATT)に対して指向されるRNA干渉(RNAi)薬剤、A1AT増強療法、気管支拡張剤、吸入ステロイド、抗生剤、または抗ウイルス剤)と組み合わせて含む薬学的組成物を投与することを包含する。
【0073】
ある特定の実施形態において、上記NE関連肺疾患は、嚢胞性線維症(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遺伝子における変異と関連する常染色体劣性遺伝性障害)である。好中球エラスターゼは、嚢胞性線維症の肺疾患の重篤度に関する重要なリスク因子である(例えば、Dittrichら, Eur Respir J. 51(3):1701910, 2018を参照のこと)。従って、ある特定の実施形態において、上記被験体は、嚢胞性線維症およびCFTR遺伝子において変異を有する。
【0074】
ある特定の実施形態において、上記NE関連疾患は、皮膚または粘膜の疾患(例えば、Liuら, J Clin Invest. 105(1):113-123, 2000を参照のこと)を含む。皮膚または粘膜の疾患の例としては、ベーチェット病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、および川崎病が挙げられる。
【0075】
ある特定の実施形態において、上記NE関連疾患は、自己免疫疾患を含む。自己免疫疾患の例としては、重症筋無力症、温式自己免疫性溶血性貧血、甲状腺眼症、特発性血小板減少性紫斑病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、およびPLA2R+膜性腎症が挙げられる。
【0076】
ある特定の実施形態において、上記被験体は、参照標準または健常コントロールと比較して、増大した好中球エラスターゼ(NE)レベルおよび/または活性を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、血液/血清中の増大したNEレベル、喀痰中の増大したNEレベル、および/または皮膚もしくは粘膜中の増大したNEレベルを有する。例えば、いくつかの実施形態において、上記被験体におけるNEレベルは、参照標準または健常コントロールと比較して、約10%、20%,30%,40%,50%,60%,70%,80%,90%,100%,200%,300%,400%,500%,600%,700%,800%,900%,1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%,30%,40%,50%,60%,70%,80%,90%,100%,200%,300%,400%,500%,600%,700%,800%,900%,1000%もしくはこれより大きい程度、増大される。ある特定の実施形態は、上記被験体に由来するサンプル中でNEレベルおよび/または活性を決定すること、ならびに上記サンプルが、参照標準または健常コントロールと比較して増大したNEレベルおよび/または活性を有する場合、上記薬学的組成物(上記ウリナスタチンポリペプチドを含む)を上記被験体に投与することを包含する。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、喀痰サンプル(例えば、下気道の粘液を含む)、血液もしくは血清サンプル、または皮膚もしくは粘膜サンプルである。具体的実施形態において、上記喀痰サンプルは、気道好中球を含み、上記方法は、上記サンプル中の表面結合NEのレベルまたは活性を決定することを包含する、特定の実施形態において、上記方法は、上記サンプル中の遊離NEのレベルまたは活性を決定することを包含する。NEレベルおよび/または活性を決定するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Shoemarkら, Eur Respir J. 53(6):1900303, 2019を参照のこと)。
【0077】
本明細書で提供される方法は、「ウリナスタチンポリペプチド(ulinastatin polypeptide)」を含む薬学的組成物を投与することを包含する。「ウリナスタチン」(尿中トリプシンインヒビター(UTI)、HI-30、ASPI、またはビクニンともいわれる)は、SDSポリペプチドゲル電気泳動によって約30kDaの分子量を有する酸性糖タンパク質である。野生型ヒトウリナスタチンは、ヒト尿および血液中で見出され、2つのKunitzタイプドメインを含む多価Kunitzタイプセリンプロテアーゼインヒビターである。それは、全長タンパク質として発現され、ウリナスタチンの成熟形態または活性形態へとプロセシングされる。ある特定の実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、組換えウリナスタチンポリペプチドまたは尿由来ウリナスタチンポリペプチドである。具体的実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、ウリナスタチンの成熟形態、またはその改変体もしくはフラグメントもしくはドメインである。
【0078】
成熟ウリナスタチンおよびそのドメインの例示的なポリペプチド配列は、表U1中に提供される。
【表U1】
【0079】
したがって、いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、表U1から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも1つのウリナスタチン活性を有するその活性改変体もしくはフラグメントを含む、からなる、またはから本質的になる。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、
(a)配列番号1、もしくはO結合型グリコシル化および少なくとも1つのウリナスタチン活性に対する少なくとも1つの改変を有する配列番号1の改変体;
(b)少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する、配列番号1もしくは(a)のフラグメント;または
(c)(a)もしくは(b)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であり、少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する、(a)もしくは(b)の改変体、
を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0080】
ある特定のウリナスタチンポリペプチドは、改変されたO結合型グリコシル化部位を有する。ここで、セリン10は、十分に保存されたGlu-Gly-Ser-Gly(配列番号5) O結合型グリコシル化部位において結合されたコンドロイチン硫酸(CS)鎖を有する。上記CS鎖は、12~18個のジサッカリド反復(GlcUA 1,3-GalNac1,4-)および従来の結合領域(GlcUA 1-3Gal 1-3Gal 1- 4Xyl 1)-O-Serを伴い、比較的短い(Mwt 約8000)。GalNAcのうちの約30%(通常は、結合領域の近くにあるもの)は、C-4ヒドロキシル基において硫酸化される。炎症中に合成されるCS鎖は、より短く、硫酸化が減少している。従って、場合によっては、ウリナスタチンポリペプチドは、O結合型グリコシル化部位におけるグリコシル化を低減する、配列番号1のGlu-Gly-Ser-Gly(配列番号5)残基のうちの1またはこれより多くのものにおいて少なくとも1個の置換および/または欠失を含む。具体的実施形態において、ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号1の位置S10において置換もしくは欠失を、例えば、S10A置換(配列番号2を参照のこと)または他の保存的置換を含む。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号1の残基8~11のO結合型グリコシル化部位において置換もしくは欠失を、必要に応じて配列番号1の残基S10において置換もしくは欠失を、必要に応じてS10A置換を含むか、あるいは(b)配列番号1もしくは2の約20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、もしくは130個連続したアミノ酸を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0081】
場合によっては、ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号1または2の約20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、または130個連続したアミノ酸を含む、からなる、またはから本質的になる。場合によっては、ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号1または2の、約20~130個、20~120個、20~110個、20~100個、20~90個、20~80個、20~70個、20~60個、20~50個、20~40個、20~30個、30~130個、30~120個、30~110個、30~100個、30~90個、30~80個、30~70個、30~60個、30~50個、30~40個、40~130個、40~120個、40~110個、40~100個、40~90個、40~80個、40~70個、40~60個、40~50個、50~130個、50~120個、50~110個、50~100個、50~90個、50~80個、50~70個、50~60個、60~130個、60~120個、60~110個、60~100個、60~90個、60~80個、60~70個、70~130個、70~120個、70~110個、70~100個、70~90個、70~80個、80~130個、80~120個、80~110個、80~100個、80~90個、90~130個、90~120個、90~110個、90~100個、100~130個、100~120個、または100~110個連続したアミノ酸を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0082】
いくつかの実施形態において、ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号1もしくは2のドメイン1、またはその活性な改変体を含む、からなる、またはから本質的になる。ある特定の実施形態において、ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号1もしくは2のドメイン2、またはその活性な改変体を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0083】
ある特定の実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、残基N45においてN結合型グリカンおよび/または残基T17において非天然のO結合型グリカンを有し、上記残基は、配列番号1もしくは2によって定義される。
【0084】
いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、もしくは100%同一であり、配列番号2の位置S10において置換を、必要に応じてS10A置換を保持するアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる。具体的実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2を含む、からなる、またはから本質的になり、残基N45においてN結合型グリカンおよび/または残基T17においてO結合型グリカンを含む。
【0085】
ある特定の実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドを形成するために、Fc領域に融合され、上記ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチドは、少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する。ある特定の実施形態において、Fc領域は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM免疫グロブリン重鎖のCH2領域、CH3領域、CH4領域、および/またはヒンジ領域を含む、からなる、またはから本質的になる。場合によっては、上記Fc領域は、ヒトFc領域である。いくつかの実施形態において、Fc領域は、ヒトにおいて高いエフェクター機能を有する(例えば、IgG1 Fc領域またはIgG3 Fc領域)。いくつかの実施形態において、Fc領域は、ヒトにおいて低いエフェクター機能を有する(例えば、IgG2 Fc領域またはIgG4 Fc領域)。
【0086】
例示的な野生型ヒトIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびIgM免疫グロブリンのCH2、CH3、CH4、およびヒンジ領域のアミノ酸は、以下の表F1に示される。
【表F1-1】

【表F1-2】

【表F1-3】
【0087】
従って、いくつかの実施形態において、ウリナスタチン-Fc融合ポリペプチド中のFc領域は、表F1のヒトFc領域アミノ酸配列(その改変体、フラグメント、ホモログ、オルソログ、パラログ、および組み合わせを含む)のうちの1またはこれより多くのものを含む、からなる、またはから本質的になる。ある特定の例示的実施形態は、約20~50個、20~100個、20~150個、20~200個、20~250個、20~300個、20~400個、50~100個、50~150個、50~200個、50~250個、50~300個、50~400個、100~150個、100~200個、100~250個、100~300個、100~350個、100~400個、200~250個、200~300個、200~350個、または200~400個のアミノ酸の長さのサイズの範囲に及ぶFc領域を含み、必要に応じて、表F1の配列のうちのいずれか1またはこれより多くのものを含む、からなる、またはから本質的になる。ある特定の実施形態は、約50個まで、60個まで、70個まで、80個まで、90個まで、100個まで、110個まで、120個まで、130個まで、140個まで、150個まで、160個まで、170個まで、180個まで、190個まで、200個まで、210個まで、220個まで、230個まで、240個まで、250個まで、300個まで、350個まで、400個までまたはこれより多くのアミノ酸のFc領域を含み、必要に応じて、表F1のアミノ酸配列のうちのいずれか1またはこれより多くのものを含む、からなる、またはから本質的になる。
【0088】
ある特定のウリナスタチンFc融合ポリペプチドは、改変されたFc領域(野生型Fc領域と比較して変化した特性または生物学的活性を有するFc領域を含む)を含む。特定の実施形態において、改変されたFc領域は、野生型Fc領域と比較して特徴的な少なくとも1つの変化したエフェクター機能および/または薬物動態(PK)を有する。従って、ある特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、変化した機能的特製(例えば、低減もしくは増強されたCDC、ADCC、もしくはADCP活性、特定のFcγRに対して低減もしくは増強された結合親和性、または増大した血清半減期)を有する改変されたFc領域を有する。具体的実施形態は、相当する野生型Fc領域と比較して、FcR(例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、FcγRIIIb、および/またはFcRn)に対する変化した(例えば、増大した、減少した)結合;薬物動態特性(例えば、安定性もしくは半減期、バイオアベイラビリティー、組織分布、分布容積、濃度、消失速度定数、消失速度、曲線下面積(AUC)、クリアランス、Cmax、tmax、Cmin、および/または変動);免疫原性;補体結合もしくは活性化;および/またはCDC/ADCC/ADCP関連活性を有する改変されたFc領域を含む。ヒトおよび/またはマウス起源の改変されたFc領域が含まれる。
【0089】
ある特定の実施形態において、ペプチドリンカー配列は、ウリナスタチンポリペプチドおよびFc領域を、各ポリペプチドがその所望の二次構造および三次構造へと折りたたまれることを確実にするためにならびに/または所望であれば、ウリナスタチンポリペプチドからシグナルペプチドの切断を促進するために十分な距離だけ分離するために使用され得る。このようなペプチドリンカー配列は、当該分野で周知の標準的技術を使用して、融合ポリペプチドへと組み込まれ得る。
【0090】
ある特定のペプチドリンカー配列は、以下の例示的要因に基づいて選択され得る:(1)それらが可撓性の伸長されたコンホメーションを採用できること;(2)それらが第1のおよび第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造を採用できないこと;(3)それらの生理学的安定性;ならびに(4)ポリペプチドの機能的エピトープ、もしくは他の特徴と反応し得る疎水性もしくは荷電された残基がないこと。例えば、George and Heringa, J Protein Eng. 15:871-879, 2002を参照のこと。
【0091】
リンカー配列は、概して1~約200個のアミノ酸の長さであり得る。特定のリンカーは、約1~200個のアミノ酸、1~150個のアミノ酸、1~100個のアミノ酸、1~90個のアミノ酸、1~80個のアミノ酸、1~70個のアミノ酸、1~60個のアミノ酸、1~50個のアミノ酸、1~40個のアミノ酸、1~30個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、1~10個のアミノ酸、1~5個のアミノ酸、1~4個のアミノ酸、1~3個のアミノ酸、または約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、60個、70個、80個、90個、100個もしくはこれより多くのアミノ酸の全体的なアミノ酸長を有し得る。
【0092】
ある特定の実施形態において、ウリナスタチンポリペプチド(改変体、フラグメント、および融合ポリペプチドを含む)は、少なくとも1つのウリナスタチン活性(プロテアーゼインヒビター活性および抗炎症活性を含む)を有する。いくつかの実施形態において、ウリナスタチンポリペプチドは、約もしくは少なくとも約1000~3000 U/mg、または約もしくは少なくとも約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、もしくは3000 U/mgの比活性を有し、ここで1ユニット(U)は、2μg トリプシンの活性を50%程度阻害するウリナスタチンポリペプチドの量である。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、好中球エラスターゼ(NE)インヒビター活性を有する。ある特定の実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、好中球エラスターゼ活性のインビトロアッセイ(実施例1を参照のこと)において約10μg/mlもしくは約10μg/ml未満、例えば、約10μg/ml、9μg/ml、8μg/ml、7μg/ml、6μg/ml、5μg/ml、4μg/ml、3μg/ml、2μg/ml、もしくは1μg/mlまたはより低い値(その間の全ての範囲および整数(例えば、約1~10μg/ml、1~9μg/ml、1~8μg/ml、1~7μg/ml、1~6μg/ml、1~5μg/ml、1~4μg/ml、1~3μg/ml、1~2μg/ml、2~10μg/ml、2~9μg/ml、2~8μg/ml、2~7μg/ml、2~6μg/ml、2~5μg/ml、2~4μg/ml、2~3μg/ml、3~10μg/ml、3~9μg/ml、3~9μg/ml、3~7μg/ml、3~6μg/ml、3~5μg/ml、3~4 10μg/ml)を含む)のIC50を有する。いくつかの実施形態において、上記ウリナスタチンポリペプチドは、好中球エラスターゼ活性のインビトロアッセイにおいて、約100nMもしくはこれより低い値のIC50、必要に応じて約100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、もしくは10nMまたはこれより低い値(その間の全ての範囲および整数を含む)のIC50、必要に応じて、約10~100nM、10~90nM、10~80nM、10~70nM、10~60nM、10~50nM、10~40nM、10~30nM、10~20nM、20~100nM、20~90nM、20~80nM、20~70nM、20~60nM、20~50nM、20~40nM、20~30nM、30~100nM、30~90nM、30~80nM、30~70nM、30~60nM、30~50nM、30~40nM、40~100nM、40~90nM、40~80nM、40~70nM、40~60nM、もしくは40~50nMのIC50を有する。ある特定の実施形態において、上記少なくとも1つのウリナスタチン活性は、生理学的条件の(例えば、温度、塩分、および/またはpHの)下で測定または特徴づけられる。
【0093】
上記で注記されるように、ある特定の実施形態は、本明細書で記載されるウリナスタチンポリペプチドまたは融合ポリペプチドの「改変体(variant)」を含む。「改変体」配列とは、1またはこれより多くの置換、欠失(例えば、短縮)、付加、および/または挿入によって参照配列とは異なるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列に言及する。従って、ある特定の改変体は、本明細書で記載される参照配列のフラグメントを含む。改変体ポリペプチドは、生物学的に活性である、すなわち、それらは、参照ポリペプチドの酵素活性または結合活性を継続して有する。このような改変体は、例えば、遺伝的多型および/またはヒトの操作から生じ得る。
【0094】
場合によっては、改変体は、1またはこれより多くの「保存的(conservative)変化または置換を含む。「保存的置換(conservative substitution)」は、1つのアミノ酸が、類似の特性を有する他のアミノ酸の代わりに使用されることであり、その結果、ペプチド化学の当業者は、上記ポリペプチドの二次構造およびヒドロパシー性質が実質的に変化しないと予測する。上記のように、改変は、本開示のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造において行われ得、望ましい特性を有する改変体または誘導体ポリペプチドをコードする機能的分子をなお獲得し得る。ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させて、本明細書で記載されるポリペプチドの等価な、またはさらに改善された改変体または部分を作製することが望ましい場合、当業者は、代表的には、そのコードするDNA配列のコドンのうちの1またはこれより多くのものを変化させる。
【0095】
例えば、ある特定のアミノ酸は、例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位のような構造との相互作用的結合能力の明らかな喪失なしに、タンパク質構造において他のアミノ酸の代わりに使用され得る。タンパク質の生物学的な機能的活性を定義するものは、そのタンパク質の相互作用的能力および性質であることから、ある特定のアミノ酸配列置換は、タンパク質配列、および当然のことながら、その根底のDNAコード配列において行われ得、にも拘わらず、同様の特性を有するタンパク質を獲得し得る。従って、種々の変更が、本開示の組成物のペプチド配列、または上記ペプチドをコードする相当するDNA配列において、それらの有用性を明らかに喪失することなしに行われ得ることが企図される。
【0096】
このような変更を行うにあたって、アミノ酸のヒドロパシー指数が考慮され得る。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与することにおけるアミノ酸ヒドロパシー指数の重要性は、当該分野で概して理解されている(Kyte & Doolittle, 1982(本明細書に参考として援用される))。アミノ酸の相対的ヒドロパシー特徴は、得られるタンパク質の二次構造(これは、次に、そのタンパク質と、他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を定義する)に寄与することが許容されている。各アミノ酸は、その疎水性および電荷特性に基づいて、ヒドロパシー指数が割り当てられている(Kyte & Doolittle, 1982)。これらの値は、以下である: イソロイシン(+4.5); バリン(+4.2); ロイシン(+3.8); フェニルアラニン(+2.8); システイン(+2.5); メチオニン(+1.9); アラニン(+1.8); グリシン(-0.4); スレオニン(-0.7); セリン(-0.8); トリプトファン(-0.9); チロシン(-1.3); プロリン(-1.6); ヒスチジン(-3.2); グルタミン酸(-3.5); グルタミン(-3.5); アスパラギン酸(-3.5); アスパラギン(-3.5); リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。ある特定のアミノ酸が、類似のヒドロパシー指数もしくはスコアを有する他のアミノ酸によって置換され得、類似の生物学的活性を有するタンパク質をなお生じ得る、すなわち、生物学的機能的に等価なタンパク質をなお獲得し得ることは、当該分野で公知である。このような変更を行うにあたって、ヒドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内であるものがさらにより特に好ましい。
【0097】
類似のアミノ酸の置換が親水性に基づいて効果的に行われ得ることはまた、当該分野で理解される。米国特許第4,554,101号(具体的に、その全体において本明細書に参考として援用される)は、タンパク質の最大の局所的な平均親水性が、その隣接するアミノ酸の親水性によって左右される場合、そのタンパク質の生物学的特性と相関することを述べている。米国特許第4,554,101号において詳述されるように、以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている: アルギニン(+3.0); リジン(+3.0); アスパラギン酸(+3.0±1); グルタミン酸(+3.0±1); セリン(+0.3); アスパラギン(+0.2); グルタミン(+0.2); グリシン(0); スレオニン(-0.4); プロリン(-0.5±1); アラニン(-0.5); ヒスチジン(-0.5); システイン(-1.0); メチオニン(-1.3); バリン(-1.5); ロイシン(-1.8); イソロイシン(-1.8); チロシン(-2.3); フェニルアラニン(-2.5); トリプトファン(-3.4)。アミノ酸が、類似の親水性値を有する別のアミノ酸で置換され得、生物学的に等価な、および特に、免疫学的に等価なタンパク質をなお獲得し得ることは、理解される。このような変更において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内であるものがさらにより特に好ましい。
【0098】
上記で概説されるように、アミノ酸置換は一般に、それ故に、アミノ酸側鎖の置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。種々の前述の特性を考慮に入れる例示的な置換は、当業者に周知であり、以下を含む: アルギニンおよびリジン; グルタミン酸およびアスパラギン酸; セリンおよびスレオニン; グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン。
【0099】
アミノ酸置換は、その残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質における類似性に基づいてさらに行われ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む;正に荷電したアミノ酸は、リジンおよびアルギニンを含む;類似の親水性値を有する荷電していない極性ヘッド基を有するアミノ酸は、ロイシン、イソロイシンおよびバリン; グリシンおよびアラニン; アスパラギンおよびグルタミン; ならびにセリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンを含む。保存的な変更を表し得るアミノ酸の他の群としては、以下が挙げられる: (1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr; (2)cys、ser、tyr、thr; (3)val、ile、leu、met、ala、phe; (4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0100】
改変体は、同様にまたは代わりに、非保存的な変更を含み得る。いくつかの実施形態において、改変体ポリペプチドは、約10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個のアミノ酸、または約10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満のアミノ酸、またはさらには1個のアミノ酸の置換、欠失または付加によって、天然の配列または参照配列とは異なる。改変体は、同様に(または代わりに)、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造、酵素活性、および/またはヒドロパシー性質に対して最小限の影響を有し得るアミノ酸の欠失または付加によって改変され得る。
【0101】
ある特定の実施形態において、ポリペプチド配列は、約、少なくとも約、または最大で、約5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、110個、120個、130個、もしくは140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、260個、270個、280個、290個、300個、310個、320個、330個、340個、350個、360個、370個、380個、390個、400個、410個、420個、430個、440個、450個、460個、470個、480個、490個、500個、510個、520個、530個、540個、550個、560個、570個、580個、590個、600個、610個、620個、630個、640個、650個、660個、670個、680個、690個、700個、710個、720個、730個、740個、750個、760個、770個、780個、790個、800個、800個、810個、820個、830個、840個、850個、860個、870個、880個、890個、900個、900個、910個、920個、930個、940個、950個、960個、970個、980個、990個、1000個またはこれより多くの連続したアミノ酸の長さ(その間の全ての整数を含み、参照配列(例えば、表U1、配列表を参照のこと)の全てまたは一部を含み得る)である。
【0102】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド配列は、約5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、260個、270個、280個、290個、300個、310個、320個、330個、340個、350個、360個、370個、380個、390個、400個、410個、420個、430個、440個、450個、460個、470個、480個、490個、500個、510個、520個、530個、540個、550個、560個、570個、580個、590個、600個、610個、620個、630個、640個、650個、660個、670個、680個、690個、700個、710個、720個、730個、740個、750個、760個、770個、780個、790個、800個、800個、810個、820個、830個、840個、850個、860個、870個、880個、890個、900個、900個、910個、920個、930個、940個、950個、960個、970個、980個、990個、1000個、または約5個以下、6個以下、7個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、21個以下、22個以下、23個以下、24個以下、25個以下、26個以下、27個以下、28個以下、29個以下、30個以下、31個以下、32個以下、33個個以下、34個個以下、35個個以下、36個以下、37個以下、38個以下、39個以下、40以下、41個以下、42個以下、43個以下、44個以下、45個以下、46個以下、47個以下、48個以下、49個以下、50個以下、55個以下、60個以下、65個以下、70個以下、75個以下、80個以下、85個以下、90個以下、95個以下、100個以下、110個以下、120個以下、130個以下、140個以下、150個以下、160個以下、170個以下、180個以下、190個以下、200個以下、210個以下、220個以下、230個以下、240個以下、250個以下、260個以下、270個以下、280個以下、290個以下、300個以下、310個以下、320個以下、330個以下、340個以下、350個以下、360個以下、370個以下、380個以下、390個以下、400個以下、410個以下、420個以下、430個以下、440個以下、450個以下、460個以下、470個以下、480個以下、490個以下、500個以下、510個以下、520個以下、530個以下、540個以下、550個以下、560個以下、570個以下、580個以下、590個以下、600個以下、610個以下、620個以下、630個以下、640個以下、650個以下、660個以下、670個以下、680個以下、690個以下、700個以下、710個以下、720個以下、730個以下、740個以下、750個以下、760個以下、770個以下、780個以下、790個以下、800個以下、800個以下、810個以下、820個以下、830個以下、840個以下、850個以下、860個以下、870個以下、880個以下、890個以下、900個以下、900個以下、910個以下、920個以下、930個以下、940個以下、950個以下、960個以下、970個以下、980個以下、990個以下、1000個以下、またはこれより多くの連続したアミノ酸(その間の全ての整数を含み、参照配列(例えば、表U1、配列表を参照のこと)の全てまたは一部を含み得る)からなる。
【0103】
ある特定の実施形態において、ポリペプチド配列は、約10~1000個、10~900個、10~800個、10~700個、10~600個、10~500個、10~400個、10~300個、10~200個、10~100個、10~50個、10~40個、10~30個、10~20個、20~1000個、20~900個、20~800個、20~700個、20~600個、20~500個、20~400個、20~300個、20~200個、20~100個、20~50個、20~40個、20~30個、50~1000個、50~900個、50~800個、50~700個、50~600個、50~500個、50~400個、50~300個、50~200個、50~100個、100~1000個、100~900個、100~800個、100~700個、100~600個、100~500個、100~400個、100~300個、100~200個、200~1000個、200~900個、200~800個、200~700個、200~600個、200~500個、200~400個、または200~300個連続したアミノ酸(その間の全ての整数を含み、参照配列(例えば、表U1、配列表を参照のこと)の全てまたは一部を含む)である。ある特定の実施形態において、任意の参照ポリペプチドのC末端またはN末端領域は、短縮されたポリペプチドが、参照ポリペプチド(例えば、表U1、配列表を参照のこと)の結合特性および/または活性を保持する限りにおいて約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個、もしくは100個またはこれより多くのアミノ酸、あるいは約10~50個、20~50個、50~100個もしくはこれより多くのアミノ酸(その間の全ての整数および範囲を含む(例えば、101個、102個、103個、104個、105個)程度短縮され得る。代表的には、生物学的に活性なフラグメントは、上記フラグメントが由来する生物学的に活性な参照ポリペプチドの活性の約1%、約5%、約10%、約25%、または約50%以上を有する。
【0104】
一般に、改変体は、参照ポリペプチド配列(例えば、表U1、配列表を参照のこと)と少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99% 類似性または配列同一性または配列相同性を示す。さらに、約1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、もしくは100個のアミノ酸(その間の全ての整数および範囲を含む)の付加(例えば、C末端付加、N末端付加、両方)、欠失、短縮、挿入、または置換(例えば、保存的置換)によって天然配列または親配列とは異なるが、親または参照ポリペプチド配列(例えば、表U1、配列表を参照のこと)の特性または活性を保持する配列が企図される。
【0105】
いくつかの実施形態において、改変体ポリペプチドは、少なくとも1個程度、しかし50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、15個未満、10個未満、8個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満または2個未満のアミノ酸残基程度、参照配列とは異なる。ある特定の実施形態において、改変体ポリペプチドは、少なくとも1%程度、しかしその残基のうちの20%、15%、10%もしくは5%程度、参照配列とは異なる(この比較がアラインメントを要する場合、上記配列は、最大類似性のために整列されるべきである。欠失もしくは挿入、またはミスマッチからの「ループ(looped)」アウト配列は、差異と見做される)。
【0106】
配列間の配列類似性または配列同一性(これらの用語は、本明細書で交換可能に使用される)の計算は、以下のように行われる。2つのアミノ酸配列のまたは2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列は、最適な比較目的のために整列される(例えば、ギャップは、最適なアラインメントのために、第1のおよび第2のアミノ酸配列または核酸配列のうちの一方または両方において導入され得、相同でない配列は、比較目的のために無視され得る)。ある特定の実施形態において、比較目的で整列される参照配列の長さは、その参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、およびさらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。相当するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドは、次いで、比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における相当する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合、その分子は、その位置において同一である。
【0107】
2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数、および各ギャップの長さ(これは、その2つの配列の最適なアラインメントにために導入される必要がある)を考慮に入れて、それら配列が共有する同一の位置の数の関数である。
【0108】
配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Needleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48: 444-453, 1970)アルゴリズムを使用して決定され、このアルゴリズムは、Blossum 62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれか、ならびにギャップ重み16、14、12、10、8、6、または4および長さ重み1、2、3、4、5、または6を使用して、GCGソフトウェアパッケージの中のGAPプログラムに組み込まれている。さらに別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリクス、ならびにギャップ重み40、50、60、70、または80および長さ重み1、2、3、4、5、または6を使用して、GCGソフトウェアパッケージの中のGAPプログラムを使用して決定される。パラメーターの特に好ましいセット(および別段特定されなければ、使用されるべきセット)は、ギャップペナルティー12、ギャップ伸長ペナルティー4、およびフレームシフトギャップペナルティー5でのBlossum 62スコアリングマトリクスである。
【0109】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM120重み残基表、ギャップ長さペナルティー12およびギャップペナルティー4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれているE.Meyers and W.Miller(Cabios. 4:11-17, 1989)のアルゴリズムを使用して決定され得る。
【0110】
本明細書で記載される配列は、公のデータベースに対する検索を行って、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を特定するために、「クエリ配列」として使用され得る。このような検索は、Altschulら(1990, J. Mol. Biol, 215: 403-10)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行われ得る。BLASTヌクレオチド検索は、本明細書で記載される核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行われ得る。BLASTタンパク質検索は、本明細書で記載されるタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行われ得る。比較目的でギャップ付きのアラインメントを得るために、Gapped BLASTは、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)において記載されるように利用され得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用され得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、上記で注記されるように、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドは、BLASTアラインメントツールを使用して評価され得る。局所的アラインメントは単純に、配列セグメントの対(配列の各々からの一方が、比較される)からなる。Smith-WatermanまたはSellersアルゴリズムの改変は、スコアが伸長またはトリミングによって改善され得ない全てのセグメント対(高スコアセグメント対(HSPs)といわれる)を見出す。BLASTアラインメントの結果は、BLASTスコアが偶然のみから予測され得る可能性を示す統計的尺度を含む。
【0112】
生のスコア、Sは、ギャップおよび各整列された配列と関連する置換の数から計算され、ここで類似性スコアが高いほど、より有意なアラインメントが示される。置換スコアは、ルックアップテーブルによって与えられる(PAM、BLOSUMを参照のこと)。
【0113】
ギャップスコアは、代表的には、G、ギャップオープニングペナルティーおよびL、ギャップ伸長ペナルティーの合計として計算される。長さnのギャップに関しては、そのギャップコストは、G+Lnである。ギャップコスト、GおよびLの選択は、経験的であるが、Gの高値(10~15)、例えば、11、およびLの低値(1~2)、例えば、1を選択することは、慣例的である。
【0114】
ビットスコア、S’は、生のアラインメントスコアSから導出され、ここでは使用されるスコア付けシステムの統計的特性が考慮されている。ビットスコアは、上記スコア付けシステムに関して正規化され、従って、それらは、異なる検索からのアラインメントスコアを比較するために使用され得る。用語「ビットスコア(bit score)」および「類似性スコア(similarity score)」は、交換可能に使用される。上記ビットスコアは、アラインメントがどの程度よいかの表示を示し;スコアが高いほど、アラインメントはよい。
【0115】
E値、または期待値は、類似のスコアを有する配列が偶然にデータベースに起こる可能性を記載する。それは、偶然にデータベース検索において起こると予測されるSに等しいかまたはこれより良好なスコアを有する異なるアラインメントの数の推測である。E値が小さいほど、アラインメントはより有意である。例えば、e-117のE値を有するアラインメントは、類似のスコアを有する配列が、単に偶然に起こる可能性が非常に低いことを意味する。さらに、アミノ酸のランダムな対を整列させるための予測スコアは、負であることが必要とされ、そうでなければ、長いアラインメントは、整列されたセグメントが関連するか否かとは無関係に、高いスコアを有する傾向にある。さらに、BLASTアルゴリズムは、適切な置換マトリクス、ヌクレオチドまたはアミノ酸を使用し、ギャップがあるアラインメントに関しては、ギャップ作成および伸長ペナルティーを使用する。例えば、ポリペプチド配列のBLASTアラインメントおよび比較は、代表的には、BLOSUM62マトリクス、ギャップ存在ペナルティー11およびギャップ伸長ペナルティー1を使用して行われる。
【0116】
いくつかの実施形態において、配列類似性スコアは、BLOSUM62マトリクス、ギャップ存在ペナルティー11およびギャップ伸長ペナルティー1を使用して行ったBLAST分析から報告される。
【0117】
特定の実施形態において、本明細書で提供される配列同一性/類似性スコアは、以下のパラメーターを使用するGAP Version 10(GCG, Accelrys, San Diego, Calif.)を使用して得られる値に言及する: GAP重み50および長さ重み3、ならびにnwsgapdna.cmpスコア付けマトリクスを使用するヌクレオチド配列に関する%同一性および%類似性; GAP重み8および長さ重み2、ならびにBLOSUM62スコア付けマトリクスを使用するアミノ酸配列に関する%同一性および%類似性(Henikoff and Henikoff, PNAS USA. 89:10915-10919, 1992)。GAPは、Needleman and Wunschのアルゴリズム(J Mol Biol. 48:443-453, 1970)を使用して、マッチの数を最大化しかつギャップの数を最小化する2つの完全な配列のアラインメントを見出す。
【0118】
特定の実施形態において、上記改変体ポリペプチドは、少なくとも約50、60、70、80、90、100、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、またはこれより高い(その間の全ての整数および範囲を含む)BLASTビットスコアまたは配列類似性スコアを生じるように、参照ポリペプチド配列(例えば、表U1、配列表を参照のこと)と最適に整列され得るアミノ酸配列を含む。ここでBLASTアラインメントは、BLOSUM62マトリクス、ギャップ存在ペナルティー11、およびギャップ伸長ペナルティー1を使用した。
【0119】
上記で注記されるように、参照ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、短縮、付加、および挿入を含む種々の方法で変更され得る。このような操作の方法は、当該分野で概して公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列改変体は、DNAにおける変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当該分野で周知である。例えば、Kunkel(PNAS USA. 82: 488-492, 1985); Kunkelら(Methods in Enzymol. 154: 367-382, 1987)、米国特許第4,873,192号、Watson, J. D.ら(「Molecular Biology of the Gene」, 第4版, Benjamin/Cummings, Menlo Park, Calif., 1987)およびそれらの中で引用される参考文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoffら(1978) Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)のモデルにおいて見出され得る。
【0120】
このような改変によって作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子生成物をスクリーニングし、選択された特性を有する遺伝子生成物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするための方法は、当該分野で公知である。このような方法は、参照ポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発によって生成される遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングのために適応可能である。1つの例として、ライブラリーにおいて機能的変異体の頻度を増強する技術である再帰的アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)は、ポリペプチド改変体を特定するためにスクリーニングアッセイと組み合わせて使用され得る(Arkin and Yourvan, PNAS USA 89: 7811-7815, 1992; Delgraveら, Protein Engineering. 6: 327-331, 1993)。
【0121】
インビボでの使用に関して、本明細書で記載されるウリナスタチンポリペプチドおよび融合ポリペプチドは、薬学的組成物または治療用組成物の一部として代表的には製剤化される。ある特定の実施形態は、従って、本明細書で記載されるウリナスタチンポリペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物(例えば、治療用組成物または薬学的組成物)を使用する。「キャリア(carrier))」とは、使用される投与量および濃度において上記キャリアに曝されている細胞または哺乳動物に対して非毒性である、例えば、薬学的にまたは生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定化剤を含み得る。しばしば、上記生理学的に受容可能なキャリアは、水性のpH緩衝化溶液である。生理学的に受容可能なキャリアの例としては、以下が挙げられる: リン酸、クエン酸、および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート20(TWEENTM) ポリエチレングリコール(PEG)、およびポロキサマー(PLURONICSTM)など)。
【0122】
上記組成物は、薬学分野で周知の方法論によって調製され得る。例えば、組成物は、ウリナスタチンポリペプチド(本明細書で記載されるとおり)および必要に応じて緩衝液もしくは賦形剤のうちの1またはこれより多くのものを含む組成物と、必要に応じて、溶液を形成するための滅菌蒸留水とを合わせることによって、調製され得る。ある特定の組成物は、生理食塩水溶液(例えば、0.9% 通常生理食塩水)またはデキストロース(例えば、約1~10% デキストロース、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10% デキストロース)を含む。界面活性剤は、均質な溶液または懸濁物の形成を容易にするために添加され得る。界面活性剤は、水性送達系において上記ポリペプチドの溶解または均質な懸濁物を容易にするために、組成物中にウリナスタチンポリペプチドと共有結合的に相互作用する化合物である。
【0123】
薬学的キャリアは、液体、半液体、または固体であり得る。非経口、皮内、皮下または局所適用のために使用される溶液または懸濁物は、例えば、滅菌希釈剤(例えば、水)、生理食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水; PBS)、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗微生物剤(例えば、ベンジルアルコールおよびメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウム)およびキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));緩衝液(例えば、アセテート、シトレートおよびホスフェート)を含み得る。静脈内に(例えば、IV注入によって)投与される場合、適切なキャリアとしては、生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、ならびに濃化剤および可溶化剤(例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物)を含む溶液を含む。
【0124】
具体的な組成物は、(i)O結合型グリコシル化部位においてグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号5)において改変されたO結合型グリコシル化部位、(ii)残基N45においてN結合型グリカン、および(iii)残基T17においてO結合型グリカンを含む、T17-O結合型グリカンを有する成熟ウリナスタチンポリペプチド(上記残基は、本明細書で記載されるように、配列番号1または2によって定義される)、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。成熟ウリナスタチンポリペプチド、およびその活性な改変体およびフラグメントのさらなる例は、本明細書に記載される(例えば、表U1および関連する開示を参照のこと)。
【0125】
ある特定の組成物は、ウリナスタチン糖化型(glycoform)の混合物を含む。例えば、ある特定の組成物は、(a)T17-O結合型グリカンを含む第1の成熟ウリナスタチンポリペプチド(本明細書で記載されるとおり)、および(b)残基N45においてN結合型グリカンを含み、かつ残基T17においてO結合型グリカンを含まない第2の成熟ウリナスタチンポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、上記第2の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号5)において改変されたO結合型グリコシル化部位(本明細書で記載されるとおり)、例えば、O結合型グリコシル化部位においてグリコシル化を低減するS10A置換を有する。いくつかの実施形態において、上記(b)の第2の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2または4と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になり、上記改変されたO結合型グリコシル化部位(例えば、上記S10A置換)および残基N45においてN結合型グリカンを含むかまたは保持し、残基T17においてO結合型グリカンを含まず、かつ少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する。いくつかの実施形態において、(a):(b)の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、約20:1~約1:20の範囲に及ぶ比、必要に応じて 約20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、または1:20において、上記組成物中に存在する。
【0126】
ある特定の組成物は、タンパク質ベースまたは重量ベースで実質的に純粋である。例えば、上記のように、ある特定の組成物は、タンパク質ベースまたは重量-重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%の純度を有し、実質的に凝集物を含まず、例えば、約10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、または5%未満が凝集されている。ある特定の組成物は、本明細書で記載されるように、実質的にエンドトキシンを含まない。具体的実施形態において、上記組成物は、純度の以下の決定のうちの1またはこれより多くのものを有する: 約1 EU エンドトキシン/mg タンパク質未満、約100ng 宿主細胞タンパク質/mg タンパク質未満、約10pg 宿主細胞DNA/mg タンパク質未満、および/または実質的に凝集物を含まない。
【0127】
ある特定の組成物は、薬学的に受容可能なpHにある。例えば、ある特定の実施形態において、上記薬学的に受容可能なpHは、約5.0~約8.0(±0.01~±0.1)、または約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0(±0.01~±0.1)(その間の全ての整数および範囲を含む)である。
【0128】
ある特定の実施形態において、ウリナスタチンポリペプチドは、ヒト血液の生理学的pHに近いpHにおいて少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する。従って、いくつかの実施形態において、ウリナスタチンポリペプチドは、約4~約10.8、または約6~約8、または約6.5~約7.5のpHにおいて少なくとも1つのウリナスタチン活性を有する。ある特定の実施形態において、ウリナスタチンポリペプチドは、約pH7.4において有効なウリナスタチン活性を有する。
【0129】
投与は、種々の異なる経路によって達成され得る。投与様式は、処置または防止されるべき状態の性質に依存する。例えば、組成物は、経口的に、鼻内に、腹腔内に、非経口的に、静脈内に、リンパ内に(intralymphatically)、腫瘍内に、筋肉内に、間質に、腸内に、動脈内に、皮下に、眼内に、滑液嚢内に、経上皮的に、および/または経皮的に投与され得る。特定の実施形態は、静脈内(IV)、皮下(SC)、吸入、局所、または経口投与によるものを含む。
【0130】
特定の実施形態は、上記薬学的組成物を、吸入投与によって肺疾患を有する上記被験体に投与することを含む。例えば、ある特定の実施形態は、ネブライザ、計量式吸入器、または乾燥散剤吸入器での投与を含む。
【0131】
具体的実施形態は、上記薬学的組成物を、皮膚または粘膜の疾患を有する上記被験体に、局所投与または経口投与によって、例えば、洗口液として投与することを包含する。局所投与に関しては、上記キャリアは、溶液、エマルジョン、軟膏剤、またはゲル基剤を含み得る。上記基剤は、例えば、以下のうちの1種またはこれより多くのものを含み得る: ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、ミネラルオイル、希釈剤(例えば、水およびアルコール)、ならびに乳化剤および安定化剤。濃化剤は、局所投与のための治療用組成物または薬学的組成物中に存在し得る。経皮的投与が意図される場合、上記組成物は、経皮的パッチまたはイオントフォレシスデバイスを含み得る。
【0132】
正確な投与量および処置の継続期間は、処置されている疾患の関数であり、公知の試験プロトコールを経験的に使用して、または上記組成物を当該分野で公知のモデルシステムにおいて試験し、そこから外挿することによって、決定され得る。対照臨床試験がまた、行われ得る。投与量はまた、緩和されるべき状態の重篤度に伴って変動し得る。薬学的組成物は、一般的に製剤化され、所望されない副作用を最小限にしながら、治療上有用な効果を発揮するために投与される。上記組成物は、一度に投与されてもよいし、多くのより小さな用量へと分割して、時間間隔を空けて投与されることになってもよい。任意の特定の被験体に関して、具体的な投与レジメンが、個々のニーズに従って経時的に調節され得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、投与量は、1日に約1回から2週間または3週間ごとに約1回まで、投与され得る。例えば、ある特定の実施形態において、投与量は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日ごとに約1回、または約1週間ごとに1回、または1週間ごとに約2回、もしくは1週間ごとに約3回、または2週間もしくは3週間ごとに約1回、投与される。
【0134】
ある特定の実施形態は、約1×10 U~約1×10U~約100×10 U、または約1×10 U、2×10 U、3×10 U、4×10 U、5×10 U、6×10 U、7×10 U、8×10 U、9×10 U、1×10U、2×10U、3×10U、4×10U、5×10U、6×10U、7×10U、8×10U、9×10U、10×10U、11×10U、12×10U、15×10U、20×10U、30×10U、40×10U、50×10U、60×10U、70×10U、80×10U、または100×10U(その間の全ての範囲および整数を含む)の投与量(例えば、1日投与量)において、ウリナスタチンポリペプチドを投与することを包含する。ある特定の実施形態は、約50,000 U/kg~約1,000,000 U/kg(その間の全ての整数および範囲を含む)の投与量(例えば、1日投与量)(例えば、約50,000U/kg、55,000U/kg、60,000U/kg、65,000U/kg、70,000U/kg、75,000U/kg、80,000U/kg、85,000U/kg、90,000U/kg、95,000U/kg、100,000U/kg、115,000U/kg、120,000U/kg、125,000U/kg、130,000U/kg、135,000U/kg、140,000U/kg、145,000U/kg、150,000U/kg、155,000U/kg、160,000U/kg、165,000U/kg、170,000U/kg、175,000U/kg、180,000U/kg、185,000U/kg、190,000U/kg、195,000U/kg、200,000U/kg、200,000U/kg、215,000U/kg、220,000U/kg、225,000U/kg、230,000U/kg、235,000U/kg、240,000U/kg、245,000U/kg、250,000U/kg、255,000U/kg、260,000U/kg、265,000U/kg、270,000U/kg、275,000U/kg、280,000U/kg、285,000U/kg、290,000U/kg、295,000U/kg、300,000U/kg、300,000U/kg、315,000U/kg、320,000U/kg、325,000U/kg、330,000U/kg、335,000U/kg、340,000U/kg、345,000U/kg、350,000U/kg、355,000U/kg、360,000U/kg、365,000U/kg、370,000U/kg、375,000U/kg、380,000U/kg、385,000U/kg、390,000U/kg、395,000U/kg、400,000U/kg、400,000U/kg、415,000U/kg、420,000U/kg、425,000U/kg、430,000U/kg、435,000U/kg、440,000U/kg、445,000U/kg、450,000U/kg、455,000U/kg、460,000U/kg、465,000U/kg、470,000U/kg、475,000U/kg、480,000U/kg、485,000U/kg、490,000U/kg、495,000U/kg、500,000U/kg、500,000U/kg、515,000U/kg、520,000U/kg、525,000U/kg、530,000U/kg、535,000U/kg、540,000U/kg、545,000U/kg、550,000U/kg、555,000U/kg、560,000U/kg、565,000U/kg、570,000U/kg、575,000U/kg、580,000U/kg、585,000U/kg、590,000U/kg、595,000U/kg、600,000U/kg、600,000U/kg、615,000U/kg、620,000U/kg、625,000U/kg、630,000U/kg、635,000U/kg、640,000U/kg、645,000U/kg、650,000U/kg、655,000U/kg、660,000U/kg、665,000U/kg、670,000U/kg、675,000U/kg、680,000U/kg、685,000U/kg、690,000U/kg、695,000U/kg、700,000U/kg、700,000U/kg、715,000U/kg、720,000U/kg、725,000U/kg、730,000U/kg、735,000U/kg、740,000U/kg、745,000U/kg、750,000U/kg、755,000U/kg、760,000U/kg、765,000U/kg、770,000U/kg、775,000U/kg、780,000U/kg、785,000U/kg、790,000U/kg、795,000U/kg、800,000U/kg、800,000U/kg、815,000U/kg、820,000U/kg、825,000U/kg、830,000U/kg、835,000U/kg、840,000U/kg、845,000U/kg、850,000U/kg、855,000U/kg、860,000U/kg、865,000U/kg、870,000U/kg、875,000U/kg、880,000U/kg、885,000U/kg、890,000U/kg、895,000U/kg、900,000U/kg、900,000U/kg、915,000U/kg、920,000U/kg、925,000U/kg、930,000U/kg、935,000U/kg、940,000U/kg、945,000U/kg、950,000U/kg、955,000U/kg、960,000U/kg、965,000U/kg、970,000U/kg、975,000U/kg、980,000U/kg、985,000U/kg、990,000U/kg、995,000U/kg、または1,000,000U/kgもしくはそれより多くの投与量)において、ウリナスタチンポリペプチドを投与することを包含する。ある特定の場合において、処置は、少ない投与量で開始され、この投与量は、その環境下で最適な効果が達成されるまで、少しずつ増大され得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載される組成物の治療上有効な量または治療的投与量は、被験体においてNEレベルもしくは活性を低減するおよび/または疾患の1もしくはこれより多くの臨床特性を改善するために有効である量である。例えば、いくつかの実施形態において、薬学的組成物の投与は、コントロールまたは参照と比較して、例えば、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、上記被験体におけるNEレベルまたは活性を、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、低減する。
【0136】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物の投与は、上記それを必要とする被験体の平均余命を、例えば、約1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、51年、52年、53年、54年、55年、56年、57年、58年、59年、60年もしくはより長い年数、または少なくとも約1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、21年、22年、23年、24年、25年、26年、27年、28年、29年、30年、31年、32年、33年、34年、35年、36年、37年、38年、39年、40年、41年、42年、43年、44年、45年、46年、47年、48年、49年、50年、51年、52年、53年、54年、55年、56年、57年、58年、59年、60年もしくはより長い年数程度増大させる。
【0137】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、肺疾患を有し、上記薬学的組成物の投与は、例えば、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、コントロールまたは参照と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、上記被験体における呼吸機能を改善する。いくつかの場合において、上記改善された呼吸機能は、増大した呼気時間、増大した吸気時間、減少した最大呼気流、減少した最大級気流、減少した分時換気量(RMV)、および減少した呼吸数のうちの1またはこれより多くのものから選択される。特定の実施形態において、上記被験体は、皮膚または粘膜の疾患を有し、上記薬学的組成物の投与は、例えば約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、もしくは24ヶ月またはこれより長い期間にわたって測定される場合、コントロールまたは参照と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きいか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%もしくはこれより大きい程度、上記被験体において皮膚または粘膜の病変または潰瘍を低減する。このような症状を測定するための方法およびアッセイは、当該分野で公知である。
【0138】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、および発行された特許は、各個々の刊行物、特許出願、または発行された特許が具体的にかつ個々に参考として援用されることが示されるかのように、本明細書に参考として援用される。
【0139】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で、例証および例示によって、幾分詳細に記載されてきたが、ある特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、その添付の特許請求の範囲に対して行われ得ることは、本発明の教示に鑑みて、当業者に容易に明らかになる。以下の実施例は、例証によって提供されるのであって、限定によって提供されるのではない。当業者は、本質的に類似の結果得るために変更または改変され得る種々の重要でないパラメーターを容易に認識する。
【実施例
【0140】
実施例1
好中球エラスターゼの阻害
ウリナスタチンが好中球エラスターゼ(NE)を阻害する能力を試験するためにインビトロ試験を行った。この実験における組換えウリナスタチンポリペプチド(DM300)は、UTIΔCS改変体(配列番号2)であり、これは、米国仮特許出願第63/108,733号および同第63/021,938号(本明細書に参考として援用される)において記載される方法に従う組換え調製後に、残基N45においてN結合型グリカンおよび残基T17において非天然のO結合型グリカンを有する。
【0141】
組換えウリナスタチン(DM300)を、化合物濃度につき三連で測定して、DM300の8種の濃度において好中球エラスターゼの阻害に関して試験した。好中球エラスターゼ活性を、Neutrophil Elastase Colorimetric Drug Discovery Assay(Enzo Life Sciences)を使用して、製造業者のプロトコールに従って測定した。65μlのアッセイ緩衝液を、96ウェルの透明な半分の領域のプレートの必要数のウェルに配置し、37℃で平衡化した。アッセイ緩衝液中で希釈した20μlの5×濃度のDM300を添加し、続いて、10μlの希釈した好中球エラスターゼを添加することによって、100μg/mL、31.6μg/mL、10μg/mL、3.16μg/mL、1μg/mL、0.316μg/mL、0.1μg/mL、0.0316μg/mL、または0μg/mL DM300の最終反応濃度になるようにインヒビターを添加した。100μM エラスタチナール(elastatinal)をまた、コントロールとして含めた。37℃において15分後、5μlの希釈した基質を添加し、そのプレートを、37℃へと平衡化したSpectraMax m5 Microplate Readerで読み取った。データの直線部分を選択し、その得られたデータを、GraphPad Prism V.8.2.1を使用して分析した。
【0142】
その結果を、図1および以下の表E1に示す。
【表E1】
【0143】
試験した条件下では、DM300のIC50は、約3.153μg/mlまたは約43.79nMであった(およそ17.2kDaタンパク質に関して1Da=1g/molと推測する)。組換えウリナスタチン(例えば、DM300)は、従って、好中球エラスターゼ活性のインヒビターとして、例えば、好中球エラスターゼ(NE)関連疾患(例えば、α-1アンチトリプシン(A1AT)欠損症)の処置において潜在的な治療上の有用性を有する。
図1
【配列表】
2024505073000001.app
【国際調査報告】