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特表2024-505075同種細胞産物のT細胞認識を軽減するための、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうち1つ以上のノックダウン又はノックアウト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】同種細胞産物のT細胞認識を軽減するための、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうち1つ以上のノックダウン又はノックアウト
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20240126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240126BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240126BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240126BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240126BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240126BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240126BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240126BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240126BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
C12N5/078
A61P35/00
A61K35/17
A61K38/02
C12N15/12 ZNA
C12N15/62
C07K14/705
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546011
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022014393
(87)【国際公開番号】W WO2022165233
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,748
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/176,818
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/267,041
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519089657
【氏名又は名称】アロジーン セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ベスーン マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グシュウェン エリック ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ブラーコム トーマス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ゾマー シーザー アドルフォ
(72)【発明者】
【氏名】イー マイケル シー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書では、がん(例えば、固形腫瘍又は液体腫瘍)及び他の状態を治療するために患者に投与するための操作された免疫細胞及びその集団が提供される。細胞は、RFX5、NLRC5、TAP2、β2m、TRAC、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の低減されたレベルを機能的に発現するように操作される。細胞は任意で、抗原結合タンパク質(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体)などの1つ以上の追加のタンパク質を発現して、患者の腫瘍細胞若しくは他の損傷細胞を標的にする、及び/又は低減されたレベルで他の遺伝子を発現するように、さらに操作される。また、操作された細胞、組成物、及びそれらを含むキットを作製及び使用する方法、並びに細胞及び組成物を投与することによる治療方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された免疫細胞であって、前記細胞が、RFX5、NLRC5、TAP2、β2m、TRAC、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上が、低減されたレベルで機能的に発現されるように操作される、操作された免疫細胞。
【請求項2】
TRAC及びRFX5又はTRAC及びNLRC5が、低減されたレベルで機能的に発現される、請求項1に記載の操作された免疫細胞。
【請求項3】
前記細胞が、
細胞表面において、MHCクラスIタンパク質若しくは複合体の低減された発現レベル、
前記細胞表面において、MHCクラスIIタンパク質若しくは複合体の低減された発現レベル、又は
前記細胞表面において、MHCクラスIタンパク質若しくは複合体の低減された発現レベル、及び前記細胞表面において、MHCクラスIIタンパク質若しくは複合体の低減された発現レベル、を示す、請求項1又は2に記載の操作された免疫細胞。
【請求項4】
前記細胞が、T細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項5】
前記細胞が、抗原結合タンパク質をさらに発現する、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項6】
前記抗原結合タンパク質がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項5に記載の操作された免疫細胞。
【請求項7】
前記抗原結合タンパク質が、T細胞受容体(TCR)である、請求項5に記載の操作された免疫細胞。
【請求項8】
前記操作された免疫細胞が、前記抗原結合タンパク質をコードする核酸を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項9】
前記抗原結合タンパク質をコードする前記核酸が、破壊されたTAP2若しくはNLRC5座位内、又はCIITA、RFX5、RFXANK及びRFXAPからなる群から選択される座位内に位置する、請求項8に記載の操作された免疫細胞。
【請求項10】
前記操作された免疫細胞が、内因性TCRa遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうち1つ以上についての、1つ以上のゲノム改変をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項11】
前記免疫細胞が、健常ボランティアから得られた免疫細胞である、若しくはそれに由来するか、患者から得られるか、又はiPSCに由来する、請求項1~10のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項12】
TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の機能的発現を低減させることを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を作製する方法。
【請求項13】
TAP2及びNLRC5の一方又は両方を、低減されたレベルで機能的に発現する、操作された免疫細胞。
【請求項14】
前記細胞が、
(a)TAP2の一方若しくは両方の対立遺伝子でのノックアウト、
(b)NLRC5の一方若しくは両方の対立遺伝子でのノックアウト、又は
(c)TAP2の一方若しくは両方の対立遺伝子でのノックアウト、及びNLRC5の一方若しくは両方の対立遺伝子でのノックアウト、を含む、請求項13に記載の操作された免疫細胞。
【請求項15】
前記細胞が、TAP2及びNLRC5の一方又は両方を、操作されていない免疫細胞における発現レベルの90%以下、75%以下、50%以下、25%以下、又は10%以下のレベルで発現する、請求項13又は14に記載の操作された免疫細胞。
【請求項16】
前記細胞が、TAP2を、操作されていない免疫細胞における発現レベルの90%以下、75%以下、50%以下、25%以下、又は10%以下のレベルで機能的に発現する、請求項13~15のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項17】
前記細胞が、NLRC5を、操作されていない免疫細胞における発現レベルの90%以下、75%以下、50%以下、25%以下、又は10%以下のレベルで機能的に発現する、請求項13~16のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項18】
前記細胞が、細胞表面でMHCクラスIタンパク質若しくは複合体、又は前記細胞表面でMHCクラスIIタンパク質若しくは複合体の低減された発現レベルを示す、請求項13~17のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項19】
前記細胞が、T細胞である、請求項13~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項20】
前記細胞が、抗原結合タンパク質をさらに発現する、請求項13~19のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項21】
前記抗原結合タンパク質がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項20に記載の操作された免疫細胞。
【請求項22】
前記抗原結合タンパク質が、T細胞受容体(TCR)である、請求項20に記載の操作された免疫細胞。
【請求項23】
前記操作された免疫細胞が、前記抗原結合タンパク質をコードする核酸を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項24】
前記抗原結合タンパク質をコードする前記核酸が、破壊されたTAP2若しくはNLRC5座位内、又はCIITA、RFX5、RFXANK及びRFXAPからなる群から選択される座位内に位置する、請求項23に記載の操作された免疫細胞。
【請求項25】
前記操作された免疫細胞が、内因性TCRa遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうち1つ以上についての、1つ以上のゲノム改変をさらに含む、請求項13~24のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項26】
前記免疫細胞が、健常ボランティアから得られた免疫細胞である、若しくはそれに由来するか、患者から得られるか、又はiPSCに由来する、請求項13~25のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項27】
TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、免疫細胞におけるTAP2及びNLRC5の一方又は両方の機能的発現を低減させることを含む、請求項13~26のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を作製する方法。
【請求項28】
TAP2及び/又はNLRC5の機能発現レベルが、前記操作された免疫細胞の表面上のHLA、ベータ2ミクログロブリン(β2M)、又はHLA及びβ2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定されるか、又はフローサイトメトリーによって測定される、請求項13~26のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、又は請求項27に記載の方法によって作製された前記操作された免疫細胞。
【請求項29】
請求項1~11、13~26、若しくは28のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、又は請求項12若しくは27に記載の方法によって作製された前記操作された細胞であって、
(a)前記操作された免疫細胞が、HLA-E、HLA-E単鎖三量体、HLA-G、HLA-G単鎖三量体、UL18、UL18単鎖三量体、HLA-A2、HLA-A2単鎖三量体、及びヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US11からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を発現するように、さらに操作される、並びに/又は
(b)前記操作された免疫細胞が、CIITA、RFXANK、RFXAP及びRFX5のうちいずれか1つ以上を発現しない、若しくは低減されたレベルで発現するようにさらに操作される、操作された免疫細胞。
【請求項30】
操作された免疫細胞の集団であって、前記操作された免疫細胞の75%以下が、TAP2及びNLRC5の一方又は両方を機能的に発現する、集団。
【請求項31】
操作された免疫細胞の集団であって、前記操作された免疫細胞の少なくとも1%が、TAP2及びNLRC5の一方又は両方を、操作されていない免疫細胞における発現レベルの75%以下のレベルで機能的に発現する、集団。
【請求項32】
前記細胞の75%以下が、TAP2を機能的に発現する、請求項30に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項33】
前記細胞の75%以下が、NLRC5を機能的に発現する、請求項30に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項34】
前記操作された免疫細胞の少なくとも50%が、細胞表面でMHCクラスIタンパク質又は複合体の低減された発現レベルを示す、請求項30~33のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項35】
前記操作された免疫細胞の集団が、少なくとも10%操作されたT細胞、少なくとも20%操作されたT細胞、少なくとも30%操作されたT細胞、少なくとも40%操作されたT細胞、少なくとも50%操作されたT細胞、少なくとも75%操作されたT細胞、又は少なくとも90%操作されたT細胞を含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項36】
操作された前記細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも90%が、抗原結合タンパク質をさらに発現する、請求項30~35のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項37】
前記抗原結合タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項36に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項38】
前記CARをコードする核酸が、破壊されたTAP2若しくはNLRC5座位、又はCIITA、RFX5、RFXANK、及びRFXAPからなる群から選択される座位に挿入される、請求項37に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項39】
前記抗原結合タンパク質が、T細胞受容体(TCR)である、請求項36に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項40】
前記TCRをコードする核酸が、破壊されたTAP2若しくはNLRC5座位、又はCIITA、RFX5、RFXANK、及びRFXAPからなる群から選択される座位に挿入される、請求項39に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項41】
操作された前記細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも90%が、内因性TCRa遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうち1つ以上について、1つ以上のゲノム改変をさらに含む、請求項30~40のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項42】
前記操作された免疫細胞の集団が、健常ボランティアから得られた1つ以上の免疫細胞に由来するか、患者から得られた1つ以上の免疫細胞に由来するか、又は1つ以上のiPSCに由来する、請求項30~41のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項43】
TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、TAP2及びNLRC5の一方又は両方の機能的発現を低減させることを含む、請求項30~42のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団を作製する方法。
【請求項44】
TAP2及び/又はNLRC5の機能発現レベルが、前記操作された免疫細胞の表面上のHLA、ベータ2ミクログロブリン(B2M)、又はHLA及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定されるか、又はフローサイトメトリーによって測定される、請求項30~42のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項45】
前記操作された免疫細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、又は90%が、HLA-E、HLA-E単鎖三量体、HLA-G又はHLA-G単鎖三量体、UL18又はUL18単鎖三量体、HLA-A2及びHLA-A2単鎖三量体からなる群から選択される1つ以上のタンパク質をさらに発現する、請求項30~42及び44のいずれかに記載の操作された免疫細胞の集団。
【請求項46】
請求項1~11、13~26、及び28~29のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、又は請求項12若しくは27に記載の方法によって作製された前記操作された免疫細胞、又は請求項30~42及び44~45のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団を含み、さらに少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項47】
前記医薬組成物の前記操作された免疫細胞、又は前記操作された免疫細胞の集団のうち1つ以上の細胞が、HLA-E、HLA-E単鎖三量体、HLA-G、HLA-G単鎖三量体、UL18、UL18単鎖三量体、HLA-A2、HLA-A2単鎖三量体、及びヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US11からなる群から選択される1つ以上のタンパク質をさらに発現し、並びに/又はCIITA、RFXANK、RFXAP及びRFX5のいずれか1つ以上を発現しない、若しくは低減されたレベルで発現するようにさらに操作される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
患者の状態を治療する方法であって、前記患者に対して、
請求項1~11、13~26、及び28~29のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞、又は請求項12若しくは27に記載の方法によって作製された前記操作された免疫細胞か、又は
請求項30~42及び44~45のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞の集団か、又は
請求項46若しくは47に記載の医薬組成物か、
を投与することを含む、方法。
【請求項49】
前記状態が、固形腫瘍又は液体腫瘍である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
操作された免疫細胞における内因性MHCクラスIタンパク質の表面発現レベルを、操作されていない免疫細胞における内因性MHCクラスI又はMCHクラスIIタンパク質の発現レベルの約75%以下に低減させる方法であって、前記方法が、TAP2及びNLRC5の一方又は両方の機能発現レベルを、操作されていない免疫細胞における発現レベルの約75%以下に低減させることを含む、方法。
【請求項51】
前記細胞が、TAP2を、操作されていない免疫細胞における前記発現レベルの75%以下のレベルで機能的に発現する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、NLRC5を、操作されていない免疫細胞における前記発現レベルの75%以下のレベルで機能的に発現する、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記操作された免疫細胞が、MHCクラスIタンパク質を発現する、請求項50~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記操作された免疫細胞が、T細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記細胞が、抗原結合タンパク質をさらに発現する、請求項50~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記抗原結合タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記CARをコードする核酸が、破壊されたTAP2若しくはNLRC5座位に挿入されるか、又はTAP2若しくはNLRC5座位が、前記CARをコードする核酸の挿入によって破壊される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記抗原結合タンパク質が、T細胞受容体(TCR)である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記TCRをコードする核酸が、破壊されたTAP2若しくはNLRC5座位に挿入されるか、又はTAP2若しくはNLRC5座位が、前記TCRをコードする核酸の挿入によって破壊される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記操作された免疫細胞が、内因性TCRa遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうち1つ以上についての、1つ以上のゲノム改変をさらに含む、請求項50~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記免疫細胞が、健常ボランティアから得られた免疫細胞である、患者から得られた、又はiPSCに由来する、請求項50~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、TAP2及びNLRC5の一方又は両方の機能的発現を低減させることを含む、請求項50~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
TAP2及び/又はNLRC5の前記機能発現レベルが、前記操作された免疫細胞の表面上のHLA、ベータ2ミクログロブリン(β2M)、又はHLA及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定されるか、又はフローサイトメトリーによって測定される、請求項50~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
TAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の表面発現レベルの低減度合いが、遺伝子編集されていない同じタイプの細胞における、それぞれTAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記発現レベルに対して決定される、請求項50~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記操作された免疫細胞が、抗原結合タンパク質を発現する、請求項50~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記抗原結合タンパク質が、CARを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記CARをコードする核酸が、破壊されたTAP2又はNLRC5座位に挿入される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記抗原結合タンパク質が、T細胞受容体(TCR)である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記TCRをコードする核酸が、破壊されたTAP2又はNLRC5座位に挿入される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記方法が、TAP2の前記機能発現レベルを低減させることを含む、請求項64~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記方法が、NLRC5の前記機能発現レベルを低減させることを含む、請求項64~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記方法が、TCRa遺伝子及びCD52遺伝子のうちの1つ以上についての、1つ以上のゲノム改変を、前記操作された免疫細胞に導入することをさらに含む、請求項64~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
免疫細胞においてMHCクラスIによって提示されるペプチド多様性を低減させる方法であって、TAP2及びNLRC5の一方又は両方の機能発現レベルを、前記免疫細胞において野生型レベルの約75%以下まで低減させることを含む、方法。
【請求項74】
TAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記機能発現レベルを低減させることが、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、TAP2及びNLRC5のうちの1つ以上を破壊することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記方法が、TAP2の前記機能発現レベルを低減させることを含む、請求項73~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記方法が、NLRC5の前記機能発現レベルを低減させることを含む、請求項73~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
TAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記発現レベルの低減度合いが、遺伝子編集されていない同じタイプの細胞における、それぞれTAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記発現レベルに対して決定される、請求項73~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
TAP2及びNLRC5の前記機能発現レベルが、操作された前記免疫細胞の表面上のHLA、ベータ2ミクログロブリン(B2M)、又はHLA及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定される、請求項73~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
同種細胞のT細胞介在性殺傷を減少させる方法であって、TAP2及びNLRC5の一方又は両方の機能発現レベルを、操作されていない細胞における対応するレベルの約50%以下に低減させることを含む、方法。
【請求項80】
TAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記機能発現レベルを低減させることが、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術の使用を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記方法が、TAP2の前記機能発現レベルを低減させることを含む、請求項79~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記方法が、NLRC5の前記機能発現レベルを低減させることを含む、請求項79~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
TAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記発現レベルの低減度合いが、遺伝子編集されていない同じタイプの細胞における、それぞれTAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記発現レベルに対して決定される、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
TAP2及びNLRC5のうちの1つ以上の前記機能発現レベルが、操作された免疫細胞の表面上のHLA、ベータ2ミクログロブリン(B2M)、又はHLA及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定される、請求項79~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
TAP2及び/又はNLRC5のうちの1つ以上の表面発現レベルが、フローサイトメトリーによって測定される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記方法が、TCRa遺伝子及びCD52遺伝子のうちの1つ以上についての、1つ以上のゲノム改変を導入することをさらに含む、請求項79~85のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,748号、2021年4月19日に出願された米国仮特許出願第63/176,818号、及び2022年1月21日に出願された米国仮特許出願第63/267,041号の優先権の利益を主張するものであり、それらすべての内容はここに、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、ここにその全体が参照により組み込まれる。2022年1月27日に作成された当該ASCIIコピーは、AT-041_04WO_SL.txtと名付けられ、サイズは17,262バイトである。
【0003】
本開示は、概して、治療用途での使用のための操作された免疫細胞(例えば、T細胞)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
悪性腫瘍関連抗原を認識するように遺伝子改変された免疫細胞の養子移入は、がんを治療するための新しいアプローチとして有望視されている(例えば、Brenner et al., Current Opinion in Immunology, 22(2): 251-257 (2010); Rosenberg et al., Nature Reviews Cancer, 8(4): 299-308 (2008)を参照)。免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)、抗原認識部分からなる融合タンパク質及びT細胞活性ドメインを発現するように遺伝子改変され得る(例えば、Eshhar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(2): 720-724 (1993)を参照)。CARを含有する免疫細胞、例えば、CAR-T細胞(CAR-T)は、標的細胞を認識及び殺傷する能力を保持又は強化しながら、抗原特異性を有するように操作される。
【0005】
しかしながら、CAR改変自己細胞療法の生成は高価であり、数週間のプロセスと品質検査を必要とし、採用される患者特異的T細胞の初期の品質及び量に応じて変動する効力の産物をもたらす。同種CAR改変細胞療法は、健康なドナー由来の細胞をCARで改変してから、複数の患者に投与するものであり、必要に応じて直ちに送達できる自己療法よりも安価でより堅牢な産物が見込まれる(例えば、Graham et al., Cells 2018, 7, 155; doi:10.3390/cells7100155を参照)。さらに、同種療法は、望ましい製品特性(例えば、遺伝子編集効率、統合部位、有害な非特異的な遺伝子編集の欠如、ハプロタイプなど)の選択を可能にし、より洗練された細胞操作(例えば、効力、持続性、ホーミングなどを改善する複数の遺伝子編集)を促進する。同種CAR改変細胞療法を実施するための大きなハードルは、患者の免疫系(宿主)による、産物(ドナー)の拒絶反応の可能性である。
【0006】
CD8+ T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞などの、キラーリンパ球は、自己から逸脱する、がん細胞、ウイルス感染細胞、及び外来細胞(同種細胞を含む)を特定し、殺傷する。自己と非自己の区別の中心的決定因子は、すべての有核細胞の表面上に発現される主要組織適合複合体(MHC)分子である。各MHCクラスI分子は、高度に複対立のMHCクラスI重鎖(その最も一般的なものはHLA-A2である)と、不変のβ2ミクログロブリン(β2m)と、内部的に発現されたタンパク質からのタンパク質分解由来の提示されたペプチドとの、非共有三量体複合体である。集合的に、MHCクラスI分子には、細胞内で発現されるタンパク質多様性全体を表すペプチドが装填され、がん細胞及び感染細胞が免疫系に対してその困難を「知らせる」ことを可能にする。CD8+ T細胞は、これらの非自己ペプチドを、各新生T細胞に特有なT細胞受容体(TCR)で認識し、非自己ペプチド-MHCの認識に従って殺傷を開始する(例えば、Dembic, Z. et al. Nature 320, 232-238 (1986)を参照)。T細胞による非自己の認識は、NK細胞による「自己喪失」の認識によって補完され、すなわち、NK細胞の表面上の阻害性受容体が、MHCの非存在下でのNK細胞介在性殺傷を可能にする(例えば、K. Karre et al., Nature 319, 675-678 (1986)を参照)(図1及び図3を参照)。MHCクラスI提示の実験的アブレーションは、MHCクラスIのユニバーサルなβ2m成分をコードするb2m遺伝子のCRISPR/Cas9介在性ゲノムノックアウト(KO)を介して達成され、自己及び同種反応性の両方の状況で、MHCを欠くT細胞の強力なNK活性化及び選択的殺傷をもたらす(図2を参照)。
【0007】
同種細胞療法は、自己細胞療法よりも多くの利点があるが、同種細胞はまた、宿主とは異なる同種細胞産物の表面上のT及びNKエピトープ決定基と反応する宿主又はレシピエントの免疫系細胞による拒絶に直面する。本開示は、レシピエントの自然な防御にもかかわらず、投与された細胞の持続性の向上をもたらす改善された同種療法の利点を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、細胞が導入された宿主又はレシピエントによる拒絶反応を軽減するために、操作された、例えば、遺伝子操作された免疫細胞と、宿主又はレシピエントの免疫系(例えば、T細胞及び/又はNK細胞)による拒絶反応及び/又は認識を軽減する方法と、操作された細胞を含む組成物及び集団と、それを使用して患者におけるがんを治療する方法と、が提供される。本開示の免疫細胞は、その産物が細胞による抗原提示に関与する2つの遺伝子、NLRC5及びTAP2の一方若しくは両方の、又はTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の、そのようには操作されていない対応する細胞と比較して、低減されたレベルを機能的に発現するように操作される。操作された細胞は、拒絶反応に対する耐性を増強し、及び/又は治療効果を提供するようにさらに操作されることができ、例えば、細胞は、追加のタンパク質、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)及び/又はT細胞受容体などの、抗原結合タンパク質を含むか又は発現するように操作されることができ、ここで、抗原結合タンパク質又はT細胞受容体は、操作された免疫細胞の標的を、同族抗原を発現する腫瘍細胞、及び/又は他の望ましくない(例えば、疾患状態の)細胞にする。したがって、本開示は、レシピエントにおける同種細胞の持続性を増加させる方法を提供し、方法は、NLRC5及びTAP2の一方若しくは両方、RFX5及びNLRC5の一方若しくは両方、RFX5及びTAP2の一方若しくは両方、又はTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の、操作されていない細胞と比較して、低減されたレベルを機能的に発現するように細胞を操作することを含む。
【0009】
ある態様では、本開示は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上を低減されたレベルで機能的に発現する操作された免疫細胞を提供する。いくつかの実施形態では、対応するが操作されていない免疫細胞における発現レベルと比較して提示される、低減された発現レベルは、例えば、遺伝子の両方の染色体コピーがノックアウトされている場合には0%であるか、又は、例えば、遺伝子の二つの染色体コピーのうちの一方がノックアウトされ、かつその遺伝子の他方の染色体コピーの発現に代償的な増加がない場合には50%(すなわち、操作されていない対照免疫細胞におけるレベルの50%)である。いくつかの実施形態では、細胞は、操作されていない免疫細胞における発現レベルの90%以下、75%以下、50%以下、25%以下、又は10%以下のレベルで、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上を発現する。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞におけるTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の発現レベルは、対応する遺伝子に対して対応して操作されていない対照細胞におけるレベルの0%~90%の任意の値である。いくつかの実施形態では、操作された細胞における発現レベルは、例えば、対照細胞におけるレベルの10%~90%、25%~90%、25%~75%、10%~50%、25%~50%、50%~90%、又は50%~75%である。いくつかの実施形態では、0%又は50%以外の、低減された発現レベルは、例えば、遺伝子の一方のみの染色体コピーがノックアウトされ、残りの染色体コピーの発現レベルの増加を代償機構が引き起こす場合、又は発現の低下が、遺伝子ノックアウト以外の方法、既知のノックダウン方法など、例えば、様々なRNAベースの技術(例えば、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA;例えば、Lam et al., Mol. Ther.-Nucleic Acids 4:e252 (2015), doi:10.1038/mtna.2015.23;Sridharan and Gogtay, Brit. J. Clin. Pharmacol. 82: 659-72 (2016)を参照)のいずれかを使用するものによって達成される場合に得られる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、好適な対照と比較して、細胞表面におけるMHCクラスIタンパク質又は複合体の発現レベルの低減を示す。様々な実施形態において、細胞は、T細胞、例えば、ヒトT細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANK座位若しくは遺伝子のうちいずれか1つ以上における変異、及び/又はTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANK座位若しくは遺伝子のうちいずれか1つ以上の破壊(これは、破壊された座位若しくは遺伝子の機能的発現の低下を引き起こす)を含む。一実施形態では、変異又は破壊は、遺伝子変異又は遺伝子編集技術のいずれか1つ又は組み合わせによって導入され、これには、既知の相同組み換え技術、並びにメガヌクレアーゼ、TALEN、亜鉛フィンガー、shRNA、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステム(例えば、Cas9, Cas12、及びMAD7)のうちいずれか1つ以上を用いる技術が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞は、非ヒト細胞、例えば、霊長類細胞又は非霊長類哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、変異又は破壊は、例えば、細胞内で発現される1つ以上のタンパク質又は遺伝子産物をコードする核酸など、核酸内でノッキングすることによって生じる。いくつかの実施形態では、核酸は、膜糖タンパク質UL18(例えば、UniProtKB - P08560 (UL18_HCMVA)を参照、https://www.uniprot.org/uniprot/P08560からアクセス)及びADRのいずれか又は両方をコードする。様々な実施形態において、ADR(同種免疫防御受容体)は、Feiyan Mo et al., Nature Biotechnol.(2021) 39(1): 56-63. doi:10.1038/s41587-020-0601-5(「Mo et al. 2021」)及び/又は米国特許出願公開第2021/0077530号(2021年3月18日)(「‘530公報」)において開示されるADRと同一の構成要素又はドメインを含み、それらの両方の内容は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ADRは、‘530公報に開示されるものなどの、4-1BB ADR、OX40 ADR、又はCD40L ADRである。
【0010】
様々な実施形態では、操作された免疫細胞は、抗原結合タンパク質をさらに発現し、例えば、操作された免疫細胞は、抗原結合タンパク質をコードする核酸を含む。一実施形態では、抗原結合タンパク質はキメラ抗原受容体(CAR)である。一実施形態では、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2M、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP又はRFXANK座位に挿入されるか、又は座位に挿入され、それによってその座位を破壊する。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、T細胞受容体(TCR)である。一実施形態では、TCRをコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2M、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP又はRFXANK座位に挿入されるか、又は座位に挿入され、それによってその座位を破壊する。一実施形態では、操作された免疫細胞は、例えば、例えば内因性CD70遺伝子、内因性TCRa遺伝子、及び内因性CD52遺伝子のうちの1つ以上の、内因性遺伝子座の改変など、1つ以上のゲノム改変をさらに含む。様々な実施形態では、1つ以上のゲノム改変は、改変を含む遺伝子の機能的発現の減少又は不在の原因となる。
【0011】
操作された免疫細胞は、様々な供給源のいずれかからの細胞に由来することができる。操作された免疫細胞は、操作された免疫細胞が投与される人以外の人、例えばレシピエント以外のドナー(例えば、健常ボランティア)からの、細胞、例えば幹細胞若しくは免疫細胞から調製若しくは誘導され得、又は操作された免疫細胞が投与される人(レシピエント)からの、細胞、例えば幹細胞若しくは免疫細胞から調製若しくは誘導され得、又は1つ以上の人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導され得る。一実施形態では、免疫細胞は、健常ボランティアから得られた免疫細胞であるか、患者から得られるか、又はiPSCに由来する。
【0012】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される操作された免疫細胞を作製する方法を提供する。一実施形態では、方法は、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムなどの任意の遺伝子編集技術の使用、並びに/又は、例えば様々な任意のRNAベースの技術(例えば、shRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA、例えば、Lam et al., Mol. Ther.-Nucleic Acids 4:e252 (2015), doi:10.1038/mtna.2015.23; Sridharan and Gogtay, Brit. J. Clin. Pharmacol. 82: 659-72 (2016)を参照)を使用してTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の機能的発現を低減するものなど、任意の既知の遺伝子ノックダウン方法の使用を含む。一実施形態では、方法は、抗原結合タンパク質、例えばCAR又はTCRをコードする核酸の操作された免疫細胞への導入を含むか、又はさらに含む。一実施形態では、方法は、内因性TCRa遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうちの1つ以上の、1つ以上のゲノム改変を、操作された免疫細胞のゲノム内に導入することを含むか、又はさらに含む。一実施形態では、1つ以上のゲノム改変は、内因性TCRa遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうちの1つ以上の、機能的発現を完全に又は部分的に妨害及び/又は防止する。
【0013】
本開示の様々な実施形態では、TAP2、NLRC5、β2M、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能発現レベルは、操作された免疫細胞の表面上での、1つ以上のHLAタンパク質(HLA-Aタンパク質若しくはHLA-Bタンパク質など)の、又はベータ2ミクログロブリン(B2M)の、又は1つ以上のHLAタンパク質及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定されるか、又はフローサイトメトリーによって測定される。いくつかの実施形態では、本開示の操作された免疫細胞におけるTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の発現は、操作された免疫細胞が、エフェクター細胞(例えば、T細胞)の存在下で生存する度合いを、対応するようには操作されていないがそれ以外は同等な(例えば同一な)免疫細胞が、同一条件下で生存する度合いと比較して、測定することによってアッセイをされる。
【0014】
いくつかの実施形態では、そのようには操作されていない対応する細胞と比較して、NLRC5及びTAP2の一方若しくは両方の低減されたレベルを機能的に発現するように操作された免疫細胞は、HLA-E、HLA-E単鎖三量体、HLA-G、HLA-G単鎖三量体、UL18、UL18単鎖三量体、HLA-A2、HLA-A2単鎖三量体、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US11からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を発現するように、並びに/又は、本明細書に記載されるノックアウト若しくはノックダウンによって達成されたβ2m、TRAC、CIITA、RFXANK、RFXAP及びRFX5のうちいずれか1つ以上の低減されたレベルを発現するようにさらに操作される。
【0015】
別の態様では、本開示は、本明細書に提供される操作された免疫細胞を含む操作された免疫細胞の集団を提供する。一実施形態では、操作された免疫細胞の集団は、本明細書に提供される104~1010個の操作された免疫細胞を含む。様々な実施形態において、操作された免疫細胞の集団は、本明細書に提供される104、105、106、107、108、109、又は1010個の操作された免疫細胞を含む。
【0016】
別の態様では、本開示は、操作された免疫細胞の集団を提供し、ここで、細胞の、例えば75%以下は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上を機能的に発現する。一実施形態では、集団の細胞の75%以下は、TAP2を機能的に発現する。一実施形態では、集団の細胞の75%以下は、NLRC5を機能的に発現する。一実施形態では、集団の細胞の75%以下は、RFX5を機能的に発現する。
【0017】
別の態様では、本開示は、操作された免疫細胞の集団を提供し、ここで、操作された免疫細胞の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、75%、90%、95%、又は100%は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上を、低減されたレベルで、機能的に発現する。いくつかの実施形態では、適切な対照(例えば、対応するようには操作されていない、対応する免疫細胞における発現レベル)と比較して提示される、低減された発現レベルは、例えば、遺伝子の両方の染色体コピーが(例えば、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及び/又はCRISPR/Casシステムを使用する方法によって)ノックアウトされている場合、0%であり、又は例えば、遺伝子の二つの染色体コピーのうちの一方がノックアウトされ、かつその遺伝子の他方の染色体コピーの発現に代償的な増加がない場合、50%である。 いくつかの実施形態では、操作されていない免疫細胞における発現レベルと比較して提示される、低減された発現レベルは、0%~90%であるか、又は0%~90%の中間の任意の2つの値間であり、例えば、10%~90%、25%~90%、25%~75%、10%~50%、25%~50%、50%~90%、及び50%~75%である。そのような中間範囲のうちの1つ以上内の値は、例えば、遺伝子の一方のみの染色体コピーがノックアウトされ、残りの染色体コピーの発現レベルの増加を代償機構が引き起こす場合、又は発現の低下が、遺伝子ノックアウト以外の方法、既知のノックダウン方法など、例えば、様々なRNAベースの技術(例えば、shRNA アンチセンスRNA、miRNA、siRNA;例えば、Lam et al., Mol. Ther.-Nucleic Acids 4:e252 (2015), doi:10.1038/mtna.2015.23;Sridharan and Gogtay, Brit. J. Clin. Pharmacol. 82: 659-72 (2016)を参照)のいずれかを使用するものによって達成される場合に得ることができる。本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団のいくつかの実施形態では、操作された細胞の一部又はすべて、例えば、5~10%、10~25%、25~50%、50~90%、又は90~100%は、好適な対照と比較して、細胞表面におけるMHCクラスIタンパク質及び/又はMHCクラスIIタンパク質又は複合体の低減された発現レベルを示す。
【0018】
様々な実施形態では、本明細書に開示される、操作された免疫細胞の集団、又は操作された免疫細胞を含む免疫細胞の集団は、少なくとも10%操作されたT細胞、少なくとも20%操作されたT細胞、少なくとも30%操作されたT細胞、少なくとも40%操作されたT細胞、少なくとも50%操作されたT細胞、少なくとも75%操作されたT細胞、少なくとも90%操作されたT細胞、又は100%操作されたT細胞を含む。また本明細書には、細胞集団が提供され、ここで当該細胞集団の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、又は100%は、操作された免疫細胞、例えば、本明細書に開示される操作されたT細胞である。
【0019】
いくつかの実施形態では、集団の操作された細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも90%は、抗原結合タンパク質をさらに発現する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP又はRFXANK座位に挿入され、及び/又はこうした挿入は、座位を破壊する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、T細胞受容体(TCR)である。いくつかの実施形態では、TCRをコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP又はRFXANK座位に挿入され、及び/又はこうした挿入は、座位を破壊する。
【0020】
本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団の特定の実施形態では、操作された細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも90%は、内因性TCRa遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうちの1つ以上について、1つ以上のゲノム改変をさらに含む。
【0021】
一実施形態では、操作された免疫細胞の集団は、人から、例えばそれらが投与される人以外の人から、取得された、例えば、レシピエント以外のドナーから、若しくは健常ボランティアから取得された、1つ以上の免疫細胞に由来するか、又は患者、例えばそれらが投与される人から、取得された1つ以上の免疫細胞に由来するか、又は1つ以上のiPSCに由来する。
【0022】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される操作された免疫細胞の集団を作製する方法を提供し、この方法は、遺伝子編集技術、例えば、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能的発現を減少させることを含む。
【0023】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団の細胞における、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及び/又はRFXANKの機能発現レベルを決定又は測定する方法を提供し、ここで機能発現レベルは、操作された免疫細胞の表面上でのHLAタンパク質、ベータ2ミクログロブリン(B2M)、又はHLAタンパク質及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定される、及び/又はフローサイトメトリーによって測定される。
【0024】
本明細書に記載される操作された免疫細胞の、及び本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団の様々な実施形態では、操作された免疫細胞は、又は集団の操作された免疫細胞のうちの1つ以上、例えば、集団の操作された免疫細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、90%又は100%は、本明細書に記載される任意の方法によって、又は当業者に知られている任意の他の方法によって、HLA-E、HLA-E単鎖三量体、HLA-G、HLA-G単鎖三量体、UL18、UL18単鎖三量体、HLA-A2、HLA-A2単鎖三量体、及びヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US11からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を発現するように、(例えば、本明細書に開示される任意の方法によって、又は当業者に知られている任意の他の方法によって)さらに操作される。
【0025】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される操作された免疫細胞を含む医薬組成物を提供し、ここで組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤をさらに含む。別の態様では、本開示は、本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団を含む医薬組成物を提供し、ここで組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤をさらに含む。組成物の様々な実施形態では、操作された免疫細胞、又は集団の操作された免疫細胞のうちの1つ以上、例えば、集団の操作された免疫細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、90%又は100%は、HLA-E、HLA-E単鎖三量体、HLA-G、HLA-G単鎖三量体、UL18、UL18単鎖三量体、HLA-A2、HLA-A2単鎖三量体、及びヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US11からなる群から選択される1つ以上のタンパク質を発現する、並びに/又は本明細書に記載されるノックアウト若しくはノックダウンによって達成されてCIITA、RFXANK、RFXAP及びRFX5のうちいずれか1つ以上を発現しないか、若しくは低減されたレベルで発現する。
【0026】
別の態様では、本開示は、患者における状態の治療方法であって、その患者に、本明細書に開示される操作された免疫細胞、本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団、又は本明細書に開示される医薬組成物を投与することを含む、治療方法を提供する。一実施形態では、状態は、固形腫瘍及び液体腫瘍からなる群から選択される。
【0027】
別の態様では、本開示は、操作された免疫細胞におけるMHCクラスIタンパク質の表面発現レベルを、いくつかの実施形態では、操作されていない免疫細胞におけるMHCクラスIタンパク質の発現レベルの約75%以下に低減する方法を提供し、方法は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能発現レベルを、例えば、操作されていない免疫細胞における発現レベルの約75%以下に低減することを含む。一実施形態では、操作された免疫細胞は、操作されていない免疫細胞における発現レベルの75%以下のレベルでTAP2を機能的に発現する。一実施形態では、操作された免疫細胞は、操作されていない免疫細胞における発現レベルの75%以下のレベルでNLRC5を機能的に発現する。一実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、好適な対照と比較して、細胞表面におけるMHCクラスIタンパク質又は複合体の発現レベルの低減を示す。
【0028】
一実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、操作されたT細胞である。特定の実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞、例えば、本明細書に開示される操作されたT細胞は、例えば、外因性DNAによってコードされるタンパク質、又はその発現が細胞のさらなる操作によってもたらされるタンパク質などの追加のタンパク質をさらに発現する。いくつかの実施形態では、追加のタンパク質は、抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、追加のタンパク質、例えば、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードする核酸は、本明細書に記載される方法によって細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP若しくはRFXANK座位に導入されるか、又はTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP、若しくはRFXANK座位は、追加のタンパク質、例えば、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊される。
【0029】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、抗原結合タンパク質は、T細胞受容体(TCR)成分、例えば、TCR α(TCRアルファ)、TCR β(TCRベータ)、TCR γ(TCRガンマ)、又はTCR δ(TCRデルタ)である。一実施形態では、TCR成分をコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP若しくはRFXANK座位に挿入されるか、又はTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP若しくはRFXANK座位は、TCR成分をコードする核酸の挿入によって破壊される。
【0030】
本明細書に開示される方法のさらなる実施形態では、操作された免疫細胞は、内因性TCRアルファ遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうちの1つ以上について、1つ以上のゲノム改変(例えば、ノックアウト、欠失、ノックダウン、挿入)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ゲノム改変は、改変された遺伝子の機能的発現を部分的又は完全に排除する。本明細書に開示される方法のさらなる実施形態では、免疫細胞は、人から、例えば細胞を投与される人以外のドナーから、例えば健常ボランティアから取得される、又は患者、例えば細胞が投与される人から取得される、又はiPSCに由来する免疫細胞である。
【0031】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される操作された免疫細胞の集団を作製する方法を提供し、この方法は、遺伝子編集技術、例えば、TALEN、亜鉛フィンガー、shRNA、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、細胞内、例えば、免疫細胞内でのTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能的発現を減少させることを含む。一実施形態では、遺伝子編集技術は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANK遺伝子座のうちの1つ又は複数に変異を導入する。一実施形態では、変異は、挿入(例えば、1つ以上のヌクレオチド又は塩基対の挿入、例えば、タンパク質をコードする配列の挿入)、1つ以上のヌクレオチド又は塩基対の欠失、及び1つ以上のヌクレオチド又は塩基対の置換のうちいずれか1つ以上である。
【0032】
本明細書に開示される方法の一実施形態において、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能発現レベルは、操作された免疫細胞の表面上での、HLAタンパク質、ベータ2ミクログロブリン(B2M)、又はHLA及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定されるか、又はフローサイトメトリーによって測定される。一実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の表面発現レベルの低減度合いは、遺伝子編集されていない同じタイプの細胞における対応する発現レベルと比較して決定される。
【0033】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、操作された免疫細胞は、抗原結合タンパク質を含む任意の所望のタンパク質であり得る追加のタンパク質を発現する。一実施形態では、抗原結合タンパク質はCARを含む。一実施形態では、CARをコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP若しくはRFXANK座位に挿入され、又はこうした挿入は、座位を破壊する。別の実施形態では、抗原結合タンパク質はT細胞受容体(TCR)成分である。一実施形態では、TCRをコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP若しくはRFXANK座位に挿入され、又はこうした挿入は、座位を破壊する。一実施形態では、方法は、破壊された座位の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、TAP2の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、NLRC5の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、RFX5の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、CIITAの機能発現レベルを低減させることを含む。特定の実施形態では、方法は、操作された免疫細胞に、TCR成分をコードする遺伝子(例えば、TCRa遺伝子及びCD52遺伝子)のうち1つ以上について、1つ以上のゲノム改変を導入することをさらに含む。
【0034】
別の態様では、本開示は、例えばMHCクラスIによって細胞表面上に提示されるペプチド多様性を低減する方法を提供し、方法は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能発現レベルを低減することを含み、いくつかの実施形態では、このレベルを低減して、対応して変化させられていない同等の細胞の約90%以下(言い換えれば、例えば100の対照レベルと比較して約90以下のレベルへの、少なくとも約10%の低減)又は約75%以下にする。様々な実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルを低減させることは、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステム(例えば、Cas9, Cas12、及びMAD7を含む)からなる群から選択される遺伝子編集技術の使用を含む。一実施形態では、方法は、TAP2の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、NLRC5の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、RFX5の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、CIITAの機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の発現レベルの低減度合いは、遺伝子編集されていない同じタイプの細胞における対応する発現レベルと比較して決定される。一実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルは、操作された免疫細胞の表面上での、HLA、ベータ2ミクログロブリン(B2M)、又はHLA及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定される。
【0035】
別の態様では、本開示は、操作されたT細胞などの操作された免疫細胞においてTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能発現レベルを低減させることを含む、同種細胞のT細胞介在性殺傷を減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、操作されていない免疫細胞における発現レベルと比較して提示される、低減された発現レベルをもたらし、それは、例えば、遺伝子の両方の染色体コピーがノックアウトされている場合には0%であるか、又は、例えば、遺伝子の二つの染色体コピーのうちの一方がノックアウトされ、かつその遺伝子の他方の染色体コピーの発現に代償的な増加がない場合には50%である。いくつかの実施形態では、方法は、操作されていない免疫細胞における発現レベルと比較して提示される、低減された発現レベルをもたらし、これは、0%~90%であるか、又は0%~90%の中間の任意の2つの値間であり、例えば、10%~90%、25%~90%、25%~75%、10%~50%、25%~50%、50%~90%、及び50%~75%である。いくつかの実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルを低減させることは、遺伝子編集技術、例えば、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及び/若しくはCRISPR/Casシステムのいずれか1つ以上、並びに/又は任意の1つ以上の既知のノックダウン方法、例えば、様々なRNAベースの技術(例えば、shRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA)のいずれかを採用したものの、使用を含む。一実施形態では、方法は、TAP2の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、NLRC5の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、RFX5の機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、方法は、CIITAの機能発現レベルを低減させることを含む。一実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の発現レベルの低減度合いは、そのようには変更及び/又は操作されていない同じタイプの細胞における対応する発現レベルと比較して決定される。
【0036】
本明細書に開示される同種細胞のT細胞介在性殺傷を低減させる方法の一実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルは、操作された免疫細胞の表面上での、HLA、ベータ2ミクログロブリン(B2M)、又はHLA及びB2Mの両方の表面発現レベルを決定することによって測定される。一実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の表面発現レベルは、フローサイトメトリーによって測定される。一実施形態では、方法は、TCR成分をコードする遺伝子(例えば、TCRa遺伝子及びCD52遺伝子)のうち1つ以上について、1つ以上のゲノム改変を導入することを含む。
【0037】
本明細書に開示される同種細胞のT細胞介在性殺傷を減少させる方法のいくつかの実施形態では、本開示の操作された免疫細胞におけるTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上の機能発現レベルは、操作された免疫細胞が、エフェクター細胞(例えば、T細胞)の存在下で生存する度合いを、操作されていないがそれ以外は同等な(例えば同一な)免疫細胞が、同一条件下で生存する度合いと比較して、測定することによってアッセイをされる。
【0038】
ある態様では、本開示は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上を低減されたレベルで機能的に発現する操作された免疫細胞を提供する。様々な実施形態において、TRAC及びRFX5は、低減されたレベルで機能的に発現される。様々な実施形態では、細胞は、細胞表面におけるMHCクラスIタンパク質若しくは複合体の発現レベルの低減、細胞表面におけるMHCクラスIIタンパク質若しくは複合体の発現レベルの低減、又は細胞表面におけるMHCクラスIタンパク質若しくは複合体の発現レベルの低減及び細胞表面におけるMHCクラスIIタンパク質若しくは複合体の発現レベルの低減を示す。様々な実施形態では、細胞はT細胞である。
【0039】
様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、追加のタンパク質をさらに発現する。いくつかの実施形態では、追加のタンパク質は、抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、T細胞受容体(TCR)である。特定の実施形態では、操作された免疫細胞は、追加のタンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、追加のタンパク質をコードする核酸は、破壊されたTAP2、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXANK、β2m若しくはRFXAP座位内に位置し、及び/又はかかる座位内で破壊を引き起こし、若しくは生じさせる。
【0040】
様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、内因性TCRa(TCRα又はTCRアルファ)遺伝子及び内因性CD52遺伝子のうちの1つ以上について、1つ以上のゲノム改変を含むか、又はさらに含む。
【0041】
様々な実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、健常ボランティア若しくは患者から得られた免疫細胞である、若しくはそれに由来するか、又はiPSCに由来する。
【0042】
一態様では、本開示は、TALEN、亜鉛フィンガー、Cas-CLOVER、及びCRISPR/Casシステムからなる群から選択される遺伝子編集技術を使用して、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の機能的発現を低減させることを含む、本明細書に開示される操作された免疫細胞を作製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、同種CAR-T細胞(中央)上のペプチド-MHC複合体と、宿主T細胞(上)及びNK細胞(左、右、下)上の受容体との間の相互作用の非包括的な図を示す。TCRを通して、T細胞は、MHCによって提示される非自己ペプチド(図1で「HLA」とラベル付けされる)を認識することによって外来細胞を殺傷する。無数の阻害性受容体(KIR2DL及びKIR3DL、NKG2A、LILRB1)を介して、NK細胞は、MHC相互作用の非存在として「自己喪失」を認識する。図1では、同種細胞のHLA複合体が外来性抗原(細長い長方形)を提示し、T細胞のTCR/CD3複合体が抗原を外来性として認識するため、T細胞殺傷が活性化される。図示されるように、同種細胞はHLA複合体である古典的HLA、HLA-E、及びHLA-G(各々がペプチドを示す)を提示するため、「自己喪失」はないため、NK細胞殺傷は活性化されない。
図2A図2A~2B。表面MHCを欠くT細胞は、NK細胞の脱顆粒を誘導し、選択的殺傷される。図2A:モネンシン(GolgiStop)及び抗CD107a抗体の存在下で、単独で、又は自己若しくは同種T細胞±b2m KOと共に、3時間インキュベーションした後のNK細胞の脱顆粒を測定するフローサイトメトリーデータの定量化。
図2B図2B。NK細胞と共にインキュベートされた表面MHC+(b2m WT)及び表面MHCneg(b2m KO)の経時的な標的の組成物。b2m WT:b2m KOの組成は、インキュベーション開始時に1:1(50%:50%)であった。平均+SDは、3つの実験について示されている。WT、野生型。KO、ノックアウト。
図3図3は、有核哺乳類細胞におけるMHCクラスIの生合成経路及びペプチド装填経路を示す。複数のMHC関連遺伝子(MHCクラスI、b2m、TAP、プロテアソーム成分)は、IFN-γ(IFNガンマ)誘導性NLRC5の転写制御下にある。MHCクラスI分子が多様なプロテアソーム生成ペプチドを装填される、主要経路は、TAP依存的である。あるいは、シグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)によって遊離される、比較的少数のより低い多様性のシグナルペプチドは、プロテアソーム及びTAPとは独立的にMHCクラスI分子に装填されることができる。
図4A図4A~4B。図4AではTAP2又はb2m遺伝子(HLA-A2+ドナーからの細胞内)、及び図4BではNLRC5遺伝子(HLA-A2-ドナーからの細胞中)の、CRISPR/Cas9媒介のノックアウト後の、T細胞の表面でのβ2mレベルを測定する疑似カラーのフローサイトメトリープロット。KO、ノックアウト。
図4B図4A~4B。図4AではTAP2又はb2m遺伝子(HLA-A2+ドナーからの細胞内)、及び図4BではNLRC5遺伝子(HLA-A2-ドナーからの細胞中)の、CRISPR/Cas9媒介のノックアウト後の、T細胞の表面でのβ2mレベルを測定する疑似カラーのフローサイトメトリープロット。KO、ノックアウト。
図5図5。IFN-γに曝露された遺伝子編集された(β2m、TAP2、又はNLRC5 KO)T細胞は、表面MHCクラスI発現の最小限の変化を経験する。初代T細胞は、TRAC sgRNA及び、β2m、TAP2、又はNLRC5 sgRNAのいずれかを用いて、CRISPR/Cas9を介して編集され、TCR αβ枯渇により精製された。細胞を、次いで72時間にわたり組換えIFN-γで処理し、その後、抗HLA-A、B、C抗体(クローンW6/32)を使用して、MHCクラスI発現についてフローサイトメトリーにより分析した。3つの技術的複製についてのMFIの平均+SDを示す。KO、ノックアウト;TRAC、T細胞受容体のα定数。
図6A図6A~6C。β2m、TAP2、又はNLRC5を欠くT細胞は、 T細胞介在性の抗原特異的殺傷から保護される。図6A。HLA-A2+ドナー(各対の左バー)から、又はHLA-A2-ドナー(各対の右バー)からの初代T細胞を、モック、TAP2、又はb2m sgRNAを用いてCRISPRを介して編集してから、BFP-P2A-MART1抗原で形質導入した。次に、未精製の編集された細胞を、72時間にわたり、単独で(エフェクターなし)、又はMART1特異的F5 TCR(エフェクター)で形質導入された自己エフェクターT細胞と共にインキュベートした。データは、未編集(表面β2m+)細胞、抗原発現(BFP+)細胞でゲーティングされ、エフェクター細胞の存在下対不在下での未編集BFP+細胞の%生存率についてプロットされる(3つの技術的複製の平均+SD)。
図6B図6B。データが、編集された(表面β2mneg)細胞、抗原発現(BFP+)細胞にゲーティングされ、エフェクター細胞の存在下対不在下での編集されたBFP+細胞の%生存率についてプロットされる(3つの技術的複製の平均+SD)ことを除いて、図6Aでの実験と同じである。NA、「KOなし」対照には編集された細胞がないため、該当なし。
図6C図6C図6A及び6Bでの実験と類似しているが、NLRC5 KOを添加して独立的に実施された。データは、編集された(表面β2mneg)細胞、抗原発現(BFP+)細胞にゲーティングされ、エフェクター細胞の存在下対不在下での編集されたBFP+細胞の%生存率についてプロットされる(2つの技術的複製の平均+SD)。NA、「KOなし」対照には編集された細胞がないため、該当なし;KO、ノックアウト。
図7図7:b2m、TAP2、又はNLRC5 KOは、T細胞同種反応性を軽減する。パンT細胞を単離し、TRAC KO及びb2m、TAP2、又はNLRC5 KOについて遺伝子編集し、照射された標的PBMCに対して初回刺激を受けたエフェクターパンT細胞と共に、1週間にわたり共インキュベートした。1:1のE:T比で48時間の共インキュベーション後、フローサイトメトリーを介して生存標的を計数した。%生存率は、固定体積/時間取得での、持続する標的の絶対数として計算され、エフェクターなしの状態に対して正規化される。各エフェクタードナーに対する2つ~3つの技術的複製の平均±SDを示す。3人の同種ドナーを試験した。
図8A図8A~8C。TAP2 KO及びNLRC5 KO T細胞は、NK介在性殺傷に対し、b2m KO T細胞よりも感受性が低い。TRAC KO及びb2m、TAP2、又はNLRC5 KOとなるように編集されたパンT細胞は、1000U/mLのIL-2の存在下で、同種エフェクターNK細胞と共に0:1、1:1、又は5:1のNK:T細胞の比率で72時間にわたり共インキュベートされた。生存標的を、フローサイトメトリーにより計数した。図8A。疑似カラーのフローサイトメトリープロットは、表示された条件下での生存標的T細胞を示す。データは、単一の同種ドナーからのNK細胞とのインキュベーションに由来する。
図8B図8B。NKエフェクター細胞を欠く状態に対して正規化された表面b2m陰性(すなわち、b2m、TAP2、又はNLRC5 KO)である生存細胞の割合の測定。4つのデータ点の平均±SDを示す(同種NKドナー2人のそれぞれについて2つの技術的複製)。
図8C図8C図8Bからの実験でのT細胞を染色する表面β2mの代表的ヒストグラム。NK1054及びNK1241は、2つの同種NKドナーである。縦の点線は、TRAC KO T細胞(MHC関連改変なし)の表面β2mの平均蛍光強度に近似し、ヒストグラムプロット全体にわたる視覚的な参照として含められている。Coinc、共インキュベーション;KO、ノックアウト;
図9A図9A~9B。開示された遺伝子編集戦略の予備的製造可能性評価。図9A。TRAC KOと、β2m、TAP2、又はNLRC5 KOとの組み合わせについて遺伝子編集された初代T細胞は、10G1K DLL3 CARを用いて、未編集の細胞と同等の速度で形質導入できる。パンT細胞を、CRISPR/Cas9を介して遺伝子編集し、レンチウイルスで形質導入してDLL3 CAR発現を可能にした。形質導入の効率は、CARレンチウイルスベクター上で共発現されたBFPレポーター遺伝子を発現する細胞の割合についてフローによって決定した。
図9B図9B。操作されたCAR T細胞の増殖は、ViCell細胞カウンター上の生細胞を計数し、0日目における初期の播種密度に対して正規化することによって決定された。
図10A図10A~10C。NLRC5 KOは、DLL3 CAR媒介性細胞毒性を損なわない。図10A。DLL3high発現WM266.4腫瘍細胞及び(図10B)DLL3low発現DMS273腫瘍細胞の、短期殺傷。様々なE:T比で抗DLL3 CAR+ T細胞を用いた生細胞撮像を介して生成された腫瘍細胞の成長曲線。図10C。DLL3high発現WM266.4腫瘍細胞の連続殺傷。技術的な三重複製の平均±SDを示す。
図10B図10A~10C。NLRC5 KOは、DLL3 CAR媒介性細胞毒性を損なわない。図10A。DLL3high発現WM266.4腫瘍細胞及び(図10B)DLL3low発現DMS273腫瘍細胞の、短期殺傷。様々なE:T比で抗DLL3 CAR+ T細胞を用いた生細胞撮像を介して生成された腫瘍細胞の成長曲線。図10C。DLL3high発現WM266.4腫瘍細胞の連続殺傷。技術的な三重複製の平均±SDを示す。
図10C図10A~10C。NLRC5 KOは、DLL3 CAR媒介性細胞毒性を損なわない。図10A。DLL3high発現WM266.4腫瘍細胞及び(図10B)DLL3low発現DMS273腫瘍細胞の、短期殺傷。様々なE:T比で抗DLL3 CAR+ T細胞を用いた生細胞撮像を介して生成された腫瘍細胞の成長曲線。図10C。DLL3high発現WM266.4腫瘍細胞の連続殺傷。技術的な三重複製の平均±SDを示す。
図11A図11A~11B。RFX複合体KOのsgRNAのスクリーニング。デュアルMHC-I/II発現低下に対するRFX5 KOの確認。遺伝子編集後7日のフローサイトメトリーによって評価したMHC-I(図11A)及びMHC-II(図11B)の平均蛍光強度(MFI)。
図11B図11A~11B。RFX複合体KOのsgRNAのスクリーニング。デュアルMHC-I/II発現低下に対するRFX5 KOの確認。遺伝子編集後7日のフローサイトメトリーによって評価したMHC-I(図11A)及びMHC-II(図11B)の平均蛍光強度(MFI)。
図12A図12A~12B。MHC-I/II発現の発現低下。3人の独立したT細胞ドナーについて遺伝子編集後5のフローサイトメトリーによって評価された遺伝子編集T細胞における(図12A)MHC-I及び(図12B)MHC-IIの平均蛍光強度(MFI)。生物学的な三重複製の平均±SDを示す。
図12B図12A~12B。MHC-I/II発現の発現低下。3人の独立したT細胞ドナーについて遺伝子編集後5のフローサイトメトリーによって評価された遺伝子編集T細胞における(図12A)MHC-I及び(図12B)MHC-IIの平均蛍光強度(MFI)。生物学的な三重複製の平均±SDを示す。
図13A図13A~13B。免疫回避T細胞の増殖。図13A。3人の独立したドナーにおける、TRAC KO +/- 免疫回避KO改変を伴うT細胞の増殖。2日目に遺伝子編集された細胞数と比較した倍増殖。2つの技術的複製の平均±SDを示す。
図13B図13B。IL-2の不在下での移植片T細胞の増殖。20Kの細胞を、20IU/mLのIL-2を有する96ウェルプレートに播種した。4日目に、IL-2なしで培地を交換した。培地はその後2~3日ごとに再供給された。6つの技術的複製の平均±SDを示す。
図14A図14A~14C。MHC-I/II発現の発現低下は、T細胞同種反応性を軽減する。2人の同種ドナーからのT細胞は、移植片ドナーからの照射細胞に対して1週間にわたり初回刺激を受けた。図14A: CD4+細胞、図14B: CD8+細胞、又は図14C : パンT細胞を、その後に精製し、移植片T細胞と共に1:1のE:T比で48時間にわたり共培養した。フローサイトメトリーによって評価された移植片T細胞の一方向殺傷。技術的な三重複製の平均±SDを示す。%生存率=細胞数/(エフェクターを含まない細胞数)×100。移植片細胞を編集して、KO細胞(TRAC、β2m、NLRC5、又はRFX5)を作製し、KO移植片細胞を、初回刺激を受けたCD4+、CD8+、及びパンT細胞と共培養した。初回刺激を受けたT細胞と共培養して生き延びた移植片KO細胞の数を決定した。初回刺激を受けた細胞との共培養を生き延びたのは、TRAC KO細胞よりもRFX5 KO細胞の割合が有意に高かった。
図14B図14A~14C。MHC-I/II発現の発現低下は、T細胞同種反応性を軽減する。2人の同種ドナーからのT細胞は、移植片ドナーからの照射細胞に対して1週間にわたり初回刺激を受けた。図14A: CD4+細胞、図14B: CD8+細胞、又は図14C : パンT細胞を、その後に精製し、移植片T細胞と共に1:1のE:T比で48時間にわたり共培養した。フローサイトメトリーによって評価された移植片T細胞の一方向殺傷。技術的な三重複製の平均±SDを示す。%生存率=細胞数/(エフェクターを含まない細胞数)×100。移植片細胞を編集して、KO細胞(TRAC、β2m、NLRC5、又はRFX5)を作製し、KO移植片細胞を、初回刺激を受けたCD4+、CD8+、及びパンT細胞と共培養した。初回刺激を受けたT細胞と共培養して生き延びた移植片KO細胞の数を決定した。初回刺激を受けた細胞との共培養を生き延びたのは、TRAC KO細胞よりもRFX5 KO細胞の割合が有意に高かった。
図14C図14A~14C。MHC-I/II発現の発現低下は、T細胞同種反応性を軽減する。2人の同種ドナーからのT細胞は、移植片ドナーからの照射細胞に対して1週間にわたり初回刺激を受けた。図14A: CD4+細胞、図14B: CD8+細胞、又は図14C : パンT細胞を、その後に精製し、移植片T細胞と共に1:1のE:T比で48時間にわたり共培養した。フローサイトメトリーによって評価された移植片T細胞の一方向殺傷。技術的な三重複製の平均±SDを示す。%生存率=細胞数/(エフェクターを含まない細胞数)×100。移植片細胞を編集して、KO細胞(TRAC、β2m、NLRC5、又はRFX5)を作製し、KO移植片細胞を、初回刺激を受けたCD4+、CD8+、及びパンT細胞と共培養した。初回刺激を受けたT細胞と共培養して生き延びた移植片KO細胞の数を決定した。初回刺激を受けた細胞との共培養を生き延びたのは、TRAC KO細胞よりもRFX5 KO細胞の割合が有意に高かった。
図15A図15A~15B。同種NK細胞によるNLRC5 KO及びRFX5 KO T細胞の殺傷は最小限である。図15A。NK細胞を同種PBMCから単離し、1000IU/mLのIL-2の存在下で、移植片T細胞と共に1:1のE:T比で、48時間にわたり共培養した。フローサイトメトリーによって評価された移植片T細胞の一方向殺傷。移植片細胞を編集して、KO(TRAC)又は二重KO(TRACと、β2m、NLRC5、又はRFX5のうち1つ)を作製し、KO移植片細胞を、NK細胞と共に共培養した。NK細胞と共培養して生き延びた移植片KO細胞の数を決定した。TRAC+NLRC5 KO細胞の約半分以上、及びTRAC+RFX5 KO細胞の約半分以上が、NK細胞との共培養を生き延びた。生物学的な三重複製の平均±SDを示す。NK細胞は、3人の異なるドナーからのPBMCから取得された。各データ点は、それらのドナーのうちの1つからの細胞による殺傷を表す。%生存率=細胞数/(エフェクターを含まない細胞数)×100。
図15B図15B。アロ-PBMCを移植片T細胞と共に、10:1のE:T比で、7日間にわたり共培養した後の同種NK細胞の増殖。6つの生物学的複製の平均±SDを示す。このデータは、TRAC KO +/- RFX5 KO又はNLRC5 KOが、有意なNK細胞増殖を誘発しないことを示す。同種NK細胞数を、遺伝子編集された移植片細胞との共培養後に測定し、移植片細胞の非存在下の細胞数と比較した。1倍の変化は、NK細胞が本質的に活性化/増殖しなかったことを意味する。このアッセイでは、PBMCを移植片T細胞と共に培養し、NK細胞をNK特異的マーカーに基づいて計数した。*:p<0.05;****:p<0.001、一方向ANOVA Holm-Sidak。
図16図16. 2人のドナーのうちいずれかからの同種PBMCとの共培養後の、様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有する移植片T細胞の生存。同種PBMCを、様々な遺伝子編集改変(TRAC KO単独で、又はβ2m、NLRC5、及びRFX5のうち1つのKOと共に)を伴うTRAC KO移植片T細胞と共に、9日間、10:1のE:T比で共培養した。移植片T細胞の生存は、フローサイトメトリーにより決定され、エフェクター全くなしで培養された移植片T細胞に対して正規化された。技術的な三重複製の平均±SDを示す。
図17A図17A~17D。US11過剰発現は、同種反応性T細胞回避を強化する。図17A。US11過剰発現は、MHC-I発現を低減し、NLRC5 KOと組み合わせてMHC-Iレベルを大幅に低減させることができる。
図17B図17B。US11過剰発現は、初回刺激を受けた同種反応性T細胞による殺傷を軽減する。US11は、NLRC5 KOと組み合わせて、殺傷をさらに低減することができる。移植片細胞を、1:1のE:T比で、初回刺激を受けたT細胞と共に48時間にわたり培養し、生存をフローサイトメトリーにより決定した。試験した3人のドナーの平均±SDを示す。
図17C図17C。US11過剰発現は、NKの精査を、最小限に増加させる。NLRC5 KOと組み合わせた場合、NKの反応性は増大するが、b2m KOと同じ程度までではない。移植片細胞を、1:1のE:T比で、1000IU/mLのIL-2を用いて同種NK細胞と共に48時間にわたり培養し、生存をフローサイトメトリーにより決定した。試験した3人のドナーの平均±SDを示す。
図17D図17D。US11及びUS11+NLRC5 KO T細胞は、TRAC KOのみよりも良く持続する。移植片細胞を、10:1のE:T比で、20IU/mLのIL-2を用いて同種PBMC細胞と共に9日間にわたり培養し、生存をフローサイトメトリーにより決定した。試験した3人のドナーの平均±SDを示す。%生存率=細胞数/(エフェクターを含まない細胞数)×100。
図18図18は、HCMV US11をコードするレンチウイルスベクター(LVV)を示す概略図である。
図19A図19A~19B。遺伝子編集したT細胞を、様々な濃度の組換えIFN-γと共に72時間にわたり培養した。MHC-1(図19A)及びMHC-II(図19B)の表面発現をフローサイトメトリーによって評価した。MHC-I及びMHC-II発現の変化を、媒体(0U/mLのIFN-γ)と比較して決定した。技術的な三重複製の平均±SDを示す。
図19B図19A~19B。遺伝子編集したT細胞を、様々な濃度の組換えIFN-γと共に72時間にわたり培養した。MHC-1(図19A)及びMHC-II(図19B)の表面発現をフローサイトメトリーによって評価した。MHC-I及びMHC-II発現の変化を、媒体(0U/mLのIFN-γ)と比較して決定した。技術的な三重複製の平均±SDを示す。
図20A図20A~20D。ステルス改変CD19 CAR T細胞の生成及び分析。TRAC KO±追加のステルス改変を有するCD19 CAR+細胞の割合を図20Aに示す。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。製造中の細胞増殖の動態を図20Bに示す。ドナーn=4の平均±SD。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。1人の代表的なドナーのCD4/CD8比を図20Cに示す。1人の代表的なドナーのT細胞メモリー表現型を図20Dに示す。
図20B図20A~20D。ステルス改変CD19 CAR T細胞の生成及び分析。TRAC KO±追加のステルス改変を有するCD19 CAR+細胞の割合を図20Aに示す。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。製造中の細胞増殖の動態を図20Bに示す。ドナーn=4の平均±SD。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。1人の代表的なドナーのCD4/CD8比を図20Cに示す。1人の代表的なドナーのT細胞メモリー表現型を図20Dに示す。
図20C図20A~20D。ステルス改変CD19 CAR T細胞の生成及び分析。TRAC KO±追加のステルス改変を有するCD19 CAR+細胞の割合を図20Aに示す。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。製造中の細胞増殖の動態を図20Bに示す。ドナーn=4の平均±SD。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。1人の代表的なドナーのCD4/CD8比を図20Cに示す。1人の代表的なドナーのT細胞メモリー表現型を図20Dに示す。
図20D図20A~20D。ステルス改変CD19 CAR T細胞の生成及び分析。TRAC KO±追加のステルス改変を有するCD19 CAR+細胞の割合を図20Aに示す。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。製造中の細胞増殖の動態を図20Bに示す。ドナーn=4の平均±SD。対照:TRAC KO CD19 CAR T細胞;NTD:TRAC KO非形質導入T細胞。1人の代表的なドナーのCD4/CD8比を図20Cに示す。1人の代表的なドナーのT細胞メモリー表現型を図20Dに示す。
図21A図21A~21B。同種PBMCとの共培養後の様々なKOを有する、宿主CD8 T細胞の増殖及び移植片CD19 CAR T細胞の生存。5つの固有の移植片/PBMC対を示した。同種PBMCを、様々な遺伝子編集改変(TRAC KO単独で、又はβ2m、NLRC5、RFX5、若しくはCIITAのうち1つのKOと共に)を含むTRAC KO CD19 CAR T細胞と共に、10:1のE:T比で9日間にわたり共培養した。宿主CD8 T細胞の増殖(図21A)を、抗CD8抗体(BioLegend、カタログ番号344709)及び抗HLA-A2抗体(BioLegend カタログ番号343326)を使用してフローサイトメトリーにより決定し、移植片細胞なしで培養されたPBMCに対して正規化した。移植片CAR T細胞の生存(図21B)を、フローサイトメトリーにより決定し、エフェクター細胞なしで培養された移植片CD19 CAR T細胞に対して正規化した。個々の点は各固有のPBMC/移植片対を表し、5対についての平均±SEMを示す。
図21B図21A~21B。同種PBMCとの共培養後の様々なKOを有する、宿主CD8 T細胞の増殖及び移植片CD19 CAR T細胞の生存。5つの固有の移植片/PBMC対を示した。同種PBMCを、様々な遺伝子編集改変(TRAC KO単独で、又はβ2m、NLRC5、RFX5、若しくはCIITAのうち1つのKOと共に)を含むTRAC KO CD19 CAR T細胞と共に、10:1のE:T比で9日間にわたり共培養した。宿主CD8 T細胞の増殖(図21A)を、抗CD8抗体(BioLegend、カタログ番号344709)及び抗HLA-A2抗体(BioLegend カタログ番号343326)を使用してフローサイトメトリーにより決定し、移植片細胞なしで培養されたPBMCに対して正規化した。移植片CAR T細胞の生存(図21B)を、フローサイトメトリーにより決定し、エフェクター細胞なしで培養された移植片CD19 CAR T細胞に対して正規化した。個々の点は各固有のPBMC/移植片対を表し、5対についての平均±SEMを示す。
図22A図22A~22C。様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有するCD19 CAR T細胞の持続性及び抗腫瘍活性を、同種T細胞拒絶反応モデル内でインビボで評価した。様々な遺伝子編集改変(TRAC KO単独、又はβ2m、NLRC5、若しくはRFX5のうち1つのKOと共に)を有するCD19 CAR T細胞を、同種ドナーからのヒトT細胞及びRaji腫瘍細胞を前もって移植したNSGマウスに注射した(図22A)。末梢血中のCAR T細胞の持続性(図22B)及び抗腫瘍活性(図22C)を、フローサイトメトリー及び全身生物発光によってそれぞれ決定した。NT:TRAC KOを有する非形質導入T細胞。平均±SEMを示す。
図22B図22A~22C。様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有するCD19 CAR T細胞の持続性及び抗腫瘍活性を、同種T細胞拒絶反応モデル内でインビボで評価した。様々な遺伝子編集改変(TRAC KO単独、又はβ2m、NLRC5、若しくはRFX5のうち1つのKOと共に)を有するCD19 CAR T細胞を、同種ドナーからのヒトT細胞及びRaji腫瘍細胞を前もって移植したNSGマウスに注射した(図22A)。末梢血中のCAR T細胞の持続性(図22B)及び抗腫瘍活性(図22C)を、フローサイトメトリー及び全身生物発光によってそれぞれ決定した。NT:TRAC KOを有する非形質導入T細胞。平均±SEMを示す。
図22C図22A~22C。様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有するCD19 CAR T細胞の持続性及び抗腫瘍活性を、同種T細胞拒絶反応モデル内でインビボで評価した。様々な遺伝子編集改変(TRAC KO単独、又はβ2m、NLRC5、若しくはRFX5のうち1つのKOと共に)を有するCD19 CAR T細胞を、同種ドナーからのヒトT細胞及びRaji腫瘍細胞を前もって移植したNSGマウスに注射した(図22A)。末梢血中のCAR T細胞の持続性(図22B)及び抗腫瘍活性(図22C)を、フローサイトメトリー及び全身生物発光によってそれぞれ決定した。NT:TRAC KOを有する非形質導入T細胞。平均±SEMを示す。
図23A図23A~23C。様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有する移植片T細胞のNK細胞拒絶反応を、同系マウスモデルで評価した(図23A)。インビトロ増殖対照(未編集)又は遺伝子編集(β2m又はNLRC5 KO)マウスT細胞を、宿主NK細胞の枯渇を伴う、又は伴わない同系宿主マウスに注射した。末梢血中の移植片T細胞は、フローサイトメトリーによりCD45.1-CD45.2+T細胞として特定された。MHC-1の表面発現(図23A)、及び移植片細胞の生存(図23C)を評価した。
図23B図23A~23C。様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有する移植片T細胞のNK細胞拒絶反応を、同系マウスモデルで評価した(図23A)。インビトロ増殖対照(未編集)又は遺伝子編集(β2m又はNLRC5 KO)マウスT細胞を、宿主NK細胞の枯渇を伴う、又は伴わない同系宿主マウスに注射した。末梢血中の移植片T細胞は、フローサイトメトリーによりCD45.1-CD45.2+T細胞として特定された。MHC-1の表面発現(図23A)、及び移植片細胞の生存(図23C)を評価した。
図23C図23A~23C。様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有する移植片T細胞のNK細胞拒絶反応を、同系マウスモデルで評価した(図23A)。インビトロ増殖対照(未編集)又は遺伝子編集(β2m又はNLRC5 KO)マウスT細胞を、宿主NK細胞の枯渇を伴う、又は伴わない同系宿主マウスに注射した。末梢血中の移植片T細胞は、フローサイトメトリーによりCD45.1-CD45.2+T細胞として特定された。MHC-1の表面発現(図23A)、及び移植片細胞の生存(図23C)を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、レシピエントの免疫系による拒絶反応を誘発しない、又は低減された程度で誘発する、治療用同種細胞産物を提供するための遺伝子編集戦略を提供する。これにより、細胞産物がレシピエント内でより長く持続することが可能となり、したがって治療効果が促進及び/又は改善される。本戦略は、同種細胞産物によって提示されるペプチドの多様性を最小化する一方で、細胞表面上でのMHCのレベルの混乱も最小限に留める。これは、細胞によるペプチド提示でそれらの産物が機能するTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP 及び RFXANK のうちの1つ以上をゲノムノックアウトすることによって、達成される。
【0045】
本開示の一態様では、遺伝子編集の標的は、抗原プロセシングに関連するトランスポーター(TAP)のTAP2成分である。MHCクラスI分子にペプチドが装填される、主要経路は、TAP依存性であり、すなわち、プロテアソーム(又はIFN-γ-誘導性免疫プロテアソーム)によって生成されたペプチドは、TAPを介して小胞体(ER)に取り込まれ、その後MHCクラスI上に装填される。シグナルペプチドに実質的に由来する、少数のペプチドは、 ER局在のシグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)によるシグナル配列の切断後に、代替的なTAP及びプロテアソーム非依存性経路を介して装填される。TAP2のノックアウトは、β2m KO細胞における表面β2mの大幅な(10~100倍)減少と比較して、表面β2mを控えめに(KO細胞の選択後に2倍減少)減少させる(図4Aを参照)。
【0046】
本開示の第2の態様では、遺伝子編集の標的は、5(NLRC5)を含有するNLRカスパーゼリクルートメントドメインと呼ばれるヌクレオチド結合ドメインとロイシンリッチリピート含有受容体(NLR)ファミリーのメンバーである。NLRC5のCRISPR/Cas9介在性ノックアウトは、表面β2mレベルの2.5倍の減少をもたらす(図4Bを参照)。
【0047】
本明細書に開示される遺伝子編集戦略は、驚くべきことに、レシピエントのT細胞応答に起因する細胞死を低減させるために十分にペプチドの提示を低減すると同時に、レシピエントのNK細胞による殺傷が誘発されるほどにはペプチドの提示を低減しない。したがって、本明細書に提供される戦略は、同種CAR-T療法及び他の同種細胞療法におけるかなりの進歩を表す。本明細書に提供される遺伝子編集戦略は、MHCクラスI提示を抑制することのNLRC5ノックアウト効果は、IFN-γの存在下又は不在下で起こるべきであるという、追加的な利点を与える。この結論は、IFN-γ誘導性MHCクラスI上方制御がNLRC5に依存するという所見によって裏付けられる。
一般的技術
【0048】
本開示の実施は、別段の示唆がない限り、当該技術分野の技術内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を採用する。そのような技術は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology: A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-1998)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)、PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J.D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)などの文献において全面的に説明されている。例えば、TALEN、CRISPR/Cas9、及びmegaTALヌクレアーゼを使用する遺伝子編集技術は、当技術の技能に含まれるものであり、T. Gaj et al., Genome-Editing Technologies: Principles and Applications, Cold Spring Harb Perspect Biol 2016;8:a023754などの文献、及びその中での引用などで全面的に説明されている。
定義
【0049】
本明細書で使用される場合、「自己」は、対象を治療するために使用される、前記対象から取得される、細胞、細胞株、又は細胞集団を意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「同種」とは、対象を治療するために使用される細胞又は細胞集団が、前記対象に由来せず、ドナーに由来することを意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「内因性」という用語は、生物、細胞、組織、又は系からの、又はそれらの内部で産生される任意の材料を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織、又は系から導入されるか、又はそれらの外部で産生される任意の材料を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、先天的及び/又は適応性免疫応答の開始及び/又は実行に機能的に関与する造血起源の細胞を指す。免疫細胞の例としては、T細胞、例えば、アルファ/ベータT細胞及びガンマ/デルタT細胞、調節性T(Treg)細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マスト細胞、並びに骨髄球由来食細胞が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込む、コスミド、プラスミド(例えば、裸の又はリポソーム中に含有される)、並びにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野で既知の全てのものを含む。
【0056】
本開示の操作された免疫細胞は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上を、本明細書に記載されるように低減されたレベルで発現、例えば、機能的に発現し、任意に追加的特徴をさらに含む。例えば、それらは、本明細書に記載される技術によって細胞内に導入された抗原結合タンパク質をコードする外因性核酸から、抗原結合タンパク質を機能的に発現することができ、及び/又はそれらは、ゲノム改変、例えば、遺伝子の機能的発現を低減又は除去するTCRa及び/又はCD52などの内因性遺伝子における変異を含むことができ、及び/又はそれらは、本明細書に記載される技術によって細胞内に導入される抗原結合タンパク質をコードする外因性核酸から、1つ以上の追加のタンパク質を発現することができる。本明細書に記載されるように、本開示の操作された免疫細胞は、細胞、例えば、様々な供給源から得られた免疫細胞から、由来、例えば調製され得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、遺伝子を「機能的に発現する」とは、遺伝子が発現され、その発現が機能的な遺伝子最終生成物をもたらすことを意味する。例えば、遺伝子がタンパク質をコードする場合に、遺伝子の発現が最終的に適切に機能するタンパク質を産生する場合、細胞はその遺伝子を機能的に発現する。したがって、遺伝子が転写されない場合、又は遺伝子の発現が最終的に翻訳されないRNAを産生するか、又は翻訳が機能しないタンパク質のみを産生する場合、例えば、タンパク質が正しく折り畳まれない、若しくはその作用部位(例えば、膜結合タンパク質については膜)に輸送されないなどの場合には、遺伝子は機能的に発現されない。機能的発現は、直接的に(例えば、遺伝子産物自体についてのアッセイによって)又は間接的に(例えば、遺伝子産物の効果についてのアッセイによって)測定することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」は、一方の機能が他方によって影響を受けるような、単一の核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を与えることができる(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、コード配列と作動可能に連結されている。
【0059】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を誘導する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成的若しくは誘導性プロモーターなどのプロモーター、又はエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結されている。
【0060】
「プロモーター」及び「プロモーター配列」は、互換的に使用され、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。異なるプロモーターが、異なる組織若しくは細胞型中で、又は異なる発生段階で、又は異なる環境条件若しくは生理学的条件に応答して、遺伝子の発現を誘導できることが、当業者によって理解される。
【0061】
本開示のベクターのいずれかにおいて、ベクターは、本明細書に開示されるプロモーターを任意選択的に含む。
【0062】
「宿主細胞」は、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクターのレシピエントであり得るか、又はそうであった個々の細胞又は細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、自然変異、偶発的な変異、又は意図的な変異により、元の親細胞と必ずしも完全に同一ではない場合がある(形態又はゲノムDNA相補体において)。宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチドを用いてインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、リガンドに結合することができるオリゴペプチド又はポリペプチドを指す。好ましくは、ドメインは、細胞表面分子と相互作用することができる。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択されることができる。「ストークドメイン」という用語は、本明細書で、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結するよう機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを指すために使用される。特に、ストークドメインは、細胞外リガンド結合ドメインに対して更なる柔軟性及びアクセス可能性を提供するために使用される。
【0064】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能シグナルを形質導入し、特殊化した機能を実施するように細胞を誘導する、タンパク質の部分を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって、増殖などであるがこれに限定されない、細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、BTLA、及びTollリガンド受容体が挙げられるが、これらに限定されない。共刺激性分子の例としては、CD27、CD28、CD8、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83などと特異的に結合するリガンドが挙げられる。
【0066】
「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族共刺激シグナル分子に特異的に結合し、それによって、例えば、ペプチドが装填されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって提供される一次シグナルに加えて、増殖活性化、分化などを含むがこれらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルを提供する、抗原提示細胞上の分子を指す。共刺激リガンドとしては、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1 BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、M1 CB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、及びB7-H3と特異的に結合するリガンドが挙げられ得るが、これらに限定されない。共刺激リガンドはまた、とりわけ、CD27、CD28、4-1 BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなどであるがこれらに限定されない、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体を包含する。
【0067】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する、少なくとも1つの抗原認識部位を介した、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的への特異的結合が可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、この用語は、無傷のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvなど)、並びに例えば、限定されないが、一本鎖(scFv)及びドメイン抗体(例えば、サメ抗体及びラクダ類抗体を含む)、及び抗体を含む融合タンパク質を含む、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構成も包含する。抗体は、IgG、IgA、若しくはIgMなどの任意のクラス(又はそのサブクラス)の抗体を含み、抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、例えば、lgG1、lgG2、lgG3、lgG4、lgA1、及びlgA2などのサブクラス(アイソタイプ)に更に分割されることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。
【0068】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」又は「抗原結合部分」という用語は、所与の抗原に特異的に結合する能力を保持する、無傷の抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、無傷の抗体の断片によって実施され得る。抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含される結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、単一ドメイン抗体(dAb)断片(例えば、Ward et al., Nature 341 :544-546, 1989を参照)、並びに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0069】
標的に「特異的に結合する」抗体、抗体コンジュゲート、又はポリペプチドは、当該技術分野で十分理解された用語であり、そのような特異的結合を決定するための方法も、当該技術分野で周知である。分子は、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、かつ/又はより高い親和性で、別の細胞又は物質とよりも特定の細胞又は物質と反応又は会合する場合、「特異的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、かつ/又はより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」。この定義を読み取ることによって、例えば、第1の標的に特異的に結合する抗体(又は部分若しくはエピトープ)が、第2の標的に特異的に結合してもよく、又は結合しなくてもよいことも理解される。したがって「特異的結合」は、排他的結合を(含むことができるが)必ずしも必要としない。
【0070】
抗体の「可変領域」は、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を、単独で又は組み合わせて指す。当該技術分野で知られているように、重鎖及び軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された、4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって近接して一緒に保持され、他方の鎖からのCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための技術はいくつかあり、例えば、種間配列の可変性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD))、及び抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al., 1997, J. Molec. Biol. 273:927-948)、Chothiaシステム(すなわち、Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. (1987) 196(4):901-917)である。本明細書で使用される場合、CDRは、いずれかのアプローチによって、又は両方のアプローチの組み合わせによって定義されるCDRを指す場合がある。
【0071】
可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothiaの定義、Kabat及びChothiaの両方の蓄積、AbM、接触、及び/若しくは構造定義、又は当該技術分野で周知のCDR決定の任意の方法に従って特定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体CDRは、Kabat et al.によって最初に定義された超可変領域として特定されることができる。例えば、Kabat et al., 1992, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, NIH, Washington D.C.を参照。CDRの位置もまた、Chothiaなどによって最初に記載された構造的ループ構造として特定される場合がある。例えば、Chothia et al., Nature 342:877-883, 1989を参照されたい。CDR特定のための他のアプローチとしては、KabatとChothiaとの間の妥協策であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現Accelrys(登録商標))、又はMacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732- 745, 1996に記載される、観察された抗原接触に基づくCDRの「接触定義」を使用して導出される「AbM定義」が挙げられる。本明細書でCDRの「構造定義」と称される別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合に対するエンタルピー的に寄与する残基として特定される場合がある。例えば、Makabe et al., Journal of Biological Chemistry, 283:1 156-1 166, 2008を参照されたい。更に他のCDR境界定義は、上記のアプローチのうちの1つに厳密には従わなくてもよいが、それにもかかわらず、それらは、特定の残基若しくは残基の群、又は更にはCDR全体が抗原結合に大きな影響を与えないという予測又は実験的発見を考慮して、短縮又は延長されることができるが、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複する。本明細書で使用される場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該技術分野で既知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指す場合がある。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用することができる。2つ以上のCDRを含有する任意の所与の実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、接触、AHo及び/又は構造定義のいずれかに従って定義されることができる。
【0072】
本開示の抗体は、当該技術分野で周知の技術、例えば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、又はそのような技術若しくは当該技術分野で容易に知られる他の技術の組み合わせを使用して産生されることができる(例えば、Jayasena, S.D., Clin. Chem., 45: 1628-50, 1999、及びFellouse, F.A., et al, J. Mol. Biol., 373(4) :924-40, 2007を参照されたい)。
【0073】
当該技術分野で知られているように、本明細書で互換的に使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの鎖を指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変されたヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによって鎖に組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの改変されたヌクレオチドを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造への改変は、鎖の集合の前又は後に与えられることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分によって中断される場合がある。ポリヌクレオチドは、標識構成成分とのコンジュゲーションなどによって、重合後に更に改変される場合がある。他のタイプの改変としては、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上の類似体による「キャップ」置換、ヌクレオチド間改変、例えば、非荷電連結を有するもの(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)、及び電荷連結を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)などのペンダント部分を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、改変された連結を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、並びに非改変形態のポリヌクレオチドが挙げられる。更に、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基によって置換される場合があるか、標準的な保護基によって保護される場合があるか、若しくは追加のヌクレオチドへの追加の連結を準備するために活性化される場合があるか、又は固体支持体にコンジュゲートされる場合がある。5’末端及び3’末端のOHは、リン酸化され得るか、又は1~20個の炭素原子のアミン若しくは有機キャッピング基部分で置換され得る。他のヒドロキシルも、標準的な保護基に誘導体化される場合がある。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-、又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、アルファ又はベータアノマー糖、アラビノース、キシロース、又はリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及びメチルリボシドなどの脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当該技術分野で一般的に知られている類似の形態のリボース又はデオキシリボース糖を含有することができる。1つ以上のホスホジエステル連結は、代替の連結基によって置き換えられる場合がある。これらの代替の連結基としては、リン酸塩が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、又はCH2(「ホルムアセタール」)によって置き換えられる実施形態が挙げられるが、これらに限定されず、各R又はR’は独立して、H、又はエーテル(-O-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、若しくはアラルジル(araldyl)を任意選択的に含有する置換若しくは非置換アルキル(1-20C)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が、同一である必要はない。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0074】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」は、細胞による外因性又は異種のRNA又はDNAの取り込みを指す。細胞は、外因性又は異種のRNA又はDNAが細胞内に導入されている場合、そのようなRNA又はDNAによって「トランスフェクト」されている。細胞は、トランスフェクトされたRNA又はDNAが表現型の変化に影響を及ぼす場合、外因性又は異種のRNA又はDNAによって「形質転換」されている。形質転換RNA又はDNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに統合(共有結合)され得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「形質転換」は、核酸断片が宿主生物のゲノムに移入し、遺伝子的に安定した遺伝をもたらすことを指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」又は「組換え」又は「形質転換された」生物と称される。
【0076】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(すなわち、混入物質を含まない)、より好ましくは、少なくとも90%純粋、より好ましくは、少なくとも95%純粋、更により好ましくは、少なくとも98%純粋、及び最も好ましくは、少なくとも99%純粋である材料を指す。「競合する」という用語は、抗体に関して本明細書で使用される場合、第1の抗体、又はその抗原結合断片(若しくは部分)が、第2の抗体又はその抗原結合部分の結合と十分に類似した様式で、エピトープに結合し、これにより、第1の抗体のその同族エピトープとの結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出できるほどに減少することを意味する。第2の抗体のそのエピトープへの結合も、第1の抗体の存在下で検出できるほどに減少するという別の可能性も、事実であり得るが、そうである必要はない。すなわち、第1の抗体は、その第2の抗体が第1の抗体のそのそれぞれのエピトープへの結合を阻害することなく、第2の抗体のそのエピトープへの結合を阻害することができる。しかしながら、各抗体が、他方の抗体のその同族エピトープ又はリガンドとの結合を、同じ程度、より大きい程度、又はより小さい程度であるかにかかわらず、検出できるほどに阻害する場合、抗体は、それらのそれぞれのエピトープの結合について、互いに「交差競合」すると言われる。競合抗体及び交差競合抗体の両方が、本開示によって包含される。そのような競合又は交差競合が発生する機序(例えば、立体障害、構造変化、又は共通エピトープ、若しくはその一部分への結合)にかかわらず、当業者は、本明細書に提供される教示に基づいて、そのような競合抗体及び/又は交差競合抗体が包含され、本明細書に開示される方法に有用であり得ることを理解するであろう。
【0077】
本明細書で使用される場合、「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本開示の目的で、有益な又は所望の臨床結果としては、以下のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない:腫瘍細胞若しくはがん細胞の増殖の低減(若しくは破壊)、腫瘍細胞の転移の阻害、腫瘍の大きさの縮小若しくは減少、疾患(例えば、がん)の寛解、疾患(例えば、がん)に起因する症状の減少、疾患(例えば、がん)に罹患している者の生活の質の向上、疾患(例えば、がん)を治療するために必要とされる他の薬剤の用量の減少、疾患(例えば、がん)の進行の遅延、疾患(例えば、がん)の治癒、及び/又は疾患(例えば、がん)を有する対象の生存の延長。
【0078】
「改善すること」とは、治療を行わないことと比較した1つ以上の症状の軽減又は改善を意味する。「改善すること」はまた、症状の持続時間の短縮又は低減を含む。本明細書で使用される場合、薬物、化合物、又は医薬組成物の「有効投与量」又は「有効量」は、任意の1つ以上の有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用について、有益な又は所望の結果は、疾患の生化学的、組織学的、及び/又は行動的症状、疾患の発症中に現れるその合併症及び中間の病理学的表現型を含む、リスクの排除若しくは低減、重症度の低下、又は疾患の発症の遅延を含む。治療的使用について、有益な又は所望の結果は、様々な疾患又は状態(例えば、がんなど)の1つ以上の症状の発生率の低減若しくは改善、疾患を治療するために必要とされる他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の強化、及び/又は疾患の進行の遅延などの臨床結果を含む。有効投与量は、1回以上の投与で投与され得る。本開示の目的で、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投与量は、直接的又は間接的のいずれかで、予防的又は治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投与量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と併せて達成されてもよく、又は達成されなくてもよい。したがって、「有効投与量」は、1つ以上の治療剤を投与する文脈において考慮されることができ、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、所望の結果が達成されることができるか、又は達成される場合、有効量で与えられるとみなされることができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「対象」は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト又はサルである。哺乳動物としては、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、及びラットが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、対象は、ヒトである。例示的な実施形態では、対象は、サル、例えば、カニクイザルである。
【0080】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、宿主細胞中に1つ以上の目的の遺伝子又は配列を送達し、好ましくは発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、裸DNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド、又はファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及び産生細胞などのある特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、有効成分と組み合わせた場合に、成分が生物活性を保持することを可能にし、対象の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例としては、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾル又は非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は通常の(0.9%)生理食塩水である。そのような担体を含む本開示の組成物は、周知の従来の方法によって製剤化される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990、及びRemington, The Science and Practice of Pharmacy 21 st Ed. Mack Publishing, 2005を参照)。
【0082】
本明細書で使用される場合、「同種反応性」は、胸腺発生中に見られなかったMHC複合体を認識するT細胞の能力を指す。同種反応性は、宿主対移植片拒絶及び移植片対宿主疾患として臨床的に現れる。
【0083】
本明細書の値又はパラメータにつける「約」への言及は、その値又はパラメータ自体のプラス又はマイナス1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%を対象とする実施形態を含む(及び記述する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。数値範囲は、その範囲を定義する数値を含む。
【0084】
本明細書に「含むこと」という用語で記載される実施形態がどこにあっても、「からなること」及び/又は「から本質的になること」という観点から記載される他の点で類似した実施形態もまた提供されることが理解される。
【0085】
本開示の態様又は実施形態が、マーカッシュ群又は他の代替の群分けの観点から記載される場合、本開示は、全体として列挙された群全体だけでなく、群の個々の各メンバー及び主要な群の可能性のある全ての部分群、並びに主要な群に、群メンバーのうちの1つ以上がないものも包含する。本開示はまた、開示及び/又は請求される実施形態における群メンバーのいずれかのうちの1つ以上の明示的な除外を想定する。
【0086】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変化形は、規定された整数又は整数の群の包含を暗示するが、任意の他の整数又は整数の群の排除は暗示しないと理解されるであろう。文脈によって別に必要とされない限り、単数形は、複数形を含むものとし、複数形は、単数形を含むものとする。
【0087】
例示的な方法及び材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料も、本開示の実施又は試験に使用され得る。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0088】
「抗原結合タンパク質」は、1つ以上の抗原結合ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」は、指定された標的抗原に結合する任意のポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、腫瘍細胞上の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、過剰増殖性疾患に関与する細胞上の抗原、又はウイルス抗原若しくは細菌抗原に結合する。
【0089】
抗原結合ドメインは、免疫学的に機能的な断片である抗体結合領域を含むが、これに限定されない。抗原結合ドメインの「免疫学的に機能的な断片」(又は「断片」)という用語は、全長鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、それでもなお標的抗原に特異的に結合することが可能な抗体の部分(その部分がどのように取得又は合成されるかによらない)を含む抗原結合ドメインの種である。こうした断片は、標的抗原に結合し、所与のエピトープに結合するために、無傷の抗体を含む他の抗原結合ドメインと競合しうるという点で、生物学的に活性である。
【0090】
免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片は、scFv断片、Fab断片(Fab’、F(ab’)2など)、1つ以上の相補性決定領域(「CDR」)、二重特異性抗体(同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするにはあまりに短い、短いペプチドリンカーを介して結合された、軽鎖可変ドメインと同じポリペプチド上の重鎖可変ドメイン)、ドメイン抗体、二価抗原結合ドメイン(2つの抗原結合部位を含む)、多特異性抗原結合ドメイン、及び一本鎖抗体を含むが、これらに限定されない。これらの断片は、ヒト、マウス、ラット、ラクダ類、又はウサギを含むがこれらに限定されない、任意の哺乳類供給源に由来しうる。当業者によって理解されるように、抗原結合ドメインは、非タンパク質成分を含みうる。
【0091】
可変領域は、典型的に、3つの超可変領域(CDR)で結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を呈する。それぞれの対の二つの鎖のCDRは、典型的に、フレームワーク領域によって整列されるのであり、それにより特定のエピトープへの結合が可能となりうる。N末端からC末端まで、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方は、典型的に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。慣例により、重鎖中のCDR領域は、典型的にHC CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれる。軽鎖中のCDR領域は、典型的にLC CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれる。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体の全長の軽鎖又は重鎖中に存在する1つ以上の相補性結合領域(CDR)を含み、いくつかの実施形態では、単一の重鎖及び/又は軽鎖又はその一部を含む。これらの断片は、組換えDNA技術によって産生され得るか、又は無傷の抗体を含む抗原結合ドメインの酵素的切断若しくは化学的切断によって産生され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、その抗体又は断片であり、その相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、軽鎖CDRであるCDR1、CDR2及びCDR3、並びに重鎖CDRであるCDR1、CDR2及びCDR3を含む、一本鎖可変断片(scFv)である。
【0094】
フレームワーク、CDR、及び可変ドメインのそれぞれへのアミノ酸の割り当ては、典型的には、Kabatナンバリング(例えば、Kabat et al. in Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., NIH Publication 91-3242, Bethesda Md. 1991を参照)、Chothiaナンバリング(例えば、Chothia & Lesk, (1987), J Mol Biol 196: 901-917;Al-Lazikani et al., (1997)J Mol Biol 273: 927-948;Chothia et al.,(1992) J Mol Biol 227: 799-817; Tramontano et al.,(1990) J Mol Biol 215(1): 175-82;及び米国特許第7,709,226号を参照)、接触ナンバリング、AbMスキーム(Antibody Modeling program、Oxford Molecular)、又はAHoシステム(Honneger and Pluckthun, J Mol Biol (2001) 309(3):657-70)のナンバリングスキームに従う。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、組換え抗原受容体である。本明細書で使用される場合、「組換え抗原受容体」という用語は、細胞外抗原結合ドメイン又は細胞外リガンド結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内ドメインと、を含む、天然に存在しない表面受容体を広く指す。いくつかの実施形態では、組換え抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。キメラ抗原受容体(CAR)は、当該技術分野で周知である。CARは、抗原認識部分、膜貫通ドメイン、及びT細胞活性ドメインを含む融合タンパク質である(例えば、Eshhar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(2): 720-724 (1993)を参照)。
【0096】
いくつかの実施形態では、組換え抗原受容体の細胞内ドメインは、共刺激ドメイン及びITAM含有ドメインを含む。いくつかの実施形態では、組換え抗原受容体の細胞内ドメインは、細胞内タンパク質又はその機能的バリアント(例えば、短縮、挿入、欠失、又は置換)を含む。
【0097】
本明細書において使用される場合、「細胞外リガンド結合ドメイン」又は「細胞外抗原結合ドメイン」という用語は、リガンド若しくは抗原に結合することができるか、又はリガンド若しくは表面抗原などの細胞表面分子と相互作用することができるポリペプチドを指す。例えば、細胞外リガンド結合ドメイン又は抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンド、例えば、腫瘍特異的抗原を認識するように選択される場合がある。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、又は抗体の抗原結合断片若しくは抗原結合部分を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、Fv若しくはscFv、Fab若しくはscFab、F(ab’)2若しくはscF(ab’)2、Fd、モノボディ、アフィボディ、ラクダ類抗体、VHH抗体、単一ドメイン抗体、又はDARPinを含む。いくつかの実施形態では、リガンド結合ドメインは、表面受容体に結合するリガンド、又はリガンドに結合する表面受容体のエクトドメインなどの結合対のパートナーを含む。
【0098】
「ストークドメイン」又は「ヒンジドメイン」という用語は、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結するように機能する任意のポリペプチドを指すために、本明細書で互換的に使用される。特に、ストークドメインは、細胞外リガンド結合ドメインに対して更なる柔軟性及びアクセス可能性を提供するためによく使用される。
【0099】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能シグナルを形質導入し、特殊化した機能を実施するように細胞を誘導する、タンパク質の部分を指す。
ベクター
【0100】
ポリヌクレオチド組成物の投与のための発現ベクター及び方法は、当該技術分野で既知であり、本明細書にさらに記載される。
【0101】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。
【0102】
任意のそのような配列に相補的なポリヌクレオチドも、本開示によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード若しくはアンチセンス)又は二本鎖である場合があり、DNA(ゲノム、cDNA、若しくは合成)又はRNA分子である場合がある。RNA分子は、イントロンを含有し、1対1でDNA分子に対応するHnRNA分子、及びイントロンを含有しないmRNA分子を含む。追加のコード配列又は非コード配列は、本開示のポリヌクレオチド内に存在することができるが、そうである必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子及び/又は支持材料に連結されることができるが、そうである必要はない。
【0103】
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち、抗体又はその一部分をコードする内因性配列)を含むことができるか、又はそのような配列のバリアントを含むことができる。ポリヌクレオチドバリアントは、天然の免疫反応性分子と比較して、コードされたポリペプチドの免疫反応性が低減されないような、1つ以上の置換、付加、欠失、及び/又は挿入を含有する。コードされたポリペプチドの免疫反応性に対する効果は、概して、本明細書に記載されるように評価されることができる。バリアントは、好ましくは、天然抗体又はその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、更により好ましくは少なくとも約90%の同一性、及び最も好ましくは少なくとも約95%の同一性を示す。2つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチド又はアミノ酸の配列が、以下に記載されるように最大一致のために整列されたときに同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性の局所領域を特定及び比較することによって実施される。本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20、通常30~約75、又は40~約50個の隣接する位置のセグメントを指し、配列は、2つの配列が最適に整列された後、同じ数の隣接する位置の参照配列と比較されることができる。
【0104】
比較のための配列の最適な整列は、デフォルトパラメータを使用して、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイートのMegalignプログラム(DNASTAR, Inc.、ウィスコンシン州マジソン)を使用して行われることができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかの整列スキームを具現化する:Dayhoff,M.O.,1978,A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships. In Dayhoff,M.O.(ed.) Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol. 5,Suppl.3,pp.345-358、Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in Enzymology vol. 183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA、Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151-153、Myers,E.W.and Muller W.,1988,CABIOS 4:11-17、Robinson,E.D.,1971,Comb. Theor. 11:105、Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol. Biol. Evol. 4:406-425、Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA、Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.,1983,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726-730。
【0105】
いくつかの実施形態では、「配列同一性の割合」は、少なくとも20個の位置の比較ウィンドウにわたって、2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適な整列について、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常5~15パーセント、又は10~12パーセントの付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。割合は、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列中で生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を、参照配列中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割ること、及びその結果に100を乗じて、配列同一性の割合を得ることによって計算される。
【0106】
バリアントはまた、又は代替的に、天然遺伝子、又はその一部分若しくは相補体に対して実質的に相同である場合がある。そのようなポリヌクレオチドバリアントは、天然抗体(又は相補的配列)をコードする天然に存在するDNA配列に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる。
【0107】
好適な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の溶液中での前洗浄、50℃~65℃、5×SSCでの一晩のハイブリダイズ、続く0.1%のSDSを含有する2×、0.5×、及び0.2×SSCの各々での65℃、20分間の2回の洗浄を含む。
【0108】
本明細書で使用される場合、「高度にストリンジェントな条件」又は「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温、例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃で採用し、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを、0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のFicoll/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)と、750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムと42℃で採用し、又は(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCI、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/m\)、0.1%のSDS、及び10%のデキストラン硫酸塩を42℃で採用し、洗浄は、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃の50%のホルムアミド中であり、続く高ストリンジェンシー洗浄は、55℃でEDTAを含有する0.1×SSCからなる、条件である。当業者は、プローブ長さなどの要因に適応するために必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法を認識するであろう。
【0109】
遺伝子コードの縮退の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列があることが、当業者によって理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドのうちのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対する最小限の相同性を有する。それにもかかわらず、コドン使用の差異により異なるポリヌクレオチドが、本開示によって具体的に企図される。更に、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本開示の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、及び/又は置換などの、1つ以上の変異の結果として改変される内因性遺伝子である。結果として生じるmRNA及びタンパク質は、変化した構造又は機能を有することができるが、そうである必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(ハイブリダイゼーション、増幅、及び/又はデータベース配列比較など)を使用して特定されることができる。
【0110】
本開示のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え方法、又はPCRを使用して得られ得る。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該技術分野で周知であり、本明細書に詳細に記載される必要はない。当業者は、本明細書に提供される配列及び市販のDNA合成装置を使用して、所望のDNA配列を産生することができる。
【0111】
組換え方法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、本明細書に更に記載されるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドは、好適なベクターに挿入され得、更にはベクターは、複製及び増幅のために好適な宿主細胞に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の手段によって宿主細胞に挿入されることができる。細胞は、直接的な取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F-接合、又はエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって、形質転換される。一旦導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(プラスミドなど)として細胞内に維持され得るか、又は宿主細胞ゲノムに統合され得る。そのように増幅されたポリヌクレオチドは、当該技術分野で周知の方法によって宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい。
【0112】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生を可能にする。PCR技術は当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号及び第4,683,202号、並びにPCR: The Polymerase Chain Reaction, Mullis et al. eds., Birkauswer Press, Boston, 1994に記載されている。
【0113】
RNAは、適切なベクター中で単離されたDNAを使用し、それを好適な宿主細胞に挿入することによって得られ得る。細胞が複製し、DNAがRNAに転写される場合、RNAは、例えば、Sambrook et al., 1989(上記参照)に記載されるように、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0114】
好適なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築されることができるか、又は当該技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択されることができる。選択されるクローニングベクターは、使用されることが意図される宿主細胞に応じて異なる場合がある一方、有用なクローニングベクターは、概して、自己複製する能力を有するのであり、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有することができ、かつ/又はベクターを含有するクローンの選択に使用される場合があるマーカーの遺伝子を担持することができる。好適な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、並びにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業ベンダーから入手可能である。
【0115】
発現ベクターは概して、本開示によるポリヌクレオチドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、又は染色体DNAの不可欠な部分としてのいずれかで、宿主細胞内で複製可能でなければならないことが暗示される。好適な発現ベクターとしては、国際公開WO 87/04462に開示されるプラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、及び発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクター構成成分としては概して、以下のうちの1つ以上が挙げられる場合があるが、これらに限定されない:シグナル配列、複製起源、1つ以上のマーカー遺伝子、好適な転写制御要素(プロモーター、エンハンサー、及びターミネーターなど)。発現(すなわち、翻訳)について、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、及び終止コドンなど、1つ以上の翻訳制御要素も通常必要とされる。
【0116】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、又は他の物質を採用したトランスフェクション、マイクロプロジェクタイル衝撃、リポフェクション、及び感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染性病原体である場合)を含む多数の適切な手段のいずれかによって、宿主細胞に導入され得る。導入ベクター又はポリヌクレオチドの選択は、宿主細胞の特徴に依存することが多い。
【0117】
抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードするポリヌクレオチドは、発現カセット又は発現ベクター(例えば、細菌宿主細胞への導入のためのプラスミド、又は昆虫宿主細胞のトランスフェクションのためのバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、又は哺乳動物宿主細胞のトランスフェクションのためのレンチウイルスなどのプラスミド若しくはウイルスベクター)中に存在することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド又はベクターは、例えば、限定されないが、2Aペプチドをコードする配列などの、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含むことができる。ピコルナウイルスのアフトウイルス亜群で特定された2Aペプチドは、コドンによってコードされる2つのアミノ酸間のペプチド結合の形成なしに、あるコドンから次のコドンへのリボソーム「スキップ」を引き起こす(例えば、Donnelly and Elliott 2001;Atkins, Wills et al. 2007;Doronina, Wu et al. 2008を参照)。「コドン」とは、リボソームによって1つのアミノ酸残基に翻訳されるmRNA上(又はDNA分子のセンス鎖上)の3つのヌクレオチドを意味する。したがって、ポリペプチドが、インフレームである2Aオリゴペプチド配列によって分離される場合、imRNA内の単一の隣接するオープンリーディングフレームから、2つのポリペプチドが合成され得る。そのようなリボソームスキップ機序は、当該技術分野で周知であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされるいくつかのタンパク質の発現のためにいくつかのベクターによって使用されることが知られている。
【0118】
宿主細胞の分泌経路に膜貫通ポリペプチドを誘導するために、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列又はベクター配列において、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、又はプレ配列としても知られる)が提供される。分泌シグナル配列は、膜貫通核酸配列に作動可能に連結されており、すなわち、2つの配列が正しいリーディングフレームで結合され、宿主細胞の分泌経路に新しく合成されたポリペプチドを誘導するように位置付けられている。分泌シグナル配列は一般的に、目的のポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’に位置付けられているが、ある特定の分泌シグナル配列は、目的の核酸配列の他の場所に位置付けられることができる(例えば、Welch et al.、米国特許第5,037,743号;Holland et al.、米国特許第5,143,830号を参照)。当業者であれば、遺伝的コードの縮退を考慮して、かなりの配列変動がこれらのポリヌクレオチド分子の間で可能であることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、本開示の核酸配列は、哺乳動物細胞中の発現のために、好ましくはヒト細胞中の発現のためにコドン最適化されている。コドン最適化は、所与の種の高度に発現される遺伝子において一般的に稀であるコドンを、そのような種の高度に発現される遺伝子において一般的に頻繁にあるコドンに、目的の配列において交換することを指し、そのようなコドンは、交換されているコドンと同じアミノ酸をコードする。
【0119】
免疫療法における使用のための免疫細胞を調製する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を1つ以上の免疫細胞に導入すること、又は抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードするポリヌクレオチドを導入すること、及び細胞を増殖させることを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞を操作する方法に関し、方法は、免疫細胞を提供することと、少なくとも1つの抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を細胞の表面上で発現することと、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトすることと、細胞中で少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現することと、を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードするポリヌクレオチドは、細胞における安定した発現のための1つ以上の発現ベクター中に存在する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞における安定した発現のためのウイルスベクター中に存在する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、例えば、レンチウイルスベクター又はアデノウイルスベクターである場合がある。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、エレクトロポレーションにより直接細胞に導入されるmRNAであり得る。いくつかの実施形態では、CytoPulse技術を使用して、材料を細胞中に送達するために、生細胞を一過性に透過化することができる。パラメータは、最小の死亡率で高いトランスフェクション効率のための条件を決定するために改変され得る。
【0122】
免疫細胞、例えば、T細胞をトランスフェクトする方法も、本明細書に提供される。一般に、エレクトロポレーションによってRNA、DNA又はタンパク質のいずれかを細胞内に導入することなどの、当業者に知られている任意の従来の方法を使用できる。例えば、Luft and Ketteler, J. Biomolec Screening 20(8): 932 (2015)(DOI: 10.1177/1087057115579638)を参照。いくつかの実施形態では、方法は、T細胞をRNAと接触させることと、T細胞に、(a)約2250~3000V/センチメートルの電圧範囲を有する電気パルス、(b)0.1msのパルス幅、(c)工程(a)と(b)との電気パルス間の約0.2~10msのパルス間隔、(d)約100msのパルス幅、及び工程(b)の電気パルスと工程(c)の第1の電気パルスとの間の約100msのパルス間隔を伴う、約2250~3000V/センチメートルの電圧範囲を有する電気パルス、並びに(e)約0.2msのパルス幅、及び4つの電気パルスの各々の間の2msのパルス間隔を伴う、約325Vの電圧を有する4つの電気パルスからなる、アジャイルパルスシーケンスを印加することと、を含む。いくつかの実施形態では、T細胞をトランスフェクトする方法は、当該T細胞をRNAと接触させることと、T細胞に、(a)約1600、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2400、2450、2500、2600、2700、2800、2900、又は3000V/センチメートルの電圧を有する電気パルス、(b)0.1msのパルス幅、(c)及び工程(a)と(b)との電気パルス間の約0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10msのパルス間隔、(d)100msのパルス幅、及び工程(b)の電気パルスと工程(c)の第1の電気パルスとの間の100msのパルス間隔を伴う、約2250~3000V/センチメートルの電圧範囲を有する、例えば、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2400、2450、2500、2600、2700、2800、2900、又は3000V/センチメートルの1つの電気パルス、並びに(e)約0.2msのパルス幅、及び4つの電気パルスの各々の間の約2msのパルス間隔を伴う、約325Vの電圧を有する4つの電気パルスを含む、アジャイルパルスシーケンスを印加することと、を含む。上記の値範囲に含まれる任意の値が、本出願に開示されている。エレクトロポレーション培地は、当該技術分野で既知の任意の好適な培地であり得る。いくつかの実施形態では、エレクトロポレーション培地は、約0.01~約1.0ミリジーメンスに及ぶ範囲の導電率を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば、限定されないが、TAP2、NLRC5、β2m、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANK、TCRの構成成分、免疫抑制剤の標的、HLA遺伝子、及び/又は例えば、PDCD1若しくはCTLA-4などの免疫チェックポイントタンパク質を発現する少なくとも1つの遺伝子を不活性化すること、又はその発現レベルを低減することによって、細胞を遺伝子操作する工程を更に含むことができる。遺伝子を不活性化するとは、目的の遺伝子が機能性タンパク質の形態で発現されないことが意図される。いくつかの実施形態では、不活性化される遺伝子は、例えば、限定されないが、NLRC5、TAP2、TCRα、TCRβ、β2-ミクログロブリン(「β2m」又はb2m)、CD52、CIITA、RFX5、RFXAP、RFXANK、GR、デオキシシチジンキナーゼ(DCK)、PD-1、及びCTLA-4からなる群から選択される1つ以上の遺伝子である。いくつかの実施形態では、方法は、選択的DNA切断によって遺伝子を選択的に不活性化することができる低頻度切断エンドヌクレアーゼを細胞に導入することによって、1つ以上の遺伝子を不活性化すること、又はその発現レベルを低減することを含む。いくつかの実施形態では、低頻度切断エンドヌクレアーゼは、例えば、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALE-ヌクレアーゼ若しくはTALEN(登録商標))、megaTALヌクレアーゼ、又はCas9エンドヌクレアーゼであり得る。
【0124】
別の態様では、免疫細胞、例えば、T細胞を遺伝子改変又は操作する工程は、免疫抑制剤の標的を発現する少なくとも1つの遺伝子を不活性化することによって、免疫細胞、例えば、T細胞を改変することと、細胞を、任意選択的に免疫抑制剤の存在下で増殖させることと、を含むことができる。免疫抑制剤は、いくつかの作用機序のうちの1つによって免疫機能を抑制する薬剤である。免疫抑制剤は、免疫応答の範囲及び/又は貪食(voracity)を低減することができる。免疫抑制剤の非限定的な例としては、カルシニューリン阻害剤、ラパマイシンの標的、インターロイキン-2α鎖遮断剤、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤、ジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害剤、コルチコステロイド、及び免疫抑制代謝拮抗剤が挙げられる。いくつかの細胞毒性免疫抑制剤は、DNA合成を阻害することによって作用する。他の細胞毒性免疫抑制剤は、T細胞の活性化を介して、又はヘルパー細胞の活性化を阻害することによって作用する場合がある。本開示による方法は、例えば、T細胞中の免疫抑制剤の標的を不活性化することによって、免疫療法のためのT細胞に対する免疫抑制耐性を付与することを可能にする。非限定的な例として、免疫抑制剤の標的は、例えば、限定されないが、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、FKBPファミリー遺伝子メンバー、及びシクロフィリンファミリー遺伝子メンバーなどの免疫抑制剤の受容体であり得る。
【0125】
抗原結合タンパク質(例えば、CAR)の発現を、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の機能的発現の下方制御と併せて行うための組成物及び方法が本明細書に提供される。また、免疫細胞、例えば、CAR-T細胞などのT細胞の機能活性を改善するための、そのような組成物及び方法の使用が提供される。本明細書に提供される方法及び組成物は、操作された免疫細胞、例えば、CAR-T細胞などの操作されたT細胞のインビボでの持続性及び治療有効性を改善するのに有用である。
【0126】
操作された免疫細胞、例えば、本明細書に提供される操作されたT細胞は、抗原結合タンパク質、例えばキメラ抗原受容体(CAR)を発現し、 TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上を、操作されていない免疫細胞における発現レベルの75%以下、50%以下、25%以下、又は10%以下のレベルで発現する。有利なことに、本明細書に提供される操作された免疫細胞は、操作されていない細胞と比較して、インビボでの持続性の改善及び/又はレシピエントの免疫系による拒絶反応に対する耐性の増大を示す。
【0127】
いくつかの実施形態では、例えば本明細書に提供されるT細胞などの免疫細胞は、さらに改変され、例えば、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上を、そのようには改変されていない同等の細胞と比較して低減されたレベルで発現するように遺伝子改変される。例えば、免疫細胞を遺伝子改変して、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANK座位のうち1つ以上のすべて又は部分をノックアウトし、対応する機能性タンパク質が細胞表面で発現されないようにすることができ、これは例えば、座位のコード配列全体の一部若しくはすべてを含むゲノムDNAを、及び/若しくは座位の転写制御、及び/若しくはプロモーター及び/若しくは活性化要素を含むゲノムDNAを欠失させること、並びに/又は機能性タンパク質の産生を防止する、挿入、欠失若しくは置換変異を導入することによる。
【0128】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫細胞(例えば、T細胞)におけるTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルは、対応する発現レベルを低減するようには操作されていない、同等の細胞における機能発現レベルと比較して、少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%減少し得る。
【0129】
1つ以上の抗原結合タンパク質、例えば、1つ以上のCARは、タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入した後に、細胞内の原位置で合成することができる。あるいは、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)は、細胞の外部で産生され、次いで細胞内に導入されることができる。ポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入するための方法は、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、安定的形質転換方法を使用して、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに統合することができる。他の実施形態では、一過性形質転換法を使用して、ポリヌクレオチド構築物、及び細胞のゲノム内に組み込まれていないポリヌクレオチド構築物を一過性に発現することができる。他の実施形態では、ウイルス媒介方法を使用することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス)、リポソームなどの任意の適切な手段によって細胞内に導入され得る。一過性形質転換法には、例えば、限定されるものではないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、又は粒子衝撃が含まれる。ポリヌクレオチドは、例えばプラスミドベクター又はウイルスベクターなどのベクターに含まれてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、本開示の操作された免疫細胞(例えば、T細胞)は、少なくとも1つの抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を含む場合がある。操作された免疫細胞、例えば、T細胞は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の低減されたレベルを発現するように、さらに改変、例えば遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞は、2つ以上の異なる抗原結合タンパク質、例えば、2つ以上の異なるCARを含むことができ、各CARは、異なる細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0131】
本明細書に提供される操作された免疫細胞(例えば、T細胞)のいくつかの実施形態では、細胞が発現するCARは、細胞外リガンド結合ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインは、1つのポリペプチド中に、すなわち、一本鎖中にある。多鎖のCAR及びポリペプチドも本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、多鎖CARは、膜貫通ドメインと少なくとも1つの細胞外リガンド結合ドメインを含む第1のポリペプチド、及び膜貫通ドメインと少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドを含有し、この場合において当該ポリペプチドは一緒に組み立てられて多鎖CARを形成する。
【0132】
細胞外リガンド結合ドメインは、目的の標的に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、目的の標的は、目的の任意の分子であってもよく、例えば、これに限定されないが、BCMA、EGFRvIII、Flt-3、WT-1、CD20、CD23、CD30、CD38、CD70、CD33、CD133、WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、又はClaudin18アイソフォーム2)、DLL3(Delta様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、Delta3)、Muc17、Muc3、Muc3、Muc16、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、RNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)を含み、列挙された任意の例示的な標的についてヒト型を特異的に含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、BCMA、MUC16(CA125としても知られる)、EGFR、EGFRvIII、MUC1、Flt-3、WT-1、CD20、CD23、CD30、CD38、CD70、CD33、CD133、MHC-WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、MHC-NY-ESO1、HER2(ERBB2)、CAIX(炭酸脱水酵素IX)、LIV1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKG2D、CS1、CD44v6、ROR1、CD19、Claudin-18.2(Claudin-18A2、若しくはClaudin18アイソフォーム2)、PSCA、DLL3(デルタ様タンパク質3、ショウジョウバエデルタ相同体3、デルタ3)、Mud 7(ムチン17、Muc3、Muc3)、FAPアルファ(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ)、Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体座位タンパク質G6d、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25)、PSMA、MSLN、又はRNF43(E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF43、RINGフィンガータンパク質43)に特異的に結合する。抗原を標的化するCAR及び/又は抗体は、例えば、以下に開示されている:BCMA-WO2016/16630、WO2020/150339、WO2019/196713、WO2016/014565、WO2017/025038;MUC16: US9,169,328、WO2016/149368、WO2020/023888;EGFRvIII: WO2017/125830、WO2016/016341;Flt3: WO2018/222935、WO2020/010284、WO2017/173410;CD20: WO2018/145649、WO2020/010235、WO2020/123691;CD38: WO2017/025323;CD70: WO2019/152742、WO2018/152181;CD33: WO2016/014576;CD133: WO2018/072025;CS1: WO2019/030240;ROR1: WO2016/115559;CD19: WO2002/077029、US11,077,144;Claudin: WO2018/006882、WO2021/008463;DLL3: WO2020/180591;WT1: US2016/0152725A1、US7622119B2;CD23: US6011138A、CN1568198A;CD30: US10815301B2、US10808035B2;PRAME: US2018/0148503A1、WO2020/186204A1;LIV1: US2020/0231699A1;NKG2D: WO2021/179353A1、US2021/0269501A1;FAPアルファ: US2020/0246383A1、US2021/0115102A1;PSMA: US2021/0277141A1、WO2020/108646A1;MSLN: CN109680002A、CN109628492A。
【0134】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体の軽鎖可変(VL)領域と重鎖可変(VH)領域を含有するscFvを含有し、それら領域は柔軟なリンカーにより結合されている。一本鎖可変領域断片は、短い結合ペプチドを使用することによって、軽鎖及び/又は重鎖可変領域を結合させることにより作製される(Bird et al.,Science 242:423-426,1988)。連結ペプチドの一例は、一方の可変領域のカルボキシ末端と他方の可変領域のアミノ末端との間を約3.5nmで架橋するアミノ酸配列(GGGGS)3(配列番号22)を有するGSリンカーである。他の配列のリンカーが設計及び使用されている(Bird et al., 1988, 上記参照)。一般に、リンカーは、短い柔軟なポリペプチドであってもよく、好ましくは、約20個以下のアミノ酸残基から構成され得る。更にはリンカーは、例えば、薬剤の付加又は固体支持体への付加などの追加機能のために修飾され得る。一本鎖バリアントは、組換えにより、又は合成により、産生され得る。scFvの合成による産生については、自動化合成装置を使用することができる。scFvの組換え産生については、scFvをコードするポリヌクレオチドを含有する、好適なプラスミド又は他のベクターが、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、若しくは哺乳動物細胞などの真核細胞、又はE.coliなどの原核細胞のいずれかの好適な宿主細胞に導入され得る。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのライゲーションなどの日常的な操作によって作製され得る。得られるscFvは、当該技術分野で既知の標準的なタンパク質精製技術を使用して単離され得る。
【0135】
本開示によるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、標的への細胞外リガンド結合ドメインの結合後の細胞内シグナル伝達に関与しており、免疫細胞の活性化及び免疫応答をもたらす。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現されている免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つを活性化させる能力を有する。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解性の活性であってもよく、又はサイトカイン分泌を含むヘルパー活性であってもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、CARにおける使用のための細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば限定されないが、抗原受容体係合後にシグナルトランスダクションを開始するよう協働して作用するT細胞受容体及び共受容体の細胞質配列、並びにこれら配列の任意の誘導体又はバリアント、及び同じ機能を有する任意の合成配列であってもよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、以下の二つの別個のクラスの細胞質シグナル伝達配列を含有する:抗原依存性の一次活性化を開始させる配列、及び抗原非依存性の様式で作用して、二次シグナル又は共刺激性シグナルを生じさせる配列。一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして知られる、シグナル伝達モチーフを含むことができる。ITAMは、syk/zap70クラスのチロシンキナーゼの結合部位としての役割を果たす、様々な受容体の細胞質内尾部に見出される明確に定義されたシグナル伝達モチーフである。本開示で使用されるITAMの例としては、非限定的な例として、ΤCRζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するITAMを挙げることができる。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含有してもよい。いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子のドメインを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB(GenBank:AAA53133)及びCD28(NP_006130及びそのアイソフォーム)の断片からなる群から選択される共刺激分子の一部を含む。
【0138】
CARは、細胞の表面膜上で発現される。ゆえにCARは、膜貫通ドメインを含有することができる。本明細書に開示されるCARに対する好適な膜貫通ドメインは、(a)細胞、例えば、免疫細胞、例えば、限定されないが、リンパ球細胞(例えば、T細胞)又はナチュラルキラー(NK)細胞の表面で発現される能力、並びに(b)所定の標的細胞に対して免疫細胞の細胞性応答を誘導するために、リガンド結合ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインと相互作用する能力を有する。膜貫通ドメインは、天然源又は合成源のいずれかに由来し得る。膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。非限定的な例として、膜貫通ポリペプチドは、CD3複合体を構成するα、β、γ、若しくはδポリペプチドなどのT細胞受容体のドメイン、IL-2受容体、例えば、p55(α鎖)、p75(β鎖若しくはγ鎖)、Fc受容体、特にFcγ受容体IIIのサブユニット鎖、又はCDタンパク質であり得る。あるいは、膜貫通ドメインは合成であってもよく、主にロイシン及びバリンなどの疎水性残基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、当該膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)に由来する。膜貫通ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインと前述の膜貫通ドメインとの間にストークドメインをさらに含有してもよい。ストークドメインは、最大300個のアミノ酸、例えば、10~100個のアミノ酸又は25~50個のアミノ酸を含むことができる。ストーク領域は、CD8、CD4、又はCD28の細胞外領域の全て若しくは一部、又は抗体定常領域の全て若しくは一部など、天然に存在する分子の全て又は一部に由来する場合がある。あるいは、ストークドメインは、天然ストーク配列に相当する合成配列である場合があり、又は全体が合成ストーク配列である場合がある。いくつかの実施形態では、当該ストークドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345及びそのアイソフォーム)の一部である。別の特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖の一部を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARは、BCMA、CD8αヒトストーク及び膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、並びに4-1BBシグナル伝達ドメインに特異的に結合する、細胞外リガンド結合ドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、CARは、ベクター(例えば、プラスミドベクター)を介して導入遺伝子として免疫細胞内に導入され得る。いくつかの実施形態では、ベクター、例えば、プラスミドベクターはまた、例えば、ベクターを受容した細胞の特定及び/又は選択を提供する選択マーカーを含有することができる。
【0139】
CARポリペプチドは、細胞内へのCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの導入後に細胞内の原位置で合成され得る。あるいは、CARポリペプチドは、細胞の外部で産生され、次いで細胞内に導入され得る。ポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入するための方法は、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、安定的形質転換方法を使用して、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに統合することができる。他の実施形態では、一過性形質転換法を使用して、ポリヌクレオチド構築物、及び細胞のゲノム内に組み込まれていないポリヌクレオチド構築物を一過性に発現することができる。他の実施形態では、ウイルス媒介方法を使用することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、アデノウイルス)、リポソームなどの任意の好適な手段によって細胞に導入されることができる。一過性形質転換法には、例えば、限定されるものではないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、又は粒子衝撃が含まれる。ポリヌクレオチドは、例えばプラスミドベクター又はウイルスベクターなどのベクターに含まれてもよい。
【0140】
免疫細胞、例えば、本明細書に記載される方法のいずれか1つに従って得られた単離されたT細胞などのT細胞も、本明細書に提供される。異種のDNAを発現することができる任意の免疫細胞は、目的の抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を発現する目的で、さらにはTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上について低減されたレベルの発現をするように操作するために、使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、例えば、限定されないが、幹細胞に由来し得る。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より詳細には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、分化全能性幹細胞、又は造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞は、CD34+細胞である。単離された細胞はまた、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、NK細胞、B細胞、又は炎症性Tリンパ球、細胞毒性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、若しくはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、CD4+T-リンパ球及びCD8+T-リンパ球からなる群から生じることができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)、例えば単離されたT細胞などは、対応するタンパク質について低減又は改変されたレベルを発現するようには操作されていない、同等の細胞と比較して、対応するタンパク質について低減されたレベルをそれらが発現するように、さらに改変され、例えば、本明細書に記載される方法(例えば、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANK遺伝子座のうち1つ以上を部分的又は全体的に欠失させるか、又は破壊するために、例えば、TALEN、CRISPR/Cas9、又はmegaTALヌクレアーゼを採用する既知の遺伝子編集技術)によって遺伝子操作される。
【0141】
本明細書に提供される操作された免疫細胞は、細胞のソーティングを可能にして、本明細書に記載されるように操作された細胞の集団、例えば、抗原結合タンパク質を発現する細胞の集団を濃縮する、及び/又は、細胞が患者若しくはレシピエントに投与された後に免疫細胞を不活性化する、例えば、有害作用を制限する、安全スイッチ機構を提供する、1つ以上のミモトープ配列を含むことができる。こうしたミモトープ配列、並びに細胞ソーティングにおける、及び安全スイッチとしてのそれらの用途は、当技術分野で既知であり、例えば、US2018/0002435に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0142】
増殖及び遺伝子改変の前に、細胞源は、様々な非限定的な方法を介して対象から取得することができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む、多数の非限定的な供給源から得られ得る。いくつかの実施形態では、当業者に利用可能かつ既知の任意の数のT細胞株を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、健康なドナー、がんと診断された対象、又は感染症と診断された対象に由来し得る。いくつかの実施形態では、細胞は、異なる表現型特徴を示す細胞の混合集団の一部であってもよい。
【0143】
また、本明細書に記載される方法のいずれかに従って改変、例えば、形質転換又は操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞から得られる細胞株が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞、例えば、本開示による操作されたT細胞は、抗原結合タンパク質(例えばCAR)をコードし、さらに改変又は操作され、例えば、遺伝子改変されて、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上を、低減されたレベルで発現、例えば、機能的に発現する、ポリヌクレオチドを含む。
【0144】
本開示の免疫細胞、例えば、T細胞は、例えば、限定されないが、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、及び米国特許出願公開第20060121005号に概して記載される方法を使用して、細胞の改変の前又は後のいずれかに、活性化及び増殖することができる。免疫細胞、例えば、T細胞は、インビトロ又はインビボで増殖することができる。概して、本開示の免疫細胞は、例えば、免疫細胞の表面でCD3 TCR複合体及び共刺激分子を刺激する薬剤と接触して、細胞の活性化シグナルを作製することによって増殖することができる。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボル12-ミリスチン酸13-酢酸塩(PMA)、又はフィトヘマグルチニン(PHA)のような有糸分裂性レクチンなどの化学物質を使用して、免疫細胞、例えば、T細胞の活性化シグナルを作製することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、T細胞集団は、例えば、抗CD3抗体若しくはその抗原結合断片、若しくは表面上に固定化された抗CD2抗体と接触することによって、又はカルシウムイオノフォアと組み合わせたタンパク質キナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)と接触することによって、インビトロで刺激される場合がある。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激には、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触することができる。T細胞培養に適切な条件としては、血清(例えば、ウシ胎児若しくはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-2、IL-15、TGFβ、及びTNF、又は当業者に既知の細胞増殖のための任意の他の添加物を含む、増殖及び生存に必要な因子を含有することができる、適切な培地(例えば、最小必須培地、RPMI培地1640、又はX-VIVO(商標)5、(Lonza))が挙げられる。細胞の増殖のための他の添加物としては、限定されるものではないが、界面活性剤、Plasmanate(登録商標)、及びN-アセチル-システイン及び2-メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられる。培地は、追加のアミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びビタミンを有する、RPMI 1640(本明細書に記載)、AIM V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-VIVO(商標)10、X-VIVO(商標)15及びX-VIVO(商標)20、OpTmizer(商標)を含むことができ、無血清であるか、又は適切な量の血清(若しくは血漿)若しくは定義されたホルモンのセット、及び/又はT細胞の成長及び増殖に十分な量のサイトカインが補充されている。例えばペニシリン及びストレプトマイシンなどの抗生物質は、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、例えば、適切な温度(例えば、37℃)及び雰囲気(例えば、空気+5%のCO2)などの増殖を支持するために必要な条件下で維持される。様々な刺激時間に曝露された免疫細胞、例えば、T細胞は、異なる特徴を示すことができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、組織又は細胞と共培養することによって増殖することができる。細胞はまた、インビボで、例えば、対象に細胞を投与した後の対象の血液中で増殖し得る。
【0147】
別の態様では、本開示は、本開示の細胞のいずれかを含む組成物(医薬組成物など)を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むT細胞を含む。細胞は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の低減されたレベルを発現するようにさらに操作される。組成物は、例えば、本開示の操作された免疫細胞(例えば、T細胞)、例えば、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を発現し、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上を、対応するタンパク質について低減又は改変されたレベルを機能的に発現するようには操作されていない、同等の細胞と比較して、低減されたレベルで機能的に発現する免疫細胞を含むか、又は操作された免疫細胞、例えば、本開示のT細胞を含む細胞集団、及び1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、ドナーから単離された初代細胞は、本明細書に記載されるように操作されて、結果として生じる細胞の亜集団(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%など、100%未満の割合)が所望の改変の全てを含む細胞集団を提供する。改変の全てを含む細胞及び含まない細胞の混合物を含む、そのような結果として生じる集団は、本開示の治療方法で、及び本開示の組成物を調製するために使用され得る。あるいは、この細胞集団(「開始集団」)は、既知の方法、例えば、望ましい改変を有する、細胞ソーティング及び/又は細胞の増殖によって操作して、1つ以上の望ましい改変を含む細胞用に濃縮された細胞集団を提供することができ(例えば、望ましい抗原結合タンパク質を発現する細胞用に濃縮、及び/又はTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上を、対応するタンパク質の発現レベルに関して操作されていない同等の細胞と比較して低減されたレベルで発現する細胞用に濃縮)、すなわち、開始集団よりも高い割合のそのような改変又は操作された細胞を含む。次いで、改変された細胞が濃縮された集団は、本開示の治療方法で、及び例えば、本開示の組成物を調製するために使用され得る。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞集団は、改変のうちの1つ以上を有する、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の細胞を含有するか、又は少なくともそれらを含有する。他の実施形態では、改変のうちの1つ以上を含む濃縮された細胞集団の細胞の割合は、所望の改変を含む細胞の開始集団の細胞の割合よりも少なくとも30%高い。
治療方法
【0149】
上記の方法によって得られる免疫細胞、例えば、T細胞、又はそのような免疫細胞又はT細胞由来の細胞株は、医薬品として使用され得る。いくつかの実施形態では、そのような医薬品は、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、がん、炎症性疾患、免疫疾患、又は加齢関連疾患などの障害を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、がんは、胃がん、肉腫、リンパ腫(非ホジキンスリンパ腫を含む)、白血病、頭頸部がん、胸腺がん、上皮がん、唾液腺がん、肝臓がん、胃がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、膵がん、グリオーマ、白血病、多発性骨髄腫、腎細胞がん、膀胱がん、子宮頸がん、絨毛がん、結腸がん、口腔がん、皮膚がん、及びメラノーマからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、対象は、局所進行性若しくは転移性メラノーマ、扁平上皮細胞頭頚部がん(SCHNC)、卵巣がん、肉腫、又は再発性若しくは難治性の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)を有する、以前に治療を受けた成人対象である。
【0150】
いくつかの実施形態では、本開示による免疫細胞、例えば、T細胞、又は免疫細胞、例えば、操作されたT細胞に由来する細胞株は、障害の治療を必要とする対象においてそれを行うための医薬品の製造で使用され得る。いくつかの実施形態では、障害は、例えば、がん、自己免疫性障害、又は感染症であり得る。
【0151】
また、対象を治療するための方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の免疫細胞、例えば、操作されたT細胞を、それを必要とする対象に投与又は提供することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の免疫細胞、例えば、T細胞を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫細胞、例えば、操作されたT細胞は、堅牢なインビボでの細胞増殖を経ることができ、長期間、持続することができる。本開示の治療方法は、改善、治癒、又は予防することができる。本開示の方法は、自己免疫療法の一部、又は同種免疫療法的な処置の一部のいずれでもあり得る。本開示は、同種免疫療法に特に好適である。ドナーから提供された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞は、標準プロトコルを使用して非-同種反応性細胞に形質転換され、必要に応じて再生され、それによって、例えば、1つの対象又は複数の対象に投与され得るCAR-T細胞を産生することができる。こうしたCAR-T細胞療法は、同種ALLO CAR T(商標)治療用製品として利用可能にすることができる。
【0153】
別の態様では、本開示は、腫瘍を有する対象における腫瘍の増殖又は進行を阻害する方法を提供し、方法は、有効量の操作された免疫細胞、例えば、本明細書に記載される操作されたT細胞を対象に投与することを含む。別の態様では、本開示は、対象におけるがん細胞の転移を阻害又は予防する方法を提供し、方法は、それを必要とする対象に、有効量の操作された免疫細胞、例えば、本明細書に記載される操作されたT細胞を投与することを含む。別の態様では、本開示は、腫瘍を有する対象における腫瘍退縮を誘導する方法を提供し、方法は、有効量の操作された免疫細胞、例えば、本明細書に記載される操作されたT細胞を対象に投与することを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される免疫細胞、例えば、T細胞は、対象に非経口的に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0155】
いくつかの実施形態では、方法は、有効量の第2の治療剤を投与することを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、例えば、クリゾチニブ、パルボシクリブ、抗CTLA4抗体、抗-4-1 BB抗体、PD-1抗体、又はPD-L1抗体である。
【0156】
また、がんの治療のための、又は腫瘍増殖若しくは進行の阻害を必要とする対象においてそれを行うための医薬品の製造における、本明細書に提供される免疫細胞、例えば、T細胞のうちいずれかの使用が、提供される。
【0157】
特定の実施形態では、本開示の操作された免疫細胞において、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベル、又は本開示に従ってノックダウン若しくはノックアウトされる任意の他の遺伝子の機能発現レベルは、同等であるがそのようには遺伝子改変されていない操作された免疫細胞における対応する発現レベルと比較して、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%だけ又は少なくともそれらだけ、減少される。発現レベルは、FACS又はMACなどの任意の既知の方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された免疫細胞は、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちいずれか1つ以上、又は本開示に従ってノックダウン若しくはノックアウトされた任意の他の遺伝子を、操作されていない免疫細胞(操作された免疫細胞と他の点では同じである、例えば、操作された免疫細胞と同じ成分を含む)での発現レベルの75%以下、50%以下、25%以下、10%以下のレベルで、又は0%のレベルで、機能的に発現する。いくつかの実施形態では、1つの遺伝子の両方の対立遺伝子がノックアウトされ、その結果、本明細書に開示される操作された免疫細胞における遺伝子の発現レベルが、対応する操作されていない細胞のそれの0%となる。いくつかの実施形態では、遺伝子の2つの対立遺伝子のうちの一方がノックアウトされ、その結果、本明細書に開示される操作された免疫細胞における遺伝子の発現レベルは、対応する操作されていない細胞のそれの50%又は約50%(例えば、代償機構によって、残りの対立遺伝子の発現が通常よりも大きくなった場合)である。本明細書に記載されるように、例えば、発現がノックアウト以外の何らかの手段によって減少する場合、中間的な発現レベルが観察されることがある。
【0158】
いくつかの実施形態では、本開示の操作された細胞における、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上、又は本開示に従ってその発現レベルが操作される任意の他の遺伝子の発現レベルは、当業者にとって既知の標準技法(例えば、RT-qPCR、核酸配列決定、抗体染色法、又は何らかの技術の組み合わせ)を使用して、遺伝子産物及びそれらの特性について、細胞のアッセイによって直接測定することができる。いくつかの実施形態では、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルは、操作された免疫細胞の表面上での、1つ以上のHLAタンパク質(HLA-Aタンパク質若しくはHLA-Bタンパク質など)の、又はベータ2ミクログロブリン(B2M)の、又はB2M及び1つ以上のHLAタンパク質の両方の表面発現レベルを、当技術分野で既知の標準技法、例えば、フローサイトメトリーによって、決定することによって測定される。これらの測定値は、対応する機能発現レベルを減少させるようには操作されていない、同等の細胞に対して行われた対応する測定値と比較することができる。操作された細胞、例えば、本発明の操作された免疫細胞を含む細胞集団において、測定される材料のプールされた試料(例えば、RNA又はタンパク質又は細胞)は、一部の細胞が、目的の遺伝子を発現せず、両方の対立遺伝子をノックアウトされ、例えば、一部の細胞が目的の遺伝子を50%又は約50%で発現し、1つの対立遺伝子のみしかノックアウトされておらず、及び集団が操作されていない細胞を含む場合、一部の細胞が正常レベルの目的の遺伝子を発現する、という事実を反映する。
【0159】
本開示の操作された免疫細胞におけるTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、CIITA、RFX5、RFXAP及びRFXANK発現のうちの1つ以上の機能発現レベルも、例えば、エフェクター細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)の存在下での操作された免疫細胞の生存の度合いを、操作されていないがそれ以外は同等な(例えば同一な)免疫細胞が同一条件下で生存する度合いと比較して、測定することによってアッセイをされることができる。例えば、図6A~6C及び実施例1を参照。
【0160】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞、例えば本明細書に開示される操作されたT細胞を投与すること、又はそのような操作された免疫細胞(例えば、操作されたT細胞)を含む細胞集団を投与することで、同等であるが操作されていない細胞、又はそのような操作された細胞を含まない同等な集団と比較して、投与された細胞又は細胞集団の宿主拒絶反応が低減される。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を含み、かつ発現レベル、例えば、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルが低減されている、操作された免疫細胞、例えば、本開示の操作されたT細胞を投与すること、又は、そうした操作された免疫細胞、例えば、操作されたT細胞を含む細胞集団を投与することで、そうした操作された細胞を含まない、同等であるが操作されていない細胞又は集団と比較して、投与された細胞又は細胞集団の宿主拒絶反応が低減される。例えば、そのような投与は、同一であるが、低減されたレベルで対応するタンパク質を発現するようには操作されていない細胞の宿主拒絶反応と比較して、宿主拒絶反応を1%~99%、例えば、5%~95%、10%~90%、50%~90%だけ、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%だけ低減させる。いくつかの実施形態では、宿主拒絶反応は、90%超低減される。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を含み、かつTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上の機能発現レベルが低減されている、免疫細胞、例えば、本開示のT細胞を投与すること、又は、こうした免疫細胞、例えば、T細胞を含む細胞集団を投与することで、同一であるが、低減されたレベルで対応するタンパク質を発現するようには操作されていない細胞の持続性と比較して、持続性を増強若しくは改善し、及び/又は細胞の持続性を増大させる。いくつかの実施形態では、持続性は、例えば、1~7日だけ、1~12週間だけ(例えば、1~4週間、4~8週間、又は8~12週間)、又は1~12か月だけ、又はこれらの範囲内に収まる特定の時間の長さだけ増加する。いくつかの実施形態では、持続性の差は、集団又は組成物中の投与された細胞の半減期を比較することによって測定され、例えば、半減期は、例えば、1~7日だけ、1~12週間だけ(例えば、1~4週間、4~8週間、又は8~12週間)、又は1~12か月だけ、又はこれらの範囲内に収まる特定の時間の長さだけ増加する。いくつかの実施形態では、持続性の差は、投与後に投与された細胞を検出することができる時間の長さを比較することによって、測定される。いくつかの実施形態では、持続性の改善は、例えば、T細胞又はNK細胞などの免疫細胞の存在下で、例えば、混合後約72時間、5日、7日又は13日における、操作された細胞と操作されていない細胞の生存を比較することによって、インビトロで測定される。いくつかの実施形態では、このようなインビトロアッセイでは、測定時に操作されていない細胞よりも、操作された細胞は約1.5~10倍多く生存する。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される宿主拒絶反応の減少及び/又は投与された細胞の持続性の増加は、当業者に知られている様々な技法のいずれかによって決定される。いくつかの実施形態では、フローサイトメトリー、PCR(例えば、定量的PCR)、及び患者の腫瘍材料とのエクスビボ共インキュベーション、又はCAR-T細胞によって標的化された抗原を発現するモデル腫瘍細胞株とのエクスビボ共インキュベーションのうち、いずれか1つ又は組み合わせが使用される。いくつかの実施形態では、qPCRは、ノックアウトが生存上の利点を提供する程度を決定するために、目的のノックアウトを有する、及び有しないCAR T細胞の数を評価するために使用される。
【0163】
いくつかの実施形態では、治療は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光療法、及び放射線療法の群から選択される、がんに対する1つ以上の療法との組み合わせであり得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、治療は、免疫抑制治療を受けている対象に投与され得る。実際に、本開示は、そのような免疫抑制剤に対する受容体をコードする遺伝子の不活性化に起因して、少なくとも1つの免疫抑制剤に対して耐性にされた細胞又は細胞集団に依存し得る。この態様では、免疫抑制治療は、対象内の本開示によるT細胞の選択及び増殖を補助し得る。
【0165】
本開示による細胞又は細胞集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸液、注入、移植(implantation)、又は移植(transplantation)を含む任意の簡便な方法で行われ得る。本明細書に記載される組成物は、対象に、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内注射若しくはリンパ管内注射、又は腹腔内に投与され得る。一実施形態では、本開示の細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示による細胞又は細胞集団の投与は、例えば、体重1kg当たり約103若しくは104個~約109個の細胞の投与を含むことができ、それらの範囲内にある細胞数の全ての整数値を含む。いくつかの実施形態では、細胞又は細胞集団の投与は、体重1kg当たり約105~約106個の細胞(この範囲内のすべての整数値の細胞数を含む)の投与、又は体重1kg当たり本発明の操作された免疫細胞0.1×106~5×106個、若しくは合計で操作された免疫細胞0.1×108~5×108個の投与を含み得る。細胞又は細胞集団は、1回以上の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、細胞の有効量は、単回投与として投与され得る。いくつかの実施形態では、細胞の有効量は、ある期間にわたる2回以上の用量として投与され得る。投与のタイミングは、担当医師の判断内にあり、対象の臨床状態に依存する。細胞又は細胞集団は、血液バンク又はドナーなどの任意の供給源から取得され得る。個々のニーズが変化する一方で、特定の疾患又は状態に対する所与の細胞型の有効量の最適範囲の決定は、当該技術分野の技術範囲内にある。有効量とは、治療利益又は予防利益を提供する量を意味する。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、もしあれば併用治療の種類、治療頻度、並びに所望の効果の性質に依存する。いくつかの実施形態では、有効量の細胞又はそれらの細胞を含む組成物は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内投与であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍内に注射により直接行われ得る。
【0167】
本開示のいくつかの実施形態では、細胞は、モノクローナル抗体療法、CCR2アンタゴニスト(例えば、INC-8761)、抗ウイルス療法、シドホビル及びインターロイキン-2、MS対象に対するシタラビン(ARA-Cとしても知られる)若しくはナタリジイマブ(nataliziimab)治療、又は乾癬対象に対するエファリズチマブ(efaliztimab)治療、又はPML対象に対する他の治療などの薬剤を用いた治療が挙げられるが、これらに限定されない、任意の数の関連する治療様式と併せて(例えば、その前、それと同時、又はその後に)、対象に投与される。いくつかの実施形態では、BCMA特異的なCAR-T細胞は、抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体(例えば、アベルマブ、アテゾリズマブ、若しくはデュルバルマブ)、抗OX40抗体、抗4-1 BB抗体(例えば、ウトミルマブ(Utolimumab))、抗MCSF抗体、抗GITR抗体、及び/又は抗TIGIT抗体のうちの1つ以上と併せて対象に投与される。更なる実施形態では、本開示の免疫細胞、例えば、T細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、及びFK506、抗体、又は他の免疫除去剤、例えば、CAMPATH(アレムツズマブ)、抗CD3抗体、又は他の抗体療法、シトキサン、フルダラビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、及び/又は照射と組み合わせて使用されてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリン及びFK506)を阻害するか、又は成長因子誘導シグナル伝達(ラパマイシン)に重要であるp70S6キナーゼを阻害する(Henderson, Naya et al. Immunology. 1991 Jul;73(3): 316-321、Liu, Albers et al. Biochemistry 1992 Apr 28;31(16):3896-901、Bierer, Hollander et al. Curr Opin Immunol. 1993 Oct;5(5):763-73)。
【0168】
更なる実施形態では、本開示の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤、外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、又はCAMPATHなどの抗体のいずれかを使用したT細胞切除療法と併せて(例えば、その前、それと同時、又はその後に)、対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の細胞組成物は、CD20、例えば、リツキサンと反応する薬剤などのB細胞切除療法の後に投与される。例えば、一実施形態では、対象は、高用量化学療法、続いて、末梢血幹細胞移植を用いた標準的な治療を受けることができる。ある特定の実施形態では、移植後、対象は、本開示の増殖した免疫細胞の注入を受ける。いくつかの実施形態では、増殖した細胞は、手術の前又は後に投与される。
キット
【0169】
本開示はまた、本方法で使用するためのキットを提供する。本開示のキットは、本開示の組成物、又は本開示の免疫細胞、例えば、T細胞、又は本開示の免疫細胞、例えば、操作されたT細胞を含む細胞集団を含む、1つ以上の容器を含む。様々な実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)は、抗原結合タンパク質、例えば、本明細書に記載されるCARをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、さらに、本明細書に記載されるTAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上を低減されたレベルで発現するように操作される。キットは、本明細書に記載される本開示の方法のいずれかによる使用のための指示を更に含む。概して、これらの指示は、上記の治療的処置のための組成物、免疫細胞、例えば、T細胞、又は細胞集団の投与の説明を含む。
【0170】
キット構成要素の使用に関する指示は、概して、意図された治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)、又はサブユニット用量であり得る。本開示のキットで供給される指示は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)上の書面での指示であるが、機械可読命令(例えば、磁気又は光学記憶ディスク上に保持された命令)も許容される。
【0171】
本開示のキットは、好適なパッケージング内にある。好適なパッケージングとしては、バイアル、ボトル、瓶、柔軟なパッケージング(例えば、密封Mylar又はプラスチックバッグ)などが挙げられるが、これらに限定されない。吸入器、鼻腔投与デバイス(例えば、アトマイザー)、又はミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスと組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する、静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。容器もまた、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する、静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本開示による免疫細胞、例えば、T細胞である。容器は、第2の薬学的活性剤を更に含み得る。
【0172】
キットは、緩衝材及び解釈情報などの追加の構成要素を任意選択的に提供することができる。通常、キットは、容器、及び容器上の又はその容器に関連付けられたラベル又は添付文書を含む。
ソーティング及び枯渇の方法
【0173】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の集団のインビトロソーティングのための方法が提供され、免疫細胞の集団のサブセットは、本明細書に記載されるように、TAP2、NLRC5、β2m、TRAC、RFX5、RFXAP、CIITA及びRFXANKのうちの1つ以上を低減されたレベルで発現し、並びに/又は抗原結合タンパク質(例えば、CAR)を発現するように操作された免疫細胞を含む。様々な実施形態では、方法は、免疫細胞の集団を、操作された細胞に特有のエピトープ(例えば、US2018/0002435に記載されているものなどのミモトープ)(例えば、抗原結合タンパク質のエピトープ、又は抗原結合タンパク質に組み込まれたミモトープ)に特異的なモノクローナル抗体と接触させることと、モノクローナル抗体に結合する免疫細胞を選択して、抗原結合タンパク質を発現する操作された免疫細胞に富んだ細胞集団を得ることと、を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、エピトープに特異的なモノクローナル抗体は、フルオロフォアに任意でコンジュゲートされる。この実施形態では、モノクローナル抗体に結合する細胞を選択する工程は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって行うことができる。
【0175】
いくつかの実施形態では、前述のエピトープに特異的な前述のモノクローナル抗体は、磁性粒子に任意でコンジュゲートされる。この実施形態では、モノクローナル抗体に結合する細胞を選択する工程は、磁気活性化細胞ソーティング(MACS)によって行うことができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(CARなど)を発現する免疫細胞をソーティングするための方法で使用されるmAbは、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ムロモナブ-CD3、トシツモマブ, アブシキシマブ、バシリキシマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、ナタリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、ラニビズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ベドリズマブ、アダリムマブ、ベリムマブ、カナキヌマブ、デノスマブ、ゴリムマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、QBEND-10及び/又はウステキヌマブから選択される。いくつかの実施形態では、前述のmAbはリツキシマブである。別の実施形態では、前述のmAbはQBEND-10である。
【0177】
いくつかの実施形態では、上述のCAR発現免疫細胞をインビトロでソーティングするための方法を使用する場合に取得される、CAR発現免疫細胞の集団は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%のCAR発現免疫細胞を含む。いくつかの実施形態では、CAR発現免疫細胞をインビトロでソーティングするための方法を使用する場合に取得される、CAR発現免疫細胞の集団は、少なくとも85%のCAR発現免疫細胞を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、上述のCAR発現免疫細胞をインビトロでソーティングするための方法を使用する場合に取得される、CAR発現免疫細胞の集団は、初期(非ソーティング)細胞集団と比較して、インビトロでの細胞傷害活性の増加を示す。 いくつかの実施形態では、前述の細胞傷害活性は、インビトロで10%、20%、30%、又は50%だけ増加する。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。
【0179】
レシピエントに投与されるCAR発現免疫細胞は、供給源集団からインビトロで濃縮され得る。供給源集団の拡大の方法には、密度遠心分離、免疫磁気ビーズ精製、親和性クロマトグラフィー、及び蛍光活性化細胞ソーティングの組み合わせを使用して、CD34抗原などの抗原を発現する細胞を選択することが含まれ得る。
【0180】
フローサイトメトリーを使用して、細胞集団内の特定の細胞型を定量化することができる。概して、フローサイトメトリーは、主に光学的手段によって細胞の構成要素又は構造特徴を定量化するための方法である。構造特徴を定量化することによって異なる細胞型を区別することができるため、フローサイトメトリー及び細胞ソーティングを使用して、混合物中の異なる表現型の細胞をカウント及びソートすることができる。
【0181】
フローサイトメトリー解析は、2つの主要な工程、1)1つ以上の標識マーカーで選択された細胞型を標識すること、及び2)集団内の細胞の総数に対して標識細胞の数を決定すること、を伴う。いくつかの実施形態では、細胞型を標識する方法は、特定の細胞型によって発現されるマーカーに、標識された抗体を結合することを含む。抗体は、蛍光化合物で直接標識されるか、又は例えば、第1の抗体を認識する蛍光標識された第2の抗体を使用して間接的に標識され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、CARを発現するT細胞をソーティングするために使用される方法は、磁気活性化細胞ソーティング(MACS)である。磁気活性化細胞ソーティング(MACS)は、超常磁性ナノ粒子及びカラムを使用することによって、その表面抗原(CD分子)に応じて様々な細胞集団を分離するための方法である。MACSを使用して、純細胞集団を取得することができる。単一細胞懸濁液中の細胞は、マイクロビーズで磁気標識され得る。試料は、強磁性球体からなるカラムに適用され、細胞にやさしいコーティングで覆われ、細胞の迅速かつ穏やかな分離を可能にする。標識されていない細胞は通過し、一方で磁気標識された細胞はカラム内に保持される。フロースルーは、非標識細胞画分として収集され得る。洗浄工程の後、カラムは分離器から除去され、磁気標識された細胞はカラムから溶出される。
【0183】
T細胞などの特定の細胞集団の精製のための詳細なプロトコルは、Basu S et al. (2010)に見出すことができる。(Basu S, Campbell HM, Dittel BN, Ray A. Purification of specific cell population by fluorescence activated cell sorting (FACS). J Vis Exp. (41): 1546)。
【実施例
【0184】
一般的な方法
KO T細胞の生成
初代ヒトT細胞は、磁気活性化細胞ソーティング(MACS)ネガティブ選択(Miltenyi、ヒトパンT細胞単離キット、カタログ番号130-096-535)を使用して、凍結した健康なドナー末梢血単核細胞(PBMC)から単離され、1:100(v:v)T細胞TransAct(Miltenyi、カタログ番号130-111-160)+ 100IU/mL IL-2(Miltenyi、カタログ番号130-097-746)を、R10(RPMI-1640 + 10% FBS + 25 mM HEPES +ピルビン酸ナトリウム+非必須アミノ酸)中で用いて活性化された。2日後、T細胞を、Neon Transfection System(Invitrogen)を使用して遺伝子編集した。簡潔に述べると、リボ核タンパク質(RNP)複合体は、室温で10分間、1:1モル比で、cas9酵素(IDT、カタログ番号1081059)及びsgRNAを混合することによって生成された。2つのsgRNAを使用した場合、cas9を0.5:0.5:1の比率(sgRNA1:sgRNA2:cas9)で用いてインキュベーションを行った。細胞を1600V、10ms幅で合計3回パルスし、100IU/mL IL-2 + 10ng/mL IL-7(Miltenyi、カタログ番号130-095-363)で補充したR10培地で直ちに回収した。編集されたT細胞を37℃、5%のCO2でインキュベートした。100IU/mLのIL-2を有する新鮮なR10を、翌日、細胞に添加した。遺伝子編集の5~7日後、フローサイトメトリーを介してKO効率を評価した。KO効率は、約50%~約100%の高さの範囲であった。KO効率は、以下の様々な方法で評価された:TRACについては、CD3/TCRabの発現を評価し、b2m、NLRC5及びRFX5については、抗b2m又は抗HLA抗体を使用した。以下に記載されるように、編集された細胞は精製されるため、より低い編集効率は許容可能である。KOは22日目ごろにチェックされ、比較的安定していることが判明した。
【0185】
TRAC KO細胞を、MACSネガティブ選択(Stem Cell Technologies、EasySepヒトTCRアルファ/ベータ枯渇キット、カタログ番号17847)を使用して、製造業者の推奨に従って精製した。精製されたT細胞を、90%のFBS+10%のDMSO中で、5e6の細胞アリコートで、直ちに使用するか、又は凍結した。
【0186】
表1.sgRNA配列のリスト
【表1】

インビトロ同種拒絶アッセイ
初回刺激を受けたT混合リンパ球反応(MLR)(図7、14A~14C、17B)
【0187】
ヒトPBMC(宿主)は、同種反応性T細胞クローンの増殖を促進するために、上記で移植片T細胞を作製するために使用されるドナーに由来する照射されたPBMCに対して初回刺激を受けた。簡潔に述べると、移植片PBMCを30Gyで照射し、R10 + 20IU/mL IL-2 + 10ng/mL IL-7 + 10ng/mL IL-15(Miltenyi、カタログ番号130-095-765)中で1:1の比率で宿主PBMCと4日間にわたり共培養した。サイトカインなしで培地をR10に交換し、細胞をさらに3日間培養し続けた。その後、MACSネガティブ選択(Miltenyi、ヒトパンT細胞単離キット、カタログ番号130-096-535)を使用して、製造業者の推奨に従って、パンT細胞を単離した。96ウェルプレートで、20,000個の移植片T細胞を20,000個の初回刺激を受けた宿主T細胞と共に播種し、R10 + 20IU/mL IL-2中で37℃、5% CO2で2日間にわたり培養した。移植片T細胞の生存を、生存するTCRαβ-CD4+CD8+にゲーティングすることによって、絶対数を使用したフローサイトメトリーにより決定した。
NK MLR(図8A~8B、15A、17C)
【0188】
ヒトNK細胞を、MACS精製(Miltenyi、ヒトパンNK細胞単離キット、カタログ番号130-092-657)を介して、新たに単離されたヒトPBMCから単離した。96ウェルプレートで、20,000個の移植片T細胞を宿主NK細胞と共に播種し、R10 + 1000IU/mL IL-2中で37℃、5% CO2で2日間にわたり培養した。移植片T細胞の生存を、生存するTCRαβ-CD56-CD4+CD8+にゲーティングすることによって、絶対数を使用したフローサイトメトリーにより決定した。
PBMC MLR(図16
【0189】
96ウェルプレートで、20,000個の移植片T細胞を200,000個の宿主PBMC細胞(10:1 E:T比)と共に播種し、R10 + 20IU/mL IL-2中で37℃、5% CO2で4~13日間にわたり培養した。細胞には、新鮮なR10+IL-2を2~3日ごとに供給した。移植片T細胞の生存を、生存するTCRαβ-CD56-CD4+CD8+にゲーティングすることによって、絶対数を使用したフローサイトメトリーにより決定した。エフェクターNK細胞の増殖は、TCRαβ-CD56+にゲーティングされた生細胞の絶対数によって決定された。エフェクターT細胞の増殖は、TCRαβ+CD56-CD4+CD8+にゲーティングされた生細胞の絶対数によって決定された。
実施例1.TAP2 KO又はNLRC5 KOは、自己抗原特異的殺傷アッセイにおいてT細胞を保護する
A. MHCクラスI提示の依存性
【0190】
NLRC5は、インターフェロン-γ(IFN-γ)により誘導され、IFN-γ-誘導性免疫プロテアソーム(すなわち、LMP2及びLMP7)の成分の発現を調節する。IFN-γ誘導性MHCクラスI上方制御は、NLRC5に依存しており、これは、NLRC5 KOがIFN-γの存在下又は非存在下でMHCクラスI提示を安定的に抑制することを示唆する。実際に、NLRC5 KO初代T細胞を様々な量の組換えIFN-γと共にインキュベートした場合、TRAC KO単独と比較してMHCクラスI発現における最小限の増加があった(図5)。
B. TAP2 KO及びNLRC5 KOはそれぞれエフェクター細胞殺傷に対して保護する
【0191】
TAP2 KO又はNLRC5 KO(図4A、4Bを参照)によって達成されたMHCの控えめな発現低下が、自己抗原特異的殺傷アッセイにおいてT細胞を保護するかどうかが決定された。初代T細胞(モック産物細胞)を、Cas9-複合型sgRNAでTAP2又はβ2mにエレクトロポレーションし、メラニン形成細胞由来の組織分化抗原MART1/MelanA(BFP-P2A-MART1)で形質導入した。並行して、同じドナーからのモックエフェクターT細胞をHLA-A2-拘束性、MART1-特異的T細胞受容体、F5 TCRで形質導入した。モック産物細胞及びエフェクター細胞を72時間にわたり共インキュベートしてから、抗原特異的殺傷の程度を、残りのBFP+(MART1-発現)T細胞をフローサイトメトリーを介して定量化することによって解析した(図6A~6Cを参照)。表面β2m(ベータ2m)を保持する(すなわち、未編集の)抗原発現細胞は、HLA-A2-(HLA-A2-マイナス)である場合、エフェクター細胞によって殺傷されなかったが(図6A、各対の右バー)、HLA-A2+である場合、エフェクターによって根絶された(図6A、各対の左バー)。これにより、F5 TCRを有するエフェクター細胞は、HLA-A2がペプチドを提示するという拘束を条件として、MART1抗原発現細胞を殺傷する能力があったことが確認される。
【0192】
未編集の細胞とは対照的に、TAP2又はβ2m(よって、それぞれ表面β2mlow又はβ2m-)のいずれかについて編集された抗原発現のHLA-A2+細胞は、エフェクター細胞による殺傷から完全に保護された(図6B)。同様に、独立した実験では、NLRC5又はβ2mのいずれかについて編集されたHLA-A2+細胞も、エフェクター細胞による殺傷から保護された(図6C)。したがって、β2m、TAP2、又はNLRC5のノックアウトは、編集されたT細胞を、T細胞介在性抗原特異的殺傷から保護するが、TAP2 KO及びNLRC5 KOは、β2m KOよりも表面MHCを低減させることなく、これを達成する。
実施例2.多型エピトープコンテキストにおけるNLRC5 KOの保護効果
【0193】
多型エピトープコンテキストにおけるNLRC5 KOの保護効果を評価するために、これらの標的を、同種ドナーから新たに単離されたパンT細胞を用いて一方向T細胞混合リンパ球反応(MLR)で試験した。第一に、パンT細胞を、TRAC KOについて、β2m、TAP2、又はNLRC5 KOを伴う場合と伴わない場合について、CRISPR/Cas9を介して、遺伝子編集した。次いで、標的を精製して、TCR α/β発現細胞をすべて除去した。エフェクターPBMCを、同じ標的ドナーから単離された照射されたPBMCと1週間にわたり共培養し、同種反応性T細胞の成長及び増殖を促進した。エフェクターパンT細胞を精製し、標的と共に1:1の比率で2日間にわたり共インキュベートした。殺傷の程度を、生存標的の絶対数を分析することによって決定した(図7)。自家の環境では、どの改変戦略についても殺傷は観察されなかった。同種の環境では、TRAC KO改変標的細胞に対して有意な同種反応性が観察され、それはβ2m、TAP2、又はNLRC5 KOのいずれかによって有意に減弱された。したがって、多クローン性同種の環境では、これらのMHCクラスIの発現低下改変は、同種反応性T細胞認識を軽減する。
実施例3.TAP2 KO及びNLRC5 KO T細胞は、NK介在性殺傷に対し、β2m KO T細胞よりも感受性が低い
【0194】
β2mのKOによる表面MHCのアブレーションは、NK介在性殺傷を生じさせる(図2A~2B)。TAP2 KO又はNLRC5 KO(図4A~4B)の結果生ずる表面MHCの控えめな発現低下が、NK介在性殺傷を同様に発生させるかどうかを決定するために、パンT標的細胞を、TRAC KO及びβ2m、TAP2、又はNLRC5 KOのいずれかについて、CRISPR/Cas9を介して編集した。TCR陰性標的T細胞を、同種ドナーから新たに単離されたNK細胞と共に、0:1、1:1、又は5:1のNKエフェクター:T標的比で72時間にわたり共インキュベートした。NK介在性殺傷を、フローサイトメトリーによって評価した(図8A~8Cを参照)。それまでに観察されたように、b2m KO T細胞は、1:1又は5:1のいずれかで、同種NK細胞によって効率的に殺傷された。対照的に、1:1のNK:T及びNLRC5 KO T細胞でのインキュベーションを生き延びた、TAP2 KO T細胞の大部分は、5:1のNK:Tでもほぼ完全に保持された(図8A)。二人の追加的な同種ドナーからのNK細胞での同一インキュベーションでは、同様の結果が得られたのであり、TAP2 KO、および、特に、NLRC5 KO T細胞は、b2m KO T細胞よりも、NK介在性殺傷が少ないことを示している(図8B)。編集効率は100%ではないため、この実験で使用されるT細胞には、未編集細胞のほか、β2m、TAP2、又はNLRC5座位で編集された細胞も含まれる。NK介在性殺傷が、編集された細胞に対する選択に影響を及ぼす場合には、NK細胞の追加は、MHCヌル/低(編集)細胞からMHC補充(未編集)細胞へのシフトを生じさせる。実際に、1:1のNK細胞を加えると、その結果、β2mのKO細胞に対して、未編集細胞のほぼ完全な選択がなされた一方で、TAP2 KO細胞に対して、未編集細胞の同等の選択には、5:1のNK細胞が必要とされた(図8C)。NLRC5座位で編集されたT細胞は、5:1のNK細胞においてさえもこの選択を示さなかったのであり、自己喪失によるNK介在性殺傷からのそれらの明白な除外をさらに証明している。
実施例4.NLRC5 KOは、DLL3 CAR媒介性細胞毒性を損なわない
【0195】
NLRC5 KOは、例示的なDLL3 CAR媒介性細胞毒性を損なわないことも示された(図10A~10Bを参照)。例示的なDLL3 CAR配列を表3に示す。TRAC KO(黒三角)又はTRAC KO+NLRC5 KO(逆三角形)を含む抗DLL3 CAR+T細胞は、DLL3high発現WM266.4腫瘍細胞(図10A、3つの異なるエフェクター:標的比を示す)、及びDLL3low発現DMS273腫瘍細胞(図10B)と共インキュベートした場合、類似の短期細胞毒性を示した。標的細胞が単独で成長(点)、又は非形質導入T細胞の存在下で成長(正方形)すると、標的細胞数は指数関数的に増殖し、互いに類似した割合で減少した。この実験では、以下の方法を使用した。
短期殺傷:方法
【0196】
細胞毒性は、Incucyteプラットフォーム(Sartorius)を使用して経時的な腫瘍標的細胞の数を測定することによって決定された。簡潔に述べると、WM266.4腫瘍細胞を、レンチウイルスを用いて操作して、核が制限されたGFPであるNucLight Green(Sartoriusカタログ番号4475)を安定的に発現させ、標的細胞として使用した。標的細胞を、96ウェルプレートにウェル当たり5,000個の細胞の密度で播種した。DLL3 CAR T細胞を解凍し、播種された標的細胞に様々なエフェクター:標的(E:T)比で添加した。標的細胞数(GFP+)を6時間ごとに合計132時間にわたり計数した。
【0197】
TRAC KO(黒い三角形)又はTRAC KO+NLRC5 KO(逆三角形)を含む、抗DLL3 CAR+ T細胞も、より長い時間にわたって標的細胞と共にインキュベートした場合、互いに類似した細胞毒性を示した(図10C)。これらの実験では、以下の方法を使用した。
連続的な殺傷:方法
【0198】
細胞毒性は、生きた標的細胞からの発光信号の減少を測定することによって決定された。WM266.4腫瘍細胞を、レンチウイルスを用いて操作して、ルシフェラーゼを安定的に発現させ、標的細胞として使用した。標的細胞を、96ウェルプレートにウェル当たり5,000個の細胞の密度で播種した。DLL3 CAR T細胞を解凍し、播種された標的細胞に3:1のE:T比で添加した。2~4日ごとに、細胞の半分を、白色壁の96ウェルプレートに移し、OneGlo基質(Promega、カタログ番号E6110)と共に、1:1の比率(v:v)で、室温で2分間にわたり振盪しながらインキュベートした。相対発光単位は、SpectraMax M3プレートリーダー(Molecular Devices)を使用して測定し、細胞のないウェルに対して背景を差し引いた。%細胞毒性=100×[1-(RLUtest/RLUcontrol)]。未処理の標的細胞を使用して、RLUcontrolを決定した。
実施例5.製造可能性
【0199】
これらの操作戦略の製造可能性を試験するために、DLL3特異的なCARと組み合わせた増殖及び形質導入の効率を評価した。パンT細胞は、CAR発現のための遺伝子編集と形質導入が同時に行われ、TCR αβ発現のためにネガティブに選択された。遺伝子編集された細胞は、CAR形質導入単独と比較して、同等の効率で形質導入された(図9A)。さらに、TRAC KO及びNLRC5 KOと組み合わせたDLL3 CARを発現する細胞の増殖は、DLL3 CAR及びTRAC KO単独と比較して、類似した成長率を示した(図9B)。
実施例6.免疫回避遺伝子KOの活性
MHC発現に対するRFX及びその他のKOの効果
【0200】
ノックアウトT細胞株を調製し、その各々には、上述のように、配列番号1~11の対応するsgRNAを使用して、ノックアウトを生成するために、β2m、NLRC5, RFX5、CIITA、RFXANK及びRFXAPのうちの1つについてのノックアウトが含まれた。HLA-ABC(MHC-I)及びHLA-DR、DP、DQ(MHC-II)の細胞表面発現レベルに対する各ノックアウトの効果を、遺伝子編集後7日にフローサイトメトリーにより評価し、モック遺伝子編集の効果と比較した(図11A~11Bを参照)。このデータは、とりわけ、RFX5及びRFXANKのいずれかをノックアウトすると、HLA-ABC(MHC-I)及びHLA-DR、DP、DQ(MHC-II)の両方の細胞表面発現レベルが有意に減少することを示す。
【0201】
3人の独立したT細胞ドナーから調製されたTRAC+β2m二重KO、TRAC+NLRC5二重KO、及びTRAC+RFX5二重KOを比較するために、類似の実験を実施した(図12A~12Bを参照)。TRAC単一KOを対照として使用した。3人のドナーすべてからの細胞について、MHC-II及び意外にも同様にMHC-Iの発現レベルは両方とも、TRAC KOよりもRFX5 KOで有意により低かったことが観察された(図12A~12Bを参照)。
免疫回避T細胞の増殖
【0202】
各々3人の独立したT細胞ドナーから調製された、β2m+TRAC、NLRC5+TRAC、及びRFX5+TRAC二重ノックアウトの増殖能力を評価した(図13A~13Bを参照)。遺伝子編集後、約11日の期間にわたって、細胞増殖は、30倍超、70倍超、及び40倍超に達し、RFX5二重ノックアウト、NLRC5二重ノックアウト、及びTRAC単一ノックアウトの間に有意差はなかった(図13Aを参照)。
【0203】
IL-2を欠く培地中でノックアウト細胞を維持することによって、細胞の持続性も評価した。細胞数は、IL-2の除去から3日後では本質的に同じままであったのであり、IL-2の除去から5日後にはおよそ50%低下した。NLRC5 + TRAC二重KO、RFX5 + TRAC二重KO、及び対照TRAC KOの間に差異は観察されなかった。20Kの細胞を、20IU/mLのIL-2を有する96ウェルプレートに播種した。4日目に、IL-2なしで培地を交換した。培地はその後2~3日ごとに再供給された(図13Bを参照)。
MHC-I/II発現の発現低下は、同種反応性を軽減する
a.インビトロ同種拒絶アッセイ:初回刺激を受けたT混合リンパ球反応(MLR)
【0204】
二重KO T細胞を、初回刺激を受けたT細胞と共培養し、KO T細胞が対照TRAC KO細胞の生存率とは異なる生存率を有するかどうかを決定した。具体的には、2人の同種ドナーからのT細胞は、移植片ドナーからの照射細胞に対して1週間にわたり初回刺激を受けた。移植片ドナーからのT細胞を、KO細胞(TRACについてKO(対照)、TRAC+β2m、TRAC+NLRC5、又はTRAC+RFX5について二重KO)を作製するように編集し、KO移植片細胞を、初回刺激を受けたCD4+、CD8+、及びパンT細胞と共に共培養した。初回刺激を受けたT細胞と共培養して生き延びた移植片KO細胞の数を決定した。TRAC KO細胞よりも有意に高いTRAC+RFX5 KO細胞の割合が、両方のドナーについて、及び3つのT細胞集団(CD4+、CD8+、及びパンT細胞)のすべてについて、初回刺激を受けた細胞との共培養を生き延びた(図14A : CD4+細胞、図14B : CD8+細胞、及び図14C:パンT細胞を参照)。
【0205】
方法:2人の同種ドナーからのT細胞は、移植片ドナーからの照射細胞に対して1週間にわたり初回刺激を受けた。CD4+細胞、CD8+細胞、又はパンT細胞は、その後で精製し、1:1のE:T比で移植片T細胞と共に48時間にわたり共培養した。移植片T細胞の一方向殺傷を、フローサイトメトリーによって評価した。図14A~14Cでは、技術的な三重複製の平均値±SDを示す。%生存率=細胞数/(エフェクターを含まない細胞数)×100。ノックアウトを、上述のように調製した。
b.同種NK細胞によるTRAC + NLRC5 及びTRAC + RFX5二重KO T細胞
の殺傷は最小限である
【0206】
3人の異なるドナーからの移植片細胞を、KO(TRAC)又は二重KO(TRACと、β2m、NLRC5、又はRFX5のうち1つ)を作製するように編集し、KO移植片細胞を、NK細胞と共に共培養した。NK細胞と共培養して生き延びた移植片KO細胞の数を決定した。NLRC5 KO細胞の半分超及びRFX5 KO細胞の半分超が、NK細胞との共培養を生き延びた(図15Aを参照)。
【0207】
方法の簡単な説明:NK細胞を同種PBMCから単離し、1000IU/mLのIL-2の存在下で、移植片T細胞と共に1:1のE:T比で、48時間にわたり共培養した。フローサイトメトリーによって評価された移植片T細胞の一方向殺傷。追加の方法又は代替の方法、NK混合リンパ球反応(MLR)の説明については、以下も参照のこと。
【0208】
図15Bのための方法:同種PBMCを、様々な遺伝子編集改変を伴うTRAC KO移植片T細胞と共に、7日間、10:1のE:T比で共培養した。同種NK細胞の増殖を、TCRαβ-CD56+細胞についてゲーティングした絶対細胞数を使用して、フローサイトメトリーにより決定し、移植片細胞の不在下で培養された同種NK細胞に対して正規化した。6つの生物学的複製の平均±SDを示す。
【0209】
図16のための方法:同種PBMCを、様々な免疫回避改変を伴うTRAC KO移植片T細胞と共に、9日間、10:1のE:T比で共培養した。移植片T細胞の生存は、フローサイトメトリーにより決定され、エフェクター全くなしで培養された移植片T細胞に対して正規化された。技術的な三重複製の平均±SDを示す。
実施例7.US11の過剰発現
【0210】
また、US11過剰発現は、同種反応性T細胞回避を増強するのであり、NLRC5ノックアウトと組み合わせて、いずれかが単独で提供するよりも大きな有効性を得ることが可能であることも示された(図17A~17Dを参照)。以下の方法を、図17Bに示す実験のために使用した(かつ、図7及び図14A~14Cに示す実験のためにも使用した):
US11過剰発現T細胞の生成:方法
【0211】
US11をコードするレンチウイルスを作製するために、 HEK-293T細胞を、ポリ-L-リシン(R and D Systems)で予めコーティングされた10cmのディッシュ中に、10%のFBS(HyClone)、非必須アミノ酸(Gibco)、及びピルビン酸ナトリウム(Gibco)を補充した、DMEM(Gibco)1mL当たり細胞75万個で播種した。翌日、pLVX骨格上にUS11をコードするプラスミド(配列番号8~12、図18)を、レンチウイルスパッケージングベクターpsPAX2及びpMD2Gと3:4:1の質量比で混合した。製造業者の推奨事項に従い、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を添加し、室温で20分間にわたりインキュベートした後で、脂質-DNA複合体が形成された。混合物を、HEK-293T単層(約70~90%の合流点)に滴加し、細胞を37℃、5%のCO2で一晩にわたりインキュベートした。16~20時間後、培地をR10で置換した。48時間後、上清を収集し、0.45μmのフィルターを通して濾過した。ウイルスを、Lenti-X(Takara Bio)を用いて20Xに濃縮し、2日前にTransAct(1:100)で活性化された100万個のT細胞に1:10希釈で添加した。形質導入の効率を、青色蛍光タンパク質(BFP+)の発現によるフローサイトメトリーにより評価した。
初回刺激を受けたT混合リンパ球反応(MLR)
【0212】
ヒトPBMC(宿主)は、同種反応性T細胞クローンの増殖を促進するために、上記で移植片T細胞を作製するために使用されるドナーに由来する照射されたPBMCに対して初回刺激を受けた。簡潔に述べると、移植片PBMCを30Gyで照射し、R10 + 20IU/mL IL-2 + 10ng/mL IL-7 + 10ng/mL IL-15(Miltenyi、カタログ番号130-095-765)中で1:1の比率で宿主PBMCと4日間にわたり共培養した。サイトカインなしで培地をR10に交換し、細胞をさらに3日間培養し続けた。その後、MACSネガティブ選択(Miltenyi、ヒトパンT細胞単離キット、カタログ番号130-096-535)を使用して、製造業者の推奨に従って、パンT細胞を単離した。96ウェルプレートで、20,000個の移植片T細胞を20,000個の初回刺激を受けた宿主T細胞と共に播種し、R10 + 20IU/mL IL-2中で37℃、5% CO2で2日間にわたり培養した。移植片T細胞の生存を、生存するTCRαβ-CD4+CD8+にゲーティングすることによって、絶対数を使用したフローサイトメトリーにより決定した。
【0213】
以下の方法を、図17Cに示す実験のために使用した(かつ、図8A~8B及び図15Aに示す実験のためにも使用した):
NK混合リンパ球反応(MLR)
【0214】
ヒトNK細胞を、MACS精製(Miltenyi、ヒトパンNK細胞単離キット、カタログ番号130-092-657)を介して、新たに単離されたヒトPBMCから単離した。96ウェルプレートで、20,000個の移植片T細胞を宿主NK細胞と共に播種し、R10 + 1000IU/mL IL-2中で37℃、5% CO2で2日間にわたり培養した。移植片T細胞の生存を、生存するTCRαβ-CD56-CD4+CD8+にゲーティングすることによって、絶対数を使用したフローサイトメトリーにより決定した。
【0215】
表2.US11 レンチウイルスベクター(LVV)
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】

実施例8 ステルスノックアウトT細胞はIFNに対する感受性がなかった
【0216】
本発明者らは、様々な遺伝子ノックアウトで改変されたT細胞におけるMHC表面発現レベルに対するIFNγの効果を試験した。様々な遺伝子KO(TRAC KO単独(対照)又はTRAC KO+B2M KO、NLRC5 KO、RFX5 KO、又はCIITA KO)を伴うT細胞を、96ウェルプレート中に細胞3×104個/ウェルで、様々な濃度の組換えヒトIFN-γ(R&D Systems)と共に、72時間にわたり播種した。MHC-I及びMHC-IIの発現は、抗HLA-ABC及び抗HLA-DR、DP、DQ抗体(例えば、BioLegend、カタログ番号311404、361708)で染色し、フローサイトメトリーで分析することによって決定された。
【0217】
図19A~19Bでの結果は、対照T細胞(TRAC KO単独)のMHC-I及びMHC-IIの発現が、IFN-γ濃度の増加と共に上昇した一方で、B2M KO、NLRC5 KO、又はRFX5 KO T細胞におけるMHC-I発現、及びRFX5 KO又はCIITA KO T細胞におけるMHC-II発現が、IFN-γの付加にかかわらず低いままであったことを示し、ステルス改変されたT細胞におけるMHC発現のレベルが、IFN-γに対して比較的感受性がなかったことを示唆する。
実施例9 ステルスCD19 CAR T細胞の製造
【0218】
CD19 CARの発現のためにレンチウイルスを用いてT細胞が形質導入されたことを除いて、上記の、例えば実施例4及び5に記載されたのと同じ方法が、様々な遺伝子KOを有する例示的なCD19 CAR T細胞の産生に使用された。例示的なCD19 CAR配列は、表3に示すとおりである。遺伝子編集を、T細胞の解凍及び活性化後、2日目(データを図20~21に示す)又は5日目(データを図23に示す)に、Neon Transfection System(Invitrogen)又はNucleofector 4D(Lonza)を使用して行った。TCR枯渇(Stem Cell Technologies、EasySepヒトTCRアルファ/ベータ枯渇キット、カタログ番号17847)を、典型的に14~16日目の間に実施した。TCR枯渇T細胞を凍結保存し、後の時点での追加のアッセイ用に解凍した。生細胞をVi-CELLカウンター(Beckman Coulter)で計数することによって、産生中の細胞増殖を追跡した。倍増殖は、2日目(遺伝子編集の時点)までの様々な時点での生細胞数を比較することによって計算した。CAR+ T細胞の割合、CD4/CD8比、及びT細胞サブセットを、フローサイトメトリーによって決定した。CD19 CAR T細胞を、抗イディオタイプ抗体(Acro Biosystems、カタログ番号FM3HPY53)により同定した。CAR+CD4+細胞又はCAR+CD8+細胞の表現型は、CD62L及びCD45RO発現によって決定され、幹細胞メモリー(CD62L+/CD45RO-)、セントラルメモリー(CD62L+/CD45RO+)、エフェクターメモリー(CD62L-/CD45RO+)、又はエフェクター(CD62L-/CD45RO-)細胞集団として定義された。
【0219】
様々な遺伝子KOを有するCD19 CAR T細胞の製造可能性を、DLL3 CAR T細胞と同様の様式で評価した。遺伝子編集された細胞は、産生全体を通じて、対照CAR T細胞と比較して、同等の効率で形質導入され、類似の動態が示された(図20A)。さらに、CD19 CARを発現するCAR T細胞とTRAC KO及び様々な追加のKOとの組み合わせの、細胞増殖(図20B)、CD4/CD8比(図20C)、及びメモリ表現型(図20D)は、TRAC KO単独を有するCD19 CAR T細胞と同等であった。
【0220】
表3 例示的なCAR配列
【表3】

実施例10 CD19 CAR T細胞を移植片として用いたPBMC MLRアッセイ
【0221】
本発明者らは、次に、異なるドナーからの同種PBMCとの共培養後の、様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有する移植片CD19 CAR T細胞の生存を調べた。CAR T細胞の様々な遺伝子編集改変が、同種免疫細胞認識の軽減に与える影響を、上記実施例6に記載されるPBMC MLRアッセイで評価した。図21Aでの結果は、CD19 CAR T細胞において、β2m、NLRC5、又はRFX5をノックアウトすることが、宿主CD8 T細胞増殖の減少をもたらしたことを示し、CD19 CAR T細胞上でのMHC-I発現を低減させることによって、同種CD8 T細胞認識を効果的に軽減することを示唆する。CD19 CAR T細胞の生存率も定量化した。NLRC5、RFX5、及びCIITAをノックアウトすることで、対照CD19 CAR T細胞と同等の生存率がもたらされたが、一方で、β2mをノックアウトすることで、対照CD19 CAR T細胞と比較して、CD19 CAR T細胞の生存率は低くなった(図21B)。
実施例110 NSGマウスモデルにおけるT細胞拒絶反応
【0222】
様々な遺伝子ノックアウト(KO)を有するCD19 CAR T細胞の持続性及び抗腫瘍活性を、インビボでの同種T細胞拒絶反応モデルで評価した。8~12週齢のNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスをJackson Laboratories(メーン州バー・ハーバー)から取得した。NSGマウスに、-6日目に1Gyで照射し、HLA-A2+レシピエントに由来する7×106個のインビトロ増殖した同種ヒトT細胞を投与した。簡潔に述べると、同種T細胞は、T細胞TransAct(商標)(Miltenyi Biotec、カリフォルニア州オーバーン;1:100希釈)を、5%ヒトAB血清(Gemini Bio-Products、カリフォルニア州ウェストサクラメント)及び100IU/mL IL-2(Miltenyi Biotec、カリフォルニア州オーバーン)を補充したX-Vivo15培地(Lonza、バーゼル、スイス)中で使用して、凍結保存からの回復後、直ちに活性化した。図22Aを参照。活性化の2日後、T細胞を遠心分離してTransActを除去してから、5%ヒトAB血清及び100IU/ml IL-2を補充した新鮮なXVivo-15培地に、静脈内注射を介して動物に投与する前の6~8日間にわたり再懸濁させた。-4日目に、マウスは1×105個のルシフェラーゼ標識B2M KO Raji腫瘍細胞を静脈内注射により投与された。-1日目に、全身生物発光に基づいてマウスを無作為化した。0日目に、様々な遺伝子編集改変(TRAC KO単独、又はβ2m、NLRC5、若しくはRFX5のうちの1つのKOを伴う)を有するHLA-A2-ドナーから産生されたCD19 CAR T細胞を、3×106 CAR+細胞で静脈内注射した。T細胞の総数は、非形質導入T細胞で正規化することによって、全ての群にわたって一定に維持された。Raji腫瘍の成長は、示された時点で全身生物発光によって追跡された。CAR T細胞の持続性をインビボで追跡するために、CAR T投与後2日目、9日目、及び16日目に頬出血により40μLの末梢血を得た。赤血球溶解後、試料を抗ヒトCD45、HLA-A2、及び抗イディオタイプ抗体で染色して、CD19 CAR T細胞を識別した。計数ビーズ(123count eBeads、Thermo Fisher)を使用して、CAR T細胞数を正規化した。一群当たりのマウス数N=8。
【0223】
MHC-I発現を低減させるための遺伝子改変を有するCD19 CAR T細胞(B2m、NLRC5、又はRFX5 KO)は、対照CD19 CAR T細胞(TRAC KO単独)と比較して、より高いCAR T細胞数を示し、末梢血中でより長く持続したのであり、MHC-I発現が低減されたCAR T細胞が、同種T細胞拒絶反応の軽減に優れていたことを示唆する(図22B)。優れたCAR T細胞の持続性と一貫して、B2M KO、NLRC5 KO、及びRFX5 KO CD19 CAR T細胞もまた、対照CD19 CAR T細胞と比較して、より良い抗腫瘍活性を示した(図22C)。
実施例12 同系マウスモデルにおけるNK拒絶反応
【0224】
遺伝子編集されたマウスT細胞の産生:CD45.2対立遺伝子を有するC57BL/6マウスの脾臓を採取し、単個細胞浮遊液を、gentleMAC Dissociator(Miltenyi)により取得した。マウスT細胞を、次いでマウスT細胞単離キットIIで精製し、その後、製造業者のプロトコル(Miltenyi)に従って、マウスT細胞活性化/増殖キットにより活性化した。活性化の1日後、マウスT細胞を、ヒトT細胞と同様にエレクトロポレーション(Nucleofector 4D、Lonza)を介してCRISPR/Cas9で遺伝子編集した。使用されるsgRNA配列は、5’から3’:ugaguauacuugaauuugag(B2m、配列番号20)及びgccucacaagccaggcccac(Nlrc5、配列番号21)である。遺伝子編集されたマウスT細胞を、動物に投与する前にIL-2(40ng/ml)及びIL-7(40ng/ml)の存在下で6日間にわたりインビトロで増殖させた。
【0225】
移植片T細胞の養子移入:CD45.1又はCD45.2対立遺伝子を有する8~12週齢のC57BL/6マウスを、Jackson Laboratories(メーン州バー・ハーバー)から取得した。CD45.1対立遺伝子を有するC59BL/6マウスに、-3日目に2.5Gyで照射し、0日目に、CD45.2対立遺伝子を有するC57BL/6マウスからの、1×107個の対照(非遺伝子編集)又は遺伝子編集された(B2m又はNlrc5 KO)インビトロで増殖させたT細胞を、静脈内注射を介して投与した。図23Aを参照。CD45.1対立遺伝子を有する一部のC57BL/6マウスは、-3日目及び0日目に、NK枯渇抗体(抗NK1.1抗体、BioXcell)も、各回の注射について200ug/マウスで、腹腔内注射を介して投与され、「+NK枯渇」コホートとして表示された。末梢血中の宿主免疫細胞及び移植片T細胞の細胞数を、フローサイトメトリーにより追跡した。移植片T細胞投与後の指示された時点での頬出血により、40μLの末梢血を得た。赤血球溶解後、試料をCD45.1、CD45.2、CD3、CD4、CD8、CD19、CD335、CD11b及びH2-Kb用の抗マウス抗体で染色して、移植片T細胞及び宿主免疫細胞サブセットを特定した。計数ビーズ(123count eBeads、Thermo Fisher)を使用して、細胞数を正規化した。一群当たりのマウス数N=5。平均±SEMを示す。
【0226】
移植投与前に、C57BL/6マウスの宿主免疫細胞を一時的に減少させるために、亜致死照射を使用した。一部のマウスはまた、残されたNK細胞を徹底的に枯渇させるためにNK枯渇抗体も投与された。次いで、同系マウス由来の遺伝子編集された(B2m又はNLRC5 KO)又は非編集対照移植片T細胞を、宿主に養子移入した。養子移入T細胞の生着を、フローサイトメトリーによって様々な時点で追跡した。B2m又はNlrc5 KOのいずれかで移植されたT細胞は、抗マウスH2-Kb(BioLegend、カタログ番号116508)を使用して決定した時、より低いMHC-1発現を示した(図23B)。NLRC5 KOを用いた移植片T細胞の生存率は、NK枯渇を伴う、伴わないによらず対照移植片と同等であったのであり、Nlrc5をノックアウトすることが、マウスにおけるNK細胞拒絶反応を生じさせなかったことを示唆する(図23C)。逆に、宿主NK細胞が枯渇しない限り、B2m KO移植片細胞は、生存しなかったのであり、B2mをノックアウトすることが、移植片T細胞のNK拒絶反応に対する感受性を高めたことを示唆する(図23C)。
【0227】
特許、特許出願、論文、教科書などを含め、本明細書に引用されるすべての参考文献、及びそれらで引用される参考文献は、まだ引用されていない範囲まで、ここにその全体が参照により組み込まれる。
【0228】
本開示の教示は、様々な用途、方法、キット、及び組成物を参照して記載されてきたが、本明細書の教示、及び以下の特許請求の範囲に記載された発明から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることが理解されよう。前述の実施例は、開示された教示をより良く例示するために提供され、本明細書に提示される教示の範囲を限定することを意図するものではない。本教示は、これらの例示的な実施形態の観点で説明されてきたが、当業者であれば、これらの例示的な実施形態の数多くの変形及び修正が、過度の実験なしに可能であることを容易に理解するであろう。こうした変形及び修正はすべて、本教示の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A-1】
図8A-2】
図8B
図8C-1】
図8C-2】
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A-1】
図13A-2】
図13B
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B
図23C
【配列表】
2024505075000001.app
【国際調査報告】