(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】神経変性疾患を治療するための遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20240126BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240126BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240126BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240126BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240126BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240126BHJP
A61K 31/711 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
A61K38/17
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
C12N15/864 100Z
A61K48/00
A61P25/28
A61K31/711
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546200
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 KR2022001594
(87)【国際公開番号】W WO2022164259
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0012117
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523287849
【氏名又は名称】エイブレイン
【氏名又は名称原語表記】ABRAIN
【住所又は居所原語表記】5, JANGAN‐RO 448BEON‐GIL, JANGAN‐GU, SUWON‐SI, GYEONGGI‐DO 16209, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギョン・ウォン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084DC50
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA151
4C084ZA161
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
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4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA19
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規の神経変性疾患に対する遺伝子療法剤を提供する。本発明は、Aβ変異体を細胞外に分泌し、人体内でwt Aβポリメリゼーション(polymerization)を遅延または妨害し、毒性を減少させることによって神経変性疾患に優れた予防、改善および治療効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aβペプチド変異体をコードするコード配列およびこれに作動可能に連結されたプロモーターを含む遺伝子構築物。
【請求項2】
前記Aβペプチド変異体をコードするコード配列は、配列番号7のAβ42ペプチド配列に基づいてV18P、F19D、およびA21Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むペプチド配列をコードする配列である、請求項1に記載の遺伝子構築物。
【請求項3】
前記Aβペプチド変異体をコードするコード配列が、配列番号7のAβ42ペプチド配列に基づいてV18P/A21DまたはV18P/F19D/A21Dの変異を含むペプチド配列をコードする配列である、請求項2に記載の遺伝子構築物。
【請求項4】
前記Aβペプチド変異体をコードするコード配列は、配列番号9または10である、請求項3に記載の遺伝子構築物。
【請求項5】
前記Aβペプチド変異体は、配列番号11または12である、請求項3に記載の遺伝子構築物。
【請求項6】
前記プロモーターは、過剰発現プロモーターまたは神経特異的プロモーターである、請求項1に記載の遺伝子構築物。
【請求項7】
前記プロモーターは、ヒト シナプシンI(SYN)プロモーター、マウス カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)プロモーター、ラット チューブリンαI(Ta1)プロモーター、ラット 神経特異エノラーゼ(NSE)およびヒト 血小板由来成長因子-β鎖(PDGF)プロモーター、EF-1αプロモーター、CAGプロモーターおよびCMVプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項6に記載の遺伝子構築物。
【請求項8】
前記プロモーターは、ヒトシナプシンI(SYN)、CaMKIIまたはCAGプロモーターであり、それぞれ配列番号17、18または23である、請求項7に記載の遺伝子構築物。
【請求項9】
前記遺伝子構築物は、エンハンサー配列、ポリアデニル化配列およびKozak配列からなる群から選択されるいずれか一つ以上をさらに含むものである、請求項1に記載の遺伝子構築物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む組み換え発現ベクター。
【請求項11】
前記組み換え発現ベクターは、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクター、ヘルペスウィルスベクター、アビポックスウィルスベクターおよびレンチウィルスベクターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項10に記載の組み換え発現ベクター。
【請求項12】
前記組み換え発現ベクターは、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターであり、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15およびAAV.HSC16からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項11に記載の組み換え発現ベクター。
【請求項13】
アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターは、AAV2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eBおよびAAV.7m8からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項12に記載の組み換え発現ベクター。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む神経変性疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項15】
請求項10に記載の組み換え発現ベクターを含む神経変性疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項16】
前記神経変性疾患は、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調症、神経セロイド脂褐素症、バッテン病、牛海綿状脳症(BSE)、カナバン病、脳性麻痺、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、前頭側頭葉変性症、ゴーシェ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、リソソーム蓄積症、神経ボレリア症、マシャド・ジョセフ病、運動ニューロン病、多系統萎縮症、多発性硬化症、多種スルファターゼ欠損症、ムコリピド症、ナルコレプシー、ニーマン・ピック病C型、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ病、ピック病、ポンペ病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、スピルマイヤー・フォークト・シェーグレン・バッテン病、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄梅毒、およびテイ・サックス病からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項14に記載の神経変性疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項17】
前記神経変性疾患は、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調症、神経セロイド脂褐素症、バッテン病、牛海綿状脳症(BSE)、カナバン病、脳性麻痺、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、前頭側頭葉変性症、ゴーシェ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、リソソーム蓄積症、神経ボレリア症、マシャド・ジョセフ病、運動ニューロン病、多系統萎縮症、多発性硬化症、多種スルファターゼ欠損症、ムコリピド症、ナルコレプシー、ニーマン・ピック病C型、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ病、ピック病、ポンペ病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、スピルマイヤー・フォークト・シェーグレン・バッテン病、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄梅毒、およびテイ・サックス病からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項15に記載の神経変性疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項18】
配列番号11または配列番号12のAβペプチド変異体。
【請求項19】
請求項18に記載のAβペプチド変異体 をコードするポリヌクレオチド。
【請求項20】
治療を必要とする対象体に請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物の治療有効量を投与する段階を含む神経変性疾患を治療する方法。
【請求項21】
神経変性疾患の治療に用いるための薬剤を製造するにおいて、請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物の用途。
【請求項22】
神経変性疾患の予防または治療に用いるための請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患を治療するための遺伝子療法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、主に神経細胞に影響を及ぼすものである。変性プロセスには、神経細胞構造の進行性の消失、神経細胞機能の進行性の消失、または進行性神経細胞死が関与することがある。様々な具体的な障害が神経変性疾患に分類される。
【0003】
アルツハイマー病は、全認知症のうち、約60%を占め、推定値には世界中で2600万人を超える個人がアルツハイマー病に罹患していると報告されている。認知症は、通常、記憶、言語、および認知プロセスにおける欠陥を含む精神機能の進行性衰退に関与している。アルツハイマー病は、患者自身に影響を及ぼすだけでなく、しばしば無報酬で患者の介護をしなければならない何百万人もの介護者にも大きな影響を与える。アルツハイマー病の最大の危険因子は年齢であることから、人々が高齢まで長生きするようになって、有病率は劇的に増加した。
【0004】
アルツハイマー病に関連する典型的な病理には、巨視的な脳の萎縮、大脳皮質の灰色質の薄化、神経細胞の損失を示唆する拡大された脳室、タンパク質の塊として凝集する、β-アミロイドペプチド[Aβ]を含む微視的な細胞外アミロイド斑、凝集したタウタンパク質を含む細胞外神経原線維変化、および脳血管アミロイド、すなわち血管周囲のアミロイドタンパク質が関与する。
【0005】
特に、アルツハイマー病の病理学的特徴は、患者の脳に神経原線維変化(NFT)およびアミロイド沈着物が存在することである。老人斑は、主要成分が凝集したアミロイド-βタンパク質(Aβ)であり、細胞外に蓄積し、老人斑が神経終末周囲に発生することが知られている。
【0006】
数十年にわたる研究は、アルツハイマー病における病理学的Aβの処理および蓄積を理解することに専念してきた。この研究に基づいて抗-Aβ療法を開発するための取り組みは、β-、γ-セクレターゼ(secretase)を阻害したり、免疫療法によって神経細胞から放出されたペプチドを隔離させたり、Aβポリメリゼーション(polymerization)を予防することに重点をおいた。このようなアプローチをテストするほとんどの臨床試験での結果は、満足できるものではなかったため、このような療法は大きな成功を達成することができなかった。最近、アデュカヌマブ(aducanumab)免疫療法のEMERGE試験の再分析は、Aβ targetingを標的とすることが臨床的に実行可能であるというアイデアに新たな希望をもたらした。最適なAD治療は、Aβ単独を目的とする可能性は低いが、疾患の段階に合わせた将来の併用治療の一部を構成することもできる。しかし、抗体療法は、臨床で適用される最初のAβ低減戦略となることもあり得るが、副作用プロファイルおよび反復的な静脈内投与の必要性により、広範囲に使用するには問題となりうる。
【0007】
また、最近、アミロイドおよび毒性オリゴマーの形成を防ぐことができる小さなペプチドの開発には大きな努力が払われてきた。ペプチドは、高い特異性および低い毒性に関連する高い生物学的活性を提供するが、こうした利点にもかかわらず、ペプチド薬物の有効性はin vivoでの短い半減期によって深刻に妨害され得、特に脳への投与および送達に問題を引き起こしうる。
【0008】
よって、前記のような観点から、神経再生または生存の促進、神経変性障害の治療、予防、または軽減のための改善された遺伝子療法が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報10-2020-0075865
【特許文献2】大韓民国公開特許公報10-2019-0127266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、BBB浸透およびin vivo半減期に対する過去の限界を克服するために、Aβ変異体を分泌するための新規な発現ベクターに基づく遺伝子療法を開発した。
【0011】
したがって、本発明は、ヒト体内でのwtAβポリメリゼーションを遅延または阻害し、その毒性を軽減させるAβ変異体を発現することができる遺伝子構築物、組換え発現ベクターおよびその使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、Aβペプチド変異体をコードする新規な遺伝子構築物を構築した。
【0013】
したがって、本発明は、Aβペプチド変異体をコードするコード配列;およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む遺伝子構築物、を提供する。
【0014】
本発明者は、Aβペプチド変異体をコードする単一の遺伝子構築物を用いると、組換えタンパク質を直接注射する必要がなく、少ない回数の投与(単回投与またはそれ以上)で神経変性疾患の遺伝子治療が可能であることを確認した。特に、Aβペプチド変異体は、wt Aβを妨害または阻害し、既存の凝集したAβ プラーク(plaques)の解体(disassembly)を介して優れた疾患改善および治療効果を示すことができる。
【0015】
好ましくは、本発明によるAβペプチド変異体は、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)配列に基づく変異体であってもよい。アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)配列は、3種のアイソフォーム(isoform)、すなわち、APP695、751、および770aaを有することが知られている。その中でもアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)は、主に695aaが神経で発現されることが知られている。前記の基礎配列に基づく変異体は、本発明の範疇に含まれる。 一例として、代表的なmRNA APP配列は、GenBank(登録商標)Accession No. NM_000484から確認できる。
【0016】
本発明によるAβペプチド変異体は、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)配列(配列番号1、APP 770aa基準(核酸配列:配列番号2))を基に、V689P、F690D、 および A692Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むものであってもよい。すなわち、Aβペプチド変異体をコードするコード配列は、前述のV689P、F690D、および A692Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むペプチド配列をコードする配列であってもよい。
【0017】
このようなコード配列の例示的な配列は、配列番号3または4にそれぞれ具体的に記載した。前記配列番号3または4は、それぞれ V689P/A692D、またはV689P/F690D/A692D変異を含むように設計されており、任意の変異体の一例に相当するが、このような変異体に内容が限定されるものではない。すなわち、V689P、F690D、および A692Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むものとそのコード配列は、本発明の範疇に含まれる。
【0018】
本発明による変異体は、「生物学的に活性」が同等に維持される限度内でその追加的な変異をさらに含むことができる。
【0019】
したがって、本発明は、配列番号3または4の配列にさらなる変異を含み得る。具体的に、それぞれの配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相同性を有するものを用いることができる。このような配列は、コード配列により製造される前記Aβペプチド変異体の生物学的活性が同等のレベルで維持される配列を本発明の範疇に含むものである。
【0020】
より具体的には、Aβペプチド変異体のアミノ酸位置689~692にさらなる変異を含むことができるように、前記配列番号3または4の配列において配列の改変または設計しうる。このような配列は、少なくとも80%以上の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相同性を有するものであって、製造されたAβペプチド変異体の生物学的活性が同等のレベルで維持される配列を本発明の範疇に含めることができる。
【0021】
前記配列番号3または4にコードされるペプチド配列の例示を、配列番号5または6にそれぞれ示した。
【0022】
前記Aβペプチド変異体は、wt Aβモノマー(monomer)と相互作用を通じてAβポリメリゼーション(polymerization)を妨害する立体変化を誘導することができる。すなわち、Aβポリメリゼーション(polymerization)形成はAβの中心疎水性クラスターからなることができるが、上述の変異配列を含むAβペプチド変異体は、wt Aβと相互作用し、凝集を阻害し、毒性を減少させる。すなわち、凝集阻害作用は、アミロイド形成およびAβ-媒介神経毒性を減少させることができる。このようなAβペプチド変異体は、それ自体では凝集せず、毒性を引き起こさないが、wt Aβペプチドと共に存在する場合にはwt Aβポリメリゼーション(polymerization)を阻害したり、沈着したAβの解体(disassembly)により疾患の治療効果を示すことができる。
【0023】
Aβペプチドは、神経および他の細胞内で発見される親膜貫通タンパク質(parent trans-membrane protein)であるアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)の過度な進行(excessive processing)の結果として生成される。アミロイド斑は、ベータ-セクレターゼ(beta-secretase)であるアスパルチルプロテアーゼ(aspartyl protease)により触媒されるタンパク質の逐次分解および後続のプレセニリン-依存性ガンマ-セクレターゼ切断(presenilin-dependent gammasecretase cleavage)によってアミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来する40個および42個のアミノ酸ペプチド(それぞれAβ40およびAβ42と呼ばれる)から主に構成される。Aβ42がAβ40に比べてより疎水性が高く、より可溶性が低く、アミロイド斑内で優位な種である。
【0024】
特に、Aβ42が凝集(aggregation)および沈着(deposition)する傾向が強く存在し、このため、シナプス損失(synaptic loss)と同様に細胞毒性をさらに引き起こす傾向がある。したがって、本発明では、Aβ42ペプチド変異体を提供することをその目的とする。
【0025】
Aβ42ペプチドの凝集および沈着は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病に大きな影響を及ぼす。
【0026】
したがって、本発明では、Aβ42ペプチド変異体は、前記のような、ペプチドの凝集および沈着に大きな影響を及ぼすAβ42配列に基づいて(配列番号7(核酸配列:配列番号8))、V18P、F19D、およびA21Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むものであってもよい。すなわち、Aβ42ペプチド変異体をコードするコード配列は、前述のV18P、F19D 、およびA21Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むペプチド配列をコードする配列であってもよい。
【0027】
このようなコード配列の例示的な配列は、配列番号9または10にそれぞれ具体的に記載した。前記配列番号9または10は、それぞれV18P/A21D、またはV18P/F19D/A21D変異を含むように設計されており、前記任意の変異体の一例に相当し、このような変異体に内容が限定されるものではない。すなわち、V18P、F19D 、およびA21Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むものとそのコード配列は、本発明の範疇に含まれる。
【0028】
本発明による前記変異体は「生物学的に活性」が同等に維持される限度内でそのさらなる変異をさらに含むことができる。
【0029】
よって、本発明は、前記配列番号9または10の配列において、さらなる変異を含むことができる。具体的に、それぞれの配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相同性を有するものを用いることができる。このような配列は、コード配列によって製造される前記Aβ42ペプチド変異体の生物学的活性が同等のレベルで維持される配列が本発明の範疇に含まれるものである。
【0030】
より具体的に、Aβ42ペプチドのアミノ酸位置18~21においてさらなる変異を含むことができるように、前記配列番号9または10の配列において、配列改変または設計することができる。このような配列は、少なくとも80%以上の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相同性を有するものであって、製造されたAβ42ペプチド変異体の生物学的活性が同等のレベルで維持される配列が本発明の範疇に含まれることができる。
【0031】
本発明による具体的な実施態様によれば、Aβ42ペプチド変異体は、以下からなる群から選択されるいずれか一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
Aβ(V18P/A21D):DAEFRHDSGYEVHHQKLPFFDEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号11)
Aβ(V18P/F19D/A21D):DAEFRHDSGYEVHHQKLPDFDEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号12)
【0033】
本発明では、前で述べたように、V18P、F19D、またはA21Dのそれぞれの変異、これらの2つの組み合わせ変異、3つの組み合わせ変異を全部含む。必要に応じて、上述の変異を含むと同時に配列番号11または12に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相同性を有する配列も本発明の範疇に含まれることができる。
【0034】
本発明において、Aβペプチド変異体および/またはAβ42ペプチド変異体は、TVIVITLVMLKK(配列番号13)の配列を配列末端にさらに含むことができる(以下の実施例において「KK」と略して表す)。このような配列は、膜(membrane)上でAβ変異体をγ-セクレターゼ(γ-secretase)によって細胞外空間(extracellular space)に分泌されるようにする。前記配列番号13をコードする配列として、例示的に配列番号14が本発明による遺伝子構築物にさらに含むことができ、変異体をコードする配列の後ろに位置することができる。
【0035】
本発明による遺伝子構築物は、神経における発現および/または投与を目的とする。具体的には、神経組織、より具体的には、神経細胞、星状細胞(Astrocyte)、小膠細胞(Microglia)、希突起膠細胞(Oligodendrocyte)などを含む脳で発現する細胞における発現を目的とする。
【0036】
上記発現において、Aβペプチド変異体は、細胞外空間(Extracellular space)で発現されることがより好ましい。このような発現により、老人斑の主要成分である凝集アミロイド-βタンパク質(Aβ)の細胞外での蓄積を防ぐことができる。
【0037】
本発明において、Aβペプチド変異体をコードするコード配列には、γセクレターゼcleavageをコードする配列を含んでもよい。そのようなγセレクターゼcleavageの例示的な配列は配列番号15に示され、それをコードする配列は配列番号16に示されている。γセクレターゼcleavageの配列を介してAβペプチド変異体の場合は、細胞外空間(Extracellular space)で発現することができ、これにより、細胞外空間(Extracellular space)での上記Aβペプチド変異体の発現を通じて疾患の治療効果を達成することができる。
【0038】
本明細書で使用する用語「作動可能に連結された」とは、ヌクレオチド発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、または転写調節因子結合部位のアレイ)と別のヌクレオチドとの間の機能的な結合を意味する。前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写および/または解読を調節することができる。
【0039】
本発明による遺伝子構築物は、一つ以上のプロモーターの制御下にAβペプチド変異体を発現することができる。
【0040】
本発明において、プロモーター配列は、一般的にベクター発現にて用いられるプロモーター配列、神経細胞に特異的に知られているプロモーター配列または過発現を目的とするプロモーター配列などを含むことができる。例えば、一般的なプロモーター配列としてCMV(サイトメガロウイルス:cytomegalo virus)プロモーター、アデノウィルス後期プロモーター、ワクシニアウィルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、ヒトIL-2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL-4遺伝子のプロモーター、ヒトリンホトキシン遺伝子のプロモーター、ヒトGM-CSF遺伝子のプロモーターなどを用いることができる。
【0041】
特に、本発明において、プロモーター配列には、神経特異的に知られているプロモーター配列を含んでもよい。例えば、神経特異的プロモーターを用いたヒト シナプシンI(hSyn)プロモーター(例えば、配列番号17)、マウス カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)プロモーター(例えば、配列番号18)、ラット チューブリンαI(rat tubulin alpha I)(Tuba1a)プロモーター(例えば、配列番号19)、ラット 神経特異エノラーゼ(rat neuron-specific enolase)(NSE)(例えば、配列番号20)、およびヒト 血小板由来成長因子-β鎖(human platelet-derived growth factor-beta chain)(PDGF)プロモーター(例:例えば、配列番号21)等を用いることができる。
【0042】
神経特異的プロモーターによって制御される遺伝子は、他の組織の細胞では発現しないが、ほとんどの、またはすべての神経細胞で発現する。このような神経細胞は、単に神経細胞だけでなく、星状細胞(Astrocyte)、ミクログリア細胞(Microglia)、希突起膠細胞(Oligodendrocyte)など、脳などの神経組織に含まれる細胞を含むことができる。
【0043】
過剰発現プロモーターとして、EF-1αプロモーター(例えば、配列番号22)、CAGプロモーター(例えば、配列番号23)、CMVプロモーター(例えば、配列番号24)などが用いられる。
【0044】
好ましくは、プロモーターは、CAG、CaMKII、ヒト シナプシンI(hSyn)プロモーターであってもよい。
【0045】
また、本発明による遺伝子構築物は、一つ以上の適切な転写開始、転写終結、エンハンサー配列、効率的なRNA処理シグナル、例えば、細胞質のmRNAを安定化させるスプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル、例えば、コザック(Kozak)配列;翻訳効率を増大させる配列またはWPRE;mRNA安定性を増大させる配列;および必要に応じてコードされた生成物の分泌を増大させる配列などを含有することができる。
【0046】
例えば、本発明による遺伝子構築物は、また、エンハンサーを含むことができる。このようなエンハンサーは、CMVエンハンサー、WPREエンハンサー、HPREエンハンサー、CTEエンハンサー、またはその誘導体またはハイブリッドを含むが、これらに限定されないウィルスエンハンサーである。
【0047】
また、本発明による遺伝子構築物は、コザック(Kozak)配列を含むことができる。
【0048】
パッケージングシグナルは、5´逆方向末端反復(ITR)および3´ITRであってもよい。例えば、遺伝子構築物は、AAVベクターで使用するためのAAV ITR配列を含む。一具体例において、ITRは、カプシドを供給することとは相違するAAVに由来する。好ましい一具体例において、ITR配列は、AAV2に由来したり、便宜上および規制の承認を加速化するために使用したりすることができる、それ(ITR)が欠失したバージョンである。しかし、他のAAV供給源に由来するITRが選択されてもよい。ITRの供給源がAAV2に由来し、AAVカプシドがまた他のAAV供給源に由来する場合に、その結果のベクターは、偽型(pseudotype)と命令されてもよい。典型的に、AAVベクターゲノムは、AAV5´ITR、本発明による任意のコード配列および任意の調節配列、およびAAV3´ITRを含む。しかし、要素の他の配置形態も適合することができる。ITRと命名されるD配列および末端分離部位(terminal resolution site)(trs)が欠失している5´ITRの短縮バージョンが記述された。他の具体例において、全長AAV5´および3´ITRが用いられた。
【0049】
一部の具現例において、調節配列は、ポリアデニル化(ポリA)シグナルを含む。一部の具現例において、ポリAシグナルは、ウシ(bovine)成長ホルモンポリアデニル化(bovine growth hormone polyadenylation、bGHポリA)シグナル、小ポリA(small polyA、SPA)シグナル、ヒト成長ホルモンポリアデニル化(human growth hormone polyadenylation、hGHポリA)シグナル、SV40ポリAシグナル、SV40後期(late)ポリAシグナル、またはその誘導体またはハイブリッドである。
【0050】
本発明による遺伝子構築物は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含むことができる。シグナルペプチドは、適切な折り畳みまたは生成を促進する任意のシグナルペプチドであってもよく、細胞膜へのその移動を助けるシグナル配列であってもよい。好ましい具現例において、シグナルペプチドは、本願に開示された任意のシグナルペプチドであってもよい。具体的には、APP(アミロイド前駆体タンパク質:amyloid precursor protein)、ヒト血清アルブミン(Human serum albumin)、インターロイキン-2(interleukin-2)、CD5、イムノグロブリンκ軽鎖(Immunoglobulin Kappa light chain)、Gaussiaルシフェラーゼ(Luciferase)、トリプシノーゲン(trypsinogen)、およびプロラクチン(prolactin)からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0051】
これらのシグナル配列を有するAβペプチド変異体をコードする配列が小胞体において良好に発現されるように役割を果たす。
【0052】
本発明による遺伝子構築物は、構築物の同一性を維持する限りにおいて改変が可能である。すなわち、用語「同一の」またはパーセント「同一性」は、二以上の核酸またはポリペプチド配列の脈絡において、以下の記述された基本媒介変数を用いたBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使って、または手動アライメントおよび目視検査(例えば、NCBIウェブサイトなど参照)によって測定されたように、明示された領域(例えば、比較ウィンドウまたは指定された領域に亘って最大一致に対して比較および整列されたとき、本願にて提供された改変されたORFのいずれか)に亘って同一または同様のアミノ酸残基またはヌクレオチドの明示されたパーセント(すなわち、好ましくは、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはより高い同一性)を有する二以上の配列または部分配列を指す。すなわち、目的とするAβペプチド変異体の作用効果を維持する限度内で遺伝子構築物の改変は、本発明の範疇内に含まれる。
【0053】
本発明は、前記遺伝子構築物を含む組み換え発現ベクターを提供する。本願に記載される遺伝子構築物および発現ベクターは、神経変性疾患の治療および改善のために使用されることができる。
【0054】
組み換え発現ベクターは、遺伝子構築物をコードする核酸が挿入されてもよく、宿主細胞内で前記核酸を発現できる当分野に公知されたプラスミド、ウィルスベクターまたはその他の媒介体を意味する。好ましくは、ウィルスベクターであってもよい。前記ウィルスベクターとしては、これに制限されないが、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクター、ヘルペスウィルスベクター、アビポックスウィルスベクター、レンチウィルスベクターなどがある。特に、レンチウィルスまたはアデノ随伴ウィルス(AAV)を用いる方法が好ましい。
【0055】
アデノ-随伴ウィルス(AAV)ウィルスベクターは、その中に標的細胞への送達のために核酸配列がパッケージングされているAAVタンパク質カプシドを有するAAV DNase-耐性粒子である。AAVカプシドは、選択されたAAVによって略1:1:10~1:1:20の比率で正二十面体対称に配置された、60個のカプシド(cap)タンパク質サブユニット、VP1、VP2、およびVP3からなる。AAVカプシドは、変種を含み、技術分野に公知されているものから選択されてもよい。
【0056】
「rAAV」は、少なくとも一つのAAVカプシドタンパク質および異種ポリヌクレオチド(すなわち、野生型AAVゲノムでないポリヌクレオチド、例えば、哺乳動物細胞に送達されるトランスジーン)を含むカプシド化された(encapsidated)ポリヌクレオチドrAAVベクターからなるウィルス粒子を指す。rAAV粒子は、任意の改変、誘導体または偽型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10またはこれらの誘導体/改変/偽型)を含む任意のAAV血清型を有することができる。このようなAAV血清型および誘導体/改変/偽型およびこのような血清型/誘導体/改変/偽型の生成方法は、当業界に公知されている(例えば、文献[Asokan et al.、Mol.Ther.20(4):699-708(2012)]参考)。
【0057】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15およびAAV.HSC16から選択されたAAVカプシド血清型からのカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、またはAAV.HSC16カプシドタンパク質の誘導体、改変または偽型であるカプシドタンパク質を含む。
【0058】
本開示内容のrAAV粒子は、任意の血清型または血清型の任意の組み合わせ(例えば、2個以上の血清型を含む、例えば、rAAV2、rAAV8およびrAAV9粒子のうち、2個以上を含むrAAV粒子の集団)を有してもよい。一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAV1、rAAV2、rAAV3、rAAV4、rAAV5、rAAV6、rAAV7、rAAV8、rAAV9、rAAV10または他のrAAV粒子またはこれら二以上の組み合わせである。一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAV8またはrAAV9粒子である。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15およびAAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15およびAAV.HSC16から選択された2個以上の血清型からのカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15およびAAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15およびAAV.HSC16カプシドタンパク質から選択された2個以上の血清型の誘導体、改変または偽型であるカプシドタンパク質を含む。
【0059】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、およびAAV16からなる群から選択された血清型またはこれらの誘導体、改変または偽型のAAVカプシドタンパク質を有する。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV8、AAV9の血清型またはこれらの誘導体、改変または偽型のAAVカプシドタンパク質を有する。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV7、AAV8、AAV9、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eBおよびAAV.7m8からなる群から選択された血清型のAAVカプシドタンパク質を有する。
【0060】
好ましくは、rAAVは、AAV2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eBおよびAAV.7m8からなる群から選択されるいずれか一つである。
【0061】
一実施態様によれば、本発明によるAAVベクターは、血液-脳-腸壁(BBB)を通過することができるものである。このような本発明によるAAVは、CNS内の神経細胞に効率的で、広範囲に形質導入することに使用されることができる。
【0062】
アデノ-随伴ウィルス(AAV)は、非分裂細胞に感染することができ、多様な種類の細胞に感染できる能力を有するため、本発明の遺伝子送達システムとして適している。AAVベクターの製造および用途に関する詳細な説明は、米国特許第5,139,941号および同第4,797,368号に詳しく開示されている。
【0063】
有利なことには、組み換えAAV2は、宿主有機体において最小限の免疫反応を誘発し、ベクター投与後、少なくとも1年間持続できる長期のトランス遺伝子発現を媒介する。
【0064】
本願にて使用される用語「組み換えAAV(rAAV)ベクター」は、少なくとも一つの末端反復配列を含有する組み換えAAV-由来の核酸を意味する。
【0065】
前記遺伝子構築物を含むベクターの好ましい具現例を
図1に示す。
【0066】
具体的には、
図1によれば、CMV enhancerにhSynプロモーターを処理し、一例としてV18P/F19D/A21D変異を有するAβ42変異体が含まれるように発現ベクターを構築することができる。
【0067】
前記遺伝子構築物を含むベクターの他の好ましい具現例を
図2に示す。具体的には、
図2によれば、CMV enhancerにhSynプロモーターを処理し、前述の変異を有するAβ変異体が含まれるように発現ベクターを構築することができる。
【0068】
本発明は、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)に基づいてV689P、F690D、およびA692Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むペプチドを提供する。
【0069】
本発明は、また、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0070】
本発明は、Aβ42に基づいてV18P、F19D、およびA21Dからなる群から選択されるいずれか一つ以上の変異を含むペプチドを提供する。
【0071】
本発明は、また、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0072】
本発明による前記Aβ変異体、具体的にアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein)の変異体、Aβ42変異体のペプチド配列およびこれをコードするポリヌクレオチド配列は、前で検討したとおりである。
【0073】
前記ペプチド配列は、wt Aβポリメリゼーション(polymerization)を遅延させたり妨害し、毒性を減少させることによって神経変性疾患に優れた予防、改善および治療効果を奏する。
【0074】
本発明は、前記遺伝子構築物または前記組み換え発現ベクター、および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0075】
本発明は、前記遺伝子構築物および/または組み換え発現ベクターを含む神経変性疾患の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明において、神経変性疾患は、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調症、神経セロイド脂褐素症、バッテン病、牛海綿状脳症(BSE)、カナバン病、脳性麻痺、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、前頭側頭葉変性症、ゴーシェ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、リソソーム蓄積症、神経ボレリア症、マシャド・ジョセフ病、運動ニューロン病、多系統萎縮症、多発性硬化症、多種スルファターゼ欠損症、ムコリピド症、ナルコレプシー、ニーマン・ピック病C型、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ病、ピック病、ポンペ病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、スピルマイヤー・フォークト・シェーグレン・バッテン病、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄梅毒、およびテイ・サックス病からなる群から選択されるいずれか一つ以上である。
【0077】
好ましい一具現例において、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病および運動ニューロン疾患からなる群から選択されるいずれか一つ以上である。より好ましくは、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病である。
【0078】
そこで、本発明は、対象体において神経変性疾患を治療する、予防する、緩和する、または対象体において神経再生および/または生存を促進するための方法を提供する。この方法は、このような治療を必要とする対象体に前記遺伝子構築物、または組み換え発現ベクターの治療有効量を投与する段階を含む。
【0079】
遺伝子構築物、または組み換え発現ベクターを薬剤に使用することができ、これは神経変性疾患を治療する、緩和する、若しくは予防するための、または神経再生および/または生存を促進するための単独治療法として使用され得ることが理解できるであろう。代替として、本発明による遺伝子構築物または組み換え発現ベクターは、神経変性疾患を治療する、緩和する、若しくは予防するための、または神経再生および/または生存を促進するための公知の治療法に加えて、またはこれと組み合わせて使用することができる。
【0080】
また、本発明は、神経変性疾患の治療に使用するための遺伝子構築物または組み換え発現ベクターを提供する。
【0081】
また、本発明は、神経変性疾患の治療に使用するための薬剤の製造において、遺伝子構築物または組み換え発現ベクターの用途を提供する。
【0082】
本発明による遺伝子構築物または組み換え発現ベクターは、特に組成物が使用される方式によってさまざまな相違する形態を有する組成物から組み合わせてもよい。したがって、例えば、組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液の形態であってもよく、または治療を必要とするヒトまたは動物に投与し得る任意の他の適合する形態であってもよい。本発明による薬剤の担体は、これが与えられる対象体によって容易に許容される必要があることが理解されるであろう。
【0083】
好ましい一具現例において、本発明による薬剤は、血流、神経内への注射または直接治療を必要とする部位内への注射によって対象体に投与してもよい。例えば、薬剤は、血液-脳-腸壁を通過するように構成される。注射は、静脈内(ボーラスまたは注入)、皮下(ボーラスまたは注入)、または皮内(ボーラスまたは注入)であってもよい。
【0084】
必要とされる遺伝子構築物または組み換え発現ベクターの量は、その生物学的活性および生体利用率によって決定されます。これは再び投与方式、遺伝子構築物または組み換え発現ベクターの物理化学的特性およびこれを単独治療法または組み合わせ治療法として使用するか否かに依存することが理解されるであろう。投与頻度はまた治療を受ける対象体内で循環ポリペプチドの半減期によっても影響されるはずである。投与される最適な投与量は、当業者によって決定されることができ、使用中の特定の遺伝子構築物または組み換え発現ベクター、医薬組成物の強さ、投与方式、および障害の進行または段階に応じて変えることができる。治療を受ける特定の対象体に応じて、対象体の年齢、体重、性別、食餌、および投与時点を含む追加の要因によって投与量を調整する必要がある。
【0085】
一般に、使用される遺伝子構築物または組み換え発現ベクターに応じて、本発明による構築物またはベクターの、0.001μg/体重kg~10mg/体重kg、または0.01μg/体重kg~1mg/体重kgの1日用量が神経変性疾患を治療する、緩和する、または予防するために使用されることができる。
【0086】
遺伝子構築物または組み換え発現ベクターは、疾患および/または障害の発症前、発症中、または発症後に投与することができる。
【0087】
いわゆる製薬産業において、通常採択される公知の手順(例えば、in vivo実験、臨床試験など)は、本発明による遺伝子構築物または組み換え発現ベクターの特定の剤形物および正確な治療療法(例えば、製剤の1日の用量および投与頻度)を形成するために使用することができる。
【0088】
本発明において「対象体」は、脊髄動物、哺乳類、または家畜であってもよい。したがって、本発明による組成物および薬剤は、任意の哺乳類、例えば、家畜(例えば、馬)、愛玩動物の治療に使用してもよく、または他の獣医学的への適用に使用されてもよい。しかし、最も好ましくは、対象体は、ヒトである。
【0089】
遺伝子構築物、組み換え発現ベクターまたは医薬組成物の「治療有効量」とは、対象体に投与される場合、神経変性疾患を治療したり、所望の効果、いわゆる神経再生および/または生存の促進を生成したりするために必要な上述の量の任意の量である。
【0090】
例えば、使用される遺伝子構築物、組み換え発現ベクターまたは医薬組成物の治療有効量は、約0.01mg~約800mg、および好ましくは、約0.01mg~約500mgであってもよい。遺伝子構築物、組み換え発現ベクターまたは医薬組成物の量が約0.1mg~約250mgであることが好ましいい。
【0091】
本願における「薬学的に許容可能な担体」とは、医薬組成物の剤形化に有用な当業者に知られている任意の公知の化合物または公知の化合物の組み合わせである。
【0092】
薬学的担体は、液体であることができ、医薬組成物は、溶液の形態である。液体担体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル剤および加圧組成物を製造することに使用される。本発明による遺伝子構築物または組み換え発現ベクターは、薬学的に許容可能な液体担体、例えば、水、有機溶媒、両方の混合物または薬学的に許容可能なオイルまたは脂質中に溶解または懸濁されてもよい。液体担体は、他の適合する薬学的添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、風味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色料、粘度調整剤、安定化剤または浸透圧調節剤を含有することができる。経口および非経口投与のための液体担体の適切な例としては、水(部分的には、前記のような添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有する)、アルコール(1価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを含む)およびその誘導体、およびオイル(例えば、分別されたココナッツ油およびアラキスオイル)が含まれる。非経口投与をするために、担体はまた油性エステル、例えば、エチルオレエートおよびイソプロピルミリステートであってもよい。滅菌液体担体は、非経口投与のための滅菌液体形態の組成物において有用である。加圧組成物のための液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容可能な噴霧剤であってもよい。
【0093】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、脳幹、筋肉内、硬膜内、硬膜外、脊髄腔内、腹腔内、静脈内および皮下注射により用いられてもよい。遺伝子構築物または組み換え発現ベクターは、投与時、滅菌水、食塩水、または他の適切な滅菌注射用媒質を用いて溶解または懸濁しうる滅菌固体組成物として製造されることができる。
【0094】
本発明の遺伝子構築物、組み換え発現ベクターおよび医薬組成物は、他の溶質または懸濁化剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な食塩水またはグルコース)、胆汁塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびエチレンオキシドと共重合したその無水物)などを含有する滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与されてもよい。本発明による遺伝子構築物、組み換え発現ベクターまたは医薬組成物はまた液体または固体組成物の形態で経口投与されてもよい。経口投与に適した組成物としては、丸剤、カプセル、顆粒、錠剤、および粉末などの固体形態、および溶液、シロップ、エリキシル剤、および懸濁液などの液体形態が含まれる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョン、および懸濁液が含まれる。
【0095】
本願(添付された全ての請求範囲、要約および図面を含む)に挙げられた全ての特性および/またはこのように開示された全ての方法または工程の全ての段階は、このような特性および/または段階の少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせを除いて、任意の組み合わせにより任意の前記様態と組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0096】
本発明の遺伝子構築物は、Aβ変異体を分泌し、人体内でwt Aβポリメリゼーション(polymerization)を遅延または妨害し、毒性を軽減させることにより神経変性疾患に優れた予防、改善および治療効果を示す。
【0097】
本発明の理解を手助けるために、また、その実施形態が実際にどのように実行され得るかを示すために、例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】Aβ42ペプチド変異体のヌクレオチド配列を含むAAVベクターの一例を示す図である。一例として、遺伝子構築物はhSynプロモーターを含み、Aβ42ペプチド変異体のヌクレオチド配列を含む。
【
図2】Aβペプチド変異体のヌクレオチド配列を含むAAVベクターの一例を示す図である。一例として、遺伝子構築物はhSynプロモーターを含み、Aβペプチド変異体のヌクレオチド配列を含む。
【
図3】ThT分析における凝集体の生成を確認した結果を示す。
【
図4】競合する凝集体の生成の結果を確認した結果を示す。
【
図5】Aβ42(V18P/F19D/A21D)変異体の原繊維(fibrils)分解を確認した結果を示す。
【
図6】Aβ42(V18P/F19D/A21D)変異体の細胞毒性を確認した結果を示す。
【
図7】pAAV-hSyn-V18P/A21DまたはpAAV-hSyn-V18P/F19D/A21DをN2a細胞にトランスフェクトした後、培地上に分泌されるAβ分泌を測定するために免疫沈降反応(immunoprecipitation)を行った結果を示す。
【
図8】本発明によるペプチド配列を含むAAV投与によりAβ42(V18P/F19D/A21D、(6E10、緑色))変異と内因性マウスAPP(Y188、赤色)に対する共染色による共局在性(colocalization)を確認した結果を示す。
【
図9】本発明によるペプチド配列を含むAAV投与によりプラークの負荷の変化を確認した結果を示す。
【
図10】本発明によるペプチド配列を含むAAV投与により小膠細胞と星状細胞の変化を確認した結果を示す。
【
図11】本発明によるペプチド配列を含むAAV投与により小膠細胞と星状細胞の変化を数値化した結果を示す。
【
図12】Morris Water Maze testにて本発明によるペプチド配列を含むAAV投与により治療効果を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、本発明の実施例により詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
実施例1.Aβ42変異を含むAAVベクターデザイン
Aβ42ペプチド変異体のヌクレオチド配列を含むAAVベクターを製造し、その概略図を
図1に示す。
【0101】
コザック(Kozak)配列とGaussia ルシフェラーゼシグナルペプチド(luciferase signal peptide)(GLSP)DNAがAβ-CTF(C-末端フラグメント:C-terminal fragment)のN-末端(N-terminus)に結合し、制限酵素HindIIIおよびEcoRVを用いて切断することができるように、CAGプロモーターおよびWPRE配列を含むpAAVベクターにクローニングし、制限酵素pAAV-GLSP-Aβ-CTFを製造した。次いで、CMVエンハンサーを増幅し、制限酵素XhoIとApaIを用いて切断し、pAAV-hSyn-eGFPベクターに組み込み、pAAV-CMV enhancer-hSyn-eGFPを作製した。次に、CMVエンハンサーとhSynプロモーターをpAAV-CMV enhancer-hSyn-eGFPから増幅し、制限酵素KpnIおよびHindIIIを用いて切断し、WPREとpolyA配列を有するpAAVベクターにクローニングし、pAAV-CMV enhancer-hSyn-WPRE-polyAベクターを製造した。最後に、pAAV-GLSP-Aβ-CTFからAβの変異体であるAβ(V18P/A21D)(配列番号11)またはAβ(V18P/F19D/A21D)(配列番号12)を発現させるDNAを増幅し、制限酵素HindIIIとEcoRVを用いて切断し、pAAV-CMV enhancer-hSyn-WPRE-polyAにクローニングし、pAAV-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/A21D)-KK-WPRE-polyA、またはpAAV-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/F19D/A21D)-KK-WPRE-polyAをそれぞれ製造した。
【0102】
上記工程の製造工程と同様に、表1に示すように、追加のAβ42ペプチドの変異体のヌクレオチド配列を含むAAVベクターと、Aβ(APP)ペプチドの変異体のヌクレオチド配列のヌクレオチド配列を含むAAVベクターを設計した(AAV-PhP.eBを使用)。
【0103】
【0104】
実施例2.In silico分析
AGGRESCANプログラムを用いて変異発生に伴うポリペプチドの凝集が起こり得るホットスポット(Hot spot)(各残基当たりの凝集傾向尺度:An aggregation-propensity value per each residue)を分析した。
【0105】
具体的に、AGGRESCANは、in vivo実験から派生した天然アミノ酸の凝集傾向尺度と短い特定の配列がタンパク質の凝集を調節するという仮定に基づいている。このアルゴリズムは、疾病関連タンパク質の凝集に関連する一連のタンパク質断片を識別し、遺伝的突然変異が沈着傾向に及ぼす影響を予測する。また、球状タンパク質、基本的に折り畳まれていないポリペプチド、アミロイド生成タンパク質およびバクテリアinclusion bodyで発見されるタンパク質により示される異なる凝集特性に対する結果もまた提供することができる。
【0106】
前記プログラムを用いた分析により、Aβ42ペプチド配列のV18P/A21D変異、V18P/F19D/A21D変異がWTと対比したとき、凝集レベルを有意に低下させることができる変異因子に該当することが確認された。すなわち、V18P/A21D変異、V18P/F19D/A21D変異の場合、凝集抑制に非常に優れた効果を示した。具体的には、V18P/A21D変異およびV18P/F19D/A21Dでは、バリン(V)およびフェニルアラニン(F)は、βシート形態を採用しようとするペプチド傾向を減少させるためにβシート遮断アミノ酸としてよく知られているプロリン(P)およびアスパラギン酸(D)に置換され、アラニンも荷電残基であるアスパラギン酸(D)酸に置換して溶解度を高めると、優れた効果を示すことが確認された。
【0107】
実施例3.Aβ自己凝集とWTペプチドとの競合に関する疫学の確認
【0108】
(1)wt Aβ42または変異ペプチドのストックの製造
合成Aβ42WTまたは変異ペプチドは、Biomatikで購入した。凝集体のないAβ42WTまたは変異ペプチドのストック溶液を用意するため、凍結乾燥したAβ42ペプチド(WT、V18P/F19D/A21D変異)をHFIP(Hexafluoroisopropanol)に溶解させた。Aβ-HFIP溶液を室温(RT)で30分間培養した後、アリコートに分割し、HFIPをヒュームフードで一晩蒸発させた後、1時間SpeedVacに移動し、HFIPの残りの痕跡を除去した。ペプチドフィルムを含むチューブを使用する時まで-20℃で乾燥剤の上で保管した。実験に使用する直前に、凍結乾燥したペプチドを0.1%のNH4OHに最終濃度100uMまで溶解させ、水槽超音波プロセッサで10分間超音波処理した。
【0109】
(2)Aβ自己凝集とWTペプチドとの競合に関する疫学をテストするためのThT分析
Aβ42WTまたは変異ペプチドの自己凝集を50μM チオフラビン(Thioflavin)T(ThT)を含むPBSで10μMの開始濃度でテストした。ThT蛍光を励起(Excitation)波長440nmおよび発光(Emission)波長485nmでBiotek Synergy H1を用いて測定した。37℃で培養し、蛍光を読み取る前に10分毎に5秒間振とうした。変異体とAβ42WTとの間の競合は、同様に行われたが、混合物の各ペプチドに対して開始濃度10uMを用いており(1:1、WT:変異体)、エラーバーは、反復測定値の標準ばらつきを示す。
【0110】
【0111】
図3は、ThT分析における凝集体の生成を確認したものであり、
図4は、競合する凝集体の生成の結果を確認した結果を示し、このような結果は、Aβ42ペプチド変異体がAβ42WTの繊維形成(fibrillization)を減少させることを示す。具体的に、
図3にて確認できるように、Aβ42WTと比較し、Aβ42ペプチド変異体の自己凝集のためのThioflavine-T(ThT)分析は、3つの変異のうち、如何なるものも反応中に自己凝集を示さなかった。また、比較のため、Aβ42WTは、7時間以内にThT結合の頂点に達し、凝集反応を引き超すことが示された。
【0112】
図4から分かるように、Aβ42WT凝集阻害を試験する競合アッセイにおいて、各Aβ42ペプチド変異体をAβ42WTと1:1で混合し、ThTと共に培養したとき、Aβ42(V18P/F19D/A21D)はAβ42 WTペプチドの凝集を完全に弱めた。
【0113】
前記の結果から本発明によるAβペプチド変異体は、wt Aβを妨害または阻害し、既存の凝集したAβプラーク(plaqu)の解体(disassembly)により優れた疾患の改善および治療効果を示すことが確認された。
【0114】
実施例4.Aβ42(V18P/F19D/A21D)変異の原繊維(fibrils)分解を確認
Aβ42WTを多様な濃度の単量体V18P/F19D/A21Dペプチドに露出させ、ThT蛍光の濃度依存性変化を確認した。具体的に、Aβ42WTおよび/または変異ペプチドの自己凝集を5μM チオフラビン(Thioflavin)T(ThT)を含むPBSにてAβ42WTの10μMに対して変異ペプチド 5μM、10μMおよび20μMを濃度別に処理し、テストした(1:1比率で混合)。ThT蛍光を励起(Excitation)波長440nmおよび発光(Emission)波長485nmでBiotek Synergy H1を用いて測定した。37℃で培養し、蛍光は37℃で40時間培養の間、10時間毎に振とうせずに測定した。エラーバーは、反復測定値の標準ばらつきを示す。
【0115】
【0116】
図5により確認されるように、wt Aβ42原繊維単独に比べて、V18P/F19D/A21Dペプチドとの培養は、ThT蛍光の濃度依存性の減少を生成した。
【0117】
このような結果は、本発明によるAβ42変異体がwt Aβ42原繊維を分解することによってAβ42変異体が脳で発現されたとき、既存に形成されたAβプラークを除去できることを示す。
【0118】
実施例5.Aβ42変異の細胞毒性の確認
MTS分析を通じて、Aβ42の細胞毒性を確認した。
【0119】
具体的に、MTS分析をするために、1)Aβ42WT、2)V18P/A21D変異配列、3)V18P/F19D/A21D変異配列、4)Aβ42WT+V18P/A21D変異配列、5)Aβ42WT+V18P/F19D/A21D変異配列を100μMずつ、それぞれ4℃で24時間培養し、オリゴマーを形成した。
【0120】
N2a細胞を96ウェルプレートに分注した後に、10uLの各製剤のオリゴマー(wt Aβ単独、変異体単独またはwt Aβ+変異体)を90uLの培養培地に添加し、最終製剤の濃度を10uMとした。細胞生存力はMTS分析を使用し、処理後24時間後、決定した。具体的には、20uLのAQueous One Solution Reagentを培養ウェルに直接添加し、5%のCO2雰囲気下で37℃で2時間培養した後、分光光度計を用いて490nmで吸光度を記録して分析を行った。
【0121】
【0122】
図6を通じて確認できるように、Aβ42WTとは異なりV18P/F19D/A21DやV18P/A21D変異は、いすれもそれ自体でN2a細胞の毒性を起こさないことを確認し、これは対照群と同程度に該当し、細胞毒性がないことが確認された。
【0123】
対照的に、オリゴマーAβ42形成中、変異体(V18P/F19D/A21DまたはV18P/A21D)とwt Aβ42の共培養は、Aβ42WTよりも良好な細胞生存率を示した(ANOVA、*p<0.05、**p<0.01.、***p<0.001、****p<0.0001。全てのデータは、平均±SEMで表される)。
【0124】
実施例6.条件培地におけるAβ免疫沈降の確認
上記実施例1にて製造したpAAV-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/A21D)-KK-WPRE-polyA、またはpAAV-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/F19D/A21D)-KK-WPRE-polyAベクターを用いて形質転換を行った。次いで、トランスフェクトされたN2a細胞(6mL)の条件培地を、4℃で一晩ローターでDynabead-6E10複合体と共にインキュベートした。翌日、磁気分離を用いてビーズを集めて上清を除去し、ビーズを0.02%Tween-20を含むPBSで3回洗浄した。免疫沈降複合体を50mMグリシン(pH2.8)で溶出し、試料をヒトAβに反応する6E10抗体を用いて確認した。
【0125】
【0126】
図7から分かるように、本発明による変異体の投与は、免疫沈降(immunoprecipitation)結果においてAβ分泌の測定結果が明確に示された。
【0127】
これらの結果は、神経細胞外で起こるAβ凝集(aggregation)またはAβ斑の形成に対する治療効果を示すためにAAVが適切に変異体を分泌する結果を示す。
【0128】
実施例7.Aβ42変異を含むAAVベクター投与による治療効果の確認
【0129】
(1)動物モデル
3×Tg ADマウスの脳または静脈に、前記実施例1にて製造されたAAV(pAAV-CMV enhancer-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/F19D/A21D)-KK-WPRE-polyA)と対照群AAV(pAAV-CMV enhancer-hSyn-WPRE-polyA)をそれぞれ注入し、AD関連マーカーを観察した。ウィルス注射後、9か月または12か月後に3×Tg ADマウスは、行動テストを受け、テストが終わった時、動物を犠牲させた後にそれらの脳を、さらなる生化学的および免疫組織化学的分析のために処理した。
【0130】
(2)Aβ生化学および免疫組織化学の分析
プラーク負荷は、脳沈殿物の抽出に用いられるグアニジンを用いて前頭葉皮質からAβ-40と-42を抽出し、Aβ ELISAにより定量的なAβ40と42蓄積量を確認した。アミロイド斑は、肥大性星状細胞および小膠細胞が、コア化された沈着物を取り囲むように移動または分裂する明確な神経免疫応答を誘導する。GFAP免疫染色は星状細胞を検出するために用いられ、ミクログリア細胞(microglia)の検出にはIba1が用いられた。
【0131】
(3)Aβ(V18P/F19D/A21D)変異と内因性マウスAPP(Y188、赤色)に対する共染色を通じた共局在性(colocalization)の確認と小膠細胞と星状細胞の変化を確認
生後12ヶ月の3×Tg ADマウスを犠牲にした後、脳切片をトリス緩衝食塩水(TBS)で濯いだ後に、0.1% Triton X-100(TBS-T)を含むTBSで遮断し、GFAP抗体、Iba1抗体、またはヒトAβ抗体-6E10とマウスAβ抗体-Y188と共に4℃で一晩培養した後、セクションをAlexa Fluor-568 Gt抗-RbおよびAlexa Fluor-488 Gt抗-マウス2次抗体と共にインキュベーションした後に蛍光顕微鏡で確認した。
【0132】
pAAV-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/F19D/A21D)-KK-WPRE-polyAに伝達された変異体Aβ(V18P/F19D/A21D;6E10、緑色)と内因性マウスAPP(Y188、赤色)に対する共染色を通じて皮質神経細胞で変異ペプチドの膜伝達を確認し、これを
図8に示した。
【0133】
図8を通じて確認できるように、伝達された変異体Aβ(V18P/F19D/A21D;6E10、緑色)と内因性マウスAPP(Y188、赤色)が共局在性(colocalization)を示すことを確認し、これを通じて皮質神経細胞からペプチドの膜へ送達されたことが確認された。
【0134】
プラーク負荷の変化を確認するため、pAAV-CMV enhancer-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/F19D/A21D)-KK-WPRE-polyA感染後、生後12ヶ月のマウスを犠牲にし、プラークの主要構成成分であるAβ40とAβ42の量の変化をELISAにより確認した。
図9に示すように、本発明によるAAV処理は、約78%のAβ40と64%のAβ42を減少させ、プラーク負荷の改善効果を示した(t-test、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。全てのデータは、平均±SEMで表される)。
【0135】
小膠細胞および星状細胞の変化を確認するために、pAAV-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/F19D/A21D)-KK-WPRE-polyA感染後、生後12ヶ月のマウスを犠牲にし、小膠細胞および星状細胞の変化を確認した。
【0136】
具体的に、免疫染色により小膠細胞および星状細胞の変化を確認した結果を
図10に示した。
【0137】
GFAP免疫染色(赤色)は、星状細胞を検出することに用いられ、Iba1(赤色)は、小膠細胞を感知することに用いられた。アミロイド斑は、顕著な神経免疫反応を誘発することにより、その反応に応じて肥大性星状細胞と小膠細胞が移動したり、周辺にコアのある堆積物に分化する。ほとんどの条件では、神経交叉の範囲の誘導は、アミロイド負荷の重症度に類似する。図面を通じて確認できるように、本発明によるAAVの処理は、小膠細胞および星状細胞に対して改善効果を示した。
【0138】
【0139】
図11から確認できるように、GFAPおよびIBA1染色によって占められた面積の定量化の結果は、本発明によるAAVの処理を通じて処理により 神経膠腫の焦点のサイズと周辺の細胞数が全部減少したことを達成したことを示した(t-test、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。全てのデータは、平均±SEMで表される)。
【0140】
(4)Morris Water Maze testを通じた空間知覚能力および記憶力改善効果を確認
マウスの視野からプラットフォームが見えないようにプラットフォームが1cm程沈む位の水を水槽に満たしてから、水槽の周囲にはマウスが見ることができる視覚的ヒントを付着した。マウスの動きは天井に取り付けられたカメラで撮影し、Any-maze systemを用いて分析した。
【0141】
Day1~4:トライアル(Trial)
所定の位置でマウス入水後にプラットフォームを探すように1分間探索させ、1分以内にマウスがプラットフォームを見つけると5秒間滞在することを確認してから、終了した。
【0142】
マウスが1分以内にプラットフォームを見つけられなかった場合には、プラットフォームに向かうように誘導(Training、10秒)し、1日合計3回繰り返した。
【0143】
プローブテスト(Probe test)
プラットフォームを除去した後、マウスを所定の位置で入水させてから1分間探索させ、プローブテスト(Probe test)でターゲット象限(target quadrant)に滞在した時間を比較した。
【0144】
3×Tgマウスは、アルツハイマー認知症モデルのマウスであって、認知機能と空間知覚能力が劣る。これを利用して認知機能が減少した3×Tgに比べて本発明によるペプチドをAAVウィルス伝達体で送達したマウスから認知機能が改善されたことを確認し、これを
図12に示した。
【0145】
Day1~4日までのトライアル経過によるプラットフォームを見つける時間は、群間で差は見られなかった。しかし、
図12から確認できるように、Day5 プローブテスト(Probe test)でターゲット象限(target quadrant)に滞在したする時間がpAAV-hSyn-GLSP-Aβ(V18P/F19D/A21D)-KK-WPRE-polyAを処理した群において増加した結果が確認された。このような結果は、記憶力および空間知覚能力の改善を示すことを意味する(*:P<0.05、**:P<0.01)。
【0146】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施することができることが理解できるであろう。これに関連し、上述の実施形態はあらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。本発明の範囲は、上記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味および範囲、およびその均等の概念から導出されるすべての変更または変形形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aβペプチド変異体をコードするコード配列およびこれに作動可能に連結されたプロモーターを含む遺伝子構築物を
含む、神経変性疾患の予防または治療用の医薬組成物であって、
前記Aβペプチド変異体をコードするコード配列は、配列番号7のAβ42ペプチド配列に基づいてV18P、F19D、およびA21Dからなる群から選択される少なくとも一つの変異を含むペプチド配列をコードする配列である、医薬組成物。
【請求項2】
前記Aβペプチド変異体をコードするコード配列が、配列番号7のAβ42ペプチド配列に基づいてV18P/A21DまたはV18P/F19D/A21Dの変異を含むペプチド配列をコードする配列である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記Aβペプチド変異体をコードするコード配列は、配列番号9または10である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記Aβペプチド変異体は、配列番号11または12
に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列相同性を有する配列である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記プロモーターは、過剰発現プロモーターまたは神経特異的プロモーターである、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記プロモーターは、ヒトシナプシンI(SYN)プロモーター、マウスカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)プロモーター、ラットチューブリンαI(Ta1)プロモーター、ラット神経特異エノラーゼ(NSE)プロモーター、ヒト血小板由来成長因子-β鎖(PDGF)プロモーター、EF-1αプロモーター、CAGプロモーターおよびCMVプロモーターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項
5に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
前記プロモーター
は、それぞれ配列番号17、18または23
によって示された、ヒトシナプシンI(SYN)、CaMKIIまたはCAGプロモーターであ
る、請求項
6に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記遺伝子構築物は、エンハンサー配列、ポリアデニル化配列およびKozak配列からなる群から選択される少なくとも一つをさらに含むものである、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記遺伝子構築物は、γ-セクレターゼ切断をコードする配列をさらに含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記γ-セクレターゼ切断をコードする配列は、配列番号14である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記Aβペプチド変異体をコードするコード配列は、配列番号9または10であり、前記プロモーターは、配列番号17、18、または23によって示されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記遺伝子構築物
は、組み換え発現ベクターである、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
前記組み換え発現ベクターは、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクター、ヘルペスウィルスベクター、アビポックスウィルスベクターおよびレンチウィルスベクターからなる群から選択されるいずれか一つである、請求項12に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
前記組み換え発現ベクターは、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターであり、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15およびAAV.HSC16からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項13に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
前記神経変性疾患は、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調症、神経セロイド脂褐素症、バッテン病、牛海綿状脳症(BSE)、カナバン病、脳性麻痺、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、前頭側頭葉変性症、ゴーシェ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、リソソーム蓄積症、神経ボレリア症、マシャド・ジョセフ病、運動ニューロン病、多系統萎縮症、多発性硬化症、多種スルファターゼ欠損症、ムコリピド症、ナルコレプシー、ニーマン・ピック病C型、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ病、ピック病、ポンペ病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、スピルマイヤー・フォークト・シェーグレン・バッテン病、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄梅毒、およびテイ・サックス病からなる群から選択されるいずれか一
つである、請求項
1に記
載の医薬組成物。
【請求項16】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病である、請求項15に記載
の医薬組成物。
【請求項17】
前記Aβペプチド変異体は、細胞外空間で発現する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記Aβペプチド変異体は、凝集アミロイド-βタンパク質の細胞外での蓄積を防ぐ、請求項1に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】