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特表2024-505082ペーシングデバイスのためのコントローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ペーシングデバイスのためのコントローラ
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20240126BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240126BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
A61N1/362
A61B5/08
A61B5/00 102A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546201
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 GB2022050241
(87)【国際公開番号】W WO2022162388
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2101363.6
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522092000
【氏名又は名称】セリックス メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CERYX MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】チョーハン アショク シンハ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー グレアム ジョン
【テーマコード(参考)】
4C038
4C053
4C117
【Fターム(参考)】
4C038SS08
4C038SU01
4C038SV00
4C038SX08
4C053KK04
4C053KK07
4C117XB01
4C117XB04
4C117XD24
4C117XE06
4C117XE13
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE26
4C117XE33
4C117XE43
4C117XJ13
(57)【要約】
ペーシングデバイスのためのコントローラであって、呼吸データを含むセンサデータを受信し、センサデータに基づいて、ペーシング信号の呼吸性洞性不整脈(RSA)係数を決定し、センサデータに基づいて、ペーシング信号の心肺位相同期(CRPS)係数を決定し、かつRSA係数及びCRPS係数に従って患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するように構成されている、コントローラ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーシングデバイスのためのコントローラであって、
呼吸データを含むセンサデータを受信し、
前記センサデータに基づいて、ペーシング信号の呼吸性洞性不整脈(RSA)係数を決定し、
前記センサデータに基づいて、前記ペーシング信号の心肺位相同期(CRPS)係数を決定し、かつ
前記RSA係数及び前記CRPS係数に従って患者の心臓をペーシングするための前記ペーシング信号を提供するように構成されている、コントローラ。
【請求項2】
前記センサデータに基づいて、患者の活動レベルを決定し、かつ
前記患者の活動レベルに基づいて、前記RSA係数を決定するように構成されている、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記センサデータが、心臓学的データ、パルスオキシメータデータ、加速度計データ、体温データ、発汗データ、カメラデータ、アデノシン三リン酸(ATP)レベル、及びアドレナリンレベルのうちの1つ以上を更に含む、請求項1又は2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記コントローラが、前記RSA係数に基づいて前記CRPS係数を決定するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記呼吸データが吸気を示すときの第1の速度、及び
前記呼吸データが呼気を示すときの第2の速度、に従う前記ペーシング信号内のパルスのタイミングを制御することによって、前記RSA係数に従って前記ペーシング信号を提供するように構成されており、
前記第1の速度が、前記第2の速度よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記センサデータが、心臓学的データを含み、前記コントローラが、
前記心臓学的データからベースライン心拍数を決定し、かつ
前記ベースライン心拍数に基づいて、前記第1の速度及び第2の速度を設定するように構成されている、請求項5に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記コントローラが、前記ベースライン心拍数に基づいて、前記第1の速度の前記第2の速度に対する比率を設定するように構成されている、請求項6に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記コントローラが、
前記センサデータに基づいて患者の活動レベルを決定し、かつ
前記患者の活動レベルに基づいて、前記第1の速度の前記第2の速度に対する比率を設定するように構成されている、請求項5~7のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記コントローラが、整数回の呼吸周期にわたる反復シーケンス内の同じ呼吸位相角のセットに対応するように前記ペーシング信号内のパルスのタイミングを制御することによって、前記CRPS係数に従って前記ペーシング信号を提供するように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項10】
前記コントローラが、整数回の呼吸周期にわたる反復シーケンス内の同じ呼吸位相角のセットに対応するように前記ペーシング信号内の前記パルスの前記タイミングを制御するように、前記第1の速度及び前記第2の速度を設定するように構成されている、請求項5~8のいずれか一項に従属する請求項9に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記センサデータが、心臓学的データを含み、前記コントローラが、
前記センサデータに基づいて患者の活動レベルを決定し、
前記患者の活動レベルに基づいて前記RSA係数を決定し、
前記RSA係数に基づいて、前記第1の速度の前記第2の速度に対する比率を設定し、
前記比率、前記センサデータのベースライン心拍数、及び前記呼吸データの呼吸数に基づいて、前記反復シーケンスを提供する前記第1の速度及び第2の速度の値として、前記CRPS係数を決定し、かつ
前記第1の速度及び前記第2の速度に基づいて、前記ペーシング信号を提供するように構成されている、請求項10に記載のコントローラ。
【請求項12】
前記コントローラが、前記反復シーケンスを提供するために、前記ペーシング信号内の修正されたベースライン心拍数を提供する、第1の速度及び第2の速度を決定するように構成されている、請求項11に記載のコントローラ。
【請求項13】
前記コントローラが、前記反復シーケンスを提供する前記第1の速度及び第2の速度の値として、前記CRPS係数を決定するために、前記第1の速度の前記第2の速度に対する前記比率を調整するように構成されている、請求項11又は12に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記コントローラが、ルックアップテーブルにアクセスすることによって、前記比率及び前記ベースライン心拍数に基づいて、前記第1の速度及び前記第2の速度を決定するように構成されている、請求項11~13のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項15】
前記コントローラが、前記ペーシング信号が反復する呼吸周期の数を減少させるために、前記CRPS係数を決定するように構成されている、請求項9~14のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項16】
前記コントローラが、許容偏差閾値内で同じ呼吸位相角のセットに対応するように、前記ペーシング信号内の前記パルスの前記タイミングを制御するように構成されている、請求項9~15のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項17】
前記センサデータが、心臓学的データを含み、前記コントローラが、
前記心臓学的データ及び前記呼吸データに基づいて、呼吸周期当たりのベースライン心臓拍動数及び/又はベースライン位相角を決定し、かつ
前記ベースライン心臓拍動数及び/又は前記ベースライン位相角に基づいて、前記呼吸位相角のセットを決定するように構成されている、請求項9~16のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項18】
前記コントローラが、前記呼吸データの呼吸数に基づいて、前記RSA係数及び前記CRPS係数を決定するように構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項19】
前記センサデータが、心臓学的データを含み、前記コントローラが、前記心臓学的データに基づいて、前記RSA係数及び前記CRPS係数を決定するように構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のコントローラ。
【請求項20】
前記コントローラが、前記心臓学的データの心拍数に基づいて、前記RSA係数及び前記CRPS係数を決定するように構成されている、請求項19に記載のコントローラ。
【請求項21】
前記コントローラが、前記心臓学的データの時間間隔値当たりの拍動数に基づいて、前記RSA係数及び前記CRPS係数を決定するように構成されている、請求項19又は20に記載のコントローラ。
【請求項22】
前記コントローラが、前記心臓学的データ及び前記呼吸データから決定された呼吸当たりの拍動数値に基づいて、前記RSA係数及び前記CRPS係数を決定するように構成されている、請求項19又は20に記載のコントローラ。
【請求項23】
ペースメーカシステムであって、
請求項1~22のいずれか一項に記載のコントローラと、
前記センサデータを提供するための1つ以上のセンサと、
前記ペーシング信号を前記患者の前記心臓に印加するための1つ以上のペーシング電極と、を備える、ペースメーカシステム。
【請求項24】
患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するための方法であって、前記方法が、
呼吸データを含むセンサデータを受信することと、
前記センサデータに基づいて、ペーシング信号の呼吸性洞性不整脈(RSA)係数を決定することと、
前記センサデータに基づいて、前記ペーシング信号の心肺位相同期(CRPS)係数を決定することと、
前記RSA係数及び前記CRPS係数に従って前記患者の前記心臓をペーシングするための前記ペーシング信号を提供することと、を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法を遂行するための実行可能命令を記憶するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペーシングデバイス、及び具体的には、限定されるものではないが、患者の心臓をペーシングするための心臓ペースメーカのコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の心臓のペーシングを制御するためにペーシング信号を印加するためのペーシングデバイスは、当技術分野で一般的に知られている。内部心臓ペースメーカなどのペーシングデバイスは、患者に関連する生理学的データを検知するための1つ以上のセンサと、生理学的データに基づいてペーシング信号を発生させるためのコントローラと、ペーシング信号を患者の心臓に印加するための電極と、を含むことができる。そのような機能単位は、当技術分野で一般に知られており、したがって、必ずしも本明細書で詳細で説明されるわけではない。
【0003】
ペーシングデバイスの1つ以上のセンサは、心臓センサを含み得る。心臓センサは、1つ以上の心室の心臓電気活動を検知するために心臓内、心臓上、又は心臓の周りに位置付けることができる心臓電極を含む電極装置を備え得る。いくつかのペーシングデバイスでは、電極はまた、ペーシング信号を心臓に追加的に提供するために使用され得る。電極は、例えば、右心室又は左心室に植え込まれた心臓ペーシングワイヤを備え得る。
【0004】
ペーシングデバイスのセンサはまた、呼吸センサを含み得る。コントローラは、呼吸センサからの呼吸データを利用して、ペーシング信号を決定し得る。例えば、患者の代謝需要は、患者の呼吸を監視することによって決定され得る。呼吸センサは、空気流量センサ、胸部腹部モーションセンサなどのモーションセンサ、腹部に配置された電極を備える経胸腔インピーダンスセンサ、腹部の動きを視覚化するための視覚センサ、又は患者の胸部に配置されたひずみゲージのうちの1つ以上を含み得る。呼吸データはまた、動脈波形のコンピュータ解析によって決定され得る。呼吸データは、経胸腔インピーダンスのゼロ交差から決定された呼吸周期を含み得る。
【0005】
既知のペーシングデバイスはまた、活動センサから活動データを受信し得る。活動センサは、心臓センサ及び/又は呼吸センサを含み得る。例えば、活動データは、患者の心拍数又は呼吸数を監視することによって決定され得る。活動センサはまた、加速度計、パルスオキシメータ、発汗センサ、ビデオセンサ、温度センサ、又は当技術分野で公知の他のセンサなどの1つ以上の他のセンサを含み得る。コントローラは、活動データに応じて、ペーシング信号のパルスレートを増加又は減少させ得る。
【0006】
コントローラは、1つ以上のマイクロプロセッサであり得る1つ以上のプロセッサを備え得る。1つ以上のプロセッサは、ステートマシン、中枢パターン発生器(CPG)として、又は当技術分野で既知の任意の他の実装態様によって動作し得る。コントローラは、電極を介した印加のペーシング信号として、オンデマンドの心房及び/又は心室ペーシングパルスを発生させることができる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、ペーシングデバイスのためのコントローラが提供され、コントローラは、
呼吸データを含むセンサデータを受信し、
センサデータに基づいて、ペーシング信号の呼吸性洞性不整脈(RSA)係数を決定し、
センサデータに基づいて、ペーシング信号の心肺位相同期(CRPS)係数を決定し、かつ
RSA係数及びCRPS係数に従って患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するように構成されている。
【0008】
コントローラは、センサデータに基づいて、患者の活動レベルを決定するように構成され得る。コントローラは、患者の活動レベルに基づいて、RSA係数を決定するように構成され得る。
【0009】
センサデータは、心臓学的データ、パルスオキシメータデータ、加速度計データ、体温データ、発汗データ、カメラデータ、アデノシン三リン酸(ATP)レベル、及びアドレナリンレベルのうちの1つ以上を更に含み得る。
【0010】
RSA係数は、呼吸周期の吸気部分の間に呼吸周期の呼気部分の間よりも高い心拍数を提供する、ペーシング信号の1つ以上のパラメータを含み得る。RSA係数は、心拍数が、呼吸周期の吸気部分の間に呼吸周期の呼気部分の間よりもどれほど高くなるかを定義する、ペーシング信号の1つ以上のパラメータを含み得る。
【0011】
CRPS係数は、整数回の呼吸周期にわたって反復する呼吸位相値を有する心臓拍動パルスを提供する、ペーシング信号の1つ以上のパラメータを含み得る。心臓拍動パルスの位相値は、平均位相値からCRPS閾値未満だけ変動する場合、整数回の呼吸周期にわたって反復される。
【0012】
コントローラは、RSA係数に基づいてCRPS係数を決定するように構成され得る。
【0013】
コントローラは、呼吸データが吸気を示すときの第1の速度、及び呼吸データが呼気を示すときの第2の速度、に従うペーシング信号内のパルスのタイミングを制御することによって、RSA係数に従ってペーシング信号を提供するように構成され得、第1の速度は、第2の速度よりも大きい。
【0014】
センサデータは、心臓学的データを含み得る。コントローラは、心臓学的データからベースライン心拍数を決定するように構成され得る。コントローラは、ベースライン心拍数に基づいて、第1の速度及び第2の速度を設定するように構成され得る。
【0015】
コントローラは、ベースライン心拍数に基づいて、第1の速度の第2の速度に対する比率を設定するように構成され得る。
【0016】
コントローラは、センサデータに基づいて、患者の活動レベルを決定するように構成され得る。コントローラは、患者の活動レベルに基づいて、第1の速度の第2の速度に対する比率を設定するように構成され得る。
【0017】
コントローラは、整数回の呼吸周期にわたって、反復シーケンス内で同じ呼吸位相角のセットに対応するようにペーシング信号内のパルスのタイミングを制御することによって、CRPS係数に従ってペーシング信号を提供するように構成され得る。
【0018】
コントローラは、整数回の呼吸周期にわたって、反復シーケンス内で同じ呼吸位相角のセットに対応するように、ペーシング信号内のパルスのタイミングを制御するように、第1の速度及び第2の速度を設定するように構成され得る。
【0019】
コントローラは、センサデータに基づいて、患者の活動レベルを決定するように構成され得る。コントローラは、患者の活動レベルに基づいて、RSA係数を決定するように構成され得る。コントローラは、RSA係数に基づいて、第1の速度の第2の速度に対する比率を設定するように構成され得る。コントローラは、比率、センサデータのベースライン心拍数、及び呼吸データの呼吸速度に基づいて、反復シーケンスを提供する第1の速度及び第2の速度の値として、CRPS係数を決定するように構成され得る。コントローラは、第1の速度及び第2の速度に基づいて、ペーシング信号を提供するように構成され得る。
【0020】
コントローラは、反復シーケンスを提供するためのペーシング信号内の修正されたベースライン心拍数を提供する、第1の速度及び第2の速度を決定するように構成され得る。
【0021】
コントローラは、反復シーケンスを提供する第1の速度及び第2の速度の値として、CRPS係数を決定するために、第1の速度の第2の速度に対する比率を調整するように構成され得る。
【0022】
コントローラは、ルックアップテーブルにアクセスすることによって、比率及びベースライン心拍数に基づいて第1の速度及び第2の速度を決定するように構成され得る。
【0023】
コントローラは、ペーシング信号が反復する呼吸周期の数を減少させるために、CRPS係数を決定するように構成され得る。
【0024】
コントローラは、許容偏差閾値内で同じ呼吸位相角のセットに対応するために、ペーシング信号内のパルスのタイミングを制御するように構成され得る。
【0025】
コントローラは、心臓学的データ及び呼吸データに基づいて、呼吸周期当たりのベースライン臓拍動数及び/又はベースラインの位相角を決定するように構成され得る。コントローラは、ベースラインの心臓拍動数及び/又はベースライン位相角に基づいて呼吸位相角のセットを決定するように構成され得る。
【0026】
コントローラは、呼吸データの呼吸数に基づいて、RSA係数及びCRPS係数を決定するように構成され得る。
【0027】
センサデータは、心臓学的データを含み得、コントローラは、心臓学的データに基づいて、RSA係数及びCRPS係数を決定するように構成され得る。
【0028】
コントローラは、心臓学的データの心拍数に基づいて、RSA係数及びCRPS係数を決定するように構成され得る。
【0029】
コントローラは、心臓学的データの時間間隔値当たりの拍動数に基づいて、RSA係数及びCRPS係数を決定するように構成され得る。
【0030】
コントローラは、心臓学的データ及び呼吸データから決定された呼吸当たりの拍動数値に基づいて、RSA係数及びCRPS係数を決定するように構成され得る。
【0031】
呼吸データは、分時換気データを含み得る。
【0032】
本開示の第2の態様によれば、ペースメーカシステムが提供され、ペースメーカシステムは、
本明細書に開示される任意のコントローラと、
センサデータを提供するための1つ以上のセンサと、
ペーシング信号を患者の心臓に印加するための1つ以上のペーシング電極と、を備える。
【0033】
本開示の第3の態様によれば、患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するための方法が提供され、方法は、
呼吸データを含むセンサデータを受信することと、
センサデータに基づいて、ペーシング信号の呼吸性洞性不整脈(RSA)係数を決定することと、
センサデータに基づいて、ペーシング信号の心肺位相同期(CRPS)係数を決定することと、
RSA係数及びCRPS係数に従って患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供することと、を含む。
【0034】
本開示の第4の態様によれば、本明細書に開示される任意の方法を遂行するための実行可能命令を記憶するコンピュータプログラム製品が提供される。
【0035】
本開示の更なる態様によれば、患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するための方法が提供され、方法は、
呼吸データを含むセンサデータを受信することと、
コントローラのペーシングモードを、センサデータに応じて、
RSAモード、及び/又は
CRPSモード、として設定することと、
ペーシングモードに従ってペーシング信号を提供することと、含む。
【0036】
本開示は、様々な修正及び代替形態が可能であるが、その具体的な態様が例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、説明される特定の実施形態を超える他の実施形態も同様に可能であることを理解されたい。添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある全ての修正、等価物、及び代替実施形態も同様に網羅される。
【0037】
以上の考察は現在又は将来の一連の特許請求の範囲内の全ての例示実施形態又は全ての実装態様を表現することを意図していない。図面もそれに続く詳細な説明も例示実施形態を例証している。様々な例示実施形態は添付図面と関連する以下の詳細な説明を参酌するとより完全に理解することができる。
【0038】
以下、1つ以上の実施形態について、添付の図を参照しながら、例示的にのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A】身体運動前、身体運動中、及び身体運動後の健康な個人の時間に対する呼吸性洞性不整脈(RSA)振幅のプロットを示す。
図1B】身体運動前、身体運動中、及び身体運動後の高齢の個人のRSA振幅の時間に対するプロットを示す。
図2A図1AのRSAプロットに対応するシンクログラムプロットを示す。
図2B図1BのRSAプロットに対応するシンクログラムプロットを示す。
図2C】RSAを示す健康な心臓及びRSAを示さない不健康な心臓のシミュレートされた心肺データを示す。
図2D】RSAを示さない不健康な心臓のシミュレートされた心肺データを示す。
図3】心臓ペースメーカシステムの概略ブロック図を示す。
図4】2つの連続した心臓周期の時間に対するパルスシーケンスのプロットを示す。
図5】患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、心臓ペースメーカのためのコントローラ及び関連するペーシングの方法に関する。ペーシングの方法は、健康な対象と、様々なレベルの身体活動の下で様々な生理学的条件を有する対象の両方における自然なペーシングの発明者の観察から導出された。提案されたペーシングスキームは、そのような条件下で健康な対象で観察される自然なペーシングをエミュレートすることによって、対象の身体的要求に応答することを目的とする。
【0041】
身体の心臓拍動の自然な調節は、呼吸(breathing)又は呼吸(respiratory)周期と同相である。心臓と肺との間の同期は、心肺系が健康であることを示している。心臓と肺との間の結合強度は同期の増加及び結合強度の低下の背後にある重要な要因の1つであり、例えば、加齢の場合、並びに心不全及び他の心肺障害の患者の場合、心臓と肺との間の同期の低下をもたらす。
【0042】
心臓と肺との間の同期の一例としては、呼気(息を吐く)時の心拍数の減少、及び吸気(息を吸う)時の心拍数の増加が挙げられる。これは、呼吸性洞性不整脈(RSA)と称される。RSAの消失は、心血管リスクの予測因子であり、心不全を含む複数の疾患の予後指標となる。
【0043】
RSAを人為的に回復、維持又は強化して、健康な個人のプロファイルを得るために、例示的なペーシングシステムを提供することができる。出願第GB1913050.9号及び第PCT/GB2020/052149号は、そのようなシステムを開示し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。例示システムは、非線形関数に従って、刺激信号(ペーシング信号)のタイミングを制御することができる。非線形関数は、中枢パターン発生器又はデジタルシミュレーションによって提供される神経発振器によって生成され得る。
【0044】
図1A及び1Bは、身体運動前、身体運動中、及び身体運動後のそれぞれの第1及び第2の個人の時間に対するRSA振幅のプロットを示している。図1Aのデータは、健康な個人(24歳以上、身長180.5cm、体重88Kg、BMI27.0)から取得し、一方、図1Bのデータは、高齢者である以外は、健康な個人(64歳以上、身長178cm、体重93Kg、BMI29.4)から取得した。両方の図において、対象は、時間=0秒で静止時にある。図1Aにおいて、運動開始は、時間=180秒で生じ、運動期間は、時間=800秒で終了する。図1Bにおいて、運動開始は、時間=300秒で生じ、運動期間は、時間=800秒で終了する。
【0045】
図1Aは、静止時の第1の個人の約0.5Hzのピークツーピーク振幅の健康なRSAレベルを示している。第1の個人は、180秒~800秒で徐々に増加する運動強度を受けた。RSA振幅は、運動の開始前(すなわち、180秒の前)及び運動の初期段階(すなわち、180秒~400秒)に高いままである。RSA振幅は、より高い運動強度(すなわち、500秒~800秒)で、0.1Hz未満に減少する。回復時間(すなわち、800秒後)において、RSA振幅は、再び振幅が増加し始める。
【0046】
図1Bは、静止している第2の個人の約0.05Hzのピークツーピーク振幅の不健康なレベルのRSAを示している。図に見られるように、RSA振幅は、運動開始後にも減少し、運動終了後に再び回復する。図1Bの傾向は、図1Aの傾向よりも明らかではなく、これは、RSAの静止レベルが最初から相対的に低いため、高い信号対ノイズ比があるためである。
【0047】
図1A及び1Bは、健康及び不健康な心肺系の両方を有する個人の身体活動中にRSAが減少することを示している。RSA振幅は、静止時の健康な対象で高く、運動レベルの増加に伴って減少する。不健康な心肺系を有する個人は、静止時であっても、より低いRSA振幅を有する傾向があり、これは、運動の増加に伴って更に減少する。
【0048】
図2A及び2Bは、図1A及び1BのそれぞれのRSAプロットに対応するシンクログラムプロットを示している。シンクログラムは、y軸の呼吸位相に対してx軸の心臓拍動インスタンスを時間的にプロットする。ここで、呼吸位相は、呼吸周期の開始に対して、呼吸周期の瞬間的な位相角を定義する。呼吸位相は、従来の振動系と同じ方法で、1回の呼吸周期中に0~2πラジアンの間で変化又は一周する。
【0049】
第1の個人(図2A)について、180秒の運動開始前の期間に、呼吸周期当たり約12回の心臓拍動を有する規則的な心臓拍動パターンを見ることができる。この規則的な心拍数及び呼吸周期当たりの高心臓拍動数は、高振幅RSAの期間に対応している。運動が進行し、RSA振幅が減少するにつれて、第2のタイプの同期が、シンクログラムプロット-心肺位相同期(CRPS)において識別可能になる。CRPS202、204の領域は、シンクログラムプロットにおいて、隣接する呼吸周期における対応する心臓拍動の呼吸位相が実質的に一定の位相を有する領域として見ることができる。言い換えると、心臓は、連続した呼吸周期で同じ反復位相角で拍動又は脈動する。CRPS202、204の領域は、シンクログラムプロットにおいて、隣接する呼吸周期における心臓拍動インスタンスによって形成される実質的に水平な線又はプラトーとして識別することができる。CRPSは、必ずしも、連続又は隣接する呼吸周期において同じ位相角を有する心臓拍動に限定されず、位相角の反復シーケンスは、整数回の呼吸周期にわたって延び得る(例えば、2、3、4、6、またはそれ以上の呼吸周期のうちの1つまで)。図2C及び2Dに関連して以下に説明するように、CRPSは、摂食、あくび、しゃっくりなどに起因する呼吸周期の中断の影響を受けて継続的に存在する傾向がある。したがって、図2Aは、心拍数が相対的に低い(例えば、運動開始前)、及び/又は位相角の反復シーケンスがいくつかの呼吸周期にわたってあるため、直ちに識別可能にならないCRPSの領域を含む。
【0050】
第2の個人(図2B)について、運動開始前及び運動中の両方に、CRPS206、208、210、212の識別可能な領域が存在する。運動開始前に呼吸周期当たり約4~5回の心臓拍動があり、運動中には呼吸周期当たり5~6回の拍動に増加する。
【0051】
図2C及び2Dは、それぞれ、RSAを示す健康な心臓及びRSAを示さない不健康な心臓のシミュレートされた心肺データを示している。心肺データは、水平軸にプロットされた呼吸周期の位相(図2A及び2Bのプロットにおいて0~2πラジアンに相当する0~1の尺度で)及び垂直軸にプロットされた平均からのR波偏差でプロットされる。ここで、R波偏差は、平均R-R間隔からのR-R間隔(又は心臓拍動期間)の偏差を指す。
【0052】
RSAを、R波の正の値から負の値への偏差及び正の値への戻りの周期として、図2Cにおいてはっきりと見ることができる。対照的に、図2Dでは、R波偏差の変動が見られず、RSAの非存在を示す。
【0053】
心臓拍動が、複数の呼吸周期について図2C及び2Dの各プロットに示されており、データは、クラスタ214を形成するように見ることができる。クラスタは、数回の呼吸周期にわたって同じ呼吸位相で生じる複数の心臓拍動を定義する。言い換えると、データは、RSAを示す心臓及びRSAが存在しない心臓の両方のCRPSを示す。図2C及び2Dの両方の例では、位相角の反復シーケンスは、呼吸周期当たりの多数の拍動によって証明されるように、2つ以上の呼吸周期にわたって生じる。例えば、反復シーケンスが2つの呼吸周期を超える場合、他の全ての図示されたクラスタ214は、第2の呼吸周期に対応する介在するクラスタ214を伴う第1の呼吸周期に対応し得る。
【0054】
図2A~2Dは、RSAの存在にかかわらず、健康な心臓及び不健康な心臓の両方が自然にCRPS202~210を示す傾向があることを示す。図2Aは、運動中に心肺系がストレスを受けたときに、CRPSが健康な個人に存在することを示し、図2Bは、静止時及び運動中の両方で、CRPSが不健康な心肺系に存在することを示し、図2C及び2Dは、CRPSが、RSAの存在及び非存在の両方で存在することを示している。
【0055】
したがって、心臓は、以下の3つの動作状態を有すると見なすことができる。すなわち、(i)CRPSもRSAも伴わず、特に心臓が重度のストレス下にある場合、及び/又は呼吸中断がある場合に一般的である、非同期、(ii)特に運動などの活動を行っている場合に一般的である、RSAを伴わない位相同期CRPS、及び(iii)健康な心臓が静止している場合、又は基礎となる体力と比較して中程度の量の活動を行っている場合に一般的である、RSAを伴う位相同期CRPSである。本開示の様々な実施形態では、ペーシングデバイスのためのコントローラが提供され、コントローラは、基礎となる体力及び/又は組織の健康と比較して、心臓に対する需要(活動など)に応じて、心臓状態を状態(i)から状態(iii)に上方へ移動させる傾向があり得る。
【0056】
本開示は、健康な個人における2つのタイプの自然の心肺同期、すなわち、静止時(及び個人の体力レベルに相当する低レベルの活動)のRSA、及びCRPSに向かう継続的な傾向を考慮に入れる。本開示は、CRPSを維持しながら、患者の心臓をRSAコンポーネントでペーシングするためのペーシング信号を提供することができるペーシングシステムのためのコントローラを提供する。具体的には、コントローラは、(i)患者においてRSAを誘発するためのペーシング信号のRSA係数、及び(ii)患者において心肺位相同期(CRPS)を誘発するためのペーシング信号のCRPS係数を決定することができる。コントローラは、患者に関連するセンサデータに基づいて2つの係数を決定することができる。センサデータは、RSA係数及びCRPS係数に従ってペーシング信号のタイミングの同期を補助するための呼吸データを含む。
【0057】
いくつかの例では、コントローラは、センサデータによって示される患者の活動レベルに基づいて、RSA係数を決定し得る。コントローラは、活動レベルの増加に比例して(又はその非線形関数として)、ペーシング信号内のRSAの量を減少させ得る。活動レベルが患者の個々の体力/組織の健康の上限(安全限度)を超えて増加すると、コントローラは、いかなるRSAも誘発しないペーシング信号を提供するために、RSA係数をゼロ(又は実装態様に応じて1)として決定し得る。このようにして、センサデータが、心肺系が激しい運動中又は他の激しい活動中などの一時的な増加したストレス下にあることを示すとき、コントローラはRSAを誘発しようとしない場合がある。その結果、コントローラは、静止時及び応力レベルが増加したときの、健康な心肺系の自然なペーシングを有利に再現するペーシング信号を提供する。
【0058】
コントローラは、有利に、RSA及びCRPSの両方を誘発するためのペーシング信号を提供することができる。このようにして、センサデータが、患者が静止しているとき、又は中程度のレベルの活動を行っているときなど、心肺系が増加したストレス下にないことを示すとき、コントローラは、RSA及びCRPSの両方を誘発し得る。
【0059】
いくつかの例では、センサデータが、患者が安全閾値を超える重度のレベルのストレス下にあることを示す場合、コントローラはまた、RSAもCRPSも誘発しないようにRSA係数及びCRPS係数を決定し得る。コントローラはまた、コントローラがセンサデータのベースラインセットに基づいて患者のベースライン健康又は体力を決定し得る較正モード又はフリーランニングモード中に、いずれのタイプの同期も誘発しないようにし得る。例えば、コントローラは、患者が既知の活動、例えば6分間の歩行テストを行う診断モードに入ることによって、患者の基礎となる体力/疾患状態を決定し得る。次に、コントローラは、呼吸数の単位変化当たりのペーシング信号に適用するベースライン平均パルスレート及びRSA及びCRPS係数調整のレベルを決定し得る。較正モードでは、コントローラは、様々な活動レベルにわたる心臓センサデータと呼吸センサデータとの間の関係を定義する心臓-呼吸関係データのセットを決定し得る。例えば、コントローラは、特定の患者について、較正モード中の心臓センサデータと非心臓センサデータとの間の関係に基づいて、非心臓センサデータの関数として理想的な心拍数を決定するように構成され得る。
【0060】
本明細書に開示されるようなコントローラを実装するペーシングデバイスは、心臓デバイスを使う対象の生活の質を改善するために、疾患の進行を遅らせ、心筋の損傷を元に戻すこと(心筋のリモデリング)、又は残存する生存心筋からより良好な心臓ポンプ機能を得ることができる。
【0061】
図3は、本開示の1つ以上の実施形態による、コントローラ308を有するペーシングデバイス302を備える心臓ペースメーカシステム300の概略ブロック図を示している。心臓ペースメーカシステム300は、心臓ペーシングデバイス302と、1つ以上のセンサ304と、1つ以上のペーシング電極306と、を備えている。ペーシングシステム300は、(i)静止時の健康な個人に存在する生物学的なRSAプロセス、及び(ii)全ての心臓が、呼吸又は心臓の中断の不在下で向かう傾向がある生物学的なCRPSプロセスの両方を人工的に誘発するための電子デバイスである。このようなデバイスの提供はまた、患者において、自然にRSA及び/又はCRPSが生じる場合、このようなデバイスを使用して自然に生じているよりも高いレベルで又は定期的にRSA及び/又はCRPSを適用することが有利であることを証明し得る。
【0062】
1つ以上のセンサ304は、センサデータとして呼吸データをコントローラ308に提供するための呼吸センサを備え得る。呼吸センサは、例えば、筋電センサ又は胸部インピーダンスセンサを含み得る。呼吸センサは、対象の呼吸を示す信号を検知するように構成され得る。1つ以上のセンサ304は、対象に関連するそれぞれの心臓学的データ及び/又は活動データを提供するための心臓センサ及び/又は活動センサを更に含み得る。コントローラ308によるそのようなデータの使用は、以下で更に説明される。
【0063】
呼吸データは、分時換気データを含み得る。コントローラは、分時換気データに基づいて分時換気パラメータを決定するように構成され得る。分時換気(VE)は、1分当たりの人の肺から吸入された(吸入された分時換気)又は吐き出された(吐き出された分時換気)ガスの量として定義される。分時換気は次のように書くことができる。
VE=TV×f
式中、TV=一回換気量
f=呼吸の頻度
【0064】
一回換気量は、余分な労力を伴わずに、正常な吸入と吐き出しとの間に移動した空気の量の尺度である。分時換気(VE)は、呼吸努力及び呼吸頻度に比例する。コントローラ308は、分時換気パラメータに基づいて活動レベルを決定し得る。
【0065】
1つ以上のセンサ304のいずれも、当技術分野で使用される従来のセンサ(上記の背景技術セクションに記載されているものなど)によって提供され得、1つ以上のセンサ304を対象に結合するための機構又は接着剤を含み得る。心臓ペーシングデバイス302は、無線又は有線の通信リンクを介して1つ以上のセンサ304と通信するように構成され得る。例えば、i)心臓ペーシングデバイス302及びii)1つ以上のセンサ304のうちの一方が内部に設けられ、他方が外部に設けられるように、近距離通信リンクが患者の組織を介して動作することができる。
【0066】
1つ以上のペーシング電極306は、対象に電気刺激を加えるように構成された従来のペーシング電極によって提供され得る。1つ以上のペーシング電極306は、1つ以上のペーシング電極306を対象に取り付けるための機構又は接着剤を備え得る。1つ以上のペーシング電極306はまた、心臓センサの機能を提供し得る。
【0067】
心臓ペースメーカデバイス302は、コントローラ308と、電気刺激発生器310と、を備える。コントローラ308は、1つ以上のプロセッサを備え得る。1つ以上のプロセッサは、ステートマシン、中枢パターン発生器(CPG)として、又は当技術分野で既知の任意の他の実装態様によって動作し得る。コントローラ308は、ペーシング電極306を介して印加するための刺激信号として、オンデマンド心房及び/又は心室ペーシングパルスを発生させることができる。
【0068】
コントローラ308は、センサ信号入力312において1つ以上のセンサ304から呼吸データを含むセンサデータを受信するように構成される。コントローラ308は、センサデータに基づいてペーシング信号のRSA係数及びCRPS係数を決定し、RSA係数及びCRPS係数に従って患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するように構成されている。コントローラ308は、電気刺激発生器310にペーシング信号を提供し得、電気刺激発生器310は、1つ以上のペーシング電極306を介して患者の心臓に対応する刺激信号を提供し得る。他の例では、電気刺激発生器は、コントローラ308の一部を形成し得、コントローラは、ペーシング信号を刺激信号として1つ以上のペーシング電極306に直接提供し得る。ペーシング信号及び刺激信号は、患者の心臓内の誘発される心臓拍動のタイミングに対応するタイミングを有するパルスのシーケンスを含み得る。
【0069】
心臓ペーシングデバイス302は、植え込み型デバイスであり得る。例えば、心臓ペーシングデバイス302は、生物学的に不活性であるか、又は非反応性であり得るハウジングを有し得る。ハウジングは、例えば、10cm以下×5cm以下の寸法を有し得る。心臓ペーシングデバイス302は、デバイス302に電力を供給するための電源を含み得る。
【0070】
電気刺激発生器310は、コントローラ308によって提供されるペーシング信号に基づいて、刺激信号を発生させるように構成される。電気刺激発生器310は、例えば、従来のパルス発生ハードウェアによって提供され得、刺激信号を1つ以上のペーシング電極306に提供するように構成され得る。
【0071】
コントローラ308は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって提供され得る。一例では、コントローラ308は、例えば、ハードウェアによって実行されるソフトウェアモジュールとして提供され得る。
【0072】
第1の態様によれば、ペーシングデバイス302のコントローラ308は、呼吸データを含むセンサデータを受信するように構成される。コントローラ308は、1つ以上のセンサ304からセンサデータを受信し得る。コントローラ308は、センサデータに基づいてペーシング信号のRSA係数を決定し、センサデータに依存するペーシング信号のCRPS係数を決定し、RSA係数及びCRPS係数に従って、患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するように構成される。
【0073】
上述したように、コントローラ308は、RSA係数を決定し、したがって、患者のRSAを人為的に誘発するためのペーシング信号を提供し得る。ペーシング信号は、患者の心臓拍動を誘発するための各パルスを伴うパルスのシーケンスを含み得る。コントローラ308は、呼吸データ内のタイミング情報に基づいて、RSA係数に従って、ペーシング信号内のパルスのタイミングを制御し得る。例えば、コントローラ308は、呼吸データが吸気を示すときに第1の速度で、及び呼吸データが呼気を示すときに第2の速度でパルスのタイミングを制御し得、ここで、第1の速度は第2の速度よりも大きい。例えば、第1の速度は、第2の速度よりも0.1~1.0Hz、好ましくは0.2~0.5Hzだけ大きくてもよい。別の例では、第1の速度は、RSAの上位レベルに対して1分当たり10~15拍(BPM)増加し得る。上位レベルは、100BPMの心拍数における15BPMの増加に対応し得る。より低いレベルは、45BPMの心拍数における15BPMの増加に対応し得る。
【0074】
あるいは、第1の速度は、第2の速度に対してスケーリングされ得る。例えば、第1の速度は、第2の速度よりも5~100%高くてもよい。RSA係数は、第1の速度の第2の速度に対する間の比率に対応し得る。
【0075】
センサデータは、患者の心臓に関連する心臓学的データを更に含み得る。コントローラ308は、心臓センサから心臓学的データを受信し得る。心臓センサは、ペーシング電極306を備え得る。コントローラ308はまた、心臓学的データ内のタイミング情報に基づいてRSA係数を決定し得る。例えば、ベースライン心拍数は、心臓学的データから決定され得、第1の速度及び第2の速度は、ベースライン心拍数に基づき得る。
【0076】
以下で更に説明するように、センサデータは、患者の活動レベルを表す活動データを更に含み得る。コントローラ308は、活動データに基づいてRSA係数を決定し得る。例えば、コントローラ308は、活動データによって示される活動レベルに基づいて、第1の速度及び/又は第2の速度をスケーリングし得る。
【0077】
コントローラ308は、呼吸データ、心臓データ、又は患者の活動レベルの任意の組み合わせに基づいて、RSA係数の大きさ(第1の速度を第2の速度で割ったもの)をスケーリングし得る。例えば、コントローラは、心拍数、呼吸数、及び/又は患者の活動レベルの増加に伴ってRSA係数の大きさを調整し得る。コントローラは、年齢、体力レベル、及び併存症のうちの1つ以上に基づいて、RSA係数の大きさを更にスケーリングし得る。
【0078】
コントローラ308は、患者にCRPSを誘発又は維持するためにCRPS係数を決定し得る。コントローラ308は、呼吸データ内のタイミング情報に基づいてCRPS係数を決定し得る。例えば、コントローラ308は、同じ位相角のセットで、連続する呼吸周期について又は整数回の呼吸周期にわたって生じるように、ペーシング信号内のパルスのシーケンスのタイミングを制御し得る。このようにして、コントローラ308は、隣接する呼吸周期又は隣接する呼吸周期のセット内の対応する心臓拍動の呼吸位相が実質的に一定であるように、パルスのタイミングを制御することができる。ここで、実質的に一定であることは、隣接する呼吸周期内の対応する心臓拍動間の位相角の変動が、CRPS閾値、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5ラジアン未満であると定義され得る。
【0079】
コントローラ308はまた、心臓学的データ内のタイミング情報に基づいてCRPS係数を決定し得る。例えば、コントローラ308は、心臓学的データから呼吸周期当たりのベースライン心臓拍動数を決定し、呼吸周期当たりのベースライン心臓拍動数に基づいてパルスの位相角を設定し得る。コントローラはまた、ベースライン位相角のセットを決定し、ベースライン位相角のセットに基づいてパルスの位相角を設定し得る。ベースライン位相角は、いくつかの隣接する呼吸周期又はいくつかの隣接する呼吸周期のセットにわたる平均位相角に対応し得る。RSAが存在しない簡略化された例として、コントローラ308は、2つの隣接する呼吸周期のセットにわたって、呼吸周期当たり5.5拍の呼吸周期当たりのベースライン心臓拍動数、及び0、2π/11、4π/11、6π/11、8π/11、10π/11、π/11、3π/11、5π/11、7π/11及び9π/11の平均位相角を決定し得る。コントローラ308は、呼吸周期当たりの事前決定された数(例えば、5.5)の拍動及び呼吸周期ごとの平均位相角を維持するために、CRPS係数に従ってペーシング信号のパルスのタイミングを制御し得る。CRPS係数は、整数回の呼吸周期にわたって呼吸位相角の反復セットを提供する1つ以上のパラメータを含み得る。例えば、CRPS係数は、呼吸角のセット、呼吸角のセット内の連続した呼吸位相角の差に対応する呼吸角期間、並びに固定時間オフセットを有する呼吸角のセットと同じ呼吸角期間を有する呼吸角のセット又は呼吸角のオフセットセットを提供する第1の速度及び第2の速度の値のいずれかを含み得る。
【0080】
1つ以上の例では、コントローラは、RSA係数に基づいてCRPS係数を決定し得る。例えば、コントローラは、患者の活動レベルに基づいてRSA係数を決定し得る。次いで、コントローラは、RSA係数に基づいて、第1の速度(吸気中のペーシング信号について)対第2の速度(呼気中のペーシング信号について)の比率を決定し得る。例えば、コントローラは、RSA係数に等しい比率を設定し得る。RSA係数の活動レベルへの依存性は、患者ごとに較正又は事前決定され得、例えば、年齢、BMI、健康状態などの要因に依存し得る。コントローラは、比率又はRSA係数に基づいてCRPS係数を決定し得る。コントローラは、比率(RSA係数)及びセンサデータの心臓学的データからの測定されたベースライン心拍数に基づいてCRPS係数を決定し得る。
【0081】
コントローラは、ベースライン(平均)心拍数が維持され、決定された比/RSA係数を有するように、ペーシング信号の第1の速度及び第2の速度を設定し得る。しかしながら、いくつかの例では、これは、第1及び第2の速度の結果の値が、整数回の呼吸周期にわたる呼吸位相値の反復シーケンスをもたらさないので、CRPSをもたらさない、又は非常に多数の呼吸周期にわたってのみ反復するCRPSしかもたらさない場合がある。したがって、コントローラは、RSA係数に基づいて決定された比率を調整して、数が減少した呼吸周期にわたって反復シーケンスをもたらす第1の速度及び第2の速度の値としてCRPS係数を決定し得る。代替的に、又は追加的に、コントローラは、測定されたベースライン心拍数とは異なるベースライン(平均)パルス数を有するペーシング信号を提供するために、第1の速度及び/又は第2の速度(CRPS係数)を調整してもよく、その結果、数が減少した呼吸周期にわたる反復シーケンスがもたらされる。
【0082】
コントローラは、固定された第1及び第2の速度を有する固定されたCRPS係数を有する安定した動作モードのセットを定義し得る。CRPS係数は、わずか数回の呼吸周期(1、2、3、又は4回の呼吸周期など)にわたって生じる反復シーケンスに対応し得る。各々の安定動作モードは、ある範囲のベースライン心拍数及びある範囲のRSA係数に対応し得る。例えば、第1の安定動作モードは、呼吸周期当たり6.0拍の第1の速度及び呼吸周期当たり5.0拍の第2の速度に対応し得る。第1の速度の第2の速度に対する比率は、1.2である。ベースライン心拍数は、呼吸周期当たり5.5拍であり、位相角は、2つの呼吸周期の各セットにわたって反復されることになる。コントローラは、患者の活動レベルに基づいてRSA係数を1.19として決定し、ベースライン心拍数5.48を測定し得る。コントローラは、RSA係数及びベースライン心拍数が第1の安定動作モードの値の閾値範囲内にあるため、第1の安定動作モードを選択し得る。このようにして、コントローラは、決定されたRSA係数及び測定されたベースライン心拍数を包含する範囲を有する安定動作モードとしてCRPS係数を決定する。コントローラは、RSA係数及びベースライン心拍数の範囲に対応するCRPS係数のセット、又は安定した動作モードを備えたルックアップテーブルを含み得る。コントローラは、CRPS係数を決定するために、ルックアップテーブルにアクセスし得る。ルックアップテーブルは、例えば、観察された心拍数データ、又はモデル化されたデータを含む、過去の患者データに基づいて事前決定され得る。
【0083】
動作中、心臓拍動のタイミングには、生物学的プロセスに起因する心臓拍動ごとの変化があり得る。しかしながら、CRPSの間、短期平均位相値は、整数回の呼吸期間にわたって反復される傾向がある。言い換えると、心臓拍動パルスの位相値は、それが平均位相値からCRPS閾値未満だけ変動する場合、呼吸周期の整数回にわたって繰り返されると考えられ得る。
【0084】
コントローラは、ペーシング信号が新しい安定した動作モードに移動する必要があるかどうかを決定するために、2つの異なる短期平均を監視するように構成され得る。第1に、コントローラは、デバイスによって発生させられた短期間の平均心拍数(例えば、5~10秒などの短い時間期間にわたって、1回、2回、3回以上の呼吸周期にわたって、又は整数回の心臓拍動にわたって)と、理想的なベースライン心拍数(例えば、呼吸データ及び較正モードで決定された関係データに基づいて、上記の方法のいずれかを使用して決定される)との間の差を監視するように構成され得る。差が事前決定された時間、閾値を超える場合、コントローラは、次の安定した動作モードに対応するようにペーシングパラメータを設定し得る。このようにして、コントローラは、短期平均心拍数が非心臓学的データ及び較正データから決定された理想的な心拍数に実質的に等しい間、安定した動作条件を維持し得、平均心拍数がCRPSエラー閾値を持続的に上回るときに新しい動作条件に変化し得る。
【0085】
第2の選択肢として、コントローラは、短期間の平均位相値差を監視し得る。ペーシングパターンと呼吸との間の良好な一致のために、短期平均は約0であるべきである(すなわち、位相がロックされているが、ジッタ及び生物学的プロセスにより平均差が変化する)。短期間の平均位相差は、例えば、1、2、又は5回未満の心臓周期の期間で、又は事前決定された期間にわたって測定され得る。差が事前決定された期間にわたって閾値を超え、バイアス方向(これは一貫して正の閾値を上回っていてもよい)であれば、コントローラは次の安定動作モードに移動し得る。
【0086】
コントローラは、心臓学的データを統合又は長期フィルタリングして、事前決定された期間にわたる平均値を決定し得る。このようにして、コントローラは、短期間の平均位相値が実質的に一定であり、平均位相差がCRPS誤差閾値を永続的に上回るときに新しい動作条件に変化する間、安定した動作条件を維持し得る。コントローラは、呼吸時間帯の変化に基づく位相検知検出能力を含み得る。コントローラは、そのような位相検知検出能力のためにニューロンネットワークを実装し得る。
【0087】
図4は、2つの連続した呼吸周期402、404の時間に対するCRPSモードにおけるパルスシーケンスのプロットを示している。このプロットは、図2A及び2Bを参照して前述したタイプのシンクログラムプロットであり、x軸上の心臓拍動インスタンスが、y軸上の呼吸位相に対して時間的にプロットされている。この例では、各呼吸周期には5つの心臓拍動が含まれている。第1の呼吸周期402の各心臓拍動は、後続の第2の呼吸周期404においてそれぞれの心臓拍動と同相である。各心臓拍動は、その呼吸周期の開始に対して特定の時間(すなわち、一定の時間期間が経過した後)に生じる。その後の呼吸周期の対応する心臓拍動は、その呼吸周期の開始に対して同じ時点で生じる。CRPSが、各呼吸周期にわたる反復シーケンスで明らかである。
【0088】
図3に戻ると、1つ以上の例では、コントローラ308は、1つ以上の呼吸周期でフリーランニングモードで動作し、ペーシング信号を提供しないように、又はパルスを伴わないペーシング信号を提供するように構成され得る。このようにして、コントローラ308は、ベースライン心拍数、呼吸周期当たりのベースライン心臓拍動数、又はベースライン位相角の変化を監視することができる。
【0089】
1つ以上の例では、コントローラ308は、較正され得る。例えば、心臓学的データを含むセンサデータは、様々な強度レベルの運動を受けている患者について監視されて、ある範囲の呼吸速度のベースライン心臓学的データのセットを決定し得る。コントローラ308は、ベースライン心臓学的データのセットを記憶し得る。動作中、コントローラ308は、呼吸速度及びベースライン心臓学的データのセットに基づいて、ペーシング信号のパルスのタイミングを制御し得る。
【0090】
以上で概説したように、コントローラ308は、CRPSを維持しながら両方のRSAを誘発するように、RSA係数及びCRPS係数に従ってペーシング信号内のパルスのタイミングを制御するように構成され得る。例えば、コントローラは、吸気中に第1の速度に従って、呼気中に第2の速度に従って、及び複数の隣接する呼吸周期のために又は隣接する呼吸周期のセットのために固定された位相角のセットを用いて、パルスのタイミングを制御し得る。
【0091】
コントローラ308は、当技術分野で既知の方法に従って、ペーシング信号内のパルスのタイミングを更に制御し得る。例えば、コントローラは、例えば、神経発振器によって提供され得る非線形関数に従って、刺激信号のタイミングを制御し得る。神経発振器は、例えば、CPGを実装するアナログ回路によって、又は同時係属中の特許出願第GB1913050.9号及び第PCT/GB2020/052149号に開示されるデジタルシミュレーションによって提供され得る。
【0092】
コントローラ308は、センサデータに基づいてペーシング信号を提供するように構成される。コントローラ308は、センサデータが、心肺系が有意に増加したストレス又は負荷を伴わずに正常範囲内で機能していることを示す場合、ペーシング信号を介してRSAを誘発するために1を超える(比率>1)RSA係数を決定し得る。センサデータが、心肺系が一時的に増加したストレス又は負荷の下で機能していることを示す場合、コントローラは、RSA係数を1に等しい(1に等しい比率)と決定し得る。心肺系は、運動又は重負荷の持ち上げの間など、患者が身体的に運動しているときに、一時的に増加したストレスの下で機能し得る。患者が精神的にストレスを受けているとき又は摂食後にも、増加したストレスが存在し得る。心肺ストレスはまた、周囲温度、O2含有量(薄い空気)、体位、脱水、発熱、飢餓、騒音、寒冷暴露、出血(月経周期)、心理的因子、免疫学的因子、疼痛、及び疾患のうちの1つ以上に依存し得る。システムは、これらのストレス係数のうちの1つ以上のレベルを決定するために、1つ以上のセンサを備え得る。
【0093】
コントローラ308は、センサデータに基づいて患者の活動レベルを決定し、活動レベルに依存してRSA係数を決定し得る。活動レベルは、心肺系に対する一時的なストレスの増加を示し得る。
【0094】
コントローラ308は、呼吸データに基づいて、患者の活動レベルを決定し得る。例えば、コントローラは、上述したように分時換気データに基づいて活動レベルを決定し、それに応じてRSA係数を決定し得る。更なる例として、コントローラは、呼吸数が呼吸数閾値以下である場合、RSA係数を1よりも大きいと決定し得、呼吸数が呼吸数閾値よりも大きい場合、RSA係数を1に等しいと決定し得る。
【0095】
センサデータは、心臓学的データを含み得、コントローラ308は、心臓学的データに基づいて患者の活動レベルを決定し得る。例えば、コントローラは、心拍数が心拍数閾値以下である場合、RSA係数を1よりも大きいと決定し得、心拍数が心拍数閾値以上である場合、RSA係数を1に等しいと決定し得る。コントローラはまた、呼吸データ及び心臓学的データによって示される呼吸周期当たりの拍動数に依存して、ペーシングモードを設定し得る。
【0096】
センサデータは、患者の活動レベルを示すための他のデータを含み得る。例えば、コントローラ308は、心臓学的データ、パルスオキシメータデータ、加速度計データ、体温データ、発汗データ、カメラデータ、アデノシン三リン酸(ATP)レベル、アドレナリンレベル、又は当技術分野で既知の活動レベルを決定するのに適した他のデータのうちの1つ以上を含むセンサデータを受信し得る。他のセンサデータは、加速度計、パルスオキシメータ、温度計、又はカメラなど、当技術分野で公知である1つ以上の対応するセンサから受信され得る。センサは、心臓ペースメーカシステム300の一部を形成してもよく、又はシステムの外部にあってもよい。
【0097】
図5は、呼吸信号によって一時的に変調された周期的又は周期性の電気刺激信号を決定するための方法500を示し、この方法は、図3を参照して前述したコントローラによって実行され得る。
【0098】
患者の心臓をペーシングするためのペーシング信号を提供するための方法500であって、方法は、
呼吸データを含むセンサデータを受信すること502と、
センサデータに基づいて、ペーシング信号のRSA係数を決定すること504と、
センサデータに基づいてペーシング信号のCRPS係数を決定すること506と、
RSA係数及びCRPS係数に従ってペーシング信号を提供すること508と、を含む、方法。
【0099】
呼吸を示す第1の入力信号を用いて刺激信号のタイミングの生成を制御することは、本方法500が直接的な生理学的フィードバックを提供することを意味する。
【0100】
コントローラは、コンピュータ実装可能な方法としての方法500を含む、本明細書に記載された任意の方法を実行するように構成され得る。コントローラは、1つ以上のプロセッサ及びメモリを備え得、メモリは、プロセッサに本明細書に記載された任意の方法を遂行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを含み得る。
【0101】
コンピュータ上で実行されると、本明細書に開示される任意の方法を遂行するように、心臓ペースメーカのためのコントローラを含む任意の装置をコンピュータに構成させるコンピュータプログラムが提供され得る。コンピュータプログラムは、ソフトウェア実装態様であってもよい。コンピュータは、コンピュータプログラムによって定義された方法を実行するように構成された1つ以上のプロセッサ及びメモリを含む、適切なハードウェアを備え得る。
【0102】
本開示の更なる態様によれば、本明細書に記載された任意のコンピュータ実装可能方法をプロセッサに実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータプログラムは、ディスク若しくはメモリデバイスなどの物理的なコンピュータ可読媒体であるコンピュータ可読媒体上に提供され得るか、又は一過性の信号として具現化され得る。このような一過性の信号は、インターネットのダウンロードを含むネットワークのダウンロードであり得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
【国際調査報告】