(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ブロモアルカン酸のアンモノリシスのための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 227/08 20060101AFI20240126BHJP
C07C 229/08 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C07C227/08
C07C229/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546228
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 FR2022050165
(87)【国際公開番号】W WO2022167748
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ドヴォー, ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ピース, ベルナール
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC46
4H006AC52
4H006AD15
4H006AD16
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BU32
(57)【要約】
本発明は、対応するω-ブロモアルカン酸とアンモニアとの反応による式NH2-(CH2)n-COOH(式中、nは9~11の整数である)のω-アミノアルカン酸の製造のための方法であって、以下の工程:
i)ω-ブロモアルカン酸と過剰のアンモニア水溶液との反応、および
ii)反応混合物から形成されたω-アミノアルカン酸の分離
を含む方法において、
アンモニア水溶液が35重量%~70重量%の濃度を示し、工程i)が、大気圧よりも高い、絶対圧0.11~2.0MPaの圧力下で行われることを特徴とする、方法を主に対象とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するω-ブロモアルカン酸とアンモニアとの反応による式NH
2-(CH
2)
n-COOH(式中、nは9~11の整数である)のω-アミノアルカン酸の製造のための方法であって、以下の工程:
i)ω-ブロモアルカン酸と過剰のアンモニア水溶液との反応、および
ii)反応混合物から形成されたω-アミノアルカン酸の分離
を含む方法において、
アンモニア水溶液が35重量%~70重量%の濃度を示し、工程i)が、大気圧よりも高い、絶対圧0.11~2.0MPaの圧力下で行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程i)が0と60℃の間の温度で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程i)が一定温度で行われる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程i)が、上昇している温度で行われる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
工程i)が、上昇している温度で行われ、初期温度が0~25℃の範囲であり、最終温度が26~60℃の範囲である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
アンモニア水溶液が36重量%~60重量%、好ましくは38重量%~45重量%の濃度を示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程i)の開始時のω-ブロモアルカン酸のアンモニア水溶液に対する重量比が1:3~1:20である、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程が絶対圧0.125~0.5MPaの圧力下で行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程が絶対圧0.13~0.3MPaの圧力下で行われる、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
連続的に行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
バッチ式で行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
工程ii)の結果得られたω-アミノアルカン酸を洗浄し排液する工程iii)を追加的に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程ii)またはiii)の結果得られた粗ω-アミノアルカン酸を、好ましくは沸騰水からの再結晶により精製する工程iv)を追加的に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程ii)、iii)、および/またはiv)で得られた様々な濾液および水性洗浄液中の残留ω-アミノアルカン酸を、特にアンモニアの脱ガス、液-液抽出、結晶化、濾過、および洗浄によって回収する工程v)を追加的に含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
得られたω-アミノアルカン酸を乾燥する工程vi)を追加的に含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、ポリアミドのモノマーとして有用な、対応するω-アミノアルカン酸を製造するためのω-ブロモアルカン酸のアンモノリシスのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを使用して、ω-アミノアルカン酸NH2-(CH2)n-CO2Hを得るための、式Br-(CH2)n-COOH(n=9~11)のω-ブロモアルカン酸のアンモノリシスのための方法は公知である。
【0003】
したがって文献FR988699は、10-ブロモデカン酸と25%アンモニア水溶液とを15℃で6日間反応させて、10-アミノデカン酸を収率77%で形成することを記載している。この方法は、非常に長い反応時間という不利な点を示している。
【0004】
温度を増加させることにより反応を加速することが可能になるが、副反応を促進する。
【0005】
したがって、文献FR928265において、密閉容器内で、したがって自生圧力下で60℃で10時間行われた、11-ブロモウンデカン酸と25%アンモニア水溶液との反応が報告されている。この反応の収率は53%であるので、非常に低い。
【0006】
これは、アンモノリシスが行われる際に、特に式HO2C-(CH2)n-NH-(CH2)n-CO2Hの第2級アミンがある程度大きな量で副生成するからである。この不純物は、ポリアミドを製造するためのω-アミノアルカン酸の使用時に問題となり、なぜなら鎖分岐をもたらすからである。この第2級アミンは収率を低下させ、所望の第1級アミンから分離することが難しいため、この形成を最小限にすることが望まれる。
【0007】
特許出願CN103804209Bは、実施例3において、溶媒および相間移動触媒の存在下、0.1~0.15MPaの圧力下での11-ブロモウンデカン酸と無水アンモニアとのアンモノリシスを記載している。この方法により、反応時間を24時間未満に削減することが可能になるが、この方法は非常に希薄な媒体中で作動し、したがって大きな工業プラントを必要とし、まだあまり大きくない収率84.3%を示す。
【0008】
特許出願EP2358662B1は、増加する温度プロファイルを用いて反応を行い、初期温度15~25℃と最終温度26~40℃の間の規則的な定常期による温度上昇に反応媒体を供することにより、11-ブロモウンデカン酸のアンモノリシスのための反応時間およびさらには2次反応を減少させることを提案している。
【0009】
プラントの大きさを抑えつつ第2級アミンの生成を最小限にすることが可能となる技術的解決法は、探求がいまだ進行中である。
【発明の概要】
【0010】
前述の問題のうちの1つまたは複数に対する解決法を提供することが本発明の目的である。
【0011】
これは、アンモニア水溶液の力価を35重量%よりも高くすることと、圧力を大気圧よりも高くすることとを組み合わせることにより、生成される第2級アミンの量を制御し、したがって収率を増加させながら反応を加速することが可能になるという意外な観察に本発明が基づくからである。
【0012】
したがって、第1の態様によれば、本発明の主題は、対応するブロモアルカン酸とアンモニアとの反応による式NH2-(CH2)n-COOH(式中、nは9~11の整数である)のω-アミノアルカン酸の製造のための方法であって、以下の工程:
i)ω-ブロモアルカン酸と過剰のアンモニア水溶液との反応、
ii)反応混合物から形成されたω-アミノアルカン酸の分離
を含む方法において、
アンモニア水溶液が35重量%~70重量%の濃度を示し、工程i)が、大気圧よりも高い、絶対圧0.11~2.0MPaの圧力下で行われることを特徴とする、方法である。
【0013】
好ましくは、工程i)は、0~60℃の温度で行われる。これは一定温度で、または上昇している温度で行われてもよい。上昇している温度で行われる場合、工程i)は、0~25℃の範囲の初期温度、および26~60℃の範囲の最終温度を用いて有利に行われてもよい。
【0014】
好ましくは、アンモニア水溶液は、36重量%~60重量%、好ましくは38重量%~45重量%の濃度を示す。
【0015】
有利には、工程i)の開始時のω-ブロモアルカン酸のアンモニア水溶液に対する重量比は、1:3~1:20である。
【0016】
本発明による方法の工程i)は、特に絶対圧0.125~0.5MPa、またはさらには絶対圧0.13~0.3MPaの圧力下で行われてもよい。
【0017】
本発明の方法は、連続的に、またはバッチ式で行われてもよい。
【0018】
有利には、本発明による方法は、工程ii)の結果得られたω-アミノアルカン酸を洗浄し排液する工程iii)を追加的に含む。
【0019】
方法は、工程ii)またはiii)の結果得られた粗ω-アミノアルカン酸を、好ましくは沸騰水からの再結晶により精製する工程iv)を追加的に含むことができる。
【0020】
さらに、方法は、工程ii)、iii)、および/またはiv)で得られた様々な濾液および水性洗浄液中の残留ω-アミノアルカン酸を、特にアンモニアの脱ガス、液-液抽出、結晶化、濾過、および洗浄によって回収する工程v)も追加で含むことができる。
【0021】
最後に、本発明の方法は、得られたω-アミノアルカン酸を乾燥する工程vi)を追加的に含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
用語の定義
本開示を通して、別段の言及がない限り、パーセントは考慮中の組成物に対する重量パーセントとして理解される。
【0023】
さらに、本開示で与えられる圧力値は、別段の言及がない限り、絶対圧力値、すなわち絶対真空に対する絶対圧力値として理解される。
【0024】
「アンモニア水溶液」という用語は、NH3の水中の溶液を意味すると理解される。そのアンモニア含有量は、溶液(NH3および水)の重量に対するNH3の重量として表される。
【0025】
本発明によれば、対応するω-ブロモアルカン酸とアンモニアとの反応による式NH2-(CH2)n-COOH(式中、nは9~11の整数である)のω-アミノアルカン酸の製造のための方法は、したがって、以下の工程:
i)ω-ブロモアルカン酸と過剰のアンモニア水溶液との反応、
ii)反応混合物から形成されたω-アミノアルカン酸の分離
を含み、
アンモニア水溶液が35重量%~70重量%の濃度を示し、工程i)が、大気圧よりも高い、絶対圧0.11~2.0MPaの圧力下で行われることを特徴とする。ω-ブロモアルカン酸は、10-ブロモデカン酸、11-ブロモウンデカン酸、または12-ブロモドデカン酸とすることができる。
【0026】
これらのω-ブロモアルカン酸は、特に、対応する不飽和酸、すなわち9-デカン酸、10-ウンデカン酸、または11-ドデカン酸のホモ臭素化反応によって得ることができる。これらの化合物は市販されている。さらに、9-デカン酸は、WO2018/080869に記載の方法に従って、オレイン酸系植物油から得ることができる。10-ウンデカン酸は、FR928265に従って、ヒマシ油から得ることができる。
【0027】
ω-ブロモアルカン酸の名称は、多少精製された形態の前記化合物を指すように使用され、したがってその可能性のある不純物を含む。市販のω-ブロモアルカン酸は、一般に98%を超える純度を有する。しかしながら、一実施形態によれば、使用されるω-ブロモアルカン酸の純度は90%~98%、好ましくは93%~96%とすることもできる。ω-ブロモアルカン酸は、不純物として、特に式CH3-CH2Br-(CH2)n-2-CO2Hのブロモアルカン酸を含有しうる。
【0028】
本発明の方法は、ω-ブロモアルカン酸を過剰のアンモニア水溶液と混合し、次いで反応させる工程i)をまず第1に含む。
【0029】
ω-ブロモアルカン酸は、固体形態で、または液体形態で、特に溶融状態で添加することができる。固体形態は、粉末、顆粒、またはフレークとすることができる。有利には、ω-ブロモアルカン酸は、好ましくはその融点よりも高い5~60℃、好ましくは10~40℃、特に15~30℃の温度で溶融状態で使用する。
【0030】
本発明によれば、使用されるアンモニア水溶液は、35重量%~70重量%のアンモニアを含有する。好ましくは、アンモニア水溶液は、36重量%~60重量%、より好ましくは38重量%~45重量%のアンモニアを含有する。一実施形態によれば、アンモニア水溶液のアンモニア含有量は、35重量%~40重量%、または40重量%~45重量%、または45重量%~50重量%、または50重量%~55重量%、または55重量%~60重量%、または60重量%~65重量%、またはさらには65重量%~70重量%とすることができる。
【0031】
有利には、このアンモニア水溶液の一部は、本方法の出口の反応媒体に存在する過剰アンモニアおよびアンモニウムの回収に由来する。
【0032】
有利には、反応器に導入されたアンモニア水溶液は、25℃以下の温度を示す。好ましくは、アンモニア水溶液は、-20℃~20℃の温度、好ましくは-10~10℃の温度に冷却する。
【0033】
工程i)で導入されるω-ブロモアルカン酸のアンモニア水溶液に対する重量比は、アンモニアが化学量論的に過剰に存在するような重量比である。この過剰は、反応を促進させるだけでなく、ω-ブロモアルカン酸および形成された生成物を分散または希釈することも可能にする。一般に、重量比は1:20~1:3、好ましくは1:10~1:4、および好ましくは1:8~1:4である。本明細書において「重量比」という用語は、バッチ式の方法の場合に使用される反応物の重量比と、連続的な方法の場合の反応物の重量による流量比の両方を指す。
【0034】
本発明の方法は、形成されたω-ブロモアルカン酸を反応混合物から分離する工程ii)をさらに含む。
【0035】
反応混合物は一般に不均一である。これは、気相、1種もしくは複数の液相、および/または1種もしくは複数の固体相を特に含みうる。
【0036】
本発明の方法は、連続的に、またはバッチ式で行うことができる。
【0037】
方法を連続的に行う場合、反応物の混合は、撹拌機を備えた槽で行うことができる。代替の形態において、外部の混合装置、例えば静的ミキサー、ベンチュリ装置、またはω-ブロモアルカン酸を注入する再循環ループでも混合を行うことができる。
【0038】
方法の工程i)は、同じ装置で行うことができる。一実施形態によれば、工程i)は、1つまたは複数の撹拌槽で行うことができる。好ましい実施形態によれば、工程i)は、直列に接続された一連の2~25個の反応器で行い、ここで反応混合物は、ポンプを使用して、または重力流により1つの反応器から他の反応器へ送られる。各反応器は、撹拌を備えた槽からなることができる。この撹拌は、反応器内の撹拌モジュールまたは外部再循環により生じさせることができる。
【0039】
好ましくは、工程i)は、0~60℃の温度で行われる。一実施形態によれば、温度は、0~5℃、または5~10℃、または10~15℃、または15~20℃、または20~25℃、または25~30℃、または30~35℃、または35~40℃、または40~45℃、または45~50℃、または50~55℃、またはさらには55~60℃とすることができる。
【0040】
反応器の温度は、反応器のジャケット中の伝熱流体の循環、もしくは反応器内もしくは反応器外の熱交換器によって、または1つもしくは複数の反応器への熱流体、特に水もしくは蒸気の注入によって有利に制御することができる。
【0041】
温度は、後でより詳細に説明するように、アンモニアの一部を蒸発させて反応媒体を冷却することによって制御することもできる。
【0042】
方法を一連の反応器で行う場合、上で説明したように、第1の反応器の温度は好ましくは0~25℃、最後の反応器の温度は26~60℃であり、温度は反応器から反応器へと増加する。このような場合、各反応器に個別の温度制御を備えることが有利である。有利には、第1の反応機を冷却することができ、最後の反応器を加熱することができる。
【0043】
工程i)の総滞留時間(反応器中の液相の体積の合計と、反応物の流量の合計との比として計算される)は、一般に20~100時間、好ましくは40~80時間である。
【0044】
第2の代替の実施形態によれば、方法の工程i)は、反応器においてバッチ式で行い、反応器は、撹拌手段を備えた槽とすることができる。一実施形態によれば、反応物を反応器外で混合し、次に混合物として反応器に導入する。別の実施形態によれば、アンモニア溶液をまず反応器に導入し、次にω-ブロモアルカン酸を加える。
【0045】
アンモニア水溶液中でのω-ブロモアルカン酸の混合は、撹拌機を備えた槽内で行うことができる。代替の形態において、混合は、反応器の外部の混合装置、例えば静的ミキサーにより、または反応器に注入する前にライン中で反応物の2つの流れを混合することを可能にするベンチュリ装置により、またはさらにはω-ブロモアルカン酸を注入する反応器の外部の再循環ループにより行うことができる。
【0046】
反応物を混合した後、工程i)は、十分な時間、一般に20~100時間、好ましくは40~80時間反応媒体を撹拌したままにすることにある。
【0047】
一実施形態によれば、工程i)の反応は、等温的に、すなわち反応時間中を通して1つの同じ値に調整された温度で行う。
【0048】
この場合、工程i)は、0~60℃の温度で行う。一実施形態によれば、温度は、0~5℃、または5~10℃、または10~15℃、または15~20℃、または20~25℃、または25~30℃、または30~35℃、または35~40℃、または40~45℃、または45~50℃、または50~55℃、またはさらには55~60℃とすることができる。
【0049】
別の実施形態によれば、反応は、増加温度モードで行う。想定しうる様々な熱プロファイルの中で、特に0~25℃の初期温度から26~60℃の最終温度までの範囲で上昇している温度で定常期を設けることが有利であるとわかっている。
【0050】
代替の実施形態によれば、工程i)は、並列のR1、R2、・・・Rn(2≦n≦25)の一連の反応器で行い、反応器は独立して可変温度で維持される。各反応器は、所定の時間にわたり温度を上昇させるための利用可能なプログラムを有し、その時間は選択された温度に依存する。各反応器において、プログラムの初期温度は優先的には0~25℃であり、最終温度は26~60℃である。一連の反応器の入口および出口で、供給と引出しを一定、規則的、および連続的に保つために、各反応器は、反応器の数(n)で割った反応時間に相当する時間のオフセットを有する装入/反応/放出のサイクルに従って作動する。
【0051】
代替形態の全てにおいて、一般的にガス上部空間の頂部地点で測定される反応器の圧力は、工程i)の間、大気圧よりも高く保つ。これは、それによって液体反応相中で高濃度のアンモニアを維持することが可能となり、これにより第1級アミンの高選択性が促進されるからである。したがって、不純物、特に第2級アミン、実際にはさらに第3級アミンの生成を制限することが可能である。しかしながら、反応器のコストを制限するために、圧力を制限することが好ましいことになる。
【0052】
したがって、反応器の圧力は、絶対圧0.11~2.0MPa、好ましくは絶対圧0.125~0.5MPa、好ましくは絶対圧0.13~0.3MPaである。一実施形態によれば、圧力は、絶対圧0.11~0.15MPa、または絶対圧0.15~0.2MPa、または絶対圧0.2~0.25MPa、または絶対圧0.25~0.3MPa、または絶対圧0.3~0.35MPa、または絶対圧0.35~0.4MPa、または絶対圧0.4~0.45MPa、または絶対圧0.45~0.5MPa、または絶対圧0.5~0.55MPa、または絶対圧0.55~0.6MPa、または絶対圧0.6~0.65MPa、または絶対圧0.65~0.7MPa、または絶対圧0.7~0.75MPa、または絶対圧0.75~0.8MPa、または絶対圧0.8~0.85MPa、または絶対圧0.85~0.9MPa、または絶対圧0.9~0.95MPa、または絶対圧0.95~1.0MPa、または絶対圧1.0~1.05MPa、または絶対圧1.05~1.1MPa、または絶対圧1.10~1.15MPa、または絶対圧1.15~1.2MPa、または絶対圧1.2~1.25MPa、または絶対圧1.25~1.3MPa、または絶対圧1.3~1.35MPa、または絶対圧1.35~1.4MPa、または絶対圧1.4~1.45MPa、または絶対圧1.45~1.5MPa、または絶対圧1.5~1.55MPa、または絶対圧1.55~1.6MPa、または絶対圧1.6~1.65MPa、または絶対圧1.65~1.7MPa、または絶対圧1.7~1.75MPa、または絶対圧1.75~1.8MPa、または絶対圧1.8~1.85MPa、または絶対圧1.85~1.9MPa、または絶対圧1.9~1.95MPa、または絶対圧1.95~2.0MPaとすることができる。
【0053】
工程i)をいくつかの反応器で行う場合、反応器の開口部は、反応器が実質的に同一の圧力で作動するように接続することができる。別の実施形態によれば、反応器を異なる圧力下に置くことが有利でありうる。したがって、上で説明したように、温度が反応器から反応器へと増加する方式で行う場合、反応器の圧力も反応器から反応器へと増加させることができる。一実施形態によれば、反応器内に広がる圧力は、反応混合物の組成およびその温度に関連する主にアンモニアの蒸気圧によってかけられる自生圧力である。
【0054】
一実施形態によれば、反応媒体の温度を維持するため、アンモニアの一部の蒸発が可能である。したがって、連続的に作動させる場合、この手段によって第1の反応器を冷却することが可能である。バッチ式で作動させる場合、反応開始時にこの手段によって反応器を冷却することが可能である。アンモニアの蒸発の流量を調整する(この場合、圧力を取り扱う)か、または液体-蒸気平衡よりもわずかに低い圧力をかけてアンモニアの蒸発を取り扱うかのいずれかが可能である。有利には、注入されたアンモニアのうちの0.1%~50%、好ましくは10%~30%が工程i)の間に蒸発する。反応中の熱プロファイルを維持するために、反応媒体から蒸発するアンモニアの量をどのように調節するかは当業者に公知である。この形式の作動により、最適収率を可能にする温度プロファイルをもたらしながら、高価な熱交換装置を制限または回避することが可能となる。
【0055】
したがって、本発明の方法により、形成する第2級アミンの量を大きく制限し、結果として反応の収率を高くすることが可能になる。
【0056】
本発明によれば、方法は、工程i)の結果、反応混合物からω-アミノアルカン酸を分離する工程ii)を追加的に含む。
【0057】
工程i)の結果形成したω-アミノアルカン酸は、それ自体慣例的な方式で、例えば以下の工程により、反応混合物から分離することができる。
【0058】
工程i)から生じた反応混合物は水中で希釈し、沸騰するまで加熱することができる。放出されたアンモニアを水中で洗浄してアンモニア水溶液を形成し、これを本方法の工程i)にリサイクルすることができる。アンモニアが枯渇した反応混合物を次に、高温条件下に置くことによる分離によって、形成する可能性のある油層から分離することができ、その後、冷却して、再結晶および固-液分離によりω-アミノアルカン酸を分離する。
【0059】
さらに、固-液分離から回収された臭化アンモニウムに富む濾液を、例えば水酸化ナトリウムで処理することができ、これはアンモニア(蒸発させ、次に水中で洗浄する)を再形成し、アンモニア水溶液を得る目的のためである。
【0060】
ω-アミノアルカン酸は、アンモニアを除去するために、ストリッピング工程によって、工程i)の結果得られた反応混合物から分離することもでき、これを水中で洗浄し、その後、固-液分離、例えば濾過器での濾過または排液を行う。回収された母液は、液-液抽出、再結晶、および/または濾過を経て、臭化アンモニウムに富み、かつω-アミノアルカン酸が枯渇した水溶液を形成することができる。臭化アンモニウムに富むこの水溶液を水酸化ナトリウムで処理してアンモニアを再形成し、これを蒸発させ、次に水中で洗浄して、アンモニア水溶液を形成することができる。
【0061】
本発明の方法は、工程ii)で得られたω-アミノアルカン酸を洗浄および排液に供する追加の工程iii)も含むことができる。洗浄は、特に水を用いて行うことができる。
【0062】
本発明の方法は、工程ii)またはiii)の結果得られた粗ω-アミノアルカン酸を精製する工程iv)を追加的に含むことができる。
【0063】
この精製工程は、以下の操作:適切な溶媒、例えば水または塩基性もしくは酸性水溶液、例えば水とカルボン酸の混合物中での再結晶、濾過、洗浄、および排液のうちの1つまたは複数を特に含むことができる。好ましくは、得られた粗ω-アミノアルカン酸は、非常に高温の水からの再結晶によって精製する。
【0064】
したがって、本発明の方法は、工程ii)、iii)、および/またはiv)で得られた様々な濾液および水性洗浄液中の残留ω-アミノアルカン酸を、特にアンモニアの脱ガス、液-液抽出、結晶化、濾過、および洗浄によって回収する工程v)を追加的に含むことができる。
【0065】
最後に、本発明の方法は、得られたω-アミノアルカン酸を乾燥する工程vi)を追加的に含むことができる。
【0066】
有利には、本発明による方法により、工程i)の結果、したがって精製前に、ω-アミノアルカン酸の含有量に対するω-アミノジアルカン酸の含有量が1.8重量%未満、好ましくは1.5重量%未満である、ω-アミノアルカン酸を得ることが可能になる。
【0067】
さらに、本発明による方法により、有利には、75時間未満の反応時間で、アンモノリシス工程i)の時間にわたるω-ブロモアルカン酸の完全な変換が可能となる。
【0068】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0069】
実施例1
5枚の羽根を有する2つのプロペラを有する機械式撹拌機、および400rpmで回転するラシュトン型タービン、および伝熱流体の循環を可能にするコイル、および絶対圧0.15MPaに設定された排出バルブを備えた1リットルのオートクレーブに、0℃に冷却した40重量%アンモニア水溶液660gを入れ、次いで反応器を閉める。90℃の溶融した11-ブロモウンデカン酸(純度98%)110gを迅速に滴下添加し、次いでコイル中で循環する伝熱流体により反応媒体の温度を22℃に調節する。圧力を絶対圧0.15MPaに非常に迅速に調節し、反応時間中にわたってこの値で維持する。12時間30後、反応媒体の温度を上げて、24、26、28、30、および32℃でそれぞれ12時間30の定常期を逐次行う。続いて反応器の開口部を開けて反応器を大気圧にする。
【0070】
次に反応媒体を分析する。銀電極を用いて硝酸銀で臭化物イオンを定量測定することにより、11-ブロモウンデカン酸が全て反応していることが見出される。外部校正を用いたHPLC定量測定により、11-アミノウンデカン酸に対して1.3重量%の11-アミノジウンデカン酸が測定される。
【0071】
例2(比較例)
実施例1を繰り返すが、実験時間を通して大気圧で作動させながら、かつ溶融11-ブロモウンデカン酸の添加速度を制御して、媒体が制御されずに発泡しないようにしながら行う。
【0072】
反応媒体の分析により、11-ブロモウンデカン酸が全て反応していることが示される。11-アミノウンデカン酸に対して1.9重量%の11-アミノジウンデカン酸が測定される。
【0073】
例3(比較例)
実施例1を繰り返すが、実験時間を通して大気圧で作動させながら、かつ32重量%アンモニア水溶液660gを使用しながら行う。
【0074】
反応媒体の分析により、11-ブロモウンデカン酸が全て反応していることが示される。11-アミノウンデカン酸に対して2.0重量%の11-アミノジウンデカン酸が測定される。
【0075】
[引用文献リスト]
FR988699
WO2018/080869A1
FR928265
CN103804209B
EP2358662B1
【国際調査報告】