(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ステアリン酸及びラウリン酸残基の飽和脂肪酸を含む肉類似組成物
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20240126BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240126BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20240126BHJP
A23J 3/18 20060101ALI20240126BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20240126BHJP
A23J 3/22 20060101ALI20240126BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20240126BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240126BHJP
【FI】
A23J3/00 503
A23J3/14
A23J3/16
A23J3/18
A23D7/005
A23J3/22
A23D7/00 504
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546255
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 SE2022050092
(87)【国際公開番号】W WO2022164377
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519420791
【氏名又は名称】エーエーケー エービー (ピーユービーエル)
【氏名又は名称原語表記】AAK AB (publ)
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ドゥムリス イェルーン
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG03
4B026DH01
4B026DL04
4B026DL10
4B026DX02
4B042AC05
4B042AD36
4B042AE03
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK13
4B042AK20
4B042AP04
4B042AP14
4B042AP18
4B042AP21
(57)【要約】
肉類似組成物は、2重量%~20重量%の脂肪組成物;5重量%~30重量%の非動物性タンパク質;及び30重量%~70重量%の水を含み;脂肪組成物が、20重量%~85重量%の飽和脂肪酸残基;10重量%~50重量%のステアリン酸残基(C18:0);及び2重量%~35重量%のラウリン酸残基(C12:0)を含み;脂肪酸残基の前記パーセンテージが、脂肪組成物中のグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重量%~20重量%の脂肪組成物、5重量%~30重量%の非動物性タンパク質、及び30重量%~70重量%の水を含み、前記脂肪組成物が、20重量%~85重量%の飽和脂肪酸残基、10重量%~50重量%のステアリン酸残基(C18:0)、及び2重量%~35重量%のラウリン酸残基(C12:0)を含み、脂肪酸残基の前記パーセンテージが、前記脂肪組成物中のグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ前記脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである、肉類似組成物。
【請求項2】
脂肪組成物が、20重量%~70重量%の飽和脂肪酸、例えば20重量%~60重量%の飽和脂肪酸、好ましくは65重量%~85重量%の飽和脂肪酸又は20重量%~65重量%の飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の肉類似組成物。
【請求項3】
脂肪組成物が10重量%未満のパーム油を含み、好ましくは前記組成物が5重量%未満のパーム油を含み、より好ましくは前記組成物が2重量%未満のパーム油を含み、最も好ましくは前記組成物がパーム油を含まない、請求項1又は2に記載の肉類似組成物。
【請求項4】
脂肪組成物が、非水素化脂肪組成物である、請求項1~3のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項5】
脂肪組成物が、20重量%以下、好ましくは10重量%以下のパルミチン酸(C16:0)を含む、請求項1~4のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項6】
脂肪組成物が、1:1~12:1のステアリン酸(C18:0)とパルミチン酸(C16:0)との重量比を有する、請求項1~5のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項7】
脂肪組成物が、1:4~4:1のラウリン酸(C12:0)とステアリン酸(C18:0)との重量比を有する、請求項1~6のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項8】
脂肪組成物が、10重量%~25重量%のラウリン酸(C12:0)、及び/又は15重量%~45重量%のステアリン酸(C18:0)を含む、請求項1~7のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項9】
(i) 脂肪組成物が、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された、10未満の、好ましくは1~9の、より好ましくは2~8の固体脂肪含量(SFC)N40を有する、
(ii) 前記脂肪組成物が、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された、35~60の、好ましくは25~56の、より好ましくは20~40の固体脂肪含量(SFC)N20を有する、及び/又は
(iii) 前記脂肪組成物が、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された、5~35の、好ましくは8~32の、より好ましくは8~30の固体脂肪含量(SFC)N30を有する、
請求項1~8のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項10】
脂肪組成物がエステル交換された脂肪を含み、好ましくは前記脂肪組成物が、エステル交換された脂肪のブレンドを含む、請求項1~9のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項11】
エステル交換された脂肪又はエステル交換された脂肪のブレンドが、化学的エステル交換、酵素的エステル交換、又はこれらの組合せにより生成されている、請求項10に記載の肉類似組成物。
【請求項12】
エステル交換された脂肪又はエステル交換された脂肪のブレンドが、平衡生成物分布に達する前に停止されるエステル交換反応によって生成される、請求項10又は11に記載の肉類似組成物。
【請求項13】
脂肪組成物が、シアバター、シアステアリン、シアオレイン、ココアバター、ココアステアリン、ココアオレイン、アランブラキア脂肪、コクム脂肪、マンゴー核脂肪、サル脂肪、イリッペバター、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の脂肪;並びにヤシ油、ヤシ油ステアリン、ヤシ油オレイン、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ババス油、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の油を含む、エステル交換された脂肪のブレンドを含む、請求項1~12のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項14】
脂肪組成物が、シアバター及びヤシ油のエステル交換化ブレンド、又はシアステアリン及びヤシ油のエステル交換化ブレンドを含む、請求項1~13のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項15】
脂肪組成物が、20重量%~80重量%のシアバターと20重量%~80重量%のヤシ油とのエステル交換化ブレンドを含む、請求項1~14のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項16】
脂肪組成物が、20重量%~80重量%のシアステアリンと20重量%~80重量%のヤシ油とのエステル交換化ブレンドを含む、請求項1~15のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項17】
脂肪組成物が、(i)20%~80重量%のシアバター及び/又はシアステアリンと20重量%~80重量%のヤシ油との20重量%~80重量%のエステル交換化ブレンド、及び(ii)20重量%~80重量%のヒマワリ油の、ブレンドを含む、請求項1~16のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項18】
脂肪組成物が、5~35重量パーセントのCN46及びCN48トリグリセリド、好ましくは10~30重量%のCN46及びCN48トリグリセリドを含む、請求項1~17のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項19】
脂肪組成物が、2~12重量パーセントのSt2Mトリグリセリド、好ましくは5~12重量パーセントのSt2Mトリグリセリドを含む、請求項1~18のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項20】
非動物性タンパク質が、真菌、植物、又はこれらの組合せから誘導されたタンパク質を含む、請求項1~19のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項21】
非動物性タンパク質が植物性タンパク質を含み、好ましくは前記植物性タンパク質が、藻類タンパク質、ブラックビーンタンパク質、キャノーラコムギタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、ソラマメタンパク質、レンズマメタンパク質、ハウチワマメタンパク質、リョクトウタンパク質、エンバクタンパク質、エンドウマメタンパク質、ジャガイモタンパク質、コメタンパク質、ダイズタンパク質、ヒマワリ種子タンパク質、コムギタンパク質、ホワイトビーンタンパク質、及びタンパク質単離物、又はこれらの濃縮物から選択される、請求項1~20のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項22】
非動物性タンパク質が、セイタン、コメタンパク質、キノコタンパク質、マメ科植物タンパク質、テンペ、ヤムイモ粉、豆腐、マイコプロテイン、ピーナツ粉、湯葉、又はこれらの組合せを含む、請求項1~21のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項23】
非動物性タンパク質が、組織化植物性タンパク質を含み、好ましくは前記組織化植物性タンパク質が、組織化エンドウマメタンパク質、組織化ソラマメタンパク質、又はこれらの組合せを含む、請求項1~22のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項24】
組織化植物性タンパク質が、肉類似組成物の10重量%~20重量%の量で前記肉類似組成物中に存在する、請求項23に記載の肉類似組成物。
【請求項25】
肉類似組成物が、安定化剤ブレンドを含む、請求項1~24のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項26】
安定化剤ブレンドが、肉類似組成物の5重量%~10重量%の量で前記肉類似組成物中に存在する、請求項25に記載の肉類似組成物。
【請求項27】
安定化剤ブレンドが、植物由来タンパク質、植物繊維、及び多糖を含み、好ましくは、前記植物由来タンパク質がエンドウマメタンパク質を含み、前記植物繊維がエンドウマメ繊維を含み、及び前記多糖がメチルセルロースを含む、請求項25又は26に記載の肉類似組成物。
【請求項28】
肉類似組成物が、1種又は2種以上のフレーバー添加剤を含み、好ましくは前記1種又は2種以上のフレーバー添加剤が、前記肉類似組成物の0.5重量%~2重量%の量で存在する、請求項1~27のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項29】
肉類似組成物が、1種又は2種以上の着色添加剤を含み、前記1種又は2種以上の着色添加剤が、前記肉類似組成物の0.5重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~28のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項30】
組成物がさらに、i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、カラギーナン及びこれらの塩、アルギン酸及びその塩、寒天、アガロース、アガロペクチン、ペクチン、及びアルギネートから好ましくは選択される、多糖及び/又は変性多糖、ii)ヒドロコロイド、及びiii)キサンタンガム、グアールガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、植物ガム、タラガム、トラガカントガム、コンニャクガム、フェヌグリークガム、及びカラヤガムから好ましくは選択されるガムの、1種又は2種以上を含む、請求項1~29のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項31】
肉類似組成物が、さらに、イオン性又は非イオン性の乳化剤、ポリヒドロキシ化合物、乳、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物、デンプン、塩、スパイス、繊維、フレーバー成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存料、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、酸度調節剤を含む、請求項1~30のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項32】
脂肪組成物が、肉類似組成物の7.5重量%~20重量%の量で前記肉類似組成物中に存在する、請求項1~31のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項33】
非動物性タンパク質が、肉類似組成物の10重量%~30重量%、好ましくは前記肉類似組成物の15重量%~30重量%の量で、前記肉類似組成物中に存在する、請求項1~32のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項34】
肉類似組成物が、動物性タンパク質を実質的に含まず、好ましくは前記肉類似組成物が動物性タンパク質を含まない、請求項1~33のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項35】
肉類似組成物が、動物由来生成物を実質的に含まず、好ましくは前記肉類似組成物が動物由来タンパク質を含まない、請求項1~34のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項36】
肉類似組成物が、さらに、動物油、魚油、動物由来タンパク質、動物由来多糖、又はこれらの任意の組合せなどの1種又は2種以上の動物由来生成物を含む、請求項1~35のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項37】
1種又は2種以上の動物由来生成物が、動物乳タンパク質、動物乳脂肪、又はこれらの組合せを含む、請求項36に記載の肉類似組成物。
【請求項38】
1種又は2種以上の動物由来生成物が、肉類似組成物中に、前記肉類似組成物の1重量%~20重量%の量で存在する、請求項36又は37に記載の肉類似組成物。
【請求項39】
脂肪組成物が、請求項10~16のいずれかで定義されたエステル交換化ブレンドと、少なくとも1種の追加の脂肪又は油とを含み、好ましくは前記少なくとも1種の追加の脂肪又は油がラウリン酸脂肪又は油を含み、より好ましくは前記ラウリン酸脂肪又は油が、ヤシ油、ヤシ油ステアリン、ヤシ油オレイン、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ババス油、又はこれらの混合物を含み、最も好ましくは前記少なくとも1種の追加の脂肪又は油がヤシ油を含む、請求項1~38のいずれかに記載の肉類似組成物。
【請求項40】
脂肪組成物が、エステル交換化脂肪ブレンドを前記脂肪組成物の50重量%~80重量%の量で、及び追加の脂肪又は油の総量を前記脂肪組成物の20重量%~50重量%の量で含む、請求項39に記載の肉類似組成物。
【請求項41】
脂肪組成物は、エステル交換化ブレンドを、前記脂肪組成物の60重量%~80重量%の量で、及び追加の脂肪又は油の総量を前記脂肪組成物の20重量%~40重量%の量で含む、請求項39又は40に記載の肉類似組成物。
【請求項42】
請求項1~41のいずれかに記載の肉類似組成物を含む食品。
【請求項43】
食品が、調理されていない食品、調理された食品、又は部分的に調理された食品である、請求項42に記載の食品。
【請求項44】
食品が、ベジタリアン又はビーガン用の肉代用食品である、請求項42又は43に記載の食品。
【請求項45】
ベジタリアン又はビーガン用の肉代用食品が、バーガー、ソーセージ、ミートボール、ナゲット、パティ、挽肉製品、ミートローフ、又は従来の肉系食品を模倣することが意図されるその他の製品である、請求項44に記載の食品。
【請求項46】
肉類似組成物における脂肪組成物の使用であって、前記脂肪組成物が、20重量%~80重量%の飽和脂肪酸、10重量%~50重量%のステアリン酸(C18:0)、及び2重量%~35重量%のラウリン酸(C12:0)を含む、前記使用。
【請求項47】
肉類似組成物を食品に使用することをさらに含む、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
肉類似組成物、脂肪組成物、及び/又は食品が、請求項1~45のいずれかで定義された通りである、請求項46又は47に記載の使用。
【請求項49】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに肉類似組成物の栄養プロファイルを改善するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項46~48のいずれかに記載の使用。
【請求項50】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに肉類似組成物の消費者におけるインビボコレステロールレベルに対する影響を改善するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較した場合、調理したときに肉類似組成物からのフレーバーの遅延放出を提供するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項46~50のいずれかに記載の使用。
【請求項52】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較した場合、調理したときに肉類似組成物の改善されたジューシーさを提供するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項46~51のいずれかに記載の使用。
【請求項53】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物を含む類似の食品と比較したときに、肉類似組成物を含む調理された食品の、表面の増大した不均質性又は実際の肉に対する増大した類似性を提供するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項46~52のいずれかに記載の使用。
【請求項54】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに、肉類似組成物に改善された加工性を提供するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項46~53のいずれかに記載の使用。
【請求項55】
請求項1~41のいずれかに記載の肉類似組成物、又は請求項42~45のいずれかに記載の食品を製造する方法であって、
(a) 水及び非動物性タンパク質の混合物を提供するステップ、
(b) ステップ(a)の前記混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせて、肉類似組成物を形成するステップ、及び
(c) 任意に前記肉類似組成物を食品に形成するステップ
を含む、前記方法。
【請求項56】
食品を調理して調理済み食品又は部分的調理済み食品を形成するステップをさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
(i)ステップ(a)で提供された水及び非動物性タンパク質の混合物;(ii)ステップ(a)の前記混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせることによって、ステップ(b)で形成された混合物;をブレンドするステップ、及び/又は(iii)ステップ(a)の前記混合物及び脂肪組成物と1種又は2種以上の追加の成分を組み合わせる前に、1種又は2種以上の追加の成分を水とブレンドするステップをさらに含む、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
脂肪組成物が、ステップ(a)の混合物及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせる前に、溶融しない、請求項55~57のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、非動物性タンパク質、及び水を含む肉類似(meat analogue)組成物と、前記肉類似組成物の、食品における使用とに関する。詳細には本発明は、肉類似組成物の様々な性質を改善するための、ある特定の脂肪組成物の、肉類似組成物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
健康に持続可能に調達された食品を食べたい、及び一般にその肉の摂取を低下させたいという消費者の増大する求めに起因して、植物系食物が益々求められている。このことが、肉類似物;肉無しのベジタリアン又はビーガン食品、即ち肉又は肉系製品のある特定の性質、例えばテクスチャー、味、及び/又は外観を模倣する食品の開発に繋がっている。
【0003】
豆腐、レンズマメ、及びマメ類をベースにし、その一部が調理中のシズル感(sizzling)及び褐変(browning)、血合い(bleeding)、色、テクスチャー、及び味に関して完全に肉を模倣することを狙っている、多くの種々のタイプの肉類似物が入手可能である。そのような肉類似物の一例は、植物系バーガーである。植物系ソーセージ、ミートボール、ミートローフ、及びナゲットなどの製品も、当技術分野で公知である。
【0004】
公知の肉類似物の典型的な組成は、50~60%の水、10~25%のタンパク質(ダイズ、エンドウマメ、ジャガイモ、及びコムギなど)、5~20%の脂肪、0~10%の炭水化物、並びに香料及び着色剤である。様々な脂肪は、肉類似組成物に使用することが提案されてきた。脂肪は、肉類似組成物がベジタリアン及びビーガンによる消費に適するように、動物由来の脂肪ではないことが重要である。したがって、典型的には室温で固体である動物脂肪は一般に肉類似組成物に使用されない。所望の肉類似物を生成するために、最終生成物は魅力的な味、テクスチャー、及び歯ざわりを有し、肉に類似した味、テクスチャー、及び歯ざわりを有することが重要である。そのような性質は一般に、肉類似組成物に含まれる脂肪の性質の影響を受ける。肉類似組成物中の脂肪の性質は、脂肪がしばしば脂肪可溶性フレーバー用の担体として機能するので、典型的には組成物のジューシーさ及びフレーバー放出にも影響を及ぼす。脂肪の性質は、肉類似組成物をバーガーパテに成型する最中など、肉類似物の生地の加工性にも重要である。脂肪の性質は、肉製品に対する視覚的類似性を提供するためにも重要である。
【0005】
ヤシ油、パーム油、ヒマワリ油、及び菜種油は、肉類似組成物における使用が提案されてきた植物由来の脂肪の例である。脂肪は、典型的には室温で固体の肉に見られる高融点動物脂肪の味、テクスチャー、及び歯ざわりなどの効果を模倣するために、比較的高い融点を有することが望ましい。その結果、ヤシ油及びパーム油は、その他の植物油と比較して比較的高い融点を有するので、関心を引き付けている。これらの油の中で、ヤシ油は、パーム油の生成に関連した負の環境影響に起因して、典型的には好ましい。さらにパーム油は、消費者のコレステロールレベルに有害であると見なされる多量のパルミチン酸残基(residue)を含有する。ヤシ油及びパーム油の両方による問題は、一般に不健康と見なされる飽和脂肪酸が高いことである。ヒマワリ油及び菜種油などの飽和脂肪酸残基がさらに低い代替の油の使用は、油の液体の性質に起因して肉類似組成物の所望の性質を損なうことが見出されている。ジューシーさなどの性質が損なわれ、油の液体の性質は、肉類似組成物の構造化の可能性がないことを意味し、肉類似組成物の成型及び加工中に問題を創出する油状の肉生地がもたらされる。その結果、ヤシ油が、肉類似組成物で使用される脂肪に関する工業規格のままである。
【0006】
本発明者の発明者らは、肉類似組成物にヤシ油を使用する様々な欠点があることを理解した。まず、上記にて論じたように、ヤシ油には飽和脂肪酸残基が多く、心疾患、望ましくないコレステロールレベル、及び関係する状態との脂肪中の飽和脂肪酸残基との関連に起因して健康上の観点から消費者には望ましくない。本発明の発明者らは、ヤシ油は、植物油に関して比較的高い融点を有するにも関わらず、急勾配の溶融曲線を有することを理解した。言い換えれば、15℃未満のさらに低い温度でヤシ油は硬く脆い固体であり、それに対して30℃~35℃のさらに高い温度では、ヤシ油は、固体脂肪を全く又はごく僅かしか含有しない液体である。より低い温度でのヤシ油の固体の硬質脆性構造は、ヤシ油がしばしば加工することが難しく、かつ製造中に肉類似組成物のその他の成分と混合することが難しいことを意味し、時にはヤシ油を予め溶融し又は加熱することが望ましいことを意味することが、本発明者により見出された。このことは、製造中のヤシ油を溶融するのに必要な余分なエネルギーに起因して、製造プロセスにおいて望ましくない。本発明者らは、ヤシ油の固体の脆い粒子が肉類似組成物に含まれる場合、前記ヤシ油の粒子は鋭い構造及び外観を有し、脂肪粒子が一般的にさらに丸みの付いた実際の肉の構造に効果的に似ていないことも理解した。他方、ヤシ油が肉類似組成物中に含まれる前に溶融する場合、脂肪は組成物中に均一に分散して、動物脂肪粒子が実際の肉に分散している状態に似ていない均質な構造及び外観を提供するので、やはり得られる組成物は実際の肉の構造及び概観を効果的に模倣しない。ヤシ油の使用に関連した追加の欠点は、その急勾配の溶融曲線が、ヤシ油を固体として肉類似組成物に混合することができる狭い温度範囲しかないことを意味することである。30℃~35℃で固体脂肪を持たないことは、肉類似組成物から脂肪/フレーバーの過度に速い放出をもたらすので、望ましくないことも見出した。肉類似組成物中に存在する多くの香料は脂溶性であり、したがって脂肪の溶融時に過度に速く放出される。ヤシ油のさらなる欠点は、高レベルの鉱油飽和炭化水素(MOSH)及び鉱油芳香族炭化水素(MOAH)をしばしば含有することである。
【0007】
ヤシ油及びその他の脂肪の代わりに、肉類似組成物におけるある特定の脂肪の使用は、そのような組成物におけるヤシ油及びその他の脂肪の使用に関連して上記にて論じられた問題の多くに対処し及び/又は緩和できることが、本発明の発明者によって見出された。
【0008】
以下に論じる文献は、ある特定の食品における、ある特定の脂肪組成物の有用性について論じる。しかしながら、肉類似組成物における脂肪組成物の使用、及びそれに関連して現況技術に勝る可能性ある利点は、企図されない。
【0009】
国際公開第2019/185444号パンフレットは、3.2%~10重量%の総カプリル酸及びカプリン酸と;13%~32重量%のラウリン酸;20%~45重量%のステアリン酸を含む非水素化脂肪組成物を開示する。脂肪組成物は、7%~15重量%のCN46トリグリセリド;4%~30重量%のCN54トリグリセリド;及び15%~28重量%の総CN42及びCN54トリグリセリドを含有する。ベーク物品及び菓子のテクスチャー的及び官能的性能を改善するため、ベーカリー及び製菓用途で使用される脂肪組成物が開示される。特に、脂肪組成物は、ホイップクリーム組成物に含めるのに有用であり、その内部に空気を混入させるのに有益であることが教示される。
【0010】
欧州特許第2443935号明細書は、15%~80%のトリグリセリド組成物;20%~85%の少なくとも1種の充填剤材料、及び最大15重量%の水を含む、食用生成物を開示する。トリグリセリド組成物は、20%~70重量%の飽和脂肪酸残基、及び最大5重量%のトランス不飽和脂肪酸残基を含み、ラウリン酸が多量である。組成物は、比較的低い飽和脂肪酸含量及び高いラウリン酸含量に起因して、その他の高融点植物由来脂肪と比較して栄養上の利益が高いものであることが教示される。高ラウリン酸含量を持つ脂肪は、より長い鎖の飽和脂肪酸をより高い割合で含有する脂肪と比較して、体脂肪としてそれほど蓄積され難いと報告されている。
【0011】
国際公開第2016/162529号パンフレットは、低減した飽和脂肪酸含量及びより高い量の不飽和脂肪酸を有するトリグリセリド組成物を開示する。食品を油で揚げるための油として使用される組成物が、教示される。油は、油で揚げるのに使用される従来の油よりも良好な栄養プロファイルを有するとして、かつサクサク感を提供し、かつ油で揚げた食品から油が滲出するリスクを低くすることが、教示される。油を使用して生成された、油で揚げた生成物は、油状の歯ざわりが少なくなるとも報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2019/185444号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第2443935号明細書
【特許文献3】国際公開第2016/162529号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ある特定の脂肪組成物が、肉類似組成物におけるヤシ油及びその他の脂肪の使用に関連する上記にて論じた問題の多くを解決し又は緩和するという意外な知見に基づく。ある特定の脂肪組成物は、より低い量の飽和脂肪酸残基を有することに起因して、ヤシ油に対して改善された栄養プロファイルを有することが見出された。意外にも、ヤシ油の代わりに、肉類似組成物においてこれらの脂肪組成物を含むことにより悪影響がないことが見出され、ある場合には組成物の様々な官能的性質など、肉類似組成物の様々な性質を改善する。改善された栄養プロファイルを持つ、これらのある特定の脂肪組成物は、等量のヤシ油又は液体油をヒマワリ油又は菜種油として含む肉類似組成物と比較して、調理され又は部分的に調理されたときに改善されたジューシーさを肉類似組成物に提供することが見出された。ヤシ油の代わりの、ある特定の脂肪組成物の使用は、一度調理された肉類似組成物の味にも良い影響を与えることも見出された。特に脂肪組成物は、ヤシ油を含有する組成物と比較したとき、所望の「より長い」フレーバー放出を提供することが見出された。理論に拘泥するものではないが、これは30℃~35℃の口内温度でより多量の固体脂肪を含有する脂肪組成物に起因して、考えられる。ヤシ油と比較したある特定の脂肪組成物のさらなる利点は、より「可塑化された形態」で結晶化できることであり、前記組成物は、典型的な加工温度でヤシ油よりも「変形可能」であることを意味し、前記脂肪組成物は、より容易に肉類似組成物に組み込みかつ混合できることを意味する。したがって、より容易な加工性及び製造が提供される。脂肪組成物を溶融することなく肉類似組成物に混和させる能力は、肉類似組成物を含有する食品の表面に不均質性を提供するのに有用であることが本発明者らに見出され、これは前記食品が、組成物のその他の成分と混合する前に脂肪が溶融する肉類似組成物と比較して、肉の視覚的外観をより正確に模倣することを意味している。例えば、脂肪組成物の硬くて脆い構造を、肉類似組成物に提供しかつ混合することができ、肉組成物における「霜降り」の効果を模倣する。あるいは、結晶化脂肪の可塑化脂肪構造を、肉類似組成物のその他の成分に提供し混合することができる。そのような可塑化脂肪構造は、より鋭い構造及び外観を有する固体ヤシ油構造が含まれる場合と比較して、実際の肉の筋肉内脂肪の外観にさらに似ている、それほど鋭くない脂肪片を創出するさらなる利点を有する。本発明で使用される組成物のさらなる利点は、ヤシ油よりも高い融点を有するので、肉類似組成物中に固体脂肪粒子を含むことが望まれる場合、脂肪粒子が溶融することなくヤシ油よりも高い温度で加工を行うことができることである。したがって脂肪組成物は、完成した肉類似組成物製品の栄養価及び官能的性質の両方を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、2重量%~20重量%の脂肪組成物;5重量%~30重量%の非動物性タンパク質;及び30重量%~70重量%の水を含み;脂肪組成物が、20重量%~85重量%の飽和脂肪酸残基;10重量%~50重量%のステアリン酸残基(C18:0);及び2重量%~35重量%のラウリン酸残基(C12:0)を含み;脂肪酸残基の前記パーセンテージが、脂肪組成物中のグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである、肉類似組成物が提供される。
【0015】
好ましくは、脂肪組成物は、20重量%~70重量%の飽和脂肪酸、より好ましくは20重量%~60重量%の飽和脂肪酸を含む。一部の実施形態では、脂肪組成物は、65重量%~85重量%の飽和脂肪酸を含む。他の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~65重量%の飽和脂肪酸を含む。脂肪組成物中に存在する飽和脂肪酸残基の量は、脂肪組成物の特定の所望の性質を提供するように調整され得る。例えば、脂肪組成物が65重量%~85重量%の、より高い飽和脂肪含量を含む場合、脂肪組成物は、肉類似組成物又は肉類似組成物を含有する食品に「霜降り効果」を提供するように、肉類似組成物のその他の成分と容易に混和することができる、脂肪の硬く脆い固体構造を提供するのに特に有用であってもよい。したがってそのような脂肪組成物は、バーガーなどの食品の表面にさらに大きい不均質性を提供するのに、及び実際の肉の外観をより正確に模倣するのに使用されてもよい。他の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~65重量%の飽和脂肪酸を含む。前記脂肪組成物は、上述の可塑化脂肪構造効果を提供するのに有用であることが見出された。
【0016】
典型的には、脂肪組成物は、2~12重量%のSt2Mトリグリセリド、好ましくは5~12重量%のSt2Mトリグリセリドを含む。St2Mトリグリセリドは、2つのステアリン酸残基と、ラウリン酸又はミリスチン酸のいずれかの1つの残基とを含む、トリグリセリド分子である。理論に限定するものではないが、上記指定された量でSt2Mトリグリセリドを含む脂肪組成物は、上述の可塑化脂肪構造効果及び固体脆性霜降り効果の両方を提供するのに助けとなることが見出された。St2Mトリグリセリドは、素早く結晶化しかつ油を十分に結合し、上記にて論じた効果を提供する助けとなる。
【0017】
典型的には、脂肪組成物は、5~35重量パーセントのCN46及びCN48トリグリセリド、好ましくは10~30重量%のCN46及びCN48トリグリセリドを含む。CNという略称は、トリグリセリド分子中に存在する脂肪酸部分の全炭素数を表す。例えば、2つのステアリン酸残基及び1つのラウリン酸残基を含むトリグリセリドは、48の全炭素数を有する可能性がある。
【0018】
好ましくは、脂肪組成物は、10重量%未満のパーム油、より好ましくは5重量%未満のパーム油、さらにより好ましくは2重量%未満のパーム油を含む。最も好ましくは、組成物はパーム油を含まない。
【0019】
脂肪組成物は、好ましくは、非水素化脂肪組成物である。
【0020】
脂肪組成物は、好ましくは、パルミチン酸よりも多い量のステアリン酸を含む。これは、ステアリン酸が中性的な効果を総コレステロール及びLDLコレステロールレベルに対して発揮し、それに対してパルミチン酸は、総コレステロール及びLDLコレステロールレベルを増大させることが公知であるので、栄養の観点から有利である。典型的には、脂肪組成物は、20重量%以下、好ましくは10重量%以下のパルミチン酸(C16:0)を含む。典型的には、脂肪組成物は、1:1~12:1である、ステアリン酸(C18:0)とパルミチン酸(C16:0)との重量比を有する。典型的には、脂肪組成物は、1:4~4:1である、ラウリン酸(C12:0)とステアリン酸(C18:0)との重量比を有する。好ましくは、脂肪組成物は、10重量%~25重量%のラウリン酸(C12:0);及び/又は15重量%~45重量%のステアリン酸(C18:0)を含む。より好ましくは、脂肪組成物は、10重量%~25重量%のラウリン酸(C12:0);及び15重量%~45重量%のステアリン酸(C18:0)を含む。
【0021】
典型的には、脂肪組成物は、下記の性質の1又は2以上を有する。
【0022】
(i) 脂肪組成物は、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪(unstabilised fat)に関して測定された、10未満の、好ましくは1~9の、より好ましくは2~8の固体脂肪含量(solid fat content、SFC)N40を有する;
(ii) 脂肪組成物は、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された、35~60の、好ましくは25~56の、より好ましくは20~40の固体脂肪含量(SFC)N20を有する;及び
(iii) 脂肪組成物は、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された、5~35の、好ましくは8~32の;より好ましくは8~30の固体脂肪含量(SFC)N30を有する。
【0023】
好ましくは、脂肪組成物は上記性質の3つ全てを有する。
【0024】
本明細書で使用される「脂肪」という用語は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド脂肪及び油を指し、いかなる特定の融点も示唆しない。「油」という用語は、本明細書では「脂肪」と同義で使用される。
【0025】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖飽和又は不飽和(モノ-及びポリ不飽和を含む)カルボン酸を指す。x個の炭素原子及びy個の二重結合を有する脂肪酸は、Cx:yと示されてもよい。例えば、パルミチン酸はC16:0と示されてもよく、オレイン酸はC18:1と示されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸のパーセンテージは、グリセリド中に存在するトリ-、ジ-、及びモノグリセリド中にアシル基を含み、C8-C24脂肪酸の全重量に対するものである。脂肪酸プロファイル(即ち、組成)は、例えば、ISO 12966-2及びISO 12966.4に従いガスクロマトグラフィを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定されてもよい。
【0026】
トリグリセリド含量は、AOCS Ce 5-86により例えば分子量の差(炭素数(CN))に基づいて決定されてもよい。トリグリセリドCNxxという表記は、脂肪アシル基にxx個の炭素原子を有するトリグリセリドを示し、例えばCN54は、トリステアリンを含む。当技術分野における慣習的な用語のように各炭素数(CN)で指定されるトリグリセリドの量は、脂肪組成物中に存在するCN26~CN62の全トリグリセリドに対する重量パーセンテージである。
【0027】
脂肪組成物は、上記にて論じた脂肪酸及びトリグリセリド組成物の要件を満たす、天然に生ずる若しくは合成脂肪、天然に生ずる若しくは合成脂肪の画分、又はこれらの混合物から作製されてもよい。好ましくは、脂肪組成物は、天然に生ずる脂肪のブレンドから誘導される。
【0028】
好ましくは、脂肪組成物はエステル交換化脂肪を含み、より好ましくは、脂肪組成物がエステル交換化脂肪ブレンドを含む。エステル交換化脂肪又はエステル交換化脂肪ブレンドは、化学エステル交換化、酵素エステル交換化、又はこれらの組合せによって生成されてもよい。
【0029】
一部の実施形態では、エステル交換化脂肪又はエステル交換化脂肪ブレンドは、平衡生成物分布(equilibrium product distribution)に達しない酵素エステル交換化反応によって生成される。これらの実施形態は、上記にて論じた性質など、肉類似組成物で使用するのに最適な性質を持つ脂肪組成生成物を提供することが見出された。
【0030】
上記にて論じたエステル交換化反応など、脂肪組成物を調製するためのプロセスは、当技術分野で公知であり、例えばDijkstra, A. J. Interesterificationの: The Lipids Handbook 3rd Edition, pages 285 - 300 (F. D. Gunstone, J. L. Harwood, 及び A. J. Dijkstra (eds.), Taylor & Francis Group LLC, Boca Raton, FL) (2007)で論じられている。
【0031】
好ましくは脂肪組成物は、ステアリン酸が多量の植物油及びラウリン酸が多量の植物油を含む、エステル交換化脂肪ブレンドを含む。好ましくは、ステアリン酸が多量の植物油は、オレイン酸などの一不飽和脂肪酸も多量にある。したがって典型的な実施形態では、脂肪組成物は、シアバター、シアステアリン、シアオレイン、ココアバター、ココアステアリン、ココアオレイン、アランブラキア脂肪(allanblackia fat)、コクム脂肪(kokum fat)、マンゴー核脂肪、サル脂肪(sal fat)、イリッペバター(illipe butter)、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の脂肪;並びにヤシ油、ヤシ油ステアリン、ヤシ油オレイン、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ババス油、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の油を含む、エステル交換化脂肪ブレンドを含む。
【0032】
好ましい実施形態では、脂肪組成物は、シアバター及びヤシ油のエステル交換化ブレンド、又はシアステアリン及びヤシ油のエステル交換化ブレンドを含む。例えば、一部の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~80重量%のシアバターと20重量%~80重量%のヤシ油とのエステル交換化ブレンドを含む。他の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~80重量%のシアステリン及び20重量%~80重量%のヤシ油のエステル交換化ブレンドを含む。
【0033】
非常に好ましい実施形態では、脂肪組成物は、(i)20重量%~80重量%のシアバター及び/又はシアステアリンと20重量%~80重量%のヤシ油との20重量%~80重量%のエステル交換化ブレンド;及び(ii)20重量%~80重量%のヒマワリ油の、ブレンドを含む。好ましくは、脂肪組成物は、肉類似組成物の7.5重量%~20重量%の量で肉類似組成物中に存在する。
【0034】
好ましくは、脂肪組成物は、脂肪の実質的に大部分である脂肪とごく僅かな水とを含有する(即ち組成物は、脂肪分子から本質的になる)。しかしながら一部の実施形態では、脂肪組成物は水を含有していてもよく、水中油エマルジョン又は油中水エマルジョンなどのエマルジョンの形で、典型的には適切な乳化剤と共に存在していてもよい。そのような実施形態では、脂肪組成物が肉類似組成物中に存在する量に関して上記提供された重量パーセンテージの範囲は、脂肪組成物中に存在する脂肪分子のみを指し、組成物中に存在するいかなる水も指さない。同様に、肉類似組成物中に存在する水の量に関して上記にて与えられた重量パーセンテージは、以下のさらに詳細に論じられるように、肉類似組成物の製造中にそれ自体が原因で添加された水と、また肉類似組成物のその他の成分中に存在する任意の水(乳化脂肪組成物中に存在する水など)又は任意の部分に結合された水の、両方を指す。
【0035】
一部の実施形態では、肉類似組成物は、上述のエステル交換化脂肪ブレンドを含む脂肪組成物と、少なくとも1種の追加の脂肪又は油とを含む。好ましくは、少なくとも1種の追加の脂肪又は油は、ラウリン酸植物油を含む。より好ましくは、少なくとも1種の追加の脂肪又は油は、ヤシ油、ヤシ油ステアリン、ヤシ油オレイン、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ババス油、又はこれらの混合物を含む。最も好ましくは、少なくとも1種の追加の脂肪又は油は、ヤシ油を含む。これらの実施形態では、脂肪組成物は好ましくは、エステル交換化脂肪ブレンドを脂肪組成物の50重量%~80重量%の量で、及び追加の脂肪又は油の総量を脂肪組成物の20重量%~50重量%の量で、含む。より好ましくは、脂肪組成物は、上述のエステル交換化ブレンドを、脂肪組成物の60重量%~80重量%の量で、及び追加の脂肪又は油の総量を脂肪組成物の20重量%~40重量%の量で含む。
【0036】
本発明の肉組成物は、1種又は2種以上の非動物性タンパク質、例えば真菌、植物、又はこれらの組合せから誘導された1種又は2種以上のタンパク質を含む。
【0037】
典型的には、非動物性タンパク質は植物性タンパク質を含む。好ましくは、植物性タンパク質は、藻類(algae)タンパク質、ブラックビーン(black bean)タンパク質、キャノーラコムギ(canola wheat)タンパク質、ヒヨコマメ(chickpea)タンパク質、ソラマメ(fava)タンパク質、レンズマメ(lentil)タンパク質、ハウチワマメ(lupin bean)タンパク質、リョクトウ(mung bean)タンパク質、エンバク(oat)タンパク質、エンドウマメ(pea)タンパク質、ジャガイモ(potato)タンパク質、コメ(rice)タンパク質、ダイズ(soy)タンパク質、ヒマワリ種子(sunflower seed)タンパク質、コムギ(wheat)タンパク質、ホワイトビーン(white bean)タンパク質、及びタンパク質単離物(isolates)、又はこれらの濃縮物から選択される。他の実施形態では、非動物性タンパク質は、セイタン(seitan)、コメタンパク質、キノコ(mushroom)タンパク質、マメ科植物(legume)タンパク質、テンペ(tempeh)、ヤムイモ粉(yam flour)、豆腐、マイコプロテイン(mycoprotein)、ピーナツ粉(peanut flour)、湯葉、又はこれらの組合せを含む。
【0038】
より好ましくは、非動物性タンパク質は組織化(texturized)植物性タンパク質を含み、好ましくは組織化植物性タンパク質は、組織化エンドウマメタンパク質、組織化ソラマメタンパク質、組織化ダイズタンパク質、組織化コムギタンパク質、又はこれらの組合せを含む。好ましくは、組織化植物性タンパク質は、肉類似組成物の10重量%~20重量%の量で肉類似組成物中に存在する。
【0039】
非動物性タンパク質は、肉類似組成物の5重量%~30重量%の量で肉類似組成物中に存在する。好ましくは、非動物性タンパク質は、肉類似組成物の10重量%~30重量%の量で、より好ましくは肉類似組成物の15重量%~30重量%の量で肉類似組成物中に存在する。
【0040】
植物性タンパク質は、植物から得られる又は誘導されるタンパク質の供給源である。植物性タンパク質は、任意の適切な植物性タンパク質であってもよく、植物性タンパク質の混合物を含んでいてもよく、及び/又はタンパク質単離物若しくは濃縮物を含んでいてもよい。適切な植物性タンパク質の例には、上記にて論じたものが含まれる。上記にて論じたように、好ましくは、植物性タンパク質は組織化植物性タンパク質(TVP)を含む。TVPは、乾燥しても水分を含んでいてもよい(即ち、加水されている)、押し出されたタンパク質である。TVPは、ダイズ粉又は濃縮物などの上述の植物源から広く入手可能である。乾燥形態では、TVPは、最大70重量%のタンパク質、典型的には約60~70重量%のタンパク質を含むことができ、加水されたときには、典型的には約10~20重量%のタンパク質を含む。典型的には、加水TVPは、水中でその乾燥重量の最大3~4倍を含有することができる。上記にて論じたように、肉類似組成物中に存在する水に関して上記にて言及された重量パーセンテージの範囲は、それ自体を原因として添加された水と、組織化植物性タンパク質又は脂肪で乳化したものなどの肉類似組成物のその他の成分に存在する水との両方を含む。同様に、肉類似組成物中に存在する非動物性タンパク質の量に関して上記にて与えられた重量パーセンテージは、タンパク質の乾燥重量を指し、組織化植物性タンパク質などの非動物性タンパク質に結合した水を含まない。
【0041】
肉類似組成物の調製で使用される植物性タンパク質は、乾燥していても(本明細書では、「乾燥相」とも呼ぶ)水分を含んでいてもよい。このように実施形態では、植物性タンパク質は、成分の乾燥混合物中に含まれてもよく、タンパク質に加えて炭水化物、繊維、及び/又はヒドロコロイドなど、肉類似組成物中に含むことが意図される追加の成分を含んでいてもよい。植物性タンパク質が乾燥している場合、肉類似組成物の形成前及び/又は形成中に加水されてもよい。本明細書で使用される、植物性タンパク質に関係して使用される「乾燥」という用語、及び「乾燥相」は、植物性タンパク質を含む相が、5重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水を含むことを意味するものとし、さらにより好ましくは水を実質的に含まないことを意味するものとする。その他の好ましい実施形態では、乾燥相のawは0.90又はそれよりも低く、より好ましくは0.80よりも下である。植物性タンパク質を含む乾燥相は、典型的には、保存寿命が延びるよう可能な限り微生物増殖を低減させるため、実質的に脱水状態で提供される。
【0042】
肉類似組成物は、水を含み、これは別々の成分として組成物に添加されてもよく又は上記にて論じたように組成物のその他の成分から誘導されてもよい。水の量は特に限定されず、当業者が理解するように、肉類似組成物の意図されるコンシステンシーに応じて変わることになる。本明細書で「水」と言う場合、特に指示しない限り、飲料水、脱ミネラル水、又は蒸留水を含むものとする。好ましくは、本発明に関連して用いられる水は、脱ミネラル水又は蒸留水である。当業者が理解するように、脱イオン水は、脱ミネラル水の下位クラスでもある。
【0043】
肉類似組成物は、典型的には1種又は2種以上の追加の成分を含む。これらの1種又は2種以上の追加の成分は肉類似組成物に含めることが好ましいと考えられるが、1種又は2種以上の追加の成分を含むことは必須ではないことが理解されよう。
【0044】
肉類似組成物は、好ましくはさらに安定化剤ブレンドを含む。好ましくは、安定化剤ブレンドは、肉類似組成物の5重量%~10重量%の量で、肉類似組成物中に存在する。典型的には、安定化剤ブレンドは、植物由来タンパク質、植物繊維、及び/又は多糖を含む。好ましくは、植物由来タンパク質はエンドウマメタンパク質を含み、植物繊維はエンドウマメ繊維を含み、及び/又は多糖はメチルセルロースを含む。非常に好ましい実施形態では、安定化剤ブレンドは、エンドウマメタンパク質を含む植物由来タンパク質、エンドウマメ繊維を含む植物繊維、及びメチルセルロースを含む多糖を含む。
【0045】
肉類似組成物は、1種又は2種以上のフレーバー添加剤を含んでいてもよい。好ましくは、1種又は2種以上のフレーバー添加剤は、肉類似組成物の0.5重量%~2重量%の量で存在する。当技術分野で公知の適切なフレーバー添加剤は、肉類似組成物中で使用されてもよい。
【0046】
肉類似組成物は、1種又は2種以上の着色添加剤を含んでいてもよい。典型的には、1種又は2種以上の着色添加剤は、肉類似組成物の0.5重量%~5重量%の量で存在する。当技術分野で公知の適切な着色添加剤は、肉類似組成物に使用されてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、肉類似組成物はさらに:i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、カラギーナン及びこれらの塩、アルギン酸及びその塩、寒天、アガロース、アガロペクチン、ペクチン、及びアルギネートから好ましくは選択される多糖及び/又は変性多糖;ii)ヒドロコロイド;及びiii)好ましくはキサンタンガム、グアールガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、植物ガム、タラガム、トラガカントガム、コンニャクガム、フェヌグリークガム、及びカラヤガムから選択されるガムの、1種又は2種以上を含む。
【0048】
肉類似組成物に含まれ得るその他の添加剤の例には、イオン性又は非イオン性の乳化剤、ポリヒドロキシ化合物、乳(milk)、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物(sugar substitutes)、デンプン、塩、スパイス、繊維、フレーバー成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存料、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、酸度調節剤、又はこれらの組合せが含まれる。
【0049】
アミノ酸は、加熱によるアミノ酸と糖との間の化学反応から得られる非酵素的褐変の一形態であるメイラード反応に寄与することが公知であるので、本発明の肉類似組成物の好ましい添加剤である。これは調理された食物のフレーバーの開発に使用され、この反応は、味の好い肉のフレーバーを創出することによって肉の味を複製するために肉類似組成物に使用することができる。
【0050】
好ましい実施形態では、肉類似物は、ベジタリアン及びビーガンによる消費に適している。したがって好ましい実施形態では、肉類似組成物は動物性タンパク質を実質的に含まず、より好ましくは、肉類似組成物は動物性タンパク質を含まない。
【0051】
好ましい実施形態では、肉類似組成物は、動物由来生成物を実質的に含まず、より好ましくは、肉類似組成物は動物由来生成物を含まない。
【0052】
しかしながら一部の実施形態では、肉類似組成物は、動物由来タンパク質又は脂肪などの動物由来生成物を含んでいてもよい。したがって一部の実施形態では、肉類似組成物はさらに、動物油、魚油、動物由来タンパク質、動物由来多糖、又はこれらの任意の組合せなど、1種又は2種以上の動物由来生成物を含む。一部の実施形態では、1種又は2種以上の動物由来生成物は、動物乳タンパク質、動物乳脂肪、又はこれらの組合せを含む。これらの実施形態では、肉類似組成物は、非動物性タンパク質と、動物乳から誘導されたタンパク質及び脂肪とを含むことに基づいて、ベジタリアンによる消費に適していてもよい。これらの肉類似組成物は、肉から誘導された脂肪又はタンパク質を含まないのでベジタリアンによる消費に適している。しかしながら、そのような肉類似組成物はビーガンによる消費に適していないことが、当然ながら理解されよう。
【0053】
肉類似組成物が1種又は2種以上の動物由来生成物を含む実施形態では、1種又は2種以上の動物由来生成物は、典型的には肉類似組成物中に、肉類似組成物の1重量%~20重量%の量で存在する。
【0054】
本発明の第2の態様によれば、本発明の肉類似組成物を含む食品が提供される。食品は、調理されていない食品、調理された食品、又は部分的に調理された食品であってもよい。
【0055】
典型的には、食品は、ベジタリアン又はビーガン用の肉代用食品である。好ましくは、ベジタリアン又はビーガン用の肉代用食品は、バーガー、ソーセージ、ミートボール、ナゲット、パティ、挽肉製品、ミートローフ、又は従来の肉系食品を模倣することが意図されるその他の製品である。
【0056】
肉類似組成物又は組成物を使用して調製された食品の性質は、任意の適切な手段で測定されてもよい。所望の性質は、ジューシーさ(及び/又は乾き)、硬さ、接着性、弾力性、凝集性、粘着性、咀嚼性、及び反発性を含んでいてもよい。そのような手段は、ジューシーさ(又は乾き)、テクスチャー、咀嚼製、及び硬さなど、組成物又は食品の性質に関するフィードバックを提供することができる味のテスターを含む。典型的には、多数のテスターは、1~5のスケールなどに関して、組成物又は食品の1つ又は2つ以上の性質をマークすることが問われることになる。多数のテスターが問われる場合、結果の平均は、食品の一般的印象を観察するために得ることができる。
【0057】
組成物又は食品の性質は、専門化された設備を使用して測定されてもよい。例えばテクスチャープロファイル分析(TPA)は、固体及び半固体材料のテクスチャー属性を特徴付けるのに使用される技法であり、硬さ、接着性、弾力性、凝集性、粘着性、咀嚼性、及び反発性を決定するのに使用され得る。粘着性は、硬さ×凝集性の積と定義される。咀嚼性は、粘着性×弾力性(硬さ×凝集性×弾力性)の積と定義される。この技法において、試験材料は、往復運動で2倍に圧縮されてもよく、口内の咀嚼運動を模倣し、力対時間(及び/又は距離)のグラフを作成し、そこから上記情報を得ることができる。TPA及びテクスチャー特性の分類は、Bourne M. C., Food Technol., 1978, 32 (7), 62-66 並びに Trinh T. 及び Glasgow S., ‘On the texture profile analysis test’, Conference Paper, Conference: Chemeca 2012, Wellington, New Zealandにさらに記述され、その内部に記述されるように行われ得る。
【0058】
力対時間(及び/又は距離)のグラフは、典型的には、トラフによって分離された2つの圧縮部に対応する2つのピークを力に含む。力は、重量等価(g-力、g)又はニュートン(N)で測定されてもよい。
【0059】
硬さ(g又はN)は、最初の圧縮サイクル中に経験した最大ピークと定義される。
【0060】
接着性は、最初に噛んだ場合の負の力の面積、即ち0g又はNの力である又はそれよりも下の、力の2つのピーク間のグラフの面積と定義される。これは、食物の表面と、食物が接触するようになるその他の材料の表面との間の引力を克服するのに必要とされる仕事、即ち試料から圧縮プランジャーを引き離すのに必要な全力を表す。高い接着性及び低い凝集性を持つ材料では、試験したとき、試料の一部が、上向きのストロークでプローブに接着し易い。試験プラットフォームのベース部から試料を持ち上げることは、プローブ上の試料の重量が接着値の一部になる可能性があるので、可能な場合には回避すべきである。ある特定の場合には、使い捨て可能なプラットフォームのベース部への試料の糊付けが提案されてきたが、全ての試料に適用可能ではない。
【0061】
エラストマー性としても公知の弾力性は、第1の圧縮の終わりと第2の圧縮の開始との間を経過する時間中に食物が回復する高さに関する。第1の圧縮中、力=0g又はNでの圧縮の開始から力の第1のピークまでの時間が測定される(「サイクル1の持続時間」と呼ぶ)。第2のサイクル中、力=0g又はNでの第2の圧縮の開始から力の第2のピークまでの時間が測定される(「サイクル2の持続時間」と呼ぶ)。弾力性は、これらの値の比、即ち「サイクル2の持続時間」/「サイクル1の持続時間」として計算される。
【0062】
凝集性は、正の力の面積、即ち第2の圧縮中の0g又はNの力よりも上の曲線下の面積と、第1の圧縮中の場合との比と定義される。凝集性は、機械的作用下で材料が崩壊する速度として測定されてもよい。引張り強度は、凝集性の発現である。接着性が凝集性より低い場合、プローブは、生成物が一緒に保持する能力を有するので清浄なままになり易い。凝集性は通常、二次パラメーターの脆性、咀嚼性、及び粘着性に関して試験される。
【0063】
粘着性は、硬さ×凝集性の積と定義され、硬さの程度が低く凝集性の程度が高い半固体の食物の特徴である。
【0064】
咀嚼性は、粘着性×弾力性の積(硬さ×凝集性×弾力性に等しい)と定義され、したがってこれらのパラメーターのいずれか1つの変化に影響を受ける。
【0065】
反発性は、誘導される速度及び力の両方に関して試料が変形からどのように回復するかの測定値である。第1のプローブ反転点、即ち最大力点から、x軸の交差、即ち0g又はNまでの面積と、圧縮の開始から最大力点までの間の第1の圧縮サイクルから生成された面積との比と解釈される。このパラメーターの意味のある値を得るために、試料がこの性質を保有する場合には試料を回復させることが可能な、比較的遅い試験速度が選択されるべきである。
【0066】
本発明の第3の態様によれば、脂肪組成物が20重量%~80重量%の飽和脂肪酸;10重量%~50重量%のステアリン酸(C18:0);及び2重量%~35重量%のラウリン酸(C12:0)を含む、肉類似組成物における脂肪組成物の使用が提供される。
【0067】
好ましくは、使用はさらに、肉類似組成物を食品に使用することを含む。
【0068】
好ましくは、肉類似組成物、脂肪組成物、及び/又は食品は、上述の通りである。
【0069】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに肉類似組成物の栄養プロファイルを改善するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。本明細書で使用される類似の肉類似組成物という用語は、内部に存在する脂肪の性質を除いて本発明の肉組成物と同一の、等しい重量の肉類似組成物を指すのに使用する。類似の肉類似組成物は、本発明の肉類似組成物が脂肪組成物を含有するように、重量で同じ量のヤシ油を含有する。本発明の肉類似組成物の栄養プロファイルは、ヤシ油よりも、単位重量当たり低い総量の飽和脂肪酸残基を含有するので、ヤシ油と比較して改善され得る。ヤシ油は、90%程度の飽和脂肪酸残基を含有する。理論に拘泥するものではないが、より高い飽和脂肪酸含量を持つ脂肪は、心疾患、高血圧、及び関連ある状態のリスクが増大し、消費者のコレステロールレベルにも有害な影響を及ぼすと考えられる。したがって一部の実施形態では、使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似物と比較したとき、肉類似組成物の消費者におけるインビボコレステロールレベルに対する効果を改善するために、脂肪組成物を使用することを含むが、その他の健康及び福祉上の利益も、ヤシ油及び類似の脂肪の代わりの、肉類似組成物中の脂肪組成物の使用によって実現され得ることが理解されよう。
【0070】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較した場合、調理し及び消費したときに肉類似組成物からのフレーバーの遅延放出を提供するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。理論に拘泥するものではないが、ヤシ油と比較したフレーバーの遅延放出は、30℃~35℃の口内温度でヤシ油よりも高い固体脂肪含量を有する脂肪組成物に起因すると考えられる。多くのフレーバー及びフレーバー添加剤化合物は脂溶性であり、したがって肉類似組成物の脂肪中に溶解する。より高い固体脂肪含量で、脂肪からの溶解したフレーバーの放出は、より長い期間にわたり遅延する。フレーバーの遅延放出は、肉類似組成物を、典型的には口内温度でさらに高い固体脂肪含量を有するさらに高い融点の脂肪を含有する肉の歯ざわり及び遅延するフレーバー放出により正確に似せることが可能と考えられる。さらに得られる利益は、少ない脂肪しか必要とせず、本明細書に記述されるいくつかのさらなる利点が得られる。
【0071】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較した場合、調理したときに肉類似組成物の改善されたジューシーさを提供するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。肉類似組成物又はその組成物を含む調理された食品の、改善されたジューシーさは、肉製品の歯ざわり、ジューシーさ、及び肉汁の多さにより正確に似せた肉類似組成物を作製することも考えられる。さらに得られる利益は、少ない脂肪しか必要としないことであり、本明細書に記述されるいくつかのさらなる利点をもたらす。
【0072】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物を含む類似の食品と比較したときに、肉類似組成物を含む調理された食品の表面の増大した不均質性又は実際の肉に対する増大した類似性を提供するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。典型的には、使用は、重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物を含む類似の食品と比較したときに、肉類似組成物を含む調理した食品の表面の増大した不均質性を提供するために、脂肪組成物を使用することを含む。あるいは又はさらに、使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物を含む類似の食品と比較したときに、肉類似組成物を含む調理された食品の表面の実際の肉に対する増大した類似性を提供するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。この後者の実施形態では、典型的には、脂肪組成物は、上記にて論じた可塑化脂肪構造の形をとる。上記にて論じたように、ヤシ油の欠点は、0℃~15℃の温度で硬く脆い構造であることであり、この温度範囲内で脂肪粒子が鋭い構造及び外観を有することを意味する。対照的に、本発明の、ある特定の肉類似組成物では、可塑化脂肪構造にはさらに丸みが付いておりかつそれほど鋭くない形状にあり、実際の肉の筋肉内脂肪の外観をより正確に模倣している。
【0073】
上記にて論じたように、ヤシ油はしばしば、製造時に組成物のその他の成分と混和する前に溶融する。これはさらに均質な構造を有する肉類似組成物であって、実際の肉の視覚的外観を模倣しないものをもたらす。実際の肉は、肉製品の表面に目に見える固体脂肪構造(霜降り)が存在する、より不均質な構造を有する傾向がある。本明細書に記述される脂肪組成物は、溶融することなく製造中に、効果的に加工しかつ肉類似組成物のその他の成分と混合することができる。これは、肉類似組成物中の脂肪組成物の、実質的に均一な分散体をもたらすが、溶融脂肪が含まれるときよりも大きい固体の目に見える脂肪粒子を持つ。したがって肉類似組成物から作製された食品の表面は、実際の肉の視覚的外観に、より正確に似ており、溶融脂肪を含有する肉類似組成物と比較して、増大した不均質性を有する。
【0074】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似の肉類似組成物及び/又は重量で同じ量のヒマワリ油を含む類似の肉類似組成物と比較したときに、肉類似組成物に改善された加工性を提供するために、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。改善された加工性及び取扱い性が、例えばヤシ油よりも高い融点を有する脂肪組成物によって提供され、これは脂肪の固体粒子を加工しかつ肉類似組成物のその他の成分と、より高い温度で、溶融することなく混合できることを意味する。そのような加工性は、例えば固体形態で肉類似組成物中に脂肪粒子を含むことが望まれるとき、望ましい。
【0075】
本発明の第4の態様によれば、本発明の肉類似組成物、又は本発明の食品を製造する方法が提供される。
【0076】
好ましくは、本発明の肉類似組成物、又は本発明の食品を製造する方法であって:
(a) 水及び非動物性タンパク質の混合物を提供するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせて、肉類似組成物を形成するステップ;及び
(c) 任意に肉類似組成物を食品に形成するステップ
を含む、方法が提供される。
【0077】
好ましくは、方法はさらに、食品を調理して、調理済み食品又は部分的調理済み食品を形成するステップを含む。
【0078】
好ましくは、方法はさらに、(i)ステップ(a)で提供された水及び非動物性タンパク質の混合物;(ii)ステップ(a)の混合物を、脂肪組成物、及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせることによって、ステップ(b)で形成された混合物;をブレンドするステップ、及び/又は(iii)ステップ(a)の混合物及び脂肪組成物と1種又は2種以上の追加の成分を組み合わせる前に、1種又は2種以上の追加の成分を水とブレンドするステップを含む。
【0079】
好ましくは、脂肪組成物は、ステップ(a)の混合物及び任意に1種又は2種以上の追加の成分と組み合わせる前に溶融しない。
【0080】
上述のステップは、本明細書に記述される肉類似組成物又は食品を製造するための好ましいステップであるが、肉類似組成物及び食品を製造するのにその他の適切なプロセスが使用されてもよいことが、理解されよう。
【0081】
本発明の肉類似組成物は、本明細書に記述される脂肪組成物を、植物性タンパク質及び組成物の任意のその他の成分とブレンドすることによって、容易に調製されてもよい。一実施形態では:植物性タンパク質を本明細書に記述される脂肪組成物とブレンドすることによって、肉類似組成物を形成するステップを含む、肉類似組成物を調製するための方法が提供される。任意に、さらなる成分が存在していてもよい。水は、必要な場合にはプロセス中の任意の段階で組成物に添加されてもよい。方法はさらに、植物性タンパク質を含む乾燥相を提供し、乾燥相を、ある量の水とブレンドすることによって、植物性タンパク質を調製するステップを含んでいてもよく、このステップは肉類似組成物を形成するステップに先行するものである。このステップは、乾燥形態にあるその他の成分も含んでいてもよく、したがってこれらの乾燥成分は植物性タンパク質と同時に加水される。さらに、及び/又は代わりに、任意のその他の乾燥成分は、任意の組合せで、植物性タンパク質とは別々に加水されてもよい。TVPを含む実施形態では、TVPは好ましくは、任意のその他の乾燥成分とは別々に加水される。理論に拘泥するものではないが、水に対する乾燥成分間の競合を制限し、存在する全ての乾燥成分に関して満足のいく加水を確実にすると考えられる。
【0082】
このように、本明細書には、肉類似組成物を調製するための方法であって:a)植物性タンパク質と、組成物の任意のその他の乾燥成分を含んでいてもよい、乾燥相を提供し、乾燥相を、ある量の水とブレンドして混合物を形成するステップ;b)ステップa)で形成された混合物を本明細書に記述される脂肪組成物とブレンドすることによって、肉類似組成物を形成するステップを含む方法が開示される。実施形態では、植物性タンパク質はTVPを含んでいてもよい。好ましくは、植物性タンパク質以外の乾燥成分は、植物性タンパク質とは別に加水される。そのような乾燥成分の例には、限定するものではないが繊維、フレーバー、乳化剤、ガム、ヒドロコロイド、増粘剤が含まれる。実施形態では、加水植物性タンパク質を含むステップa)の混合物と、加水乾燥成分を含む及び任意のその他の混合物とを、ステップb)の前に組み合わせる。理論に拘泥するものではないが、脂肪組成物の添加の前(例えば、ステップa)における)の乾燥成分の加水は、生成物における水の最適な分布をもたらし、より安定した肉類似組成物をもたらすことが考えられる。
【0083】
上記プロセスで使用される植物性タンパク質を含む乾燥相は、特に限定されない。植物は、上述の通りである。「乾燥相」という用語は、植物性タンパク質を含む相が、5重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水を含み、さらにより好ましくは実質的に水を含まないことを意味するものとする。他の好ましい実施形態では、乾燥相のawは0.90又はそれよりも低く、より好ましくは0.80よりも下である。植物タンパク質を含む乾燥相は、典型的に実質的に脱水状態で提供されて、保存寿命が延びるように可能な限り微生物増殖を低減させる。
【0084】
植物性タンパク質を含み得る乾燥相は、水とブレンドする前に任意の物理的形態をとってもよく、しかしながら典型的には、粉末、顆粒、又はペレット化、ストリップ、又は塊の形をとる。乾燥相に添加される水の量は、特に限定されない。典型的には、ある量の水が、脂肪組成物を容易にブレンドすることのできるペースト又は生地に乾燥成分を結合するために添加される。乾燥相に添加される水の量は、脂肪組成物のその他の成分を添加した後の肉類似組成物中の水の総量が上述の範囲内にあるように、好ましくは計算される。
【0085】
添加される水の温度は、成分の意図される特徴に物質的に影響を及ぼさない(例えば、タンパク質の変性又は加水分解をもたらさない)限り、特に限定されない。好ましい実施形態では、水は室温(即ち、20℃よりも下)よりも下である。特に好ましい実施形態では、氷水が使用される。これは水が乾燥相に添加されるときに、特に好ましい。「氷水」という用語は、0℃よりも上であり6℃よりも下、好ましくは0.5~5℃、より好ましくは1~4℃、より好ましくは1~3℃の温度を有すると、本明細書では定義される。氷水を使用する利点は、肉類似組成物の調製中に可能な限り微生物増殖を遅くすることであり、メチルセルロースのようなある特定の乾燥成分の加水に、特に適している。
【0086】
乾燥相と水とのブレンドは、任意の持続時間にわたり行われてもよい。実施形態では、ブレンドは、乾燥相及び水が密に混合されるまで、典型的にはペースト又は生地が形成されるまで行われる。TVPが加水される実施形態では、ブレンドは、繊維構造を過度に妨げない限り、最小限に抑えられる。実施形態では、これは1分から30分、好ましくは1分から10分、より好ましくは5秒から5分の期間にわたり行われてもよい。
【0087】
乾燥相及び水のブレンドの後、例えばステップa)で、混合物は、例えばステップb)で脂肪組成物を添加する前に静止させてもよい。これは脂肪組成物を添加する前の乾燥相の完全な加水を確実にし得る。この静止は、0.5~15℃、好ましくは1~12℃、より好ましくは5~10℃の温度を有する低温保存下で行われてもよい(それによって、微生物増殖がさらに制御される)。この静止は、5分~5時間、好ましくは5分~2時間、より好ましくは5分~30分の持続時間にわたり行われてもよい。
【0088】
肉類似組成物の調製は、さらなる成分を組成物に添加するステップを含んでいてもよい。これらの成分は、肉類似組成物の調製における任意の段階で添加されてもよい。実施形態では、さらなる成分を、例えばステップb)の後、脂肪組成物の添加の後に添加する。好ましくは、乾燥成分は、脂肪組成物を添加する前に加水される。実施形態では、乾燥成分は、脂肪組成物の添加前、ステップa)などで、任意の乾燥植物性タンパク質と加水される。そのような成分は、本明細書にさらに詳細に開示される、炭水化物、多糖、変性多糖、ヒドロコロイド、ガム、乳、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物、デンプン、塩、スパイス、繊維、フレーバー成分、着色剤、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存料、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、及び酸度調節剤の1種又は2種以上を含んでいてもよい。これらの成分の添加は、ブレンド、混合、又は任意の適切な手段によって行われてもよい。
【0089】
肉類似組成物が調製されたら、これを食品に形成してもよい。肉類似組成物を所望の形状に形成するステップを含んでいてもよい。得られた食品の形状及びサイズは、特に限定されない。本発明による肉類似組成物から作製することができる成形された食品の例には、バーガー、ソーセージ、ナゲット、ミートボール、及び挽肉が含まれる。
【0090】
任意の適切な方法は、肉類似組成物を所望の形状に成形するのに使用されてもよい。実施形態では、これは切断、成型、加圧、押出し、ローリング、粉砕、又はこれらの任意の組合せによって行われてもよい。これらのプロセスは、手動で動作し得る又は自動化され得る装置を使用して行われてもよい。実施形態では、肉類似組成物は、5分~24時間、好ましくは1時間~12時間、より好ましくは3時間~8時間にわたり圧縮されてもよい。圧縮の持続時間及び圧力は、他の因子の中でも接着性などの肉類似組成物の性質を考慮して、そのサイズ及び密度など、得られる食品の所望の性質によって決定される。これは食品の所望の形状を形成してもよく、又は例えば粉砕/挽肉の属性を複製するため、ペレット化、粉砕、若しくは切断などによってさらに加工してもよい。
【0091】
肉類似組成物を調製する方法は、組成物を調理又は部分調理することをさらに含んでいてもよく、これは食品に形成されていてもよい。調理は、煮ること、ベークすること、焼くこと、及び/又はマイクロ波処理することを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、調理は、メイラード反応が生じ得るように、十分な温度にある(例えば、80℃よりも上であり180℃まで、好ましくは130℃~170℃)。メイラード反応は、食品の所望の褐変に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】本発明による調理されたバーガーを、ヤシ油を含む比較例の調理されたバーガーと比較する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下の実施例は、単なる例示的な目的のためであり、本発明の範囲をいかなる手法でも限定するものではない。
【実施例1】
【0094】
比較例の脂肪のヒマワリ油及びヤシ油を使用した。
【0095】
脂肪Aは、70重量%のシアバターと30重量%のヤシ油とのブレンドの化学的エステル交換によって調製した。
【0096】
脂肪Aの様々な性質を以下の表1に示し、比較例の脂肪のヤシ油及びヒマワリ油と対比する。
【0097】
【0098】
脂肪Aは、30℃~35℃の口内温度で、より高い固体脂肪含量を有することもわかる。上記にて論じたように、これは消費するとき、肉類似組成物からのより長いフレーバー放出に寄与すると考えられる。脂肪Aは、ヤシ油よりも低い飽和脂肪算残基含量を有し、C46~C48トリグリセリドのさらに大きい含量、及びSt2Mトリグリセリドを含有することもわかる。後者は、素早く結晶化するトリグリセリドであり、脂肪組成物の構造構築特性に寄与する。
【0099】
組織化タンパク質を使用して植物系バーガーを調製するための概略的方法
バーガーを、脂肪Aを含む肉類似組成物(即ち、本発明による肉類似組成物)から作製し、ヤシ油及びヒマワリ油を含む肉類似組成物を形成する。
【0100】
以下の手順を、以下の実施例の植物系バーガーを調製するのに使用した:
1. 組織化タンパク質++を、表2に示される量に従い冷水(5℃)で加水し、低温保存(5℃)で少なくとも30分間、さらに加水した;
2. 粉末形態にあるその他全ての成分(安定化剤ブレンド+++及びフレーバー)を、少なくとも1分間ブレンドすることによって混合し冷水(1~3℃)で加水し、その後、少なくとも30分間、冷蔵庫で保存した;
3. 加水した組織化タンパク質を、低速で20秒間、切り刻んだ;
4. ステップ2及び3からの成分と任意のその他の成分(例えば、着色剤、溶融形態の脂肪、油)を表2に示される量に従い、室温で組み合わせ、得られた生地を約2分間ブレンドした;
5. 生地を冷蔵庫(2~5℃の温度で動作する)内で、少なくとも30分間静置する;
6. バーガー(直径10cm;高さ1.4cm;重量100g)を、この生地から作製し、調理前に冷蔵庫(2~5℃の温度で動作する)に保存した;及び
7. 試料をテーブルグリルで、220℃で焼いて、芯温を72℃にした(約5~5:30分)。
++上記言及される組織化タンパク質は、組織化エンドウマメタンパク質(タンパク質含量は最小で70%;フォーマット:ストリップ)と組織化ソラマメタンパク質(タンパク質含量は最小で60%;フォーマット;塊)とのブレンドである。
+++上記言及される安定化剤のブレンドは、エンドウマメタンパク質(タンパク質含量は最小で83%;フォーマット;粉末)、エンドウマメ繊維、及びメチルセルロースのブレンドである。
【0101】
比較例1、比較例2、及び実施例3のバーガーの組成物を上記方法に従い調製し、以下の表2に示す。
【0102】
【0103】
調理前のバーガー特性の評価
テクスチャープロファイル分析(TPA)を使用して、硬度という用語によりしばしば置換されてきた第1の圧縮サイクル(最初のひと噛み)中の最大ピーク力と定義された、硬さを決定した。TPAは、5kgの荷重セル及び25mm Diaシリンダーアルミニウムプローブ(P/25)を備えるTA.XT2機(Stable Micro Systems社製)上で行った。機械を、以下の設定で実行するようにプログラムした:試験前速度:1mm/秒;試験速度:5mm/秒;試験後速度:5mm/秒;圧縮深さ:5mm;サイクル間の時間:5秒;トリガータイプ:自動、5gで;データ獲得速度:200pps。試験材料を、往復運動で2倍圧縮し、口内での咀嚼運動を模倣した。力対時間(及び/又は距離)のグラフを得、そこから所望の情報を得た。TPA及びテクスチャー特性の分類は、Bourne M. C., Food Technol., 1978, 32 (7), 62-66並びに Trinh T.及びGlasgow S., ‘On the texture profile analysis test’, Conference Paper, Conference: Chemeca 2012, Wellington, New Zealandにさらに記載され、そこに記述されるように行われてもよい。
【0104】
【0105】
調理前のバーガーに好ましい値は、下記の通りである:硬さ 400~5000g、好ましくは400~1500g。比較例1及び本発明による実施例3は、バーガーの適正な成型を可能にするのに典型的には必要な、良好な加工性に相関する硬さの値を有する。しかしながら本発明による実施例3は、飽和脂肪酸含量が非常に低い。比較例2(ヒマワリ油をベースにする)は、より低い硬さ及びより油状の生地をもたらす。比較例2は、調理前のその硬さが辛うじて十分であるので、辛うじて許容可能である。比較例1及び実施例3は、非常に良好な硬さのスコアを有する。しかしながら実施例3は、はるかに低い飽和脂肪含量を有する。したがって実施例3は、飽和脂肪が低いことの追加の利益を提供しながら、肉類似組成物に関する現在好ましい最新技術と同様に、硬さに関して良好であるような解決策を、提供する。
【0106】
焼いた後の実施例のバーガーの性質
バーガーの硬さを、上述の方法と同じ方法を使用して、TPAにより測定した。焼いた後のジューシーさを、以下の方法により評価した:
・ 焼いた後、試料を鍋から取り出し、5分間冷ます(正確に5分);
・ 試料の重量を記録する;
・ 汁を収集する皿の重量を記録し(例えば、カップ)、エアロプレスを皿の上に位置決めする;
・ 試料を、6回の平行な及び6回の垂直なカットを介して36ピースに切り刻む;
・ 切り刻んだ試料をエアロプレス(Aerobie Model A80;濾紙なしで使用)に置き、力/重量 7kgを5分間使用して圧縮する;及び
・ 抽出された汁の重量を記録し、調理された質量当たりの汁を計算する
【0107】
【0108】
焼いた後の硬さの望ましい値は、500~5000である。全ての実施例は、この範囲内にある。実施例3は、比較例1と同等のテクスチャー特性を有するが、飽和脂肪酸の含量は著しく低い。第2に、本発明による実施例3は、調理された質量当たり、最も高いパーセンテージの汁を有する。比較例2の硬さの値は辛うじて許容可能であり、それに対して比較例1及び実施例3の硬さの値は非常に良好である。実施例3は、単位重量当たりのより低い飽和脂肪含量であるがジューシーさも改善された現況技術(即ち、比較例1)に勝る利益を提供する。
【実施例2】
【0109】
脂肪Bは、71重量%のシアステアリンと29重量%のヤシ油とのブレンドの化学的エステル交換によって調製した。引き続き、脂肪Bを結晶化して、42℃の融点を持つ固体脂肪フレークにした。固体脂肪フレークは、都合の良い容易な取扱いを可能にし、植物系代用肉で使用するのに特に開発される。脂肪Bの様々な性質を、以下の表5に示す。
【0110】
【0111】
脂肪Bは、目に見える固体脂肪構造(即ち、霜降り効果)を提供するように及びバーガーの表面の不均質性を増大させるように、肉の生地に混合することができる(即ち、肉類似組成物のその他の成分と混合することができる)。
【0112】
バーガーのパティを、表6のレシピに従い調製した。
【0113】
【0114】
1. 組織化タンパク質++は、表1に示される量に従い冷水(5℃)で加水し、少なくとも30分間、冷水(5℃)中でさらに加水した;
2. 粉末形態のその他の全ての成分(安定化剤ブレンド+++及びフレーバー)を、少なくとも1分間ブレンドすることによって、混合し氷水(1~3℃)で加水し、その後、少なくとも30分間、冷蔵庫内で保存した;
3. 加水した組織化タンパク質を、低速で、20秒間切り刻んだ;
4. ステップ2及び3からの成分並びに表5に示される量に従う任意のさらなる成分(例えば、着色剤、溶融形態の脂肪、油、脂肪フレークを除く)を室温で組み合わせ、得られる生地を約1.5分間ブレンドし;脂肪フレーク(存在する場合)を添加し、得られた生地をさらに1分間ブレンドした。
5. 生地を冷蔵庫(2~5℃の温度で動作する)内で、少なくとも30分間静置した;
6. バーガー(直径8cm;高さ2cm;重量100g)を生地から作製し、調理前に冷蔵庫(2~5℃の温度で動作する)に保存する;及び
7. バーガーを、ヒマワリ油(5g)を引いたフライパン上で6分間(1.5分の4倍)加熱することによって調理した。
【0115】
調製したバーガーを
図1に示す。本発明によるバーガーは、目に見える脂肪粒子を含有し、溶融したヤシ油のみ含有して調製されたバーガーと比較したときに調理の前、間、及び後の両方でさらに不均質な表面を有することがわかる。目に見える脂肪粒子は、実際の肉の見た目及び感触に似ている。溶融ヤシ油を含有するバーガーは、目に見える脂肪構造を含有せず、はるかに均質であり、実際の肉の見た目及び感触にそれほど似ていない。本発明によるバーガーは、ヤシ油を含有するバーガーと比較して、単位重量当たり、より低い量の飽和脂肪も含有する。
【0116】
理論的には、固体の脆いヤシ粒子をバーガーに含んで、実施例5及び
図1に示される霜降り効果を試みかつ提供することが可能になってもよく、本発明で使用される脂肪組成物を使用する利点は、そのより高い融点に起因して、脂肪組成物が、ヤシ油と比較して改善された加工性を有することであり、前記脂肪組成物及びその他のバーガー成分は、より高い温度で加工することができ、
図1の実施例5に示される霜降り効果をさらにもたらすことを意味する。本発明の脂肪組成物は、ヤシ油では霜降り効果がもたらされないという意味においてヤシ油が溶融し得る温度で、霜降り効果をもたらすように加工することができる。
【実施例3】
【0117】
脂肪Aは、一連の3つのスクレープ式表面熱交換器を使用し、その後、ピンローターを使用して、予備結晶化(「可塑化」)した。開始温度は約58℃であり、3つのスクレープ式表面熱交換器及びピンローターの後のそれぞれの出口温度は27.4℃、26.1℃、19.4℃、及び24.6℃であった。可塑化した脂肪Aを、引き続き20℃で保存した。
【0118】
下記のバーガーは、焼くステップ以外、以下のレシピ及び実施例2の手順に従って調製した。バーガーは、内部温度が約74℃になるまで、ヒマワリ油(5g)を引いたフライパン上で約9分間(6×1.5分)加熱することによって調理した。
【0119】
【0120】
本発明による実施例8及び9は、
・ 良好な加工性と相関する硬さの値を有し、
・ ジューシーさに関する高い官能スコアと相関して、調理済み質量当たり高い%の汁を有する。これらの結果は、同等の量のヒマワリ油の使用(比較例7)と比較して、より良好である。
【0121】
本発明による実施例10は:
・ 良好な加工性と相関する硬さの値を有し、
・ 2倍量の油が使用される、比較例7に類似した、調理済み質量当たりの汁の%及びジューシーさに関する官能スコアを有する。結論として、脂肪Aは、バーガーに添加される脂肪の量を減少させるのに使用することができ、一方、バーガーの所望の感触及び性能特性は依然として維持される。
【0122】
上記にて与えられたジューシーさのスコアは、咀嚼しながら汁としてどの程度の水/油がバーガーから分泌されるかという官能評価に基づく、0(ジューシーさなし)~5(最もジューシー)のスコアである。
【国際調査報告】