(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】チーズ類似組成物
(51)【国際特許分類】
A23C 20/02 20210101AFI20240126BHJP
【FI】
A23C20/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546261
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 SE2022050093
(87)【国際公開番号】W WO2022164378
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519420791
【氏名又は名称】エーエーケー エービー (ピーユービーエル)
【氏名又は名称原語表記】AAK AB (publ)
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ペデルソン マッズ クラウゼン
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC15
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC08
4B001EC05
(57)【要約】
チーズ類似組成物は、20重量%~30重量%の脂肪組成物;1重量%~45重量%のデンプン;0重量%~15重量%の非動物性タンパク質;及び35重量%~65重量%の水を含み;組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが45%を超えず;脂肪組成物が、20重量%~85重量%の飽和脂肪酸残基;10重量%~50重量%のステアリン酸残基(C18:0);及び2重量%~35重量%のラウリン酸残基(C12:0)を含み;脂肪酸残基の前記パーセンテージが、脂肪組成物のグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ、脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20重量%~30重量%の脂肪組成物、1重量%~45重量%のデンプン、0重量%~15重量%の非動物性タンパク質、及び35重量%~65重量%の水を含む、チーズ類似組成物であって、前記組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが45%を超えず、前記脂肪組成物が、20重量%~85重量%の飽和脂肪酸残基、10重量%~50重量%のステアリン酸残基(C18:0)、及び2重量%~35重量%のラウリン酸残基(C12:0)を含み、脂肪酸残基の前記パーセンテージが、前記脂肪組成物のグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ、前記脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである、前記チーズ類似組成物。
【請求項2】
脂肪組成物が、20重量%~70重量%の飽和脂肪酸、好ましくは20重量%~60重量%の飽和脂肪酸、より好ましくは65重量%~85重量%の飽和脂肪酸又は20重量%~65重量%の飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載のチーズ類似組成物。
【請求項3】
脂肪組成物が10重量%未満のパーム油を含み、好ましくは前記組成物が5重量%未満のパーム油を含み、より好ましくは前記組成物が2重量%未満のパーム油を含み、最も好ましくは前記組成物がパーム油を含まない、請求項1又は2に記載のチーズ類似組成物。
【請求項4】
脂肪組成物が、非水素化脂肪組成物である、請求項1~3のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項5】
脂肪組成物が、20重量%以下、好ましくは10重量%以下のパルミチン酸(C16:0)を含む、請求項1~4のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項6】
脂肪組成物が、1:1~12:1のステアリン酸(C18:0)とパルミチン酸(C16:0)との重量比を有する、請求項1~5のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項7】
脂肪組成物が、1:4~4:1のラウリン酸(C12:0)とステアリン酸(C18:0)との重量比を有する、請求項1~6のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項8】
脂肪組成物が、10重量%~25重量%のラウリン酸(C12:0)、及び/又は15重量%~45重量%のステアリン酸(C18:0)を含む、請求項1~7のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項9】
脂肪組成物が、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された5未満、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、及び最も好ましくは2以下の固体脂肪含量(SFC)N35を有する、請求項1~8のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項10】
脂肪組成物がエステル交換された脂肪を含み、好ましくは前記脂肪組成物が、エステル交換された脂肪のブレンドを含む、請求項1~9のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項11】
エステル交換された脂肪又はエステル交換された脂肪のブレンドが、化学的エステル交換、酵素的エステル交換、又はこれらの組合せにより生成されている、請求項10に記載のチーズ類似組成物。
【請求項12】
エステル交換された脂肪又はエステル交換された脂肪のブレンドが、平衡生成物分布に達する前に停止されるエステル交換反応によって生成される、請求項10又は11に記載のチーズ類似組成物。
【請求項13】
脂肪組成物が、シアバター、シアステアリン、シアオレイン、ココアバター、ココアステアリン、ココアオレイン、アランブラキア脂肪、コクム脂肪、マンゴー核脂肪、サル脂肪、イリッペバター、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の脂肪;並びにヤシ油、ヤシ油ステアリン、ヤシ油オレイン、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ババス油、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の油を含む、エステル交換された脂肪のブレンドを含む、請求項1~12のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項14】
脂肪組成物が、シアバター及びヤシ油のエステル交換化ブレンド、又はシアステアリン及びヤシ油のエステル交換化ブレンドを含む、請求項1~13のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項15】
脂肪組成物が、20重量%~80重量%のシアバターと20重量%~80重量%のヤシ油とのエステル交換化ブレンドを含む、請求項1~14のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項16】
脂肪組成物が、20重量%~80重量%のシアステアリンと20重量%~80重量%のヤシ油とのエステル交換化ブレンドを含む、請求項1~15のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項17】
脂肪組成物が、(i)20重量%~80重量%のシアバター及び/又はシアステアリンと20重量%~80重量%のヤシ油との20重量%~80重量%のエステル交換化ブレンド、及び(ii)ヒマワリ油、菜種油、又はこれらの組合せなどの20重量%~80重量%の液体油のブレンドを含む、請求項1~16のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項18】
脂肪組成物が、5~35重量パーセントのCN46及びCN48トリグリセリド、好ましくは10~30重量%のCN46及びCN48トリグリセリドを含む、請求項1~17のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項19】
脂肪組成物が、2~12重量パーセントのSt2Mトリグリセリド、好ましくは5~12重量パーセントのSt2Mトリグリセリドを含む、請求項1~18のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項20】
デンプンが、非加工デンプン、加工デンプン、又はこれらの組合せを含む、請求項1~19のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項21】
デンプンが、非加工若しくは加工の植物性デンプン、コメデンプン、タピオカデンプン、又はこれらの組合せを含み、好ましくは前記デンプンが、ジャガイモデンプン、ワキシートウモロコシデンプン、タピオカデンプン、又はこれらの組合せを含む、請求項1~20のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項22】
非動物性タンパク質が、植物性タンパク質、例えば藻類タンパク質、ブラックビーンタンパク質、キャノーラコムギタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、ソラマメタンパク質、レンズマメタンパク質、ハウチワマメタンパク質、リョクトウタンパク質、エンバクタンパク質、エンドウマメタンパク質、ジャガイモタンパク質、コメタンパク質、ダイズタンパク質、ヒマワリ種子タンパク質、コムギタンパク質、ホワイトビーンタンパク質、及びタンパク質単離物、若しくはこれらの濃縮物を含み;又は非動物性タンパク質が、セイタン、キノコタンパク質、マメ科植物タンパク質、テンペ、ヤムイモ粉、豆腐、マイコプロテイン、ピーナツ粉、湯葉、ナッツ、ナッツ由来タンパク質、ナッツ由来乳製品、若しくはこれらの組合せを含む、請求項1~21のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項23】
チーズ類似組成物が、動物乳由来タンパク質をさらに含み、好ましくは前記動物乳由来タンパク質がカゼインを含む、請求項1~22のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項24】
チーズ類似組成物が、1種又は2種以上のフレーバー添加剤を含み、好ましくは前記1種又は2種以上のフレーバー添加剤が、前記チーズ類似組成物の0.1重量%~5重量%の量で存在する、請求項1~23のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項25】
チーズ類似組成物が、1種又は2種以上の着色添加剤を含み、前記1種又は2種以上の着色添加剤が、前記チーズ類似組成物の0.01重量%~1重量%の量で存在する、請求項1~24のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項26】
チーズ類似組成物が、さらに、イオン性又は非イオン性の乳化剤、ポリヒドロキシ化合物、乳、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物、塩、スパイス、繊維、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存料、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、及び酸度調節剤を含む、請求項1~25のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項27】
チーズ類似組成物が、動物性タンパク質及び/又は動物性脂肪を実質的に含まず、好ましくは前記チーズ類似組成物が、動物性タンパク質及び/又は動物性脂肪を含まない、請求項1~26のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項28】
チーズ類似組成物が、動物由来生成物を実質的に含まず、好ましくは前記チーズ類似組成物が動物由来生成物を含まない、請求項1~27のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項29】
チーズ類似組成物が、さらに、動物油、魚油、動物由来タンパク質、動物由来多糖、又はこれらの任意の組合せなど、1種又は2種以上の動物由来生成物を含み、好ましくは前記1種又は2種以上の動物由来生成物が、動物乳タンパク質、動物乳脂肪、又はこれらの組合せを含む、請求項1~27のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項30】
1種又は2種以上の動物由来生成物が、チーズ類似組成物中に、前記チーズ類似組成物の0.1重量%~20重量%の量で存在する、請求項29に記載のチーズ類似組成物。
【請求項31】
チーズ類似組成物が35重量%~55重量%の水を含み、前記チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが25%~35%であり、好ましくは前記チーズ類似組成物が、チェダーチーズ、パルメザンチーズ、フェタチーズ、サンドイッチチーズ、又は同様のタイプのチーズ類似組成物である、請求項1~30のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項32】
チーズ類似組成物が45重量%~55重量%の水を含み、前記チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが20%~35%であり、好ましくは前記チーズ類似組成物が、軟らかいチーズ類似組成物、例えばブリーチーズ若しくはブリータイプチーズ、ピザチーズ、又は同様のタイプのチーズ類似組成物である、請求項1~30のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項33】
チーズ類似組成物が50重量%~65重量%の水を含み、前記チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが5%~25%であり、好ましくは前記チーズ類似組成物が、スプレッダブルなチーズ類似組成物、例えばクリームチーズ、又は同様のタイプのチーズ類似組成物である、請求項1~30のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項34】
脂肪組成物が、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された60未満の固体脂肪含量(SFC)N10を有し、好ましくは、前記脂肪組成物が、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定された50~60の固体脂肪含量(SFC)N10を有する、請求項1~33のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項35】
チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが、30%未満であり、好ましくは20%~30%であり、任意に前記チーズ類似組成物が、12.5重量%未満の非動物性タンパク質を含む、請求項1~34のいずれかに記載のチーズ類似組成物。
【請求項36】
請求項1~35のいずれかに記載のチーズ類似組成物を含む、食品。
【請求項37】
食品が、ベジタリアン又はビーガン用のチーズ代用食品である、請求項36に記載の食品。
【請求項38】
食品が、ピザチーズ、サンドイッチチーズ、フェタチーズ、ソフトスプレッダブルチーズ、又はハードチーズを含み、好ましくは前記食品が、ピザチーズ、サンドイッチチーズ、又はフェタチーズを含む、請求項36又は37に記載の食品。
【請求項39】
チーズ類似組成物における脂肪組成物の使用であって、前記脂肪組成物が、20重量%~80重量%の飽和脂肪酸、10重量%~50重量%のステアリン酸(C18:0)、及び2重量%~35重量%のラウリン酸(C12:0)を含み、前記パーセンテージの脂肪酸残基が、前記脂肪組成物におけるグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ前記脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものであり、チーズ類似組成物が、20重量%~30重量%の脂肪組成物、1重量%~45重量%のデンプン、0重量%~15重量%の非動物性タンパク質、及び35重量%~65重量%の水を含み、前記組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが45%を超えない、前記使用。
【請求項40】
チーズ類似組成物を食品に使用することをさらに含む、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
チーズ類似組成物、脂肪組成物、及び/又は食品が、請求項1~38のいずれかで定義された通りである、請求項39又は40に記載の使用。
【請求項42】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の栄養プロファイルを改善するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項39~41のいずれかに記載の使用。
【請求項43】
重量で同じ量のヤシ油を含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の消費者におけるインビボコレステロールレベルの影響を改善するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の1つ若しくは2つ以上の官能的性質及び/又は1つ若しくは2つ以上の機能的性質を改善するために、脂肪組成物を使用することを含む、請求項39~43のいずれかに記載の使用。
【請求項45】
1つ又は2つ以上の官能的性質が、硬さ、接着性、凝集性、復元力、弾力性、又はこれらの組合せを含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
1つ又は2つ以上の機能的性質が、スライス性、取扱い性、加熱時の伸展性、スライス中の廃棄物の低減、細断中の廃棄物の低減、チーズの品質の改善、又はこれらの組合せを含む、請求項44又は45に記載の使用。
【請求項47】
重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の硬さを低減させるために、脂肪組成物を使用することを含み、好ましくは、前記チーズ類似組成物が請求項31又は32に記載されたものであり、より好ましくは、前記チーズ類似組成物をピザチーズ食品、サンドイッチチーズ食品、又はフェタチーズ食品に使用することを含む、請求項39~46のいずれかに記載の使用。
【請求項48】
重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較して、時間と共にチーズ類似組成物の硬さが増大する程度を低減させるために、脂肪組成物を使用することを含み、好ましくは、前記チーズ類似組成物をピザチーズ食品、サンドイッチチーズ食品、又はフェタチーズ食品に使用することを含む、請求項39~47のいずれかに記載の使用。
【請求項49】
請求項31又は32に記載のチーズ類似組成物中に脂肪組成物を使用することを含み、重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較して、前記チーズ類似組成物の脆さ及び/又は堅固さを低減するために、前記脂肪組成物を使用することを含み、好ましくは、前記脂肪組成物をピザチーズ食品又はサンドイッチチーズ食品で使用することを含む、請求項39~48のいずれかに記載の使用。
【請求項50】
請求項31又は32に記載のチーズ類似組成物中に脂肪組成物を使用することを含み、前記チーズ類似組成物をピザチーズ食品又はサンドイッチチーズ食品で使用することを含み、重量でヤシ油を同じ量で含むチーズ類似組成物を含む類似の食品と比較して、前記食品の外観を改善するために、前記脂肪組成物を使用することを含む、請求項39~49のいずれかに記載の使用。
【請求項51】
請求項1~35のいずれかに記載のチーズ類似組成物又は請求項36~38のいずれかに記載の食品を製造する方法であって、請求項1~35のいずれかで定義された脂肪組成物、水、デンプン、及び任意に非動物性タンパク質、及び/又は1種若しくは2種以上の追加の成分を組み合わせて、前記チーズ類似組成物を形成するステップ、並びに任意に前記チーズ類似組成物を食品に形成するステップを含む、前記方法。
【請求項52】
組み合わせるステップが、70℃~85℃の温度で実施される、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、デンプン、水、及び任意に非動物性タンパク質を含むチーズ類似(cheese analogue)組成物と、食品における前記チーズ類似組成物の使用とに関する。詳細には本発明は、チーズ類似組成物の様々な性質を改善するための、ある特定の脂肪組成物のチーズ類似組成物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
健康に持続可能に調達された食品を食べたい、並びに全体としてその肉及び乳製品の摂取を低下させたいという消費者の増大する求めに起因して、植物系食物が益々求められている。また、倫理上及び健康上の理由で動物由来の製品を完全に含まない食品を求めるビーガンの数も増えつつある。
【0003】
このことが、テクスチャー、味、及び/又は外観などの動物由来の肉及びチーズ製品のある特定の品質を模倣することを狙う、植物系の肉(代替肉組成物)及び植物系のチーズ(チーズ類似組成物)などの様々な植物系食品の開発に繋がっている。
【0004】
チーズ類似組成物の典型的な内容物は、着香剤及び着色剤などの添加剤と共に、組成物の20重量%~30重量%の量で典型的には存在する植物系脂肪、デンプン、非動物性タンパク質、及び水である。典型的には、組成物中に存在するデンプン及び非動物性タンパク質の総量は、種々のチーズ類似組成物間で一定のままである。スプレッド及びソフトチーズなどの、より軟らかいチーズ類似組成物は、比較的多くの水並びに少ないデンプン及びタンパク質を典型的には含有することになり、その逆のことが硬いチーズ類似物の場合に言える。
【0005】
植物系チーズが動物由来乳製チーズの官能的及び機能的性質を効果的に模倣することは、当技術分野では難しいことが見出されている。この難題は、種々の性質と共に存在する多くの種々の乳製チーズ(ハードチーズ;ピザチーズ;ブリータイプチーズ;スプレッダブルチーズなど)により増大しており、種々の性質を持つ植物系チーズの多くの種々の系が、乳製チーズの多くの対応するタイプを模倣することが望まれることを意味する。乳系チーズでは、チーズの性質が多くの因子によって決定される。重要な因子は、チーズに存在する脂肪及びタンパク質の性質である。乳製チーズは乳(milk)から生成され、動物乳由来の脂肪及び動物乳由来のタンパク質、例えば乳製チーズの所望の性質を提供するのに重要なカゼインを含有する。乳製チーズの作製では、乳脂肪及びタンパク質の凝集が生じて、乳中に存在するカゼインミセルの不安定化の結果としてチーズを生成する。乳製チーズの性質(及びチーズタイプに応じて前記性質を調整する能力)の全てを持つ組成物を提供することができる、非動物供給源から全体が誘導された化学系を提供することは、当技術分野では難しいことが見出されている。特に、チーズ類似組成物の多くの種々のタイプのそれぞれに関して所望の性質の全てを提供するのに適したチーズ類似組成物における使用に適した非動物由来脂肪を提供することは、難しいことが見出されている。
【0006】
チーズ類似物分野における現行の解決策は、脂肪の性質と、脂肪、水、及びデンプンの相対量を組成物中で使用して、チーズ類似組成物の官能及び機能的性質を提供し調整することを含む。現存の大部分の植物系チーズは、ヤシ油を脂肪供給源として使用する。ヤシ油は植物由来であり、したがってビーガン食品における使用に適切であるという基準を満たす。ヤシ油は、多くのその他の植物由来の油(ヒマワリ油など)よりも高い融点を有し、したがって、動物由来の脂肪の性質を模倣するにはこれらその他の植物性油よりも良好である。動物由来の脂肪は、典型的には、植物性油よりも高い融点を有する。ヤシ油は、パーム油の生成に関連した負の環境影響に起因して、パーム油などのその他のより高い融点の植物性油よりも好ましい。さらにパーム油は、消費者のコレステロールレベルに有害と見なされる多量のパルミチン酸残基(residue)を含有する。その結果、脂肪としての、チーズ類似組成物におけるヤシ油の使用が、最新技術である。
【0007】
本発明の発明者らは、チーズ類似組成物におけるヤシ油の使用からもたらされる、ある特定の悪影響及び欠点があることを理解している。まず、ヤシ油には飽和脂肪酸残基が多く、心疾患、望ましくないコレステロールレベル、及び関係する状態との脂肪中の飽和脂肪酸残基との関連に起因して健康上の観点から消費者には望ましくない。
【0008】
さらに、本発明の発明者らは、チーズ類似物の様々な所望の性質を提供するのに寄与するようにヤシ油がチーズ類似組成物に使用される場合、これらの所望の性質がしばしばチーズの製造後に時間と共に弱まり、これはチーズが消費者に消費される時までにチーズがしばしば意図する官能及びテクスチャー特性を持たなくなることを意味することを理解した。理論に限定するものではないが、その非常に急勾配の溶融曲線などのヤシ油の溶融挙動に部分的に起因することが、本発明者らにより考えられる。時間と共に(消費前の保存中に)望ましさが低下することが本発明者らにより見出された、ヤシ油を含有するチーズ類似物の所望の官能及びテクスチャー特性には、限定するものではないが硬さ(hardness)、接着性(adhesiveness)、凝集性(cohesiveness)、復元力(resilience)、及び弾力性(springiness)のような官能的性質;機能的挙動、例えばスライス性(ability to slice)、スライスチーズの取扱い性(ability to handle)、細断されたチーズの取扱い性、(例えば、ピザの用途で)加熱時のチーズの伸展性(ability for the cheese to stretch)、スライス中の廃棄物の低減、細断中の廃棄物の低減、スライスチーズの品質の改善、及び細断されたチーズの品質の改善などが含まれる。
【0009】
ヤシ油及びその他の脂肪の代わりに、チーズ類似組成物におけるある特定の脂肪の使用は、そのような組成物におけるヤシ油及びその他の脂肪の使用に関連して上記にて論じられた問題の多くに対処し及び/又は緩和できることが、本発明の発明者によって見出された。
【0010】
以下に論じる文献は、ある特定の食品における、ある特定の脂肪組成物の有用性について論じる。しかしながら、チーズ類似組成物における脂肪組成物の使用、及びそれに関連して現況技術に勝る可能性ある利点は、企図されない。
【0011】
国際公開第2019/185444号パンフレットは、3.2重量%~10重量%の総カプリル酸及びカプリン酸と;13重量%~32重量%のラウリン酸;20重量%~45重量%のステアリン酸を含む非水素化脂肪組成物を開示する。脂肪組成物は、7重量%~15重量%のCN46トリグリセリド;4重量%~30重量%のCN54トリグリセリド;及び15重量%~28重量%の総CN42及びCN54トリグリセリドを含有する。ベーク物品及び菓子のテクスチャー的及び官能的性能を改善するため、ベーカリー及び製菓用途で使用される脂肪組成物が開示される。特に、脂肪組成物は、ホイップクリーム組成物に含めるのに有用であり、その内部に空気を混入させるのに有益であることが教示される。
【0012】
欧州特許第2443935号明細書は、15%~80%のトリグリセリド組成物;20%~85%の少なくとも1種の充填剤材料、及び最大15%の水を含む、食用生成物を開示する。トリグリセリド組成物は、20重量%~70重量%の飽和脂肪酸残基、及び最大5重量%のトランス不飽和脂肪酸残基を含み、ラウリン酸が多量である。組成物は、比較的低い飽和脂肪酸含量及び高いラウリン酸含量に起因して、その他の高融点植物由来脂肪と比較して栄養上の利益が高いものであることが教示される。高ラウリン酸含量を持つ脂肪は、より長い鎖の飽和脂肪酸をより高い割合で含有する脂肪と比較して、体脂肪としてそれほど蓄積され難いと報告されている。
【0013】
国際公開第2016/162529号パンフレットは、低減した飽和脂肪酸含量及びより高い量の不飽和脂肪酸を有するトリグリセリド組成物を開示する。食品を油で揚げるための油として使用される組成物が、教示される。油は、油で揚げるのに使用される従来の油よりも良好な栄養プロファイルを有するとして、かつサクサク感を提供し、かつ油で揚げた食品から油が滲出するリスクを低くすることが、教示される。油を使用して生成された、油で揚げた生成物は、油状の歯ざわりが少なくなるとも報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2019/185444号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第2443935号明細書
【特許文献3】国際公開第2016/162529号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ある特定の脂肪組成物が、チーズ類似組成物におけるヤシ油及びその他の脂肪の使用に関連する上記にて論じた問題の多くを解決し又は緩和するという意外な知見に基づく。ある特定の脂肪組成物は、より低い量の飽和脂肪酸残基を有することに起因して、ヤシ油に対して改善された栄養プロファイルを有することが見出された。さらに意外にも、ヤシ油の代わりにこれらの脂肪組成物がチーズ類似組成物に含まれることは、悪影響を及ぼさず、ある場合には組成物の様々な官能及び機能的性質など、チーズ類似組成物の様々な性質を改善することが見出された。さらに、ヤシ油の代わりにある特定の脂肪組成物をチーズ類似組成物で使用することは、チーズ類似組成物の製造と消費との間で時間と共に所望の官能又は機能的性質が低下する程度を低減できることが見出された。このように、ある特定の脂肪組成物の使用は、特定の生成物に関する特定の所望の特徴がさらに長い期間にわたり維持されるように、チーズの製造を調整することが可能であり、これは前記チーズ組成物が消費者にとってさらに魅力的であることを意味することが、本発明者らに見出されている。下記の性質の1つ若しくは2つ以上は改善することができ、又は所望の性質が時間と共に低下する程度は、以下の特徴に関して低減されることが見出された:硬さ、接着性、凝集性、復元力、及び弾力性のような官能的性質;機能的挙動、例えばスライス性、スライスチーズの取扱い性、細断されたチーズの取扱い性、(例えば、ピザの用途で)加熱時のチーズの伸展性、スライス中の廃棄物の低減、細断中の廃棄物の低減、スライスチーズの品質の改善、及び細断されたチーズの品質の改善。特に、チーズ類似組成物の硬さ(hardness)及び堅固さ(firmness)は、ヤシ油を含有する組成物と比較して低減することができ、これはある特定の脂肪を含有するチーズ類似物が消費者にさらに受け入れられることを意味することが見出された。硬すぎること及び堅固すぎることは、味及び歯ざわりの観点からそれほど望ましくなく、より脆い生成物をもたらして細断し又は刻んだときにチーズをばらばらにし、「ファイン」として公知の小粒子の形成を引き起こす可能性もある。ある特定の組成物は、チーズ類似物の硬さ及び堅固さが製造と消費との間で時間と共に発生する程度を低減することも見出されている。ヤシ油を含有するチーズ類似物は、製造後に硬さ及び堅固さを望ましくなく増大させることが、本発明者らにより見出されている。ある特定の脂肪組成物は、ヤシ油を含有するチーズ類似物と比較して、チーズの官能及び味特定並びにその外観を改善することも見出されている。
【0016】
さらに、ある特定の脂肪組成物は、様々な種々のタイプのチーズ類似組成物(例えば、ハードチーズ;ソフトチーズ;スプレッダブルチーズなどの全て)の所望の性質を提供する際、使用に適していることが本発明者らにより意外にも見出された。いくつかの従来の公知の脂肪は、これらのチーズ類似物用途のいくつかにおける使用に適しているだけであり、全てにではない。追加の利点として、望む場合には、固体脂肪含量などの脂肪組成物の特定の性質は、種々のタイプのチーズ類似組成物のそれぞれに関して最適化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、20重量%~30重量%の脂肪組成物;1重量%~45重量%のデンプン;0重量%~15重量%の非動物性タンパク質;及び35重量%~65重量%の水を含む、チーズ類似組成物であって;組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが45%を超えず;脂肪組成物が、20重量%~85重量%の飽和脂肪酸残基;10重量%~50重量%のステアリン酸残基(C18:0);及び2重量%~35重量%のラウリン酸残基(C12:0)を含み;前記パーセンテージの脂肪酸残基が、脂肪組成物のグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ、脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものである、チーズ類似組成物が提供される。
【0018】
好ましくは、脂肪組成物は、20重量%~70重量%の飽和脂肪酸、より好ましくは20重量%~60重量%の飽和脂肪酸を含む。一部の実施形態では、脂肪組成物は、65重量%~85重量%の飽和脂肪酸を含む。他の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~65重量%の飽和脂肪酸を含む。脂肪組成物中に存在する飽和脂肪酸残基の量は、脂肪組成物の特定の所望の性質を提供するように調整され得る。例えば、脂肪組成物が、65重量%~85重量%のさらに高い飽和脂肪酸含量を含む場合、脂肪組成物は、脂肪のさらに硬く脆い固体構造を提供するのに特に有用であり得る。他の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~65重量%の飽和脂肪酸を含む。前記脂肪組成物は、より「可塑化された」脂肪構造を提供するのに有用であることが見出されている。
【0019】
特に、本発明の組成物に使用される脂肪組成物は、ヤシ油よりも低い飽和脂肪含量を有し、これは前記脂肪組成物が、ヤシ油を含有するものと比較して本発明の組成物の栄養プロファイルを改善することを意味する。ヤシ油の飽和脂肪含量は、典型的には約87%であり、それに対して本発明で使用される組成物の典型的な飽和脂肪含量は、約61%で低い。乳系チーズ中に存在するバター脂肪の飽和含量は、約63%である。したがって本発明で使用される脂肪組成物は、典型的には、乳系チーズ及びヤシ油を含有するチーズ類似物にも存在する両方の脂肪よりも低い飽和脂肪含量を有する。従来の乳製チーズでは、脂肪含量が10%~25%の間であり、これは前記乳製チーズの飽和脂肪含量が典型的には6%~16%の間であることを意味する。植物系チーズ類似組成物では、脂肪含量が典型的には約25%でさらに高く、これはヤシ油を含有するチーズ類似物が、約22%の飽和脂肪含量を有することを意味すると考えられる。本発明で使用されるある特定の脂肪組成物を使用するとき、チーズ類似物の飽和脂肪含量は、典型的には約15%である。このことは、本発明で使用される脂肪組成物が、より高い脂肪含量を有するヤシ油チーズ類似物と比較して、従来のチーズで典型的に見出される範囲内にあるようにチーズ類似物の飽和脂肪含量を低減させるのに使用できることを意味する。
【0020】
典型的には、脂肪組成物は、2~12重量パーセントのSt2Mトリグリセリド、好ましくは5~12重量パーセントのSt2Mトリグリセリドを含む。St2Mトリグリセリドは、2つのステアリン酸残基と、ラウリン酸又はミリスチン酸のいずれかの1つの残基とを含む、トリグリセリド分子である。理論に限定するものではないが、上記指定された量でSt2Mトリグリセリドを含む脂肪組成物は、上述の可塑化脂肪構造効果及び固体脆性構造効果の両方を提供するのに助けとなることが見出された。St2Mトリグリセリドは、素早く結晶化しかつ油を十分に結合し、上記にて論じた効果を提供する助けとなる。
【0021】
典型的には、脂肪組成物は、5~35重量パーセントのCN46及びCN48トリグリセリド、好ましくは10~30重量パーセントのCN46及びCN48トリグリセリドを含む。CNという略称は、トリグリセリド分子中に存在する脂肪酸部分の全炭素数を表す。例えば、2つのステアリン酸残基及び1つのラウリン酸残基を含むトリグリセリドは、48の全炭素数を有する可能性がある。
【0022】
好ましくは、脂肪組成物は、10重量%未満のパーム油、より好ましくは5重量%未満のパーム油、さらにより好ましくは2重量%未満のパーム油を含む。最も好ましくは、組成物はパーム油を含まない。
【0023】
脂肪組成物は、好ましくは、非水素化脂肪組成物である。
【0024】
脂肪組成物は、好ましくは、パルミチン酸よりも多い量のステアリン酸を含む。これは、ステアリン酸が中性的な効果を総コレステロール及びLDLコレステロールレベルに対して発揮し、それに対してパルミチン酸は、総コレステロール及びLDLコレステロールレベルを増大させることが公知であるので、栄養の観点から有利である。典型的には、脂肪組成物は、20重量%以下、好ましくは10重量%以下のパルミチン酸(C16:0)を含む。典型的には、脂肪組成物は、1:1~12:1である、ステアリン酸(C18:0)とパルミチン酸(C16:0)との重量比を有する。典型的には、脂肪組成物は、1:4~4:1である、ラウリン酸(C12:0)とステアリン酸(C18:0)との重量比を有する。好ましくは、脂肪組成物は、10重量%~25重量%のラウリン酸(C12:0);及び/又は15重量%~45重量%のステアリン酸(C18:0)を含む。より好ましくは、脂肪組成物は、10重量%~25重量%のラウリン酸(C12:0);及び15重量%~45重量%のステアリン酸(C18:0)を含む。
【0025】
典型的には、脂肪組成物は、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪(unstabilised fat)に関して測定したとき、5未満の、好ましくは4以下の;より好ましくは3以下の;最も好まし2以下の固体脂肪含量(SFC)N35を有する。
【0026】
特に、5未満のN35値は、チーズ類似組成物に非常に好ましいことが見出された。35℃は、ほぼ口内温度である。脂肪組成物の固体脂肪含量が、この温度で約5%よりも高い場合、チーズ類似組成物は、チーズに所望の歯ざわりを持たず、より蝋上で乾燥したフレーバーを有する。この温度で5%未満の固体脂肪含量は、消費者が食べたときにチーズ類似組成物がチーズと同様の官能的性質を有することを確実にするのに重要であることが、本発明者らにより考えられる。
【0027】
典型的には、脂肪組成物は、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定したときに、60未満の固体脂肪含量(SFC)N10を有する。一部の実施形態では、脂肪組成物は、ISO 8292-1に従い不安定化脂肪に関して測定したときに、50~60の固体脂肪含量(SFC)N10を有する。本明細書で使用される「脂肪」という用語は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド脂肪及び油を指し、いかなる特定の融点も示唆しない。「油」という用語は、本明細書では「脂肪」と同義で使用される。
【0028】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖飽和又は不飽和(モノ-及びポリ不飽和を含む)カルボン酸を指す。x個の炭素原子及びy個の二重結合を有する脂肪酸は、Cx:yと示されてもよい。例えば、パルミチン酸はC16:0と示されてもよく、オレイン酸はC18:1と示されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸のパーセンテージは、グリセリド中に存在するトリ-、ジ-、及びモノグリセリド中にアシル基を含み、C8-C24脂肪酸の全重量に対するものである。脂肪酸プロファイル(即ち、組成)は、例えば、ISO 12966-2及びISO 12966.4に従いガスクロマトグラフィを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定されてもよい。
【0029】
トリグリセリド含量は、AOCS Ce 5-86により例えば分子量の差(炭素数(CN))に基づいて決定されてもよい。トリグリセリドCNxxという表記は、脂肪アシル基にxx個の炭素原子を有するトリグリセリドを示し、例えばCN54は、トリステアリンを含む。当技術分野における慣習的な用語のように各炭素数(CN)で指定されるトリグリセリドの量は、脂肪組成物中に存在するCN26~CN62の全トリグリセリドに対する重量パーセンテージである。
【0030】
脂肪組成物は、上記にて論じた脂肪酸及びトリグリセリド組成物の要件を満たす、天然に生ずる若しくは合成脂肪、天然に生ずる若しくは合成脂肪の画分、又はこれらの混合物から作製されてもよい。好ましくは、脂肪組成物は、天然に生ずる脂肪のブレンドから誘導される。
【0031】
好ましくは、脂肪組成物はエステル交換化脂肪を含み、より好ましくは、脂肪組成物がエステル交換化脂肪ブレンドを含む。エステル交換化脂肪又はエステル交換化脂肪ブレンドは、化学エステル交換化、酵素エステル交換化、又はこれらの組合せによって生成されてもよい。
【0032】
一部の実施形態では、エステル交換化脂肪又はエステル交換化脂肪ブレンドは、平衡生成物分布(equilibrium product distribution)に達しない酵素エステル交換化反応によって生成される。これらの実施形態は、上記にて論じた性質など、チーズ類似組成物で使用するのに最適な性質を持つ脂肪組成生成物を提供することが見出された。
【0033】
上記にて論じたエステル交換化反応など、脂肪組成物を調製するためのプロセスは、当技術分野で公知であり、例えばDijkstra, A. J. Interesterificationの: The Lipids Handbook 3rd Edition, pages 285 - 300 (F. D. Gunstone, J. L. Harwood, 及び A. J. Dijkstra (eds.), Taylor & Francis Group LLC, Boca Raton, FL) (2007)で論じられている。
【0034】
好ましくは脂肪組成物は、ステアリン酸が多量の植物油及びラウリン酸が多量の植物油を含む、エステル交換化脂肪ブレンドを含む。好ましくは、ステアリン酸が多量の植物油は、オレイン酸などの一不飽和脂肪酸も多量にある。したがって典型的な実施形態では、脂肪組成物は、シアバター、シアステアリン、シアオレイン、ココアバター、ココアステアリン、ココアオレイン、アランブラキア脂肪(allanblackia fat)、コクム脂肪(kokum fat)、マンゴー核脂肪、サル脂肪(sal fat)、イリッペバター(illipe butter)、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の脂肪;並びにヤシ油、ヤシ油ステアリン、ヤシ油オレイン、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ババス油、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の油を含む、エステル交換化脂肪ブレンドを含む。
【0035】
好ましい実施形態では、脂肪組成物は、シアバター及びヤシ油のエステル交換化ブレンド、又はシアステアリン及びヤシ油のエステル交換化ブレンドを含む。例えば、一部の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~80重量%のシアバターと20重量%~80重量%のヤシ油とのエステル交換化ブレンドを含む。他の実施形態では、脂肪組成物は、20重量%~80重量%のシアステリン及び20重量%~80重量%のヤシ油のエステル交換化ブレンドを含む。
【0036】
非常に好ましい実施形態では、脂肪組成物は、(i)20重量%~80重量%のシアバター及び/又はシアステアリンと20重量%~80重量%のヤシ油との20重量%~80重量%のエステル交換化ブレンド;及び(ii)20重量%~80重量%のヒマワリ油の、ブレンドを含む。
【0037】
好ましくは、脂肪組成物は、脂肪の実質的に大部分である脂肪とごく僅かな水とを含有する(即ち組成物は、脂肪分子から本質的になる)。しかしながら一部の実施形態では、脂肪組成物は水を含有していてもよく、水中油エマルジョン又は油中水エマルジョンなどのエマルジョンの形で、典型的には適切な乳化剤と共に存在していてもよい。そのような実施形態では、脂肪組成物がチーズ類似組成物中に存在する量に関して上記提供された重量パーセンテージの範囲は、脂肪組成物中に存在する脂肪分子のみを指し、組成物中に存在するいかなる水も指さない。同様に、チーズ類似組成物中に存在する水の量に関して上記にて与えられた重量パーセンテージは、以下のさらに詳細に論じられるように、チーズ類似組成物の製造中にそれ自体が原因で添加された水と、またチーズ類似組成物のその他の成分中に存在する任意の水(乳化脂肪組成物中に存在する水など)又は任意の部分に結合した水の、両方を指す。
【0038】
本発明のチーズ類似組成物は、真菌、植物、又はこれらの組合せから誘導された1種又は2種以上のタンパク質など、1種又は2種以上の非動物性タンパク質を含んでいてもよい。
【0039】
典型的には、非動物性タンパク質は植物性タンパク質を含む。好ましくは、植物性タンパク質は、藻類(algae)タンパク質、ブラックビーン(black bean)タンパク質、キャノーラコムギ(canola wheat)タンパク質、ヒヨコマメ(chickpea)タンパク質、ソラマメ(fava)タンパク質、レンズマメ(lentil)タンパク質、ハウチワマメ(lupin bean)タンパク質、リョクトウ(mung bean)タンパク質、エンバク(oat)タンパク質、エンドウマメ(pea)タンパク質、ジャガイモ(potato)タンパク質、コメ(rice)タンパク質、ダイズ(soy)タンパク質、ヒマワリ種子(sunflower seed)タンパク質、コムギ(wheat)タンパク質、ホワイトビーン(white bean)タンパク質、及びタンパク質単離物(isolates)、又はこれらの濃縮物から選択される。他の実施形態では、非動物性タンパク質は、セイタン、コメタンパク質、キノコ(mushroom)タンパク質、マメ科植物(legume)タンパク質、テンペ(tempeh)、ヤムイモ粉(yam flour)、豆腐、マイコプロテイン(mycoprotein)、ピーナツ粉(peanut flour)、湯葉、ナッツ(nuts)、ナッツ由来タンパク質、ナッツ由来乳製品、又はこれらの組合せを含む。
【0040】
植物性タンパク質は、植物から得られる又は誘導されるタンパク質の供給源である。植物性タンパク質は、任意の適切な植物性タンパク質であってもよく、植物性タンパク質の混合物を含んでいてもよく、及び/又はタンパク質単離物若しくは濃縮物を含んでいてもよい。適切な植物性タンパク質の例には、上記にて論じたものが含まれる。
【0041】
上記にて論じたように、チーズ類似組成物中に存在する水に関して上記にて言及される重量パーセンテージの範囲は、それ自体が原因で添加された水と、植物性タンパク質にあるような又は脂肪で乳化したものなど、チーズ類似組成物のその他の成分に存在する水との両方を含む。同様に、チーズ類似組成物中に存在する非動物性タンパク質の量に関して下記にて与えられた重量パーセンテージは、タンパク質の乾燥重量を指し、非動物性タンパク質に結合した水を含まない。
【0042】
チーズ類似組成物の調製で使用される植物性タンパク質は、乾燥していても(本明細書では、「乾燥相」とも呼ぶ)水分を含んでいてもよい。このように実施形態では、植物性タンパク質は、成分の乾燥混合物中に含まれてもよく、タンパク質に加えて炭水化物、繊維、及び/又はヒドロコロイドなど、チーズ類似組成物中に含むことが意図される追加の成分を含んでいてもよい。植物性タンパク質が乾燥している場合、チーズ類似組成物の形成前及び/又は形成中に加水されてもよい。本明細書で使用される、植物性タンパク質に関係して使用される「乾燥」という用語、及び「乾燥相」は、植物性タンパク質を含む相が、5重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水を含むことを意味するものとし、さらにより好ましくは水を実質的に含まないことを意味するものとする。その他の好ましい実施形態では、乾燥相のawは0.90又はそれよりも低く、より好ましくは0.80よりも下である。植物性タンパク質を含む乾燥相は、典型的には、保存寿命が延びるよう可能な限り微生物増殖を低減させるため、実質的に脱水状態で提供される。
【0043】
チーズ類似組成物中に存在する場合、非動物性タンパク質は、典型的にはチーズ類似組成物中に、チーズ類似組成物の15重量%までの量で存在する。好ましくは、非動物性タンパク質は、チーズ類似組成物の12.5重量%以下の量で、例えばチーズ類似組成物の10重量%以下の量で存在する。
【0044】
本発明のチーズ類似組成物は、1種又は2種以上のデンプンを含む。デンプンは、チーズ類似組成物に含まれることが当技術分野で公知のようなデンプンなど、任意の適切なタイプのデンプンを含んでいてもよい。含めることができるデンプンの例には、非加工デンプン、加工デンプン、又はこれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、デンプンは、非加工又は加工の植物性デンプン、コメデンプン、タピオカデンプン、又はこれらの組合せを含む。一実施形態では、デンプンは、ジャガイモから誘導された加工デンプンを含む。好ましくはデンプンは、ジャガイモデンプン、ワキシートウモロコシ(waxy maize)デンプン、タピオカデンプン、又はこれらの組合せを含む。
【0045】
チーズ類似組成物に含めることができるデンプン及び加工デンプンの特定の例には、加工デンプンがジャガイモデンプンから誘導された、酸化デンプンE1404及びデンプンオクテニルコハク酸ナトリウムE1450の混合物;ジャガイモ、トウモロコシ、及びタピオカから誘導されたデンプンを含むSIMPLISTICA(商標)VCP 1214 OG;ジャガイモデンプン及びカラギーナンを含むKaTech NDG 1098.72;酵素的に加工されたジャガイモデンプン及びジャガイモタンパク質を含むPerfectasol TM D500、加工ワキシートウモロコシデンプン(E1450);並びに酸処理されたジャガイモデンプンを含むPerfectasol TM D510、ジャガイモ由来のヒドロキシプロピル化リン酸二デンプン、及びジャガイモ由来のオクテニルコハク酸ナトリウムアルファ化デンプンが含まれる。
【0046】
理論に拘泥するものではないが、デンプンは、以下にさらに詳細に論じられるようにチーズがどの程度硬く又は軟らかいのかなど、チーズ類似物の様々な官能及び機能的性質に、並びに加熱時のその延伸性(ピザチーズの場合には重要な機能)及びスライス可能性(sliceability)など、チーズの様々な機能的性質にも寄与するのに、重要であると考えられる。
【0047】
デンプンは、様々な種々の適用例に必須の性質を提供するなど、乳製チーズ中のカゼインによって提供された効果をもたらすのを支えるのを助けると考えられる。
【0048】
デンプンは、チーズ類似組成物の1重量%~45重量%の量で、例えば5重量%~45重量%の量で、チーズ類似組成物中に存在する。典型的には、デンプンは、チーズ類似組成物の20重量%~30重量%の量で存在する。
【0049】
上記にて論じたように、チーズ類似組成物がタンパク質を含有する場合、タンパク質は典型的には、チーズ類似組成物中に15重量%までの量で組成物中に存在する。
【0050】
典型的には、チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントは、45%を超えない。好ましくは、チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントは、35%未満であり、好ましくは20%~30%である。これらの実施形態で、非動物性タンパク質は、典型的にはチーズ類似組成物の12.5重量%未満の量で、例えば5重量%~12.5重量%、又はチーズ類似組成物の5重量%~10重量%の量で存在するが、さらに少ないタンパク質が存在していてもよく、一部の実施形態ではタンパク質は組成物から完全に省略され得ることが理解されよう。
【0051】
これに関し、タンパク質がチーズ類似組成物に含まれるとき、含まれるタンパク質は、タンパク質とデンプンとを組み合わせた量が上記にて論じた限界を超えないので、デンプンの代用として使用される。タンパク質は、チーズ類似組成物において、上記にて論じたデンプンと同じ役割を実施してもよい。
【0052】
チーズ類似組成物は、水を含み、これは別々の成分として組成物に添加されてもよく又は上記にて論じたように組成物のその他の成分から誘導されてもよい。水の量は、特に限定されず、当業者に理解されるように、以下にさらに詳細に論じられるようにチーズ類似組成物の意図されるコンシステンシーに応じて変わることになる。本明細書で「水」と言う場合、特に指示しない限り、飲料水、脱ミネラル水、又は蒸留水を含むものとする。好ましくは、本発明に関連して用いられる水は、脱ミネラル水又は蒸留水である。当業者が理解するように、脱イオン水は、脱ミネラル水の下位クラスでもある。一部の実施形態では、水が組成物に添加されてもよく、その水は、製造中にチーズ類似組成物の様々な成分又は成分の組合せを加熱するのに使用された水蒸気からの凝縮物である。
【0053】
チーズ類似組成物は、典型的には1種又は2種以上の追加の成分を含む。これらの1種又は2種以上の追加の成分はチーズ類似組成物に含めることが好ましいと考えられるが、1種又は2種以上の追加の成分を含むことは必須ではないことが理解されよう。
【0054】
好ましくは、チーズ類似組成物は、1種又は2種以上のフレーバー添加剤を含み、好ましくは1種又は2種以上のフレーバー添加剤は、チーズ類似組成物の0.1重量%~5重量%の量で存在する。
【0055】
好ましくは、チーズ類似組成物は、1種又は2種以上の着色添加剤を含み。好ましくは1種又は2種以上の着色添加剤は、チーズ類似組成物の0.01重量%~1重量%の量で存在する。
【0056】
一部の実施形態では、チーズ類似組成物はさらに:i)メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトデキストリン、カラギーナン及びこれらの塩、アルギン酸及びその塩、寒天、アガロース、アガロペクチン、ペクチン、及びアルギネートから好ましくは選択される多糖及び/又は変性多糖;ii)ヒドロコロイド;及びiii)好ましくはキサンタンガム、グアールガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、植物ガム、タラガム、トラガカントガム、コンニャクガム、フェヌグリークガム、及びカラヤガムから選択されるガムの、1種又は2種以上を含む。
【0057】
チーズ類似組成物に含まれ得るその他の添加剤の例には、イオン性又は非イオン性乳化剤、ポリヒドロキシ化合物、乳(milk)、液体フレーバー、アルコール、保湿剤、蜂蜜、液体保存剤、液体甘味料、液体酸化剤、液体還元剤、液体抗酸化剤、液体酸度調節剤、液体酵素、粉乳、加水分解タンパク質単離物(ペプチド)、アミノ酸、酵母、糖代替物(sugar substitutes)、塩、スパイス、繊維、増粘剤及びゲル化剤、卵粉末、酵素、グルテン、ビタミン、保存料、甘味料、酸化剤、還元剤、抗酸化剤、酸度調節剤、又はこれらの組合せが含まれる。
【0058】
好ましい実施形態では、チーズ類似物は、ベジタリアン及びビーガンによる消費に適している。したがって好ましい実施形態では、チーズ類似組成物は動物性タンパク質を実質的に含まず、より好ましくは、チーズ類似組成物は動物性タンパク質を含まない。
【0059】
好ましい実施形態では、チーズ類似組成物は、動物由来生成物を実質的に含まず、より好ましくは、チーズ類似組成物は動物由来生成物を含まない。
【0060】
しかしながら一部の実施形態では、チーズ類似組成物は、動物由来タンパク質又は脂肪などの動物由来生成物を含んでいてもよい。したがって一部の実施形態では、チーズ類似組成物はさらに、動物油、魚油、動物由来タンパク質、動物由来多糖、又はこれらの任意の組合せなど、1種又は2種以上の動物由来生成物を含む。一部の実施形態では、1種又は2種以上の動物由来生成物は、動物乳タンパク質、動物乳脂肪、又はこれらの組合せを含む。これらの実施形態では、チーズ類似組成物は、非動物性タンパク質と、動物乳から誘導されたタンパク質及び脂肪とを含むことに基づいて、ベジタリアンによる消費に適していてもよい。これらのチーズ類似組成物は、動物から誘導された脂肪又はタンパク質を含まないのでベジタリアンによる消費に適している。しかしながら、そのようなチーズ類似組成物はビーガンによる消費に適していないことが、当然ながら理解されよう。
【0061】
チーズ類似組成物が1種又は2種以上の動物由来生成物を含む実施形態では、1種又は2種以上の動物由来生成物は、典型的にはチーズ類似組成物中に、チーズ類似組成物の0.1重量%~20重量%の量で存在する。
【0062】
チーズ類似組成物の特定の性質は、組成物中の脂肪組成物、水、デンプン、及びタンパク質(存在する場合)の相対量を調整することによって、調整されてもよい。チーズ類似組成物の性質は、種々のタイプのチーズ類似組成物を提供するように、調整され最適化されてもよい。例えば、非常に異なる性質を持つ既存の多くのタイプのチーズ類似組成物がある。当業者に理解されるように、異なる適用例には異なる性質が望ましい。例えば、スプレッダブルチーズ(代替クリームチーズなど)は、望ましくはソフトでスプレッダブルになり、例えば望ましくは硬くなるが小さい粒子に摩り下ろし可能な代替パルメザンチーズ又はより復元力がなければならないが容易にスライス可能であるサンドイッチチーズとは、非常に異なる性質を有することになる。チーズ類似物が有することが望ましくなり得るその他の性質には、代替モッツァレラピザチーズなど高温での延伸性が含まれる。
【0063】
特定のチーズ類似物の物理的性質を最適化し調整するとき、典型的には、チーズ類似組成物中の脂肪組成物の重量パーセンテージは、異なるタイプのチーズ類似物の間で同様のままになる。例えば、クリームチーズ及びハードチーズの両方は、チーズ類似組成物の20重量%~30重量%の量でなど、同様の量の脂肪組成物を典型的には含有する可能性がある。対照的に、チーズ類似組成物の含水量並びに組成物のタンパク質及びデンプンを組み合わせた含量は、典型的には、チーズ組成物の種々の種類を提供するために様々であり最適化される。典型的には、より硬いチーズ類似組成物の場合、組成物は、比較的低い含水量と、タンパク質及びデンプンを組み合わせた比較的高い含量とを含有する。反対のことは、より軟らかいチーズの場合に言える。代替クリームチーズなどのスプレッダブルチーズは、最も高い含水量と、最も低い相対的なデンプン及びタンパク質を組み合わせた含量とを有することになる。
【0064】
一部の実施形態では、チーズ類似組成物は、35重量%~55重量%の水を含み;チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントは、25%~35%である。典型的には、脂肪組成物は、組成物の20重量%~30重量%の量で存在することになる。典型的にはそのようなチーズは、より硬いチーズの所望の性質を有することになり、チーズ類似組成物は、チェダーチーズ、パルメザンチーズ、フェタチーズ、サンドイッチチーズ、又は類似のタイプのチーズ類似組成物などの組成物になる。
【0065】
他の実施形態では、チーズ類似組成物は45重量%~55重量%の水を含み;チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントは、20%~35%である。典型的には組成物は、組成物の20重量%~30重量%の量で存在することになる。典型的には、そのようなチーズは、より軟らかいチーズの所望の性質を有することになり、チーズ類似組成物は、ブリーチーズ若しくはブリータイプのチーズ、ピザチーズ、又は同様のタイプのチーズ類似組成物になる。
【0066】
他の実施形態では、チーズ類似組成物は50重量%~65重量%の水を含み;チーズ類似組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントは、5%~25%である。典型的には、脂肪組成物は、組成物の20重量%~30重量%の量で存在することになる。典型的には、そのようなチーズは、クリームチーズ及び同様のものなどのスプレッダブルチーズの所望の性質を有することになり、チーズ類似組成物は、代替スプレッダブルチーズ組成物になる。
【0067】
上記にて論じたように、意外にも、本明細書に記述される脂肪組成物は、上記にて論じたチーズ類似組成物の種々のタイプの全てにおける使用に適しており、チーズ類似物のそれぞれのタイプの所望の性質を提供できることが見出された。これはチーズ類似組成物のいくつかのタイプに関して所望の性質を提供することができるがその他のタイプに関してはそうではないチーズ類似組成物で使用される、当技術分野で公知のある特定の脂肪とは対照的である。
【0068】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるチーズ類似組成物を含む食品が提供される。
【0069】
好ましくは、食品は、ベジタリアン又はビーガン用の代用食品である。
【0070】
食品は、任意のチーズ類似組成物食品、又は本発明のチーズ類似組成物を含む食品とすることができる。本発明のチーズ類似組成物は、チーズ類似組成物食品の任意のタイプとして提供することができる。好ましくは、食品は、ピザチーズ、サンドイッチチーズ、フェタチーズ、ソフトスプレッダブルチーズ、又はハードチーズを含み;より好ましくは食品は、ピザチーズ、サンドイッチチーズ、又はフェタチーズを含む。
【0071】
チーズ類似組成物又は組成物を使用して調製された食品の性質は、任意の適切な手段で測定されてもよい。所望の性質は、硬さ、接着性、弾力性、凝集性、及び復元力を含んでいてもよい。そのような手段は、ジューシーさ(又は乾き)、テクスチャー、咀嚼製、及び硬さなど、組成物又は食品の性質に関するフィードバックを提供することができる味のテスターを含む。典型的には、多数のテスターは、1~5のスケールなどに関して、組成物又は食品の1つ又は2つ以上の性質をマークすることが問われることになる。多数のテスターが問われる場合、結果の平均は、食品の一般的印象を観察するために得ることができる。
【0072】
組成物又は食品の性質は、専門化された設備を使用して測定されてもよい。例えばテクスチャープロファイル分析(TPA)は、固体及び半固体材料のテクスチャー属性を特徴付けるのに使用される技法であり、硬さ、接着性、弾力性、凝集性、粘着性、咀嚼性、及び復元力を決定するのに使用され得る。この技法において、試験材料は、往復運動で2倍に圧縮されてもよく、口内の咀嚼運動を模倣し、力対時間(及び/又は距離)のグラフを作成し、そこから上記情報を得ることができる。TPA及びテクスチャー特性の分類は、Bourne M. C., Food Technol., 1978, 32 (7), 62-66 並びにTrinh T.及びGlasgow S., ‘On the texture profile analysis test’, Conference Paper, Conference: Chemeca 2012, Wellington, New Zealandにさらに記述され、その内部に記述されるように行われ得る。
【0073】
力対時間(及び/又は距離)のグラフは、典型的には、トラフによって分離された2つの圧縮部に対応する2つのピークを力に含む。力は、重量等価(g-力、g)又はニュートン(N)で測定されてもよい。
【0074】
硬さ(g又はN)は、最初の圧縮サイクル中に経験した最大ピークと定義される。
【0075】
接着性は、最初に噛んだ場合の負の力の面積、即ち0g又はNの力である又はそれよりも下の、力の2つのピーク間のグラフの面積と定義される。これは、食物の表面と、食物が接触するようになるその他の材料の表面との間の引力を克服するのに必要とされる仕事、即ち試料から圧縮プランジャーを引き離すのに必要な全力を表す。高い接着性及び低い凝集性を持つ材料では、試験したとき、試料の一部が、上向きのストロークでプローブに接着し易い。試験プラットフォームのベース部から試料を持ち上げることは、プローブ上の試料の重量が接着値の一部になる可能性があるので、可能な場合には回避すべきである。ある特定の場合には、使い捨て可能なプラットフォームのベース部への試料の糊付けが提案されてきたが、全ての試料に適用可能ではない。
【0076】
エラストマー性としても公知の弾力性は、第1の圧縮の終わりと第2の圧縮の開始との間を経過する時間中に食物が回復する高さに関する。第1の圧縮中、力=0g又はNでの圧縮の開始から力の第1のピークまでの時間が測定される(「サイクル1の持続時間」と呼ぶ)。第2のサイクル中、力=0g又はNでの第2の圧縮の開始から力の第2のピークまでの時間が測定される(「サイクル2の持続時間」と呼ぶ)。弾力性は、これらの値の比、即ち「サイクル2の持続時間」/「サイクル1の持続時間」として計算される。
【0077】
凝集性は、正の力の面積、即ち第2の圧縮中の0g又はNの力よりも上の曲線下の面積と、第1の圧縮中の場合との比と定義される。凝集性は、機械的作用下で材料が崩壊する速度として測定されてもよい。引張り強度は、凝集性の発現である。接着性が凝集性より低い場合、プローブは、生成物が一緒に保持する能力を有するので清浄なままになり易い。凝集性は通常、二次パラメーターの脆性、咀嚼性、及び粘着性に関して試験される。
【0078】
復元力は、誘導される速度及び力の両方に関して試料が変形からどのように回復するかの測定値である。第1のプローブ反転点、即ち最大力点から、x軸の交差、即ち0g又はNまでの面積と、圧縮の開始から最大力点までの間の第1の圧縮サイクルから生成された面積との比と解釈される。このパラメーターの意味のある値を得るために、試料がこの性質を保有する場合には試料を回復させることが可能な、比較的遅い試験速度が選択されるべきである。
【0079】
本発明の第3の態様によれば、チーズ類似組成物における脂肪組成物の使用であって、脂肪組成物が、20重量%~80重量%の飽和脂肪酸;10重量%~50重量%のステアリン酸(C18:0);及び2重量%~35重量%のラウリン酸(C12:0)を含み;前記パーセンテージの脂肪酸残基が、脂肪組成物におけるグリセリド中のアシル基として結合した脂肪酸を指し、かつ、脂肪組成物中に存在するアシル基として結合したC4-C24脂肪酸残基の全重量に対するものであり;チーズ類似組成物が、20重量%~30重量%の脂肪組成物;1重量%~45重量%のデンプン;0重量%~15重量%の非動物性タンパク質;及び35重量%~65重量%の水を含み;組成物中のデンプン及び非動物性タンパク質を組み合わせた重量パーセントが、45%を超えない、使用が提供される。
【0080】
好ましくは、使用はさらに、上記にて論じたものなど、食品にチーズ類似組成物を使用することを含む。
【0081】
好ましくは、チーズ類似組成物、脂肪組成物、及び/又は食品は、本発明の第1及び第2の態様に従い上記にて論じた通りである。
【0082】
好ましくは、使用は、重量でヤシ油と同じ量を含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の栄養プロファイルを改善するために、脂肪組成物を使用することを含む。
【0083】
好ましくは、使用は、重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の消費者においけるインビボコレステロールレベルの影響を改善するために、脂肪組成物を使用することを含む。
【0084】
本明細書で使用される類似のチーズ類似組成物という用語は、内部に存在する脂肪の性質を除いて本発明のチーズ類似組成物と同一の、等しい重量のチーズ類似組成物を指すのに使用する。類似のチーズ類似組成物は、本発明のチーズ類似組成物が脂肪組成物を含有するように、重量で同じ量のヤシ油を含有する。本発明のチーズ類似組成物の栄養プロファイルは、ヤシ油よりも、単位重量当たり低い総量の飽和脂肪酸残基を含有するので、ヤシ油と比較して改善され得る。ヤシ油は、90%程度の飽和脂肪酸残基を含有する。理論に拘泥するものではないが、より高い飽和脂肪酸含量を持つ脂肪は、心疾患、高血圧、及び関連ある状態のリスクが増大し、消費者のコレステロールレベルにも有害な影響を及ぼすと考えられる。したがって一部の実施形態では、使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の消費者におけるインビボコレステロールレベルに対する効果を改善するために、脂肪組成物を使用することを含むが、その他の健康及び福祉上の利益も、ヤシ油及び類似の脂肪の代わりの、チーズ類似組成物中の脂肪組成物の使用によって実現され得ることが理解されよう。
【0085】
使用は、重量で同じ量のヤシ油を含む類似のチーズ類似組成物と比較した場合、消費したときにチーズ類似組成物からのフレーバーの遅延放出を提供するため、脂肪組成物を使用することを含んでいてもよい。理論に拘泥するものではないが、ヤシ油と比較したフレーバーの遅延放出は、30℃~35℃の口内温度でヤシ油よりも高い固体脂肪含量を有する脂肪組成物に起因すると考えられる。多くのフレーバー及びフレーバー添加剤化合物は脂溶性であり、したがってチーズ類似組成物の脂肪中に溶解する。より高い固体脂肪含量で、脂肪からの溶解したフレーバーの放出は、より長い期間にわたり遅延する。フレーバーの遅延放出は、チーズ類似組成物を、典型的には口内温度でさらに高い固体脂肪含量を有するさらに高い融点の脂肪を含有するチーズの歯ざわり及び遅延するフレーバー放出により正確に似せることが可能と考えられる。
【0086】
典型的には、使用は、重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の1つ若しくは2つ以上の官能的性質及び/又は1つ若しくは2つ以上の機能的性質を改善するために脂肪組成物を使用することを含む。そのような性質の例には、硬さ、接着性、凝集性、復元力、及び弾力性のような官能的性質;スライス性、スライスチーズの取扱い性、細断されたチーズの取扱い性、(例えばピザの用途で)加熱時のチーズの伸展性、スライス中の廃棄物の低減、細断中の廃棄物の低減、スライスチーズの品質の改善、及び細断されたチーズの品質の改善のような機能的挙動;又はこれらの性質の任意の組合せが含まれる。
【0087】
好ましくは、1つ又は2つ以上の官能的性質は、硬さ、接着性、凝集性、復元力、弾力性、又はこれらの組合せを含む。
【0088】
好ましくは、1つ又は2つ以上の機能的性質は、スライス性、取扱い性能力、加熱時の伸展性、スライス中の廃棄物の低減、細断中の廃棄物の低減、チーズの品質の、又はこれらの組合せを含む。
【0089】
非常に好ましい実施形態では、使用は、重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較したときに、チーズ類似組成物の硬さを低減させるために、脂肪組成物を使用することを含む。そのような実施形態では、好ましくは、使用は、ピザチーズ食品、サンドイッチチーズ食品、又はフェタチーズ食品でチーズ類似組成物を使用することを含む。
【0090】
別の非常に好ましい実施形態では、使用は、重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較して、チーズ類似組成物が時間と共に硬さを増大させる程度を低減させるために、脂肪組成物を使用することを含む。好ましくは、これらの実施形態において、使用は、チーズ類似組成物をピザチーズ食品、サンドイッチチーズ食品、又はフェタチーズ食品で使用することを含む。
【0091】
理論に限定するものではないが、ヤシ油の急勾配の溶融曲線は、製造と消費との間の経時的なチーズ類似組成物の所望の性質の低減に、部分的に起因すると考えられる。ヤシ油は、15℃よりも下の温度で脆い固体であり、それに対して約30℃~35℃の温度では、ヤシ油はごく僅かな固体脂肪しか含有しない。この急勾配の溶融曲線は、経時的な、ヤシ油を含むチーズ類似組成物の所望の性質の低減に、関与することが見出された。
【0092】
実施形態では、使用は、チーズ類似組成物に脂肪組成物を使用することを含み、使用は、重量でヤシ油を同じ量で含む類似のチーズ類似組成物と比較して、チーズ類似組成物の脆さ及び/又は堅固さを低減させるために、脂肪組成物を使用することを含み、好ましくは、使用は、ピザチーズ食品又はサンドイッチチーズ食品で脂肪組成物を使用することを含む。
【0093】
別の実施形態では、使用は、チーズ類似組成物で脂肪組成物を使用することを含み、使用は、チーズ類似組成物をピザチーズ食品又はサンドイッチチーズ食品で使用することを含み、使用は、重量でヤシ油を同じ量で含むチーズ類似組成物を含む類似の食品と比較して、食品の外観を改善するために、脂肪組成物を使用することを含む。
【0094】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様によるチーズ類似組成物又は本発明の第2の態様による食品を製造する方法であって、本発明の第1の態様により上記にて論じた脂肪組成物、水、デンプン、及び任意に非動物性タンパク質、及び/又は1種若しくは2種以上の追加の成分を組み合わせて、チーズ類似組成物を形成するステップ、並びに任意にチーズ類似組成物を食品に形成するステップを含む、方法が提供される。
【0095】
本発明の方法は、チーズ類似組成物及び前記組成物を含む食品を形成するための、当技術分野で公知の任意の適切な方法を含んでいてもよい。
【0096】
一部の実施形態では、方法は、70℃~85℃、好ましくは75℃~80℃の温度で成分を組み合わせるステップを含む。そのような温度で、脂肪組成物は、溶融し、かつ水、デンプン、及びタンパク質、並びに存在する場合にはその他の成分と、均一な系を形成するように密に及び均一に混合することができるようになる。成分は、当業者により理解されるように、任意の適切な順序で互いに混合することができる。
【0097】
組み合わせた後、組成物の成分は、典型的には剪断混合機で混合される。典型的には、チーズ類似組成物が、クリームチーズ又はその他のスプレッダブルチーズ代替組成物などのさらに軟らかい組成物であるとき、より高い剪断を使用して成分を混合する。比較的さらに低い剪断を、より硬いチーズ類似組成物に典型的には使用する。
【0098】
上述のステップは、本明細書に記述されるチーズ類似組成物又は食品を製造するための好ましいステップであるが、チーズ類似組成物及び食品を製造するのにその他の適切なプロセスが使用されてもよいことが、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】本発明によるチーズ類似物及びヤシ油を含む比較のチーズ類似物に関する、経時的な硬さ及び硬さの変化のグラフを示す。
【
図2】本発明によるチーズ類似物及びヤシ油を含む比較のチーズ類似物の、官能プロファイルを示す。
【
図3】本発明によるチーズ類似物及びヤシ油を含む比較のチーズ類似物に関する、経時的な硬さ及び硬さの変化のグラフを示す。
【
図4】本発明によるチーズ類似物及びヤシ油を含む比較のチーズ類似物の、官能プロファイルを示す。
【
図5】本発明によるチーズ類似物及びヤシ油を含む比較のチーズ類似物に関する、経時的な硬さ及び硬さの変化のグラフを示す。
【
図6】本発明によるチーズ類似物及びヤシ油を含む比較のチーズ類似物の、官能プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下の実施例は、単なる例示的な目的のためであり、本発明の範囲をいかなる手法でも限定するものではない。
【実施例1】
【0101】
本発明による代替ピザチーズ組成物を製造した。チーズ類似組成物は、46重量%の水;27重量%のデンプン及び非動物性タンパク質ブレンド;25重量%の本明細書に記述される脂肪組成物、及び2重量%の塩を含んだ。脂肪組成物は、70重量%のシアバター及び30重量%のヤシ油のエステル交換化ブレンドであった。
【0102】
ピザチーズの硬さ及びその硬さの経時的な変化を測定した。結果を、ヤシ油を含む比較のチーズと比較し、
図1に示す。本発明の組成物はFat1という略称で示され、ヤシ油比較組成物はCNOという略称で示される。比較のチーズ類似組成物は、25重量%のエステル交換化脂肪ブレンド組成物の代わりに25重量%のヤシ油を含むこと以外、本発明の組成物と同じであった。
【0103】
最も軟らかいチーズは、1週間後の本発明のチーズであったことがわかる。2及び4週後、このチーズの硬さは増大した。さらに4週後、本発明のチーズは、ヤシ油を含む比較チーズよりも軟らかいままである。ヤシ油を含む比較チーズは、2週及び4週後にも硬さが増大した。2週及び4週後の硬さの増大は、ヤシ油を含有するチーズと比較して、本発明のチーズでは少ないことがわかる。
【0104】
このように
図1のデータは、本発明のチーズが、硬さが少ないという所望の特徴に関連付けられ、ヤシ油を含有する比較チーズと比べて、時間と共に硬さの増大が低くなるという所望の特性にも関連付けられたことを示す。これらの特徴は、使用者にさらに魅力的であり、チーズの消費後に改善された官能的経験をもたらす。
【0105】
ヤシ油の比較チーズは、より硬く、より脆く、及びサクサクしたテクスチャーを有し、細断されたときにチーズを崩壊させ、より多くのファイン(粉砕物)を生成する。これらの微細な物質は、商業的観点からそれほど魅力的ではない。
【0106】
ピザチーズ、及びヤシ油を含有する比較のピザチーズを、官能評価に供した。結果を、
図2に示す。本発明のチーズは、ヤシ油を含有する比較チーズよりも、外観及び官能テスターに対する受容性に、より高いスコアが付けられることがわかる。
【実施例2】
【0107】
本発明による代替サンドイッチーズ組成物を、製造した。チーズ類似組成物は、49重量%の水;24重量%のデンプンブレンド;25重量%の本明細書に記述される脂肪組成物;1重量%の塩;及び1重量%の添加剤カラギーナンK100を含んだ。脂肪組成物は、70重量%のシアバター及び30重量%のヤシ油のエステル交換化ブレンドであった。
【0108】
サンドイッチチーズのスライスを、実施例1のピザチーズに関して上記にて説明したものと同じ手法で試験した。硬さ試験及び官能評価の結果を、それぞれ
図3及び4に示す。25重量%のエステル交換化脂肪ブレンド組成物の代わりに25重量%のヤシ油を含んだこと以外、重量で、本発明の組成物の全ての成分を同じ量で含有する、比較のチーズ類似組成物の結果も示される。
図3から、
図1のピザチーズに関して上記にて説明したものと同じ傾向が観察されたことが、わかる。
図3では、本発明のチーズ類似物がFat 1と示され、比較のチーズ類似物はCNOと示される。
【0109】
図4は、本発明のチーズ類似物(Fat 1と示される);及びKRISTAL(ヤシ油を含む比較のチーズ類似物)に関して行われた官能評価の結果を示す。ヤシ油チーズKRISTALは、本発明のチーズ類似物よりも高い堅固さ及び脆さを有することがわかる。そのような特徴は、上記にて論じた理由でそれほど望ましくない。堅固さ及び脆さが高すぎても、チーズは、それほど密ではない従来の乳製チーズに似るようになる。このように実施例2のサンドイッチチーズの官能的性質は、ヤシ油を含む比較チーズよりも良好である。
【実施例3】
【0110】
本発明による代替フェタチーズ組成物を、製造した。チーズ類似組成物は、56.89重量%の水;24.95重量%のエステル交換化脂肪ブレンド;11.98重量%のデンプンブレンド;3.99重量%のデンプン/非動物性タンパク質ブレンド;2重量%の塩;及び0.2重量%のクエン酸を含んだ。エステル交換化脂肪ブレンドは、実施例1及び2で既に使用されたものと同じであった。
【0111】
フェタチーズを、実施例1及び2のチーズに関して既に記述したものと同じ手法で試験した。硬さ試験及び官能評価の結果を、それぞれ
図5及び6に示す。24.95重量%のエステル交換化脂肪ブレンド組成物の代わりに24.95重量%のヤシ油を含んだこと以外、重量で、本発明の組成物の全ての成分を同じ量で含有する、比較のチーズ類似組成物に関する結果も示される。
【0112】
図1のピザチーズに関して既に記述したものと同じ傾向が観察されることが、
図5からわかる。
図5では、本発明のチーズ類似物はFat 1と示され、比較のチーズ類似物はCNOと示される。
【0113】
図6は、本発明の代替フェタチーズが、官能評価でヤシ油を含有するフェタチーズと類似のスコアを有したことを示す。チーズAkoroma RFは、本発明によるチーズであった。チーズKRISTALは、ヤシ油を含む比較チーズであった。
【国際調査報告】