(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】フィン素材として使用するための高強度、耐たるみ性アルミニウム合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20240126BHJP
C22C 21/10 20060101ALI20240126BHJP
C22C 21/02 20060101ALI20240126BHJP
C22F 1/043 20060101ALI20240126BHJP
C22F 1/053 20060101ALI20240126BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
C22C21/00 J
C22C21/10
C22C21/02
C22F1/043
C22F1/053
C22F1/00 611
C22F1/00 623
C22F1/00 627
C22F1/00 630A
C22F1/00 630M
C22F1/00 630K
C22F1/00 631A
C22F1/00 630G
C22F1/00 640A
C22F1/00 661B
C22F1/00 651A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691A
C22F1/00 691C
C22F1/00 691B
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546293
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 US2022070150
(87)【国際公開番号】W WO2022165454
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ジョティ カダリ
(72)【発明者】
【氏名】エイダー エー.シミーリ
(57)【要約】
本明細書では、高強度、耐腐食性、及び耐たるみ性アルミニウム合金、そのような合金の製造及び加工方法、及びそのような合金から調製された製品が開示される。より詳細には、改善された機械的強度、成形性、及び耐腐食性を示す新規なアルミニウム合金が開示される。合金は、熱交換器を含む産業用途においてフィン素材として使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.20~1.30重量%のZn、0.30~1.25重量%のSi、0~0.50重量%のFe、0~0.20重量%のCu、1.00~2.00重量%のMn、0~0.10重量%のMg、最大0.10重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含むアルミニウム合金。
【請求項2】
0.30~1.10重量%のZn、0.35~1.20重量%のSi、0.01~0.40重量%のFe、0.001~0.15重量%のCu、1.20~1.80重量%のMn、0~0.08重量%のMg、最大0.08重量%のCr、最大0.08重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
0.35~1.00重量%のZn、0.50~1.10重量%のSi、0.05~0.35重量%のFe、0.01~0.10重量%のCu、1.30~1.70重量%のMn、0~0.05重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
0.50~0.90重量%のZn、0.80~1.10重量%のSi、0.05~0.30重量%のFe、0.01~0.05重量%のCu、1.30~1.50重量%のMn、0.001~0.02重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項5】
0.75~0.85重量%のZn、0.80~0.90重量%のSi、0~0.30重量%のFe、0~0.03重量%のCu、1.35~1.50重量%のMn、0~0.05重量%のMg、最大0.01重量%のCr、最大0.03重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項6】
前記アルミニウム合金はH調質である請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項7】
前記アルミニウム合金の極限引張強さは少なくとも140MPaである請求項6に記載のアルミニウム合金。
【請求項8】
前記アルミニウム合金の降伏強さは少なくとも155MPaである請求項6に記載のアルミニウム合金。
【請求項9】
前記アルミニウム合金は、国際軟銅規格(IACS)に基づいて電気伝導率が50%を上回る請求項6に記載のアルミニウム合金。
【請求項10】
前記アルミニウム合金は-700mV~-800mVの腐食電位を含む請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項11】
前記アルミニウム合金は、0.80~0.90重量%のSi、最大0.30重量%のFe、最大0.03重量%のCu、1.35~1.50重量%のMn、最大0.05重量%のMg、0.75~0.85重量%のZn、最大0.01重量%のCr、最大0.03重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含み、
前記アルミニウム合金は、極限引張強さが160MPa~180MPa、降伏強さが150MPa~160MPa、伸びが2%~2.50%、及び伝導率が55%IACS~60%IACSである請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項12】
前記アルミニウム合金の最終ゲージは0.10mm未満である請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項13】
前記アルミニウム合金は、長さ35mmのサンプル上で測定したときの耐たるみ性が35mm未満である請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項14】
請求項1に記載のアルミニウム合金を含むフィン素材。
【請求項15】
チューブ及びフィンを含むアルミニウム合金製品であって、前記フィンは請求項14に記載のフィン素材を含む、前記アルミニウム合金製品。
【請求項16】
アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
アルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することであって、前記アルミニウム合金は、0.20~1.30重量%のZn、0.30~1.25重量%のSi、0~0.50重量%のFe、0~0.20重量%のCu、1.00~2.00重量%のMn、0~0.10重量%のMg、最大0.10重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む、前記形成することと、
前記鋳造アルミニウム合金を予熱することと、
前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延してアルミニウム合金製品を製造することと、
第1の冷間圧延ステップにおいて、前記アルミニウム合金を冷間圧延して、中間ゲージのアルミニウム合金製品を製造することと、
前記中間ゲージのアルミニウム合金製品を中間焼鈍することと、
第2の冷間圧延ステップにおいて、前記中間ゲージのアルミニウム合金製品を冷間圧延して、H調質で最終ゲージのアルミニウム合金製品にすることと、を含む前記方法。
【請求項17】
前記最終ゲージのアルミニウム合金製品は、極限引張強さが少なくとも140MPaであり、降伏強さが少なくとも155MPaであり、電気伝導率が、国際軟銅規格(IACS)に基づいて少なくとも50%である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記最終ゲージのアルミニウム合金製品をろう付けして、ろう付けされたアルミニウム合金製品を製造することをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ろう付けされたアルミニウム合金製品は、極限引張強さが少なくとも100MPaであり、降伏強さが少なくとも45MPaであり、電気伝導率が、国際軟銅規格(IACS)に基づいて少なくとも45%である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記最終ゲージのアルミニウム合金製品は、最終ゲージが0.10mm未満である請求項16に記載の方法。
【請求項21】
アルミニウム合金製品であって、前記アルミニウム合金製品は請求項16に記載の方法によって調製される、前記アルミニウム合金製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/199,900号(2021年2月1日に出願)の利益及びそれに対する優先権を主張するものであり、すべての意図及び目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、材料科学、材料化学、冶金学、アルミニウム合金、アルミニウム合金製品、アルミニウム製造の分野、及び関連する分野に関する。より具体的には、本開示は、種々の用途において(たとえば、熱交換器用のフィン素材として)使用できる新規なアルミニウム合金を提供する。
【背景技術】
【0003】
自動車用熱交換器業界は、熱交換器フィン素材の製造に使用されるアルミニウム合金に対していくつかの要求を呈している。たとえば、熱交換器を製造する場合、その部品は通常、ろう付けによって接合されるため、アルミニウム合金には、優れたろう付け性能、ろう付けサイクルの間の変形に耐える優れたろう付け前機械的特性、及び高いろう付け後機械的特性が要求される。同時に、アルミニウム合金は、犠牲的でありながらも適切な腐食特性を有する必要がある。たとえば、熱交換器フィン素材の腐食電位を熱交換器の残りの部分よりも低くして、フィン素材が犠牲的に作用するようにすることが望ましい場合がある。またフィン素材は、ろう付け前のわずかな変形にも耐える必要があり、したがって、フィン素材は、圧延したままの調質において優れた成形性及び強度を有する必要がある。さらに、熱交換器をより軽くするために(たとえば、自動車の燃料効率を向上させるため)、前述した特性の組み合わせを維持しながら、フィン素材用のアルミニウム合金をより薄くすることが望ましい。このように、ろう付け前強度、ろう付け後強度、耐たるみ性、フィン腐食、または成形性特性に悪影響を与えることなく、所望の厚さを有するフィン素材用のアルミニウム合金を製造することは難しい。
【発明の概要】
【0004】
本発明に含まれる実施形態は、特許請求の範囲によって規定され、この概要によって規定されるものではない。この概要は、本発明の種々の態様の大まかな概略であり、以下の詳細な説明セクションでさらに説明するコンセプトの一部を紹介している。この概要は、特許請求の範囲に記載される対象の重要または本質的な特徴を特定することは意図しておらず、特許請求の範囲に記載される対象の範囲を決定するために別個に使用することも意図していない。主題は、明細書全体、いずれかまたは全ての図面、及び各請求項の適切な部分を参照して理解されるべきである。
【0005】
本明細書では、高い強度及び耐腐食性を示す新規なアルミニウム合金が提供される。本明細書に記載のアルミニウム合金は、約0.20~1.30重量%のZn、0.30~1.25重量%のSi、0~0.50重量%のFe、0~0.20重量%のCu、1.00~2.00重量%のMn、0~0.10重量%のMg、最大0.10重量%のCr、0.10重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、約0.30~1.10重量%のZn、0.35~1.20重量%のSi、0.01~0.40重量%のFe、0.001~0.15重量%のCu、1.20~1.80重量%のMn、0~0.08重量%のMg、最大0.08重量%のCr、最大0.08重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、約0.35~1.00重量%のZn、0.50~1.10重量%のSi、0.05~0.35重量%のFe、0.01~0.10重量%のCu、1.30~1.70重量%のMn、0~0.05重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、約0.50~0.90重量%のZn、0.80~1.10重量%のSi、0.05~0.30重量%のFe、0.01~0.05重量%のCu、1.30~1.50重量%のMn、0.001~0.02重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、約0.75~0.85重量%、Zn、0.80~0.90重量%のSi、0~0.30重量%のFe、0~0.03重量%のCu、1.35~1.50重量%、Mn、0~0.05重量%のMg、最大0.01重量%のCr、最大0.03重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む。いくつかの態様では、アルミニウム合金はH調質である。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、アルミニウム合金の極限引張強さが少なくとも140MPaである。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、アルミニウム合金の降伏強さが少なくとも155MPaである。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、国際軟銅規格(IACS)に基づいて電気伝導率が50%を上回る。いくつかの態様では、アルミニウム合金は腐食電位が-700mV~-800mVである。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、0.80~0.90重量%のSi、最大0.30重量%のFe、最大0.03重量%のCu、1.35~1.50重量%のMn、最大0.05重量%のMg、0.75~0.85重量%のZn、最大0.01重量%のCr、最大0.03重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含み、アルミニウム合金は、極限引張強さが160MPa~180MPaであり、降伏強さが150MPa~160MPaであり、伸びが2%~2.50%であり、伝導率が55%IACS~60%IACSである。いくつかの態様では、アルミニウム合金の最終ゲージは0.10mm未満である。いくつかの態様では、アルミニウム合金は、長さ35mmのサンプル上で測定したときの耐たるみ性が35mm未満である。いくつかの態様では、フィン素材が、本明細書に記載のアルミニウム合金のいずれかを含む。いくつかの態様では、フィン素材のゲージは0.10mm以下である。いくつかの態様では、アルミニウム合金製品がチューブ及びフィンを含み、フィンは本明細書に記載のアルミニウム合金のいずれかを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、アルミニウム合金製品を製造する方法が提供される。本方法は、アルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することであって、アルミニウム合金は、0.20~1.30重量%のZn、0.30~1.25重量%のSi、0~0.50重量%のFe、0~0.20重量%のCu、1.00~2.00重量%のMn、0~0.10重量%のMg、最大0.10重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む、形成することと、鋳造アルミニウム合金を予熱することと、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延してアルミニウム合金製品を製造することと、第1の冷間圧延ステップにおいて、アルミニウム合金を冷間圧延して中間ゲージのアルミニウム合金製品を製造することと、中間ゲージのアルミニウム合金製品を中間焼鈍することと、第2の冷間圧延ステップにおいて、中間ゲージのアルミニウム合金製品を冷間圧延して、H調質で最終ゲージのアルミニウム合金製品にすることと、を含む。いくつかの態様では、最終ゲージのアルミニウム合金製品は、極限引張強さが少なくとも140MPaであり、降伏強さが少なくとも155MPaであり、電気伝導率が少なくとも50%IACSである。いくつかの態様では、本方法は、最終ゲージのアルミニウム合金製品をろう付けして、ろう付けされたアルミニウム合金製品を製造することをさらに含む。いくつかの態様では、ろう付けされたアルミニウム合金製品は、極限引張強さが少なくとも100MPaであり、降伏強さが少なくとも45MPaであり、電気伝導率が少なくとも45%IACSである。いくつかの態様では、最終ゲージのアルミニウム合金製品は、最終ゲージが0.10mm未満である。いくつかの態様では、アルミニウム合金製品は、本明細書に記載の方法によって調製される。
【0007】
本明細書では、本明細書に記載のアルミニウム合金を含むアルミニウム合金製品も提供される。製品はフィン素材を含むことができる。随意に、フィン素材のゲージは1.0mm以下(たとえば、0.15mm以下)である。本明細書ではさらに、チューブ及びフィンを含むアルミニウム合金製品であって、フィンは本明細書に記載のアルミニウム合金を含むアルミニウム合金製品がさらに提供される。
【0008】
本明細書ではさらに、アルミニウム合金製品を製造する方法が提供される。本方法は、本明細書に記載のアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成するステップと、鋳造アルミニウム合金を予熱するステップと、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造するステップと、圧延製品を焼鈍するステップと、圧延製品を冷間圧延して最終ゲージのアルミニウム合金製品にするステップとを含む。本明細書では、本方法により得られるアルミニウム合金製品(たとえば、熱交換器フィン)も提供される。
【0009】
以下に続く非限定的な例の詳細な説明を考慮して、さらなる態様、目的、及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】A~Gは、ろう付け前に本開示により調製されたアルミニウム合金サンプルに対する粒子構造の写真を示す。
【
図2】A~Gは、ろう付け後に本開示により調製されたアルミニウム合金サンプルに対する粒子構造の写真を示す。
【
図3】A~Gは、ろう付け前に本開示により調製されたアルミニウム合金サンプルに対する結晶粒の写真を示す。
【
図4】A~Gは、ろう付け後に本開示により調製されたアルミニウム合金サンプルに対する結晶粒の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載されているのは、高強度、耐たるみ性アルミニウム合金ならびにその製造及び加工方法である。本明細書に記載のアルミニウム合金は、フィン素材用の従来のアルミニウム合金と比べて、改善された機械的強度、耐腐食性、腐食電位、及び/または成形性を示す。特に、本明細書に記載のアルミニウム合金は、以下の特性のうちの1つ以上の組み合わせを示す。高いろう付け前及びろう付け後機械的特性(たとえば、引張強さ、降伏強さ、伸び)、耐たるみ性、熱伝導率、及び腐食電位。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるアルミニウム合金は、フィン素材用の既知のアルミニウム合金と比べて、より多量のSi(たとえば、約0.3重量%~約1.3重量%)、Mn(たとえば、約1.0重量%~約2.0重量%)、及びMg(たとえば、最大約0.05重量%)を含み、その結果、高いろう付け前強度が得られ、ろう付け中のたるみ及びフィン粉砕問題が軽減される。本明細書に記載のアルミニウム合金の組成物及び/またはその製造プロセスは、ろう付け中のフィン粉砕の低減、ろう付け後強度の向上、熱伝導率の改善、耐たるみ性の改善、及び陽極腐食電位の上昇などの材料特性の改善につながる。
【0012】
自動車用熱交換器用途の場合、アルミニウム合金シートは、ろう付け前及びろう付け後に十分な強度を保持して、アルミニウム合金シートがたるまないようにする必要がある。この強度要件は、軽量の熱交換器を作るためにアルミニウム合金シートの厚さをダウンゲージする際に満たすのが特に難しい要件である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルミニウム合金は、たとえば、自動車産業で使用される熱交換器などの熱交換器内で使用すべき熱交換器フィンの製造に適したものに合金を仕上げる特徴及び特性の組み合わせを有する。一例では、本明細書に記載の改善されたアルミニウム合金は、自動車のラジエーター用の軽量の熱交換器フィンの製造に適した所望の厚さ(ゲージ)でシート形態で製造することができる。本明細書に記載のアルミニウム合金は、ろう付けすることができ、ろう付け前、ろう付け中、ろう付け後に、合金を自動車用熱交換器用途にとって魅力的なものにする強度特性を示すことができる。
【0013】
また本明細書に記載のアルミニウム合金は、熱交換器用途に適した十分に高い熱伝導率を有し、熱交換器の腐食中にフィンが犠牲的に作用するのに十分に負である腐食電位を有する。要約すれば、本明細書に記載の改善されたアルミニウム合金は、自動車用フィン交換器用途に適した好適なろう付け前及びろう付け後強度、熱伝導率、及び陽極の腐食電位値の組み合わせを有する。同時に、本明細書に記載のアルミニウム合金は、少なくとも部分的にリサイクルに適した投入アルミニウムから製造できる。
【0014】
本明細書に記載のアルミニウム合金は、犠牲合金として(たとえば、熱交換器において銅またはアルミニウム合金チューブと組み合わせて用いるフィン素材材料として)特に有用である可能性がある。本明細書に記載のアルミニウム合金は、機械的強度ならびに犠牲合金特性のバランスを有する材料を提供する。本明細書に記載のアルミニウム合金は、フィン素材として形成して、銅またはアルミニウム合金チューブに機械的に取り付けることができる。フィン素材は犠牲的に腐食することができるため、銅またはアルミニウム合金チューブを腐食から保護する。
【0015】
定義及び説明
用語「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「この発明(this invention)」及び「本発明(the present invention)」は、本明細書で用いる場合、本特許出願の主題のすべて及び以下の特許請求の範囲を広く指すことを意図している。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定するものではなく、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0016】
この説明では、「系」または「1xxx」などのアルミニウム業界の名称によって特定される合金に言及する。アルミニウム及びその合金の命名及び特定において最も一般的に用いられる番号指定システムを理解するためには、以下を参照されたい。「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」。両方とも、The Aluminum Associationによって発表された。
【0017】
本明細書で用いる場合、意味「a」、「an」、または「the」は、文脈上明らかに別の意味が示される場合を除き、単数形及び複数形の言及を含む。
【0018】
本明細書で用いる場合、プレートは全般的に、厚さが約15mm超である。たとえば、プレートは、厚さが約15mm超、約20mm超、約25mm超、約30mm超、約35mm超、約40mm超、約45mm超、約50mm超、または約100mm超のアルミニウム製品を指してもよい。
【0019】
本明細書で用いる場合、シェート(シートプレートとしてとも言われる)は全般的に、厚さが約4mm~約15mmである。たとえば、シェートは、厚さが約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmであってもよい。
【0020】
本明細書で用いる場合、シートは全般的に、厚さが約4mm未満であるアルミニウム製品を指す。たとえば、シートの厚さは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、約0.3mm未満、約0.1mm未満であってもよい。
【0021】
本出願では、合金調質または状態に対して言及がなされる。最も一般的に用いられる合金調質の説明を理解するためには、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F状態または調質は、製造されたままのアルミニウム合金を指す。O状態または調質は、焼鈍後のアルミニウム合金を指す。Hxx状態または調質(本明細書ではH調質とも言う)は、熱処理(たとえば、焼鈍)の有無にかかわらず、冷間圧延後のアルミニウム合金を指す。好適なH調質には、HX1、HX2、HX3HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9調質が含まれる。たとえば、アルミニウム合金は、種々の調質、たとえば、H16、H18、または他のH1X調質に歪み硬化することができる。
【0022】
以下のアルミニウム合金は、合金の総重量に基づいた重量パーセント(重量%)でのその元素組成に関して説明する。各合金の特定の例では、残りの部分はアルミニウムであり、不純物の合計に対する最大重量%が0.15%である。
【0023】
本明細書で用いる場合、「電気化学ポテンシャル」は、酸化還元反応に対する材料の受けやすさを指す。電気化学ポテンシャルを用いて、本明細書に記載のアルミニウム合金の耐腐食性を評価することができる。負の値は、正の電気化学ポテンシャルを伴う材料と比較したときに、より容易に酸化する(たとえば、電子を失うか、または酸化状態を増加させる)材料を記述することができる。正の値は、負の電気化学ポテンシャルを伴う材料と比較したときに、より容易に還元する(たとえば、電子を獲得するかまたは酸化状態を減少させる)材料を記述することができる。電気化学ポテンシャルは、本明細書で用いる場合、大きさ及び方向を表すベクトル量である。
【0024】
本明細書で用いる場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃、たとえば約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含むことができる。
【0025】
本明細書で開示したすべての範囲は、そこに包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解すべきである。たとえば、「1~10」の提示範囲は、最小値1と最大値10との間(1及び10を含む)のすべての部分範囲を含むと考えるべきである。すなわち、すべての部分範囲は、1以上の最小値(たとえば、1~6.1)から始まり、10以下の最大値(たとえば、5.5~10)で終わる。
【0026】
合金組成
以下に、新規なアルミニウム合金組成について説明する。特定の態様では、合金は、フィン素材製造に対して使用される既知の合金と比較して改善された、高いろう付け前及びろう付け後強度、耐腐食性、伝導率、及び腐食電位を示す。合金の特性は、合金の元素組成により、場合によっては、記載したシート、プレート、及びシェートを製造するために合金を処理する方法により達成される。アルミニウム合金は、過剰な量の固溶体強化元素を添加することなく、高いろう付け前及びろう付け後強度が得られるようにデザインされている。適切なプロセス及び主要な合金添加物の組成制御により、最終ゲージにおいて結果として得られる微細構造は、アルミニウム合金の強度をかなり増加させる高い分散質数密度を示す。具体的には、Si含有量(たとえば、約0.30重量%~約1.30重量%)は、Mnの溶解度(たとえば、約1.00重量%~約2.00重量%)を減少させ、高密度分散質の形成を促進して、アルミニウム合金のろう付け前強度、ろう付け後強度、及び耐たるみ性を向上させる。固溶体中のMn含有分散質は、ろう付け後強度を増加させ、耐たるみ性の制御において重要な役割を果たし、フィン腐食(たとえば、フィン素材材料中への液体コアの浸透)を防ぐことによって、機械的特性及び腐食挙動の優れた組み合わせを有するアルミニウム合金を製造する。分散質の形成により、電気伝導率を損なうことなく粒子強化を通してさらなるろう付け後強度が得られる。またMn含有分散質は、ろう付けプロセス中の再結晶プロセスを制御し、大きな再結晶粒の形成につながる。さらに、本明細書に記載のアルミニウム合金は、ろう付け中の耐たるみ性を向上させるためのさらなる溶質強化ために、より多量のMgを許容することができる。
【0027】
本明細書に記載の組成及びプロセスにより、アルミニウム合金は、薄いゲージ(たとえば、1mm未満)に圧延された場合でも、高い耐たるみ性を有することが保証される。組み立てられた熱交換器が制御雰囲気ろう付けを受ける場合、フィン素材、チューブ素材、及びヘッダ素材材料は、595℃~610℃の範囲に温度にさらされる。これらの温度において、アルミニウム部品はクリープを始める。ろう付けに対する継続時間は短いが、使用されるアルミニウム合金の薄いゲージ及び超高温により、自動車用フィン素材ではクリープが特に問題である。この高温クリープは「たるみ」とも言われ、このクリープの形態に耐える材料の能力は耐たるみ性と呼ばれる。フィン素材のたるみは、異なる温度で起こる種々のメカニズムの組み合わせである。たとえば、回復たるみは低温側で生じて冷間変形量が増えると増加し、再結晶たるみは300℃よりも高い温度で生じ、クリープたるみは550℃よりも高い温度で生じる。クリープたるみの原因は粒界すべりであり、アルミニウム合金の微細構造の粒径が小さい場合(たとえば、150m~200m未満)、アルミニウム合金はクリープたるみの影響を受けやすくなる。ろう付け中の加熱速度は、速度が高いほど結晶粒が小さくなって耐たるみ性が低下するため、クリープたるみに影響する。粒界すべりは結晶粒の長さが短くなるにつれて増加するため、等軸粒組織よりも大きなパンケーキ形状の結晶粒の方が好まれる。
【0028】
フィン素材のゲージが小さくなるにつれて、ろう付け作業中にたるみに耐えるフィン素材の能力がより重要になる。合金元素のバランスを有する本明細書に記載のアルミニウム合金組成物は結晶粒組織の再結晶を遅らせるため、小さい等軸粒を形成する傾向が減る。鋳造及び最終ゲージまでの圧延後に存在する分散質の微細な分布により、シート厚さを通して結晶粒が成長することが妨げられるが、圧延面内での結晶粒の成長が可能になり、長いパンケーキ状の結晶粒が形成される。再結晶の遅延及び圧延方向での結晶粒成長の促進により、アルミニウム合金は、優れた耐たるみ性を提供するパンケーキ形状の結晶粒を発達させることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルミニウム合金及び方法は、犠牲部品、放熱、パッケージング、及び建築材料を含む産業用途で使用することができる。本明細書に記載の合金は、熱交換器用の工業用フィン素材として使用することができる。工業用フィン素材を、現在使用されている工業用フィン素材合金(たとえば、AA7072及びAA1100)よりも耐腐食性があり、それでも優先的に腐食して、熱交換器に組み込まれる他の金属部品を保護するように、提供することができる。
【0030】
いくつかの例では、アルミニウム合金は、表1に示す以下の元素組成を有することができる。
【0031】
【0032】
いくつかの例では、アルミニウム合金は、表2に示す以下の元素組成を有することができる。
【0033】
【0034】
いくつかの例ではアルミニウム合金は、表3に示す以下の元素組成を有することができる。
【0035】
【0036】
いくつかの例ではアルミニウム合金は、表4に示す以下の元素組成を有することができる。
【0037】
【0038】
いくつかの例では合金は、亜鉛(Zn)を、合金の総重量に基づいて、約0.20%~約1.30%(たとえば、約0.30%~約1.10%、約0.35%~約1.00%、約0.50%~約0.90%、または約0.70%~約0.85%)の量で含む。たとえば、合金は、約0.20%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.30%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、約0.35%、約0.36%、約0.37%、約0.38%、約0.39%、約0.40%、約0.41%、約0.42%、約0.43%、約0.44%、約0.45%、約0.46%、約0.47%、約0.48%、約0.49%、約0.50%、約0.51%、約0.52%、約0.53%、約0.54%、約0.55%、約0.56%、約0.57%、約0.58%、約0.59%、約0.60%、約0.61%、約0.62%、約0.63%、約0.64%、約0.65%、約0.66%、約0.67%、約0.68%、約0.68%、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、約0.90%、約0.91%、約0.92%、約0.93%、約0.94%、約0.95%、約0.96%、約0.97%、約0.98%、約0.99%、約1.00%、約1.01%、約1.02%、約1.03%、約1.04%、約1.05%、約1.06%、約1.07%、約1.08%、約1.09%、約1.10%、約1.11%、約1.12%、約1.13%、約1.14%、約1.15%、約1.16%、約1.17%、約1.18%、約1.19%、約1.20%、約1.21%、約1.22%、約1.23%、約1.24%、約1.25%、約1.26%、約1.27%、約1.28%、約1.29%、または約1.30%のZnを含むことができる。すべてのパーセンテージは重量%で表される。従来のフィン素材合金と比べてZn含有量を低減することができる。主張される量のZnを含むアルミニウム合金は、銅または他のアルミニウム合金チューブに取り付けられたときに犠牲的に作用することでき、したがってチューブに陰極防食をもたらす。Znはアルミニウム合金の陽極電位に影響することが知られている。Znを添加すると、アルミニウム合金はより電気陰性になる(犠牲的)。熱交換器ユニットでは、フィン材料はチューブ材料に対して犠牲的であることが好ましく、これはチューブ材料自体の組成に依存する。Znの含有量が低いアルミニウム合金をフィン素材に使用することによって、チューブとフィン素材との間の腐食電位の差を、適切なレベルの保護に合わせて調整できる。Zn含有量によって、本明細書に記載のアルミニウム合金の耐腐食性を向上させることができる。具体的には、亜鉛が、約0.20%~約1.30%などの本明細書に記載のレベルで組み込まれる場合、合金は、工業プロセスで通常使用されるフィン素材(たとえば、1xxx系及び7xxx系合金)と比べて、強化された耐腐食性を示す。これらのフィン素材は、同じ耐腐食性を実現するのに、はるかに高い含有量のZnが必要である。いくつかのさらなる例では、Znは、本明細書に記載のものを超える重量パーセントで組み込まれると、耐腐食性を低下させる可能性がある。さらに他の例では、本明細書に記載するように、Znをアルミニウム合金に最適量で組み込んで、工業用フィンとしての使用に適した合金を提供することができる。たとえば、Znレベルが本明細書に記載のものよりも高いと、フィンとして使用するための合金は、記載された量のZnを含むフィンよりも急速に腐食して、フィンに穿孔が生じる可能性がある。その結果、熱交換器の機械的完全性及び熱性能が損なわれるため、熱交換器の耐用年数に影響する可能性がある。
【0039】
いくつかの例では合金は、シリコン(Si)を、合金の総重量に基づいて、約0.30%~約1.25%(たとえば、約0.35%~約1.20%、約0.50%~約1.10%、約0.80%~約1.10%、または約0.80%~約0.90%)の量で含む。たとえば、合金は、約0.30%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、約0.35%、約0.36%、約0.37%、約0.38%、約0.39%、約0.40%、約0.41%、約0.42%、約0.43%、約0.44%、約0.45%、約0.46%、約0.47%、約0.48%、約0.49%、約0.50%、約0.51%、約0.52%、約0.53%、約0.54%、約0.55%、約0.56%、約0.57%、約0.58%、約0.59%、約0.60%、約0.61%、約0.62%、約0.63%、約0.64%、約0.65%、約0.66%、約0.67%、約0.68%、約0.68%、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、約0.90%、約0.91%、約0.92%、約0.93%、約0.94%、約0.95%、約0.96%、約0.97%、約0.98%、約0.99%、約1.00%、約1.01%、約1.02%、約1.03%、約1.04%、約1.05%、約1.06%、約1.07%、約1.08%、約1.09%、約1.10%、約1.11%、約1.12%、約1.13%、約1.14%、約1.15%、約1.16%、約1.17%、約1.18%、約1.19%、約1.20%、約1.21%、約1.22%、約1.23%、約1.24%、または約1.25%のSiを含むことができる。前述したように、Si含有量は分散質の形成を促進して、アルミニウム合金のろう付け前及びろう付け後強度を向上させ、その結果、優れた機械的特性及び腐食電位を有する合金が製造される。具体的には、SiがMnと結合する結果、高密度の分散質粒子が生成され、高強度及び優れた耐たるみ性を促進する。しかし、高レベルのSi(たとえば1.25重量%を超える)だと、ろう付け中にフィン素材が腐食する危険性が高まる。
【0040】
いくつかの例では、合金はまた、鉄(Fe)を、合金の総重量に基づいて、0%~約0.50%(たとえば、0.05%~約0.35%、0.05%~0.30%、または0.05%~0.20%)の量で含む。たとえば、合金は、0%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.60%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.20%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.3%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、約0.35%、約0.36%、約0.37%、約0.38%、約0.39%、約0.4%、約0.41%、約0.42%、約0.43%、約0.44%、約0.45%、約0.46%、約0.47%、約0.48%、約0.49%、または約0.50%のFeを含むことができる。すべてのパーセンテージは重量%で表される。場合によっては、大量のFe(たとえば、0.50重量%を超える)だと、凝固中に大きな金属間成分粒子を形成する危険性が高まるため、アルミニウム合金の特性に悪影響を与える可能性がある。これは、アルミニウム合金が最終ゲージに圧延されるときの材料の穿孔または孔に関する問題につながる可能性がある。
【0041】
いくつかの例では、開示した合金は、銅(Cu)を、合金の総重量に基づいて、0%~約0.20%(たとえば、0%~約0.15%、約0.001%~約0.15%、約0.01%~約0.10%、または約0.01%~約0.05%)の量で含む。たとえば、合金は、0%、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、または約0.20%のCuを含むことができる。すべてのパーセンテージは重量%で表される。Cuを少量添加すると、ろう付け後の強度が増加して、耐たるみ性特性を向上させる大きなパンケーキ結晶粒の形成に寄与する場合がある。場合によっては、Cu含有量が0.20重量%を超えると、フィン素材材料にとって望ましくない正の腐食電位が生じるため、腐食の問題につながる場合がある。
【0042】
いくつかの例では、合金はマンガン(Mn)を、合金の総重量に基づいて、約1.00%~約2.00%(たとえば、約1.20%~約1.80%、約1.30%~約1.70%、または約1.30%~約1.50%)の量で含むことができる。たとえば、合金は、約1.00%、約1.01%、約1.02%、約1.03%、約1.04%、約1.05%、約1.06%、約1.07%、約1.08%、約1.09%、約1.10%、約1.11%、約1.12%、約1.13%、約1.14%、約1.15%、約1.16%、約1.17%、約1.18%、約1.19%、約1.20%、約1.21%、約1.22%、約1.23%、約1.24%、約1.25%、約1.26%、約1.27%、約1.28%、約1.29%、約1.30%、約1.31%、約1.32%、約1.33%、約1.34%、約1.35%、約1.36%、約1.37%、約1.38%、約1.39%、約1.40%、約1.41%、約1.42%、約1.43%、約1.44%、約1.45%、約1.46%、約1.47%、約1.48%、約1.49%、約1.50%、約1.51%、約1.52%、約1.53%、約1.54%、約1.55%、約1.56%、約1.57%、約1.58%、約1.59%、約1.60%、約1.61%、約1.62%、約1.63%、約1.64%、約1.65%、約1.66%、約1.67%、約1.68%、約1.69%、約1.70%、約1.71%、約1.72%、約1.73%、約1.74%、約1.75%、約1.76%、約1.77%、約1.78%、約1.79%、約1.80%、約1.81%、約1.82%、約1.83%、約1.84%、約1.85%、約1.86%、約1.87%、約1.88%、約1.89%、約1.90%、約1.91%、約1.92%、約1.93%、約1.94%、約1.95%、約1.96%、約1.97%、約1.98%、約1.99%、または約2.00%のMnを含むことができる。すべてのパーセンテージは重量%で表される。Mnは大部分が固溶体のままであるが、熱間圧延及び中間焼鈍中に少量が微細な分散質として沈殿する。この微細構造の効果は、ろう付け作業の場合と同様に材料が600℃に加熱されたときに、Mnの固溶体強化効果により材料は強度を保持することである。このようにして、Mnの添加は、特性の有用なバランスが得られるように最適化される。強度、耐たるみ性を提供してフィン腐食を避けるために、Mn(随意に、Cuと組み合わせて)がアルミニウム合金に添加されるが、電気伝導率及び熱伝導率に悪影響を与えるほどではない。
【0043】
いくつかの例では、合金はマグネシウム(Mg)を、合金の総重量に基づいて、0%~約0.10%(たとえば、0%~約0.08%、0%~約0.05%、または約0.001%~約0.02%)の量で含むことができる。たとえば、合金は、0%、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、または約0.10%のMgを含むことができる。すべてのパーセンテージは重量%で表される。
【0044】
いくつかの例では、合金はクロム(Cr)を、合金の総重量に基づいて、最大約0.10%(たとえば、0%~約0.05%、約0.001%~約0.04%、または約0.01%~約0.03%)の量で含む。たとえば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、または約0.1%のCrを含むことができる。場合によっては、Crは合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべてのパーセンテージは重量%で表される。
【0045】
いくつかの例では、合金はチタン(Ti)を、合金の総重量に基づいて、最大約0.10%(たとえば、0%~約0.05%、約0.001%~約0.04%、または約0.01%~約0.03%)の量で含む。たとえば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、または約0.1%のTiを含むことができる。場合によっては、Tiは合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべてのパーセンテージは重量%で表される。
【0046】
随意に、合金組成物はさらに、他の微量元素(しばしば不純物と言われる)を、それぞれ、約0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量で含むことができる。これらの不純物には、Na、Ga、V、Ni、Sc、Ag、B、Bi、Zr、Li、Pb、Sn、Ca、Hf、Sr、またはそれらの組み合わせが含まれていてもよいが、これらに限定されない。したがって、Na、Ga、V、Ni、Sc、Ag、B、Bi、Zr、Li、Pb、Sn、Ca、Hf、またはSrは、合金中に、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量で存在し得る。特定の態様では、すべての不純物の合計は0.15%を超えない(たとえば、0.1%)。すべてのパーセンテージは重量%で表される。特定の態様では、合金の残りの割合はアルミニウムである。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する典型的なアルミニウム合金は、約0.36~0.46%のSi、最大約0.30%のFe、最大約0.02%のCu、約1.36~1.50%のMn、最大約0.03%のMg、約0.65~0.75%のZn、最大約0.01%のCr、最大約0.03%のTi、最大約0.15%の不純物、及びAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する典型的なアルミニウム合金は、約0.36~0.46%のSi、最大約0.30%のFe、最大約0.02%のCu、約1.36~1.50%のMn、最大約0.03%のMg、約0.95~1.05%のZn、最大約0.01%のCr、最大約0.03%のTi、最大約0.15%の不純物、及びAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する典型的なアルミニウム合金は、約0.55~0.65%のSi、最大約0.30%のFe、最大約0.02%のCu、約1.50~1.70%のMn、最大約0.03%のMg、約1.10~1.30%のZn、最大約0.01%のCr、最大約0.03%のTi、最大約0.15%の不純物、及びAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する典型的なアルミニウム合金は、約0.80~0.90%のSi、最大約0.30%のFe、約0.07~0.09%のCu、約1.25~1.40%のMn、最大約0.05%のMg、約0.65~0.75%のZn、最大約0.01%のCr、最大約0.03%のTi、最大約0.15%の不純物、及びAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する典型的なアルミニウム合金は、約0.80~0.90%のSi、最大約0.30%のFe、最大約0.03%のCu、約1.35~1.50%のMn、最大約0.05%のMg、約0.75~0.85%のZn、最大約0.01%のCr、最大約0.03%のTi、最大約0.15%の不純物、及びAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する典型的なアルミニウム合金は、約1.00~1.20%のSi、最大約0.30%のFe、約0.04~0.08%のCu、約1.25~1.40%のMn、最大約0.05%のMg、約0.95~1.05%のZn、最大約0.01%のCr、最大約0.03%のTi、最大約0.15%の不純物、及びAlを含むことができる。すべてのパーセンテージは、重量%で表される。
【0048】
いくつかの実施形態では、典型的な合金は、0.85%のSi、0.08%のFe、0.014%のCu、1.41%のMn、0.002%のMg、0.001%のCr、0.81%のZn、0.01%のTi、及び最大0.15%の総不純物を含み、残りはAlである。いくつかの実施形態では、典型的な合金は、1.10%のSi、0.08%のFe、0.05%のCu、1.37%のMn、0.001%のMg、0.001%のCr、0.99%のZn、0.01%のTi、及び最大0.15%の総不純物を含み、残りはAlである。すべてのパーセンテージは重量%で表される。
【0049】
合金の特性
本明細書に記載のアルミニウム合金を製造するプロセスにより、「歪み硬化された」、「冷間加工された」、及び/または「H1X」調質(たとえば、H16調質)を有するかまたは「H1X」調質であると記載することができるアルミニウム材料がもたらされる。アルミニウム合金の機械的特性は、所望の用途に応じて、種々の処理条件によって制御することができる。合金は、H調質(たとえば、HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9調質)で生成(または提供)することができる。一例として、合金はH16調質で製造(または提供)することができる。特定の特性範囲が調質の指定に関連することを理解されたい。調質の指定は、アルミニウム合金のろう付け前特性を指すことも理解されたい。
【0050】
いくつかの非限定的な例では、開示した合金は、H調質(たとえば、H16調質)及びろう付け後において、高い強度、腐食電位、及び伝導率を有する。いくつかの非限定的な例では、開示した合金は、工業用フィン素材として使用される従来の7xxx及び1xxx系アルミニウム合金と比べて、H調質(たとえば、H16調質)及びろう付け後において優れた耐腐食性を有する。本明細書に記載するように組成及び微細構造を制御する結果、アルミニウム合金は以下の特性バランスを示す。たとえば、600℃でろう付けした後、極限引張強さ(UTS)は100MPaよりも高く、電気伝導率は48%IACSよりも高い。
【0051】
特定の態様では、アルミニウム合金の降伏強さ(YS)は少なくとも約30MPaである可能性がある。非限定的な例では、降伏強さは、少なくとも約30MPa、少なくとも約35MPa、少なくとも約40MPa、少なくとも約45MPa、少なくとも約50MPa、少なくとも約60MPa、少なくとも約70MPa、少なくとも約80MPa、少なくとも約90MPa、少なくとも約100MPa、少なくとも約110MPa、少なくとも約120MPa、少なくとも約130MPa、少なくとも約140MPa、少なくとも約150MPa、少なくとも約160MPa、少なくとも約170MPa、少なくとも約180MPa、またはそれらの間のどこかである。場合によっては、降伏強さは約30MPa~約180MPaである。たとえば、降伏強さは、約35MPa~約170MPa、約40MPa~約160MPa、約50MPa~約155MPa、約55MPa~約150MPa、または約60MPa~約140MPaである可能性がある。
【0052】
降伏強さは合金の調質に基づいて変化する。いくつかの例では、H調質で提供される本明細書に記載の合金は、降伏強さが少なくとも約100MPa~約170MPaである可能性がある。非限定的な例では、H調質での合金の降伏強さは、少なくとも約110MPa、少なくとも約120MPa、少なくとも約125MPa、少なくとも約130MPa、少なくとも約135MPa、少なくとも約140MPa、少なくとも約145MPa、少なくとも約150MPa、少なくとも約155MPa、少なくとも約160MPa、少なくとも約165MPa、少なくとも約170MPa、またはそれらの間のどこかである。
【0053】
いくつかのさらなる例では、本明細書に記載の合金は、ろう付け後の降伏強さが、少なくとも約30MPa、少なくとも約35MPa、少なくとも約40MPa、少なくとも約45MPa、少なくとも約50MPa、少なくとも約55MPa、少なくとも約60MPa、少なくとも約65MPa、少なくとも約70MPa、少なくとも約75MPa、少なくとも約80MPa、少なくとも約85MPa、少なくとも約90MPa、少なくとも約100MPa、またはそれらの間のどこかである可能性がある。
【0054】
特定の態様では、アルミニウム合金の極限引張強さ(UTS)は少なくとも約70MPaである可能性がある。非限定的な例では、降伏強さは、少なくとも約70MPa、少なくとも約80MPa、少なくとも約90MPa、少なくとも約100MPa、少なくとも約110MPa、少なくとも約120MPa、少なくとも約130MPa、少なくとも約140MPa、少なくとも約150MPa、少なくとも約160MPa、少なくとも約170MPa、少なくとも約180MPa、少なくとも約190MPa、少なくとも約200MPa、またはそれらの間のどこかである。場合によっては、降伏強さは約70MPa~約200MPaである。たとえば、降伏強さは、約75MPa~約190MPa、約80MPa~約185MPa、約85MPa~約180MPa、約90MPa~約175MPa、または約95MPa~約170MPaである可能性がある。
【0055】
いくつかの例では、H調質で提供される本明細書に記載の合金は、UTSが少なくとも約140MPa~約200MPaである可能性がある。非限定的な例では、H調質での合金のUTSは、少なくとも約140MPa、少なくとも約145MPa、少なくとも約150MPa、少なくとも約155MPa、少なくとも約160MPa、少なくとも約165MPa、少なくとも約170MPa、少なくとも約175MPa、少なくとも約180MPa、少なくとも約190MPa、少なくとも約200MPa、またはそれらの間のどこかである。
【0056】
いくつかの例では、提供される本明細書に記載の合金は、ろう付け後に、UTSが少なくとも約70MPa~約140MPaである可能性がある。いくつかのさらなる例では、本明細書に記載の合金は、ろう付け後のUTSが、少なくとも約70MPa、少なくとも約75MPa、少なくとも約80MPa、少なくとも約85MPa、少なくとも約90MPa、少なくとも約95MPa、少なくとも約100MPa、少なくとも約105MPa、少なくとも約110MPa、少なくとも約115MPa、少なくとも約120MPa、少なくとも約125MPa、少なくとも約130MPa、少なくとも約135MPa、少なくとも約140MPa、またはそれらの間のどこかである可能性がある。
【0057】
特定の態様では、H調質で提供される本明細書に記載の合金は、約2%以上の伸びを満たすのに十分な成形性を有する。特定の例では、H調質で提供される本明細書に記載の合金は、伸びが、約2%以上、約2.25%以上、約2.50%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.50%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.50%以上、約4.75%以上、約5.0%以上、約5.25%以上、約5.50%以上、約5.75%以上、約6.0%以上、またはそれらの間のどこかである可能性がある。
【0058】
特定の態様では、本明細書に記載の合金は、ろう付け後に、約7%以上(たとえば、約9%以上)の伸びを満たすのに十分な成形性を有する。特定の例では、本明細書に記載の合金は、ろう付け後の伸びが、約7%以上、約7.25%以上、約7.50%以上、約7.75%以上、約8%以上、約8.25%以上、約8.50%以上、約8.75%以上、約9%以上、約9.25%以上、約9.50%以上、約9.75%以上、約10.0%以上、約10.25%以上、約10.50%以上、約10.75%以上、約11.0%以上、約11.25%以上、約11.50%以上、約11.75%以上、約12.0%以上、約12.25%以上、約12.50%以上、約12.75%以上、約13.0%以上、またはそれらの間のどこかである可能性がある。
【0059】
いくつかの例では、H調質で提供される本明細書に記載の合金は、平均伝導率値が、国際軟銅規格(IACS)に基づいて約50%を超える(たとえば、約50%IACS~約60%IACS)である可能性がある。たとえば、合金の平均伝導率値は、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、またはそれらの間のどこかである可能性がある。すべての値は%IACSである。
【0060】
いくつかの例では、本明細書に記載の合金は、ろう付け後に、平均伝導率値が、国際軟銅規格(IACS)に基づいて約40%を超える(たとえば、約40%IACS~約55%IACSである)可能性がある。たとえば、合金の平均伝導率値は、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、またはそれらの間のどこかである可能性がある。すべての値は%IACSである。
【0061】
特定の態様では、本明細書に記載の合金は、ASTMG69規格に従ってテストしたときに、約-700mV以下の負の腐食電位または電気化学ポテンシャル(Ecorr)を提供する耐腐食性を有する可能性がある。ある場合には、開放腐食電位値対標準カロメル電極(SCE)は、約-700mV以下、約-710mV以下、約-720mV以下、約-730mV以下、約-740mV以下、約-750mV以下、約-760mV以下、約-770mV以下、約-780mV以下、約-790mV以下、約-800mV以下、またはそれらの間のどこかである可能性がある。たとえば、アルミニウム合金は、開放腐食電位が約-700mV~約-800mV(たとえば、約-715mV~約-775mV、または約-725mV~約-770mV)である可能性がある。
【0062】
特定の態様では、本明細書に記載の合金は優れた耐たるみ性を有する。耐たるみ性は、アルミニウム合金を地面に対して垂直に吊り下げるクランプ装置を含む特注のリグ内にアルミニウム合金を配置することによって測定した。約1インチ~2インチ幅のサンプルを圧延方向に沿って切断し、圧延方向に沿ったサンプルの長さを、テストしているフィンの厚さに適応させた。サンプルの先端における初期高さを測定した。模擬ろう付けサイクルをアルミニウム合金に適用した。ろう付けされたアルミニウム合金の先端から地面までの距離を測定して、サンプルのたるみ量を決定した。特定の態様では、本明細書に記載の合金は、平均のたるみ距離が、約1mm、約1.20mm、約1.40mm、約1.60mm、約1.80mm、約2mm、約2.20mm、約2.40mm、約2.60mm、約2.80mm、約3mm、約3.20mm、約3.40mm、約3.60mm、約3.80mm、約4mm、またはそれらの間のどこかとなる可能性がある。いくつかの実施形態では、たるみ距離は、初期サンプルの長さに応じて、0mm~約100mm(たとえば、約35mm未満)であり得る。たとえば、アルミニウム合金の厚さが約0.1mm未満(たとえば、約0.05mm~1mm)及び長さが35mmである場合、耐たるみ性は35mm未満である。
【0063】
いくつかの実施形態では、約0.80~0.90%のSi、最大約0.30%のFe、最大約0.03%のCu、約1.35~1.50%のMn、最大約0.05%のMg、約0.75~0.85%のZn、最大約0.01%のCr、最大約0.03%のTi、及び最大約0.15%の不純物、及びAlを有する典型的なアルミニウム合金は、ろう付け前の極限引張強さが約160MPa~180MPa、降伏強さが約150MPa~160MPa、伸びが2%~2.50%、及び伝導率が55%IACS~60%IACSを示した。ろう付け後に、前述のアルミニウム合金は、極限引張強さが約120MPa~130MPa、降伏強さが約40MPa~50MPa、伸びが11%~12%、及び伝導率が45%IACS~50%IACSであることを示した。
【0064】
調製及び処理方法
特定の態様では、開示した合金組成物は、開示した方法の生成物である。本開示を限定することを意図することなく、アルミニウム合金の特性は、合金の調製中の微細構造の形成によって部分的に決定される。特定の態様では、合金組成物に対する調製方法は、合金が所望の用途に適切な特性を有するか否かに影響を与え得るか、または決定さえし得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルミニウム合金を製造するための典型的な方法は、以下のステップを含んでいてもよい。本方法は、アルミニウム合金をインゴットに直接チル(DC)鋳造することを含んでもよい。鋳造に続いて、プロセスはインゴットの熱間圧延を含む。鋳造によって製造されたインゴットを、熱間圧延のために予熱する。予熱温度及び熱間圧延の継続時間は、アルミニウム合金をろう付けした後に大きい粒径及び高強度を維持するために、細かく制御する。熱間圧延に対するプロセスでは、インゴットを、炉内で好適な加熱速度(たとえば、約60℃/時間)で最大約560℃(たとえば、約450℃~約480℃)まで予熱することができ、それに続いて、温度を約450℃~約560℃(たとえば、約450℃~約480℃)に約4時間~約16時間、維持する(「浸す」または「浸漬する」)。予熱及び浸漬に続いて、インゴットを約450℃~約500℃の範囲で、約2mm~約15mm未満の厚さに熱間圧延する。これは、熱間圧延後の「出口ゲージ」と言われることがある。熱間圧延の後、アルミニウム合金製品を2段階の冷間圧延プロセスで冷間圧延する。第1の冷間圧延ステップでは、アルミニウム合金製品を、いくつかの冷間圧延パスで冷間圧延して、中間ゲージ厚(たとえば、約1mm未満)のアルミニウム合金製品にする。中間ゲージ厚のアルミニウム合金製品を随意に、約250℃~約400℃の焼鈍温度(たとえば、約400℃)で、加熱速度(たとえば、50℃/時間)で約3時間~約5時間、中間焼鈍することができる。中間ゲージ厚のアルミニウム合金製品を、第2の冷間ステップにおいて冷間圧延して、最終ゲージのアルミニウム合金製品(たとえば、約0.05mm~約0.10mm)を製造する。
【0066】
鋳造
本明細書に記載の合金は、当業者に知られているような鋳造法を用いて鋳造することができる。たとえば、鋳造プロセスは、直接チル(DC)鋳造プロセスを含むことができる。DC鋳造プロセスは、当業者に知られているようなアルミニウム業界で広く使用される標準に従って行われる。DCプロセスによりインゴットを得ることができる。随意に、インゴットを下流の処理の前に削ることができる。随意に、鋳造プロセスは連続鋳造(CC)プロセスを含むことができる。
【0067】
鋳造アルミニウム合金を次に、さらなる処理ステップに供することができる。たとえば、本明細書に記載の処理方法は、均質化、熱間圧延、冷間圧延、及び/または焼鈍のステップを含むことができる。
【0068】
予熱
予熱ステップは、本明細書に記載した鋳造アルミニウム合金を加熱して、約または少なくとも約400℃(たとえば、少なくとも約410℃、少なくとも約420℃、少なくとも約430℃、少なくとも約440℃、少なくとも約450℃、少なくとも約460℃、少なくとも約470℃、少なくとも約480℃、少なくとも約490℃、少なくとも約500℃、少なくとも約510℃、少なくとも約520℃、少なくとも約530℃、少なくとも約540℃、少なくとも約550℃、少なくとも約560℃、またはそれらの間のどこか)の予熱温度に到達することを含むことができる。たとえば、鋳造アルミニウム合金を、約400℃~約560℃、約420℃~約550℃、約440℃~約540℃、約450℃~約530℃、または約450℃~約480℃の温度まで加熱することができる。場合によっては、予熱温度までの加熱速度を、約10℃/時間以上、約20℃/時間以上、約30℃/時間以上、約40℃/時間以上、約50℃/時間以上、約60℃/時間以上、または約70℃/時間以上とすることができる。別の場合では、予熱温度までの加熱速度を、約10℃/分~約100℃/分(たとえば、約10℃/分~約90℃/分、約20℃/分~約80℃/分、約30℃/分~約70℃/分、約40℃/分~約65℃/分、約45℃/分~約60℃/分、または約50℃/分~約60℃/分)とすることができる。
【0069】
鋳造アルミニウム合金を次に、予熱温度範囲において、ある時間、浸漬する(すなわち、指示された温度に保持する)。1つ非限定的な例によれば、鋳造アルミニウム合金を、最大で約16時間(たとえば、約10分間~約16時間(両端を含む))浸漬する。たとえば、鋳造アルミニウム合金を、約450℃~約560℃の温度で約10分間、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、またはそれらの間のどこかで浸漬することができる。いくつかの実施形態では、鋳造アルミニウム合金を、約480℃~約560℃の予熱温度で、約5時間~約7時間、浸漬する。
【0070】
熱間圧延
予熱ステップに続いて、熱間圧延ステップを行うことができる。鋳造アルミニウム合金を、約450℃~約560℃(たとえば、約460℃~約550℃、約470℃~約540℃、約480℃~約530℃、または約490℃~約520℃)の温度で熱間圧延することができる。いくつかの例では、熱間圧延温度は、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、約500℃、約510℃、約520℃、約530℃、約540℃、約550℃、または約560℃である。熱間圧延温度が低すぎる(たとえば、450℃未満である)と、熱間圧延負荷が高すぎて、ひび割れが起こりやすくなり得る。熱間圧延温度が高すぎると(たとえば、560℃を超える)、アルミニウム合金は、熱間圧延ミル内で柔らかくなりすぎて壊れる場合がある。いくつかの実施形態では、鋳造アルミニウム合金は約450℃~約500℃の温度で熱間圧延することができる。
【0071】
ある場合には、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して、約2mm~約15mm厚ゲージ(たとえば、約2.5mm~約12mm厚ゲージ)にすることができる。たとえば、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して、約2mm厚ゲージ、約2.5mm厚ゲージ、約3mm厚ゲージ、約3.5mm厚ゲージ、約4mm厚ゲージ、約5mm厚ゲージ、約6mm厚ゲージ、約7mm厚ゲージ、約8mm厚ゲージ、約9mm厚ゲージ、約10mm厚ゲージ、約11mm厚ゲージ、約12mm厚ゲージ、約13mm厚ゲージ、約14mm厚ゲージ、または約15mm厚ゲージにすることができる。ある場合には、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して、15mmを超えるゲージ(すなわち、プレート)にすることができる。別の場合では、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して、4mm未満のゲージ(すなわち、シート)にすることができる。
【0072】
冷間圧延
熱間圧延ステップに続いて、冷間圧延ステップを行うことができる。いくつかの例では、冷間圧延ステップは2段階の冷間圧延ステップである。2段階の冷間圧延ステップは、第1の冷間圧延ステップ、随意の介在する中間焼鈍ステップ、第2の冷間圧延ステップを含むことができる。随意に、本方法はさらに、第2の冷間圧延ステップの後に圧延製品を焼鈍することを含むことができる。特定の態様では、熱間圧延された製品を、第1の冷間圧延ステップにおいて冷間圧延して中間ゲージ厚にする、すなわち、第1の冷間圧延製品にすることができる。特定の態様では、熱間圧延された製品を、第1の冷間圧延ステップにおいて冷間圧延して、中間ゲージのアルミニウム合金製品(たとえば、シートまたはシェート)にする。いくつかの例では、中間ゲージのアルミニウム合金製品の厚さは、約0.10mm~6mm(たとえば、約0.20mm~約5mm、約0.25mm~約4mm、約0.30mm~約3mm、約0.40mm~約2mm、約0.10mm~約1mm、約0.15mm~約0.75mm)の範囲である。
【0073】
第2の冷間圧延ステップを、中間ゲージのアルミニウム合金製品に対して行うことができる。特定の態様では、第2の冷間圧延ステップを、随意の中間焼鈍ステップ(以下に説明する)の後に行うことができる。特定の態様では、中間ゲージのアルミニウム合金製品を冷間圧延して、最終ゲージのアルミニウム合金製品(たとえば、より低いゲージシートなどのシート)にする。いくつかの例では、最終ゲージのアルミニウム合金製品の厚さは、約0.01mm~1mm(たとえば、約0.02mm~約0.90mm、約0.03mm~約0.80mm、約0.04mm~約0.70mm、約0.05mm~約0.60mm、約0.06mm~約0.50mm、約0.08mm~約0.40mm、約0.10mm~約0.30mm、または約0.15mm~約0.25mm)の範囲である。
【0074】
随意の中間焼鈍
いくつかの非限定的な例では、随意の中間焼鈍ステップを2段階の冷間圧延ステップ中に行うことができる。たとえば、熱間圧延された製品は、冷間圧延して中間ゲージのアルミニウム合金製品にし(第1の冷間圧延ステップ)、随意に、巻き付けて、焼鈍して、その後に冷間圧延して最終ゲージのアルミニウム合金製品にすることができる(第2の冷間圧延ステップ)。いくつかの態様では、随意の中間焼鈍は、バッチプロセス(すなわち、バッチ中間焼鈍ステップ)または連続プロセスで行うことができる。中間焼鈍ステップは、約250℃~約450℃(たとえば、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、または約450℃)の温度で行うことができる。
【0075】
場合によっては、中間焼鈍ステップにおける加熱速度は、約100℃/時間以下、75℃/時間以下、50℃/時間以下、40℃/時間以下、30℃/時間以下、25℃/時間以下、20℃/時間以下、または15℃/時間以下とすることができる。別の場合では、加熱速度は、約10℃/分~約100℃/分(たとえば、約10℃/分~約90℃/分、約10℃/分~約70℃/分、約10℃/分~約60℃/分、約20℃/分~約90℃/分、約30℃/分~約80℃/分、約40℃/分~約70℃/分、または約50℃/分~約60℃/分)とすることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、中間ゲージのアルミニウム合金製品を、中間焼鈍ステップ中にある時間、浸漬する。いくつかの例では、中間ゲージのアルミニウム合金製品を、最大約5時間(たとえば、約30分間~約4時間、約45分間~約3時間、または約1時間~約2時間(両端を含む))、浸漬させる。たとえば、中間ゲージのアルミニウム合金製品を、約250℃~約450℃の温度で、約20分間、約30分間、約45分間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、またはそれらの間のどこかで浸漬することができる。いくつかの例では、中間ゲージのアルミニウム合金製品を、約400℃の温度で約4時間、浸漬することができる。
【0077】
使用方法
本明細書に記載のアルミニウム合金及び方法は、犠牲部品、放熱、パッケージング、及び建築材料を含む産業用途で使用することができる。本明細書に記載のアルミニウム合金は、種々の用途で、たとえば熱交換器用のフィンの製造に対して、使用することができる。一例では、本明細書に記載の改善されたアルミニウム合金は、高性能で軽量の自動車用熱交換器にとって有用である。より一般的には、本明細書に記載のアルミニウム合金は、ラジエーター、凝縮器、及び蒸発器などの自動車の熱交換器において使用することができる。前述したように、本明細書に記載の改善されたアルミニウム合金を製造するための組成物及びプロセスにより、熱交換器フィンの製造に適したものにする有用な特徴及び特性の組み合わせを有する材料がもたらされる。しかし、本明細書に記載の改善されたアルミニウム合金の使用及び用途は自動車用熱交換器に限定されず、他の使用も想定される。本明細書に記載のアルミニウム合金の特徴及び特性は、自動車用熱交換器フィンの製造以外の使用及び用途にとっても有用である可能性があることを理解されたい。たとえば、本明細書に記載の改善されたアルミニウム合金は、加熱、換気、及び空調(HVAC)で使用されるデバイスなどの、熱交換器を使用し、ろう付けによって製造される種々のデバイスを作製するために使用することができる。
【0078】
本明細書で開示したアルミニウム合金は、屋内及び屋外のHVACユニットで従来使用されている金属の好適な代替品である。本明細書で用いる場合、「屋内」の意味は、制御された環境条件により人間が製造した任意の構造物内に含まれる配置を指す。本明細書で用いる場合、「屋外」の意味は、人間が製造したいかなる構造物内にも完全には含まれず、以下を含む地質及び気象環境条件にさらされる配置を指す。空気、日射、風、雨、みぞれ、雪、雨氷、氷、ひょう、砂嵐、湿気、乾燥、煙(たとえば、タバコの煙、住宅火災の煙、産業用焼却炉の煙及び野火の煙)、スモッグ、化石燃料の排気、バイオ燃料の排気、塩類(たとえば、塩水域付近の地域での塩分の高い空気)、放射能、電磁波、腐食性ガス、腐食性液体、ガルバニ金属、ガルバニ合金、腐食性固体、プラズマ、火災、静電放電(たとえば、雷)、生体物質(たとえば、動物の排泄物、唾液、排泄されたオイル、植生)、風に吹かれた微粒子、気圧の変化、及び日中の温度変化。本明細書に記載のアルミニウム合金によって、現在使用されている合金と比べてより良好な腐食性能及びより高い強度が提供される。
【0079】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するのに役立つが、そのいかなる限定も構成しない。反対に、本明細書の説明を読んだ後で、本発明の趣旨から逸脱することなく、当業者にそれ自体を示唆し得る種々の実施形態、それらの変更及び均等物が用いられ得ることを明確に理解されたい。以下の実施例に記載される研究中、特に明記しない限り、従来の手順に従った。手順の一部を、例示を目的として以下に説明する。
【0080】
実施例
実施例1:機械的特性
合金1、2、3、4、5、6は、以下に説明する方法に従って製造される典型的な合金である。合金Aは、以下に説明する方法に従って調製された比較合金である。合金Aは、商業用途で工業用フィン素材として現在使用されている従来のアルミニウム合金である。
【0081】
合金1、2、3、4、5、6、及び合金Aは、表5に示すように、インゴットに直接チル鋳造した。インゴットを加熱速度60℃/hで480℃まで予熱して、6時間、浸漬した。予熱後、インゴットを熱間圧延して、76mmから2.5mmのゲージ減少を有するアルミニウム合金製品が得られた。第1の冷間圧延ステップにおいて、アルミニウム合金製品を5つの冷間圧延パスで冷間圧延して、中間ゲージ厚(たとえば、約0.18mm)アルミニウム合金製品にした。中間ゲージ厚のアルミニウム合金製品を、約400℃の焼鈍温度で、約50℃/時間の加熱速度で約4時間、中間焼鈍した。第2の冷間ステップにおいて、中間ゲージ厚のアルミニウム合金製品を冷間圧延して、H16調質で最終ゲージが0.09mmの最終ゲージのアルミニウム合金製品を製造する。合金1、2、3、4、5、6及び合金Aを、600℃で3分間の標準ろう付けサイクルを用いてろう付けした。
【0082】
【0083】
典型的な合金及び比較合金の機械的特性を、ASTMB557に従って測定した。具体的には、合金を引張、降伏強さ、伸び、及び伝導率テストに供した。降伏強さ(YS)、極限引張強さ(UTS)、伸び率(EI)、及び国際軟銅規格のパーセント(%IACS)を測定した。テスト結果を表6にまとめる。
【0084】
【0085】
表6に示すように、合金例4~6は、工業用フィン素材として現在使用されている比較例Aと比べて、優れたろう付け前強度を示した。合金例4~6はそれぞれ、165MPaを超える引張強さ及び155MPaを超える降伏強さを示した。驚くべきことに、ろう付け後に、合金例4~6は、120MPaを超える引張強さ及び45MPaを超える降伏強さを示した。合金例1~6のそれぞれは、45%IACSよりも高い電気伝導率も達成したが、これは比較例Aの電気伝導率よりも著しく高かった。上表6に示すように、本明細書に記載の典型的な合金は、比較合金と比べて並外れた機械的特性を示し、工業用フィン素材用途で使用される優れた商業用合金となることができる。
【0086】
実施例2:腐食特性及び耐たるみ性
本明細書に記載の典型的な合金及び本明細書に記載の比較合金(元素組成を表5に示す)の腐食特性及び耐たるみ性を測定した。開路電位腐食値をASTMG69に従って測定した。耐たるみ性の値を、本明細書に記載の方法に従って測定した。典型的な合金及び比較合金の腐食及び耐たるみ性を、約605℃の温度で模擬ろう付けサイクルを行い、その後に約20分間で室温まで冷却した後に測定した。腐食及び耐たるみ性テスト結果を表7にまとめる。
【0087】
【0088】
典型的な合金は、チューブ合金の電気化学ポテンシャル値に匹敵する電気化学ポテンシャル値を示した。従来のアルミニウムチューブ合金は、平均の開放腐食電位値対SCEが-741mVである。合金1~6とアルミニウムチューブ合金との間の差は4~27mVの範囲であった。比較すると、比較合金Aは、チューブ合金の電気化学ポテンシャル値において大きな差があった。データは、合金1~6が、犠牲陽極として機能するフィンの調製に許容できることを示す。さらに、合金1~6は優れた耐たるみ性を示しながら、それでも所望の機械的特性及び腐食特性のバランスを維持していた。
【0089】
図1A~1Gに、ろう付け前の合金1、2、3、4、5、6及び合金Aに対する粒子構造の写真を示し、
図2A~2Gに、ろう付け後の合金1、2、3、4、5、6及び合金Aに対する粒子構造の写真を示す。合金1、2、3、4、5、及び6は、アルミニウム合金のろう付け前及びろう付け後強度ならびに耐たるみ性を向上させる高い分散質数密度を有していた。本明細書に記載するように、アルミニウム合金の慎重にバランスの取れた組成が、耐たるみ性の制御において重要な役割を果たす。具体的には、Si含有量がMnの溶解度を減少させ、高密度分散質の形成を促進して、アルミニウム合金のろう付け前及びろう付け後強度ならびに耐たるみ性を向上させる。
【0090】
図3A~3Gに、ろう付け前の合金1、2、3、4、5、6及び合金Aに対する結晶粒の写真を示し、
図4A~4Gに、ろう付け後の合金1、2、3、4、5、6及び合金Aに対する結晶粒の写真を示す。ろう付け後に、合金1、2、3、4、5、及び6はそれぞれ、圧延方向に細長いパンケーキ状の結晶粒を有している。アルミニウム合金の組成により、圧延方向に平行な結晶粒成長が促進されて、アルミニウム合金は、優れた耐たるみ性を提供するパンケーキ形状の結晶粒を形成することができる。ろう付け前及びろう付け後の結晶粒の写真は、圧延方向に2個以下の結晶粒が形成され、等軸粒組織はないことを示す。
【0091】
本明細書に記載のアルミニウム合金によって、厚みを薄くしたアルミニウム合金フィン素材の製造を可能にする犠牲腐食特性及び機械的特性が提供される。厚みを薄くしたフィン素材は、フィンと接触する銅またはアルミニウム合金チューブに対する犠牲保護を維持する。また本明細書に記載のアルミニウム合金は、犠牲特性と組み合わせた機械的強度が求められる他の状況でも使用することができる。
【0092】
例示
例示1:0.20~1.30重量%のZn、0.30~1.25重量%のSi、0~0.50重量%のFe、0~0.20重量%のCu、1.00~2.00重量%のMn、0~0.10重量%のMg、最大0.10重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含むアルミニウム合金。
【0093】
例示2:前記アルミニウム合金は、0.30~1.10重量%のZn、0.35~1.20重量%のSi、0.01~0.40重量%のFe、0.001~0.15重量%のCu、1.20~1.80重量%のMn、0~0.08重量%のMg、最大0.08重量%のCr、最大0.08重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む任意の先行または後続の例示の例示。
【0094】
例示3:前記アルミニウム合金は、0.35~1.00重量%のZn、0.50~1.10重量%のSi、0.05~0.35重量%のFe、0.01~0.10重量%のCu、1.30~1.70重量%のMn、0~0.05重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む任意の先行または後続の例示の例示。
【0095】
例示4:前記アルミニウム合金は、0.50~0.90重量%のZn、0.80~1.10重量%のSi、0.05~0.30重量%のFe、0.01~0.05重量%のCu、1.30~1.50重量%のMn、0.001~0.02重量%のMg、最大0.05重量%のCr、最大0.05重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む任意の先行または後続の例示の例示。
【0096】
例示5:前記アルミニウム合金は、0.75~0.85重量%のZn、0.80~0.90重量%のSi、0~0.30重量%のFe、0~0.03重量%のCu、1.35~1.50重量%のMn、0~0.05重量%のMg、最大0.01重量%のCr、最大0.03重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む任意の先行または後続の例示の例示。
【0097】
例示6:前記アルミニウム合金はH調質である任意の先行または後続の例示の例示。
【0098】
例示7:前記アルミニウム合金の極限引張強さは少なくとも140MPaである任意の先行または後続の例示の例示。
【0099】
例示8:前記アルミニウム合金の降伏強さは少なくとも155MPaである任意の先行または後続の例示の例示。
【0100】
例示9:前記アルミニウム合金は、国際軟銅規格(IACS)に基づいて電気伝導率が50%を上回る任意の先行または後続の例示の例示。
【0101】
例示10:前記アルミニウム合金は腐食電位が-700mV~-800mVである任意の先行または後続の例示の例示。
【0102】
例示11:前記アルミニウム合金は、0.80~0.90重量%のSi、最大0.30重量%のFe、最大0.03重量%のCu、1.35~1.50重量%のMn、最大0.05重量%のMg、0.75~0.85重量%のZn、最大0.01重量%のCr、最大0.03重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含み、前記アルミニウム合金は、極限引張強さが160MPa~180MPa、降伏強さが150MPa~160MPa、伸びが2%~2.50%、及び伝導率が55%IACS~60%IACSである任意の先行または後続の例示の例示。
【0103】
例示12:前記アルミニウム合金の最終ゲージは0.10mm未満である任意の先行または後続の例示の例示。
【0104】
例示13:前記アルミニウム合金は、長さ35mmのサンプル上で測定したときの耐たるみ性が35mm未満である任意の先行または後続の例示の例示。
【0105】
例示14:任意の先行または後続の例示の前記アルミニウム合金を含むフィン素材。
【0106】
例示15:チューブ及びフィンを含むアルミニウム合金製品であって、前記フィンは任意の先行または後続の例示のフィン素材を含む、前記アルミニウム合金製品。
【0107】
例示16:アルミニウム合金製品を製造する方法であって、アルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することであって、前記アルミニウム合金は、0.20~1.30重量%のZn、0.30~1.25重量%のSi、0~0.50重量%のFe、0~0.20重量%のCu、1.00~2.00重量%のMn、0~0.10重量%のMg、最大0.10重量%のCr、最大0.10重量%のTi、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む、形成することと、前記鋳造アルミニウム合金を予熱することと、前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延してアルミニウム合金製品を製造することと、第1の冷間圧延ステップにおいて、前記アルミニウム合金を冷間圧延して中間ゲージのアルミニウム合金製品を製造することと、前記中間ゲージのアルミニウム合金製品を中間焼鈍することと、第2の冷間圧延ステップにおいて、前記中間ゲージのアルミニウム合金製品を冷間圧延して、H調質で最終ゲージのアルミニウム合金製品にすることと、を含む方法。
【0108】
例示17:前記最終ゲージのアルミニウム合金製品は、極限引張強さが少なくとも140MPaであり、降伏強さが少なくとも155MPaであり、電気伝導率が国際軟銅規格(IACS)に基づいて少なくとも50%である任意の先行または後続の例示の例示。
【0109】
例示18:前記最終ゲージのアルミニウム合金製品をろう付けして、ろう付けされたアルミニウム合金製品を製造することをさらに含む任意の先行または後続の例示の例示。
【0110】
例示19:前記ろう付けされたアルミニウム合金製品は、極限引張強さが少なくとも100MPaであり、降伏強さが少なくとも45MPaであり、電気伝導率が国際軟銅規格(IACS)に基づいて少なくとも45%である任意の先行または後続の例示の例示。
【0111】
例示20:前記最終ゲージのアルミニウム合金製品は、最終ゲージが0.10mm未満である任意の先行または後続の例示の例示。
【0112】
例示21:アルミニウム合金が、任意の先行または後続の例示の方法によって調製される。
【0113】
上記で引用されたすべての特許、刊行物、及び要約は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。本発明の種々の実施形態を、本発明の種々の目的を実現する中で説明してきた。これらの実施形態は本発明の原理を単に例示するだけであることを理解されたい。その多くの変更及び適応が、以下の特許請求の範囲において規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者には容易に明らかである。
【国際調査報告】