(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】キシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/18 20060101AFI20240126BHJP
C12P 19/02 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C12P7/18
C12P19/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549915
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2022133112
(87)【国際公開番号】W WO2023116302
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111606216.9
(32)【優先日】2021-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 愛娟
(72)【発明者】
【氏名】羅 家星
(72)【発明者】
【氏名】胡 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】楊 銘乾
(72)【発明者】
【氏名】廖 承軍
(72)【発明者】
【氏名】鄭 毅
(72)【発明者】
【氏名】方 順成
(72)【発明者】
【氏名】李 勉
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AC05
4B064AF02
4B064CA06
4B064CC30
4B064CD09
4B064CE11
4B064CE15
4B064CE20
4B064DA16
(57)【要約】
本発明は、第1クロマトグラフィーを利用してキシロースを分離し、抽出液及びラフィネートを得て、抽出液をキシロース結晶の製造に用い、ラフィネートを液体グルコース又は結晶グルコースと配合して、高浸透圧耐性で転化率の高いヤロウウィア・リポリティカを利用して発酵させてエリスリトールを生産し、さらに溶解度が低く結晶化しやすいというエリスリトールの特性を利用して、まず、遠心結晶化処理を行ってエリスリトール結晶を得て、エリスリトールの遠心分離母液を第2クロマトグラフィー分離にかけて、アラビノース含有量が高いラフィネートを得て、次に、アラビノース結晶を製造する、キシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法に関する。本発明は、キシロース母液の利用の効率化を実現し、キシロース及びアラビノースを得るとともに、グルコースを利用して付加価値のより高いエリスリトールを生産することで、発酵コストを下げて、経済的効果を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法であって、
キシロース母液を擬似移動床による第1クロマトグラフィーで分離して処理し、キシロース成分の含有量が高いキシロース抽出液とグルコース成分の含有量が高いキシロースラフィネートをそれぞれ得て、キシロース抽出液を濃縮させて結晶化し、キシロース結晶を得るステップ1と、
キシロースラフィネートを固形分30%~50%となるまで濃縮させ、グルコース含有量を9%~14%にしてから、液体グルコース又は結晶グルコースと配合して、グルコース含有量が40%~50%のグルコース混合液を得るステップ2と、
予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液を発酵タンク内の発酵培地に接種するとともに、ステップ2のグルコース混合液を加えて発酵し、グルコース含有量が0.3%未満の発酵液を得て、発酵液をろ過して発酵ろ液を得て、発酵ろ液に脱色、イオン交換、濃縮、遠心及び結晶化処理を順次行って、エリスリトール結晶及びエリスリトール遠心分離母液をそれぞれ得るステップ3と、
エリスリトール遠心分離母液を擬似移動床による第2クロマトグラフィーで分離して処理し、エリスリトール成分の含有量が高いエリスリトール抽出液とアラビノース成分の含有量が高いエリスリトールラフィネートをそれぞれ得て、エリスリトール抽出液をステップ3における発酵ろ液と混合し、エリスリトールラフィネートに対して脱色、イオン交換、濃縮、結晶化処理を順次行って、アラビノース結晶を得るステップ4と、を含む、ことを特徴とするキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法。
【請求項2】
ステップ3では、前記発酵培地は、グルコース25%~32%、酵母エキス0.5%~1%、コーンシロップ乾燥粉末0.3%~0.8%、硫酸マグネシウム0.03%~0.08%、クエン酸アンモニウム0.2%~0.8%、及びリン酸水素二カリウム0.02%~0.05%の割合で製造する、ことを特徴とする請求項1に記載のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法。
【請求項3】
ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株を試験管斜面に接種して培養し、試験管斜面種子を得ることによって製造され、試験管内には試験管斜面種子培地が予め用意されており、試験管斜面種子培地は、グルコース20%~25%、酵母エキス0.8%~1.5%、及び寒天1.5%~2%の割合で製造する、ことを特徴とする請求項1に記載のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法。
【請求項4】
ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株をナスフラスコ斜面に接種して培養し、ナス斜面種子を得る方法によって製造され、ナスフラスコ内にはナス斜面種子培地が予め用意されており、ナス斜面種子培地は、グルコース20%~25%、酵母エキス0.8%~1.5%、及び寒天1.5%~2%の割合で製造する、ことを特徴とする請求項1に記載のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法。
【請求項5】
ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株を振とうフラスコに接種して培養し、振とうフラスコ種子液を得る方法によって製造され、振とうフラスコ内には振とうフラスコ種子培地が予め用意されており、振とうフラスコ種子培地は、グルコース20%~25%、酵母エキス0.8%~1.5%、硫酸マグネシウム0.03%~0.08%、及びクエン酸アンモニウム0.2%~0.7%の割合で製造する、ことを特徴とする請求項1に記載のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法。
【請求項6】
ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株を発酵タンクに接種して培養し、発酵タンク種子液を得る方法によって製造され、発酵タンク内には発酵タンク種子培地が予め用意されており、発酵タンク種子培地は、グルコース25%~30%、酵母エキス0.5%~1.0%、ペプトン0.3%~0.8%、硫酸マグネシウム0.03%~0.08%、及びエン酸アンモニウム0.2%~0.8%の割合で製造し、接種量が5%~10%、発酵初期pHが6.0~7.0、発酵タンク種子培地の滅菌温度が115℃~121℃、滅菌時間が20min~30 minである、ことを特徴とする請求項1に記載のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キシロース母液を利用する技術分野に属し、特にキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キシリトールの生産工程では、ヘテロ糖の含有量が多いキシロース母液が大量に生成され、カラメル色素などの副産物として販売されることが多く、付加価値が低い。キシロース母液中、キシロースは40~60%、グルコースは10~20%、アラビノースは15~20%、マンノースは0~10%、ガラクトースは0~5%である。キシロース母液の処理と利用については、方法が多いが、ほとんどはその中のキシロースとアラビノースを抽出することである。抽出分離の困難性を低減するために、菌体の成長のための炭素源であるグルコースやガラクトースを消費して発酵を行う細菌や酵母を用いて、キシロースやアラビノースの抽出効率を向上させる。
【0003】
公開番号CN112094956Aの特許は、サッカロマイセス・セレビシエを利用してキシロース母液を連続的に発酵させ、グルコースを消費し、クロマトグラフィーを利用してキシロースとアラビノースを分離して精製する。公告番号CN101705253Bの特許は、二次発酵を利用して母液中のキシロースをキシリトールに変えると同時に、アラビノースを精製する。公告番号CN102603814Bの特許も、同様に、酵母発酵を利用して20%に希釈したキシロース母液中のグルコースとガラクトースを除去し、キシロースとアラビノース清液を得ることである。公告番号CN101857523Bの特許は、発酵により母液中のグルコース及びガラクトースを除去し、濾過した清液に対して脱色、イオン交換、濃縮、水素化をしてキシリトール及びアラビトールを製造し、クロマトグラフィーにより2成分を分離し、結晶化して2種類の完成品を得ることである。公告番号CN102952165Bの特許も、発酵によりグルコースとガラクトースを除去し、さらに結晶特性の違いによってアラビノースの結晶を分離している。公開番号CN109504733Aの特許は、ピキア酵母とアウレオバシジウム・プルランスの混合菌を用いて発酵させ、エリスリトールを生産するものであり、炭素源はキシロース母液を使用しているが、エリスリトール濃度は40g/L程度と非常に低い。以上に述べた特許技術の多くは、菌株発酵により、グルコースやガラクトースを除去し、さらにキシロースとアラビノースを分離して純度を高めるものである。しかし、いずれも一定の制限が存在し、キシロース母液中の糖度が高いため、一般的に細菌の成長に適さず、このため、多くの場合高浸透圧耐性酵母を利用して高好気性発酵を行うが、圧縮空気に対する需要が大きく、また、希釈後の母液量が多く、グルコースをすべて利用するための菌量が多く、何回も拡大培養を行う必要があり、発酵時間は48h以上であり、精製の目的を達成できるが、エネルギー消費、生産周期及びコストは大幅に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、キシロース母液を利用するコストを下げ、キシロースとアラビノースを分離すると同時に、グルコースの利用価値を高め、酵母発酵を利用して付加価値のある生成物としてエリスリトールを生産し、エリスリトールの産量を向上させる、キシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のように達成される。
【0006】
キシロース母液を擬似移動床(Simulated Moving Bed)による第1クロマトグラフィーで分離して処理し、キシロース成分の含有量が高いキシロース抽出液とグルコース成分の含有量が高いキシロースラフィネートをそれぞれ得て、キシロース抽出液を濃縮させて結晶化し、キシロース結晶を得るステップ1と、
キシロースラフィネートを固形分30%~50%となるまで濃縮させ、グルコース含有量を9%~14%にしてから、液体グルコース又は結晶グルコースと配合して、グルコース含有量40%~50%のグルコース混合液を得るステップ2と、
予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液を発酵タンク内の発酵培地に接種するとともに、ステップ2のグルコース混合液を加えて発酵し、グルコース含有量が0.3%未満の発酵液を得て、発酵液をろ過して発酵ろ液を得て、発酵ろ液に脱色、イオン交換、濃縮、遠心及び結晶化処理を順次行って、エリスリトール結晶及びエリスリトール遠心分離母液をそれぞれ得るステップ3と、
エリスリトール遠心分離母液を擬似移動床による第2クロマトグラフィーで分離して処理し、エリスリトール成分の含有量が高いエリスリトール抽出液とアラビノース成分の含有量が高いエリスリトールラフィネートをそれぞれ得て、エリスリトール抽出液をステップ3における発酵ろ液と混合し、エリスリトールラフィネートに対して脱色、イオン交換、濃縮、結晶化処理を順次行って、アラビノース結晶を得るステップ4と、キシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
従来技術と比べて、本発明のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法は、第1クロマトグラフィーを利用してキシロースを分離し、抽出液及びラフィネートを得て、抽出液をキシロース結晶の製造に用い、ラフィネートを液体グルコース又は結晶グルコースと配合して、高浸透圧耐性で転化率の高いヤロウウィア・リポリティカを用いて発酵させてエリスリトールを生産し、次に、溶解度が低く結晶化しやすいというエリスリトールの特性を利用して、まず、遠心結晶化してエリスリトール結晶を得て、エリスリトール遠心分離母液を第2クロマトグラフィー分離にかけて、アラビノース含有量の高いラフィネートを得て、次に、アラビノース結晶を製造する。本発明は、キシロース母液を効率的に利用し、キシロース及びアラビノースを得ると同時、それにおけるグルコースを利用して付加価値のより高いエリスリトールを生産し、また、液体グルコース又は結晶グルコースと混合することにより、培地中のグルコース含有量を高めて、各バッチの発酵によるエリスリトールの産量を向上させる一方、各バッチの発酵における母液の利用率を高め、全体的には、キシロース母液のラフィネートを配合した発酵液を発酵させて、濃度156g/L以上のエリスリトールを製造し、転化率が52%以上である。本発明はまた、発酵コストを下げ、キシロース母液の付加価値を高め、経済的効果を高める。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法の原理概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下では、図面及び実施例を参照して、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、ここで説明される特定実施例は本発明を解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1を参照して、本発明のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法の好適な実施例が示されており、下記のステップ1~ステップ4を含む。
【0011】
ステップ1:キシロース母液を擬似移動床による第1クロマトグラフィーで分離して処理し、キシロース成分の含有量が高いキシロース抽出液とグルコース成分の含有量が高いキシロースラフィネートをそれぞれ得て、キシロース抽出液を濃縮させて結晶化し、キシロース結晶を得る。
【0012】
ステップ2:キシロースラフィネートを固形分30%~50%となるまで濃縮させ(g/100mL、下同)、グルコース含有量を9%~14%にしてから、液体グルコース又は結晶グルコースと配合して、グルコース含有量が40%~50%のグルコース混合液を得る。
【0013】
ステップ3:予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液を発酵タンク内の発酵培地に接種するとともに、ステップ2のグルコース混合液を加えて発酵し、グルコース含有量が0.3%未満の発酵液を得て、発酵液をろ過して発酵ろ液を得て、発酵ろ液に脱色、イオン交換、濃縮、遠心及び結晶化処理を順次行って、エリスリトール結晶及びエリスリトール遠心分離母液をそれぞれ得る。
【0014】
ステップ4:エリスリトール遠心分離母液を擬似移動床による第2クロマトグラフィーで分離して処理し、エリスリトール成分の含有量が高いエリスリトール抽出液とアラビノース成分の含有量が高いエリスリトールラフィネートをそれぞれ得て、エリスリトール抽出液をステップ3における発酵ろ液と混合し、エリスリトール抽出液を回収して利用し、エリスリトールラフィネートに対して脱色、イオン交換、濃縮、結晶化処理を順次行って、アラビノース結晶を得る。
【0015】
具体的には、ステップ3では、前記発酵培地は、グルコース25%~32%、酵母エキス0.5%~1%、コーンシロップ乾燥粉末0.3%~0.8%、硫酸マグネシウム0.03%~0.08%、クエン酸アンモニウム0.2%~0.8%、及びリン酸水素二カリウム0.02%~0.05%の割合で製造する。
【0016】
具体的には、ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株を試験管斜面に接種して培養し、試験管斜面種子を得る方法によって製造され、試験管内には試験管斜面種子培地が予め用意されており、試験管斜面種子培地は、グルコース20%~25%、酵母エキス0.8%~1.5%、及び寒天1.5%~2%の割合で製造する。
【0017】
具体的には、ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株をナスフラスコ斜面に接種して培養し、ナス斜面種子を得る方法によって製造され、ナスフラスコ内にはナス斜面種子培地が予め用意されており、ナス斜面種子培地は、グルコース20%~25%、酵母エキス0.8%~1.5%、及び寒天1.5%~2%の割合で製造する。
【0018】
具体的には、ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株を振とうフラスコに接種して培養し、振とうフラスコ種子液を得る方法によって製造され、振とうフラスコ内には振とうフラスコ種子培地が予め用意されており、振とうフラスコ種子培地は、グルコース20%~25%、酵母エキス0.8%~1.5%、硫酸マグネシウム0.03%~0.08%、及びエン酸アンモニウム0.2%~0.7%の割合で製造する。
【0019】
具体的には、ステップ3では、前記予め製造されたヤロウウィア・リポリティカ種子液は、ヤロウウィア・リポリティカ菌株を発酵タンクに接種して培養し、発酵タンク種子液を得る方法によって製造され、発酵タンク内には発酵タンク種子培地が予め用意されており、発酵タンク種子培地は、グルコース25%~30%、酵母エキス0.5%~1.0%、ペプトン0.3%~0.8%、硫酸マグネシウム0.03%~0.08%、及びエン酸アンモニウム0.2%~0.8%の割合で製造し、接種量が5%~10%、発酵初期pHが6.0~7.0、発酵タンク種子培地の滅菌温度が115℃~121℃、滅菌時間が20min~30minである。
【0020】
以下、特定実施例を利用して本発明の方法をさらに説明する。
【0021】
(実施例1)
本発明のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法の第1実施例は、下記ステップを含む。
【0022】
キシロース母液を第1クロマトグラフィーで分離して処理し、キシロース含有抽出液を得て、抽出液を固形分80%となるまで濃縮させ、蒸発させて結晶化し、キシロース結晶を得た。ラフィネート中の各成分の割合は、それぞれ、グルコース25%~32%、アラビノース18%~25%、ガラクトース5%~15%である。ラフィネートを固形物40%となるまで濃縮させ、グルコース含有量を12%にし、結晶グルコースと配合して、混合液のグルコース含有量を45%にし、系100Lを調製するとともに、所定の割合でグルコース以外の発酵培地処方における他の補助材料を加えて、滅菌し、使用に備えた。
【0023】
発酵系は70Lとし、合計3バッチであり、流加供給方式を採用しており、具体的な操作は以下のとおりである。
【0024】
発酵初期の体積を40Lとし、上記の発酵培地処方に従って培地を製造し、培地中のグルコース初期含有量を18%にし、製造したものを滅菌して、使用に備えた。振とうフラスコ種子をそれぞれ500mL、5Lの振とうフラスコで発酵させ、投入量をそれぞれ全体積の10%として、20h~24h培養し、5L振とうフラスコ中の菌密度が18~25(波長600nmでの菌液の吸光値、略してOD値)となると発酵タンク内に移し、接種量を8%、発酵温度30℃、回転数を200rpm~400rpm、溶存酸素を20%~30%、換気量を1.5Nm3/hとして、発酵液中の菌密度が35~40になると、上記の混合糖液を発酵タンクの体積の70Lまで補充し、連続補充において発酵液中のグルコース含有量を17%~20%に保持し、補充完了後、発酵を持続し、発酵液中のグルコース含有量が0.3%未満となると発酵を停止した。発酵結果を表1に示す。
【0025】
【0026】
エリスリトール濃度はすべて156g/L以上であり、転化率は52.2%以上である。
【0027】
発酵終了後、発酵液をセラミックメンブレンでろ過し、上澄み液を得て、脱色、イオン交換を行い、固形分68%となるまで濃縮させ、5℃/hの速度で降温して結晶化し、20h後、遠心分離してエリスリトール結晶を得た。遠心分離母液を擬似移動床による第2クロマトグラフィーで分離して処理し、エリスリトール及びアラビノース成分を得て、エリスリトール成分を、ろ過した上澄み液に戻した。エリスリトールの産量を向上させ、アラビノース成分の純度を75%にし、濃縮、結晶化、遠心分離をして、アラビノース結晶を得た。
【0028】
(実施例2)
本発明のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法の第2実施例は、下記のステップを含む。
【0029】
ラフィネートの製造及び各成分の割合は実施例1と同様である。ラフィネートを固形物50%となるあまで濃縮させ、グルコース含有量を14.3%にし、液体グルコースをグルコース含有量65%となるまで濃縮させ、これらの2種を4:6の体積比で混合し、混合液のグルコース含有量を45%にし、1000Lの系を調製し、また、所定の割合でグルコース以外の発酵培地処方における他の補助材料を加え、滅菌して、使用に備えた。
【0030】
発酵系は700Lとし、合計3バッチであり、流加供給方式を採用しており、具体的な操作は以下のとおりである。
【0031】
発酵初期の体積を400Lとし、上記の発酵培地処方に従って培地を製造し、培地の初期グルコース含有量を18.7%にし、製造したものを滅菌して、使用に備えた。試験管斜面種子を500mLナスフラスコ斜面に移し、30℃で4~5日間培養し、1つずつ無菌水80mLを加えて菌苔を流し落とし、それぞれ5L振とうフラスコに移して発酵させ、30℃で20h~24h培養し、菌密度を18~25にし、2つの50L種子タンクに移し、投入量を35L、発酵温度を30℃、タンク圧力を0.1MPaにして、菌密度が20~25になると、一方の種子タンク内の菌種を1000L発酵タンクに移し、回転数を180rpm~300rpm、溶存酸素を20%~30%、換気量を16Nm3/hとし、菌密度が35~40になると、上記の混合糖液300Lを補充し、また、他方の種子タンク内の新しい種子液を加え、連続補充において発酵液中のグルコース含有量を17%~20%に保持し、補充完了後、発酵を持続し、発酵液中のグルコース含有量が0.3%未満となると発酵を停止し、発酵系中のグルコースの全濃度を30%とした。発酵結果を以下に示す。
【0032】
【0033】
エリスリトール濃度はすべて160g/L以上であり、転化率は53.9%以上である。
【0034】
発酵終了後、発酵液をセラミックメンブレンでろ過し、上澄み液を得て、脱色、イオン交換をして、固形分65%となるまで濃縮させ、6℃/h速度で降温して結晶化し、16h後、遠心分離してエリスリトール結晶を得た。遠心分離母液を擬似移動床による第2クロマトグラフィーで分離して処理し、エリスリトール及びアラビノース成分を得て、上記と同様に、エリスリトール成分を、ろ過した上澄み液に戻し、アラビノース成分の純度を77%にし、濃縮、結晶化、遠心分離をして、アラビノース結晶を得た。
【0035】
(実施例3)
本発明のキシロース母液を用いたエリスリトール・アラビノース併産方法の第3実施例は、下記のステップを含む。
【0036】
ラフィネートの製造及び各成分の割合は、実施例1、実施例2と同様である。ラフィネートを固形物48%となるまで濃縮させ、グルコース含有量を13.7%にし、550Lを加え、次に、結晶性グルコース一水和物及び水道水380kgを加え、混合液のグルコース含有量を42%にし、系1000Lを調製し、また、所定の割合でグルコース以外の発酵培地処方における他の補助材料を加え、滅菌して、使用に備えた。
【0037】
発酵系は700Lとし、合計3バッチであり、流加供給方式を採用しており、具体的な操作は以下のとおりである。
【0038】
発酵初期の体積を400Lとし、上記の発酵培地処方に従って培地を製造し、培地の初期グルコース含有量を20%にし、製造したものを滅菌して、使用に備えた。試験管斜面種子を500mLナスフラスコ斜面に移し、30℃で4~5日間培養し、1つずつ無菌水80mLを加えて菌苔を流し落とし、それぞれ5L振とうフラスコに移して発酵させ、投入量を800mLにし、30℃で22h培養し、菌密度を18~25にし、2つの50L種子タンクに移し、投入量を35L、発酵温度を30℃、タンク圧力を0.1MPaにし、上記と同様に、菌密度が20~25になると、一方の種子タンク内の菌種を1000L発酵タンクに移し、回転数を180~300rpm、溶存酸素を20%~30%、換気量を15Nm3/hにし、菌密度が35~40になると、上記の混合糖液300Lを補充するとともに、他方の種子タンク内の新しい種子液を加え、連続補充において発酵液中のグルコース含有量を15%~18%に保持し、発酵液中のグルコース含有量が0.3%未満になると発酵を停止し、発酵系中のグルコースの全含有量を30%にした。発酵結果を以下に示す。
【0039】
【0040】
エリスリトール濃度はすべて159g/L以上であり、転化率は53.3%以上である。
【0041】
発酵終了後、発酵液をセラミックメンブレンでろ過し、上澄み液を得て、脱色、イオン交換をして、固形分67%となるまで濃縮させ、6℃/hの速度で降温して結晶化し、18h後、遠心分離してエリスリトール結晶を得た。遠心分離母液を擬似移動床による第2クロマトグラフィーで分離して処理し、エリスリトール及びアラビノース成分を得て、上記と同様に、エリスリトール成分を、ろ過した上澄み液に戻し、アラビノース成分の純度を78%にし、濃縮、結晶化、遠心分離をして、アラビノース結晶を得た。
【0042】
<比較例1>
クロマトグラフィーによる固形物30%のラフィネートを直接発酵させてエリスリトールを製造し、グルコースの初期含有量は7.2%である。材料を補充して発酵させるプロセスを行わない以外、残りの工程として実施例1の70L発酵系及び発酵制御が使用され、発酵が終了すると、エリスリトールは31.6g/L、転化率は43.8%である。
【0043】
<比較例2>
クロマトグラフィーによる固形物30~40%のラフィネートを、結晶グルコース、液体グルコース及びグルコース一水和物と配合した後、すべてを初期発酵培地用として製造し、グルコースの初期含有量を21%とした。材料を補充して発酵させるプロセスを行わない限り、残りの工程として実施例1の70L発酵系及び発酵制御が使用される。直接発酵させて、発酵が終了すると、エリスリトールは64.5g/L、転化率は30.0%である。
【0044】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の主旨及び原則を逸脱することなく行われる全ての修正、等同置換及び改良などは、本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】