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特表2024-505111改善された抗がん活性を有するT細胞の選択方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】改善された抗がん活性を有するT細胞の選択方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240126BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240126BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550709
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021080796
(87)【国際公開番号】W WO2022096659
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】20306327.6
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517001192
【氏名又は名称】メタフォラ,バイオシステムズ
(71)【出願人】
【識別番号】514124403
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(71)【出願人】
【識別番号】523083735
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィケ
(71)【出願人】
【識別番号】516344465
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ナオミ
(72)【発明者】
【氏名】プゾル,マリー シャルロット シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】ダーダルホン,バレリ
(72)【発明者】
【氏名】プティ,ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法であって、a)T細胞集団の細胞表面で、GLUT1リガンドを用いてグルコース輸送体1(GLUT1)発現レベルを定量化すること、b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択すること、を含み、GLUT1発現レベルが低い前記T細胞が改善された抗がん活性を有する方法に関する。本発明はまた、がんの処置に使用するための改善された抗がん活性を有するT細胞集団、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択するためのGLUT1リガンドの使用、及びT細胞の抗がん治療有効性のバイオマーカーとしてのGLUT1の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法であって、
a)T細胞集団の細胞表面でGLUT1リガンドを用いてグルコース輸送体1(GLUT1)発現レベルを定量化すること、
b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択すること、
を含み、
GLUT1発現レベルが低い前記T細胞が改善された抗がん活性を有する方法。
【請求項2】
a0)それらの細胞表面でGLUT1を発現する、又はそれらの細胞表面でGLUT1を発現し易いT細胞集団を、GLUT1リガンドと接触させること、
a1)前記T細胞の細胞表面におけるGLUT1に対する前記GLUT1リガンドの結合を検出及び/又は定量化すること、
a2)前記T細胞の細胞表面におけるGLUT1発現レベルを定量化すること、
b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択すること、及び
c)任意に、GLUT1発現レベルが低い選択されたT細胞を単離すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GLUT1発現レベルが低い前記T細胞が、全GLUT1+T細胞集団の中でGLUT1発現レベルが最も低い多くて50%、40%、30%、20%、10%又は5%の分画に対応する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞の細胞表面におけるGLUT1発現レベルの定量化が、フローサイトメトリーによって行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
がんの処置で使用するための改善された抗がん活性を有するT細胞集団であって、請求項1~4に記載の方法によって選択されるT細胞集団。
【請求項6】
改善された抗がん活性を有するT細胞を選択するためのグルコース輸送体1(GLUT1)リガンドの使用。
【請求項7】
前記GLUT1リガンドが標識される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法、請求項5に記載の使用のためのT細胞集団、又は請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記GLUT1リガンドが、霊長類Tリンパ球向性ウイルス(PTLV)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)を含むか、又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法、使用、又は使用のためのT細胞集団。
【請求項9】
前記GLUT1リガンドが、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)、T細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)、T細胞白血病ウイルス3型(HTLV-3)、T細胞白血病ウイルス4型(HTLV-4)、サルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)、サルT細胞白血病ウイルス2型(STLV-2)、サルT細胞白血病ウイルス3型(STLV-3)、又はサルT細胞白血病ウイルス5型(STLV-5)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項8に記載の方法、使用、又は使用のためのT細胞集団。
【請求項10】
前記GLUT1リガンドが、T細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)を含む、請求項9に記載の方法、使用、又は使用のためのT細胞集団。
【請求項11】
前記受容体結合ドメイン(RBD)が、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項10に記載の方法、使用、又は使用のためのT細胞集団。
【請求項12】
T細胞の抗がん治療有効性のバイオマーカーとしてのグルコース輸送体1(GLUT1)の使用。
【請求項13】
前記T細胞が、従来のCD4T細胞、従来のCD8T細胞、γδ T細胞及びダブルネガティブ(DN)T細胞からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、使用、又は使用のためのT細胞集団。
【請求項14】
前記T細胞がキメラ抗原受容体(CAR)T細胞である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法、使用、又は使用のためのT細胞集団。
【請求項15】
前記がんは血液がん又は固形腫瘍である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法、使用、又は使用のためのT細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、がんを処置するための細胞治療の分野に関する。特に、本発明は、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法であって、a)T細胞集団の細胞表面におけるグルコース輸送体1(GLUT1)の発現レベルを、GLUT1リガンドを用いて定量化すること、b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択することを含み、GLUT1発現レベルが低い前記T細胞が改善された抗がん活性を有する方法に関する。本発明はまた、がんの処置に使用するための改善された抗がん活性を有するT細胞集団、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択するためのGLUT1リガンドの使用、及びT細胞の抗がん治療有効性のバイオマーカーとしてのGLUT1の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がんの処置のためのT細胞療法の開発は大きく進歩している。しかし、養子移入されたT細胞の存続及び機能を最適化することは依然として課題であり、その結果、新しい戦略の探索及び開発が行われている。
【0003】
T細胞の増殖及び機能に影響を与える重要な一態様は、宿主環境である。養子移入Tリンパ球の活性化及びエフェクター機能は、エネルギー需要及び生合成需要の増加に関連し、一般的に栄養素の流入と利用の増加によって保証されている。実際に、細胞表面でのグルコース及びアミノ酸輸送体のTCR刺激による上方制御は、最適なT細胞の増殖及びエフェクター機能に重要な役割を果たし得る。しかし重要なことに、別々のTリンパ球サブセットは異なる代謝プロファイルを示す:エフェクターT細胞は、高度に糖分解性であり、脂質生成性でもあるが、抑制性の制御性T細胞(Treg)は、脂質酸化レベルの増加を伴う混合代謝を示す。この点に関して、グルコース、グルタミン又はロイシン輸送などの栄養素輸送が制限されている条件下では、TeffではなくTregの生成が維持されることに注目することは興味深い(Macintyreら,Cell Metab 20,61-72(2014);Nakayaら Immunity 40,692-705(2014);Sinclairら,Nat Immunol 14,500-508(2013)。
【0004】
さらに、操作された抗腫瘍T細胞が腫瘍抗原に応答する潜在性は、腫瘍の代謝環境によって負に調節される場合が多い。この環境は、とりわけ、栄養素組成、「老廃」物、酸素濃度、pH、温度及び物理的な力によって調整される。実際に、がん細胞の制御されない成長は、細胞外環境に直接影響を及ぼし得て、複数の研究により、腫瘍の代謝表現型がその後の免疫応答を支配することがわかっている(Mayers & Vander Heiden,Cancer research 77,3131-3134(2017))で概説されている)。
【発明の概要】
【0005】
腫瘍病変における複雑な細胞、シグナル伝達及び代謝の状況を考慮して、本発明者らは、特に高レベルの栄養素を消費し、嫌気性である場合が多い「敵対的な」腫瘍組織において、最適なインビボT細胞抗腫瘍エフェクター機能を促進する代謝特性を解明しようと試みた。この目的のために、本発明者らは、例えば、受容体結合ドメイン(RBD)技術を用いて栄養輸送体の発現を具体的に評価し、別々の栄養輸送体プロファイルを有するT細胞の亜集団のインビボ抗腫瘍特性を分析した。
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、細胞表面におけるGLUT1発現レベルが低いT細胞が改善された抗がん活性を示すことを示した。特に、本発明者らは、担がんマウスに養子移入された、細胞表面でのGLUT-1発現レベルが低いT細胞は、細胞表面でのGLUT-1発現レベルが高いT細胞よりも腫瘍負荷を減少させることが可能であったことを示した。
【0007】
そのため、本発明者らは、細胞表面における低いGLUT1発現レベルに基づいて選択されたT細胞が、増加した抗がん活性を示すことを示した。
【0008】
本発明は、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法であって、
a)GLUT1リガンドを用いてT細胞集団の細胞表面におけるグルコース輸送体1(GLUT1)発現レベルを定量化すること、
b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択すること、
を含み、
GLUT1発現レベルが低い前記T細胞は改善された抗がん活性を有する方法に関する。
【0009】
第1の実施形態によれば、前記方法は、
a0)それらの細胞表面でGLUT1を発現する、又はそれらの細胞表面でGLUT1を発現し易いT細胞集団を、GLUT1リガンドと接触させること、
a1)T細胞の細胞表面におけるGLUT1に対する前記GLUT1リガンドの結合を検出及び/又は定量化すること、
a2)T細胞の細胞表面におけるGLUT1発現レベルを定量化すること、
b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択すること、及び
c)任意に、GLUT1発現レベルが低い選択されたT細胞を単離すること、
を含む。
【0010】
第2の実施形態によれば、GLUT1発現レベルが低い前記T細胞は、全GLUT1+T細胞集団の中でGLUT1発現レベルが最も低い多くて50%、40%、30%、20%、10%又は5%の分画に対応する。
【0011】
第3の実施形態によれば、T細胞の細胞表面におけるGLUT1発現レベルの定量化は、フローサイトメトリーによって行われる。
【0012】
本発明はまた、がんの処置で使用するための改善された抗がん活性を有するT細胞集団であって、前記T細胞が本発明の方法によって選択される、T細胞集団にも関する。
【0013】
本発明はさらに、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択するためのグルコース輸送体1(GLUT1)リガンドの使用にも関する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記GLUT1リガンドは標識される。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記GLUT1リガンドは、霊長類Tリンパ球向性ウイルス(PTLV)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)を含むか、又は抗体若しくはその抗原結合断片を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記GLUT1リガンドは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)、T細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)、T細胞白血病ウイルス3型(HTLV-3)、T細胞白血病ウイルス4型(HTLV-4)、サルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)、サルT細胞白血病ウイルス2型(STLV-2)、サルT細胞白血病ウイルス3型(STLV-3)、又はサルT細胞白血病ウイルス5型(STLV-5)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記GLUT1リガンドは、T細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記受容体結合ドメイン(RBD)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0019】
本発明はまた、T細胞の抗がん治療有効性のバイオマーカーとしてのグルコース輸送体1(GLUT1)の使用に関する。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記T細胞は、従来のCD4T細胞、従来のCD8T細胞、γδ T細胞及びダブルネガティブ(DN)T細胞からなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記がんは、血液がん又は固形腫瘍である。
【0023】
詳細な説明
本発明は、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法、好ましくはインビトロ法であって、
a)GLUT1リガンドを用いてT細胞集団の細胞表面におけるグルコース輸送体1(GLUT1)発現レベルを定量化すること、
b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択すること
を含み、
GLUT1発現レベルが低い前記T細胞が改善された抗がん活性を有する、方法に関する。
【0024】
GLUT1はグルコースの細胞表面輸送体であり、より正確にはグルコース取り込み輸送体である。本明細書で使用する場合、「GLUT1」は、後生動物、特にヒトによって発現されるグルコース取り込み輸送体を指し、ウイルス、特にヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)によって受容体として使用される。一実施形態では、GLUT1は、ヒトGLUT1(受託番号NP_006507.2、配列番号1)である。一実施形態では、GLUT1は、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは配列番号1と少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%又はそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなる。一実施形態では、GLUT1は、配列番号1の断片、好ましくは少なくとも約100アミノ酸の断片、より好ましくは少なくとも約150、200、250、300、350、400又は450アミノ酸の断片を含むか、又はそれらからなる。
【0025】
一実施形態では、本発明の方法は、GLUT1の発現レベルを決定、測定又は定量化することを含む。
【0026】
本明細書で使用する用語「発現」は、GLUT1コードするslc2a1遺伝子の転写(すなわちRNAの発現)又はGLUT1の翻訳(すなわちタンパク質の発現)、又は細胞の表面におけるGLUT1の存在を代替的に指し得る。発現レベルを決定、測定又は定量化する方法は、当業者に周知であり、限定するものではないが、細胞のトランスクリプトーム(発現がslc2a1又はGLUT1の転写に関する実施形態では)又はプロテオーム(発現がGLUT1の翻訳に関する実施形態では)を決定することを含む。
【0027】
一実施形態では、GLUT1の発現レベルを「決定する」、「測定する」又は「定量化する」という用語は等価である。本明細書において「GLUT1の発現レベルを定量化する」とは、細胞表面に存在するGLUT1を定量化することを意味する。細胞表面に存在するGLUT1の発現レベルを定量化することは、細胞表面でGLUT1を検出することを含み得る。細胞表面におけるタンパク質の存在を分析する方法は、当業者に周知である。実施形態では、GLUT1の発現レベルの決定、測定又は定量化は、フローサイトメトリー又は蛍光活性化細胞選別(FACS)によって行われる。別の実施形態では、GLUT1の発現レベルの決定、測定又は定量化は、ビーズベースのアッセイ、例えば、磁気ビーズベースのアッセイによって行われる。
【0028】
一実施形態では、GLUT1の発現レベルを決定、測定又は定量化することは、細胞表面に存在するGLUT1に対するリガンドの結合を検出及び/又は定量化することに対応する。
【0029】
そのため、本発明の別の目的は、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法であって、
a0)それらの細胞表面でGLUT1を発現する、又はそれらの細胞表面でGLUT1を発現し易いT細胞集団を、GLUT1リガンドと接触させること、
a1)T細胞の細胞表面におけるGLUT1に対する前記GLUT1リガンドの結合を検出及び/又は定量化すること、
a2)T細胞の細胞表面におけるGLUT1発現レベルを定量化すること、
b)GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択すること、及び
c)任意に、GLUT1発現レベルが低い選択されたT細胞を単離すること
を含む方法である。
【0030】
用語「リガンド」は、別の分子と結合する、特異的に結合する、又はそれと複合体を形成する任意の物質を指す。典型的なリガンドは、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣化合物並びに他の有機及び無機小分子化合物などの小分子を含むが、これらに限定されない。
【0031】
好ましくは、GLUT1リガンドは、細胞表面でGLUT1と相互作用する分子であり、本発明の方法は、前記リガンドとGLUT1との間に形成される複合体を検出及び/又は定量化することを含む。
【0032】
「細胞表面でGLUT1と相互作用する」という表現は、リガンドが細胞表面に存在するGLUT1受容体を認識しやすいことを意味する。一実施形態では、細胞表面でGLUT1と相互作用するリガンドは、そのため、細胞表面において前記GLUT1と複合体を形成し、この複合体を、本明細書上記の方法によって検出してもよい。
【0033】
一実施形態では、リガンドはGLUT1に結合する。一実施形態では、リガンドはGLUT1に特異的に結合する。
【0034】
本明細書で使用する「特異的に結合する」という表現は、他のタンパク質及び生体分子の不均一な集団の存在下で、特定の標的若しくはエピトープ、又はそのドメインに関するある分子又はそのドメインの結合特異性及び親和性を指す。そのため、一実施形態では、指定されたアッセイ条件下で、本発明に記載のリガンドは、その標的に優先的に結合するが、試験試料又は対象内に存在する他の成分には有意な量で結合しない。一実施形態では、そのようなリガンドは、1×10-6M以下(例えば、少なくとも0.5×10-6、1×10-7、1×10-8、1×10-9、1×10-10以下)の平衡解離定数でその標的に対して高い親和性結合を示す。例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA及びフローサイトメトリーを含む、2つの生体分子の結合能を評価するための標準的なアッセイが当技術分野で公知である。分子の結合動態(例えば、結合親和性)はまた、Biacore分析などの当技術分野で公知の標準的なアッセイによって評価することもできる。
【0035】
「リガンド、例えば、GLUT1リガンドのGLUT1に対する結合を検出及び/又は定量化する」という表現は、GLUT1が細胞表面に存在する場合に、GLUT1とリガンドとの間に複合体が形成されることを意味する。その複合体は、リガンドが、例えば、限定されないが、抗体定常断片(Fc)若しくは蛍光化合物などの検出可能な標識又は分子に共有結合している場合に検出することができる。複合体はまた、リガンドが当業者に周知の異なる手段でタグ付けされている場合にも検出することができる。したがって、リガンドの使用は、一方では使用されるリガンドに応じて細胞表面でのGLUT1の同定及び検出を可能にし、他方では形成された複合体の定量化を可能にする。
【0036】
一実施形態では、GLUT1リガンドは標識される。
【0037】
一実施形態では、GLUT1リガンドは蛍光標識で標識される。蛍光標識の例としては、蛍光有機色素、量子ドット及び蛍光タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。これらのリガンドは、光学イメージングプローブとして有用であり得る。
【0038】
蛍光有機色素の例としては、市販のAlexa Fluor(登録商標)色素、フルオレセイン、ローダミン、又はCy(登録商標)色素(Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、及びCy7.5など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
蛍光タンパク質の例としては、BFP、CFP、GFP、EGFP、mCherry、tdTomato、mPlum、mStrawberry、J-Red、DS-Red、mOrange、mCitrine、Venus、Ypet、YFP、Emeraldなどが挙げられるが、これらに限定されない。蛍光タンパク質の別の例はフィコエリスリンである。蛍光タンパク質は、当技術分野において周知の分子クローニングの技術によってリガンドに融合され得る。あるいは、蛍光タンパク質は、当技術分野で周知の技術によってリガンドに化学的にコンジュゲートされ得る。
【0040】
一実施形態では、GLUT1リガンドはペプチドタグで標識される。
【0041】
ペプチドタグの例としては、抗体結晶化可能領域(Fc)、酵素(アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)、ヘマグルチニンタグ、ポリアルギニンタグ、ポリヒスチジンタグ、Mycタグ、Strepタグ、Sタグ、HATタグ、3×Flagタグ、カルモジュリン結合ペプチドタグ、SBPタグ、キチン結合ドメインタグ、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、蛍光ペプチドタグ、T7タグ、V5タグ、X-pressタグなどが挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドタグは、当技術分野で周知の分子クローニングの技術によってリガンドに融合されるか、又はリガンドに共有結合され得る。
【0042】
一実施形態では、本明細書に記載されるように標識されたGLUT1リガンドは、例えば、GFP、RFP、BFP、YFPなどの蛍光タンパク質及び関連タンパク質、又はFc断片などの検出タグに融合された(本明細書に記載の)GLUT1リガンドを含む融合タンパク質である。一実施形態では、GLUT1リガンドは、Fc断片又は蛍光タンパク質に融合される。一実施形態では、本明細書に記載されるように標識されたGLUT1リガンドは、フィコエリスリンに化学的にコンジュゲートされた(本明細書に記載の)GLUT1リガンドを含む。
【0043】
配列番号2のアミノ酸配列は、GFP配列の非限定的な例である。Fc断片の例としては、ウサギFc断片(配列番号3のアミノ酸配列)、マウスFc断片(配列番号4のアミノ酸配列)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
一実施形態では、結合の検出及び/又は定量化は、フローサイトメトリー、又は蛍光活性化細胞選別(FACS)によって行われる。別の実施形態では、結合の検出及び/又は定量化は、ビーズベースのアッセイ、例えば、磁気ビーズベースのアッセイによって行われる。
【0045】
本発明の態様では、リガンドは、細胞表面でGLUT1と相互作用するエンベロープウイルスの糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメインを含む。好ましくは、リガンドは可溶性であり、すなわち膜貫通ドメインを含まず、したがって膜に固定されない。
【0046】
「ウイルスのエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分に由来する」という表現は、リガンドがウイルスエンベロープの糖タンパク質の断片であり、例えば、クローニング又は遺伝子合成によって得ることができることを意味する。用語「糖タンパク質」は、エンベロープ糖タンパク質、コート糖タンパク質又は融合糖タンパク質を意味するものとして理解されるべきであり、用語「糖タンパク質」は、ポリペプチド側鎖に共有結合したオリゴ糖鎖を含むタンパク質を指す。
【0047】
エンベロープウイルスの糖タンパク質の可溶性部分に由来する受容体結合ドメインはまた、非グリコシル化ペプチド又はポリペプチドであり得、すなわち、エンベロープウイルスの糖タンパク質の可溶性部分の非グリコシル化形態に由来し得る。
【0048】
一実施形態では、前記ウイルスは、レトロウイルス、好ましくは、例えば、霊長類T細胞白血病ウイルス(PTLV)などのデルタレトロウイルスである。霊長類T細胞白血病ウイルス(PTLV)の例としては、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)及びサルT細胞白血病ウイルス(STLV)が挙げられる。
【0049】
デルタレトロウイルスは、成熟レトロウイルスビリオンに存在するエンベロープ糖タンパク質をコードする。用語「エンベロープタンパク質」(env遺伝子によってコードされる「Env」)は、プロペプチドの形態で単一のポリタンパク質として合成され、続いてフーリンペプチダーゼによってゴルジ体内で2つの成分:アミノ末端表面エンベロープタンパク質(「SUタンパク質」)及びカルボキシ末端膜貫通エンベロープタンパク質(「TMタンパク質」)へと切断されるタンパク質を指す。Envタンパク質はグリコシル化される。SUタンパク質は、宿主受容体との結合に関与している。これは、宿主細胞膜受容体と相互作用しやすい受容体結合ドメイン(RBD)と、TMドメインとの相互作用のドメインとを含む。TMタンパク質は、脂質二重層の内側に位置しており、SUタンパク質をウイルス粒子の表面に固定する。TMタンパク質は、宿主細胞との膜融合反応を媒介する。
【0050】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0051】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルスの全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなる。
【0052】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルスの表面エンベロープタンパク質(SU)の断片である。
【0053】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0054】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなり、好ましくは、配列番号5、配列番号32のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0055】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片であり、好ましくは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号33、配列番号34のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0056】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0057】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなり、好ましくは、配列番号13、配列番号35のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0058】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片であり、好ましくは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号36又は配列番号37のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0059】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス3型(HTLV-3)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0060】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス3型(HTLV-3)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか、又はそれらからなり、好ましくは、配列番号17、配列番号38のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0061】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス3型(HTLV-3)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片であり、好ましくは、配列番号18、配列番号39のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらの配列を有する。
【0062】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス4型(HTLV-4)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0063】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス4型(HTLV-4)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなり、好ましくは、配列番号19、配列番号40のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0064】
実施形態では、受容体結合ドメインは、ヒトT細胞白血病ウイルス4型(HTLV-4)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片であり、好ましくは、配列番号20若しくは配列番号21、配列番号41、配列番号42のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0065】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0066】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなり、好ましくは、配列番号22、配列番号43のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0067】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片であり、好ましくは、配列番号23、配列番号44のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0068】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス2型(STLV-2)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0069】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス2型(STLV-2)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなり、好ましくは、配列番号24、配列番号45のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0070】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス2型(STLV-2)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片であり、好ましくは、配列番号25、配列番号46のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0071】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス3型(STLV-3)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0072】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス3型(STLV-3)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなり、好ましくは、配列番号26、配列番号47のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0073】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス3型(STLV-3)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片であり、好ましくは、配列番号27、配列番号48のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0074】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス5型(STLV-5)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか、又はそれに由来する。
【0075】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス5型(STLV-5)の全表面エンベロープタンパク質(SU)を含むか又はそれからなり、好ましくは、配列番号28、配列番号49のアミノ酸配列、又はそれらの断片若しくは変異体を含むか又はそれらからなる配列を有する。
【0076】
実施形態では、受容体結合ドメインは、サルT細胞白血病ウイルス3型(STLV-3)の表面エンベロープタンパク質(SU)の断片である。
【0077】
好ましくは、受容体結合ドメインは、T細胞白血病ウイルス2型(HTLV-2)のエンベロープ糖タンパク質の可溶性部分から単離されるか又はそれに由来し、本明細書ではHTLV2.RBD又はH2.RBDと呼ばれる配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる配列を有する。
【0078】
GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、全RBD又はその断片若しくは変異体からなり得る。
【0079】
参照配列の「断片」とは、本明細書において、参照配列の連続するアミノ酸の鎖によって構成され、そのサイズが参照配列のサイズよりも小さい配列を意味する。本発明の文脈において、断片は、例えば6~200、6~185、6~175、6~150、6~125、6~100、6~75、6~50、6~25、6~15、6~10アミノ酸のサイズ、又は6~185、10~185、25~185、50~185、75~185、100~185、125~185、150~185、175~185アミノ酸のサイズを有する。
【0080】
本明細書において用語「変異体」は、「同族体」又は「誘導体」と同じ意味を有する。「変異体」は、参照配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一の配列を含むと定義される。
【0081】
本明細書において「(例えば)参照配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列」とは、本明細書において参照配列と同一の配列を意味するが、この配列は、参照配列の100アミノ酸の各部分当たり最大20個の変異(置換、欠失及び/又は挿入)を含み得る。したがって、100アミノ酸の参照配列について、参照配列と比較して80アミノ酸の断片及び20個の置換を含む100アミノ酸の配列は、参照配列と80%の配列同一性を有する配列の2つの例である。
【0082】
同一性のパーセンテージは、一般的に、配列解析ソフトウェア(例えば、遺伝子コンピュータグループ(Genetics Computer Group)の配列解析ソフトウェアパッケージ、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、1710 University Avenue,Madison,Wis.53705)を使用して決定される。比較されるアミノ酸配列を、最大のパーセンテージ同一性が得られるように整列させる。この目的のために、配列に人為的にギャップを追加する必要がある場合もある。アライメントは、手動又は自動で実行することができる。ヌクレオチド配列の自動アライメントアルゴリズムは、当業者に周知であり、例えば、Altschulら(1997) Nucleic Acids Res.25:3389で説明され、Blastソフトウェアなどのソフトウェアによって実施される。分離することができるアルゴリズムの1つは、例えばNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman及びWunsch (1970) J Mol Biol.48:443-53)である。最適なアライメントが達成されると、位置の総数と比較して、2つの比較される配列のアミノ酸が同一である全ての位置を記録することによって、パーセンテージ同一性が確立される。
【0083】
これらの変異体配列は、これらの改変がポリペプチドの生物活性にいかなる有意な影響も及ぼさないような位置で、1以上のアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入によって参照配列と異なってもよい。置換は、特に、保存的置換又は非天然アミノ酸若しくは擬似アミノ酸による天然アミノ酸の置換に対応し得る。
【0084】
1つの特定の実施形態では、ポリペプチドの配列は、保存的置換の存在によってのみ参照配列と異なる。保存的置換は、非荷電側鎖(アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、及びチロシンなど)を有するアミノ酸、塩基性側鎖を有するアミノ酸(リジン、アルギニン及びヒスチジンなど)、酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸など)、非極性側鎖を有するアミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファンなど)との置換などの同じクラスのアミノ酸の置換である。
【0085】
本明細書で使用する場合、参照タンパク質の「変異体」は、参照ポリペプチドと同じ生物活性を示す。特に、受容体結合ドメインの変異体は同じ受容体に結合可能であり、GLUT1リガンドの変異体はGLUT1に結合可能である。
【0086】
本発明のリガンドの等価な変異体若しくは一部、又はさらには改良された変異体若しくは一部を作製するためにポリペプチドのアミノ酸配列を変更することが望まれる場合、当業者は、典型的には、コードするDNA配列の1以上のコドンを変化させる。例えば、特定のアミノ酸は、細胞表面栄養輸送体に結合する能力を明らかに失うことなく、タンパク質構造中の他のアミノ酸によって置換され得る。そのタンパク質の生物機能活性を定義するのはタンパク質の結合能力及び性質であるため、タンパク質配列、及びもちろん、その基礎となるDNAコード配列に特定のアミノ酸配列置換を行っても、同様の特性を有するタンパク質を得ることができる。そのため、それらの生物学的有用性又は活性を明らかに失うことなく、ペプチド配列又は前記ペプチドをコードする対応するDNA配列に様々な変化がなされ得ることが企図される。
【0087】
好ましい実施形態では、変異体ポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸の置換、欠失又は付加によって参照配列とは異なる。
【0088】
一実施形態では、受容体結合ドメインを抗体定常断片(例えば、ウサギ、マウス、ヒト、サル又は他の哺乳動物のFc断片など)に融合し、及び/又は化学修飾して、蛍光色素、若しくは蛍光化合物(例えば、シアニン色素、Alexa色素、Quantum色素など)を付加することができる。
【0089】
一実施形態では、GLUT1リガンドは、例えばFc断片又はGFPなどの検出タグ又は標識に融合された受容体結合ドメイン、又は前記受容体結合ドメインの断片若しくは変異体を含む。GFPタンパク質の例としては、配列番号2のアミノ酸配列が挙げられるが、これに限定されない。Fc断片の例としては、ウサギFc断片(例えば、配列番号3のアミノ酸配列など)、マウスFc断片(例えば、配列番号4のアミノ酸配列など)、ヒトFc断片又はサルFc断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、受容体結合ドメインは、リンカーを介して検出タグ又は標識に融合される。そのようなリンカーは、立体障害を防止するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30個のアミノ酸残基を有する。リンカー配列は、天然に存在する配列又は天然に存在しない配列であり得る。リンカー配列の1つの有用な群は、重鎖抗体のヒンジ領域に由来するリンカーである。他の例は、ポリアラニンリンカー配列である。リンカー配列のさらに好ましい例は、異なる長さのGly/Serリンカー、すなわち1以上のグリシン(複数可)とそれに続く1以上のセリン(複数可)からなるリンカーである。
【0091】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、例えばGly/Serリンカー(配列番号29又は配列番号50のアミノ酸配列)を介してGFPに融合されたHTLV2.RBDである。実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、例えばGly/Serリンカー(配列番号30又は配列番号51のアミノ酸配列)を介してウサギFc断片に融合されたHTLV2.RBDである。実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、例えばGly/Serリンカー(配列番号31又は配列番号52のアミノ酸配列)を介してマウスFc断片に融合されたHTLV2.RBDである。
【0092】
実施形態では、GLUT1リガンドに含まれる受容体結合ドメインは、例えばGly/Serリンカーを介してヒトFc断片に融合されたHTLV2.RBDである。
【0093】
別の実施形態では、前記リガンドは、抗体又はその抗原結合断片である。特に、前記リガンドは、GLUT1に特異的な抗原結合断片であり、本発明の方法は、前記抗原結合断片とGLUT1との間に形成される複合体を検出及び/又は定量化することを含む。
【0094】
本明細書で使用する用語「抗原結合断片」は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって)能力を有する抗体の断片を指す。抗原結合断片は、特にインタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を含み得る。抗原結合断片の例としては、抗体のFab、Fab'、F(ab')、Fv断片、scFv抗体断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VH及びCHIドメインからなるFd断片、線状抗体、sdAbなどの単一ドメイン抗体(VL又はVHのいずれか)、ラクダ科VHHドメイン、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む2価断片などの抗体断片から形成される多重特異性抗体、及び単離されたCDR又は他のエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR及びbis-scFvに組み込むことができる。抗原結合断片はまた、フィブロネクチンIII型などのポリペプチドに基づく足場に移植することもできる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映して命名された残りの「Fc」断片を生じる。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)および1つの重鎖の最初の定常ドメイン(CH1)と共にL鎖全体からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、2価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片にほぼ対応し、なおも抗原を架橋することができる単一の大きなF(ab')断片が得られる。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に追加のいくつかの残基を有するという点でFab断片と異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab'の本明細書における呼称である。F(ab')抗体断片は、当初それらの間にヒンジシステインを有するFab'断片のペアとして生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0095】
実施形態では、前記リガンドは抗体である。特に、前記リガンドはGLUT1に特異的な抗体であり、本発明の方法は、前記抗体とGLUT1との間に形成される複合体を検出及び/又は定量化することを含む。
【0096】
GLUT1に特異的な抗体は、当技術分野において周知である。好ましくは、該抗体は、GLUT1に結合するための透過処理を必要としない。GLUT1に特異的な抗体の非限定的な例としては、例えば、参照ab209449の下でAbcamから入手可能な組換え抗グルコース輸送体GLUT1抗体クローン# EPR3915、又は参照MAB1418の下でR&D Systemsから入手可能なモノクローナルマウスIgG2Bクローン# 202915が挙げられる。
【0097】
T細胞の細胞表面におけるGLUT1レベルの発現レベルを決定、測定又は定量化することに加えて、本発明の方法は、GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択する工程をさらに含む。
【0098】
用語「陽性」、「陰性」、「低」及び「高」は、細胞表面マーカーの発現レベルを指す場合、当技術分野において周知である。
【0099】
用語「発現」、「陽性」、又は「+」及び「発現しない」、「陰性」、又は「-」は、当技術分野において周知であり、目的の細胞マーカーの発現レベルを指し、「+」に対応する細胞マーカーの発現レベルは、高い又は中間又は低く(すなわち、該細胞マーカーは、細胞表面で発現しているか又は細胞表面に存在しており)、「-」に対応する細胞マーカーの発現レベルは、ゼロである(すなわち、該細胞マーカーは、細胞表面で発現していないか、又は細胞表面に存在しない)。
【0100】
用語「低」又は「lo」又は「lo/-」は、当技術分野において周知であり、細胞マーカーの発現レベルは、全体として分析される細胞の全集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較して低いという点における目的の細胞マーカーの発現レベルを指す。より詳しくは、用語「lo」は、1以上の他の別々の細胞集団よりも低いレベルで細胞マーカーを発現する別々の細胞集団を指す。
【0101】
用語「高い」又は「hi」又は「明るい」は、当技術分野において周知であり、細胞マーカーの発現レベルが、全体として分析される細胞の全集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較して高いという点における目的の細胞マーカーの発現レベルを指す。より詳しくは、用語「hi」は、1以上の他の別々の細胞集団よりも高いレベルで細胞マーカーを発現する別々の細胞集団を指す。
【0102】
非限定的な例として、染色強度の上位2、3、4、5、10又は15%の細胞は「hi」と命名され、残りの細胞は、「中間」として分類される集団の上位半分に分類される。また、非限定的な例として、「陽性」(又は「+」)細胞のうち、蛍光強度の50%を下回る細胞は、「lo」細胞と指定される。
【0103】
いくつかの実施形態では、GLUT1の発現レベルの決定、測定又は定量化することは、フローサイトメトリー又は蛍光活性化細胞選別(FACS)によって行われる。
【0104】
いくつかの実施形態では、GLUT1の発現レベルを決定、測定又は定量化することは、好ましくはFACSによってGLUT1を発現する細胞集団からの細胞のパーセンテージ又は分画を決定することを含む(すなわち、GLUT1については細胞「+」)。
【0105】
GLUT1の発現レベルは、GLUT1に特異的な蛍光リガンドで染色された細胞集団由来の細胞の蛍光強度(FI)を、同じ非染色細胞集団由来の細胞のFIと比較するか、又は特異性は無関係であるが、アイソタイプは同じで、蛍光プローブも同じで、同一種に由来する(アイソタイプ対照と称する)蛍光抗体で染色された細胞集団由来の細胞のFI、又は特異性は無関係であるが、蛍光プローブは同じである蛍光リガンド(対照リガンドと称する)、例えば、集団の細胞表面に存在しない受容体に特異的なリガンドで染色された細胞集団由来の細胞の蛍光強度(FI)と比較することによって決定される。GLUT1に特異的な蛍光抗体で染色され、染色されていない細胞と同等のFI又はより低いFIを示す細胞、又はアイソタイプ対照若しくは対照リガンドで染色された細胞は、このマーカーを発現していないと見なされ、「-」又は「陰性」と指定される。アイソタイプ対照で染色された細胞よりも優れたFI値を示し、GLUT1特異的な蛍光抗体で染色された細胞は、GLUT1を発現していると見なされ、「+」又は「陽性」と指定される。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、より低いレベルでGLUT1を発現する細胞集団からの細胞のパーセンテージ又は割合を決定することを含む。好ましい実施形態では、より低いレベルでGLUT1を発現する細胞集団からの細胞のパーセンテージ又は分画を決定することは、フローサイトメトリー(FACS)によって行われる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、T細胞の細胞表面におけるGLUT1レベルの発現レベルを定量化することと同時に又は後に、GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択することを含む。いくつかの実施形態では、GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択することは、フローサイトメトリー(FACS)によって行われる。
【0108】
実施形態では、GLUT1発現レベルが低い、選択されたT細胞又はT細胞集団は、全GLUT1+T細胞集団の中で最も低いGLUT1発現レベルの最大90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、又は5%の分画に対応する。
【0109】
別の実施形態では、GLUT1発現レベルが低いT細胞又はT細胞亜集団(選択される又は選択されるべきであるT細胞亜集団)は、全GLUT1+T細胞集団の中で最も低いGLUT1発現レベルの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%又は5%の分画に対応する。
【0110】
一実施形態では、GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択することがFACSによって行われる場合、GLUT1発現レベルが低いT細胞(選択される又は選択されるべきである)は、全GLUT1+細胞集団内で15%の最も低いGLUT1染色を有する細胞であると同定される。
【0111】
好ましくは、GLUT1発現レベルが低いT細胞又はT細胞集団は、全T細胞集団、又はGLUT1発現が高いT細胞と比較して改善された抗がん活性を有する。
【0112】
特定の実施形態によれば、全集団におけるT細胞の細胞表面で測定されたGLUT1レベルは、「分位数」と呼ばれるカットオフ値によって等サイズの群に分割され、各群は、全集団におけるT細胞の決定されたパーセンテージに対応する。分位数の例としては、限定されないが、中央値(GLUT1レベルに基づいて2つの群を定義し、各々が全集団中のT細胞の50%を含む)、三分位数(tercile)又は三分位数(tertile)(GLUT1レベルに基づいて3つの群を定義し、各々が全集団中のT細胞の3分の1を含む)、四分位数(GLUT1レベルに基づいて4つの群を定義し、各々が全集団中のT細胞の25%を含む)、五分位数(GLUT1レベルに基づいて5つの群を定義し、各々が全集団中のT細胞の20%を含む)及び十分位数(GLUT1レベルに基づいて10の群を定義し、各々が全集団中のT細胞の10%を含む)が挙げられる。
【0113】
「分位数」は、時にGLUT1レベルに基づいて、全集団におけるT細胞の決定されたパーセンテージに入る値よりも下又は上のカットオフGLUT1値を指す。したがって、測定されたGLUT1レベルが第1分位数より低い対象は、GLUT1レベルが最も低い対象であり、測定されたGLUT1レベルが最後の分位数より高い対象は、最も高いGLUT1レベルを有するヒト対象である。
【0114】
さらに、用語「分位数」は、前記カットオフ値によってそのように定義される群を指す場合もある。そのため、本発明に適用される用語「分位数」はまた、カットオフGLUT1値によって定義されるT細胞の群も指し得る。例えば、第1十分位数は、全集団において測定されたGLUT1レベルの最低10%に対応するT細胞の群を指し得る。したがって、第1十分位数にあるGLUT1値は、T細胞集団で測定されたGLUT1レベルの最低の10%に含まれるGLUT1値であるということになる。
【0115】
本明細書で使用する用語「分位数」は、好ましくは、前記カットオフ値によってそのように定義される群を指す。
【0116】
実施形態では、所定のGLUT1値は、全GLUT1+T細胞集団におけるGLUT1「Q1」とも呼ばれるGLUT1の第1四分位数である。
【0117】
実施形態では、GLUT1発現レベルが低いT細胞又はT細胞亜集団(選択されるか又は選択されるべきであるT細胞亜集団)は、全GLUT1+T細胞集団におけるGLUT1発現の第1四分位数に対応する。
【0118】
特定の実施形態では、GLUT1発現レベルが低いT細胞又はT細胞亜集団(選択されるか又は選択されるべきであるT細胞亜集団)は、全GLUT1+T細胞集団におけるGLUT1発現の第1の中央値、三分位数、四分位数、五分位数又は十分位数に対応する。
【0119】
一実施形態では、全集団におけるT細胞の細胞表面で測定されたGLUT1レベルは、全集団におけるT細胞の所与のパーセンテージに対応する群に分割される。上述のように、T細胞集団において測定されたGLUT1レベルをそのように分割するカットオフ値(「分位数」)を「百分位数」と呼ぶ。
【0120】
そのため、一実施形態では、所定のGLUT1値は、全T細胞集団における第1のGLUT1百分位数である。
【0121】
一実施形態では、好ましくは、GLUT1+T細胞亜集団を単離した後に、GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択することは、例えばビーズなどの磁性粒子を用いて行われる。例えば、GLUT1発現レベルが低いT細胞を選択することは、細胞上に存在するGLUT1に対するリガンドを用いた陰性の磁気免疫接着によって行われ、GLUT1発現レベルが低いT細胞は「選択されない」細胞である。
【0122】
陽性選択又は陰性選択による所望の細胞集団の単離のために、特に、陽性選択によってGLUT1発現が高いT細胞を枯渇させるため、又は陰性選択によってGLUT1発現が低い未結合のT細胞を回収するために、細胞及び表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。
【0123】
特定の実施形態では、ビーズと細胞が混合される体積を有意に増加させ(すなわち、細胞の濃度を低下させ)、細胞とビーズの接触を減少させることが望ましい場合がある。低い細胞濃度の使用は、GLUT1を弱く発現するT細胞、又は細胞表面で低レベルのGLUT1を発現するT細胞の捕捉効率を低下させ得る。
【0124】
一実施形態では、発現レベルは正規化され、すなわち発現レベルは、GLUT1発現と別の遺伝子又はタンパク質発現との間の比に対応する。例えば、正規化に使用される他の遺伝子又はタンパク質は、別の栄養輸送体、CD45、CD2、CD3、CD4、CD8などの表現型マーカー、又はキメラ抗原受容体若しくはTCRなどの操作された受容体あり得る。
【0125】
本発明において、2つの数値、特に2つの発現レベルは、第1の数値が、第2の数値よりも高い(例えば、第1の数値が第2の数値よりも約20%高い、好ましくは第2の数値よりも約30、40、50、60、70、80、90%又はそれ以上高いなど)、又は第2の数値よりも低い(例えば、第1の数値が第2の数値よりも約20%低い、好ましくは第2の数値よりも約30、40、50、60、70、80、90%又はそれ以上低いなど)場合に、異なるとみなされる。
【0126】
本発明の細胞はT細胞である。それは、哺乳動物T細胞、好ましくはヒトT細胞、家畜(例えば、ウシ、ブタ、又はウマ)のT細胞、又はペット(例えば、ネコ又はイヌ)のT細胞であり得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、T細胞は、従来の細胞傷害性T細胞又は従来のヘルパーT細胞である。
【0128】
T細胞はリンパ球の一種である。T細胞は、骨髄由来の前駆細胞として発生し、胸腺に移動し、そこでいくつかの別々の種類のT細胞に分化する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の低レベルのGLUT1を発現するT細胞の亜集団を選択する前に、細胞を対象から得る。T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多くの源から得ることができる。特定の実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離、赤血球溶解及び単球枯渇に続くPERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離、向流遠心エルトリエーション、白血球アフェレーシス、及びその後の細胞表面マーカーベースの磁気単離又はフローサイトメトリー単離などの当業者に公知の任意の数の技術を使用して対象から収集した血液単位から得ることができる。いくつかの実施形態では、個体の循環血液からの細胞はアフェレーシスによって得られる。アフェレーシス生成物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含む。いくつかの実施形態では、個体の循環血液からの細胞は、白血球アフェレーシスによって得られる。
【0130】
いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシスによって収集した細胞を洗浄して、血漿分画を除去し、後続の処理工程のために細胞を適切な緩衝液又は培地に入れてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、カルシウムを欠いており、マグネシウムを欠いていてもよいし、又は全てではないにしても多くの二価カチオンを欠いていてもよい。洗浄後、細胞は、例えばCa2+を含まないPBS、Mg2+を含まないPBS、PlasmaLyte A、又は緩衝剤を含む若しくは含まない他の生理食塩水などの様々な生体適合性緩衝液のいずれかに再浮遊させてもよい。あるいは、白血球アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培地に直接再浮遊させてもよい。
【0131】
別の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離によって、又は向流遠心エルトリエーションによって、末梢血リンパ球から単離される。T細胞の特定の亜集団は、陽性又は陰性選択技術によってさらに単離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、T細胞は、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tなどの抗CD3/抗CD28コンジュゲートビーズとのインキュベーションによって単離される。T細胞を抗CD3/抗CD28ビーズに結合させる時間を単純に短縮又は延長することによって、及び/又はビーズのT細胞に対する比率を増加又は減少させることによって、T細胞の亜集団を、培養開始時又はプロセス中の他の時点で優先的に選択することができる。さらに、ビーズ又は他の表面上の抗CD3及び/又は抗CD28抗体の比率を増加又は減少させることにより、T細胞の亜集団を、培養開始時又は他の所望の時点で優先的に選択することができる。当業者は、本発明の文脈において複数ラウンドの選択も使用することができることを認識するであろう。
【0132】
いくつかの実施形態では、選択手順を実行し、活性化及び増殖プロセスにおいて「選択されない」細胞を使用することが望ましい場合がある。「選択されない」細胞に、さらなる選択ラウンドを行うこともできる。陰性選択によるT細胞集団の濃化は、陰性選択細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって達成することができる。1つの方法は、陰性磁気免疫接着による、又は陰性選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用するフローサイトメトリーによる細胞の選別及び/又は選択である。例えば、陰性選択によってCD4細胞を濃化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR及びCD8に対する抗体を含む。
【0133】
陽性又は陰性選択による所望の細胞集団の単離のために、細胞及び表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。特定の実施形態では、細胞とビーズが確実に最大限に接触するように、ビーズと細胞を混合する体積を有意に減少させる(すなわち、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。さらに、高い細胞濃度を使用すると、目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞、又は多数の腫瘍細胞が存在する試料(すなわち、白血病血液、腫瘍組織など)からの細胞をより効率的に捕捉することが可能になる。
【0134】
いくつかの実施形態では、T細胞は、従来のCD4T細胞、従来のCD8T細胞、γδ T細胞、及びダブルネガティブ(DN)T細胞からなる群から選択される。
【0135】
特定の実施形態では、T細胞は、例えば、ナイーブCD4T細胞、ヘルパーCD4T細胞、セントラルメモリーCD4T細胞、エフェクターメモリーCD4T細胞、又はエフェクターCD4T細胞などの従来のCD4T細胞である。
【0136】
いくつかの実施形態では、T細胞は、例えば、ナイーブCD8T細胞、細胞傷害性CD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、エフェクターメモリーCD8T細胞、又はエフェクターCD8T細胞などの従来のCD8T細胞である。
【0137】
いくつかの実施形態では、T細胞はDN T細胞である。
【0138】
いくつかの実施形態では、T細胞はγδ T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はTEGγδ(定義されたガンマデルタTCRを発現するように操作されたT細胞)である。
【0139】
いくつかの実施形態では、T細胞は、定義されたキメラ抗原受容体(CAR)を細胞表面で発現するように操作されたT細胞である。
【0140】
本明細書で使用する用語「キメラ抗原受容体」(CAR)又は「キメラ受容体」(CR)は、1つのポリペプチド又はポリペプチドのセット、典型的には、最も単純な実施形態では2つを指し、免疫細胞内に存在する場合には、標的リガンドに対する特異性を細胞に提供し、細胞内シグナル生成をもたらす。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、ポリペプチドのセットを含むキメラ融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在時に、ポリペプチドを互いに結合させることができる、例えば、リガンド結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに結合させることができる二量体化スイッチを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、「キメラ抗原受容体」(CAR)は、
(a)決定された特異性を有する細胞外結合ドメイン、
(b)任意に細胞外ヒンジドメイン、
(c)膜貫通ドメイン、及び
(d)T細胞一次シグナル伝達ドメイン及び任意にT細胞共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む。
【0142】
組換え複合膜受容体として、CARは、抗体由来の細胞外ドメインによって標的がん細胞上の表面抗原を認識し、T細胞受容体(TCR)由来の細胞内シグナル伝達ドメインによって操作されたT細胞を活性化する。腫瘍抗原との相互作用後に、T細胞は、CD28共刺激ドメイン、又は4-1BB(CD137)、OX40(CD135)、及びICOSなどのTNF受容体ファミリーの共刺激ドメインを個々に又は組み合わせて含み得るCAR上の異なるシグナル伝達部分の組み合わせを介して活性化される。
【0143】
いくつかの実施形態では、T細胞は、定義されたT細胞受容体(TCR)を細胞表面で発現するように操作されたT細胞である。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって選択される改善された抗がん活性を有するT細胞は、操作されたT細胞である。
【0145】
実施形態では、初期T細胞集団は、操作されたT細胞集団であり、本発明による改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法は、前記の既に操作されたT細胞において実施される。この実施形態では、T細胞は、最初に操作され、続いて、本発明による改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法に供される。
【0146】
別の実施形態では、本発明による改善された抗がん活性を有するT細胞を選択する方法は、最初に、操作されていないT細胞集団において実施され、選択されたT細胞はその後に操作される。
【0147】
いくつかの実施形態では、T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0148】
いくつかの実施形態では、T細胞は、エフェクターT細胞である。特定の実施形態では、エフェクターT細胞はCD4エフェクターT細胞である。CD4エフェクターT細胞の例としては、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、及びCD4T濾胞ヘルパー(Tfh)細胞が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、エフェクターT細胞は、CD8TエフェクターT細胞である。一実施形態では、T細胞はエフェクターγδ T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はエフェクターDN T細胞である。
【0149】
発明者らは、驚くべきことに、担がんNSGマウスに対するGLUT1lowT細胞の養子移入が、GLUT1highT細胞の養子移入と比較して腫瘍拒絶反応を実質的に改善することを示した。
【0150】
さらに本発明者らは、腫瘍負荷が低いことは、養子移入後43日目にGLUT1highT細胞群よりも、GLUT1lowT細胞群におけるT細胞のパーセンテージが高いことに関連することを示した。
【0151】
したがって、本発明者らは、驚くべきことに、担がんマウスに養子移入されたGLUT1lowT細胞集団が、GLUT1highT細胞集団又は全T細胞集団よりも腫瘍負荷をより良好に減少させることができることを示した。このように、低いGLUT1発現レベルに基づいて選択されたT細胞は、改善された抗がん活性及びエフェクター機能を示した。
【0152】
したがって、本発明の目的は、がんの処置に使用するための、改善された抗がん活性を有するT細胞集団であり、前記T細胞は本発明の選択方法によって選択される。
【0153】
本明細書で使用する用語「処置する」又は「処置」又は「軽減」は、標的となる病理学的状態又は障害を遅らせる(弱める)ことを目的とする、予防的(prophylactic)又は防止的(preventative)措置を除く治療的処置を指す。処置が必要な人は、すでに障害を有する人及び障害を有することが疑われる人を含む。対象は、本発明による細胞、細胞集団、組成物、医薬組成物又は医薬の治療量を投与された後に、特定の疾患又は状態に関連する症状の1以上の観察可能及び/若しくは測定可能な低下又は非存在、罹患率及び死亡率の低下、並びに/又はクオリティオブライフの問題の改善を示す場合に、標的となる病的状態又は障害について良好に「処置」される。疾患の処置及び改善の成功を評価するための上記のパラメータは、医師が使いやすい日常的な手順によって容易に測定可能である。
【0154】
本発明の別の態様は、改善された抗がん活性を有するT細胞を選択するためのGLUT1リガンドの使用である。
【0155】
前記GLUT1リガンドは、本明細書に記載の通りであることが好ましい。
【0156】
いくつかの実施形態では、T細胞は、例えば本明細書に記載されるように、それらのGLUT1発現に基づいて選択される。好ましい実施形態では、選択されたT細胞はGLUT1lowT細胞である。
【0157】
さらなる態様は、T細胞の抗がん治療有効性のバイオマーカーとしてのGLUT1の使用である。
【0158】
本明細書で使用する場合、それを必要とする対象における病理学的疾患、状態又は障害に対する化合物又は医薬の「治療有効性」は、例えば、化合物又は医薬の治療量を投与された後に、対象が特定の疾患、状態若しくは障害に関連する症状の1以上において観察可能及び/若しくは測定可能な低下又は非存在、罹患率及び死亡率の低下、並びに/又はクオリティオブライフの問題の改善を示す場合に明らかになり得る。疾患の処置及び改善の成功を評価するための上記のパラメータは、医師が使いやすい日常的な手順によって容易に測定可能である。
【0159】
特に、疾患ががんである場合、化合物又は医薬の「抗がん治療有効性」又は「抗がん活性」は、例えば、前記化合物又は医薬が、腫瘍若しくは転移のサイズを縮小する、又は腫瘍の成長若しくは転移の発生若しくは拡大を防止する能力に対応し得る。
【0160】
本明細書において、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、
-本発明による選択方法により改善された抗がん活性を有するT細胞を選択すること、及び
-改善された抗がん活性を有する前記T細胞の治療量を対象に投与すること
を含む方法も開示される。
【0161】
いくつかの実施形態では、T細胞は、それらのGLUT1発現に基づいて選択される。好ましくは、選択されたT細胞はGLUT1lowT細胞である。
【0162】
本明細書で使用する用語「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳動物を指す。本明細書で用語「哺乳動物」は、ヒト、家畜及び農場動物、並びに動物園、競技用、又はペットの動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギを含む任意の哺乳動物を指す。好ましくは、哺乳動物は霊長類であり、より好ましくはヒトである。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、医療を受けることを待っている、又は医療を受けている、又は医療処置の対象であった/である/の予定の対象、又は疾患の発症についてモニターされている対象であり得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、T細胞は自家細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は異種細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は同種異系細胞である。
【0164】
さらなる態様は、がんを処置するための医薬を製造するための本発明のT細胞又はT細胞集団の使用である。
【0165】
別の態様は、がんの処置に使用するための本発明のT細胞又はT細胞集団を含む組成物、医薬組成物、又は医薬である。
【0166】
本明細書で使用する用語「がん」は、当技術分野においてその一般的な意味を有し、特に、異常細胞の制御されない分裂によって引き起こされる疾患を指す。用語「がん」は、固形腫瘍及び血液がんを包含し、原発性がん及び転移性がんの両方を包含する。
【0167】
がんの例としては、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、消化管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮のがん細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
一実施形態では、前記がんは、例えば固形腫瘍などの腫瘍である。
【0169】
別の実施形態では、前記がんは血液がんである。別の態様では、前記がんは血液悪性腫瘍である。血液がんの例としては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)及び血液がん、例えば急性又は慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
がんの例としては、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、腺様嚢胞癌、副腎皮質癌、AIDS関連がん、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、B細胞白血病、リンパ腫又は他のB細胞悪性腫瘍、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系がん、子宮頸がん、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、胚芽腫、子宮内膜がん、上衣芽腫、上衣腫、食道がん、感覚神経芽細胞腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、骨線維性組織球腫及び骨肉腫、胆嚢がん、胃(gastric)(胃(stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、軟部組織肉腫、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、口唇及び口腔がん、肝臓がん(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺がん、リンパ腫、マクログロブリン血症、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、NUT遺伝子が関与する潜在性原発性正中線癌を伴う転移性扁平上皮頸部がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、骨髄性白血病、慢性(CML)骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口がん、口腔がん、中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔がん及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、中間分化型松果体実質腫瘍、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫及び乳がん、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、腎盂及び尿管、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、セザリー症候群、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮がん、胃(stomach)(胃(gastric))がん、テント上原始神経外胚葉腫瘍、T細胞リンパ腫、皮膚がん、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺がん、腎盂及び尿管の移行上皮がん、栄養膜腫瘍、尿管及び腎盂がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
いくつかの態様において、がんはB細胞悪性腫瘍である。B細胞悪性腫瘍の例としては、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL/CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、節外性(例えば、MALT)リンパ腫、結節性(例えば、モノサイトイドB細胞)リンパ腫、脾リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病/リンパ腫、バーキットリンパ腫及びリンパ芽球性リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
「がん」は、がん/腫瘍抗原などの表面抗原、又はがん/腫瘍マーカーに関連し得る。
【0173】
本明細書で使用する用語「がん抗原」は、「腫瘍抗原」と同等であり、がん細胞によって差次的に発現され、したがってがん細胞を標的とするために利用することができる抗原を指す。がん抗原は、明らかに腫瘍特異的な免疫応答を潜在的に刺激できる抗原である。これらの抗原のいくつかは、必ずしも発現されるわけではないが、正常細胞によってコードされている。これらの抗原は、正常細胞において通常は沈黙している(すなわち発現していない)抗原、分化の特定の段階でのみ発現する抗原、並びに胚及び胎児抗原などの一過的に発現する抗原として特徴付けることができる。他のがん抗原は、がん遺伝子(例えば、活性化rasがん遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、突然変異体p53)、及び内部欠失又は染色体転座から生じる融合タンパク質などの変異細胞遺伝子によってコードされる。さらに他のがん抗原は、RNA及びDNA腫瘍ウイルスが有する遺伝子などのウイルス遺伝子によってコードされ得る。多くの腫瘍抗原:MAGE1、2、&3(免疫によって定義される)、MART-l/Melan-A、gp100、がん胎児性抗原(CEA)、HER2、ムチン(すなわち、MUC-1)、前立腺特異抗原(PSA)、及び前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)は、複数の固形腫瘍に関して定義されている。加えて、B型肝炎(HBV)、エプスタインバー(EBV)、及びヒト乳頭腫(HPV)によってコードされるタンパク質などのウイルスタンパク質は、それぞれ肝細胞癌、リンパ腫、及び子宮頸がんの発症に重要であることが示されている。
【0174】
他のがん抗原には、707-AP(707アラニンプロリン)、AFP(アルファ(a)-フェトプロテイン)、ART-4(T4細胞によって認識される腺癌抗原)、BAGE(B抗原;b-カテニン/m、b-カテニン/変異)、BCMA(B細胞成熟抗原)、Bcr-abl(ブレークポイントクラスター領域-アベルソン)、CAIX(炭酸脱水酵素IX)、CD19(CD分類19)、CD20(CD分類20)、CD22(CD分類22)、CD30(CD分類30)、CD33(CD分類33)、CD44v7/8(CD分類44、エクソン7/8)、CAMEL(黒色腫に対するCTL認識抗原)、CAP-1(癌胎児性抗原ペプチド-1)、CASP-8(カスパーゼ-8)、CDC27m(細胞分裂周期27変異型)、CDK4/m(サイクリン依存性キナーゼ4変異型)、CEA(がん胎児性抗原)、CT(がん/精巣(抗原))、Cyp-B(サイクロフィリンB)、DAM(分化抗原黒色腫)、EGFR(上皮成長因子受容体)、EGFRvIII(上皮成長因子受容体、バリアントIII)、EGP-2(上皮性糖タンパク質2)、EGP-40(上皮性糖タンパク質40)、Erbb2、3、4(赤芽球性白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ-2、-3、4)、ELF2M(伸長因子2変異型)、ETV6-AML1(Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS)、FBP(葉酸結合タンパク質)、fAchR(胎児アセチルコリン受容体)、G250(糖タンパク質250)、GAGE(G抗原)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、GD3(ジシアロガングリオシド3)、GnT-V(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、Gp100(糖タンパク質100kD)、HAGE(ヘリコース抗原(helicose antigen))、HER-2/neu(ヒト表皮受容体-2/神経;EGFR2としても知られる)、HLA-A(ヒト白血球抗原-A)HPV(ヒトパピローマウイルス)、HSP70-2M(ヒートショックタンパク質70-2変異型)、HST-2(ヒト印環腫瘍-2)、hTERT又はhTRT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、iCE(腸管カルボキシルエステラーゼ)、IL-13R-a2(インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2)、KIAA0205、KDR(キナーゼインサートドメイン受容体)、κ軽鎖、LAGE(L抗原)、LDLR/FUT(低密度脂質受容体/GDP-L-フコース:b-D-ガラクトシダーゼ2-a-Lフコシルトランスフェラーゼ)、LeY(ルイス-Y抗体)、L1 CAM(L1細胞接着分子)、MAGE(黒色腫抗原)、MAGE-A1(黒色腫関連抗原1)、メソテリン、マウスCMV感染細胞、MART-1/メラン-A(T細胞-Iによって認識される黒色腫抗原/黒色腫抗原A)、MC1 R(メラノコルチン1受容体)、yosin/m(ミオシン変異型)、MUC1(ムチン1)、MUM-1、-2、-3(黒色腫遍在性変異-1、-2、-3)、NA88-A(患者M88のNA cDNAクローン)、NKG2D(ナチュラルキラーグループ2、メンバーD)リガンド、NY-BR-1(ニューヨーク乳房分化抗原1)、NY-ESO-1(ニューヨーク食道扁平上皮癌-1)、腫瘍胎児抗原(h5T4)、P15(タンパク質15)、p190マイナーbcr-abl(190KD bcr-ablのタンパク質)、Pml/RARa(前骨髄球性白血病/レチノイン酸受容体a)、PRAME(黒色腫の優先的に発現する抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSMA(前立腺特異膜抗原)、RAGE(腎抗原)、RU1又はRU2(腎遍在1又は2)、SAGE(肉腫抗原)、SART-1又はSART-3(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1又は3)、滑膜肉腫X-1、-2、-3、-4(SSX-1、-2、-3、-4)、TAA(腫瘍関連抗原)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TEL/AML1(転座Etsファミリー白血病/急性骨髄性白血病1)、TPI/m(トリオースリン酸イソメラーゼ変異型)、TRP-1(チロシナーゼ関連タンパク質1、又はgp75)、TRP-2(チロシナーゼ関連タンパク質2)、TRP-2/INT2(TRP-2/イントロン2)、VEGF-R2(血管内皮増殖因子受容体2)、又はWT1(ウィルムス腫瘍遺伝子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
本発明のT細胞集団は、単独で、又は医薬組成物として投与され得る。好ましくは、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0176】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。前記賦形剤は、動物、好ましくはヒトに投与された場合に、有害なアレルギー又は他の望ましくない反応を生じない。ヒトでの投与の場合、調製物は、FDA当局及びEMAなどの規制当局が要求する無菌性、発熱性、並びに一般的な安全性及び純度の基準を満たさなければならない。
【0177】
これらの組成物において使用され得る薬学的に許容される賦形剤には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂肪が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
一実施形態では、本発明による医薬組成物は、対象に注射することが可能な製剤用の薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは、場合によっては、滅菌水又は生理食塩水の添加時に、注射可能な溶液の構成を可能にする特に等張性の滅菌生理食塩水(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど又はそのような塩の混合物)、又は乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物であり得る。
【0179】
本発明のT細胞集団は、注射、摂取、輸血、注入又は移植を含む任意の適切な様式で対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、T細胞集団は、非経口投与によって対象に投与され得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のT細胞集団は、対象に皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、胸骨内、静脈内(i.v.)注射によって、注入技術によって、又は腹腔内に投与され得る。特定の実施形態では、本発明のT細胞集団は、皮内又は皮下注射によって対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本発明のT細胞集団は、i.v.注射により投与され得る。いくつかの実施形態では、T細胞集団は、リンパ節又は腫瘍部位に直接注射され得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、対象は、自己細胞と共に投与される(又は投与されるべきである)。いくつかの実施形態では、対象は、異種細胞と共に投与される(又は投与されるべきである)。いくつかの実施形態では、対象は、同種異系細胞と共に投与される(又は投与されるべきである)。
【0181】
T細胞の投与の量と頻度は、対象の状態及び対象の疾患の種類と重症度などの要因によって決定されるが、適切な投薬量は臨床試験によって決定され得る。
【0182】
「有効量」又は「治療量」が示される場合、投与されるべき本発明のT細胞集団又は組成物の正確な量は、対象の年齢、体重、抗体価、及び状態の個人差を考慮して決定され得る。一般的に、本明細書に記載のT細胞を含む医薬組成物は、少なくとも1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10又は1×10細胞/kg体重又は1×10~100×10細胞/kg体重(これらの範囲内の全ての整数値を含む)の投薬量で投与され得ると述べることができる。T細胞組成物はまた、これらの投薬量のいずれか又はそれらの任意の組み合わせで複数回投与され得る。T細胞は、免疫療法において一般的に知られている注入技術を用いることによって投与することができる。特定の対象に対する最適な投薬量及び処置レジメンは、対象を疾患の徴候についてモニターし、それに応じて処置を調整することによって容易に決定することができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、ヒト)は、本発明のT細胞又は集団の初期投与を受け、1以上のその後の投与を受け、1以上のその後の投与は、前の投与後15日、例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2日未満に投与される。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明のT細胞の治療有効数が対象に投与されるか、又は投与されるべきである。
【0185】
いくつかの実施形態では、対象に投与される本発明のT細胞集団のT細胞の数は、少なくとも10、10、10、10、10、10、10又は10細胞である。
【0186】
いくつかの実施形態では、対象に投与される本発明のT細胞集団のT細胞の数は、約10~約10、約10~約10、約10~約10、又は約10~約10細胞の範囲である。
【0187】
いくつかの実施形態では、対象に投与される本発明のT細胞集団のT細胞の数は、約10~約10、約10~10、約10~10、約10~10、約10~10、約10~10、又は約10~10細胞の範囲である。いくつかの実施形態では、対象に投与される本発明のT集団のT細胞の数は、約10、約10、約10、約10、約10、約10、約10、又は約10細胞である。
【0188】
いくつかの実施形態では、対象に投与される本発明のT細胞集団のT細胞の数は、少なくとも10、10、10、10、10、10、10又は10細胞/kg体重である。
【0189】
いくつかの実施形態では、対象に投与される本発明のT細胞集団のT細胞の数は、約10~10細胞/kg体重又は10~10細胞/kg体重の範囲(これらの範囲内の全ての整数値を含む)である。
【0190】
いくつかの実施形態では、対象は、週当たり本発明のT細胞集団の2回以上の投与、例えば、対象に週当たり投与される本発明のT細胞集団の2、3、又は4回の投与を受ける。
【0191】
一実施形態では、本発明のT細胞集団は、別の治療薬の前、それと同時、又はその後に投与されるべきである。
【0192】
いくつかの実施形態では、本発明のT細胞は、例えば、化学療法剤などの薬剤による処置を含むが、これに限定されない任意の数の関連する処置様式と併せて(例えば、その前、同時又は後に)対象に投与され得る。
【0193】
化学療法剤の例としては、白金配位化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン又はオキサリプラチンなど);タキサン化合物(例えば、パクリタキセル又はドセタキセルなど);トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン又はトポテカンなど);トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド又はテニポシドなど);ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン又はビノレルビンなど);抗腫瘍ヌクレオシド誘導体(例えば、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン又はカペシタビンなど);アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード又はニトロソ尿素、シクロホスファミド、クロラムブシル、カルムスチン又はロムスチン;抗腫瘍アントラサイクリン誘導体(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン又はミトキサントロンなど);抗HER2抗体(例えば、トラスツズマブなど);エストロゲン受容体アンタゴニスト又は選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、ファスロデックス又はラロキシフェンなど);アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタン、アナストロゾール、レトラゾール又はボロゾールなど);分化剤(例えば、レチノイド、ビタミンD及びアキュテインなどのレチノイン酸代謝遮断剤[RAMBA]);DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、アザシチジンなど);キナーゼ阻害剤(例えば、フラボペリドール、メシル酸イマチニブ又はゲフィチニブなど);ファルネシル転移酵素阻害剤;及びHDAC阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
本発明のT細胞は、化学療法剤の前、後、又は同時に対象に投与され得る。
【0195】
本明細書に記載のT細胞、細胞集団、及び組成物は、本明細書に記載の処置方法において使用され得ること、本明細書に記載の薬学的に使用するためのものであり得ること、本明細書に記載の処置に使用するためのものであり得ること、及び/又は本明細書に記載の処置のための医薬の製造において使用するためのものであり得ることが理解される。
【0196】
配列表
存在する場合の予測されるシグナルペプチドを以下の表に太字で示す。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0197】
図1図1:GLUT1発現レベルに基づいて識別されるT細胞集団の作製に使用される実験系の模式図。
図2図2:プロテインL染色によるフローサイトメトリーによってモニターしたCD4又はCD8 T細胞集団のGLUT1-Lo及びGLUT1-Hiサブセットにおける7日目のCD19-CD28 CAR(A)及びCD19-4-1-BB CAR(B)構築物の形質導入有効性の評価。4つの独立した実験のうちの1つの代表的なデータを示す(n=4の独立したドナー)。
図3図3:増大の7日目にCD19-CD28 CAR又はCD19-4-1-BB CAR構築物で形質導入された細胞のCD4及びCD8発現プロファイルのフローサイトメトリーによる評価。GLUT1-Lo及びGLUT1-HiサブセットにおけるCD4 T細胞及びCD8 T細胞のパーセンテージを示す。データは、4つの独立した実験のうちの1つにおける結果の代表である。
図4図4:培養6日目におけるGLUT1-Lo及びGLUT1-HiサブセットにおけるCD4 T細胞(A)及びCD8 T細胞(B)の中のナイーブ(Tナイーブ、CD62L+/CD45RA+)、セントラルメモリー(TCM、CD62L+/CD45RA-)、エフェクターメモリー(TEM、CD62L-/CD45RA-)及びCD45RAを再発現するエフェクターメモリー(TEMRA、CD62L-/CD45RA+)のパーセンテージ。3人の独立したドナーの発現データを示す。
図5図5:CD19 GL-Nalm6白血病細胞を注射し、3日目に偽T細胞、全CAR T細胞、GLUT1-Lo CAR T細胞又はGLUT1-Hi CAR T細胞を養子移入したNSGマウスにおける生物発光イメージングによる腫瘍成長の経過観察。
図6図6:CD19 GL-Nalm6白血病細胞を注射し、3日目にCD19-CD28 CAR T細胞(A)又はCD19-4-1BB CAR T細胞(B)を養子移入したNSGマウスにおける生物発光イメージングによる腫瘍成長の経過観察。CAR T細胞は、示すように全部の又は選別したGLUT1-Lo又はGLUT1-Hi T細胞のいずれかであった。
図7図7:CD19-CAR-BB GLUT1-LoT細胞(A)又はCD19-CAR-BB GLUT1-Hi T細胞(B)を注射し、43日目にフローサイトメトリーにより測定したNSGマウスの脾臓におけるヒトCD3 CAR T細胞のパーセンテージ。
【0198】
実施例
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【0199】
白血病腫瘍担持NSGマウスにおけるGLUT1-Hi T細胞対GLUT1-Lo T細胞のそれぞれの抗がん活性を試験するために、担がんマウスに注射する前に、T細胞を異なるCAR構築物で形質導入し、GLUT1発現に基づいて選別した(以下の実施例を参照されたい)。
【0200】
実施例1:低い又は高いGLUT1発現レベルを有するT細胞サブセットの作製のための実験手順
材料と方法
健康なドナーのリンパ球
ヒト健常ドナー末梢血単核球をNIH血液バンクから得て、10%FBS中で凍結し、液体窒素の中で保存した。
【0201】
ヒトCD19 CAR T細胞の作製
CD28又は4-1BB共刺激ドメインのいずれかを共発現するCD19 CARをコードするレンチウイルスベクターを、293T細胞(Lenti-X,Takara Bio)の一過性トランスフェクションによって生成した。293T細胞に、リポフェクタミン3000(Life Technologies)を用いて、パッキング及びエンベロープベクターをコードするプラスミド(pMDLg/pRRE,pMD.2G,pRSV-Rev,p3000)、並びにEF1aプロモーターの制御下でCD19 CARをコードするプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間及び48時間後にトランスフェクト細胞からウイルス上清を採取し、上清を3,000RPMで10分間遠心分離し、細胞デブリを除去した。
【0202】
ヒトリンパ球を解凍し、1×10個/mLの濃度で培養した。それらを、IL-2(40IU/mL)の存在下で、細胞あたり1:1の比率のダイナビーズ(登録商標)ヒトT-Expander CD3/CD28(Invitrogen)で48時間、AIM-V培地中で活性化した。次いで、T細胞を、5mL AIM-V、100IU/mLのIL-2、及び10μg/mLの硫酸プロタミンを補充したレンチウイルス上清(10ml)中2×10個/mLで再浮遊させ、その後、6ウェルプレート中で、32℃で2時間、2,000×gで遠心分離した。次いで、プレートを37℃で一晩インキュベートし、3日目にこのプロセスを繰り返した。2回目の一晩インキュベーション後に、CD3/CD28マイクロビーズを除去し、T細胞を選別し(下記参照)、100IU/mLのIL-2を補充したAIM-V培地に0.3×10/mLで再浮遊させた。次いで、実験に使用する前に、細胞をさらに48~72時間培養した。作製後、T細胞(CAR形質導入した及び偽の両方)を、5%熱不活化FBS、100U/mLのペニシリン、100U/mLのストレプトマイシン、2mmol/Lのl-グルタミン、10mmol/LのHEPES、及び100IU/mLのIL-2を補充したAIM-V培地中で培養した。
【0203】
GLUT1発現に基づく細胞選別
表面GLUT1発現を、以前に記載された(Manelら,2003.Cell.115(4):449-59;Kimら,2004.Retrovirology.1:41)ようにeGFP(配列の配列番号29の融合タンパク質)に融合したHTLV受容体結合ドメイン(RBD)リガンド(配列番号15)に対する結合によってモニターした(Metafora Biosystems)。GLUT1発現に基づく細胞の選別のために、50×10個の細胞を、刺激後4日目、すなわち、CD19-CARによる2回目の形質導入の直後に、又は刺激後2日目、すなわち、CD19-CARによる形質導入の前に染色した(同様の結果、データは示さず)。陰性染色を、無染色細胞と比較して評価した。GLUT1-Lo及びGLUT1-Hiと命名した細胞を、CD19-CAR染色に関係なく陽性染色集団(一般的に全T細胞の85%超)内で区別した。陽性集団内で、GLUT1-Lo細胞及びGLUT1-Hi細胞を、それぞれ15%の最低及び最高のGLUT1染色で染色された細胞として同定した。細胞をFACS Aria(BD Biosciences)で選別し、評価前にさらに72~96時間培養した。
【0204】
フローサイトメトリー解析
細胞表面タンパク質の検出には、以下のヒトモノクローナル抗体:CD3-APC/Cy7、CD8-BV605、CD4-APC-R700、CD4-Pacific Blue、及びCD69-APC(全てBD Bioscience社製)を使用した。死細胞を、eFluor 506 fixable viability色素(Thermo Fisher Scientific)を用いて同定した。GFP発現白血病をFITCチャネルにより特定した。
【0205】
細胞表面のCAR発現を、コンジュゲートCD19-Fc-PEタンパク質による染色、又はプロテインL(ThermoFisher)による染色後にストレプトアビジン-PEとのインキュベーションのいずれかによって7日目に評価した。染色を、LSR II Fortessa Flow Cytometer(BD Biosciences)で実施するフローサイトメトリーによって評価し、FlowJoソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0206】
マウス
Bl6バックグラウンドのNOD-SCID-gc-/-(NSG)マウスは、フレデリックのNational Cancer Instituteによって提供された。このマウスをベセスダのNational Cancer Instituteの標準の病原体のない施設に収容した。動物の世話及び実験は、米国立衛生研究所(NIH)のガイドラインに従って実施した。
【0207】
細胞株
B-ALL細胞株は、GFP-ルシフェラーゼ安定形質導入Nalm6株(Pediatric Oncology Branch,NCI,NIH,Bethesda,MD)を含んだ。Nalm6を、10%熱不活化FBSを補充したRPMI培地で培養した。
【0208】
インビボ腫瘍実験
動物実験は、NCIベセスダ動物管理及び使用委員会(NCI Bethesda Animal Care and Use Committee)によって承認されたプロトコルの下で実施した。B-ALL細胞株をNSGマウスにIV注射し(1×10個)、4日後、マウスに200万個のCAR T細胞又は同数の非形質導入MOCK対照T細胞を静脈内注射した。白血病の負荷を、Xenogen IVIS Lumina system(Caliper Life Sciences)を使用して評価した。3mgのD-ルシフェリン(Caliper Life Sciences)をマウスに腹腔内注射した後、マウスを4分後に30秒の露光時間でイメージングした。発光画像を、Living Imageバージョン4.1ソフトウェア(Caliper Life Sciences)を使用して、光子/s/cm2/srとして評価した。表現型決定のための脾臓及び骨髄を採取するために、白血病細胞の増殖後にマウスから採取した。
【0209】
結果
T細胞を、GLUT1グルコース輸送体発現に基づいて選択した(図1)。
【0210】
実施例2:GLUT1-Hi CD4及びCD8 T細胞は、GLUT1-Lo CD4及びCD8 T細胞よりも高い形質導入有効性を示した。
材料と方法
CD19-CD28又はCD19-4-1BB CAR構築物を保有するT細胞を、実施例1に記載のように作製した。GLUT1-Lo細胞及びGLUT1-Hi細胞を、実施例1に記載したように、4日目に選別した。7日目に、形質導入の有効性を、実施例1に記載したように、タンパク質L染色によってモニターした表面CD19-CAR発現レベルの関数として、ゲートを設定したCD4及びCD8細胞についてフローサイトメトリーによって評価した。
【0211】
結果
CD4及びCD8 T細胞の両方のサブセットに形質導入したが、CD4細胞の形質導入はCD8細胞よりも有意に高く、どちらの場合も、GLUT1-Hiリンパ球はGLUT1-Loリンパ球よりも高い頻度で形質導入された(図2)。
【0212】
実施例3:GLUT1-Hi T細胞は偏ったCD4/CD8比を示した。
材料と方法
CD19-CD28又はCD19-4-1BB CAR構築物を保有するT細胞を、実施例1に記載したように作製した。GLUT1-Lo及びGLUT1-Hi細胞を、実施例1に記載したように、4日目に選別した。7日目に、形質導入細胞のCD4及びCD8発現プロファイルをフローサイトメトリーにより評価した。
【0213】
結果
GLUT1-Hi T細胞は、GLUT1-Lo T細胞よりも高いレベルで形質導入されたが、両方のサブセットは顕著なレベルで形質導入された。興味深いことに、GLUT1-Hiサブセット内では、およそ1:3の偏ったCD4/CD8 T細胞比であったが、この比率はGLUT1-低サブセット内では1:1に近くなった(図3)。
【0214】
実施例4:GLUT1-Hiサブセットは、GLUT1-Loサブセットと比較して減少したCD8ナイーブT細胞を含んだ。
材料と方法
CD19-CD28又はCD19-4-1BB CAR構築物を保有するT細胞を、実施例1に記載したように作製した。GLUT1-Lo及びGLUT1-Hi細胞を、実施例1に記載したように、4日目に選別した。6日目に、GLUT1-Lo及びGLUT1-Hiサブセット内のTリンパ球の表現型を、CD62L及びCD45RAマーカーで染色し、ナイーブ(CD62L+/CD45RA+)、セントラルメモリー(TCM、CD62L+/CD45RA-)、エフェクターメモリー(EM、CD62L-/CD45RA-)及びCD45RAを再発現するエフェクターメモリー(TEMRA、CD62L-/CD45RA+)を分離することにより、フローサイトメトリーによって評価した。
【0215】
結果
CD8 T細胞の表現型の差は、CD4 T細胞よりも顕著であり、GLUT1-LoサブセットではナイーブCD8 T細胞のパーセンテージが有意により高く、GLUT1-HiサブセットではエフェクターメモリーとセントラルメモリーCD8リンパ球がより高い傾向があった(図4)。
【0216】
実施例5:GLUT1発現レベルに基づいて選択されたT細胞の強力な抗白血病活性
材料と方法
NSGマウスに、1×10個のCD19+GL-Nalm6白血病細胞を注射し、3日目に、実施例1に記載したように、低い又は高いGLUT1発現に基づいて全ての又はFACS選別した2×10個のCD19-BB-CAR T細胞をマウスに養子移入した。腫瘍成長後に、実施例1に記載したように生物発光イメージングを行った。
【0217】
結果
移入されたGLUT1-Lo及びGLUT1-HiT細胞の活性を、担がんNSGマウスにおいてモニターした。ルシフェラーゼ陽性CD19+Nalm6白血病細胞を保有するNSGマウスのデータから、GLUT1-Hi CD19-BB-CAR T細胞と比較して、GLUT1-Loの養子移入時に実質的に改善された腫瘍拒絶反応が実証された(図5)。
【0218】
実施例6:GLUT1発現レベルに基づいて選択された様々な種類のT細胞の強力な抗白血病活性
材料と方法
NSGマウスに1×10個のCD19+GL-Nalm6白血病細胞を注射し、3日目に、実施例1に記載したように、低い又は高いGLUT1発現に基づいて全ての又はFACS選別した2×10個のCD19-28-CAR(図6A)又はCD19-1-4BB-CAR(図6B)T細胞をマウスに養子移入した。腫瘍成長後に、実施例1に記載したように生物発光イメージングを行った。
【0219】
結果
これらの実験を、複数のT細胞ドナーについて繰り返し、CD19-28-CARとCD19-4-1BB-CAR T細胞の両方で実験を行った。図7に示すように、最少数の養子移入されたT細胞を使用したストレスモデルでは、GLUT1-Hi T細胞を投与した全てのマウスは43日目に有意な腫瘍負荷を有し、CD19-28-CAR構築物を投与したマウスは白血病のために死亡した。全部の「標準の」CD19-28-CAR又はCD19-4-1BB CAR T細胞を投与した4匹のマウスのうち3匹は、有意な白血病負荷を有したか、又は疾患のために死亡したが、CD19-28-CAR GLUT1-Lo群の4匹のマウスのうち2匹及びCD19-4-1BB-CAR GLUT1-Lo群の6匹のマウスのうち5匹は低い腫瘍負荷を有した(図6)。
【0220】
実施例7:低いGLUT1発現レベルに基づいて選択された養子移入T細胞の存続の増加
材料と方法
NSGマウスに、1×10個のCD19+GL-Nalm6白血病細胞を注射し、3日目に、実施例1に記載したように、2×10個のFACS選別したCD4-1-1BB-CAR GLUT1-Lo又はGLUT1-HiT細胞をマウスに養子移入した。腫瘍成長後に、実施例1に記載したように生物発光イメージングを行った。43日目に、各マウスの脾臓におけるヒトCD3+ T細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって測定し、養子移入されたT細胞の存続を定量化した。
【0221】
結果
腫瘍負荷が低いことは、養子移入後43日目にGLUT1-Hi群よりもGLUT1-Lo群において養子移入されたT細胞のパーセンテージが高いことに関連した(図7)。
【0222】
結論として、担がんマウスに養子移入したGLUT1-Lo T細胞は、GLUT1-Hi T細胞及び全T細胞よりも腫瘍負荷をより良好に減少させることができる。したがって、低いGLUT1発現レベルに基づいて選択されたT細胞は、増加した抗がん活性及びエフェクター機能を示す。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
【配列表】
2024505111000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024505111000001.app
【国際調査報告】