(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】核酸合成のための再利用可能な開始剤を再生するための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
C12P 19/34 20060101AFI20240126BHJP
C12N 9/24 20060101ALN20240126BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240126BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240126BHJP
【FI】
C12P19/34
C12N9/24 ZNA
C12N9/16 B
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562633
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2021064298
(87)【国際公開番号】W WO2022140232
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523234876
【氏名又は名称】チェン,チェン-ヤオ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チェン-ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イー-ウェン
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CA21
4B064CB04
4B064CB07
4B064CB30
(57)【要約】
核酸合成および再利用可能な合成開始剤の再生のための方法であって、ポリメラーゼを使用して固定化された開始剤に連結ヌクレオチドを組み込む工程、ポリメラーゼを使用して前記連結ヌクレオチドの直後に核酸を合成する工程、核酸中の連結ヌクレオチドの基質塩基をDNAグリコシラーゼによって塩基切除して脱塩基部位を生成させる工程、前記脱塩基部位をエンドヌクレアーゼによって切断して前記核酸を前記開始剤から放出する工程、ならびに3’ホスファターゼ活性保有酵素によって前記開始剤の3’末端をその元の形態に戻すよう変換する工程を含む方法。前述の方法に基づくキットおよび再利用可能な開始剤を再生するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸合成およびそのような合成のための再利用可能な開始剤の再生のための方法であって、以下の工程を含む方法:
核酸合成のために固体支持体に接着させた開始剤を、基質塩基、基質糖および3’ヒドロキシル基を有する連結ヌクレオチドにポリメラーゼの存在下で曝露して、その結果、前記連結ヌクレオチドが前記開始剤に組み込まれるようにする工程;
前記連結ヌクレオチドを含有する前記開始剤をヌクレオチドモノマーに前記ポリメラーゼの存在下で曝露して、その結果、核酸が合成されて前記連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤に結合されるようにする工程;
前記基質塩基を有する連結ヌクレオチドを認識可能かつ切除可能である単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程;
前記基質塩基を前記単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し、その結果、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて脱塩基部位が生成されるされるようにする工程;
得られた脱塩基部位を認識可能であり、前記基質糖を切断可能な脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程;
前記脱塩基部位を前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、その結果、前記脱塩基部位において前記基質糖および前記核酸の骨格の両方が切断されて、前記核酸が前記開始剤から放出され、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドが3’リン酸基を有し、その結果、前記合成された核酸の5’末端ヌクレオチドが5’リン酸基を有するようにする工程;
3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、前記3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供し、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドの3’リン酸基が、元の3’ヒドロキシル基に戻るよう変換される工程。
【請求項2】
前記単官能性DNAグリコシラーゼが、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ、一本鎖選択的単官能性ウラシルDNAグリコシラーゼ1、メチル結合ドメイングリコシラーゼ4、チミンDNAグリコシラーゼ、mutYホモログDNAグリコシラーゼ、アルキルプリングリコシラーゼC、アルキルプリングリコシラーゼD、脱塩基部位リアーゼ活性を有さない8-オキソ-グアニングリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼIII様1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ2、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ3、およびその酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単官能性DNAグリコシラーゼがウラシル-DNAグリコシラーゼおよびアルキルアデニンDNAグリコシラーゼのうちの1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼVIII、エンドヌクレアーゼIII、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、ポリヌクレオチドキナーゼ3’-ホスファターゼ、3’-ホスホエステラーゼ、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、3’-ホスファターゼ活性を有するT4 ポリヌクレオチドキナーゼ、およびジンクフィンガーDNA 3’-ホスホエステラーゼ、からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシル、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、グアニン、5-フルオロウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-メチルグアニン、N
6-メチルアデニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン、5-ヒドロキシルシトシン、5-ヒドロキシウラシル、ジヒドロキシウラシル、エテノシトシン、エテノアデニン、チミングリコール、シトシングリコール、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、アデニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンに対合したアデニン、グアニンに対合したウラシル、アデニンに対合したウラシル、グアニンに対合したチミン、グアニンに対合したエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンに対合したアデニン、およびグアニンに対合した2-ヒドロキシルアデニンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシルまたはヒポキサンチンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記開始剤、前記合成された核酸および前記連結ヌクレオチドが、それぞれ鋳型非依存型および鋳型依存型のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリメラーゼが、ファミリーA DNAポリメラーゼ、ファミリーB DNAポリメラーゼ、ファミリーC DNAポリメラーゼ、ファミリーD DNAポリメラーゼ、ファミリーX DNAポリメラーゼ、ファミリーY DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
核酸合成およびそのような合成のための再利用可能な核酸の再生のためのキットであって、
核酸合成のためのポリメラーゼおよび連結ヌクレオチド;
単官能性DNAグリコシラーゼ;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼ:ならびに
3’ホスファターゼ活性保有酵素;
を含み、請求項1に記載の方法に従って使用されるキット。
【請求項13】
核酸合成のための再利用可能な開始剤を再生する方法であって、以下の工程を含む方法:
単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程;
固体支持体に接着させた核酸合成のための開始剤と、基質塩基および基質糖を有する連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤に連結されている合成された核酸とを提供し、前記基質塩基を有する連結ヌクレオチドが、前記単官能性DNAグリコシラーゼによって認識可能および切除可能である工程;
前記基質塩基を前記単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し、その結果、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて、脱塩基部位が生成されるようにする工程;
得られた脱塩基部位を認識可能であり、前記基質糖を切断可能な脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程;
前記脱塩基部位を前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、その結果、前記脱塩基部位において前記基質糖および前記核酸の骨格の両方が切断されて、前記合成された核酸が前記開始剤から放出され、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドが3’リン酸基を有し、その結果、前記合成された核酸の5’末端ヌクレオチドが5’リン酸基を有するようにする工程;
3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、前記3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供し、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドの3’リン酸基が、元の3’ヒドロキシル基に戻るよう変換される工程。
【請求項14】
前記単官能性DNAグリコシラーゼが、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ、一本鎖選択的単官能性ウラシルDNAグリコシラーゼ1、メチル結合ドメイングリコシラーゼ4、チミンDNAグリコシラーゼ、mutYホモログDNAグリコシラーゼ、アルキルプリングリコシラーゼC、アルキルプリングリコシラーゼD、脱塩基部位リアーゼ活性を有さない8-オキソ-グアニングリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼIII様1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ2、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ3、およびその酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記単官能性DNAグリコシラーゼがウラシル-DNAグリコシラーゼおよびアルキルアデニンDNAグリコシラーゼのうちの1つである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼVIII、エンドヌクレアーゼIII、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、ポリヌクレオチドキナーゼ3’-ホスファターゼ、3’-ホスホエステラーゼ、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、3’-ホスファターゼ活性を有するT4 ポリヌクレオチドキナーゼ、およびジンクフィンガーDNA 3’-ホスホエステラーゼ、からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシル、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、グアニン、5-フルオロウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-メチルグアニン、N
6-メチルアデニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン、5-ヒドロキシルシトシン、5-ヒドロキシウラシル、ジヒドロキシウラシル、エテノシトシン、エテノアデニン、チミングリコール、シトシングリコール、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、アデニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンに対合したアデニン、グアニンに対合したウラシル、アデニンに対合したウラシル、グアニンに対合したチミン、グアニンに対合したエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンに対合したアデニン、およびグアニンに対合した2-ヒドロキシルアデニンからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記開始剤、前記合成された核酸および前記連結ヌクレオチドが、それぞれ鋳型非依存型および鋳型依存型のうちの1つである、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
核酸を合成する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)固体支持体に接着させ、基質塩基、基質糖および3’ヒドロキシル基を有する連結ヌクレオチドと結合させた開始剤を提供する工程;
b)前記連結ヌクレオチドに結合させた前記開始剤を、ポリメラーゼの存在下でヌクレオチドモノマーに曝露して、その結果、核酸が合成されて、前記ヌクレオチドモノマーの1つと前記連結ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基とを反応させることによって、前記開始剤と結合させるようにする工程;
c)前記基質塩基を単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し、その結果、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて、脱塩基部位が生成される工程;
d)前記脱塩基部位を脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、その結果、前記脱塩基部位において前記基質糖および糖リン酸骨格の両方が切断されて、前記核酸が前記開始剤から放出され、それにより、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドに3’リン酸基が形成される工程;ならびに
e)前記3’リン酸基を有する3’末端ヌクレオチドを、3’ホスファターゼ活性保有酵素で脱リン酸化処理して、その結果、前記3’末端ヌクレオチドにヒドロキシル基が形成されて、前記開始剤を再生させる工程。
【請求項23】
前記単官能性DNAグリコシラーゼが、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ、一本鎖選択的単官能性ウラシルDNAグリコシラーゼ1、メチル結合ドメイングリコシラーゼ4、チミンDNAグリコシラーゼ、mutYホモログDNAグリコシラーゼ、アルキルプリングリコシラーゼC、アルキルプリングリコシラーゼD、脱塩基部位リアーゼ活性を有さない8-オキソ-グアニングリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼIII様1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ2、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ3である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記単官能性DNAグリコシラーゼがウラシル-DNAグリコシラーゼまたはアルキルアデニンDNAグリコシラーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼVIII、エンドヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼVIIIの酵素的に活性な断片、またはエンドヌクレアーゼIIIの酵素的に活性な断片である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、ポリヌクレオチドキナーゼ3’-ホスファターゼ、または3’-ホスホエステラーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、3’-ホスファターゼ活性を有するT4 ポリヌクレオチドキナーゼ、またはジンクフィンガーDNA 3’-ホスホエステラーゼ、である、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシル、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、グアニン、5-フルオロウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン、5-ヒドロキシルシトシン、5-ヒドロキシウラシル、ジヒドロキシウラシル、エテノシトシン、エテノアデニン、チミングリコール、シトシングリコール、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、アデニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンに対合したアデニン、グアニンに対合したウラシル、アデニンに対合したウラシル、グアニンに対合したチミン、グアニンに対合したエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンに対合したアデニン、またはグアニンに対合した2-ヒドロキシルアデニンである、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシルまたはヒポキサンチンである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記基質塩基がウラシルであり、それによりデオキシウリジンが形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記基質塩基がヒポキサンチンであり、それによりデオキシイノシンが形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記開始剤が、鋳型非依存型または鋳型依存型である、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリメラーゼが、ファミリーA DNAポリメラーゼ、ファミリーB DNAポリメラーゼ、ファミリーC DNAポリメラーゼ、ファミリーD DNAポリメラーゼ、ファミリーX DNAポリメラーゼ、ファミリーY DNAポリメラーゼ、または逆転写酵素に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
核酸を合成するためのキットであって、
ポリメラーゼ;
固体支持体に接着させた開始剤;
単官能性DNAグリコシラーゼ;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼ;ならびに
3’ホスファターゼ活性保有酵素;
を含み、請求項22に記載の方法に従って使用されるキット。
【請求項36】
核酸合成のための開始剤を再生する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)固体支持体に接着させ、基質塩基および基質糖を有する連結ヌクレオチドおよび新たに合成された核酸と結合させた前記開始剤を提供する工程;
b)前記基質塩基を単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し、その結果、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて、脱塩基部位が生成される工程;
c)前記脱塩基部位を脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、その結果、前記脱塩基部位において前記基質糖および糖リン酸骨格の両方が切断されて、前記新たに合成された核酸が前記開始剤から放出され、それにより、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドに3’リン酸基が形成される工程;ならびに
d)前記3’リン酸基を有する3’末端ヌクレオチドを、3’ホスファターゼ活性保有酵素で脱リン酸化処理して、その結果、前記3’末端ヌクレオチドにヒドロキシル基が形成されて、さらなる核酸合成のために再利用される前記開始剤を再生させる工程。
【請求項37】
前記単官能性DNAグリコシラーゼが、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ、一本鎖選択的単官能性ウラシルDNAグリコシラーゼ1、メチル結合ドメイングリコシラーゼ4、チミンDNAグリコシラーゼ、mutYホモログDNAグリコシラーゼ、アルキルプリングリコシラーゼC、アルキルプリングリコシラーゼD、脱塩基部位リアーゼ活性を有さない8-オキソ-グアニングリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼIII様1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ2、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ3である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記単官能性DNAグリコシラーゼがウラシル-DNAグリコシラーゼまたはアルキルアデニンDNAグリコシラーゼである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼVIII、エンドヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼVIIIの酵素的に活性な断片、またはエンドヌクレアーゼIIIの酵素的に活性な断片である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、ポリヌクレオチドキナーゼ3’-ホスファターゼ、または3’-ホスホエステラーゼである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、3’-ホスファターゼ活性を有するT4 ポリヌクレオチドキナーゼ、またはジンクフィンガーDNA 3’-ホスホエステラーゼ、である、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシル、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、グアニン、5-フルオロウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン、5-ヒドロキシルシトシン、5-ヒドロキシウラシル、ジヒドロキシウラシル、エテノシトシン、エテノアデニン、チミングリコール、シトシングリコール、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、アデニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンに対合したアデニン、グアニンに対合したウラシル、アデニンに対合したウラシル、グアニンに対合したチミン、グアニンに対合したエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンに対合したアデニン、またはグアニンに対合した2-ヒドロキシルアデニンである、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシルまたはヒポキサンチンである、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記基質塩基がウラシルであり、それによりデオキシウリジンが形成される、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記基質塩基がヒポキサンチンであり、それによりデオキシイノシンが形成される、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記開始剤が、鋳型非依存型または鋳型依存型である、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
核酸合成のための開始剤を再生するためのキットであって、
固体支持体に接着させた開始剤;
単官能性DNAグリコシラーゼ;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼ;ならびに
3’ホスファターゼ活性保有酵素;
を含み、請求項36に記載の方法に従って使用されるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月21日に出願された米国特許出願第17/128,677号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、酵素による核酸合成のための再使用可能な開始剤を再生するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
鋳型依存性および鋳型非依存性DNA合成法を含むDNA合成法は、ヌクレオチド付加のためのプライマーとして働く開始剤(すなわち、短鎖ポリヌクレオチド)を必要とする。しかし、DNA合成後、そのような開始剤は通常再利用できず廃棄される。したがって、新しいDNA合成の各回に新しい開始剤が必要とされ、その全体的な製造コストが増加し、そのような合成を不便にする。
【0004】
費用効率が高く堅牢なDNA合成プロセスを容易にするために、DNAを合成し、新しい合成のための再利用可能な開始剤をもたらす新規なアプローチを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本開示の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを軽減することができる、核酸合成およびそのような合成のための再利用可能な開始剤の再生のための方法およびキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような方法は以下の工程を含む:
核酸合成のために固体支持体に接着させた開始剤を、基質塩基、基質糖および3’ヒドロキシル基を有する連結ヌクレオチドにポリメラーゼの存在下で曝露して、その結果、前記連結ヌクレオチドが前記開始剤に組み込まれるようにする工程;
前記連結ヌクレオチドを含有する前記開始剤をヌクレオチドモノマーに前記ポリメラーゼの存在下で曝露して、その結果、核酸が合成されて前記連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤に結合されるようにする工程;
前記基質塩基を有する連結ヌクレオチドを認識可能かつ切除可能である単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程;
前記基質塩基を前記単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し、その結果、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて脱塩基部位が生成されるようにする工程;
得られた脱塩基部位を認識可能であり、前記基質糖を切断可能な脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程;
前記脱塩基部位を前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、その結果、前記脱塩基部位において前記基質糖および前記核酸の骨格の両方が切断されて、前記新たに合成された核酸が前記開始剤から放出され、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドが3’リン酸基を残し、その結果、前記新たに合成された核酸の5’末端ヌクレオチドが5’リン酸基を有するようにする工程;
3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、前記3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供し、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドの3’リン酸基が、前記開始剤が新たな合成反応用に再利用可能となるために、元の3’ヒドロキシル基に戻るよう変換される工程。
【0007】
キットは、ポリメラーゼ、連結ヌクレオチド、単官能性DNAグリコシラーゼ、脱塩基部位エンドヌクレアーゼ、および3’ホスファターゼ活性保有酵素を含む。キットは前述の方法に従って使用される。
【0008】
本開示の別の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを軽減することができる、核酸合成のための再利用可能な開始剤を再生する方法を提供することである。
【0009】
このような方法は以下の工程を含む:
単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程;
固体支持体に連結された開始剤と、基質塩基および基質糖を有する連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤に連結されている新たに合成された核酸とを提供し、前記基質塩基を有する連結ヌクレオチドが、前記単官能性DNAグリコシラーゼによって認識可能および切除可能である工程;
前記基質塩基を前記単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し、その結果、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて、脱塩基部位が生成されるようにする工程;
得られた脱塩基部位を認識可能であり、前記基質糖を切断可能な脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程;
前記脱塩基部位を前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、その結果、前記脱塩基部位において前記基質糖および前記核酸の骨格の両方が切断されて、前記新たに合成された核酸が前記開始剤から放出され、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドが3’リン酸基を残し、その結果、前記新たに合成された核酸の5’末端ヌクレオチドが5’リン酸基を有するようにする工程;
3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、前記3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供し、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドの3’リン酸基が、前記開始剤が新たな合成反応用に再利用可能となるために、元の3’ヒドロキシル基に戻るよう変換される工程。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の他の特徴および利点は、実施形態の以下の詳細な説明および添付の図面の参照により明らかになると思われる:
【0011】
【
図1】下記の実施例1で適用されるような鋳型非依存性核酸合成および開始剤をその元の形態へ戻す復帰を示す概略図であり、記号「U」は連結デオキシウリジンを表し、記号「N」は組み込まれたヌクレオシドモノマーを表し、記号「UDG」はウラシル-DNAグリコシラーゼを表し、記号「Nei」はエンドヌクレアーゼVIIIを表し、記号「T4 PNKP」は3’ホスファターゼ活性を有するT4ポリヌクレオチドキナーゼを表す。
【0012】
【
図2】下記の実施例1で検証された鋳型非依存性核酸合成の実現可能性を示す尿素-ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である。
【0013】
【
図3】下記の実施例1の結果を示す尿素-ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像であり、記号「S」は開始剤と連結デオキシウリジンを含む新たに合成された核酸とを含むポリヌクレオチドを表し、記号「U」はUDGのみによる処理を表し、記号「N」はNeiのみによる処理を表し、記号「U+N」はUDGおよびNeiによる処理を表し、記号「U+N+P」はUDG、NeiおよびT4 PNKPによる処理を表す。
【0014】
【
図4】下記の実施例2で適用されるような鋳型非依存性核酸合成および開始剤のその元の形態への復帰を示す概略図であり、記号「I」は連結デオキシイノシンを表し、記号「N」は組み込まれたヌクレオシドモノマーを表し、記号「AAG」はアルキルアデニンDNAグリコシラーゼを表し、記号「Nei」はエンドヌクレアーゼVIIIを表し、記号「T4 PNKP」は3’ホスファターゼ活性を有するT4ポリヌクレオチドキナーゼを表す。
【0015】
【
図5】下記の実施例2で検証された鋳型非依存性核酸合成の実現可能性を示す尿素-ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像である。
【0016】
【
図6】下記の実施例2の結果を示す尿素-ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像であり、記号「S」は、開始剤と連結デオキシイノシンを含む新たに合成された核酸とを含むポリヌクレオチドを表し、記号「A」は、AAGのみによる処理を表し、記号「N」は、Neiのみによる処理を表し、記号「A+N」は、AAGおよびNeiによる処理を表し、記号「A+N+P」は、AAG、NeiおよびT4 PNKPによる処理を表す。
【0017】
【
図7】下記の実施例3で適用されるような鋳型依存性核酸合成および開始剤のその元の形態への復帰を示す概略図であり、記号「U」は連結デオキシウリジンを表し、記号「N」はヌクレオシドを表し、記号「UDG」はウラシル-DNAグリコシラーゼを表し、記号「Nei」はエンドヌクレアーゼVIIIを表し、記号「T4 PNKP」は3’ホスファターゼ活性を有するT4ポリヌクレオチドキナーゼを表す。
【0018】
【
図8】下記の実施例3の結果を示す尿素-ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像であり、記号「S」は開始剤と連結デオキシウリジンを含む新たに合成された核酸とを含む二重ポリヌクレオチド表し、記号「U」はUDGのみによる処理を表し、記号「N」はNeiのみによる処理を表し、記号「U+N」はUDGおよびNeiによる処理を表し、記号「U+N+P」はUDG、NeiおよびT4 PNKPによる処理を表す。
【0019】
【
図9】下記の実施例4で適用されるような鋳型依存性核酸合成および開始剤のその元の形態への復帰を示す概略図であり、記号「I」は連結デオキシイノシンを表し、記号「N」は組み込まれたヌクレオシドモノマーを表し、記号「AAG」はアルキルアデニンDNAグリコシラーゼを表し、記号「Nei」はエンドヌクレアーゼVIIIを表し、記号「T4 PNKP」は3’ホスファターゼ活性を有するT4ポリヌクレオチドキナーゼを表す。ならびに
【0020】
【
図10】下記の実施例4の結果を示す尿素-ポリアクリルアミドゲルの蛍光画像であり、記号「S」は、開始剤と連結デオキシイノシンを含む新たに合成された核酸とを含む二重ポリヌクレオチドを表し、記号「A」は、AAGのみによる処理を表し、記号「N」は、Neiのみによる処理を表し、記号「A+N」は、AAGおよびNeiによる処理を表し、記号「A+N+P」は、AAG、NeiおよびT4 PNKPによる処理を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において任意の先行技術の刊行物が言及される場合、そのような言及が、その刊行物が台湾または任意の他の国における当分野の共通の一般知識の一部を形成することの承認を構成しないことを理解されたい。
【0022】
本明細書の目的のために、「含むこと(comprising)」という単語は「含むが、限定するものではない」ことを意味し、「含む(comprises)」という単語は対応する意味を有することが明確に理解されよう。
【0023】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者は、本開示の実施に使用することができる、本明細書に記載のものと類似または同等の多くの方法および材料を認識すると思われる。実際、本開示は、記載された方法および材料に決して限定されない。
【0024】
本開示は、核酸合成およびそのような合成のための再利用可能な開始剤の再生のための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
核酸合成のために固体支持体に接着させた開始剤を、基質塩基、基質糖および3’ヒドロキシル基を有する連結ヌクレオチドにポリメラーゼの存在下で曝露して、その結果、前記連結ヌクレオチドが前記開始剤に組み込まれるようにする工程;
前記連結ヌクレオチドを含有する前記開始剤をヌクレオチドモノマーに前記ポリメラーゼの存在下で曝露して、その結果、核酸が合成されて前記連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤と結合されるようにする工程;
前記基質塩基を有する連結ヌクレオチドを認識可能かつ切除可能である単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程;
前記基質塩基を前記単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し、その結果、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって前記連結ヌクレオチドから切除されて脱塩基部位が生成されるようにする工程;
得られた脱塩基部位を認識可能であり、前記基質糖を切断可能な脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程;
前記脱塩基部位を前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、その結果、前記脱塩基部位において前記基質糖および前記核酸の骨格の両方が切断されて、前記新たに合成された核酸が前記開始剤から放出され、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドが3’リン酸基を残し、その結果、前記合成された核酸の5’末端ヌクレオチドが5’リン酸基を有するようにする工程;
3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、前記3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供し、その結果、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドの3’リン酸基が、前記開始剤が新たな合成反応用に再利用可能となるために、元の3’ヒドロキシル基に戻るよう変換される工程。
【0025】
本開示によれば、切除処理、切断処理および脱リン酸化処理は、同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。
【0026】
本明細書で使用される「核酸」、「核酸配列」および「核酸断片」という用語は、一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を指し、天然に存在するヌクレオチドまたは人工化学模倣物を含む。本明細書で使用される「核酸」という用語は、使用時に「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「遺伝子」、「DNA」、「cDNA」、「RNA」および「mRNA」という用語と互換的である。
【0027】
「開始剤」という用語は、それにより核酸が合成されるモノヌクレオシド、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの修飾類似体を指す。「開始剤」という用語はまた、3’-ヒドロキシル基を有するゼノ核酸(XNA)またはペプチド核酸(PNA)を指し得る。
【0028】
本開示によれば、開始剤は、鋳型非依存型であっても、または鋳型依存型であってもよい(すなわち、開始剤は、相補的な鋳型にアニールまたはハイブリダイズされなくてもよく、または鋳型にアニールされて二重鎖または二本鎖を形成してもよい)。
【0029】
開始剤が鋳型非依存型である場合、開始剤は、非自己相補的配列および非自己相補性形成配列から選択される配列を有し得る。「自己相補的」という用語は、配列(例えば、ヌクレオチド配列、XNA配列またはPNA配列)がそれ自体の上に折り返され(すなわち、配列の領域が、配列の別の領域に結合またはハイブリダイズする)、核酸合成の鋳型として働くことができる二重鎖、二本鎖様構造を生成することを意味する。配列の相補的領域がどれだけ近接しているかに応じて、鎖は、例えば、ヘアピンループ、接合部、バルジまたは内部ループを形成し得る。「自己相補性形成」という用語は、鋳型として働く場合、それにより相補的な伸長部分が形成される配列(例えば、ヌクレオチド配列、XNA配列またはPNA配列)を表すために使用される(すなわち、鋳型として働くそのような配列に基づいて自己相補的配列が形成される)。例えば、自己相補性形成配列は「ATCC」であり得る。「ATCC」配列が鋳型として働く場合、そのような配列と相補的な伸長部分「GGAT」がそのような配列から形成される(すなわち、自己相補的配列「ATCCGGAT」が形成される)。
【0030】
一般に、「鋳型」は、標的ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。いくつかの例では、用語「標的配列」、「鋳型ポリヌクレオチド」、「標的核酸」、「標的ポリヌクレオチド」、「核酸鋳型」、「鋳型配列」、およびそれらの変形は、互換的に使用される。具体的には、「鋳型」という用語は、鋳型依存性核酸ポリメラーゼの活性を介してヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体から相補的コピーが合成される核酸の鎖を指す。二重鎖内では、鋳型鎖は、慣例により、「ボトム(bottom)」鎖として示され、記載される。同様に、非鋳型鎖は、多くの場合、「トップ(top)」鎖として示され、記載される。「鋳型」鎖は「センス」鎖とも呼ばれ、非鋳型鎖は「アンチセンス」鎖とも呼ばれる。
【0031】
本開示によれば、開始剤は、固体支持体に連結された5’末端を有し、連結ヌクレオチドは、開始剤の3’末端ヌクレオチドおよび合成された核酸の5’末端ヌクレオチドに結合される。開始剤は、支持体に直接結合していてもよく、またはリンカーを介して支持体に結合していてもよい。
【0032】
固体支持体の例としては、限定するものではないが、マイクロアレイ、ビーズ(コート又はノンコート)、カラム、光ファイバー、ワイプ、ニトロセルロース、ナイロン、ガラス、石英、ジアゾ化膜(紙またはナイロン)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、紙、セラミックス、金属、半金属、半導体材料、磁性粒子、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンなど)、ゲル形成材料[タンパク質(例えば、ゼラチン)、リポ多糖、ケイ酸塩、アガロース、ポリアクリルアミド、メチルメタクリレートポリマーなど]、ゾルゲル、多孔性ポリマーヒドロゲル、ナノ構造表面、ナノチューブ(カーボンナノチューブなど)、およびナノ粒子(金ナノ粒子、量子ドットなど)が挙げられる。
【0033】
本開示によれば、開始剤の形態に応じて、合成された核酸および連結ヌクレオチドは、それぞれ鋳型非依存型または鋳型依存型であり得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「組み込まれる」または「組み込み」という用語は、核酸の一部になることを指す。核酸前駆体の組み込みに関する用語には、公知の柔軟性がある。
【0035】
例えば、ヌクレオチドdGTPはデオキシリボヌクレオシド三リン酸である。DNAに組み込まれると、dGTPはdGMP、すなわちデオキシグアノシン一リン酸部分になる。DNAはdGTP分子を含まないが、dGTPをDNAに組み込むと言うことができる。
【0036】
本開示によれば、ヌクレオチドモノマーは、糖、リン酸基および窒素塩基を構成要素とする天然の核酸ヌクレオチドであり得る。糖は、RNA中のリボースまたはDNA中の2’-デオキシリボースであり得る。合成される核酸がDNAであるかRNAであるかに応じて、窒素塩基は、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシンおよびチミンから選択される。あるいは、ヌクレオチドモノマーは、3つの構成要素の少なくとも1つが修飾されたヌクレオチドであってもよい。例として、修飾は、修飾生成物を生成する塩基のレベル(例えば、イノシン、メチル-5-デオキシシチジン、デオキシウリジン、ジメチルアミノ-5-デオキシウリジン、ジアミノ-2,6-プリンまたはブロモ-5-デオキシウリジン、およびハイブリダイゼーションを可能にする任意の他の修飾塩基)、糖のレベル(例えば、類似体によるデオキシリボースの置換)、またはリン酸基のレベル(例えば、ボロネート、アルキルホスホネートまたはホスホロチオエート誘導体)で起こり得る。
本開示によれば、ヌクレオチドモノマーは、除去可能なブロッキング部分を有し得る。除去可能なブロッキング部分の例としては、限定するものではないが、3’-O-ブロッキング部分、塩基ブロッキング部分、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
除去可能なブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、可逆的ターミネーターとも呼ばれる。したがって、3’-O-ブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、3’-ブロック可逆的ターミネーターまたは3’-O-修飾可逆的ターミネーターとも呼ばれ、塩基ブロッキング部分を有するヌクレオチドモノマーは、3’-非ブロック可逆的ターミネーターまたは3’-OH非ブロック可逆的ターミネーターとも呼ばれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「可逆的ターミネーター」という用語は、化学修飾ヌクレオチドモノマーを指す。そのような可逆的ターミネーターがポリメラーゼによって成長中の核酸に組み込まれると、ポリメラーゼによる別のヌクレオチドモノマーのさらなる組み込みをブロックする。そのような「可逆的ターミネーター」塩基および核酸は、化学的または物理的処理によって脱保護することができ、そのような脱保護に続いて、核酸をポリメラーゼによってさらに伸長することができる。
【0039】
3’-O-ブロッキング部分の例としては、限定するものではないが、O-アジドメチル、O-アミノ、O-アリル、O-フェノキシアセチル、O-メトキシアセチル、O-アセチル、O-(p-トルエン)スルホネート、O-ホスフェート、O-ニトレート、O-[4-メトキシ]-テトラヒドロチオピラニル、O-テトラヒドロチオピラニル、O-[5-メチル]-テトラヒドロフラニル、O-[2-メチル,4-メトキシ]-テトラヒドロピラニル、O-[5-メチル]-テトラヒドロピラニルおよびO-テトラヒドロチオフラニル、0-2-ニトロベンジル、0-メチル、ならびにO-アシルが挙げられる。
【0040】
3’非ブロック可逆的ターミネーターの例としては、限定するものではないが、7-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-7-デアザ-dATP、5-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dCTP、1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-7-デアザ-dGTP、5-[(S)-1-(5-メトキシ-2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dUTP、および5-[(S)-1-(2-ニトロフェニル)-2,2-ジメチル-プロピルオキシ]メチル-dUTPが挙げられる。
【0041】
本開示によれば、塩基ブロック部分は可逆的ダイターミネーターであり得る。可逆的ダイターミネーターの例としては、限定するものではないが、Illumina NovaSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina NextSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina MiSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina HiSeqの可逆的ダイターミネーター、Illumina Genome Analyzer IIXの可逆的ダイターミネーター、LaserGenのlightning terminator、Helicos Biosciences Heliscopeの可逆的ダイターミネーターが挙げられる。
【0042】
可逆的ターミネーターは周知であり、当業者により一般的に使用されているので、簡潔にするために、本明細書ではそのさらなる詳細は省略する。しかしながら、適用可能な3’ブロック可逆的ターミネーター、適用可能な3’非ブロック可逆的ターミネーター、および保護および脱保護のための適用可能な条件(すなわち、除去可能なブロッキング部分を付加および除去するための条件)は、例えば、Gardner et al.(2012),Nucleic Acids Research,40(15):7404-7415,Litosh et al.(2011),Nucleic Acids Research,39(6):e39、およびChen et al.(2013),Genomics Proteomics Bioinformatics,11:34-40に見出すことができる。
【0043】
本開示によれば、ポリメラーゼは、鋳型依存性ポリメラーゼまたは鋳型非依存性ポリメラーゼであり得る。
【0044】
本開示によれば、ポリメラーゼは、ファミリーA DNAポリメラーゼ(例えば、T7 DNAポリメラーゼ、Pol I、Pol γ、θおよびν)、ファミリーB DNAポリメラーゼ(例えば、Pol II、Pol B、Pol ζ、Pol α、δおよびε)、ファミリーC DNAポリメラーゼ(例えば、Pol III)、ファミリーD DNAポリメラーゼ(例えば、PolD)、ファミリーX DNAポリメラーゼ(例えば、Pol β、Pol σ、Pol λ、Pol μおよび末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)、ファミリーY DNAポリメラーゼ(例えば、Pol ι、Pol κ、Pol η、DinB、Pol IVおよびPol V)、逆転写酵素(例えば、テロメラーゼおよびB型肝炎ウイルス)、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択され得る。
【0045】
広く使用されている鋳型依存性ポリメラーゼの非限定的な例としては、DNA依存性DNAポリメラーゼであるファージT7のT7 DNAポリメラーゼおよびファージT3のT3 DNAポリメラーゼ、DNA依存性RNAポリメラーゼであるファージT7のT7 RNAポリメラーゼおよびファージT3のT3 RNAポリメラーゼ、DNA依存性DNAポリメラーゼである大腸菌(Escherichia coli)のDNAポリメラーゼIまたはクレノウ断片として公知のその断片、耐熱性DNA依存性DNAポリメラーゼであるサーモフィルス・アクアティカス(Thermophilus aquaticus)DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼおよびvent DNAポリメラーゼ、DNA依存性DNAポリメラーゼである真核生物DNAポリメラーゼβ、RNA依存性DNAポリメラーゼであるテロメラーゼ、ならびに修飾RNA(リボザイム;Unrau&Bartel、1998年)および鋳型依存性ポリメラーゼ活性を有するDNAなどの非タンパク質触媒分子が挙げられる。
【0046】
鋳型非依存性ポリメラーゼの非限定的な例としては、逆転写酵素、ポリ(A)ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼシータ(θ)、DNAポリメラーゼミュー(μ)および末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼが挙げられる。
【0047】
核酸合成、連結ヌクレオチド付加および核酸合成に適したポリメラーゼは、当業者の専門知識および日常的な技能の範囲内であるため、簡潔にするために、本明細書ではそれらのさらなる詳細は省略する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「単官能性DNAグリコシラーゼ」という用語は、元々グリコシラーゼ活性のみを有する天然に存在する単官能性グリコシラーゼを指す。「単官能性DNAグリコシラーゼ」という用語はまた、元々グリコシラーゼ活性と脱塩基部位リアーゼ活性とを有する二官能性DNAグリコシラーゼの脱塩基部位リアーゼドメインを除去または不活性化することによって、二官能性DNAグリコシラーゼから誘導される単官能性グリコシラーゼを指す。
【0049】
本開示によれば、単官能性DNAグリコシラーゼは、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDGまたはUNG)、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(AAG;メチルプリンDNAグリコシラーゼ(MPG)とも呼ばれる)、一本鎖選択的単官能性ウラシルDNAグリコシラーゼ1(SMUG1)、メチル結合ドメイングリコシラーゼ4(MBD4)、チミンDNAグリコシラーゼ(TDG)、mutYホモログDNAグリコシラーゼ(MYH)、アルキルプリングリコシラーゼC(AlkC)、アルキルプリングリコシラーゼD(AlkD)、脱塩基部位リアーゼ活性を有さない8-オキソ-グアニングリコシラーゼ1(OGG1)、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼIII様1(NTHL1)、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ1(NEIL1)、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ2(NEIL2)、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ3(NEIL3)、およびその酵素的に活性な断片からなる群から選択され得る。
【0050】
単官能性グリコシラーゼを得るために二官能性DNAグリコシラーゼの脱塩基部位リアーゼドメインを除去または不活性化することは、当業者の専門知識および日常的な技能の範囲内であるため、簡潔にするために、本明細書ではそれらの詳細は省略する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「酵素的に活性な断片」という用語は、断片が由来するタンパク質またはポリペプチドの活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%を含有する触媒的または酵素的に活性なタンパク質またはポリペプチドの断片を指す。
【0052】
本開示の例示的一実施形態では、単官能性DNAグリコシラーゼはウラシル-DNAグリコシラーゼである。本開示の別の例示的実施形態では、単官能性DNAグリコシラーゼはアルキルアデニン-DNAグリコシラーゼである。
【0053】
「脱塩基の」、「脱プリンの/脱ピリミジンの」、およびD-スペーサーという用語は、塩基が存在しないが、糖リン酸骨格は無傷のままである部位を示すために互換的に使用することができる。したがって、脱塩基部位エンドヌクレアーゼは、脱プリン/脱ピリミジン部位エンドヌクレアーゼとしても公知である。
【0054】
本開示によれば、脱塩基部位エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼVIII(Nei)、エンドヌクレアーゼIII(EndoIIIまたはNth)、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択され得る。例示的実施形態では、脱塩基部位エンドヌクレアーゼはエンドヌクレアーゼVIIIである。
【0055】
本開示によれば、3’ホスファターゼ活性保有酵素は、ポリヌクレオチドキナーゼ3’-ホスファターゼ、3’-ホスホエステラーゼ、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択され得る。3’ホスファターゼ活性保有酵素は、3’ホスファターゼ活性を有するT4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)(T4ポリヌクレオチドキナーゼ/ホスファターゼ(T4 PNKP)とも呼ばれる)、ならびにジンクフィンガーDNA 3’-ホスホエステラーゼ(ZDP)であり得る。
【0056】
適用可能な3’ホスファターゼ活性保有酵素は、当業者の専門知識および日常的な技能の範囲内であるため、簡潔にするために、本明細書ではそれらのさらなる詳細は省略する。しかしながら、適用可能な3’ホスファターゼ活性保有酵素は、例えば、Blondal et al.(2005),J.Bio.Chem.,280(7):5188-5194、Dobson et al.(2006),Nucleic Acids Research,34(8):2230-2237、Blasius et al.(2007),BMC Molecular Biology,8:69、Coquelle et al.(2011),PNAS,108(52):21022-21027、Vance et al.(2001),J.Bio.Chem.,276(18):15703-15781、およびthe NCBI website(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene?Db=gene&Cmd=DetailsSearch&Term=11284#general-protein-info)に見出すことができる。
【0057】
本開示によれば、開始剤に結合される連結ヌクレオチドの基質塩基は、ウラシル、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、グアニン、5-フルオロウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン、5-ヒドロキシルシトシン、5-ヒドロキシウラシル、ジヒドロキシウラシル、エテノシトシン、エテノアデニン、チミングリコール、シトシングリコール、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、アデニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンに対合したアデニン、グアニンに対合したウラシル、アデニンに対合したウラシル、グアニンに対合したチミン、グアニンに対合したエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンに対合したアデニン、およびグアニンに対合した2-ヒドロキシルアデニンからなる群から選択され得る。本開示の例示的一実施形態では、連結ヌクレオチドの基質塩基はウラシルである。本開示の別の例示的実施形態では、連結ヌクレオチドの基質塩基はヒポキサンチンである。
【0058】
適切な単官能性DNAグリコシラーゼおよびそれらの対応する基質塩基は、、当業者の専門知識および日常的な技能の範囲内であるため、簡潔にするために、本明細書ではそれらの詳細は省略する。しかしながら、適切な単官能性DNAグリコシラーゼおよびそれらの対応する基質塩基は、例えば、Jacobs et al.(2012),Chromosoma,121:1-20、Krokan et al.(1997),Biochem.J.,325:1-16、およびKim et al.(2012),Current Molecular Pharmacology,5:3-13に見出すことができる。
【0059】
「連結ヌクレオチド」という用語は、新たに合成された核酸に関して開始剤に組み込まれる第1のヌクレオチドを指す。
【0060】
「基質塩基」という用語は、酵素の基質として働く連結ヌクレオチドの塩基を指す。「基質糖」という用語は、酵素の基質として働く連結ヌクレオチドのヌクレオシド糖部分を指す。
【0061】
さらに、本開示は、核酸合成およびそのような合成のための再利用可能な開始剤の再生のためのキットであって、前述のポリメラーゼ、前述の単官能性DNAグリコシラーゼ、単官能性DNAグリコシラーゼの基質として働く前述の連結ヌクレオチド、前述の脱塩基部位エンドヌクレアーゼ、および前述の3’ホスファターゼ活性保有酵素を含むキットを提供する。キットは本開示の前述の方法に従って使用される。
【0062】
さらに、本開示は、核酸合成のための再利用可能な開始剤を再生する方法であって、
上記の単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程;
上記の核酸合成のための開始剤と、上記の連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤に連結されている合成された核酸とを提供する工程;
前記基質塩基を、単官能性DNAグリコシラーゼを用いて上記の切除処理に供する工程;
上記の脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程;
前記脱塩基部位を、前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼを用いて上記の切断処理に供する工程;
上記の3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、3’ホスファターゼ活性保有酵素を用いて上記の脱リン酸化処理に供する工程;
を含む方法を提供する。
【0063】
本開示を、以下の実施例によってさらに説明する。しかしながら、以下の実施例は単に例示を目的とするものであり、実際に本開示を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0064】
実施例1.
鋳型非依存性核酸合成、ならびにウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)、エンドヌクレアーゼVIII(Nei)および3’ホスファターゼ活性を有するT4ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 PNKP)による、合成開始剤をその元の形態へ戻す復帰
【0065】
鋳型非依存性核酸合成に使用される開始剤が核酸合成後にその元の形態に戻るよう変換され得るかどうかを試験するために、以下の実験工程を行った。この実施例で適用される、連結デオキシウリジンヌクレオチドを使用した鋳型非依存性核酸合成および酵素を利用した開始剤のその元の形態への復帰の詳細なスキームを
図1に例示する。
A.連結デオキシウリジン三リン酸(dUTP)を用いて開始された鋳型非依存性核酸合成
【0066】
5’末端に5’-ヘキサクロロ-フルオレセイン(HEX)標識を有し、3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤(配列番号1の一本鎖21 merのポリヌクレオチド)は、Integrated DNA Technologies(Coralville、Iowa、United States)により合成された。鋳型非依存性核酸合成反応を、3’から5’へのエキソヌクレアーゼ欠損Pfu DNAポリメラーゼ(Pfuexo-)(200 nM)を使用して実施して、連結デオキシウリジン三リン酸(dUTP)(100μM)を開始剤の3’末端に組み込んだ。
【0067】
具体的には、Pfu
exo-DNAポリメラーゼ(配列番号8のアミノ酸配列を有する)を以下のように調製した。インテインを含まないPfu DNAポリメラーゼをコードする遺伝子構築物は、Genomics BioSci and Tech Co.(New Taipei City、Taiwan)によって合成された。Pfu
exo-DNAポリメラーゼは、New England Biolabs(Ipswich、MA、United States)製のQ5 Site-directed Mutagenesis Kitを使用して、遺伝子骨格上でそのAsp
141をAla に変更し(D141A)、そのGlu
143をAlaに変更する(E143A)ことによって作出した。Pfu
exo-DNAポリメラーゼを大腸菌BL21(DE3)細胞において発現させ、GE Healthcare Life Sciences(Marlborough、MA、United States)製のAkta FPLCシステムを使用してSepharose-Qおよびヘパリンカラムによって精製した。
図2に例示するように、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)は、Pfu
exo-DNAポリメラーゼによって開始剤の3’末端に効率的に組み込まれた。
B.開始剤の3’末端にある連結dUMPの直後への鋳型非依存性核酸合成
【0068】
合成開始剤の3’末端にある連結dUMPの直後への鋳型非依存性核酸合成を実証するために、Pfuexo-DNAポリメラーゼ(200 nM)を使用して、3’-O-アジドメチル-dATPおよび3’-O-アジドメチル-dTTP(100μM)(Jena Bioscience、Erfurt、Germany)を、3’末端に連結dUMPを含有する開始剤に段階的に組み込んだ。10 mMマンガンカチオンの添加によって合成反応を開始し、次いで75℃で30分間インキュベートした。2倍クエンチ溶液(95%脱イオンホルムアミドおよび25 mM EDTA)10μLを添加することによって反応を停止させ、98℃で10分間熱変性に供した。反応生成物を15%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって分析し、Amersham Typhoon Imager、GE Healthcare Life Sciences(Marlborough、MA、United States)によって可視化した。
【0069】
図2に例示するように、Pfu
exo-DNAポリメラーゼを使用する鋳型非依存性核酸合成は、開始剤の3’末端にある連結dUMPの直後にdAMPおよびdTMPを順次組み込むことができる(開始剤、連結dUMP、ならびにdAMPおよびdTMPを含む得られた生成物は、配列番号2を有する)。したがって、鋳型非依存性核酸合成反応は、配列番号3の16-merの核酸のポリヌクレオチドを合成し続けることができ、したがって、開始剤、連結dUMPおよび新たに合成された16-merの核酸のポリヌクレオチドを含有する38-merの核酸(配列番号4)を生成することができる。
【0070】
鋳型非依存性核酸合成は当業者の専門知識および日常的な技能の範囲内であるので、配列番号3の16-merの核酸の核酸は、本明細書に提供される情報を用いて当業者によって新規に合成され得ることに留意されたい。この実施例では、実験手順を単純化するために、Integrated DNA Technologies(Coralville、Iowa、United States)によって16-merの核酸を合成し、以下のセクションCに記載のように連結dUMPを用いて開始剤と連結して、16-merの核酸の鋳型非依存性核酸合成を象徴した。
C.UDG、NeiおよびT4 PNKPの組み合わせ処理による、新たに合成された核酸の放出および合成開始剤をその元の形態へ戻す復帰
【0071】
新たに合成された核酸を放出し、酵素によって合成開始剤を再生することの実現可能性を実証するために、開始剤、連結dUMPおよび新たに合成された16-merの核酸のポリヌクレオチドを含有する38-merの核酸(配列番号4)を調製した。具体的には、16-merの核酸のポリヌクレオチドを、Pfuexo-DNAポリメラーゼを使用して連結dUMPを用いて開始剤に連結した。
【0072】
38-merの核酸(25 nM)を、New England Biolabs(Ipswich、MA、United States)から購入したUDG、NeiおよびT4 PNKPをそれぞれ10ユニット添加することにより、ウラシル切除、脱塩基部位/核酸骨格切断および脱リン酸化反応に供した。1倍切断緩衝液[10 mM MgCl2、50 mM KCl、5 mM ジチオスレイトール(DTT)、および50 mM Tris-HCl、pH7.5]中で、37℃で15分間反応を行った。このような38-merの核酸(配列番号4)の調製は、上記のように15%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって確認した。
対照実験では、38-merの核酸(配列番号4)も、上記の同一の実験条件下でUDG、NeiまたはUDGとNeiとの混合物による処理に供した。次いで、2倍クエンチ溶液(95% ホルムアミドおよび25 mM EDTA)10μLを添加することによって各反応を停止させ、酵素を98℃で10分間加熱することによって不活性化した。反応生成物を20%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって分析し、Amersham Typhoon Imager、GE Healthcare Life Sciences(Marlborough、MA、United States)によって可視化した。
【0073】
図3に例示するように、UDG、NeiおよびT4 PNKPの混合物による処理は、一本鎖38-merの核酸からの連結dUMPの除去、新たに合成された16-merのポリヌクレオチド(配列番号3)の放出、および3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤(配列番号1)の再生をもたらした。UDG単独、Nei単独、またはUDGとNeiとの組み合わせのいずれも、新たに合成された核酸を効率的かつ完全に放出し、同時に3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤を再生することができない。
実施例2.鋳型非依存性核酸合成、ならびにアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(AAG)、NeiおよびT4 PNKPによる、合成開始剤のその元の形態への復帰
【0074】
鋳型非依存性核酸合成に使用される開始剤が核酸合成後にその元の形態に戻るよう変換され得るかどうかを試験するために、以下の実験手順を行った。この実施例で適用される、連結デオキシイノシン三リン酸(dITP)を使用した鋳型非依存性核酸合成および酵素を利用した開始剤の元の形態への復帰の詳細なスキームを
図4に例示する。
A.連結dITPを用いて開始された鋳型非依存性核酸合成
【0075】
5’末端に5’-ヘキサクロロ-フルオレセイン(HEX)標識を有し、3’末端に保護されていないヒドロキシル基を有する開始剤(配列番号1)を使用した。鋳型非依存性核酸合成反応を、実施例1に記載のPfu
exo-DNAポリメラーゼ(200 nM)を使用して実施して、連結dITP(100 μM)を開始剤の3’末端に組み込んだ。
図5に例示するように、デオキシイノシン一リン酸(dIMP)は、Pfu
exo-DNAポリメラーゼによって開始剤の3’末端に効率的に組み込まれた。
B.開始剤の3’末端にある連結dIMPの直後への鋳型非依存性核酸合成
【0076】
合成開始剤の3’末端にある連結dIMPの直後への鋳型非依存性核酸合成を実証するために、Pfuexo-DNAポリメラーゼ(200 nM)を使用して、3’-O-アジドメチル-dATPおよび3’-O-アジドメチル-dTTP(100μM)(Jena Bioscience、Erfurt、Germany)を、3’末端に連結dIMPを含有する開始剤に段階的に組み込んだ。10 mMマンガンカチオンの添加によって合成反応を開始し、次いで75℃で30分間インキュベートした。2倍クエンチ溶液(95%脱イオンホルムアミドおよび25 mM EDTA)10μLを添加することによって反応を停止させ、98℃で10分間熱変性に供した。反応生成物を15%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって分析し、Amersham Typhoon Imager、GE Healthcare Life Sciences(Marlborough、MA、United States)によって可視化した。
【0077】
図5に例示するように、Pfu
exo-DNAポリメラーゼを使用する鋳型非依存性核酸合成は、開始剤の3’末端にある連結dIMPの直後にdAMPおよびdTMPを順次組み込むことができる(開始剤、連結dIMP、ならびにdAMPおよびdTMPを含む得られた生成物は、配列番号5を有する)。したがって、鋳型非依存性核酸合成反応は、配列番号3の16-merの核酸のポリヌクレオチドを合成し続けることができ、開始剤、連結dIMPおよび新たに合成された16-merの核酸のポリヌクレオチドを含有する38-merの核酸(配列番号6)を生成することができる。このような38-merの核酸(配列番号6)の調製は、上記のように15%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって確認した。
【0078】
鋳型非依存性核酸合成は当業者の専門知識および日常的な技能の範囲内であるので、配列番号3の16-merの核酸の核酸は、本明細書に提供される情報を用いて当業者によって新規に合成され得ることに留意されたい。この実施例では、実験手順を単純化するために、16-merの核酸を、以下のセクションCに記載のように連結dIMPを用いて開始剤と連結して、16-merの核酸の鋳型非依存性核酸合成を象徴した。
C.AAG、NeiおよびT4 PNKPの組み合わせ処理による、新たに合成された核酸の放出および合成開始剤をその元の形態へ戻す復帰
【0079】
新たに合成された核酸を放出し、酵素によって合成開始剤を再生することの実現可能性を実証するために、開始剤(配列番号1)、連結dIMPおよび新たに合成された16-merのポリヌクレオチド(配列番号3)を含有する一本鎖38-merの核酸(配列番号6)を調製した。具体的には、16-merのポリヌクレオチドを、Pfuexo-DNAポリメラーゼを使用して連結dUMPを用いて開始剤に連結した。
【0080】
一本鎖38-merの核酸(25 nM)を、New England Biolabs(Ipswich、MA、United States)から購入したAAG、NeiおよびT4 PNKPをそれぞれ10ユニット添加することにより、イノシン切除、脱塩基部位/核酸骨格切断および脱リン酸化反応に供した。1倍切断緩衝液[10 mM MgCl2、50 mM KCl、5 mM ジチオスレイトール(DTT)、および50 mM Tris-HCl;pH7.5]中で、37℃で15分間反応を行った。
【0081】
対照実験では、一本鎖38-merの核酸(配列番号6)も、同一の実験条件下でAAG、NeiまたはAAGとNeiとの混合物による処理に供した。次いで、2倍クエンチ溶液(95% ホルムアミドおよび25 mM EDTA)10μLを添加することによって各反応を停止させ、酵素を98℃で10分間加熱することによって不活性化した。反応生成物を20%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって分析し、Amersham Typhoon Imager、GE Healthcare Life Sciences(Marlborough、MA、United States)によって可視化した。
【0082】
図6に例示するように、AAG、NeiおよびT4 PNKPの混合物による処理は、一本鎖38-merの核酸からの連結dIMPの除去、新たに合成された16-merポリヌクレオチド(配列番号3)の放出、および3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤(配列番号1)の再生をもたらした。AAG単独、Nei単独、またはAAGとNeiとの組み合わせのいずれも、新たに合成された核酸を効率的かつ完全に切り離し、同時に3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤を再生することができない。
実施例3.
鋳型依存性核酸合成、ならびにUDG、NeiおよびT4 PNKPによる、合成開始剤を元の形態へ戻す復帰
【0083】
鋳型依存性核酸合成に使用される開始剤が核酸合成後にその元の形態に戻るよう変換され得るかどうかを試験するために、以下の実験手順を行った。この実施例で適用される、連結dUTPを使用した鋳型依存性核酸合成および酵素を利用した開始剤の元の形態への復帰の詳細なスキームを
図7に例示する。
A.UDG、NeiおよびT4 PNKPの組み合わせ処理による、新たに合成された核酸の放出および合成開始剤をその元の形態へ戻す復帰
【0084】
新たに合成された核酸を放出し、酵素によって合成開始剤を再生することの実現可能性を実証するために、開始剤、連結dUMPおよび新たに合成された16-merのポリヌクレオチドを含有する一本鎖38-merの核酸(配列番号4)を、実施例1に記載のように調製した。鋳型依存性核酸合成を例示するために、一本鎖38-merの核酸(配列番号4)を、95℃で10分間加熱することによって相補的一本鎖38-mer核酸(配列番号7)とハイブリダイズさせ、続いて4℃にゆっくり冷却して、二重の平滑末端二本鎖38-merの核酸を形成した。相補的一本鎖38-merの核酸(配列番号7)は、Integrated DNA Technologies(Coralville、Iowa、United States)から入手した。
【0085】
25 nMの二重38-merの核酸を、New England Biolabs(Ipswich、MA、United States)から購入したUDG、NeiおよびT4 PNKPをそれぞれ10ユニット添加することにより、ウラシル切除、脱塩基部位/核酸骨格切断および脱リン酸化反応に供した。1倍切断緩衝液[10 mM MgCl2、50 mM KCl、5 mM ジチオスレイトール(DTT)、および50 mM Tris-HCl;pH7.5]中で、37℃で15分間反応を行った。
【0086】
対照実験では、二重38-merの核酸を、同一の実験条件下でUDG、NeiまたはUDGとNeiとの混合物による処理に供した。次いで、2倍クエンチ溶液(95% ホルムアミドおよび25 mM EDTA)10μLを添加することによって各反応を停止させ、酵素を98℃で10分間加熱することによって不活性化し、二重38-merの核酸を変性させた。反応生成物を20%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって分析し、Amersham Typhoon Imager、GE Healthcare Life Sciences(Marlborough、MA、United States)によって可視化した。
【0087】
図8に示すように、UDG、NeiおよびT4 PNKPの混合物による処理は、38-merの核酸からの連結dUMPの除去、二重38-merの核酸の熱変性後に新たに合成された16-merポリヌクレオチド(配列番号3)の放出、および3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤(配列番号1)の再生をもたらした。UDG単独、Nei単独、またはUDGとNeiとの組み合わせのいずれも、二重38-merの核酸の熱変性後に新たに合成された核酸を効率的かつ完全に放出し、同時に3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤を再生することができない。
実施例4.
鋳型依存性核酸合成、ならびにAAG、NeiおよびT4 PNKPによる、合成開始剤を元の形態へ戻す復帰
【0088】
鋳型依存性核酸合成に使用される開始剤が核酸合成後にその元の形態に戻るよう変換され得るかどうかを試験するために、以下の実験手順を行った。この実施例で適用される、連結dITPを使用した鋳型依存性核酸合成および酵素を利用した開始剤の元の形態への復帰の詳細なスキームを
図9に例示する。
A.AAG、NeiおよびT4 PNKPの組み合わせ処理による、新たに合成された核酸の放出および合成開始剤を元の形態へ戻す復帰
【0089】
新たに合成された核酸を放出し、酵素によって合成開始剤を再生することの実現可能性を実証するために、開始剤、連結dIMPおよび新たに合成された16 merのポリヌクレオチドを含有する一本鎖38merの核酸(配列番号6)を、実施例2に記載のように調製した。鋳型依存性核酸合成を例示するために、一本鎖38-merの核酸(配列番号6)を、95℃で10分間加熱することによって相補的38-merの核酸(配列番号7)とハイブリダイズさせ、続いて4℃にゆっくり冷却して、二重の平滑末端二本鎖38-merの核酸を形成した。相補的一本鎖38-merの核酸(配列番号7)は、Integrated DNA Technologies(Coralville、Iowa、United States)から入手した。25 nMの二重38-merの核酸を、New England Biolabs(Ipswich、MA、United States)から購入したAAG、NeiおよびT4 PNKPをそれぞれ10ユニット添加することにより、イノシン切除、脱塩基部位/核酸骨格切断および脱リン酸化反応に供した。1倍切断緩衝液[10 mM MgCl2、50 mM KCl、5 mM ジチオスレイトール(DTT)、および50 mM Tris-HCl;pH7.5]中で、37℃で15分間反応を行った。
【0090】
対照実験では、二重38-merの核酸を、同一の実験条件下でAAG、NeiまたはAAGとNeiとの混合物による処理に供した。次いで、2倍クエンチ溶液(95% ホルムアミドおよび25 mM EDTA)10μLを添加することによって各反応を停止させ、酵素を98℃で10分間加熱することによって不活性化し、二重核酸を変性させた。反応生成物を20%変性尿素-ポリアクリルアミドゲルによって分析し、Amersham Typhoon Imager、GE Healthcare Life Sciences(Marlborough、MA、United States)によって可視化した。
【0091】
図10に示すように、AAG、NeiおよびT4 PNKPの混合物による処理は、二重38-merの核酸からの連結dIMPの除去、二重38-merの核酸の熱変性後に新たに合成された16-merのポリヌクレオチド(配列番号3)の放出、および3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤(配列番号1)の再生をもたらした。AAG単独、Nei単独、またはAAGとNeiとの組み合わせのいずれも、二重38-merの核酸の熱変性後に新たに合成された核酸を効率的かつ完全に放出し、同時に3’末端にヒドロキシル基を有する開始剤を再生することができない。
【0092】
本明細書で引用されるすべての特許および参考文献は、参照としてその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、定義を含むこの場合の説明が優先する。
【0093】
本開示は、例示的実施形態と考えられるものに関連して説明されてきたが、本開示は、開示された実施形態に限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成を網羅し、そのようなすべての修正および同等の構成を包含することを意図していることが理解されよう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸合成および
前記核酸合成のための再利用可能な開始剤の再生のための方法であって、以下の工
程:
前記核酸合成のために
、固体支持体に接着させた開始剤を
ポリメラーゼの存在下で連結ヌクレオチド
に曝露して
、前記連結ヌクレオチドが前記開始剤に組み込まれるようにする工程
であって、前記連結ヌクレオチドが、基質塩基、基質糖、および3’ヒドロキシル基を有する、工程;
前記連結ヌクレオチドを含有する前記開始剤を
前記ポリメラーゼの存在下でヌクレオチドモノマー
に曝露して
、核酸が合成されて前記連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤に
結合されるようにする工程;
単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程
であって、前記基質塩基を有する前記連結ヌクレオチドが、前記単官能性DNAグリコシラーゼによって認識可能かつ切除可能である、工程;
前記基質塩基を前記単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供し
、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて脱塩基部位が生成されるされるようにする工程;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程
であって、前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによって、得られた前記脱塩基部位が認識可能であり、前記基質糖が切断可能である、工程;
前記脱塩基部位を前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し
する工程であって、前記脱塩基部位において前記基質糖および前記核酸の骨格の両方が切断されて、前記核酸が前記開始剤から放出され
、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドが3’リン酸基を有し
、前記合成された核酸の5’末端ヌクレオチドが5’リン酸基を有するようにする工程;
3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、前記3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供し
、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドの3’リン酸基が、元の3’ヒドロキシル基に戻るよう変換される工程、
を含む方法。
【請求項2】
核酸合成のための再利用可能な開始剤を再生する方法であって、以下の工程:
単官能性DNAグリコシラーゼを提供する工程;
前記核酸合成のための開始剤と合成された核酸とを提供する工程であって、前記開始剤が、固体支持体に接着されており、前記合成された核酸が、基質塩基および基質糖を有する連結ヌクレオチドの直後で前記開始剤に連結されており、前記基質塩基を有する前記連結ヌクレオチドが、前記単官能性DNAグリコシラーゼによって認識可能および切除可能である工程;
前記基質塩基を前記単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供する工程であって、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて、脱塩基部位が生成されるようにする工程;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼを提供する工程であって、前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによって、得られた前記脱塩基部位が認識可能であり、前記基質糖が切断可能である、工程;
前記脱塩基部位を前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供し、前記脱塩基部位において前記基質糖および前記核酸の骨格の両方が切断されて、前記合成された核酸が前記開始剤から放出され、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドが3’リン酸基を有し、前記合成された核酸の5’末端ヌクレオチドが5’リン酸基を有するようにする工程;
3’ホスファターゼ活性保有酵素を提供する工程;ならびに
前記開始剤の3’末端ヌクレオチドを、前記3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供し、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドの3’リン酸基が、元の3’ヒドロキシル基に戻るよう変換される工程、
を含む方法。
【請求項3】
核酸を合成する方法であって、以下の工程:
a)固体支持体に接着させた開始剤を提供する工程であって、前記開始剤が、基質塩基、基質糖、および3’ヒドロキシル基を有する連結ヌクレオチドに結合されている、工程;
b)前記連結ヌクレオチドに結合させた前記開始剤を、ポリメラーゼの存在下でヌクレオチドモノマーに曝露する工程であって、前記ヌクレオチドモノマーの1つと前記連結ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基とを反応させることによって、前記核酸が合成され、前記開始剤と結合するようにする工程;
c)前記基質塩基を単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供する工程であって、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて、脱塩基部位が生成される工程;
d)前記脱塩基部位を脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供する工程であって、前記脱塩基部位において前記基質糖および糖リン酸骨格の両方が切断されて、前記核酸が前記開始剤から放出され、それにより、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドに3’リン酸基が形成される工程;ならびに
e)前記3’リン酸基を有する3’末端ヌクレオチドを、3’ホスファターゼ活性保有酵素での脱リン酸化処理に供する工程であって、前記3’末端ヌクレオチドにヒドロキシル基が形成されて、前記開始剤を再生させる工程、
を含む方法。
【請求項4】
核酸合成のための開始剤を再生する方法であって、以下の工程:
a)固体支持体に接着させた開始剤を提供する工程であって、前記開始剤が、連結ヌクレオチドおよび合成された核酸と結合されており、前記連結ヌクレオチドが基質塩基および基質糖を有する、工程;
b)前記基質塩基を単官能性DNAグリコシラーゼによる切除処理に供する工程であって、前記基質塩基が前記単官能性DNAグリコシラーゼによって切除されて、脱塩基部位が生成される工程;
c)前記脱塩基部位を脱塩基部位エンドヌクレアーゼによる切断処理に供する工程であって、前記脱塩基部位において前記基質糖および糖リン酸骨格の両方が切断されて、前記合成された核酸が前記開始剤から放出され、それにより、前記開始剤の3’末端ヌクレオチドに3’リン酸基が形成される工程;ならびに
d)前記3’リン酸基を有する3’末端ヌクレオチドを、3’ホスファターゼ活性保有酵素による脱リン酸化処理に供する工程であって、前記3’末端ヌクレオチドにヒドロキシル基が形成されて、さらなる核酸合成のために再利用される前記開始剤を再生させる工程、
を含む方法。
【請求項5】
前記単官能性DNAグリコシラーゼが、ウラシル-DNAグリコシラーゼ、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ、一本鎖選択的単官能性ウラシルDNAグリコシラーゼ1、メチル結合ドメイングリコシラーゼ4、チミンDNAグリコシラーゼ、mutYホモログDNAグリコシラーゼ、アルキルプリングリコシラーゼC、アルキルプリングリコシラーゼD、脱塩基部位リアーゼ活性を有さない8-オキソ-グアニングリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼIII様1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ1、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ2、脱塩基部位リアーゼ活性を有さないエンドヌクレアーゼVIII様グリコシラーゼ3、およびその酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1
から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記単官能性DNAグリコシラーゼがウラシル-DNAグリコシラーゼおよびアルキルアデニンDNAグリコシラーゼのうちの1つである、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼVIII、エンドヌクレアーゼIII、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1
から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱塩基部位エンドヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼVIIIである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、ポリヌクレオチドキナーゼ3’-ホスファターゼ、3’-ホスホエステラーゼ、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1
から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記3’ホスファターゼ活性保有酵素が、3’-ホスファターゼ活性を有するT4 ポリヌクレオチドキナーゼ、およびジンクフィンガーDNA 3’-ホスホエステラーゼ、からなる群から選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシル、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、グアニン、5-フルオロウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-ホルミルシトシン、5-カルボキシルシトシン、3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-メチルグアニン、N
6-メチルアデニン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン、5-ヒドロキシルシトシン、5-ヒドロキシウラシル、ジヒドロキシウラシル、エテノシトシン、エテノアデニン、チミングリコール、シトシングリコール、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、アデニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンのホルムアミドピリミジン誘導体、グアニンに対合したアデニン、グアニンに対合したウラシル、アデニンに対合したウラシル、グアニンに対合したチミン、グアニンに対合したエテノシトシン、8-オキソ-7,8-ジヒドログアニンに対合したアデニン、およびグアニンに対合した2-ヒドロキシルアデニンからなる群から選択される、請求項1
から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記連結ヌクレオチドの基質塩基が、ウラシルまたはヒポキサンチンである、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記基質塩基がウラシルであり、それによりデオキシウリジンが形成される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項14】
前記基質塩基がヒポキサンチンであり、それによりデオキシイノシンが形成される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項15】
前記開始剤、前記合成された核酸および前記連結ヌクレオチドが、それぞれ鋳型非依存型および鋳型依存型のうちの1つである、請求項1
から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリメラーゼが、ファミリーA DNAポリメラーゼ、ファミリーB DNAポリメラーゼ、ファミリーC DNAポリメラーゼ、ファミリーD DNAポリメラーゼ、ファミリーX DNAポリメラーゼ、ファミリーY DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびそれらの酵素的に活性な断片からなる群から選択される、請求項1
または3に記載の方法。
【請求項17】
核酸合成および
前記核酸合成のための再利用可能な核酸の再生のためのキットであって、
前記核酸合成のためのポリメラーゼおよび連結ヌクレオチド;
単官能性DNAグリコシラーゼ;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼ:ならびに
3’ホスファターゼ活性保有酵素;
を含み、請求項1に記載の方法に従って使用されるキット。
【請求項18】
核酸を合成するためのキットであって、
ポリメラーゼ;
固体支持体に接着させた開始剤;
単官能性DNAグリコシラーゼ;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼ;ならびに
3’ホスファターゼ活性保有酵素;
を含み、請求項
3に記載の方法に従って使用されるキット。
【請求項19】
核酸合成のための開始剤を再生するためのキットであって、
固体支持体に接着させた開始剤;
単官能性DNAグリコシラーゼ;
脱塩基部位エンドヌクレアーゼ;ならびに
3’ホスファターゼ活性保有酵素;
を含み、請求項
4に記載の方法に従って使用されるキット。
【国際調査報告】