IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローディーエックス・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-505119合成ポリヌクレオチド及び対立遺伝子を選択的に増幅する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(54)【発明の名称】合成ポリヌクレオチド及び対立遺伝子を選択的に増幅する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6858 20180101AFI20240126BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240126BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240126BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240126BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20240126BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20240126BHJP
【FI】
C12Q1/6858 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6883 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571247
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022014908
(87)【国際公開番号】W WO2022169846
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/144,723
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523292359
【氏名又は名称】ローディーエックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロディ,チャールズ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR14
4B063QR42
4B063QR50
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
代替的な実施形態において、提供されるものは、特定の対立遺伝子の増幅若しくは回収に対して選択することができ、一方で標的配列内の特定のヌクレオチド位置において任意の代替的対立遺伝子若しくは突然変異の増幅若しくは回収に干渉しない、プライマーベース核酸増幅方法である、又は換言すると、提供されるものは、1つの対立遺伝子を選択的に抑制し、一方で同時に任意の代替的対立遺伝子を増幅する方法である、又は提供されるものは、野生型配列を抑制し、一方で同時に点突然変異を増幅する方法であり、一塩基バリアント(SNV)、挿入及び欠失を増幅することを含む。代替的な実施形態において、核酸組成物の一部分は、特定の核酸標的配列の増幅を選択的に抑制せず、それによって、増幅の成功を決定すること、及び特定の核酸標的配列と、代替的対立遺伝子又は突然変異をコードするものとの相対比を決定することに有用な内部標準を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3’末端を基準として、第1(最後)、第2(最後から2番目)、第3(最後から3番目)、第4(最後から4番目)、第5(最後から5番目)若しくは第6(最後から5番目の1つ前の残基)の位置に配置されている、又は3’末端からさらにより遠位の位置にある少なくとも単一残基(セレクターヌクレオチドと称される)を含む合成DNAポリヌクレオチド(セレクターポリヌクレオチドと称される)であって、
前記少なくとも単一残基セレクターヌクレオチドが、前記セレクターポリヌクレオチドを標的核酸に結合させるのに必要である前記セレクターポリヌクレオチドの領域又はセクション内の任意の他の残基と構造的又は化学的に異なり、
前記合成DNAポリヌクレオチド(セレクターポリヌクレオチドと称される)が、DNAポリメラーゼにより伸長され得る3’末端を有する、又はDNAポリメラーゼにより伸長され得る3’末端を有するようにプロセシングされる、
合成DNAポリヌクレオチド。
【請求項2】
単一セレクターヌクレオチド残基が、3’末端から第2の位置、又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後から2番目の位置に配置される、請求項1に記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項3】
単一セレクターヌクレオチド残基が、3’末端から第3の位置、又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後から3番目の位置に配置される、請求項1に記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項4】
単一セレクターヌクレオチド残基が、3’末端から第1の位置、又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後の位置に配置される、請求項1に記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項5】
単一セレクターヌクレオチド残基が、3’末端から第4の位置、又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後から4番目の位置に配置される、請求項1に記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項6】
単一セレクターヌクレオチド残基が、3’末端から第5の位置、又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後から5番目の位置に配置される、請求項1に記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項7】
単一セレクターヌクレオチド残基が、3’末端から第6の位置、又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後から5番目の1つ前の残基の位置に配置される、請求項1に記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項8】
セレクターヌクレオチドがリボヌクレオチドである、請求項1~7に記載又は請求項1~7のいずれかに記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項9】
セレクターヌクレオチドが少なくとも1個のリボヌクレオチドを含む又は少なくとも1個のリボヌクレオチドから構成される、請求項1~8に記載又は請求項1~8のいずれかに記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項10】
セレクターヌクレオチドが少なくとも1個の合成若しくは非天然ヌクレオチドを含む又はこれらから構成される、請求項1~9に記載又は請求項1~9のいずれかに記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)。
【請求項11】
第1の核酸配列を第2の核酸配列と区別するための核酸増幅方法であって、前記第1の核酸及び前記第2の核酸が同じ増幅反応混合物中にあり、
(a)請求項1~10のいずれかに記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を提供するステップ又は提供したステップと、ここで、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)がセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一セレクターリボヌクレオチド残基)を含有する、
(b)DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドを提供するステップ又は提供したステップと、ここで、任意選択的に前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、ゲノム(任意選択的に、細胞、微生物若しくはウイルスゲノム)、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーを含むか又はこれらに由来し、任意選択的に前記ゲノム、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーが、真核生物若しくは原核生物、植物若しくは動物(任意選択的的に、ヒト)、微生物(任意選択的に、細菌、藻類、原生生物、古細菌若しくは真菌)又はウイルス若しくはバクテリオファージに由来する、
(c)前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと接触させる、アニールする又はハイブリダイズするステップと、ここで、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)が前記DNAポリヌクレオチド中の相補的な配列又は実質的に相補的な配列にアニールする又は特異的にハイブリダイズする条件下で、前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)に鋳型(鋳型DNAポリヌクレオチド)として作用し、それによって核酸二重鎖を生成し、
ここで、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)が、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一セレクターリボヌクレオチド残基)の位置で鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する(例えば、図2Aを参照すること)、又はセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置で鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成しない(例えば、図2Bを参照すること)のいずれかである、
(d)二重鎖を、5’から3’への伸長活性を有する及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び/又は5’から3’への伸長活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素が酵素的に活性である条件下で、前記DNAポリメラーゼ酵素、並びに/又は5’から3’への伸長活性を有する前記DNAポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する前記酵素と接触させるステップと、ここで、
(i)セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)と前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドとの間でミスマッチしており、前記DNAポリメラーゼが、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の残部から、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持しない新たに伸長したDNAポリヌクレオチドまで伸長する前に、前記3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、結果的に3’末端から、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)及び前記セレクターヌクレオチドの3’の全てのヌクレオチドを含む前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を酵素的に除去する、又は
(ii)前記DNAポリメラーゼが、前記セレクターヌクレオチド(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を除去することなく、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)において、前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと塩基対形成している合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を伸長し、よって新たに伸長したDNAポリヌクレオチドに前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)のセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持する又は組み込む、
(e)新たに作り出された前記核酸二重鎖をリボヌクレアーゼ酵素と接触させるステップと、ここで、任意選択的に、リボヌクレアーゼ酵素は熱安定性であり、前記熱安定性リボヌクレアーゼは、熱安定性リボヌクレアーゼ酵素が活性である条件下で、熱安定性リボヌクレアーゼH2酵素であり、ここで、
(i)前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、反応に存在する3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性により除去される場合、前記単一セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対して5’であった前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分は、伸長した前記合成ポリヌクレオチド内に保持され、又は
(ii)前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、伸長した前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)内に保持され、デオキシリボヌクレオチド残基とマッチする場合、前記熱安定性リボヌクレアーゼ酵素は、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)において切断し、それによって、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対し5’であった伸長した前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を脱離し、
ここで、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対して5’であった前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を保持する伸長した前記合成DNAポリヌクレオチド(又は伸長したセレクターポリヌクレオチド)が、指数関数的に増幅され得、前記伸長した合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)から脱離した、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対して5’であった前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を有した伸長した前記DNAポリヌクレオチド(伸長したセレクターポリヌクレオチド)が、指数関数的に増幅され得ず、それによってこれらの増幅は選択的に抑制され、第1の核酸配列を第2の核酸配列と区別する、
を含む、方法。
【請求項12】
第1の核酸配列を第2の核酸配列と区別するための核酸増幅方法であって、前記第1の核酸及び前記第2の核酸が同じ増幅反応混合物中にあり、
(a)請求項1~10のいずれかに記載の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を提供するステップ又は提供したステップと、ここで、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)がセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を含有する、
(b)DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドを提供するステップ又は提供したステップと、ここで、任意選択的に前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、ゲノム(任意選択的に、細胞、微生物若しくはウイルスゲノム)、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーを含むか又はこれらに由来し、任意選択的に前記ゲノム、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーが、真核生物若しくは原核生物、植物若しくは動物(任意選択的に、ヒト)、微生物(任意選択的に、細菌、藻類、原生生物、古細菌若しくは真菌)又はウイルス若しくはバクテリオファージに由来する、
(c)前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと接触させる、アニールする又はハイブリダイズするステップと、ここで、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)が前記DNAポリヌクレオチド中の相補的な配列又は実質的に相補的な配列にアニールする又は特異的にハイブリダイズする条件下で、前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)に鋳型(鋳型DNAポリヌクレオチド)として作用し、それによって核酸二重鎖を生成し、
ここで、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)が、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置で前記鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する(例えば、図10Aを参照すること)、又は前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置で前記鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成しない(例えば、図10Bを参照すること)のいずれかである、
(d)前記核酸二重鎖を、5’から3’への伸長活性を有する及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び/又は5’から3’への伸長活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素が酵素的に活性である条件下で、前記DNAポリメラーゼ酵素、並びに/又は5’から3’への伸長活性を有する前記DNAポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する前記酵素と接触させるステップと、ここで、
(i)前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)と前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドとの間でミスマッチしており、3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、結果的に、前記DNAポリメラーゼが、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の残部から、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持しない新たに伸長したDNAポリヌクレオチドまで伸長する前に、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)及び前記セレクターヌクレオチドの3’の全てのヌクレオチドを含む前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を3’末端から酵素的に除去する、又は
(ii)前記DNAポリメラーゼが、前記セレクターヌクレオチド(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を除去することなく、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)において、前記DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと塩基対形成している合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を伸長し、よって新たに伸長したDNAポリヌクレオチドに前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持する又は組み込む、並びに
(e)増幅した後、アンプリコン(又は新たに伸長した合成DNAポリヌクレオチドすなわち、セレクターポリヌクレオチド)を、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の5’若しくは3’側で切断する、又は存在する場合、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の3個のヌクレオチド内で切断する試薬又は酵素により処理するステップと、
ここで、任意選択的に、前記試薬又は酵素が、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持するアンプリコン(又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチド)から、結合部分又は相当量の組み込まれた合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターヌクレオチド)、又はプライマーを脱離し、よって、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を有さず、よって結合部分又は相当量の組み込まれた前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターヌクレオチド)又はプライマーを保持するアンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドが、優先的に捕捉(若しくは物理的に単離)される又は続いて優先的に増幅されることを可能にする、
を含む、方法。
【請求項13】
単一セレクターリボヌクレオチドの5’側の切断に使用される試薬が、リボヌクレアーゼH2である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
単一セレクターリボヌクレオチドの3’側の切断に使用される試薬が、熱の存在下の水酸化ナトリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
核酸二重鎖を変性して一本鎖DNAを生成することをさらに含み、一本鎖DNAが、単一セレクターリボヌクレオチドの3’側を切断するリボヌクレアーゼで処理される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項16】
ポリメラーゼ及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、異なる酵素により提供される、請求項11~15のいずれか又は請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)が、核酸増幅方法に使用されるプライマーである、又はプライマーを含む、請求項11~16のいずれか又は請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
増幅方法が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
増幅の際に、伸長した合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーが、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の5’若しくは3’側において又は存在する場合、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の3個のヌクレオチド内において切断する酵素で処理され、よって前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持するアンプリコン(又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチド)から合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーの部分を脱離し、前記合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーが、増幅反応でリターンプライマーの伸長により完全にコピーされることを防止し、前記セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を有さないアンプリコンが、指数関数的な増幅を支持するのに十分な合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマー配列を保持することによって、優先的に増幅されることを可能にする、請求項11~18のいずれか又は請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーが、リボヌクレオチドを含み、セレクターヌクレオチドの5’側で切断する酵素が、リボヌクレアーゼH2である、請求項11~19のいずれか又は請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
リボヌクレアーゼH2が、熱安定性である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
熱安定性リボヌクレアーゼH2が、パイロコッカス・アビシRNアーゼH2である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、対応する通常のデオキシリボヌクレオチドにより置き換えられてDNA増幅プライマーを作り出し、特定の量のこのDNA増幅プライマーが、別の状況ではセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を含有するが今はセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を欠いており、それによってセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に特異的な試薬又は酵素による切断に今は抵抗性がある、ある特定の量のアンプリコンの産生を可能にするために、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を含有する第1の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーと混合されることを除いて、第1の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)と同一の第2の合成DNAポリヌクレオチド又はプライマーをさらに含む、請求項11~22のいずれか又は請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
第2の合成DNAポリヌクレオチドにより産生されるアンプリコンが、増幅が良好に働いたことを実証する内部反応標準として、及び第1の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)により産生されたアンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドの量と比較することができる内部基準として使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドの配列が、任意選択的に、サンガー配列決定、次世代配列決定(NGS)、単一分子リアルタイム(SMRT)配列決定、ナノポアDNA配列決定、可逆的末端化学(例えば、SOLEXA技術(Illumina))、コンビナトリアルプローブアンカー合成(cPAS)、質量分析配列決定又は大規模並列シグネチャー配列決定(MPSS)の使用を含む方法を使用する、DNA配列決定により決定される、請求項11~24のいずれか又は請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
元のセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置に対応するヌクレオチドの素性が、目的部位にわたるプライマー伸長により決定される、請求項11~25のいずれか又は請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
目的部位のヌクレオチドの素性及び相対量が、標識若しくは質量を使用することによって又はこれらを手段として決定され、任意選択的に目的部位のヌクレオチドの素性及び相対量が、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を使用して作り出されたアンプリコン中の目的部位にわたるプライマーの単一塩基伸長を含む方法によって決定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
目的のアンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドの産生が、定量的PCR(qPCR)、デジタルPCR、又は同等物によって決定される、請求項11~27のいずれか又は請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
請求項11~28のいずれかに記載の方法を実践するための材料、任意選択的に酵素及び/又は合成DNAポリヌクレオチド、任意選択的にセレクターポリヌクレオチド(任意選択的に、請求項1~10のいずれかに記載の1つ又は複数の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド))を含み、任意選択的に請求項11~28のいずれか又は請求項1~28のいずれかに記載の方法を実践するための使用説明書をさらに含む、キット又は製品。
【請求項30】
疾患又は状態を診断する方法であって、疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在又は非存在を決定することにより、診断の必要性のある個体が疾患又は状態を有するかを決定することを含み、
疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在又は非存在が、請求項11~28のいずれか又は請求項1~28のいずれかに記載の方法を使用して決定される、
方法。
【請求項31】
疾患が、がんである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
疾患又は状態を治療する、寛解させる、又は予防する方法であって、その必要性のある個体を、疾患又は状態に指示された薬物、薬物組み合わせ又は処置レジメンにより治療することを含み、治療、寛解又は予防の必要性のある個体が、請求項30又は請求項31に記載の診断方法を使用して疾患又は状態を有する又は有する素因があると診断される、方法。
【請求項33】
疾患が、がんであるか、又は状態が、遺伝性疾患若しくは遺伝的状態である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
生物標本においての稀な対立遺伝子の存在又は非存在を検出するための方法であって、請求項11~28のいずれか又は請求項1~28のいずれかに記載の方法の使用を含み、任意選択的に生物標本が、その必要性のある個体の生検、又は組織若しくは血液試料、又は液体試料を含む、又はこれらに由来する、方法。
【請求項35】
生物標本における稀な対立遺伝子の存在又は非存在の検出が、非侵襲的出生前検査(NIPT)のため、又は臓器移植(任意選択的に、実質臓器若しくは骨髄の移植)後の組織適合性を査定する若しくはドナー由来核酸を検出するため、又はその必要性のある個体で薬剤耐性(AMR)若しくは菌抵抗性の早期検出を査定するため、又は最小残存病変(MRE)の存在を査定する、任意選択的に骨髄除去後のMREを査定するためである、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許協力条約(PCT)国際出願は、2021年2月2日に出願した米国仮特許出願第(USSN)63/144,723号の米国特許法119条(e)に基づく優先権の利益を主張する。前述の出願は、その全体及び全ての目的において参照により本明細書に明確に組み込まれる。本明細書で引用される全ての出版物、特許、特許出願は、全ての目的において参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、分子生物学及び例えばゲノムからの核酸の次世代配列決定(NexGen Sequencing)(NGS)などのハイスループット配列決定に関する。代替的な実施形態において、提供されるものは、特定の対立遺伝子の増幅若しくは回収に対して選択することができ、一方で標的配列内の特定のヌクレオチド位置において任意の代替的対立遺伝子若しくは突然変異の増幅若しくは回収に干渉しない、プライマーベース核酸増幅方法である、又は換言すると、提供されるものは、1つの対立遺伝子を選択的に抑制し、一方で同時に任意の代替的対立遺伝子を増幅する方法である、又は提供されるものは、野生型配列を抑制し、一方で同時に、一塩基バリアント(SNV)、挿入及び欠失を増幅することを含む、点突然変異を増幅する方法である。代替的な実施形態では、cDNAの融合も検出され得る。代替的な実施形態において、核酸組成物の一部分は、特定の核酸標的配列の増幅を選択的に抑制せず、それによって、増幅の成功を決定すること及び特定の核酸標的配列と、代替的対立遺伝子又は突然変異をコードするものとの相対比を決定することに有用な内部標準を提供する。代替的な実施形態において、提供されるものは、疾患又は状態を診断する方法であって、合成DNAポリヌクレオチド(セレクター(selector)ポリヌクレオチドと称される)及び/又は本明細書に提供される方法の使用を含む方法である。代替的な実施形態において、提供されるものは、疾患又は状態を治療する、寛解させる又は予防する方法であって、合成DNAポリヌクレオチド(セレクターポリヌクレオチドと称される)及び/又は本明細書に提供される診断方法を含む、本明細書に提供される方法の使用を含む方法である。
【背景技術】
【0003】
液体生検(Liquid Biopsy)の出現によって、稀な対立遺伝子の検出がますます重要になってきた。循環細胞外DNA(circulating cell-free DNA)(ccfDNA)は、あらゆる人の血液中に存在し、大部分は健康な正常細胞に由来する。しかし、妊娠中の女性では、少量の胎児DNAも存在し、非侵襲的出生前検査(NIPT)として公知の手順で遺伝子疾患を探すために使用することができ、同様に、実質臓器移植(SOT)では、微量のドナー由来細胞外DNA(dd-cfDNA)を使用して、様々な臓器の急性拒絶反応を検出することができ、がんでは、僅かなレベルの循環腫瘍DNA(ctDNA)が疾患の早期再発の検出に使用されている。感受性、特異性及び定量化を改善する誤り訂正方法(例えば、分子指標)を用いることによって、ハイスループット次世代配列決定(NGS)は、現在、全ての液体生検用途にとって優れた検出デバイスである。しかし、大多数の配列読取り値は情報価値がなく、NIPTによる材料読取り値、dd-cfDNAによるレシピエント読取り値及びccfDNAによる野生型読取り値である。多数の情報価値のない読取り値はスループットを減少し、費用を増加し、検出を妨げる。
【0004】
対立遺伝子特異的PCR(AS-PCR)を使用して、所望の標的(特定の対立遺伝子又は体細胞突然変異)を選択的に増幅することができるが、プルーフリーディングポリメラーゼは使用することができず、ミスプライミング(mispriming)は偽陽性をもたらす可能性があり、異なるプライマーが所望の対立遺伝子のそれぞれに必要である。望ましくない対立遺伝子に対してブロッカーを使用することもできるが、ブロッカーはPCRアッセイの「フットプリント」を増加し、フットプリントは、ccfDNAのDNAの短い小片(サイズの中央値はおよそ168bpであり、胎児又は腫瘍DNAに由来する場合はさらに短くなる)を伴い、検出率を下げる。また、情報価値のない読取り値の数を劇的に低減することが望ましいが、そのような読取り値のセット数は、比較用の内部標準として有用であり、反応全体が良好に働いたことを確実にするために有用である。AS-PCR又はブロッカーのどちらも、このことを確実に行うことができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
代替的な実施形態において、提供されるものは、特定の核酸標的配列の増幅を選択的に抑制し、一方で抑制標的と僅かに1個のヌクレオチドだけが異なっている核酸(又はポリヌクレオチド、又はcDNAが挙げられるデオキシリボ核酸(DNA))配列に存在する代替的対立遺伝子又は突然変異を選択的に増幅し、代替的対立遺伝子又は突然変異の分析及び測定を可能にする方法に有用な、プライマーベース核酸組成物である。代替的な実施形態において、核酸組成物の一部分は、特定の核酸標的配列の増幅を選択的に抑制せず、それによって、増幅の成功を決定すること、及び特定の核酸標的配列と、代替的対立遺伝子又は突然変異をコードするものとの相対比を決定することに有用な内部標準を提供する。
【0006】
代替的な実施形態において、提供されるものは、核酸標的から結合部分を選択的に脱離することにより、核酸標的の単離を選択的に抑制する方法である。結合部分を選択的に保持している核酸標的の代替的対立遺伝子又は突然変異の回収又は保持は影響されない。代替的な実施形態において、使用される核酸組成物の一部分は、結合部分から選択的に脱離されず、それによって、回収の成功を決定すること、及び特定の核酸標的配列と、代替的対立遺伝子又は突然変異をコードするものとの相対比を決定することに有用な内部標準を提供する。
【0007】
代替的な実施形態において、対立遺伝子特異的又は突然変異特異的又はメチル化特異的な増幅又は捕捉を使用して、分子ハプロタイプを決定する。
【0008】
代替的な実施形態において、差は、配列決定、ハイブリダイゼーション、質量分析、又はヌクレオチド分解能が挙げられる、配列変化を検出することができる任意の他の技術により検出される。
【0009】
代替的な実施形態において、提供されるものは、3’末端を基準として、第1(最後)、第2(最後から2番目)、第3(最後から3番目)、第4(最後から4番目)、第5(最後から5番目)若しくは第6(最後から5番目の1つ前)の位置に配置されている、又は3’末端からさらにより遠位の位置にある少なくとも単一残基(セレクターヌクレオチドと称される)を含む合成DNAポリヌクレオチド(セレクターポリヌクレオチドと称される)であり、
少なくとも単一残基セレクターヌクレオチドは、セレクターポリヌクレオチドを標的核酸に結合させるのに必要であるセレクターポリヌクレオチドの領域又はセクション内の任意の他の残基と構造的又は化学的に異なり、
合成DNAポリヌクレオチド(セレクターポリヌクレオチドと称される)は、DNAポリメラーゼにより伸長され得る3’末端を有する、若しくはDNAポリメラーゼにより伸長され得る3’末端を有するようにプロセシングされる、又は
合成DNAポリヌクレオチドは、酵素により、任意選択的にDNAポリメラーゼ酵素により延長される能力に関して3’末端でブロックされない。
【0010】
本明細書に提供される合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の代替的な実施形態において、
・単一セレクターヌクレオチド残基は、3’末端から第2の位置又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後から2番目の位置に配置される、
・単一セレクターヌクレオチド残基は、3’末端から第3の位置又は合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の最後から3番目の位置に配置される、
・セレクターヌクレオチドは、少なくとも1個のリボヌクレオチド又は少なくとも1個の合成若しくは非天然ヌクレオチドを含む、又はこれらから構成される、及び/又は
・セレクターヌクレオチドはリボヌクレオチドである。
【0011】
代替的な実施形態において、提供されるものは、第1の核酸配列を第2の核酸配列と区別するための核酸増幅方法であって、第1及び第2の核酸が同じ増幅反応混合物中にあり、
(a)本明細書に提供又は記載される合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を提供するステップ又は提供したステップを含み、ここで、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)がセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を含有する、
(b)DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドを提供するステップ又は提供したステップと、ここで、任意選択的にDNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、ゲノム(任意選択的に、細胞、微生物(microbial)若しくはウイルスゲノム)、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーを含むか、又はこれらに由来し、任意選択的にゲノム、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーが、真核生物若しくは原核生物、植物若しくは動物(任意選択的に、ヒト)、微生物(任意選択的に、細菌、藻類、原生生物、古細菌(Archea)若しくは真菌)又はウイルス若しくはバクテリオファージに由来する、
(c)合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)をDNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと接触させる、アニールする又はハイブリダイズするステップと、ここで、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)がDNAポリヌクレオチド中の相補的な配列又は実質的に相補的な配列(例えば、配列は約95%~99%の配列同一性を有する場合に実質的に相補的な配列である)にアニールする又は特異的にハイブリダイズする条件下で、DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)に鋳型(鋳型DNAポリヌクレオチド)として作用し、それによって核酸二重鎖を生成し、
ここで、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)が、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置で鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する(例えば、「R」が、鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する単一リボヌクレオチド残基の位置を指す、図2Aを参照すること)、又はセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置で鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成しない(例えば、「R」が、鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成しない単一リボヌクレオチド残基の位置を指す(「X」で示されている)、図2Bを参照すること)のいずれかである、
(d)二重鎖を、5’から3’への伸長活性を有する及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び/又は5’から3’への伸長活性を有するポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素が酵素的に活性である条件下で、DNAポリメラーゼ酵素、並びに/又は5’から3’への伸長活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素と接触させるステップと、ここで、
(i)セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、すなわち、セレクターポリヌクレオチド)とDNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドとの間でミスマッチしており、DNAポリメラーゼが、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の残部から、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持しない新たに伸長したDNAポリヌクレオチドまで伸長する前に、3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、結果的に3’末端から、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)及びセレクターヌクレオチドの3’の全てのヌクレオチドを含む合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を酵素的に除去する、又は
(ii)DNAポリメラーゼが、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を除去することなく、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)において、DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと塩基対形成している合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を伸長し、よって新たに伸長したDNAポリヌクレオチドに合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)のセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持する又は組み込む、
(e)新たに作り出された核酸二重鎖をリボヌクレアーゼ酵素と接触させるステップと、ここで、任意選択的に、リボヌクレアーゼ酵素は熱安定性であり、熱安定性リボヌクレアーゼは、熱安定性リボヌクレアーゼ酵素が活性である条件下で、熱安定性リボヌクレアーゼH2酵素であり、ここで、
(i)セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、反応に存在する3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性により除去される場合、単一セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対して5’であった合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分は、伸長した合成ポリヌクレオチド内に保持され、又は
(ii)セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、伸長した合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)内に保持され、デオキシリボヌクレオチド残基とマッチする場合、熱安定性リボヌクレアーゼ酵素は、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)において切断し、それによって、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対して5’であった伸長した合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を脱離し、
ここで、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対して5’であった合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を保持する伸長した合成DNAポリヌクレオチド(又は伸長したセレクターポリヌクレオチド)が、指数関数的に増幅され得、伸長した合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)から脱離した、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に対して5’であった合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を有した伸長したDNAポリヌクレオチド(伸長したセレクターポリヌクレオチド)が、指数関数的に増幅され得ず、それによってこれらの増幅は選択的に抑制され、第1の核酸配列を第2の核酸配列と区別する
方法である。
【0012】
代替的な実施形態において、提供されるものは、第1の核酸配列を第2の核酸配列と区別するための核酸増幅方法であって、第1の核酸及び第2の核酸が同じ増幅反応混合物中にあり、
(a)本明細書に提供又は記載される合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を提供するステップ又は提供したステップと、ここで、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)がセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一セレクターリボヌクレオチド残基)を含有する、
(b)DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドを提供するステップ又は提供したステップと、ここで、任意選択的にDNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、ゲノム(任意選択的に、細胞、微生物若しくはウイルスゲノム)、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーを含むか又はこれらに由来し、任意選択的にゲノム、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーが、真核生物若しくは原核生物、植物若しくは動物(任意選択的に、ヒト)、微生物(任意選択的に、細菌、藻類、原生生物、古細菌若しくは真菌)又はウイルス若しくはバクテリオファージに由来する、
(c)合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)をDNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと接触させる、アニールする又はハイブリダイズするステップと、ここで、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)がDNAポリヌクレオチド中の相補的な配列又は実質的に相補的な配列にアニールする又は特異的にハイブリダイズする条件下で、DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドが、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)に鋳型(鋳型DNAポリヌクレオチド)として作用し、それによって核酸二重鎖を生成し、
ここで、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)が、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置で鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する(例えば、「R」が、鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する単一リボヌクレオチド残基の位置を指す、図10Aを参照すること)、又はセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置で鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成しない(例えば、「R」が、鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成しない単一リボヌクレオチド残基の位置を指す(「X」で示されている)、図10Bを参照すること)のいずれかである、
(d)核酸二重鎖を、5’から3’への伸長活性を有する及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び/又は5’から3’への伸長活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素が酵素的に活性である条件下で、DNAポリメラーゼ酵素、並びに/又は5’から3’への伸長活性を有するDNAポリメラーゼ酵素及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素と接触させるステップと、ここで、
(i)セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)とDNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドとの間でミスマッチしており、3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、結果的に、DNAポリメラーゼが、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の残部から、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持しない新たに伸長したDNAポリヌクレオチドまで伸長する前に、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)及びセレクターヌクレオチドの3’の全てのヌクレオチドを含む合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)の部分を3’末端から酵素的に除去する、又は
(ii)DNAポリメラーゼが、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を除去することなく、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)において、DNAポリヌクレオチド又は複数のDNAポリヌクレオチドと塩基対形成している合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を伸長し、よって新たに伸長したDNAポリヌクレオチドに合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)のセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持する又は組み込む、並びに
(e)増幅した後、アンプリコン(又は新たに伸長した合成DNAポリヌクレオチドすなわち、セレクターポリヌクレオチド)を、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の5’若しくは3’側で切断する、又は存在する場合、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の3個のヌクレオチド内で切断する試薬又は酵素により処理するステップと、
ここで、任意選択的に、試薬又は酵素が、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持するアンプリコン(又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチド)から、結合部分又は相当量の組み込まれた合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターヌクレオチド)、又はプライマーを脱離し、よって、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を有さず、よって結合部分又は相当量の組み込まれた合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターヌクレオチド)又はプライマーを保持するアンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドが、優先的に捕捉(若しくは物理的に単離)される又は続いて優先的に増幅されることを可能にする
方法である。
【0013】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される方法では、
・単一セレクターリボヌクレオチドの5’側の切断に使用される試薬は、リボヌクレアーゼH2であり、又は単一セレクターリボヌクレオチドの3’側の切断に使用される試薬は、熱の存在下の水酸化ナトリウムである、
・方法は、核酸二重鎖を変性して一本鎖DNAを生成することをさらに含み、一本鎖DNAは、単一セレクターリボヌクレオチドの3’側を切断するリボヌクレアーゼで処理される、
・ポリメラーゼ及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性は、異なる酵素により提供される、
・合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)は、核酸増幅方法に使用されるプライマーであり、又はプライマーを含み、任意選択的に、増幅方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む、
・増幅の際に、伸長した合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーが、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の5’若しくは3’側において又は存在する場合、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の3個のヌクレオチド内において切断する酵素で処理され、よってセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を保持するアンプリコン(又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチド)から合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーの部分を脱離し、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーが、増幅反応でリターンプライマー(return primer)の伸長により完全にコピーされることを防止し、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を有さないアンプリコンが、指数関数的な増幅を支持するのに十分な合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマー配列を保持しているので、優先的に増幅されることを可能にする、
・合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーは、リボヌクレオチドを含み、セレクターヌクレオチドの5’側で切断する酵素は、リボヌクレアーゼH2であり、任意選択的に、リボヌクレアーゼH2は熱安定性であり、任意選択的に、熱安定性リボヌクレアーゼH2は、パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abysii)RNアーゼH2である、
・方法は、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)が、対応する通常のデオキシリボヌクレオチドにより置き換えられてDNA増幅プライマーを作り出し、特定の量のこのDNA増幅プライマーが、別の状況ではセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を含有するが今はセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を欠いており、それによってセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)に特異的な試薬又は酵素による切断に今は抵抗性がある、ある特定の量のアンプリコンの産生を可能にするために、セレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)を含有する第1の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)又はプライマーと混合されることを除いて、第1の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)と同一の第2の合成DNAポリヌクレオチド又はプライマーをさらに含む、
・第2の合成DNAポリヌクレオチドにより産生されるアンプリコンは、増幅が良好に働いたことを実証する内部反応標準として、及び第1の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターポリヌクレオチド)により産生されたアンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドの量と比較することができる内部基準として使用される、
・アンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドの配列は、任意選択的に、サンガー配列決定、次世代配列決定(NGS)、単一分子リアルタイム(SMRT)配列決定、ナノポアDNA配列決定、可逆的末端化学(reversible terminated chemistry)(例えば、SOLEXA技術(Illumina))、コンビナトリアルプローブアンカー合成(cPAS)、質量分析配列決定又は大規模並列シグネチャー配列決定(massively parallel signature sequencing)(MPSS)の使用を含む方法を使用する、DNA配列決定により決定される、
・元のセレクターヌクレオチド残基(任意選択的に、単一リボヌクレオチド残基)の位置に対応するヌクレオチドの素性は、目的部位にわたるプライマー伸長により決定され、
・目的部位のヌクレオチドの素性及び相対量は、標識若しくは質量を使用することによって又はこれらを手段として決定され、任意選択的に目的部位のヌクレオチドの素性及び相対量は、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、すなわち、セレクターポリヌクレオチド)を使用して作り出されたアンプリコン中の目的部位にわたるプライマーの単一塩基伸長を含む方法によって決定される、並びに/又は
・目的のアンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドの産生は、定量的PCR(qPCR)、デジタルPCR、遺伝子型決定(genotyping)方法若しくはこれらの同等物、又はこれらの組み合わせによって決定される。
【0014】
代替的な実施形態において、提供されるものは、本明細書に提供又は記載される方法を実践するための材料、任意選択的に酵素及び/又は合成DNAポリヌクレオチド、任意選択的にセレクターポリヌクレオチド(任意選択的に、本明細書に提供される1つ又は複数の合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、すなわち、セレクターポリヌクレオチド))を含み、並びに任意選択的に本明細書に提供又は記載される方法を実践するための使用説明書をさらに含む、キット又は製品である。
【0015】
代替的な実施形態において、提供されるものは、本明細書に提供される方法を実践するための材料を含み、任意選択的に本明細書に提供される方法を実践するための使用説明書も含むキットである。
【0016】
代替的な実施形態において、提供されるものは、疾患又は状態を診断する方法であって、疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在又は非存在を決定することにより、その必要性のある個体が疾患又は状態を有するかを決定することを含み、
疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在又は非存在が、本明細書に提供される方法を使用して決定される、方法である。疾患はがんであり得る。
【0017】
代替的な実施形態において、提供されるものは、疾患又は状態を治療する、寛解させる、又は予防する方法であって、その必要性のある個体を、疾患又は状態に指示された薬物、薬物組み合わせ又は処置レジメンにより治療することを含み、その必要性のある個体が、本明細書に提供される診断方法を使用して疾患又は状態を有する又は有する素因があると診断される、方法である。疾患は、がんであり得るか、又は状態は、遺伝性疾患若しくは遺伝的状態である。
【0018】
代替的な実施形態において、提供されるものは、疾患又は状態を診断するための、本明細書に提供される合成DNAポリヌクレオチドの使用であり、疾患又は状態は、疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在により診断され、疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在又は非存在は、本明細書に提供される方法を使用して決定される。
【0019】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される合成DNAポリヌクレオチドは、疾患又は状態の診断に使用するためのものであり、疾患又は状態は、疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在により診断され、疾患若しくは状態に関連する、又は疾患若しくは状態の診断を有する対立遺伝子又はゲノム配列の存在又は非存在は、本明細書に提供される方法を使用して決定される。
【0020】
代替的な実施形態において、提供されるものは、生物標本中の稀な対立遺伝子の存在又は非存在を検出するための方法及び合成DNAポリヌクレオチドであって、本明細書に提供される方法の使用を含み、任意選択的に生物標本は、その必要性のある個体の生検、又は組織若しくは血液試料、又は液体試料を含む、又はこれらに由来する。
【0021】
代替的な実施形態において、生物標本における稀な対立遺伝子の存在又は非存在の検出は、非侵襲的出生前検査(NIPT)のため、又は臓器移植(任意選択的に、実質臓器若しくは骨髄の移植)後の組織適合性を査定する若しくはドナー由来核酸を検出するため、又はその必要性のある個体で薬剤耐性(AMR)若しくは菌抵抗性の早期検出を査定するため、又は最小残存病変(MRE)の存在を査定する、任意選択的に骨髄除去後のMREを査定するためである。
【0022】
本発明の1つ以上の例示的な実施形態の詳細を添付図面により記述し、下記に記載する。本発明の他の特色、目的及び利点は、記載及び図面から、並びに特許請求の範囲から明白になる。
【0023】
本明細書で引用される全ての出版物、特許、特許出願は、全ての目的においてその全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0024】
本特許又は出願ファイルは、カラーで描かれた図面を少なくとも1つ含有する。カラーの図面を有するこの特許又は特許出願公開のコピーは、依頼及び必要な費用の支払いにより、特許庁から提供される。
【0025】
本明細書に記述される図面は、本明細書に提供される例示的な実施形態を例証するためであり、特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を制限することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】セレクタープライマー内の単一残基リボヌクレオチドセレクターヌクレオチドの可能な配置を例証し、リボヌクレオチドセレクターヌクレオチドは、ヌクレオチド文字の前に配置されている「r」が指定されている(換言すると、「r」はそれ自体ヌクレオチド残基ではなく、むしろ、「r」と共に下線が引かれている「G」ヌクレオチドがリボヌクレオチドであることを明瞭に指定するためにのみ含まれる)。セレクターヌクレオチドは、3’末端を基準として、第1(最後)(配列番号1)、第2(最後から2番目)(配列番号2)、第3(最後から3番目)(配列番号3)、第4(最後から4番目)(配列番号4)、第5(最後から5番目)(配列番号5)又は第6(最後から5番目の1つ前)(配列番号6)の位置に配置され得る。リボヌクレオチドセレクターヌクレオチドには、ヌクレオチド文字の前に配置されている「r」が指定されており、下線が引かれている。示されていないものは、3’末端からさらにより遠位の位置であり、それにはセレクターヌクレオチドが配置され得る。
【化1】
図2A】同じヌクレオチド位置において1個の対立遺伝子を抑制し、一方で同時に代替的対立遺伝子又は突然変異の増幅を可能にする、例えば、変異体対立遺伝子のみが増幅される、本明細書に提供される例示的方法を概略的に例証する。抑制されるべき対立遺伝子(この例では、野生型(WT)ヌクレオチド)の場合、「R」が鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する単一リボヌクレオチド残基の位置を指すプライマーは、目的のWTヌクレオチドと正確に配列マッチし、3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するプルーフリーディングポリメラーゼにより伸長される。プライマーが伸長すると、熱安定性リボヌクレアーゼH2(例えばパイロコッカス・アビシRNアーゼH2)は、「R」(下線付き)がマークされた位置でリボヌクレオチドの5’側で切断し、大部分のプライマー配列(5’末端)は、除去又は脱離される。配列が熱安定性リボヌクレアーゼH2により除去又は脱離されているので、リターンプライマーは第1のプライマーの大部分をコピーすることができない。このことは、抑制されるべき対立遺伝子(この例ではWT対立遺伝子)が指数関数的に増幅されることを止めて、増幅反応で産生されるWT対立遺伝子配列の数を大きく低減する。
図2B】同じヌクレオチド位置において1個の対立遺伝子を抑制し、一方で同時に代替的対立遺伝子又は突然変異の増幅を可能にする、例えば、変異体対立遺伝子のみが増幅される、本明細書に提供される例示的方法を概略的に例証する。対照的に、「R」が鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する単一リボヌクレオチド残基の位置を指すセレクタープライマー中の単一リボヌクレオチドが、鋳型(この例では、WT対立遺伝子)とミスマッチする場合、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性は、アニールされたプライマーを、ミスマッチを介して消費し、単一残基リボヌクレオチドは排除され、短縮されたプライマーが変異体部位にわたって伸長すると、正確なデオキシリボヌクレオチド(即ち、変異体とマッチするもの)が使用される。その部位のいずれの代替的対立遺伝子又はいずれの変異体も野生型リボヌクレオチドとのミスマッチである可能性があり、そのため全ての代替的対立遺伝子又は変異体では、短縮されたプライマーが変異体部位にわたって伸長すると、単一残基ミスマッチリボヌクレオチドは、WT対立遺伝子に結合したプライマーから除去され、特定の突然変異の正確なマッチに置き換えられることに留意すること。セレクタープライマー中の単一残基リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれた(アニールされた)プライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。次いでリターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーにわたってコピーすることができ、任意の代替的対立遺伝子又は変異配列は指数関数的に増幅され、存在するべき、反応で産生される代替的対立遺伝子又は変異配列の数を大きく増加する。もはやセレクタープライマーにより導入される変異配列はない。後に続く分析により検出されるあらゆる変異配列は、2つの品質検査を通過する。第1では、変異体は、単一残基リボヌクレオチドの除去を生じるハイブリダイゼーションミスマッチによって検出され、リボヌクレオチドの喪失は、代替的対立遺伝子又は変異体が存在したことを示し、第2では、高い精度のポリメラーゼが代替的対立遺伝子又は変異体部位を高い忠実度でコピーし(ここで任意選択的に、高い忠実度とはポリメラーゼがTAQポリメラーゼよりも高い忠実度で代替的対立遺伝子又は変異体部位にわたってコピーすることを意味する)、その配列決定(又は他の方法、例えば、プライマー伸長又はハイブリダイゼーション)が、代替的対立遺伝子又は変異体の素性を明らかにする。
図3】同一の3’末端及び異なる長さの5’末端を有するセレクタープライマーを例証する。セレクター単一残基リボヌクレオチドには下線が引かれており、「r」が先行しており、ヒト遺伝子キルステンラット肉腫(KRAS)においてコード配列の38位のヌクレオチドで野生型ヌクレオチドとマッチする位置にある。標準PCR条件下の野生型配列と変異配列(ここでは38G>Aが使用される)の予測T差が留意される。セレクタープライマーの長さが増加すると、Tの差が減少する。T差の減少はまた、ロックド核酸(locked nucleic acid)(LNA)(架橋核酸(BNA)若しくは隔絶RNA(RNアーゼH2により消費されない)若しくは2’酸素と4’炭素を接続している余分な架橋でリボース部分が修飾されている修飾RNAヌクレオチドとしても公知である)及び/又は他の修飾ヌクレオチド、例えば、セレクターヌクレオチドの配列5’において、例えば、dTと塩基対形成することができる2,6-ジアミノプリンを使用して(増加は、残基1個当たり1~2℃ほどであり得る)若しくはdGと塩基対形成し、残基1個当たり0.5℃ほどTを増加する5-メチルデオキシシチジンを使用してTを増加する修飾ヌクレオチドを使用して、達成することもできる。
【化2】
図4図3に描写されたプライマーのそれぞれ及び共通のリターンプライマーを用いたPCRの実行により産生されたアンプリコンの、サンガー配列決定トレースを例証する。上段及び下段の両方において、矢印は、標的配列における様々なヌクレオチドの位置を示す(使用される鋳型は、野生型及びKRAS 38G>A変異体にヘテロ接合性である細胞株から抽出されたDNAである)。上段のサンガー配列決定トレースは、RNアーゼH2がPCRの際に存在しなかったそれぞれの反応の結果を示す。プライマーが長いほど、したがって安定しているほど、変異体シグナル(矢印によっても強調されている、緑色トレース)が良好に見られるが、60merのプライマーであっても、緑色の変異体「A」シグナルは、黒色の野生型「G」シグナルより著しく小さい。例えば、LNA又はTを増加する他のヌクレオチド修飾によるさらなる安定化は、変異対立遺伝子による結果を改善する。RNアーゼH2が存在しない場合、野生型配列にアニールし、伸長したプライマーから除去されるプライマー部分(リボヌクレオチド又はヌクレオチド残基はない)はなく、野生型の指数関数的増幅が起こる。そうでなければ同一である反応に熱安定性RNアーゼH2が含まれる場合(下段)、変異体シグナルは、変異体鋳型へのプライマーの安定性についての関数として、野生型シグナルと比較して累進的にますます顕著になる。野生型の場合、RNアーゼH2の存在は、伸長したプライマーからの大部分のプライマー配列(5’末端)の脱離又は除去を生じ、指数関数的増幅を損なう。変異体の場合、単一残基リボヌクレオチドは、伸長する前のプルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性により、変異配列にアニールしたプライマーから除去され、よって、変異体部位にわたって伸長したプライマーは、RNアーゼH2に対して抵抗性になり、指数関数的に増幅される。
図5】野生型(対立遺伝子G)DNA鋳型による変異体(対立遺伝子A)DNA鋳型に滴定における、図3に描写された51merセレクタープライマー及び共通リターンプライマーを使用したサンガー配列決定の結果を例証する。野生型(WT)と変異体(MUT)の両方のKRAS対立遺伝子について計算されたハプロイドゲノム同等物の数が、サンガー配列決定トレースのそれぞれの上方に示されている。2,998個の野生型DNAの算出バックグラウンドに対する変異体DNAの算出された2個のコピーであっても、明瞭な変異体(A)シグナルが見られる(下段、右端)。非常に低量の変異体DNA(下段)では、非常に微弱な「G」シグナルを見ることができ、また見られるものは、コードされた鋳型ではないが、鋳型の末端に、配列決定ポリメラーゼ(例えば、SEQUENASE(商標)(ThermoFisher Scientific))により付加された「T」シグナルである。付加された「T」シグナルが「G」シグナルの大きさに匹敵することは、プライマー部位が、アンプリコンを含有する全て又は事実上(若しくは実質的に)全てのWT「G」から切断されていることを示す。例えば、バーコード(例えば、ILLUMINA試料バーコード)を付加する後続のPCRは、これらのWT配列を増幅しない。ILLUMINA(登録商標)NGSに進む試料は、架橋増幅されず、配列決定されない。このため、任意の量の変異体DNAが、任意の野生型バックグラウンドを有することなく又は事実上(若しくは実質的に)有することなく検出され得る。
図6A-B】図6A~Bは、RNアーゼH2の非存在でセレクタープライマー使用して野生型KRASが増幅された場合の結果を表示する。増幅した後、図6Aでは、RNアーゼH2を付加して、リボヌクレオチドG(rG)の5’側で切断し、WT「G」の上流のプライマー配列を除去する、又は図6Bでは、NaOH及び熱を使用して、リボヌクレオチドG(rG)の3’側で切断し、リボヌクレオチドG(rG)の3’側であるWT「C」の上流のプライマー配列を除去する。両方の場合では、ポリメラーゼ(SEQUENASE(商標))付加「T」が見られ、プロセシングされたDNA鎖の末端を示している。任意の結合部分、例えば、ビオチン又はILLUMINA(登録商標)捕捉配列は、WT含有アンプリコンから除去される。ストレプトアビジン(ビオチン用)又はILLUMINA(登録商標)フローセル(ILLUMINA(登録商標)捕捉配列用)を使用する回収は、変異体アンプリコン(存在する場合)のみを捕捉する。
図7】最後から3番目の位置(配列番号11)にGリボヌクレオチド(rG)を含み、その下に、最後から3番目の位置(配列番号13)に通常のデオキシリボヌクレオチドを有する対応物を含む51merのセレクタープライマーを描写する。セレクタープライマーの独自の特色は、限定数の野生型配列を可能にするように微調整できることである。Gリボヌクレオチド(rG)を含有するプライマーは、例えば、RNアーゼH2が存在するPCRに対して選択することができ、一方でリボヌクレオチドを欠いている(デオキシリボヌクレオチドに置き換えられている)プライマーは、RNアーゼH2に抵抗性があり、増幅又は回収することができる。この価値は、特定のアッセイが良好に働くことを実証する内部標準を提供すること、また、試料間のWT配列とMUT配列の定量的な比較も可能にすることである。例証される配列は、GCCTGCTGAAAATGACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGAGCTGGTGrGCG(配列番号3)であり、ここで、リボヌクレオチドセレクターヌクレオチドには、ヌクレオチド文字(太字及び下線付きの残基がリボヌクレオチドである)の前に配置されている「r」が指定されている。図7において、下側は、最後から3番目の位置のヌクレオチドが、リボヌクレオチドの代わりにデオキシリボヌクレオチドであることを除いて同一の配列である(配列番号13)。図3及び図4に示されているように、より短い配列を使用することができる。
【化3】
図8】分子ハプロタイプ決定(haplotyping)の実施における本明細書に提供される方法の有用性を例証する。この例では、個体の遺伝子型は、多型の4つの部位のそれぞれにおいてヘテロ接合性である。適切なセレクタープライマーを使用することによって、上段のDNAの増幅が抑圧され、一方で下段のDNAの増幅は妨げられない。様々な手段による遺伝子型決定が、1つのハプロタイプを明らかにし、一方で他のハプロタイプは、公知であれば全体的な遺伝子型に由来し得る。望ましい場合には、別個の反応において逆を行うことができ、適切なセレクタープライマーにより下段のDNAの増幅が抑制され、一方で上段のDNAの増幅は妨げられない。このアンプリコンの遺伝子型決定は、ハプロタイプ組成物を確証する。
図9図1に列挙されたセレクターポリヌクレオチドで得られたアンプリコンを使用したサンガー配列決定の結果を例証し、RNアーゼH2の非存在下で得られた結果(上段)は、多くの場合、38位に2つのトレース、野生型「G」及び変異体「A」を示し、セレクターヌクレオチドがこの例では最後の位置にある場合、野生型「G」シグナルは、変異体「A」シグナルにほぼ匹敵しており、他の全ての場合では、「A」シグナルは「G」シグナルより規模が小さい。熱安定性RNアーゼH2の存在下(下段)において、全てのセレクターポリヌクレオチドは、38位に配列を含有する野生型「G」(矢印でマークされている)の増幅を抑制又は部分的に抑制するのに有効であり、一方で変異体「A」シグナル(この場合)に干渉しない。
図10A】本明細書に提供される例示的方法を概略的に例証し、ここで、同じヌクレオチド位置の全ての可能な対立遺伝子には、増幅の際に結合部分が標識されるが、対立遺伝子のうちの1個、例えば、野生型対立遺伝子のみが結合部分から脱離され、その精製を防止する。精製することを望まない対立遺伝子(この例では、野生型(WT)ヌクレオチド)の場合、「R」が鋳型DNAポリヌクレオチドと対形成する、例えば(図1も参照すること)目的のWTヌクレオチドと正確に配列マッチする単一リボヌクレオチド残基の位置を指すプライマーは、3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するプルーフリーディングポリメラーゼにより伸長されることを例証する。プライマーは、結合部分により、例えばビオチンにより標識され、図10Aの丸印内の「B」により表され、結合部分はまた、捕捉及び精製(並びに、後続の検出)を可能にする特定のヌクレオチド配列又は任意の他の部分でもあり得る。増幅した後、アンプリコンを、セレクターヌクレオチドの5’又は3’側(この例では「R」で表され、下線が引かれている)において切断する薬剤又は酵素で処理し、そのことが、野生型対立遺伝子を含有する伸長したプライマーから捕捉部分を脱離し、後続の捕捉及び精製を防止する。セレクターヌクレオチドがリボヌクレオチドである場合、アンプリコンが依然として二本鎖である場合には、5’側で切断する酵素はRNアーゼH2であってもよい、又は一本鎖の状態に変性される場合には、リボヌクレオチドの3’側で切断するリボヌクレアーゼIであってもよい。熱の存在下の水酸化ナトリウムを使用して、リボヌクレオチドの3’側で切断することもできる。
図10B】本明細書に提供される例示的方法を概略的に例証し、ここで、同じヌクレオチド位置の全ての可能な対立遺伝子には、増幅の際に結合部分が標識されるが、対立遺伝子のうちの1個、例えば、野生型対立遺伝子のみが結合部分から脱離され、その精製を防止する。対照的に、セレクタープライマー中の単一リボヌクレオチドが、鋳型(この例では、WT対立遺伝子)とミスマッチする場合、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性は、アニールされたプライマーを、ミスマッチを介して消費し、単一残基リボヌクレオチドは排除され、短縮されたプライマーが変異体部位にわたって伸長すると、正確なデオキシリボヌクレオチド(即ち、変異体とマッチするもの)が使用される。その部位のいずれの代替的対立遺伝子又はいずれの変異体も野生型リボヌクレオチドとのミスマッチである可能性があり、そのため全ての代替的対立遺伝子又は変異体では、短縮されたプライマーが変異体部位にわたって伸長すると、単一残基ミスマッチリボヌクレオチドは、WT対立遺伝子に結合したプライマーから除去され、特定の突然変異の正確な(デオキシリボヌクレオチド)マッチに置き換えられることに留意すること。セレクタープライマー中の単一残基リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれた(アニールされた)プライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去又はセレクターヌクレオチドの存在に依存する任意の他の処理に対して抵抗性にする。捕捉部分が結合したままであるので、伸長プライマーは優先的に捕捉(若しくは物理的に単離)され得る又は続いて優先的に増幅され得る。もはやセレクタープライマーにより導入される変異配列はない。後に続く分析により検出されるあらゆる変異配列は、2つの品質検査を通過する。第1では、変異体は、単一残基リボヌクレオチドの除去を生じるハイブリダイゼーションミスマッチによって検出され、リボヌクレオチドの喪失は、代替的対立遺伝子又は変異体が存在したことを示し、第2では、高い精度のポリメラーゼが代替的対立遺伝子又は変異体部位を高い忠実度でコピーし、その配列決定(又は他の方法、例えば、プライマー伸長若しくはハイブリダイゼーション)が、代替的な対立遺伝子又は変異体の素性を明らかにする。
図11】本明細書に提供される例示的方法の使用による結果をグラフ表示し、例示的な単一セレクタープライマー(この場合、セレクターヌクレオチドはKRAS c.35に特異的である)が、その部位に起こる3個の突然変異のいずれかを検出できることを実証し、全く同じように、マスターミックスには3個の異なる鋳型がそれぞれ適用され、それぞれの場合に、KRAS c.35セレクタープライマーは、KRAS c.35G>A変異体(G12Dアミノ酸変化に対応する)、c.35G>T変異体(G12Vアミノ酸変化に対応する)又はc.35G>C変異体(G12Aアミノ酸変化に対応する)突然変異が存在するか否かにおいて正確な突然変異を検出し、これらの3つの突然変異は全て、結腸がんにおいて頻繁に変異し、膵がん及び肺がんに見られる。
図12】本明細書に提供される例示的方法の使用による結果をグラフ表示し、例示的なセレクタープライマー(この場合、セレクターヌクレオチドは、EGFR p.L858R突然変異を生じるT>G突然変異であるEGFR c.2573Tに特異的である)が0.1%の低さの頻度で変異G対立遺伝子を検出することができ、輪郭が赤色の網掛けなしのカラムは、野生型シグナルの5倍に等しく、0.1%の変異対立遺伝子の頻度であっても、変異体シグナルは野生型の値の5倍を大きく超えることを実証する。
図13】本明細書に提供される例示的方法の使用による結果を表示し、例示的なセレクタープライマー(この場合、セレクターヌクレオチドは、EGFR p.E746_A750del突然変異を生じるc.2236_2250欠失突然変異であるEGFR c.2236Gに特異的である)が0.1%の低さの頻度で変異体欠失を検出することができ、輪郭が赤色の網掛けなしのカラムは、野生型シグナルの5倍に等しく、0.1%の変異対立遺伝子の頻度であっても、変異体シグナルは野生型の値の5倍を大きく超えることを実証する。
図14】本明細書に提供される例示的方法の使用による結果を表示し、例示的なセレクタープライマー(この場合、セレクターヌクレオチドは、KRAS p.G13C突然変異を生じるG>T突然変異であるKRAS c.37に特異的である)が0.02%の低さの頻度で変異T対立遺伝子を検出できることを実証し、10,000個の野生型分子のうちから2個の変異体分子を見出すことに匹敵する。
図15】本明細書に提供される例示的方法の使用による結果を表示し、例示的なセレクタープライマー(この場合、セレクターヌクレオチドは、KRAS p.G13D突然変異を生じるG>A突然変異であるKRAS c.38に特異的である)が、不要なシグナルを「調整可能」レベルに抑制する能力を実証し、セレクターヌクレオチド(この場合、リボヌクレオチド)の代わりに通常のデオキシリボヌクレオチドを含有する以外はセレクタープライマーと同一であるプライマーが、0%のセレクタープライマー(ここでは、PointSuppressor Primer又はPSPと称される)から、即ち100%のセレクタープライマーまでの範囲のセレクタープライマーとの様々な混合物で使用され、セレクタープライマーが使用されない場合、野生型G配列の増幅が優勢になり、変異A対立遺伝子は、セレクタープライマーの百分率が増加するほど、大きな程度で増幅される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
様々な図面において、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0028】
代替的な実施形態において、提供されるものは核酸増幅方法であり、特定の対立遺伝子に対して選択することができ、一方で標的配列、例えば、ゲノムの標的配列内の特定のヌクレオチド位置における任意の代替的対立遺伝子又は突然変異の増幅又は回収に干渉しない。代替的な実施形態において、提供されるものは、野生型配列を抑制し、一方で同時に、単一ヌクレオチドバリアント、挿入及び欠失を含み、cDNAの場合では融合も含む点突然変異を増幅する、核酸増幅方法である。
【0029】
代替的な実施形態において、提供されるものは、「調整可能」である方法であり、これは、不要な対立遺伝子が10若しくは100倍、又は望ましい量で(増幅又は回収プロセスにおいて)抑制され得ることを意味する。これは、情報価値のない読取りの数を低減し、このことは、スループットを増加し、試料当たりの費用を低下し、配列決定速度の競合が低減されるので、所望の標的の検出を増強する。
【0030】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される方法は、いくつかの情報価値のない読取りを可能にする能力を有し、このことは独自であり、内部標準が、アッセイが良好に働くこと(代替的対立遺伝子又は変異体が試料に存在しない場合の「結果なし」に対して)を実証すること及び定量化の内部基準としても機能し得ることを可能にする。
【0031】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される方法は、任意のプライマーベース手法と共に行うことができ、本明細書に提供される方法を使用することによって、バリアント配列は増幅反応に導入されない。例として、体細胞突然変異を探す場合、野生型対立遺伝子はGであってもよく、可能な変異対立遺伝子はA、C及びTであり、本明細書に提供される方法を使用することによって、G含有読取りは、変異読取りを減少させることなく低減され(例えば、100倍)、可能な変異体のいずれも同じ単一プライマーにより増幅される。野生型読取りの数は、存在する場合に著しく低減され、変異読取りが配列決定され、検出される可能性を増やし、これらが非存在である場合、セット数の野生型読取りが、反応が良好に働いたことを確実にする。
【0032】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して、特有の利点を有することができ、変異体は、
(1)セレクタープライマーと変異鋳型とのミスマッチが認識され、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性により除去される場合、及び
(2)高忠誠度ポリメラーゼが変異鋳型をコピーする場合にのみ検出される。
対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。
【0033】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される方法は、単一プライマーが特定のヌクレオチド位置で任意のバリアントを検出する利点を有することができる。対照的に、対立遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子バリアント又は突然変異のそれぞれに特異的なプライマーが必要であり、例えば、van Mansfeld AD、Bos JL.PCR-based approaches for detection of mutated ras genes.PCR Methods Appl.1992年5月;1(4):211~6;Darawi,M.N.、Ai-Vyrn,C.、Ramasamy,Kら、Allele-specific polymerase chain reaction for the detection of Alzheimer’s disease-related single nucleotide polymorphisms.BMC Med Genet 14、27(2013);Lang AH、Drexel H、Geller-Rhomberg Sら、Optimized allele-specific real-time PCR assays for the detection of common mutations in KRAS and BRAF.J Mol Diagn.2011;13(1):23~28;Dobosy JR、Rose SDら、(2011)RNase H-dependent PCR (rhPCR):improved specificity and single nucleotide polymorphism detection using blocked cleavable primers.BMC Biotechnol、11:80を参照すること。
【0034】
核酸の増幅
代替的な実施形態において、提供されるものは、DNA増幅技術、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は他のプライマーベース増幅方法の使用を含む方法である。
【0035】
DNA増幅技術の実践に使用される任意の公知のプロトコール又は材料(医療用装備一式又は酵素を含む)を使用して、本明細書に提供される方法を実践することができ、例えば、5’から3’への伸長活性を有し、3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するプルーフリーディング酵素、及び/又は5’から3’への伸長活性を有するDNAポリメラーゼ酵素、及び3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素の使用を含む。本明細書に提供される方法の実践に使用されるポリメラーゼ連鎖反応に標準的な材料及び方法は、例えば、Dieffenbach and Dveksler(1995)PCR Primer:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press及びMcPhersonら、(2000)PCR-Basics:From Background to Bench、1版、Springer Verlag、Germanyに見出すことができる。
【0036】
例示的なPCRプロトコールが以下の2つの表に示されており、第1は反応設定を示し第2はサイクリング条件を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
様々なDNA濃度を使用することができ、当業者はそのことを知っている。同様に、プライマー濃度も変動し得る。パイロコッカス・アビシRNアーゼH2及び/又は他の熱安定性RNアーゼH2酵素の任意の供給源を使用することができる。他の供給源からの熱安定性プルーフリーディングDNAポリメラーゼを使用することができ、New England BiolabsからのQ5(登録商標)Hot Start High-Fidelity(登録商標)DNA Polymerase及びThermoFisherからのPlatinum SuperFi II(登録商標)DNA Polymerase-High-Fidelity PCR Enzymeが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
以下は、サイクリング条件の一般的な例示的条件であり、増幅の実施を限定することを意図せず、増幅されるDNAの1キロベース当たり、10秒~30秒の範囲の時間で94℃~98℃の範囲の変性温度、5秒~30秒で55℃~72℃の範囲のアニール温度、15秒~30秒で55℃~72℃以上の範囲の伸長温度である。本明細書に提供される方法の実施に使用することができるPCR方法の一般的な考察は、例えば、Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Polymerase_chain_reaction、又はValones MA、Guimaraes RL、Brandao LA、de Souza PR、de Albuquerque Tavares Carvalho A、Crovela S.Principles and applications of polymerase chain reaction in medical diagnostic fields:a review.Braz J Microbiol.2009;40(1):1~11;Garibyan L、Avashia N.Polymerase chain reaction.J Invest Dermatol.2013;133(3):1~4;Dieffenbach CW、Lowe TM、Dveksler GS.General concepts for PCR primer design.PCR Methods Appl.1993年12月;3(3):S30~7)に見出すことができる。IDTウエブサイト(https://www.idtdna.com/pages/products/qpcr-and-pcr/master-mixes-reagents/rnase-h-enzyme)によるRNアーゼH2酵素の使用についての例示的な条件、及び又は、Dobosy JR、Rose SDら、(2011)RNase H-dependent PCR(rhPCR):improved specificity and single nucleotide polymorphism detection using blocked cleavable primers、BMC Biotechnol、11:80にも含まれる。本明細書に提供される方法の実践に使用することができる例示的な酵素は、例えば、市販の熱安定性DNAポリメラーゼであるPhusion Hot Start II(登録商標)を含み、これは、本明細書に提供される方法の実践に利用可能であり、かつ使用することができる多くのもののうちの1つであり、例えば、Ishino S、Ishino Y、DNA polymerases as useful reagents for biotechnology - the history of developmental research in the field、Front Microbiol.2014年8月29;5:465を参照すること。Phusion Hot Start II(登録商標)の例示的な条件は、ThermoFisherのウエブサイト(https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/ F549L#/F549L)から入手可能である。
【0041】
代替的な実施形態において、提供されるものは、本明細書に提供される方法に使用するための、例えば、目的のアンプリコンを産生するため、又は新たな伸長DNAポリヌクレオチドを産生するための、デジタルPCR(例えば、Morley AA.Digital PCR:A brief history.Biomol Detect Quantif.2014年8月15日;1(1):1~2を参照すること)、又は例えばDroplet Digital PCR(ddPCR)を含むDigitalPCR若しくはdPCRの使用を含む方法であり、本明細書に提供される方法は、当該技術に公知の任意の方法、例えば、米国特許第9,797,007号に記載されている方法を使用して実践することができる。
【0042】
合成核酸
代替的な実施形態において、提供されるものは、合成DNAポリヌクレオチド(すなわち、セレクターヌクレオチド)の3’末端を基準として、第1(最後)、第2(最後から2番目)、第3(最後から3番目)、第4(最後から4番目)、第5(最後から5番目)若しくは第6(最後から5番目の1つ前)の位置に配置され得る少なくとも単一リボヌクレオチド残基(セレクターヌクレオチドと称される)を含む、合成DNAポリヌクレオチドであり、代替的な実施形態において、第2及び第3の追加のリボヌクレオチド残基が、提供される合成DNAポリヌクレオチドに含まれる。
【0043】
代替的な実施形態において、セレクターポリヌクレオチドは、特定の対立遺伝子の増幅に対して選択することができ、一方で標的配列内の特定のヌクレオチド位置における任意の代替的対立遺伝子又は突然変異の増幅又は回収に干渉しない増幅方法に、プライマーとして使用される。セレクターポリヌクレオチドの設計、組成及び製造は、抑制される対立遺伝子に基づいている。例として、ヒト癌遺伝子KRASのc.38に起こる単一ヌクレオチド突然変異に興味がある場合、野生型配列に完全にマッチし、目的部位に対応する位置に単一リボヌクレオチドを含有するキメラDNA/RNAポリヌクレオチドが作り出される。図1を参照すると、示されている全ての配列は、野生型配列と同一であり、各配列には赤色であり下線が引かれているヌクレオチドが含まれる(これはセレクターヌクレオチドであり、配列中の単一リボヌクレオチドである)。セレクターヌクレオチドは、図1に描写されている位置にいずれかにあり得るが、最後の位置は好ましくなく、3’末端からさらにより遠位の位置も時にはセレクターヌクレオチドとして作動し得る。図3を参照すると、セレクターポリヌクレオチドは、様々な長さであってもよく、描写されているものが挙げられるが、これらに限定されない。図9は、図1に列挙したセレクターポリヌクレオチドを使用して得られた結果を表示する。熱安定性RNアーゼH2の存在下において、全てのセレクターポリヌクレオチドは、38位に配列を含有する野生型「G」(矢印でマークされている)の増幅を抑制又は部分的に抑制するのに有効であり、一方で変異体「A」シグナル(この場合)に干渉しない。
【0044】
実施例に記載されているように、欠失、挿入及びcDNAの場合では融合が挙げられるが、これらに限定されない他の代替物の検出に干渉することなく、野生型配列を抑制するためのセレクターポリヌクレオチドの設計、組成及び製造を達成することもできる。抑制は、抑制される対立遺伝子の配列に基づいているので、代替的な設計が当業者によって達成され得る。
【0045】
核酸の配列決定
代替的な実施形態において、提供されるものは方法であり、ここではアンプリコン又は新たに伸長したDNAポリヌクレオチドの配列が、任意選択的に、サンガー配列決定、若しくは次世代配列決定(NGS)、単一分子リアルタイム(SMRT)配列決定、ナノポアDNA配列決定、可逆的末端化学(例えば、SOLEXA技術(Illumina))、コンビナトリアルプローブアンカー合成(cPAS)、質量分析配列決定、若しくは大規模並列シグネチャー配列決定(MPSS)、又はこれらの任意の同等物若しくはこれらの任意の組み合わせの使用を含む方法を使用する、DNA配列決定により決定される。
【0046】
当該技術に公知の任意の配列決定方法を使用して、本明細書に提供される方法により産生されるアンプリコン又は新たな伸長DNAポリヌクレオチドを配列決定することができる。
【0047】
製品及びキット
提供されるものは、本明細書に提供される方法を実践するための製品及びキットであり、任意選択的に、製品及びキットは、本明細書に提供される方法を実践する使用説明書をさらに含むことができる。
【0048】
上記の態様及び実施形態のいずれかを、発明の概要、図面及び/又は発明を実施するための形態において、本明細書に開示されている任意の別の態様及び実施形態と組み合わせることができる。
【0049】
本出願及び特許請求の範囲に使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から明瞭に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0050】
特定的に記述されない限り又は文脈から明白ではない限り、本明細書で使用されるとき、用語「又は(or)」は、包括的であり、「又は(or)」と「及び(and)」の両方を網羅することが理解される。
【0051】
特定的に記述されない限り又は文脈から明白ではない限り、本明細書で使用されるとき、用語「約(about)」は、当該技術の通常の許容範囲内であること、例えば、平均の2標準偏差内であることが理解される。約は、記述された値の20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12% 11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内であることが理解され得る。文脈から明らかではない限り、本明細書に提供される全ての数値は、用語「約」により修飾される。
【0052】
特定的に記述されない限り又は文脈から明白ではない限り、本明細書で使用されるとき、用語「実質的に全て(substantially all)」「実質的に大部分の(substantially most of)」、「実質的に全ての(substantially all of)」又は「大多数の(majority of)」は、組成物の参照量の少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%若しくは99.5%又はそれ以上を包含する。
【0053】
本明細書で参照される特許、特許出願、出版物又は文書のそれぞれの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。上記の特許、特許出願、出版物又は文書の引用は、前述のいずれかが従来技術と関連することの容認でもなく、これらの出版物又は文書の内容又は日付の容認を構成するものでもない。これら文書の参照による組み込みは、それ自体、任意の文書の内容の任意の部分が特許出願の任意の国家又は地域の法定開示要件を満たすために必須の材料と考慮されることの断定又は許容と解釈されるべきではない。それにもかかわらず、権利は、適切であれば、審査機関又は裁判所により、特許請求された主題に必須であると認められ材料を提供するために、そのような文書のいずれかへの依拠を確保する。
【0054】
修正を、本発明の基本的側面から逸脱することなく前述に行うことができる。本発明は1つ以上の特定の実施形態を参照しながら相当詳細に記載されてきたが、当業者は、本出願に特定的に開示されている実施形態に変さらを行うことができ、それでもなおこれらの修正及び改善が本発明の範囲及び精神の範囲内であることを認識する。本明細書に例証的に記載されている発明は、好適には本明細書に特定的に開示されているのではない任意の要素の非存在下で実践され得る。よって、例えば、本明細書のそれぞれの場合において、「含む」、「から本質的になる」及び「からなる」という用語のいずれかを、他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。よって、用いられている用語及び表現は、記載用語として使用され、限定としては使用されず、示されている及び記載されている特色の同等物又はその部 分は除外されず、様々な修正が本発明の範囲内で可能であることが認識される。本発明の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記述されている。
【0055】
本発明は、本明細書に記載されている実施例を参照しながらさらに記載されるが、本発明は、そのような実施例に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例
【0056】
実施例に記述されない限り、全ての組換えDNA技術は、標準的プロトコールに従って、例えば、Sambrookら(2012)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、並びにAusubelら(1994)Current Protocols in Molecular Biology、Current Protocols、USAの第1及び2巻に記載されているように実行される。標準的な分子生物学技術の他の参考文献には、Sambrook及びRussell(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、Brown(1998)Molecular Biology LabFax、2版、Academic Press(UK)の第I及びII巻が挙げられる。ポリメラーゼ連鎖反応に標準的な材料及び方法は、Dieffenbach及びDveksler(1995)PCR Primer:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press及びMcPhersonら、(2000)PCR-Basics:From Background to Bench、1版、Springer Verlag、Germanyに見出すことができる。
【0057】
代替的な実施形態において、実施例において注目される差は、配列決定、ハイブリダイゼーション、質量分析、又はヌクレオチド分解能が挙げられる、配列変化を検出することができる任意の他の技術により検出される。
【0058】
実施例1:1個の対立遺伝子を抑制し、一方で同時に任意の代替的対立遺伝子を増幅する
この実施例は、1個の対立遺伝子を選択的に抑制し、一方で同時に任意の代替的対立遺伝子を増幅する本明細書に提供される例示的方法の有効性を記載及び実証する。この実施例はまた、野生型配列を抑制し、一方で同時に点突然変異を増幅する例示的方法の有効性も記載及び実証する。
【0059】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される例示的方法は、コード位置35(この実施例では、KRAS c.35)の野生型「G」ヌクレオチドをコードするKRAS DNAの指数関数的増幅を抑制し、一方で同時にこの位置で可能な3個の突然変異のいずれかの指数関数的増幅を可能にすることを含む。この位置での突然変異は、最も頻繁な発がん性KRAS突然変異であり、KRASコドン12及び13における点突然変異のおよそ65%を表す。使用されるセレクタープライマーは、最後から3番目の位置に「G」リボヌクレオチド(riboG又はrG)を含有し、野生型鋳型に完全にマッチし、プルーフリーディングDNAポリメラーゼ酵素により伸長される。新たに形成された二重鎖DNAはriboGを保持しているので、反応に存在する熱安定性リボヌクレアーゼH2(TS RNアーゼH2)は、リボヌクレオチドの5’側で切断し、大部分のプライマー配列を脱離し、指数関数的増幅を抑制する。対照的に、c.35G>A(p.G12D)突然変異又はc.35G>T(p.G12V)突然変異又はc.35G>C(p.G12A)突然変異をコードする鋳型は、最後から3番目の位置でセレクタープライマーとマッチせず、結果として、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、ミスマッチを介してプライマーを消費し、プライマーが変異部位にわたって伸長する前にリボヌクレオチドが排除される。リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれたプライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。リターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーをコピーし、任意の変異配列が指数関数的に増幅される。
【0060】
本明細書に提供される方法に使用することができるプルーフリーディングDNAポリメラーゼの非限定例には、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#F549L)、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs、カタログ#M0493L)、及びPlatinum SuperFi II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#12361050)が挙げられる。本明細書に提供される方法に使用することができる熱安定性リボヌクレアーゼH2の非限定例は、RNアーゼH2酵素(IDT、カタログ#11-03-02-03)である。
【0061】
この例示的方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して特有の利点を含み、変異体は、1.セレクタープライマーと変異鋳型とのミスマッチが認識され、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性により除去される場合、及び2.高忠誠度ポリメラーゼが変異鋳型をコピーする場合にのみ検出される。対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。別の利点は、単一プライマーが特定のヌクレオチド位置で任意のバリアントを検出することであり、対照的に対立遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子バリアント又は突然変異のそれぞれに特異的なプライマーが必要である。
【0062】
実施例2:野生型配列を抑制し、一方で同時にDNA欠失を増幅する
この実施例は、野生型DNAの増幅を抑制し、一方で同時に、欠失を含有する鋳型を増幅する例示的方法を実証する。
【0063】
代替的な実施形態において、本明細書に提供される例示的方法は、野生型上皮増殖因子受容体(EGFR)DNAの指数関数的増幅を抑制し、一方で同時にインフレーム欠失のc.2235_2249del(p.E746_A750del)を有するDNAの指数関数的増幅を可能にすることを含む。インフレーム欠失は、がんにおいて全てのEGFR突然変異のおよそ41%を表し、この特定の突然変異は、より頻繁なもののうちの1つである。
【0064】
GAAを有するセレクタープライマー末端の3’末端は、最後から3番目の位置に「G」リボヌクレオチド(riboG又はrG)を含有し、アミノ酸位置746でグルタミン酸残基をコードする野生型EGFRコドンと完全にマッチする。新たに形成された二重鎖DNAはriboGを保持しているので、反応に存在する熱安定性リボヌクレアーゼH2(TS RNアーゼH2)は、リボヌクレオチドの5’側で切断し、大部分のプライマー配列を脱離し、結果として指数関数的増幅を抑制する。
【0065】
対照的に、c.2235_2249del(p.E746_A750del)欠失の鋳型は、最後から3番目の位置でセレクタープライマーとマッチせず、結果として、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、ミスマッチを介してプライマーを消費し、プライマーが変異部位にわたって伸長する前にリボヌクレオチドが排除される。リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれたプライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。リターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーをコピーし、任意の変異配列が指数関数的に増幅される。
【0066】
本明細書に提供される方法の実践に使用することができるプルーフリーディングポリメラーゼの非限定例には、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#F549L)、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs、カタログ#M0493L)、及びPlatinum SuperFi II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#12361050)が挙げられる。本明細書に提供される方法の実践に使用することができる熱安定性リボヌクレアーゼH2の非限定例は、RNアーゼH2酵素(IDT、カタログ#11-03-02-03)である。
【0067】
この例示的方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して特有の利点を含み、対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。別の利点は、単一プライマーが特定のヌクレオチド位置で任意のバリアントを検出することであり、対照的に対立遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子バリアント又は突然変異のそれぞれに特異的なプライマーが必要である。
【0068】
実施例3:野生型配列を抑制し、一方で同時にDNA挿入を増幅する
この実施例は、野生型DNAの増幅を抑制し、一方で同時に、挿入を含有する鋳型を増幅する例示的方法を実証する。
【0069】
非限定例は、野生型EGFR DNAの指数関数的増幅を抑制し、一方で同時に、c.2300_2308dup(p.A767_V769dup)挿入を有するDNAの指数関数的増幅を可能にすることである。この挿入は重複であり、それを有する患者は、多くの場合に第一及び第二世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)への感受性が減少している。ACAを有するセレクタープライマー末端の3’末端は、最後から3番目の位置に「A」リボヌクレオチド(riboA又はrA)を含有し、アミノ酸位置770でアスパラギン酸残基をコードする野生型EGFRコドンと完全にマッチする。新たに形成された二重鎖DNAはriboAを保持しているので、反応に存在する熱安定性リボヌクレアーゼH2(TS RNアーゼH2)は、リボヌクレオチドの5’側で切断し、大部分のプライマー配列を脱離し、指数関数的増幅を抑制する。対照的に、c.2300_2308dup(p.A767_V769dup)挿入を含有する鋳型は、最後から3番目の位置でセレクタープライマーとマッチせず、結果として、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、ミスマッチを介してプライマーを消費し、プライマーが変異部位にわたって伸長する前にリボヌクレオチドが排除される。リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれたプライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。リターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーをコピーし、任意の変異配列が指数関数的に増幅される。
【0070】
本明細書に提供される方法の実践に使用することができるプルーフリーディングポリメラーゼの非限定例には、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#F549L)、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs、カタログ#M0493L)、及びPlatinum SuperFi II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#12361050)が挙げられる。本明細書に提供される方法の実践に使用することができる熱安定性リボヌクレアーゼH2の非限定例は、RNアーゼH2酵素(IDT、カタログ#11-03-02-03)である。
【0071】
この例示的方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して特有の利点を含み、対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。別の利点は、単一プライマーが特定のヌクレオチド位置で任意のバリアントを検出することであり、対照的に対立遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子バリアント又は突然変異のそれぞれに特異的なプライマーが必要である。
【0072】
実施例4:野生型cDNA配列を抑制し、一方で同時に、融合タンパク質をコードするcDNAを増幅する
この実施例は、野生型cDNAの増幅を抑制し、一方で同時に、融合タンパク質をコードする鋳型を増幅する例示的方法を実証する。
【0073】
非限定例は、野生型棘皮動物微小管関連タンパク質様4(EML4)の指数関数的増幅を抑制し、一方で同時に、EML4-ALK融合タンパク質をコードするcDNAの指数関数的増幅を可能にする(ALKは未分化リンパ腫キナーゼを意味し、ALKチロシンキナーゼ受容体又はCD246としても公知である)。EML4-ALK融合タンパク質は、非小細胞肺がん(NSCLC)に見出されており、他の標的化療法のうちでクリゾチニブの標的である。cDNAの調製が最初に行われ、3’末端に配列GTGを有するセレクタープライマーを使用する増幅が続き、ここで最後から3番目の「G」は、リボヌクレオチド(riboG又はrG)であり、野生型EML4配列と完全にマッチする。新たに形成された二重鎖DNAはriboGを保持しているので、反応に存在する熱安定性リボヌクレアーゼH2(TS RNアーゼH2)は、リボヌクレオチドの5’側で切断し、大部分のプライマー配列を脱離し、指数関数的増幅を抑制する。対照的に、EML4-ALK融合鋳型は、最後から3番目の位置でセレクタープライマーとマッチせず、結果として、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、ミスマッチを介してプライマーを消費し、プライマーが変異部位にわたって伸長する前にリボヌクレオチドが排除される。リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれたプライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。リターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーをコピーし、任意の変異配列が指数関数的に増幅される。プルーフリーディングポリメラーゼの非限定例には、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#F549L)、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs、カタログ#M0493L)、及びPlatinum SuperFi II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#12361050)が挙げられる。
【0074】
本明細書に提供される方法の実践に使用することができる熱安定性リボヌクレアーゼH2の非限定例は、RNアーゼH2酵素(IDT、カタログ#11-03-02-03)である。本明細書に提供される方法の実践に使用することができるmRNA鋳型からcDNAを作製するために使用される逆転写酵素の非限定例は、SuperScript(商標)III Reverse Transcriptase(ThermoFisher Scientific、カタログ#18080085)である。
【0075】
この例示的方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して特有の利点を含み、対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。
【0076】
実施例5:1個の対立遺伝子を抑制し、一方で同時に任意の代替的対立遺伝子を増幅する:修飾又は非修飾ヌクレオチド状態決定への適用
この実施例は、1個の対立遺伝子の増幅を抑制し、一方で同時に、特に一方又は他方の対立遺伝子がヌクレオチド修飾の存在又は非存在に基づいて作り出される場合、ヌクレオチド位置に存在する任意の代替的対立遺伝子を増幅する例示的方法を実証する。非限定例は、非修飾シトシンヌクレオチドがデオキシウリジン(dU)に変わり、一方でメチル化又はヒドロキシメチル化シトシンが変わらない場合である。
【0077】
非限定例は、「G」リボヌクレオチド(riboG若しくはrG)を最後から3番目の位置に含有し、処理された鋳型(相補的な位置が、修飾され、したがって変わっていないので、「C」のままである)と完全にマッチし、プルーフリーディング酵素により伸長しているセレクタープライマーの使用である。新たに形成された二重鎖DNAはriboGを保持しているので、反応に存在する熱安定性リボヌクレアーゼH2(TS RNアーゼH2)は、リボヌクレオチドの5’側で切断し、大部分のプライマー配列を脱離し、指数関数的増幅を抑制する。対照的に、「C」が「dU」に変わっている処理された鋳型は、最後から3番目の位置でセレクタープライマーとマッチせず、結果として、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、ミスマッチを介してプライマーを消費し、プライマーが「dU」部位(「A」と対形成する)にわたって伸長する前にリボヌクレオチドが排除される。リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれたプライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。リターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーをコピーし、「dU」配列が指数関数的に増幅される(増幅の際に「T」に変わる)。
【0078】
非限定例は、セレクタープライマーが今は「A」リボヌクレオチド(riboA若しくはrA)を最後から3番目の位置に含有し、処理された鋳型(相補的な位置が、修飾されておらず、したがって変わったので、「dU」になっている)と完全にマッチし、プルーフリーディング酵素により伸長している前述の変換である。新たに形成された二重鎖DNAはriboAを保持しているので、反応に存在する熱安定性リボヌクレアーゼH2(TS RNアーゼH2)は、リボヌクレオチドの5’側で切断し、大部分のプライマー配列を脱離し、指数関数的増幅を抑制する。対照的に、「C」が変わっていない(修飾により保護されている)、処理された鋳型は、最後から3番目の位置でセレクタープライマーとマッチせず、結果として、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、ミスマッチを介してプライマーを消費し、プライマーが変異部位にわたって伸長する前にリボヌクレオチドが排除される。リボヌクレオチドの喪失は、組み込まれたプライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。リターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーをコピーし、配列が指数関数的に増幅される。
【0079】
本明細書に提供される方法の実践に使用することができるプルーフリーディングポリメラーゼの非限定例には、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#F549L)、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs、カタログ#M0493L)、及びPlatinum SuperFi II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#12361050)が挙げられる。
【0080】
この例示的方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して特有の利点を含み、対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。
【0081】
実施例6:1個の対立遺伝子を抑制し、一方で同時に任意の代替的対立遺伝子を増幅する:分子ハプロタイプ決定への適用
この実施例は、1個の対立遺伝子の増幅を抑制し、一方で同時に、ヌクレオチド位置に存在する任意の代替的対立遺伝子を、代替的対立遺伝子と同じDNA相同体に配置されている対立遺伝子と共に増幅し、よって分子ハプロタイプ決定を可能にする例示的方法を実証する。
【0082】
非限定例は、ITGA4遺伝子におけるAGTハプロタイプの存在又は非存在を決定することである。ITGA4遺伝子内の単一ヌクレオチド多型には、c.1845G>A、c.2633A>G及びc.2883C>Tが挙げられ、ハプロタイプAGTは、心臓移植患者における抗体媒介性拒絶反応の発生に関連する。遺伝子型決定が、個体が2又は3つの部位でヘテロ接合性であることを明らかにする場合、ハプロタイプは、セレクタープライマーを適切なヘテロ接合部位に使用し、最も遠位のヘテロ接合部位を超えて配置されたリターンプライマーを使用して決定することができる。例として、DNAがc.1845においてヘテロ接合性である場合、セレクタープライマーは、c.1845位置に対応する最後から3番目の位置に「G」リボヌクレオチド(riboG又はrG)を含有し、リターンプライマーは、c.2883位置の下流である。これは、c.1845G対立遺伝子の抑制をもたらし、一方でc.1845A対立遺伝子の指数関数的増幅を可能にする。使用されるプルーフリーディング酵素の高い忠実度及び非常に低いレベルの鎖切替(strand-switching)のため、指数関数的に増幅された同じDNA相同体に存在する対立遺伝子を決定することができ、1845A DNA相同体のハプロタイプを見出すことができる。他の相同体のハプロタイプを遺伝子型から推測することができるか、又は最後から3番目の位置に「A」リボヌクレオチド(riboA若しくはrA)を含有するセレクタープライマーを使用して、別個の反応において確証することができる。
【0083】
本明細書に提供される方法の実践に使用することができるプルーフリーディングポリメラーゼの非限定例には、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#F549L)、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs、カタログ#M0493L)、及びPlatinum SuperFi II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#12361050)が挙げられる。本明細書に提供される方法の実践に使用することができる熱安定性リボヌクレアーゼH2の非限定例は、RNアーゼH2酵素(IDT、カタログ#11-03-02-03)である。
【0084】
この例示的方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して特有の利点を含み、対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。別の利点は、単一プライマーが特定のヌクレオチド位置で任意のバリアントを検出することであり、対照的に対立遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子バリアント又は突然変異のそれぞれに特異的なプライマーが必要である。
【0085】
実施例7:1個の対立遺伝子を部分的に抑制し、一方で同時に任意の代替的対立遺伝子を増幅する
この実施例は、1個の対立遺伝子の増幅を部分的に抑制し、一方で同時に、ヌクレオチド位置に存在する任意の代替的対立遺伝子を増幅する例示的方法を実証する。これを、野生型配列を部分的に抑制し、一方で同時に点突然変異を増幅することに適用することもできる。野生型の増幅を部分的に抑制するのみであり、一方で任意の変異体の増幅に干渉しない後者の場合を参照すると、2つの結論に達することができる:1.変異体が存在しない場合、野生型の部分的な増幅は、全体的な反応が良好に働いたことを確証する内部標準を提供し、2.野生型の抑制レベルを制御することによって、変異体(存在する場合)の増幅レベルを比較することができる内部基準が提供される。
【0086】
非限定例は、コード位置35の野生型「G」ヌクレオチドをコードするKRAS DNAの指数関数的増幅を部分的に抑制し、一方で同時にこの位置で可能な3個の突然変異のいずれかの指数関数的増幅を可能にすることである。セレクタープライマーは、最後から3番目の位置に「G」リボヌクレオチド(riboG又はrG)を含有し、野生型鋳型に完全にマッチし、プルーフリーディング酵素により伸長される。所定量でセレクタープライマーと混合されるものは、最後から3番目の位置の「G」がリボヌクレオチドではなく、通常のデオキシリボヌクレオチドであることを除いてセレクタープライマーと同一である対応物である。riboGを保持する新たに形成された二重鎖DNAは、反応に存在する熱安定性リボヌクレアーゼH2(TS RNアーゼH2)により切断され、それによって大部分のプライマー配列が脱離し、指数関数的増幅が抑制される。しかし、セレクタープライマーの対応物(即ち、セレクターヌクレオチド位置に通常のデオキシヌクレオチド対応物を含有するプライマー)を含有する新たに形成された二重鎖DNAは、切断されず、プライマーの全体が保持される。野生型の指数関数的増幅は部分的にのみ抑制される。c.35G>A(p.G12D)突然変異又はc.35G>T(p.G12V)突然変異又はc.35G>C(p.G12A)突然変異をコードする鋳型は、最後から3番目の位置でセレクタープライマー(又はその対応物)とマッチせず、結果として、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性が、ミスマッチを介してプライマーを消費し、プライマーが変異部位にわたって伸長する前にリボヌクレオチド又はそのデオキシリボヌクレオチド対応物が排除される。任意のリボヌクレオチドの非存在は、組み込まれたプライマー配列をリボヌクレアーゼによる除去に対して抵抗性にする。リターンプライマーは、組み込まれた(即ち、部分的に消費され、次いで伸長した)第1のプライマーをコピーし、任意の変異配列が指数関数的に増幅される。
【0087】
本明細書に提供される方法の実践に使用することができるプルーフリーディングポリメラーゼの非限定例には、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#F549L)、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase(New England Biolabs、カタログ#M0493L)、及びPlatinum SuperFi II DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific、カタログ#12361050)が挙げられる。本明細書に提供される方法の実践に使用することができる熱安定性リボヌクレアーゼH2の非限定例は、RNアーゼH2酵素(IDT、カタログ#11-03-02-03)である。
【0088】
この例示的方法は、検出することが興味深い配列を含有するプライマーを絶対に導入しないことが挙げられる現在の方法に対して特有の利点を含み、変異体は、1.セレクタープライマーと変異鋳型とのミスマッチが認識され、プルーフリーディングポリメラーゼの3’から5’へのエキソヌクレアーゼ活性により除去される場合、及び2.高忠誠度ポリメラーゼが変異鋳型をコピーする場合にのみ検出される。対照的に、対立遺伝子特異的増幅は、検出することが興味深いバリアント配列を導入し、このことは偽陽性をもたらし得る。別の利点は、単一プライマーが特定のヌクレオチド位置で任意のバリアントを検出することであり、対照的に対立遺伝子特異的PCRは、対立遺伝子バリアント又は突然変異のそれぞれに特異的なプライマーが必要である。本実施例に記載されている別の利点、並びに他の実施例及び一般に本明細書に提供される全ての方法に適用可能な別の利点は、反応が良好に働いたことを実証する内部標準として機能する、及び代替的対立遺伝子又は変異体(存在する場合)の増幅レベルを比較することができる内部基準として機能する、特定の対立遺伝子又は野生型の設定量の増幅を可能にする能力である。
【0089】
本発明の多数の実施形態が記載されている。それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な修正が行われ得ることを理解することができる。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A-B】
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2024505119000001.app
【国際調査報告】