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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】抗CD73抗体の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240129BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240129BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240129BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240129BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540516
(86)(22)【出願日】2021-05-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2021092485
(87)【国際公開番号】W WO2022142053
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/141601
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520035034
【氏名又は名称】アイ-エムエービー バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジェルー
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, シャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, ヤーリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076CC27
4C076DD47
4C076DD51
4C076DD67
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
抗CD73抗体の安定な製剤が提供され、それは、5mM~50mMのヒスチジン、2%(質量/体積)~20%(質量/体積)のトレハロース、および0.015%(質量/体積)~0.05%(質量/体積)のポリソルベート80(PS80)をpH5.6~pH6.4にて含む。その水性製剤を凍結乾燥することによって得られ得る凍結乾燥組成物、および疾患を処置するための方法もまた、提供される。一部の実施形態において、その組成物は、10mM~30mMのヒスチジン、5%(質量/体積)~15%(質量/体積)のトレハロース、および0.015%(質量/体積)~0.035%(質量/体積)のPS80をpH5.8~pH6.2にて含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD73抗体と5mM~50mMのヒスチジンと2%(質量/体積)~20%(質量/体積)のトレハロースと0.015%(質量/体積)~0.05%(質量/体積)のポリソルベート80(PS80)とをpH5.6~pH6.4にて含む組成物であって、前記抗体は、CDR1とCDR2とCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)と、CDR1とCDR2とCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ配列番号1~配列番号6のアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項2】
10mM~30mMのヒスチジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
5%(質量/体積)~15%(質量/体積)のトレハロース二水和物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
0.015%(質量/体積)~0.035%(質量/体積)のPS80を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
10mM~30mMのヒスチジン、5%(質量/体積)~15%(質量/体積)のトレハロース、および0.015%(質量/体積)~0.035%(質量/体積)のPS80をpH5.8~pH6.2にて含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
15mM~25mMのヒスチジン、6%(質量/体積)~10%(質量/体積)のトレハロース、0.015%(質量/体積)~0.025%(質量/体積)のPS80をpH5.9~pH6.1にて含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
5mg/mL~150mg/mLの前記抗体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記VHが配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を凍結乾燥することによって得られる、凍結乾燥組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の凍結乾燥組成物を溶媒に溶解することによって得られる、溶液。
【請求項12】
前記溶媒が水である、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
がんを処置するための医薬の調製のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法であって、前記患者に請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項15】
前記がんが、膀胱がん、乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵がん、前立腺がん、および甲状腺がんからなる群より選択される、請求項13に記載の使用または請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
抗CD73抗体は、種々の増殖性疾患および炎症性疾患を処置するために開発されている。CD73(分化抗原群73)は、AMPをアデノシンに変換するのに役立つ酵素である。CD73は、免疫抑制腫瘍環境に寄与する細胞外アデノシンの形成を触媒する。CD73は、間質細胞および複数の型の腫瘍細胞において、ならびにTreg、M2 Mφおよび骨髄由来抑制細胞(MDSC)において、過剰発現される。
【0002】
CD73阻害は、アデノシン媒介性リンパ球抑制を防止し、CD8+エフェクター細胞の活性を増加し、MDSCおよびTregの両方を減少した。可能性のある抗がん薬として開発されている少数の抗CD73抗体が存在するが、どれも臨床用途のために認可されてはいない。
【0003】
注射による送達が、一般的に、抗体または抗原結合フラグメントによるがん処置のために選択される送達経路である。しかし、生物学的障害、化学的障害、および物理的障害(例えば、乏しい長期貯蔵性、乏しい重量モル浸透圧濃度、乏しい溶解度、および乏しい安定性)により、注射による哺乳動物への生物活性剤の送達は問題のあるものとなる。したがって、安定で溶解性がある、抗体の改善された注射可能調製物についての必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(概要)
本開示は、抗CD73抗体と5mM~50mMのヒスチジンと2%(質量/体積)~20%(質量/体積)のトレハロースと0.015%(質量/体積)~0.05%(質量/体積)のポリソルベート80(PS80)とをpH5.6~pH6.4,にて含む組成物を提供し、その抗体は、CDR1とCDR2とCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)と、CDR1とCDR2とCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)とを含み、そのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3は、それぞれ配列番号1~配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0005】
一部の実施形態において、その組成物は、10mM~30mMのヒスチジン、5%(質量/体積)~15%(質量/体積)のトレハロース、および0.015%(質量/体積)~0.035%(質量/体積)のPS80をpH5.8~pH6.2にて含む。一部の実施形態において、その組成物は、15mM~25mMのヒスチジン、6%(質量/体積)~10%(質量/体積)のトレハロース、0.015%(質量/体積)~0.025%(質量/体積)のPS80をpH5.9~pH6.1にて含む。一部の実施形態において、その組成物は、5mg/mL~150mg/mLの上記抗体を含む。
【0006】
一部の実施形態において、そのVHは配列番号7のアミノ酸配列を含み、そのVLは配列番号8のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0007】
一実施形態において、本開示の組成物を凍結乾燥することによって得られる凍結乾燥組成物もまた、提供される。その凍結乾燥組成物を溶解することによって得られる溶液(例えば、水)もまた、提供される。
【0008】
がん(例えば、膀胱がん、乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵がん、前立腺がん、および甲状腺がん)を処置するための組成物を使用する使用および方法もまた、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳細な説明)
(I.定義)
範囲を含む、すべての数的指定(例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量)は、0.1%または10%の増分で変化(+)もしくは(-)される概数である。常には明示的に記載されるわけではないが、すべての数的指定の前には用語「約」があることが、理解されるべきである。常には明示的に記載されるわけではないが、本明細書において記載される試薬は単なる例示に過ぎないこと、およびそのようなものの等価物が当該分野において公知であるもまた、理解されるべきである。
【0010】
「組成物」は、活性薬剤と、別の不活性な化合物または組成物(例えば、検出可能な薬剤もしくは標識)あるいは活性化合物または組成物(例えば、アジュバント)との組み合わせ物を意味することが意図される。
【0011】
「薬学的組成物」は、その組成物がインビトロ、インビボまたはエクスビボでの診断的用途もしくは治療的用途のために適切になる、活性薬剤と、不活性キャリアまたは活性キャリアとの組み合わせ物を含むことが意図される。
【0012】
(II.抗体製剤)
治療抗体のために適切な構成の開発は、代表的には、例えば、タンパク質の溶解度、安定性、および重量モル浸透圧濃度からの矛盾する要件を有する。したがって、許容できる構成を生じるようにそのような要件が釣り合わされ得るか否かは、難問であり予測不能である。例えば、実施例2において示されるとおり、種々の緩衝液を本開示の抗CD73抗体とともに試験した場合、リン酸緩衝液が、他の緩衝液よりも多くの抗体断片化が生じることを許容したようであった(例えば、表4を参照のこと)。それはまた、より顕著な純度の減少をもたらした(表5)。これらのデータはまた、高pH(pH7.0)条件および低pH(pH4.5)条件もまたタンパク質純度にとって有害であり得ることを示唆する(表6もまた参照のこと)。
【0013】
試験したこれらすべての緩衝液および条件のうち、20nMヒスチジンをpH6.0にて含む製剤F5が、タンパク質の安定性を支持することが可能であるようであった。驚くべきことに、この緩衝液条件はタンパク質の高い溶解度、少なくとも80mg/mLおよび150mg/mLもまた可能にした(表7)。
【0014】
多数の候補賦形剤を実施例3において試験し、それには、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、およびアルギニンを含んだ。驚くべきことに、目に見える粒子が、凍結乾燥試験後に、PS80(ポリソルベート80)(凍結融解サイクル中にタンパク質を安定化するために重要であると同定されている賦形剤)の存在下でさえ、マンニトール(タンパク質製剤のために最も一般的に使用される賦形剤の1つ)を含む製剤において検出された(表11~表13)。また、スクロースを含む製剤は、最も多い断片化を受けた(表17)。別の賦形剤であるアルギニンの使用もまた、タンパク質純度の比較的大きな(1%)減少をもたらした(表18)。なお別の賦形剤であるソルビトールは、10サイクルの凍結融解中にタンパク質安定性を十分に支持することに失敗した(表23)。
【0015】
興味深いことに、候補賦形剤のうちの1つであるトレハロースは、これらすべての試験条件を通じてタンパク質を十分に安定のまま維持可能であった。また、トレハロースを含む製剤は、抗体の抗原結合効力を維持した(表24)。その後、実施例5において、製剤の熱力学的安定性を試験し、その試験手順中にタンパク質を安定のまま維持するためには少なくとも0.02%のPS80が必要であることが見出された。したがって、試行錯誤を通じて、本発明者らは、ヒスチジンとトレハロースとPS80とを約pH6.0にて含む、抗CD73抗体にとって適切な製剤を同定することができた。
【0016】
本開示の一実施形態にしたがって、本開示の抗CD73抗体または抗原結合フラグメントと、ヒスチジンとトレハロースとポリソルベート80とを含む組成物が、提供される。一部の実施形態において、その組成物は水溶液であり、その溶液のpHは5.5~6.5である。
【0017】
一部の実施形態において、ヒスチジン(例えば、ヒスチジン塩酸塩)は、濃度約5mM~約50mMで存在する。一部の実施形態において、ヒスチジンの濃度は、少なくとも約5mM、少なくとも約6mM、少なくとも約7mM、少なくとも約8mM、少なくとも約9mM、少なくとも約10mM、少なくとも約11mM、少なくとも約12mM、少なくとも約13mM、少なくとも約14mM、少なくとも約15mM、少なくとも約16mM、少なくとも約17mM、少なくとも約18mM、少なくとも約19mM、少なくとも約20mM、少なくとも約25mM、少なくとも約30mM、少なくとも約35mM、少なくとも約40mM、または少なくとも約45mMである。一部の実施形態において、ヒスチジンの濃度は、約100mM以下、約90mM以下、約80mM以下、約70mM以下、約60mM以下、約50mM以下、約45mM以下、約40mM以下、約35mM以下、約30mM以下、約29mM以下、約28mM以下、約27mM以下、約26mM以下、約25mM以下、約24mM以下、約23mM以下、約22mM以下、約21mM以下、約20mM以下、約19mM以下、約18mM以下、約17mM以下、約16mM以下、または約15mM以下である。一部の実施形態において、ヒスチジンの濃度は、約5mM~約40mM、約5mM~約35mM、約5mM~約30mM、約5mM~約25mM、約5mM~約20mM、約10mM~約50mM、約10mM~約45mM、約10mM~約40mM、約10mM~約35mM、約10mMmM~約30mM、約10mM~約25mM、約10mM~約20mM、約15mM~約50mM、約15mM~約45mM、約15mM~約40mM、約15mM~約35mM、約15mM~約30mM、約15mM~約25mM、約15mM~約20mM、約20mM~約50mM、約20mM~約45mM、約20mM~約40mM、約20mM~約35mM、約20mM~約30mM、または約20mM~約25mMである。
【0018】
一部の実施形態において、トレハロース(例えば、トレハロース二水和物)は、濃度約2%(質量/体積)~約20%(質量/体積)で存在する。一部の実施形態において、トレハロースの濃度は、少なくとも約2%(質量/体積)、少なくとも約3%(質量/体積)、少なくとも約4%(質量/体積)、少なくとも約5%(質量/体積)、少なくとも約6%(質量/体積)、少なくとも約7%(質量/体積)、少なくとも約8%(質量/体積)、少なくとも約9%(質量/体積)、少なくとも約10%(質量/体積)、少なくとも約11%(質量/体積)、少なくとも約12%(質量/体積)、少なくとも約15%(質量/体積)、少なくとも約17%(質量/体積)または少なくとも約18%(質量/体積)である。一部の実施形態において、トレハロースの濃度は、約20%(質量/体積)以下、約19%(質量/体積)以下、約18%(質量/体積)以下、約17%(質量/体積)以下、約16%(質量/体積)以下、約15%(質量/体積)以下、約14%(質量/体積)以下、約13%(質量/体積)以下、約12%(質量/体積)以下、約11%(質量/体積)以下、約10%(質量/体積)以下、約9%(質量/体積)以下、約8%(質量/体積)以下、約7%(質量/体積)以下、約6%(質量/体積)以下、約5%(質量/体積)以下、約4%(質量/体積)以下、または約3%(質量/体積)以下である。一部の実施形態において、トレハロースの濃度は、約2%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約16%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約15%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約12%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約9%(質量/体積)、約2%(質量/体積)~約8%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約16%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約15%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約9%(質量/体積)、約3%(質量/体積)~約8%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約16%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約15%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約9%(質量/体積)、約4%(質量/体積)~約8%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約16%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約15%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約15%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約9%(質量/体積)、約5%(質量/体積)~約8%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約16%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約16%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約16%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約9%(質量/体積)、約6%(質量/体積)~約8%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約17%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約9%(質量/体積)、約7%(質量/体積)~約8%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約8%(質量/体積)~約9%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約11%(質量/体積)、約9%(質量/体積)~約10%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約20%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約19%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約18%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約110%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約110%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約110%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約14%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約13%(質量/体積)、約10%(質量/体積)~約110%(質量/体積)、または約10%(質量/体積)~約11%(質量/体積)である。
【0019】
一部の実施形態において、ポリソルベート80(PS80)は、濃度約0.015%(質量/体積)~約0.05%(質量/体積)で存在する。一部の実施形態において、PS80は、濃度少なくとも約0.015%(質量/体積)、少なくとも約0.016%(質量/体積)、少なくとも約0.017%(質量/体積)、少なくとも約0.018%(質量/体積)、少なくとも約0.019%(質量/体積)、少なくとも約0.02%(質量/体積)、少なくとも約0.021%(質量/体積)、少なくとも約0.022%(質量/体積)、少なくとも約0.023%(質量/体積)、少なくとも約0.024%(質量/体積)、少なくとも約0.025%(質量/体積)、少なくとも約0.026%(質量/体積)、少なくとも約0.027%(質量/体積)、少なくとも約0.028%(質量/体積)、少なくとも約0.029%(質量/体積)、または少なくとも約0.03%(質量/体積)で存在する。一部の実施形態において、PS80は、濃度0.05%(質量/体積)以下、0.049%(質量/体積)以下、0.048%(質量/体積)以下、0.047%(質量/体積)以下、0.046%(質量/体積)以下、0.045%(質量/体積)以下、0.044%(質量/体積)以下、0.043%(質量/体積)以下、0.042%(質量/体積)以下、0.041%(質量/体積)以下、0.04%(質量/体積)以下、0.039%(質量/体積)以下、0.038%(質量/体積)以下、0.037%(質量/体積)以下、0.036%(質量/体積)以下、0.035%(質量/体積)以下、0.034%(質量/体積)以下、0.033%(質量/体積)以下、0.032%(質量/体積)以下、0.031%(質量/体積)以下、0.03%(質量/体積)以下、0.029%(質量/体積)以下、0.028%(質量/体積)以下、0.027%(質量/体積)以下、0.026%(質量/体積)以下、0.025%(質量/体積)以下、0.024%(質量/体積)以下、0.023%(質量/体積)以下、0.022%(質量/体積)以下、0.021%(質量/体積)以下、または0.02%(質量/体積)以下で存在する。
【0020】
一部の実施形態において、組成物は、pH5.6~pH6.4を有する。一部の実施形態において、そのpHは、5.6以上、5.7以上、5.8以上、5.85以上、5.9以上、5.95以上、6以上、6.05以上、6.1以上、6.15以上、または6.2以上である。一部の実施形態において、そのpHは、6.4以下、6.3以下、6.2以下、6.15以下、6.1以下、6.05以下、6以下、5.95以下、5.9以下、5.85以下、または5.8以下である。一部の実施形態において、そのpHは、約5.7~約6.3、約5.8~約6.2、約5.85~約6.15、約5.9~約6.1、約5.95~約6.05、または約5.9、約5.95、約6、約6.05、もしくは約6.1である。
【0021】
一部の実施形態において、組成物は、1種または複数種の増量剤をさらに含む。本明細書において使用される場合、用語「増量剤(bulking agent)」とは、凍結乾燥製剤に嵩を提供する成分を指す。増量剤の例としては、マンニトール、トレハロース、ラクトース、スクロース、ポリビニルピロリドン、スクロース、グルコース、グリシン、シクロデキストリン、デキストラン、固体PEGならびにそれらの誘導体および混合物が挙げられるが、それらに限定はされない。一実施形態において、本開示の製剤は、増量剤を必要に応じて含む。
【0022】
一部の実施形態において、組成物は、1種または複数種の等張化剤をさらに含む。本明細書において使用される用語「等張化剤」とは、製剤の張度を調節するために使用される薬学的に受容可能な薬剤を示す。等張性とは、ある溶液と比較した(通常はヒト血清の浸透圧と比較した)浸透圧を一般的には指す。製剤は、低張性、等張性、または高張性であり得る。一局面において、製剤は等張性である。等張性製剤は、液体であるか、または固体形態から(例えば、凍結乾燥形態から)再構成された液体であり、それが比較されるある種の他の溶液(例えば、生理食塩水溶液および血清)と同じ張度を有する溶液を示す。適切な等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、および本明細書において規定されるアミノ酸の群に由来する任意成分、糖の群に由来する任意成分、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0023】
一部の実施形態において、組成物は、1種または複数種の界面活性剤をさらに含む。本明細書において使用される場合、用語「界面活性剤」とは、両親媒性構造を有する薬学的に受容可能な有機物質を指し、すなわち、それは、対立する溶解度傾向の基、代表的には、脂溶性炭化水素鎖および水溶性イオン基から構成される。界面活性剤は、その界面活性部分の電荷に依存して、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤に分類され得る。界面活性剤は、種々の薬学的組成物および生物物質調製物のための湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、および分散剤としてしばしば使用される。本明細書において記載される薬学的製剤の一部の実施形態において、界面活性剤の量は、質量/体積パーセント(質量/体積%)で表されるパーセンテージとして記載される。適切な薬学的に受容可能な界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標))、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton(登録商標)-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic)、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の群が挙げられるが、それらに限定はされない。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート20(商標Tween(登録商標) 20(商標)として販売されている)およびポリソルベート80(商標Tween(登録商標) 80(商標)として販売されている)が挙げられる。ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマーとしては、Pluronic(登録商標)F68またはPoloxamer 188(商標)の名称で販売されているものが挙げられる、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、商標Brij(登録商標)として販売されているものが挙げられる。アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルとしては、商標Triton(登録商標)-Xとして販売されているものが挙げられる。
【0024】
一部の実施形態において、組成物は、1種または複数種の凍結保護剤をさらに含む。「凍結保護剤」とは、凍結乾燥(高真空における急速な凍結および乾燥のプロセス)中でタンパク質を安定化する薬学的に受容可能な物質を指す。凍結保護剤の例としては、スクロース、トレハロースまたはマンニトールが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0025】
一部の実施形態において、組成物は、1種または複数種の抗酸化剤をさらに含む。「抗酸化剤」とは、他の分子の酸化を遅延または防止することが可能な分子を指す。酸化とは、ある物質から酸化剤へと電子を移動する化学反応である。酸化反応は、フリーラジカルを生じ得、そのフリーラジカルは、タンパク質治療剤を不安定化させる連鎖反応を開始し、最終的にはその製品の活性に影響を与える。抗酸化剤は、フリーラジカル中間体を除去することによってこれらの連鎖反応を終結させ、抗酸化剤自体が酸化されることによって他の酸化反応を阻害する。結果として、抗酸化剤はしばしば、還元剤、キレート化剤、および脱酸素剤(例えば、クエン酸塩、EDTA、DPTA、チオール、アスコルビン酸またはポリフェノール)である。抗酸化剤の非限定的例としては、アスコルビン酸(AA、E300)、チオ硫酸塩、メチオニン、トコフェロール(E306)、没食子酸プロピル(PG、E310)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、E320)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT、E321)が挙げられる。
【0026】
一部の実施形態において、組成物は、1種または複数種の保存剤をさらに含む。「保存剤」は、微生物増殖によるかまたは望ましくない化学変化による分解を防ぐために、食物、医薬品、塗料、生物学的サンプル、木などの製品に添加される、天然化学物質または合成化学物質である。保存添加剤は、単独で、または他の保存方法と組み合わせて、使用され得る。保存剤は、抗菌保存剤(これは、細菌および真菌の増殖を阻害する)、または抗酸化剤(これは、構成成分の酸化を阻害する)(例えば、酸素吸収剤)であり得る。一般的な抗菌保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロルヘキシジン、グリセリン、フェノール、ソルビン酸カリウム、チメロサール、亜硫酸塩(二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなど)およびEDTA二ナトリウム塩が挙げられる。他の保存剤としては、非経口(patenteral)タンパク質において一般的に使用される保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノールまたはメチルパラベン)が挙げられる。
【0027】
本明細書において開示される抗CD73抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有する。そのVHは、3つの相補性決定領域(CDR)であるCDR1、CDR2およびCDR3を含み、そのVLもまた3つのCDRであるCDR1、CDR2およびCDR3を含む。そのVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3は、それぞれ、アミノ酸配列である配列番号1~配列番号6を含む。例示のVH配列およびVL配列は、それぞれ、配列番号7および配列番号8を含む。その抗体はまた、重鎖定常領域および軽鎖定常領域を含み得る。例示の重鎖配列および軽鎖配列は、それぞれ配列番号9および配列番号10を含む。
【0028】
一部の実施形態において、組成物は、5mg/mL~150mg/mLの本開示の抗CD73抗体または抗原結合フラグメント、5mM~50mMのヒスチジン、2%(質量/体積)~20%(質量/体積)のトレハロース、0.015%~0.05%(質量/体積)のPS80を、pH5.6~pH6.4にて含む。
【0029】
一部の実施形態において、組成物は、10mg/mL~120mg/mLの本開示の抗CD73抗体または抗原結合フラグメント、10mM~30mMのヒスチジン、5%(質量/体積)~15%(質量/体積)のトレハロース、0.015%(質量/体積)~0.035%(質量/体積)のPS80をpH5.8~pH6.2にて含む。
【0030】
一部の実施形態において、組成物は、10mg/mL~120mg/mLの本開示の抗CD73抗体または抗原結合フラグメント、15mM~25mMのヒスチジン、6%(質量/体積)~10%(質量/体積)のトレハロース、0.015%(質量/体積)~0.025%(質量/体積)のPS80をpH5.9~pH6.1にて含む。
【0031】
一部の実施形態において、本明細書において開示される水溶液を凍結乾燥することによって調製され得る凍結乾燥組成物もまた、提供される。一部の実施形態において、その凍結乾燥組成物を溶媒(例えば、水)に溶解することによって調製され得る溶液もまた、提供される。
【0032】
(III.製剤を使用する方法)
本明細書において記載されるとおり、本開示の組成物は、特定の処置方法および診断方法において使用され得る。本開示はさらに、本明細書において記載される障害または状態のうちの1つまたは複数を処置するために本開示の組成物を患者(例えば、動物、哺乳動物、およびヒト)に投与する工程を含む、抗体ベースの治療に関する。
【0033】
本開示の組成物はまた、がんを処置または阻害するために使用され得る。上記で提供されたとおり、CD73は、腫瘍細胞において過剰発現され得る。腫瘍由来のCD73は、細胞外アデノシンを生成するためのエクト酵素(ecto-enzyme)として機能し得、細胞外アデノシンは、アデノシンレセプターシグナル伝達を介して抗腫瘍T細胞免疫を制限することによって、腫瘍増殖を促進する。マウス腫瘍モデルにおけるCD73を標的とする低分子インヒビターまたはモノクローナル抗体を用いた結果は、標的化CD73治療が腫瘍増殖の有効な制御への重要な代替的で現実的なアプローチであることを示す。特に、それは、適応免疫応答機構を増強することによってT細胞ベースの治療を助け、このことは、腫瘍浸潤Tリンパ球の機能を増加し得、がん患者生存の改善をもたらし得る。
【0034】
したがって、一部の実施形態において、それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法が、提供される。その方法は、一実施形態において、その患者に有効量の本開示の組成物を投与する工程を伴う。一部の実施形態において、その患者におけるがん細胞(例えば、間質細胞)のうちの少なくとも1つは、CD73を過剰発現する。
【0035】
がんの非限定的例としては、膀胱がん、乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、膵がん、前立腺がん、および甲状腺がんが挙げられる。
【0036】
本開示の抗体またはその改変体もしくは誘導体を用いて処置、予防、診断および/あるいは予後判定し得る、細胞生存の増加に関連するさらなる疾患または状態としては、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病が挙げられる))ならびに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)が挙げられる)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、および固形腫瘍(肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫が挙げられるが、それらに限定はされない)などの、悪性疾患および関連障害の進行ならびに転移が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0037】
何らかの特定の患者のための特定の投与量および処置レジメンは、種々の要因に依存し、それらの要因としては、使用される特定の抗体、その改変体または誘導体、患者の年齢、患者の体重、患者の健康全般、患者の性別、および患者の食事、ならびに投与回数、排出率、薬物の組合せ、および処置される特定の重症度が挙げられる。医療従事者によるそのような要因の判断は、当業者の範囲内にある。その量はまた、処置される個別の患者、投与経路、製剤の種類、使用される化合物の特徴、疾患の重症度、および望まれる効果に依存する。使用される量は、当該分野において周知である薬理学的原則および薬物動態学的原則によって決定され得る。
【0038】
組成物の投与方法としては、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、および皮下経路が挙げられるが、それらに限定はされない。その組成物は、任意の都合の良い経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮層または粘膜皮膚層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通る吸収によって、投与され得、他の生物活性薬剤とともに投与され得る。したがって、本開示の抗原結合ポリペプチドを含む薬学的組成物は、非経口的に、大槽内に(intracistemally)、腟内に、腹腔内に、局所に(粉末、軟膏、点滴薬もしくは経皮パッチとして)、頬側(bucally)に、または口腔スプレーもしくは点鼻スプレーとして、投与され得る。
【0039】
本明細書において使用される用語「非経口」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内(intrasternal)、皮下、および関節内の注入ならびに注射を含む、投与様式を指す。
【0040】
投与は、全身投与であっても、局所投与であってもよい。さらに、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射が挙げられる)によって本開示の抗体を中枢神経系に導入することが、望ましいものであり得る;脳室内注射は、例えばリザーバー(Ommayaリザーバーなど)に取り付けられた脳室内カテーテルによって、促進され得る。肺投与もまた、例えば、吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤を含む製剤の使用によって、使用され得る。
【0041】
炎症性、免疫性もしくは悪性の疾患、障害または状態の処置、阻害および予防において有効である本開示の抗体の量は、標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、インビトロアッセイが、最適な投与量範囲を同定するのを助けるために、必要に応じて使用され得る。製剤において使用されるべき正確な用量もまた、投与経路、および疾患、障害または状態の重症度に依存し、それは特定の各々の患者の状況の判断にしたがって決定されるべきである。有効な用量は、インビトロ試験システムまたは動物モデル試験システムに由来する用量反応曲線から推定され得る。
【0042】
一般的な提案として、患者に投与される本開示の抗原結合ポリペプチドの投与量は、代表的には、患者の体重1kg当たり0.1mg~100mg、患者の体重1kg当たり0.1mgと20mgとの間、または患者の体重1kg当たり1mg~10mgである。一般的には、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答が原因で、他の種に由来する抗体よりも長い半減期をヒトの体内で有する。したがって、より少ない投与量のヒト抗体およびより少ない頻度の投与が、しばしば可能である。さらに、本開示の抗体の投与量および投与頻度は、その抗体の取込みおよび組織(例えば、脳への)浸透を、例えば、脂質化などの修飾によって増強することによって、減少され得る。
【0043】
本開示の組成物の投与を含む、感染性もしくは悪性の疾患、状態または障害を処置するための方法は、代表的には、ヒトにおける使用の前に、望ましい治療活性または予防活性のために、インビトロで試験され、その後、受容可能な動物モデルにおいてインビボで試験される。適切な動物モデル(トランスフェニック動物が挙げられる)は、当業者にとって周知である。例えば、本明細書において記載される抗原結合ポリペプチドの治療的有用性を示すためのインビトロアッセイは、細胞株または患者組織サンプルに対する抗原結合ポリペプチドの効果を含む。その細胞株および/または組織サンプルに対する抗原結合ポリペプチドの効果は、当業者にとって公知である技術(例えば、本明細書中の他の箇所で開示されるアッセイ)を使用して、決定され得る。本開示にしたがって、特定の抗原結合ポリペプチドの投与が示されるか否かを決定するために使用され得るインビトロアッセイとしては、インビトロ細胞培養アッセイが挙げられ、そのアッセイにおいて、患者組織サンプルが培養中で増殖され、化合物に曝露されるかまたは他の方法で化合物を投与され、その組織サンプルに対するそのような化合物の効果が観察される。
【0044】
さらなる実施形態において、本開示の組成物は、抗悪性腫瘍薬、抗ウイルス薬、抗菌薬もしくは抗生物質または抗真菌薬と組み合わせて、投与される。当該分野において公知であるこれらの薬剤のいずれもが、本開示の組成物中で投与され得る。
【0045】
別の実施形態において、本開示の組成物は、化学療法剤と組み合わせて投与される。本開示の組成物とともに投与され得る化学療法剤としては、抗生物質誘導体(例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、およびダクチノマイシン);抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);代謝拮抗薬(例えば、フルオロウラシル、5-FU、メトトレキサート、フロクスウリジン、インターフェロンα-2b、グルタミン酸、プリカマイシン、メルカプトプリン、および6-チオグアニン);細胞傷害性薬物(例えば、カルムスチン、BCNU、ロムスチン、CCNU、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、エストラムスチン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シスプラチン、およびビンクリスチン硫酸塩);ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エチニルエストラジオール、エストラジオール、酢酸メゲストロール、メチルテストステロン、ジエチルスチルベストロール二リン酸、クロロトリアニセン、およびテストラクトン);ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、メルファラン(mephalen)、クロラムブシル(chorambucil)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)およびチオテパ);ステロイドならびに組合せ(例えば、ベタメタゾン(bethamethasone)リン酸エステルナトリウム);ならびに他の化学療法剤(例えば、ダカルバジン(dicarbazine)、アスパラギナーゼ、ミトタン、ビンクリスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、およびエトポシド)が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0046】
さらなる実施形態において、本開示の組成物は、サイトカインと組み合わせて投与される。本開示の組成物とともに投与され得るサイトカインとしては、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、抗CD40、CD40L、およびTNF-αが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0047】
さらなる実施形態において、本開示の組成物は、他の治療レジメンまたは予防レジメン(例えば、放射線治療など)と組み合わせて投与される。
【実施例
【0048】
(実施例)
本開示は、以下の実施例を参照することによってさらに理解され、それらの実施例は、単に本開示の例示であることが意図される。本開示は、例示される実施形態によって範囲を限定されず、それらの実施形態は、本開示の個々の局面の例示としてのみ意図される。機能的に等価なあらゆる方法が、本開示の範囲内にある。本明細書において開示される改変に加えて本開示の種々の改変が、上記の説明および添付の図面から当業者にとって明らかになる。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0049】
(実施例1.抗CD73抗体IM005の開発)
ヒトCD73タンパク質に結合しその酵素活性を阻害することにおいて強い活性を示したヒト化抗CD73抗体(IM005)を、開発した。さらに、WO2018137598において示されたとおり、この抗体は、細胞表面CD73の内部移行を効果的に誘導する。この抗体はまた、AMPおよびCD4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答の腫瘍細胞により媒介される抑制を完全に逆転させ得、腫瘍由来のCD73の活性の抑制において有効であり、腫瘍増殖の阻害をもたらす。
【0050】
結合分析は、IM005がCD73タンパク質のC末端ドメインに結合することを示した。これは、そのN末端ドメインに結合する既知の抗CD-73抗体とは異なる。IM005の独特の結合特性は、既知の抗体と比較して優れたそのCD73阻害プロファイルの一因である。例えば、MEDI-9447(Oleclumab)は、膵がんおよび大腸がんならびに他のがんの処置のために現在臨床開発中である、ヒト抗CD73モノクローナル抗体である。MEDI-9447によるCD73の阻害は、完全MEDI-9447抗体がCD73に結合する両方の結合部位を必要とするが、Hu101-28による一価結合は十分である。したがって、MEDI-9447は、可溶性CD73、または比較的低レベルのCD73を発現する細胞上で阻害不能である。対照的に、IM005は、表面に種々のレベルのCD73を発現する細胞および可溶性CD73におけるCD73活性の完全な阻害を達成し得る。
【0051】
IM005は、以下のVH/VL配列およびCDR配列を有する。
表1.抗CD73CDR
【表1-1-1】

【表1-1-2】
【0052】
IM005抗体を調製するために、VH遺伝子およびVK遺伝子を合成により作製し、その後、それぞれ、ヒトγ1定常ドメインおよびヒトκ定常ドメインを含むベクター中に、クローン化した。
【0053】
(実施例2.緩衝液およびpHの選択)
この実施例は、上記タンパク質を最も安定化した最適なpH/緩衝液の条件についてスクリーニングして、その後のIM005製剤開発を支援するタンパク質溶解度を研究した。
【0054】
(方法)
(タンパク質濃度)
タンパク質濃度を、Thermo UV分光光度計によって決定した。pHおよび緩衝液の評価研究において使用した吸光係数は1.660AU・mL・mg-1・cm-1であり、これをすべての製剤開発研究において適用した。すべての測定は、各回で2.5μLサンプルを用いて2回繰り返し、平均を採用した。
【0055】
(SEC-HPLC)
TSKGel G3000SWXLカラム(300mm×7.8mm、5μm)を備えたAgilent HPLCシステム使用して、サイズ排除クロマトグラフィーを実施した。その移動相は50mM PB、300mM NaCl、pH6.8±0.2であり、その流量は1.0mL/分として設定した。各サンプルについて100μgのタンパク質を注入し、検出器の波長を280nmに設定した。
【0056】
(cIEF)
FC被覆型cIEFカートリッジを備えたProteinSimple iCE分析器にて、cIEFを実施した。このcIEF方法を使用して、IM005サンプルの等電点(pI)およびチャージバリアントを分析した。そのローディング混合物は、濃度1.0mg/mLの20μLサンプル、35μLの1%メチルセルロース、1μLのPharmalyte 3-10および3μLのPharmalyte 8-10.5両性担体、0.5μLの低pIマーカー6.61または低pIマーカー6.14、0.5μLの高pIマーカー9.46または高pIマーカー9.77、25μLの8モル/L尿素、およびそのローディングサンプルの体積を最終的に100μLにするための15μLの精製水を含んだ。オートサンプラーの温度は5℃であり、サンプル注入時間は90秒間であった。フォーカシングを以下の2つの段階で実施した:1500V下で1分間のプレフォーカシング、それに続く、3000Vにて8分間のフォーカシング。全カラム画像化検出技術を用いて、280nMにてシグナルを検出した。Chromperfect Analysis Softwareを使用して、データを分析した。
【0057】
(濁度(UV350))
濁度を分光光度計(Spectra Max)によって実施した。150μLサンプルを96ウェルプレートのウェルに添加し、150μLの個別の緩衝液もまた、対応するウェルに参照として添加した。その後、それらの緩衝液およびサンプルの吸光度を、350nmにて試験した。そのタンパク質のUV350値を、対応する緩衝液を減算することによって得た。
【0058】
(Caliper-SDS(還元型および非還元型))
Caliper-SDSをCaliperによって実施した-これはマイクロチップベースのアッセイであった。非還元型:その変性溶液は、サンプル緩衝液(キット由来)、10%のSDSおよび100mMのN-エチルマレイミドを20:1:0.7の体積比で混合することによって調製した。2μLのサンプルと7μLの変性溶液とを十分に混合し、70℃にて10分間インキュベートし、遠心沈殿した。HO(35μL)をそのサンプルに添加し、その後、42μLのその混合物を96ウェルプレートに移し、4000rpmにて20分間遠心分離して気泡を除去した。そのプレートを上記機器のプレートホルダーに載せた後、脱色ゲルと蛍光色素とマーカーとを充填したMicrochipにおいて、サンプルを移動させ(sip)、染色し、分離させ、検出した。データをLabChip GX Reviewerで分析した。
【0059】
還元型:その変性溶液は、サンプル緩衝液(キット由来)、10%のSDSおよび1Mジチオスレイトールを20:1:0.7の体積比で混合することによって調製し、一方、参照標準物またはサンプルはMQ HOで1mg/mLに希釈した。2μLのサンプルと7μLの変性溶液とを十分に混合し、70℃にて10分間インキュベートし、遠心沈殿した。
【0060】
O(35μL)をそのサンプルに添加し、その後、42μLのその混合物を96ウェルプレートに移し、4000rpmにて20分間遠心分離して気泡を除去した。そのプレートを上記機器のプレートホルダーに載せた後、脱色ゲルと蛍光色素とマーカーとを充填したMicrochipにおいて、サンプルを移動させ(sip)、染色し、分離させ、検出した。データをLabChip GX Reviewerで分析した。
【0061】
(DSC)
DSC分析を、GE DSC Systemを用いて実施した。サンプルを参照緩衝液で1mg/mLに希釈した。400μLの個別の参照緩衝液を96ウェルプレートの奇数番号のウェルに添加し、400μLのサンプルをそのサンプルプレートの偶数番号のウェルに添加した。スキャン温度が速度200℃/時間で10℃~110℃の勾配であるように、実験パラメータを設定した。サーモグラムの分析をMicroCal VP-Capillary DSCソフトウェアで実施した。
【0062】
(粘度)
粘度を、BROOKFIELD粘度計を使用して評価し、そのコーンの型はCPA-40Zであった。試験温度は25℃であり、0.5mLのサンプルが必要であった。
【0063】
(結果)
IM005(20.4mg/mL)を最初に、表1に示される9種の異なる緩衝液に交換した。そのタンパク質濃度を10mg/mLに調整した。
表1.緩衝液条件
【表1-2】
【0064】
4個の2mLガラスバイアルに、各製剤について1mLの濾過済み製品を充填した。充填直後に、それらのバイアルに栓をして圧着した。圧着を除けば、すべての手順はバイオセーフティフード(bio-safety hood)中で実施した。それらのバイアルを40℃インキュベーター中に配置し、種々の時点で分析のためにバイアルを40℃条件から取り出した。
【0065】
(DSC)
各製剤の熱力学的安定性を、DSCを使用して調べた。タンパク質の熱誘導性アンフォールディングの融解温度(Tm)は、その立体構造的安定性の指標であると考えられる。
【0066】
表2において示されるとおり、転移の開始温度は、46.18℃(F1:酢酸塩 pH4.5)~57.25℃(F7:PB pH6.0)の範囲であった。Tm1は、54.53℃(F1:酢酸塩 pH4.5)~76.57℃(F3:酢酸塩 pH5.5)の範囲であった。Tm2は、77.27 ℃(F5:ヒスチジン pH6.0)~86.54℃(F9:PB pH7.0)の範囲である(F3:酢酸塩 pH5.5、F6:ヒスチジン pH6.5およびF7:PB pH6.0を除く)。これらの異なる転移温度が、9種の製剤のプロファイルにおいて観察された。
表2.pH/緩衝液スクリーニング研究のDSCの結果
【表2-1】
【表2-2】
【0067】
(外観)
外観評価の結果を表3に示す。40℃条件にて、目に見える粒子が、2週間後にF6(ヒスチジン pH6.5)、F7(PB pH6.0)、F8(PB pH6.5)およびF9(PBpH7.0)において観察された。目に見える粒子が、4週間後にF3(酢酸塩 pH5.5)、F6(ヒスチジン pH6.5)、F7(PB pH6.0)、F8(PB pH6.5)およびF9(PB pH7.0)において観察された。目に見える粒子は何も、40℃でのインキュベーションの後にF1(酢酸塩 pH4.5)、F2(酢酸塩 pH5.0)、F4(ヒスチジン pH5.5)およびF5(ヒスチジン pH6.0)においては観察されなかった。
【0068】
(pH)
すべての製剤のpH値を、すべてのサンプリング時点で測定した。結果は、40℃でのインキュベーションの後には、pH値の何の実質的変化も存在しなかったことを示した。
【0069】
(タンパク質濃度)
すべての製剤のタンパク質濃度を、UV280法であるnanodrop2000を使用して、すべてのサンプリング時点で測定した。その結果が示すとおり、40℃条件でのインキュベーションの後には、タンパク質濃度の約10%減少がF9(PB pH7.0)において観察され、F1~F8においてはタンパク質濃度の何の実質的変化も観察されなかった。
表3.pH/緩衝液スクリーニング(40℃)の外観、pH、UV280の結果
【表3-1】
【表3-2】
【0070】
(SEC-HPLC)
40℃でのSECの結果を表4に示す。凝集がすべての製剤で観察され、断片化が一部の緩衝液で観察された。9種すべての製剤からのメインピーク%は、増加する熱処理時間にともなって減少した。より大幅な減少が、F1(酢酸塩 pH4.5)サンプル、F7(PB pH6.0)サンプル、F8(PB pH6.5)サンプル、およびF9(PB pH7.0)サンプルで観察された。これらの結果は、LMW%およびHMW%の種と一致している。
【0071】
このSEC-HPLCの結果に基づいて、F2~F6を製剤候補として選択し得る。

表4.pH/緩衝液スクリーニング(40℃)のSEC-HPLCの結果
【表4】
【0072】
(Caliper-SDS(還元型および非還元型))
Caliper-SDSは、CEベースのハイスループット分析であり、高感度でモノクローナル抗体の断片化を検出可能である。Caliper-SDS実験において、より大幅な純度%の減少が、表5におけるF1(酢酸塩 pH4.5)、F7(PB pH6.0)、F8(PB pH6.5)、およびF9(PB pH7.0)の非還元型サンプルで観察された。さらに、(LC+HC)%の減少が、F1サンプル、F7サンプル、F8サンプル、およびF9サンプルにおいて、より急速であった。これらの結果は、上記のSECの結果と一致している。

表5.pH/緩衝液スクリーニング(40℃)のCaliper-SDS(還元型および非還元型)の結果
【表5-1】
【表5-2】
【0073】
Caliper-SDSの結果は、低pH(pH4.5)条件および高pH(pH7.0)条件における方が純度が減少した他のアッセイの結果と同様の傾向を示した。
【0074】
(cIEF)
40℃での4週間のインキュベーションの後、cIEFデータを得た。これを表6に示す。その結果は、SEC-HPLCと同様の傾向を示し、メインピーク%の減少は、F1(酢酸塩 pH4.5)サンプル、F7(PB pH6.0)サンプル、F8(PB pH6.5)サンプル、およびF9(PB pH7.0)サンプルにおける方が大幅であった。各緩衝液型において、塩基性ピーク%はpH増加とともに減少したが、酸性ピーク%はpH増加とともに増加した。

表6.pH/緩衝液スクリーニング(40℃)のcIEFの結果
【表6-1】
【表6-2】
【0075】
これらの結果は、最大のチャージバリアントの変化がF9(PB pH7.0)で観察され、最小のチャージバリアントの変化がF5(ヒスチジン pH6.0)で観察されたことを示す。
【0076】
要約すると、このpH/緩衝液スクリーニング研究において、目に見える粒子が、40℃でのインキュベーションの後にF3(酢酸塩 pH5.5)、F6(ヒスチジン pH6.5)、F7(PB pH6.0)、F8(PB pH6.5)およびF9(PB pH7.0)で観察された。40℃にて、F1(酢酸塩、pH4.5)およびF7、F8、F9(リン酸緩衝液)は、最も顕著な純度減少をCaliper-SDS(還元型および非還元型)ならびにSECの結果で示しただけでなく、最大のチャージバリアントの変化をcIEFで証明した。濃度の10%減少が、40℃でのインキュベーションの後にF9で観察された。
【0077】
したがって、これらの結果は、IM005がリン酸緩衝液における方が安定性が低かったことおよびこのタンパク質は緩衝液のpHが低すぎる場合には不安定であり得ることを示す。F2、F4およびF5について、40℃にて4週間のインキュベーションの後に、Caliper-SDS還元型の結果において実質的な変化は何も観察されなかった一方で、Caliper-SDS非還元型の純度%の減少が観察された。F5は、Caliper-SDS非還元型およびSECの両方の純度の結果において、他よりも少なくしか減少しない。したがって、F5(20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝液)を、さらなる開発のために選択した。
【0078】
(実施例3.溶解度研究)
この実施例は、選択した緩衝系におけるIM005の溶解度を評価した。
【0079】
IM005を20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝液に交換し、その濃度を80mg/mLおよび150mg/mLに調整した。それらのサンプルを0.22μm PVDFメンブレンフィルターで無菌濾過した。各濃度について、3個の2mLガラスバイアルに1mLのDSを、バイオセーフティフード中で充填した。充填直後に、それらのバイアルに栓をして圧着した。
【0080】
合計6個のバイアルを異なるインキュベーター(2℃~8℃および25℃)中に配置し、1個のバイアルを分析のために各条件から取り出した。
【0081】
外観、濃度(UV280)および濁度(UV350)を、すべてのサンプリング時点で測定した(表7中の結果)。それらの結果は、2℃~8℃および25℃にて48時間のインキュベーションの後に、実質的な変化が何も存在しなかったことを示した。

表7.溶解度研究(2℃~8℃および25℃)の外観、濃度および濁度の結果
【表7】
【0082】
IM005を、20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝液において標的濃度の80mg/mLおよび150mg/mLへと首尾良く濃縮した。その短期安定性の結果は、2℃~8℃および25℃にて48時間の貯蔵の後で、実質的な変化は何も観察されなかったことを示した。それは、IM005が、20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝液中で80mg/mLまたは150mg/mLでの短期貯蔵後に安定であったことを示した。
【0083】
このpH/緩衝液スクリーニング研究は、ストレス条件(40℃)下で9種のpH/緩衝液の型を調査し、その結果は、IM005の安定性がpHおよび緩衝液の両方の型と密接に関連することを示した。乏しいタンパク質安定性を低pH条件、高pH条件、およびリン酸緩衝液下で観察した。選択した緩衝液は、20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝液(F5)であった。
【0084】
溶解度研究において、2℃~8℃および25℃にて48時間で明らかな変化は何も観察されず、このことは、IM005が80mg/mLおよび150mg/mLの濃度で短期間は安定であったことを示した。これらのpH/緩衝液スクリーニング研究および溶解度研究からの結果に基づいて、20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝液を、この製品についての以下の製剤開発研究において使用する。
【0085】
(実施例4.賦形剤のスクリーニング)
この実施例は、20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝系においてIM005タンパク質を安定化し得る候補賦形剤を調べた。
【0086】
IM005抗体ストック溶液を20mMのヒスチジンpH6.0緩衝系に交換した。その後、表8に列挙した賦形剤を、それぞれこの溶液に添加した。そのタンパク質濃度を50mg/mLに調整した。

表8.製剤処方の候補
【表8】
【0087】
すべての製剤サンプルを、バイオセーフティフード中で最終的に0.22μmPVDFメンブレンフィルターで濾過し、2mLガラスバイアル(1mL/バイアル)に充填し、栓をして密封した。それらのバイアルを、T0サンプル以外は25℃インキュベーター、40℃インキュベーターおよび-40℃冷蔵庫中に配置し、分析のためにバイアルをこれらの条件から取り出した。
【0088】
Advanced 2020 Multi-Sample浸透圧計を、6種の製剤の重量モル浸透圧濃度測定のために使用した。それらの結果を表9に示す。

表9.賦形剤スクリーニング研究(T0)の重量モル浸透圧濃度の結果
【表9】
【0089】
(DSC)
各製剤の熱力学的安定性を、DSCを使用して調べた。その融解温度(Tm)は、タンパク質のアンフォールディング開始温度を誘導し、その立体構造的安定性の指標であると考えられる。
【0090】
表10に示すとおり、転移の開始温度は、50.9℃(F5:アルギニン塩酸塩、pH6.0)~58.6℃(F2:トレハロース、pH6.0)の範囲であった。そのTm1は、59.3℃(F5:アルギニン塩酸塩、pH6.0)~65.2℃(F1:スクロース、pH6.0)の範囲であった。Tm2は、76.7℃(F5:アルギニン塩酸塩、pH6.0)~78.5℃(F1:スクロース、pH6.0)の範囲である。6種の製剤間でのTm開始、Tm1およびTm2の最大の差の値は、それぞれ7.7℃、5.8℃および1.9℃である。

表10.賦形剤スクリーニング研究のDSCの結果
【表10】
【0091】
(外観)
表11~表13に示すとおり、40℃にて2週間および4週間のインキュベーションの後に、目に見える粒子は、F6(PS80を含まない)以外のすべての製剤において何も観察されなかった。25℃にて4週間のインキュベーションの後に、目に見える粒子は6種すべての製剤で何も観察されなかった。その凍結融解(-40℃~室温)条件下で、目に見える粒子は、10サイクルの凍結融解後にF4(マンニトール、pH6.0)で観察されたが、他の5種の製剤では観察されなかった。
【0092】
(pH)
6種の製剤のpH値を、表11~表13に示すすべてのサンプリング時点で測定した。結果は、25℃、40℃にて4週間のインキュベーションの後、または5サイクル/10サイクルの反復凍結融解の後に、pH値の実質的な変化は何も存在しなかったことを示した。
【0093】
(タンパク質濃度(A280))
6種の製剤のタンパク質濃度を、表11~表13に示すすべてのサンプリング時点で、UV280法であるnanodrop2000を使用して測定した。それらの結果が示したとおり、25℃、40℃にて4週間のインキュベーションの後、または5サイクル/10サイクルの反復凍結融解の後に、タンパク質濃度の実質的な変化は何も存在しなかった。

表11.賦形剤スクリーニング研究(40℃)の外観、pH、UV280の結果
【表11】
表12.賦形剤スクリーニング研究(25℃)の外観、pH、UV280の結果
【表12-1】
【表12-2】
表13.賦形剤スクリーニング研究(凍結乾燥)の外観、pH、UV280の結果
【表13】
【0094】
(SEC-HPLC)
40℃でのSEC-HPLCの結果を表14に示す。F1からF6まで、メインピーク%が、それぞれ、3.3%、3.2%、3.4%、2.8%、2.7%および2.2%減少した。%HMWが、それぞれ、2.3%、2.2%、2.5%、1.8%、1.7%および1.3%増加した。一方で、%LMWは、それぞれ、1.0%、0.9%、0.9%、1.0%、1.0%および1.0%増加した。

表14.賦形剤スクリーニング研究(40℃)のSEC-HPLCの結果
【表14-1】
【表14-2】
【0095】
25℃でのSEC-HPLCの結果を表15に示す。これらの結果は、25℃で4週間のインキュベーションの後に、メインピーク%の実質的な減少は何も存在しなかったことを示した。

表15.賦形剤スクリーニング研究(25℃)のSEC-HPLCの結果
【表15】
【0096】
凍結融解(-40℃~室温)条件下でのSEC-HPLCの結果を表16に示す。これらの結果は、10サイクルの凍結融解の後で、F4(マンニトール、pH6.0)以外は、これらの製剤で顕著な変化が何も存在しなかったことを示す。F4のメインピーク%は4.4%減少した一方で、%HMWは4.4%増加した。

表16.賦形剤スクリーニング研究(凍結融解)のSEC-HPLCの結果
【表16】
【0097】
(Caliper-SDS(nr))
Caliper-SDSは、CEベースのハイスループット分析法であり、これを使用して、高感度でモノクローナル抗体の断片化を検出する。40℃でのCaliper-SDS(nr)の結果を表17に示す。純度%の減少が、6種すべての製剤で観察された。F1からF6まで、純度%が、それぞれ5.8%、3.7%、4.4%、4.9%、4.8%および4.6%減少した。それらうちで、F2(トレハロース二水和物、pH6.0)が、最も小さい純度%減少を示した。

表17.賦形剤スクリーニング研究(40℃)のCaliper-SDS(非還元型(nr))の結果
【表17-1】
【表17-2】
【0098】
25℃でのCaliper-SDS(nr)の結果を表18に示す。それらの結果は、25℃にて4週間のインキュベーションの後で、F5(アルギニン塩酸塩、pH6.0)以外は、これらの製剤で顕著な変化は何も存在しなかったことを示した。F5の純度%は1%減少した。

表18.賦形剤スクリーニング研究(25℃)のCaliper-SDS(非還元型(nr))の結果
【表18】
【0099】
凍結融解(-40℃~室温)条件下でのCaliper-SDS(nr)の結果を表19に示す。それらの結果は、10サイクルの凍結融解の後で6種すべての製剤の純度%の顕著な変化は何も存在しなかったことを示した。

表19.賦形剤スクリーニング研究(凍結融解)のCaliper-SDS(非還元型(nr))の結果
【表19】
【0100】
(cIEF)
40℃でのcIEFの結果を表20に示す。酸性ピークの増加およびメインピークの減少が、6種すべての製剤で観察された。F1からF6まで、メインピーク%は、それぞれ23.2%、22.2%、19.4%、21.6%、16.0%および19.8%減少した。酸性ピーク%は、それぞれ24.8%、21.6%、18.6%、21.0%、18.0%および18.0%増加した。塩基性ピーク%に明らかな変化が何も存在しなかったことは、注目に値する。

表20.賦形剤スクリーニング研究(40℃)のcIEFの結果
【表20-1】
【表20-2】
【0101】
25℃にて4週間のインキュベーションの後における、cIEFの結果を表21に示す。6種の製剤の酸性ピーク%は、メインピーク%の減少にともなって増加した。F1からF6まで、メインピーク%は、それぞれ5.8%、5.4%、7.5%、5.4%、5.2%および4.3%減少し、一方で、酸性ピーク%は、それぞれ6.8%、4.2%、7.3%、4.5%、5.8%および2.9%増加した。

表21.賦形剤スクリーニング研究(25℃)のcIEFの結果
【表21】
【0102】
表22は、凍結融解実験のcIEFの結果を示す。それらの結果は、10サイクルの凍結融解の後で、6種の製剤の電荷が顕著には変化しなかったことを示した。

表22.賦形剤スクリーニング研究(凍結融解)のcIEFの結果
【表22】
【0103】
(MFI)
各製剤のサブビジブル(sub-visible)粒子を、MFI5200 Flow Microscopeを使用して表23に示すとおりに検出した。MFIの結果は、F1からF5まで、T0での粒子(粒径≧2μm)の数が同じレベルであったことを示した。しかし、F6(PS80を含まない)で試験した粒子(粒径≧2μmおよび粒径≧10μm)の数は、他の5種の製剤における数と比較して、かなり多かった。
【0104】
10サイクルの凍結融解の後で、F3(ソルビトール、pH6.0)においてそれぞれ、粒子(粒径≧2μm)の数が1043/mLから28428/mLに増加し、粒子(粒径≧10μm)の数が61/mLから672/mLに増加した。この他に、他の製剤サンプルでは顕著な変化は何も観察されなかった。

表23.賦形剤スクリーニング研究(凍結融解)のMFIの結果
【表23】
【0105】
(結合抗原)
結合抗原法は、モノクローナル抗体結合活性を検出するために使用されるELISAベースの方法である。それらの結果を表24に示す。25℃および40℃での4週間のインキュベーションの後で、F2(トレハロース二水和物、pH6.0)の結合抗原活性において明らかな減少は何も存在しなかった。

表24.F2の賦形剤スクリーニング研究の結合抗原の結果
【表24】
【0106】
40℃、25℃および凍結融解(-40℃~室温)条件下での6種の製剤の安定性を、この賦形剤スクリーニング研究で調査した。40℃での4週間のインキュベーションの後で、目に見える粒子がF6(PS80を含まない)で観察された。そのほかに、T0におけるF6で試験したサブビジブル粒子の数が、他の製剤における数よりもかなり多かった。このことは、PS80が粒子の凝集を阻害することにおいて重要な役割を果たしたことを示した。SEC-HPLCの結果は、F3(ソルビトール、pH6.0)が最大の純度%減少を示したことを示した。さらに、caliper-SDS(非還元型)の結果は、F1(スクロース、pH6.0)が最大の純度%減少を示した一方で、F2(トレハロース、pH6.0)が最小の純度%減少を示したことを示した。cIEFの結果で示されたとおり、最大の変化が、 F1(スクロース、pH6.0)で観察された。
【0107】
25℃で4週間のインキュベーションの後で、目に見える粒子は6種すべての製剤で何も観察されなかった。SEC-HPLCの結果は、6種の製剤で明らかな純度減少が何も存在しなかったことを示した。Caliper-SDS(非還元型)の結果は、FS(アルギニン塩酸塩、pH6.0)以外のこれらの製剤で顕著な変化が何も存在しなかったことを示した。cIEFの結果は、F3(ソルビトール、pH6.0)の電荷が最も大きく変化したことを示した。
【0108】
凍結融解(-40℃~室温)の実験において、10サイクルの凍結融解の後で、多数の目に見える粒子がF4(マンニトール、pH6.0)で観察され、SEC-HPLCの結果は、この製剤のメインピークが4.4%減少したことを示した。これらの6種すべての製剤において、Caliper-SDS(非還元型)およびclEFの結果で顕著な変化は何も存在しなかった。MFIの結果は、10サイクルの凍結融解の後で、F3(ソルビトール、pH6.0)のサブビジブル粒子の数が増加したことを示した。
【0109】
上記の結果に基づいて、F1(スクロース、pH6.0)、F3(ソルビトール、pH6.0)およびF4(マンニトール、pH6.0)は、乏しい性能を示した。Caliper-SDS(非還元型)の結果は、25℃で4週間のインキュベーションの後で、F5(アルギニン塩酸塩、pH6.0)の純度%が減少したことを示した。DSCの結果は、F5のTm開始(℃)値が他の製剤のTm開始(℃)値よりも少なくとも5℃低かったことを示した。結論として、F2(トレハロース二水和物、pH6.0)は、他の製剤よりも良い性能であった。したがって、F2(トレハロース二水和物、pH6.0)を、後の界面活性剤スクリーニング研究で使用した。
【0110】
(実施例5.界面活性剤スクリーニング)
この実施例は、IM005タンパク質を安定化するためのPS80の最適濃度についてスクリーニングした。
【0111】
IM005抗体(20.4mg/mL)を20mMのヒスチジン、pH6.0緩衝液に交換した。トレハロース二水和物の濃度を、そのストック溶液を用いて8%に調整した。その後、PS80の10%ストック溶液を添加して、表25に記載するとおり、それぞれ最終PS80濃度0、0.01%、0.02%および0.03%を作製した。タンパク質濃度を50mg/mLに調整した。

表25.界面活性剤スクリーニングのための製剤
【表25】
【0112】
調製した製剤を0.22μm PVDFメンブレンフィルターで無菌濾過した。各製剤について、1mLのサンプルを2mLのガラスバイアルに充填した。充填直後に、それらのバイアルに栓をして圧着した。すべての手順は、圧着操作以外はバイオセーフティフード中で実行した。
【0113】
その後、バイアルを撹拌条件(300rpmおよび25℃)に配置した。それらのサンプルを、特定の時点で分析した。
【0114】
(重量モル浸透圧濃度)
T0でのF1~F4の重量モル浸透圧濃度を、浸透圧計(Advanced 2020 Multi-Sample)を使用して決定した。重量モル浸透圧濃度のデータを表26に示す。

表26.界面活性剤スクリーニング研究のT0での重量モル浸透圧濃度の結果
【表26】
【0115】
(示差走査熱量測定(DSC))
T0での各製剤(F1~F4)の熱力学的安定性を、DSCを使用して調べた。表27に示すとおり、すべての製剤の開始転移温度は、56.30℃~57.39℃の範囲であった。そのTm1値は、64.39℃~65.23℃の範囲であり、Tm2値は78.60℃~78.90℃の範囲にあった。これらの4種の製剤間で、熱力学的転移プロファイルに顕著な差は何も存在しなかった。

表27.界面活性剤スクリーニング研究のDSCの結果
【表27-1】
【表27-2】
【0116】
(外観、pH、タンパク質濃度)
目視検査の結果を表28に示す。多量の目に見える粒子が、1日間および3日間の撹拌(300rpm、25℃)の後にF1(PS80を含まない)で観察された。対照的に、同じ撹拌条件下で、目に見える粒子はF2(0.01%のPS80)、F3(0.02%のPS80)およびF4(0.03%のPS80)では何も観察されなかった。
【0117】
F1~F4のpH値を、すべてのサンプリング時点で調べた。表28に示すとおり、25℃で3日間の撹拌の後でpH値の顕著な変化は何も存在しなかった。
【0118】
F1~F4のタンパク質濃度を、すべてのサンプリング時点でnanodrop2000(UV280法)を使用して測定した。表28に示すとおり、タンパク質濃度の実質的な変化は、25℃で3日間の撹拌の後で何も検出されなかった。

表28.界面活性剤スクリーニング研究(撹拌)の外観、pHおよび濃度の結果
【表28-1】
【表28-2】
【0119】
(SEC-HPLC)
SEC-HPLCのデータを表29に示す。F1~F4について、メインピーク%の実質的な変化は、25℃で3日間の撹拌の後に何も観察されなかった。

表29.界面活性剤スクリーニング研究(撹拌)のSEC-HPLCの結果
【表29】
【0120】
(Caliper-SDS(nr))
Caliper-SDSは、マイクロチップおよびCEベースのハイスループット分析法であり、これは、高感度でモノクローナル抗体断片を検出可能である。Caliper-SDS(nr)の結果を表30に示す。すべての製剤(F1~F4)について、実質的な純度%減少は、25℃にて3日間の撹拌の後で何も観察されなかった。

表30.界面活性剤スクリーニング研究(撹拌)のCaliper-SDS(非還元型(nr))の結果
【表30-1】
【表30-2】
【0121】
(cIEF)
cIEFのデータを表31に示す。すべての製剤について、チャージバリアントの顕著な変化は、25℃にて3日間の撹拌の後で何も観察されなかった。

表31.界面活性剤スクリーニング研究(撹拌)のcIEFの結果
【表31】
【0122】
(MFI)
サブビジブル粒子の検出を、MicroFlow Image(MFI5200)を使用して実施した。MFIのデータを表29に示す。サンプリング時点T0にて、粒径≧25μmである粒子の数は、F1~F4について同じレベルであった。しかし、Fl(PS80を含まない)における粒径≧10μmである粒子の数および粒径≧25μmである粒子の数は、他の製剤(F2、F3およびF4)よりもかなり多かった。
【0123】
25℃にて3日間の撹拌の後で、F1(PS80を含まない)について、それぞれ粒径≧2μmである粒子の数が715粒子/mLから2585粒子/mLに増加し、粒径≧10μmである粒子の数が53粒子/mLから579粒子/mLに増加し、粒径≧25μmである粒子の数が4粒子/mLから392粒子/mLに増加した。3日間の撹拌の後に、F3(0.02%のPS80)およびF4(0.03%のPS80)で顕著な差は何も観察されなかった。F2における粒径≧2μmである粒子の数が112粒子/mLから1266粒子/mLに増加した一方で、粒径≧10μである粒子の数および粒径≧25μmである粒子の数は顕著には変化しなかった。

表32.界面活性剤スクリーニング研究(撹拌)のMFIの結果.
【表32】
【0124】
すべての製剤候補(F1~F4)について、300rpmおよび25℃での撹拌の後で、SEC-HPLC、Caliper-SDS(非還元型)およびcIEFのデータから顕著な変化は何も観察されなかった。しかし、1日間および3日間の撹拌の後で、目に見える粒子が目視検査によってF1(PS80を含まない)で観察された一方で、F2~F4(種々の濃度でPS80を含む)では目に見える粒子は何も観察されなかった。MFIの結果に示したとおり、F1(PS80を含まない)におけるサブビジブル粒子の数が顕著に増加し、F2(0.01%のPS80)における粒径≧2μmであるサブビジブル粒子の数もまた増加した一方で、F3(0.02%のPS80)およびF4(0.03%のPS80)では明らかな変化は何も観察されなかった。
【0125】
したがって、これらの結果は、PS80が撹拌条件下で粒子生成を阻害することにおいて重要な役割を果たしたことを示した。しかし、PS80は、長期貯蔵中に分解する可能性があり、このことは、タンパク質製品の安定性を減少し得る。したがって、より低いPS80濃度が、PS80のタンパク質保護能力が保証される場合には、推奨される。まとめると、0.02%が、IM005にとって最終的に選択されたPS80濃度であった。
【0126】
界面活性剤スクリーニング研究は、PS80が粒子生成を阻害することにおいて重要な役割を果たしたことを示した。0.02%のPS80を最終的に選択した。賦形剤スクリーニング研究および界面活性剤スクリーニング研究の両方の結果に基づいて、20mMのヒスチジン、8%のトレハロース二水和物、0.02%のPS80をpH6.0にて含む製剤を、最終製剤確認研究で使用した。
【0127】
賦形剤スクリーニング研究を、5種類の賦形剤を40℃、25℃および凍結融解条件下でそれぞれ調査することによって実行した。トレハロース二水和物を含む製剤が、他の4種の賦形剤と比較して最良の性能であり、したがって、後の界面活性剤スクリーニング研究のためにそれを選択した。
【0128】
(実施例6.製剤確認)
この研究を実行して、実施例4において決定したIM005についてのリード製剤を確認した。そのリード製剤は、20mMのヒスチジン緩衝液、8%(質量/体積)のトレハロース二水和物、0.02%(質量/体積)のPS80をpH6.0にて含んだ。
【0129】
IM005サンプル(51.7mg/mL)を、バイオセーフティフード中で0.22μmフィルターで濾過し、バイアル1個当たり3.3mLのIM005を含む8mLガラスバイアルに無菌的に充填し、栓をして密封した。
【0130】
(外観)
ほとんどのサンプルの外観を表33に要約する。すべてのサンプルは、目に見える粒子を含まない、わずかに黄色でわずかに乳白色の液体であった。40℃-2週間サンプルにおいてのみ、1つの粒子が観察されたが、40℃-4週間サンプルにおいては目に見える粒子は何も観察されなかった。

表33.製剤確認の外観評価
【表33-1】
【表33-2】
SO=わずかに乳白色
【0131】
(サブビジブル(sub-visible)粒子(MFI))
各サンプル中のサブビジブル粒子数を表34に要約した。サブビジブル粒子は、すべてのサンプルにおいて制御下にあった。また、T0サンプルと比較して、サブビジブル粒子数の明らかな変化は存在しない。

表34.製剤確認のサブビジブル粒子の結果
【表34】
単位=数/mL
【0132】
(pHおよびタンパク質濃度)
pHおよびタンパク質濃度の結果を表35~表36に要約する。すべてのサンプルのpHおよびタンパク質濃度は安定であった。

表35.製剤確認のpHの結果
【表35】
表36.製剤確認のタンパク質濃度の結果
【表36-1】
【表36-2】
【0133】
(SEC-HPLC)
SECの結果を表37に要約する。2℃~8℃サンプルのメインピークの明らかな減少は、何も存在しなかった。25℃サンプルについて、T0と比較して、25℃-8週間のメインピークが1.0%減少し、高分子量が0.8%増加した。40℃サンプルについて、T0と比較して、40℃-4週間のメインピークが4.0%減少し、高分子量%が3.5%減少した。この傾向は、以前の製剤スクリーニング研究の結果と一致する。

表37.製剤確認のSECの結果
【表37】
【0134】
(CE-SDS(rおよびnr))
CE-SDS還元型およびCE-SDS非還元型の結果を表38~表39に要約した。CE-SDS還元型の結果について、2℃~8℃サンプルの純度の明らかな減少は、何も存在しなかった。25℃サンプルについて、T0と比較して、25℃-8週間の純度が0.6%減少した。40℃サンプルについて、T0と比較して、40℃-4週間の純度が2.3%減少した。CE-SDS非還元型の結果について、2℃~8℃サンプルの純度の明らかな減少は何も存在しなかった。25℃サンプルについて、T0と比較して、25℃-8週間の純度が2.3%減少した。40℃サンプルについて、T0と比較して、40℃-4週間の純度が5.6%減少した。この傾向は、以前の製剤スクリーニング研究の結果と一致する。

表38.製剤確認のCE-SDS(還元型)の結果
【表38】
表39.製剤確認のCE-SDS(非還元型)の結果
【表39】
【0135】
(cIEF)
cIEFの結果を表40に要約する。2℃~8℃サンプルのメインピークの明らかな減少は、何も存在しなかった。25℃サンプルについて、T0と比較して、25℃-8週間のメインピークが6.4%減少し、酸性ピークが5.5%増加した。40℃サンプルについて、T0と比較して、40℃-4週間のメインピークが22.5%減少し、酸性ピークが16.4%増加した。この傾向は、以前の製剤スクリーニング研究の結果と一致する。

表40.製剤確認のcIEFの結果
【表40-1】
【表40-2】
【0136】
(効力(細胞ベースのアッセイ))
細胞ベースのアッセイによって試験した効力の結果を表41に要約する。製剤確認中に、試験したすべてのサンプルの効力(細胞ベースのアッセイ)の明らかな変化は、何も存在しなかった。25℃サンプルおよび40℃サンプルの酸性ピークの増加は、その効力に影響を与えなかった。

表41.製剤確認の効力の結果
【表41】
【0137】
すべての試験項目において、2℃~8℃サンプルのいずれでも明らかな変化は何も見出されなかった。加速条件である25℃およびストレス条件である40℃について、サンプルの外観、サブビジブル粒子、pHおよびタンパク質濃度は、一貫性および安定性を維持し得る。これらのサンプルのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)-HPLC、CE-SDS(還元型(r)および非還元型(nr))ならびにcIEFの純度はある程度減少したが、減少の傾向は、以前の製剤開発研究の減少傾向と一致する。
【0138】
したがって、pH6.0で20mMのヒスチジン緩衝液、8%(質量/体積)のトレハロース二水和物、0.02%(質量/体積)のPS80の製剤が、確認されている。
【0139】
本開示は、本開示の個別の局面の個々の例示として意図される記載された具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価であるあらゆる組成物または方法が本開示の範囲内にある。種々の改変および変形が、本開示の趣旨からも範囲からも逸脱することなく、本開示の方法および組成物において実施され得ることが、当業者にとって明らかである。したがって、本開示は、本開示の改変および変形が添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にあるという条件で、それらの本開示の改変および変形を含むことが、意図される。
【0140】
本明細書において言及されたすべての公開物および特許出願は、あたかも個々の公開物または特許出願が参照によって援用されると具体的で個別に示された場合と同じ程度に、本明細書において参照によって援用される。
【配列表】
2024505128000001.app
【国際調査報告】