(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】液圧膨張式スタビライザを備えたカテーテル・システム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240129BHJP
【FI】
A61M25/10
A61M25/10 550
A61M25/10 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540522
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022051980
(87)【国際公開番号】W WO2022162110
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/056214
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512238276
【氏名又は名称】バイオトロニック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアノッティ、 マルク
(72)【発明者】
【氏名】マルゲタ、ドラガナ
(72)【発明者】
【氏名】キューリック、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ジェッター、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、ウルフ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA09
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB28
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC08
4C267DD01
4C267EE01
(57)【要約】
現在の文書は、PTA処置に関連する問題に対処する、改良されたPTAカテーテル、改良されたPTA装置、及び改良されたPTA方法を対象とする。改良されたPTAカテーテルの実装例は、支持カテーテル内の所望の相対位置にPTAカテーテルを保持又は固定するために作動する1つ又は複数のスタビライザを備えたPTAカテーテルを含む。改良されたPTA方法は、生体脈管内でのPTA装置の操作の間のPTA装置の変形を防止するために、スタビライザの適時作動を採用する。特定の実装例は、液圧作動式スタビライザを含むが、他の実装例では、液圧作動以外の作動方法によって作動される1つ又は複数のスタビライザを採用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカテーテル・シャフトによって取り囲まれた第1の管腔を有する第1のカテーテルであって、好ましくは均一な円周及び/又は直径を有する第1のカテーテルと、
前記第1のカテーテルの前記第1の管腔内に挿入される第2のカテーテルと
を有する、又はそれらからなるカテーテル・システムであって、
前記第2のカテーテルは、第2のカテーテル・シャフトによって取り囲まれた前記第2の管腔と、前記第2の管腔に流体連通している1つ又は複数の液圧膨張式スタビライザとを有し、
前記1つ又は複数のスタビライザは、前記第2の管腔を介して液圧的に膨張されたときに半径方向外向きに膨張可能な膨張流体チャンバを形成し、それにより前記第1のカテーテル・シャフトの内面に対して前記スタビライザを押し付け、且つ前記第1のカテーテル内の前記第2のカテーテルの位置を固定し、また前記第2のカテーテルを前記第1のカテーテルに対して同軸配置に拘束するように適合されている、カテーテル・システム。
【請求項2】
前記第1のカテーテルは、支持カテーテル又はガイディング・カテーテルであり、且つ/或いは、前記第2のカテーテルは、バルーン・カテーテル、別のガイディング・カテーテル、経皮経管的血管形成カテーテル、ダイレーター・カテーテル、クロッシング・カテーテル、又はマイクロカテーテルである、請求項1に記載のカテーテル・システム。
【請求項3】
前記1つ又は複数のスタビライザは、エラストマー材料で、好ましくはエラストマーで作られている、請求項1又は2に記載のカテーテル・システム。
【請求項4】
前記1つ又は複数のスタビライザはそれぞれ縁部及び中央部を有し、前記縁部は、前記第2のカテーテル・シャフトの前記内面又は外面に貼付され、前記中央部は、前記第2のカテーテル・シャフトの前記内面又は外面に貼付されていない、請求項1から3までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【請求項5】
前記第2のカテーテルの前記第2の管腔は、1つのスタビライザの前記中央部によってそれぞれ覆われた1つ又は複数の膨張流体ポートを有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【請求項6】
2つ以上のスタビライザを有し、各スタビライザは異なるエラストマー材料で、好ましくは異なる摩擦係数、弾性、変形性、及び/又は順応性を有する異なるエラストマー材料で作られている、請求項1から5までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【請求項7】
前記スタビライザの前記中央部の前記エラストマー材料は、前記スタビライザの前記縁部の前記エラストマー材料よりも、より柔軟であり、且つ/又は、大きな弾性を有している、請求項1から6までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【請求項8】
支持カテーテルと、
前記支持カテーテル内に挿入される経皮経管的血管形成カテーテルと
を有する経皮経管的血管形成装置であって、
前記経皮経管的血管形成カテーテルは、
遠位端、及び前記遠位端に取り付けられたカテーテル・バルーンと、
膨張管腔と、
ガイドワイヤ管腔と、
1つ又は複数の液圧膨張式スタビライザと
を有し、
前記膨張管腔は、前記カテーテル・バルーンの内部容積及び前記1つ又は複数の液圧膨張式スタビライザと流体連通している、経皮経管的血管形成装置。
【請求項9】
ガイドワイヤと、
支持カテーテルと、
前記支持カテーテル内に挿入される経皮経管的血管形成カテーテルと
を有する経皮経管的血管形成装置であって、
前記経皮経管的血管形成カテーテルは、
遠位端と、
近位端と、
外側シャフトと、
前記遠位端に取り付けられたカテーテル・バルーンと、
前記カテーテル・バルーンの前記内部容積と流体連通する膨張管腔と、
前記ガイドワイヤが通るガイドワイヤ管腔と、
1つ又は複数のスタビライザであって、前記膨張管腔を介して作動されたときに、前記支持カテーテル内の前記経皮経管的血管形成カテーテルの位置を固定し、且つ前記経皮経管的血管形成カテーテルを前記支持カテーテルに対して同軸配置に拘束する、1つ又は複数のスタビライザと
を有する、経皮経管的血管形成装置。
【請求項10】
前記支持カテーテルは第1の直径の管状シャフトを有し、前記直径の管状シャフトは、前記遠位端で開口し、且つ前記近位端でマニホールドに開口している、請求項8又は9に記載のPTA装置。
【請求項11】
前記PTAカテーテルは、
前記外側シャフトの前記近位端に取り付けられたマニホールドと、
前記マニホールドを通して前記膨張管腔に流体連通を提供する膨張ポートと、
ガイドワイヤ・ポートであって、前記ガイドワイヤ・ポートを通してガイドワイヤが前記ガイドワイヤ管腔内に挿入される、ガイドワイヤ・ポートと
をさらに有する、請求項8から10までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【請求項12】
前記1つ又は複数のスタビライザはそれぞれ、
前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記表面に取り付けられたスタビライザ・エラストマー材料のバンドと、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部の下の1つ又は複数の膨張流体ポートと
を有する、請求項8又は9に記載の経皮経管的血管形成装置。
【請求項13】
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部が、前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面に貼付されておらず、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの2つの縁部が、前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面に貼付され、それにより、前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの前記中央部と、その下の前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面との間の膨張可能な環状膨張流体チャンバ、及び1つ又は複数の膨張流体ポートを形成する、請求項12に記載のPTA装置。
【請求項14】
前記膨張流体チャンバは、加圧膨張流体が前記PTAカテーテルの前記膨張管腔内に導入され、前記加圧膨張流体が前記膨張流体ポートを通って前記環状膨張流体チャンバ内に流入したときに、前記加圧膨張流体によって半径方向外向きに膨張され、且つ前記支持カテーテル・シャフトの前記内面に対して前記スタビライザを押し付けるように適合されている、請求項13に記載のPTA装置。
【請求項15】
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドは、前記PTAカテーテル・バルーンから分離されており、且つ他のスタビライザの前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドから分離されている、請求項12から14までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【請求項16】
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドは、前記PTAカテーテル・シャフトに沿って2つ以上の隣接するスタビライザを形成するスタビライザ・エラストマー材料の一部のバンドの一部であり、それぞれが、前記PTAカテーテル・シャフト内の1つ又は複数の膨張流体ポートを覆う、請求項12から15までに記載のPTA装置。
【請求項17】
前記PTAカテーテル・シャフトは2つ以上のスタビライザを含み、それぞれが、スタビライザ・エラストマー材料のバンドであって、他のスタビライザのバンドとは異なる、弾性、変形性、及び/又は順応性を有するスタビライザ・エラストマー材料のバンドを有し、それにより前記スタビライザは、膨張流体が前記PTAカテーテルの前記膨張管腔内に導入されたときに異なる時点で完全に作動する、請求項12から15までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【請求項18】
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドは、前記PTAカテーテル・バルーンとは異なる弾性、変形性、及び/又は順応性を有し、それにより前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンが完全に膨張された時点とは異なる時点で完全に膨張される、請求項12から16までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【請求項19】
前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンの部分的な膨張前に、膨張されるように適合されている、請求項18に記載のPTA装置。
【請求項20】
前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンが部分的に膨張するときに膨張されるように適当されている、請求18に記載のPTA装置。
【請求項21】
前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンが完全に膨張するときに膨張されるように適合されている、請求項18に記載のPTA装置。
【請求項22】
前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンが完全に膨張した後に膨張されるように適合されている、請求項18に記載のPTA装置。
【請求項23】
前記スタビライザは、前記支持カテーテル内に収容された前記PTAカテーテル・バルーンの一部分とともに膨張され、それにより前記収容されたPTAバルーン部分及びスタビライザの半径方向の力の組み合わせがもたらされるように適合され、且つ前記支持カテーテルに適用されるように適合され、これはバルーンの膨張によって生成される軸方向の力に対抗し、それにより前記支持カテーテルに対する前記PTAカテーテルの位置を固定し、且つ前記PTAカテーテルを前記支持カテーテルに対して同軸配置に拘束する、請求項18に記載のPTA装置。
【請求項24】
前記スタビライザは、前記支持カテーテル内に収容された前記PTAカテーテル・バルーンとともに膨張され、それにより前記収容されたPTAバルーン及びスタビライザの半径方向の力の組み合わせがもたらされるように適合され、且つ前記支持カテーテルに適用されるように適合され、これは前記支持カテーテルに対する前記PTAカテーテルの位置を固定し、それにより、前記PTAカテーテルの押込み又は引き出し動作中に、そうでなければ生じる歪み又は力を低減又は防止する、請求項18に記載のPTA装置。
【請求項25】
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部が、前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記外面に貼付されておらず、前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの前記縁部は、前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記外面に貼付され、それにより、前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの前記中央部と、その下にある前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記外面との間の膨張可能な環状膨張流体チャンバ、及び、1つ又は複数の膨張流体ポートを形成する、請求項8から11までのいずれか一項に記載の経皮経管的血管形成装置。
【請求項26】
前記膨張流体チャンバは、半径方向外向きに膨張するように適合され、それにより、加圧膨張流体が前記経皮経管的血管形成カテーテルの前記膨張管腔内に導入され、且つ前記加圧膨張流体が前記膨張流体ポートを通って前記環状膨張流体チャンバ内に流入したときに、前記加圧膨張流体によって前記支持カテーテル・シャフトの前記内面に対して前記スタビライザを押し付ける、請求項25に記載の経皮経管的血管形成装置。
【請求項27】
前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトは2つ以上の隣接するスタビライザを含み、それぞれがスタビライザ・エラストマー材料のバンドであって、他のスタビライザのバンドのものとは異なる、且つ/又は、前記経皮経管的血管形成カテーテル・バルーンの前記材料とは異なる弾性、変形性、及び/又は順応性を備えたスタビライザ・エラストマー材料のバンドを有する、請求項8から25までのいずれか一項に記載の経皮経管的血管形成装置。
【請求項28】
前記スタビライザの前記エラストマー材料、好ましくは、前記スタビライザの前記中央部の前記エラストマー材料は、前記経皮経管的血管形成カテーテル・バルーンの前記エラストマー材料よりも、より柔軟であり、且つ/又は、大きな弾性を有する、請求項8から26までのいずれか一項に記載の経皮経管的血管形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のカテーテル・シャフトに取り囲まれた第1の管腔を有する第1のカテーテルと、第1のカテーテルの第1の管腔に挿入された第2のカテーテルとを有する、又はそれらからなるカテーテル・システムに関し、第2のカテーテルは、第2のカテーテル・シャフトに取り囲まれた第2の管腔を有し、1つ又は複数の液圧膨張式スタビライザは、第2の管腔と流体連通している。1つ又は複数のスタビライザは、第2の管腔を介して液圧膨張されるときに、半径方向外向きに膨張可能な膨張流体チャンバを形成するように適合され、それにより、スタビライザを第1のカテーテル・シャフトの内面に対して圧縮し、第2のカテーテルの位置を第1のカテーテル内で固定し、第2のカテーテルを第1のカテーテルに対して同軸配置に拘束する。
【0002】
本出願は、さらに、生体組織内の閉塞した動脈、静脈、及び他の血管を治療するために使用される、改良された経皮経管的血管形成装置を対象とし、経皮経管的血管形成装置は、経皮経管的血管形成装置の構成部品の相対位置を固定するために作動するスタビライザを含み、スタビライザは、経皮経管的血管形成処置の特定の一部の間、相互に対して平行移動し、経皮経管的血管形成処置の他の一部の間、構成部品の相対移動を防止する。
【背景技術】
【0003】
経皮経管的血管形成術(「PTA」:percutaneous transluminal angioplasty)は、バルーン・カテーテルを使用して、狭くなった血管を広げるための方法を指す。一般に、血管は、血管壁に形成される動脈硬化性プラークの存在によって狭められる。動脈硬化性プラークは、脂質、炎症細胞、平滑筋細胞、及び結合組織細胞を含有し、多くの場合、動脈分岐点の近くの血管壁の領域を含む、血流の非層流又は乱流にさらされる血管壁の領域に形成される。プラークは、多くの場合、「脂肪線条」と呼ばれる初期のアテローム性動脈硬化病変として始まり、この病変は、低密度リポタンパク質及び超低密度リポタンパク質を循環させることからオキシステロール及び4-ヒドロキシノネナールを含む酵素的に酸化された脂質の取り込みによって形成されたマクロファージ誘発性脂質含有泡沫細胞を含有する。マクロファージは、平滑筋細胞を病変に動員して追加のマクロファージの成長を刺激する炎症促進性サイトカインを分泌し、その結果、初期のアテローム性動脈硬化病変が増殖発達して、その後、石灰化する可能性がある線維性被膜を有する内皮下線維性プラークとなる。アテローム性動脈硬化病変は、さまざまな種類の細胞、細胞の残骸、脂質、酸化脂質、無機イオン、さらには侵襲性細菌の複雑なマトリックスである。アテローム性動脈硬化病変によって、血流が抑制され、多くの場合、「狭窄症」と呼ばれる血餅の形成及びさらなる病変成長を伴う、血管、四肢、及び、重要臓器への血流の不十分な灌流によって表される虚血状態を引き起こし、心筋梗塞、又は包括的高度慢性下肢虚血などの急性の生命を脅かす病態をもたらす可能性がある。経皮経管的血管形成(「PTA」)方法では、「PTAカテーテル」と呼ばれる予め折り畳まれて収縮したバルーン・カテーテルが、以前に挿入されたガイドワイヤを覆う血管内に挿入され、収縮したバルーンは、収縮したバルーンの位置がX線透視法又は磁気共鳴映像法(「MRI」:magnetic-resonance-imaging)によって観察されている間に、血管の狭窄部分内へとガイドワイヤ上を移動する。PTAカテーテルの近位端の膨張ポート内に導入された加圧膨張流体は、次に、バルーンを膨張させ、これにより、血管が拡張され、アテローム性動脈硬化病変が破壊される。しかしながら、PTA方法を適用すると、望ましくない結果及び合併症を引き起こす可能性がある。バルーンの過剰膨張により、血管の望ましくない持続的な拡張が生じる可能性があり、拡張部内及びその近くの血液の層流が破壊される可能性があり、新たなアテローム性動脈硬化病変又は治療済みのアテローム性動脈硬化病変の再成長につながる。バルーンの膨張によって生じる局所的な力は、「解離」とも呼ばれる、血管壁の間の偽管腔又はチャネルへの血流をもたらす血管壁の内壁の内側の亀裂及び裂け目を誘発し得る。より深刻な場合、これらの局所的な力は、破裂、解離、血腫、偽動脈瘤を引き起こし得る。薬剤溶出PTAカテーテルの使用により、特定の種類のPTA合併症のリスクが軽減され得るが、バルーン膨張中に発生する過膨張及び望ましくない大きな局所的な力による合併症は、現在実施されているPTA方法に関連する重大な課題のままである。改善された操作及び血管遮蔽の目的で、PTAカテーテルは、支持カテーテル内で使用することができ、以下「PTA装置」と呼ばれる装置全体は、追加の構成部品及び機構に加えて、ガイドワイヤと、PTAカテーテルと、支持カテーテルとを有する。PTA装置又はシステムは、第2の可撓性チューブ内でガイドワイヤに摺動可能に取り付けられた第1の可撓性チューブとして考えることができる。使用中、第1及び第2のチューブは、装置全体がほぼ湾曲した生体脈管内で操作されている間、互いに対して移動する。以下で説明するように、これらの動きは、さまざまな力及び変形を伴う可能性があり、装置の故障のリスクを悪化させ、PTAカテーテル・ベースの操作及び処置を大幅に複雑化し得る。このため、PTA器具の設計者、開発者、販売者、及びPTA施行者は、さまざまな種類のPTA合併症のリスクを軽減又は排除する、改良されたPTAカテーテル、改良されたPTA装置、及び改良されたPTA方法を求め続けている。
【発明の概要】
【0004】
本文書は、PTA処置に関連する問題に対処する、改良されたPTAカテーテル、改良されたPTA装置、及び改良されたPTA方法を対象とする。改良されたPTAカテーテルの実装例は、支持カテーテル内の所望の相対位置にPTAカテーテルを保持又は固定するために作動する1つ又は複数のスタビライザを備えたPTAカテーテルを含む。改良されたPTA方法は、生体脈管内でのPTA装置の操作の間のPTA装置の変形を防止するために、スタビライザの適時作動を採用する。特定の実装例は、液圧作動式スタビライザを含むが、他の実装例では、液圧作動以外の作動方法によって作動される1つ又は複数のスタビライザを採用する。
【0005】
続いて、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。実施例は、本発明を限定するものではなく、単に例示的な実例を表すことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3A】PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
【
図3B】PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
【
図3C】PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
【
図3D】PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
【
図3E】PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
【
図3F】PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
【
図3G】PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
【
図4A】現在開示されている改良されたPTAカテーテル及び改良されたPTA装置の実装例の1つのクラスを示す。
【
図4B】現在開示されている改良されたPTAカテーテル及び改良されたPTA装置の実装例の1つのクラスを示す。
【
図5】改良されたPTA装置の一部の断面図における液圧作動式スタビライザを示す。
【
図6】改良されたPTA装置のマルチ・スタビライザの実装例を断面図で示す。
【
図7A】PTA処置中にPTA装置が操作されたときに生じる特定の問題を示す。
【
図7B】PTA処置中にPTA装置が操作されたときに生じる特定の問題を示す。
【
図7C】PTA処置中にPTA装置が操作されたときに生じる特定の問題を示す。
【
図8】改良されたPTA装置内のスタビライザの別の利点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1A~
図1Bは、アテローム性動脈硬化病変を示す。
図1Aは、健康で正常な動脈の一部を示す。動脈102は、部分的に横切りされ103、次に、縦方向に切開された104、切欠き図で示されている。動脈102は、動脈壁105と、血液が流れる内腔106とを含む。動脈壁は、3つの主要な層を含む。すなわち、(1)隣接する外部組織に動脈を固定する結合組織のいくつかの層を有する外膜108、(2)平滑筋細胞を有する中膜110、及び(3)動脈壁の内面を形成する最も内部の内皮114を含むいくつかの層を有する内膜112である。
図1Bは、アテローム性動脈硬化病変を示す。アテローム性動脈硬化病変120は、内皮と内膜の内部層との間の内皮細胞下の体積を占める。上述したように、アテローム性動脈硬化病変は、初期の脂肪線条から、さまざまな種類の細胞、細胞の残骸、脂質、酸化脂質、無機イオン、さらには侵襲性細菌の複雑なマトリックスに成長し、多くの場合、経時的に石灰化する可能性のある線維層122で覆われる。また、上述したように、PTA方法は、アテローム性動脈硬化病変を破壊し、部分的又は完全に閉塞された動脈内腔を再開放するために使用される。
【0008】
図2は、PTAカテーテルを示す。PTAカテーテルは、一般的な経皮経管的介入法で使用される膨張可能部材器具のより一般的なファミリーを代表する。PTAカテーテル202は、マニホールド204と、外側シャフト206と、シャフトの遠位端の収縮バルーン208とを含む。PTAカテーテルのシャフトは、近位端に位置してガイドワイヤ212を覆うマニホールド211を介して、支持カテーテル210の管腔内に挿入されて示されている。長さ調整可能なバルーン構成が望まれるとき、又は、特定の場合に血管の追加の誘導装置若しくはシールドが望まれるとき、バルーンは、支持カテーテル内に挿入される。経橈骨動脈アクセス又は経大腿骨動脈アクセスは、イントロデューサ・シースを脈管系内に導入するために使用される。ガイドワイヤは、イントロデューサ・シースを通して挿入され、脈管構造を通して、及び、アテローム性動脈硬化病変を通り越して、治療対象のアテローム性動脈硬化病変に誘導される。支持カテーテル210は、ガイドワイヤを覆って挿入され、病変に対して所望の位置に誘導される。PTAカテーテルは、ガイドワイヤを覆って取り付けられ、バルーンを病変に対して適切な位置に誘導するために支持カテーテル内に挿入され、その後、造影剤及び生理食塩水から形成された加圧液体を、マニホールドから延び、外側PTAカテーテル管腔を通ってバルーンの内部に連通する膨張ポート214内に導入することによって、バルーンは膨張する。
【0009】
図3A~
図3Gは、PTAカテーテルのバルーンの膨張を示す。
図3A~
図3Gでは、バルーンの長さ調整可能なPTAカテーテルは、PTAカテーテルの一実例として使用される。
図3Aは、ガイドワイヤ304が通過する支持カテーテル302の開放遠位端を示す。支持カテーテルの遠位端は、治療すべき病変に対して適切な位置に誘導される。
図3Bに示すように、PTAカテーテル306のシャフトの遠位端は、支持カテーテルの遠位端302に向かって、ガイドワイヤに沿って前進する。
図3Cに示すように、PTAカテーテル306の遠位端は、ガイドワイヤに沿って、支持カテーテルの遠位端302と面一となる点までさらに前進する。収縮されたバルーン308は、この図では完全に見えている。膨張流体は、膨張ポート(
図2では214)内に導入され、バルーン308と開放連通しているPTAカテーテル・シャフト206内のPTAカテーテル膨張管腔310を通って圧力下で流れる。PTAカテーテル・シャフト206は、遠位シャフト部分312内へさらに延びる。ガイドワイヤ304は、PTAカテーテル膨張管腔と流体連通していないPTAカテーテル内の内側ガイドワイヤ管腔314を通過する。特定の実装例では、膨張管腔は、ガイドワイヤ管腔の周りで同軸に配置され得る。管腔断面は、円筒形であってもよく、又は、特定の実装例では、より複雑な形状を有していてもよい。
【0010】
図3Dに示すように、PTAカテーテルは、ガイドワイヤに沿ってさらに前進し、その結果、バルーンの所望の長さ又は部分320が、支持カテーテルの遠位端302を越えて、血管の内部環境にさらされる。次いで、
図3Eに示すように、膨張流体は、血管の内部環境にさらされたバルーンの部分を膨張させるために、PTAカテーテル膨張管腔内に導入され、加圧される。この描写では、膨張されたバルーンは、バルーンの膨張部分の長さを強調するために、バルーン肩部に比較的鋭い縁部322及び324を備えた円筒状に見える。しかしながら、実世界の器具では、バルーンの膨張部分は、丸みを帯びた形状を有する。
図3Fでは、収縮したバルーンは、膨張前にガイドワイヤに沿ってさらに前進し、その結果、
図3Gに示すように、バルーンの全長320が膨張され得る。したがって、膨張したバルーンの長さ326は、支持カテーテルの遠位端に対するPTAカテーテル・シャフトの遠位端の位置決めによって調整することができる。従来のPTA器具では、バルーンは、拘束部材としての支持カテーテルがないときに完全に膨張され、バルーンの長さ調整は、治療中の展開の前に、それぞれ異なるが長さは一定のバルーンを有する1つ又は複数のPTAカテーテルを選択することによって達成される。
【0011】
図4A~
図4Bは、現在開示されている改良されたPTAカテーテル及び改良されたPTA装置の実装例の1つのクラスを示す。
図4Aでは、改良されたPTA装置の一部が示されている。PTA装置の図示された部分は、支持カテーテル402の遠位端と、支持カテーテル内に陥凹されたPTAカテーテル404の遠位端と、支持カテーテルから外向きに突出し、PTAカテーテルの遠位端セグメント上でPTAカテーテル408に取り付けられたバルーン406の一部とを含む。さらに、3つのまだ作動していないスタビライザ410~412は、PTAカテーテルの遠位端セグメントに取り付けられたバルーン408の部分の右側に、PTAカテーテルに沿った位置に示されている。
図4Aでは、バルーンは膨張されていないか、又は最小限しか膨張されていない。
【0012】
図4Bは、上述したように、加圧膨張流体をPTAカテーテルの膨張管腔内へ導入することによってバルーンを膨張させた後の、
図4Aに既に示されているPTA装置を示す。この場合、バルーン406は、スタビライザ410~412と同様に、半径方向に拡張している。スタビライザの半径方向の拡張は、支持カテーテル402によって制限される。しかしながら、スタビライザの半径方向の拡張は、バルーンが膨張するにつれて進行し、拡張しているスタビライザの一部を支持カテーテルに対してしっかりと圧縮して、環状円筒状バンド414~416を形成する。したがって、膨張流体の圧力により、支持カテーテルに対するPTAカテーテルの並進位置の固定とともに、支持カテーテル内のPTAカテーテル・シャフトの位置及び向きの固定の両方を行うPTAカテーテルに沿って、一連の圧縮された環状セクション、環状バンド、又はOリング状リブがもたらされ、その結果、PTAカテーテル及び支持カテーテルの見かけ上の対称的な長軸が同一の広がりを有し、言い換えれば、PTAカテーテル及び支持カテーテルは、スタビライザによって、同軸に留まるように拘束される。この実装例では、スタビライザは、バルーンを液圧作動する同じ加圧膨張流体によって液圧作動される。さまざまな実装例は、1つ、3つ、4つ又はそれ以上のスタビライザの間で使用される。
図4A~
図4Bを参照して説明された実装例では、スタビライザは、バルーンとともに液圧作動される。しかしながら、代替実装例では、スタビライザは、例えば、カム状スタビライザをロック位置内へと回転させるようにPTAカテーテル及び支持カテーテルの相対的な回転方向を変更すること、又は、内部スタビライザ作動管状シースなどの1つ又は複数の追加の機械作動構成部品を操作することを含み得る追加の機械的スタビライザ作動構成部品によることを含む、別の手段によって、別個に作動することができる。
【0013】
図5は、改良されたPTA装置の一部の断面図における液圧作動式スタビライザを示す。改良されたPTA装置の図示された部分は、バルーン502の一部と、支持カテーテル504と、PTAカテーテル506とを含む。長さ508のバルーンの近位部分は、支持カテーテル内に陥凹(すなわち内部収容)される。バルーンのこの陥凹部の多くは、PTAカテーテルの遠位端セグメントの外面に固定される。バルーンは、熱、超音波若しくはレーザ溶接、接着剤、機械的張力、又は他の手段によってPTAカテーテルに固定することができる。多くの実装例では、バルーンの陥凹部は、PTA装置を血管から引き込む前に、又は、PTA装置を血管内で移動させる前に、バルーンが収縮して支持カテーテル内に引き込むことができるように、バルーンの折り畳みを保つために維持されなければならない。上述したように、PTAカテーテルは、膨張管腔510とガイドワイヤ管腔512とを含む。この実装例のスタビライザは、上述したように、断面図では、環状バンド部分514及び516として現れる環状バンドである。PTAカテーテル・シャフト内の少なくとも1つのポート518により、膨張流体は、膨張管腔から、環状バンドの中央拡張部分とPTAカテーテル・シャフトの外面との間に形成された環状チャンバ520内へと通ることが可能になる。上述したように、
図4Bを参照して、加圧膨張流体が膨張管腔内へ導入されると、環状チャンバは拡張し、環状バンドの一部の外面を支持カテーテルの内面に対して圧縮し、支持カテーテルに対するPTAカテーテルの並進位置の固定とともに、支持カテーテルに対する同軸位置で支持カテーテル内に配置されるPTAカテーテルの固定の両方を行う、圧縮された環状セクション、バンド、又はOリング状リブを形成する。
【0014】
図示の実装例では、スタビライザ514及び516は、バルーンとは別個の材料の環状バンドである。特定の代替実装例では、スタビライザは、バルーン材料の一部であってもよく、バルーン材料は、下にあるPTAカテーテル・シャフトに結合されておらず、膨張流体がPTAカテーテルの膨張管腔内で加圧されるときに、環状のふくらみが半径方向外向きに押されて支持カテーテルの内面に対して押し付けられるように、PTAカテーテル・シャフト内の1つ又は複数のポートの上にある。各スタビライザについて、加圧膨張流体によって外向きに拡張されたスタビライザの部分の下にあるPTAカテーテル・シャフトの円形バンドに沿って配置された、1つ、2つ又はそれ以上のポートがあってもよい。特定の実装例では、スタビライザの材料は、バルーン材料とは異なる弾性、変形性、又は順応性(コンプライアンス特性)を有していてもよい。2つの異なるタイプの材料の間の弾性、変形性又は順応性の違いは、支持カテーテル・シャフトの内面に対するスタビライザの圧縮が、ある程度のバルーン膨張に対して所定のさまざまな時点で生じるように選択することができる。他の実装例では、スタビライザの材料は、バルーン及び/又は支持カテーテルの材料に対して異なる摩擦係数を有していてもよい。したがって、選択された材料に応じて、PTAカテーテルの並進位置は、膨張管腔内への加圧膨張流体の導入の直後及びバルーンの膨張前に固定することができ、その代わりに、部分的なバルーン膨張の程度と一致する時点で固定することができ、又は、完全なバルーン膨張と一致する時点若しくはその後に固定することができる。スタビライザの材料の弾性、変形性、順応性、又はスタビライザの材料の摩擦は、スタビライザ内でさえも変化することがあり、スタビライザ・バンドの中央部は、より可撓性があり、より大きな弾性を有し、その結果、スタビライザ・バンドの中央部がバンドの外側部分522及び523に対して半径方向に優先的に拡張する。図示の実装例では、環状スタビライザ・バンドを形成するために拡張されたスタビライザの材料は、接着剤又は溶接によってPTAカテーテル・シャフトに固定されていないが、スタビライザの端部にある部分522及び523は、接着剤、溶接、機械的張力、又はその他の手段によって、PTAカテーテル・シャフトに固定されている。スタビライザの材料は、ポリマー、繊維、並びに、エラストマー及び/又はデュロプラスチック・ポリマーを含む金属、延性のある、ばね及び/又は形状記憶金属、及び、このような材料の組み合わせを含む材料の範囲から選択することができる。
【0015】
図6は、改良されたPTA装置のマルチ・スタビライザの実装例を断面で示す。この実装例では、PTAカテーテル・シャフト内の少なくとも3つの対応するポート606~608を通過する膨張流体によって膨張する少なくとも3つのスタビライザ602~604がある。
図5に示す実装例と同様に、長さ610のバルーンの近位部分は、支持カテーテル612内に陥凹され、バルーンのこの部分の多くは、PTAカテーテルの遠位端に固定される。
図6に示す実装例では、環状スタビライザ・バンドの幅614~616は、互いに等しいが、代替実装例では、バンドの幅及び離間距離は、変化し得る。さらに、弾性、変形性、順応性、及び/又は、スタビライザの材料の摩擦係数も、バルーンの膨張の間、スタビライザの漸進的な作動を提供するために変化し得る。
【0016】
図7A~
図7Cは、PTA装置がPTA処置中に操作されたときに生じる特定の問題を示す。
図7Aでは、第2の外側管状要素704内にある第1の内側管状要素702は、矢印706で示すように、外側管状要素に対して上向きに押されている。2つの管状要素の異なる可撓性及び寸法に応じて、及び、外側管状要素の湾曲に応じて、内側管状要素に加えられる上向きの力は、内側管状要素を外側管状要素に対して曲げたり、ねじれさせたりする。これにより、ねじれ708などのねじれに関連する特定の位置において、内側管状要素によって外側管状要素に加えられる大きな力がもたらされ、位置710などの他の位置において、外側管状要素から内側管状要素が広範に分離される可能性がある。これらの広範に変化する力により、外側管状要素に対して内側管状要素を上向きに移動し続けるために過剰な力の適用を必要とする摩擦力と、蓄えられた機械的エネルギーと、一定の上向きの力の適用下で外側管状要素に対する内側管状要素の不均一な平行移動と、2つの管状要素の形状に局所的な歪みを引き起こし得るさまざまな派生的な力とがもたらされる。同様に、
図7Bに示すように、内側管状要素が、矢印712で示すように、下向きの力によって引っ張られるときに、より大きな力は、位置718などの他の位置に対して、位置716などの特定の位置で内側管状要素によって外側管状要素に加えられることになる可能性がある。異なる位置で加えられるこれらの異なる力は、管状要素の一方又は両方の形状の局所的な歪みと、蓄えられた機械的エネルギーの突然で望ましくない放出と、内側管状要素への一定の下向きに加えられる力の適用下で、外側管状要素に対する内側管状要素の不均一な平行移動とを、再びもたらすことができる。
図7Cは、上述のスタビライザによって与えられる有益な効果を示す。
図7Cでは、円720~724は、作動されたスタビライザを表しており、それらは、外側管状要素704に対してほぼ同軸上に位置決めされたままになるように、内側管状要素702を拘束する。その結果、
図7A~
図7Bを参照して説明されたねじれ、バンド、及び歪みの多くが防止される。
図7A~
図7Cの外側管状要素に類似した外側管状部材に対する、
図7A~
図7Cの内側管状要素に類似したPTAカテーテルのスムーズな平行移動は、PTA処置中、重要である。過剰に加えられた力、蓄えられた機械的エネルギー、及びその他のそのような問題は、装置の故障、精度の欠如、操作の難しさ、装置の位置ずれ、及び血管の損傷を含む、上述の多くの異なる有害な影響及び結果を引き起こし得る。したがって、スタビライザは、完全に作動するとき、PTAカテーテル及び支持カテーテルの相対的な並進位置を固定するのに十分な半径方向の力を加え、バルーンが部分的に膨張するときのように、部分的に作動するとき、支持カテーテル内のPTAカテーテルの相対的な同軸配置を維持して、支持カテーテルに対するPTAカテーテルのスムーズな平行移動を促進し、血管内、特に湾曲した血管内での移動中のPTA装置の歪みを防止する。さらに、スタビライザは、支持カテーテルと部分的に又は完全に係合するとき、PTAカテーテルの押込み又は引き込み動作中に、支持カテーテル及び周囲の血管壁の両方に他の方法で加わる歪み又は力を低減又は防止する。
【0017】
図8は、改良されたPTA装置内のスタビライザの別の利点を示す。
図8は、生体脈管802及び804内の
図5に示す部分と同様のPTA装置の部分を断面で示す。支持カテーテル806及び808の遠位端部分は、血管内に位置付けられる。バルーン810及び812が、血管818及び820の内面に適合するように膨張され、血管壁に力を加えると、バルーンは、支持カテーテル814及び816の遠位端部分内に拘束され、次いで、支持カテーテル内の第1の直径822から支持カテーテルの外部の第2の直径824まで、半径方向に拡張する。バルーンの拡張により、支持カテーテルと血管との間のバルーンの湾曲面の平均直線部分に略平行な力826が生じ、これは、横方向若しくは軸方向の力828、及び、垂直方向若しくは半径方向の力830に分解できる。もちろん、支持カテーテルと血管との間のバルーンの部分は、円錐部分に近似し、その結果、半径方向の力は、支持カテーテル及び血管の対称軸に垂直な仮想平面ディスクの環状部分に存在し、軸方向の力は、支持カテーテルの内面の仮想円筒延伸部分に存在する。膨張の間、軸方向及び半径方向の力により、PTAカテーテルへのバルーンの取付けに大きな応力がかかる可能性がある。さらに、半径方向の力は、支持カテーテルに対するPTAカテーテルの位置を固定する傾向があるが、軸方向の力は、支持カテーテルからPTAカテーテルを引き抜く傾向があり、その結果、バルーンの膨張部分が長くなる。バルーンの膨張の間、支持カテーテル内のPTAカテーテルを安定させる1つのアプローチは、小さな半径方向の矢印832で示された、支持カテーテルに加えられる半径方向の力を増加させるために、PTAカテーテルの遠位部分に沿ってバルーンのより広い陥凹部を使用することである。しかしながら、上述したスタビライザの使用により、バルーンの膨張によって生じる軸方向の力に対抗するために必要な追加の半径方向の力を代替的に提供することができる。スタビライザは、バルーンの膨張によって生じる膨張力によって支持カテーテルの遠位端の歪みを防ぐために、支持カテーテル・シャフトのより長い長さにわたって支持カテーテルに対する半径方向の力を分散するのにも役立つことができる。
【0018】
本発明を特定の実施例に関して説明してきたが、本発明は、これらの実施例に限定されることは意図されていない。提示された実施例に類似した修正は、当業者には明らかであろう。例えば、さまざまな異なる材料は、さまざまな弾性及び変形能を有する液圧作動式スタビライザのために使用することができる。上述したように、複数のスタビライザが、スタビライザの材料の単一の幅広いバンド又はスリーブから作成することができる。異なる数の円形に配置されたポートは、特定のスタビライザの膨張のために使用することができる。
【0019】
本開示のさらなる実例は、以下に提供される。
【0020】
1. ガイドワイヤと、
支持カテーテルと、
前記支持カテーテル内に挿入されたPTAカテーテルと
を有する、経皮経管的血管形成(「PTA」)装置であって、前記PTAカテーテルは、
遠位端と、
近位端と、
外側シャフトと、
前記遠位端に取り付けられたカテーテル・バルーンと、
前記カテーテル・バルーンの前記内部容積と流体連通した膨張管腔と、
前記ガイドワイヤが通るガイドワイヤ管腔と、
作動時に、好ましくは前記膨張管腔を介して、前記支持カテーテル内の前記PTAカテーテルの前記位置を固定し、前記PTAカテーテルを前記支持カテーテルに対して同軸配置に拘束する1つ又は複数のスタビライザと
を有する、経皮経管的血管形成装置。
【0021】
2. 前記支持カテーテルが、前記遠位端で開口し、前記近位端でマニホールドに向かって開口する第1の直径の管状シャフトを有する、請求項1に記載のPTA装置。
【0022】
3. 前記PTAカテーテルが、
前記外側シャフトの前記近位端に取り付けられたマニホールドと、
前記マニホールドを通って前記膨張管腔に流体連通を提供する膨張ポートと、
ガイドワイヤが前記ガイドワイヤ管腔内に挿入されるガイドワイヤ・ポートと
をさらに有する、請求項2に記載のPTA装置。
【0023】
4. 前記1つ又は複数のスタビライザが、
前記PTAカテーテル・シャフトの前記表面に取り付けられたスタビライザ・エラストマー材料のバンドと、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部の下の1つ又は複数の膨張流体ポートと
をそれぞれ有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【0024】
5. 前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部が、前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面に固定(又は貼付)されておらず、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの2つの縁部が、前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面に固定され、前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの前記中央部と、その下の前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面との間の膨張可能な環状膨張流体チャンバ、及び、1つ又は複数の膨張流体ポートを形成する、請求項4に記載のPTA装置。
【0025】
6. 加圧膨張流体が前記PTAカテーテルの前記膨張管腔内に導入され、前記加圧膨張流体が前記膨張流体ポートを通って前記環状膨張流体チャンバ内に流入するとき、前記膨張流体チャンバが、前記加圧膨張流体によって、半径方向外向きに膨張し、前記支持カテーテル・シャフトの前記内面に対して前記スタビライザを圧縮するように適合されている、請求項5に記載のPTA装置。
【0026】
7. 前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドが、前記PTAカテーテル・バルーンから分離されており、他のスタビライザの前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドから分離されている、請求項6に記載のPTA装置。
【0027】
8. 前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドが、前記PTAカテーテル・シャフトに沿って2つ以上の隣接するスタビライザを形成するスタビライザ・エラストマー材料の一部のバンドの一部であり、それぞれが、前記PTAカテーテル・シャフト内の1つ又は複数の膨張流体ポートを覆う、請求項6又は7に記載のPTA装置。
【0028】
9. 前記PTAカテーテル・シャフトが2つ以上のスタビライザを含み、それぞれが、前記別のスタビライザの前記バンドとは異なる、弾性、変形性、及び/又は順応性を有するスタビライザ・エラストマー材料のバンドを有し、その結果、前記スタビライザは、膨張流体が前記PTAカテーテルの前記膨張管腔内に導入されるとき、異なる時点で完全に作動する、請求項6から8までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【0029】
10. 前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドは、前記PTAカテーテル・バルーンが完全に膨張する時点とは異なる時点で、前記スタビライザが完全に膨張されるように、前記PTAカテーテル・バルーンとは異なる弾性、変形性、及び/又は、順応性を有する、請求項6から9までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【0030】
11. 前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンの部分的な膨張前に、膨張するように適合されている、請求項10に記載のPTA装置。
【0031】
12. 前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンが部分的に膨張するとき、膨張するように適合されている、請求10に記載のPTA装置。
【0032】
13. 前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンが完全に膨張するとき、膨張するように適合されている、請求項10に記載のPTA装置。
【0033】
14. 前記スタビライザは、前記PTAカテーテル・バルーンが完全に膨張した後に膨張するように適合されている、請求項10に記載のPTA装置。
【0034】
15. 前記スタビライザは、前記支持カテーテル内に陥凹された前記PTAカテーテル・バルーンの一部とともに膨張するように適合されており、その結果、前記陥凹されたPTAバルーン部分及びスタビライザの半径方向の力が組み合わされ、前記支持カテーテルに加えられ、バルーンの膨張によって生成される軸方向の力に対抗し、それにより、前記支持カテーテルに対する前記PTAカテーテルの前記位置を固定し、前記PTAカテーテルを前記支持カテーテルに対して同軸配置に拘束する、請求項10に記載のPTA装置。
【0035】
16. 前記スタビライザは、前記支持カテーテル内に陥凹された前記PTAカテーテル・バルーンとともに膨張するように適合されており、その結果、前記陥凹されたPTAバルーン及びスタビライザの半径方向の力が組み合わされ、前記支持カテーテルに加えられ、前記支持カテーテルに対する前記PTAカテーテルの前記位置を固定し、それにより、前記PTAカテーテルの押込み又は引き込み動作中に、他の方法で加えられる歪み又は力を低減又は防止する、請求項10に記載のPTA装置。
【0036】
17. 患者の血管管腔内の病変を治療する方法であって、
ガイドワイヤを前記血管管腔内に導入するステップと、
支持カテーテルを、前記ガイドワイヤを覆う前記血管管腔内に導入するステップと、
1つ又は複数のスタビライザを有するPTAカテーテルを、前記ガイドワイヤを覆う前記支持カテーテル内に導入するステップと、
前記支持カテーテル内で前記PTAカテーテルの前記位置を固定し、前記支持カテーテルに対して同軸位置に前記PTAカテーテルを拘束するために、前記1つ又は複数のスタビライザを作動させるステップと
を含む、方法。
【0037】
18. 前記支持カテーテルが、前記遠位端で開口し、前記近位端でマニホールドに向かって開口する第1の直径の管状シャフトを有し、
前記PTAカテーテルが、
前記外側シャフトの前記近位端に取り付けられたマニホールドと、
前記マニホールドを通って前記膨張管腔に流体連通を提供する膨張ポートと、
ガイドワイヤが前記ガイドワイヤ管腔内に挿入されるガイドワイヤ・ポートと
をさらに有する、請求項17に記載の方法。
【0038】
19. 前記1つ又は複数のスタビライザが、
前記PTAカテーテル・シャフトの前記表面に取り付けられたスタビライザ・エラストマー材料のバンドと、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部の下の1つ又は複数の膨張流体ポートと
をそれぞれ有する、請求項18に記載の方法。
【0039】
20. 前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部が、前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面に固定されておらず、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの2つの縁部が、前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面に固定され、前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの前記中央部と、その下の前記PTAカテーテル・シャフトの前記外面との間の膨張可能な環状膨張流体チャンバ、及び、1つ又は複数の膨張流体ポートを形成する、請求項19に記載の方法。
【0040】
21. 加圧膨張流体が前記PTAカテーテルの前記膨張管腔内に導入されるとき、加圧膨張流体が前記膨張流体ポートを通って前記環状膨張流体チャンバ内に流入し、前記膨張流体チャンバを半径方向外向きに膨張させ、前記支持カテーテル・シャフトの前記内面に対して前記スタビライザを圧縮する、請求項20に記載の方法。
【0041】
22. 患者の血管管腔内の病変の治療において使用するための、請求項1から16までのいずれか一項に記載のPTA装置。
【0042】
23. 第1のカテーテル・シャフトによって取り囲まれた第1の管腔を有する、(好ましくは、)均一な円周及び/又は直径を有する、第1のカテーテルと、
前記第1のカテーテルの前記第1の管腔内に挿入された第2のカテーテルであって、第2のカテーテル・シャフトと、第2の管腔に流体連通している1つ若しくは複数の液圧膨張式スタビライザとによって取り囲まれた前記第2の管腔を有する、第2のカテーテルと、
を有する、又は、それらからなるカテーテル・システムであって、
前記1つ又は複数のスタビライザは、前記第2の管腔を介して液圧膨張するときに、半径方向外向きに膨張可能な膨張流体チャンバを形成するように適合され、それにより、前記第1のカテーテル・シャフトの内面に対して前記スタビライザを圧縮し、前記第1のカテーテル内の前記第2のカテーテルの前記位置を固定し、前記第2のカテーテルを前記第1のカテーテルに対して同軸配置に拘束する、カテーテル・システム。
【0043】
24. 前記第1のカテーテルは、支持カテーテル又はガイディング・カテーテルであり、及び/又は、前記第2のカテーテルは、バルーン・カテーテル、別のガイディング・カテーテル、経皮経管的血管形成カテーテル、ダイレーター・カテーテル、クロッシング・カテーテル、又は、マイクロカテーテルである、請求項23に記載のカテーテル・システム。
【0044】
25. 前記1つ又は複数のスタビライザは、エラストマー材料、好ましくはエラストマーで作られる、請求項23又は24に記載のカテーテル・システム。
【0045】
26. 前記1つ又は複数のスタビライザが、それぞれ、縁部及び中央部を有し、前記縁部は、前記第2のカテーテル・シャフトの前記内面又は外面に固定されており、前記中央部は、前記第2のカテーテル・シャフトの前記内面又は外面に固定されていない、請求項23から25までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【0046】
27. 前記第2のカテーテルの前記第2の管腔は、1つのスタビライザの前記中央部によってそれぞれ覆われた1つ又は複数の膨張流体ポートを有する、請求項23から26までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【0047】
28. 2つ以上のスタビライザを有し、各スタビライザは、好ましくは、異なる摩擦係数、弾性、変形性、及び/又は順応性を有する、異なるエラストマー材料で作られる、請求項23から27までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【0048】
29. 前記スタビライザの前記中央部の前記エラストマー材料は、前記スタビライザの前記縁部の前記エラストマー材料よりもより可撓性を有し、及び/又は、大きな弾性を有する、請求項23から28までのいずれか一項に記載のカテーテル・システム。
【0049】
30. 支持カテーテルと、
前記支持カテーテル内に挿入される経皮経管的血管形成カテーテルと
を有する、経皮経管的血管形成装置であって、前記経皮経管的血管形成カテーテルが、
遠位端、及び、前記遠位端に取り付けられたカテーテル・バルーンと、
膨張管腔と、
ガイドワイヤ管腔と、
1つ又は複数の液圧膨張式スタビライザと
を有し、
前記膨張管腔が、前記カテーテル・バルーンの内部容積及び前記1つ又は複数の液圧膨張式スタビライザと流体連通する、経皮経管的血管形成装置。
【0050】
31. 前記1つ又は複数のスタビライザは、
前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記表面に取り付けられたスタビライザ・エラストマー材料のバンドと、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部の下の1つ又は複数の膨張流体ポートと
をそれぞれ有する、請求項30に記載の経皮経管的血管形成装置。
【0051】
32. 前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの中央部は、前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記外面に固定されておらず、
前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの2つの縁部は、前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記外面に固定され、前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドの前記中央部と、その下にある前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記外面との間の膨張可能な環状膨張流体チャンバ、及び、1つ又は複数の膨張流体ポートを形成する、請求項30又は31に記載の経皮経管的血管形成装置。
【0052】
33. 前記膨張流体チャンバは、半径方向外向きに膨張するように適合され、加圧膨張流体が前記経皮経管的血管形成カテーテルの前記膨張管腔内に挿入されるとき、前記加圧膨張流体によって前記支持カテーテル・シャフトの前記内面に対して前記スタビライザを圧縮し、前記加圧膨張流体が、前記膨張流体ポートを通って、前記環状膨張流体チャンバ内に流入する、請求項32に記載の経皮経管的血管形成装置。
【0053】
34. 前記スタビライザ・エラストマー材料のバンドは、前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトに沿って2つ以上の隣接するスタビライザを形成するスタビライザ・エラストマー材料の一部のバンドの一部であり、それぞれが前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフト内で1つ又は複数の膨張流体ポートを覆う、請求項30から33までのいずれか一項に記載の経皮経管的血管形成装置。
【0054】
35. 前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトは、2つ以上のスタビライザを含み、それぞれが、前記別のスタビライザの前記バンドのものとは異なる、及び/又は、前記経皮経管的血管形成カテーテル・シャフトの前記材料とは異なる、弾性、変形性、及び/又は順応性を備えたスタビライザ・エラストマー材料のバンドを有する、請求項30から33までのいずれか一項に記載の経皮経管的血管形成装置。
【0055】
36. 前記スタビライザの前記エラストマー材料、好ましくは、前記スタビライザの前記中央部の前記エラストマー材料は、前記経皮経管的血管形成カテーテル・バルーンの前記エラストマー材料よりもより可撓性を有し、及び/又は、大きな弾性を有する、請求項1から16までの、又は30から34までのいずれか一項に記載の経皮経管的血管形成装置。
【0056】
37. 前記支持カテーテルが、均一な円周及び/又は直径を備えたシャフトを有する、請求項1から16までの、又は30から36までのいずれか一項に記載の経皮経管的血管形成装置。
【国際調査報告】