(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ワークピース上の歯部をホーニングするための方法
(51)【国際特許分類】
B23F 19/05 20060101AFI20240129BHJP
B23F 21/03 20060101ALI20240129BHJP
B24B 33/06 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B23F19/05
B23F21/03
B24B33/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540864
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2022051257
(87)【国際公開番号】W WO2022161852
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】102021000429.9
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519171088
【氏名又は名称】グリーソン スイツァーランド アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン リーデラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ブログーニ
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA09
3C158BB06
3C158BB09
3C158BC02
3C158CA03
3C158CB01
3C158CB10
(57)【要約】
本発明は、噛み合い機械加工係合する歯付きホーニングツール(特に内歯ホーニングリングの形態)を使用してワークピース上の歯部をホーニングするための方法であって、ワークピース歯部とホーニングツールとの間の所与の相対位置において、ホーニングツールの歯面の幅クラウニングにより、機械加工係合の接触ゾーンが、幅クラウニングの頂点の周りに位置する、軸方向寸法の加工領域においてのみ、ワークピース歯部の歯部幅をカバーするために機械加工係合に必要な最小幅よりも小さくなるように形成され、加工領域が、ワークピース歯部の機械加工を完了するために軸方向に変位される、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噛み合い機械加工係合する歯付きホーニングツール(10)(特に、内歯ホーニングリング(10)の形態)を使用してワークピース(2)上の歯部をホーニングするための方法であって、前記ワークピース歯部とホーニングツールとの間の所与の相対位置において、前記ホーニングツールの歯面の幅クラウニングにより、前記機械加工係合の接触ゾーンが、前記幅クラウニングの頂点の周りに位置する、軸方向寸法(b
K)の加工領域においてのみ、前記ワークピース歯部の歯部幅をカバーするために機械加工係合に必要な最小幅よりも小さくなるように形成され、前記加工領域が、前記ワークピース歯部の機械加工を完了するために軸方向に変位される、方法。
【請求項2】
前記ホーニングリングの前記歯面の前記幅クラウニングが、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μm、特に少なくとも15μmであり、及び/又はホーニングツール幅に対する前記幅クラウニングが、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0006、特に少なくとも0.001である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ツール歯部の前記歯部幅が、特に両側で前記加工領域の前記軸方向寸法を、いずれの場合にも、少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、特に30%、及び/又は少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mm、特に少なくとも3mmだけ超える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
軸方向(Z)の変位が、半径方向(X)の送りと重なり、前記加工領域が、所定の半径方向の送り深さ(X
I)まで単独で使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の半径方向の送り深さが、半径方向の最終送り深さ(X
E)から95%以下、好ましくは90%以下、特に80%以下の距離であるが、材料除去の開始から前記最終送り深さまでの送り間隔に基づいて、好ましくは20%超、より好ましくは30%超、特に70%超の距離である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ホーニング機械加工が、前記所定の送り深さを超えて、別のホーニングツールを用いて継続される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
第1のホーニング機械加工の他方のホーニングツール(10B)及び前記ホーニングツール(10A)が、共通のクランプ(20)にクランプ留めされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2つのホーニングツールが、同じドレッシングツール、特に全く同じドレッシングツールでドレッシングされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記他方のホーニングツールの歯面が、中空クラウニング状に、又はクラウニングなしに形成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ホーニング機械加工が、前記所定の送り深さを超えて、先行するホーニング機械加工の前記ホーニングツールを用いて、ただし、前記先行する機械加工の接触ゾーンを超えて前記接触ゾーンを広げるために、機械の軸によって生み出される追加の補償運動を伴って、継続して実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
制御命令を含む制御プログラムであって、前記制御命令が、ホーニング機械のコントローラ上で実行されると、前記機械に、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実行させる、制御プログラム。
【請求項12】
回転駆動可能なワークピースホルダ、及びホーニングツールを保持するための回転駆動可能なツールホルダ(20)と、請求項11に記載の制御プログラムを有するコントローラとを有する、ホーニング機械(200)。
【請求項13】
前記ワークピースと前記ツールとの間の相対位置を軸方向に変更するための直線機械軸(Z)、及び前記ワークピースと前記ツールとの半径方向の相対位置を変更するための直線機械軸(X)、並びにホーニングする前記方法の軸交差角を調整するための回転機械軸(A)に加えて、更に別の位置決め軸を有する、請求項12に記載のホーニング機械。
【請求項14】
前記ツールホルダが、幅クラウニング状のホーニングツール/輪郭化された領域による前記先行するホーニング機械加工、及びより小さい幅クラウニングを有する更なるホーニングツール/輪郭化された領域による後続のホーニング機械加工を伴って前記方法を実行するために、2つの異なる輪郭のホーニングリング、又は異なる輪郭の軸方向領域を有するホーニングリングを受け入れる、請求項12又は13に記載のホーニング機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幾何学的に不明確な刃先を有する歯部の硬質微細機械加工の分野、具体的には、歯付きホーニングツール(特に、内歯ホーニングリングの形態)を用いてワークピース上に歯部をホーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、歯付け技術では周知であり、例えば、「Innovative Gear Manufacturing,」Thomas Bausch,3rd edition,Expertverlagと題する教本においても説明されている。上記教本の592ページは、内歯ホーニングリングを用いた歯部ホーニングの典型的配置を示しており、その回転軸はワークピースの回転軸に対する軸交差角度で延びている。
【0003】
ワークピースは、歯幅全体にわたってホーニングリング100と機械加工係合しており、本出願の
図1において、ホーニングリング100は、ツールの回転軸に対する軸方向接触幅b
Kを有するレンズ形状の接触領域として図示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホーニング中、ホーニングツールとワークピースの歯部との間の軸方向距離は、ワークピースの歯部にツールを最終的送り深さまで降下することによって低減する。振動する軸方向運動を、この純粋な降下ホーニング(長手方向ホーニング)に重ねることもでき、その結果として、更に高い表面品質を生み出すことができる。
【0005】
本発明の目的は、冒頭で述べたタイプの方法を更に開発することであり、この方法は、たとえ事前の歯形成公差に関して不利な条件であっても、歯面の満足のいく表面品質と、所望の目標形状から満足できる小さな偏差とを組み合わせるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
工程の観点から、本発明のこの目的は、噛み合い機械加工係合する歯付きホーニングツール(特に、内歯ホーニングリングの形態)を使用してワークピース上の歯部をホーニングするための方法であって、ワークピース歯部とホーニングツールとの間の所与の相対位置において、ホーニングツールの歯面の幅クラウニングにより、機械加工係合の接触ゾーンが、幅クラウニングの頂点の周りに位置する、軸方向寸法の加工領域においてのみ、ワークピース歯部の歯幅をカバーするために機械加工係合に必要な最小幅よりも小さくなるように形成され、加工領域が、ワークピース歯部の機械加工を完了するために軸方向に変位される、方法によって達成される。
【0007】
従来技術に比べて加工領域が著しく狭いため、係合ゾーン全体が既存のエンクロージャの関数として変化し、したがって、機械加工係合における応力状態も変化し、このことは、特に事前の歯面可能の総和除算誤差が大きい場合に、それらの除去に好影響を及ぼす。この目的を達成するために、機械加工係合がもはや歯幅全体に及ばず、補償のために軸方向変位運動が実行されるという欠点が受け入れられる。
【0008】
正の(凸状)クラウニングは、更に制限されない形状に、例えば、放物線状、アーチ状、又は楕円形に設計され得る。しかしながら、正弦波状の上昇、又は、場合によっては丸みを帯びた段差も使用され得る。したがって、幅クラウニングの「頂点」は、広義に理解されるものであり、歯幅が最大に増加する点、あるいは場合によっては拡張領域を意味する。
【0009】
好ましい変形例では、ホーニングリングの歯面の幅クラウニングが、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μm、特に少なくとも15μmになるように、及び/又はホーニングツール幅に対する幅クラウニングが、少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0006、特に少なくとも0.001になることが規定されている。典型的なホーニングリングでは、このことが、加工領域と非加工支持領域の適切な分割をもたらし、ツールと機械加工操作の安定性に寄与する。
【0010】
更に好ましい構成では、ツール歯部の歯幅が両側で加工領域の軸方向寸法が、いずれの場合にも、少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、特に30%、及び/又は少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mm、特に少なくとも3mmだけ超えるように、特に、この最小幅以上になるように規定されている。このようにして、加工領域の満足のいく安定した横方向支持が達成される。
【0011】
更に好ましい構成では、軸方向の変位が半径方向の送りに重なり、かつ、加工領域が所定の半径方向の送り深さまで単独で使用されることが規定されている。したがって、第1の機械加工では、この方法は、所定の半径方向送り深さまで実行される。この場合、0.4より大きく、好ましくは0.8より大きく、特に1.2より大きく、及び/又は16より小さく、好ましくは12より小さく、特に8より小さい軸方向変位と半径方向送りの比(mm/μm)が、少なくとも部分的に提供されている。これらの値は、連続送りに適用され、不連続送りの時間平均として適用される。更に、軸方向運動速度(mm/分)は、好ましくは480未満、より好ましくは420未満、特に360未満である。
【0012】
更に好ましい方法構成では、所定の半径方向送り深さが、半径方向最終送り深さXEから95%以下、好ましくは90%以下、特に80%以下離れているが、材料除去の開始から最終送り深さまでの送り間隔に基づいて、好ましくは20%超、より好ましくは50%超、特に70%超になることが規定されている。
【0013】
一方で、このことは、歯の最終形状に到達するために依然として残っている残留送り深さと組み合わせて、機械加工された事前歯切りに存在し得る合計除算誤差の有利な前処理を確実にする。
【0014】
更に好ましい構成では、ホーニング機械加工が、所定の送り深さを超えて、別のホーニングツールを用いて継続されることが規定されている。
【0015】
したがって、本発明によるホーニング機械加工によって実行される第1の機械加工は、最終形状に達するまで、更なるホーニング機械加工が続くことができ、この更なるホーニング機械加工は、先の従来技術と同様に、意図された工程条件のためにワークピース歯部の最終形状に適合されているホーニングツールを用いて実施される。好ましくは、この第2のツールは、第1のツールのような強力なクラウニングをもはや有しない。
【0016】
更に好ましい構成では、この点に関して、他のホーニングツールと第1のホーニング機械加工のホーニングツールが共通のクランプでクランプ留めされることが規定されている。
【0017】
このようにして、ツールが交換されたにもかかわらず、総機械加工時間は、ほんのわずかな余分な時間だけ延長されることになり、これは基本的に、半径方向の取り外しと再降下、及びツール交換のための小さな中間軸方向変位のみによるものである。
【0018】
特に好ましい実施形態では、両方のホーニングツールが同じドレッシングツールでドレッシングされ、特に(2つのホーニングツールにもかかわらず)全く同じドレッシングツールでドレッシングされるように規定されている。2つのツールの異なるプロファイリングを依然として考慮するために、それぞれのホーニングツール用のドレッシングは、異なる機械軸構成において、特に、使用されるホーニング機械のB軸の修正された使用の下で実行される。
【0019】
好ましい実施形態では、他方のホーニングツールの歯面が、中空クラウニング状に形成されるか、又はクラウニングなしで形成されることが規定されている。
【0020】
この場合、第2の機械加工操作が完全に通常の範囲内で実行され、これにより追加の実施上の困難が生じないことが有利である。
【0021】
代替実施形態では、ホーニング機械加工が、所定の送り深さを超えて、先行するホーニング機械加工のホーニングツールを用いて、ただし、先行する機械加工の接触ゾーンを超えて接触ゾーンを広げるために、機械の軸によって生み出される追加の補正運動を伴って、継続して実行されることが規定されている。
【0022】
後者(請求項1に記載の本発明による接触ゾーンのbK)は、好ましくは6mm、より好ましくは4mm、特に3mmを超えずに、2mm以下ですらあり得る。
【0023】
この変形例は、機械の設計上の理由で追加のホーニングツールを使用することが困難な配置状態、又は、追加のホーニングツールの使用が機械加工速度(主時間)のかなりの損失と関連する配置状態に主に好適である。
【0024】
更に、デバイスの観点から、本発明は、制御命令を含む制御プログラムであって、制御命令が、ホーニング機械のコントローラ上で実行されると、機械に、前述の態様のいずれか1つに記載の方法を実行させる、制御プログラムを提供する。
【0025】
更に、デバイスの観点からは、回転駆動可能なワークピースホルダ、及び少なくとも1つのホーニングツールを保持するための回転駆動可能なツールホルダと、これらの特性を有する制御プログラムを有するコントローラとを有する、ホーニング機械が提供される。
【0026】
好ましい構成では、ワークピースとツールとの間の相対位置を軸方向に変更するための直線機械軸、及びワークピースとツールとの半径方向の相対位置を変更するための直線機械軸、並びにホーニング方法の軸交差角度を調整するための回転機械軸に加えて、ホーニング機械は、更に別の位置決め軸を有する。
【0027】
好ましくは、これは、軸方向軸及び半径方向軸と比較して第3の次元を広げる直線機械軸であり得る。また、好ましくは、追加の回転軸(B軸)がこの目的のために設けられており、これによって、ツールホルダを備えたツールヘッドを、軸方向軸を横切り、半径方向軸を横切る軸、特にこれらの軸に直交する軸を中心に旋回させることができる。
【0028】
ホーニング機械の更に好ましい構成では、ツールホルダが、幅ラウニング状のホーニングツールによる先行するホーニング機械加工、及び更なるホーニングツールによる後続のホーニング機械加工を伴って方法を実行するために、2つの異なる輪郭を有するホーニングリング、又は異なる輪郭を有する軸方向領域を有するホーニングリングを受け入れることが規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の更なる特徴、詳細、及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の説明に見出すことができる。
【
図1】従来技術で一般的な内歯ホーニングリングの歯面上の接触ゾーンの概略図である。
【
図2】ツール幅クラウニングによって生み出される接触ゾーンの概略図である。
【
図5】2つのホーニングリングを備えたツールホルダを示す。
【
図6】歯をホーニングするためのホーニングマシンを示す。
【
図7】(a)および(b)は、低減した和除算誤差を示す描写である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
非常に誇張して描かれているが、
図2から分かるように、内歯ホーニングリング10の歯面4は、幅が広くクラウニングされるように設計されている。このことは歯のホーニング機械加工中に、幅クラウニングの頂点に近く、その頂点を中心とした領域5にのみ接触が形成されるという結果をもたらす。この領域5の外側に配置され、幅クラウニングによって頂部領域5に比べて歯厚が低減したホーニングリング歯部1の軸方向領域6(支持領域)は、もはや係合解除されない。
【0031】
したがって、軸方向寸法b
Kが小さいために、係合ゾーンは従来の歯ホーニングよりも著しく小さくなっており(
図3の重なりの表現を参照されたい)、これは、一方で(
図2では1つの歯面の接触ゾーンのみを示しているが、歯ホーニングの間に通常はいくつかの歯の隙間が噛み合っているために)全体的な係合領域が著しく低減することをもたらす。このことは、機械加工係合の圧縮強度にプラスの影響をもたらすため、幅クラウニングが大幅に変更されているホーニングツールを用いる方法は、特に事前歯切りでの総和除算誤差が大きくなる可能性が低くなる。
【0032】
一方で、接触ゾーンの軸方向延びb
Kが小さいため、
図2に示す構成(ワークピースの歯の歯幅が
図1と一致すると仮定する)では、ワークピースは歯幅全体にわたってもはや加工されない。この状況は、ワークピース及びホーニングツールが、それらの軸方向相対位置を変化させる振動軸方向運動を受け、その軸方向運動の振幅は、軸方向に移動する接触ゾーンがワークピース歯部の歯切り幅全体にわたって通過するのに十分な大きさであるという事実によって対処される。
【0033】
この軸方向(Z)の振動運動が、半径方向(X)の降下運動と重なり、この重なる運動の一例が、
図4に単純に概略的に示されている。機械加工の開始時に、ワークピースの歯部とホーニングリングが互いに対して相対位置に配置され、そこでホーニングが通常実行される、すなわち、それぞれの歯幅の中心が実質的に重なるように配置されていることが、この概略的な例示的な構成で見ることができる。しかしながら、この軸方向位置では、ホーニングリングの幅クラウニングによって低減した接触幅b
K内でのみ機械加工が行われた。重なる軸方向の振動の結果として、接触ゾーンは、ワークピースの歯部の一方の端面に向かって変位し、次いで他方の端面に向かって変位する。
【0034】
しかしながら、
図4の振動運動の下端は、ワークピース歯部のホーニングの半径方向終端位置X
Eにない。むしろ、前述の方法による機械加工は、所定の半径方向送り深さXの範囲内でのみ、すなわち、所定の半径方向送り深さX
Iまで実行される。接触領域の変位運動の順序の詳細は、変化し得ることが理解される。しかしながら、最終送り深さまでの残りの機械加工では、異なる形状のホーニングツール、すなわち、
図1に示す従来型ホーニングリング歯部が使用され、これは、ホーニングされる歯部の、生み出される端部の形状に一致する。このことは、この第2のホーニング機械加工において、例えば、純粋な降下方法や長手方向ホーニングの従来式歯ホーニングに従って完全にホーニングが行われることができることを意味する。
【0035】
この目的のために、
図5に示すように、幅クラウニングが修正された第1のホーニング可能のホーニングリング10A、及びホーニングされる歯部の端部形状の適合する第2のホーニング機械加工のホーニングリング10Bは、共通のクランプ内に配置され得る(イメージ描写に示される異なるねじれ角は無関係である)。したがって、第1のホーニング機械加工から第2のホーニング機械加工への変更には、ワークピースと共通のホーニングリングホルダ20との間の中間の軸方向変位のみが必要とされる。したがって、内部空間25は、ホーニングリング10A、10Bの両方を収容するのに十分な幅に設計されている。しかしながら、本発明は、共通のホーニングリングホルダを使用することに限定されないことが理解される。
【0036】
図6は、本方法が実行され得るホーニング機械200を示し、そのコントローラには、機械200に本方法を実行させる制御プログラムが適宜に提供されている。
【0037】
図6はまた、機械の運動軸も示している。X軸は、ホーニングリング10を内部に備えたホーニングヘッド20をワークピース2に対して半径方向に移動させる。Z軸は、ホーニングヘッド2をワークピース2に対して軸方向に移動させる。一方では、長手方向ホーニング中の従来式軸方向振動に使用されることができ、本発明による方法では、ワークピース2の歯幅全体にわたって加工領域5をガイドするために、より大きな移動範囲をカバーする。C1軸は、ホーニングリング10を回転運動させる主スピンドルドライブの回転軸である。1つの可能な実施形態では、主スピンドルドライブはホーニングヘッド20内に配置される。C2軸は、ワークピース2を回転駆動するスピンドルドライブであり、この軸は機械加工係合のためにC1軸と一致するように同期される。
【0038】
A軸は、軸交差角度6を設定するためにホーニングリング10と共にホーニングヘッド20をその回転軸に対して垂直に回転させる。B軸は、ホーニングリング10と共にホーニングリングヘッド20をその回転軸に対して垂直に回転させる(Yを回転軸とする回転)。B軸は、ワークピース上の歯面のクラウニング又は他の歯面修正運動を調整するために使用され得る。この軸はまた、ホーニングリング10のドレッシング中に、B軸を介してホーニングリング10の所望の強力なクラウニングを考慮することによって、
図5によるホーニングリング100、10を備えるホーニングヘッド内の同じドレッシングツールを用いてこれらのホーニングリングのドレッシングを実施するために使用され得る。しかしながら、本発明は、
図6に示されるホーニング機械の実現に限定されないことが理解されるが、例えば3つの直線軸を備えた他の既知の機械概念も使用され得る。
【0039】
本発明による方法では、小さな軸方向伸長の加工領域5が振動するため、ワークピース上の所望のクラウニングは、もはやホーニングリングの設計によってワークピースに導入され得ないが、ワークピース上の幅クラウニングが動的B軸を介してワークピースに導入され得る(
図6)。
【0040】
原理的には、その幅クラウニングが変更されている
図2に示すホーニングリングを使用したまま、最終送り深さまでの送りでホーニング機械加工の第2の部分を実行することも考えられる。この目的のために、ホーニングリング歯部の幅クラウニングは、幅クラウニングの修正が正常に機械軸側のワークピースに組み込まれるのと同じ様式で、機械軸側の補正運動によって補正される。この目的のために、
図6によるB軸が使用され得る。
【0041】
図7はまた、本発明による方法が、事前歯切り中の歯入れ誤差の低減にどのように有利な効果を有するかを示す。したがって、
図7aでは、和除算誤差Fpの測定値が、ホーニング用に割り当てられる事前歯切りについて、74μmのFpで示されている。合計除算誤差はホーニング後に再度判定され、
図7bによれば4.9μmに低減されている。したがって、本発明による方法はまた、他の方法ではホーニング工程にはもはやアクセスできないと考えられている比較的高い事前歯切りの合計除算誤差を有するワークピースであってもホーニングを行うために使用され得る。このことは、ワークピースの事前機械加工又は硬化の所望の公差からの偏差の場合でも、ホーニング中にそのような偏差をより適切に補正することができるため、工程全体を容易にする(通常、和除算誤差は、ホーニング操作によってせいぜい約半分にされ得ると従来技術では、想定される)。
【0042】
図7から、和除算誤差は60%超、更には70%超、更には80%超で低減され得ることが分かる。図示した例では、90%のFp低減さえ可能であった(他方の歯面の測定(図示せず)の結果は、76μm~6.8μmまでの低減となった)。
【0043】
更に、本発明は図示した実施形態に限定されるものではない。むしろ、上記の明細書及び以下の特許請求の範囲の個別の特徴は、個別で、かつ組み合わせで、その異なる実施形態において本発明を実現するために重要であり得る。
【国際調査報告】