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特表2024-505143医薬における使用のための4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】医薬における使用のための4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/433 20060101AFI20240129BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240129BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 9/56 20060101ALI20240129BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61K31/433
A61P9/04
A61P3/10
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/44
A61K47/06
A61K9/56
A61K9/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023541948
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 GB2022050054
(87)【国際公開番号】W WO2022153042
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】2100352.0
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522156427
【氏名又は名称】ベタゲノン アーベー
【氏名又は名称原語表記】BETAGENON AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】エドランド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェストマン,ヤコブ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA45
4C076AA53
4C076AA94
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC44
4C076DD01
4C076DD33H
4C076EE09H
4C076EE15H
4C076EE32H
4C076EE51H
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF34
4C076FF51
4C076FF52
4C076FF53
4C076FF57
4C076FF61
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084NA11
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC86
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZC19
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、投与効率的な様式で4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの塩を使用して、特定の疾患および障害を治療するために5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化する新規な方法に関する。このように治療され得る疾患には、2型糖尿病が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化する方法であって、
医薬剤形中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約1000mg/日をヒト対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約800mg/日または約200~約400mg/日がヒト対象に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩をヒト対象に毎日投与し、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの最高血漿中濃度が少なくとも40、50、60、70、80、90、100、110、120または130μg/mLとなることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記最高血漿中濃度が、定常状態濃度を達成した後に達することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
15、16、17または18日後に最高血漿中濃度に達することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩が、約10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有する粒子の形態で提供されることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化し、それによって心不全を治療することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化し、それによって糖尿病性腎疾患を治療することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化し、それによって糖尿病を治療することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグをヒト対象に投与することをさらに含む、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩およびSGLT2阻害剤が、ヒト対象に連続的または同時に投与されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記SGLT2阻害剤が、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジンエタボネート、レモグリフロジンエタボネート、エルツグリフロジンまたはソタグリフロジンであることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記医薬剤形が腸溶コーティングを含み、好ましくは、前記腸溶コーティングが、蜜蝋、セラック、アルキルセルロースポリマー樹脂、アクリルポリマー樹脂、セルロースアセテートフタレートまたはポリビニルアセテートフタレートを含むことを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩を含む医薬剤形が、滑沢剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、希釈剤、付着防止剤、コーティング、香味剤、着色剤、流動促進剤、防腐剤、甘味剤、崩壊剤、吸着剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、溶解促進剤、溶解遅延剤および湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬剤形が、カプセル剤または錠剤であることを特徴とする、請求項1ないし14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約1000mgを含むことを特徴とする、経口医薬剤形。
【請求項17】
前記経口医薬剤形が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約800mgまたは約200~約400mgを含むことを特徴とする、請求項16に記載の経口医薬剤形。
【請求項18】
前記経口医薬剤形が腸溶性コーティングを含み、好ましくは腸溶性コーティングが蜜蝋、セラック、アルキルセルロースポリマー樹脂、アクリルポリマー樹脂、セルロースアセテートフタレートまたはポリビニルアセテートフタレートを含むことを特徴とする、請求項16または17に記載の経口医薬剤形。
【請求項19】
前記経口医薬剤形が、滑沢剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、希釈剤、付着防止剤、コーティング、香味剤、着色剤、流動促進剤、防腐剤、甘味剤、崩壊剤、吸着剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、溶解促進剤、溶解遅延剤および湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする、請求項16~18のいずれか一項に記載の経口医薬剤形。
【請求項20】
前記経口医薬剤形がカプセル剤または錠剤であることを特徴とする請求項16ないし19のいずれか一項に記載の経口医薬剤形。
【請求項21】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩が、約10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有する粒子の形態で提供されることを特徴とする、請求項16ないし20のいずれか一項に記載の経口医薬剤形。
【請求項22】
AMPKを活性化することによって疾患または障害を治療するための医薬の製造における、請求項16ないし21のいずれか一項に記載の経口医薬剤形の使用であって、
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約1000mg/日がヒト対象に投与されることを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化し、それによって特定の疾患を治療することによる、投与効率的な様式での医薬における特定の医薬活性成分のナトリウム塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
AMP活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)は3つのタンパク質サブユニットからなるプロテインキナーゼ酵素であり、ホルモン、サイトカイン、運動、および細胞エネルギー状態を減少させるストレス(例えば、グルコース欠乏)によって活性化される。AMPKの活性化はアデノシン5’-三リン酸(ATP)を生成するプロセス(例えば、脂肪酸酸化)を増加させ、ATPを消費するが生存には急速に必要ではない脂肪酸、グリセロ脂質、およびタンパク質合成などの他のものを抑制する。逆に、細胞が持続的な過剰のグルコースを提示されると、AMPK活性が減少し、脂肪酸、グリセロ脂質およびタンパク質合成が増強される。したがって、AMPKは、細胞エネルギー恒常性において重要な役割を果たす蛋白質キナーゼ酵素である。したがって、AMPKの活性化はグルコース低下効果と共役し、コレステロール合成、脂質生成、トリグリセリド合成の阻害、および高インスリン血症の低減を含む、いくつかの他の生物学的効果を誘発する。
【0003】
上記を考慮すると、AMPKは、メタボリックシンドローム、特に2型糖尿病の治療のための好ましい標的である。AMPKはまた、多くの異なる疾患にとって重要である多くの経路に関与する(例えば、AMPKはまた、CNS障害、炎症(および結果として生じる線維症)、骨粗鬆症、心不全、および性機能障害において重要である多くの経路に関与する)。
【0004】
AMPKはまた、癌において重要な多くの経路に関与する。いくつかの腫瘍抑制因子がAMPK経路の一部である。AMPKは哺乳類TOR(mTOR)およびEF2経路の負の調節因子として作用し、これらは、細胞成長および増殖の重要な調節因子である。したがって、調節解除は、癌(ならびに糖尿病)などの疾患に関連し得る。したがって、AMPK活性化剤は、抗癌剤として有用であり得る。
【0005】
肥満、炎症、糖尿病および癌などの疾患におけるAMPKの調節不全の効果は例えば、Jeon S-M、Experimental & Molecular Medicine(2016) 48、e245に記載されている。
【0006】
AMPK活性化剤(例えば、メトホルミンおよび4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、以下の式Iの化合物))は、疼痛の治療に有効であることが示されている。Dasらは、腰椎椎間板穿刺後、AMPK活性化剤を用いたマウスにおける傷害後処置が機械的過敏症を低減することを報告している(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-5. doi:10.1136/rapm-2019-100839)。同様に、Dasおよび共同研究者は、AMPK活性化剤による早期治療がマウスにおける術後疼痛モデルにおいて機械的過敏症を低減することも報告している(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-6. doi:10.1136/rapm-2019-100651)。これらの薬物はまた、後根神経節におけるAMPK経路を正常化する。したがって、AMPK活性化剤は、疼痛、特に術後疼痛の治療に使用することができる。
【0007】
肝臓脂肪症はAMPKによって調節され得ることも示されている(Zhao et al. J. Biol. Chem. 2020 295: 12279- 12289)AMPKの活性化は肝臓における脂肪酸酸化(β酸化)を促進しながら、デノボ脂質生成を阻害する。AMPK活性化はまた、脂肪組織からの遊離脂肪酸放出を減少させ、肝臓脂肪症を予防する。肝臓におけるAMPKの薬理学的活性化は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の複数の態様に対する有益な効果を促進することが報告された。例えば、AMPKの活性化は、マウスおよびサルの両方の動物モデルにおいて非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を改善することが見出された。したがって、AMPK活性化剤は、NAFLDおよびNASHの治療に有用であり得る。
【0008】
AMPK活性化剤の例は4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、式Iの化合物)であり、これはWO 2011/004162に初めて開示された。
【0009】
【化1】
【0010】
AMPKアゴニスト(すなわち、AMPK活性化剤)として、式Iの化合物は、AMPKの活性化によって改善される障害または状態の治療に有用である。そのような化合物は、心血管疾患(心不全など)、糖尿病性腎疾患、2型糖尿病、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、疼痛、オピオイド依存症、肥満、癌、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症および腸疾患の治療に有用であり得る。
【0011】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドなどの活性成分のバイオアベイラビリティを、インビボで改善して、医薬におけるそれらの有効性を改善する必要性が残っている。本発明者らは今回、驚くべきことに、インビボで式Iの化合物のバイオアベイラビリティを増強する処置を見出した。
【0012】
本明細書中の明らかに以前に公開された文書のリストまたは考察は、必ずしも、その文書が従来技術の一部であるか、または共通の一般知識であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の第1の態様によれば、医薬剤形中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約1000mg/日をヒト対象に投与することを含む、5’アデノシン一リン酸活性化蛋白質キナーゼ(AMPK)を活性化する方法が提供される。
【0014】
本発明の第1の態様による方法は、以下、「本発明の方法」と称される。
【0015】
本発明の代替の第1の態様によれば、AMPKの活性化に使用するための医薬剤形中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約1000mg/日が提供される。
【0016】
本発明のさらなる代替の第1の態様によれば、AMPKを活性化することによって疾患または障害を治療するための医薬の製造における、医薬剤形中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約1000mg/日の使用が提供される。
【0017】
「ナトリウム塩」は、ナトリウムのカチオンおよび関連するアニオンの集合体からなる化合物であることが理解されるであろう。したがって、「4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩」という用語は、ナトリウムカチオンおよび4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアニオンを含む化合物を指す。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩は式IIを指し:
【0018】
【化2】
【0019】
式中、Naはナトリウムカチオンを表す。
【0020】
当業者は適切な溶媒(例えば、水)に溶解した場合、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩が、そのアニオン性成分およびカチオン性成分に解離し得ることを認識するであろう。
【0021】
本明細書全体を通して、構造は、化学名で提示されてもされなくてもよい。命名法に関して何らかの疑問が生じる場合、構造が優先する。化合物が互変異性体として(例えば、代替の共鳴形態で)存在することが可能である場合、示される構造は可能な互変異性形態の1つを表し、観察される実際の互変異性形態は、溶媒、温度、またはpHなどの環境因子に応じて変化し得る。全ての互変異性(および共鳴)形態およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。例えば、以下の互変異性体が本発明の範囲内に含まれる:
【0022】
【化3】
【0023】
疑義を避けるために、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩は周囲条件で固体であり、前記塩への本明細書における言及は、その全ての非晶質、結晶質および部分結晶質形態を含む。
【0024】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩は、当業者に周知の技術に従って調製することができる。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、水酸化ナトリウムまたは代替のナトリウム塩基化合物と反応させることができる。塩スイッチング技術を使用して、1つの塩を別の塩に変換することもできる。
【0025】
塩が4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドから調製される場合、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、国際特許出願WO 2011/004162に記載されているような当業者に周知の技術に従って調製することができる。国際公開第2011/004162号の含有量は、参照により組み込まれる。
【0026】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩は、本明細書において「本発明の塩」と称される。
【0027】
本発明の方法は遊離塩基形態の同等量の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与を含む方法と比較して、インビボでの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのバイオアベイラビリティを改善する(例えば、増加させる)のに驚くほど有効であることが見出された。バイオアベイラビリティの向上は、ヒト対象への医薬剤形の投与後のCmaxまたは曲線下面積(AUC)を測定することによって実証され得る。ヒト対象における、血漿中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドへの同等のレベルの全身曝露、例えば、同等の濃度は、その化合物のナトリウム塩の形態の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの有意に低い量の投与によって達成され得ることも見出された。ナトリウム塩形態の投与が特定のレベルの全身曝露を達成するために必要とされる用量の低減を可能にし得るという知見は、用量効率的な様式での使用が望ましくない副作用が生じる可能性を低減するので有益である。本発明の塩、および前記塩を含む医薬剤形は、そのような治療を必要とする対象における本明細書に記載の治療において有用である。
【0028】
本発明の文脈において、「遊離塩基」という用語は、塩形態ではない4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの形態を指す。遊離塩基4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは式Iで表されうる:
【0029】
【化4】
【0030】
「Cmax」および「AUC」という用語は本文脈において、投与後の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの最高血漿中濃度(例えば、ヒト対象への)および医薬剤形における本発明の塩の投与後のその物質の濃度/時間曲線の積分をそれぞれ指すことが、当業者によって十分に理解される。
【0031】
したがって、本発明の方法は、遊離塩基形態の前記化合物の投与を含む方法と比較して、ヒトにおける式Iの化合物のバイオアベイラビリティを増加させることができる。これにより、本発明者らは、本発明の塩を含む医薬剤形の投与が前記化合物の遊離塩基形態を含む医薬剤形の投与と比較して、インビボで4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのより大きな全身的に利用可能な画分をもたらすことを意味する。遊離塩基形態の前記化合物を含む医薬剤形の投与と比較した、本発明の塩を含む医薬剤形の投与後に全身的に利用可能な式Iの化合物の量の増加は少なくとも約10%、(少なくとも)約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%(すなわち、2倍)、約150%、約200%(すなわち、3倍)、約250%、約300%(すなわち、4倍)、約350%、または約400%(すなわち、5倍)であり得る。
【0032】
塩の所与の用量でのバイオアベイラビリティの改善、または(その曝露を達成するために必要とされる非塩形態の用量と比較して)塩の低減された用量の投与による同等の全身曝露の達成は、当技術分野で公知の適切な方法を使用して実証され得る。例えば、本発明の塩を含む医薬剤形を投与された対象の薬物動態データ(例えば、Cmaxデータ)を、遊離塩基形態の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを含む医薬剤形を投与された対象の対応するデータと比較することによって、バイオアベイラビリティおよび全身曝露レベルの変化を観察することができる。
【0033】
当業者は、本発明の方法が4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩の1日当たり約200~約1000mg(mg/日)の総投与量を、本明細書に記載の1つ以上の医薬剤形を用いて投与することを含むことを理解するであろう。特定の実施形態では、ヒト対象に投与される4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩の総投与量が約200~約800mg/日、約200~約600mg/日、または好ましくは約200~約400mg/日の範囲であり得る。
【0034】
有利には、本発明の塩(前記塩を含む医薬剤形を含む)が1日1回の用量で(例えば、経口送達を介して)ヒト対象に投与され得る。あるいは、本発明の塩の総1日用量が1日2、3または4回の分割用量で投与することができる(例えば、100mg、250mg、または500mgの用量を1日2回など、本明細書に記載の用量を参照して1日2回)。さらに、本発明の方法は、1日1回未満、例えば2日に1回、週1回または週2回の頻度での投与を含み得る。そのような実施形態では、対象が受ける平均1日用量が依然として約200~約1000mgである。特定の実施形態では、本発明の塩が1日に1回以下投与される。より具体的には、本発明の塩が1日1回投与される。
【0035】
実施例3によって示されるように、本発明の方法は本発明の塩が少なくとも1週間の持続時間(例えば、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28日間)の間、1日1回投与される場合に特に有効である。特定の実施形態では、持続時間は少なくとも2週間である。さらなる実施形態では、投与期間は少なくとも3週間である。他の実施形態では、本発明の塩が4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの定常状態血漿中濃度を達成するのに少なくとも十分な期間、1日1回投与される。状況下で処方する医師によって適切とみなされるように、何ヶ月または何年にもわたって延長され得る治療を含む、より長い治療期間が想定される。このような延長された治療も本発明の方法であることが意図される。
【0036】
「約」という用語は、化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指す場合、特定の量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%の変動を指す。各場合において、そのような用語は、「±10%」などの表記に置き換えられ得る(または関連する値に基づいて計算された特定の量の分散を示すことによって)ことが企図される。また、各場合において、そのような用語が削除され得ることも企図される。
【0037】
誤解を避けるために、本発明の文脈において、ヒト対象に投与される用量はAMPKを活性化し、それによって、合理的な時間枠にわたって被験者において治療応答を果たすのに十分であるべきである。当業者は、正確な用量および組成物および最も適切な送達レジメンの選択がとりわけ、剤形の薬理学的特性、治療される状態の性質および重症度、ならびに受信者の身体的状態および精神的鋭敏性、ならびに特定の化合物の効力、治療される対象の年齢、状態、体重、性別および応答、ならびに疾患の段階/重症度によっても影響されることを認識するであろう。いずれにしても、医師または他の当業者は、個々の対象に最も適した実際の投与量を日常的に決定することができる。
【0038】
本発明の方法は、臨床医が対象に低用量の活性成分を投与しながら、対象において4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの所望の最高血漿中濃度を達成することを可能にする点で、特に有利であり得る。実施例2に記載の試験において、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩の反復投与は、約50μg/mlのCmaxをもたらすことが示された。懸濁液中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与を含む以前の研究において、同様のCmaxは、被験者が実質的に大きい(約5倍大きい)反復投与量を受けたときにのみ達成された。
【0039】
加えて、実施例3に記載される研究によって示されるように、錠剤の形態の本発明の塩212mgの反復投与後に少なくとも約85μg/ml、およびカプセルの形態の本発明の塩200mgの反復投与後に少なくとも約50μg/mlの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの最高血漿中濃度を達成することが可能である。
【0040】
したがって、本発明の方法は少なくとも40μg/mLの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの最高血漿中濃度を達成することができる(例えば、少なくとも2週間毎日200mgの本発明の塩を反復投与した後)。さらなる実施形態において、本発明の方法は、少なくとも50、60、70、80、90、100、110、120または130μg/mLの最高血漿中濃度を達成する。
【0041】
最高血漿中濃度は定常状態血漿中濃度を達成するために、または定常状態プロファイルに近づく血漿中濃度プロファイルを達成するために、十分な数の用量の投与後に到達され得る。この文脈において、定常状態濃度は、血漿中の被験物質(分析対象物)(この場合、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド)の濃度の変動が本発明の塩の連続投与間の期間にわたって臨床的に許容される境界内に留まる場合に達成される。定常状態の濃度はまた、Cmaxの変動が連続投与後に臨床的に許容される境界内に留まる場合に達成されると考えられ得る。したがって、一実施形態では、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの最高血漿中濃度は、定常状態濃度を達成した後に到達する。
【0042】
定常状態に到達するのに必要な時間は、被験者間で変化する。薬物の定常状態は、典型的には投与後に薬物の4~5半減期(t1/2)が経過した後に達する。当業者(すなわち、臨床医)は例えば、実施例2および実施例3において言及される方法を使用して、被験者の血液の臨床評価を参照することによって、定常状態がいつ達成されたかを理解することができる。典型的には4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの定常状態濃度は、反復投与が約2週間行われた後に得られるが、より長い時間が必要とされ得る。例えば、最高血漿中濃度は、15、16、17または18日後に到達し得る。
【0043】
特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって理解されるそれらの共通の意味を有する。
【0044】
誤解を避けるために、当業者は本明細書における本発明の特定の態様(本発明の第1の態様など)への言及がすべての実施形態およびその特定の特徴への言及を含むことを理解し、この実施形態および特定の特徴は本発明のさらなる実施形態および特徴を形成するために組み合わせてとられ得る。
【0045】
〔医薬剤形〕
本明細書に示されるように、本発明の塩はAMPKを活性化し、それによって様々な医学的障害および状態を治療するための治療薬として有用である。本発明の塩は、それを必要とするヒト対象に、本明細書において医薬剤形とも呼ばれる医薬製剤の形態で投与される。
【0046】
一実施形態では、本発明の塩は、剤形中に存在する唯一の活性医薬成分(active pharmaceutical ingredient、API)である。さらなる実施形態において、本発明の塩(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)は、1つ以上の他の活性医薬成分と一緒に剤形中に存在するか、または1つ以上の他の活性医薬成分との併用療法の一部として投与され得る。
【0047】
特定の実施形態では、本方法は、そのすべての実施形態および特定の特徴を含む、本発明の塩の医薬剤形の投与を含み、前記塩は約10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有する粒子の形態で提供される(例えば、レーザー回折を使用して測定される)。粒子サイズは、典型的には所与の物質のより大きな粒子を粉砕することによって低減される。
【0048】
用語「粉砕」(「サイズを小さくする」、「細かく砕く」、「挽く」、および「微粉化する」などの当技術分野の他の用語と互換的に使用され得る)は、本明細書で使用される場合、固体試料(例えば、顆粒)を機械的エネルギーに供して固体試料の粒度を小さくするプロセスを指す。例えば、粗い粒子は、平均粒径が所望のパラメータを満たすように減少されるように、より微細な粒子に分解されてもよい。
【0049】
粉砕は、微粒子の製造に対する「トップダウン」アプローチとみなされる。例えば、薬物固体は鋭いブレード(例えば、カッターミル)によって切断され、ハンマーによって衝撃を受け、高圧均質化に供され、または圧力(例えば、ローラーミルまたは乳棒および乳鉢)の適用によって破砕または圧縮され得る。限られた量のエネルギーが典型的に付与されるので、そのような方法によって生成される粒子は、比較的粗いままである。粉砕装置における技術的進歩はミクロン(すなわち、μm単位範囲)またはサブミクロン(例えば、nm単位範囲)の寸法までの超微細薬物粒子の製造を可能にした。
【0050】
特定の粉砕処理は、乾式粉砕処理であることを特徴とすることができる。このような方法は、本発明の塩の処理に好ましい。
【0051】
「乾式粉砕」は薬物がその乾燥状態で、すなわち液体媒体の不存在下(例えば、実質的に水の不存在下)で粉砕されるプロセスを指す。乾燥状態では、薬物が単独で、または薬学的に許容される賦形剤などの1つ以上の他の成分の存在下で粉砕することができる。塩などの他の研磨材料が、粉砕プロセス中に存在して、粒径の減少を助けることができる。乾式粉砕によって付与される機械的エネルギーは、ファンデルワールス力または水素結合を介して、薬物(および場合により存在する他の物質)の粒子間の相互作用を促進する。
【0052】
医薬品の粉砕処理の概説は例えば、Loh et al., Asian Journal of Pharmaceutical Sciences, 10 (2015), 255-274.に見出すことができる。薬物粒子に含めるのに適した賦形剤は例えば、Peltonen et al., in Handbook of Polymers for Pharmaceutical Technologies, ed. Thakur and Thakur, Wiley, volume 4, chapter 3, 67-87, and Nekkanti et al, in Drug Nanoparticles - An Overview, The Delivery of Nanoparticles, IntechOpen.に記載されている。これらの文書の含有量は、参照により組み込まれる。
【0053】
ポリマーおよび界面活性剤などの安定剤は粒子間の反発を増加させ、凝集を阻害するために、粉砕処理中に使用されることが多い。微粉砕中に微粉砕粒子の凝集が起こることがあり、これは最終的に溶解プロセスを遅くし、バイオアベイラビリティに影響を及ぼす可能性がある。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露の増加は、安定剤を添加しなくても、活性成分の乾燥粉砕塩の投与後に起こることが見出されている。したがって、一実施形態では、医薬製剤はいかなる安定剤も含まない。
【0054】
粉砕は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩を含有する粒子の平均サイズを減少させる。粉砕の程度および有効性は、任意の適切な方法による粉砕プロセスの前後の前記粒子の粒径分布を測定することによって決定され得る。「粒径分布」という用語は、粉末、顆粒材料、または流体中に分散された粒子などの、固体試料中にサイズに従って存在する粒子の相対数を指す。
【0055】
固体試料の粒径分布は、当技術分野で周知の技術を使用して測定することができる。例えば、固体試料の粒度分布はレーザー回折、動的光散乱、画像分析(例えば、動的画像分析)、篩分析、空気溶出分析、光学計数、電気抵抗計数、沈降、レーザーオブスキュレーションおよび音響(例えば、超音波減衰)分光法によって測定され得る。本発明の塩の粒子の粒径分布を測定するために挙げることができる特定の方法は、動的光散乱およびレーザー回折である。
【0056】
粒径分布は、ふるい分析の結果に基づいて決定することもできる。ふるい分析は、各ふるい上に保持された累積質量対ふるいメッシュサイズのS曲線の形で粒径情報を提示する。粒径分布を記述する際に最も一般的に使用される距離はD値である(例えば、それぞれ累積質量の10%、50%および90%についての切片であるD10、D50およびD90)。本発明の粒度分布は、好ましくはこのような値の1つ以上を用いて定義される。D値は本質的に、粒子が上昇質量に基づいて配置される場合に、試料の質量を特定のパーセンテージに分割する球体の直径を表す。例えば、D10値は、試料の質量の10%がこの値未満の直径を有する粒子からなるような直径である。D50値は、試料の質量の50%がこの値より小さい直径であり、試料の質量の50%がこの値より大きい直径であるような直径である。
【0057】
一実施形態では、本発明の塩を含有する粒子が約10μm未満(例えば、約5μm~約10μm)のD90(例えば、レーザー回折を使用して測定される)によって定義される粒径分布を有し得る。あるいは、粒径分布が約8μm未満(例えば、約5μm~約8μm)のD90によって定義されてもよい。さらなる実施形態において、本発明の塩からなる粒子は約6μm未満(例えば、約0.5μm~約6μm)のD50によって規定される粒径分布を有し得る。なおさらなる実施形態において、本発明の塩からなる粒子の粒径分布は約2μm未満(例えば、約0.2μm~約2μm)のD10によってさらに規定され得る。
【0058】
上述の粒径分布パラメータは、個々にまたは組み合わせて適用可能であり得る。例えば、特定の実施形態では剤形が本発明の塩を含有する粒子を含み、前記粒子は約10μm未満のD90および約6μm未満のD50によって定義される粒径分布を有する。さらに、前記粒子は、9μm未満のD90;6μm未満または5μm未満のD50;および2μm未満または1.5μm未満のD10によって定義される粒径分布を有し得る。
【0059】
本発明の塩を含有する粒子の粒径分布は例えば、Malvern Instrument、Mastersizer 3000などの市販の粒径分析器を使用して、レーザー回折によって測定することができる。
【0060】
本発明はまた、粒子が製造される処理にかかわらず、本明細書に定義される粒径分布のうちの任意のものを有する本発明の塩を含有する粒子を含む医薬剤形を包含する。
【0061】
好ましくは医薬剤形は本明細書に記載される特定の粒径分布のうちの任意のものを有する本発明の塩の粒子を含み、粒子は、前記塩を粉砕することを含むプロセスによって得られる。
【0062】
当業者は、本明細書に記載される医薬剤形が全身的に作用し得、したがって、当業者に公知の適切な技術を用いて投与され得ることを理解するであろう。本明細書に記載の医薬剤形は通常、経口的に、すなわち経口医薬剤形として投与される。したがって、本発明の第2の態様では、約200~約1000mgの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩を含む経口医薬剤形が提供される。
【0063】
特定の実施形態において、本発明の第1および第2の態様において言及される医薬剤形は例えば、約200mg~約800mg、約200mg~約600mg、または約200mg~約400mgの本発明の塩を含み得る。好ましくは、医薬剤形が約200~約400mgの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩を含む。
【0064】
経口投与を意図した剤形は胃環境における溶解または崩壊を防止または最小限に抑えるために、腸溶コーティングをさらに含んでもよい。したがって、腸溶コーティングによってコーティングされた経口調製物(例えば、カプセルまたは錠剤)は、小腸における本発明の塩の標的放出を提供し得る。例えば、腸溶コーティングは製剤の表面(例えば、錠剤またはカプセルの表面)に存在してもよく、または本発明の塩を含有する粒子の各々は、腸溶コーティングでコーティングされてもよい。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法において使用される医薬剤形は、腸溶コーティングをさらに含む。
【0065】
胃環境における経口医薬剤形(例えば、カプセル剤または錠剤など)の溶解または崩壊を最小限にすること、および/または小腸における活性成分の標的放出を提供することが望ましい場合がある。したがって、特定の実施形態では、腸溶コーティングが本発明の方法の医薬剤形上に存在する。例えば、前記コーティングは、医薬剤形上の外層として提供され得る。
【0066】
あるいは本発明の塩を含有する粒子が腸溶コーティングで個々にコーティングされてもよく、前記コーティングされた粒子は医薬剤形に調製されてもよい。したがって、特定の実施形態において、医薬剤形は本発明の塩を含む粒子を含有し、各粒子は、腸溶コーティングでコーティングされる。
【0067】
用語「腸溶コーティング」は経口薬剤(例えば、錠剤、カプセル、粒子またはペレットの表面上に適用される)に組み込まれ、胃環境における薬剤の溶解または崩壊を阻害する物質(例えば、ポリマー)を指す。腸溶コーティングは典型的には胃に見られる高度に酸性のpHで安定であるが、小腸の比較的塩基性のpHで急速に分解する。したがって、腸溶コーティングは、小腸に到達するまで、薬剤中の活性成分の放出を防止する。
【0068】
当業者に公知の任意の腸溶コーティングを本発明において使用することができる。挙げることができる特定の腸溶性コーティング材料には、蜜蝋、セラック、アルキルセルロースポリマー樹脂(例えば、エチルセルロースポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)またはアクリルポリマー樹脂(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)(無水物)、ポリメタクリレート、メチルメタクリレートコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)、およびグリシジルメタクリレートコポリマー)、セルロースアセテートフタレートおよびポリビニルアセテートフタレートを含むものが含まれる。
【0069】
本発明の第1および第2の態様において言及される医薬剤形は、錠剤または特にカプセル剤の形態で提供され得る。例えば、軟ゼラチンカプセルなどのカプセル剤は本発明の塩を単独で、または適切なビヒクル、例えば、植物油、脂肪などと共に含有するように調製することができる。同様に、硬ゼラチンカプセルは本発明の塩を単独で、または二糖(例えば、ラクトースもしくはサッカロース)、アルコール糖(例えば、ソルビトールもしくはマンニトール)、植物デンプン(例えば、ジャガイモデンプンもしくはコーンスターチ)、多糖類(例えば、アミロペクチンもしくはセルロース誘導体)もしくはゲル化剤(例えば、ゼラチン)などの固体粉末成分と組み合わせて含有し得る。
【0070】
本明細書に記載の医薬剤形は、標準的および/または許容される製薬実務に従って調製することができる。本発明の第1および第2の態様の医薬剤形は一般に、本発明の塩および1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む混合物として提供される。1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、標準的な薬学的実務に従って、意図される投与経路に適切に考慮して選択され得る。そのような薬学的に許容される賦形剤は好ましくは活性化合物に対して化学的に不活性であり、好ましくは、使用条件下で有害な副作用または毒性を有さない。適切な医薬製剤は例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy、19th ed、Mack Printing Company、Easton、Pennsylvania(1995)に見出すことができる。薬物送達の方法の簡単な概説は例えば、Langer、Science 249、1527 (1990)にも見出すことができる。
【0071】
したがって、特定の実施形態によれば、本発明の第1および第2の態様において言及される医薬剤形は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。特に、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、滑沢剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、希釈剤、付着防止剤、コーティング、香味剤、着色剤、流動促進剤、防腐剤、甘味剤、崩壊剤、吸着剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、溶解促進剤、溶解遅延剤または湿潤剤であり得る。
【0072】
挙げることができる特定の薬学的に許容される賦形剤には、マンニトール、PVP(ポリビニルピロリドン)K30、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、デンプン、アミロペクチン、セルロース誘導体、ゼラチン、または別の適切な成分、ならびに崩壊剤および潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ナドクセート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウムおよびポリエチレングリコールワックスが含まれる。経口投与のための本発明の塩の医薬剤形の調製において、本発明の塩を含有する粒子(好ましくは粉砕された)は、マンニトール、PVP(ポリビニルピロリドン)K30およびラウリル硫酸ナトリウムと一緒にまたは別々に混合され得る。
【0073】
本発明の方法において使用するための医薬剤形の調製において、本発明の塩は、上記に列挙した1つ以上の医薬賦形剤(塩基性賦形剤を含む)と一緒にまたは別々に混合され得る。
【0074】
本発明の塩と1種または複数の薬学的に許容される賦形剤との混合物は、ペレットまたは顆粒に加工するか、または錠剤に圧縮することができる。したがって、本発明の方法の医薬剤形は、経口投与のための錠剤、ミニ錠剤、ブロック、ペレット、粒子、顆粒または粉末であり得る。
【0075】
〔医療用途〕
本明細書に記載のAMPKを活性化する投与効率的な方法および医薬剤形は、医学において有用である。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは公知のAMPK活性化剤であり、AMPK活性化は、国際特許出願WO 2011/004162およびWO 2020/095010に記載のように、種々の疾患の治療に有益なものとして知られている。
【0076】
したがって、本発明の第3の態様によれば、AMPKを活性化することによる疾患または障害の治療のための医薬の製造における、本発明の第2の態様による経口医薬剤形の使用が提供され、ここで、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩約200~約1000mg/日がヒト対象に投与される。
【0077】
同様に、本発明の第1の態様によるAMPKを活性化する方法は、ヒト対象におけるAMPK活性化によって改善される疾患または障害を治療するために実施され得る。
【0078】
「AMPKを活性化する」とは、AMPK-α(AMPK-アルファ)サブユニットのThr-172部分のリン酸化の定常状態レベルが式Iの化合物の非存在下でのリン酸化の定常状態レベルと比較して増加することを意味する。あるいはまたは加えて、本発明者らはアセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)などのAMPKの下流の任意の他のタンパク質のより高い定常状態レベルのリン酸化が存在することを意味する。
【0079】
AMPKを活性化することによって治療される疾患または障害は心血管疾患(例えば、心不全、例えば、駆出率が保存された心不全)、糖尿病性腎疾患、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、疼痛、オピオイド依存症、肥満、癌、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症および腸疾患を含むことが当業者に知られている。AMPKの活性化によって改善され得る他の疾患または状態には、高インスリン血症および関連する状態、線維症が役割を果たす状態/障害、性機能障害および神経変性疾患が含まれる。
【0080】
「糖尿病」(すなわち、真性糖尿病)という用語は、1型(インスリン依存性)糖尿病および2型(インスリン非依存性)糖尿病の両方を指すことが当業者には理解され、その両方がグルコースホメオスタシスの機能不全を伴う。本発明の方法は特に、糖尿病、すなわち、1型糖尿病および/または2型糖尿病、特に国際特許出願WO 2020/095010に詳細に記載されている2型糖尿病の治療に適している。
【0081】
糖尿病の治療に有用であるだけでなく、本発明の方法は糖尿病性腎疾患(すなわち、糖尿病性腎症)の治療にも適している。「糖尿病性腎疾患」は糖尿病によって引き起こされる腎障害を指し、1型糖尿病および2型糖尿病の重篤な合併症である。糖尿病性腎疾患は血液から老廃物を除去して尿として排泄する腎臓の能力に影響を及ぼし、腎不全を引き起こす可能性がある。
【0082】
本発明の方法はまた、2型糖尿病の非存在下で慢性腎疾患を含む慢性腎疾患を治療するのに適している。慢性腎疾患は、経時的な腎機能の漸進的喪失を特徴とする状態である。慢性腎疾患は、通常、高血圧、糖尿病、高コレステロール、腎臓感染症、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎疾患、尿の流れにおける尿路閉塞の閉塞、および長期薬物使用など、腎臓に影響を及ぼす1つまたは複数の他の疾患または状態の結果として生じる。
【0083】
「高インスリン血症または関連状態」という用語は、高インスリン血症、2型糖尿病、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、脂質異常症、小児期の高インスリン血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、脂肪肝状態、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳卒中などの脳血管状態、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病などの神経変性疾患、および多嚢胞性卵巣症候群を含むことが当業者によって理解される。他の疾患状態には、慢性腎不全などの進行性腎疾患が含まれる。
【0084】
特に、本発明の方法は、高インスリン血症に関連する肥満および/または高インスリン血症に関連する心血管疾患の治療に適している。
【0085】
本発明の方法はまた、心血管疾患(例えば、心不全)の治療に適しており、ここで、該心血管疾患は、高インスリン血症と関連しない。同様に、本発明の方法は、高インスリン血症に関連しない肥満の治療における使用にも適している。誤解を避けるために、AMPK活性化が有益であり得る肥満および/または心血管疾患(心不全など)の治療は、本発明の範囲内に含まれる。特に、疾患または障害は心不全、好ましくは駆出率が維持された心不全(すなわち、HFpEF)である。
【0086】
「癌」という用語は、当業者には細胞の制御されない分裂、および浸潤、増殖を通じた隣接組織への直接的な成長によるか、または転移による遠隔部位への注入によるかのいずれかによって、他の組織に浸潤するこれらの細胞の能力を特徴とする障害のクラスにおける1つまたは複数の疾患を含むことが理解されるであろう。「増殖」によって、本発明者らは、癌細胞の数および/またはサイズの増加を含む。「転移」によって、本発明者らは対象の体内の原発腫瘍部位から対象の体内の1つ以上の他の領域への癌細胞のマイグレーションまたはマイグレーション(例えば、浸潤性)を意味する(細胞は、次いで、続発性腫瘍を形成することができる)。
【0087】
したがって、本発明の方法は全ての腫瘍(非固形および好ましくは固形腫瘍、例えば、癌腫、腺腫、腺癌、臓器とは無関係に、血液癌)を含む、任意の癌タイプの治療に適している。例えば、癌細胞は、乳房、胆管、脳、結腸、胃、生殖器、甲状腺、造血系、肺および気道、皮膚、胆嚢、肝臓、鼻咽頭、神経細胞、腎臓、前立腺、リンパ腺および胃腸管の癌細胞からなる群から選択され得る。好ましくは癌は結腸癌(結腸直腸腺腫を含む)、乳癌(例えば閉経後乳癌)、子宮内膜癌、造血系の癌(例えば白血病、リンパ腫など)、甲状腺癌、腎臓癌、食道腺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、胆嚢癌、肝臓癌および子宮頸癌からなる群から選択される。より好ましくは癌は結腸、前立腺、および特に乳癌からなる群から選択される。癌が非固形腫瘍である場合、好ましくは、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL))などの造血腫瘍である。好ましくは、癌細胞は乳癌細胞である。
【0088】
線維症が役割を果たす条件/障害には、瘢痕治癒、ケロイド、強皮症、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、腎原性全身性線維症、および心血管線維症(心内膜筋線維症を含む)、全身性硬化症、肝硬変、眼黄斑変性症、網膜および硝子体網膜症、クローン病/炎症性腸疾患、手術瘢痕組織形成、放射線および化学療法薬誘発性線維症、ならびに心血管線維症が含まれる(これらに限定されない)。
【0089】
本発明の方法はまた、性機能不全の治療(例えば、勃起不全の治療)に適している。本発明の方法は、炎症の治療にも適し得る。
【0090】
挙げることができる神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄および眼球筋萎縮症(SBMA)などのポリグルタミン障害、歯状核および淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ならびにいくつかの脊髄小脳失調症(SCA)が含まれる。
【0091】
本発明の方法は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の治療に適している。
【0092】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝臓におけるトリグリセリド(脂肪症)の形態での過剰な脂肪蓄積(組織学的に肝細胞の5%超の蓄積と称される)によって定義される。これは、先進国において最も一般的な肝障害であり(例えば、米国成人の約30%に影響を及ぼす)、ほとんどの患者は無症候性である。治療せずに放置すると、状態は次第に悪化し、最終的に肝硬変に至ることがある。NAFLDは肥満患者において特に一般的であり、約80%がこの疾患を有すると考えられる。
【0093】
NAFLDは、患者のアルコール摂取が主な原因因子であると考えられない場合に診断され得る。脂肪肝疾患を「アルコールに関連しない」と診断するための典型的な閾値は、女性対象では20g未満、男性対象では30g未満の1日摂取量である。
【0094】
NAFLDに関連する特定の疾患または状態には、糖尿病、高血圧、肥満、脂質異常症、脂質異常タンパク質血症、グリコーゲン貯蔵疾患、ウェバー-クリスチャン病、妊娠の急性脂肪肝、およびリポジストロフィーなどの代謝状態が含まれる。脂肪肝疾患に関連する他の非アルコール関連因子には、栄養不良、完全非経口栄養、重度の体重減少、再摂食症候群、空腸油膜バイパス、胃バイパス、多嚢胞性卵巣症候群および憩室症が含まれる。
【0095】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)はNAFLDの最も攻撃的な形態であり、過剰な脂肪蓄積(脂肪症)が肝臓の炎症を伴う状態である。進行した場合、NASHは、肝臓における瘢痕組織の開発(線維症)、および最終的には肝硬変をもたらし得る。上記のように、AMPKを活性化する化合物は、NAFLDおよび炎症の治療に有用であることが見出されている。したがって、本発明の方法は、NASHの治療にも有用である。したがって、さらなる実施形態では、治療が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療である。
【0096】
AMPK活性化剤化合物(例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、式Iの化合物))は、疼痛を治療することができ(Das V、et al.Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-5doi:10.1136/rapm-2019-100839およびDas V、et al.Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-6doi:10.1136/rapm-2019-100651)、このような化合物は鎮痛剤である。したがって、本発明の方法は既知のAMPK活性化剤化合物のバイオアベイラビリティを増加させるので、本発明の方法は疼痛の治療に適し得ることになる。特に、本発明の方法は、重度の疼痛、慢性疼痛を有する患者の治療に適しているか、または手術後の疼痛の管理に有用であり得る。
【0097】
オピオイド鎮痛薬などのオピオイドベースの治療は重度の慢性癌性疼痛、急性疼痛(例えば、手術からの回復および突発性疼痛)を治療するために使用され、それらの使用は、慢性の非悪性疼痛の管理において増加している。しかしながら、疼痛を治療するためのオピオイドベースの療法の使用の増加はオピオイド依存(例えば、オピオイド中毒)の増加をもたらした。既知のAMPK活性化剤を提供することによって、本発明の方法は当業者に知られているように、オピオイドに基づく治療の代わりに疼痛を治療するために使用され得る。したがって、本発明の方法は、オピオイド依存症を治療するのに適している。
【0098】
当業者に知られている特定の自己免疫疾患には、クローン病/炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデスおよび1型糖尿病が含まれる。
【0099】
言及すべき特定の腸疾患には、クローン病/炎症性腸疾患および胃腸管の癌が含まれる。
【0100】
当業者は特定の状態の「治療」(または同様に、その状態の「治療」)への言及が、医学の分野においてそれらの通常の意味をとることを理解するであろう。特に、この用語は、そのような症状を有するか、またはそのような症状に罹りやすい被験者を主治する医師によって判断される、状態に関連する1つまたは複数の臨床症状の発生の重症度および/または頻度の低減を達成することを指し得る。
【0101】
当業者は、そのような治療がそれを必要な被験者において行われることを理解するであろう。そのような治療のための対象の必要性は、当業者によって、日常的な技術を用いて評価され得る。本発明の文脈において、本発明の方法の「必要な被験者」は、AMPKの活性化によって改善される障害または状態に罹患している被験者を含む。本明細書中で使用される場合、用語「疾患」および「障害」(ならびに同様に、用語「状態」、「疾患」、「医学的問題」など)は、互換的に使用され得る。
【0102】
理論に拘束されることを望まないが、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのヒト対象への減量投与は、活性成分が該化合物のナトリウム塩の形態で投与される場合には、全身循環において依然として臨床的に有用な濃度の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを生じることができると考えられる。200~1000mg/日の量の本発明の塩を使用する反復投与は血漿中濃度4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドをもたらすことが示されており、これは遊離塩基形態の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの同量の反復投与後に得られる濃度よりも約5倍高い。
【0103】
〔併用療法〕
当業者は、本発明の方法が、同じ状態に対するさらなる処置(複数可)を含み得る(すなわち、それと組み合わせられ得る)ことを理解するであろう。
【0104】
特に、AMPKを活性化することによって改善される疾患または障害を処置する場合、本発明の塩は、その疾患または障害を処置するのに有用である1つまたは複数の他の(すなわち、異なる)治療薬と併せて投与され得る。
【0105】
そのような併用治療は同じ製剤中の、または好ましくは別々の製剤中の異なる治療薬と併せて(すなわち、連続的にまたは同時に)本発明の塩を対象に投与することを含み得る。「併用投与」(および同様に「併用投与」)により、本発明者らは、それぞれの活性成分が関連する状態の治療に向けられた医学的介入の一部として、連続的にまたは同時に投与されることを含む。同時に、本発明者らは、本発明の塩および異なる治療剤が両方の活性成分を含む単一の医薬剤形または同時に投与される別々の剤形のいずれかで、互いに一緒に投与されることを意味する。
【0106】
したがって、本発明に関連して、用語「併用投与」(および同様に「併用投与」)は本発明の塩および異なる治療剤が関連する状態の処置の過程にわたって、いずれかの薬剤が同じ処置の過程にわたって他の構成要素の非存在下で単独で投与される場合よりも、より大きい患者に対する有益な効果を可能にするために、一緒に、または時間的に十分に近接して投与されることを含む。組み合わせが、特定の状態の処置に関して、およびその過程にわたって、より大きな有益な作用を提供するかどうかの決定は処置されるべき状態に依存するが、当業者によって日常的に達成され得る。
【0107】
さらに、本発明の文脈において、用語「と併せて」は、2つの活性成分の一方または他方が他方の投与の前、後、および/またはそれと同時に(場合により繰り返して)投与され得ることを含む。この文脈において使用される場合、「同時に投与される」および「と同時に投与される」という用語は、本発明の塩および異なる治療薬の個々の用量が互いに6時間、3時間、2時間、1時間、45分、30分、20分または10分以内に投与される場合を含む。
【0108】
AMPKを活性化することによって改善される疾患または障害(例えば、本明細書に記載されるような心不全、糖尿病性腎疾患、糖尿病など)を治療するのに有用な他の治療剤は、当業者に周知である。好ましくは他の治療剤がナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグであり、その組合せは2型糖尿病などの疾患を治療するのに有用である。さらなる実施形態において、本発明の方法は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩およびSGLT2阻害剤の逐次または同時投与を含む。
【0109】
当業者は、ナトリウム-グルコース輸送たんぱく質2阻害剤がナトリウム-グルコース輸送たんぱく質2の1つ以上の機能の低下を誘発する物質または薬剤であること、および「ナトリウム-グルコース輸送たんぱく質2の機能の低下」によって、ナトリウム-グルコース輸送たんぱく質2の1つ以上の機能の停止、または特定の機能の速度の低下を含むことを理解するであろう。完全にまたは部分的に阻害され得る特定の機能は、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2がグルコース輸送体として作用する能力である。
【0110】
特定の実施形態では、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤はグリフロジンである。グリフロジンは、既知のクラスの低分子ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤である。Hawley et al(Diabetes、2016、65、2784-2794)およびVillani et al(Molecular Metabolism、2016、5、1048-1056)は、最近、特定のグリフロジンの可能な作用機序を論じている。挙げることができる特定のグリフロジンとしては、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジン(セグリフロジンエタボネートなど)、レモグリフロジン(レモグリフロジンエタボネートなど)、エルツグリフロジンおよびソタグリフロジンが挙げられる。さらなる特定の実施形態では、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤がダパグリフロジンである。
【0111】
特定の実施形態において、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤は、グリフロジンの薬学的に許容される塩である。例えば、さらなる活性成分は、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジン(セグリフロジンエタボネートなど)、レモグリフロジン(レモグリフロジンエタボネートなど)、エルツグリフロジンまたはソタグリフロジンの薬学的に許容される塩であってもよい。
【0112】
さらなる実施形態において、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤は、グリフロジンの溶媒和物である。例えば、さらなる活性成分は、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジン(セグリフロジンエタボネートなど)、レモグリフロジン(レモグリフロジンエタボネートなど)、エルツグリフロジンまたはソタグリフロジンの溶媒和物であってもよい。
【0113】
なおさらなる実施形態において、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2阻害剤は、グリフロジンのプロドラッグである。例えば、さらなる活性成分は、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、セルグリフロジン(セグリフロジンエタボネートなど)、レモグリフロジン(レモグリフロジンエタボネートなど)、エルツグリフロジンまたはソタグリフロジンのプロドラッグであってもよい。
【0114】
本明細書に開示される本発明の方法(およびそのような方法で使用される経口剤形)はまた、本発明の塩を使用する投与効率のよい方法が上記の適応症で使用するか否かにかかわらず、先行技術で公知の他の治療法よりも有効であり、毒性がより低く、作用がより長く、より強力であり、より副作用がより少なく、より吸収されやすく、および/またはより良好な薬物動態プロファイル(例えば、より高い経口バイオアベイラビリティおよび/またはより低いクリアランス)を有し得るという利点を有し得る。特に、本発明の方法は本発明の塩の投与効率的な特徴の結果として、より有効でおよび/またはより少ない副作用のような、インビボで有利な特性を示すという利点を有し得る。
【0115】
〔図〕
以下の図面は本発明の概念の様々な態様を例示するために提供され、本明細書で指定されない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】本発明の塩の200、400および800mg用量を用いた経口薬物動態試験(1日目および18日目)の比較結果を示す。
図2】本発明の塩の200、400および800mg用量を用いた経口薬物動態試験(16~19日目および25日目)の比較結果を示す。
図3】本発明の塩の212.12および424.24mg用量を用いた経口薬物動態試験(21日目)の比較結果を示す。これらの用量は、それぞれ200mgおよび400mgの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドに対応する。
【実施例
【0117】
〔略語〕
AUC0-24: 0~24日目の血漿中濃度-時間曲線下面積
AUClast: 時間ゼロから最後の定量可能な濃度までの血漿中濃度-時間曲線下面積
AUCss: 血漿中濃度-時間曲線定常状態下面積
AUC: 時間ゼロから時間tまでの血漿中濃度-時間曲線下面積
AUCtau: 投与間隔(τ)中の血漿中濃度-時間曲線下面積:τ=tau
max: 最高漿中濃度
trough: 最小漿中濃度
IMP: 治験薬(製剤)
max: 最高血漿中濃度に達するまでの時間。
【0118】
本発明は、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによってさらに説明される。
【0119】
〔実施例1 4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドナトリウム塩の調製〕
〔スキーム:〕
【0120】
【化5】
【0121】
〔手順:〕
イソプロパノール(1.0L)中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(100g、0.2629mol)の懸濁液に、水(100mL)中の水酸化ナトリウム(11.56g、0.2891mol)の溶液を25±5℃でゆっくり加えた。塊を25±5℃で3時間撹拌し、5±5℃に冷却した。塊を5±5℃で3時間撹拌し、濾過して固体を収集した。固体をイソプロパノール(300mL)で洗浄し、減圧下35±5℃で8時間乾燥させた。乾燥した固体を、一次圧力4.0kg/cm、二次圧力7.0kg/cmを有するエアジェットミルを用いて2回微粉化し、8RPMを有するスクリューフィーダーを用いて、所望のナトリウム塩を白色固体(50g、48%)として単離した。
【0122】
4.0kg/cmまでの一次圧力および7.0kg/cmまでの二次圧力のアルゴン下でのジェットミルを用いた反復乾式粉砕を用いて、0.3μmのD10値、1.9μmのD50値および7.1μmのD90値(レーザー回析(Malvern Instrument, Mastersizer 3000)によって測定された)を有する粒径分布を得た。
【0123】
〔実施例2 ヒトにおける薬物動態試験〕
実施例2で使用した被験材料は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩であった。以下、この物質を「被験材料」等と称する。試験に使用した被験材料は、Anthem Bioscience Pvt. Ltd.(Bangalore、インド)により合成され、精製された。被験材料を含む製剤は、ベタゲノンAB(Umea、スウェーデン)のRISE(Sodertalje、スウェーデン)により製造された。
【0124】
〔方法〕
〔臨床試験デザイン〕
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩の3段階の用量レベルの単回および反復投与後の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの曝露を評価するために、および、定常状態でのダパグリフロジンとの併用を評価するために、健常ボランティア(healthy volunteer、HV)(以下、被験者という)を対象とした非盲検、無作為化(無作為割り付け)、並行群間試験を実施した。
【0125】
主な選択基準:ボディマスインデックス(BMI)≧18.0および≦30.0kg/mを有する、非出産可能性の、18~65歳の健康な男性被験者および健康な女性被験者。
【0126】
主な除外基準:治験責任医師の意見で、被験者を危険にさらしたり、結果や被験者の治験への参加能力に影響を及ぼしたりする臨床的に重要な疾患または障害の病歴を有する被験者。
【0127】
〔臨床試験化合物〕
実施例1と同様の方法に従って、被験材料の優良製造慣行(GMP)の1kgバッチを製造した。この化合物を、レーザー回折(Malvern Instrument、Mastersizer 3000)により測定して、D90<8μmを有する白色~オフホワイトの結晶性粉末の形態で提供した。
【0128】
試験のために、サイズ0のVcaps腸溶性カプセルに、200mgの粉砕された被験材料を、2mgのドキュセートナトリウム、125mgのマンニトールおよび6.5mgのラウリル硫酸ナトリウムと共に個々に充填した。
【0129】
10mgのダパグリフロジンの市販の経口錠剤を提供した。
【0130】
〔臨床方法論〕
被験者24例を無作為化(1:1:1)し、200mg(200mgの1カプセル)、400mg(200mgの2カプセル)、または800mg(200mgの4カプセル)の被験材料を投与した。
【0131】
無作為化およびIMP投与開始前28日以内にスクリーニング来院(来院1)を実施した。被験者は、第1日(来院2;第-1日)の前の夕方から研究クリニックに拘束された。被験者は1日目に無作為化され、IMP:200、400または800mg、1日1回(1:1:1)の3つの並行群のいずれかに割り付けられた。
【0132】
投与前の安全性評価ならびに投与前および投与後のPK評価を行った。被験者は、1日目の最後のPKサンプルの後にクリニックを出て、24時間のPKサンプルおよび2日目の投薬(来院3)に戻った。
【0133】
被験者は、3日目から15日目まで自宅で被験材料を自己投与した。コンプライアンス、有害事象(AE)の状態、併用薬の使用を確認するための電話来院は、8日目(来院4日目)に実施する。
【0134】
被験者はPKサンプリングおよびAE評価のために、16日目および17日目(来院5日目および6日目)にクリニックに戻った。来院6は17日目の夕方に継続し、18日目まで被験者をクリニックに拘束した。18日目に、投与前および投与後のPKおよび安全性評価を行った。被験者は、18日目の最後のPKサンプルの後にクリニックを出て、24時間のPKサンプルおよび19日目の投薬(来院7)に戻った。
【0135】
19日目(来院7日目)に、被験者は、7日間(19日目~25日目)、1日当たり10mgの被験材料およびダパグリフロジン(フォルキシガ)の同時投与を開始した。被験者は最終投薬、PKおよび安全性評価のために、25日目(来院8)にクリニックに戻った。安全性評価の追跡調査のための最終試験終了来院(来院9)は、来院8日後または早期中止後28日(+14日)に行った。
【0136】
被験材料投与後の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿中濃度を測定するための静脈血試料(約5mL)を、1日目、2日目、16日目~19日目および25日目に留置静脈カテーテルを通して採取した。
【0137】
血液サンプルを、予め標識されたLi-ヘパリンチューブ中に収集した。採取した全ての血液試料を1500Gで10分間遠心分離して、試料から60分以内に血漿を分離した。各血液サンプルから分離された血漿を、予め標識されたポリプロピレンクライオチューブ(AおよびBサンプル、各チューブ中約750μL)中の2つのアリコートに分割し、<-70℃で凍結した。25日目に、血漿を少なくとも500μLの3アリコートに分割した(被験材料のためのAおよびB試料、およびダパグリフロジンの潜在的な将来の分析のための1試料)。
【0138】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿中濃度を測定するための試料を、Lablytica Life Science AB、Uppsala、Swedenにより、有効なLS-MS/MS方法の手段により分析した。
【0139】
〔データ分析〕
被験物質(4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド)のそれぞれの時点までの血漿中濃度のデータを薬物動態分析に使用した。Phoenix WinNonlin 8.1ソフトウェアの非コンパートメント解析(NCA)モジュールを用いて薬物動態解析を行い、以下の薬物動態学的パラメータを決定した。
【0140】
被験材料の単回投与後:
AUC0-24、Cmax、Tmaxと投与量の比例性(AUC0-24とCmaxに基づく)(副次評価項目)。
【0141】
被験材料の反復投与後:
定常状態(主要評価項目)におけるAUCtauおよびCmax
AUC、AUCss、Tmax(副次評価項目)
定常状態のAUC(AUCss)およびCmax(副次評価項目)に基づく反復投与後の用量比例性
16日目および17日目のCtrough投与前(副次評価項目)
蓄積率(副次評価項目)。
【0142】
〔結果〕
ヒトにおける反復投与経口薬物動態試験の結果を以下の表1~表4にまとめ、図1および図2にグラフで示す。
【0143】
結果は、反復投与後の血漿中に4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドが実質的に蓄積したことを示す。トラフ濃度は16~25日目で同様であり、定常状態条件(または少なくとも定常状態に近い状態)が18日目前に確立されていることを示唆する。18日目に、懸濁液中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを用いて実施された前の第I相および第IIa相薬物動態試験と比較して、血漿中濃度の変動は非常に少なく、Cmaxの大幅な増加がある。
【0144】
2型糖尿病患者に4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを1000mg/日の懸濁液で投与した以前の第IIa相試験では、28日目の平均Cmaxは55μg/mlであった。これは、メトホルミンを3ヶ月以上使用した65名の患者を対象に実施された、無作為化、並行群、二重ブラインド、プラセボ対照第IIa相28日間試験(TELLUS)である。TELLUSは、EudraCTデータベースプロトコル番号2016-002183-13に挙げられている。
【0145】
活性成分の標準的な懸濁液と比較すると、活性成分のナトリウム塩200mgを被験者に投与した場合、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露において、驚くべき実質的な(最大5倍)増加があった。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
〔実施例3 O304Na塩の新しい錠剤製剤を用いたヒトにおける薬物動態試験〕
実施例3で使用した被験材料は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩であった。この物質の遊離塩基形態(すなわち、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド)は、以下、「被験物質」、IMPなどと称される。試験に用いた被験材料の原薬は、Anthem BioSciences(Bangalore、インド)により合成され、錠剤(製剤)はBetagenon Bio AB(Umea、スウェーデン)のRecipharm Pharmaservices Pvt.Ltd.により製造された。
【0151】
〔方法〕
〔臨床試験デザイン〕
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドナトリウム塩錠212.12mgおよび424.24mg(4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの200mgおよび400mg用量に相当)の定常状態における健康な志願者(以下、被験者と称する)の曝露および安全性を評価するために、非盲検、無作為化、並行群間試験を実施した。
【0152】
主な選択基準:ボディマスインデックス(BMI)≧18.0および≦30.0kg/mを有する、非出産可能性の、18~65歳の健康な男性被験者および健康な女性被験者。
【0153】
主な除外基準:治験責任医師の意見で、被験者を危険にさらしたり、結果や被験者の治験への参加能力に影響を及ぼしたりする臨床的に重要な疾患または障害の病歴を有する被験者。
【0154】
〔臨床試験化合物〕
各「400mg」錠剤は424.24mgの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩(式IIの化合物)を含有し、これは400mgの親化合物4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドに相当する。
【0155】
「400mg」錠剤の製剤の詳細を以下の表5に示す。
【0156】
【表5】
【0157】
各錠剤は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド200mgの低用量の投与のために錠剤を2個に分割することを可能にしたスコアラインを有した。
【0158】
〔臨床方法論〕
被験者20例を無作為化(1:1)し、200mg(200mgの1錠)または400mg(400mgの1錠)の被験物質を投与した。
【0159】
無作為化およびIMP投与開始前28日以内にスクリーニング来院(来院1)を実施した。被験者は1日目(来院2)に研究クリニックに到着し、無作為化され、被験物質の最初の投与(無作為化された200mgまたは400mg)を受けた。
【0160】
被験者は投与前のPKサンプリングおよびその後の被験物質の投与のために、2日目(来院3)の午前中にクリニックに戻った。
【0161】
退院前に、被験者に被験物質を18日間、自宅で1日1回自己投与した(3日目~20日目)。
【0162】
さらに、被験者は、被験物質の毎日の摂取が登録された電子日記の使用方法を指示された。有害事象(AE)、併用薬の使用、およびIMPの説明責任について、11日目±1日目(来院4回目)に電話で被験者に問い合わせた。施設職員は、IMP摂取量を定期的に電子日記に登録していない被験者に連絡した。
【0163】
被験物質の在宅ベースの自己投与の18日後、被験者は投与前のPKサンプリングおよびその後の被験物質の最終用量の投与のために、21日目の朝(来院5)にクリニックに戻った。被験者は安全性評価および追加のPKサンプリングのために、投与後少なくとも8時間、クリニックに留まった。22日目(来院6)の午前中に、被験者は、最終投与の24時間後に最終PKサンプルのためにクリニックに最終来院した。
【0164】
最後の電話ベースの試験終了来院(来院7)は、最終投与の約2週間後、35日目±3日目に行った。
【0165】
被験物質投与後の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿中濃度を測定するための静脈血試料(約5mL)を、2日目、21日目および22日目に留置静脈カテーテルを通して採取した。
【0166】
血液サンプルを、予め標識されたLi-ヘパリンチューブ中に収集した。採取した全ての血液試料を1500Gで10分間遠心分離して、試料から60分以内に血漿を分離した。各血液サンプルから分離された血漿を、予め標識されたポリプロピレンクライオチューブ(AおよびBサンプル、各チューブ中約750μL)中の2つのアリコートに分割し、<-70℃で凍結した。
【0167】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿中濃度を測定するための試料を、Lablytica Life Science AB、Uppsala、Swedenにより、有効なLS-MS/MS方法の手段により分析した。
【0168】
〔データ分析〕
被験物質(4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド)のそれぞれの時点までの血漿中濃度のデータを薬物動態分析に使用した。Phoenix WinNonlin 8.1ソフトウェアの非コンパートメント解析(NCA)モジュールを用いて薬物動態解析を行い、被験物質の反復投与後の以下の薬物動態学的パラメータを決定した。
【0169】
主要評価項目:
それぞれの投与群の21日目の定常状態におけるCmax、AUC0-last、Tmax
【0170】
副次評価項目:
初回および最終投与24時間後の血漿中濃度に基づく蓄積比。
21日目の定常状態におけるCmaxおよびAUC0-lastの投与正規化。
【0171】
〔結果〕
ヒトにおける反復投与経口薬物動態試験の結果を以下の表6~表9にまとめ、図3にグラフで示す。
【0172】
結果は、再度、反復投与後の血漿中に4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドが実質的に蓄積したことを示す。
【0173】
さらに、錠剤形態の活性成分のナトリウム塩212mgを被験者に投与した場合、1日目から21日目までの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身蓄積の驚くべき実質的な(約7倍)増加があった。1日目から21日目までの4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身蓄積の約5倍の増加が、錠剤形態の活性成分のナトリウム塩424mgを投与された対象について観察された。
【0174】
活性成分のナトリウム塩200mgを含有するカプセルと比較して、錠剤形態の活性成分のナトリウム塩212mgを被験者に投与した場合には、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露の有意な(最大2倍)増加があった。
【0175】
さらに、活性成分のナトリウム塩を含有する錠剤およびカプセルは、両方とも、懸濁液中の活性成分の遊離塩基の複数回投与用量と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの驚くほど高い用量正規化血漿曝露をもたらした。
【0176】
【表6】
【0177】
【表7】
【0178】
【表8】
【0179】
【表9】
【0180】
〔参考文献〕
1. Hardie D.G, AMPK-activated protein kinase-an energy sensor that regulates all aspects of cell function. Genes Dev. 25, 1895-1908, 2011
2. Schulz E, et al., When Metabolism Rules Perfusion, AMPK-Mediated Endothelial Nitric Oxide Synthase Activation. Circulation Research. 104, 422-424, 2009
3. Hardie D.G, et. al., AMP-activated protein kinase: A Target for Drugs both Ancient and Modern. Chemistry & Biology 19, 1222-1236, 2012
4. Myers R. W, et al., Systemic pan-AMPK activator MK-8722 improves glucose homeostasis but induces cardiac hypertrophy. Science 357, 507-511, 2017
5. Cokorinos E.C, et al., Activation of Skeletal Muscle AMPK Promotes Glucose Disposal and Glucose Lowering in Non-human Primates and Mice. Cell Metab. 2017;25(5):1147-1159, 2017
6. Steneberg P, et al., PAN-AMPK activator O304 improves glucose homeostasis and microvascular perfusion in mice and type 2 diabetes patients. JCI Insight. 3(12):e99114, 2018
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8. World Medical Association, WMA Declaration of Helsinki - Ethical principles for medical research involving human subjects [website], https://www.wma.net/policiespost/wma-declaration-of-helsinki-ethical-principles-for-medical-research-involvinghuman-subjects/, (accessed 16 April 2020)
図1
図2
図3
【国際調査報告】