(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】酸化物及び非酸化物の複合溶射粉末
(51)【国際特許分類】
C23C 4/11 20160101AFI20240129BHJP
C23C 4/134 20160101ALI20240129BHJP
C23C 4/129 20160101ALI20240129BHJP
C04B 41/87 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C23C4/11
C23C4/134
C23C4/129
C04B41/87 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541954
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 US2022011982
(87)【国際公開番号】W WO2022155134
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ジンデルマン,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】バース,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】リー,フワソー
【テーマコード(参考)】
4K031
【Fターム(参考)】
4K031AA02
4K031AB02
4K031CB10
4K031CB42
4K031DA01
4K031DA04
(57)【要約】
複合溶射粉末は、異なる化学組成、粒径範囲及び形態を有する2つ以上の粉末供給原料成分を製造することによって形成され、これらの異なる特徴は異なる粉末製造プロセスから生じる。得られたコーティングは、典型的には、摩耗性シール、遮熱コーティング又は環境バリアコーティングとして機能し、改善された温度耐性を有し、現在のコーティング材料と比較してより長い時間にわたって好ましい特性を維持する。溶射コーティングは、粒径、形態及び/又は化学組成の異なる粉末画分の少なくとも1つを有する2つ以上の粉末成分からなる記載された複合粉末を使用することによって、又は記載された単一成分を少なくとも異なる形態、例えば凝集された、凝集焼結された、クラッドされた、融合破砕された、又は中空オーブン球状の粉末と同時噴霧することによって形成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶射粉末を作製する方法であって、前記方法が、
複数の粉末を調製することであって、各々の粉末が、異なる組成比又は異なる形態のうちの少なくとも1つを有する、複数の粉末を調製することと、
2つ以上の前記複数の粉末を組み合わせて複合粉末を形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記組み合わせられた2つ以上の前記複数の粉末が、少なくとも1つの主成分と、1つ以上の二次成分の組み合わせとからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つ以上の前記複数の粉末が、異なる製造プロセスを使用して調製される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも異なる粒子範囲又は異なる化学組成を有する前記2つ以上の前記複数の粉末が、ポリマー、窒化ホウ素、ベントナイト、タルク、フッ化カルシウム又はグラファイトからなる群から選択されるがこれらに限定されないディスロケーター又は一過性相と集中的に混合される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記組み合わせられた2つ以上の前記複数の粉末が、ポリエステル、窒化ホウ素又はグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つのディスロケーター又は一過性相を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記2つ以上の前記複数の粉末の少なくとも1つが、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸バリウムストロンチウム、酸化カルシウム、酸化ハフニウム、高エントロピー酸化物、酸化マグネシウム、ムライト、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つのセラミック複合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高エントロピー酸化物が、マトリックスであって、各々が前記マトリックスの5重量パーセント~35重量パーセントを構成する少なくとも3つの主要な元素を有する、マトリックスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセラミックが、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Hf、Ho、La、Nd、Lu、Pm、Pr、Sc、Sm、Tb、Tm、Y、Yb、及びそれらの混合物からなる群から選択される希土類酸化物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセラミック複合物が、10μm~180μmの粒子からなる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記溶射が、約1%~約90%の範囲の粉末空隙率を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記2つ以上の前記複数の粉末が、異なる粒子範囲、異なる形態又は異なる化学組成のうちの少なくとも1つを有し、前記組み合わせることが、前記2つ以上の前記複数の粉末を、ポリマー、窒化ホウ素、ベントナイト、タルク、フッ化カルシウム又はグラファイトからなる群から選択されるディスロケーター又は一過性相と集中的に混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
摩耗性コーティング層を形成する方法であって、前記方法が、
複数の粉末の混合物を溶射するか、又は
前記複数の粉末を同時噴霧して、
溶射中に粉末供給原料の粒子を部分的に溶融させるのに十分な温度で、基材上に前記摩耗性コーティング層を形成すること、及び
前記摩耗性コーティング層を室温に冷却することであって、前記摩耗性層が実質的に亀裂を含まない、前記摩耗性コーティング層を室温に冷却すること、
のうち少なくとも1つを含み、
前記複数の粉末が、異なる形態を有する2つの粉末を含む、方法。
【請求項13】
前記溶射することが、空気プラズマ溶射、高速フレーム溶射、又は燃焼溶射からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の粉末が、異なる粒子範囲又は異なる化学組成の少なくとも一方を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
摩耗性コーティングを形成する方法であって、前記方法が、
基材上に粉末ベースのコーティングを溶射することを含み、
前記溶射コーティングが、約5μm~8,000μmの厚さを有し、前記粉末が、前記溶射コーティングの0重量パーセント超~90重量パーセントを構成する希土類元素を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月12日に出願された米国仮出願第63/136,413号の利益及び優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
背景
1.開示の分野
例示的な実施形態は、いくつかの粉末製造方法から生じる粒径範囲、形態及び化学組成が異なる複数の粉末画分の使用に関する。特に、例示的な実施形態は、遮熱保護及び/又は環境バリア保護及び/又はクリアランス制御からの範囲であり得る機能性を示すコーティングの適用に適した化学を有する均質化粉末画分の溶射に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景情報
コーティング形態及び化学組成は、溶射コーティング用途における関連因子であり、その形態、粒度分布及び化学的性質等の粉末供給原料の出発特性に関連する。上述の粉末特性と得られるコーティング特性との間の関係は、ターボ機械の遮熱保護、環境バリア保護、並びにクリアランス制御(摩耗性)コーティング等の特定の機能に適した溶射コーティングを設計するために使用される。溶射摩耗性コーティングの例では、これらは、航空エンジン並びにガス及び蒸気タービンにおけるクリアランス制御技術として、例えばエンジンブレード先端と周囲のタービンケーシングとの間のガスの望ましくない逆流を防止するシールとして広く使用されている。航空及び固定ガスタービンのための犠牲摩耗性コーティングの使用は、ロータ構成要素とステータ構成要素との間の先端クリアランスの低減によってエンジン効率を高める手段である。適切に設計された摩耗性コーティングクリアランス制御システムは、エンジン効率を向上させるだけでなく、侵入の場合に構成要素の損傷をほとんど又は全く引き起こさない表面に回転構成要素を擦ることを可能にすることによって安全マージンも増加させる。溶射摩耗物のシール機能に加えて、これらのコーティングはまた、構成要素への熱流束を減少させることによって(遮熱コーティングの例)、又は周囲大気から基材をシールすることによって(環境バリアコーティングの場合)、ステータ構成要素が高温環境に耐えることを可能にする遮熱及び/又は環境バリア保護等の追加の機能を提供することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
例示的な実施形態は、高温環境における熱保護及び/又は環境保護及び/又はクリアランス制御の機能を提示する溶射法によって適用されるコーティングに関し、コーティングのベース材料は、異なる組成の複数のセラミック粉末及び/又は異なる粉末製造方法から生じる粒径分率及び/又は形態を含む。航空エンジン及び陸上タービンのシュラウドセクションに適用された摩耗性コーティングは、回転ブレード/フィンと周囲のエンジンステータ構造との間のクリアランスをシールするのに役立つ。クリアランスをシールすることは、ブレードを保護するために摩耗性コーティングを犠牲にすることによって漏れギャップを最小にすることに寄与し、その結果、エンジン効率及び寿命を増加させる。効率を高めるために、ガスタービンエンジンのより高い動作温度が絶えず求められている。しかしながら、動作温度が上昇するにつれて、エンジンの構成要素の高温耐久性も相応に増加しなければならない。このような高温では、セラミックベースの溶射摩耗性コーティングは焼結する傾向があり、摩擦事象の場合にブレードの損傷がより起こりやすい許容できないレベルを超える硬度の増加をもたらす。開示される発明は、いくつかの粉末製造方法及び組成物から生じる粒径範囲及び形態が異なる複数の粉末画分の使用を記載する。異なる粒子形態及びサイズ範囲の提案された組み合わせは、良好な摩耗性、固体粒子侵食に対する十分な耐性、及び時効硬化がないか又は限定された焼結に対する優れた耐性を示すコーティングを生成することが分かった。
【0005】
遮熱コーティング(TBC)は、燃焼器、高圧タービンブレード、ベーン、シュラウド等の構成要素に適用される。TBCを適用することにより、高温ガス経路構成要素の動作温度を上昇させることができ、その結果、より高いエネルギー出力及び改善されたエンジン効率をもたらすことができる。TBCによって提供される断熱は、TBCによってコーティングされた構成要素がより高い動作温度で存続することを可能にし、構成要素の耐久性を高め、エンジンの信頼性を向上させる。高温性能の著しい進歩が達成されており、従来のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)をTBC系の断熱に使用することができる。ジルコニアに添加された6~8重量パーセントのイットリアによるコーティングは、応力下での正方晶から単斜晶への相変態の結果として成長する亀裂の前縁における強靱化機構に起因して、所望の耐熱衝撃性を提供し、YSZの重要な利点はまた、より弾性的に柔軟であり、これは低いヤング率(E)をもたらす。希土類安定化ジルコニアコーティングのための最大90重量パーセントの希土類元素の使用の増加は、熱伝導率の低下をもたらし、コーティングの相変態を回避することができ、コーティングはその立方晶形態で完全に安定化される。コーティングを形成するために溶射技術によって処理される粉末材料は、様々な方法で製造される。そのような粉末材料を生成する際の目標は、良好な流動性、組成における低偏差又は偏差なし、再現性、及び製造の容易さを得ることである。得られる粉末の形態は、粉末を製造するために使用される製造プロセスに応じて異なり、それにより、得られるコーティングのコーティング微細構造及び特性が異なる。各種の粉末を用いてもよい。例えば、凝集され(Aggl.)、凝集焼結された(A&S)、中空オーブン球状の粉末(HOSP)、化学的又は物理的にクラッドされた(Clad)及び融合破砕された(F&C)粉末は、独特の粒子形態をもたらす典型的な粉末製造工程である。これらの異なる粉末製造方法から生じる粒径範囲及び形態が異なる複数の粉末画分の使用は、固有の特性を有するコーティングを生成することが分かった。
【0006】
融合破砕粉末構造を使用する場合、より高密度のコーティング構造を達成することができ、接着強度及びヤング率を増加させることができ、それによって固体粒子侵食に対するコーティング耐性を改善する。凝集焼結粉末は、微細な一次粒子から製造され、個々の粒子の化学組成及び凝集のより良好な制御を可能にする。凝集焼結粉末は、空隙率及び耐侵食性の所望のバランス、並びに効率的な堆積効率を提供するために使用される。大きな凝集体は、凝集焼結粉末から作製されたコーティングに埋め込まれており、これは、より低い熱伝導率の用途に必要な空隙率を増加させる。粗い粒径を有する凝集粒子を使用して、噴霧プロセスからの微細構造に大きな空隙率を生成し、粒子を溶融させずに残すが、粗い粒径と粉末の容易な破壊との組み合わせは、噴霧堆積効率を低下させる傾向がある。供給原料として凝集粉末を有する利点には、粒子間のより緩い結合に起因する切断からのより少ないエネルギーで分解するコーティング微細構造が含まれる。しかしながら、これはコーティングの耐侵食性に悪影響を及ぼす可能性がある。クラッド粉末は、既知の機械的及び/又は化学的クラッディングプロセスによって調製され得る。粉末材料は、結合を容易にするためのフラックス材料のみであってもよく、又はクラッド材料の機能層が所望される実施形態では、粉末材料は、粉末フラックス材料の層の下に配置された別個の層として、又は粉末フラックス材料と混合されたか、又はフラックス材料と複合粒子に組み合わされた粉末を含むことができ、溶融により表面にクラッディング材料の層が形成される。したがって、クラッド構造を最適化することは、微細構造内にランダムに分布するカラムとノジュールとの間にギャップを有することによって、より高い耐久性を有し、長期間の使用時間にわたって優れた断熱性を提供するコーティングを生成し得る。
【0007】
例示的な実施形態は、硬度、耐熱疲労性、耐熱衝撃性、耐侵食性、及び焼結耐性のより良好なバランスを有するコーティングを作製し、タービン部品の全寿命にわたって良好な摩耗性能を可能にするために、2つ以上の粉末形態と組み合わされた粒径の二峰性分布を有する粉末に関する。得られた生成物は、本明細書では成分とも呼ばれる、2つ以上の粉末又は成分又は形態を含み得る。一次成分はマトリックス形成剤であってもよく、二次成分(複数可)は、所与の用途のために得られるコーティングをカスタマイズ及び最適化するために添加される多孔性形成剤又は構造硬化剤であってもよい。
【0008】
セラミック摩耗性コーティングは、タービンエンジンの高温部分の切断性能を改善する利点を提供する。セラミックは、1000℃を超える高温に対する耐性のために有利であるが、これらの材料の一般的により高い硬度はまた、例えばニッケル超合金ベースのタービンブレード(航空宇宙エンジン又はガスのタービン部)の摩耗損傷につながる可能性がある。開示される発明の複合粉末は、摩耗性に関してコーティング特性を改善し得る異なる製造技術から生じる異なる粒子形態を使用し、これらの特性はコーティングの耐用年数にわたって維持され得る。複合粉末に加えて、ポリマー(例えば、ポリエステル、PMMA、ポリイミド、...)、固体潤滑剤(例えば、六方晶窒化ホウ素、フッ化カルシウム、グラファイト、...)及び/又は代替的な充填剤相(例えば、粘土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、...)からなる群から選択されるディスロケーター又は一過性相の集中的な混合は、コーティングマトリックス中に必要な空隙率を提供することによって、摩耗性に関してコーティング特性を更に改善し得る。
【0009】
非効率的な切断プロセスから深刻な摩耗損傷が生じる可能性があり、タービン内の過酷な摩擦接触条件下で、及び/又は溶射された摩耗性コーティングが硬すぎる場合、ブレード材料の過剰な摩擦加熱をもたらす。ブレードの損傷機構の例には、バルク塑性変形及び破壊、摩擦加熱から生じる材料の酸化、並びに極端な切削力による材料の亀裂が含まれる。
【0010】
遮熱コーティング(TBC)は、コーティングされた構成要素の断熱及び耐侵食性特性を改善し得、複合粉末を含むセラミックの使用による焼結を低減することによって、構成要素の耐用年数にわたってこれらの特性を維持し得る。本発明の複合粉末は、異なる粉末製造経路のために粒子形態が異なり、化学組成及び/又は粒度分布が異なる。一例として、タービンブレード及びタービンエンジンの他の部品は、少なくとも1000℃~1150℃の動作温度でその完全性を維持する必要があるため、遮熱コーティングされたニッケル系超合金で構成されてもよい。遮熱コーティングは、下にある合金自体と比較して、MCrAlYボンドコートと組み合わせてこれらの高温環境における腐食及び酸化に対するより大きな耐性を提供する。
【0011】
環境バリアコーティング(EBC)は、例えば高温ガス、水蒸気、及び酸素等の環境の脅威の影響からのエンジン構成要素の保護を改善する。例えば、エンジン構成要素は、セラミックマトリックス複合物から製造することができ、EBCは、SiC-SiC複合物等のセラミックマトリックス複合物(CMC)から構成されたガスタービン構成要素に適用され得る。
【0012】
例示的な実施形態は、ガスタービンエンジンのクリアランス制御用途に有用な改善された溶射粉末を含み、エンジン構成要素が、例えばガスタービンエンジンの厳しい熱環境(すなわち、1000℃以上)等の高温環境で存続することを可能にする。例示的な実施形態は、溶射によって適用されるコーティングを生成するための粉末材料を含み、粉末材料は、摩耗性、接着強度、及びヤング率等の改善された機械的特性、並びに熱伝導率、熱衝撃、及び焼結抵抗等の熱的特性を有する。例示的な実施形態は、高い堆積効率と共にこれらの特性を提供し、これは、空隙率レベル、硬度、及び結果として生じる耐侵食性のバランスを維持することを必要とし得る。
【0013】
例示的な実施形態は、異なる製造方法に起因して異なる粒子形態を有する2つ以上の粉末成分の均質化によって作製された改善された粉末を提供する。また、各々成分は、粒度分布や化学組成が異なっていてもよい。例えば、セラミック組成物、例えば、任意の単一成分の様々な種類の酸化アルミニウム(Al2O3)、アルミノケイ酸バリウムストロンチウム(BSAS;1-xBaO-xSrO-Al2O3-2SiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ハフニウム(HfO2)、高エントロピー酸化物(HEO)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミノケイ酸塩又はムライト(Al2O3-SiO2)、酸化ケイ素(SiO2-x)及び酸化ジルコニウム(ZrO2)は、0(>0)重量パーセント~90重量パーセントの範囲の希土類(RE)酸化物含有量を含み得る。REは、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Hf、Ho、La、Nd、Lu、Pm、Pr、Sc、Sm、Tb、Tm、Y、Yb又はそれらの組み合わせの酸化物を表す。
【0014】
高エントロピー酸化物(HEO)は、高い配置エントロピーS(config)を有する酸化物である。それらは、典型的には、1つ以上の酸化物部分格子を形成するために、5つ以上の異なる金属カチオン型並びに酸素を含有する。その開示全体が参照により本明細書に組み込まれるHe et al.に対する国際公開第2020/142125号A2は、高エントロピー酸化物(HEO)の組成物を開示している。異なる酸化物形成金属カチオンの少なくとも5つは、a)遷移金属:Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Ni、Cu、若しくはZnの少なくとも1つ、及び/又はランタニドLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb。Dy、Ho、Er、Yb、又はLuの少なくとも1つを含む。少なくとも5つの異なる酸化物形成金属カチオンのうちの1つはまた、アルカリ土類金属:Be、Mg、Ca、Sr、又はBaのうちの少なくとも1つを含んでもよい。高エントロピーは、3、4、又は5又はそれ以上の主要な元素を有することによって定義され、主要な元素の含有量は、5重量パーセント~35重量パーセントであり得る。
【0015】
各々の成分は、様々な製造方法、例えば、凝集された、凝集焼結された、化学的又は物理的クラッドされた、融合破砕された、及び/又は中空酸化物球状の粉末(HOSP)等から生じる、例えば、多孔質又は高密度構造を有する円筒形、フレーク状、不規則形、板状、球状、又は球状中空等の異なる形態を有し得る。例示的な実施形態による方法は、最適なコーティングのためにポリマー結合剤を限定的に又は含まないことを可能にする形態でこれらの成分を提供することと、1000℃以上の高温に曝露した後でも維持される硬度、空隙率レベル及び耐侵食性等の特性を有する溶射コーティングを生成するための結果として生じる粉末を形成することとを含む。
【0016】
例示的な実施形態は、複数の粉末を集中的に混合又は同時噴霧することによって、例えば1000℃以上の範囲のより高い動作温度用途のための成分ベースの溶射コーティングの機能性を改善する。一例として、摩耗性シールは、ロータとステータ構成要素との間のクリアランスを低減するためにターボ機械において使用される。クリアランスを低減することは、タービンエンジンの効率を改善し、壊滅的なブレード/エンジンケースの接触摩擦の可能性を低減又は排除することによって燃料消費を低減することができる。クリアランス制御シールは、回転部が摩耗性コーティングと擦れ合う状態でエンジンの固定部に摩耗性コーティングを施すことによって製造される。
【0017】
例示的な実施形態は、単一タイプの形態を含む粉末材料と比較して、高温用途のための新世代のセラミック材料及び改善されたコーティング性能を開発するための組成物、粉末構造及び粉末製造方法を含む。用途の一例として、航空宇宙産業における新世代のエンジンに必要な最低温度及び機能安定性は、1000℃以上の範囲である。
【0018】
例示的な実施形態は、エンジン内の回転部品が設計意図又は動作要件の結果としてコーティングと接触する可能性があるクリアランス制御用途のための摩耗性コーティングを生成するためのセラミックベースの溶射粉末を含む。これらのコーティングは、シール領域にクリアランス制御を提供することによってガス経路効率を最大にしながら、回転部品への摩耗を最小限に抑えるように設計されている。そのようなコーティングは、マトリックス中の高い希土類酸化物含有量を有する融合破砕粉末成分と組み合わされた凝集粉末成分の製造を介して、軟質で焼結耐性のある材料の所望の特性を併せ持つ。コーティングの別の例は、凝集粉末成分を、その切断性能、その温度耐性及びその耐侵食性等の重要な機能の間の適切なバランスを示すコーティング構造を示す凝集焼結粉末成分と組み合わせることができる。
【0019】
実施形態は、溶射粉末を作製する方法に関する。該方法は、複数の粉末を調製することであって、各々の粉末が、異なる組成比又は異なる形態のうちの少なくとも1つを有する、複数の粉末を調製することと、2つ以上の複数の粉末を組み合わせて複合粉末を形成することと、を含む。
【0020】
実施形態では、組み合わせられた2つ以上の複数の粉末は、少なくとも1つの主成分と、1つ以上の二次成分の組み合わせとからなる群から選択される材料を含む。少なくとも異なる粒子範囲又は異なる化学組成を有する2つ以上の複数の粉末は、ポリマー、窒化ホウ素、ベントナイト、タルク、フッ化カルシウム又はグラファイトからなる群から選択されるがこれらに限定されないディスロケーター又は一過性相と集中的に混合される。更に、組み合わせられた2つ以上の複数の粉末は、ポリエステル、窒化ホウ素又はグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つのディスロケーター又は一過性相を更に含む。
【0021】
実施形態によれば、2つ以上の複数の粉末の少なくとも1つは、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸バリウムストロンチウム、酸化カルシウム、酸化ハフニウム、高エントロピー酸化物、酸化マグネシウム、ムライト、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つのセラミック複合物を含む。更に、高エントロピー酸化物は、各々がマトリックスの5重量パーセント~35重量パーセントを構成する少なくとも3つの主要な元素を有するマトリックスを含むことができる。少なくとも1つのセラミックは、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Hf、Ho、La、Nd、Lu、Pm、Pr、Sc、Sm、Tb、Tm、Y、Yb、及びそれらの混合物からなる群から選択される希土類酸化物を含み得る。さらに、少なくとも1つのセラミック複合物は、10μm~180μmの粒子からなる。
【0022】
他の実施形態では、溶射は、約1%~約90%の範囲の粉末空隙率を含むことができる。
【0023】
実施形態では、2つ以上の複数の粉末が、異なる粒子範囲、異なる形態又は異なる化学組成のうちの少なくとも1つを有し、組み合わせることが、2つ以上の複数の粉末を、ポリマー、窒化ホウ素、ベントナイト、タルク、フッ化カルシウム又はグラファイトからなる群から選択されるディスロケーター又は一過性相と集中的に混合することを含む。
【0024】
実施形態は、摩耗性コーティング層を形成する方法に関する。該方法は、複数の粉末の混合物を溶射するか、又は複数の粉末を同時噴霧して、溶射中に粉末供給原料の粒子を部分的に溶融させるのに十分な温度で、基材上に摩耗性コーティング層を形成すること、及び摩耗性コーティング層を室温に冷却することであって、摩耗性層が実質的に亀裂を含まない、摩耗性コーティング層を室温に冷却すること、のうち少なくとも1つを含む。複数の粉末は、異なる形態を有する2つの粉末を含む。
【0025】
実施形態によれば、溶射は、空気プラズマ溶射、高速フレーム溶射、又は燃焼溶射からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0026】
更に他の実施形態では、複数の粉末は、異なる粒子範囲又は異なる化学組成の少なくとも一方を有する。
【0027】
実施形態は、摩耗性コーティングを形成する方法に関する。該方法は、基材上に粉末ベースのコーティングを溶射することを含み、溶射コーティングは、約5μm~8,000μmの厚さを有し、粉末は、溶射コーティングの0重量パーセント超~90重量パーセントを構成する希土類元素を含む。
【0028】
本開示は、本開示の好ましい実施形態の非限定的な例として、言及された複数の図面を参照して、以下の詳細な説明で更に説明され、図面のいくつかの図を通して、同様の文字は同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、言及された例示的な実施形態による、いくつかの製造方法から生じる異なる形態を有する粉末の組み合わせを示す。
【
図2】
図2は、言及された例示的な実施形態による、凝集粒子及び融合破砕粒子を含むコーティング微細構造を示す。
【
図3】
図3は、上述の例示的な実施形態による、凝集粒子及びHOSP粒子を含むコーティング微細構造を示す図である。
【
図4】
図4は、上述の例示的な実施形態による、凝集粒子及び凝集焼結粒子を含むコーティング微細構造を示す図である。
【
図5】
図5は、上述の例示的な実施形態による、凝集粒子及び機械的又は化学的にクラッドされた粒子を含むコーティング微細構造を示す図である。
【
図6】
図6は、様々な例示的な実施形態による、噴霧されたままのコーティングの選択的な微細構造及び機械的特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本開示の様々な態様、実施形態及び/又は特定の特徴のうちの1つ以上を通じて、本発明の説明のセクションで定義された利点のうちの1つ以上を引き出すことが意図されている。
【0031】
例示的な実施形態では、溶射用の粉末は、5μm~180μmのサイズを有してもよく、各々の粉末粒子は、i)0(>0)重量パーセント超~90重量パーセントのイットリア(又は他の特定の希土類酸化物)及び残りのジルコニア、ii)>0重量パーセント~90重量パーセントのイッテルビア(又は他の特定の希土類酸化物)及びケイ酸塩の残部、又はiii)各々がマトリックスの5重量パーセント~35重量パーセントを含む少なくとも3つの主酸化物と、不可避不純物(1%未満)とを含む高エントロピー酸化物マトリックスから本質的になる。
【0032】
例示的な実施形態では、本質的に特定の希土類酸化物からなる粉末粒子を、上記のイットリア又はイッテルビア粉末粒子の代わりに用いることができる。このような粉末粒子では、希土類酸化物は、>0重量パーセント~90重量パーセントの量であってもよい。希土類酸化物は、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Hf、Ho、La、Nd、Lu、Pm、Pr、Sc、Sm、Tb、Tm、Y、及びYb、並びにそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0033】
実施形態では、複数の粉末を利用してもよく、各々の粉末は、様々な製造方法から生じる多孔質又は高密度構造を有する円筒状、フレーク状、不規則、板状、球状、球状中空等の様々な製造方法から生じる異なる形態を有し得て、例えば、凝集された、凝集焼結された、化学的又は物理的にクラッドされた、融合破砕された中空酸化物球状の粉末である。
【0034】
図1は、様々な例示的な実施形態による、様々な他の種類の粉末とブレンドされた粉末を示す。
図1には、いくつかの種類の構成要素の組み合わせが示されている。第1の例として、第1の成分は、第2の成分を用いて製造された凝集粒子であってもよく、これは融合及び破砕された(F&C)粒子である。第2の例は、凝集粒子の第1の成分と、中空酸化物球状粒子(HOSP)の第2の成分とを含む。第3例は、凝集焼結(A&S)粒子の第1の成分と、凝集粒子の第2の成分とを含む。第4の例は、凝集焼結(A&S)粒子の第1の成分と、機械的又は化学的にクラッドされた粒子の第2の成分とを含む。当然のことながら、上記の組み合わせは単なる例示であり、実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、凝集したF&C、HOSP、A&S及び機械的又は化学的クラッド粒子の他の任意の組み合わせを第1の成分とし、凝集したF&C、HOSP、A&S及び機械的又は化学的クラッド粒子の他の任意の組み合わせを第2の成分とすることができる。
【0035】
図2は、様々な例示的な実施形態による、融合破砕された粒子と組み合わされた凝集粒子からなるコーティング構造を示す。融合破砕粒子は、融合した固体塊から形成され、次いで適切なサイズに破砕される。融合及び破砕技術は、サイズ、形状、化学的性質及び靱性が一致する粉末を生成する。例示的な実施形態では、複合粉末は、凝集粒子からなる第1の成分と、F&C粒子からなる第2の成分とを含む。
図2に示す例示的な実施形態では、粒子の一部は未溶融のままであり、得られる粒子の形状は局所的な応力によって変化するが、F&C粉末形成プロセスから生じる厚いスプラットの量を含む。
【0036】
図3は、様々な例示的な実施形態による、凝集粒子及びHOSP粒子からなるコーティング構造を示す。例示的な実施形態では、複合粉末混合物は、凝集粒子の第1の成分及びHOSP粒子の第2の成分を含む。この例では、HOSP成分は多孔性形成剤と見なすことができ、凝集成分はマトリックスとして作用する。
【0037】
図4は、様々な例示的な実施形態による、凝集粒子及び凝集焼結粒子からなるコーティング構造を示す。例示的な実施形態では、複合粉末は、凝集粒子の第1の成分及びA&S粒子の第2の成分を含む。この例では、A&S成分は多孔性形成剤と見なすことができ、凝集成分はマトリックスとして作用する。
【0038】
図5は、様々な例示的な実施形態による、凝集粒子及び機械的又は化学的にクラッドされた粒子からなるコーティング構造を示す。例示的な実施形態では、複合粉末は、凝集粒子の第1の成分と、機械的又は化学的にクラッドされた粒子の第2の成分とを含む。この例では、機械的又は化学的にクラッドされた成分は多孔性形成剤と見なすことができ、凝集した成分はマトリックスとして作用する。
【0039】
以下の表1は、2つ以上の成分を含む実施形態における可能な組み合わせの例を含む。
【0040】
【0041】
以下の表2は、例示的な実施形態による目的の典型的な粉末化学を開示する:希土類酸化物(RE)は、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Hf、Ho、La、Nd、Lu、Pm、Pr、Sc、Sm、Tb、Tm、Y、Ybの酸化物又はそれらの組み合わせを表す。
【0042】
【0043】
例示的な実施形態では、噴霧乾燥凝集粉末を生成する方法は、水中で微粒子を有機結合剤及び懸濁剤と混合してスラリーを形成することによって、アルミナ、BSAS、CaO、ハフニア、HEO、MgO、ムライト、シリカ及び/又はジルコニアの微粒子(平均粒径が約10μm未満)を調製することを含む。次いで、スラリーを噴霧乾燥して凝集粒子を生成し、次いで、様々な溶射技術を使用して適用してエンジン部品をコーティングすることができる。凝集体は、粒子のブレンド、取り扱い及び/又は供給中に分解しないように実質的に脆弱でなくてもよい。例示的な実施形態では、球形を有する凝集体は、低い表面積を示し、これは、異なる形態を有する他の粉末供給原料成分と組み合わせると、摩擦を低減し、流動性を改善し、粘度を低下させる。
【0044】
別個のアルミナ、BSAS、CaO、ハフニア、HEO、MgO、ムライト、シリカ及び/又はジルコニア原料を使用すると、粉末粒子の化学的不均一性が生じる可能性がある。相安定性を達成するために、最終コーティングは、別個のアルミナ、BSAS、CaO、ハフニア、HEO、MgO、ムライト、シリカ及び/又はジルコニアの合金を含んでもよい。噴霧乾燥粉末の場合、合金化は、粉末製造プロセス中又は溶射プロセス中に行われ得る。溶射中に粉末を合金化する必要性は、溶射前に合金化工程を実施することによって低減又は排除することができる。従来の技術は、噴霧乾燥粉末のプラズマ高密度化又は焼結に依存している。焼結工程は、個々の一次粒子が互いに成長して相互接続ネットワークを形成すると、粉末を硬化及び強化する。得られた焼結体の相互接続性は、密度及び凝集強度の増加をもたらす。凝集粉末粒子及び凝集焼結粉末粒子は、通常、実質的に球形の形状であり、微細に分布した内部粒子空隙率を有する。
【0045】
例示的な実施形態では、予備合金化アルミナ、BSAS、CaO、ハフニア、HEO、MgO、ムライト、シリカ及び/又はジルコニアの出発材料から製造された噴霧乾燥粉末は、スラリーの製造中又は噴霧乾燥製造工程中に、及び粉末を調製するための出発材料として広い粒度分布が使用される場合でさえ生じ得る変動にもかかわらず、実質的に均一な粉末を生成する。例示的な実施形態では、粉末は、溶射前又は溶射中に合金化されなくてもよい。このようなプラズマ緻密化粉末の1つは、現在、HOSPとして入手可能である。このような前処理は、溶射プロセス中の粒子の一貫性のない処理によって引き起こされる合金化の変動を排除する。前処理はまた、溶射前の粉末破壊を低減するより構造的に安定な粉末をもたらし、噴霧中の粉末の適切な合金化を防止することができる。更に、粒子は、得られたコーティング構造に大きな孔を生成する中空球に変換される。
【0046】
噴霧乾燥及び前処理された粉末の代替として、融合破砕粉末が、TBC用途のための熱溶射の分野で使用されてきた。例えば、個々のイットリア粉末及びジルコニア粉末を、誘導アーク又は他のプロセスを使用して混合及び融合させて、融合材料のブリケットを製造する。次いで、ブリケットを粉砕して、一般に11μm~150μmの溶射に適した所望のサイズの粉末を生成する。F&C粉末は、角状及び不規則な形態を示し得る。結果として、これらの粉末の使用は、一貫性のない粉末供給をもたらし得る。更に、粉末粒子は、一般に、より高密度で溶融しにくく、その結果、溶射中の粒子の不十分な加熱のために堆積効率が低下する。得られたコーティングは、凝集粉末、凝集焼結粉末、及びHOSP等の内部空隙率を有する粉末から作製されたコーティングと比較して、空隙率が低くなり得る。
【0047】
図6は、様々な例示的な実施形態による、噴霧されたままのコーティングの選択的な微細構造及び機械的特性を示す。
図6は、記載された以下の5つのタイプの粉末形態のいずれか1つからの第1の成分及び第2の成分の様々な組み合わせを示す:HOSP、A&S粒子、凝集粒子、化学的又は物理的にクラッドされた粒子及びF&C粒子。更に、
図6は、例示的な配合比、並びに例示的な平均硬度値範囲(AHV)(単位:HR 15N)及び例示的な平均耐侵食性値範囲(AEV)(単位:s/mil)を示す。
【0048】
図6に示すように、第1の成分は>0~90重量%(RE)SZとすることができ、第2の成分は>0~90重量%(RE)SZとすることもできる。更に、第1の成分RE酸化物は、第2の成分RE酸化物と同じであってもよく、又は第2の成分RE酸化物と異なっていてもよい。第1の成分は、5~60(RE)SZ、15~25(RE)SZ、45~55(RE)SZ又は5~15(RE)SZの好ましい化学範囲を有することができ、第2の成分は、5~60(RE)SZ、15~25(RE)SZ、45~55(RE)SZ又は5~15(RE)SZの好ましい化学範囲を有することができ、第1及び第2の成分の化学は同じ又は異なることにも留意されたい。第1及び第2の成分の例示的なRE酸化物及び/又は化学を例示的な表3に示す。
【0049】
【0050】
表3は、使用されるRE酸化物によるいくつかの化学的範囲を示しているが、この例示的な列挙は、当然ながら、実施形態による第1及び第2の成分の様々なRE酸化物及び/又は化学的性質についてのすべての可能な組み合わせを含むように網羅的ではない。
【0051】
例示的な実施形態では、材料を基材に適用することができるいくつかの例示的な方法がある。例示的な一実施形態では、粉末供給原料は、エンジンシュラウド又はブレード等の基材上に溶射される2つ以上の成分から構成されてもよい。別の実施形態では、2つ以上の成分からなる粉末供給原料を、エンジンシュラウド又はブレード等の基材上に同時噴霧する、すなわち同時に適用することができる。「同時噴霧」プロセスの間、2つの粉末成分が同時に別々に適用される。
【0052】
非限定的な例として、上述の粉末は、異なる形態、サイズ範囲及び組成を有する複数の成分から製造される。上記の摩耗性粉末は、例えば、基材としてのHASTELLOY Xの上のAMDRY995C又はAMDRY962ボンドコートの層上に堆積される。すべてのボンドコートは、好ましくは厚さが100μm~200μmであり、コーティングは最大2.0mmの総コーティング厚まで噴霧される。各々の粉末タイプについて、クーポン(coupons)を、噴霧されたままの状態及び大気中で1000℃に24時間暴露した後の硬度、金属組織学、浸食試験及び摩耗性について調製する。市販のコーティング製品と比較してコーティングに対して行われた異なる試験は、そのような実験的粉末組成物が、ベンチマークされたレガシー製品の特性よりも実質的に改善された特性を有するコーティングを製造することを可能にすることを示している。硬度及び耐侵食性は、噴霧されたままの状態で所望の動作ウィンドウに合わせることができ、焼結の影響は排除された。
【0053】
本明細書に記載の実施形態の例示は、様々な実施形態の一般的な理解を提供することを意図している。例示は、本明細書に記載の構造又は方法を利用する装置及びシステムの要素及び特徴の全体の完全な説明として役立つことを意図するものではない。多くの他の実施形態は、本開示を検討すれば当業者には明らかであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更を行うことができるように、本開示から他の実施形態を利用及び導出することができる。更に、図は単に代表的なものであり、縮尺通りに描かれていない場合がある。例示内の特定の割合は誇張されている場合があるが、他の割合は最小限に抑えられている場合がある。したがって、本開示及び図面は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきである。
【0054】
本開示の1つ以上の実施形態は、単に便宜上、及び本出願の範囲を任意の特定の発明又は発明概念に自発的に限定することを意図することなく、「発明」という用語によって個々に及び/又は集合的に本明細書で言及され得る。更に、特定の実施形態を本明細書で図示及び説明したが、同じ又は同様の目的を達成するように設計された任意の後続の構成が、示された特定の実施形態の代わりに使用されてもよいことを理解されたい。本開示は、様々な実施形態のありとあらゆるその後の適合又は変形を網羅することを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、及び本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態は、説明を検討すれば当業者には明らかであろう。
【0055】
本開示の要約は、特許請求の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないことを理解して提出される。更に、前述の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴を一緒にグループ化するか、又は単一の実施形態で説明することができる。本開示は、特許請求される実施形態が各々の請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の主題は、開示された実施形態のいずれかの特徴のすべてよりも少ないものを対象とすることができる。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、各々の請求項は、別個に特許請求される主題を定義するものとして独立している。
【0056】
上記で開示された主題は、限定ではなく例示と見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に入るすべてのそのような修正、強化、及び他の実施形態を網羅することを意図している。したがって、法律によって許容される最大限の範囲で、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限又は限定されるべきではない。
【国際調査報告】