IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-505153放射線造影特性を有するヨウ素化合物
<>
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図1A
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図1B
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図2A
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図2B
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図3
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図4
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図5
  • 特表-放射線造影特性を有するヨウ素化合物 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(54)【発明の名称】放射線造影特性を有するヨウ素化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/04 20060101AFI20240129BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 29/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 31/08 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 27/28 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20240129BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20240129BHJP
   C07C 237/46 20060101ALI20240129BHJP
   C08F 8/18 20060101ALI20240129BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20240129BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20240129BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A61K49/04 210
A61L29/08
A61L29/00
A61L31/00
A61L31/08
A61L31/04
A61L29/08 100
A61L29/04
A61L27/28
A61L27/34
A61L31/10
A61L27/00
A61L27/14
C07C237/46
C08F8/18
A61F2/82
A61M25/09
A61M25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541975
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022011920
(87)【国際公開番号】W WO2022155112
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/136,332
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】タン、イーチン
(72)【発明者】
【氏名】クーダ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】パリージ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アシュラフィ、クーロシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス、ショーン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、カリー
【テーマコード(参考)】
4C081
4C085
4C267
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4C081AB13
4C081AC07
4C081AC08
4C081AC10
4C081BB03
4C081CA15
4C081CE11
4C085HH03
4C085HH05
4C267AA01
4C267AA06
4C267AA28
4C267AA41
4C267BB43
4C267BB63
4C267GG34
4H006AA01
4H006AB20
4J100AD02P
4J100BB05H
4J100BC43H
4J100BD12H
4J100CA31
4J100HA43
4J100HA56
4J100HC04
4J100JA53
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含むヨウ素化合物であって、2,4,6-トリヨードベンゼン部分の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つが、1つ以上のヨードフェニル含有基を含むヨウ素化置換基によって置換されているヨウ素化合物に関する。本開示はまた、そのようなヨウ素化合物を含有する組成物およびそのようなヨウ素化合物を作製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含む1つ以上のヨウ素化合物を含む組成物であって、前記2,4,6-トリヨードベンゼン部分の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つが、1つ以上のヨードフェニル含有基を含むヨウ素化置換基によって置換されている、組成物。
【請求項2】
前記ヨウ素化合物は1つまたは2つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含み、前記2,4,6-トリヨードベンゼン部分の各々の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つが、1つ以上のヨードフェニル含有基を含むヨウ素化置換基によって置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のヨードフェニル含有基が、モノヨードフェニル含有基、ジヨードフェニル含有基、トリヨードフェニル含有基、テトラヨードフェニル含有基、またはペンタヨードフェニル含有基のうちの1つ以上から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のヨードフェニル含有基が、ヨードフェニルオキシ基、ヨードフェニルカルボニルオキシ基、または環状アセタール基もしくはカルバメート基を介して結合したヨードフェニル基から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ヨウ素化置換基は、C~Cアルキル水素が(a)1つ以上のヨードフェニル含有基および(b)0、1つ、または複数のヒドロキシル基によって置換されているC~Cアルキル-アミノ基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ヨウ素化置換基は、C~Cアルキル水素が(a)1つ以上のヨードフェニル含有基および(b)0、1つ、または複数のヒドロキシル基によって置換されているC~Cアルキル-アミノカルボニル基またはC~Cアルキルカルボニルアミノ基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ヒドロキシル基とヨードフェニル含有基とのモル比が、0:1~10:1の範囲である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマーをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
10~1000ハンスフィールド単位(HU)の範囲の放射線不透過性を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
5~40重量%の範囲の量のヨウ素、または50~900mgI/cmの範囲の量のヨウ素を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物を含む医療用品。
【請求項12】
(a)少なくとも1つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含む少なくとも1つの化合物であって、前記2,4,6-トリヨードベンゼン部分の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つがポリヒドロキシル化置換基によって置換されている化合物を、(b)式XI、式XII、または式XIX
【化1】

(式中、nは1、2、3、4、または5であり、R81は-H、-F、-Cl、-Br、-I、無水物、-OH、イミダゾリド、またはO-アシルイソ尿素から選択され、R70は-HまたはC~Cアルキルであり、mは0、1、2、3、4、または5であり、mが0であるときXは-ONaであり、mが1、2、3、4、または5であるときXは-F、-Cl、-Br、または-Iである。)
の化合物と、エーテル、エステル、環状アセタール、またはヘミアセタールから選択される部分を含む結合が形成される条件下で反応させることを含む、方法。
【請求項13】
エステル含有結合がカルボジイミドカップリングによって形成され、エーテル含有結合がウィリアムソン合成によって形成され、または環状アセタール含有結合もしくはヘミアセタールがアルデヒドもしくはケトンのアセタール化によって形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリヒドロキシル化置換基がポリヒドロキシル化C~Cアルキル基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの化合物が、以下:
【化2】

【化3】

から選択される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の態様の中でも、本開示は、放射線造影特性を有するヨウ素化合物、そのようなヨウ素化合物を作製する方法、およびそのようなヨウ素化合物を含有する医療用品に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線不透過性増強剤としての金属材料の使用に取って代わることができる、医療装置およびインプラントを含む医療用品に添加することができる新しいタイプの放射線不透過性増強剤が引き続き必要とされている。特定の例として、液体塞栓製剤に使用されるタンタルなどの金属放射線不透過性添加剤は、ストリークアーチファクトを生成するとともに隣接する組織または器官の解像度および構造の詳細を強く妨げるビームハードニングの制限を受ける。医療用ポリマーに添加してそれらをX線画像化下で放射線不透過性にすることができる化合物は、そのような化合物が、(i)ポリマーの物質特性に著しい悪影響を及ぼさず、(ii)望ましくない画像化アーチファクトを引き起こさず、(iii)処理を容易にするために溶媒に溶解させるかまたはポリマー溶融物に混合することができ、および/または(iv)ポリマーから浸出しないかまたは使用中に著しい分解を受けない場合、非常に望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ヨウ素などの放射線不透過性部分、ならびに化合物が混合される様々な物質との可溶化、混合、および/または相溶化を増加させる追加の化学基を含有する有機ヨウ素化合物のファミリーに関する。様々な実施形態では、ヨウ素化合物は、それらが混合される他の物質中の親水性基との相互作用を増強するヒドロキシル基を含有する。これは、化合物と物質との間の相溶性を援助でき、向上した性能をもたらす。これらの化合物はまた、いくつかの用途が電気伝導性および/または強磁性伝導性を最小化および/または排除することを必要とする場合、金属の代わりに使用される可能性を有する。
【0004】
様々な態様では、本開示は、少なくとも1つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含むヨウ素化合物であって、2,4,6-トリヨードベンゼン部分の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つが、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のヨードフェニル含有基を含むヨウ素化置換基によって置換されているヨウ素化合物に関する(ヨードフェニル含有基は、フェニル基上にヨウ素原子置換のみを含み、フェニルの水素原子の代わりに1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのヨウ素原子を有してもよい)。
【0005】
いくつかの実施形態では、ヨードフェニル含有基は、モノ-ヨードフェニル含有基、ジ-ヨードフェニル含有基、トリ-ヨードフェニル含有基、テトラ-ヨードフェニル含有基、またはペンタ-ヨードフェニル含有基のうちの1つ以上から選択され得る。
【0006】
上述の態様および実施形態と併せて使用することができるいくつかの実施形態では、ヨードフェニル含有基は、ヨードフェニルオキシ基、ヨードフェニルカルボニルオキシ基、または環状アセタール基もしくはカルバメート基を介して結合したヨードフェニル基から選択され得る。
【0007】
上述の態様および実施形態と併せて使用することができるいくつかの実施形態では、ヨウ素化置換基は、C~Cアルキル水素が(a)1つ以上のヨードフェニル含有基および(b)0、1つ、または複数のヒドロキシル基によって置換されているC~Cアルキル-アミノ基またはC~Cアルキル-カルボニル基を含む。より特定の実施形態では、ヨウ素化置換基は、C~C-アルキル水素が(a)1つ以上のヨードフェニル含有基および(b)0、1つ、または複数のヒドロキシル基によって置換されているC~Cアルキル-アミノカルボニル基またはC~C-アルキル-カルボニルアミノ基を含む。特定の実施形態では、C~Cアルキルは、Cアルキルである。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、式I:
【0009】
【化1】
【0010】
のヨウ素化合物に関する。式中、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25の各々は、R20、R21、R22、R23、R24、およびR25の少なくとも1つが、式II、式III、式X:
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、mは0、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上であり、nは1、2、3、4、または5であり、R70はHまたはC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル)、好ましくはHまたはC~Cアルキルである)の基から選択されるR30であるという条件で、HおよびR30から独立して選択されるか、または
式中、R20+R21、R22+R23、およびR24+R25の少なくとも1つは、一緒になって、式IV:
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)の基を形成し、任意の非環化置換基R20、R21、R22、R23、R24、およびR25は、Hであり、この場合、
【0015】
【化4】
【0016】
基は、窒素原子の少なくとも1つに結合される。式Iの化合物は、(a)1、2、3、4、5、または6つのヨードフェニル含有-OR30基および(b)0、1、2、3、4、または5つのヒドロキシル基を集合的に含有し得る、2つのCアルキル-アミノカルボニル基および1つのCアルキル-アミノ基を含有することに留意されたい。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、式V:
【0018】
【化5】
【0019】
のヨウ素化合物に関する。式中、R31、R32、R33、R34、およびR35の各々は、R31、R32、R33、R34、およびR35の少なくとも1つが上で定義されるR30であるという条件で、HおよびR30から独立して選択されるか、または
式中、R31+R32およびR34+R35の少なくとも1つは、一緒になって、式IV:
【0020】
【化6】
【0021】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)の基を形成し、任意の非環化置換基R31、R32、R33、R34、およびR35は、Hである。
式Vの化合物は、(a)1、2、3、4、または5つのヨードフェニル含有-OR30基および(b)0、1、2、3、または4つのヒドロキシル基を集合的に含有し得る、2つのCアルキル-アミノカルボニル基および1つのCアルキル-カルボニルアミノ基を含有することに留意されたい。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、式VI:
【0023】
【化7】
【0024】
のヨウ素化合物に関する。式中、R41、R42、R43、およびR44の各々は、R41、R42、R43、およびR44の少なくとも1つが上で定義されるR30であるという条件で、HおよびR30から独立して選択されるか、または
式中、R41+R42およびR43+R44の少なくとも1つは一緒になって、式IV:
【0025】
【化8】
【0026】
(式中、nは1、2、3、4、または5である)の基を形成し、任意の非環化置換基R41、R42、R43、およびR44はHであり、この場合、
【0027】
【化9】
【0028】
基は窒素原子の少なくとも1つに結合される。
いくつかの実施形態では、本開示は、式VII:
【0029】
【化10】
【0030】
のヨウ素化合物に関する。式中、R51、R52、R53、R54、R55、およびR56の各々は、R41、R42、R43、およびR44の少なくとも1つが上で定義されるR30であるという条件で、HおよびR30から独立して選択されるか、または
式中、R51+R52およびR53+R54の少なくとも1つは、一緒になって、式IV:
【0031】
【化11】
【0032】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)の基を形成し、任意の非環化置換基R51、R52、R53、R54、R55、およびR56は、Hであり、この場合、
【0033】
【化12】
【0034】
基は、窒素原子の少なくとも1つに結合される。
いくつかの実施形態では、本開示は、式VIII:
【0035】
【化13】
【0036】
のヨウ素化合物に関する。式中、R61、R62、R63、R64、R65、およびR66の各々は、R61、R62、R63、R64、R65、およびR66の少なくとも1つが上で定義されるR30であるという条件で、HおよびR30から独立して選択されるか、または
式中、R61+R62、R63+R64、およびR65+R66の少なくとも1つは、一緒になって、式IV:
【0037】
【化14】
【0038】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)の基を形成し、任意の非環化置換基R61、R62、R63、R64、R65、およびR66は、Hであり、この場合、
【0039】
【化15】
【0040】
基は、窒素原子の少なくとも1つに結合される。
いくつかの実施形態では、本開示は、式IX
【0041】
【化16】
【0042】
のヨウ素化合物に関する。式中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、およびR79の各々は、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、およびR79の少なくとも1つが上で定義されるR30であるという条件で、HおよびR30から独立して選択されるか、または
式中、R71+R72、R73+R74、R75+R76、およびR77+R78の少なくとも1つは、一緒になって、式IV:
【0043】
【化17】
【0044】
(式中、nは、1、2、3、4、または5である)の基を形成し、任意の非環化置換基R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、およびR78は、Hであり、この場合、
【0045】
【化18】
【0046】
基は、窒素原子の少なくとも1つに結合される。
上記の構造のいずれにおいても、nは1、2、3、4、または5であってもよいが、典型的には1、2、3、または4であり、より典型的には3または4である。
【0047】
上記構造のいずれにおいても、mは0、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上でよく、より典型的には0、1、または2であってもよい。
いくつかの実施形態では、本開示のヨウ素化合物中のヒドロキシル基とヨードフェニル含有基とのモル比は、0:1~10:1以上の範囲であってもよく、例えば、いくつかの場合において、0:1~0.1:1~0.2:1~0.5:1~1:1~2:1~5:1~10:1の範囲であってもよい。
【0048】
さらなる態様では、本開示は、上述の態様および実施形態のいずれかによる1つ以上のヨウ素化合物を含む、1つ以上のヨウ素化合物を含む組成物に関する。
様々な実施形態では、そのような組成物は、(a)上述の態様および実施形態のいずれかによる1つ以上のヨウ素化合物と、(b)少なくとも1つのポリマーとを含む。このような組成物には、液体組成物および固体組成物が含まれる。
【0049】
特定の実施形態では、少なくとも1つのポリマーは親水性ポリマーである。特定の実施形態では、少なくとも1つのポリマーは疎水性ポリマーである。
本開示の組成物における使用のための親水性ポリマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イミド、アミド、およびエステル単位を含む繰り返し親水性骨格単位を有するホモポリマーおよびコポリマー、ならびに以下のヒドロキシル基、カルボン酸基およびその塩、カルボン酸エステル基、アミノ基、アミド基、スルホン酸基およびその塩、リン酸基、およびチオール基から選択される1つ以上のペンダント基を含む繰り返し単位を有するホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0050】
本開示の組成物において使用するためのポリマーとしては、とりわけ、ポリビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドンホモポリマーおよびコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)ポリマーおよびコポリマー(例えば、PEO-PPO-PEOブロックコポリマーなどのポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)コポリマー)、ポリオキサゾリンホモポリマーおよびコポリマー、ポリスルホン酸ホモポリマー、コポリマーおよびその塩、ポリアクリル酸ホモポリマー、コポリマーおよびその塩、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)ホモポリマーおよびコポリマー、ポリメタクリル酸ホモポリマー、コポリマーおよびその塩、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)ホモポリマーおよびコポリマー、ポリアミドブロックコポリマーを含むポリアミドホモポリマーおよびコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリルアミド)ホモポリマーおよびコポリマーを含むポリアクリルアミドホモポリマーおよびコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)ホモポリマーおよびコポリマーを含むポリメタクリルアミドホモポリマーおよびコポリマー、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、キトサン、アルギン酸塩、ゼラチン、多糖類ガム、例えば、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、ローカスビーンガム(locus bean gum)、およびアラビアガムが挙げられる。
【0051】
また、本開示の組成物における使用のためのポリマーとしては、とりわけ、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエンなどのホモポリマーおよびコポリマーを含むポリオレフィンホモポリマーおよびコポリマー、ポリ塩化ビニルホモポリマーおよびコポリマー、ポリシロキサンホモポリマーおよびコポリマー、ポリスルホンホモポリマーおよびコポリマー、エチルアクリル酸塩、プロピルアクリル酸塩、ブチルアクリル酸などのホモポリマーおよびコポリマーを含むアクリル酸エステルホモポリマーおよびコポリマー、メチルメタクリル酸塩、エチルメタリル酸塩、プロピルメタクリル酸塩、ブチルメタクリル酸塩などのホモポリマーおよびコポリマーを含むメタクリル酸エステルホモポリマーおよびコポリマー、ポリスチレンホモポリマーおよびコポリマー、フッ素化ホモポリマーおよびコポリマー、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)(ABS)を含むポリアクリロニトリルホモポリマーおよびコポリマー、ポリイミドホモポリマーおよびコポリマー、ポリカーボネートホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタンホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートならびにラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンのホモポリマーおよびコポリマーを含むポリエステルホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0052】
本開示による組成物は、例えば、10~10000ハンスフィールド単位(HU)以上の範囲、例えば、10HU~25HU~50HU~100HU~250HU~500HU~1000HU~2500HU~5000HU~10000HUの範囲の放射線不透過性を有し得る。
【0053】
本開示による組成物は、ある範囲のヨウ素含有量を有し得る。いくつかの実施形態では、本開示による組成物は、1~80重量%、典型的には5~40重量%、例えば、10~30重量%または15~25重量%の範囲の量のヨウ素を有し得る。いくつかの実施形態では、本開示による組成物は、2~1200mgI/cm、典型的に50~900mgI/cm、例えば、100~800mgI/cm、150~500mgI/cm、または200~400mgI/cmの範囲の量のヨウ素を有し得る。
【0054】
本開示の他の態様は、上述の態様および実施形態のいずれかによる組成物を含む医療用品を含む。このような医療用品としては、例えば、カテーテルチューブ、カテーテルバルーン、およびカテーテル端を含むカテーテル、ガイドワイヤ、針、内視鏡、フィルタ、ステント、ステントグラフト、血管グラフト、血管アクセスポート、塞栓形成組成物、塞栓形成粒子、塞栓形成装置、組織バルキング組成物、組織バルキング粒子、組織バルキング装置、心筋プラグ、創傷ドレーン、胃腸チューブ、尿道インサート、ペースメーカリード、薬物送達デポー、除細動器リード、シャント、人工心臓、心臓弁、血管弁、縫合糸、縫合糸アンカ、吻合クリップおよびリング、組織ステープルおよび結紮クリップ、カニューレ、整形外科用プロテーゼ、ならびに関節プロテーゼから選択される医療装置およびインプラントが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物は、医療用品全体(例えば、塞栓粒子もしくは液体またはバルキング粒子もしくは液体、薬物送達デポー、プラグ、チューブ、グラフト、フィルタ膜、バルブ、縫合糸など)、医療用品の一部(例えば、カテーテルバルーン、カテーテルチューブ、カテーテル端、マーカバンドなど)、医療用品上のラミネート層またはコーティング(例えば、前段落の医療用品の全部または一部の上に配置されるラミネート層またはコーティング)を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物は、PVAまたはPVAのコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、PVAまたはそのコポリマーは、ポリビニルアルコールの骨格に共有結合したヨウ素化芳香族基を含んでもよく、いくつかの実施形態では、芳香族基はヨウ素化フェニル基である。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は、PVAまたはPVAのコポリマーと、本明細書に記載される組成物のうちの1つ以上とを含む液体塞栓組成物を含むか、またはそのような液体塞栓組成物である。PVAまたはPVAのコポリマーは、共有結合したヨウ素化フェニル基などの共有結合したヨウ素を含んでもよい。典型的には、そのような組成物は、DMSOなどの注射に適した溶媒中の溶液として提供される。このような場合、PVAまたはPVAのコポリマーは、血液中で溶液から沈殿して塞栓を形成する。そのようなPVAポリマーおよびコポリマーの例は、WO2020/003147、WO2020/003153、およびWO2011/110589に提供されている。
【0058】
コーティングまたはラミネート層の場合、組成物の厚さは、所望の放射線不透過性を提供するために変化され得る。コーティングまたはラミネート層として、本開示による組成物は、ポリマー製、金属製、セラミック製、またはこれらの組み合わせである基体に適用され得る。コーティングは、任意の公知の様式で、例えば、1つ以上のポリマーと1つ以上のヨウ素化合物とを含有する溶液、分散系、または溶融物から、噴霧、はけ塗り、パッド印刷、浸漬などによって、また粉末コーティングとして適用され得る。
【0059】
本開示の他の態様は、上記のものを含むヨウ素化合物の作製プロセスに関する。いくつかの実施形態では、そのようなプロセスは、(a)少なくとも1つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含む少なくとも1つの化合物であって、2,4,6-トリヨードベンゼン部分の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つがポリヒドロキシル化置換基によって置換されている化合物を、(b)式XI、XII、またはXIX
【0060】
【化19】
【0061】
の化合物とエーテル、エステル、環状アセタール、またはヘミアセタールから選択される部分を含む結合が形成される条件下で反応させることを含み、式中、nは1、2、3、4、または5であり、R81は-H、-CH、-CHCH、-F、-Cl、-Br、-I、無水物、-OH、イミダゾリド、またはO-アシルイソ尿素から選択され、R70はHまたはC~Cアルキルであり、mは0、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上であり、mが0である場合、Xは-ONaであり、mが1、2、3、4、5、6、またはそれ以上である場合、Xは-F、-Cl、-Br、または-Iである。R81が-OH、-CH、または-CHCHである化合物XIからエステル結合を形成する場合、酸触媒を使用してエステル化またはエステル交換を促進することができ、R81が-F、-Cl、-Br、-I、または無水物である場合、エステル化は第三級アミンまたは他の塩基によって触媒することができる。O-アシルイソ尿素を形成する場合、触媒N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を使用してXI(式中、R81は-OHである)と反応させることができる。mが0であり、Xが-ONa(ナトリウムフェノラート)であるXIIからエーテル結合を形成する場合、(a)からの少なくとも1つの化合物上(すなわち、少なくとも1つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含む少なくとも1つの化合物であって、2,4,6-トリヨードベンゼン部分の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つがポリヒドロキシル化置換基によって置換されている化合物上)の1つ以上のヒドロキシル基を、ハロゲン化水素、ハロゲン化リン、塩化チオニルなどを使用するなどして1つ以上のハロゲン化基に変換して、ナトリウムフェノラート部分と反応させることでウィリアムソン反応によってエーテル結合を形成することができる。mが1、2、3、4、5、6、またはそれ以上であり、Xがハロゲン化物である場合、(a)からの少なくとも1つの化合物上の1つ以上のヒドロキシル基を、NaOH、KOH、NaCO、KCO、NaHなどによって触媒される塩基条件下で式XIIの化合物と反応させることで、ウィリアムソン反応によってエーテル結合を形成することができる。中間体XIXの場合、アニリンまたはN-置換アニリンの活性化形態は、CDIとの反応、続いて(a)からの少なくとも1つの化合物との反応によって形成される。あるいは、(a)からの少なくとも1つの化合物をCDI、続いてアニリンまたはN-置換アニリンとの反応によって活性化させてもよい。上述のこれらの反応のための適切な溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルオキサゾリジノンなどの非プロトン性溶媒から選択され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの2,4,6-トリヨードベンゼン部分を含む少なくとも1つの化合物であって、2,4,6-トリヨードベンゼン部分の1位、3位、および5位の水素の少なくとも1つがポリヒドロキシル化置換基によって置換されている化合物は、以下の化合物
【0063】
【化20】
【0064】
【化21】
【0065】
【化22】
【0066】
から選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1A図1Aおよび1Bは、本開示による2つのヨウ素化合物のFTIRスペクトルを示す。
図1B】同上。
図2A図2Aおよび2Bは、本開示による2つのヨウ素化合物のプロトンNMRスペクトルを示す。
図2B】同上。
図3図3は、寒天ファントム内の、本開示による液体塞栓物質のストランドのマイクロCT画像を示す。挿入図は、液体塞栓物質の切開のマイクロCT画像である。
図4図4は、一定流量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を400ml/分の流量(37℃で)で灌流した5mmのシリコーンチューブへの本開示による液体塞栓物質の送達によって作成された塞栓の光学画像である。
図5図5は、本開示による、PVAおよびヨウ素化合物のコーティングでコーティングされたバルーンの光学画像である。
図6図6は、図5のコーティングされたバルーンのμCT分析およびその断面分析(挿入図)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
ヨウ素化合物は、親水性造影剤、特に、5-(N-2,3-ジヒドロキシプロピルアセトアミド)-2,4,6-トリヨード-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)イソフタルアミド(イオヘキソール)(式XII)および5-[アセチル-[3-[アセチル-[3,5-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピルカルバモイル)-2,4,6-トリヨード-フェニル]アミノ]-2-ヒドロキシ-プロピル]アミノ]-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨード-ベンゼン-1,3-ジカルボキサミド(イオジキサノール)(式XVII)から、利用可能なヒドロキシル基とさらなるヨウ素化基との反応によって合成されている。得られた化合物は高レベルのヨウ素を含有し、これは、反応するヒドロキシル基のレベルを制御することによってさらに調整することができる。疎水性ヨウ素化部分と親水性OH基との比を変化させることによって、添加剤と媒質との間の相互作用を調節して、所望の粘度流体および固化特性を達成することができる。
【0069】
ヨウ素化合物の合成に加えて、親水性官能基を有するヨウ素化PVAと本開示によるヨウ素化合物とから調製される液体塞栓製剤も説明される。注入性および放射線不透過性が実証された。また、一定流量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を400ml/分の流量(37℃)で灌流した5mmのシリコーンチューブに液体塞栓物質を送達することによって、塞栓能力が実証された。
【0070】
PVAと本開示によるヨウ素化合物とから調製されるコーティング組成物も説明される。組成物は、カテーテルバルーンをコーティングするために使用される。コーティングは、粘着性があり、可撓性であり、繰り返されるバルーンの膨張/収縮サイクルに対して安定であり、以下により完全に説明されるように、放射線不透過性を呈する。バルーンの縁部およびバルーン表面の位置を蛍光透視下で体内でリアルタイムに追跡することができるので、放射線不透過性コーティングは、バルーンカテーテルコーティングに望ましい。現在の臨床診療では、バルーンは、放射線不透過性を可能にするために造影剤で充填されるが、バルーンの外側の放射線不透過性ポリマーコーティングは、造影剤の必要性の代替であり、バルーンを膨張させるための生理食塩水の使用を可能にする。したがって、バルーンの外側に放射線不透過性ポリマーコーティングを提供することによって、バルーンカテーテルを改善することができる。放射線不透過性ポリマーコーティングをバルーン上に浸漬し、噴霧し、パッド印刷することができるので、バルーン上に放射線不透過性コーティングの異なるパターンを形成することが可能である。これらのパターンは、介入処置中に医療専門家に有用な情報を提供するように設計することもできる。
【0071】
実施例1:イオヘキソールおよびイオジキサノール誘導体の調製。
イオヘキソール(式XIIを参照)粉末(2.5グラム)を250mLのフラスコに入れ、磁気撹拌下で50℃に加熱することによって10mLの無水DMSOに溶解した。2,3,5-トリヨード安息香酸(TIBA)(9.9グラム)を100mL丸底フラスコ中の15mLの無水DMSOに溶解し、続いてカルボニルジイミダゾール(CDI)粉末(3.21グラム)を室温で一定に撹拌しながら非常にゆっくり添加して、発生した二酸化炭素を放出させた。添加/撹拌は約30分かかり、CDI活性化TIBAが生成した。次いで、この反応混合物を、イオヘキソール溶液を含有するフラスコに添加し、60℃で20時間、磁気撹拌下で反応を行った。反応後、混合物を、激しく磁気撹拌しながら500mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.5w/w%)に注いだ。白色沈殿物を受け取り、ブフナー漏斗を通して濾過した。洗浄溶液が中性pHに達するまで、白色粉末を脱イオン水でさらに洗浄して残留NaCO塩および溶媒を除去した。次いで、白色粉末を、磁気撹拌下、60℃で500mLのアセトニトリルで3回抽出した。最終生成物を回収し、40℃で一晩真空乾燥し、5.5グラムの粉末を得た。
【0072】
イオジキサノール(式XVIIを参照)粉末(3.0グラム)を250mLのフラスコに入れ、磁気撹拌下で50℃に加熱することによって10mLの無水DMSOに溶解した。2,3,5-トリヨード安息香酸(TIBA)(9.2グラム)を100mL丸底フラスコ中の15mLの無水DMSOに溶解し、続いてカルボニルジイミダゾール(CDI)粉末(2.98グラム)を室温で一定に撹拌しながら非常にゆっくり添加して、発生した二酸化炭素を放出させた。添加/撹拌は約30分かかり、CDI活性化TIBAが生成した。次いで、この反応混合物を、イオジキサノール溶液を含有するフラスコに添加し、60℃で20時間、磁気撹拌下で反応を行った。反応後、混合物を、激しく磁気撹拌しながら500mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.5w/w%)に注いだ。白色沈殿物を受け取り、ブフナー漏斗を通して濾過した。洗浄溶液が中性pHに達するまで、白色粉末を脱イオン水でさらに洗浄して残留NaCO塩および溶媒を除去した。次いで、白色粉末を、磁気撹拌下、60℃で500mLのアセトニトリルで3回抽出した。最終生成物を回収し、40℃で一晩真空乾燥し、6.2グラムの粉末を得た。
【0073】
表1は、上述の反応プロセスを使用して得られたイオヘキソール誘導体およびイオジキサノール誘導体の理論上のヨウ素含有量および元素分析結果を列挙する。生成物は、100%反応した-OH基(イオヘキソール誘導体(I)およびイオジキサノール誘導体(III)と呼ばれる)または50%反応した-OH基(イオヘキソール誘導体(II)およびイオジキサノール誘導体(IV)と呼ばれる)のいずれかをこれら2つの化合物で達成することを目標とした。約65%~68%のヨウ素含量しか得られなかったが、これは活性化中間体2,3,5-トリヨード安息香酸イミダゾリドからの立体障害の影響として説明することができた。
【0074】
【表1】
【0075】
図1Aおよび1Bは、イオヘキソール誘導体およびイオジキサノール誘導体の2つ、具体的にはイオヘキソール誘導体(I)およびイオジキサノール誘導体(III)のFTIRスペクトルを示す。図2Aおよび2Bは、2つのイオヘキソール誘導体およびイオジキサノール誘導体(溶媒としてのDMSO-d6中)のプロトンNMRスペクトルを示す。NMRスペクトルは、いくらかの未反応出発物質残留物を示すが、これはさらに精製すると消失するはずである。
【0076】
実施例2:ヨウ素化PVAポリマーの調製
脱気し、窒素でパージし、窒素ブランケットを提供した乾燥50ml HEL Ltd PolyBLOCK(商標)容器(Borehamwood WD6 1GW、英国)に、乾燥DMSO(20ml)を500rpmで撹拌しながら添加した。次いで、PVA(31~50kDa、99%加水分解)5.0gを添加して65℃に加熱し(内部プローブ)、全ての固体が完全に溶解するまで500rpmで撹拌した。この時間の後、PVA-1,3-ジオールユニット(TIBA-国際公開第2015/033092号の実施例1に従って調製)に対して2,3,5-トリヨードベンズアルデヒド0.4当量、続いて2-スルホベンズアルデヒドナトリウム塩(FSAS、Sigma Aldrich UK)0.075当量。
【0077】
完全に溶解した後、メタンスルホン酸(2.2ml)を滴下して加え、反応物を65℃で一晩撹拌した。オレンジ色の溶液を室温まで冷却し、アセトン200mLを含有する500mLガラスブレーカに滴下した。白色固体を回収し、50mLのDMSOに再溶解し、アセトン500mL中で再び沈殿させた。固体をブフナー漏斗上に集め、過剰の酸を0.1N NaOH溶液(約100mL)で中和し、中性pHが達成されるまで脱イオン水で洗浄した。次いで、固体を高真空オーブン中28~32℃で一晩乾燥させて、所望の生成物をオフホワイトの固体(3.0g、収率約70%w/w)として得た。DMSO中20%(w/w)溶液を調製した。
【0078】
実施例3:液体塞栓製剤の調製
DMSO溶媒に溶解させた親水性官能基を有するヨウ素化PVAポリマー(I-PVA)と本開示によるヨウ素化合物とから液体塞栓製剤を調製した。特に、I-PVA(18重量%)と、実施例1からのイオジキサノール誘導体(III)(9.5重量%)と、DMSO(72.5重量%)とを含有する溶液を、3.6gのI-PVAおよび1.9gのイオジキサノール誘導体(III)をバイアルに加え、粉末を一緒に穏やかに混合することによって調製した。次いで、14.5gのDMSOを添加して、合計20gの溶液を作製した。バイアルを密封し、両方の粉末が溶媒(DMSO)中に完全に可溶化されるまで少なくとも4時間ローラー混合した。バイアルを、乾熱を用いて滅菌した(121℃で0.5時間)。
【0079】
注入性は、2.5℃/分で15℃から40℃までの温度掃引でAnton-Paar MCR 302レオメータを使用する動的粘度(μ)測定によって特徴付けられ、μ=400mPasという20℃での粘度値を得た。マイクロCT分析によって放射線不透過性(R)を特徴付けて、液体製剤のハンスフィールド単位(HU)で放射線不透過性を計算し、R=7052HUという放射線不透過性値を得た。マイクロCT画像が図3に示されており、寒天ファントム内の液体塞栓物質のストランドを示している。図3の挿入図は、液体塞栓物質の切開のCT画像である。一定流量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を400ml/分の流量(37℃)で灌流した5mmのシリコーンチューブに液体塞栓物質を送達することによって、塞栓効率が示された。99%を超える流量減少が観察された。図4は、得られた塞栓の光学画像である。
【0080】
実施例4:バルーンカテーテル上の放射線不透過性コーティング
PVAコーティング溶液を、放射線不透過性添加剤と共に様々な濃度でDMSO溶媒中で調製した。特定の場合において、7%(w/w)のPVAポリマー(MW 31~50kDa、98%加水分解、Sigma-Aldrichから入手可能)を、DMSO中の8%~23%(w/w)のイオジキサノール誘導体と混合した。バルーンカテーテル(Abbott Vascular Fox sv PTA Catheter(2~6mm×120mm)、Abbott Laboratories、米国イリノイ州シカゴ)を膨張させ、バルーンを前述のDMSO溶液中で5~10秒間浸漬コーティングし、続いてバルーンを脱イオン水中に入れて水とDMSOを交換させた。得られたコーティングは、図5に示されるように、粘着性、可撓性であり、繰り返されるバルーンの膨張/収縮サイクルに対して安定であった。図6に示すように、コーティングされたバルーンをμCTによって分析した(下の画像は、バルーンの断面分析に対応する)。4700ハンスフィールド単位(HU)の放射線不透過性が測定された。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】